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4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩の製造法
説明

4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩の製造法

【課題】後処理の段階において繰り返しの抽出操作を必要とせず、また、副反応が少なく、操作性に優れ、総収率が向上し、効率のよい4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩の製造法の提供。
【解決手段】反応工程において、[1]ピロロ[2,3−b]ピリジン7−オキシドの塩が高収率で単離。[2]4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩は、4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンに塩基存在下で二酸化炭素を作用させれば、ケトン体が副生せず高収率で5位にカルボキシル基を導入。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の有効成分を製造する際の中間体として有用な4−ハロ−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩の効率的な製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(V)
【化8】

【0003】
で示される4−ハロ−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩は、ピロロ[2,3−b]ピリジン骨格を有するいくつかの医薬の有効成分を製造する際の中間体として有用である。
【0004】
式(V)の化合物又はその塩が、製造工程において重要な中間体となりうる医薬としては、例えば、キナーゼ阻害作用を有することに基づき、組織/器官移植時の拒絶反応、リウマチ、乾癬等の疾患に有用である一般式(A1)、(A2)もしくは(A3)の化合物又はその塩が報告されている(各々特許文献1、2、3)。
【0005】
【化9】

(式中の記号は、各々の公報を参照のこと)
これらの一般式(A1)、(A2)もしくは(A3)で示される化合物又はその塩の中でピロロ[2,3−b]ピリジン骨格を有する化合物も報告されているが、下記のように、例えば、一般式(B1)から(B6)の化合物又はそれらの塩は、式(IV)の4−ハロ−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩から、アミド化、イプソ置換や環化等の反応を組み合わせることによって製造することができる。
【0006】
【化10】

[式中、RXは、(A1)、(A2)、(A3)で示される化合物の対応する明細書中において、それぞれ、−M−R4、−M−R42又はR22を意味し、RYは、(A1)、(A2)、(A3)で示される化合物の対応する明細書中のR3、R41、又はR21を意味する。R’等、特に指定のない基は特許文献1、2又は3に記載された定義と同じ意味を表す。]
【0007】
式(V)の化合物を効率よく製造する場合に参考となる反応例として下記の工程1から3が知られている。
【0008】
[工程1] ピロロ[2,3−b]ピリジン環の5位へのカルボキシル基の導入
ピロロ[2,3−b]ピリジン環の5位にエステルを直接導入する方法が知られている。具体的には、5位がプロトンのピロロ[2,3−b]ピリジン環を有する化合物又はその塩に塩基を作用させて、ピロロ[2,3−b]ピリジン環の5位を脱プロトン化した後、アルキルハロカーボネート等の求電子剤を反応させる例が知られている。
【0009】
例えば、出発原料として式(III−1)の4−クロロ−1−トリイソプロピルシリル−ピロロ[2,3−b]ピリジンに対して、塩基sec−BuLiを作用させて脱プロトン化した後、求電子剤としてメチルクロロカーボネートを反応させた例が報告されている(非特許文献1)。
【0010】
【化11】

【0011】
非特許文献1に記載された典型的な文章実験例を参考に、試薬としてクロロエチルカーボネートを用いて本工程を追試したところケトン体が副生した。
【0012】
[工程2] ピロロ[2,3−b]ピリジン環の4位へのクロロ基の導入
ピロロ[2,3−b]ピリジン環の4位へハロゲンを導入するには、ピロロ[2,3−b]ピリジン環の7位が酸化されたNオキシド体又はそのメタクロロベンゾエートを出発原料とし、ハロゲン化剤を作用させることにより得られることが知られている。
【0013】
式(VI−1)で示される4−クロロ−ピロロ[2,3−b]ピリジンは、式(II−Free)のピロロ[2,3−b]ピリジン N−オキシドにクロロ化剤を作用させれば製造できるという報告がある。クロロ化剤としてメタンスルホニルクロリドを用いた例を以下に示す(特許文献4)。
【0014】
【化12】

【0015】
[工程3] ピロロ[2,3−b]ピリジン環 7位の酸化
ピロロ[2,3−b]ピリジン環の7位を酸化してピロロ[2,3−b]ピリジン 7−オキシドを製造するには、ピロロ[2,3−b]ピリジン又はその塩に対して酸化剤を作用させる方法が知られている。ピロロ[2,3−b]ピリジン 7−オキシドは、メタクロロベンゾエート又はフリー体として単離された例が知られており、収率は64%から89%等の様々な報告が存在する(例えば、特許文献5、非特許文献2、3)。
【0016】
例えば、式(I)の化合物にメタクロロ過安息香酸(MCPBA)を作用させて、式(II)の化合物のメタクロロベンゾエートとして単離している報告がある。
【0017】
【化13】

【0018】
式(II)の化合物をフリー体のピロロ[2,3−b]ピリジン 7−オキシドとして単離した報告もある。上記と同じく酸化剤を用いて7位を酸化し、式(II−MCBA)の化合物を一度単離した後、さらに、K2CO3で処理して式(II−Free)で示されるフリー体として単離している(特許文献4)。
【0019】
【化14】

特許文献5の実施例の記載から収率を計算すると、第一工程、第二工程の収率はそれぞれ68%、67%であり、これらの値から二工程の通算収率を計算すると約46%であった。さらに、本反応を追試したが、式(II−Free)の化合物は水溶性が高く、有機溶媒で抽出したが収率が低かった。
【0020】
【特許文献1】国際公開WO2007/007919号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2007/077949号パンフレット
【特許文献3】国際公開WO2008/084861号パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2007/125320号パンフレット
【特許文献5】国際公開WO2008/005457号パンフレット
【非特許文献1】テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters),2004,45,pp.2317−2319
【非特許文献2】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry),1980,45,pp.4045−4048
【非特許文献3】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry),2006,71,pp.4021−4023
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩の効率のよい製造法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、
式(V)
【0023】
【化15】

(式中、Xは、ハロゲンを意味する。)
の4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩に関して、工業的製法を志向した効率のよい製造法について鋭意検討した結果、カルボン酸を一工程で導入できるという操作性に優れかつ効率のよい製造法を見出して本発明を完成した。
【0024】
即ち、本発明は、式(V)の4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩の製造法に関する。
なお、特に記載がない限り、本明細書中のある化学式中の記号が他の化学式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、医薬の中間体として重要な4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩を提供する為に、操作性に優れ、かつ、効率のよい製造法が提供される。
【0026】
本発明者らは、後処理の段階において繰り返しの抽出操作を必要とせず、また、副反応が少なく、操作性に優れ、総収率が向上し、効率のよい本製造法を見出した。
【0027】
具体的には、反応工程において、
[1] ピロロ[2,3−b]ピリジン 7−オキシドの塩が高収率で単離できる。
[2] 4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩は、4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンに塩基存在下で二酸化炭素を作用させれば、ケトン体が副生せず高収率で5位にカルボキシル基を導入できる。
ことを見出して本発明を完成させた。
【0028】
本発明により、医薬の中間体として有用な式(V)の4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩を大量に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「ハロゲン」は、F、Cl、Br又はIを意味する。
「保護基」としては、例えば、コシエンスキー(Philip J. Kocienski)著 Protecting Groups(1994年)や、ウッツ(P.G.M.Wuts)及びグリーン(T.W.Greene)著、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」に記載の保護基等を挙げることができる。
「Prn」は、窒素原子の保護基を意味するが、塩基でも脱保護されない基を意味する。ある態様としては、トリイソプロピルシリル(TIPS)がある。
「A-」はカウンターアニオンを表わすが、メタクロロフェニルカルボキシレートは除く。カウンターアニオンのある態様としてはCl-、Br-等のハロゲンイオンの他、HSO4-等が挙げられる。ハロゲンが好ましく、カウンターアニオンとハロゲン化剤のハロゲンが同一であることが好ましい。例えばハロゲン化剤としてクロロ化剤を用いる場合のカウンターアニオンとしては、Cl-が好ましい。
【0030】
本明細書中に、以下の略号を用いることがある。BuLi:ブチルリチウム、DME:ジメトキシエタン、DMF:ジメチルホルムアミド、DMSO:ジメチルスルホキシド、EtOAc:酢酸エチル、EtOH:エタノール、MCPBA:メタクロロ過安息香酸、MsCl:メタンスルホニルクロリド、NHMDS:ヘキサメチルジシラジドナトリウム、KHMDS:ヘキサメチルジシラジドカリウム、NaHCO3:炭酸水素ナトリウム、NaOH:水酸化ナトリウム、tBuOK:ターシャリーブトキシカリウム、TEA:トリエチルアミン、THF:テトラヒドロフラン、TBS:トリブチルシリル、TBDPS:ターシャリーブチルジフェニルシリル、TES:トリエチルシリル、TIPS:トリイソプロピルシリル、TIPSCl:トリイソプロピルシリルクロリド、Bn:ベンジル、Et:エチル、Me:メチル。
【0031】
本発明のある態様を以下に示す。
[1] 式(I)
【化16】

の化合物又はその塩を酸化反応に付し、式(II)
【化17】

(式中、A-は、カウンターアニオンを意味し、
ただし、メタクロロベンゾエートは除く。)
の化合物を、式(II)に示す塩の形態で単離することを特徴とする、式(II)の化合物の製造法。
[2] 式(II)
【化18】

(式中、A-は、カウンターアニオンを意味し、
ただし、メタクロロベンゾエートは除く。)
の化合物又はその塩を、ハロゲン化することを特徴とする、
式(VI)
【化19】

(式中、Xは、ハロゲンを意味する。)
の化合物又はその塩の製造法。
[3] [2]において、AがXである、式(VI)の化合物又はその塩の製造法。
[4] 式(III)
【化20】

(式中、Prnは、窒素原子の保護基を意味し、
Xは、ハロゲンを意味する。)
の化合物又はその塩を、塩基存在下に二酸化炭素と反応させることを特徴とする、
式(IV)
【化21】

の化合物又はその塩の製造法。
[5] 式(I)の化合物又はその塩を酸化反応に付して、式(II)の化合物を得、得られた式(II)の化合物をハロゲン化することにより式(II)の化合物を得、式(II)の化合物を保護し、式(II)の化合物を、塩基存在下に二酸化炭素と反応させることを特徴とする、
式(V)
【化22】

(式中、Xは、ハロゲンを意味する。)
の化合物又はその塩の製造法。
以下に、本発明の製造法によって得られる目的化合物の有用性について説明する。
[6] 式(A1)、(A2)もしくは(A3)の化合物又はその塩、その中でも例えば、式(B1)から(B6)の化合物又はそれらの塩は、キナーゼ阻害作用を有することに基づき、組織/器官移植時の拒絶反応、リウマチ、乾癬等の疾患に有用である(特許文献1、2、3)。
【化23】

[7] 式(V)の化合物又はその塩は、4位をイプソ置換し、5位のカルボン酸をCurtius転位、アミド化、アルキル化及び/又は環化等の反応に付すことにより、キナーゼ阻害作用を有することに基づき、組織/器官移植時の拒絶反応、リウマチ、乾癬等の疾患に有用であることが報告されている式(B1)から(B6)で示される化合物又はそれらの塩を製造することができる為、有用である。
[8] [4]で得られた式(IV)の化合物又はその塩は、脱保護して式(V)の化合物又はその塩を得ることができ、得られた式(V)の化合物又はその塩は、[7]に記載の方法に従い、組織/器官移植時の拒絶反応、リウマチ、乾癬等の疾患に有用であることが報告されている式(B1)から(B6)で示される化合物又はそれらの塩を製造することができる為、有用である。
[9] [2]で得られた式(VI)の化合物又はその塩は、ピロロ[2,3−b]ピリジンの一位を保護して式(III)の化合物又はその塩を得、得られた式(III)の化合物又はその塩を、塩基存在下に二酸化炭素と反応させることにより、式(IV)の化合物又はその塩を得、得られた式(IV)の化合物又はその塩は、[7]及び[8]に記載の方法に従い、キナーゼ阻害作用を有することに基づき、組織/器官移植時の拒絶反応、リウマチ、乾癬等の疾患に有用であることが報告されている式(B1)から(B6)で示される化合物又はそれらの塩を製造することができる為、有用である。
[10] [1]で得られた式(II)の化合物は、クロロ化反応により式(VI)の化合物又はその塩へと導くことができ、得られた式(VI)の化合物は、[7]、[8]及び[9]に記載の方法で、キナーゼ阻害作用を有することに基づき、組織/器官移植時の拒絶反応、リウマチ、乾癬等の疾患に有用であることが報告されている式(B1)から(B6)で示される化合物又はそれらの塩を製造することができる為、有用である。
【0032】
また、式(V)の化合物及びその塩とは、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合がある。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、また、塩基との塩を形成する場合には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0033】
さらに、本発明は、式(II)の化合物及び式(V)の化合物及びその塩の、各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
【0034】
(製造法)
以下、式(II)、(III)、(IV)の化合物、及び(V)の化合物又はその塩の代表的な製造法を説明する。各製法は、当該説明に付した参考文献を参照して行うこともできる。なお、本発明の製造法は以下に示した例及び当業者が容易に想到できる範囲内で行うことができる。
【0035】
(製法)
(第一工程)
【0036】
【化24】

第一工程の第一段階は式(I)のピロロ[2,3−b]ピリジン又はその塩を酸化する工程である。式(I)の化合物は、市販されており入手が容易である(例えば、Aldrich コード番号A99562)。式(I)の化合物を、反応を妨げない溶媒中で酸化剤を加えて撹拌する。反応温度は、氷冷から溶媒の沸点付近で行われ、氷冷から30℃が好ましい。溶媒は特に限定はされないが、例えばヘプタン、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン、DME等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、DMF、DMSO、EtOAc、アセトニトリル及びこれらの混合溶媒が挙げられる。ヘプタンとDMEの混合溶媒が好ましい。酸化剤としては、例えば、MCPBA、過酸化水素、マグネシウムモノペルオキシフタレート、ジメチルジオキシランまたはメチル(トリフルオロメチル)ジオキシランである。MCPBAが好ましい。式(I)の化合物が塩の場合には、TEA、DIPEA若しくはN−メチルモルホリン等の有機塩基、又はK2CO3、Na2CO3若しくはNaOH等の無機塩基の存在下で反応を行うことにより、反応が円滑に進行する場合がある。
【0037】
第一工程の第二段階は塩交換反応である。通常、基質を変化させない溶媒中に溶解させておき、HA(Aは上述と同義であり、例えば、ハロゲン)が有機溶媒中に溶解した溶液を添加して反応させる。HAが有機溶媒中に溶解した溶液としては、通常市販の試薬でよく、例えば、塩酸塩にする場合には、塩化水素/酢酸エチル(HCl/EtOAc)、塩化水素/ジオキサン(HCl/ジオキサン)等が用いられる。通常市販されている4M HCl/EtOAcや4M HCl/ジオキサン等を用いる。反応温度は氷冷から室温で行う。溶媒としては、特に限定はされないが、炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、EtOAc、アセトニトリル及びこれらの混合溶媒が挙げられる。特にEtOAcが好ましい。
【0038】
(第二工程)
【0039】
【化25】

第二工程は、式(II)の化合物の4位をハロゲン化する工程である。式(II)の化合物を有機アミン存在下に、ハロゲン化剤を反応させ、式(VI)の化合物又はその塩が得られる。溶媒の例としては、特に限定はされないが、炭化水素類、芳香族炭化水素類、のエーテル類、ハロゲン化炭化水素類、DMF、DMSO、EtOAc、アセトニトリル及びこれらの混合溶媒が挙げられる。特にDMFが好ましい。反応温度は、試薬を添加する際には、0℃以下で行うのが好ましく、実際の反応は−78℃から溶媒の沸点までであり、好ましくは60℃から70℃である。カウンターアニオン(A−)とハロゲン(X)が同じであることが好ましい。
【0040】
(第三工程)
【0041】
【化26】

本工程は式(VI)の化合物又はその塩のピロロ[2,3−b]ピリジン環の1位の窒素原子を保護する工程である。前述のコシエンスキー(Philip J. Kocienski)著 Protecting Groups(1994年)、ウッツ(P.G.M.Wuts)及びグリーン(T.W.Greene)著、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」に記載の条件またはそれに類似した反応を用いればよい。保護基としては、塩基性条件下で脱保護されない基が好ましく、例えば、TBS、TIPS、TBDPS、TBDPSなどシリル系の保護基が好ましいが、塩基性条件での安定性や酸性条件での安定性を考慮すると、TIPS基が特に好ましい。
【0042】
(第四工程)
【0043】
【化27】

第四工程の第一段階は、4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンの5位にカルボキシル基を導入する工程である。反応は反応に不活性な溶媒中、強塩基を用いて一定時間撹拌した後、二酸化炭素雰囲気下で撹拌する。塩基の例としては、sec−BuLi、NHMDS、KHMDS、tBuOK等が挙げられるが、sec−BuLiが好ましい。溶媒の例としては、特に限定はされないが、炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、DMF、DMSO、EtOAc、アセトニトリル及びこれらの混合溶媒が挙げられる。エーテル類が好ましく、特にTHFが好ましい。sec−BuLiがシクロヘキサン等の炭化水素溶液である場合にはTHFが好ましい。二酸化炭素はを吹き込むか又は溶媒中にバブリングするのが好ましい。反応温度は、通常約−100℃から室温で行われる。
【0044】
第四工程の第二段階は、脱保護であり、通常の脱保護を行えばよい。前述のコシエンスキー(Philip J. Kocienski)著 Protecting Groups(1994年)やウッツ(P.G.M.Wuts)及びグリーン(T.W.Greene)著、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」に記載の条件またはそれに類似した反応を用いることができる。
【0045】
式(V)の化合物は、遊離化合物、その塩、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。式(V)の化合物の塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。単離、精製は、抽出、分別結晶化等、通常の化学操作を、必要に応じて適宜適用して行なわれる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づき、式(II)、(III)、(IV)又は(V)の化合物の製造法をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また、実施例化合物の製造法及び物理化学的データをそれぞれ示す。
【0047】
実施例1
反応容器を窒素置換した後、ピロロ[2,3−b]ピリジン 30 g、DME 150 mL 及びヘプタン 300 mLを内温約30℃で順次仕込んだ。内温20〜30℃で、予め調製したMCPBAのDME/ヘプタン溶液{MCPBA(約70%)68.8 g、DME 270 mL及びヘプタン 270 mL}を約1時間かけて滴下した。滴下終了後、予め調製したDMEとヘプタンの混合溶媒(DME30 mL及びヘプタン30 mL)を加え、同温で約1時間攪拌した。反応が終了したことを確認した後、内温20〜30℃でヘプタン 300 mLを滴下し、同温で約1時間撹拌した。内温を0〜5℃まで冷却し、同温で約1時間撹拌した。内温が0〜5℃で得られた結晶をろ取した。
得られた結晶は、予め調製した0〜5℃に冷却したDME及びヘプタンの混合溶媒(DME 30 mL及びヘプタン60 mL)で洗浄した。洗浄したwet結晶およびEtOAc 450 mL を内温30℃以下で順次仕込んだ。内温20〜30℃で4M HCl/EtOAc溶液 76.2 mLを約1時間かけて滴下し、同温で約1時間撹拌した。内温が20〜30℃であることを確認した後にろ過した。ろ取したwet結晶は、EtOAc 150 mLで洗浄し、さらに40℃で終夜減圧乾燥し、1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン 7−オキシド塩酸塩(41.2 g、収率95.1 %)を結晶として得た。
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ6.93(d,J=2.8Hz,1H)、7.54(dd,J=6.4,7.6Hz,1H)、7.85(dd,J=2.4,2.8Hz,1H)、8.52(d,J=7.6Hz,1H)、8.65(brs,1H)、8.78(d,J=6.4Hz,1H)、13.58(brm,1H)
MS(API−ES):m/z=135[M]+
【0048】
実施例2
反応容器を窒素置換した後、1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン 7−オキシド塩酸塩 30 g、DMF 210 mLを内温30℃以下で順次仕込んだ。内温を0〜10℃に冷却し、同温度でEt3N 17.8 gを滴下した。添加が終了した後、反応系内を内温0〜10℃に保ち、発熱しないように注意しながら、MsCl 100.7 gを徐々に滴下した。滴下が終了した後、内温60〜70℃まで徐々に昇温し、同温度で攪拌した。反応が終了したことを確認した後、内温を15〜30℃迄徐々に冷却し、同温度で市水210 mLを徐々に滴下した。滴下が終了した後、内温20〜30℃で約1時間撹拌した。予め調製した24%NaOH水溶液 約207 mLを内温20〜30 ℃で約1時間かけて滴下し、pHを7.0〜7.5に調製した。滴下終了後、同温度にて1時間撹拌した。撹拌後、pHが7.0〜7.5であることを確認し、内温0〜5℃まで徐々に冷却し、同温度で約1時間撹拌した。内温が0〜5℃であることを確認した後に結晶をろ取した。得られたwet結晶を市水150 mLで洗浄した。
ろ取したwet結晶及び市水210 mLを内温約30℃で順次仕込んだ。内温20〜30℃で約30分間懸濁した。ろ過前の内温が20〜30 ℃であるのを確認した後にろ過した。ろ取したwet結晶は、市水150 mLで洗浄した。得られたwet結晶は50℃で終夜減圧乾燥し、4−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(20.5 g、収率76.7 %)を結晶として得た。
【0049】
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ6.55(dd,J=1.6,3.2Hz,1H)、7.22(d,J=5.2Hz,1H)、7.64(dd,J=2.4,3.2Hz,1H)、8.22(d,J=5.2Hz,1H)、12.11(brm,1H)
MS(API−ES):m/z=153[M+H]+
【0050】
実施例3
反応容器を窒素置換した後、4−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン13 g、THF130 mLを内温30℃以下で順次仕込んだ。内温を−30〜−10℃に冷却し、同温度でNHMDS/THF溶液(1.0M)93.7 mLを徐々に滴下し、約1時間撹拌した。引き続き、内温−30〜−10℃でTIPSCl 17.25 gを徐々に滴下し、内温−20〜−10℃で撹拌した。反応が終了したことを確認した後、内温−20〜10℃で予め調製した1M塩酸約120 mLを徐々に滴下し、pHを3.0〜4.0に調製した。内温−20〜10℃でトルエン65 mLを添加した。添加を終了した後、内温20〜30℃まで昇温し、同温度で分液した後、得られた有機層を市水65 mLで洗浄し、予め調製した5%NaHCO3水溶液39 mLで2回洗浄した。得られた有機層を外温50℃以下で減圧濃縮した。シクロヘキサン26 mLを添加し、減圧濃縮することにより、4−クロロ−1−(トリイソプロピルシリル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンを油状物として得た(27.0 g、収率102.8 %)。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ1.11(d,J=7.6Hz,1H)、1.85(qq,J=7.6Hz,1H)、6.66(d,J=3.6Hz,1H)、7.05(d,J=5.2Hz,1H)、7.32(d,J=3.6Hz,1H)、8.13(d,J=5.2Hz,1H)
MS(API−ES):m/z=309[M+H]+
【0051】
実施例4
反応容器を窒素置換した後、4−クロロ−1−(トリイソプロピルシリル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン 5 g、THF 72 mLを順次仕込んだ。内温を−70℃以下に冷却し、同温度で1.0 M sec−BuLi/シクロヘキサンのヘキサン溶液 17.3 mLを、発熱しないよう注意しながら徐々に滴下した。滴下が終了した後、同温度で約10分間撹拌した。内温−70℃以下に保ちながら、二酸化炭素を吹き込んだ。反応の進行とともに結晶が析出した。反応が終了したことを確認した後、約1時間かけて内温を0〜10℃になるまで徐々に昇温したところ、結晶は溶解した。内温0〜10℃で、pHを6.0〜7.0に保ちながら、予め調製した1M塩酸約17 mLを徐々に滴下した。pHを6.0〜7.0に調製した後、内温0〜30℃でトルエン740 Lを添加し、内温20〜30℃で分液した。分取した有機層を外温約50℃で約12 mLになるまで減圧濃縮した。得られた粗生成物はさらに精製せず次の反応に用いた。内温20〜40℃で、得られた粗精製物をEtOH 12 mLに仕込んだ。予め調製したNaOH水溶液(NaOH 1.57 g、市水24 mL)を内温20〜40℃で滴下した。滴下後、内温を40〜50℃まで昇温し、同温度で攪拌した。反応が終了したことを確認した後、n−ブタノール 12 mL、トルエン 24 mLを仕込み、内温20〜30℃で分配した。分取した水層にEtOH24 mLを注ぎ、内温を40〜50℃迄昇温した。同温で、予め調製した3M塩酸約13.5 mLを、pHを2.0〜3.0に保ちながら、約1時間かけて滴下した。滴下した後、同温度で約1時間撹拌した。pHが2.0〜3.0であることを再確認した後、内温を20〜30℃まで徐々に冷却し、同温で約1時間撹拌した。内温が20〜30℃であることを確認した後にろ過した。得られたwet結晶は、予め調製した50 %EtOH水溶液(EtOH 3.6 mL及び市水 3.6 mL)、EtOAc 7.2 mLで順次洗浄した。wet結晶を50℃で終夜減圧乾燥し、4−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸(2.36 g、二工程通算収率76.3 %)を結晶として得た。
1H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ6.66(m,1H)、7.71(dd,J=2.4,2.8Hz,1H)、8.76(s,1H)、12.36(s,1H)、13.26(brm,1H)
MS(API−ES):m/z=195[M−H]-
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、医薬の中間体として重要な4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩、及びその効率的な製造法が提供される。
【0053】
本発明者らは、後処理の段階において繰り返しの抽出操作を必要とせず、また、副反応が少なく、操作性に優れ、総収率が向上し、効率のよい本製造法を見出した。
【0054】
具体的には、反応工程において、[1] ピロロ[2,3−b]ピリジン 7−オキシドの塩が高収率で単離できる。[2] 4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩は、4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンに塩基存在下で二酸化炭素を作用させれば、ケトン体が副生せず高収率で5位にカルボキシル基を導入できる。ことを見出して本発明を完成させた。
【0055】
本発明の製造法により、医薬の中間体として有用な式(V)の4−ハロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボン酸又はその塩が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物又はその塩を酸化反応に付し、式(II)
【化2】

(式中、A-は、カウンターアニオンを意味し、
ただし、メタクロロベンゾエートは除く。)
の化合物を、式(II)に示す塩の形態で単離することを特徴とする、式(II)の化合物の製造法。
【請求項2】
式(II)
【化3】

(式中、A-は、カウンターアニオンを意味し、
ただし、メタクロロベンゾエートは除く。)
の化合物又はその塩を、ハロゲン化することを特徴とする、
式(VI)
【化4】

(式中、Xは、ハロゲンを意味する。)
の化合物又はその塩の製造法。
【請求項3】
請求項2において、AがXである、式(VI)の化合物又はその塩の製造法。
【請求項4】
式(III)
【化5】

(式中、Prnは、窒素原子の保護基を意味し、
Xは、ハロゲンを意味する。)
の化合物又はその塩を、塩基存在下に二酸化炭素と反応させることを特徴とする、
式(IV)
【化6】

の化合物又はその塩の製造法。
【請求項5】
式(I)の化合物又はその塩を酸化反応に付して、式(II)の化合物を得、得られた式(II)の化合物をハロゲン化することにより式(II)の化合物を得、式(II)の化合物を保護し、式(II)の化合物を、塩基存在下に二酸化炭素と反応させることを特徴とする、
式(V)
【化7】

(式中、Xは、ハロゲンを意味する。)
の化合物又はその塩の製造法。

【公開番号】特開2010−77031(P2010−77031A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244137(P2008−244137)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】