説明

4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体およびそれらの製造方法

【課題】液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の合成中間体である4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(一般式(6))およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
一般式(6)で表される4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体を、5−ハロテトラヒドロピラン−4−オン類とフェニルグリニヤール試薬を反応させることにより製造する。式中、R、R、R、RおよびRは各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基等を示す。Rはフッ素原子を示す。Rは置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。Yはハロゲン原子を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロピラン骨格を有する化合物は、絶対値の大きな負の屈折率、適切な屈折率異方性、小さい弾性定数、良好な相溶性、低い粘度等、液晶組成物として優れた化合物である。従来、例えば(2S,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピランが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この化合物の合成は、trans−4−プロピルシクロヘキシルアルデヒドを原料として7工程を要し、その総収率は約3%である。
【0003】
一方、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体を原料として、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物を製造する方法は、これまでに報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−008040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の有効な製造原料となる4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体およびそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、5−ハロテトラヒドロピラン−4−オン誘導体(4)とフェニルグリニヤール試薬(5)との反応から得られる4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)が、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物(10)の有効な製造原料となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記一般式(6)で表される4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体に関するものである。
【0007】
【化1】

【0008】
(上記式中、R、R、R、RおよびRは各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフッ素原子を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。Yはハロゲン原子を示す。)
また、本発明は、下記一般式(4)で表される5−ハロテトラヒドロピラン−4−オン誘導体に、
【0009】
【化2】

【0010】
(上記式中、Rは上記と同じ内容を示す。Yはハロゲン原子を示す。)
下記一般式(5)で表されるフェニルグリニヤール試薬を反応させることを特徴とする、
【0011】
【化3】

【0012】
(上記式中、R、R、R、RおよびRは上記と同じ内容を示す。Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)
下記一般式(6)で表される4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体の製造方法に関するものである。
【0013】
【化4】

【0014】
(上記式中、R、R、R、R、R、RおよびYは上記と同じ内容を示す。)
【発明の効果】
【0015】
本発明により、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の製造中間体である新規な4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)を得ることができ、かつ該誘導体(6)を簡便かつ高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
〔4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)について〕
まず、本発明の4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)について説明する。
【0017】
一般式(6)中、R、R、R、RおよびRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフッ素原子を示す。
、R、R、RおよびRで表される「炭素数1〜4のアルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基等が例示できる。Rは、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、アルコキシ基が好ましく、エトキシ基がさらに好ましい。
、R、R、RおよびRは、本発明の化合物から誘導できるテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の液晶組成物としての性能が良い点で、RおよびRがフッ素原子、Rがエトキシ基、RおよびRは水素原子の組合せが好ましい。
【0018】
一般式(6)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。
で表される「炭素数3〜10のシクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等を例示することができる。これらのシクロアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていても良い。「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状であってもよい。
としては、3−エチルシクロペンチル基、3−プロピルシクロペンチル基、3−イソプロピルシクロペンチル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−プロピルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、4−エチルシクロオクチル基等が例示できる。Rは、本発明の化合物から誘導できるテトラヒドロピラン骨格を有する化合物の液晶組成物としての性能が良い点で、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロペンチル基または、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基がさらに好ましく、4−プロピルシクロヘキシル基がさらに好ましい。
およびRがフッ素原子であり、Rがエトキシ基であり、RおよびRが水素原子であり、Rが4−プロピルシクロヘキシル基の組合せが好ましい。
【0019】
一般式(6)中、Yはハロゲン原子を示す。
で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が例示できる。その中でも、後述する工程3と工程4の収率が良い点で、臭素原子が望ましい。
【0020】
〔4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)、及びテトラヒドロピラン誘導体(10)の製造方法について〕
次に、本発明の4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)の製造方法について説明する。本発明の4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)は、下記の製造ルートの工程1から工程3の反応よって製造することができる。
また、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)を原料とする、テトラヒドロピラン誘導体(10)の製造方法について説明する。テトラヒドロピラン誘導体(10)は、下記の製造ルートの工程4から工程6の反応よって製造することができる。
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、R、R、R、R、R、RおよびYは上記と同じ内容を示す。Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。X、XおよびXは、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示す。Rは水素原子、ベンゼンスルホニル基またはp−トルエンスルホニル基を示す。)
【0023】
〔工程1について〕
工程1は、アルデヒド類(1)と2−シリルオキシ−1,3−ブタジエン誘導体(2)をルイス酸の存在下に環化させることにより、シリルエノールエーテル類(3)を得る反応である。
【0024】
工程1の反応に用いるアルデヒド類(1)は、一般式(1)で表される。式中、Rについては、上記の一般式(6)の説明において、説示したとおりである。上記(1)としては、例えば、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(1)などが挙げられる。
【0025】
2−シリルオキシ−1,3−ブタジエン誘導体(2)である一般式(2)式中、X、XおよびXは、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示す。
、XおよびXで表される「炭素数1〜4のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等が例示できる。X、XおよびXは、原料入手が容易な点や収率が良い点で、メチル基が好ましい。
2−シリルオキシ−1,3−ブタジエン誘導体(2)としては、例えば、2−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン(2)などが挙げられる。
【0026】
工程1の反応は、ルイス酸の存在下に実施することが必須である。用いることのできるルイス酸としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等のホウ素化合物;クロロジメチルアルミニウム、クロロジエチルアルミニウム、三塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物;三塩化鉄等の鉄化合物;四塩化スズ、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(IV)等のスズ化合物;五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン等のアンチモン化合物;四塩化チタン等のチタン化合物;三塩化インジウム等のインジウム化合物;三臭化ビスマス等のビスマス化合物;二臭化亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)等の亜鉛化合物;二臭化マグネシウム等のマグネシウム化合物;三塩化インジウム等のインジウム化合物等が例示できる。その中でも、収率が良い点でアルミニウム化合物が好ましく、クロロジメチルアルミニウム、クロロジエチルアルミニウムがさらに好ましい。
ルイス酸の添加量は、特に制限は無く、アルデヒド類(1)に対していわゆる触媒量でも良く、好ましくは、アルデヒド類(1)に対して0.5〜2.5等量添加することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0027】
工程1の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、ペンタン、キシレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、炭化水素系溶媒が好ましく、トルエンまたはヘキサンがさらに好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0028】
工程1の反応温度は、特に制限は無いが、通常、−100〜100℃の温度から適宜選ばれた温度で反応を実施することができる。その中でも、収率が良い点で−40〜30℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0029】
反応終了後、工程1で得られたシリルエノールエーテル類(3)は、単離してもよいが、単離すること無く、次の工程2に供することもできる。このことから、工程1と次の工程2をワンポットで実施することもできる。
【0030】
〔工程2について〕
工程2は、シリルエノールエーテル類(3)とハロゲン化剤を反応させて5−ハロテトラヒドロフラン−4−オン類(4)を製造する工程である。
【0031】
シリルエノールエーテル類(3)としては、例えば、[3,6−ジヒドロ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)−2H−ピラン−4−イルオキシ]トリメチルシラン(3)などが挙げられる。
【0032】
工程2のハロゲン化剤、及び5−ハロテトラヒドロフラン−4−オン類(4)のYで表されるハロゲン原子について、上記の一般式(6)の説明において、説示したとおりである。
ハロゲン化剤としては、収率が良い点で、求電子性ハロゲン化剤が好ましい。求電子性ハロゲン化剤としては、ヨウ素、N−ヨードコハク酸イミド、一塩化ヨウ素等のヨウ素化剤;臭素、四臭化炭素、N−ブロモコハク酸イミド等の臭素化剤;塩素、四塩化炭素、N−クロロコハク酸イミド等の塩素化剤;1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン四フッ化ホウ酸塩、N−フルオロベンゼンスルホンイミド、1−フルオロピリジニウムピリジンヘプタフルオロジボラート等のフッ素化剤が例示できる。その中でも、工程3と工程4の収率が良い点で、臭素化剤がより好ましく、中でもN−ブロモコハク酸イミドが更により好ましい。
ハロゲン化剤の使用量に特に制限は無く、化学両論量以上用いることにより、目的物を収率よく得ることができる。
【0033】
工程2の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ペンタン、キシレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ハロゲン系溶媒、またはこれらの溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒が好ましく、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒がより好ましいく、N,N−ジメチルホルムアミドとヘキサンまたはトルエンの混合溶媒が更により好ましい。
有機溶媒の使用量に特に制限は無い。
【0034】
工程2の反応温度は、特に制限は無いが、通常、−100〜100℃の温度から適宜選ばれた温度で実施することができる。その中でも、収率が良い点で−50〜50℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0035】
反応終了後、5−ハロテトラヒドロフラン−4−オン誘導体(4)の単離方法は、特に制限はない。単離方法としては、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0036】
〔工程3について〕
工程3は、5−ハロテトラヒドロフラン−4−オン誘導体(4)とフェニルグリニヤール試薬(5)を反応させて、本発明の4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)を製造する工程である。
【0037】
5−ハロテトラヒドロフラン−4−オン誘導体(4)としては、例えば、(2R,5S)−5−ブロモ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(4)などが挙げられる。
【0038】
工程3の原料として用いるフェニルグリニヤール試薬(5)の調製方法は、特に制限は無い。調製方法としては、例えば、ブロモベンゼン誘導体とマグネシウムとの反応により調製することができ(後述の実験例参照)、また、ハロベンゼン類とイソプロピルマグネシウムクロリドとの反応により調製することもできる。フェニルグリニヤール試薬(5)のYは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。その中でも、収率が良い点で臭素原子が好ましい。R、R、R、RおよびRについては、上記の一般式(6)の説明において、説示したとおりである。
フェニルグリニヤール試薬(5)としては、例えば、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(5)などが挙げられる。
【0039】
工程3の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、テトラヒドロフランが好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0040】
工程3の反応温度は、特に制限は無いが、通常、−20〜150℃の温度から適宜選ばれた温度で実施することができる。この中でも、収率が良い点で、−10〜100℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0041】
反応終了後、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)の単離方法は、特に制限はない。単離方法としては、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0042】
〔工程4、5及び6について〕
このようにして製造することのできる本発明の4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)は、例えば、この誘導体(6)を原料として、工程4、工程5及び工程6に示した方法によって、液晶組成物として有用な5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピランへと変換することができる。以下、工程4、工程5及び工程6について説明する。
【0043】
(工程4)
工程4は、有機亜鉛化合物の存在下に4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)を脱HY(Yは上記と同じ内容を示す。)を伴ってフェニル基を転位させテトラヒドロフラン−4−オン誘導体(7)を製造する工程である。
【0044】
4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)としては、例えば、(2R,4S,5S)−5−ブロモ−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(6)などが挙げられる。
【0045】
工程4は、有機亜鉛化合物の存在下に実施することが必須である。用いることのできる有機亜鉛化合物としては、ジエチル亜鉛、臭化エチル亜鉛等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、ジエチル亜鉛が好ましい。
有機亜鉛化合物の添加量に特に制限は無く、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)に対していわゆる触媒量でも良く、好ましくは、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)に対して0.1〜1.0等量添加することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0046】
工程4の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ペンタン、キシレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒が好ましく、ジクロロメタン、トルエンがさらに好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0047】
工程4の反応温度は、特に制限は無いが、通常、−100〜200℃の温度から適宜選ばれた温度で実施することができる。この中でも、収率が良い点で、−50〜150℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0048】
(工程5)
工程5は、テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(7)とヒドラジン誘導体(8)を反応させることによりヒドラゾン類(9)を製造する工程である。
【0049】
テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(7)としては、例えば、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(7)などが挙げられる。
【0050】
ヒドラジン誘導体(8)のRは、水素原子、ベンゼンスルホニル基またはp−トルエンスルホニル基を示す。
工程5の反応で用いることのできるヒドラジン誘導体(8)としては、ヒドラジン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、p−トルエンスルホニルヒドラジドが好ましい。
ヒドラジン誘導体(8)の使用量は、特に制限は無く、テトラヒドロピラン−4−オン誘導体(7)に対して等量以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0051】
工程5の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、メタノールやエタノールまたはそれらの混合溶媒、エタノールとクロロホルムの混合溶媒、メタノールとエタノールとテトラヒドロフランの混合溶媒が好ましい。さらに、反応の収率が良い点、及び工程6の反応で使用する有機溶媒を考慮して、メタノール、エタノールやクロロホルムまたはそれらの混合溶媒等がさらに好ましい。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
【0052】
反応温度は、特に制限は無いが、通常、0〜150℃の温度から適宜選ばれた温度で反応を実施することができる。その中でも、収率が良い点で30〜100℃で行うことが望ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0053】
反応終了後、ヒドラゾン類(9)は単離してもよいが、単離すること無く次の工程6に供することもできる。このことから、工程5と工程6はワンポットで実施することもできる。
【0054】
(工程6)
工程6は、ヒドラゾン類(9)を還元剤の存在下に還元することにより、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン誘導体(10)を製造する工程である。
【0055】
ヒドラゾン類(9)としては、例えば、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(9)などが挙げられる。
【0056】
工程6の還元の方法は、特に制限は無く、ヒドラゾン類を還元できる還元方法であればよい。還元の方法としては、ヒドリド還元、クレメンゼン還元、接触還元等が例示できる。その中でも、収率および立体選択性が良い点で、ヒドリド還元が好ましい。
ヒドリド還元で用いる、還元剤である金属水素錯化合物としては、水素化ホウ素錯化合物、水素化リチウム錯化合物、水素化アルミニウム錯化合物等が例示できる。その中でも、収率および立体選択性が良い点で、水素化ホウ素錯化合物が好ましい。
水素化ホウ素錯化合物としては、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、アセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等が例示できる。その中でも、収率が良い点で、水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノ水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
金属水素錯化合物の使用量は、特に制限は無く、原料であるヒドラゾン類(9)に対して等量以上、好ましくは2.5等量以上用いることにより、収率良くテトラヒドロピラン誘導体(10)を得ることができる。
【0057】
工程6の反応においては、亜鉛化合物を添加することにより収率が向上する場合がある。亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等を例示することができる。その中でも、入手の容易さや収率が良い点で、塩化亜鉛が好ましい。
亜鉛化合物の添加量は、特に制限は無いが、いわゆる触媒量でもよく、好ましくはヒドラゾン類(9)に対して等量以上、さらに好ましくは、2等量以上用いることにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0058】
工程6の反応は、有機溶媒中で実施することができ、反応に害を及ぼす恐れのない有機溶媒であればよい。用いることのできる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒及びこれらの混合溶媒等が例示できる。その中でも、収率が良い点でアルコール系溶媒が好ましく、メタノールやエタノールまたはそれらの混合溶媒がさらに好ましい。テトラヒドロフランとアルコール系溶媒との混合溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒や、メタノールとエタノールとテトラヒドロフランとの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒の使用量は、特に制限は無い。
工程5と工程6の反応をワンポットで実施する場合には、工程7の反応は、工程6の反応に用いた有機溶媒中で実施することが好ましい。
【0059】
工程6の反応温度は、特に制限は無いが、通常、0〜150℃の温度から適宜選ばれた温度で反応を実施することができる。その中でも、収率が良い点で30〜100℃で行うことが好ましい。反応時間は、特に制限は無い。
【0060】
反応終了後、テトラヒドロピラン誘導体(10)の単離方法は、特に制限はない。単離方法としては、例えば、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0061】
テトラヒドロピラン誘導体(10)としては、例えば、(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(10)などが挙げられる。
【0062】
本発明によれば、出発物質(1)から化合物(10)を約25%以上の収率で製造でき、また、中間体(6)から化合物(10)を約65%以上の収率で製造できる。
【実施例】
【0063】
次に、本発明を実験例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実験例中、H−NMRは、Bruker Avance250(250MHz)またはAvanceIII(400MHz)を用い、定法で測定した。
【0064】
なお、以下の実験例で用いた試薬である、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(1)、クロロジメチルアルミニウム(ルイス酸)、2−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン(2)、N−ブロモスクシンイミド(ハロゲン化剤)、1−ブロモ−4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン((5)の原料)、ジエチル亜鉛(有機亜鉛化合物)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(8)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)、水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)は、すべて市販品を用いた。
【0065】
実験例1〔工程1、及び工程2について(I)〕
実験例1および2では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0066】
【化6】

【0067】
(工程1)
アルゴン雰囲気下で、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(1)(7.87g,0.051mol)のトルエン(260mL)溶液に、クロロジメチルアルミニウム(ルイス酸)のヘキサン溶液(1.0M,7.7mL)を−78℃で加え、−78℃で30分間攪拌した。次いで、この反応溶液に2−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン(2)(8.2g,0.058mol)を−78℃で加えた後、−78℃で3時間攪拌することにより、[3,6−ジヒドロ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)−2H−ピラン−4−イルオキシ]トリメチルシラン(3)のトルエン溶液を得た。
【0068】
(工程2)
アルゴン雰囲気下で、工程1で得られた[3,6−ジヒドロ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)−2H−ピラン−4−イルオキシ]トリメチルシラン(3)のトルエン溶液に、N,N−ジメチルホルムアミド(125mL)とN−ブロモコハク酸イミド(ハロゲン化剤)(17.8g,0.10mol)を−40℃で加えた。この反応溶液を40分かけて5℃まで昇温し、その後5分間撹拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)を加え、酢酸エチル(150mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=9:1〜6:4)により精製することにより、(2R,5S)−5−ブロモ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(4)の白色固体(12.3g,収率80%)を得た。
【0069】
(2R,5S)−5−ブロモ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(4)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ4.59(ddd,1H,J=11.4,7.0,1.1Hz),4.44(dd,1H,J=11.1,7.0Hz),3.63(t,1H,J=11.3Hz),3.41(ddd,1H,J=11.5,6.2,2.3Hz),2.75(dd,1H,J=14.0,2.3Hz),2.53(ddd,1H,J=14.0,11.6,1.1Hz),1.95−1.89(m,1H),1.81−1.78(m,2H),1.68−1.63(m,1H),1.52−1.42(m,1H),1.35−1.26(m,2H),1.18−1.14(m,3H),1.11−0.85(m,7H).
【0070】
実験例2〔工程1、及び工程2について(II)〕
【0071】
(工程1)
窒素雰囲気下で、trans−4−プロピルシクロヘキサンカルボアルデヒド(1)(60.0g,0.389mol)のトルエン(600mL)溶液に、クロロジエチルアルミニウム(ルイス酸)(4.70g,39mmol)を−25℃で加えた。次いで、この反応溶液に2−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン(2)(60.9g,428mmol)を−25℃で加えた後、−25℃で2時間攪拌することにより、[3,6−ジヒドロ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)−2H−ピラン−4−イルオキシ]トリメチルシラン(3)のトルエン溶液を得た。
【0072】
(工程2)
アルゴン雰囲気下で、工程1で得られた[3,6−ジヒドロ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)−2H−ピラン−4−イルオキシ]トリメチルシラン(3)のトルエン溶液に、N,N−ジメチルホルムアミド(500mL)とN−ブロモコハク酸イミド(ハロゲン化剤)(109.5g,0.622mol)を−40℃で加え、その後30分間撹拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(600mL)を加え、酢酸エチル(900mL)で抽出した。さらに水層を酢酸エチル(500mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(1L)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、(2R,5S)−5−ブロモ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(4)の白色固体(94.8g,収率80%)を得た。
【0073】
実験例3〔フェニルグリニヤール試薬(5)の調製(I)〕
アルゴン雰囲気下で、マグネシウムリボン(0.48g,20mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)懸濁液に、1,2−ジブロモエタン(0.1mL)を室温で加え、次いで1−ブロモ−4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(4.74g,20mmol)のテトラヒドロフラン(7mL)溶液を加えた。この混合溶液を、50℃で2時間攪拌することにより、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(5)のテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0074】
実験例4〔工程3について(I)〕
実験例4および6では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0075】
【化7】

【0076】
アルゴン雰囲気下で、(2R,5S)−5−ブロモ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(4)(3.03g,10.0mmol)のテトラヒドロフラン(8mL)溶液に、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(5)のテトラヒドロフラン溶液(1.0M,12.0mL)を氷冷下で加え、15分攪拌した。この反応溶液を室温まで昇温し、さらに45分間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)加え、酢酸エチル(30mL×3回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサンから再結晶することにより、(2R,4S,5S)−5−ブロモ−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(6)の白色固体(2.43g,収率53%)を得た。
【0077】
(2R,4S,5S)−5−ブロモ−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(6)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ7.15(ddd,1H,J=8.7,8.7,2.4Hz),6.73(ddd,1H,J=8.3,8.3,1.6Hz),5.04(dd,1H,J=8.5,4.1Hz),4.12(q,2H,J=7.0Hz),4.04(ddd,1H,J=11.9,8.5,1.7Hz),3.72(dd,1H,J=12.0,4.0Hz),3.44−3.40(m,1H),2.62(d,1H,J=0.9Hz),2.44−2.39(m,1H),2.22(dd,1H,J=14.5,4.4Hz),2.09−2.04(m,2H),1.80−1.77(m,3H),1.46(t,3H,J=7.0Hz),1.36−1.27(m,2H),1.19−1.15(m,3H),1.01−0.81(m,7H).
【0078】
実験例5〔フェニルグリニヤール試薬(5)の調製(II)〕
窒素雰囲気下で、マグネシウムリボン(7.98g,0.328mol)のテトラヒドロフラン(250mL)懸濁液に、ヨウ素(0.1g)を室温で加え、次いで1−ブロモ−4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(74.1g,0.313mol)を加えた。この混合溶液を、40℃で30分攪拌することにより、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(5)の1.25Mテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0079】
実験例6〔工程3について(II)〕
窒素雰囲気下で、(2R,5S)−5−ブロモ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(4)(94.8g,0.314mol)のテトラヒドロフラン(250mL)溶液に、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニルマグネシウムブロミド(5)のテトラヒドロフラン溶液(1.25M,250mL)を氷冷下で加えた。この反応溶液を室温まで昇温し、さらに2時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(250mL)加え、酢酸エチル(200mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去することにより、(2R,4S,5S)−5−ブロモ−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(6)の白色固体(122g,収率88%)を得た。
【0080】
実験例7〔工程4について(I)〕
実験例7〜9では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0081】
【化8】

【0082】
アルゴン雰囲気下で、(2R,4S,5S)−5−ブロモ−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(6)(0.69g,1.5mmol)のジクロロメタン(9mL)溶液に、ジエチル亜鉛(有機亜鉛化合物)のヘキサン溶液(1.0M,0.9mL)を氷冷下で加え、50℃で2時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)加え、酢酸エチル(30mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサン/ジエチルエーテル(4:1)から再結晶することにより、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オンの白色固体(7)(0.46g,収率81%)を得た。
【0083】
(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オンの白色固体(7)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ6.78−6.68(m,2H),4.28(dd,1H,J=10.9,6.8Hz),4.11(q,2H,J=7.0Hz),3.92(dd,1H,J=11.6Hz),3.79−3.73(m,1H),3.52(ddd,1H,J=11.5,6.1,2.6Hz),2.58(dd,1H,J=14.3,2.6Hz),2.51−2.45(m,1H),2.00−1.95(m,1H),1.83−1.80(m,2H),1.74−1.69(m,1H),1.54−1.47(m,1H),1.44(t,3H,J=7.0Hz),1.37−0.86(m,12H).
【0084】
実験例8〔工程4について(II)〕
実験例8では、上記の反応式で示された反応を行った。
【0085】
アルゴン雰囲気下で、(2R,4S,5S)−5−ブロモ−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(6)(0.23g,0.5mmol)のトルエン(1mL)溶液に、ジエチル亜鉛(有機亜鉛化合物)のヘキサン溶液(1.0M,0.3mL)を氷冷下で加え、50℃で2時間攪拌し、さらに100℃で2時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(3mL)加え、酢酸エチル(10mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をヘキサンから再結晶することにより、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(7)の白色固体(0.13g,収率68%)を得た。
【0086】
実験例9〔工程4について(II)〕
実験例9では、上記の反応式で示された反応を行った。
【0087】
窒素雰囲気下で、(2R,4S,5S)−5−ブロモ−4−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(6)(122g,0.276mol)のジクロロメタン(150mL)溶液に、ジエチル亜鉛(有機亜鉛化合物)のヘキサン溶液(1.0M,160mL)を氷冷下で加え、その後24時間還流下で攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(750mL)加え、酢酸エチル(700mL×2回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(2L)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(7)の白色固体(30.2g,収率29%)を得た。
【0088】
実験例10〔工程5、及び工程6について(I)〕
実験例10〜13では、下記の反応式で示された反応を行った。
【0089】
【化9】

【0090】
(工程5)
アルゴン雰囲気下で、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(7)(0.191g,0.5mmol)とp−トルエンスルホニルヒドラジド(8)(0.114g,0.61mmol)とを含むエタノール(4mL)溶液を、60℃で1時間攪拌した。この反応溶液を室温まで冷却後、溶媒を留去し、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(9)を得た。
【0091】
(工程6)
アルゴン雰囲気下で、工程5で得られた(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(9)のメタノール(2.5mL)/エタノール(2.5mL)混合溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)(0.157g,2.5mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加えた後、酢酸エチル(40mL×3回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=19:1)により精製することにより、(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(10)の白色固体(133mg,収率72%)を得た。
【0092】
(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(10)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ6.80(ddd,1H,J=8.1Hz,8.1Hz,2.0Hz),6.67(ddd,1H,J=8.1Hz,8.1Hz,1.5Hz),4.09(q,2H,J=7.0Hz),4.00(ddd,1H,J=10.9Hz,3.8Hz,2.2Hz),3.37(t,1H,J=11.0Hz),3.09−3.01(m,2H),2.00−1.94(m,2H),1.79−1.71(m,5H),1.51−1.25(m,7H),1.17−0.85(m,10H).
【0093】
実験例11〔工程5、及び工程6について(II)〕
【0094】
(工程5)
アルゴン雰囲気下で、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(0.096g,0.25mmol)(7)とp−トルエンスルホニルヒドラジド(8)(0.068g,0.37mmol)とを含むエタノール(2mL)溶液を、60℃で1.5時間攪拌した。この反応溶液を室温まで冷却後、溶媒を留去し、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(9)を得た。
【0095】
(工程6)
アルゴン雰囲気下で、工程5で得られた(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(9)のテトラヒドロフラン(3mL)/エタノール(0.5mL)混合溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)(0.106g,2.8mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に0.5N塩酸(10mL)を加えた後、酢酸エチル(25mL×3回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより、5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(4−プロピルシクロヘキシル)ピラン(10)の白色固体(77mg,収率83%)を得た。
【0096】
実験例12〔工程5、及び工程6について(III)〕
実施例12では、工程5と工程6を一工程で実施した例である。
【0097】
(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(7)(0.181g,0.50mmol)と、p−トルエンスルホニルヒドラジド(8)(0.101g,0.54mmol)と、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)(0.150g,2.5mmol)とを含むメタノール(2.5mL)/エタノール(2.5mL)混合溶液を、60℃で12時間攪拌し、室温まで冷却した。
反応終了後、この反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(30mL×3回)で抽出し、有機層(酢酸エチル層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸ナトリウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=19:1)により精製することのより、(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(10)の白色固体(54.0mg,収率29%)を得た。
【0098】
実験例13〔工程5、及び工程6について(IV)〕
【0099】
(工程5)
窒素雰囲気下で、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン(7)(26.9g,71mmol)とp−トルエンスルホニルヒドラジド(8)(22.3g,0.12mol)とを含むエタノール(400mL)/クロロホルム(200mL)混合溶液を、60℃で5時間攪拌した。この反応溶液を室温まで冷却後、溶媒を留去し、(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(9)を得た。
【0100】
(工程6)
窒素雰囲気下で、工程5で得られた(2R,5S)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン−4−オン=p−トルエンスルホニルヒドラゾン(9)のメタノール(280mL)/エタノール(280mL)/テトラヒドロフラン(140mL)混合溶液に、塩化亜鉛(亜鉛化合物)(24.5g,0.18mol)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)(21.3g,0.34mol)を加え、50℃で12時間攪拌した。
反応終了後、この反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500mL)を加えた後、ヘキサンで抽出し、有機層(ヘキサン層)を得た。得られた有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(700mL)で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥した有機層から硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣を得た。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製することにより、(2R,5R)−5−(4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェニル)−2−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)テトラヒドロピラン(10)の白色固体(7.8g,収率30%)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の新規な4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体(6)は、液晶組成物として有用なテトラヒドロピラン誘導体(10)の原料として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(6)で表される4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体。
【化1】

(上記式中、R、R、R、RおよびRは各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフッ素原子を示す。Rは炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。Yはハロゲン原子を示す。)
【請求項2】
が炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である請求項1に記載の4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体。
【請求項3】
が炭素数1〜4のアルコキシ基である請求項1又は2に記載の4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体。
【請求項4】
およびRがフッ素原子であり、Rがエトキシ基であり、RおよびRが水素原子であり、Rが4−プロピルシクロヘキシル基である、請求項1から3のいずれかに記載のテトラヒドロピラン−4−オン誘導体。
【請求項5】
が臭素原子である請求項1から4のいずれかに記載の4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体。
【請求項6】
下記一般式(4)で表される5−ハロテトラヒドロピラン−4−オン誘導体に、
【化2】

(上記式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を示す。Yはハロゲン原子を示す。)
下記一般式(5)で表されるフェニルグリニヤール試薬を反応させることを特徴とする、
【化3】

(上記式中、R、R、R、RおよびRは各々独立に水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフッ素原子を示す。Yは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)
下記一般式(6)で表される4−ヒドロキシテトラヒドロピラン誘導体の製造方法。
【化4】

(上記式中、R、R、R、R、R、RおよびYは上記と同じ内容を示す。)

【公開番号】特開2011−136924(P2011−136924A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296719(P2009−296719)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000173762)公益財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】