説明

4−ヒドロキシベンゾモルファン

【課題】4−ヒドロキシベンゾモルファン置換体の医薬利用の提供。
【解決手段】3位のカルボキサミド又はチオカルボキサミドを含む4−ヒドロキシベンゾモルファンは、オピオイド受容体により仲介される反応を変化させることによる疾患又は病態の治療方法。
【効果】鎮痛薬、下痢止め薬、抗痙攣薬、鎮咳薬、抗コカイン、及び抗薬物治療として有用である。さらに、疾患又は病態が、痛み、痒み、下痢、過敏性腸症候群、胃腸の運動障害、肥満、呼吸障害、痙攣、咳、痛覚過敏及び薬物中毒症状等の改善に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
《関連出願の相互参照》
本出願は、2004年11月5日出願の米国仮出願第60/625348号の優先権を請求しており、全開示が参照により本明細書に組み込まれている。
本発明は、3位のカルボキサミド又はチオカルボキサミドで置換された4−ヒドロキシベンゾモルファンに関する。化合物を、鎮痛薬、下痢止め薬、抗痙攣薬、鎮咳薬、抗コカイン、及び抗薬物治療として有用である。
【背景技術】
【0002】
1805年のモルヒネの単離以来、オピエイトは大きな研究の対象とされており、そしてオピエイト又はオピエイト様の活性を有する何千もの化合物が確認されている。鎮痛を引き起こすために使用する化合物(例えば、モルヒネ)及び薬物嗜癖を治療するために使用する化合物(例えば、ナルトレキソン及びシクラゾシン)を含む多くのオピオイド受容体に相互作用する化合物は、人間の治療に利用されている。ベンザゾシン及びモルヒネのクラス中のほとんどすべての治療上の有用なオピオイドは、2,6−メタノ−3−ベンザゾシン(例えば、シクラゾシン及びEKC(エチルケトシクラゾシン))に使用されるナンバリングシステムの8番目に位置するフェノール水酸基、及びモルフィナン(例えば、モルヒネ)に使用されるナンバリングシステムの3番目に位置するフェノール水酸基を有する。
【化1】

【0003】
本発明の前記化合物はモルフィナンのフラン環を有していないが、モルフィナンのナンバリングシステムが使用されるであろう。
【化2】

2,6−メタノ−3−ベンザゾシンも、ベンゾモルファンとして知られており、そしてこの専門用語は本明細書において同義的に使用されるであろう。
【0004】
Wentlandら[BioOrg.Med.Chem.Lett.11,623−626(2001)及びBioOrg.Med.Chem.Lett.11,1717−1721(2001)]の刊行物まで、70年間の当技術分野で画一的な経験により、フェノール性3−ヒドロキシ基の除去又は置換が薬理的不活性化合物をもたらした。
【発明の概要】
【0005】
3−ヒドロキシ基を、多くの、小さい、極性のある、中性の残基、例えばカルボキサミド及びチオカルボキサミド基により置換する際に、オピオイド受容体に驚くべき親和性をもつ化合物を生成するために隣接4位をヒドロキシル基で置換することがある。従って、本発明の化合物は、鎮痛薬、かゆみ止め薬、下痢止め薬、抗痙攣薬、鎮咳薬、食欲抑制剤、及び抗肥満薬、並びに痛覚過敏、薬物中毒、呼吸障害、運動障害、痛み(神経障害性の痛みを含む)、過敏性腸症候群及び胃腸運動異常への治療として有用である。
【0006】
或る態様において、本発明は式(I)で表される化合物に関し、式の化合物は、
【化3】

(式中、
Aは、−C(=O)NH及び−C(=S)NHから選択され;
及びR2aは共に水素原子であるか、又は、R及びR2aは一緒に0であり;Rは、水素原子、より低いアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、ベンジル基及びヒドロキシアルキル基から選択され;Rは、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、より低いアルコキシ基、C−C20のアルキル基及びヒドロキシ基又はカルボニル基で置換されたC−C20のアルキル基から選択され;R11は、水素原子であり;R12は、水素原子、ヒドロキシ基、より低いアルコキシ基、及びNR1314から選択され、又は、R11及びR12一緒になって、カルボニル又はビニル置換基を形成し;R13及びR14は、水素原子及びC〜C炭化水素から独立して選択され;そして、破線は、任意の二重結合を示している)である。
【0007】
その他の態様において、本発明は、オピオイド受容体により仲介される反応を変化することにより疾患又は状態を治療する方法に関する。前記方法は、式(I)の化合物をオピオイド受容体に接触させることを含む。本発明の化合物による治療に敏感に反応する疾患及び状態は、痛み、痒み、下痢、過敏性腸症候群、胃腸運動異常、肥満、呼吸障害、痙攣、咳、痛覚過敏及び薬物中毒を含む。本明細書において使用される薬物中毒は、アルコール、ニコチン、アヘン及びコカイン中毒を含む。前記化合物も、免疫抑制剤及び抗炎症薬として、及び虚血性障害(及び心臓保護)を減らすために、学習及び記憶力を改善するために、及び尿失禁を治療するために有用であることがあると文献において証明されている。
【発明の詳細な説明】
【0008】
SARの長年の研究から、モルフィナン及びベンゾモルファンがオピエイト受容体の特異的な部位と相互作用することが知られている。フェノール性ヒドロキシル基以外の官能基へのこの部位の寛容の以前の調査は、オピオイド結合の完全又はほぼ完全な喪失と、ほぼ一様になっている。ヒドロキシル基を種々のバイオアイソスターの1つに置き換えることができることを、我々は以前に報告(WO02/36573)している。かなり広範囲の第1及び第2カルボキサミド、並びにカルボキシエート、アミノメチル、ヒドロキシメチル及びジヒドロイミダゾリルさえも、25ナノモル未満の所望の範囲での結合を示すが、最適な活性をカルボキサミド基、チオカルボキサミド基、ヒドロキシアミジノ基、又はホルムアミド基で観察した。4位のヒドロキシル基及び3位のバイオアイソスター「A」を有するベンゾモルファンが驚くべきレベルのオピオイド活性をもっていることを我々は現在発見している。
【0009】
ベンゾモルファン及びモルフィナンのフェノール性3−ヒドロキシル官能価は、WO02/36573及びWO2004/007449で明記された簡単な、柔軟な、及び便利なルートによりアミドへ化学的に転換することができる。そして、チオカルボキサミド、ヒドロキシアミジノ及びホルムアミド化合物も、これらの刊行物で明記されたように容易に合成される。好ましい残基Aは、−C(=O)NH及びC(=S)NHである。
【0010】
μ、δ及びκアゴニストである化合物は鎮痛作用を示し、選択μアゴニストである化合物は下痢止め作用を示し、そして運動障害を治療するのに有用であり、μアンタゴニスト及びκアゴニストはヘロイン、コカイン、アルコール及びニコチン中毒を治療するのに有用であり、κアゴニストは、また抗かゆみ剤であり、そして痛覚過敏を治療するのに有用であることが、当技術分野で公知である。一般に、モルフィナンの右旋性異性体は、鎮咳薬及び抗痙攣薬として有用である。
【0011】
公知の高親和性を有する典型的なオピオイド受容体リガンドは、以下のチャートで示される。チャートの化合物中の
【化4】

による
【化5】

への置換は、オピオイド受容体への強い親和性を示す化合物を生成する。
【化6】

【0012】
他のオピオイド受容体は、Aldrich,J.V.“Analgesics”in Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery,M.E.Wolff ed.,John Wiley & Sons 1996,pages 321−44において報告され、それらの開示は、本明細書の参照文献においてされている。
【0013】
本発明の化合物の親和性は、Wentlandら[BioOrg.Med.Chem.Lett.9.183−187(2000)]により決定される。抗侵害受容(antinociceptive)活性は、Jiangら[J.Pharmacol.Exp.Ther.264,1021−1027(1993),page 1022]で明記された方法により、又はNeumeyerら[J.Med.Chem.46,5162(2003)]で明記された方法により評価される。水酸基をA基によって置換及びヒドロキシル基をA基の隣りに導入している公知化合物の一連の類似体における式(I)の化合物の受容体結合を、我々は調査している。そのデータは、表1、2、3、及び4で示されている。使用された標準データも、表に示されている。インビトロ検査の結果は、インビボの治療有用性の予測として、いわゆる当業者により受け入れられる。
【化7】

【表1】

【化8】

【表2】

【化9】

【表3】

【化10】

【表4】

【定義】
【0014】
本明細書を通じて、用語及び置換基はそれらの定義を維持している。
【0015】
アルキルは、直鎖、分岐、又は環状炭化水素構造及びそれらの組み合わせを含むことを意図している。低級アルキル基は、1〜6の炭素原子のアルキル基を意味する。低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、s−及びt−ブチル基、シクロプロピル基及びシクロブチル基等である。好ましいアルキル基は、C20又はより低いアルキル基である。シクロアルキル基はアルキル基の一部であり、そして3〜8の炭素原子の環状炭化水素を含む。シクロアルキル基としては、例えば、c−プロピル基、c−ブチル基、c−ペンチル基及びノルボルニル等である。
【0016】
アルコキシ基又はアルコキシル基は、酸素を通じて親構造に結合されている、1〜8炭素原子の直鎖、分岐、環状立体配置及びそれらの組み合わせの基を意味する。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピロキシ基及びシクロヘキシロキシ基等である。低級アルコキシ基は、1〜4炭素原子を含んでいる基を意味する。
【0017】
アリール基及びヘテロアリール基は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子から選択される0〜3のヘテロ原子を含んでいる5員又は6員の芳香環又は複素環、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子から選択される0〜3のヘテロ原子を含んでいる二環式の9員又は10員の芳香環又は複素環システム、又は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子から選択される0〜3のヘテロ原子を含んでいる三環式の13員又は14員の芳香環又は複素環システムを意味する。芳香族の6員〜14員の環状炭素としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン及びフルオレンを含み、5員〜10員の芳香族の複素環としては、例えば、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールを含む。
【0018】
アリールアルキル基は、アリール環に結合したアルキル残基を意味する。例えば、ベンジル基及びフェネチル基等である。ヘテロアリールアルキル基は、ヘテロアリール環に結合したアルキル残基を意味する。例えば、ピリジニルメチル基及びピリミジニルエチル基等を含む。
【0019】
複素環基は、1〜2炭素原子を、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素又は硫黄原子により置換されているシクロアルキル基又はアリール残基を意味する。ヘテロアリール基は、一部の複素環を形成する。本発明の範囲内に収まる複素環としては、例えば、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として生じる際に、メチレンジオキシフェニル基を一般に意味する)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等を含む。
【0020】
置換されたアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又は複素環基は、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基又は複素環基を意味しており、それぞれの残基中の3つの水素原子までを、ハロゲン基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、カルボキシ基、カルボアルコキシ基、カルボキサミド、シアノ基、カルボニル基、−NO基、−NR基;アルキルチオ基、スルホキシド基、スルホン基、アシルアミノ基、アミジノ基、フェ
ニル基、ベンジル基、ヘテロアリール基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、又は置換されたフェニル基、ベンジル基、ヘテロアリール基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基又はヘテロアリールオキシ基で置換する。
【0021】
本明細書において記載されているほとんどすべての化合物は、1又はそれより多くの不斉中心を含んでおり、従って、絶対立体化学によって、(R)−又は(S)−として定義されるエナンチオマー、ジアステレオマー及び他の立体異性の形を生ずることがある。本発明は、すべての可能な異性体、ならびにそれらのラセミ体及び純粋な光学体を含むことを意味する。モルフィナン及びベンゾモルファンの左旋性異性体はより強力な抗侵害受容剤であり、右旋性異性体は鎮咳剤又は鎮痙剤として利用することがある。光学活性(R)−およぴ(S)−異性体は、キラルシントン又はキラル剤を使用することにより調整し、又は従来の技術を使用することにより分解することがある。本明細書において記載されている化合物は、オレフィン二重結合又は他の幾何不斉中心を含む場合に、及び明記された他の方法を除いて、化合物はE及びZの両方の幾何異性体を含むことを意図している。同様に、すべての互換異性体を、また含むことを意図している。
【0022】
本明細書において使用され及び医療分野の当業者において理解されるように、本発明に関係する、化合物の列挙は薬剤学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物、クラスレート及び多形体を含む。用語「薬剤学的に許容可能な塩」は、無機酸及び無機塩基並びに有機酸及び有機塩基を含む薬剤学的に許容可能な無毒性の酸又は塩基から調整される塩を意味する。塩を無機酸及び有機酸を含む薬剤学的に許容可能な無毒性の酸から調整することがある。本発明の化合物への適切な薬剤学的に許容可能な酸付加塩は、酢酸、ベンゼンスルホン酸(besylate)、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸及びp−トルエンスルホン酸等を含む。用語「溶媒和物」は、このエスゾピクローン(eszopiclone)の場合において固体状態の化合物であって、適切な溶媒分子を結晶格子中に取り入れていることを意味する。治療のための投与の適切な溶媒は、投与される容量において生理的に許容される。治療のための投与の適切な溶媒としては、例えば、エタノール及び水である。水が溶媒である場合には、溶媒和物は水和物を意味する。一般に、溶媒和物は、適切な溶媒中の化合物を溶解することによって、及び逆溶媒を冷却又は利用することにより溶媒和物を分離することによって形成される。溶媒和物は、典型的には、周囲の条件で乾燥又は共沸している。
【0023】
本明細書で使用される用語「防止する」は、発作を未然に又は緩和するためにあらかじめ薬剤を投与することを意味する。医療分野の当業者(本方法の請求項を導く)は、用語「防止」が完全な用語ではないことを認知している。医療分野なおいて、状態の可能性又は深刻さを実質的に減少するための薬物の予防的な投与を意味することを理解されたい。そして、これは、出願人の請求項を意図する意味である。用語「治療する」は、疾病の予防並びに急性の症状の改善を含む。「治療する」は、症状の改善及び基礎症状のどちらか又は両方を意味することに注意されたい。本発明の多くの状態において、オピオイドの投与は、病状に直接的よりも、いくらかの悪性の症状に作用することがあり、症状の改善は、病状の全体的及び所望の改善に導く。
【0024】
本発明は多くの種々の形の実施態様を受け入れることができるが、本発明の好ましい実施態様を示す。しかし、本発明の開示は、本発明の原理の例示として考慮すべきであり、そして図示された実施態様に本発明を制限することを意図するものではないことを理解すべきである。ある請求された属のメンバーが本出願において発明者に特許性がないことを、審査において見つけられることがある。この場合において、出願人のクレームの範囲からの種のその後の除外は、特許手続の不適切な結果であると考えられ、発明者の概念、又は発明の詳細な説明を反映したものではない。発明は、公衆に所持されないすべての種Iのメンバーを包含する。
【略記】
【0025】
以下の略記及び用語は、全体を通して示された意味をもっている。
Ac =アセチル
AcOH =酢酸
BNB =4−ブロモメチル−3−ニトロ安息香酸
Boc =t−ブチルオキシカルボニル
Bu =ブチル
c− =シクロ
DAMGO=Tyr−ala−Gly−NMePhe−NHCHOH
DBU =ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
DCM =ジクロロメタン=塩化メチレン=CHCl
DEAD =ジエチルアゾジカルボキシレート
DIC =ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA =N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMAP =4−N,N−ジメチルアミノピリジン
DMF =N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO =ジメチルスルホキシド
DPPF =1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン
DVB =1,4−ジビニルベンゼン
EEDQ =2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン
EtN =トリエチルアミン
EtOAc=酢酸エチル
Fmoc =9−フルオレニルメトキシカルボニル
GC =ガスクロマトグラフィー
HATU =O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラ
メチルユーロニウムヘキサフルオロフォスフェイト
HOBt =ヒドロキシベンゾトリアゾール
Me =メチル
mesyl=メタンスルホニル
MTBE =メチルt−ブチルエーテル
NMO =N−メチルモルホリンオキシド
PEG =ポリエチレングリコール
Ph =フェニル
PhOH =フェノール
PhN(Tf)=N−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミド
PfP =ペンタフロオロフェノール
PPTS =ピリジニウムp−トルエンスルホネート
PyBroP=ブロモ−tris−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェー

rt =室温
sat’d=飽和した
s− =第二(secondary)
t− =第三(tertiary)
Tf =トリフレート,CFSOO−
TBDMS=t−ブチルジメチルシリル
TFA =トリフルオロ酢酸
THF =テトラヒドロフラン
TMOF =トリメチルオルトギ酸エステル
TMS =トリメチルシリル
tosyl=p−トルエンスルホニル
Trt =トリフェニルメチル(triphenylmethyl)
U69,593=
【化11】

【0026】
「保護する」、「保護しない」及び「保護される」官能基に関する専門用語は、本出願全体において存在する。前記専門用語は、当業者によりよく理解され、一連の試薬での連続処理を必要とする工程の状況において使用される。その状況において、保護基は、ほかの反応であり、反応が好ましくない工程段階中に官能基を覆うために使用される基を意味する。保護基は、その段階での反応を阻止するが、本来の機能性をあらわすために続いて取り除かれることがある。除去又は「脱保護」は、反応又は機能性を妨げる反応終了後に起こる。従って、一連の試薬を明らかにする際に、発明の工程と同様に、当業者は「保護基」として適することになるこれらの基をすぐに想像することができる。その目的に適している基は、化学分野における標準の教科書、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis by T.W.Greene[John Wiley & Sons,New York,1991]において議論され、本明細書において参考のために示されている。
【0027】
以下の実施例は、式(I)を有する本発明の種々の合成を示しており、それらの多くは表において見つけられる。表に記載されている残りの化合物は、同様の方法で調整された。さらに、本発明は、実施例において調整され、又は表において見つけられる化合物に限定されず、そして同様の手段を、式(I)を有する追加化合物を調整するために使用することがある。
【0028】
他の方法で示されない限り、実施例において使用される反応物質及び試薬は、簡単に手に入る材料である。前記材料は、従来の調製方法により調整され又は市販品から簡単に得ることができる。H NMR多重度データを、s(singlet:一重線)、d(doublet:二重線)、t(triplet:三重線)、q(quartet:四重線)、m(multiplet:多重線)及びbr(broad:広範囲)により示す。
【0029】
《実施例1:3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−ナルトレキソン誘導体3の合成》
【化12】

(A)3−カルボキサミド−ナルトレキソン2の合成
ナルトレキソンのトリフレート11を、Wentlandら[(Bioorg.Med.Chem.Lett.9,183−187(2000))]の方法により調整し、カルボキサミド2をアンモニア及びPd(0)リガンドの存在下におけるトリフレート11のPd触媒のカルボニル化、DPPF([1,1’−bis(diphenylphosphino)ferrocene])及びDMSOを必要とするWentlandら[(Bioorg.Med.Chem.Lett.11,623−626(2001);及びBioorg.Med.Chem.Lett.11,1717−1721(2001)]により記載された方法により調整した。
【0030】
(B)3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−ナルトレキソン誘導体3の合成
亜鉛粉(26mg,0.40mmol)を、還流で2(50mg,0.14mmol)の塩酸(37%,0.2mL)及びAcOH(2mL)中溶液に一部分添加した。還流でさらに15分間加熱後、反応を氷/水(10mL)の添加により冷却し、NH/HOで塩基性化(pH=9)し、溶液をEtOAc(3x10mL)で抽出した。有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣をカラム・クロマトグラフィ(SiO,CHCl2,CHOH:NH/HO=15:1:0.01)により精製し、泡(foam)(25mg,50%)として化合物3を得た。H NMR(CDCl)δ13.28(s,1H,4−OH),7.15(d,1H,J=8.1,H−2),6.47(d,1H,J=8.4,H−1),6.10(br,1H,N−H),4.35(br,1H,N−H),4.04(dd,1H,J=1.8,13.5,H−5),3.11(d,1H,J=6),2.99(d,1H,J=5.7),2.94(s,1H),2.86(d,1H,J=6),2.84−2.75(m,2H),2.65−2.61(m,2H),2.17−2.05(m,1H),1.89−1.84(m,2H),0.85(m,1H),0.56−0.50(m,2H),0.13−0.09(m,2H).[α]25=−98.4°(c=0.6,CHCl).MSm/z(ESI)371(MH)。
【0031】
《実施例2:3−メトキシ−4−ヒドロキシ−ナルトレキソン誘導体4の合成》
【化13】

(A)3−メトキシ−ナルトレキソン誘導体12の合成
Nanら[J.Heterocyclic Chem.34,1195−1203(1997)]の手段を使用し、95%水酸化ナトリウム(22mg,0.87mmol)を、室温で、ナルトレキソン1(200mg,0.58mmol)の乾燥DMF(1mL)中溶液に添加した。15分間撹拌後、その溶液を氷浴中で5℃に冷却し、ヨウ化メチル(40μl,99mg,0.70mmol)を添加した。さらに15分間撹拌後、反応溶液を真空中で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO,CHCl:NH/HO=100:1)により精製し、泡(131mg,67%)として誘導体12を得た。H NMR(CDCl)δ6.69(d,1H,J=8.0,H−2),6.61(d,1H,J=8.0,H−1),4.67(s,1H,H−5),3.89(s,3H,3−OCH),3.18(m,1H),3.06(m,2H),2.99(s,1H),2.87(s,1H),2.70(m,1H),2.59(m,1H),2.40(m,2H),2.41(m,2H),2.31(m,2H),2.12(m,2H),1.89(m,2H),1.59(m,1H),0.87(m,1H),0.55(m,2H),0.15(m,2H)。[α]25=−181.7°(c=0.12,CHCl)。MSm/z(ESI)356(MH)。
【0032】
(B)3−メトキシ−4−ヒドロキシ−ナルトレキソン誘導体4の合成
Coopら[J.Med.Chem.42.1673−1679(1999)]の公知の手段の変更を、この生成において使用した。亜鉛粉(114mg,1.72mmol)を、還流で誘導体12(122mg,0.34mmol)の塩酸(37%,0.2mL)及びAcOH(2mL)中溶液に一部分添加した。還流でさらに15分間加熱後、反応を氷/水(20mL)の添加により冷却し、NH/HOで塩基性化(pH=9)し、溶液をEtOAc(3x10mL)で抽出した。有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣をカラム・クロマトグラフィ(SiO,CHCl:CHOH:NH/HO=20:1:0.01)により精製し、泡(85mg,70%)として化合物4を得た。H NMR(CDCl)δ6.67(d,1H,J=8.0,H−2),6.56(d,1H,J=8.0,H−1),6.12(s,1H,4−OH),3.94(d,1H,J=13.0),3.82(s,3H,3−OCH),3.10(m,1H),2.97(m,1H),2.80(m,2H),2.61(m,1H),2.36(m,2H),2.15(m,1H),2.05(m,2H),1.82(m,1H),0.54(m,2H),0.12(m,2H)。[α]25=−96.2°(c=0.5,CHCl)。MSm/z(ESI)358(MH)。
【0033】
《実施例3:3−メトキシ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−モルヒネ誘導体7の合成》
【化14】

Coopら[(J.Med.Chem.42,1673−1679(1999)及びHeterocycles 50,39−42(1999))]の手段を使用し、n−ブチルリチウム(ヘキサン中で1.52M,1.6mL,2.50mmol)を、−78℃でTHF中のコデインの溶液(150mg,0.501mmol)に添加した。−78℃で1時間撹拌後、少し黄色の溶液を室温に温め、その後20分間撹拌した。反応を水(10mL)でクエンチした。混合物を3回クロロホルムで抽出した。混合された有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び濃縮し、固体残渣を得た。固体残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(CHCl:MeOH:NHOH15:1:0.1)により精製し、白色の泡(114mg,0.381mmol,76%)としてデヒドロ化合物7を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ6.68(dd,1H,J=10.0,2.0Hz),6.4(d,1H,J=8.0Hz),6.55(d,1H,J=8.5Hz),6.00(bs,1H),5.89(dd,1H,J=10.0,3.0Hz),4.26(d,1H,J=15.5Hz),3.81(s,3H),3.22(m,1H),3.02(d,1H,J=18.5Hz),2.89(s,1H),2.65(m,1H),2.54(m,1H),2.43(s,3H),2.38(d,1H,J=15.0Hz),2.07(m,1H),1.90(m,2H);13CNMR(125MHz,CDCl)δ199.38,149.53,144.91,144.58,130.75,130.18,122.86,118.10,108.71,55.93,55.80,48.88,47.02,46.95,42.52,40.47,36.19,24.32;MS(ESI)m/z300(M+H);分析計算値C1821NO・0.5HO:C70.11,H7.19,N4.54。実測値:C69.94,H6.87,N4.38。
【0034】
《実施例4:3−メトキシ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−7,8−ジヒドロ−モルヒネ誘導体8の合成》
【化15】

n−ブチルリチウム(ヘキサン中で1.52M,1.6mL,2.50mmol)を、−78℃でTHF中のコデインの溶液(150mg,0.501mmol)に添加した。−78℃で1時間撹拌後、少し黄色の溶液を室温に温め、その後20分間撹拌した。反応を水(10mL)でクエンチした。混合物を3回クロロホルムで抽出した。混合された有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び濃縮し、固体残渣を得た。固体残渣を、AcOH(10mL)に溶解し、20時間、水素雰囲気(30psi)中で、10%Pd/C(54mg)と撹拌した。反応混合物を濾過及び濃縮し、真っ白でない残渣を得た。その残渣は、フラッシュクロマトグラフィー(CHCl:MeOH:NHOH14:1:0.1)により精製し、白色固体(125mg,0.415mmol,83%)として化合物8を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ6.67(d,1H,J=8.0Hz),6.60(d,1H,J=8.0Hz),6.09(s,1H),4.23(dd,1H,J=13.5,2.5Hz),3.83(s,3H),2.98(d,1H,J=18.5Hz),2.66(m,1H),2.44(m,2H),2.42(s,3H),2.24(m,3H),2.06(m,1H)1.86(m,3H),1.69(m,2H);MS(ESI)m/z302(M+H);分析計算値C1823NO・0.5HO:C69.65,H7.79,N4.51。実測値:C70.04,H7.68,N4.39。
【0035】
《実施例5:3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−ヒドロコドン誘導体17の合成》
【化16】

(A)モルヒネ−3−カルボニトリル誘導体13の合成
モルヒネ−3−トリフレートを、Wentlandら[(J.Med.Chem.3,3558−3565(2000))]に記載された手段により調整し、その後、(420mg,1.007mmol)となるように、窒素雰囲気中でシアン化亜鉛(354mg,3.022mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)(116mg,0.101mmol)とともに乾燥したフラスコに添加した。その後、フラスコをコンデンサーに取り付け、セプタムで密封し、真空にし、アルゴンで真空を元に戻すことを5サイクル行った。乾燥DMF(2.0mL)をシリンジにより添加し、得られる混合物を20時間、120℃で撹拌した。その後、反応を25℃に冷却し、EtOAc(30mL)で希釈し、飽和重炭酸塩溶液で1回洗浄し、水で2回洗浄し、ブラインで1回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過及び濃縮し、固体残渣を得た。固体残渣をフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:MeOH:NHOH 30:1:0.1)により精製し、白色固体(195mg,0.663mmol,66%)として13を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.20(d,1H,J=8.1Hz),6.68(d,1H,J=8.1Hz),5.71(m,1H),5.30(m,1H),5.02(m,1H),4.24(bs,1H),3.38(m,1H),3.12(d,1H,J=19.8Hz),2.68(m,3H),2.44(s,3H),2.33(m,2H),2.10(m,1H),1.85(m,1H);MS(ESI)m/z295(M+H);分析計算値C1818・0.125HO:C72.89,H6.20,N9.44。実測値:C72.74,H6.14,N9.28。
【0036】
(B)7,8−ジヒドロ−モルヒネ−3−カルボニトリル誘導体14の合成
化合物13の溶液(81mg,0.28mmol)及び5mLメタノール中の10%Pd/Cを、4時間、室温で、圧力40psi中で水素化した。反応混合物をセライトで濾過し、溶媒を除去し泡(81mg;100%)として14を得た。HNMR(CDCl)δ7.20(d,1H,J=8.1Hz),6.69(d,1H,J=8.1Hz),4.7(s,1H),3.12−3.09(m,1H),3.0(d,1H,J=19.5Hz),2.55(m,1H),2.44(m,1H),2.4(m,1H),2.35(s,3H),2.25(m,2H),2.1(dd,1H,J=4.2,12.0),1.94−1.84(m,2H),1.55(m,1H),1.4(m,1H))。[α]25=−50.6°(c=0.64,CHCl)。MSm/z(ESI)297(MH)。
【0037】
(C)ヒドロコドン−3−カルボニトリル誘導体15の合成
塩化オキサリル(41.9μl,0.47mmol)を、−78℃、アルゴン中で1mL無水CHCl中で溶解した。その後、乾燥DMSO(66.9μl,0.95mmol)を添加した。反応混合物を5分間撹拌し、14の乾燥CHCl1mL中溶液(70mg,0.24mmol)を、シリンジにより添加した。混合物を、−78℃で20分間撹拌し、164μl EtNを反応混合物に添加し、室温に温めた。その混合物を、水(10mL)及びCHCl(10mLx3)に分離した。混合された有機相を乾燥(MgSO)し、その後真空中で濃縮した。得られる化合物をフラッシュカラム(silica gel,CHCl:CHOH:NH/HO=20:1:0.01)により精製し、泡として63.7mg(92%)15を得た。HNMR(CDCl)δ7.28(d,1H,J=8.1Hz),6.84(d,1H,J=8.1Hz),4.83(s,1H),3.24(t,1H,J=2.4Hz),3.1(d,1H,J=19.5Hz),2.66(m,1H),2.61(dt,2H,J=2.4,5.7Hz),2.46(m,1H),2.44(s,3H),2.33(m,1H),2.1(m,1H),1.92−1.87(m,1H),1.75(m,1H),1.18(m,1H))。[α]25=−64.4°(c=0.87,CHCl)。MSm/z(ESI)295(MH)。
【0038】
(D)3−カルボキサミド−ヒドロコドン誘導体16の合成
15(72mg,0.25mmol)及びKOHのt−BuOH(10mL)中溶液を、還流で加熱し、2時間撹拌した。冷却後、反応混合物をセライトで濾過し、濾液を濃縮した。残渣をフラッシュカラム(silica gel,CHCl:CHOH:NH/HO=20:1:0.01)により精製し、泡として、64.9mg(85%)16を得た。HNMR(CDCl)δ7.77(d,1H,J=8.1Hz),7.46(s,1H),6.82(d,1H,J=8.1Hz),5.89(s,1H),4.80(s,1H),3.2(dd,1H,J=2.7,6.0Hz),3.1(d,1H,J=19.5Hz),2.66(m,1H),2.62(m,2H),2.46(m,1H),2.44(s,3H),2.33(d,1H,J=5.4Hz),2.1(m,1H),1.92−1.87(m,1H),1.75(m,1H),1.18(m,1H))。[α]25=−96.6°(c=0.23,CHCl)。MSm/z(ESI)313(MH
【0039】
(E)3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−ヒドロコドン誘導体17の合成
16(46mg,0.15mmol)、NHCl(78.9mg,0.88mmol)、亜鉛粉(57.3mg,0.88mmol)及びEtOH(95%,15mL)の混合物を4時間還流で加熱した。冷却後、混合物を濾過し、固体をNH/HO(2mL)で洗浄した。混合された濾液及び洗液を濃縮し、CHCl(10mLx3)で抽出した。有機抽出液を乾燥(MgSO)し、濃縮した。残渣をカラム・クロマトグラフィ(SiO,CHCl:CHOH:NH/HO=10:1:0.01)により精製し、泡として29mg(63%)17を得た。H NMR(CDCl3)δ13.1(s,1H),7.12(dd,1H,J=1.2,8.1Hz),7.46(s,1H),6.54(d,1H,J=8.1Hz),6.02(br,2H),4.35(d,1H,J=13.5Hz),2.99(m,2H),2.92(m,1H),2.7(dd,1H,J=4.7,13.9Hz),2.46(m,2H),2.4(s,3H),2.24(m,2H),1.98(m,1H),1.87(m,1H),1.6(m,1H))。[α]25=−25.9°(c=0.7,CHCl)。MSm/z(ESI)315(MH)。
【0040】
《実施例6:3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−6α−ヒドロキシ−ナルブフィン誘導体22a及び3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−6β−ヒドロキシ−ナルブフィン誘導体22b》
【化17】

(A)ナルブフィン−3−トリフレート18の合成
ナルブフィンの分散のために、塩酸塩(714mg,1.812mmol)のCHCl(30mL)に0℃でトリエチルアミン(630μL,4.53mmol)を添加し、その後に、1部分のPhN(Tf)(654mg,1.812mmol)を添加した。混合物を室温に温めたまま放置し、一晩撹拌した。溶媒を減圧下で取り除き、残渣を6N NHOH溶液(50mL)及びCHCl(3x50mL)に分配した。CHCl抽出物を混ぜ合わせ、容量を減圧下で50mLに減らした。有機相を、飽和した水性のNaCO溶液(3x50mL)で洗浄し、その後、乾燥(NaSO)及び濃縮し、18(886mg,1.812mmol,100%)を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ6.95(d,1H,J=8.5Hz),6.69(d,1H,J=8.5Hz),4.97(broad,1H),4.75(d,1H,J=5.0Hz),4.19(m,1H),3.12(d,1H,J=19.0Hz),2.85(d,1H,J=6.0Hz),2.66(dd,1H,J=19.0,6.0Hz),2.52−2.44(m,4H),2.25(td,1H,J=12.5,5.0Hz),2.17(td,1H,J=12.5,3.0Hz),2.07(m,1H),1.98−1.81(m,3H),1.73−1.44(m,5H),1.26(m,1H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ149.5,134.4,134.3,130.2,121.8,119.6,92.9,69.8,66.6,62.7,60.8,47.0,43.4,33.8,32.8,27.6,27.1,26.9,23.8,23.7,18.9;MS(ESI)m/z490(M+H)
【0041】
(B)ナルブフィン−3−カルボニトリル誘導体19の合成
化合物18(886mg,1.812mmol),Zn(CN)(638mg,5.436mmol)及びPd(PPH(419mg,0.362mmol)を、窒素雰囲気中で、コンデンサーを備えた3つ口フラスコに添加した。フラスコを密封し、グローブボックスから取り除いた。無水DMF(6mL)をセプタムを介して注入した。混合物を、135℃で、24時間加熱した。DMFを減圧下で取り除き、残渣を、飽和した水性のNaHCO溶液(100mL)及び酢酸エチル(3x100mL)に分配した。有機抽出物を混ぜ合わせ、乾燥(NaSO)及び濃縮し、粗製生成物を得た。その生成物をフラッシュクロマトグラフィー[(ヘキサン/酢酸エチル/水酸化アンモニウム(1:1:0.01)]により精製し、白色の泡(549mg,1.50mmol,83%)として化合物19を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.25(d,1H,J=8.0Hz),6.73(d,1H,J=8.0Hz),4.77(d,1H,J=5.0Hz),4.23(m,1H),3.15(d,1H,J=19.5Hz),2..86(d,1H,J=6.0Hz),2.69(dd,1H,J=19.5,6.0Hz),2.49(m,4H),2.26(td,1H,J=13.0,5.0Hz),2.15(td,1H,J=11.5,3.0Hz),2.06(m,3H),1.90(m,1H),1.84(m,2H),1.65(m,3H),1.47(m,1H),1.41(m,1H),1.18(m,1H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ161.3,139.8,131.7,131.3,119.1,115.8,92.5,90.4,69.5,66.4,62.3,60.6,46.1,43.0,33.5,32.8,27.7,26.9,26.7,24.2,23.4,18.7;MS(ESI)m/z367(M+H)
【0042】
(C)6−オキソ−ナルブフィン−3−カルボニトリル誘導体20の合成
CHCl(5mL)中の塩化オキサリル(143μL,1.64mmol)を、窒素雰囲気下で、−78℃に冷却し、無水DMSO(232μL,3.27mmol)をシリンジにより添加した。2分後、乾燥CHCl(5mL)中の化合物19(335mg,0.915mmol)を添加し、撹拌を15分間続けた。乾燥トリエチルアミン(570μL,4.097mmol)を添加し、撹拌を5分間続けた。室温に温めた後、反応混合物を飽和した水性のNaHCO溶液(50mL)及びCHCl(3x50mL)で分配した。組み合わされた有機層を、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)及び濃縮し、粗製生成物を得た。粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー[CHCl/MeOH(25:1)]により精製し、化合物20(308mg,0.846mmol,92%)を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.28(d,1H,J=8.0Hz),6.80(d,1H,J=8.0Hz),5.13(broad,1H),4.81(s,1H),3.19(d,1H,J=19.5Hz),3.03(td,1H,J=14.5,6.0Hz),2.97(d,1H,J=6.0Hz),2.67(dd,1H,J=19.5,6.0Hz),2.60−2.48(m,4H),2.44(td,1H,J=12.5,5.5Hz),2.32(m,1H),2.16−2.02(m,6H),1.70(m,2H),1.53(m,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ206.2,159.2,138.8,132.0,129.4,119.5,115.0,92.7,91.2,69.8,62.2,60.3,50.0,43.2,35.9,33.5,31.2,30.6,26.9,26.7,24.0,18.7;MS(ESI)m/z365(M+H)
【0043】
(D)3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−6−オキソ−ナルブフィン誘導体21の合成
亜鉛粉(900mg,13.85mmol)、氷酢酸(5mL)及び濃塩酸(0.69mL,8.3mmol)を、化合物20(252mg,0.692mmol)を含むフラスコに添加した。125℃で3時間還流後、反応混合物を0℃に冷却し、濃NHOH溶液を添加しpHを10に調整した。スラリー混合物を、CHCl(3x100mL)で抽出した。有機抽出物を混ぜ合わせ、乾燥(NaSO)及び濃縮し、253mgの粗製生成物を生成した。フラッシュクロマトグラフィーにより、化合物21(187mg,0.487mmol,71%)を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ13.14(s,1H),7.13(d,1H,J=8.0Hz),6.56(d,1H,J=8.0Hz),6.30−5.40(broad,2H),4.65(s,1H),4.04(dd,1H,J=11.0,2.0Hz),3.02(m,1H),2.94(d,1H,J=13.0Hz),2.89(m,1H),2.86(m,1H),2.50(m,3H),2.45(m,1H),2.16−1.71(m,9H),1.68(m,3H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ212.5,173.3,162.0,144.3,127.2,124.9,117.5,111.0,68.9,60.4,59.9,45.6,44.7,43.9,37.7,33.8,32.7,32.1,27.0,26.8,26.7,18.7;IR(film)νmax3354,2928,1709,1653,1617,1429cm−1;MS(ESI)m/z385(M+H)
【0044】
(E)3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−6α−ヒドロキシ−ナルブフィン誘導体22a及び3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−6β−ヒドロキシ−ナルブフィン誘導体22bの合成
化合物21(115mg,0.3mmol)をMeOH(2mL)に溶解し、0℃に冷却した。NaBH(46mg,1.2mmol)を一部分添加した。反応を0℃、2時間撹拌し、飽和水性NHCl溶液の添加によりクエンチした。MeOHを減圧下で取り除き、濃縮NHOH溶液を添加し、pHを10に調整した。水相をCHCl(4x50mL)で抽出し、その有機相を混ぜ合わせ、乾燥(NaSO)及び濃縮し、97mgの粗製生成物を生成した。フラッシュクロマトグラフィー[CHCl/MeOH/NHOH(10:1:0.1)]により、異性体22a(31.8mg,0.082mmol,17%)及び22b(40.7mg,0.105mmol,35%)を得た。22a:H NMR(500MHz,CDCl)δ13.43(s,1H),7.12(d,1H,J=8.0Hz),6.62(d,1H,J=8.0Hz),6.30−5.30(broad,2H),4.60(s,1H),4.18(s,1H),3.47(m,1H),3.01(d,1H,J=19.0Hz),2.95(td,1H,J=19.0,6.0Hz),2.66(d,1H,J=5.5Hz),2.47−2.37(m,4H),2.10−1.85(m,10H),1.66−1.47(m,4H),1.27(m,1H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ173.6,161.9,144.3,131.4,123.9,118.4,110.5,69.5,67.8,60.8,60.4,44.4,39.5,35.2,33.7,33.1,27.7,27.00,26.96,26.93,26.7,18.7;IR(film)νmax3445(broad),2929,1653,1425cm−1;MS(ESI)m/z387(M+H).22b:HNMR(500MHz,CDCl)δ13.10(s,1H),7.15(d,1H,J=8.0Hz),6.60(d,1H,J=8.0Hz),6.30−5.30(broad,2H),4.46(s,1H),3.53(m,1H),3.38(m,1H),3.00(d,1H,J=19.5Hz),2.84(td,1H,J=19.5,6.5Hz),2.71(d,1H,J=6.0Hz),2.46−2.38(m,4H),2.07−1.49(m,14H),1.34(d,1H,J=5.0Hz);13C NMR(125MHz,CDCl)δ173.6,161.0,143.9,127.5,124.5,117.2,110.3,68.5,66.7,59.7,59.6,43.6,41.4,37.3,33.1,31.6,29.8,29.7,26.2,25.9(2C),17.8;IR(film)νmax3410(broad),2929,1653,1617,1425cm−1;MS(ESI)m/z387(M+H)
【0045】
《実施例7:3−カルボキサミド−4−ヒドロキシ−ナルトレキソン誘導体24の合成》
【化18】

325メッシュ亜鉛粉(1679mg,25.83mmol)を、ニトリル23(Tetrahedron Letters39(19),2907−2910(1998)Kubotaらの方法を使用)(452mg,1.29mmol)を含む50mLフラスコに添加し、その後に氷酢酸及び12M塩酸1.29mLを添加した。コンデンサーを取り付け、その後反応混合物を125℃で3時間還流した。亜鉛ボールは、フラスコの底で形成した。反応を0℃に冷却し、濃縮NHOHを滴下で添加し、pHを約10に調製した。白色スラリーの形成を観察した。混合物を塩化メチレン(100mL×3)で抽出した。その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥及び濃縮し、淡黄色の泡(484mg)を得た。その泡状の物質をフラッシュクロマトグラフィー(25:1:0.1 CHCl:MeOH:NHOH)の使用により生成し、白色の泡(264mg,0.713mmol,55%)として3及び白色の固体(100mg,0.281mmol,22%)として24を得た。mp268−270℃;H NMR(500MHz,CDCl)δ12.99(s,1H),7.15(d,1H,J=8.0Hz),6.60(d,1H,J=8.0Hz),6.60−5.40(bs,2H),4.52(bs,1H),3.11(m,1H),3.00−2.80(m,3H),2.60(m,1H),2.31(m,2H),2.10−1.70(m,4H),1.60−1.35(m,5H),1.18(m,1H),0.83(m,1H),0.50(m,2H),0.10(m,2H);MS(ESI)m/z300(M+H);分析計算値C21280.375HO:C69.44,H7.98,N7.71実測値:C69.46,H8.11,N7.42.[α]25=−85.0°(c=0.40,CHCl)。
【0046】
《実施例8:3−チオカルボキサミド−4−ヒドロキシ−ナルトレキソン誘導体26の合成》
【化19】

(A)3−カルボニトリル−4−ヒドロキシ−ナルトレキソン誘導体25の合成
325メッシュ亜鉛粉(126mg,1.94mmol)及びアンモニア塩酸塩(148mg,2.77mmol)を、ニトリル23(101mg,0.28mmol)を含む50mLフラスコに添加し、その後4mLのEtOH:HO(20:1)を添加した。コンデンサーを取り付け、その後反応混合物を95℃で3時間還流した。反応を室温に冷却し、セライトケークを通して濾過した。セライトをMeOHで洗浄した。濾過液を濃縮し、その後CHCl(40mL×3)及び40mL水中のNHOH(pH8〜9)で分配した。有機相を混ぜ合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥及び濃縮し、固体(106mg)を得た。その固体をフラッシュクロマトグラフィー(25:1:0.1 CHCl:MeOH:NHOH)の使用により精製し、白色の固体(63mg,0.17mmol,62%)として25を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.25(d,1H,J=9.3Hz),7.40(d,1H,J=7.8Hz),5.12(bs,1H),3.81(d,1H,J=12.6Hz),3.40−2.60(m,6H),2.41(s,2H),2.30−1.75(m,5H),1.60(m,1H),0.88(m,1H),0.56(m,2H),0.14(m,2H);MS(ESI)m/z300(M+H);[α]25=−64.3(c=0.56°,EtOH)。
【0047】
(B)3−チオカルボキサミド−4−ヒドロキシ−ナルトレキソン誘導体26
ニトリル25(49mg,0.139mmol)と水(2mL)及びエタノール(4mL)中のO,O−ジエチル−ジチオリン酸(475μL,2.78mmol)との混合物を80℃、22時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、飽和NaHCO(20mL)及びCHCl(20mL×3)で分配した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、黄色の固体(56mg)として26を得た。その固体を、フラッシュクロマトグラフィー(40:1:0.1 EtOAc:MeOH:NHOH)を使用して精製し、黄色の泡(36mg,0.093mmol,67%)を得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ12.24(s,1H),7.20−7.06(m,3H),6.59(d,1H,J=8.5Hz),4.72(bs,1H),4.02(d,1H,J=14.0Hz),3.14(m,1H),2.94(m,2H),2.94−2.70(m,2H),2.65(m,1H),2.20−1.70(m,6H),0.87(m,1H),0.55(m,2H),0.12(m,2H);MS(ESI)m/z 300(M+H);分析計算値C2126S0.25HO:C64.51,H6.83,N7.16実測値:C64.50,H6.61,N6.94.[α]25=+85.0°(c=0.20,CHCl)。
【0048】
本明細書で述べられているそれぞれの特許、特許出願、及び参照は、これによって、全体において参照により組み込まれている。
【0049】
典型的な実施態様を例示の目的として示しているので、先の説明及び実施例は、本発明の範囲に限定するとみなされるべきではない。従って、種々の変形例、適応例、代替例は、本発明の精神及び範囲から逸脱しないで当業者に思いつくことがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、
Aは、−C(=O)NH及び−C(=S)NHから選択され;
及びR2aは、共に水素原子であるか、又はR及びR2aは一緒に0であり;
は、水素原子、低級アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、ベンジル基及びヒドロキシアルキル基から選択され;
は、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルコキシ基、C−C20のアルキル基、及びヒドロキシ基又はカルボニル基で置換されたC−C20のアルキル基から選択され;
11は、水素原子であり;
12は、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、及び−NR1314から選択され、
又はR11及びR12は、一緒になってカルボニル又はビニル置換基を形成し;
13及びR14は、独立して、水素原子及びC〜C炭化水素から選択され;そして、
破線は、任意の二重結合を示している)
で表される化合物。
【請求項2】
及びR2aは、水素原子であり;
は、水素原子、シクロプロピル基、及びシクロブチル基、ビニル基及びテトラヒドロフラニル基から選択され;
は、水素原子及びヒドロキシル基から選択され;
11は、水素原子であり;
12は、水素原子及びヒドロキシ基から選択され;又は、
11及びR12は、一緒になって、カルボニル基を形成する
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式:
【化2】

(式中、
及びR2aは、共に水素原子であるか、又は、R及びR2aは一緒に、0であり;Rは、水素原子、低級アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、ベンジル基、及びヒドロキシアルキル基から選択され;
は、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルコキシ基、C−C20のアルキル基及びヒドロキシ基又はカルボニル基で置換されたC−C20のアルキル基から選択され;
11は、水素原子であり;
12は、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、及び−NR1314から選択され、
又は、R11及びR12は一緒になって、カルボニル又はビニル置換基を形成し;
13及びR14は、独立して、水素原子及びC〜C炭化水素から選択され;そして、
破線は、任意の二重結合を示す)
で表される請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
及びR2aは、水素原子であり;
は、水素原子、シクロプロピル基、及びシクロブチル基、ビニル基及びテトラヒドロフラニル基から選択され;
は、水素原子及びヒドロキシル基から選択され;
11は、水素原子であり;
12は、水素原子及びヒドロキシ基から選択され;又は、
11及びR12は一緒になって、カルボニル基を形成する
請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
【化3】

の群から選択される請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式:
【化4】

(式中、
及びR2aは、共に水素原子であるか、又は、R及びR2aは一緒に0であり;
は、水素原子、低級アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、ベンジル基及びヒドロキシアルキル基から選択され;
は、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルコキシ基、C−C20のアルキル基及びヒドロキシ基又はカルボニル基で置換されたC−C20のアルキル基から選択され;
11は、水素原子であり;
12は、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、及びNR1314から選択され;又は、
11及びR12一緒になって、カルボニル又はビニル置換基を形成し;
13及びR14は、独立して、水素原子及びC〜C炭化水素から選択され;そして、
破線は、任意の二重結合を示す)
で表される請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
及びR2aは、水素原子であり;
は、水素原子、シクロプロピル基、及びシクロブチル基、ビニル基及びテトラヒドロフラニル基から選択され;
は、水素原子及びヒドロキシル基から選択され;
11は、水素原子であり;
12は、水素原子及びヒドロキシ基から選択され;又は、
11及びR12は一緒になって、カルボニル基を形成する
請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
オピオイド受容体により仲介される反応を変化させることによる疾患又は病態の治療方法であって、請求項1に記載の化合物を前記オピオイド受容体に接触させることを含む、前記方法。
【請求項9】
前記疾患又は病態が、痛み、痒み、下痢、過敏性腸症候群、胃腸の運動障害、肥満、呼吸障害、痙攣、咳、痛覚過敏及び薬物中毒からなる群から選択される請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2013−67636(P2013−67636A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256445(P2012−256445)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2007−540055(P2007−540055)の分割
【原出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(502263411)レンセラール ポリテクニック インスティチュート (14)
【Fターム(参考)】