説明

4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルおよび金属化合物の組み合わせ物

【課題】水中の材料の保護、材木、材木生産物、生分解性材料およびコーティングの保護の分野における汚損生物に対する保護のための組成物の提供。
【解決手段】汚損生物に対して改良された保護効果を与える4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルまたはその塩、および銅または亜鉛化合物の組み合わせ組成物。CuO、Cu(OH)、CuSO、銅ピリチオン、CuSCN、CuCO、ZnO、ZnCl、ZnSO、ジネブおよび亜鉛ピリチオンから選ばれる1種以上の銅または亜鉛化合物と一緒に、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルまたはその塩の組み合わせ物を、汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で含んでなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚損(fouling)生物に対して改良された保護効果を与える4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルまたはその塩、および銅または亜鉛化合物の組み合わせ物に関する。より具体的には、本発明は、CuO、Cu(OH)、CuSO、銅ピリチオン(pyrithione)、CuSCN、CuCO、ZnO、ZnCl、ZnSO、ジネブ(zineb)および亜鉛ピリチオンから選ばれる1種以上の銅または亜鉛化合物と一緒に、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルまたはその塩の組み合わせ物を、汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で含んでなる組成物、ならびに汚損生物に対する保護材料のためのこれらの組成物の使用に関する。
【0002】
4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル(これ以降、成分Iとして言及される)、およびCuO、Cu(OH)、CuSO、銅ピリチオン、CuSCN、CuCO、ZnO、ZnCl、ZnSO、ジネブおよび亜鉛ピリチオンから選ばれる銅または亜鉛化合物(これ以降、成分IIとして言及される)の組み合わせ物は、汚損生物の防除において相乗効果を有することが、ここに見出された。本明細書で使用されるように、「防除(control)」は、対象物の表面への汚損生物の付着または定着の阻止、対象物の表面に付着される汚損生物の除去、および汚損生物の成長を含むと定義される。
【背景技術】
【0003】
4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルは、軟体動物の防除について特許文献1において開示されている。該化合物は、式:
【0004】
【化1】

【0005】
によって表すことができる。
【0006】
特許文献2は、水中の表面への汚損生物の付着を防ぐために該水中の表面に適用される防汚剤(antifoulant)組成物における4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルの使用を記述している。特許文献3は、汚損生物に対する保護材料のための、ベントキサジン(benthoxazin)、DCOIT、トリルフルアニド(tolylfluanid)およびジクロフルアニド(dichlofluanid)と、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルの組み合わせ物を開示している。
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0,312,723号
【特許文献2】欧州特許第0,746,979号
【特許文献3】WO−03/039256
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
成分IIとしても言及される銅および亜鉛化合物は次のとおりである:
− 成分(II−a):CuOまたは酸化銅(I);
− 成分(II−b):Cu(OH)または水酸化銅(II);
− 成分(II−c):CuSOまたは硫酸銅(II);
− 成分(II−d):銅ピリチオンは、銅リガンド、特にCuまたはCu2+と1種または2種のピリチオン分子の錯体であり、それによって(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナト−O,S)銅(CAS 154592−20−8)またはビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナト−O,S)銅(CAS 14915−37−8)を生成する;
− 成分(II−e):CuSCNまたはチオシアン酸銅;
− 成分(II−f):CuCOまたは炭酸銅;
− 成分(II−g):ZnOまたは酸化亜鉛(II);
− 成分(II−h):ZnCl、または塩化亜鉛(II);
− 成分(II−i):ZnSO、または硫酸銅(II);
− 成分(II−j):ジネブまたは亜鉛エチレンビス(ジチオカルバメート);および− 成分(II−k):亜鉛ピリチオンまたは(ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナト−O,S)−T−4)亜鉛。
【0009】
用語「4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル」または成分(I)が本文中で使用される場合は常に、塩基または塩形態の両方における該化合物を含み、後者は、適当な酸と塩基形態物の反応によって得られる。適当な酸は、例えば、無機酸、例えばハロゲン化水素酸、すなわちフッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスフィン酸など;または有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、(Z)−2−ブテン二酸、(E)−2−ブテン二酸、2−ヒドロキシブタン二酸、2,3−ジヒドロキシブタン二酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチル−ベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸および類似の酸を含む。また、該成分(I)は、溶媒和物、例えば水和物の形態で存在してもよい。
【0010】
成分(II)としての銅および亜鉛化合物は、また、水和物の形態で使用されてもよい。例えば、CuSOは、無水粉末として利用できるが、また例えばCuSO・5HOのような水和形態でも存在する。ZnSOは、一水和物または七水和物の両方として市販されている。CuClは、無水粉末として、かつ二水和物として市販されている。成分(II)の水和形態物は、本文中で使用されるような用語「成分(II)」に含まれると意味される。
【0011】
湿潤または水性環境に曝露される表面または対象物は、水生生物、例えば藻類、真菌類、細菌類、微生物、および水生動物、例えば尾索類、ヒドロ虫類、二枚貝、コケムシ類、多毛類、海綿類、フジツボ類および軟体動物によって容易に群生される。これらの生物は該表面に定着または付着するにつれて、曝露された対象物の価値は減少する。該生物の付着または定着はまた構造物の「汚損」として知られる。対象物の外側のみならず、おそらく内側もまた、劣化するかも知れず、表面は、例えば、平滑な、清潔な、そして流線形の
表面から、粗雑な、汚損された、そして乱流を起こす表面へと変化し、対象物の重量は、生物およびそれらの残滓の沈着によって増加し、そして対象物の近傍は塞がれたり邪魔されるようになることがある。含まれる対象物およびシステムの機能は低下し、そして水性環境の質は悪化する。汚損生物の付着を防除する普通の方法は、防汚剤を含むコーティングによって保護されるように構造物を処理することによる。
【0012】
本発明において請求されるような組み合わせ物は、成分(I)および成分(II)の1種を、汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で含んでなる組成物を表面または対象物に適用することによって、水と常にまたは頻繁に接触している該表面または対象物を、藻類の汚損または付着または定着から保護するために特に適当である。
【0013】
該表面または対象物の例は、例えば、船体、港の設備、桟橋および杭材、乾燥ドック(drying dock)、水門、閘門、係留マスト、ブイ、沖合の石油掘削装置(oil rigging equipment)、ドリリングプラットフォーム(drilling platform)、橋梁、パイプライン、漁網、ケーブル、バラスト水槽、水の消毒体(infested bodies)から水を引き出す船の貯水槽、レクリエーション器具、例えばサーフボード、ジェットスキーおよびウォータースキー、および水と常にまたは頻繁に接触しているすべての他の対象物である。
【0014】
また本発明は、成分(I)および成分(II)の量が、汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で存在する、成分(II)の1種と一緒の成分(I)の組み合わせ物の有効な防汚量を含んでなる組成物を対象物に適用することによって、材料、特に水と頻繁にまたは常に接触している該表面または対象物を保護する方法を提供する。
【0015】
本発明は、さらに、成分(I)および成分(II)の量が、汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で存在する、成分(II)の1種と一緒の成分(I)の組み合わせ物の有効な防汚量を含んでなる組成物を表面に適用することを含む、表面を保護する方法を提供する。本発明の方法の特に重要な使用は、本発明による防汚組成物を船体に適用することを含む、船体の汚損を阻止する方法を含む。船の船体における汚損は、例えば、摩擦抵抗を増大し、それに対応して速度および機動性を減少し、そして燃料消費を増大し、そして汚損の除去に関連する維持費用を増大する。
【0016】
成分(I)および成分(II)の量が、汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で存在する、成分(II)の1種と一緒の成分(I)の組み合わせ物を含んでなる組成物は、例えば、水泳プール、浴槽、冷却水循環サーキット、および種々の機械設備、例えば製造プラントまたはエアコンディショニング装置における工業用浴槽のような構築物であって、これらの機能が汚損生物の存在および/または増殖によって損傷される構築物を保護するために使用することができる。さらなる例は、建築物および建築物の一部、例えば、床、外・内壁または天井、あるいは穴倉、浴室、キッチン、洗濯室などのような湿気を蒙る場所、および汚損の温床(hot−bed)である場所である。汚損は、衛生および美学の観点から問題であるばかりでなく、また該建築物および/または装飾材料が所望されるよりも急速に劣化するので経済的損失も惹起する。
【0017】
本発明の組み合わせ物のその他の応用は、植物プランクトン(双鞭毛藻類および珪藻類)、甲殻類(カニ、小エビ、カイアシ類、異脚類)、ワムシ、多毛類、軟体動物、魚、棘皮動物、有櫛動物および腔腸動物のような水生生物の存在を低下または排除するためのバラスト水の処理または消毒である。
【0018】
また、本発明の相乗的防汚組成物は、種々の応用:
− 工業用水性工程流体、例えば、冷却水、パルプおよび紙粉砕工程水および懸濁液、二
次油回収システム、紡糸用流体、金属作業流体など
− 水性機能流体、例えば、ポリマーエマルジョン、水性ペイントおよび接着剤、ニカワ、澱粉スラリー、増粘剤溶液、ゼラチン、ロウエマルジョン、インク、研摩材、顔料および鉱物スラリー、ゴムラテックス、コンクリート添加剤、ドリリング泥、化粧用品、水性化粧調合物、製薬学的調合物などのタンク中/缶中保護
において使用することができる。
【0019】
用語「汚損生物(fouling organism)」は、様々な種類の表面、特に湿潤または水性環境、例えば海水、淡水、塩気のある水、雨水、そしてまた冷却水、排出水、廃水および汚水中の表面に付着、定着、増殖または接着する生物を含むことが意味される。汚損生物は、藻類、例えば、ミクロ藻類、例えばアンホーラ(Amphora)、アクナンテス(Achnanthes)、ナビクラ(Navicula)、アンフィプロラ(Amphiprora)、メロシラ(Melosira)、コッコネイス(Cocconeis)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロレラ(Chlorella)、ウロトリックス(Ulothrix)、アナバエナ(Anabaena)、フェオダクチルム(Phaeodactylum)、ポルフィリジウム(Porphyridium);マクロ藻類、例えばエンテロモルファ(Enteromorpha)、クラドホラ(Cladophora)、エクトカルプス(Ectocarpus)、アクロケチウム(Acrochaetium)、セラミウム(Ceramium)、ポリシホニア(Polysiphonia)およびホルミジウム種(Hormidium sp.);真菌類;微生物;綱・ホヤ類のメンバー、例えばシオナ・インテスチナリス(Ciona intestinalis)、ジプロソマ・リステリアニウム(Diplosoma
listerianium)およびボトリラス・シュロッセリ(Botryllus schlosseri)を含む、尾索類;クラバ・スクワマタ(Clava squamata)、ヒドラクチニア・エチナタ(Hydractinia echinata)、オベリア・ゲニクラタ(Obelia geniculata)およびツブラリア・ラリンクス(Tubularia larynx)を含む、綱・ヒドロ虫類のメンバー;ミチルス・エヅリス(Mytilus edulis)、クラッソストレア・ビルギニカ(Crassostrea virginica)、オストレア・エヅリス(Ostrea edulis)、オストレア・キレンシア(Ostrea chilensia)、ドレイッセナ・ポリモルファ(Dreissena polymorpha)(ゼブライガイ)およびラサエア・ルブラ(Lasaea rubra)を含む、二枚貝;エレクトラ・ピロサ(Electra pilosa)、ブグラ・ネリチナ(Bugula neritina)およびボウェルバンキア・グラシリス(Bowerbankia gracilis)を含む、コケムシ類;ヒドロイデス・ノルベギカ(Hydroides norvegica)を含む、多毛類;海綿類;およびアルテミア(Artemia)およびツルアシ類(フジツボ)、例えばバラヌス・アンフィトリテ(Balanus amphitrite)、レパス・アナチフェラ(Lepas anatifera),バラヌス・バラヌス(Balanus balanus)、バラヌス・バラノイデス(Balanus balanoides)、バラヌス・ハメリ(Balanus hameri)、バラヌス・クレナタス(Balanus crenatus)、バラヌス・インプロビサス(Balanus improvisus)、バラヌス・ガレアタス(Balanus galeatus)およびバラヌス・エブルネウス(Balanus eburneus)を含む、綱・甲殻類のメンバー;およびエルミニウス・モデスタス(Elminius
modestus)、およびベルカ(Verruca)である。
【0020】
成分(I)および成分(II)の1種の組み合わせ物を含んでなる組成物における成分(I)および成分(II)の1種の相対的割合は、有効成分として成分(I)単独または成分(II)単独のいずれかを含む組成物に比較された場合、汚損生物に対して相乗効果をもたらすそれらの割合である。当業者には理解できるように、該相乗効果は、それに対
して効果が測定される汚損生物の種類および処理される基質(substrate)に応じて、組成物における成分(I)および(II)の種々の割合内で得られるであろう。本出願の教示に基づいて、そのような組み合わせ物の相乗効果の決定は、実験1において記述されるような毒物プレートアッセイ(Poison Plate Assay)の操作にしたがって実施することができる。しかしながら、一般に、ほとんどの汚損生物に対して、組み合わせ物における成分(I)対成分(II)の量の適当な重量割合は、10:1〜1:10の範囲になければならない。特に、この範囲は、8:2〜2:8、より特に、3:1〜1:3または2:1〜1:2である。本発明の組成物における成分(I)対成分(II)のその他の特定の比率は、成分(I)および成分(II)の1種の間で1:1比である。
【0021】
成分(I)および成分(II)の1種の組み合わせ物を含んでなる組成物における各有効成分の量は、相乗効果が得られるように存在することができる。特に、本発明の即使用(ready to use)される組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも1wt%の量において成分(I)を含むことが考えられる。より特に、そのような即使用組成物は、組成物の総重量に対して1wt%〜40wt%の量において成分(I)を含む。該即使用組成物における成分(II)の量は、相乗的防汚効果が得られるように存在することができる。特に、成分(II)の量は、組成物の乾燥物(mass)の総重量に対して1wt%〜20wt%、より特に2wt%〜10wt%の範囲であってもよい。多数の例では、直接使用される防汚組成物は、濃縮液、例えば乳化濃縮液、懸濁濃縮液または溶解濃縮液から、本発明の定義において使用されるような用語・組成物によって包含されることが意図されるそのような濃縮液を、水性または有機媒質により希釈することによって得ることができる。ペイント組成物の形態で使用される濃縮液は、使用直前に噴霧タンク中で即使用混合液に希釈することができる。
【0022】
汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で成分(I)および成分(II)の1種の組み合わせ物を含んでなる組成物は、かくして、防汚組成物の調製において熟練者によって慣用的に用いられるような、湿潤剤、分散剤、固着剤、接着剤、乳化剤などを含む、担体および添加剤と一緒に適当に使用される。本発明の防汚組成物は、調合の技術において既知の適当な物質、例えば、天然または再生鉱物物質、溶媒、分散剤、界面活性剤、湿潤剤、接着剤、増粘剤、結合剤、凍結防止剤、忌避剤、色添加剤、腐食抑制剤、撥水剤、乾燥剤、UV安定剤および他の活性成分をさらに含んでもよい。適当な界面活性剤は、良好な乳化、分散化および湿潤化特性を有する非イオン性、陽イオン性および/または陰イオン性界面活性剤である。用語「界面活性剤」は、また、界面活性剤の混合物を含むと理解できる。
【0023】
汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で成分(I)および成分(II)の1種の組み合わせ物を含んでなる防汚組成物は、すべての既知の方式において、例えば、有効成分(すなわち、成分(I)および成分(II)の1種)の組み合わせ物を、選ばれた担体材料および、適当であれば、他の添加剤、例えば界面活性剤、分散剤、増粘剤、結合剤、色添加剤、腐食抑制剤などとともに、1段階または多段階操作において、均質に、混合、コーティングおよび/または磨砕することによって製造されてもよい。
【0024】
固形調合物、例えばダスト、分散性または流動性粉末のための適当な担体は、有効成分に悪影響を与えないすべての分散剤、例えばクレイ(例えば、カオリン、ベントナイト、酸性クレイなど)、タルク(例えば、タルク粉末、アガルマトライト(agalmatolite)粉末など)、シリカ(例えば、ケイソウ土、無水珪酸、雲母粉末など)、アルミナ、硫黄粉末、活性炭などである。これらの固形担体は、1種でもまた2種以上の種の組み合わせで使用されてもよい。
【0025】
液状調合物のための適当な担体は、有効成分に悪影響を与えないすべての液体、例えば、水、アルコール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、セロソルブ、ジエチレングリコールジメチルエーテルなど)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、灯油など)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルナフタレンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルム、四塩化炭素など)、酸アミド(例えば、ジメチルホルムアミドなど)、エステル(例えば、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル、脂肪酸グリセリンエステルなど)およびニトリル(例えば、アセトニトリルなど)である。これらの溶媒は、1種でもまた2種以上の種の組み合わせで使用されてもよい。
【0026】
本発明による防汚組成物の乳化濃縮液はまた、成分(I)および(II)の組み合わせ物を少なくとも1種の適当な有機溶媒(すなわち、液状担体)により希釈し、続いて少なくとも1種の溶媒可溶性乳化剤を添加することによって得ることができる。この種の調合物のために適当な溶媒は、通常は、水に非混和性であり、かつ炭化水素、塩素化炭化水素、ケトン、エステル、アルコールおよびアミドクラスの溶媒に属し、そしてそれらは、成分(I)および(II)のそれぞれの溶解度に基づいて当業者によって適当に選ぶことができる。乳化濃縮液は、通常、有機溶媒に加えて、有効成分の組み合わせ物を重量で約10〜50%、乳化剤を約2〜20%および20%までの他の添加剤、例えば安定剤、腐食抑制剤などを含有する。また、成分(I)および(II)の組み合わせ物は、懸濁濃縮液として調合されてもよく、これは、使用前に水で希釈されることが意図される(好ましくは有機)液体における有効成分の安定な懸濁液である。そのような非沈降性の流動生産物を得るためには、通常、既知の保護コロイドおよびチキソトロピー剤から選ばれる少なくとも1種の懸濁剤の重量で約10%までをそこに組み入れることが必要である。例えば、水和性(wettable)粉末または濃縮液(前記のような)を水で希釈することによって得られ、そして水中油または油中水型であってもよい、水性懸濁液および乳濁液のような他の液状調合物もまた、本発明の範囲内にはいる。
【0027】
また本発明は、例えば、成分(I)および(II)の該組み合わせ物を、それらの調合物のために適当な1種以上の添加剤と一緒に含んでなる、ペイント、コーティング剤またはワニスの形態における保護防汚組成物を提供する。そのような保護組成物における成分(I)および(II)の組み合わせ物の総量は、2〜10%(w/v)の範囲であってもよい。該保護組成物における使用のために適当な添加剤は、当該技術分野において全く慣用のものであり、そして例えば、少なくとも1種の有機結合剤(好ましくは水性形態における)、例えばアクリル系またはビニル基剤の乳濁液またはロジン化合物;無機担体、例えば炭酸カルシウム;前記のような界面活性剤;粘度調節剤;腐食抑制剤;顔料、例えば二酸化チタン;安定剤、例えば安息香酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムおよび亜硝酸ナトリウム;無機または有機着色剤などを含む。本発明の成分(I)および1種以上の成分(II)と一緒にそのような添加剤を調合する方法は、また十分、当業者の知識内にある。そのような保護組成物は、汚損生物の損傷効果を矯正および/または制限するのみならず、また汚損生物の有害な環境および影響を受けるかもしれない材料に生じる劣化を防ぐために使用されてもよい。
【0028】
本発明による防汚組成物は、多くの慣用の方法、例えば水圧スプレー、エア・ブラストスプレー、空気スプレー、アトマイジング(atomising)、ダスティング(dusting)、散布または注ぐこと(pouring)によって適用することができる。もっとも適当な方法は、意図される目標物および蔓延状況、すなわち防除されるべき汚損生物の種類、利用できる器具の形式および保護される材料の種類にしたがって当業者によって選ばれる。
【0029】
既に指摘されたように、成分(I)および(II)の組み合わせ物は、両該成分が、保護される材料に対する同時投与を確実に行うために、緊密に混合されている組成物の形態で好ましくは適用される。また、両成分(I)および(II)の投与または適用は、「連続・組み合わせ」投与または適用であってもよい、すなわち、成分(I)および成分(II)は、それらが処理される位置で必然的に一緒に混合されるようになる方法で同じ場所において交互にまたは連続的に投与または適用される。このことは、すなわち、連続的な投与または適用が、短期間内、例えば、24時間未満内、好ましくは12時間未満内に起きる場合に達成されるであろう。この交互の方法は、例えば、活性成分(I)を含んでなる調合物を充填された少なくとも1個の容器および活性成分(II)を含んでなる調合物を充填された少なくとも1個の容器を含む適当な単一包装を使用することによって実施することができる。したがって、また本発明は、
同時または連続使用のための組み合わせ物として、
− (a)成分Iとして、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルまたはその塩を含んでなる組成物、および
− (b)CuO、Cu(OH)、CuSO、銅ピリチオン、CuSCN、CuCO、ZnO、ZnCl、ZnSO、ジネブおよび亜鉛ピリチオンから選ばれる、成分(II)を含んでなる組成物:
を含有する生産物であって、該(a)および(b)が、汚損生物に対して相乗効果を与えるようにそれぞれの割合で存在する生産物を包含する。
【実施例】
【0030】
実験:毒物プレートアッセイ
実験1:毒物プレートアッセイ
主要化合物の名称:
成分(I)として4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル

組み合わせパートナーの名称:
− 成分(II−a)としてCuO;
− 成分(II−b)としてCu(OH)
− 成分(II−c)としてCuSO・5HO;
− 成分(II−d)として、銅ピリチオン、すなわち、ビス(1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオナト−O,S)銅;
− 成分(II−e)としてCuSCN;
− 成分(II−f)としてCuCO
− 成分(II−g)としてZnO;
− 成分(II−h)としてZnCl
− 成分(II−i)としてZnSO・7HO;
− 成分(II−j)としてジネブ;
− 成分(II−k)として亜鉛ピリチオン

保存溶液: DMSO中8000および80,000ppm

試験組み合わせ物:
生産物A% + 生産物B%
100 + 0
80 + 20
66 + 33
50 + 50
33 + 66
20 + 80
0 + 100
【0031】
毒性試験における総単一有効成分の濃度:
1/3の段階で増加する一連の濃度:0.03−0.04−0.05−0.06−0.08−0.11−0.15−0.20−0.27−0.35−0.47−0.63−0.84−1.13−1.50−2.00−2.67−3.56−4.75−6.33−8.44−11.25−15.00−20.00−26.70−35.60−47.46−63.28−84.38−112.50−150.00−200.00ppm.
【0032】
組み合わせ試験における総有効成分の濃度:
1/3の段階で増加する一連の濃度:0.08−0.11−0.15−0.20−0.27−0.35−0.47−0.63−0.84−1.13−1.50−2.00−2.67−3.56−4.75−6.33−8.44−11.25−15.00−20.00ppm.
【0033】
CuSO、およびZnSOとの組み合わせ物では、1/3の段階による異なる一連の濃度が使用された:0.03−0.05−0.06−0.08−0.11−0.14−0.19−0.25−0.34−0.45−0.60−0.80−1.07−1.42−1.90−2.53−3.38−4.50−6.00−8.00ppm.
【0034】
培養基: 藻類: BG11液体無機培地
アルテミア・サリナ(Artemia salina): 人工海水

実験設定: 24穴プレート

藻類の種:
(1):クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris
CCAP 211/12
(2):アナバエナ・シリンドリカ(Anabaena cylindrica
CCAP 1403/2A
(3):クラミドモナス・スファグノフィラ(Chlamydomonas sphag
nophila) CCAP 11/36E

接種物: 藻類:2週培養物のBG11における1/10希釈液の1990μl
アルテミア:20〜40個のアルテミア幼生(24時間齢)を含む人工海
水1990μl

培養条件: 21℃、65%相対湿度、1000lux、16時間の光周期

評価: 藻類:曝露3週後
アルテミア:曝露24時間後
【0035】
成分(I)および成分(II)の1種の間の相乗作用は、Kull F.C.らによりApplied Microbiology,9,538−541(1961)において記述されている一般に使用され、受け入れられている方法によって、Synergy(相乗作用)指数を用いて決定されたが、これは2種の化合物AおよびBについて次のように計算される:
【0036】
【数1】

【0037】
式中:
* Qは、終点を生じた、単独で作用する化合物Aの濃度(ppm)(例えば、MIC)であり、
* Qは、終点を生じた、混合物における化合物Aの濃度(ppm)(例えば、MIC)であり、
* Qは、終点を生じた、単独で作用する化合物Bの濃度(ppm)(例えば、MIC)であり、
* Qは、終点を生じた、混合物における化合物Bの濃度(ppm)(例えば、MIC)である。
【0038】
MICは、最小阻止濃度、すなわち、肉眼的な増殖を阻止するのに十分な各試験化合物または試験化合物の混合物の最低濃度である。
【0039】
Synergy指数が1.0を超える場合は、拮抗作用が示される。SIが1.0に等しい場合は、相加性が示される。SIが1.0未満である場合は、相乗作用が例証される。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(I)として、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルまたはその塩、および成分(II)として、CuO、Cu(OH)、CuSO、銅ピリチオン(pyrithione)、CuSCN、CuCOから選ばれる銅化合物の組み合わせ物を含んでなる組成物であって;成分(I)および成分(II)の1種が、汚損生物に対して相乗効果を与える10:1〜1:10の重量割合で存在する組成物。
【請求項2】
成分(II)がCuOである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(II)がCu(OH)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(II)がCuSOである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分(II)が銅ピリチオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
成分(II)がCuSCNである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
成分(II)がCuCOである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
成分(I)対成分(II)の1種の重量比が3:1〜1:3である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
成分(I)対成分(II)の1種の重量比が2:1〜1:2である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
成分(I)の量が、組成物の総重量に対して1wt%〜40wt%の範囲である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
汚損生物の防除のための、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物の防汚の有効な量の投与または適用を含む、汚損生物に対して材料を保護する方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物の防汚の有効な量を添加することによるバラスト水を消毒する方法。
【請求項14】
同時または連続使用のための組み合わせ物として、(a)成分Iとして、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルまたはその塩を含んでなる組成物、および(b)CuO、Cu(OH)、CuSO、銅ピリチオン、CuSCN、CuCOから選ばれる、成分(II)を含んでなる組成物、
を含有する生産物であって、該(a)および(b)が、汚損生物に対して相乗効果を与える10:1〜1:10の重量割合で存在する生産物。

【公開番号】特開2012−140454(P2012−140454A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65287(P2012−65287)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【分割の表示】特願2008−552799(P2008−552799)の分割
【原出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】