説明

4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体及び抗菌剤

【課題】優れた抗菌活性を有する新規抗菌剤を提供することである。
【解決手段】式(1)で表される新規な4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体は大腸菌(E.−coli)、酵母(Sacchalomyces.celibiciae)、クロカビ(Aspergillus niger)、カワラタケ(Trametes vesicola)、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)に対して優れた抗菌活性を有する。
【化1】


(式中、Rは水素原子又はフッ素原子を表し、Rは、水素原子、低級アルキル基、置換されても良いフェニル基又はベンジル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、置換されても良いベンゾイル基又はフェノキシカルボニル基及び低級アルキルスルホニル基表し、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、nは2又は3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品及び原材料品、家庭用品、生活資材、土建・塗料用、機械・器具用、医療用、畜産用、漁業用の抗菌剤として有用である式(1)で表される新規な4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体に関するものである。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、Rは水素原子又はフッ素原子を表し、Rは、水素原子、低級アルキル基、置換されても良いフェニル基又はベンジル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、置換されても良いベンゾイル基又はフェノキシカルボニル基及び低級アルキルスルホニル基表し、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、nは2又は3の整数を表す。)
【背景技術】
【0004】
式(1)で表される本発明の4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体は、新規化合物であることから、抗菌活性を有することも知られていない。
【特許文献1】特開2000−7662号公報
【特許文献2】特開2002−275164号公報
【特許文献3】特開平11−171834号公報
【特許文献4】特開平11−255752号公報
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー,1955,p.3478〜3481
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、式(1)で表される新規な4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体及びそれを有効成分とする抗菌剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するために検討した結果、式(1)で表される新規な4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体が抗菌剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は次の通りである。
【0007】
第1の発明は、次式(1):
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R、R、X及びnは前記と同義である。)
【0010】
で示される4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体に関するものである。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の式(1)で表される4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体を有効成分とする抗菌剤に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の式(1)で表される4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体は優れた抗菌効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
前記の化合物で表した各種の置換基などは、次の通りである。
なお、本発明の説明において、化合物は、化学式に付した括弧付き数字、記号などをもって、「化合物(数字,記号など)」とも称する〔例えば、式(1)で示されるものを化合物(1)とも称する。〕。
【0014】
〔化合物(1)におけるR
としては、水素原子又はフッ素原子である。
【0015】
〔化合物(1)におけるR
【0016】
としては、水素原子、低級アルキル基、置換されても良いフェニル基又はベンジル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、置換されても良いベンゾイル基又はフェノキシカルボニル基、低級アルキルスルホニル基が挙げられる。
【0017】
ここで、低級アルキル基としては、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等を挙げることができるが、好ましくはメチル基、エチル基である。
【0018】
置換されても良いフェニル基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子を挙げることができる)、低級ハロアルキル基(炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基、例えばトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基等を挙げることができる)、ニトロ基等で置換されても良いフェニル基を挙げることができるが、好ましくはフェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ニトロフェニル基である。
【0019】
置換されても良いベンジル基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子を挙げることができる)、低級ハロアルキル基(炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基、例えばトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基等を挙げることができる)、3,4−メチレンジオキシ基等で置換されても良いベンジル基を挙げることができるが、好ましくはベンジル基、3,4−メチレンジオキシベンジル基である。
【0020】
低級アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシトキシカルボニル基、i−プロポキシトキシカルボニル基、n−ブトキシトキシカルボニル基等を挙げることができるが、好ましくはエトキシカルボニル基である。
【0021】
低級アルキルカルボニル基としては、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキルカルボニル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、n−ブチリル基、i−ブチリル基、n−ペンタノイル基等を挙げることができるが、好ましくはアセチル基である。
【0022】
置換されても良いベンゾイル基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子を挙げることができる)、低級ハロアルキル基(炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基、例えばトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基等を挙げることができる)及びニトロ基等で置換されても良いベンゾイル基を挙げることができるが、好ましくは、トリフルオロメチルベンゾイル基である。
【0023】
置換されても良いフェノキシカルボニル基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨード原子を挙げることができる)、低級ハロアルキル基(炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状ハロアルキル基、例えばトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基等を挙げることができる)及びニトロ基等で置換されても良いフェノキシカルボニル基を挙げることができるが、好ましくは、フェノキシカルボニル基である。
【0024】
低級アルキルスルホニル基としては、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキルスルホニル基、例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、i−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基等を挙げることができるが、好ましくはメタンスルホニル基である。
【0025】
〔化合物(1)におけるX〕
Xとしては塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0026】
〔化合物(1)におけるn〕
nとしては、2又は3の整数である。
【0027】
本発明の化合物(1)はアミノ基を有しているので、これに由来する酸付加塩も本発明に含まれる。
酸付加塩を形成する酸としては、例えば、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など)、カルボン酸(ギ酸、シュウ酸、フマル酸、アジピン酸、ステアリン酸、アコニット酸など)、スルホン酸(メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸など)、サッカリンなどを挙げることができる。
【0028】
また、本発明の化合物(1)においてRがフッ素原子の場合は、不斉炭素原子を含むため、これに由来する個々の光学異性体、ラセミ体、又はそれらの混合物の何れも本発明に含まれる。
【0029】
前記の本発明の化合物(1)の合成法を、更に詳細に述べる。
【0030】
化合物(1)は、以下に示す合成法1及び合成法2によって合成することができる。
【0031】
(合成法1)
化合物(1)においてRが水素原子、低級アルキル基、置換されても良いフェニル基又はベンジル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基の化合物(1−1)は、次に示すように、化合物(2)と化合物(3)とを溶媒中で、塩基の存在下で反応させることによって合成することができる。
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、Rは水素原子、低級アルキル基、置換されても良いフェニル基又はベンジル基、低級アルコキシカルボニル基及びホルミル基を表し、R、X及びnは前記と同義である。)
【0034】
原料のモル比は任意に設定できるが、通常、化合物(2)1モルに対して化合物(3)は0.5〜2モルの割合であり、好ましくは1.0〜1.2モルの割合である。
【0035】
溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素化された又はされていない芳香族又は脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;或いはこれらの溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0036】
溶媒の使用量は、化合物(2)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0037】
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムブトキサイド、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の有機又は無機塩基を挙げることができるが、好ましくは有機塩基であり、更に好ましくはトリエチルアミンである。
塩基の使用量は、化合物(3)1モルに対して0.8〜2モルであるが、好ましくは0.8〜1.3モルである。
【0038】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、好ましくは室温〜80℃である。
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常0.5〜6時間である。
【0039】
原料化合物(3)は、市販品として入手することができる。
【0040】
化合物(2)においてRがフッ素原子の場合(化合物(2−1))は、特許文献1又は特許文献2に記載の次式に示す方法に準じて製造することができる。
【0041】
【化4】

【0042】
(式中、Xは前記と同義である。)
【0043】
ここで、化合物(4)は、次式に示すように、特許文献3又は特許文献4に記載されている方法に準じて製造することができる。
【0044】
【化5】

【0045】
化合物(2)においてRが水素原子の場合(化合物(2−2))は、次式に示す非特許文献1に記載の方法に準じて製造することができる。
【0046】
【化6】

【0047】
以上のようにして製造された化合物(1−1)は、反応終了後、抽出,濃縮,ロ過などの通常の後処理を行い、必要に応じて再結晶,各種クロマトグラフィーなどの公知の手段で適宣精製することができる。
【0048】
(合成法2)
化合物(1)においてRが低級アルキルカルボニル基、置換されても良いベンゾイル基又はフェノキシカルボニル基、低級アルキルスルホニル基の化合物(1−3)は、次に示すように、上記(合成法1)によって合成される化合物(1−2)と化合物(4)とを溶媒中で、塩基の存在下で反応させることによって合成することができる。
【0049】
【化7】

【0050】
(式中、Rは低級アルキルカルボニル基、置換されても良いベンゾイル基又はフェノキシカルボニル基、低級アルキルスルホニル基を表し、R、X及びnは前記と同義である。)
【0051】
原料のモル比は任意に設定できるが、通常、化合物(1−2)1モルに対して化合物(9)は0.5〜2モルの割合であり、好ましくは1.0〜1.2モルの割合である。
【0052】
溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素化された又はされていない芳香族又は脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;或いはこれらの溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0053】
溶媒の使用量は、化合物(1−2)の濃度が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0054】
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムブトキサイド、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の有機又は無機塩基を挙げることができるが、好ましくは有機塩基、更に好ましくはトリエチルアミンである。
塩基の使用量は、化合物(1−2)1モルに対して0.8〜2モルであるが、好ましくは0.8〜1.3モルである。
【0055】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、好ましくは0〜40℃である。
反応時間は、前記の濃度、温度によって変化するが、通常0.5〜6時間である。
【0056】
原料化合物(9)は、市販品として入手することができる。
【0057】
以上のようにして製造された化合物(1−3)は、反応終了後、抽出,濃縮,ロ過などの通常の後処理を行い、必要に応じて再結晶,各種クロマトグラフィーなどの公知の手段で適宣精製することができる。
【0058】
〔抗菌効果〕
本発明の化合物(1)に抗菌効果が認められる菌としては、大腸菌(E.−coli)、酵母(Sacchalomyces.celibiciae)、クロカビ(Aspergillus niger)、カワラタケ(Trametes vesicola)、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)を挙げることができる。
【0059】
本発明の抗菌剤は、化合物(1)の1種以上を有効成分として含有するものである。
化合物(1)は、単独で使用することもできるが、通常は常法によって、固体又は液体希釈剤、界面活性剤、分散剤、固着剤などを配合し、例えば、粉剤、乳剤、微粒剤、粒剤、水和剤、顆粒水和剤、水性懸濁剤、油性懸濁剤、乳濁剤、可溶化製剤、油剤、マイクロカプセル剤、エアゾールなどの組成物として調整して使用することが好ましい。
【0060】
個体希釈剤としては、例えば、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、ケイソウ土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、消石灰、ケイ砂、硫安、尿素などが挙げられる。
液体希釈剤としては、例えば、炭化水素類(ケロシン、鉱油など)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルナフタレン、ジメチルキシリルエタンなど)、塩素化炭化水素類(クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、シクロヘキサノン、イソホロンなど)、エステル類(酢酸エチル、エチレングリコールアセテート、マレイン酸ジブチルなど)、アルコール類(メタノール、n−ヘキサノール、エチレングリコールなど)、アミド化合物(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、スルホキシ化合物(ジメチルスルホキシドなど)、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの尿素化合物(N,N−ジメチルイミダゾリジノンなど)、スルホラン、水などが挙げられる。
【0061】
固着剤及び分散剤としては、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ベントナイト、ザンサンガム、アラビアガムなどが、挙げられる。
エアゾール噴射剤としては、例えば、空気、窒素、炭酸ガス、プロパン、ハロゲン化炭化水素(フルオロカーボンなど)などが挙げられる。
【0062】
界面活性剤としては、例えば、アルコール硫酸エステル類、アルキルサルフェート塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどを挙げることができる。
【0063】
本剤の製造では、前記の固体又は液体希釈剤、界面活性剤、分散剤及び固着剤をそれぞれの目的に応じて、各々単独で又は適当に組み合わせて使用することができる。
本発明の化合物(1)を製剤化した場合の有効成分濃度は、乳剤では通常1〜50重量%、粉剤では通常0.3〜25重量%、水和剤及び顆粒水和剤では通常1〜90重量%、粒剤では通常0.5〜10重量%、水性及び油性懸濁剤では通常0.5〜40重量%、乳濁剤では通常1〜30重量%、可溶化製剤では通常0.5〜20重量%、エアゾールでは通常0.1〜5重量%である。マイクロカプセルでは通常0.5〜20重量%である。
これらの製剤を適当な濃度に希釈して、それぞれの目的に応じて施用することによって各種の用途に供することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
実施例1〔化合物(1)の合成〕
(1)5−クロロ−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−6−(1−フルオロエチル)ピリミジン〔化合物番号1で示される化合物(1)〕の合成
1−(4−フルオロフェニル)ピペラジン(1.80g)とトリエチルアミン(1.2g)をトルエン50mlに溶解し、4,5−ジクロロ−6−(1−フルオロエチル)ピリミジン(1.95g)を加えて、70℃〜80℃で2時間加熱攪拌した。
反応終了後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、濾液を減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/3)精製することによって、無色粉状結晶である目的物を2.9g得た。
以下に、その物性を示す。
【0066】
m.p.77〜78℃
【0067】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.64〜1.73(3H,m)、3.21〜3.25(4H,t)、
3.82〜3.85(4H,t)、5.90〜6.12(1H,q−q)、
6.88〜7.02(4H,m)、8.65(1H,s)
【0068】
(2)5−クロロ−6−エチル−4−(4−エチルピペラジン−1−イル)ピリミジン〔化合物番号1で示される化合物(17)〕の合成
1−エチルピペラジン(0.57g)とトリエチルアミン(0.6g)をトルエン30mlに溶解し、4,5−ジクロロ−6−(1−フルオロエチル)ピリミジン(1.0g)を加えて、70℃〜80℃で2時間加熱攪拌した。
反応終了後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、濾液を減圧下に溶媒を留去して、得られた結晶を残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=3/1)精製することによって、淡黄色油状液体である目的物を0.9g得た。
以下に、その物性を示す。
【0069】

【0070】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.24〜1.34(3H,m)、2.84〜2.89(2H,q)、
3.60〜3.64(3H,m)、4.15〜4.22(2H,q)、
8.54(1H,s)
【0071】
(3)5−ブロモ−6−(1−フルオロエチル)−4−(4−メチルホモピペラジン−1−イル)ピリミジン〔化合物番号1で示される化合物(22)〕の合成
N−メチルホモピペラジン(0.57g)とトリエチルアミン(0.6g)をトルエン30mlに溶解し、5−ブロモ−4−クロロ−6−(1−フルオロエチル)ピリミジン(1.2g)を加えて、70℃〜80℃で2時間加熱攪拌した。
反応終了後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、濾液を減圧下に溶媒を留去して、得られた結晶を残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/エタノール=4/1)精製することによって、淡黄色油状液体である目的物を1.2g得た。
以下に、その物性を示す。
【0072】

【0073】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.64〜1.72(3H,m)、2.00〜2.08(2H,m)、
2.38(3H,s)、2.57〜2.61(2H,q)、
2.77〜2.81(2H,q)、3.82〜3.88(4H,m)、
5.89〜6.10(1H,q−q)、8.52(1H,s)
【0074】
(4)4−(4−エトキシカルボニルピペラジン−1−イル)−6−(1−フルオロエチル)−5−ヨードピリミジン〔化合物番号1で示される化合物(25)〕の合成
エチル1−ピペラジンカルボキシレート(079g)とトリエチルアミン(0.6g)をトルエン30mlに溶解し、4−クロロ−6−(1−フルオロエチル)−5−ヨードピリミジン(1.43g)を加えて、70℃〜80℃で2時間加熱攪拌した。
反応終了後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、濾液を減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣を酢酸エチル/ヘキサンより再結晶精製することによって、微黄色粉状結晶である目的物を1.3g得た。
以下に、その物性を示す。
【0075】
m.p.124〜125℃
【0076】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.27〜1.31(3H,m)、1.63〜1.73(2H,d−d)、
3.49〜3.51(4H,m)、3.64〜3.67(4H,m)、
5.83〜6.05(1H,q−q)、8.65(1H,s)
【0077】
(5)5−クロロ−6−(1−フルオロエチル)−4−(ピペラジン−1−イル)ピリミジン〔化合物番号1で示される化合物(27)〕の合成
ピペラジン(6.0g)とトリエチルアミン(3.6g)をエタノール100mlに溶解し、4,5−ジクロロ−6−(1−フルオロエチル)ピリミジン(5.9g)を滴下し、室温で2時間加熱攪拌した。
反応終了後、減圧下に溶媒を留去し、得られた残渣に水を加え酢酸エチルで抽出した。この抽出液を水洗、乾燥した後、減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル)精製することによって、無色粉状結晶である目的物を4.3g得た。
以下に、その物性を示す。
【0078】
m.p.60〜62℃
【0079】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.62〜1.71(3H,m)、1.71(1H,s)、
2.98〜3.02(4H,m)、3.63〜3.66(4H,m)、
5.88〜6.11(1H,q−q)、8.62(1H,s)
【0080】
(6)5−クロロ−6−(1−フルオロエチル)−4−[4−(4−トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン−1−イル]ピリミジン〔化合物番号1で示される化合物(28)〕の合成
5−クロロ−6−(1−フルオロエチル)−4−(ピペラジン−1−イル)ピリミジン(1.0g)とトリエチルアミン(0.5g)をトルエン20mlに溶解し、室温攪拌下に4−トリフルオロメチルベンゾイルクロライド(0.85g)のトルエン5ml溶液を滴下し、室温で4時間攪拌した。
反応終了後、反応混合物に水を加え有機層を分取した。この有機層を水洗、乾燥した後、減圧下に溶媒を留去して、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル)精製することによって、無色粉状結晶である目的物を1.4g得た。
以下に、その物性を示す。
【0081】
m.p.90〜92℃
【0082】
H−NMR(CDCl,δppm)
1.63〜1.74(3H,m)、3.62〜3.75(4H,m)、
3.75〜3.94(4H,m)、5.89〜6.11(1H,q−q)、
7.55〜7.73(1H,q−q)、8.66(1H,s)
【0083】
(7)表中のその他の化合物(1)の合成
前記の実施例1(1)〜(6)の方法に準じて、表1中のその他の化合物(1)を合成した。
合成した化合物(1)及びそれらの物性を表1に示す。



【0084】
【表1】

【0085】
実施例2〔効力試験〕
[材料および方法]
1)試料
表1及び表2に示す化合物を供試した。
各化合物はDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解して100,000mg/L(リットル)溶液を調製した。
【0086】
2)培地の調製
2−1)大腸菌(E.−coli)および酵母(Sacchalomyces.celibiciae)の培地調整
大腸菌はLB液体培地を、酵母はMY培地を用いて、培地10mLに上記表1に示す化合物の薬剤溶液(以下薬剤溶液と記載。)50μL(最終薬剤濃度500mg/L)を添加して薬剤添加培地を調製した。
【0087】
2−2)クロカビ(Aspergillus niger)、カワラタケ(Trametes vesicola)、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)の培地調整
PDA培地10mLを溶融後、寒天が凝固する前に薬剤溶液50μL(最終薬剤濃度500mg/L)を添加し攪拌して試験用プレートを調製した。
【0088】
3)抗菌試験
3−1)大腸菌および酵母に対する抗菌試験
一晩液体培養で増殖させた後、菌体を含む培地10μLを上記の薬剤添加培地に添加して、25℃、100rpmで一晩旋回培養した。培養後、この培地10μLを採取し、薬剤を含まない新鮮な培地10mLに移して培養した後、660nmの吸光度を測定して、以下の計算式から阻害率を算出した。
【0089】
【数1】

【0090】
A:無処理区の吸光度
B:薬剤処理区の吸光度
【0091】
効果の判定は以下の4段階の基準で行った。
A:90〜100%阻害
B:70〜89%阻害
C:50〜69%阻害
D:阻害率50%未満
【0092】
3−2)クロカビ、カワラタケおよびオオウズラタケに対する抗菌試験
カワラタケ又はオオウズラタケの菌叢が全面に増殖したPDAプレート、或いはクロカビの胞子をおよそ1×10個/mL含むPDA培地(厚さ約1mm)を用い、各々メスで約1.5mm角に切り出したものを接種片とした。これらの接種片を試験用プレートに置床して、25℃で4日間培養した。培養後、接種片から菌糸が伸張して形成された菌叢の直径を測定して、以下の計算式から阻害率を算出した。
【0093】
【数2】

【0094】
A:無処理区の菌叢直径(mm)
B:薬剤処理区の菌叢直径(mm)
【0095】
効果の判定は以下の4段階の基準で行った。
A:90〜100%阻害
B:70〜89%阻害
C:50〜69%阻害
D:阻害率50%未満
【0096】
上記の抗菌試験の結果、大腸菌に対しては、化合物番号15がAの効果を示し、化合物番号34がCの効果を示した。
【0097】
酵母に対しては、化合物番号3、5、14,17、27及び28がAの効果を示し、化合物番号24がBの効果を示し、化合物番号18及び20がCの効果を示した。
【0098】
クロカビに対しては、化合物番号5、8、14、15、20、24及び32がAの効果を示し、化合物番号28がBの効果を示し、化合物番号1及び25がCの効果を示した。
【0099】
カワラタケに対しては、化合物番号1、5、8、14、24、28及び32がAの効果を示し、化合物番号6、15、19、23、24及び25がBの効果を示し、化合物番号3、10、11、30及び34がCの効果を示した。
【0100】
オオウズラタケに対しては、化合物番号1、5、8及び14がAの効果を示し、化合物番号15、19、20、23、24、25、2、3、32及び34がBの効果を示し、化合物番号6、7及び10がCの効果を示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はフッ素原子を表し、Rは、水素原子、低級アルキル基、置換されても良いフェニル基又はベンジル基、低級アルコキシカルボニル基、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、置換されても良いベンゾイル基又はフェノキシカルボニル基及び低級アルキルスルホニル基表し、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、nは2又は3の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1の式(1)で表される4−(ホモ)ピペラジニルピリミジン誘導体を有効成分とする抗菌剤。


【公開番号】特開2006−188462(P2006−188462A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1961(P2005−1961)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】