説明

4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン化合物の結晶形態

本発明は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩を提供する。本発明は、その結晶塩を含む医薬組成物、その結晶塩を調製するための方法および中間体ならびに疾患を治療するためのその結晶塩の使用方法も提供する。本発明の他の態様は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンを精製する方法に関する。一実施形態では、この方法は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩を形成させるステップを含む。本発明は、本明細書で説明する方法で調製した生成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロトニン(5−HT)およびノルエピネフリン(NE)再取込みインヒビターとして活性を有する4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン化合物の新規結晶形態に関する。本発明は、そうした化合物から調製される結晶性化合物を含む医薬組成物、結晶性化合物を調製するためのプロセスおよび中間体ならびに神経因性疼痛および他の病気等の疼痛性障害を治療するためのそうした化合物の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、実際的または潜在的な組織損傷に伴うか、あるいはそうした損傷に関して表現される不愉快な感覚的および感情的体験である(International Association for the Study of Pain (IASP)、Pain Terminology)。慢性疼痛は、急性疼痛を超えて、または損傷が治癒する期待時間を超えて持続する(非特許文献1)。神経因性疼痛は、神経系における一次病変または機能不全によって開始されるまたは引き起こされる疼痛である。末梢神経因性疼痛は、その病変または機能不全が末梢神経系に影響を及ぼす際に起こり、中枢神経因性疼痛は、その病変または機能不全が中枢神経系(IASP)に影響を及ぼす際に起こる。
【0003】
例えば三環系抗うつ病薬、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込みインヒビター、カルシウムチャンネルリガンド(例えば、ガバペンチンおよびプレガバリン)、局所用リドカインおよびオピオイドアゴニスト(例えば、モルヒネ、オキシコドン、メタドン、レボルファノールおよびトラマドール)を含むいくつかの種類の治療薬が神経因性疼痛を治療するために現在使用されている。
【0004】
本明細書で説明する4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンは、セロトニンおよびノルエピネフリントランスポーターと結合することによって、セロトニンとノルエピネフリンの両方の再取り込みを阻害する。長期保存用の化合物を調製する場合、ならびに医薬組成物および処方物を調製する場合、吸湿性でも潮解性でもない、結晶形態の治療薬を有することがしばしば望ましい。その物質を、それほど分解させることなく処理する、例えば微粉化できるようにする比較的高い(すなわち、約150℃を超える)融点をもつ結晶形態を有することも有利である。したがって、許容されるレベルの吸湿性と比較的高い融点をもつ安定な非潮解性の形態の4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩に関する。
【0006】
本発明の一態様は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩を調製する方法に関する。一実施形態では、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩を調製する方法は:a)4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの塩酸塩を酢酸エチルおよびエタノールで処理して完全に溶解させるステップと;b)冷却して結晶化させるステップと;c)得られた固体を単離して本発明の結晶性塩酸塩を得るステップを含む。他の実施形態では、この結晶性塩酸塩を、さらに、d)イソプロパノールおよび水で処理して完全に溶解させ;e)冷却して結晶化させ;そして、f)得られた固体を単離して本発明の結晶性塩酸塩を得る。
【0007】
本発明の他の態様は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンを精製する方法に関する。一実施形態では、この方法は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩を形成させるステップを含む。本発明は、本明細書で説明する方法で調製した生成物にも関する。
【0008】
本発明の一態様は、薬学的に許容される担体および4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩を含む医薬組成物に関する。そうした組成物は任意選択で、抗アルツハイマー病薬、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗パーキンソン病薬、デュアルセロトニンノルエピネフリン再取込みインヒビター、非ステロイド系抗炎症剤、ノルエピネフリン再取込みインヒビター、オピオイドアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、選択的セロトニン再取込みインヒビター、ナトリウムチャネル遮断薬、交感神経遮断薬およびこれらの組合せ等の他の活性薬剤を含むことができる。したがって、本発明のさらに他の態様では、医薬組成物は、本発明の結晶性塩、第2の活性薬剤および薬学的に許容される担体を含む。本発明の他の態様は、本発明の結晶性塩および第2の活性薬剤を含む活性薬剤を合わせたものに関する。本発明の結晶性塩は、追加の薬剤と一緒にまたはそれとは別個に、処方に従って作製することができる。別個に処方に従って作製する場合、薬学的に許容される担体は他の薬剤と共に含まれ得る。したがって、本発明のさらに他の態様は、複数の医薬組成物を合わせたものであって、本発明の結晶性塩と、第1の薬学的に許容される担体とを含む第1の医薬組成物、ならびに、第2の活性薬剤と、第2の薬学的に許容される担体とを含む第2の医薬組成物を含むものに関する。本発明は、例えば第1の医薬組成物と第2の医薬組成物が別個の医薬組成物である、そうした医薬組成物を含むキットにも関する。
【0009】
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンは、セロトニン再取込み阻害活性およびノルエピネフリン再取込み阻害活性を有している。この化合物の結晶性塩酸塩は、セロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターの阻害によって治療される疾患または障害に苦しむ患者を治療するための治療薬としての同様の活性およびしたがって同様の有用性を有すると期待される。したがって、本発明の一態様は、神経因性疼痛または線維筋痛等の疼痛性障害;大うつ病等の抑うつ障害;不安障害等の情動障害;注意欠陥過活動性障害;認知症等の認知障害;腹圧性尿失禁;慢性疲労症候群;肥満;または閉経に伴う血管運動症状を治療する方法に関しており、この方法は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、医薬品の製造、特に、疼痛性障害、抑うつ障害、情動障害、注意欠陥過活動性障害、認知障害、腹圧性尿失禁を治療する、哺乳動物におけるセロトニン再取り込みを阻害する、または哺乳動物におけるノルエピネフリン再取り込みを阻害するのに有用な医薬品を製造するための本発明の結晶性化合物の使用に関する。本発明の他の態様および実施形態を本明細書で開示する。
【0011】
本発明の様々な態様を添付した図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。
【図2】図2は、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフおよび熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図3】図3は、動的水分収着(DMS)プロファイルを示す。
【図4】図4は、顕微鏡写真である。
【図5】図5は、単位格子結晶の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩を提供する。驚いたことに、この結晶性化合物は、大気中の水分にさらされる場合でさえ、潮解性ではないことが見出されている。その上、この結晶性化合物は、許容されるレベルの吸湿性および高い融点を有する。
【0014】
この薬物分子の単結晶は、単斜晶系(P2C空間群)を示し、以下の単位格子パラメーターを有する:A=C=90°、B=104.595°;a=11.631Å、b=7.057Å、c=42.532Å。理論により制限されることを望まないが、X線結晶学的データに基づくと、上記結晶は、水分子の周りに構築されていると考えられ、そして水含有量は、原子の熱運動パラメーターおよび実測された全体的構造因子を用いて、その単位格子中の水占有率から決定した。
【0015】
したがって、一実施形態では、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩が、一定量の水を含み得、この水は、上記結晶性物質の表面上に吸収されているか、または結晶構造の一部を形成する。
【0016】
一つの特定の実施形態では、上記結晶性塩酸塩は、約0.2重量%〜約0.8重量%の、他の実施形態では、約0.4重量%〜約0.6重量%の範囲の量の水を含み得、この水は、結晶表面上に吸収されている。
【0017】
なお別の特定の実施形態では、上記結晶性塩酸塩は、約0.25モル〜約0.50モルの、他の実施形態では、約0.30モル〜約0.40モルの水を含み得、この水は、結晶構造の一部を形成する。一つの例示的な実施形態において、約0.32モルの水が、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩1モルごとに存在する。
【0018】
定義
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスについて説明する場合、別段の指定のない限り、以下の用語は以下の意味を有するものとする。さらに、本明細書で用いる単数形の「a」、「an」および「the」は、使用される文脈において別段の明らかな表示のない限り、対応するその複数形を含む。「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」という用語は包含的なものであり、挙げられた要素以外の他の要素が存在し得ることを意味するものとする。本明細書で使用する成分の量、分子量等の特性、および反応条件等を表すすべての数字は、別段の表示のない限り、すべての場合において「約」という用語で修飾されているものと理解されたい。したがって、本明細書で示す数字は、本発明で得ようとする所望特性に応じて変わり得る概数である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を限定しようとするものではなく、それぞれの数字は少なくとも、報告された有効数字に照らして、通常の丸めの手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0019】
本明細書で用いる「式の」、「式を有する」または「構造を有する」という語句は限定しようとするものではなく、「含む(comprising)」という用語が通常用いられるのと同様に用いられる。
【0020】
本明細書で用いる「融点」という用語は、固体から液体への相変化に対応する熱転移に対して、最大の吸熱熱流量が示差走査熱量測定によって実測されるときの温度を意味する。
【0021】
「薬学的に許容される」という用語は、本発明で使用する場合、生物学的またはその他で受け入れ難くはない物質を指す。例えば「薬学的に許容される担体」という用語は、許容されない生物学的作用を引き起こすことも、許容されない様式で組成物の他の成分と相互作用することもなく、組成物中に混ぜ込み、患者に投与することができる物質を指す。そうした薬学的に許容される物質は一般に、毒物学的および製造的な試験の必要な基準に適合したものであり、それらには、米国食品医薬品局によって適切な不活性成分であると確認されている物資が含まれる。
【0022】
「治療有効量」という用語は、それを必要とする患者に投与した場合に治療を実現するのに十分な量、すなわち、所望の治療効果を得るのに必要な薬物の量を意味する。例えば、神経因性疼痛のための治療有効量は、例えば神経因性疼痛の症状を低減、抑制、排除もしくは予防するか、神経因性疼痛の根本にある原因を治療するのに必要な化合物の量である。他方、「有効量」という用語は、所望の結果を得るのに十分な量を意味する。その結果は必ずしも治療結果である必要はない。例えば、ノルエピネフリントランスポーターを含む系を試験する場合、「有効量」は、ノルエピネフリン再取込みを阻害するのに十分な量であってよい。
【0023】
本明細書で用いる「治療する(treating)」または「治療」という用語は、哺乳動物等の患者(特にヒト)において疾患または医学的状態(神経因性疼痛等)を治療することまたはその治療を意味する。その治療は以下のもののうちの1つまたは複数を含む:(a)疾患または医学的状態が発生するのを防止する、すなわち患者の予防的治療;(b)疾患または医学的状態を改善する、すなわち患者の疾患または医学的状態を排除するまたはその退縮を引き起こすこと;(c)疾患または医学的状態を抑制する、すなわち、患者の疾患もしくは医学的状態の進行を遅延させる、または停止させること;あるいは(d)患者の疾患または医学的状態の症状を緩和すること。例えば、「神経因性疼痛を治療する」という用語は、神経因性疼痛の発生を予防し、神経因性疼痛を改善し、神経因性疼痛を抑制し、神経因性疼痛の症状を緩和することを含む。「患者」という用語は、治療または疾患予防を必要としており、疾患予防または特定の疾患もしくは医学的状態の治療のための処置を現在受けているヒト等の哺乳動物、ならびにアッセイにおいて本発明の化合物が評価されるかまたは使用される試験対象(例えば動物モデル)を含むものとする。
【0024】
本明細書で使用する他のすべての用語は、関係する技術分野の当業者によって理解されているその通常の意味を有するものとする。
【0025】
本発明の結晶性化合物は、以下および実施例において説明するような容易に入手できる出発原料から合成することができる。典型的なまたは好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられている場合、別段の言及のない限り、他のプロセス条件を用いることができることを理解されよう。具体的なプロセス条件(すなわち、結晶化温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられていても、別段の言及のない限り、他のプロセス条件を用いることができることを理解されよう。いくつかの場合、反応または結晶化を室温で実施し、実際の温度測定を実施しなかった。室温は、実験室環境における周囲温度に一般に伴う範囲内の温度を意味するととることができ、一般に約25℃〜約50℃の範囲にあると理解されたい。他の場合、反応または結晶化を室温で実施し、その温度を実際に測定して記録した。
【0026】
一般に、結晶化は、適切な不活性希釈剤または溶媒系中で実施される。それらの例には、例えば、これらに限定されないが、任意選択で水を含む、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、メチルt−ブチルエーテルなどおよびその混合物が含まれる。結晶化が完了したら、結晶性化合物を、沈殿、濃縮、遠心分離などの慣用的な任意の手段で反応混合物から単離することができる。
【0027】
本発明で用いる4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンは、実施例で説明する手順を用いて市販の出発原料および試薬から容易に調製することができる。本発明の方法で示すモル比は、当業者が入手できる様々な方法で容易に決定することができる。例えば、そうしたモル比はH NMRにより容易に決定することができる。あるいは、元素分析およびHPLC法を用いてモル比を決定することができる。
【0028】
一般に、本発明の結晶性化合物は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンを不活性希釈剤で処理して完全に溶解させて調製することができる。適切な不活性希釈剤には、例として、これらに限定されないが、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水などが含まれる。他の適切な不活性希釈剤には、例として、これらに限定されないが、アセトンと水、アセトニトリルと水、エタノールと酢酸エチル、メタノールと水ならびにイソプロパノールと水などの不活性希釈剤の組合せが含まれる。特定の1つの実施形態では、不活性希釈剤は酢酸エチル、またはイソプロパノールと水との組合せである。一般に溶解は、約50℃〜約90℃の範囲の温度で、一実施形態では、約60〜80℃の範囲の温度で、他の実施形態では、約65〜75℃の範囲の温度で実施される。次いで溶液を冷却して本発明の結晶性化合物を生成させる。特定の1つの実施形態では、溶液を約20〜30℃、例えば25℃に冷却する。適当な時間がたつと結晶が観察される。一実施形態では、約1時間後に結晶が観察される。結晶が観察された後、母液体積を減らし、結晶を単離し乾燥することができる。一実施形態では、結晶が観察されたら、約12〜24時間かけて結晶を成長させ、続いて単離する。
【0029】
一実施形態では、本発明の結晶性化合物を、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン塩酸塩を酢酸エチルおよびエタノールで処理して完全に溶解させ、冷却して結晶化させて調製する。次いで結晶を単離して通常99%を超える純度を有する結晶性塩酸塩を得る。一般にこの方法は、上記温度範囲のいずれかで実施することができる。例えば、溶解を約65〜70℃で実施し、続いて室温に冷却することができる。
【0030】
再結晶化によって、同じ結晶形態をやや高い純度と良好な含水特性で調製することができる。したがって、他の実施形態では、酢酸エチルおよびエタノールを用いて調製した結晶性塩酸塩を、イソプロパノールおよび水で再結晶化させる、すなわち、イソプロパノールおよび水で処理して完全にさせ、冷却して結晶化させる。次いで得られた固体を単離し、乾燥して本発明の結晶性化合物を得ることができる。一般にこの方法は、上記温度範囲のいずれかで実施することができる。例えば、溶解を約75℃で実施し、続いて室温に冷却することができる。イソプロパノールと水との体積比は一般に、約9:1〜約21:1の範囲、例えば一実施形態では約10:1であり、他の実施形態では約20:1である。
【0031】
出発原料である塩酸塩は当該分野で周知の手法で調製することができ、その例を本明細書の実施例で提供する。例えば、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルを、エタノール中の塩酸を用いて脱保護して塩酸塩を得ることができる。
【0032】
結晶特性
利点の中でとりわけ、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩を生成させることが、その化合物自体を精製するのに有用であることを発見した。例えば、本発明の結晶性塩酸塩は99.0%を超える純度を有する。
【0033】
粉末X線回折の分野で周知のように、PXRDスペクトルの相対的ピーク高さは、試料調製および装置の幾何学的構造に関係するいくつかの因子に依存するが、ピーク位置は、実験の詳細に対して比較的感度が低い(insensitive)。実施例4に示すようなPXRDパターンを得た。したがって、一実施形態では、本発明の結晶性化合物は、特定のピーク位置を有するPXRDパターンを特徴とする。
【0034】
その結晶性化合物は、ピーク位置が図1に示すものと実質的に一致するPXRDパターンを特徴とする。それらのピークを、相対強度が大きい順に以下に示す。すべてのPXRDピーク強度は、それぞれのピークについての対応するバックグラウンド強度を差し引いて補正した。
【0035】
【化1】

したがって、一実施形態では、結晶性化合物は、4.44±0.20、10.22±0.20、17.16±0.20および21.78±0.20の2θ値での回折ピークを含む粉末X線回折(PXRD)パターンを特徴とし;8.11±0.20、13.18±0.20、16.06±0.20、18.38±0.20、23.76±0.20、26.32±0.20、27.24±0.20、29.60±0.20および31.94±0.20から選択される2θ値での1つまたは複数の追加の回折ピークを有することをさらに特徴とする。
【0036】
示差走査熱量測定(DSC)トレースを、実施例5に示すようにして得た。したがって、一実施形態では、結晶性化合物はDSCサーモグラフを特徴とする。一実施形態では、結晶性化合物は、図2に示すように約200.0℃未満で有意な熱分解もなく、約196.9℃の融点を示すDSCサーモグラフを特徴とする。
【0037】
熱重量分析(TGA)を、実施例5に示すようにして、結晶性化合物について実施した。したがって、一実施形態では、結晶性化合物はそのTGAトレースを特徴とする。一実施形態では、結晶性化合物は、図2に示すように約150.0℃未満の温度で溶媒および/または水の損失(約0.5%)を示すTGAトレースを特徴とする。
【0038】
本発明の結晶性化合物は、許容されるレベルの吸湿性で可逆的な収着/脱着プロファイルを有することが実証された。例えば、結晶性化合物は、吸湿性の性質をもたないか、またはそれがわずかであり、図3で見られるように、最大で90%の相対湿度に曝露された場合、約2.0重量%未満の重量増を示す。
【0039】
本発明の結晶性化合物のこれらの特性を、以下の実施例でさらに例示する。
【0040】
有用性
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンはセロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害活性を有する。したがって、この化合物、ならびに本発明の結晶性化合物は、一緒にしたセロトニンおよびノルエピネフリン再取り込みインヒビター(SNRI)として治療的有用性を有すると期待される。
【0041】
化合物の阻害定数(K)は、放射性リガンドが存在しない場合にトランスポーターの50%を占める、競合アッセイにおける競合リガンドの濃度である。アッセイ1で説明するように、K値はH−ニソキセチン(ノルエピネフリントランスポーター(NET)について)およびH−シタロプラム(セロトニントランスポーター(SERT)について)を用いて、放射性リガンド競合結合試験により測定することができる。これらのK値は、チェン−プラソフ式(Cheng−Prusoff equation)を用いた結合アッセイにおけるIC50値、および放射性リガンドのKから誘導される(Cheng & Prusoff(1973年)Biochem. Pharmacol. 22巻(23号):3099〜3108頁)。機能的IC50値は、アッセイ2で説明する取込みアッセイの機能的阻害で測定することができる。これらのIC50値は、チェン−プラソフ式とトランスポーターに対する伝達物質のKとを用いてK値に変換することができる。しかし、アッセイ2で説明する取込みアッセイ条件は、そのアッセイで使用する神経伝達物質濃度(5−HTまたはNE)が各トランスポーターに対する神経伝達物質のKよりずっと小さいので、数学的に変換されることが望ましく、その結果、IC50値はK値に非常に近いことに留意されたい。
【0042】
本発明の結晶性化合物のセロトニンおよび/またはノルエピネフリン再取り込み阻害活性を判定するためのアッセイには、例として、これらに限定されないが、例えばアッセイ1で説明するようなSERTおよびNET結合を測定するアッセイが含まれる。さらに、それは、アッセイ1で説明するものなどのアッセイにおけるDAT結合および取り込みのレベルを理解するのに有用である。有用な二次アッセイには、アッセイ2で説明するようなそれぞれのヒトまたはラット組み換えトランスポーター(hSERT、hNETまたはhDAT)を発現する細胞中へのセロトニンおよびノルエピネフリン取り込みの競合阻害を測定するための神経伝達物質取り込みアッセイ、ならびにアッセイ3で説明するような組織中のSERT、NETおよびDATのインビボでの占有率を測定するために用いられるエクスビボでの放射性リガンド結合および神経伝達物質取り込みアッセイが含まれる。薬理学的特性を評価するのに有用な他のアッセイには、アッセイ4で挙げるものが含まれる。インビボでのアッセイの例には、神経因性疼痛の治療についての臨床効果の信頼できる予測判断材料であるアッセイ5で説明するホルマリン足試験、およびアッセイ6で説明する脊髄神経結紮モデルが含まれる。上記アッセイは、本発明の結晶性化合物の治療的有用性、例えば神経因性疼痛軽減活性を判定するのに有用である。本発明の結晶性化合物の他の特性および有用性は、当業者に周知の様々なインビトロおよびインビボでのアッセイを用いて実証することができる。
【0043】
本発明の結晶性化合物は、モノアミントランスポーター機能の制御が関係する医学的状態、特に、セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みの阻害によって媒介されるまたはそれに応答する状態の治療および/または予防に有用であると期待される。したがって、治療有効量の本発明の結晶性化合物を投与することによって、セロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターの阻害により治療される疾患または障害に苦しむ患者を治療できると期待される。そうした医学的状態の例には:神経因性疼痛、線維筋痛および慢性疼痛等の疼痛性障害;大うつ病等の抑うつ障害;不安障害等の情動障害;注意欠陥過活動性障害;認知症等の認知障害;ならびに腹圧性尿失禁が含まれる。
【0044】
用量当たりに投与される活性薬剤の量または1日当たりに投与される合計量は予め決定するか、あるいは、患者の状態の性質および重篤度、治療される状態、患者の年齢、体重および全体的な健康、活性薬剤に対する患者の耐性、投与経路、薬理学的考慮(投与される活性薬剤および任意の二次的薬剤の活性、効能、薬物動態、ならびに毒物学的プロファイル)等を含む、多くの因子を考慮して、個々の患者ベースでそれを決定することができる。疾患または医学的状態(神経因性疼痛等)に苦しむ患者の治療は、所定の投薬量または担当医師が決めた投薬量で開始することができ、これを、疾患または医学的状態の症状を予防、改善、抑制または緩和するのに必要な期間継続する。そうした治療を受ける患者は通常、治療の有効性を判断するためにルーチンを基本としてモニターされる。例えば、神経因性疼痛の治療において、治療の有効性の尺度は、患者の生活の質、例えば患者の睡眠パターン、勤務状況(work attendance)、運動および歩行する能力における改善等の評価を含むことができる。点数に基づいて操作する疼痛スケールを用いて、患者の痛みの程度を評価する助けとすることもできる。本明細書で説明する他の疾患および状態のための指標は当業者に周知であり、担当医師は容易にそれを利用することができる。医師による連続的なモニタリングによって、確実に活性薬剤の最適量が任意の所与の時間に投与され、また、治療期間の判断が容易になる。二次的薬剤も投与しようとする場合、その選択、投薬量および治療期間も調節する必要があるので、これは特に価値がある。このようにして、所望の有効性を示す最も少ない量の活性薬剤を投与し、さらに投与を、疾患または医学的状態を首尾よく治療するのに必要な間だけ続けるように、治療レジメンおよび投薬スケジュールを治療の過程で調整することができる。
【0045】
疼痛性障害
SNRIは、有痛性の糖尿病性神経障害(デュロキセチン、Goldsteinら(2005年)Pain 116巻:109〜118頁;ベンラファクシン、Rowbothamら(2004年)Pain 110巻:697〜706頁)、線維筋痛(デュロキセチン、Russellら(2008年)Pain 136巻(3号):432〜444頁;ミルナシプラン、Vittonら(2004年)Human Psychopharmacology 19巻:S27〜S35)および片頭痛(ベンラファクシン、Ozyalcinら(2005年)Headache45巻(2号):144〜152頁)等の疼痛に対して有益な効果を有することが示されている。したがって、本発明の一実施形態は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する、疼痛性障害を治療するための方法に関する。一般に、治療有効量は疼痛を軽減するのに十分な量である。疼痛性障害には、例として、急性疼痛、持続性疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛および神経因性疼痛が含まれる。より具体的には、これらには:関節炎;慢性の腰痛を含む背痛;腫瘍を含む癌関連疼痛(例えば、骨痛、頭痛、顔面痛または内臓痛)および癌治療に伴う疼痛(例えば、化学治療後症候群、慢性術後疼痛症候群および放射線照射後症候群);手根管症候群;線維筋痛;慢性の緊張性頭痛を含む頭痛;多発筋痛、リウマチ性関節炎および変形性関節症に伴う炎症;片頭痛;複合性局所疼痛症候群を含む神経因性疼痛;全身疼痛(overall pain);術後疼痛;肩部痛;脳卒中後疼痛ならびに脊髄損傷および多発性硬化症に伴う疼痛を含む中枢性疼痛症候群;幻肢痛;パーキンソン病に伴う疼痛;ならびに内臓痛(例えば、過敏性腸症候群)に伴うかまたはそれによって引き起こされる疼痛が含まれる。特に興味のあるものは神経因性疼痛の治療であり、この疼痛には、糖尿病性末梢神経障害(DPN)、HIV関連神経障害、ヘルペス後神経痛(PHN)および化学治療誘発性末梢神経障害が含まれる。神経因性疼痛等の疼痛性障害を治療するために使用する場合、本発明の化合物を、抗けいれん剤、抗うつ剤、筋肉弛緩剤、NSAID、オピオイドアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、選択的セロトニン再取込みインヒビター、ナトリウムチャネル遮断薬および交感神経遮断薬を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの分類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0046】
抑うつ障害
本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する、抑うつ障害を治療する方法に関する。一般に、その治療有効量は、抑うつを緩和し、一般的な意味での健康を提供するのに十分な量である。抑うつ障害には、例として、これらに限定されないが:アルツハイマー病、双極性障害、癌、児童虐待、不妊症、パーキンソン病、心筋梗塞後および精神病に伴ううつ病;気分変調;気難しいまたはイライラ老人症候群(grumpy or irritable old man syndrome);惹起性うつ病;大うつ病;小児性うつ病;閉経後うつ病;分娩後うつ病;再発性うつ病;単一エピソードうつ病;および亜症候群性の症候性うつ病が含まれる。特に興味のあるものは大うつ病の治療である。抑うつ障害を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、抗うつ剤およびデュアルセロトニン‐ノルエピネフリン再取込みインヒビターを含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの分類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0047】
情動障害
本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する、情動障害を治療する方法に関する。情動障害には、例として、これらに限定されないが:全般性不安障害等の不安障害;回避性人格障害;神経性無食欲症、神経性大食症および肥満等の摂食障害;強迫性障害;パニック障害;回避性人格障害および注意欠陥過活動性障害(ADHD)等の人格障害;心的外傷後ストレス症候群;広場恐怖症ならびに簡単な他の特定の恐怖症および社会恐怖症等の恐怖症;月経前症候群;統合失調症および躁病等の精神障害;季節性情動障害;早漏、男性のインポテンス、および女性の性的機能不全(例えば、女性の性的興奮障害)を含む性的機能不全;社会不安障害;および、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、ヘロイン、ニコチンおよびフェノバルビタールへの依存症等の薬物依存、ならびにこれらの依存症から生じ得る禁断症候群を含む薬物乱用障害が含まれる。情動障害を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、抗うつ剤を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの分類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0048】
10倍のNET選択性があるアトモキセチンは、注意欠陥過活動性障害(ADHD)治療用としてとして認可されており、臨床研究によれば、SNRI、ベンラファクシンも、ADHDを治療するのに有益な効果を有し得ることが示されている(Mukaddesら(2002年)Eur. Neuropsychopharm. 12巻(Supp 3):421頁)。したがって、本発明の結晶性化合物は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与することによって、注意欠陥過活動性障害を治療する方法に有用であることも期待される。うつ病を治療するために使用する場合、本発明の結晶性化合物は、抗うつ剤を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの部類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0049】
認知障害
本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する、認知障害を治療する方法に関する。認知障害には、例として、これらに限定されないが:変性認知症(例えば、アルツハイマー病、クロイツフェルトヤコブ病、ハンチントン舞踏病(Huntingdon’s chorea)、パーキンソン病、ピック病および老年性認知症)、血管性認知症(例えば、多発脳梗塞性認知症)、ならびに頭蓋内占拠性病変、心的外傷、感染症およびそれに関連する状態(HIV感染症を含む)、代謝、毒素、酸素欠乏、およびビタミン欠乏に伴う認知症を含む認知症;ならびに加齢に伴う記憶障害、記憶喪失障害および加齢関連認識衰退等の加齢に伴う軽度認識障害が含まれる。認知障害を治療するために使用する場合、本発明の結晶性化合物は、抗アルツハイマー病薬および抗パーキンソン病薬を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの分類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0050】
他の障害
SNRIは、腹圧性尿失禁の治療に有効であることも分かっている(Dmochowski(2003年)Journal of Urology 170巻(4号):1259〜1263頁)。したがって、本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する、腹圧性尿失禁を治療する方法に関する。腹圧性尿失禁を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、抗けいれん剤を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの部類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0051】
SNRIであるデュロキセチンは、慢性疲労症候群の治療におけるその効能を評価するための臨床試験を受けており、これは、線維筋痛を治療するに有効であることが最近示されている(Russellら(2008年)Pain 136巻(3号):432〜444頁)。本発明の化合物には、SERTおよびNETを阻害するその期待される能力に起因して、この有用性も期待されており、本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する、慢性疲労症候群を治療する方法に関する。
【0052】
ノルエピネフリンおよびドーパミン再取込みインヒビターであるシブトラミンは、肥満を治療するのに有効であることが示されている(Wirthら(2001年)JAMA 286巻(11号):1331〜1339頁)。本発明の結晶性化合物には、NETを阻害するその期待される能力に起因して、この有用性も期待されており、本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する、肥満を治療する方法に関する。
【0053】
SNRIであるデスベンラファクシンは、閉経に伴う血管運動症状を軽減することが示されている(Deecherら(2007年)Endocrinology 148巻(3号):1376〜1383頁)。本発明の結晶性化合物には、SERTおよびNETを阻害するその期待される能力に起因して、この有用性も期待されており、本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の結晶性化合物を患者に投与するステップを包含する、閉経に伴う血管運動症状を治療する方法に関する。
【0054】
研究手段
本発明の結晶性化合物は、セロトニン再取込み阻害活性よびノルエピネフリン再取込み阻害活性の両方を有していると期待されるので、この化合物は、セロトニントランスポーターまたはノルエピネフリントランスポーターを有する生物学的系または試料を研究または試験するための研究手段として有用性を見い出すことが期待される。セロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターを有する適切な任意の生物学的系または試料は、インビトロかまたはインビボで実施できるそうした試験において使用することができる。このような試験に適している代表的な生物学的系または試料には、これらに限定されないが、細胞、細胞抽出物、原形質膜、組織試料、摘出臓器、哺乳動物(マウス、ラット、テンジクネズミ、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒト等)等が含まれる。哺乳動物は特に興味のあるものである。本発明の特定の1つの実施形態では、哺乳動物におけるセロトニン再取込みは、セロトニン再取込み阻害量の本発明の結晶性化合物を投与することによって阻害される。他の特定の実施形態では、哺乳動物におけるノルエピネフリン再取込みは、ノルエピネフリン再取込み阻害量の本発明の結晶性化合物を投与することによって阻害される。本発明の結晶性化合物は、そうした化合物を用いてバイオアッセイを実施することによって研究手段として使用することもできる。
【0055】
研究手段として使用する場合、セロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターを含む生物学的系または試料を通常、セロトニン再取込み阻害またはノルエピネフリン再取込み阻害量の本発明の結晶性化合物と接触させる。生物学的系または試料をその化合物に曝露した後、セロトニン再取込みおよび/またはノルエピネフリン再取込みを阻害する効果を、慣用的な手順および装置を用いて測定する。曝露は、細胞または組織を化合物と接触させるステップ、および、例えば腹腔内(i.p.)または静脈内(i.v.)による投与でその化合物を哺乳動物に投与するステップなどを包含する。この測定ステップは、応答を測定すること、すなわち定量分析を含むか、または、観察、すなわち定性分析を含むことができる。応答を測定することは、例えば、セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みアッセイ等の慣用的な手順および装置を用いて、生物学的系または試料に対する化合物の効果を測定することを含む。アッセイ結果は、活性レベルならびに所望の結果を達成するのに必要な化合物の量、すなわちセロトニン再取込み阻害およびノルエピネフリン再取込み阻害量を測定するために用いることができる。
【0056】
さらに、本発明の結晶性化合物は、他の化合物を評価するための研究手段として使用することができ、したがって、例えば、セロトニン再取込み阻害活性とノルエピネフリン再取込み阻害活性の両方を有する新規化合物を発見するためのスクリーニングアッセイにおいても有用である。この方法では、本発明の結晶性化合物を、試験化合物で得られた結果と本発明の結晶性化合物で得られた結果を比較できるようにするためのアッセイにおける標準品として使用して、あるとしたら、同等かまたはそれ以上の再取込み阻害活性を有する試験化合物を特定する。例えば、試験化合物または試験化合物群についての再取込みデータを、本発明の結晶性化合物についての再取込みデータと比較して所望の特性を有する試験化合物、例えば、あるとしたら、本発明の結晶性化合物と同等かまたはそれ以上の再取込み阻害活性を有する試験化合物を特定する。本発明のこの態様は、別個の実施形態として、対象の試験化合物を特定するための比較データ(適切なアッセイを用いて)の作成と試験データの分析の両方を含む。したがって、試験化合物は、(a)試験化合物でバイオアッセイを実施して第1のアッセイ値を提供するステップと、(b)本発明の結晶性化合物でバイオアッセイを実施して第2のアッセイ値を提供するステップであって、ステップ(a)をステップ(b)の前か、その後か、またはステップ(b)と同時に実施するステップと、(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値とステップ(b)からの第2のアッセイ値を比較するステップとを包含する方法による、バイオアッセイで評価することができる。例示的なバイオアッセイは、セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みアッセイを含む。
【0057】
医薬組成物および処方物
本発明の結晶性化合物は一般に、医薬組成物または処方物の形態で患者に投与される。そうした医薬組成物は、これらに限定されないが、経口、経直腸、経膣、経鼻、吸入、局所(経皮を含む)および非経口方式の投与を含む許容される任意の投与経路で患者に投与することができる。しかしながら、いったん本発明の結晶性化合物が処方に従って作製されたのなら、それは、もはや結晶形態でなくてもよく、すなわち、適切な担体に溶解されていてもよいことが、当業者によって理解される。さらに、本発明の結晶性化合物は、例えば、経口で1日当たり複数回の用量(例えば、日に2回、3回または4回)の用量、1日に1回の用量、1日に2回の用量、週に1回の用量等で投与することができる。
【0058】
したがって、一実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体および本発明の結晶性化合物を含む医薬組成物に関する。その組成物は、所望される場合、他の治療薬および/または処方剤を含むことができる。組成物を論じる場合、担体等のその処方物の他の成分と区別するために、「本発明の結晶性化合物」を本明細書では「活性薬剤」とも称する。
【0059】
本発明の医薬組成物は一般に治療有効量の本発明の結晶性化合物を含む。しかし、当業者は、医薬組成物が、治療有効量を超える量、すなわちバルク組成物を含むことができ、あるいは、治療有効量より少ない量、すなわち複数回投与に対して治療有効量を達成するように設計された個別単位用量を含むことができることを理解されたい。一般に、その組成物は、約0.01〜95重量%(これは、約0.01〜30重量%(例えば、約0.01〜10重量%)を包含する)の活性薬剤を含む。その実際の量は、処方物自体、投与経路、投薬頻度等に依存する。一実施形態では、経口剤形に適した組成物は、例えば、約5〜70重量%または約10〜60重量%の活性薬剤を含むことができる。例示的な1つの実施形態では、医薬組成物は、約1〜20mgの活性薬剤(これは、約1〜15mgの活性薬剤、および約1〜10mgの活性薬剤を包含する)を含む。他の例示的な実施形態では、医薬組成物は、約5〜20mgの活性薬剤(これは、約7.5〜15mgの活性薬剤を包含する)を含む。例えば、活性薬剤は、1mgおよび10mgの単位用量で配合することができる。
【0060】
慣用的な任意の担体または添加剤を本発明の医薬組成物で使用することができる。具体的な担体もしくは添加剤または担体もしくは添加剤の組合せの選択は、特定の患者を治療するために用いられる投与方法、または医学的状態もしくは病状のタイプに依存する。この関連では、特定の投与方法に適した組成物の調製は、十分に製薬技術分野の技術者の範囲内である。さらに、そうした組成物で使用する担体または添加剤は市場で入手することができる。他の例としては、慣用的な処方技術が、Remington: The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition、Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(2000年);およびH. C. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(1999年)に記載されている。
【0061】
薬学的に許容される担体として働く材料の代表的な例には、これらに限定されないが、以下のもの:ラクトース、グルコースおよびスクロース等の糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン等のデンプン;微結晶性セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース等のセルロース;粉末状トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤用ワックス等の添加剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイルおよび大豆油等の油;プロピレングリコール等のグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール等のポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;パイロジェン除去水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン等の圧縮噴射ガス;ならびに医薬組成物に使用される非毒性の他の適合物質が含まれる。
【0062】
医薬組成物は、通常、活性薬剤を、薬学的に許容される担体および1つまたは複数の任意選択の成分と完全かつ密に混合またはブレンドすることによって調製される。次いで、得られた均一なブレンド混合物を、慣用的な手順および装置を用いて、錠剤、カプセル剤、丸剤、キャニスター、カートリッジ、ディスペンサー等に成形または充填することができる。
【0063】
一実施形態では、これらの医薬組成物は経口投与に適している。1つの投薬レジメンの例は、日に1回または2回投与される経口剤形である。経口投与用に適した組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤;水性または非水性液体中の液剤または懸濁剤;水中油型または油中水型の液状乳剤;エリキシル剤またはシロップ剤等の形態(これらはそれぞれ、所定の量の活性薬剤を含む)であってよい。
【0064】
固体剤形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤等)で経口投与しようとする場合、組成物は通常、活性薬剤と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体(クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム等)とを含む。固体剤形は、デンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸等の充填剤すなわち増量剤;カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア等の結合剤;グリセロール等の保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および/または炭酸ナトリウム等の崩壊剤;パラフィン等の溶解遅延剤;四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;セチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレート等の湿潤剤;カオリンおよび/またはベントナイト粘土等の吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および/またはこれらの混合物等の滑沢剤;着色剤;ならびに緩衝剤も含むことができる。
【0065】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および酸化防止剤も医薬組成物中に存在していてよい。錠剤、カプセル剤、丸剤等のためのコーティング剤の例には、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、セルロースアセテートトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート等の腸溶コーティングのために使用されるものが含まれる。薬学的に許容される酸化防止剤の例には、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等の油溶性酸化防止剤;および、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤が含まれる。
【0066】
組成物は、例えば、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて活性薬剤の持続放出または制御放出を提供するように処方に従って作製することもできる。さらに、本発明の医薬組成物は乳白剤を含むことができ、その医薬組成物が胃腸管の特定の部分で(必要に応じて、遅延様式にて)活性薬剤だけを、またはそれを優先的に放出するように処方に従って作製することができる。使用できる埋め込み型組成物の例には重合物質およびワックスが含まれる。活性薬剤は、適切な場合、上記添加剤の1つまたは複数でマイクロカプセル化した形態であってもよい、
経口投与に適した液体剤形には、例として、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は一般に、活性薬剤および不活性賦形剤(例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、コーンオイル、胚芽油、オリーブ、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物)を含む。懸濁剤は、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにその混合物を含むことができる。
【0067】
経口で投与しようとする場合、本発明の医薬組成物をパッケージ化して単位剤形にすることができる。「単位剤形」という用語は、患者に投与するのに適している物理的に分離した単位、すなわち、各単位が、単独で、または、1つもしくは複数の追加の単位と合わせて、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性薬剤を含む物理的に分離した単位を指す。例えば、そうした単位剤形はカプセル剤、錠剤、丸剤等であってよい。
【0068】
他の実施形態では、本発明の組成物は吸入投与に適しており、これは一般にエアゾールまたは粉末の形態である。そうした組成物は通常噴霧器、乾燥粉末または定用量吸入器等の周知の送達装置を用いて投与される。噴霧装置は高速空気流を生じさせ、この高速空気流によって、患者の気道中に運ばれるミストとして組成物を噴霧する。例示的な噴霧器用処方は、活性薬剤を担体中に溶解させて溶液を生成させるか、または微粉化し、担体と一緒にして吸入可能なサイズの微粉化粒子の懸濁液を生成させることを含む。乾燥粉末吸入器は、活性薬剤を、吸気の際の患者の気流中で分散する自由流動性粉末として投与する。例示的な乾燥粉末処方物は、ラクトース、デンプン、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸、ポリラクチド−コ−グリコリド、およびこれらの組合せ等の添加剤とドライブレンドされた活性薬剤を含む。定用量吸入器は、圧縮噴射ガスを用いて一定量の活性薬剤を放出する。例示的な定用量処方物は、クロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロアルカン等の液化噴射剤中の活性薬剤の溶液または懸濁液を含む。そうした処方物の任意選択の成分としては、共溶媒(例えば、エタノールまたはペンタン)、および界面活性剤(トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチンおよびグリセリン)が挙げられる。そうした組成物は一般に、冷却または加圧したヒドロフルオロアルカンを、活性薬剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含む適切な容器に加えて調製する。懸濁液を調製するために、活性薬剤を微粉化し、次いで噴射剤と一緒にする。あるいは、懸濁処方物を、活性薬剤の微粒子上の界面活性剤のコーティングをスプレー乾燥することによって調製することができる。次いでその処方物を、吸入器の一部を形成するエアゾールキャニスター中に充填する。
【0069】
本発明の結晶性化合物は、非経口で(例えば、皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内注射で)投与することもできる。そうした投与のためには、活性薬剤は、滅菌した溶液、懸濁液または乳液で提供される。このような処方物を調製するための例示的な溶媒には、水、生理食塩水、低分子量アルコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリエチレングリコール、オイル、ゼラチン、および脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル)などが含まれる。典型的な非経口処方物は活性薬剤のpH4〜7の滅菌水溶液である。非経口処方物は、1つまたは複数の可溶化剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤も含むことができる。これらの処方物は、滅菌した注射用媒体、滅菌剤を用いるか、ろ過、照射または加熱して滅菌した状態にすることができる。
【0070】
本発明の結晶性化合物は、公知の経皮送達系および添加剤を用いて経皮投与することもできる。例えば、化合物を、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オン等の透過促進剤と混合し、パッチまたは同様の送達系に組み込むことができる。所望される場合、ゲル化剤、乳化剤および緩衝剤を含む追加の添加剤を、そうした経皮組成物で用いることができる。
【0071】
所望される場合、本発明の結晶性化合物は、1つまたは複数の他の治療薬と併用して投与することができる。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、本発明の結晶性化合物と同時投与される他の薬物を任意選択で含むことができる。例えば、組成物は、抗アルツハイマー病薬、抗けいれん剤(抗てんかん薬)、抗うつ剤、抗パーキンソン病薬、デュアルセロトニンノルエピネフリン再取込みインヒビター(SNRI)、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、ノルエピネフリン再取込みインヒビター、オピオイドアゴニスト(オピオイド鎮痛剤)、オピオイドアンタゴニスト、選択的セロトニン再取込みインヒビター、ナトリウムチャネル遮断薬、交感神経遮断薬およびこれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の薬物(「二次的薬剤」とも称される)をさらに含むことができる。そうした治療薬の多くの例は当該分野で周知であり、その例を本明細書で記載する。本発明の化合物を二次的薬剤と一緒にすることによって、2つの活性成分だけを用いて、三重の治療、すなわち、セロトニン再取込み阻害活性、ノルエピネフリン再取込み阻害活性および二次的薬剤に伴う活性(例えば、抗うつ剤活性)を実現することができる。2つの活性成分を含む医薬組成物は一般に、3つの活性成分を含む組成物より処方に従って作製するのが容易なので、そうした2成分組成物は、3つの活性成分を含む組成物より著しく優れた利点を提供する。したがって、本発明のさらに他の態様では、医薬組成物は、本発明の結晶性化合物、第2の活性薬剤、および薬学的に許容される担体を含む。第3、第4等の活性薬剤も組成物中に含むことができる。併用治療では、投与される本発明の化合物の量ならびに二次的薬剤の量は、単剤治療で通常投与される量より少なくてよい。
【0072】
本発明の結晶性化合物は、第2の活性薬剤と物理的に混合して両方の薬剤を含む組成物を形成させるか;あるいは、各薬剤は、患者に同時かまたは逐次的に投与される別個の異なった組成物で存在してよい。例えば、本発明の結晶性化合物は、慣用的な手順および装置を用いて、第2の活性薬剤と一緒にして、本発明の結晶性化合物および第2の活性薬剤を含む活性薬剤を合わせたものを形成させることができる。さらに、活性薬剤を、薬学的に許容される担体と一緒にして、本発明の結晶性化合物、第2の活性薬剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を形成させることができる。この実施形態では、組成物の成分を通常混合またはブレンドして物理的混合物を生成させる。次いで物理的混合物を、本明細書で説明する経路のいずれかにより治療有効量で投与する。
【0073】
あるいは、活性薬剤は、患者に投与する前に、別個の異なった形に保持することができる。この実施形態では、これらの薬剤は、投与の前に互いに物理的に混合されず、同時かまたは別個の組成物として別々の時に投与される。そうした組成物はキットの中に別個にパッケージ化するか、または一緒にパッケージ化することができる。別個の時間に投与する場合、二次的薬剤を、本発明の化合物を投与した後、本発明の化合物の投与と同時の時点〜投与後約24時間の範囲のどこかで24時間以内に投与する。これは逐次投与とも称される。したがって、本発明の結晶性化合物を、2つの錠剤(各活性薬剤に対して1つの錠剤を用いる)を用いて、別の活性薬剤と同時かまたは逐次的に経口投与することができる。ここで、逐次的投与とは、本発明の化合物の投与後直ちにか、またはある所定時間の後(例えば、1時間後または3時間後)に投与することを意味することができる。あるいは、上記の組み合わせたものは、異なる投与経路、すなわち、一方は経口で他方は吸入で投与することができる。
【0074】
一実施形態では、キットは、本発明の結晶性化合物を含む第1の剤形と、本明細書で示す二次的薬剤の1つまたは複数を含む少なくとも1つの追加の剤形を、本発明の方法を実施するのに十分な量で含む。第1の剤形と第2の(または第3等の)剤形は一緒に、患者の疾患または医学的状態を治療または予防するための治療有効量の活性薬剤を含む。
【0075】
含まれる場合、二次的薬剤は、治療有効量で存在する、すなわち、一般に本発明の結晶性化合物と同時投与した場合に治療上有益な効果をもたらす量で投与される。二次的薬剤は薬学的に許容される塩、溶媒和物、光学的に純粋な立体異性体等の形態であってよい、したがって、以下に示す二次的薬剤はそうしたすべての形態を包含しようとするものであり、これらは市販されており、または慣用的な手順および試薬を用いて調製することができる。
【0076】
代表的な抗アルツハイマー病薬には、これらに限定されないが、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスティグミン、セレギリン、タクリンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0077】
代表的な抗けいれん剤(抗てんかん薬)には、これらに限定されないが、アセタゾールアミド、アルブトイン、4−アミノ−3−ヒドロキシ酪酸、ベクラミド、カルバマゼピン、シンロミド、クロメチアゾール、クロナゼパム、ジアゼパム、ジメタジオン、エテロバーブ、エタジオン、エトスクシミド、エトトイン、フェルバメート、ホスフェニトイン、ガバペンチン、ラコサミド、ラモトリジン、ロラゼパム、臭化マグネシウム、硫酸マグネシウム、メフェニトイン、メホバルビタール、メトスクシミド、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、オクスカルバゼピン(oxcarbazepine)、パラメタジオン、フェナセミド、フェネツリッド、フェノバルビタール、フェンスクシミド、フェニトイン、臭化カリウム、プレガバリン、プリミドン、プロガビド、臭化ナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム、チアガビン、トピラマート、トリメタジオン、バルプロ酸、バルプロミド、ビガバトリン、ゾニサミドおよびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、抗けいれん剤は、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリンおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0078】
代表的な抗うつ剤には、これらに限定されないが、アジナゾラム、アミトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ドチエピン(例えば、塩酸ドチエピン)、ドキセピン、イミプラミン、ロフェプラミン、ミルタザピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ベンラファクシン、ジメリジンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0079】
代表的な抗パーキンソン病薬には、これらに限定されないが、アマンタジン、アポモルヒネ、ベンズトロピン、ブロモクリプチン、カルビドパ、ジフェンヒドラミン、エンタカポン、レボドパ、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、セレギリン、トルカポン、トリヘキシフェニジルおよびこれらの組合せが含まれる。
【0080】
代表的なデュアルセロトニン‐ノルエピネフリン再取込みインヒビター(SNRI)には、これらに限定されないが、ビシファジン、デスベンラファクシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、ネファゾドン、ベンラファクシンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0081】
代表的な非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)には、これらに限定されないが、アセメタシン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、アルクロフェナック、アルミノプロフェン、アンフェナク、アミプリロース、アモキシプリン、アニロラク、アパゾン、アザプロパゾン、ベノリラート、ベノキサプロフェン、ベズピペリロン、ブロペラモール、ブクロキシ酸、カルプロフェン、クリダナク、ジクロフェナク、ジフルニサール、ジフタロン、エノリカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロジン酸、フェノプロフェン、フェンチアザク、フェプラゾン、フルフェナム酸、フルフェニサル、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フロフェナク、イブフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、ケトロラク、ロフェミゾール、ロルノキシカム、メクロフェナム酸塩、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メサラミン、ミロプロフェン、モフェブタゾン、ナブメトン、ナプロキセン、ニフルム酸、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、オキシピナク、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、サルサラート、スドキシカム、スルファサラジン、スリンダク、スプロフェン、テノキシカム、チオピナク、チアプロフェン酸、チオキサプロフェン、トルフェナム酸、トルメチン、トリフルミダート、ジドメタシン、ゾメピラクおよびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、NSAIDは、エトドラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メロキシカム、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカムおよびこれらの組合せから選択される。特定の実施形態では、NSAIDは、イブプロフェン、インドメタシン、ナブメトン、ナプロキセン(例えば、ナプロキセンナトリウム)およびこれらの組合せから選択される。
【0082】
代表的な筋肉弛緩剤には、これらに限定されないが、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ジフルニサール、メタキサロン、メトカルバモールおよびこれらの組合せが含まれる。
【0083】
代表的なノルエピネフリン再取込みインヒビターには、これらに限定されないが、アトモキセチン、ブプロプリオンおよびブプロプリオン代謝産物であるヒドロキシブプロプリオン、マプロチリン、レボキセチン(例えば、(S,S)−レボキセチン)、ビロキサジンおよびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、ノルエピネフリン再取込みインヒビターは、アトモキセチン、レボキセチンおよびこれらの組合せから選択される。
【0084】
代表的なオピオイドアゴニスト(オピオイド鎮痛剤)およびアンタゴニストには、これらに限定されないが、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レバロルファン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、トラマドールおよびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、オピオイドアゴニストは、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、トラマドールおよびこれらの組合せから選択される。
【0085】
代表的な選択的セロトニン再取込みインヒビター(SSRI)には、これらに限定されないが、シタロプラムおよびシタロプラム代謝産物であるデスメチルシタロプラム、ダポキセチン、エスシタロプラム(例えば、シュウ酸エスシタロプラム)、フルオキセチンおよびフルオキセチンデスメチル代謝産物であるノルフルオキセチン、フルボキサミン(例えば、マレイン酸フルボキサミン)、パロキセチン、セルトラリンおよびセルトラリン代謝産物であるデスメチルセルトラリン(demethylsertraline)およびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、SSRIは、シタロプラム、パロキセチン、セルトラリンおよびこれらの組合せから選択される。
【0086】
代表的なナトリウムチャネル遮断薬には、これらに限定されないが、カルバマゼピン、ホスフェニトイン、ラモトリギン(lamotrignine)、リドカイン、メキシレチン、オクスカルバゼピン、フェニトインおよびこれらの組合せが含まれる。
【0087】
代表的な交感神経遮断薬には、これらに限定されないが、アテノロール、クロニジン、ドキサゾシン、グアネチジン、グアンファシン、モダフィニル、フェントラミン、プラゾシン、レセルピン、トラゾリン(例えば、塩酸トラゾリン)、タムスロシンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0088】
以下の処方物は、本発明の代表的な医薬組成物を示す。
【0089】
経口投与用の硬ゼラチンカプセル剤の例
本発明の結晶性化合物(50g)、スプレー乾燥したラクトース(440g)およびステアリン酸マグネシウム(10g)を十分にブレンドする。次いで得られた組成物を、硬ゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり500mgの組成物)。
【0090】
あるいは、結晶性化合物(20mg)を、デンプン(89mg)、微結晶性セルロース(89mg)およびステアリン酸マグネシウム(2mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を45番メッシュ米国標準篩(No.45 mesh U.S. sieve)に通し、硬ゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり200mgの組成物)。
【0091】
経口投与用のゼラチンカプセル処方物の例
本発明の結晶性化合物(100mg)を、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(50mg)およびデンプン粉末(250mg)と十分にブレンドする。次いで混合物をゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり400mgの組成物)。
【0092】
あるいは、結晶性化合物(40mg)を、微結晶性セルロース(Avicel PH103;259.2mg)およびステアリン酸マグネシウム(0.8mg)と十分にブレンドする。次いで混合物をゼラチンカプセルに充填する(サイズ#1、白色、不透明)(カプセル当たり300mgの組成物)。
【0093】
経口投与用の錠剤処方物の例
本発明の結晶性化合物(10mg)、デンプン(45mg)および微結晶性セルロース(35mg)を20番メッシュ米国標準篩に通し、十分に混合する。得られた顆粒剤を50〜60℃で乾燥し、16番メッシュ米国標準篩に通す。ポリビニルピロリドンの溶液(4mgを滅菌水の10%溶液として)をカルボキシメチルデンプンナトリウム(4.5mg)、ステアリン酸マグネシウム(0.5mg)およびタルク(1mg)と混合し、次いでこの混合物を16番メッシュ米国標準篩に通す。次いでカルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを顆粒剤に加える。混合した後、混合物を錠剤機で圧縮して100mgの重量の錠剤を得る。
【0094】
あるいは、結晶性化合物(250mg)を、微結晶性セルロース(400mg)、ヒュームド二酸化ケイ素(10mg)およびステアリン酸(5mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を圧縮して錠剤(錠剤当たり665mgの組成物)を形成させる。
【0095】
あるいは、結晶性化合物(400mg)を、コーンスターチ(50mg)、クロスカルメロースナトリウム(25mg)、ラクトース(120mg)およびステアリン酸マグネシウム(5mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を圧縮して一本割線入錠剤(錠剤当たり600mgの組成物)を形成させる。
【0096】
経口投与用の懸濁処方物の例
以下の成分を混合して、懸濁液10mL当たり100mgの活性薬剤を含む懸濁液を得る:
【0097】
【化2】

本発明の結晶性化合物
注射投与用の注射可能な処方物の例
本発明の結晶性化合物(0.2g)を0.4M酢酸ナトリウム緩衝液(2.0mL)とブレンドする。得られた溶液のpHを、必要に応じて0.5N塩酸または0.5N水酸化ナトリウム水溶液でpH4に調節し、次いで注射用に十分な水を加えて20mLの合計容積にする。次いで混合液を滅菌フィルター(0.22ミクロン)でろ過して注射で投与するのに適した滅菌溶液を得る。
【0098】
吸入投与用組成物の例
本発明の結晶性化合物(0.2mg)を微粉化し、次いでラクトース(25mg)とブレンドする。次いでブレンドしたこの混合物をゼラチン吸入カートリッジに充填する。カートリッジの内容物を、例えば乾燥粉末吸入器を用いて投与する。
【0099】
あるいは、微粉化した本発明の化合物(10g)を、脱塩水(200mL)にレシチン(0.2g)を溶解させることにより調製した溶液中に、分散させる。得られた懸濁液をスプレー乾燥し、次いで微粉化して、約1.5μm未満の平均直径を有する粒子を含む微粉化組成物を形成させる。次いでこの微粉化組成物を、吸入器で投与したとき用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で、加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む定用量吸入器カートリッジに充填する。
【0100】
あるいは、結晶性化合物(25mg)をクエン酸塩緩衝(pH5)等張食塩水(125mL)に溶解させる。混合物を攪拌し、化合物が溶解するまで超音波処理する。溶液のpHをチェックし、必要なら、1N水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加えてpH5に調節する。用量当たり約10μg〜約500μgの上記結晶性化合物を提供する噴霧装置を用いてその溶液を投与する。
【実施例】
【0101】
本発明の具体的な実施形態を例示するために以下の調製例および実施例を示す。しかし、これらの具体的な実施形態は、特に示されない限り、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0102】
別段の表示のない限り、以下の略語は以下の意味を有し、本明細書で使用されるが定義されていない他の任意の略語はその標準的な意味を有するものとする:
AcOH 酢酸
BSA ウシ血清アルブミン
DCM ジクロロメタン(すなわち、塩化メチレン)
DIAD ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
DMSO ジメチルスルホキシド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FBS ウシ胎仔血清
hDAT ヒトドーパミントランスポーター
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
hNET ヒトノルエピネフリントランスポーター
hSERT ヒトセロトニントランスポーター
5−HT 5−ヒドロキシトリプタミン
IPA イソプロピルアルコール
IPAc 酢酸イソプロピル
MeCN アセトニトリル(CHCN)
MeOH メタノール
NA ノルアドレナリン
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PPh トリフェニルホスフィン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TsCl p−トルエンスルホニルクロリドまたは4−メチルベンゼンスルホニルクロリド
本明細書で使用されるが定義されていない他の任意の略語はその標準的な一般に受け入れられている意味を有する。別段の言及のない限り、試薬、出発原料および溶媒等のすべての材料は、市場の供給業者(例えば、Sigma−Aldrich、Fluka Riedel−de Haen等)から購入したものであり、これをさらに精製することなく使用した。
【0103】
(調製例1)
4−(2−メタンスルホニルオキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【0104】
【化3】

4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(5.0g、160mmol、1.0当量)およびTHF(100mL、1.0mol)を窒素雰囲気下、室温で混合した。THF中の1.0Mボラン−THF錯体(32.7mL、32.7mmol、2.0当量)を10分間かけて滴下して加えた(5℃発熱、ガス発生)。混合物を室温で5分間攪拌し、次いで50℃で1時間加熱した。混合物を室温に冷却し、反応物をMeOH(30mL)で徐々にクエンチし(軽い発熱、相当なガスの発生)、次いでロータリーエバポレーションで濃縮した。この物質をMeOH(2×50mL)と共沸させた。粗生成物をEtOAc(100mL、1mol)に溶解し、NaHCO(50mL)、次いでNaCl飽和水溶液(50mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮して4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(4.4g)を透明な淡黄色油状物として得た。これは静置すると固化した。
【0105】
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(50.0g、172mmol、1.0当量)をDCM(500mL、8000mmol)に溶解させた。混合物を窒素雰囲気下、0℃で冷却し、メタンスルホン酸無水物(44.8g、257mmol、1.5当量)を一括して加えた。DIPEA(47.8mL、274mmol、1.6当量)を5分間かけて滴下して加え、混合物を0℃で90分間攪拌した。水(400mL、20mol)を加え、混合物を5分間攪拌した。相を分離させ、有機層を水(300mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、溶媒を除去して表題化合物(70g)を濃厚な油状物として得た。これをさらに精製することなく使用した。
【0106】
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ (ppm) 7.37−7.43 (m, 3H), 7.31 (d, 1H), 7.22 (m, 2H), 5.38 (s, 2H), 4.28 (m, 2H), 2.92−3.10 (m, 1H), 2.92 (s, 3H), 2.80−2.92 (m, 2H), 1.63−1.81 (m, 4H), 1.51 (s, 9H)。
【0107】
(実施例1)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩
【0108】
【化4】

4−(2−メタンスルホニルオキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(27.0g、60.6mmol、1.0当量)をMeCN(540mL)に溶解させ、KCO(25g、180mmol、3.0当量)および2,4,6−トリフルオロフェノール(13.5g、90.9mmol、1.5当量)に加えた。混合物を50℃で6時間強力に攪拌し、加熱をやめ(removed from the heat)、終夜攪拌した。混合物を室温に冷却し、EtOAc(700mL)および水(700mL)で希釈した。相を分離させ、有機層を水中の1.0M NaOH(2×400mL)およびNaCl飽和水溶液(1×400mL)で2回洗浄し、次いでNaSOで乾燥し、溶媒を除去して粗製4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)−フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(25.0g)を得た。小スケールで合成した粗生成物を一緒にして合計30gにし、クロマトグラフィー(ヘキサン中に0〜10%EtOAc)で精製して4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(22.0g)を得た。
【0109】
t−ブチルエステル(22.0g、31.3mmol、1.0当量)をEtOH(250mL、310mmol、10.0当量)中の1.25M HClと混合した。混合物を室温で8時間攪拌し、次いで−10℃で約48時間超保存した。大部分の溶媒をロータリーエバポレーションで除去した。得られた濃厚スラリーにEtOAc(80mL)を加え、続いて室温で2時間攪拌した。第1収量分をろ過により単離し、ろ過ケーキをEtOAc(20mL)で洗浄し、乾燥して表題化合物を塩酸塩の白色固体(8.5g、>99%純度)として得た。ろ液のHPLCは約25%の生成物面積%を示す。第2収量分のために、溶媒をロータリーエバポレーションで除去し、得られた固体(約10g)をEtOAc(40mL)中でスラリー化させ、最初は室温で、次いで60℃で、再度室温にして表題化合物を塩酸塩(1.7g、>99%純度)として得た。
【0110】
塩酸塩(18.5g、51.7mmol)の2つのロットをEtOAc(75mL、770mmol)と混合した。得られた濃厚ではあるが自由流動性のあるスラリーを65℃で30分間加熱し、室温に冷却し、ろ過した。フラスコとろ過ケーキをEtOAc(20mL)で洗浄し、固体を高真空下、室温で終夜乾燥して結晶性塩酸塩(18.2g、99.3%純度)を得た。
【0111】
XRPDにより良好な結晶性が観察された。LC−MS(2mLのMeCN:1M HCl(1:1)水溶液中に2mg;API150EX LC/MSシステム)によりその構造と一致していることが判明した。NMR(DMSO−d、Varian VnmrJ400)によりその構造およびその塩の形態と一致していることが判明した。
【0112】
(実施例2)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩
塩化アセチル(83.5mL、1170mmol)を徐々にEtOH(140mL、2.4mol)に加えた。EtOH(100mL、2.0mol)中に溶解した4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(55.0g、117mmol)を加え、得られた混合物を室温で6時間攪拌した。大部分の溶媒をロータリーエバポレーションで除去した。得られた濃厚スラリーにEtOAc(300mL)を加え、続いて溶媒を一部除去して約100mLにした。新鮮なEtOAc(200mL)を加え、得られたスラリーを1時間攪拌し、ろ過し、乾燥して塩酸塩(28.0g、約99%純度)を得た。ろ液を濃縮して濃厚ペーストにし、IPAc(100mL)を加え、1時間攪拌し、ろ過し、乾燥してさらに5.0gの塩酸塩(約99%純度)を得た。
【0113】
塩酸塩(83.0g、230mmol、約99%純度)の2つのロットをEtOAc(250mL、2.6mol)と混合した。得られたスラリーを70℃で加熱し、次いで徐々に室温に冷却し、続いて終夜攪拌した。得られた自由流動性スラリーをろ過し、ろ過ケーキをEtOAc(50mL)で洗浄し、次いで高真空下で約48時間乾燥して結晶性塩酸塩(81.0g、>99%純度)を得た。H NMR(DMSO−d、400Hz)により実施例1の構造およびその塩の形態と一致していることが判明した。
【0114】
結晶性塩酸塩(50.0g、1.40mol、>99%純度)をIPA(250mL、3.3mol)に溶解し、得られたスラリーを75℃に加熱した。水(25mL、1.4mol)を加えた。5分間で完全に溶解したことが認められ、溶液の内温は65℃であった。溶液を徐々に室温に冷却し、次いで室温で終夜攪拌した。得られた固体をろ過し、空気雰囲気下で2時間乾燥して半乾きの生成物を得た。次いで固体を高真空下、室温で約48時間乾燥して表題の結晶性塩酸塩(44.1g、99.5%純度)を得た。XRPDおよびDSCによりこの物質は良好な結晶性を示した。
【0115】
(実施例3)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩
表題結晶性塩酸塩(151.1g、99.5%純度)を、175.0gの塩酸塩と、5%水のIPA(10倍容積)(全体で90mLの水と1.8LのIPA)を用いた同様の方法でも調製した。
【0116】
(実施例4)
粉末X線回折
粉末X線回折パターンを、Rigaku Miniflex PXRD回折計でCu Kα(30.0kV、15.0mA)放射線を用いて得た。分析は、ゴニオメーターを用いて、2〜40°の2θ角の範囲にわたって0.03°の刻み幅で、2°(2θ)/分の連続走査方式で稼働させて行った。試料を、石英製標本ホルダー上で粉末状物質の薄層として調製した。装置は、ケイ素金属標準品を用いて±0.02°の2θ角で較正した。実施例2の結晶性塩酸塩についての代表的なPXRDパターンを図1に示す。粒子サイズによる相対強度に対する干渉を低減させるために、試験する前に試料を手でつぶした。
【0117】
図1に示す多くの強い粉末回折ピークと比較的平らな基線は、実施例2の結晶性塩酸塩が良好な結晶性をもっていることを強く示唆している。
【0118】
実施例1の結晶性塩酸塩についても粉末X線回折パターンを得たが、これは実施例2の結晶性塩酸塩のものと一致していることが分かった。
【0119】
(実施例5)
熱分析
示差走査熱量測定(DSC)を、熱分析コントローラーを備えたTA InstrumentsモデルQ−100モジュールを用いて実施した。データを収集し、TA Instrumentsサーマルソルーションソフトウェアを用いて解析した。実施例2の結晶性塩酸塩の2.8mgの試料を、フタ付きのアルミ製皿に正確に量り込んだ。22℃で5分間等平衡時間をもたせた後、10℃/分の線形加熱勾配で試料を22℃から250℃に加熱した。代表的なDSCサーモグラフを図2に示す。
【0120】
DSCサーモグラフにより、本発明の結晶性化合物は、融点が約196.9℃であり、200.0℃未満で熱分解を起こさない優れた熱安定性を有していることが実証されている。
【0121】
代表的なTGAトレースを図2に示す。この図は、実施例2の結晶形態の試料が室温から150.0℃で僅かな重量(約0.5%)を失っていることを示しており、これは残留水分または溶媒の損失と一致する。
【0122】
DSCサーモグラフおよびTGAトレースを、実施例1の結晶性塩酸塩についても得た。これは、実施例2の結晶性塩酸塩のものと一致していることが分かった。
【0123】
(実施例6)
動的水分収着評価
動的水分収着(DMS)評価(水分収着−脱着プロファイルとしても公知である)を、実施例2の結晶性塩酸塩について、VTI大気微量てんびん、SGA−100システム(VTI Corp.、Hialeah、FL 33016)を用いて実施した。約7.3mgの試料サイズを用い、分析の開始時に湿度を周囲値にセットした。DMS分析は、2%相対湿度〜90%相対湿度の全湿度範囲にわたって、5%相対湿度/ステップの走査速度で実施した。DMSの稼働は25℃で等温的に実施した。代表的なDMSプロファイルを図3に示す。
【0124】
DMSプロファイルは、本発明の結晶性化合物が、吸湿性の小さい可逆的な収着/脱着プロファイルをもつことを実証している。結晶性化合物は、2%相対湿度〜最大で90%相対湿度の広い湿度範囲で曝露したときわずかな重量増を示し、最大で90%相対湿度に曝露したとき約2.0重量%未満の重量増を示す。これは、この結晶形態が、周囲条件で極わずかな吸湿性のリスクしかもたないことを示している。
【0125】
(実施例7)
固体の状態の安定性評価
固体の状態の安定性試験を、ガラス中、−20℃、5℃、25℃/60%相対湿度(開放容器)および40℃/75%相対湿度(密閉および開放容器)保存条件で、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの結晶性塩酸塩の代表的なロットで開始した。28日間保存した後、すべての条件下で保持した試料について、化学的純度、キラル純度、PXRD、DSCおよびTGAプロファイルにおいて検出可能な変化は認められなかった。
【0126】
(実施例8)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの単一のHCl塩結晶のX線構造分析
結晶性塩酸塩(105.0mg、>99%純度)を、実施例2で説明したようにしてEtOAcから調製した。次いで、結晶性塩酸塩を5mLのIPA/水(10%水)溶液と混合した。混合物を、大部分の物質が溶液に溶解するまで室温(約23℃)で振とうさせた。次いで溶液を60℃で予熱した加熱プレート上に置いた。5分後、溶液は透明になった。これは、加熱試料溶液中に固体残留物が全く存在しないことを示している。次いで加熱装置を停止させた(合計加熱時間、約10分間)。溶液を2時間超静置し徐々に室温にした。その時点で溶液は白濁していた。次いで溶液を4℃に冷却した。約7日間後、大きな結晶が観察された。次いで結晶を単離乾燥した。
【0127】
結晶構造を、単結晶X線回折計(MoKα放射線を用いる、Oxford Cryostream液体窒素クーラーを備えたNonius Kappa−CCD回折計)で測定した。塊状の結晶のサイズは0.45×0.25×0.20mmであった。大きな結晶を、結晶学的なディメンションに沿ってカットして、分析に適した結晶サイズを得た(図5)。データを294°Kおよび120°Kの温度でとった。
【0128】
結晶は、以下の単位格子パラメーターを有する単斜対称(P2/C空間群)を示した:
軸(Å):a=11.631、b=7.057、c=42.532
角度(°):B=104.595、A=C=90
V(Å):3378.4
計算密度(g/cm):1.430
リフレクション#:20143
結晶は、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)−フェニル]ピペリジンカチオン、クロリドアニオンと水分子からなることが分かった。各単位格子では、8個の薬物分子対(8個の4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンカチオンと8個のクロリドアニオン)と会合した2.56個の水分子が存在する、すなわち、それぞれ3個の薬物分子対当たり約1個の水分子が存在しており、各薬物分子対は1個の4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンカチオンと1個のクロリドアニオンからなる。したがって、本発明の一実施形態では、4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)−フェニル]ピペリジン塩酸塩1モルごとに約0.32モルの水が存在し;そうした結晶の式は:1 4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン.1 HCl.0.32 HOと表すことができる。
【0129】
結晶は水分子の周りに構築されており、水含有量はその単位格子中の水占有率から決定した。水占有率は、原子の熱運動パラメーターと実測された全体的構造因子を用いて算出した。
【0130】
(アッセイ1)
hSERT、hNETおよびhDAT結合アッセイ
トランスポーターでの試験化合物のpK値を測定するために、膜放射性リガンド結合アッセイを用いて、それぞれのヒト組換えトランスポーター(hSERT、hNETまたはhDAT)を発現する細胞から調製された膜への標識付きリガンド(H−シタロプラム、H−ニソキセチンまたはH−WIN35428)結合の競合的阻害を測定した。
【0131】
hSERT、hNETまたはhDATを発現する細胞からの膜調製
hSERTまたはhNETでそれぞれ安定的に形質移入された組換えヒト胎児腎臓細胞(HEK−293)誘導細胞系を、加湿インキュベーター中、5%CO、37℃で10%透析FBS(hSERTについて)またはFBS(hNETについて)、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミンおよび250μg/mlのアミノグリコシド系抗生物質G418を補われたDMEM培地で成長させた。培養が80%コンフルエンス(confluence)に達したら、細胞をPBS(Ca2+およびMg2+なし)中で十分に洗浄し、PBS中の5mM EDTAでリフトした。細胞を遠心分離でペレット化し、溶解緩衝液(10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTAを含む)に再懸濁し、ホモジナイズし、遠心分離でペレット化し、50mM Tris−HCl、pH7.5および10%スクロースに4℃で再懸濁した。膜懸濁液のタンパク質濃度をBio−Rad Bradfordタンパク質アッセイキットを用いて測定した。膜を瞬間凍結し、−80℃で保存した。hDAT(CHO−DAT)を発現するチャイニーズハムスター卵巣膜をPerkinElmerから購入し、−80℃で保存した。
【0132】
結合アッセイ
結合アッセイを、96ウェルアッセイプレートにおいて、200μlの全容積のアッセイ緩衝液(50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4)中で、それぞれSERT、NETおよびDATについて0.5、1および3μgの膜タンパク質で実施した。H−シタロプラム、H−ニソキセチンまたはH−WIN35428についての放射性リガンドK値を測定するための飽和結合試験をそれぞれ、0.005〜10nM(H−シタロプラム);0.01〜20nM(H−ニソキセチン)および0.2〜50nM(H−WIN35428)の範囲の12の異なる放射性リガンド濃度を用いて実施した。試験化合物のpK値を測定するための置換アッセイを、10pM〜100μMの範囲の11の異なる濃度の試験化合物を用いて、1.0nM H−シタロプラム、1.0nM H−ニソキセチンまたは3.0nM H−WIN35428で実施した。
【0133】
試験化合物のストック溶液(DMSO中に10mM)を調製し、希釈緩衝液(50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4、0.1%BSA、400μMアスコルビン酸)を用いて連続希釈液を作製した。hSERT、hNETまたはhDATアッセイのために、非特異的放射性リガンド結合をそれぞれ1μMデュロキセチン、1μMデシプラミンまたは10μM GBR12909(それぞれ希釈緩衝液中に)の存在下で測定した。
【0134】
22℃で60分間(または平衡に達するのに十分な時間)インキュベーションした後、膜を、0.3%ポリエチレンイミンで前処理した96ウェルUniFilter GF/Bプレートを用いた迅速ろ過により収穫し、300μlの洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、0.9%NaCl、pH7.5、4℃で)で6回洗浄した。プレートを室温で終夜かけて乾燥し、約45μlのMicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)を加え、液体シンチレーションスペクトロスコピーで結合放射能を定量した。競合的阻害曲線および飽和等温線を、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用いて分析した。IC50値を、Prism GraphPadのシグモイド型用量応答(可変勾配)アルゴリズムを用いて濃度応答曲線から得た。放射性リガンドについてのKおよびBmax値を、Prism GraphPadの飽和結合Global Fitアルゴリズムを用いて飽和等温線から得た。試験化合物についてのpK(Kの10を底とした負の対数)値を、チェン−プラソフ式(Cheng & Prusoff(1973年)Biochem.Pharmacol.22巻(23号):3099〜3108頁):K=IC50/(1+[L]/K)(式中、[L]=放射性リガンドの濃度)を用いて最適IC50値および放射性リガンドのK値から計算した。
【0135】
実施例1の化合物(TFA塩)をこのアッセイで試験して、SERT pK≧7.9およびNET pK≧8.0を示すことが分かった。
【0136】
(アッセイ2)
hSERT、hNETおよびhDAT神経伝達物質取込みアッセイ
トランスポーターでの試験化合物のpIC50値を測定するために、神経伝達物質取込みアッセイを用いて、それぞれのトランスポーター(hSERT、hNETまたはhDAT)を発現する細胞中へのH−セロトニン(H−5−HT)、H−ノルエピネフリン(H−NE)およびH−ドーパミン(H−DA)取込みの競合的阻害を測定した。
【0137】
H−5−HT、H−NEおよびH−DA取込みアッセイ
hSERT、hNETまたはhDATでそれぞれ安定的に形質移入されたHEK−293誘導細胞系を、加湿インキュベーター中、5%CO、37℃で、10%透析FBS(hSERTについて)またはFBS(hNETおよびhDATについて)、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミンおよび250μg/mlのアミノグリコシド系抗生物質G418(hSERTおよびhNETについて)または800μg/ml(hDATについて)を補われたDMEM培地で成長させた。培養が80%コンフルエンスに達したら、細胞をPBS(Ca2+およびMg2+なし)中で十分に洗浄し、PBS中の5mM EDTAでリフトした。1100rpmで5分間遠心分離にかけて細胞を収穫し、PBSに再懸濁して1回洗浄し、次いで遠心分離にかけた。上澄み液を廃棄し、細胞ペレットを、HEPES(10mM)、CaCl(2.2mM)、アスコルビン酸(200μM)およびパーギリン(200μM)pH7.4を含むクレブス−リンガー重炭酸塩緩衝液中、室温で緩やかに摩砕して再懸濁した。細胞懸濁液中の細胞の最終濃度は、SERT、NETおよびDAT細胞系についてそれぞれ、7.5×10細胞/ml、1.25×10細胞/mlおよび5.0×10細胞/mlであった。
【0138】
神経伝達物質取込みアッセイを、96ウェルアッセイプレートにおいて、400μLの全容積のアッセイ緩衝液(HEPES(10mM)、CaCl(2.2mM)、アスコルビン酸(200μM)およびパーギリン(200μM)、pH7.4を含むクレブス−リンガー重炭酸塩緩衝液)中、SERTおよびNETについてそれぞれ1.5×10および2.5×10細胞で実施した。試験化合物のpIC50値を測定するための競合アッセイを10pM〜100μMの範囲の11の異なる濃度で実施した。試験化合物のストック溶液(DMSO中に10mM)を調製し、50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4、0.1%BSA、400μMアスコルビン酸を用いて連続希釈液を調製した。試験化合物をそれぞれの細胞で、37℃で30分間インキュベートし、続いて放射性標識化神経伝達物質、H−5−HT(最終濃度20nM)、H−NE(最終濃度50nM)またはH−DA(最終濃度100nM)を加えた。非特異的神経伝達物質取込みを、それぞれhSERT、hNETまたはhDATアッセイについて、2.5μMデュロキセチンまたは2.5μMデシプラミン(それぞれ希釈緩衝液中に)の存在下で測定した。
【0139】
37℃で10分間、放射性リガンドでインキュベーションした後、細胞を、1%BSAで前処理した96ウェルUniFilter GF/Bプレートを用いた迅速ろ過により収穫し、650μl洗浄緩衝液(氷冷PBS)で6回洗浄した。プレートを37℃で終夜かけて乾燥し、約45μlのMicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)を加え、取り込まれた放射能を液体シンチレーションスペクトロスコピーで定量した。競合的阻害曲線をGraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用いて分析した。IC50値を、Prism GraphPadのシグモイド型用量応答(可変勾配)アルゴリズムを用いて、濃度応答曲線から得た。
【0140】
(アッセイ3)
エクスビボでのSERTおよびNETトランスポーターの占有率試験
エクスビボでの放射性リガンド結合および神経伝達物質取込みアッセイを用いて、試験化合物のインビボでの投与(急性または慢性)に続く、選ばれた脳領域におけるインビボでのSERTおよびNETの占有率を測定した。適切な用量(0.0001〜100mg/kg)での試験化合物の投与(静脈内、腹腔内、経口、皮下または他の経路で)に続いて、ラット(グループ当たり≧n=4)を、特定の時点(10分間〜48時間)で骨頭切除により安楽死させ、氷上で脳を切り裂いた。関係する脳の領域を切り裂き、凍結させ、使用時まで−80℃で保存した。
【0141】
エクスビボでのSERTおよびNET放射性リガンド結合アッセイ
エクスビボでの放射性リガンド結合アッセイのため、SERT(H−シタロプラム)およびNET−(H−ニソキセチン)選択性放射性リガンドと、媒体処理した動物および試験化合物処理した動物から調製したラットの脳粗製ホモジネートとの会合の初速度をモニターした(Hessら(2004年)J.Pharmacol. Exp. Ther. 310巻(2号):488〜497頁を参照されたい)。粗製脳組織ホモジネートを、0.15mL(mg湿重量当たり)の50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4緩衝液中で、凍結組織片をホモジナイズして調製した。放射性リガンド会合アッセイを、96ウェルアッセイプレートにおいて、200μlの全容積のアッセイ緩衝液(50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、0.025%BSA、pH7.4)中で、650μgの湿重量組織(25μgタンパク質に相当)で実施した。ホモジネートを、それぞれH−シタロプラム(3nM)およびH−ニソキセチン(5nM)で最大で5分間インキュベートし、続いて0.3%ポリエチレンイミンで前処理した96ウェルUniFilter GF/Bプレートを用いた迅速ろ過でアッセイを終了させた。次いでフィルターを300μl洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、0.9%NaCl、pH7.4、4℃で)で6回洗浄した。非特異的放射性リガンド結合を、H−シタロプラムまたはH−ニソキセチンについてそれぞれ1μMデュロキセチンまたは1μMデシプラミン(despiramine)の存在下で測定した。プレートを室温で終夜かけて乾燥し、約45μlのMicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)を加え、液体シンチレーションスペクトロスコピーで結合放射能を定量した。H−シタロプラムおよびH−ニソキセチンの会合の初速度を、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用いて線形回帰により測定した。媒体処理した動物からの脳組織ホモジネートへの放射性リガンド会合の平均速度を決定した。次いで試験化合物の占有率%を以下の式:
占有率%=100×(1−(試験化合物処理した組織についての会合初速度/媒体処理した組織についての会合平均速度))
を用いて決定した。ED50値を、試験化合物の用量のlog10対占有率%でプロットして決定した。ED50値を、GraphPad Prismのシグモイド型用量応答(可変勾配)アルゴリズムを用いて濃度応答曲線から得た。
【0142】
エクスビボでのSERTおよびNET取込みアッセイ
媒体処理した動物および試験化合物処理した動物から調製したラット脳粗製ホモジネートへのH−5−HTまたはH−NEの取込みによるエクスビボでの神経伝達物質取込みアッセイを用いて、インビボでのSERTおよびNETトランスポーター占有率を測定した(Wongら(1993年)Neuropsychopharmacology 8巻(1号):23〜33頁を参照されたい)。粗製脳組織ホモジネートを、0.32Mスクロース、200μMアスコルビン酸および200μMパーギリンを含む0.5mL(mg湿重量当たり)の10mM HEPES緩衝液pH7.4中、22℃で凍結組織片をホモジナイズして調製した。神経伝達物質取込みアッセイを、96ウェルAxygenプレートにおいて、350μlの全容積のアッセイ緩衝液(10mM HEPES、2.2mM CaCl、200μMアスコルビン酸および200μMパーギリン、pH7.4、を含むクレブス−リンガー重炭酸塩緩衝液)中で、50μgタンパク質で実施した。ホモジネートを、それぞれH−5−HT(20nM)およびH−NE(50nM)で、37℃で5分間インキュベートし、続いて1%BSAで前処理した96ウェルUniFilter GF/Bプレートを用いた迅速ろ過でアッセイを終了させた。プレートを650μl洗浄緩衝液(氷冷PBS)で6回洗浄し、37℃で終夜乾燥し、次いで約45μlのMicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)を加えた。取り込まれた放射能を液体シンチレーションスペクトロスコピーで定量した。非特異的神経伝達物質取込みを、組織ホモジネートをH−5−HT(20nM)またはH−NE(50nM)で4℃で5分間インキュベートする並行したアッセイで測定した。
【0143】
(アッセイ4)
他のアッセイ
試験化合物の薬理学的特性を評価するために用いた他のアッセイには、これらに限定されないが、hSERTまたはhNETを発現する細胞から調製された膜を用いた冷リガンド結合動力学アッセイ(MotulskyおよびMahan(1984年)Molecular Pharmacol. 25巻(1号):1〜9頁);放射能標識した、例えばトリチウム化した試験化合物を用いた慣用的な膜放射性リガンド結合アッセイ;例えば齧歯動物またはヒトの脳からの天然組織を用いた放射性リガンド結合アッセイ;ヒトまたは齧歯動物の血小板を用いた神経伝達物質取込みアッセイ;齧歯動物の脳からの粗製のまたは純粋なシナプトソーム標本を用いた神経伝達物質取込みアッセイが含まれる。
【0144】
(アッセイ5)
ホルマリン足試験
化合物を、50μlのホルマリン(5%)注射によって誘発される行動反応を阻止する能力について評価する。金属バンドを、複数のオスのSD(Sprague−Dawley)ラット(200〜250g)の左後足に貼り、各ラットを、プラスチック円筒(直径15cm)の中で60分間そのバンドに馴じませる。薬学的に許容される媒体中で化合物を調製し、ホルマリンチャレンジの前の予め指定された時間に全身的に(腔内(i.p.)、経口(p.o.))投与する。注射された(バンドをした)後足のフリンチングからなる無意識の侵害受容行動を、自動侵害受容分析器(UCSD Anesthesiology Research、San Diego、CA)を用いて60分間連続的にカウントする。被験体の抗侵害受容特性を、媒体で処置したラットと化合物で処置したラットにおけるフリンチの数を比較して判定する(Yakshら、「An automated flinch detecting system for use in the formalin nociceptive bioassay」(2001年)J. Appl. Physiol. 90巻(6号):2386〜2402頁)。
【0145】
(アッセイ6)
脊髄神経結紮モデル
化合物を、神経損傷によって誘発される接触性アロディニア(非侵害性の機械的刺激に対する高い感受性)を逆転させるその能力について評価する。オスのSDラットを、KimおよびChung、「An experimental model for peripheral neuropathy produced by segmental spinal nerve ligation in the rat」(1992年)Pain 50巻(3号):355〜363頁に記載されているようにして外科的に用意した。機械的感受性を、神経損傷の前後で、非侵害性機械的刺激に反応した50%引っ込め率(withdrawal)で判定する(Chaplanら、「Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw」(1994年)J. Neurosci. Methods 53巻(1号):55〜63頁)。外科処置後1〜4週間、薬学的に許容される媒体中で化合物を調製し、全身的に(腔内、経口)投与する。処置前後での、神経損傷により誘発された機械的感受性の度合いは、化合物の抗侵害受容特性の指標として役に立つ。
【0146】
本発明を、その特定の態様または実施形態を参照して説明してきたが、当業者は本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、変更を加えるかまたは等価物で置き換えることができることを理解する。さらに、適用される特許法および特許規則で認められる範囲で、本明細書で引用したすべての出版物、特許および特許出願を、各文献が個別に参照により本明細書に組み込まれているのと同程度に、その全体を参照により本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.44±0.20、10.22±0.20、17.16±0.20および21.78±0.20の2θ値での回折ピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]−ピペリジンの結晶性塩酸塩。
【請求項2】
8.11±0.20、13.18±0.20、16.06±0.20、18.38±0.20、23.76±0.20、26.32±0.20、27.24±0.20、29.60±0.20および31.94±0.20から選択される2θ値での1つまたは複数の追加の回折ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ピーク位置が図1に示すパターンのピーク位置と実質的に一致する粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
約196.9℃の融点を有する示差走査熱量測定トレースを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
図2に示す示差走査熱量測定トレースと実質的に一致する示差走査熱量測定トレースを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
薬学的に許容される担体および請求項1に記載の結晶性化合物を含む医薬組成物。
【請求項7】
抗アルツハイマー病薬、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗パーキンソン病薬、デュアルセロトニン−ノルエピネフリン再取り込みインヒビター、非ステロイド系抗炎症剤、ノルエピネフリン再取り込みインヒビター、オピオイドアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、選択性セロトニン再取り込みインヒビター、ナトリウムチャネル遮断薬、交感神経遮断薬およびそれらの組合せから選択される二次的治療剤をさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の結晶性塩酸塩を調製する方法であって:
a)4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの塩酸塩を酢酸エチルおよびエタノールで処理して完全に溶解させるステップと;
b)冷却して結晶化させるステップと;
c)得られた固体を単離して請求項1に記載の前記結晶性塩酸塩を得るステップと
を含む方法。
【請求項9】
d)前記結晶性塩酸塩をイソプロパノールおよび水で処理して完全に溶解させるステップと;
e)冷却して結晶化させるステップと;
f)得られた固体を単離して請求項1に記載の前記結晶性塩酸塩を得るステップと
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法によって調製される生成物。
【請求項11】
請求項1に記載の前記結晶性塩酸塩を生成させるステップを含む4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンを精製する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって調製される生成物。
【請求項13】
医薬品を製造するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項14】
前記医薬品が、疼痛性障害、抑うつ障害、情動障害、注意欠陥過活動性障害、認知障害、腹圧性尿失禁、慢性疲労症候群、肥満、および閉経に伴う血管運動症状を治療するのに有用である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記医薬品が疼痛性障害を治療するのに有用である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記疼痛性障害が、神経因性疼痛または線維筋痛である、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記医薬品が、慢性の腰痛または変形性関節症を治療するのに有用である、請求項13に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−508760(P2012−508760A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536491(P2011−536491)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064306
【国際公開番号】WO2010/056939
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】