説明

4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン化合物



本発明は式Iの化合物(a、R、およびR3〜6は明細書で定義する通りである)または薬学的に許容されるその塩に関する。式Iの化合物はセロトニンおよびノルエピネフリン再取込みインヒビターである。本発明は、そうした化合物を含む医薬組成物、そうした化合物の使用方法ならびにそうした化合物を調製するためのプロセスおよび中間体にも関する。本発明はまた、神経因性疼痛および他の病気等の疼痛性障害を治療するためのそうした化合物の使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロトニン(5−HT)およびノルエピネフリン(NE)再取込みインヒビターとして活性を有する4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン化合物に関する。本発明は、そうした化合物を含む医薬組成物、そうした化合物を調製するためのプロセスおよび中間体ならびに神経因性疼痛および他の病気等の疼痛性障害を治療するためのそうした化合物の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、実際的または潜在的な組織損傷に伴うか、あるいはそうした損傷に関して表現される不愉快な感覚的および感情的体験である(International Association for the Study of Pain (IASP)、Pain Terminology)。慢性疼痛は、急性疼痛を超えて、または損傷が治癒する期待時間を超えて持続する(非特許文献1)。神経因性疼痛は、神経系における一次病変または機能不全によって開始されるまたは引き起こされる疼痛である。末梢神経因性疼痛は、その病変または機能不全が末梢神経系に影響を及ぼす際に起こり、中枢神経因性疼痛は、その病変または機能不全が中枢神経系(IASP)に影響を及ぼす際に起こる。
【0003】
神経因性疼痛を治療するために、例えば、三環系抗うつ薬(TCA)、セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みインヒビター(SNRI)、カルシウムチャネルリガンド(例えば、ガバペンチンおよびプレガバリン)、局所用リドカインならびにオピオイドアゴニスト(例えば、モルヒネ、オキシコドン、メタドン、レボルファノールおよびトラマドール)を含むいくつかの種類の治療薬が現在用いられている。しかし、神経因性疼痛は治療するのが非常に困難であり得、よくても、患者のせいぜい40〜60%しかその疼痛の部分的軽減を達成できない(非特許文献2)。さらに、神経因性疼痛を治療するのに現在使用されている治療薬はすべて副作用(例えば、吐き気、鎮静作用、目まいおよび眠気)を有しており、これは患者によってはその有効性が限定される恐れがある(非特許文献2)。
【0004】
デュロキセチンおよびベンラファクシン等のSNRIは、神経因性疼痛を治療するための一次治療としてしばしば用いられる。これらの薬剤は、セロトニントランスポーターとノルエピネフリントランスポーター(それぞれSERTとNET)に結合することによって、セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン(5−hydroxytrypamine)、5−HT)とノルエピネフリン(NE)の両方の再取込みを阻害する。しかし、デュロキセチンとベンラファクシンはどちらも、NETと比較してSERTに対して高い親和性を有している(非特許文献3)。
【0005】
前臨床研究によれば、神経因性および他の慢性の疼痛状態の最大限有効な治療のためには、SERTとNETの両方の阻害が必要であり得ることが提案されている(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;および非特許文献7)。しかし、臨床研究によれば、SERTの阻害は、吐き気や他の副作用と関係していることが報告されている(非特許文献8)。したがって、よりバランスのとれたSERTとNETの親和性を有する治療薬、または若干高いNETの親和性を有する治療薬は慢性疼痛を、吐き気等の副作用もそれほどもたらさずに治療するのに特に有用であると期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】American Pain Society.「Pain Control in the Primary Care Setting.」2006年:15
【非特許文献2】Dworkinら(2007年)「Pain」132巻:237〜251頁
【非特許文献3】Vaishnaviら(2004年)「Biol. Psychiatry」55巻(3号):320〜322頁
【非特許文献4】Jonesら(2006年)「Neuropharmacology」51巻(7〜8号):1172〜1180頁
【非特許文献5】Vickersら(2008年)「Bioorg. Med. Chem. Lett.」18巻:3230〜3235頁
【非特許文献6】Fishbainら(2000年)「Pain Med.」1巻(4号):310〜316頁
【非特許文献7】Mochizucki(2004年)「Human Psychopharmacology」19巻:S15〜S19頁
【非特許文献8】Greistら(2004年)「Clin. Ther.」26巻(9号):1446〜1455頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、神経因性疼痛等の慢性疼痛を治療するのに有用な新規化合物が依然として必要である。特に、慢性疼痛を治療するのに有用であり、吐き気等の副作用の少ない新規化合物が依然として必要である。高い親和力(例えば、pK≧8.0またはK≦10nM)でSERTとNETの両方を阻害し、かつその阻害のバランスがとれている(例えば、SERT/NET結合K比で0.1〜100)新規な二重作用化合物も依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、セロトニン再取込み阻害活性およびノルエピネフリン再取込み阻害活性を有することが分かった新規化合物を提供する。したがって、本発明の化合物は、神経因性疼痛等のセロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターの阻害によって治療できる疾患および障害のための治療薬として有用であり、かつ有利であると期待される。
【0009】
本発明の一態様は、式Iの化合物
【0010】
【化1】

(式中、aは0、1、2、3または4であり;各Rは独立にハロまたはトリフルオロメチルであり;Rは水素、ハロまたは−C1〜6アルキルであり;R、RおよびRは独立に水素またはハロである)
または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0011】
本発明の他の態様は、式IIの化合物
【0012】
【化2】

(式中:
(a)RおよびRは水素であり、かつ:
(i)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは0であるか;
(ii)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロ、4,6−ジフルオロもしくは5,6−ジフルオロであるか;
(iv)Rはフルオロであり、Rはクロロであり、aは0であるか;
(v)Rはクロロであり、Rはフルオロであり、aは0であるか;または、
(vi)Rはブロモであり、Rはクロロであり、aは0であり;あるいは、
(b)RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、Rはクロロであり、かつ:
(i)aは0であるか;
(ii)aは1であり、Rは5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;または、
(iii)aは2であり、Rは4,6−ジフルオロであり;あるいは、
(c)RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、かつ;
(i)Rはフルオロであり、aは0であるか;
(ii)Rはフルオロであり、aは1であり、Rは3−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,6−ジフルオロであるか;または、
(iv)Rはクロロもしくはメチルであり、aは0であり;あるいは、
(d)R、RおよびRは水素であり、かつ:
(i)RはHであり、aは0であるか;
(ii)RはHであり、aは1であり、Rは5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、aは0であるか;
(iv)Rはフルオロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;
(v)Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロもしくは4,6−ジフルオロであるか;
(vi)Rはクロロであり、aは0であるか;
(vii)Rはクロロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、6−フルオロもしくは5−トリフルオロメチルであるか;
(viii)Rはクロロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロであるか;または、
(ix)Rはブロモであり、aは0である)
または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。そうした組成物は任意選択で、抗アルツハイマー病薬、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗パーキンソン病薬、デュアルセロトニンノルエピネフリン再取込みインヒビター、非ステロイド系抗炎症剤、ノルエピネフリン再取込みインヒビター、オピオイドアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、選択的セロトニン再取込みインヒビター、ナトリウムチャネル遮断薬、交感神経遮断薬およびこれらの組合せ等の他の活性薬剤を含むことができる。したがって、本発明のさらに他の態様では、医薬組成物は、本発明の化合物、第2の活性薬剤および薬学的に許容される担体を含む。本発明の他の態様は、本発明の化合物および第2の活性薬剤を含む活性薬剤を合わせたものに関する。本発明の化合物は、追加の薬剤と一緒にまたはそれとは別個に、処方に従って作製することができる。別個に処方に従って作製する場合、薬学的に許容される担体は他の薬剤と共に含まれ得る。したがって、本発明のさらに他の態様は、複数の医薬組成物を合わせたものであって、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、第1の薬学的に許容される担体とを含む第1の医薬組成物、ならびに、第2の活性薬剤と、第2の薬学的に許容される担体とを含む第2の医薬組成物を含むものに関する。本発明は、例えば第1の医薬組成物と第2の医薬組成物が別個の医薬組成物である、そうした医薬組成物を含むキットにも関する。
【0014】
本発明の化合物は、セロトニン再取込み阻害活性およびノルエピネフリン再取込み阻害活性を有しており、したがって、セロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターの阻害によって治療される疾患または障害に苦しむ患者を治療するための治療薬として有用であると期待される。したがって、本発明の一態様は、神経因性疼痛または線維筋痛等の疼痛性障害;大うつ病等の抑うつ障害;不安障害等の情動障害;注意欠陥過活動性障害;認知症等の認知障害;腹圧性尿失禁;慢性疲労症候群;肥満;または閉経に伴う血管運動症状を治療する方法に関しており、この方法は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する。
【0015】
本発明のさらに他の態様は、セロトニントランスポーター阻害量の本発明の化合物を哺乳動物に投与するステップを包含する、哺乳動物におけるセロトニン再取込みを阻害する方法に関する。本発明のさらに他の態様は、ノルエピネフリントランスポーター阻害量の本発明の化合物を哺乳動物に投与するステップを包含する、哺乳動物におけるノルエピネフリン再取込みを阻害する方法に関する。本発明の他の態様は、セロトニントランスポーターとノルエピネフリントランスポーターとを阻害する量の本発明の化合物を哺乳動物に投与するステップを包含する、哺乳動物におけるセロトニン再取込みおよびノルエピネフリン再取込みを阻害する方法を対象とする。
【0016】
式Iの化合物の中で特定の目的の化合物は、SERTで約7.9以上の阻害定数(pK)、NETで約8.0以上の阻害定数(pK)を有するものである。他の態様では、目的の化合物は、SERTとNETがバランスのとれた活性を有する、すなわち、SERTのpK値と、NETのpK値±0.5の範囲とで同じpK値を有する。特定の目的の他の化合物は、約7.0以上のセロトニン再取込み阻害pIC50値および約7.0以上のノルエピネフリン再取込み阻害pIC50値を有するものである。
【0017】
本発明の化合物はセロトニン再取込み阻害活性およびノルエピネフリン再取込み阻害活性を有するので、そうした化合物は研究手段としても有用である。したがって、本発明の一態様は、本発明の化合物を用いてバイオアッセイを実施するステップを包含する、研究手段として本発明の化合物を使用する方法に関する。本発明の化合物は、新規化合物を評価するためにも用いることができる。したがって、本発明の他の態様は:(a)試験化合物でバイオアッセイを実施して第1のアッセイ値を提供するステップと;(b)本発明の化合物でバイオアッセイを実施して第2のアッセイ値を提供するステップであって、ステップ(a)をステップ(b)の前か、その後かまたはそれと同時に実施するステップと;(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値とステップ(b)からの第2のアッセイ値を比較するステップとを包含する、バイオアッセイで試験化合物を評価する方法に関する。バイオアッセイの例には、セロトニン再取込みアッセイおよびノルエピネフリン再取込みアッセイが含まれる。本発明のさらに他の態様は、(a)生物学的系または試料を本発明の化合物と接触させるステップと;(b)その化合物によって引き起こされた生物学的系または試料に対する効果を判定するステップを包含する、セロトニントランスポーター、ノルエピネフリントランスポーター、またはその両方を含む生物学的系または試料を試験する方法に関する。
【0018】
本発明は、本発明の化合物を調製するのに有用なプロセスおよび中間体にも関する。したがって、本発明の一態様は、式Iの化合物を調製するプロセスであって、そのプロセスが式IIIの化合物:
【0019】
【化3】

(式中、Pは式IまたはIIの化合物を提供するためのアミノ保護基であり、a、RおよびR3〜6はそれぞれ式IまたはIIについて定義する通りである)
またはその塩を脱保護するステップを包含するプロセスに関する。他の態様では、本発明はそうしたプロセスで使用する新規中間体に関する。
【0020】
本発明のさらに他の態様は、哺乳動物におけるセロトニン再取込みを阻害するか、または哺乳動物におけるノルエピネフリン再取込みを阻害するための医薬品の製造、特に、疼痛性障害、抑うつ障害、情動障害、注意欠陥過活動性障害、認知障害、腹圧性尿失禁を治療するのに有用な医薬品の製造のための本発明の化合物の使用に関する。本発明のさらに他の態様は、研究手段としての本発明の化合物の使用に関する。本発明の他の態様および実施形態を本明細書で開示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスについて説明する場合、別段の指定のない限り、以下の用語は以下の意味を有するものとする。さらに、本明細書で用いる単数形の「a」、「an」および「the」は、使用される文脈において別段の明らかな表示のない限り、対応するその複数形を含む。「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」という用語は包含的なものであり、挙げられた要素以外の他の要素が存在し得ることを意味するものとする。本明細書で使用する成分の量、分子量等の特性、および反応条件等を表すすべての数字は、別段の表示のない限り、すべての場合において「約」という用語で修飾されているものと理解されたい。したがって、本明細書で示す数字は、本発明で得ようとする所望特性に応じて変わり得る概数である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を限定しようとするものではなく、それぞれの数字は少なくとも、報告された有効数字に照らして、通常の丸めの手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0022】
「アルキル」という用語は、直鎖状または分岐状であってもよい一価飽和炭化水素基を意味する。別段の指定のない限り、そうしたアルキル基は一般には1〜10個の炭素原子を含み、それらには、例えば−C1〜2アルキル、−C1〜3アルキル、−C1〜4アルキル、−C1〜6アルキルおよび−C1〜8アルキルが含まれる。代表的なアルキル基の例には、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等が含まれる。
【0023】
本明細書で用いる具体的な用語について特定の炭素原子数を表そうとする場合、その炭素原子の数はその用語の前に添字として示されている。例えば、「−C1〜6アルキル」という用語は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、「−C1〜4アルキレン」という用語は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基を意味し、その炭素原子は許容される任意の形態である。
【0024】
「アルキレン」という用語は、直鎖状であっても分岐状であってもよい二価飽和炭化水素基を意味する。別段の指定のない限り、そうしたアルキレン基は一般に0〜10個の炭素原子を含み、それらには、例えば−C0〜1アルキレン、−C0〜2アルキレン、−C0〜3アルキレン、−C0〜6アルキレン、−C1〜4アルキレン、−C2〜4アルキレンおよび−C1〜6アルキレンが含まれる。代表的なアルキレン基の例には、例えばメチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル等が含まれる。アルキレンという用語が−C0〜1アルキレン−、−C0〜3アルキレン−または−C0〜6アルキレン−等の0個の炭素を含む場合、そうした用語は、炭素原子が存在しないことを含むものとする、すなわち、そのアルキレン基は、アルキレンという用語で分離された基と結合している共有結合を除いて存在しないことを理解されたい。
【0025】
「アルキニル」という用語は直鎖状であっても分岐状であってもよく、少なくとも1個、一般に1、2または3個の炭素−炭素三重結合を有する一価不飽和炭化水素基を意味する。別段の指定のない限り、そうしたアルキニル基は一般に2〜10個の炭素原子を含み、それらには、例えば−C2〜4アルキニル、−C2〜6アルキニルおよび−C3〜10アルキニルが含まれる。代表的なアルキニル基の例には、例えばエチニル、n−プロピニル、n−ブタ−2−イニル、n−ヘキサ−3−イニル等が含まれる。
【0026】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0027】
本明細書で用いる「式の」、「式を有する」または「構造を有する」という語句は限定しようとするものではなく、「含む(comprising)」という用語が通常用いられるのと同様に用いられる。
【0028】
「薬学的に許容される」という用語は、本発明で使用する場合、生物学的またはその他で受け入れ難くはない物質を指す。例えば「薬学的に許容される担体」という用語は、許容されない生物学的作用を引き起こすことも、許容されない様式で組成物の他の成分と相互作用することもなく、組成物中に混ぜ込み、患者に投与することができる物質を指す。そうした薬学的に許容される物質は一般に、毒物学的および製造的な試験の必要な基準に適合したものであり、それらには、米国食品医薬品局によって適切な不活性成分であると確認されている物資が含まれる。
【0029】
「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳動物等の患者に投与するのに許容される塩基または酸から調製された塩(例えば、所与の投薬形態について許容される、哺乳動物への安全性を有する塩)を意味する。しかし、本発明によって包含される塩は、患者への投与を目的としたものではない中間体の塩等のように、薬学的に許容される塩である必要がないことを理解されたい。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機塩基または有機塩基および薬学的に許容される無機酸または有機酸から誘導することができる。さらに、式Iの化合物が、アミン等の塩基性部分とカルボン酸等の酸性部分の両方を含む場合、両性イオンを形成することができ、それらは本明細書で用いる「塩」という用語に含まれる。薬学的に許容される無機塩基から誘導される塩には、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜マンガン、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛の塩等が含まれる。薬学的に許容される有機塩基から誘導される塩には、置換アミンを含む第一、第二および第三アミン、環状アミン、天然由来のアミン等(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が含まれる。薬学的に許容される無機酸から誘導される塩には、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩化水素酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩が含まれる。薬学的に許容される有機酸から誘導される塩には、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸および3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロチン酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸)、キナホ酸等の塩が含まれる。
【0030】
「溶媒和物」という用語は、溶質(例えば式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩)の1つもしくは複数の分子と、溶媒の1つもしくは複数の分子によって形成される錯体または凝集体を意味する。そうした溶媒和物は、実質的に一定の溶質と溶媒のモル比を有する一般に結晶性の固体である。代表的な溶媒の例には、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸等が含まれる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0031】
「治療有効量」という用語は、それを必要とする患者に投与した場合に治療を実現するのに十分な量、すなわち、所望の治療効果を得るのに必要な薬物の量を意味する。例えば、神経因性疼痛のための治療有効量は、例えば神経因性疼痛の症状を低減、抑制、排除もしくは予防するか、神経因性疼痛の根本にある原因を治療するのに必要な化合物の量である。他方、「有効量」という用語は、所望の結果を得るのに十分な量を意味する。その結果は必ずしも治療結果である必要はない。例えば、ノルエピネフリントランスポーターを含む系を試験する場合、「有効量」は、ノルエピネフリン再取込みを阻害するのに十分な量であってよい。
【0032】
本明細書で用いる「治療する(treating)」または「治療」という用語は、哺乳動物等の患者(特にヒト)において疾患または医学的状態(神経因性疼痛等)を治療することまたはその治療を意味する。その治療は以下のもののうちの1つまたは複数を含む:(a)疾患または医学的状態が発生するのを防止する、すなわち患者の予防的治療;(b)疾患または医学的状態を改善する、すなわち患者の疾患または医学的状態を排除するまたはその退縮を引き起こすこと;(c)疾患または医学的状態を抑制する、すなわち、患者の疾患もしくは医学的状態の進行を遅延させる、または停止させること;あるいは(d)患者の疾患または医学的状態の症状を緩和すること。例えば、「神経因性疼痛を治療する」という用語は、神経因性疼痛の発生を予防し、神経因性疼痛を改善し、神経因性疼痛を抑制し、神経因性疼痛の症状を緩和することを含む。「患者」という用語は、治療または疾患予防を必要としており、疾患予防または特定の疾患もしくは医学的状態の治療のための処置を現在受けているヒト等の哺乳動物、ならびにアッセイにおいて本発明の化合物が評価されるかまたは使用される試験対象(例えば動物モデル)を含むものとする。
【0033】
本明細書で使用する他のすべての用語は、関係する技術分野の当業者によって理解されているその通常の意味を有するものとする。
【0034】
一態様では、本発明は、式Iの化合物:
【0035】
【化4】

または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0036】
本明細書で用いる「本発明の化合物」または「本発明の化合物(複数)」という用語は、式IIa、IIb、IIcおよびIIdで表される部類等の式I、IIおよびIIIに包含されるすべての化合物ならびにそうした式の他のすべての下位部類を含む。さらに、本発明の化合物が塩基性または酸性基(例えば、アミノ基またはカルボキシル基)を含む場合、その化合物は、遊離塩基、遊離酸、両性イオンとしてまたは様々な塩の形態で存在することができる。そうしたすべての塩形態は本発明の範囲に含まれる。したがって、当業者は、本明細書での化合物への言及、例えば「本発明の化合物」または「式Iの化合物」への言及は、別段の表示のない限り、式Iの化合物ならびに薬学的に許容されるその化合物の塩を含むことを理解する。さらに、溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。
【0037】
本発明の化合物ならびにその合成において使用する化合物は、同位体標識した化合物(すなわち、1つまたは複数の原子が、自然界で支配的に見出される原子質量とは異なる原子質量を有する原子で富化された化合物)も含むことができる。本発明の化合物に取り込むことができる同位体の例には、例えばこれらに限定されないが、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、36Clおよび18Fが含まれる。特定の目的のものは、例えば組織分布試験で使用できる三重水素または炭素14で富化された式Iの化合物;例えば、より高い代謝安定性を有する化合物をもたらす代謝部位で特に、重水素で富化された式Iの化合物;および、例えばポジトロン放出断層撮影(PET)試験で使用できる11C、18F、15Oおよび13N等のポジトロン放出同位体で富化された式Iの化合物である。
【0038】
本発明の化合物は、セロトニン再取込み阻害活性およびノルエピネフリン再取込み阻害活性を有することが分かっている。特性の中でとりわけ、そうした化合物は、神経因性疼痛等の慢性疼痛を治療するための治療薬として有用であると期待される。二重の活性を単一の化合物に一緒にすることによって、単一の活性成分を用いて、二重の治療、すなわち、セロトニン再取込み阻害活性およびノルエピネフリン再取込み阻害活性を達成することができる。1つの活性成分を含む医薬組成物は、2つの活性成分を含む組成物より一般に処方に従って作製するのに容易であるので、そうした単一成分組成物は、2つの活性成分を含む組成物より優れた利点を提供する。
【0039】
多くの複合型(combined)セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みインヒビター(SNRI)は、NETよりSERTに対してより選択的である。例えば、ミルナシプラン、デュロキセチンおよびベンラファクシンはそれぞれ、NETに対して2.5倍、10倍および100倍のSERTへの選択性(pKで測定して)を示す。しかし、SERTで7.0のpKおよびNETで6.7のpKを有するビシファジン等のいくつかのものは選択性がより小さい。選択的な化合物は避けるのが望ましいので、本発明の1つの実施形態では、化合物はよりバランスのとれたSERTとNETの活性を有する、すなわち、SERTのpK値と、NETのpK値±0.5の範囲とで同じpK値を有する。
【0040】
本明細書で説明する化合物は概ね、市販のMDL(登録商標)ISIS/Drawソフトウェア(Symyx、Santa Clara、California)のAutoNomフィーチャを用いて命名した。一般に、本発明の化合物は4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンと称される。本明細書で説明する化合物の部分的な番号付けは以下に示す通りである:
【0041】
【化5】

代表的な実施形態
以下の置換基および値は、本発明の様々な態様および実施形態の代表的な例を提供するものとする。これらの代表的な値はそうした態様および実施形態をさらに定義し例示しようとするものであり、他の実施形態を排除しようとするか、または本発明の範囲を限定しようとするものではない。この関連で、特定の値または置換基が好ましいという表現は、具体的な表示のない限り、他の値または置換基を本発明から排除しようとするものではない。
【0042】
一態様では、本発明は式Iの化合物:
【0043】
【化6】

に関する。式Iの化合物では、整数は0、1、2、3または4であってよい。各Rは独立にハロまたはトリフルオロメチルである。Rは水素、ハロまたは−C1〜6アルキルである。R、RおよびRは独立に水素またはハロである。ハロ基の例には、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが含まれる。−C1〜6アルキル基の例には、−CH、−CHCHおよび−CH(CHが含まれる。一実施形態では、Rは水素、フルオロ、クロロまたはメチルである。一実施形態では、Rは水素、フルオロ、クロロまたはブロモである。一実施形態では、Rは水素またはフルオロである。一実施形態では、Rは水素、フルオロ、クロロまたはブロモである。
【0044】
式Iの化合物の1つの実施形態では、aは0である。これは式Ia:
【0045】
【化7】

で表すことができる。式Iaの化合物の1つの実施形態では、Rは水素、フルオロ、クロロまたはメチルであり;Rは水素、フルオロ、クロロまたはブロモであり;Rは水素またはフルオロであり;Rは水素、フルオロ、クロロまたはブロモである。
【0046】
式Iの化合物の他の実施形態では、aは1である。これは式Ib:
【0047】
【化8】

で表すことができる。式Ibの化合物の1つの実施形態では、Rは3−フルオロ、4−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルまたは6−フルオロである。式Ibの化合物の他の実施形態では、Rは水素またはフルオロであり;Rは水素またはフルオロであり;Rは水素またはフルオロであり;Rは水素、フルオロまたはクロロである。
【0048】
式Iの化合物のさらに他の実施形態では、aは2である。これは式Ic:
【0049】
【化9】

で表すことができる。式Icの化合物の1つの実施形態では、Rは4,5−ジフルオロ、4,6−ジフルオロまたは5,6−ジフルオロである。式Ibの化合物の他の実施形態では、Rは水素またはフルオロであり;Rは水素またはフルオロであり;Rは水素またはフルオロであり;Rは水素、フルオロまたはクロロである。
【0050】
本発明の特定の1つの態様では、式Iの化合物は、SERT pK≧7.9およびNET pK≧8を示す。
【0051】
他の態様では、本発明の式IIの化合物:
【0052】
【化10】

(式中:
(a)RおよびRは水素であり、かつ:
(i)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは0であるか;
(ii)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロ、4,6−ジフルオロもしくは5,6−ジフルオロであるか;
(iv)Rはフルオロであり、Rはクロロであり、aは0であるか;
(v)Rはクロロであり、Rはフルオロであり、aは0であるか;または、
(vi)Rはブロモであり、Rはクロロであり、aは0であり;あるいは、
(b)RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、Rはクロロであり、かつ:
(i)aは0であるか;
(ii)aは1であり、Rは5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;または、
(iii)aは2であり、Rは4,6−ジフルオロであり;あるいは、
(c)RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、かつ;
(i)Rはフルオロであり、aは0であるか;
(ii)Rはフルオロであり、aは1であり、Rは3−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,6−ジフルオロであるか;または、
(iv)Rはクロロもしくはメチルであり、aは0であり;あるいは、
(d)R、RおよびRは水素であり、かつ:
(i)RはHであり、aは0であるか;
(ii)RはHであり、aは1であり、Rは5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、aは0であるか;
(iv)Rはフルオロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;
(v)Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロもしくは4,6−ジフルオロであるか;
(vi)Rはクロロであり、aは0であるか;
(vii)Rはクロロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、6−フルオロもしくは5−トリフルオロメチルであるか;
(viii)Rはクロロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロであるか;または、
(ix)Rはブロモであり、aは0である)
または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0053】
式IIの化合物の1つの実施形態では、RおよびRは水素である。これは式IIa:
【0054】
【化11】

で表すことができる。式IIaの化合物の1つの実施形態では、Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは0である。他の態様では、Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルまたは6−フルオロである。他の態様では、Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロ、4,6−ジフルオロまたは5,6−ジフルオロである。一実施形態では、Rはフルオロであり、Rはクロロであり、aは0である。他の実施形態では、Rはクロロであり、Rはフルオロであり、aは0である。他の実施形態では、Rはブロモであり、Rはクロロであり、aは0である。さらに他の実施形態では、式IIaのこれらの化合物は、SERT pK≧7.9およびNET pK≧8を示す。
【0055】
式IIの化合物の他の実施形態では、RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、Rはクロロである。これは式IIb:
【0056】
【化12】

で表すことができる。式IIbの1つの実施形態では、aは0である。他の実施形態では、aは1であり、Rは5−フルオロまたは6−フルオロである。他の実施形態では、aは2であり、Rは4,6−ジフルオロである。さらに他の実施形態では、式IIbのこれらの化合物は、SERT pK≧7.9およびNET pK≧8を示す。
【0057】
式IIの化合物のさらに他の実施形態では、RおよびRは水素であり、Rはフルオロである。これは式IIc:
【0058】
【化13】

で表すことができる。式IIcの1つの実施形態では、Rはフルオロであり、aは0である。他の実施形態では、Rはフルオロであり、aは1であり、Rは3−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルまたは6−フルオロである。他の実施形態では、Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,6−ジフルオロである。他の実施形態では、Rはクロロまたはメチルであり、aは0である。さらに他の実施形態では、式IIcのこれらの化合物は、SERT pK≧7.9およびNET pK≧8を示す。
【0059】
式IIの化合物のさらに他の実施形態では、R、RおよびRは水素である。これは式IId:
【0060】
【化14】

で表すことができる。式IIdの1つの実施形態では、RはHであり、aは0である。他の実施形態では、RはHであり、aは1であり、Rは5−フルオロまたは6−フルオロである。他の実施形態では、Rはフルオロまたはクロロであり、aは0である。さらに他の実施形態では、Rはフルオロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、5−フルオロ、または6−フルオロである。さらに他の実施形態では、Rはクロロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、6−フルオロまたは5−トリフルオロメチルである。一実施形態では、Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロまたは4,6−ジフルオロである。一実施形態では、Rはクロロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロである。他の態様では、Rはブロモであり、aは0である。さらに他の実施形態では、式IIdのこれらの化合物は、SERT pK≧7.9およびNET pK≧8を示す。
【0061】
一実施形態では、本発明の化合物はNETに対する高い親和性を有し、NETと比較してSERTに対する比較的バランスのとれた親和性を有し、一実施形態では、SERTと比較してNETに対する高い親和性を有する。特定の1つの実施形態では、本発明の化合物はSERT pK≧7.9およびNET pK≧8を示す。驚くべきことに、このSERTとNETの活性のバランスは、いくつかの構造的に類似した化合物においては見られない。例えば、本発明の以下の化合物:
【0062】
【化15】

は、アッセイ1で測定して7.9のSERT pKおよび8.3のNET pKを示す。同アッセイで評価する場合、以下の化合物は、両方の標的(非置換)において低い結合を示すか、あるいは、SERTにおいて、NETにおいて(2−クロロおよび2−メチル)よりも、大きな結合を示す:
【0063】
【化16】

一般的合成手順
本発明の化合物は、以下の一般的方法、実施例で示す手順を用いて、容易に入手できる出発原料からか、または当業者に公知の他の方法、試薬および出発原料を用いて調製することができる。以下の手順は本発明の特定の実施形態を示すが、本発明の他の実施形態は、同じかもしくは類似した方法を用いるか、または当業者に公知の他の方法、試薬および出発原料を用いて同様に調製することができることを理解されたい。一般的かまたは好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられている場合、別段の言及のない限り、他のプロセス条件も用いることができることも理解される。最適反応条件は通常、使用する具体的な反応物、溶媒および量等の様々な反応パラメーターに応じて変わるが、当業者は、通常の最適化手法を用いて適切な反応条件を容易に決定することができる。
【0064】
さらに、当業者に明らかなように、特定の官能基が望ましくない反応を受けるのを防止するために、慣用的な保護基が必要となるかまたはそれが望ましいことがある。特定の官能基に対する適切な保護基ならびにそうした官能基の保護および脱保護に適した条件および試薬の選択は当該分野で周知である。所望される場合、本明細書に記載する手順で示すもの以外の保護基を用いることができる。例えば、多くの保護基、ならびにその導入および除去については、T. W. GreeneおよびG. M. Wuts、Protecting groups in Organic Synthesis、Third Edition、Wiley、New York、1999年およびその引用文献に記載されている。
【0065】
より具体的には、以下のスキームにおいて、Pは「アミノ保護基」を表し、これは、アミノ基において望ましくない反応を阻止するのに適した保護基を意味するために使用する用語である。代表的なアミノ保護基には、これらに限定されないが、t−ブトキシカルボニル(Boc)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、ベンジル等が含まれる。存在する場合、標準的な脱保護手法およびDCM中のTFAまたは1,4−ジオキサン、メタノールもしくはエタノール中のHCl等の試薬を用いて保護基を除去する。例えば、Boc基は塩酸、トリフルオロ酢酸等の酸性試薬を用いて除去し;Cbz基はアルコール系溶媒中でのH(1気圧)、10%Pd/C等の接触水素化条件を用いて除去することができる。スキームでは、保護基としてBocを用いて示されている。
【0066】
以下のスキームにおいて、Lは「脱離基」を表し、これは本明細書では、求核置換反応等の置換反応で他の官能基または原子に置き換えることができる官能基または原子を意味するのに用いられる用語である。例としては、代表的な脱離基には、クロロ、ブロモおよびヨード基;メシラート、トシラート、ブロシラート、ノシラート等のスルホン酸エステル基;ならびにアセトキシ、トリフルオロアセトキシ等のアシルオキシ基が含まれる。
【0067】
これらのスキームにおいて使用するのに適した不活性希釈剤または溶媒の例には、これらに限定されないが、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム(CHCl)等が含まれる。
【0068】
すべての反応は通常、約−78℃〜約110℃の範囲の温度、例えば室温で実施される。反応は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/またはLCMSを用いてそれが完了するまでモニターすることができる。反応は、数分で完了することもあれば、数時間、一般に1〜2時間〜最大で48時間、あるいは最大で3〜4日間かかることもある。完了したら、所望の生成物を得るために、得られた混合物または反応生成物をさらに処理することができる。例えば、得られた混合物または反応生成物を、以下の手順:希釈(例えば、飽和NaHCOで);抽出(例えば、酢酸エチル、CHCl、DCM、HCl水溶液で);洗浄(例えば、DCM、NaCl飽和水溶液またはNaHCO飽和水溶液で);乾燥(例えば、MgSOもしくはNaSOまたは真空下で);ろ過;濃縮(例えば、真空下で);再溶解(例えば、酢酸:HO(1:1)水溶液中に);および/または精製(例えば、分取用HPLC、逆相分取用HPLCもしくは結晶化により)のうちの1つまたは複数の手順に供することができる。
【0069】
例示すると、本発明の化合物は、以下のスキームの1つまたは複数により調製することができる。これらを以下の実施例において詳述する。
【0070】
【化17】

出発原料1、例えば4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(P=Boc)は市場から入手することができ、これにボラン還元を施して化合物2を生成させる。適切な還元試薬には、ボランジメチルスルフィド錯体、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ボラン1,2−ビス(t−ブチルチオ)エタン錯体、ボランt−ブチルアミン錯体、ボランジ(t−ブチル)ホスフィン錯体、ボラン−テトラヒドロフラン錯体等が含まれる。次のステップで、化合物2のヒドロキシル基を脱離基に転換させる。例えば、化合物2を、トリエチレンジアミン等の適切な塩基中、p−トルエンスルホニルクロリド(TsCl)等の適切な試薬でトシル化してトシラートエステルである化合物3を生成させることができる。例えば、Hartungら(1997年)Synthesis 12巻:1433〜1438頁を参照されたい。あるいは、化合物2を、N,N−ジイソプロピルエチルアミン中でメタンスルホン酸無水物と混合することができる。
【0071】
2−フルオロフェノール化合物4を、求核置換により化合物3とカップリングする。次いで保護されたアミンを脱保護して本発明の化合物を得る。化合物4は市場から入手することができ、また当該分野で周知の手法で容易に合成される。
【0072】
【化18】

本発明の化合物は、Mitsunobuカップリング反応(MitsunobuおよびYamada(1967年)M. Bull Chem. Soc. JPN. 40巻:2380〜2382頁)を用い、続いてアミンを脱保護して調製することもできる。この反応は、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)またはジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)等のアゾジカルボキシレートおよびトリフェニルホスフィン(PPh)等のホスフィン触媒を含む酸化還元系を用いて、標準的なMitsunobuカップリング条件により実施する。
【0073】
出発原料である化合物5は以下のようにして合成することができる:
【0074】
【化19】

化合物6と化合物7を、Suzukiカップリング反応条件を用いてカップリングして化合物8を生成させる。代表的な触媒には、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロニッケル(II)等のパラジウム触媒およびニッケル触媒が含まれる。任意選択で、この反応において炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、トリエチルアミン等の塩基を使用する。化合物8を、一般にPearlman触媒(湿潤Pd(OH)/C)を用いて水素化して化合物9を生成させ、次いでボラン還元を施し化合物5を生成させる。
【0075】
出発原料6および7は市場から入手することができ、また当該分野で周知の手法で容易に合成される。好ましい脱離基(L)にはハロゲンおよびトリフラートが含まれ、化合物6の例にはメチル2−ブロモ−5−フルオロベンゾエートが含まれる。化合物7の例には4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステルが含まれる。
【0076】
所望される場合、遊離酸または遊離塩基の形態の式IまたはIIの化合物をそれぞれ薬学的に許容される塩基または酸と接触させることによって、式IまたはIIの化合物の薬学的に許容される塩を調製することができる。
【0077】
本明細書で説明する中間体のいくつかは新規化合物と考えられ、したがって、そうした化合物を、例えば式IIIの化合物:
【0078】
【化20】

(式中、Pはアミノ保護基、特にt−ブトキシカルボニル(Boc)を表し、a、RおよびR3〜6は式IまたはIIについて定義した通りである)
またはその塩を含む本発明の他の態様として提供する。本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、式IIIの化合物を脱保護して式IまたはIIの化合物または薬学的に許容されるその塩を提供することによって調製することができる。
【0079】
代表的な本発明の化合物またはその中間体の調製のための具体的な反応条件および他の手順に関するさらなる詳細を、以下に示す実施例において説明する。
【0080】
有用性
本発明の化合物はセロトニンおよびノルエピネフリン再取込み阻害活性を有する。したがって、これらの化合物は、複合型セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みインヒビター(SNRI)として治療的有用性を有すると期待される。一実施形態では、本発明の化合物は、同等またはほぼ同等のセロトニン再取込み阻害活性およびノルエピネフリン再取込み阻害活性を有する。
【0081】
化合物の阻害定数(K)は、放射性リガンドが存在しない場合にトランスポーターの50%を占める、競合アッセイにおける競合リガンドの濃度である。アッセイ1で説明するように、K値はH−ニソキセチン(ノルエピネフリントランスポーター(NET)について)およびH−シタロプラム(セロトニントランスポーター(SERT)について)を用いて、放射性リガンド競合結合試験により測定することができる。これらのK値は、チェン−プラソフ式(Cheng−Prusoff equation)を用いた結合アッセイにおけるIC50値、および放射性リガンドのKから誘導される(Cheng & Prusoff(1973年)Biochem. Pharmacol. 22巻(23号):3099〜3108頁)。機能的IC50値は、アッセイ2で説明する取込みアッセイの機能的阻害で測定することができる。これらのIC50値は、チェン−プラソフ式とトランスポーターに対する伝達物質のKとを用いてK値に変換することができる。しかし、アッセイ2で説明する取込みアッセイ条件は、そのアッセイで使用する神経伝達物質濃度(5−HTまたはNE)が各トランスポーターに対する神経伝達物質のKよりずっと小さいので、数学的に変換されることが望ましく、その結果、IC50値はK値に非常に近いことに留意されたい。
【0082】
SERTまたはNETに対する化合物の親和力の1つの尺度は、トランスポーターへの結合についての阻害定数(pK)である。pK値はKの10を底にした負の対数である。特定の目的の本発明の化合物は、SERTで約7.5以上、特定の1つの実施形態では、約7.9以上のpKを有するものである。特定の目的の本発明の化合物は、NETで約7.5以上のpK、特定の1つの実施形態では約8.0以上のpKを有するものも含む。他の実施形態では、目的の化合物は、NETで8.0〜9.0の範囲のpKを有する。他の実施形態では、目的の化合物はSERTで約7.9以上のpKを有し、NETで約8.0以上のpKを有する。他の実施形態では、目的の化合物はSERTおよびNETで約8.0以上のpKを有する。そうした値は、当該分野で周知の手法ならびに本明細書で説明するアッセイで測定することができる。
【0083】
一実施形態では、本発明の化合物はNET pK≧8、および0.1〜100の範囲のSERT K/NET K;0.3〜100の範囲のSERT K/NET K;0.3〜10の範囲のSERT K/NET K;または0.1〜30の範囲のSERT K/NET Kを示す。他の実施形態では、本発明の化合物はNET pK≧9、および0.1〜100の範囲のSERT K/NET K;0.3〜100の範囲のSERT K/NET K;0.3〜10の範囲のSERT K/NET K;または0.1〜30の範囲のSERT K/NET Kを示す。
【0084】
セロトニンおよびノルエピネフリン再取込み阻害の別の尺度はpIC50値である。一実施形態では、目的の化合物は、約7.0以上のセロトニン再取込み阻害pIC50値および約7.0以上のノルエピネフリン再取込み阻害pIC50値を有し;他の実施形態では、目的の化合物は、約7.5以上のセロトニン再取込み阻害pIC50値および約7.5以上のノルエピネフリン再取込み阻害pIC50値を有する。特定の1つの実施形態では、これらの化合物は、約8.0以上のセロトニン再取込み阻害pIC50値および約8.0以上のノルエピネフリン再取込み阻害pIC50値を有する。特定の1つの実施形態では、本発明の化合物は、バランスのとれたpIC50値を有する、すなわち、SERTのpIC50値と、NETのpIC50値±0.6の範囲とで同じpIC50値を有する。
【0085】
他の実施形態では、本発明の化合物は、ドーパミントランスポーター(DAT)より、SERTおよびNETの阻害に対して選択的である。例えば、この実施形態では、特定の目的の化合物は、DATに対する結合親和力より少なくとも5倍高いか、DATに対する結合親和力より少なくとも10倍高いか、またはDATに対する結合親和力より少なくとも20倍または30倍高いSERTおよびNETに対する結合親和力を示すものである。他の実施形態では、これらの化合物はそれほどのDAT阻害率を示さない。さらに他の実施形態では、これらの化合物は、794nMの濃度で測定した場合に50%未満のDAT活性の阻害率を示す。用いるアッセイ条件のもとでは、≦50%の阻害率を示す化合物はDATで≦6.1のpK値を示すと推定される。
【0086】
さらに他の実施形態では、本発明の化合物はドーパミン再取込み阻害活性ならびにSERTおよびNET活性を有する。例えば、この実施形態では、特定の目的の化合物は、SERTおよびNETで約7.5以上のpK、ならびにDATで約7.0以上のpKを示すものである。
【0087】
いくつかの場合、本発明の化合物は、弱いセロトニン再取込み阻害活性かまたは弱いノルエピネフリン再取込み阻害活性のいずれかを有し得ることに留意されたい。これらの場合、当業者は、そうした化合物がそれぞれ主にNETインヒビターまたはSERTインヒビターとしてなおも有用であるか、あるいは研究手段として有用であることを認識する。
【0088】
本発明の化合物のセロトニンおよび/またはノルエピネフリン再取込み活性阻害を判定するためのアッセイの例には、例示に過ぎず限定しようとするものではないが、例えばアッセイ1で説明するようなSERTおよびNETの結合を測定するアッセイが含まれる。さらに、それは、アッセイ1で説明するようなアッセイにおける、DAT結合および取込みのレベルを理解するのに有用である。有用な第2のアッセイには、アッセイ2で説明するような、各ヒトまたはラット組換えトランスポーター(hSERT、hNETまたはhDAT)を発現する細胞中へのセロトニンおよびノルエピネフリン取込みの競合的阻害を測定する神経伝達物質取込みアッセイ、およびアッセイ3で説明するような、組織中のSERT、NETおよびDATのインビボでの占有率を測定するために用いられるエクスビボでの放射性リガンド結合アッセイおよび神経伝達物質取込みアッセイが含まれる。試験化合物の薬理学的特性を評価するのに有用な他のアッセイには、アッセイ4で挙げたものが含まれる。インビボでのアッセイの例には、アッセイ5で説明するような神経因性疼痛の治療に対する臨床効果の信頼できる予測因子であるホルマリン足試験(formalin paw test)、およびアッセイ6で説明する脊髄神経結紮モデルが含まれる。上記アッセイは、本発明の化合物の治療的有用性(例えば、神経因性疼痛軽減活性)を判定するのに有用である。本発明の化合物の他の特性および有用性は、当業者に周知のインビトロおよびインビボでの様々なアッセイを用いて実証することができる。
【0089】
本発明の化合物は、モノアミントランスポーター機能の制御が関係する医学的状態、特に、セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みの阻害によって媒介されるまたはそれに応答する状態の治療および/または予防に有用であると期待される。したがって、治療有効量の本発明のセロトニンおよびノルエピネフリン再取込みインヒビターを投与することによって、セロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターの阻害により治療される疾患または障害に苦しむ患者を治療できると期待される。そうした医学的状態の例には:神経因性疼痛、線維筋痛および慢性疼痛等の疼痛性障害;大うつ病等の抑うつ障害;不安障害等の情動障害;注意欠陥過活動性障害;認知症等の認知障害;腹圧性尿失禁;慢性の腰痛;ならびに変形性関節症が含まれる。
【0090】
用量当たりに投与される活性薬剤の量または1日当たりに投与される合計量は予め決定するか、あるいは、患者の状態の性質および重篤度、治療される状態、患者の年齢、体重および全体的な健康、活性薬剤に対する患者の耐性、投与経路、薬理学的考慮(投与される活性薬剤および任意の二次的薬剤の活性、効能、薬物動態、ならびに毒物学的プロファイル)等を含む、多くの因子を考慮して、個々の患者ベースでそれを決定することができる。疾患または医学的状態(神経因性疼痛等)に苦しむ患者の治療は、所定の投薬量または担当医師が決めた投薬量で開始することができ、これを、疾患または医学的状態の症状を予防、改善、抑制または緩和するのに必要な期間継続する。そうした治療を受ける患者は通常、治療の有効性を判断するためにルーチンを基本としてモニターされる。例えば、神経因性疼痛の治療において、治療の有効性の尺度は、患者の生活の質、例えば患者の睡眠パターン、勤務状況(work attendance)、運動および歩行する能力における改善等の評価を含むことができる。点数に基づいて操作する疼痛スケールを用いて、患者の痛みの程度を評価する助けとすることもできる。本明細書で説明する他の疾患および状態のための指標は当業者に周知であり、担当医師は容易にそれを利用することができる。医師による連続的なモニタリングによって、確実に活性薬剤の最適量が任意の所与の時間に投与され、また、治療期間の判断が容易になる。二次的薬剤も投与しようとする場合、その選択、投薬量および治療期間も調節する必要があるので、これは特に価値がある。このようにして、所望の有効性を示す最も少ない量の活性薬剤を投与し、さらに投与を、疾患または医学的状態を首尾よく治療するのに必要な間だけ続けるように、治療レジメンおよび投薬スケジュールを治療の過程で調整することができる。
【0091】
疼痛性障害
SNRIは、有痛性の糖尿病性神経障害(デュロキセチン、Goldsteinら(2005年)Pain 116巻:109〜118頁;ベンラファクシン、Rowbothamら(2004年)Pain 110巻:697〜706頁)、線維筋痛(デュロキセチン、Russellら(2008年)Pain 136巻(3号):432〜444頁;ミルナシプラン、Vittonら(2004年)Human Psychopharmacology 19巻:S27〜S35)および片頭痛(ベンラファクシン、Ozyalcinら(2005年)Headache45巻(2号):144〜152頁)等の疼痛に対して有益な効果を有することが示されている。したがって、本発明の一実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する、疼痛性障害を治療するための方法に関する。一般に、治療有効量は疼痛を軽減するのに十分な量である。疼痛性障害には、例として、急性疼痛、持続性疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛および神経因性疼痛が含まれる。より具体的には、これらには:関節炎;慢性の腰痛を含む背痛;腫瘍を含む癌関連疼痛(例えば、骨痛、頭痛、顔面痛または内臓痛)および癌治療に伴う疼痛(例えば、化学治療後症候群、慢性術後疼痛症候群および放射線照射後症候群);手根管症候群;線維筋痛;慢性の緊張性頭痛を含む頭痛;多発筋痛、リウマチ性関節炎および変形性関節症に伴う炎症;片頭痛;複合性局所疼痛症候群を含む神経因性疼痛;全身疼痛(overall pain);術後疼痛;肩部痛;脳卒中後疼痛ならびに脊髄損傷および多発性硬化症に伴う疼痛を含む中枢性疼痛症候群;幻肢痛;パーキンソン病に伴う疼痛;ならびに内臓痛(例えば、過敏性腸症候群)に伴うかまたはそれによって引き起こされる疼痛が含まれる。特に興味のあるものは神経因性疼痛の治療であり、この疼痛には、糖尿病性末梢神経障害(DPN)、HIV関連神経障害、ヘルペス後神経痛(PHN)および化学治療誘発性末梢神経障害が含まれる。神経因性疼痛等の疼痛性障害を治療するために使用する場合、本発明の化合物を、抗けいれん剤、抗うつ剤、筋肉弛緩剤、NSAID、オピオイドアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、選択的セロトニン再取込みインヒビター、ナトリウムチャネル遮断薬および交感神経遮断薬を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの分類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0092】
抑うつ障害
本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する、抑うつ障害を治療する方法に関する。一般に、その治療有効量は、抑うつを緩和し、一般的な意味での健康を提供するのに十分な量である。抑うつ障害には、例として、これらに限定されないが:アルツハイマー病、双極性障害、癌、児童虐待、不妊症、パーキンソン病、心筋梗塞後および精神病に伴ううつ病;気分変調;気難しいまたはイライラ老人症候群(grumpy or irritable old man syndrome);惹起性うつ病;大うつ病;小児性うつ病;閉経後うつ病;分娩後うつ病;再発性うつ病;単一エピソードうつ病;および亜症候群性の症候性うつ病が含まれる。特に興味のあるものは大うつ病の治療である。抑うつ障害を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、抗うつ剤およびデュアルセロトニン‐ノルエピネフリン再取込みインヒビターを含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの分類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0093】
情動障害
本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する、情動障害を治療する方法に関する。情動障害には、例として、これらに限定されないが:全般性不安障害等の不安障害;回避性人格障害;神経性無食欲症、神経性大食症および肥満等の摂食障害;強迫性障害;パニック障害;回避性人格障害および注意欠陥過活動性障害(ADHD)等の人格障害;心的外傷後ストレス症候群;広場恐怖症ならびに簡単な他の特定の恐怖症および社会恐怖症等の恐怖症;月経前症候群;統合失調症および躁病等の精神障害;季節性情動障害;早漏、男性のインポテンス、および女性の性的機能不全(例えば、女性の性的興奮障害)を含む性的機能不全;社会不安障害;および、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、ヘロイン、ニコチンおよびフェノバルビタールへの依存症等の薬物依存、ならびにこれらの依存症から生じ得る禁断症候群を含む薬物乱用障害が含まれる。情動障害を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、抗うつ剤を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの分類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0094】
10倍のNET選択性があるアトモキセチンは、注意欠陥過活動性障害(ADHD)治療用としてとして認可されており、臨床研究によれば、SNRI、ベンラファクシンも、ADHDを治療するのに有益な効果を有し得ることが示されている(Mukaddesら(2002年)Eur. Neuropsychopharm. 12巻(Supp 3):421頁)。したがって、本発明の化合物は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与することによって、注意欠陥過活動性障害を治療する方法に有用であることも期待される。うつ病を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、抗うつ剤を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの部類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0095】
認知障害
本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する、認知障害を治療する方法に関する。認知障害には、例として、これらに限定されないが:変性認知症(例えば、アルツハイマー病、クロイツフェルトヤコブ病、ハンチントン舞踏病(Huntingdon’s chorea)、パーキンソン病、ピック病および老年性認知症)、血管性認知症(例えば、多発脳梗塞性認知症)、ならびに頭蓋内占拠性病変、心的外傷、感染症およびそれに関連する状態(HIV感染症を含む)、代謝、毒素、酸素欠乏、およびビタミン欠乏に伴う認知症を含む認知症;ならびに加齢に伴う記憶障害、記憶喪失障害および加齢関連認識衰退等の加齢に伴う軽度認識障害が含まれる。認知障害を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、抗アルツハイマー病薬および抗パーキンソン病薬を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの分類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0096】
他の障害
SNRIは、腹圧性尿失禁の治療に有効であることも分かっている(Dmochowski(2003年)Journal of Urology 170巻(4号):1259〜1263頁)。したがって、本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する、腹圧性尿失禁を治療する方法に関する。腹圧性尿失禁を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、抗けいれん剤を含む他の治療薬と併用して投与することができる。これらの部類に入る化合物の例を本明細書で説明する。
【0097】
SNRIであるデュロキセチンは、慢性疲労症候群の治療におけるその効能を評価するための臨床試験を受けており、これは、線維筋痛を治療するに有効であることが最近示されている(Russellら(2008年)Pain 136巻(3号):432〜444頁)。本発明の化合物には、SERTおよびNETを阻害するその能力に起因して、この有用性も期待されており、本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する、慢性疲労症候群を治療する方法に関する。
【0098】
ノルエピネフリンおよびドーパミン再取込みインヒビターであるシブトラミンは、肥満を治療するのに有効であることが示されている(Wirthら(2001年)JAMA 286巻(11号):1331〜1339頁)。本発明の化合物には、NETを阻害するその能力に起因して、この有用性も期待されており、本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する、肥満を治療する方法に関する。
【0099】
SNRIであるデスベンラファクシンは、閉経に伴う血管運動症状を軽減することが示されている(Deecherら(2007年)Endocrinology 148巻(3号):1376〜1383頁)。本発明の化合物には、SERTおよびNETを阻害するその能力に起因して、この有用性も期待されており、本発明の他の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与するステップを包含する、閉経に伴う血管運動症状を治療する方法に関する。
【0100】
研究手段
本発明の化合物は、セロトニン再取込み阻害活性よびノルエピネフリン再取込み阻害活性の両方を有しているので、そうした化合物は、セロトニントランスポーターまたはノルエピネフリントランスポーターを有する生物学的系または試料を研究または試験するための研究手段としても有用である。セロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターを有する適切な任意の生物学的系または試料は、インビトロかまたはインビボで実施できるそうした試験において使用することができる。このような試験に適している代表的な生物学的系または試料には、これらに限定されないが、細胞、細胞抽出物、原形質膜、組織試料、摘出臓器、哺乳動物(マウス、ラット、テンジクネズミ、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒト等)等が含まれる。哺乳動物は特に興味のあるものである。本発明の特定の1つの実施形態では、哺乳動物におけるセロトニン再取込みは、セロトニン再取込み阻害量の本発明の化合物を投与することによって阻害される。他の特定の実施形態では、哺乳動物におけるノルエピネフリン再取込みは、ノルエピネフリン再取込み阻害量の本発明の化合物を投与することによって阻害される。本発明の化合物は、そうした化合物を用いてバイオアッセイを実施することによって研究手段として使用することもできる。
【0101】
研究手段として使用する場合、セロトニントランスポーターおよび/またはノルエピネフリントランスポーターを含む生物学的系または試料を通常、セロトニン再取込み阻害またはノルエピネフリン再取込み阻害量の本発明の化合物と接触させる。生物学的系または試料をその化合物に曝露した後、セロトニン再取込みおよび/またはノルエピネフリン再取込みを阻害する効果を、慣用的な手順および装置を用いて測定する。曝露は、細胞または組織を化合物と接触させるステップ、および、例えば腹腔内(i.p.)または静脈内(i.v.)による投与でその化合物を哺乳動物に投与するステップなどを包含する。この測定ステップは、応答を測定すること、すなわち定量分析を含むか、または、観察、すなわち定性分析を含むことができる。応答を測定することは、例えば、セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みアッセイ等の慣用的な手順および装置を用いて、生物学的系または試料に対する化合物の効果を測定することを含む。アッセイ結果は、活性レベルならびに所望の結果を達成するのに必要な化合物の量、すなわちセロトニン再取込み阻害およびノルエピネフリン再取込み阻害量を測定するために用いることができる。
【0102】
さらに、本発明の化合物は、他の化合物を評価するための研究手段として使用することができ、したがって、例えば、セロトニン再取込み阻害活性とノルエピネフリン再取込み阻害活性の両方を有する新規化合物を発見するためのスクリーニングアッセイにおいても有用である。この方法では、本発明の化合物を、試験化合物で得られた結果と本発明の化合物で得られた結果を比較できるようにするためのアッセイにおける標準品として使用して、あるとしたら、同等かまたはそれ以上の再取込み阻害活性を有する試験化合物を特定する。例えば、試験化合物または試験化合物群についての再取込みデータを、本発明の化合物についての再取込みデータと比較して所望の特性を有する試験化合物、例えば、あるとしたら、本発明の化合物と同等かまたはそれ以上の再取込み阻害活性を有する試験化合物を特定する。本発明のこの態様は、別個の実施形態として、対象の試験化合物を特定するための比較データ(適切なアッセイを用いて)の作成と試験データの分析の両方を含む。したがって、試験化合物は、(a)試験化合物でバイオアッセイを実施して第1のアッセイ値を提供するステップと、(b)本発明の化合物でバイオアッセイを実施して第2のアッセイ値を提供するステップであって、ステップ(a)をステップ(b)の前か、その後か、またはステップ(b)と同時に実施するステップと、(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値とステップ(b)からの第2のアッセイ値を比較するステップとを包含する方法による、バイオアッセイで評価することができる。例示的なバイオアッセイは、セロトニンおよびノルエピネフリン再取込みアッセイを含む。
【0103】
医薬組成物および処方物
本発明の化合物は一般に、医薬組成物または処方物の形態で患者に投与される。そうした医薬組成物は、これらに限定されないが、経口、経直腸、経膣、経鼻、吸入、局所(経皮を含む)および非経口方式の投与を含む許容される任意の投与経路で患者に投与することができる。さらに、本発明の化合物は、例えば、経口で1日当たり複数回の用量(例えば、日に2回、3回または4回)の用量、1日に1回の用量、1日に2回の用量、週に1回の用量等で投与することができる。具体的な投与方法に適した任意の形態の本発明の化合物(すなわち、遊離塩基、薬学的に許容される塩、溶媒和物等)を、本明細書で論じる医薬組成物において使用できることが理解される。
【0104】
したがって、一実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。その組成物は、所望される場合、他の治療薬および/または処方剤を含むことができる。組成物を論じる場合、担体等のその処方物の他の成分と区別するために、「本発明の化合物」を本明細書では「活性薬剤」とも称する。したがって、「活性薬剤」という用語は、式Iの化合物ならびに薬学的に許容されるその化合物の塩および溶媒和物を含むことを理解されたい。
【0105】
本発明の医薬組成物は一般に治療有効量の本発明の化合物を含む。しかし、当業者は、医薬組成物が、治療有効量を超える量、すなわちバルク組成物を含むことができ、あるいは、治療有効量より少ない量、すなわち複数回投与に対して治療有効量を達成するように設計された個別単位用量を含むことができることを理解されたい。一般に、その組成物は、約0.01〜95重量%(これは、約0.01〜30重量%(例えば、約0.01〜10重量%)を包含する)の活性薬剤を含む。その実際の量は、処方物自体、投与経路、投薬頻度等に依存する。一実施形態では、経口剤形に適した組成物は、例えば、約5〜70重量%または約10〜60重量%の活性薬剤を含むことができる。例示的な1つの実施形態では、医薬組成物は、約1〜20mgの活性薬剤(これは、約1〜15mgの活性薬剤、および約1〜10mgの活性薬剤を包含する)を含む。他の例示的な実施形態では、医薬組成物は、約5〜20mgの活性薬剤(これは、約7.5〜15mgの活性薬剤を包含する)を含む。例えば、活性薬剤は、1mgおよび10mgの単位用量で配合することができる。
【0106】
慣用的な任意の担体または添加剤を本発明の医薬組成物で使用することができる。具体的な担体もしくは添加剤または担体もしくは添加剤の組合せの選択は、特定の患者を治療するために用いられる投与方法、または医学的状態もしくは病状のタイプに依存する。この関連では、特定の投与方法に適した組成物の調製は、十分に製薬技術分野の技術者の範囲内である。さらに、そうした組成物で使用する担体または添加剤は市場で入手することができる。他の例としては、慣用的な処方技術が、Remington: The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition、Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(2000年);およびH. C. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(1999年)に記載されている。
【0107】
薬学的に許容される担体として働く材料の代表的な例には、これらに限定されないが、以下のもの:ラクトース、グルコースおよびスクロース等の糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン等のデンプン;微結晶性セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース等のセルロース;粉末状トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤用ワックス等の添加剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイルおよび大豆油等の油;プロピレングリコール等のグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール等のポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;パイロジェン除去水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン等の圧縮噴射ガス;ならびに医薬組成物に使用される非毒性の他の適合物質が含まれる。
【0108】
医薬組成物は、通常、活性薬剤を、薬学的に許容される担体および1つまたは複数の任意選択の成分と完全かつ密に混合またはブレンドすることによって調製される。次いで、得られた均一なブレンド混合物を、慣用的な手順および装置を用いて、錠剤、カプセル剤、丸剤、キャニスター、カートリッジ、ディスペンサー等に成形または充填することができる。
【0109】
一実施形態では、これらの医薬組成物は経口投与に適している。1つの投薬レジメンの例は、日に1回または2回投与される経口剤形である。経口投与用に適した組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤;水性または非水性液体中の液剤または懸濁剤;水中油型または油中水型の液状乳剤;エリキシル剤またはシロップ剤等の形態(これらはそれぞれ、所定の量の活性薬剤を含む)であってよい。
【0110】
固体剤形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤等)で経口投与しようとする場合、組成物は通常、活性薬剤と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体(クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム等)とを含む。固体剤形は、デンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸等の充填剤すなわち増量剤;カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア等の結合剤;グリセロール等の保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および/または炭酸ナトリウム等の崩壊剤;パラフィン等の溶解遅延剤;四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;セチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレート等の湿潤剤;カオリンおよび/またはベントナイト粘土等の吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および/またはこれらの混合物等の滑沢剤;着色剤;ならびに緩衝剤も含むことができる。
【0111】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤および酸化防止剤も医薬組成物中に存在していてよい。錠剤、カプセル剤、丸剤等のためのコーティング剤の例には、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、セルロースアセテートトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート等の腸溶コーティングのために使用されるものが含まれる。薬学的に許容される酸化防止剤の例には、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等の油溶性酸化防止剤;および、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤が含まれる。
【0112】
組成物は、例えば、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて活性薬剤の持続放出または制御放出を提供するように処方に従って作製することもできる。さらに、本発明の医薬組成物は乳白剤を含むことができ、その医薬組成物が胃腸管の特定の部分で(必要に応じて、遅延様式にて)活性薬剤だけを、またはそれを優先的に放出するように処方に従って作製することができる。使用できる埋め込み型組成物の例には重合物質およびワックスが含まれる。活性薬剤は、適切な場合、上記添加剤の1つまたは複数でマイクロカプセル化した形態であってもよい、
経口投与に適した液体剤形には、例として、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は一般に、活性薬剤および不活性賦形剤(例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、コーンオイル、胚芽油、オリーブ、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物)を含む。懸濁剤は、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにその混合物を含むことができる。
【0113】
経口で投与しようとする場合、本発明の医薬組成物をパッケージ化して単位剤形にすることができる。「単位剤形」という用語は、患者に投与するのに適している物理的に分離した単位、すなわち、各単位が、単独で、または、1つもしくは複数の追加の単位と合わせて、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性薬剤を含む物理的に分離した単位を指す。例えば、そうした単位剤形はカプセル剤、錠剤、丸剤等であってよい。
【0114】
他の実施形態では、本発明の組成物は吸入投与に適しており、これは一般にエアゾールまたは粉末の形態である。そうした組成物は通常噴霧器、乾燥粉末または定用量吸入器等の周知の送達装置を用いて投与される。噴霧装置は高速空気流を生じさせ、この高速空気流によって、患者の気道中に運ばれるミストとして組成物を噴霧する。例示的な噴霧器用処方は、活性薬剤を担体中に溶解させて溶液を生成させるか、または微粉化し、担体と一緒にして吸入可能なサイズの微粉化粒子の懸濁液を生成させることを含む。乾燥粉末吸入器は、活性薬剤を、吸気の際の患者の気流中で分散する自由流動性粉末として投与する。例示的な乾燥粉末処方物は、ラクトース、デンプン、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸、ポリラクチド−コ−グリコリド、およびこれらの組合せ等の添加剤とドライブレンドされた活性薬剤を含む。定用量吸入器は、圧縮噴射ガスを用いて一定量の活性薬剤を放出する。例示的な定用量処方物は、クロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロアルカン等の液化噴射剤中の活性薬剤の溶液または懸濁液を含む。そうした処方物の任意選択の成分としては、共溶媒(例えば、エタノールまたはペンタン)、および界面活性剤(トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチンおよびグリセリン)が挙げられる。そうした組成物は一般に、冷却または加圧したヒドロフルオロアルカンを、活性薬剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含む適切な容器に加えて調製する。懸濁液を調製するために、活性薬剤を微粉化し、次いで噴射剤と一緒にする。あるいは、懸濁処方物を、活性薬剤の微粒子上の界面活性剤のコーティングをスプレー乾燥することによって調製することができる。次いでその処方物を、吸入器の一部を形成するエアゾールキャニスター中に充填する。
【0115】
本発明の化合物は、非経口で(例えば、皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内注射で)投与することもできる。そうした投与のためには、活性薬剤は、滅菌した溶液、懸濁液または乳液で提供される。このような処方物を調製するための例示的な溶媒には、水、生理食塩水、低分子量アルコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリエチレングリコール、オイル、ゼラチン、および脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル)などが含まれる。典型的な非経口処方物は活性薬剤のpH4〜7の滅菌水溶液である。非経口処方物は、1つまたは複数の可溶化剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤も含むことができる。これらの処方物は、滅菌した注射用媒体、滅菌剤を用いるか、ろ過、照射または加熱して滅菌した状態にすることができる。
【0116】
本発明の化合物は、公知の経皮送達系および添加剤を用いて経皮投与することもできる。例えば、化合物を、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オン等の透過促進剤と混合し、パッチまたは同様の送達系に組み込むことができる。所望される場合、ゲル化剤、乳化剤および緩衝剤を含む追加の添加剤を、そうした経皮組成物で用いることができる。
【0117】
所望される場合、本発明の化合物は、1つまたは複数の他の治療薬と併用して投与することができる。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、本発明の化合物と同時投与される他の薬物を任意選択で含むことができる。例えば、組成物は、抗アルツハイマー病薬、抗けいれん剤(抗てんかん薬)、抗うつ剤、抗パーキンソン病薬、デュアルセロトニンノルエピネフリン再取込みインヒビター(SNRI)、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、ノルエピネフリン再取込みインヒビター、オピオイドアゴニスト(オピオイド鎮痛剤)、オピオイドアンタゴニスト、選択的セロトニン再取込みインヒビター、ナトリウムチャネル遮断薬、交感神経遮断薬およびこれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の薬物(「二次的薬剤」とも称される)をさらに含むことができる。そうした治療薬の多くの例は当該分野で周知であり、その例を本明細書で記載する。本発明の化合物を二次的薬剤と一緒にすることによって、2つの活性成分だけを用いて、三重の治療、すなわち、セロトニン再取込み阻害活性、ノルエピネフリン再取込み阻害活性および二次的薬剤に伴う活性(例えば、抗うつ剤活性)を実現することができる。2つの活性成分を含む医薬組成物は一般に、3つの活性成分を含む組成物より処方に従って作製するのが容易なので、そうした2成分組成物は、3つの活性成分を含む組成物より著しく優れた利点を提供する。したがって、本発明のさらに他の態様では、医薬組成物は、本発明の化合物、第2の活性薬剤、および薬学的に許容される担体を含む。第3、第4等の活性薬剤も組成物中に含むことができる。併用治療では、投与される本発明の化合物の量ならびに二次的薬剤の量は、単剤治療で通常投与される量より少なくてよい。
【0118】
本発明の化合物は、第2の活性薬剤と物理的に混合して両方の薬剤を含む組成物を形成させるか;あるいは、各薬剤は、患者に同時かまたは逐次的に投与される別個の異なった組成物で存在してよい。例えば、本発明の化合物は、慣用的な手順および装置を用いて、第2の活性薬剤と一緒にして、本発明の化合物および第2の活性薬剤を含む活性薬剤を合わせたものを形成させることができる。さらに、活性薬剤を、薬学的に許容される担体と一緒にして、本発明の化合物、第2の活性薬剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を形成させることができる。この実施形態では、組成物の成分を通常混合またはブレンドして物理的混合物を生成させる。次いで物理的混合物を、本明細書で説明する経路のいずれかにより治療有効量で投与する。
【0119】
あるいは、活性薬剤は、患者に投与する前に、別個の異なった形に保持することができる。この実施形態では、これらの薬剤は、投与の前に互いに物理的に混合されず、同時かまたは別個の組成物として別々の時に投与される。そうした組成物はキットの中に別個にパッケージ化するか、または一緒にパッケージ化することができる。別個の時間に投与する場合、二次的薬剤を、本発明の化合物を投与した後、本発明の化合物の投与と同時の時点〜投与後約24時間の範囲のどこかで24時間以内に投与する。これは逐次投与とも称される。したがって、本発明の化合物を、2つの錠剤(各活性薬剤に対して1つの錠剤を用いる)を用いて、別の活性薬剤と同時かまたは逐次的に経口投与することができる。ここで、逐次的投与とは、本発明の化合物の投与後直ちにか、またはある所定時間の後(例えば、1時間後または3時間後)に投与することを意味することができる。あるいは、上記の組み合わせたものは、異なる投与経路、すなわち、一方は経口で他方は吸入で投与することができる。
【0120】
一実施形態では、キットは、本発明の化合物を含む第1の剤形と、本明細書で示す二次的薬剤の1つまたは複数を含む少なくとも1つの追加の剤形を、本発明の方法を実施するのに十分な量で含む。第1の剤形と第2の(または第3等の)剤形は一緒に、患者の疾患または医学的状態を治療または予防するための治療有効量の活性薬剤を含む。
【0121】
含まれる場合、二次的薬剤は、治療有効量で存在する、すなわち、一般に本発明の化合物と同時投与した場合に治療上有益な効果をもたらす量で投与される。二次的薬剤は薬学的に許容される塩、溶媒和物、光学的に純粋な立体異性体等の形態であってよい、したがって、以下に示す二次的薬剤はそうしたすべての形態を包含しようとするものであり、これらは市販されており、または慣用的な手順および試薬を用いて調製することができる。
【0122】
代表的な抗アルツハイマー病薬には、これらに限定されないが、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスティグミン、セレギリン、タクリンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0123】
代表的な抗けいれん剤(抗てんかん薬)には、これらに限定されないが、アセタゾールアミド、アルブトイン、4−アミノ−3−ヒドロキシ酪酸、ベクラミド、カルバマゼピン、シンロミド、クロメチアゾール、クロナゼパム、ジアゼパム、ジメタジオン、エテロバーブ、エタジオン、エトスクシミド、エトトイン、フェルバメート、ホスフェニトイン、ガバペンチン、ラコサミド、ラモトリジン、ロラゼパム、臭化マグネシウム、硫酸マグネシウム、メフェニトイン、メホバルビタール、メトスクシミド、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、オクスカルバゼピン(oxcarbazepine)、パラメタジオン、フェナセミド、フェネツリッド、フェノバルビタール、フェンスクシミド、フェニトイン、臭化カリウム、プレガバリン、プリミドン、プロガビド、臭化ナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム、チアガビン、トピラマート、トリメタジオン、バルプロ酸、バルプロミド、ビガバトリン、ゾニサミドおよびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、抗けいれん剤は、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリンおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0124】
代表的な抗うつ剤には、これらに限定されないが、アジナゾラム、アミトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ドチエピン(例えば、塩酸ドチエピン)、ドキセピン、イミプラミン、ロフェプラミン、ミルタザピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ベンラファクシン、ジメリジンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0125】
代表的な抗パーキンソン病薬には、これらに限定されないが、アマンタジン、アポモルヒネ、ベンズトロピン、ブロモクリプチン、カルビドパ、ジフェンヒドラミン、エンタカポン、レボドパ、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、セレギリン、トルカポン、トリヘキシフェニジルおよびこれらの組合せが含まれる。
【0126】
代表的なデュアルセロトニン‐ノルエピネフリン再取込みインヒビター(SNRI)には、これらに限定されないが、ビシファジン、デスベンラファクシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、ネファゾドン、ベンラファクシンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0127】
代表的な非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)には、これらに限定されないが、アセメタシン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、アルクロフェナック、アルミノプロフェン、アンフェナク、アミプリロース、アモキシプリン、アニロラク、アパゾン、アザプロパゾン、ベノリラート、ベノキサプロフェン、ベズピペリロン、ブロペラモール、ブクロキシ酸、カルプロフェン、クリダナク、ジクロフェナク、ジフルニサール、ジフタロン、エノリカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロジン酸、フェノプロフェン、フェンチアザク、フェプラゾン、フルフェナム酸、フルフェニサル、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フロフェナク、イブフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、ケトロラク、ロフェミゾール、ロルノキシカム、メクロフェナム酸塩、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メサラミン、ミロプロフェン、モフェブタゾン、ナブメトン、ナプロキセン、ニフルム酸、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、オキシピナク、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、サルサラート、スドキシカム、スルファサラジン、スリンダク、スプロフェン、テノキシカム、チオピナク、チアプロフェン酸、チオキサプロフェン、トルフェナム酸、トルメチン、トリフルミダート、ジドメタシン、ゾメピラクおよびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、NSAIDは、エトドラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メロキシカム、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカムおよびこれらの組合せから選択される。特定の実施形態では、NSAIDは、イブプロフェン、インドメタシン、ナブメトン、ナプロキセン(例えば、ナプロキセンナトリウム)およびこれらの組合せから選択される。
【0128】
代表的な筋肉弛緩剤には、これらに限定されないが、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ジフルニサール、メタキサロン、メトカルバモールおよびこれらの組合せが含まれる。
【0129】
代表的なノルエピネフリン再取込みインヒビターには、これらに限定されないが、アトモキセチン、ブプロプリオンおよびブプロプリオン代謝産物であるヒドロキシブプロプリオン、マプロチリン、レボキセチン(例えば、(S,S)−レボキセチン)、ビロキサジンおよびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、ノルエピネフリン再取込みインヒビターは、アトモキセチン、レボキセチンおよびこれらの組合せから選択される。
【0130】
代表的なオピオイドアゴニスト(オピオイド鎮痛剤)およびアンタゴニストには、これらに限定されないが、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レバロルファン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、トラマドールおよびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、オピオイドアゴニストは、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、トラマドールおよびこれらの組合せから選択される。
【0131】
代表的な選択的セロトニン再取込みインヒビター(SSRI)には、これらに限定されないが、シタロプラムおよびシタロプラム代謝産物であるデスメチルシタロプラム、ダポキセチン、エスシタロプラム(例えば、シュウ酸エスシタロプラム)、フルオキセチンおよびフルオキセチンデスメチル代謝産物であるノルフルオキセチン、フルボキサミン(例えば、マレイン酸フルボキサミン)、パロキセチン、セルトラリンおよびセルトラリン代謝産物であるデスメチルセルトラリン(demethylsertraline)およびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、SSRIは、シタロプラム、パロキセチン、セルトラリンおよびこれらの組合せから選択される。
【0132】
代表的なナトリウムチャネル遮断薬には、これらに限定されないが、カルバマゼピン、ホスフェニトイン、ラモトリギン(lamotrignine)、リドカイン、メキシレチン、オクスカルバゼピン、フェニトインおよびこれらの組合せが含まれる。
【0133】
代表的な交感神経遮断薬には、これらに限定されないが、アテノロール、クロニジン、ドキサゾシン、グアネチジン、グアンファシン、モダフィニル、フェントラミン、プラゾシン、レセルピン、トラゾリン(例えば、塩酸トラゾリン)、タムスロシンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0134】
以下の処方物は、本発明の代表的な医薬組成物を示す。
【0135】
経口投与用の硬ゼラチンカプセル剤の例
本発明の化合物(50g)、スプレー乾燥したラクトース(440g)およびステアリン酸マグネシウム(10g)を十分にブレンドする。次いで得られた組成物を、硬ゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり500mgの組成物)。
【0136】
あるいは、本発明の化合物(20mg)を、デンプン(89mg)、微結晶性セルロース(89mg)およびステアリン酸マグネシウム(2mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を45番メッシュ米国標準篩(No.45 mesh U.S. sieve)に通し、硬ゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり200mgの組成物)。
【0137】
経口投与用のゼラチンカプセル処方物の例
本発明の化合物(100mg)を、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(50mg)およびデンプン粉末(250mg)と十分にブレンドする。次いで混合物をゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり400mgの組成物)。
【0138】
あるいは、本発明の化合物(40mg)を、微結晶性セルロース(Avicel PH103;259.2mg)およびステアリン酸マグネシウム(0.8mg)と十分にブレンドする。次いで混合物をゼラチンカプセルに充填する(サイズ#1、白色、不透明)(カプセル当たり300mgの組成物)。
【0139】
経口投与用の錠剤処方物の例
本発明の化合物(10mg)、デンプン(45mg)および微結晶性セルロース(35mg)を20番メッシュ米国標準篩に通し、十分に混合する。得られた顆粒剤を50〜60℃で乾燥し、16番メッシュ米国標準篩に通す。ポリビニルピロリドンの溶液(4mgを滅菌水の10%溶液として)をカルボキシメチルデンプンナトリウム(4.5mg)、ステアリン酸マグネシウム(0.5mg)およびタルク(1mg)と混合し、次いでこの混合物を16番メッシュ米国標準篩に通す。次いでカルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを顆粒剤に加える。混合した後、混合物を錠剤機で圧縮して100mgの重量の錠剤を得る。
【0140】
あるいは、本発明の化合物(250mg)を、微結晶性セルロース(400mg)、ヒュームド二酸化ケイ素(10mg)およびステアリン酸(5mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を圧縮して錠剤(錠剤当たり665mgの組成物)を形成させる。
【0141】
あるいは、本発明の化合物(400mg)を、コーンスターチ(50mg)、クロスカルメロースナトリウム(25mg)、ラクトース(120mg)およびステアリン酸マグネシウム(5mg)と十分にブレンドする。次いで混合物を圧縮して一本割線入錠剤(錠剤当たり600mgの組成物)を形成させる。
【0142】
経口投与用の懸濁処方物の例
以下の成分を混合して、懸濁液10mL当たり100mgの活性薬剤を含む懸濁液を得る:
【0143】
【化21】

注射投与用の注射可能な処方物の例
本発明の化合物(0.2g)を0.4M酢酸ナトリウム緩衝液(2.0mL)とブレンドする。得られた溶液のpHを、必要に応じて0.5N塩酸または0.5N水酸化ナトリウム水溶液でpH4に調節し、次いで注射用に十分な水を加えて20mLの合計容積にする。次いで混合液を滅菌フィルター(0.22ミクロン)でろ過して注射で投与するのに適した滅菌溶液を得る。
【0144】
吸入投与用組成物の例
本発明の化合物(0.2mg)を微粉化し、次いでラクトース(25mg)とブレンドする。次いでブレンドしたこの混合物をゼラチン吸入カートリッジに充填する。カートリッジの内容物を、例えば乾燥粉末吸入器を用いて投与する。
【0145】
あるいは、微粉化した本発明の化合物(10g)を、脱塩水(200mL)にレシチン(0.2g)を溶解させることにより調製した溶液中に、分散させる。得られた懸濁液をスプレー乾燥し、次いで微粉化して、約1.5μm未満の平均直径を有する粒子を含む微粉化組成物を形成させる。次いでこの微粉化組成物を、吸入器で投与したとき用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で、加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む定用量吸入器カートリッジに充填する。
【0146】
あるいは、本発明の化合物(25mg)をクエン酸塩緩衝(pH5)等張食塩水(125mL)に溶解させる。混合物を攪拌し、化合物が溶解するまで超音波処理する。溶液のpHをチェックし、必要なら、1N水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加えてpH5に調節する。用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供する噴霧装置を用いてその溶液を投与する。
【実施例】
【0147】
本発明の具体的な実施形態を例示するために以下の調製例および実施例を示す。しかし、これらの具体的な実施形態は、特に示されない限り、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0148】
別段の表示のない限り、以下の略語は以下の意味を有し、本明細書で使用されるが定義されていない他の任意の略語はその標準的な意味を有するものとする:
AcOH 酢酸
Boc t−ブトキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
DCM ジクロロメタン(すなわち、塩化メチレン)
DIAD ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
DMSO ジメチルスルホキシド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FBS ウシ胎仔血清
hDAT ヒトドーパミントランスポーター
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
hNET ヒトノルエピネフリントランスポーター
hSERT ヒトセロトニントランスポーター
5−HT 5−ヒドロキシトリプタミン
IPA イソプロピルアルコール
IPAc 酢酸イソプロピル
MeCN アセトニトリル(CHCN)
MeOH メタノール
NA ノルアドレナリン
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PPh トリフェニルホスフィン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TsCl p−トルエンスルホニルクロリドまたは4−メチルベンゼンスルホニルクロリド
本明細書で使用されるが定義されていない他の任意の略語はその標準的な一般に受け入れられている意味を有する。別段の言及のない限り、試薬、出発原料および溶媒等のすべての材料は、市場の供給業者(例えば、Sigma−Aldrich、Fluka Riedel−de Haen等)から購入したものであり、これをさらに精製することなく使用した。
【0149】
(調製例1)
4−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【0150】
【化22】

4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(5.0g、16mmol、1.0当量)およびTHF(130mL、1.7mol)を、窒素雰囲気下、室温で混合した。ボランジメチルスルフィド錯体(2.9mL、33mmol、2.0当量)を滴下して加え、混合物を5分間攪拌し、次いで還流下で1時間加熱した。混合物を室温に冷却し、MeOH(40mL)を滴下して反応物をクエンチし、次いでロータリーエバポレーションで濃縮した。この物質をMeOH(2×40mL)と共沸させた。次いで混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、1M HCl(2×50mL)、次いでNaHCO(2×50mL)、次いでNaCl飽和水溶液(1×50mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮して4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(4.8g)を透明な淡黄色油状物として得た。これは静置すると固化した。
【0151】
H NMR (CDCl) δ (ppm) 7.34−7.22 (m, 3H); 7.19 (dt, J = 1.6 Hz, 7.2, 1H); 4.73 (s, 2H); 4.32−4.14 (m, 2H); 3.00 (tt, J = 4.0 Hz, 12.0, 1H); 2.80 (t, J = 11.6 Hz, 2H); 1.78−1.56 (m, 4H); 1.47 (m, 9H)。
【0152】
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(0.4g、1.0mmol、1.0当量)およびトリエチレンジアミン(220mg、2.0mmol、1.4当量)をDCM(11mL、170mmol)に溶解させた。混合物を窒素雰囲気下、0℃で冷却し、TsCl(290mg、1.5mmol、1.1当量)を加え、混合物を0℃でさらに60分間攪拌した。混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、水(2×25mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーションで濃縮して表題化合物(500mg)を得た。これをさらに精製することなく使用した。
【0153】
H NMR (CDCl) δ (ppm) 7.81 (t, J = 2.0 Hz, 1H); 7.79 (t, J = 2.0 Hz, 1H); 7.37−7.32 (m, 4H); 7.25−7.21 (m, 1H); 7.21−7.13 (m, 1H), 5.12 (s, 2H); 4.34−4.12 (m, 2H); 2.81−2.61 (m, 3H); 2.45 (s, 3H); 1.70−1.52 (m, 4H); 1.48 (s, 9H)。
【0154】
(調製例2)
4−(2−メタンスルホニルオキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【0155】
【化23】

4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(5.0g、160mmol、1.0当量)およびTHF(100mL、1.0mol)を窒素雰囲気下、室温で混合した。THF中の1.0Mボラン−THF錯体(32.7mL、32.7mmol、2.0当量)を10分間かけて滴下して加えた(5℃発熱、ガス発生)。混合物を室温で5分間攪拌し、次いで50℃で1時間加熱した。混合物を室温に冷却し、反応物をMeOH(30mL)で徐々にクエンチし(軽い発熱、相当なガスの発生)、次いでロータリーエバポレーションで濃縮した。この物質をMeOH(2×50mL)と共沸させた。粗生成物をEtOAc(100mL、1mol)に溶解し、NaHCO(50mL)、次いでNaCl飽和水溶液(50mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮して4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(4.4g)を透明な淡黄色油状物として得た。これは静置すると固化した。
【0156】
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(50.0g、172mmol、1.0当量)をDCM(500mL、8000mmol)に溶解させた。混合物を窒素雰囲気下、0℃で冷却し、メタンスルホン酸無水物(44.8g、257mmol、1.5当量)を一括して加えた。DIPEA(47.8mL、274mmol、1.6当量)を5分間かけて滴下して加え、混合物を0℃で90分間攪拌した。水(400mL、20mol)を加え、混合物を5分間攪拌した。相を分離させ、有機層を水(300mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、溶媒を除去して表題化合物(70g)を濃厚な油状物として得た。これをさらに精製することなく使用した。
【0157】
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ (ppm) 7.37−7.43 (m, 3H), 7.31 (d, 1H), 7.22 (m, 2H), 5.38 (s, 2H), 4.28 (m, 2H), 2.92−3.10 (m, 1H), 2.92 (s, 3H), 2.80−2.92 (m, 2H), 1.63−1.81 (m, 4H), 1.51 (s, 9H)。
【0158】
(実施例1)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン
【0159】
【化24】

4−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(2.1g、4.7mmol、1.0当量)をMeCN(46mL、890mmol)に溶解させ、KCO(1.9g、14mmol、3.0当量)および2,4,6−トリフルオロフェノール(1.0g、7.0mmol、1.5当量)に加えた。混合物を50℃で終夜振とうさせ、次いで室温に冷却した。上澄み液をKCOおよび他の固体から分離した。TFA(7mL、90mmol、20.0当量)をその上澄み液に加え、混合物を室温で終夜振とうさせた。次いで溶液を濃縮して粗製残留物を得た。残留物を5.0mLの1:1AcOH/HO、さらには追加の2.0mL AcOHに溶解させ、ろ過し、分取HPLCで精製して表題化合物をTFA塩(1.3g、97.5%純度)として得た。MS m/z:[M+H]1818NOとして計算して、322.13;実測値322.2。
【0160】
H NMR (CDCl) δ (ppm) 9.83 (br.s, 1H); 9.32 (br.s, 1H); 7.46−7.39 (m, 2H); 7.32 (d, J = 6.8 Hz, 1H); 7.26−7.21 (m, 1H); 6.76−6.66 (m, 2H); 5.07 (s, 2H); 3.69−3.50 (m, 2H); 3.38 (t, J = 11.6 Hz, 1H); 3.20−3.02 (m, 2H); 2.19 (q, J = 12.8 Hz, 2H); 2.12−2.01 (m, 2H)。
【0161】
結晶性HCl塩としての4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの合成
4−(2−メタンスルホニルオキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(27.0g、60.6mmol、1.0当量)をMeCN(540mL)に溶解させ、KCO(25g、180mmol、3.0当量)および2,4,6−トリフルオロフェノール(13.5g、90.9mmol、1.5当量)に加えた。混合物を50℃で6時間強力に攪拌し、加熱をやめ(removed from the heat)、終夜攪拌した。混合物を室温に冷却し、EtOAc(700mL)および水(700mL)で希釈した。相を分離させ、有機層を水中の1.0M NaOH(2×400mL)およびNaCl飽和水溶液(1×400mL)で2回洗浄し、次いでNaSOで乾燥し、溶媒を除去して粗製4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)−フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(25.0g)を得た。小スケールで合成した粗生成物を一緒にして合計30gにし、クロマトグラフィー(ヘキサン中に0〜10%EtOAc)で精製して4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(22.0g)を得た。
【0162】
t−ブチルエステル(22.0g、31.3mmol、1.0当量)をEtOH(250mL、310mmol、10.0当量)中の1.25M HClと混合した。混合物を室温で8時間攪拌し、次いで−10℃で約48時間超保存した。大部分の溶媒をロータリーエバポレーションで除去した。得られた濃厚スラリーにEtOAc(80mL)を加え、続いて室温で2時間攪拌した。第1収量分をろ過により単離し、ろ過ケーキをEtOAc(20mL)で洗浄し、乾燥して表題化合物を塩酸塩の白色固体(8.5g、>99%純度)として得た。ろ液のHPLCは約25%の生成物面積%を示す。第2収量分のために、溶媒をロータリーエバポレーションで除去し、得られた固体(約10g)をEtOAc(40mL)中でスラリー化させ、最初は室温で、次いで60℃で、再度室温にして表題化合物を塩酸塩(1.7g、>99%純度)として得た。
【0163】
塩酸塩(18.5g、51.7mmol)の2つのロットをEtOAc(75mL、770mmol)と混合した。得られた濃厚ではあるが自由流動性のあるスラリーを65℃で30分間加熱し、室温に冷却し、ろ過した。フラスコとろ過ケーキをEtOAc(20mL)で洗浄し、固体を高真空下、室温で終夜乾燥して結晶性塩酸塩(18.2g、99.3%純度)を得た。
【0164】
XRPDにより良好な結晶性が観察された。LC−MS(2mLのMeCN:1M HCl(1:1)水溶液中に2mg;API150EX LC/MSシステム)によりその構造と一致していることが判明した。NMR(DMSO−d、Varian VnmrJ400)によりその構造およびその塩の形態と一致していることが判明した。
【0165】
結晶性HCl塩としての4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの代替合成
塩化アセチル(83.5mL、1170mmol)を徐々にEtOH(140mL、2.4mol)に加えた。EtOH(100mL、2.0mol)中に溶解した4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(55.0g、117mmol)を加え、得られた混合物を室温で6時間攪拌した。大部分の溶媒をロータリーエバポレーションで除去した。得られた濃厚スラリーにEtOAc(300mL)を加え、続いて溶媒を一部除去して約100mLにした。新鮮なEtOAc(200mL)を加え、得られたスラリーを1時間攪拌し、ろ過し、乾燥して塩酸塩(28.0g、約99%純度)を得た。ろ液を濃縮して濃厚ペーストにし、IPAc(100mL)を加え、1時間攪拌し、ろ過し、乾燥してさらに5.0gの塩酸塩(約99%純度)を得た。
【0166】
塩酸塩(83.0g、230mmol、約99%純度)の2つのロットをEtOAc(250mL、2.6mol)と混合した。得られたスラリーを70℃で加熱し、次いで徐々に室温に冷却し、続いて終夜攪拌した。得られた自由流動性スラリーをろ過し、ろ過ケーキをEtOAc(50mL)で洗浄し、次いで高真空下で約48時間乾燥して結晶性塩酸塩(81.0g、>99%純度)を得た。H NMR(DMSO−d、400Hz)により実施例1の構造およびその塩の形態と一致していることが判明した。
【0167】
結晶性塩酸塩(50.0g、1.40mol、>99%純度)をIPA(250mL、3.3mol)に溶解し、得られたスラリーを75℃に加熱した。水(25mL、1.4mol)を加えた。5分間で完全に溶解したことが認められ、溶液の内温は65℃であった。溶液を徐々に室温に冷却し、次いで室温で終夜攪拌した。得られた固体をろ過し、空気雰囲気下で2時間乾燥して半乾きの生成物を得た。次いで固体を高真空下、室温で約48時間乾燥して表題の結晶性塩酸塩(44.1g、99.5%純度)を得た。XRPDおよびDSCによりこの物質は良好な結晶性を示した。
【0168】
表題結晶性塩酸塩(151.1g、99.5%純度)を、175.0gの塩酸塩と、5%水のIPA(10倍容積)(全体で90mLの水と1.8LのIPA)を用いた同様の方法でも調製した。
【0169】
(実施例2)
4−[2−(2,6−ジフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン
【0170】
【化25】

4−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(225mg、505μmol、1.0当量)をMeCN(5.0mL、97mmol)に溶解させ、KCO(210mg、1.5mmol、3.0当量)および2,6−ジフルオロフェノール(98mg、760μmol、1.5当量)に加えた。混合物を50℃で終夜振とうさせ、次いで室温に冷却した。上澄み液をKCOおよび他の固体から分離した。
【0171】
TFA(800μL、10mmol、20.0当量)をその上澄み液に加え、混合物を室温で終夜振とうさせた。次いでその溶液を濃縮して粗製残留物を得た。残留物を1.5mLのAcOH/HO(1:1)、さらには追加の0.3mLのAcOHに溶解させてろ過し、分取HPLCで精製して表題化合物をTFA塩(115mg、95%純度)として得た。MS m/z:[M+H]1819NOとして計算して、304.14;実測値304.2。
【0172】
以下のNMRデータを、上記したのと同様の方法で調製した別のロットの物質について得た。
【0173】
H NMR (CDCl) δ (ppm) 9.60 (br.s, 1H); 9.25 (br.s, 1H); 7.42−7.37 (m, 2H); 7.33 (d, J = 7.6 Hz, 1H); 7.26−7.20 (m, 1H); 7.03−6.86 (m, 3H); 5.11 (s, 2H); 3.64−3.50 (m, 2H); 3.38 (t, J = 11.0 Hz, 1H); 3.16−3.00 (m, 2H); 2.18 (q, J = 12.4 Hz, 2H); 2.10−2.01 (m, 2H)。
【0174】
(実施例3)
上記実施例で説明した手順に従い、適切な出発原料および試薬を代わりに使用して、式Iaを有する化合物3−1〜3−10も調製した。
【0175】
【化26】

(調製例3)
4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【0176】
【化27】

Boc−4−ピペリドン(1.99g、10mmol)をTHF(10mL、0.2mol)に溶解させ、−20℃で冷却した。THF中の1.0Mのナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(11.0mL、11mmol)を徐々に加えた。混合物を−30℃〜−20℃で30分間攪拌した。N−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(3.57g、10mmol)をTHF(7mL)に加えた。得られた混合物を−20℃〜−10℃で60分間攪拌し、次いで水中の1.0M NaOH(9.4mL、9.4mmol)を加えた。混合物を室温まで加温した。EtOAc(60.0mL)およびヘプタン(30mL)を混合物に加え、5分間攪拌した。層を分離させ、有機層を1N NaOH(5×25mL)、NaCl飽和水溶液(10.0mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し濃縮して4−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(3.1g)を黄色みがかった油状物として得た。これをさらに精製することなく使用した。
【0177】
H NMR (CDCl) δ (ppm) 5.76 (m, 1H); 4.04 (m, 2H); 3.62 (m, 2H); 2.45 (m, 2H); 1.48 (s, 9H)。
【0178】
4−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(990mg、3.0mmol)を1,4−ジオキサン(9mL、100mmol)に溶解させ、酢酸カリウム(883.3mg、9.0mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(788mg、3.1mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(52mg、63μmol)および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(38mg、68μmol)を加えた。混合物を脱ガスし、窒素(4×)でパージし、続いて80℃で17時間加熱した。混合物を室温に冷却し、EtOAc(25mL)を用いてCelite(登録商標)でろ過し、生成物を洗浄して表題化合物(296mg)を半ワックス状白色固体として得た。
【0179】
(調製例4)
4−(4−フルオロ−2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【0180】
【化28】

メチル2−ブロモ−5−フルオロベンゾエート(1.8g、7.5mmol)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(2.3g、7.5mmol)、THF(69mL、850mmol)および水中の2Mの炭酸ナトリウム(15.0mL、30.0mmol)を混合し、混合物を脱ガスし、窒素でフラッシュ(flush)した。ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(158mg、225μmol)を加え、混合物を再度脱ガスし、窒素でフラッシュ(flush)した。混合物を80℃で1時間加熱した。次いで混合物を冷却し、層を分離し、EtOAc(50mL)で希釈し、NaCl飽和水溶液(30mL)で洗浄してNaSOで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中に0〜50%EtOAc)で精製した。MeOH(60.8mL、150mmol)中の粗製物質およびPearlman触媒(0.1:0.4、水酸化パラジウム:カーボンブラック、1.1g、1.5mmol)の溶液を、室温、1気圧で終夜水素化した。次いで混合物を排出し、窒素でパージし、Celite(登録商標)でろ過し、濃縮して無色油状物を得た。この油状物をTHF(30mL、400mmol)に溶解させ、ボラン−ジメチルスルフィド錯体(1.3mL、15.0mmol)を用いて室温で処理した。混合物を5時間加熱還流させた。室温に冷却した後、MeOH(20mL)を徐々に加え、ロータリーエバポレーションで除去した。さらに20mLのMeOHを加え、ロータリーエバポレーションで除去した。次いで残留物をEtOAc(100mL)に溶解させ、1N HClおよび飽和NaHCOで洗浄してNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。次いでこの物質をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中に0〜50%EtOAc)で精製して表題化合物(924mg)を無色粘性固体として得た。
【0181】
H NMR (CDCl) δ (ppm) 7.21 (br.s, 1H); 7.16 (m, 1H); 6.98 (m, 1H); 4.76 (br.s, 2H); 4.24 (m, 2H); 2.89 (m, 1H); 2.80 (m, 2H); 1.72 (m, 2H); 1.60 (m, 2H); 1.47 (s, 9H)。
【0182】
(実施例4)
4−[4−フルオロ−2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン
【0183】
【化29】

DIAD(23.6μL、120μmol)をトルエン(533μL、5mmol)中のPPh(28.9mg、110μmol)の溶液に加えた。混合物を短時間攪拌し、4−(4−フルオロ−2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(30.9mg、100μmol)を加えた。この混合物を2,4,6−トリフルオロフェノール(14.8mg)と合わせて、80℃で4時間加熱し、次いで濃縮した。粗製物質を、EtOH(1mL)中の1.25M HClを用いて室温で終夜かけて脱保護した。次いでこの物質を濃縮し、残留物を分取用HPLCで精製して表題化合物をTFA塩(7.8mg、100%純度)として得た。MS m/z:[M+H]1817NOとして計算して、340.12;実測値340.0。
【0184】
(実施例5)
上記実施例で説明した手順にしたがい、適切な出発原料および試薬を代わりに使用して、式Ibを有する化合物5−1〜5−17も調製した。
【0185】
【化30】

(実施例6)
上記実施例で説明した手順にしたがい、適切な出発原料および試薬を代わりに使用して、式II−3を有する化合物6−1〜6−7も調製した。
【0186】
【化31】

(アッセイ1)
hSERT、hNETおよびhDAT結合アッセイ
トランスポーターでの試験化合物のpK値を測定するために、膜放射性リガンド結合アッセイを用いて、それぞれのヒト組換えトランスポーター(hSERT、hNETまたはhDAT)を発現する細胞から調製された膜への標識付きリガンド(H−シタロプラム、H−ニソキセチンまたはH−WIN35428)結合の競合的阻害を測定した。
【0187】
hSERT、hNETまたはhDATを発現する細胞からの膜調製
hSERTまたはhNETでそれぞれ安定的に形質移入された組換えヒト胎児腎臓細胞(HEK−293)誘導細胞系を、加湿インキュベーター中、5%CO、37℃で10%透析FBS(hSERTについて)またはFBS(hNETについて)、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミンおよび250μg/mlのアミノグリコシド系抗生物質G418を補われたDMEM培地で成長させた。培養が80%コンフルエンス(confluence)に達したら、細胞をPBS(Ca2+およびMg2+なし)中で十分に洗浄し、PBS中の5mM EDTAでリフトした。細胞を遠心分離でペレット化し、溶解緩衝液(10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTAを含む)に再懸濁し、ホモジナイズし、遠心分離でペレット化し、50mM Tris−HCl、pH7.5および10%スクロースに4℃で再懸濁した。膜懸濁液のタンパク質濃度をBio−Rad Bradfordタンパク質アッセイキットを用いて測定した。膜を瞬間凍結し、−80℃で保存した。hDAT(CHO−DAT)を発現するチャイニーズハムスター卵巣膜をPerkinElmerから購入し、−80℃で保存した。
【0188】
結合アッセイ
結合アッセイを、96ウェルアッセイプレートにおいて、200μlの全容積のアッセイ緩衝液(50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4)中で、それぞれSERT、NETおよびDATについて0.5、1および3μgの膜タンパク質で実施した。H−シタロプラム、H−ニソキセチンまたはH−WIN35428についての放射性リガンドK値を測定するための飽和結合試験をそれぞれ、0.005〜10nM(H−シタロプラム);0.01〜20nM(H−ニソキセチン)および0.2〜50nM(H−WIN35428)の範囲の12の異なる放射性リガンド濃度を用いて実施した。試験化合物のpK値を測定するための置換アッセイを、10pM〜100μMの範囲の11の異なる濃度の試験化合物を用いて、1.0nM H−シタロプラム、1.0nM H−ニソキセチンまたは3.0nM H−WIN35428で実施した。
【0189】
試験化合物のストック溶液(DMSO中に10mM)を調製し、希釈緩衝液(50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4、0.1%BSA、400μMアスコルビン酸)を用いて連続希釈液を作製した。hSERT、hNETまたはhDATアッセイのために、非特異的放射性リガンド結合をそれぞれ1μMデュロキセチン、1μMデシプラミンまたは10μM GBR12909(それぞれ希釈緩衝液中に)の存在下で測定した。
【0190】
22℃で60分間(または平衡に達するのに十分な時間)インキュベーションした後、膜を、0.3%ポリエチレンイミンで前処理した96ウェルUniFilter GF/Bプレートを用いた迅速ろ過により収穫し、300μlの洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、0.9%NaCl、pH7.5、4℃で)で6回洗浄した。プレートを室温で終夜かけて乾燥し、約45μlのMicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)を加え、液体シンチレーションスペクトロスコピーで結合放射能を定量した。競合的阻害曲線および飽和等温線を、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用いて分析した。IC50値を、Prism GraphPadのシグモイド型用量応答(可変勾配)アルゴリズムを用いて濃度応答曲線から得た。放射性リガンドについてのKおよびBmax値を、Prism GraphPadの飽和結合Global Fitアルゴリズムを用いて飽和等温線から得た。試験化合物についてのpK(Kの10を底とした負の対数)値を、チェン−プラソフ式(Cheng & Prusoff(1973年)Biochem.Pharmacol.22巻(23号):3099〜3108頁):K=IC50/(1+[L]/K)(式中、[L]=放射性リガンドの濃度)を用いて最適IC50値および放射性リガンドのK値から計算した。
【0191】
すべての上記化合物をこのアッセイで試験して、SERT pK≧7.9およびNET pK≧8.0を示すことが分かった。
【0192】
(アッセイ2)
hSERT、hNETおよびhDAT神経伝達物質取込みアッセイ
トランスポーターでの試験化合物のpIC50値を測定するために、神経伝達物質取込みアッセイを用いて、それぞれのトランスポーター(hSERT、hNETまたはhDAT)を発現する細胞中へのH−セロトニン(H−5−HT)、H−ノルエピネフリン(H−NE)およびH−ドーパミン(H−DA)取込みの競合的阻害を測定した。
【0193】
H−5−HT、H−NEおよびH−DA取込みアッセイ
hSERT、hNETまたはhDATでそれぞれ安定的に形質移入されたHEK−293誘導細胞系を、加湿インキュベーター中、5%CO、37℃で、10%透析FBS(hSERTについて)またはFBS(hNETおよびhDATについて)、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミンおよび250μg/mlのアミノグリコシド系抗生物質G418(hSERTおよびhNETについて)または800μg/ml(hDATについて)を補われたDMEM培地で成長させた。培養が80%コンフルエンスに達したら、細胞をPBS(Ca2+およびMg2+なし)中で十分に洗浄し、PBS中の5mM EDTAでリフトした。1100rpmで5分間遠心分離にかけて細胞を収穫し、PBSに再懸濁して1回洗浄し、次いで遠心分離にかけた。上澄み液を廃棄し、細胞ペレットを、HEPES(10mM)、CaCl(2.2mM)、アスコルビン酸(200μM)およびパーギリン(200μM)pH7.4を含むクレブス−リンガー重炭酸塩緩衝液中、室温で緩やかに摩砕して再懸濁した。細胞懸濁液中の細胞の最終濃度は、SERT、NETおよびDAT細胞系についてそれぞれ、7.5×10細胞/ml、1.25×10細胞/mlおよび5.0×10細胞/mlであった。
【0194】
神経伝達物質取込みアッセイを、96ウェルアッセイプレートにおいて、400μLの全容積のアッセイ緩衝液(HEPES(10mM)、CaCl(2.2mM)、アスコルビン酸(200μM)およびパーギリン(200μM)、pH7.4を含むクレブス−リンガー重炭酸塩緩衝液)中、SERTおよびNETについてそれぞれ1.5×10および2.5×10細胞で実施した。試験化合物のpIC50値を測定するための競合アッセイを10pM〜100μMの範囲の11の異なる濃度で実施した。試験化合物のストック溶液(DMSO中に10mM)を調製し、50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4、0.1%BSA、400μMアスコルビン酸を用いて連続希釈液を調製した。試験化合物をそれぞれの細胞で、37℃で30分間インキュベートし、続いて放射性標識化神経伝達物質、H−5−HT(最終濃度20nM)、H−NE(最終濃度50nM)またはH−DA(最終濃度100nM)を加えた。非特異的神経伝達物質取込みを、それぞれhSERT、hNETまたはhDATアッセイについて、2.5μMデュロキセチンまたは2.5μMデシプラミン(それぞれ希釈緩衝液中に)の存在下で測定した。
【0195】
37℃で10分間、放射性リガンドでインキュベーションした後、細胞を、1%BSAで前処理した96ウェルUniFilter GF/Bプレートを用いた迅速ろ過により収穫し、650μl洗浄緩衝液(氷冷PBS)で6回洗浄した。プレートを37℃で終夜かけて乾燥し、約45μlのMicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)を加え、取り込まれた放射能を液体シンチレーションスペクトロスコピーで定量した。競合的阻害曲線をGraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用いて分析した。IC50値を、Prism GraphPadのシグモイド型用量応答(可変勾配)アルゴリズムを用いて、濃度応答曲線から得た。
【0196】
(アッセイ3)
エクスビボでのSERTおよびNETトランスポーターの占有率試験
エクスビボでの放射性リガンド結合および神経伝達物質取込みアッセイを用いて、試験化合物のインビボでの投与(急性または慢性)に続く、選ばれた脳領域におけるインビボでのSERTおよびNETの占有率を測定した。適切な用量(0.0001〜100mg/kg)での試験化合物の投与(静脈内、腹腔内、経口、皮下または他の経路で)に続いて、ラット(グループ当たり≧n=4)を、特定の時点(10分間〜48時間)で骨頭切除により安楽死させ、氷上で脳を切り裂いた。関係する脳の領域を切り裂き、凍結させ、使用時まで−80℃で保存した。
【0197】
エクスビボでのSERTおよびNET放射性リガンド結合アッセイ
エクスビボでの放射性リガンド結合アッセイのため、SERT(H−シタロプラム)およびNET−(H−ニソキセチン)選択性放射性リガンドと、媒体処理した動物および試験化合物処理した動物から調製したラットの脳粗製ホモジネートとの会合の初速度をモニターした(Hessら(2004年)J.Pharmacol. Exp. Ther. 310巻(2号):488〜497頁を参照されたい)。粗製脳組織ホモジネートを、0.15mL(mg湿重量当たり)の50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、pH7.4緩衝液中で、凍結組織片をホモジナイズして調製した。放射性リガンド会合アッセイを、96ウェルアッセイプレートにおいて、200μlの全容積のアッセイ緩衝液(50mM Tris−HCl、120mM NaCl、5mM KCl、0.025%BSA、pH7.4)中で、650μgの湿重量組織(25μgタンパク質に相当)で実施した。ホモジネートを、それぞれH−シタロプラム(3nM)およびH−ニソキセチン(5nM)で最大で5分間インキュベートし、続いて0.3%ポリエチレンイミンで前処理した96ウェルUniFilter GF/Bプレートを用いた迅速ろ過でアッセイを終了させた。次いでフィルターを300μl洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、0.9%NaCl、pH7.4、4℃で)で6回洗浄した。非特異的放射性リガンド結合を、H−シタロプラムまたはH−ニソキセチンについてそれぞれ1μMデュロキセチンまたは1μMデシプラミン(despiramine)の存在下で測定した。プレートを室温で終夜かけて乾燥し、約45μlのMicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)を加え、液体シンチレーションスペクトロスコピーで結合放射能を定量した。H−シタロプラムおよびH−ニソキセチンの会合の初速度を、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用いて線形回帰により測定した。媒体処理した動物からの脳組織ホモジネートへの放射性リガンド会合の平均速度を決定した。次いで試験化合物の占有率%を以下の式:
占有率%=100×(1−(試験化合物処理した組織についての会合初速度/媒体処理した組織についての会合平均速度))
を用いて決定した。ED50値を、試験化合物の用量のlog10対占有率%でプロットして決定した。ED50値を、GraphPad Prismのシグモイド型用量応答(可変勾配)アルゴリズムを用いて濃度応答曲線から得た。
【0198】
エクスビボでのSERTおよびNET取込みアッセイ
媒体処理した動物および試験化合物処理した動物から調製したラット脳粗製ホモジネートへのH−5−HTまたはH−NEの取込みによるエクスビボでの神経伝達物質取込みアッセイを用いて、インビボでのSERTおよびNETトランスポーター占有率を測定した(Wongら(1993年)Neuropsychopharmacology 8巻(1号):23〜33頁を参照されたい)。粗製脳組織ホモジネートを、0.32Mスクロース、200μMアスコルビン酸および200μMパーギリンを含む0.5mL(mg湿重量当たり)の10mM HEPES緩衝液pH7.4中、22℃で凍結組織片をホモジナイズして調製した。神経伝達物質取込みアッセイを、96ウェルAxygenプレートにおいて、350μlの全容積のアッセイ緩衝液(10mM HEPES、2.2mM CaCl、200μMアスコルビン酸および200μMパーギリン、pH7.4、を含むクレブス−リンガー重炭酸塩緩衝液)中で、50μgタンパク質で実施した。ホモジネートを、それぞれH−5−HT(20nM)およびH−NE(50nM)で、37℃で5分間インキュベートし、続いて1%BSAで前処理した96ウェルUniFilter GF/Bプレートを用いた迅速ろ過でアッセイを終了させた。プレートを650μl洗浄緩衝液(氷冷PBS)で6回洗浄し、37℃で終夜乾燥し、次いで約45μlのMicroScint(商標)−20(Perkin Elmer)を加えた。取り込まれた放射能を液体シンチレーションスペクトロスコピーで定量した。非特異的神経伝達物質取込みを、組織ホモジネートをH−5−HT(20nM)またはH−NE(50nM)で4℃で5分間インキュベートする並行したアッセイで測定した。
【0199】
(アッセイ4)
他のアッセイ
試験化合物の薬理学的特性を評価するために用いた他のアッセイには、これらに限定されないが、hSERTまたはhNETを発現する細胞から調製された膜を用いた冷リガンド結合動力学アッセイ(MotulskyおよびMahan(1984年)Molecular Pharmacol. 25巻(1号):1〜9頁);放射能標識した、例えばトリチウム化した試験化合物を用いた慣用的な膜放射性リガンド結合アッセイ;例えば齧歯動物またはヒトの脳からの天然組織を用いた放射性リガンド結合アッセイ;ヒトまたは齧歯動物の血小板を用いた神経伝達物質取込みアッセイ;齧歯動物の脳からの粗製のまたは純粋なシナプトソーム標本を用いた神経伝達物質取込みアッセイが含まれる。
【0200】
(アッセイ5)
ホルマリン足試験
化合物を、50μlのホルマリン(5%)注射によって誘発される行動反応を阻止する能力について評価する。金属バンドを、複数のオスのSD(Sprague−Dawley)ラット(200〜250g)の左後足に貼り、各ラットを、プラスチック円筒(直径15cm)の中で60分間そのバンドに馴じませる。薬学的に許容される媒体中で化合物を調製し、ホルマリンチャレンジの前の予め指定された時間に全身的に(腔内(i.p.)、経口(p.o.))投与する。注射された(バンドをした)後足のフリンチングからなる無意識の侵害受容行動を、自動侵害受容分析器(UCSD Anesthesiology Research、San Diego、CA)を用いて60分間連続的にカウントする。被験体の抗侵害受容特性を、媒体で処置したラットと化合物で処置したラットにおけるフリンチの数を比較して判定する(Yakshら、「An automated flinch detecting system for use in the formalin nociceptive bioassay」(2001年)J. Appl. Physiol. 90巻(6号):2386〜2402頁)。
【0201】
(アッセイ6)
脊髄神経結紮モデル
化合物を、神経損傷によって誘発される接触性アロディニア(非侵害性の機械的刺激に対する高い感受性)を逆転させるその能力について評価する。オスのSDラットを、KimおよびChung、「An experimental model for peripheral neuropathy produced by segmental spinal nerve ligation in the rat」(1992年)Pain 50巻(3号):355〜363頁に記載されているようにして外科的に用意した。機械的感受性を、神経損傷の前後で、非侵害性機械的刺激に反応した50%引っ込め率(withdrawal)で判定する(Chaplanら、「Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw」(1994年)J. Neurosci. Methods 53巻(1号):55〜63頁)。外科処置後1〜4週間、薬学的に許容される媒体中で化合物を調製し、全身的に(腔内、経口)投与する。処置前後での、神経損傷により誘発された機械的感受性の度合いは、化合物の抗侵害受容特性の指標として役に立つ。
【0202】
本発明を、その特定の態様または実施形態を参照して説明してきたが、当業者は本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、変更を加えるかまたは等価物で置き換えることができることを理解する。さらに、適用される特許法および特許規則で認められる範囲で、本明細書で引用したすべての出版物、特許および特許出願を、各文献が個別に参照により本明細書に組み込まれているのと同程度に、その全体を参照により本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化32】

(式中、aは0、1、2、3または4であり;各Rは独立にハロまたはトリフルオロメチルであり;Rは水素、ハロまたは−C1〜6アルキルであり;R、RおよびRは独立に水素またはハロである)
または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
が水素、フルオロ、クロロまたはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素、フルオロ、クロロまたはブロモである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が水素またはフルオロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が水素、フルオロ、クロロまたはブロモである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
aが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、水素、フルオロ、クロロまたはメチルであり;Rが水素、フルオロ、クロロまたはブロモであり;Rが水素またはフルオロであり;Rが水素、フルオロ、クロロまたはブロモである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
aが0であり、RおよびRが水素であり、RおよびRがフルオロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
aが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が3−フルオロ、4−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルまたは6−フルオロである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が水素またはフルオロであり;Rが水素またはフルオロであり;Rが水素またはフルオロであり;Rが水素、フルオロまたはクロロである、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
aが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
が4,5−ジフルオロ、4,6−ジフルオロまたは5,6−ジフルオロである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
が水素またはフルオロであり;Rが水素またはフルオロであり;Rが水素またはフルオロであり;Rが水素、フルオロまたはクロロである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
SERT pK≧7.9およびNET pK≧8を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
式IIの化合物:
【化33】

(式中、
(a)RおよびRは水素であり、かつ:
(i)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは0であるか;
(ii)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロ、4,6−ジフルオロもしくは5,6−ジフルオロであるか;
(iv)Rはフルオロであり、Rはクロロであり、aは0であるか;
(v)Rはクロロであり、Rはフルオロであり、aは0であるか;または、
(vi)Rはブロモであり、Rはクロロであり、aは0であり;あるいは、
(b)RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、Rはクロロであり、かつ:
(i)aは0であるか;
(ii)aは1であり、Rは5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;または、
(iii)aは2であり、Rは4,6−ジフルオロであり;あるいは、
(c)RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、かつ;
(i)Rはフルオロであり、aは0であるか;
(ii)Rはフルオロであり、aは1であり、Rは3−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルまたは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,6−ジフルオロであるか;または、
(iv)Rはクロロまたはメチルであり、aは0であり;あるいは、
(d)R、RおよびRは水素であり、かつ:
(i)RはHであり、aは0であるか;
(ii)RはHであり、aは1であり、Rは5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rはフルオロであり、aは0であるか;
(iv)Rはフルオロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;
(v)Rはフルオロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロもしくは4,6−ジフルオロであるか;
(vi)Rはクロロであり、aは0であるか;
(vii)Rはクロロであり、aは1であり、Rは4−フルオロ、6−フルオロもしくは5−トリフルオロメチルであるか;
(viii)Rはクロロであり、aは2であり、Rは4,5−ジフルオロであるか;または、
(ix)Rはブロモであり、aは0である)
または薬学的に許容されるその塩。
【請求項17】
およびRが水素であり、かつ:
(i)Rがフルオロであり、Rがフルオロであり、aが0であるか;
(ii)Rがフルオロであり、Rがフルオロであり、aが1であり、Rが4−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rがフルオロであり、Rがフルオロであり、aが2であり、Rが4,5−ジフルオロ、4,6−ジフルオロもしくは5,6−ジフルオロであるか;
(iv)Rがフルオロであり、Rがクロロであり、aが0であるか;
(v)Rがクロロであり、Rがフルオロであり、aが0であるか;または、
(vi)Rがブロモであり、Rがクロロであり、aが0である、
請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
がフルオロであり、Rがフルオロであり、aが0である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
およびRが水素であり、Rがフルオロであり、Rがクロロであり、かつ:
(i)aが0であるか;
(ii)aが1であり、Rが5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;または、
(iii)aが2であり、Rが4,6−ジフルオロである、請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
およびRが水素であり、Rがフルオロであり、かつ;
(i)Rがフルオロであり、aが0であるか;
(ii)Rがフルオロであり、aが1であり、Rが3−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rがフルオロであり、aが2であり、Rが4,6−ジフルオロであるか;または、
(iv)Rがクロロもしくはメチルであり、aが0である、
請求項16に記載の化合物。
【請求項21】
、RおよびRが水素であり、かつ:
(i)RがHであり、aが0であるか;
(ii)RがHであり、aが1であり、Rが5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;
(iii)Rがフルオロであり、aが0であるか;
(iv)Rがフルオロであり、aが1であり、Rが4−フルオロ、5−フルオロもしくは6−フルオロであるか;
(v)Rがフルオロであり、aが2であり、Rが4,5−ジフルオロもしくは4,6−ジフルオロであるか;
(vi)Rがクロロであり、aが0であるか;
(vii)Rがクロロであり、aが1であり、Rが4−フルオロ、6−フルオロもしくは5−トリフルオロメチルであるか;
(viii)Rがクロロであり、aが2であり、Rが4,5−ジフルオロであるか;または、
(ix)Rがブロモであり、aが0である、
請求項16に記載の化合物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物の合成に有用な式IIIの化合物またはその塩
【化34】

(式中、Pはアミノ保護基を表す)。
【請求項23】
aが0であり、RおよびRが水素であり、RおよびRがフルオロである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物を調製するための方法であって、このプロセスが式IIIの化合物:
【化35】

(式中、Pはアミノ保護基を表す)
またはその塩を脱保護して、式IIまたは式Iの化合物を提供するステップを包含する、方法。
【請求項25】
aが0であり、RおよびRが水素であり、RおよびRがフルオロである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項27】
第2の治療薬をさらに含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記第2の治療薬が、抗アルツハイマー病薬、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗パーキンソン病薬、デュアルセロトニン‐ノルエピネフリン再取込みインヒビター、非ステロイド系抗炎症剤、ノルエピネフリン再取込みインヒビター、オピオイドアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、選択的セロトニン再取込みインヒビター、ナトリウムチャネル遮断薬、交感神経遮断薬およびこれらの組合せから選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
医薬品の製造のための請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項30】
前記医薬品が、疼痛性障害、抑うつ障害、情動障害、注意欠陥過活動性障害、認知障害、腹圧性尿失禁、慢性疲労症候群、肥満および閉経に伴う血管運動症状を治療するのに有用である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記疼痛性障害が神経因性疼痛または線維筋痛である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記医薬品が、慢性腰痛または変形性関節症を治療するのに有用である、請求項29に記載の使用。
【請求項33】
前記医薬品が、セロトニン再取込みを阻害するのに有用である、請求項29に記載の使用。
【請求項34】
前記医薬品が、ノルエピネフリン再取込みを阻害するのに有用である、請求項29に記載の使用。
【請求項35】
バイオアッセイにおいて試験化合物を評価する方法であって、
(a)試験化合物でバイオアッセイを実施して第1のアッセイ値を提供するステップと;
(b)請求項1〜21のいずれか一項に記載の化合物で前記バイオアッセイを実施して第2のアッセイ値を提供するステップであって、ステップ(a)をステップ(b)の前か、その後かまたはステップ(b)と同時に実施するステップと;
(c)ステップ(a)からの前記第1のアッセイ値とステップ(b)からの前記第2のアッセイ値を比較するステップと
を含む方法。
【請求項36】
前記バイオアッセイがセロトニン再取込みアッセイまたはノルエピネフリン再取込みアッセイである、請求項35に記載の方法。

【公表番号】特表2012−508761(P2012−508761A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536493(P2011−536493)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064308
【国際公開番号】WO2010/056941
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】