説明

4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジン塩の液体製剤

4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンのDL−乳酸塩、グルタル酸塩、L−アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩の液体製剤と、CNS疾患の処置で使用される薬剤の製造におけるこれらの使用とが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1として公開された国際特許出願には、例えば、遊離塩基としての化合物4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジン(化合物I)および対応するHCl付加塩が開示されている。この化合物はセロトニン輸送体およびセロトニン受容体2C(5−HT2C)の阻害薬であると報告されており、感情障害、例えばうつ病および不安症の処置のために有用であると言われている。
【0003】
化合物Iは、セロトニン受容体3(5−HT)およびセロトニン受容体2A(5−HT2A)の強力な拮抗薬でもあることが分かっており、それ故、化合物Iは、疼痛および認知機能障害を含むより広範囲の兆候を処置するために使用され得る。この薬理学的プロファイルは特許文献2でも開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/029232号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/144006号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/061508号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0186431号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/089743号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Psychother.Psychosom.、75、139−153頁、2006年
【非特許文献2】Raskind、Biol.Psychiatry、2006年
【非特許文献3】Neuropharmacol、33、467−471頁、1994年
【非特許文献4】Neuropharm.、48、252−263頁、2005年
【非特許文献5】Pain、51、5−17頁、1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの医薬化合物にとって、錠剤、カプセル、丸薬、または嚥下を目的とする類似物の経口投与は好ましい投与形態である。しかしながら、患者の中には(例えば高齢患者)、嚥下が困難な場合もあり、液体溶液は、錠剤、カプセル、丸薬などを嚥下する必要性を回避する適切な代替物であり得る。さらに液体溶液は柔軟な投与計画の可能性を提供する。液体溶液の容積を限定するために、溶液中に高濃度の活性成分を有することが必要であり、これはさらに、高溶解度の活性成分を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、化合物Iの液体製剤に関する。
【0008】
本発明者らは、驚くことに、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンのDL−乳酸付加塩(=DL−乳酸塩)、グルタル酸付加塩(=グルタル酸塩)、L−アスパラギン酸付加塩(=L−アスパラギン酸塩)およびグルタミン酸付加塩(=グルタミン酸塩)が非常に可溶性であることを見出した。従って、本発明は、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンのDL−乳酸付加塩、グルタル酸付加塩、L−アスパラギン酸付加塩またはグルタミン酸付加塩を含む液体製剤に関する。
【0009】
1つの実施形態では、本発明は、本発明の液体製剤を、それを必要としている患者に投与することを含む処置方法に関する。
【0010】
1つの実施形態では、本発明は、特定の疾患の処置のための液体医薬組成物の製造における本発明の塩の使用に関する。
【0011】
1つの実施形態では、本発明は、特定の疾患の処置において使用するための本発明の塩に関し、前記塩は液体製剤中に含まれる。
【0012】
1つの実施形態では、本発明は、本発明の液体製剤を含む容器に関し、前記容器には液滴凝集器(drop aggregate)が取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】化合物Iを投与したときの前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンレベルを示す。
【図1b】化合物Iを投与したときの前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンレベルを示す。
【図2】化合物Iを投与したときの前前頭皮質におけるドーパミンレベルを示す。
【0014】
本発明が関連する製剤は全て医薬製剤である。
【0015】
実施例の表2は、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンの様々な塩の溶解度を示す。データから明らかであるように、DL−乳酸、L−アスパラギン酸、グルタミン酸、およびグルタル酸付加塩は非常に高い溶解度を有する。便宜上、これらの塩は本発明の塩と呼ばれる。
【0016】
DL乳酸はDL−2−ヒドロキシプロピオン酸としても知られており、本発明で使用される4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンとの1:1酸付加塩を形成する。
【0017】
グルタル酸は1,5−ペンタン二酸としても知られており、本発明で使用される4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンとの1:1酸付加塩を形成する。
【0018】
L−アスパラギン酸は、本発明で使用される4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンとの1:1酸付加塩を形成する。
【0019】
グルタミン酸は、本発明で使用される4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンとの1:1酸付加塩を形成する。
【0020】
4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンは、特許文献1に開示されるように調製することができる。あるいは、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンは、実施例において記載されるように調製されてもよい。本発明の塩は、適切な酸を添加した後に沈殿させて調製することもでき、沈殿は、例えば、冷却、溶媒の除去、別の溶媒の添加、またはこれらの混合によってもたらすことができる。実施例には、塩を得るための特定の経路が開示されている。
【0021】
液体製剤は経口または非経口投与を対象とすることができる。点滴溶液を含む非経口投与のための液体製剤は多くの点で他の液体製剤と類似しているが、さらに無菌および等張性であることを特徴とする。
【0022】
本発明の液体経口製剤は、シロップ、エリキシル剤、経口溶液、懸濁液として、あるいは濃縮経口製剤として与えることができる。これらの投与形態の1つの利点は、患者が、特に高齢患者または口や喉に外傷のある患者にとっては困難であり得る固体形態を嚥下しなくてもよいことである。
【0023】
シロップおよびエリキシル剤は通常、活性医薬成分を含有する加糖、香味付けした液体である。通常シロップはより高い糖含有量を有し、エリキシル剤はアルコールも含有することが多い。経口溶液は活性成分の溶液である。懸濁液は、液体中に分散された固体粒子を含む2相系である。シロップ、エリキシル剤、経口溶液および懸濁液の投与は、通常、比較的大量の液体、すなわち10〜50mlの摂取を含む。
【0024】
これとは対照的に、本発明の濃縮経口製剤は、所定容積の前記製剤を適切なディスペンサーから計量し、得られた容積を液体(飲料、例えば水、ジュースまたは類似物)のグラス(患者がその液体を飲む)に添加することによって患者に投与される。便宜上、計量される容積は少量、例えば2ml未満、例えば1ml未満、例えば0.5ml未満などである。特定の実施形態では、本発明の濃縮経口製剤は、適切なディスペンサー、例えば液滴凝集器を有する容器から所定の数の液滴の前記製剤を計量し、その液滴を液体(水、ジュースまたは類似物)のグラス(患者がその液体を飲む)に添加することによって、患者に投与される。これに関連して、液滴凝集器は、容器に取り付けられた凝集器であり、前記容器の内部の液体が前記容器から別個の液滴で分注され得るようにする。
【0025】
濃縮経口製剤中の本発明の塩の濃度は、捕集することが所望される液滴の数(または容積)および投与することが所望される塩の量によって決定される。通常、約10〜20滴の計量が、一方では処置の安全性/効力と、他方では便利さとの間の最適な妥協であると考えられる。本発明の塩の濃度が高すぎる、すなわちほんの少しの数の液滴を計量しなければならい場合には、処置の安全性または効力を危うくし得る。少数の液滴の場合、所望されるよりも1滴または2滴多いまたは少ないと、提供される用量の不確かさが著しく増大するであろう。他方で、本発明の塩の濃度が低すぎると、計量すべき液滴の数が多くなり、患者または世話人にとって不便である。
【0026】
本発明の塩の1日の投与量が5mgの場合、1mlあたり5mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。1mlあたり5mgの濃度および20滴/mlの液滴数によって、5mgの用量のために20滴を投与することが可能になるであろう。
【0027】
本発明の塩の1日の投与量が5mgの場合、1mlあたり10mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。1mlあたり10mgの濃度および20滴/mlの液滴数によって、5mgの用量のために10滴を投与することが可能になるであろう。
【0028】
本発明の化合物の1日の投与量が10mgの場合、1mlあたり20mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。1mlあたり20mgの濃度および20滴/mlの液滴数によって、10mgの用量のために10滴を投与することが可能になるであろう。
【0029】
本発明の化合物の1日の投与量が20mgの場合、1mlあたり40mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。1mlあたり40mgの濃度および20滴/mlの液滴数によって、20mgの用量のために10滴を投与することが可能になるであろう。
【0030】
本発明の化合物の1日の投与量が30mgの場合、1mlあたり60mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。1mlあたり60mgの濃度および20滴/mlの液滴数によって、30mgの用量のために10滴を投与することが可能になるであろう。
【0031】
本発明の化合物の1日の投与量が40mgの場合、1mlあたり80mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。1mlあたり80mgの濃度および20滴/mlの液滴数によって、40mgの用量のために10滴を投与することが可能になるであろう。
【0032】
本発明の化合物の1日の投与量が50mgの場合、1mlあたり100mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。1mlあたり100mgの濃度および20滴/mlの液滴数によって、50mgの用量のために10滴を投与することが可能になるであろう。
【0033】
1つの実施形態では、濃縮経口液滴製剤は、ペンまたはシリンジ様の投薬デバイスを備えた装置から投与される。このような投与措置の例は、例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5において提供される。これらの装置は密封チャンバ、例えばカートリッジ内に本発明の濃縮経口製剤を含有し、計量した量の濃縮経口溶液を提供するための手段を有する。デバイスの大きさを制限するために、濃縮経口溶液の容積は少なく(0.01〜1ml)、さらに塩の溶解度が高いことを必要とする。これらのペンまたはシリンジ様の投薬デバイスは、例えば胸ポケット内で持ち運ぶことができるという点で患者にとって便利であり、デバイスの適切な設計は薬物のディスペンサーであることを隠す役割を果たし得る。
【0034】
本発明の塩の1日の投与量が5〜10mgの場合、1mlあたり100mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。これは、5mgの用量のために0.05mlが送達され、10mgの用量のために0.1mlが送達されることを意味するであろう。
【0035】
本発明の化合物の1日の投与量が20〜50mgの場合、1mlあたり200mgの活性成分の濃度を有する濃縮経口製剤が適切であろう。これは、20mgの用量のために0.1mlが送達され、50mgの用量のために0.25mlが送達されることを意味するであろう。
【0036】
従って、本発明の濃縮経口製剤は、約5〜250mg/mlの本発明の塩を含む。特定の例には、約10〜100mg/ml、約20〜200mg/ml、約150〜200mg/ml、約20〜80mg/ml、約30〜70mg/ml、および約10、20、30、40、50、60、70、80、90または100mg/mlが含まれる。1つの実施形態では、本発明の経口液滴製剤は、少なくとも5mg/mlの本発明の塩を含む。1つの実施形態では、本発明の経口液滴製剤は、少なくとも10mg/mlの本発明の塩を含む。1つの実施形態では、本発明の経口液滴製剤は、少なくとも20mg/mlの本発明の塩を含む。1つの実施形態では、本発明の経口液滴製剤は、少なくとも30mg/mlの本発明の塩を含む。1つの実施形態では、本発明の経口液滴製剤は、少なくとも50mg/mlの本発明の塩を含む。1つの実施形態では、本発明の経口液滴製剤は、少なくとも80mg/mlの本発明の塩を含む。
【0037】
本出願の塩に加えて、本出願の経口溶液、特に濃縮経口製剤は、溶媒、緩衝液、界面活性剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、風味マスキング剤、香味料などを含んでもよい。
【0038】
溶媒の例には、水と、水または可溶化剤と混和性であると共に経口のために適切な他の溶媒とが含まれる。適切な溶媒の例は、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ソルビトール、ベンジルアルコールである。薬学的に許容可能な共溶媒、シクロデキストリンまたはその誘導体を溶液に添加することによって、活性成分の水溶解度をさらに高めることができる。
【0039】
製剤のpHを最適なpH範囲内に保持するために緩衝系が使用され得る。緩衝系は、酢酸、リン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸またはクエン酸などの適切な量の弱酸と、その共役塩基との混合物である。理想的には、緩衝系は、中性、わずかに酸性、またはわずかに塩基性の飲料で希釈したときに、意図されるpH範囲内に留まる十分な能力を有する。
【0040】
界面活性剤は、通常はミセルの形成により、水性媒体中に十分に溶解しない活性化合物を可溶化する物質である。好ましくは、使用される界面活性剤は、低毒性のために非イオン性でなければならない。沈殿を起こさずに投与中の希釈を可能にするために高濃度の界面活性剤が使用され得る。界面活性剤の例としては、ツイーン(tween)、スパン(span)、ならびにモノ−およびジグリセリドが挙げられる。表面張力調整剤は、経口液滴製剤のための液滴数を調整するために含まれてもよい。表面張力調節剤の例はエタノールであり、これは、表面張力を低下させ、液滴数を増大させる。
【0041】
粘度調整剤は、濃縮経口製剤の液滴速度を調整するために含まれてもよい。液滴凝集器が取り付けられた容器から別個の液滴で計量される製剤の液滴速度は、便宜上、2滴/秒を超えてはならない。粘度調整剤の例としては、エタノール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびグリセリンが挙げられる。
【0042】
防腐剤は、繰り返し使用される可能性のある液体製剤中の細菌、酵母および真菌などの微生物の増殖を防止するために添加され得る。適切な防腐剤は、薬学的に許容可能であり、物理化学的に安定であり、そして所望のpH範囲内で有効でなければならない。防腐剤の例としては、エタノール、安息香酸、ソルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびベンジルアルコールが挙げられる。
【0043】
原体は固体形態よりも溶解形態において化学分解に敏感なので、液体製剤中に酸化防止剤を含む必要がある場合もある。酸化防止剤の例としては、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、クエン酸およびEDTAが挙げられる。
【0044】
着色剤は、製品に外観の均一性を導入するためにいくつかの製剤中で使用され得る。活性成分の中には、さらに光に対して非常に敏感なものもあり、光から保護するため、そして安定化するために着色剤を液滴製剤に添加する必要性が分かる。適切な着色剤としては、例えば、タートラジン(tartrazine)およびサンセットイエロー(sunset yellow)が挙げられる。
【0045】
甘味剤は、いくつかの製剤に関連する不快な風味を隠す、あるいは所望の風味を達成することができる。甘味剤の例は、サッカリン、サッカリンのナトリウム塩、グルコース、ソルビトール、グリセロール、アセスルファムカリウムおよびネオヘスペリジンジヒドロカルコンである。風味は、1つまたは複数の香味物質の添加によってさらに最適化することができる。適切な香味物質は、サクランボ、ラズベリー、カシス、レモンまたはイチゴフレーバーなどの果実フレーバー、もしくはアルコール性、アニス、ペパーミント、カラメルなどの他のフレーバーである。
【0046】
液滴凝集器により投与することができる濃縮経口製剤の特定の例は次のとおりである(4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペリジン=化合物I)。
【0047】
0.5%の化合物Iの遊離塩基に相当する0.73%の化合物Iのグルタル酸塩
100%まで適量の水
【0048】
1%の化合物Iの遊離塩基に相当する1.58%の化合物Iのグルタミン酸塩
0.08%のパラヒドロキシ安息香酸メチル
0.02%のパラヒドロキシ安息香酸プロピル
100%まで適量の水
【0049】
2%の化合物Iの遊離塩基に相当する2.94%の化合物IのL−アスパラギン酸塩
0.08%のパラヒドロキシ安息香酸メチル
0.02%のパラヒドロキシ安息香酸プロピル
7%のエタノール
100%まで適量の水
【0050】
8%の化合物Iの遊離塩基に相当する10.54%の化合物IのDL−乳酸塩
0.08%のパラヒドロキシ安息香酸メチル
0.02%のパラヒドロキシ安息香酸プロピル
100%まで適量の水
【0051】
ペンまたはシリンジ様のデバイスにより投与することができる濃縮経口製剤の特定の例は次の通りである。
20%の化合物Iの遊離塩基に相当する26.36%の化合物IのDL−乳酸塩
0.08%のパラヒドロキシ安息香酸メチル
0.02%のパラヒドロキシ安息香酸プロピル
100%まで適量の水
【0052】
本発明の塩の薬学的プロファイルは実施例において開示されている。要約すると、本発明の塩は、セロトニン輸送体およびセロトニン受容体2C(5−HT2C)の阻害薬、ならびにセロトニン受容体3(5−HT)、セロトニン受容体2A(5−HT2A)およびαアドレナリン受容体の拮抗薬であり、そして前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンの細胞外レベルならびに前前頭皮質におけるドーパミンレベルの増大をもたらすと思われる。さらに、本発明の塩は、実施例において示されるように疼痛の処置において有効である。薬理学的プロファイルは、前臨床データと組み合わせて、本発明の塩の臨床的有用性に反映されることが期待される。従って、本発明の塩は、気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、非定型うつ病、双極性うつ病、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、乱用、摂食障害、睡眠障害、アルツハイマー病、認知症、慢性痛、認知機能障害(cognitive impairment)に関連するうつ病、精神病に関連するうつ病、統合失調症における認知機能障害、疼痛に関連するうつ病または不安症、高齢者の行動障害(behavioural disturbances)、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病、および残存症状のあるうつ病(depression with residual symptoms)を含む疾患の処置において有用であると確信される。
【0053】
5−HT2C受容体は、例えばドーパミン作動性ニューロンに位置して、活性化がドーパミン放出に対して持続性の阻害的影響を及ぼし、そして5−HT2C拮抗薬はドーパミンレベルの増大をもたらすであろう。実施例において提示されるデータは、化合物Iが実際に脳内の細胞外ドーパミンレベルの増大をもたらすことを示す。これを背景にして、5−HT2C拮抗薬は、特に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬による処置に抵抗性のあるうつ病の処置によく適していると仮定することができる。この仮定は、いくつかの臨床研究において支持を得ており、ミルタザピン(mirtazipine)およびSSRIの組み合わせは、不十分な臨床反応を有するうつ病患者(治療抵抗性うつ病、TRD、または難治性うつ病)の処置のためにSSRI単独よりも優れていることが示される[非特許文献1]。ミルタザピン(mirtazapine)は5−HTおよび5−HT拮抗薬でもあり、化合物Iなどの5−HTおよび5−HT拮抗作用と組み合わせてセロトニン再取り込み阻害を発揮する化合物は、TRDの処置のために有用であること、すなわち治療抵抗性うつ病を患っている患者の寛解率を増大させ得ることが示される。
【0054】
実施例において提示されるデータは、化合物Iが脳内の細胞外アセチルコリンレベルの増大をもたらすことを示す。アルツハイマー病の処置におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使用を参照して、脳内のアセチルコリンレベルの増大が一般にアルツハイマーおよび認知機能障害の処置方法であるという長年の臨床的な証拠がある。これを背景として、化合物Iは、アルツハイマーおよび認知機能障害の処置において、そしてアルツハイマーおよび認知機能障害に関連するうつ病などの気分障害の処置においても有用であると確信される。
【0055】
うつ病患者のセグメントは、MADRDおよびHAMDなどの臨床的に関連するうつ病スケールを改善し得るという意味で、例えばSSRIによる処置に応答し得るが、睡眠障害および認知機能障害などの他の症状が残存する。本発明に関連して、これらの患者は部分応答者と呼ばれており、残存症状のあるうつ病を患っているといわれる。アセチルコリンレベルに対する上記の効果のために、化合物Iは、うつ病に加えて認知機能障害の処置において有用であると期待される。臨床研究は、α−1アドレナリン受容体拮抗薬である化合物プラゾシン(prazosin)が、睡眠障害を低下させることを示している[非特許文献2、印刷中]。さらに、本発明の化合物の5−HT2Aおよび5−HT2C拮抗作用は鎮静作用のある睡眠改善効果を有し[非特許文献3]、このため、本発明の化合物は部分応答者(残存症状のあるうつ病)の処置のためにも有用であることが確信される、あるいは、化合物Iによるうつ病患者の処置は、部分応答者の割合を低減し得ると言い換えられる。
【0056】
1つの実施形態では、本発明は、気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、非定型うつ病、双極性うつ病、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、乱用、摂食障害、睡眠障害、アルツハイマー病、認知症、慢性痛、認知機能障害に関連するうつ病、精神病に関連するうつ病、統合失調症における認知機能障害、疼痛に関連するうつ病または不安症、高齢者の行動障害、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病、もしくは残存症状のあるうつ病から選択される疾患を処置する方法に関し、前記方法は、治療的に有効な量の本発明の液体製剤を、それを必要としている患者に投与することを含む。1つの実施形態では、前記液体製剤は濃縮経口製剤である。
【0057】
1つの実施形態では、処置すべき患者は、前記患者が処置を受けている疾患があると診断されている。
【0058】
ある実施形態において、本発明の化合物は、1日につき約0.001〜約100mg/kg体重の量で投与される。
【0059】
典型的な経口投与量は、1日につき約0.001〜約100mg/kg体重、好ましくは1日につき約0.01〜約50mg/kg体重の範囲であり、1回または複数回の投薬(1〜3回の投薬など)で投与される。正確な投与量は、投与の頻度および方法、処置される対象者の性別、年齢、体重および全身状態、処置される状態の性質および重症度、ならびに処置すべき合併症、そして当業者に明らかな他の因子によって決まる。
【0060】
成人の典型的な経口投与量は、本発明の化合物1〜100mg/日の範囲、例えば1〜30mg/日、または5〜25mg/日の範囲などである。これは、通常、1日に1回または2回、0.1〜50mg、例えば1〜25mg、例えば1、5、10、15、20、25、30、40、50または60mgなどの本発明の化合物の投与によって達成することができる。
【0061】
本明細書において使用される化合物の「治療的に有効な量」は、前記化合物の投与を含む治療的介入において、所与の疾患の臨床症状およびその合併症を治癒、緩和または部分的に抑止するために十分な量を意味する。これを達成するために適切な量は「治療的に有効な量」であると定義される。またこの用語は、前記化合物の投与を含む処置において、所与の疾患の臨床症状およびその合併症を治癒、緩和または部分的に抑止するために十分な量も含む。それぞれの目的のために有効な量は、疾患または傷害の重症度、ならびに対象者の体重および全身状態によって決まるであろう。適切な投与量の決定は、値のマトリックスを作成し、マトリックス内の異なる点を試験することによって日常の実験を用いて達成することができ、これらが全て訓練された医師の通常の技量の範囲内であることは理解されるであろう。
【0062】
本明細書において使用される「処置」および「処置する」という用語は、疾患または障害などの状態と戦うための患者の管理および世話を意味する。この用語は、症状または合併症を緩和するため、疾患、障害または状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和または軽減するため、および/または疾患、障害または状態を治癒または除去するため、そして状態を予防するための、活性化合物の投与などの患者が患っている所与の状態のための全ての範囲の処置を含むことが意図され、ここで予防は、疾患、状態、または障害と戦うための患者の管理および世話であると理解されるべきであり、症状または合併症の開始を予防するための活性化合物の投与を含む。それにもかかわらず、予防的(妨害的)および治療的(治癒的)な処置は、本発明の2つの別々の態様である。処置すべき患者は好ましくは哺乳類、特にヒトである。
【0063】
1つの実施形態では、本発明は、気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、非定型うつ病、双極性うつ病、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、乱用、摂食障害、睡眠障害、アルツハイマー病、認知症、慢性痛、認知機能障害に関連するうつ病、精神病に関連するうつ病、統合失調症における認知機能障害、疼痛に関連するうつ病または不安症、高齢者の行動障害、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病、もしくは残存症状のあるうつ病から選択される疾患の処置のための液体製剤を製造するための本発明の塩の使用に関する。1つの実施形態では、前記液体製剤は濃縮経口製剤である。
【0064】
1つの実施形態では、本発明は、気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、非定型うつ病、双極性うつ病、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、乱用、摂食障害、睡眠障害、アルツハイマー病、認知症、慢性痛、認知機能障害に関連するうつ病、精神病に関連するうつ病、統合失調症における認知機能障害、疼痛に関連するうつ病または不安症、高齢者の行動障害、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病、もしくは残存症状のあるうつ病から選択される疾患の処置において使用するための本発明の塩に関し、前記塩は液体製剤中に含まれる。1つの実施形態では、前記液体製剤は濃縮経口液滴製剤である。
【0065】
本発明の塩は単独で投与されても、あるいは別の治療的に活性な化合物と組み合わせて投与されてもいずれでもよく、2つの化合物は同時に投与されても、あるいは順次投与されてもいずれでもよい。化合物Iと有利に組み合わせることができる治療的に活性な化合物の例としては、ベンゾジアゼピンなどの鎮静薬または睡眠薬と、ラモトリジン、バルプロ酸、トピラマート、ガバペンチン、カルバマゼピンなどの抗痙攣薬と、リチウムなどの気分安定剤と、ドーパミン作用薬およびL−ドーパなどのドーパミン系薬物と、アトモキセチンなどのADHDを処置するための薬物と、モダフィニル、ケタミン、メチルフェニデートおよびアンフェタミンなどの精神刺激薬と、ミルタザピン、ミアンセリンおよびブプロピオン(buproprion)などの他の抗うつ薬と、T3、エストロゲン、DHEAおよびテストステロンなどのホルモンと、オランザピンおよびアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬と、ハロペリドールなどの定型抗精神病薬と、コリンエステラーゼ阻害薬およびメマンチン、葉酸塩などのアルツハイマー病を処置するための薬物と、S−アデノシル−メチオニンと、インターフェロンなどの免疫調節剤(immunmodulator)と、ブプレノルフィンなどのアヘン剤と、アンジオテンシンII受容体1拮抗薬(AT1拮抗薬)と、ACE阻害薬と、スタチンと、プラゾシンなどのアルファ1アドレナリン拮抗薬とが挙げられる。
【0066】
本明細書中で引用された刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、別々に提供された特定の文献の援用が本明細書の他の部分で行われたこととは無関係に、各参考文献が参照によって援用されるように個々にそして具体的に示されたかのように、そして本明細書中にその全体が説明されている(法律によって許される最大範囲内で)かのように同程度にその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0067】
本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」という用語ならびに同様の指示語の使用は、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈と明確に矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。例えば、「the compound(化合物)」という語句は、他に指示されない限り、本発明の様々な「compounds(化合物)」または特に記載される態様を指すと理解されるべきである。
【0068】
他に指示されない限り、本明細書中で提供される全ての正確な値は、対応するおおよその値の代表値である(例えば、特定の因子または測定に関して提供される全ての正確な典型的な値は、適切な場合には「約」によって修飾される、対応するおおよその測定値も提供すると考えることができる)。
【0069】
他に記載されない限り、または文脈と明確に矛盾しない限り、1つまたは複数の要素に関連して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含有する(containing)」などの用語を用いる本発明の態様のまたはいずれかの態様の本明細書中の説明は、その特定の1つまたは複数の要素「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、または「実質的に含む(substantially comprises)」本発明の態様または同様の態様への支持を提供することが意図される(例えば、他に記載されない限り、または文脈と明確に矛盾しない限り、特定の要素を含むと本明細書中に記載される組成物は、その要素からなる組成物も説明すると理解されるべきである)。
【実施例】
【0070】
実施例1 薬理学的プロファイル
実施例1A セロトニン(5−HT)およびノルエピネフリン(NE)再取り込みの阻害
一定分量の試験化合物およびラット皮質シナプトソーム調製物を10分/37℃でプレインキュベートし、次に[H]NEまたは[H]5−HT(最終濃度10nM)を添加した。10μMのタルスプラムまたはシタロプラムの存在下で非特異的な取込みを決定し、緩衝液の存在下で全取込みを決定した。一定分量を37℃で15分間インキュベートした。インキュベーションの後、Tomtec Cell Harvesterプログラムを用いて、0.1%のPEI中に30分間予浸したUnifilter GF/Cを介したろ過によって、シナプトソームにより取り込まれた[H]NEまたは[H]5−HTを分離した。フィルタを洗浄し、Wallac MicroBetaカウンターにおいてカウントした。
【0071】
NETにおいて化合物Iは、23nMのIC50値を示す。SERTにおいて化合物Iは8nMのIC50値を示す。
【0072】
実施例1B 5−HT2A拮抗作用
セロトニン受容体に対する親和性について化合物Iを試験し、5−HT2A受容体における親和性(K 54nM)を有する拮抗的なプロファイルを示すことが分かった。親和性は、Y=100/(1+10(X−logIC50)から計算され、式中、Yは結合%を示し、Xは化合物の濃度を示す。5つの濃度の化合物(1、10、30、100、1000nM)を用いて、IC50値を計算した。Kは、チェン・プルソフ(Cheng Prusoff)式K=(IC50/(1+([L]/Kd))から計算した。親和性は、MDL Pharmaservicesカタログ番号271650において決定した。
【0073】
ヒト5−HT2A受容体を発現する哺乳類細胞では、化合物Iは、競合的な拮抗特性を示す。化合物は、100nM未満のKiで5−HT2A受容体に結合し、機能性アッセイにおいて、化合物は、67nMのKbで細胞内ストアからのCa2+の5−HT誘発放出を拮抗する。シルド分析により、100nMのKbを有する競合的な拮抗作用が明らかになった。
【0074】
以下のように実験を行った。実験の2日または3日前に、250fmol/mgのヒト5−HT2A受容体を発現するCHO細胞を、実験の当日にモノコンフルエント層をもたらすのに十分な密度でプレーティングする。95%湿度の5%COインキュベータ中、細胞を37℃で60分間染料負荷する(Molecular DevicesからのCa2+−キット)。Molecular Devices(Sunnyvale、CA)からの蛍光イメージングプレートリーダーまたはFLIPR384において、488nmの励起波長および500〜560nmの発光範囲により基底蛍光をモニターした。レーザー強度は、約8000〜10000の蛍光単位の基底値を得るために適切なレベルに設定した。基底蛍光の変動は10%未満でなければならない。EC50値は、少なくとも3桁に及ぶ試験化合物の濃度の増大を用いて評価される。pA2値は、4つの異なる濃度の化合物(150、400、1500および4000nM)による5−HTの用量反応曲線全体を検証して評価される。またKb値は、5−HTのEC85を有する20個の濃度の試験物質を検証して評価した。5−HTの5分前に試験物質を細胞に添加する。チェン・プルソフ式を用いてK値を計算した。
【0075】
実施例1C 5−HT3A受容体の拮抗作用
ヒト−ホモマー5−HT3A受容体を発現する卵母細胞において、2600nMのEC50で5−HTは電流を活性化する。この電流は、オンダンセトロンなどの古典的な5−HT拮抗薬により拮抗され得る。オンダンセトロンは、この系では1nMよりも低いK値を示す。化合物Iは、低濃度(0.1nM〜100nM)で強力な拮抗作用を示し(IC50〜10nM/Kb〜2nM)、より高い濃度(100〜100000nM)で適用されたときのアゴニスト特性(EC50〜2600nM)は、5−HT自体が誘発する最大電流の約70〜80%の最大電流に達する。ラット−ホモマー5−HT3A受容体を発現する卵母細胞において、5−HTは3.3μMのEC50で電流を活性化する。実験は以下のように行った。0.4%MS−222中で10〜15分間麻酔した成熟雌アフリカツメガエル(Xenepus laevis)から卵母細胞を外科的に取り出した。次に、OR2緩衝液(82.5mNのNaCl、2.0mMのKCl、1.0mMのMgCl2および5.0mMのHEPES、pH7.6)中で、卵母細胞を0.5mg/mlコラゲナーゼ(タイプIA Sigma−Aldrich)により室温で2〜3時間消化した。卵胞層のない卵母細胞を選択し、2mMのピルビン酸ナトリウム、0.1U/lのペニシリンおよび0.1μg/lのストレプトマイシンを補充した変性バース緩衝生理食塩水[88mMのNaCl、1mMのKCl、15mMのHEPES、2.4mMのNaHCO、0.41mMのCaCl、0.82mMのMgSO、0.3mMのCa(NO]中で24時間インキュベートした。IV−IV段階の卵母細胞を確認し、ヒト5−HT3A受容体をコードする14〜50pgのcRNAを含有する12〜48nlの無ヌクレアーゼ水を注入し、電気生理学的記録(注入の1〜7日後)のために使用するまで、18℃でインキュベートした。ヒト5−HT3受容体を発現した卵母細胞を1mlの槽内に入れ、リンゲル緩衝液(115mMのNaCl、2.5mMのKCl、10mMのHEPES、1.8mMのCaCl、0.1mMのMgCl、pH7.5)を灌流させた。3MのKClを含有する0.5〜1MΩの寒天充填(agar plugged)電極で細胞を突き刺し、GeneClamp 500B増幅器によって電圧を−90mVに固定した。卵母細胞をリンゲル緩衝液で連続的に灌流させ、薬物を灌流液中で適用した。5−HT作用薬−溶液を10〜30秒間適用した。10μMの5−HT刺激に対する濃度応答を測定することによって、5−HT受容体拮抗薬の効力を調べた。
【0076】
実施例1D α1A受容体の拮抗作用
α1A受容体に対する親和性について化合物Iを試験し、α1A受容体に対する中程度の親和性(Ki=34nM)を有する拮抗的なプロファイルを示すことが分かった。
【0077】
実験の当日に、ultra turraxを用いて膜(膜調製の説明について以下を参照)を解凍し、緩衝液中で均質化し、所望の濃度に希釈する(5μg/ウェル〜5μg/900μl、使用まで氷上に貯蔵)。
【0078】
50μl試験化合物、50μlの[H]−プラゾシンおよび900μlの膜を混合することによって実験を開始し、混合物を25℃で20分間インキュベートする。10μMのWB−4101の存在下で非特異的な結合を決定し、緩衝液の存在下で全結合量を決定する。インキュベーションの後、Tomtec Cell Harvesterプログラム(D4.2..4)を用いて、0.1%PEI中に30分間予浸したUnifilter GF/Bを介したろ過によって、結合リガンドを非結合リガンドから分離する。96ウェルフィルタを1ml氷冷緩衝液で3回洗浄し、50℃で乾燥させ、35μlのシンチレーション液/ウェルをフィルタに添加する。Wallac OY 1450 MicroBetaにおいて結合放射活性をカウントする。親和性は、Y=100/(1+10(X−logIC50)から計算され、式中、Yは結合%を示し、Xは化合物の濃度を示す。2桁に及ぶ化合物濃度を用いて、IC50値を計算した。Kiは、チェン・プルソフ式Ki=(IC50/(1+([L]/Kd))から計算した。
【0079】
機能性アッセイにおいて、本発明の化合物は、細胞内ストアからのCa2+のアドレナリン誘発放出を拮抗し、機能性アッセイによって化合物が拮抗薬であることが明らかになった。
【0080】
これらの実験は、本質的に以下に記載されるように行った。
【0081】
5%CO2中37℃で、10%のBCS、4mMのL−グルタミン(またはCOS−7の場合には2mM)、ならびに100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補充したDMEM培地中で全ての細胞を培養した。
【0082】
アッセイの24時間前、ヒトアルファ1A−7受容体を発現するCHO細胞を、poly−D−リジンを塗布した384−ウェルの黒壁マイクロタイタープレートに播種した。培地を吸引し、ハンク平衡塩類溶液(138mMのNaCl、5mMのKCl、1.3mMのCaCl、0.5mMのMgCl、0.4mMのMgSO、0.3mMのKHPO、0.3mMのNaHPO、5.6mMのグルコース)、ならびに20mMのHEPES、pH7.4、0.05%のBSAおよび2.5mMのプロベネシド(probenicid)(50μl/ウェル)で構成されるアッセイ緩衝液中、37℃、5%CO中で1時間、1.5μMのFluo−4により細胞を染料負荷した。過剰の染料を廃棄した後、アッセイ緩衝液中で細胞を洗浄し、45μl/ウェル(または拮抗薬アッセイについては30ul/ウェル)に等しい最終容積で層状にした。拮抗薬の評価の場合、拮抗薬またはベヒクルをこの時点で、4×最終濃度(最終DMSO=1%)で4%DMSO含有緩衝液中15μlの一定分量として添加した後、20分間インキュベーションを行った。Molecular Devices(Sunnyvale、CA)からの蛍光イメージングプレートリーダーまたはFLIPRTMにおいて、488nmの励起波長および500〜560nmの発光範囲により基底蛍光をモニターした。レーザー励起エネルギーは、基底蛍光の読みが約8,000相対蛍光強度(RFU)であるように調整した。次に、アッセイ緩衝液(15μl)中に希釈した作用薬により室温で細胞を刺激し、RFUを1.5秒間隔で2.5分間にわたって測定した。各ウェルについて蛍光の最大変化を計算した。蛍光の最大変化から得られる濃度−応答曲線を、非線形回帰(ヒルの式)により解析した。拮抗性の決定については、化合物のインキュベーション(上記)の20分後に、固定濃度の標準作用薬セロトニンを添加した。
【0083】
実施例2A 4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジン、HBr塩
2−(4−トリルスルファニル)−フェニルブロミド
撹拌窒素で被覆した反応器内で、N−メチル−ピロリドン、NMP(4.5L)に20分間窒素を流した。4−メチルベンゼンチオール(900g、7.25mol)を添加し、次に1,2−ジブロモベンゼン(1709g、7.25mol)を添加した。最後の反応物としてカリウムtert−ブトキシド(813g、7.25mol)を最後に添加した。反応は発熱であり、反応混合物の温度は70℃に上昇した。次に、反応混合物を120℃で2〜3時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した。酢酸エチル(4L)を添加し、塩化ナトリウム水溶液(15%、2.5L)を添加した。混合物を20分間撹拌した。水相を分離し、別の酢酸エチル(2L)で抽出した。水相を分離し、有機相を合わせ、塩化ナトリウム溶液(15%、2.5L)で洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧で蒸発させて、20〜30%のNMPを含有する赤色油を得た。油をメタノールで2倍の容積に希釈し、混合物を還流させた。透明な赤色溶液が得られるまでより多くのメタノールを添加した。シード添加しながら溶液を室温までゆっくり冷却した。生成物はオフホワイトの結晶として結晶化し、ろ過によってこれらを単離し、メタノールで洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で恒量になるまで乾燥させた。
【0084】
エチル4−ヒドロキシ−4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン−1−カルボキシラート
窒素被覆下で撹拌した反応器内で、2−(4−トリルスルファニル)−フェニルブロミド(600g、2.15mol)をヘプタン(4.5L)中に懸濁させた。室温でヘキサン中10MのBuLi(235mL、2.36mol)を10分間にわたって添加した。ほんの少しの発熱が認められた。懸濁液を周囲温度で1時間撹拌し、次に、−40℃に冷却した。反応温度を−40℃よりも低く保持するよりも速くならないような速度で、THF(1.5L)中に溶解した1−カルボエトキシ−4−ピペリドン(368g、2.15mol)を添加した。反応が完了したら、0℃まで温め、温度を10℃よりも低く保持しながら1MのHCl(1L)を添加した。酸性の水相を分離し、酢酸エチル(1L)で抽出した。有機相を合わせ、塩化ナトリウム溶液(15%、1L)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて半結晶性の塊を得た。エチルエーテル(250mL)でスラリー状にして、ろ過した。真空オーブンにおいて40℃で恒量になるまで乾燥させた。
【0085】
エチル4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン−1−カルボキシラート
トリフルオロ酢酸(2.8kg、24.9mol)およびトリエチルシラン(362g、3.1mol)を、十分な撹拌器を有する反応器に入れた。エチル4−ヒドロキシ−4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン−1−カルボキシラート(462g、1.24mol)を、数回に分けて粉末漏斗を介して添加した。反応はわずかに発熱した。温度は50℃に上昇した。添加が終了したら、反応混合物を60℃で18時間温めた。反応混合物を室温まで冷却した。トルエン(750mL)および水(750mL)を添加した。有機相を単離し、水相を別のトルエン(750mL)で抽出した。有機相を合わせ、塩化ナトリウム溶液(15%、500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過し、ろ液を減圧で蒸発させて、次の工程でさらに処理される赤色油を得た。
【0086】
4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン臭化水素酸塩
実施例3からの赤色油としての粗エチル4−(2−(4−トリルスルファニル)フェニル)−ピペリジン−1−カルボキシラートを、撹拌反応容器内で、酢酸中の臭化水素酸(40%、545mL、3.11mol)と混合した。混合物を80℃で18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した。冷却中、生成物は晶出した。室温で1時間後、エチルエーテル(800mL)を反応混合物に添加し、混合物をさらに1時間撹拌した。生成物をろ過し、エチルエーテルで洗浄し、真空オーブンにおいて50℃で恒量になるまで乾燥させた。
【0087】
実施例2B 4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジン、HBr塩
撹拌およびわずかに加熱した(約45℃)442グラムの油としての4−(2−p−トリルスルファニル−フェニル)−ピペリジン−1−カルボン酸エチルエステルに、545mlの33重量%のAcOH中のHBr(5.7M、2.5当量)を添加した。この混合により、10℃の発熱が得られた。最後の添加の後、反応混合物を80℃に加熱し、18時間放置した。サンプルを回収してHPLCによって分析し、完了していなければ、さらに33重量%のAcOH中のHBrを添加しなければならない。そうでなければ、混合物を25℃まで冷却し、生成物4−(2−p−トリルスルファニル−フェニル)−ピペリジン臭化水素酸塩を沈殿させた。25℃で1時間後、濃い懸濁液に800mlのジエチルエーテルを添加する。撹拌をさらに1時間継続してから、ろ過により生成物を単離し、400mlのジエチルエーテルで洗浄し、40℃で一晩、真空中で乾燥させた。化合物Iの臭化水素酸塩を白色固体として単離した。
【0088】
実施例2C 4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジン、HBr塩の再結晶
例えば上記のように調製した10.0グラムのHBr塩の混合物を100mlのHO中で加熱還流した。混合物は透明になり、80〜90℃で完全に溶解した。透明な溶液に1グラムの木炭を添加し、還流を15分間継続してから、ろ過し、室温まで自然に冷却させた。冷却中、白色固体の沈殿が生じ、懸濁液を室温で1時間撹拌した。ろ過および40℃で一晩の真空乾燥により、6.9グラム(69%)の4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]−ピペリジンのHBr酸付加塩が生じた。
【0089】
実施例3 4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジン、さらなる塩
遊離塩基の貯蔵液の調製
500mlの酢酸エチルおよび200mlのHOの混合物に50グラムのHBr塩を添加し、2相のスラリーが生じた。このスラリーに、約25mlの濃NaOHを添加し、透明な2相溶液(pHは13〜14と測定された)の形成が生じた。溶液を15分間激しく撹拌し、有機相を分離した。有機相を200mlのHOで洗浄し、NaSOで乾燥させ、ろ過し、60℃の真空中で蒸発させ、38グラムの収量(99%)で遊離塩基がほとんど無色の油として生じた。
【0090】
酢酸エチルを用いて10グラムの油を溶解して150mlの容積に調整することによって、酢酸エチル中0.235Mの貯蔵液が得られ、そこから1.5ml(100mgの遊離塩基)の一定分量を用いた。
【0091】
96容積%のEtOHを用いて10グラムの油の油を溶解して100mlの容積に調整することによって、EtOH中の0.353Mの貯蔵液が得られ、そこから1.0ml(100mgの遊離塩基)一定分量を用いた。
【0092】
遊離塩基の貯蔵液を用いた塩の形成
所与の一定分量を試験管に入れ、撹拌しながら、適切な量の酸を表1に示されるように添加した。酸が液体であればそのまま添加し、そうでなければ所与の溶媒に溶解してから添加した。混合および沈殿の後、撹拌を一晩継続し、ろ過によって沈殿物を捕集した。表2は、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペリジンの塩の溶解度を示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
実施例4 アセチルコリンレベルに対する効果
自由行動ラットの前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンの細胞外レベルに対する化合物Iの効果を評価するために実験を設計した。
【0096】
275〜300gの初期重量の雄スプラーグドーリーラットを使用した。不変の屋内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)のための制御された条件下で、自由に利用可能な食料および水道水と共に、動物を12時間の明/暗サイクルで収容した。
【0097】
手術およびマイクロダイアリシス実験
ラットをヒプノルム/ドルミカム(2ml/kg)で麻酔し、透析プローブ先端を腹側海馬(座標:ブレグマの後側5.6mm、側方−5.0mm、硬膜の腹側7.0mm、または前頭皮質(座標:ブレグマの前側3.2mm、側方0.8mm、硬膜の腹側4.0mm)内に位置付ける目的で、脳内ガイドカニューレ(CMA/12)を海馬内に定位的に植え込んだ。ガイドカニューレの固定のためにアンカースクリューおよびアクリルセメントを用いた。動物の体温を直腸プローブによりモニターし、37℃に保持した。ラットを2日間手術から回復させ、ケージ内に単独で収容した。実験の当日、マイクロダイアリシスプローブ(CMA/12、0.5mm直径、3mm長さ)をガイドカニューレ内に挿入した。
【0098】
デュアルチャネルスイベルを介してプローブをマイクロインジェクションポンプに接続した。プローブを脳内に挿入する直前に、ろ過したリンゲル溶液(0.5μMのネオスチグミンを含有する、145mmのNaCl、3mMのKCl、1mMのMgCl、1.2mMのCaCl)によるマイクロダイアリシスプローブの灌流を開始し、実験の期間中、1μl/分の一定の流速で継続した。安定化の180分後、実験を開始した。透析液を20分毎に採取した。実験の後、動物を屠殺し、その脳を取り出し、凍結し、プローブの配置を検証するためにスライスした。
【0099】
透析液のアセチルコリンの分析
100mMのリン酸水素二ナトリウム、2.0mMのオクタンスルホン酸、0.5mMの塩化テトラメチルアンモニウムおよび0.005%のMB(ESA)、pH8.0からなる移動相を用いて、電気化学的検出によるHPLCによって透析液中のアセチルコリン(ACh)の濃度を分析した。分析カラム(ESA ACH−250)、流速0.35ml/分、温度:35℃においてAChを分離する前に、固定化コリンオキシダーゼを含有するプレカラム酵素反応器(ESA)により注入サンプル(10μl)からコリンを除去した。分析カラムの後、サンプルは、固定化アセチルコリンエステラーゼおよびコリンオキシダーゼを含有するポストカラム固相反応器(ESA)を通過した。後者の反応器は、AChをコリンに転化し、続いてコリンをベタインおよびHに転化した。後者は、白金電極(分析セル:ESA、モデル5040)を用いて電気化学的に検出した。
【0100】
データの提示
単回注入実験では、化合物投与の直前の3つの連続したAchサンプルの平均値を各実験のための基底レベルとし、データを基底値の百分率に変換した(注入前の平均基底値を100%に規格化)。データは図1aおよび1bに提示される。
【0101】
図1aおよび1bに提示されるデータは、脳内の細胞外アセチルコリンレベルの用量依存性の増大を示す。この前臨床知見は、例えば認知機能障害および認知機能障害によって特徴付けられる疾患の処置において有用な臨床背景における認知の改善に転換されると期待される。
【0102】
実施例5 ドーパミンレベルに対する効果
化合物Iの単回注入は、ラットの前頭皮質における細胞外ドーパミン(DA)レベルを用量依存的に増大させた。8.9mg/kgおよび18mg/kgの皮下注射における本発明の化合物は、図2に示されるように、DAレベルを基線レベルよりもそれぞれ約100%および150%高めた。量は遊離塩基として計算される。
【0103】
方法
275〜300gの初期重量の雄スプラーグドーリーラットを使用した。不変の屋内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)のための制御された条件下で、自由に利用可能な食料および水道水と共に、動物を12時間の明/暗サイクルで収容した。3日間の処置実験のために、浸透圧ミニポンプ(Alzet、2ML1)を使用した。ポンプを無菌状態で満たし、セボフルラン麻酔下で皮下に植え込んだ。実験は、搭載したミニポンプを用いて実行した。処置の3日後の試験化合物の血漿レベルを測定するための血液サンプルを、実験の最後に採取した。
【0104】
手術およびマイクロダイアリシス実験
動物をヒプノルム/ドルミカム(2ml/kg)で麻酔し、脳内ガイドカニューレ(CMA/12)を海馬内に定位的に植え込み、透析プローブ先端を腹側海馬(座標:ブレグマの前側5.6mm、側方−5.0mm、硬膜の腹側7.0mm、または前頭皮質(座標:ブレグマの前側3.2mm、側方3.0mm、硬膜の腹側4.0mm)内に位置付けた。ガイドカニューレの固定のためにアンカースクリューおよびアクリルセメントを用いた。動物の体温を直腸プローブによりモニターし、37℃に保持した。ラットを2日間手術から回復させ、ケージ内に単独で収容した。実験の当日、マイクロダイアリシスプローブ(CMA/12、0.5mm直径、3mm長さ)をガイドカニューレ内に挿入した。デュアルチャネルスイベルを介してプローブをマイクロインジェクションポンプに接続した。プローブを脳内に挿入する直前に、ろ過したリンゲル溶液(145mmのNaCl、3mMのKCl、1mMのMgCl、1.2mMのCaCl)によるマイクロダイアリシスプローブの灌流を開始し、実験の期間中、1(1.3)μL/分の一定の流速で継続した。安定化の180分後、実験を開始した。透析液を20(30)分毎に採取した。
実験の後、斬首によってラットを屠殺し、その脳を取り出し、凍結し、プローブの配置を検証するためにスライスした。
【0105】
透析液の分析
電気化学的検出によるHPLCによって透析液中のドーパミンの濃度を分析した。逆相液体クロマトグラフィ(ODS150×3mm、3μM)によってモノアミンを分離した。ドーパミン:90mMのNaHPO、50mMのクエン酸ナトリウム、367mg/lの1−オクタンスルホン酸ナトリウム、50μMのEDTAおよび8%のアセトニトリル(pH4.0)からなる移動相、0.5ml/分の流速。電気化学的検出は、電量的な検出器、設定電位250mV(ガードセル350mV)(Coulochem II、ESA)を用いて達成した。
【0106】
実施例6 神経因性疼痛に対する効果
神経因性疼痛に対する効力を実証するために、神経因性疼痛のホルマリンモデルにおいて化合物Iを試験した[非特許文献4、非特許文献5]。このモデルでは、マウスは、左後足の足底面にホルマリン(4.5%、20μl)の注射を受け、その後観察のために個々のガラスビーカー(2l容量)に入れられる。ホルマリン注射により生じる刺激は、損傷した足をなめるのに費やされる時間によって定量されるような特徴的な二相性行動反応を誘発する。第1の相(およそ0〜10分)は直接的な化学刺激および痛覚を表し、第2の相(およそ20〜30分)は神経障害に起因する疼痛を表すと考えられる。2つの相は行動が正常に戻る休止時間によって分離される。2つの相において損傷した足をなめるのに費やされる時間を測定すると、有痛性刺激を低減するための試験化合物の有効性が評価される。
【0107】
1グループあたり8匹のC57/B6マウス(約25g)を試験した。以下の表3は、2つの相、すなわちホルマリン注射の0〜5分後および20〜30分後において、損傷した足をなめるのに費やされる時間を示す。投与される化合物の量は、遊離塩基として計算される。
【0108】
【表3】

【0109】
表3のデータは、直接的な化学刺激および痛覚を表す第1の相において化合物Iの効果がほとんどないことを示す。より顕著に、データは、第2相において足をなめるのに費やされる時間の明らかなそして用量依存性の減少も示し、神経因性疼痛の処置における化合物Iの効果が示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DL−乳酸付加塩、グルタル酸付加塩、L−アスパラギン酸付加塩およびグルタミン酸付加塩から選択される4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンの塩を含む液体医薬製剤。
【請求項2】
前記塩がDL−乳酸付加塩である請求項1に記載の液体製剤。
【請求項3】
前記塩がグルタル酸付加塩である請求項1に記載の液体製剤。
【請求項4】
前記塩がL−アスパラギン酸付加塩である請求項1に記載の液体製剤。
【請求項5】
前記塩がグルタミン酸付加塩である請求項1に記載の液体製剤。
【請求項6】
前記塩の濃度が5mg/mlよりも高い請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項7】
気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、非定型うつ病、双極性うつ病、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、乱用、摂食障害、睡眠障害、アルツハイマー病、認知症、慢性痛、認知機能障害(cognitive impairment)に関連するうつ病、精神病に関連するうつ病、統合失調症における認知機能障害、疼痛に関連するうつ病もしくは不安症、高齢者の行動障害(behavioural disturbances)、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病、または残存症状のあるうつ病(depression with residual symptoms)から選択される疾患を処置するための方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体製剤を、それを必要としている患者に投与することを含む方法。
【請求項8】
前記液体製剤の所定の容積が計量され、得られた容積が液体に添加され、前記液体が患者に投与される請求項8に記載の方法。
【請求項9】
気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、非定型うつ病、双極性うつ病、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、乱用、摂食障害、睡眠障害、アルツハイマー病、認知症、慢性痛、認知機能障害に関連するうつ病、精神病に関連するうつ病、統合失調症における認知機能障害、疼痛に関連するうつ病もしくは不安症、高齢者の行動障害、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病、または残存症状のあるうつ病から選択される疾患の処置のための液体薬剤の製造における、DL−乳酸付加塩、グルタル酸付加塩、L−アスパラギン酸付加塩およびグルタミン酸付加塩から選択される4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンの塩の使用。
【請求項10】
前記塩がDL−乳酸付加塩である請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記塩がグルタル酸付加塩である請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記塩がL−アスパラギン酸付加塩である請求項9に記載の使用。
【請求項13】
前記塩がグルタミン酸付加塩である請求項9に記載の使用。
【請求項14】
前記薬剤が、5mg/mlよりも多い前記塩を含む請求項9〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、非定型うつ病、双極性うつ病、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、乱用、摂食障害、睡眠障害、アルツハイマー病、認知症、慢性痛、認知機能障害に関連するうつ病、精神病に関連するうつ病、統合失調症における認知機能障害、疼痛に関連するうつ病もしくは不安症、高齢者の行動障害、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病、または残存症状のあるうつ病から選択される疾患の処置において使用するための、DL−乳酸付加塩、グルタル酸付加塩、L−アスパラギン酸付加塩およびグルタミン酸付加塩から選択される4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンの塩であって、液体医薬製剤中に含まれる塩。
【請求項16】
前記塩が、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンのDL−乳酸付加塩である請求項15に記載の塩。
【請求項17】
前記塩が、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンのグルタル酸付加塩である請求項15に記載の塩。
【請求項18】
前記塩が、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンのL−アスパラギン酸付加塩である請求項15に記載の塩。
【請求項19】
前記塩が、4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンのグルタミン酸付加塩である請求項15に記載の塩。
【請求項20】
前記液体製剤が、5mg/mlよりも多い前記塩を含む請求項15〜19のいずれか一項に記載の塩。
【請求項21】
液滴凝集器(drop aggregate)が取り付けられた容器であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体製剤を含む容器。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−521500(P2010−521500A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553909(P2009−553909)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050062
【国際公開番号】WO2008/113358
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】