説明

4価バナジウム触媒を含む一成分ポリウレタン被覆系

本発明は、新規の一成分形ポリウレタン系、その製造方法及びにワニス、塗料及び接着剤を作製するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な一成分ポリウレタン系、その製造方法、及び塗料、インキ及び接着剤を調製するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンをベースとする一成分形(1K)焼付系は、塗料、インキ及び接着剤を調製するための熱硬化性材料であり、室温で安定に貯蔵できる。これらは一般には、ヒドロキシル基を含有するポリエステル、ポリアクリレート、他のヒドロキシ官能性ポリマー、及び/又は異なるポリマーの混合物との反応により、熱硬化の過程で消費されるブロックトポリイソシアネートから成る。別の可能性は、室温での貯蔵時に安定な焼付けエナメルの原料を得るため、ブロックトイソシアネート基とヒドロキシル基とを両方含むポリマーのイソシアネート基を部分的にブロック化することである。
【0003】
ポリイソシアネート及び1K焼付系をブロック化するために使用される主な化合物は、ε-カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム(ブタノンオキシム)、第2級アミン、ならびにトリアゾール及びピラゾール誘導体等、例えばEP-A0576952、EP-A0566953、EP-A0159117、US-A4482721、WO97/12924又はEP-A0744423に記載されているようなものがある。また、マロネートによるブロック化も可能である。しかし、この種のブロック化では、ブロック剤は解離せず、代わりにジエチルマロナート基上でエステル交換反応が起こる。
【0004】
1K PU(ポリウレタン)焼付系から皮膜を作製する際には、使用されるブロック剤に応じて、100〜160℃の温度が使用される。しかし、特定の系に適したブロック剤の選択は、焼付け温度に従ってのみ行われるわけではない。例えばその系の黄変傾向、臭い及び貯蔵安定性等の他の要素も、重要な役割を担っている。特に最近では塗装システムでの焼付け温度を最低限に抑えることに関心が持たれているので、各ケースにおいて、コーティング材料の組成及び皮膜の特性に関して妥協を見出すことが必要である。このことから、比較的低い焼付け温度であっても最適な性能特性を有する新しい焼付系が必要であることは明白である。
【0005】
触媒の使用によって1K系の焼付け温度を低くするために、過去に多くの実験が成されてきた。このように、例えばEP-A0761705では、部分的又は全体的にブロックされたポリイソシアネートの触媒反応のための有機ビスマス化合物が特許請求されている。US-A5859165は、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、アンチモン又はビスマスの反応生成物、及び/又はそれらの酸化物を、ブロックトポリ(チオ)イソシアネート用の触媒として記載している。EP-A0726284は、ブロックトポリイソシアネートとポリオールとの反応の触媒として金属塩及び/又は金属錯体について一般的に記載しているが、その実施例には、ジブチル錫ジラウラート及びジブチル錫アセタートしか具体的に開示されていない。
【0006】
有機溶剤の使用を減らすため、ひいてはこれらの溶剤の環境への排出を減らすため、そして溶剤排出の削減による塗装ラインでの作業条件を改善するために、近年では、主な溶剤成分として水を含む1Kコーティング系が開発されている。この技術のあらましは、D.A.Wicks及びZ.W.WicksによりProgress in Organic Coatings 2001, 41(1-3), 1-83に述べられている。該技術は広まってきている。水性の溶剤及び/又は分散媒の存在は、触媒の使用という点で、いわゆる溶剤系を用いる場合とは異なる必要条件を課す。例えば、後者の系では、触媒を使用する時、使用される触媒が水や加水分解に対して安定であるようにする必要はない。それゆえ、溶剤を伴う1K系で使用される一般的な触媒は、水性系では一般に使用することができない。このような高い活性、即ち焼付け温度が著しい低下した触媒として代表的に知られるものには、例えばビスマス2-エチルヘキサノエート及びジブチル錫ジラウレート(DBTL)等の有機錫(IV)化合物が挙げられる。これら以外にも、Wicksらによってさらに多くの化合物が上記引用文献に開示及び記載されている。また、ビスマスカルボキシレートは水中で加水分解されることも知られている。
【0007】
現在までのところ、水性一成分系の硬化を促進する触媒はほんの僅かしか開示されていない。WO95/04093は、有機錫をベースとした系について概説している。これらは、約170℃以上の高温で通常硬化が起こる電着塗装用の系で特に使用される触媒である。各ケースで使用されるブロック剤及びポリイソシアネートは、その実施例では明記されていない。しかし、生態学上の配慮のためには、有機錫触媒の使用は望ましくない。他の触媒系と比較したこれら及び他の触媒の活性もまた、以下に挙げる出願に記載されている。
【0008】
WO00/47642第4頁の説明では、1K水性用途に用いられる触媒について非常に特定的な例を列挙している。例えば有機錫化合物及び鉛化合物が記載されているが、塗装においてこれらを使用することは、生態学の観点からは望ましくない。
【0009】
また、WO00/47642は、炭素鎖長がC11〜C36であるカルボン酸と酸化ビスマスとの反応に基づく水性一成分系用の触媒について、言及している。この系では前記触媒の加水分解も起こるが、この触媒は165℃を超え180℃以下という比較的高い焼付け温度でその構成成分から再生され、高い触媒活性を有すると言われている。しかし、この触媒系の使用は、非常に特定された樹脂及び/又はアルコール成分に限られている。
【0010】
上記記載の触媒系の活性は、特定の樹脂(この場合は陽イオン性親水化樹脂、即ち例えばビスフェニルAを含むエポキシ樹脂とアミンとを反応させて得られる樹脂等)についてのみ記載されている。使用するアミン(第1級、第2級、第3級)によって、そして過剰なエポキシ樹脂の存在下において、ならびに水及び中和用酸の存在下において、第4級アンモニウム基を形成させることも可能である。よって、この樹脂は原則としてアミンを含有するものであり、これは、黄化傾向が低く且つ長期安定性が良好であることを意図した自動車用仕上げ塗料の開発には適していない。
【0011】
陽イオン性親水化に代わるものとして、界面活性物質又は乳化剤を加えることにより水性1K PU系を調製することも可能である。上記文献に記載されている触媒系は、この種のこのようなコーティング系については説明されていない。
【0012】
また、水性1K系を調製するために、例えば陰イオン性親水化剤を用いた親水化(例えばカルボン酸による)や、ポリエーテル等による非イオン性親水化剤(例えば乳化剤の場合などのように、樹脂中に取り込まれたものであって別個の成分としてではないもの)を用いた親水化も可能である。しかし、上記文献に記載されている触媒系は、このようなコーティング系についても同様に説明されていない。
【0013】
1K系を親水化するにはこのように種々の可能性(陽イオン的なもの、乳化剤によるもの、又は陰イオン性又は非イオン性親水化によるもの)があるために、陽イオン的に親水化された系以外の系においては、WO00/47642に記載された触媒系の使用及び活性は明らかではない。例えば、陽イオン性親水化は、安定化のためのリガンドとしてアンモニウム塩によって作用し得る。この安定化効果は、陽イオン的に親水化されたものではない1K系にはないものである。
【0014】
さらに、上記刊行物は、アルコール-ブロックトイソシアネートのみを説明している。そこに限定的に記載されているイソシアネートである(高分子)MDI(メチレン-フェニルジイソシアネート)をブロック化するための典型的なブロック剤は、ブトキシエトキシエタノール(ブチルカルビトール)である。さらに、2-エトキシエタノール及び2-メトキシエタノールも引用されている。このブロック剤の消失 (実際にはウレタン切断)には、高い温度が必要である。つまり焼付けは165〜180℃の温度で20分間かけて行われる。
【0015】
乗用車のコーティング組成物としての目的用途では、140℃以下の温度、好ましくはこれより更に低い温度で一成分系を硬化させる触媒を見つけることが望ましい。
【0016】
このように、広範囲のブロック剤、ブロックト(ポリ)イソシアネート、及び親水化方法に基づいた水性系で使用して、焼付け温度を所望のレベルまで下げられるような触媒は、今のところ知られていない。
【特許文献1】EP-A0576952
【特許文献2】EP-A0566953
【特許文献3】EP-A0159117
【特許文献4】US-A4482721
【特許文献5】WO97/12924
【特許文献6】EP-A0744423
【特許文献7】EP-A0761705
【特許文献8】US-A5859165
【特許文献9】EP-A0726284
【特許文献10】WO95/04093
【特許文献11】WO00/47642
【特許文献12】US-A2916464
【特許文献13】DE-A1921952
【非特許文献1】Progress in Organic Coatings 2001, 41(1-3), 1-83
【非特許文献2】Saunders/Frisch: High Polymers, Vol. XVI(1962), p.169
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、低い焼付け温度で、また様々なブロック剤と樹脂と親水化剤とを用いて効果的である、総合的な用途に適した触媒を見出すことである。同時に、生態学的な面も考慮に入れるべきである。
【発明を解決するための手段】
【0018】
前記目的は、ある種のバナジウム化合物をベースとする本発明の触媒が提供されることによって達成された。
【0019】
ブロックトポリイソシアネート及び一成分焼付系を触媒するためにバナジウム化合物を使用することは、これまでのところ知られていなかった。触媒として使用するのに特に適したものは、高い酸化状態にあるバナジウムの化合物である。例えば酸化状態が+5であるバナジウムの化合物(例えばポリウレタンの製造の為のバナジン酸塩としての酸化バナジウムトリエチレート(DE-A1 921 952参照)、また他にSaunders/Frisch: High Polymers, Vol. XVI(1962), p.169を参照)は、ブロック化されていないイソシアネートとアルコールとの反応を触媒するために使用されていた。しかしながら、同時に、DE-A1 921 952 は、(酸化バナジウムアルコキシドの加水分解傾向の故に)水を含む系でのバナジウム化合物の使用を排除しており、酸化バナジウムアルコキシドのみを記載している。したがって従来技術では、例えばバナジウム化合物の存在下でのブロックトイソシアネートとポリオールとの反応の促進は示唆されていなかった。
【0020】
ブロックトイソシアネートをベースとする1K系において本発明の触媒を使用することにより、使用するブロック剤によっては、焼付け温度を約20℃下げることが可能であることが分かった。したがって、約130℃という低い焼付け温度を達成することが可能である。しかし本発明の触媒は、以下の実施例に示すように、例えば120℃という低い温度でも十分に活性がある。
【0021】
本発明は、ポリウレタンベースの一成分焼付系であって、酸化状態が少なくとも+4であるバナジウムの有機化合物及び/又は無機化合物を1つ以上含むことを特徴とする焼付系を提供する。
【0022】
これらの一成分系は、好ましくは、
(a)ブロックトポリイソシアネートと、
(b)ポリイソシアネート反応性基を有するポリマーと、
(c)酸化状態が少なくとも+4であるバナジウムの有機化合物及び/又は無機化合物を1つ以上と、
(d)水及び/又は有機溶剤又は混合溶剤と、
(e)所望により更に添加物及び助剤と、
を含み、
(a)+(b)の量が20〜89.9重量部、(c)が0.01〜5重量部、(d)が10〜70重量部、ならびに(e)が0〜10重量部であって、成分(a)〜(e)の合計が100重量部であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、一般的組成物(a)〜(e)からなる一成分形焼付系を製造するための方法も提供する。
【0024】
本発明はさらに、塗料、インキ、及び接着剤やエラストマー等他の焼付系を調製するための本発明の一成分焼付系の使用を提供し、またそれらから作製された皮膜を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の1K焼付系は、架橋剤成分としてブロックトポリイソシアネート(a)、例えば所望の有機ポリイソシアネートA)を所望のブロック剤B)及び所望によりさらなる合成成分C)と従来方法により反応させることで得られるようなもの等を含む。ブロックトポリイソシアネート(a)を調製するのに適したポリイソシアネートA)は、活性水素を含む化合物を架橋させるための従来のポリウレタン系から既知である所望の有機ポリイソシアネート(少なくとも2つのイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及び複素環式ポリイソシアネートを含む)、ならびにこれらの混合物である。適当なポリイソシアネートA)の典型的な例は、ジ-又はトリ-イソシアネート等の脂肪族イソシアネート(例えばブタンジイソシアネート(BDI)、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)、4-イソシアネートメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN))、又は4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(Desmodur(登録商標)W,バイエル社、レーバークーゼン)、3,5,5-トリメチル-1-イソシアナト-3-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)及びω,ω'-ジイソシアナト-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)等の環式系が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートの例としては、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)又は粗MDI、ジイソシアナトメチルベンゼン(TDI)、特に2,4及び2,6異性体、及びこれら2つの異性体の工業用混合物、及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)が挙げられる。同様に非常に適した化合物として、イソシアネート基を介してジ-又はトリ-イソシアネートをそれら自身と反応させることにより得られるポリイソシアネート、例えばウレトジオンやカルボジイミド化合物等、またはイソシアヌレートやイミノオキサジアジンジオン(3つのイソシアネート基の反応により形成される)等がある。
【0026】
他の適したポリイソシアネートには、ビウレット、アロファネート及びアシルウレア構造要素を有するオリゴマーポリイソシアネート、及び上記ポリイソシアネートの所望の混合物も含まれる。また、上記構造単位を有するポリイソシアネートの混合物及び/又はモノマーイソシアネートと変性ポリイソシアネートとの混合物を使用することもできる。また、このように変性ポリイソシアネートは、他のイソシアネート反応性基と比例的に予備重合させることもできる。比例的変性ポリイソシアネートは非常に好ましい。同様に非常に適しているのは、1分子あたり平均して1個を超えるイソシアネート基を含むポリイソシアネートプレポリマーである。これらは、モル過剰の例えば上記ジ-、トリ-又はポリ-イソシアネート及び変性ポリイソシアネートのうちの1つと、1分子あたり少なくとも2個の活性水素原子を例えばヒドロキシ基として有する有機物質との予備反応により得られる。これらは同様に、次の節で説明するように、比例的に予め重合させることができる。
【0027】
さらに、ジイソシアネート(好ましくはIPDI又はTDI)を過剰に使用して、分子量範囲62〜300の単純な多価アルコール(特にトリメチロールプロパン又はグリセロール)と反応させて得られるようなウレタン基を含む低分子量ポリイソシアネートも好適である。
【0028】
好適なポリイソシアネートA)として、さらに、末端イソシアネート基を含む既知のプレポリマー[特に上記の単純なポリイソシアネート(特にジイソシアネート)を少なくとも2つのイソシアネート反応性官能基を有する不足定量の有機化合物と反応させることにより得られるようなもの]が含まれる。これらの既知プレポリマーにおいて、NCO反応性水素原子に対するイソシアネート基の比は1.05:1〜10:1、好ましくは1.1:1〜3:1である(ここで水素原子は好ましくはヒドロキシル基から生ずるものである)。あるいは、NCOプレポリマーの調製で使用される出発物質の特性及び割合は、NCOプレポリマーが好ましくは平均NCO官能価2〜3であり且つ数平均モル質量500〜10000、好ましくは800〜4000となるように、好適に選択される。
【0029】
好適なポリイソシアネートA)は、ウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、アシルウレア、ウレタン、ビウレット又はアロファネート構造を含むポリイソシアネートであり、好ましいのは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、3,5,5-トリメチル-1-イソシアナト-3-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、ω,ω'-ジイソシアナト-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)、及び4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(Desmodur(登録商標)W, バイエル社、レーバークーゼン)をベースとしたこれらのポリイソシアネートである。
【0030】
さらに、本発明においてポリイソシアネートA)として好適なものには、遊離イソシアネート基を含むこれらのポリウレタン-、ポリエステル-及び/又はポリアクリレート-ベースのポリマーがある。また適当な場合は、それらの混合物(この場合は遊離イソシアネート基のうちの一部のみをブロック剤と反応させ、残りは過剰量のヒドロキシル含有ポリエステル、ポリウレタン及び/又はポリアクリレートと反応させる)もある。また適当な場合は、これらの混合物であって、遊離ヒドロキシル基を含み且つ追加成分を加えないで適当な焼付け温度にまで加熱するとイソシアネート基と反応することができる基を架橋するポリマー(自己架橋型一成分焼付系)を形成するような上記混合物がある。
【0031】
上記ポリイソシアネートは全て、塗料、インキ及び他の調製物を調製するために、これらの所望の混合物、又はメラミン樹脂などの他の架橋剤との所望の混合物として使用することもできる。
【0032】
好適なブロック剤B)としては、N-H又はO-H官能性化合物が挙げられる。これらは、イソシアネートとの反応により消費され、適当な温度では、さらなるN-H又はO-H官能性化合物との架橋反応を可能にする。適当なブロック剤の例には、ジメチルピラゾール、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルベンジルアミン、ブタノンオキシム、ε-カプロラクタム、エトキシエタノール、イソプロポキシエタノール、及びカルビトール等の他のアルコールがある。また、例えばジブチルアミン等の第2級アミン、例えばシクロヘキサノンオキシムやアセトンオキシム等の他のオキシムを用いることも可能である。原則的に好適なブロック剤の概説は、例えばWicks et al, in Progress in Organic Coatings 1975, 3, pp.73-79, 1981, 9, pp.3-28及び1999, 36, pp. 148-172に掲載されている。3,5-ジメチルピラゾール、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルベンジルアミン、ブタノンオキシム及びエトキシエタノールを使用することが好ましい。
【0033】
ブロック剤に対するイソシアネート基の比は通常1:1であるが、0.5:1〜2:1の値で調節することもできる。好ましくは0.9:1〜1.1:1、特に好ましくは0.95:1〜1:1の比である。
【0034】
ブロックトポリイソシアネート(a)は、従来方法により調製することができる。例えば、1以上のポリイソシアネートをまず導入し、(例えば約10分間かけて)攪拌しながらブロック剤をその中に計量して入れることができる。遊離イソシアネートが検出できなくなるまで攪拌を続ける。また、1以上のポリイソシアネートを2以上のブロック剤(適当であれば本発明のブロック剤でないものも含む)の混合物でブロック化することも可能である。もちろん、ブロックトポリイソシアネートは、溶剤中で調製することもできる。これらの溶剤は、後続の調製行程において蒸留して除去することもできるし、また製品中に残すこともできる。
【0035】
本発明で使用されるブロックトポリイソシアネート(a)を調製するための他の可能な方法としては、従来方法に従って、イオン的に、非イオン的に、又はその両方によりこれらを親水化し、そして水を加えた後、これを水中に溶解又は分散させる方法がある。ポリイソシアネートを調製する際には、触媒、補助溶剤及び他の助剤や添加物を使用することも可能である。水性一成分形焼付系の調製は、ブロック化されていない又は部分的にのみブロック化されたポリイソシアネートを、ポリエステル、ポリアクリレート、親水性基を含むポリアクリレート変性ポリエステル及びポリウレタン変性ポリエステルと混合した後、分散液へと変換させるようにして行うこともできる。
【0036】
好適な他の合成成分Cとしては、イオン性又は潜在イオン性化合物C1)及び/又は非イオン性親水化剤として化合物C2が含まれる。イオン性又は潜在イオン性化合物C1)の例としては、モノ-及びジ-ヒドロキシカルボン酸、モノ-及びジ-アミノカルボン酸、モノ-及びジ-ヒドロキシスルホン酸、モノ-及びジ-アミノスルホン酸、モノ-及びジ-ヒドロキシホスホン酸、及び/又はモノ-及びジ-アミノホスホン酸、並びにこれらの塩、例えばジメチロールプロピオン酸、ヒドロキシピバル酸、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミン-プロピル-又はブチルスルホン酸、1,2-又は1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、リシン、3,5-ジアミノ安息香酸、EP-A0916647の実施例1に記載の親水化剤及びそのアルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩;親水性合成成分として、重亜硫酸ナトリウムと2-ブテン-1,4-ジオールとの付加物、ポリエーテルスルホネート、2-ブタンジオールとNaHSO3とのプロポキシ化付加物 (例えばDE-A24464405〜9頁、化学式I〜III)、更に、陽イオン基への変換が可能である単位、例えばN-メチルジエタノールアミンがある。
【0037】
好適なイオン性又は潜在イオン性化合物C1としては、カルボキシまたはカルボキシレート及び/又はスルホネート基及び/又はアンモニウム基を含むものがある。特に好適なイオン性化合物は、イオン性又は潜在イオン性基としてカルボキシル基及び/又はスルホネート基を含むもの、例えばN-(2-アミノエチル)-β-アラニン、2-(2-アミノ-エチルアミノ)エタンスルホン酸の塩や、EP-A0916647の実施例1に記載の親水化剤の塩、ならびにジメチルプロピオン酸の塩等である。
【0038】
また、合成成分C3として、以下に化合物(b)として記載するものを使用することも可能である。
【0039】
上記成分C1、C2及びC3の中に含まれるヒドロキシル成分は、二重結合(例えば長鎖脂肪族カルボン酸又は脂肪族アルコールから生ずるもの)を含むことができる。オレフィン二重結合を用いた官能化は、例えばアリル基の導入又はアクリル酸又はメタクリル酸の導入、及びこれらのエステルの導入によっても可能である。これは、空中酸素の存在下で乾燥剤(Co+3)を用いた後続の酸化架橋行程で、またはさらなる架橋のためのUV照射によって、これらの物質を利用する可能性が生じる。
【0040】
成分(a)〜(e)の相互作用及び/又は反応を介して、水中へ及び/又は水を用いて分散させた後、本質において水性1K PUコーティング系であるいわゆるPU分散液が得られる。これらのPU分散液は更に、非イオン的に親水化する化合物C2(例えば少なくとも1つのヒドロキシ基又はアミノ基を有するポリオキシアルキレンエーテル等)を含み得る。これらのポリエーテルは、エチレンオキシド由来の単位を30wt%〜100wt%の割合で含む。好適なものとしては、官能価が1〜3である線状構造のポリエステルだけでなく、以下の一般式(VI)で表わされる化合物も含まれる。
【化1】

[式中R1及びR2は、互いに独立してそれぞれ1〜18個の炭素原子(酸素原子及び/又は窒素原子により中断されていても良い)を有する二価の脂肪族基、脂環式基、又は芳香族基であり、
R3は、末端がヒドロキシではないポリエステル、又は好ましくはポリエーテルである。特に好ましいR3は、アルコキシ末端ポリエチレンオキシド基である。]
【0041】
さらなる合成成分C2として使用される非イオン的に親水化する化合物には、例えば、一価であり、かつ1分子あたり平均で5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を含むポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールも含まれる。これらのアルコールには、適当なスターター分子をアルコキシル化することによって、従来方法により得ることができるものがある(例えばUllmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第4版, 第19巻, Verlag Chemie, Weinheim pp.31-38に記載)。適当なスターター分子の例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、異性体ペンタノール、異性体ヘキサノール、異性体オクタノール、異性体ノナノール、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノール又はヒドロキシメチルシクロヘキサン、3-エチル-3-ヒドロキシメチル-オキセタン、又はテトラヒドロフルフリルアルコール等の飽和一価アルコール、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、アリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコール又はオレイルアルコール等の不飽和アルコール、フェノール、異性体クレゾール又はメトキシフェノール等の芳香族アルコール、ベンジルアルコール、アニシルアルコール又はシンナミルアルコール等の芳香脂肪族アルコール、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン、n-メチル-及びn-エチルシクロヘキシルアミン又はジシクロヘキシルアミン等の第二級モノアミン、及びモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、又は1H-ピラゾール等の複素環式第二級アミンが挙げられる。
【0042】
好適なスターター分子は飽和一価アルコールであり、またジエチレングリコールモノアルキルエーテルでもある。ジエチレングリコールモノブチル又はメチルエーテルをスターター分子として使用することが特に好ましい。
【0043】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは特にエチレンオキシド及びプロピレンオキシドである。これらはアルコキシル化反応においてどの順序で用いても良いし、あるいは混合物として用いても良い。
【0044】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、純粋ポリエチレンオキシドポリエーテルであるか、又は、そのアルキレンオキシド単位の少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%がエチレンオキシド単位からなる、混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。好適な非イオン性化合物は、少なくとも40モル%のエチレンオキシド単位を含み、かつ60モル%以下のプロピレンオキシド単位を含む一官能価の混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0045】
また本発明のPU分散液は、イオン性および非イオン性の親水化剤の組合せを用いて親水化することもできる。あるいは、陽イオン性親水化剤を用いることも可能である。前者の場合は、陽イオン性親水化剤と非イオン性親水化剤との組み合わせを用いることが好ましい。
【0046】
ポリイソシアネートは、先に述べたように、自己架橋ポリマーか、またはポリイソシアネート反応性基を含む所望の化合物(b)の架橋剤である。上記タイプ(b)の好適な化合物(混合物としても使用することもできる)には、以下のものが含まれる。
【0047】
ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリエーテル又はヒドロキシ含有付加重合体(例えば自体既知のポリヒドロキシポリアクリレートが挙げられる)。これらの化合物は一般には、100%形態の生成物を基準にしてヒドロキシルの数が20〜200、好ましくは50〜130である。
ポリヒドロキシルポリアクリレートは、スチレンとアクリル酸及び/又はメタクリル酸の単純エステルとの一般的な共重合体である。ここで、ヒドロキシル基を導入するために、例えばこれらの酸の2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、2-、3-又は4-ヒドロキシブチルエステル等のヒドロキシアルキルエステルを更に使用する。
【0048】
好適なポリエーテルポリオールは、好適な二価〜三価のスターター分子(例えば水、エチレングリコール、プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール及び/又はペンタエリスリトール)のポリウレタン化学で自体既知のエトキシル化生成物及び/又はプロポキシル化生成物である。
【0049】
好適なポリエステルポリオールの例には、特に、ポリウレタン化学において自体既知の例えばアルカンポリオール等の多価アルコールの反応生成物がある。このタイプは、過剰量のポリカルボン酸及び/又はポリカルボン酸無水物(特にジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物)との反応生成物が適切な例である。好適なポリカルボン酸およびポリカルボン酸無水物の例には、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸、無水マレイン酸、これらとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加物、フマル酸、又は二量体及び/又は三量体の脂肪酸がある。ポリエステルポリオールの調製において、例示した多価アルコールの所望の混合物、又は例示した酸及び酸無水物の所望の混合物を使用することはもちろん可能である。
【0050】
ポリエステルポリオールは、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, volume XIV/2, G. Thieme-Verlag, 1963, 1〜47頁に記載されたような既知の方法によって調製される。必要な場合、これらのポリヒドロキシル化合物の親水性修飾は、例えばEP-A-0157291やEP-A-0427028に開示されているような従来法に従って行われる。
【0051】
また、これらのポリオールの混合物あるいは他の組合せ、ポリアクリレート変性及び/又はポリウレタン変性ポリエステルを使用することもできる。
【0052】
また、本発明の一成分系において好適なポリオール成分(b)には、エステル基を含まない2価〜6価アルコール及び/又はこれらの混合物が含まれる。典型的な例としては、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-及び-1,3-ジオール、ブタン-1,4、-1,2-又は2,3-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール及びソルビトールが挙げられる。また、イオン基又はイオン基への変換が可能な基を有するアルコールを使用することももちろん可能である。例えば1,4-又は1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び/又はトリメチロールプロパンが好ましい。
【0053】
また、本発明の一成分焼付系の調製において、成分(b)としてエタノールアミン及びその誘導体等のアミノ基を含む化合物を使用することも可能である。ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン又はヒドラジン等のジアミン及び/又はその誘導体も使用することができる。
【0054】
ブロックトイソシアネートに対して反応性である基のブロックトイソシアネートに対する比は広範囲に渡って変化し得るが、一般的には0.5:1〜2:1である。1:1又は1.5:1の比で作業するのが好ましい。
【0055】
本発明の一成分形焼付けエナメルは、架橋反応を促進するための触媒(c)として有機及び/又は無機バナジウム化合物を含む。
【0056】
好適なバナジウム化合物として、酸化状態が+4以上であるバナジウムの全ての既知化合物が挙げられる。これらは、触媒作用のためには、一成分焼付系中に可溶性であっても、部分的に可溶性であっても、あるいは不溶性であってもよい。これらは有機化合物であっても無機化合物であってもよい。また、異なるバナジウム化合物の混合物を用いることも可能であるし、また、バナジウム化合物と他の触媒(アミン及び/又は錫化合物又はビスマス化合物等)との混合物を使用することも可能である。
【0057】
好ましいバナジウム化合物の例は、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸リチウム、バナジン酸ナトリウム、バナジン酸カリウム、オルトバナジン酸リチウム、オルトバナジン酸ナトリウム、オルトバナジン酸カリウム、バナジン酸マグネシウム、バナジン酸カルシウム、バナジル(IV)アセチルアセトネート(VO(C5H7O5)2)、バナジルビステトラメチルヘプタジオネート(VO(TMHD)2)及びバナジン酸である。
【0058】
本発明において好ましいバナジウム化合物は、酸化状態が+4及び+5のバナジウムの化合物である。従って、バナジン酸及び/又はオルトバナジン酸の誘導体が好ましい。バナジウム化合物、特にオルトバナジン酸塩は、溶液のpHに依存して、バナジウムの酸化状態が変化を受けることなく、それ自体により縮合反応を生じさせることができる。このようなポリバナジウムアニオンの使用も、同様に本発明に従うものである。加えて、オルトバナジン酸塩は、非常に異なる量の結晶水を伴って得られるが、これは、触媒としての活性に悪影響を与えない。特に好ましい化合物は、バナジン酸リチウムLi3VO4、バナジン酸ナトリウムNa3VO4、バナジン酸カリウムK3VO4、メタバナジン酸リチウムLiVO3、メタバナジン酸ナトリウムNaVO3及びメタバナジン酸カリウムKVO3である。
【0059】
上記化合物の他、使用できる化合物種は、アルコール、フェノール、糖、有機酸、(ポリ)エーテル等との錯体を含み得る。バナジン酸リチウム及びバナジン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0060】
バナジウム化合物は、成分(a)、(b)及び(e)の合計を基準として0.01〜5wt%、好ましくは0.1〜2wt%、特に好ましくは0.2〜1wt%の量で添加される。この添加は、成分(a)、(b)、(d)又は(e)のいずれかに、またはこれらの混合物に、調製中又は調製後に、それぞれの成分又は完成したコーティング材料に行うことができる。好ましいのは、調製中に、成分(a)又は(b)に若しくはこれらの混合物に添加することである。水性系において、特に好ましくは分散水を加える前に、本発明のバナジウム化合物を各成分に添加する。本発明のバナジウム化合物は、細粒化した固体として、所望の液体中の懸濁液として、または溶液として、加えることができる。
【0061】
本発明の一成分形焼付系は、溶剤(d)として水及び/又は有機溶剤若しくはこれらの混合物を含む。
【0062】
有機溶剤としては、全ての既知の溶剤を使用することができる。塗料工業で使用される溶剤、例えばキシレン、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ブチルグリコール、酢酸メトキシプロピル、炭化水素(Exxson Chemicals製、Solvesso 100(登録商標))、N-メチルピロリドンが好ましい。
【0063】
ブロックトポリイソシアネート(a)及びポリオール(b)以外に、通例の添加物及び他の助剤(e)(例えば、顔料、充填剤、レベリング剤、消泡剤、触媒)、及び所望により、(c)以外の触媒も、調製物に加えることが可能である。
【0064】
塗料、インキ及び他の調合物は、従来方法によって、本発明の一成分形焼付系から調製される。選択した調製方法にかかわらず、本発明の一成分形焼付系は、以下の量で上記の個々の成分(a)〜(e)を含む。個々の成分(a)〜(e)の合計を100重量部とすると、(a)+(b)の量は20〜89.9重量部、(c)は0.01〜5重量部、(d)の量は10〜75重量部、及び(e)の量は0〜10重量部である。
【0065】
本発明の一成分焼付系は、好ましくは以下の量で上記の個々の成分(a)〜(e)を含む。これらの成分は合計で100重量部とすると、(a)+(b)の量は30〜69.9重量部、(c)は0.01〜2重量部、(d)の量は30〜70重量部、及び(e)は0〜8重量部である。
【0066】
本発明の一成分焼付系は、例えば工業用被膜用焼付けエナメルを調製するため、及び乗用車の塗装仕上げにおいて、使用される。これらの焼付けエナメルは、例えば下塗り、中塗り、及びトップコート材料であってもよい。焼付けエナメルは、顔料を含んでもよいし、また純粋なトップコート材料であってもよい。このために、本発明のコーティング組成物は、ナイフ塗布、浸漬、スプレー塗布(圧縮空気スプレーやエアレススプレーなど)によって、また、例えば静電塗布、高速回転ベルによる塗布によっても塗布することができる。乾燥塗膜コートの厚みは例えば10〜120μmである。乾燥塗膜は、90〜160℃、好ましくは110〜140℃、特に好ましくは120〜130℃の範囲の温度で焼き付けることにより硬化させる。
【0067】
本発明の一成分形焼付系をベースとした調合物から得られるコーティングで被覆した基材も同様に、本発明により提供される。
【実施例】
【0068】
以下の実施例により本発明を説明する。
以下の実施例において全ての%は重量基準である。
【0069】
実施例1〜4のための自己架橋剤の調製
脂肪族ポリイソシアネート[HDI三量体、デスモジュール(Desmodur登録商標)N3300, Bayer AG、レーバークーゼン] 789.8g(3.71当量NCO)に、N-メチルピロリドン336.7gを加えた。攪拌しながら、ジイソプロピルアミン374.9g(3.71当量)を温度が70℃を超えないような速度で60分間かけて加えた。この後、攪拌を70℃で60分間続けた。その後、IR分光分析法によってはイソシアネート基はもはや検出できなかった。70℃にて、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ピーナツ油脂肪酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸から生成したポリエステルポリオールから調製したものであってOH価が136であるポリエステルポリアクリレート2311g(5.29当量のヒドロキシル基)(アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルの混合物、及びアクリル酸とグラフト反応させたもの)を加え、この混合物を20分間攪拌した。次に、ジメチルエタノールアミン115.5g(1.296当量)を加えた後、10分間攪拌した。
【0070】
この反応混合物の614gに、70℃にて、下記表に記載した量の微粉化オルトバナジン酸ナトリウムを添加し、30分間攪拌した。次に、各ケースにおいて、勢い良く攪拌しながら70℃の脱イオン水581gを加え、その後、60分間攪拌し、分散液を攪拌しながら冷却した。得られた分散液は、固形分含有量が45wt%であり、以下に記載する他の特性を有していた。
【0071】
バナジウム触媒を用いることにより、より優れた耐薬品性が達成できることが明白である。振子硬度も増加する。架橋温度の低下は、約20℃に達する。
【0072】
実施例1〜4
【表1】

【0073】
比較例は、バナジウム化合物による触媒作用の結果として、硬化後に被覆系の振子硬度及び耐溶剤性が顕著に向上することを示している。
【0074】
実施例5〜11
【表2】

【0075】
使用したブロックトイソシアネートは、3,5-ジメチルピラゾールによりブロックしたヘキサメチレンジイソシアネート[Desmodur(登録商標)VP LS 2253, Bayer AG]である。使用したポリオールは、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ピーナツ油脂肪酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸から生成した、OH価136の、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルの混合物、及びアクリル酸とグラフト反応させた、ポリエステルポリオールから調製したポリエステルポリアクリレートである。
【0076】
実施例12〜14
【表3】

【0077】
使用したブロックトイソシアネートは、下記のPES-PURポリオールとの事前反応によりイソホロンジイソシアネート(IPDI)(Z4470、Bayer AG, レーバークーゼン)と比例的に混合した、3,5-ジメチルピラゾールによりブロックしたヘキサメチレンジイソシアネート[Desmodur(登録商標)VP LS 2253, Bayer AG]である。この場合に使用したポリオールは、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、アジピン酸、イソフタル酸、ジメチロールプロピオン酸、ヘキサメチレンジイソシアネート、N-メチルピロリジン、ジメチルエタノールアミン及び水からなるいわゆるPES-PURポリオール[Bayhydrol VP LS 2056, Bayer AG, OH含有量1.7wt%]である。固形分は47%である。
【0078】
実施例6〜15の場合、水性1K系の焼付け温度は、バナジウム化合物が存在すると、約20℃低下できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンベースの一成分焼付系であって、酸化状態が少なくとも+4であるバナジウムの有機化合物及び/又は無機化合物を1つ以上含むことを特徴とする焼付系。
【請求項2】
前記バナジウムの化合物が、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸リチウム、バナジン酸ナトリウム、バナジン酸カリウム、オルトバナジン酸リチウム、オルトバナジン酸ナトリウム、オルトバナジン酸カリウム、バナジン酸マグネシウム、バナジン酸カルシウム、バナジル(IV)アセチルアセトネート(VO(C5H7O5)2)、バナジルビステトラメチルヘプタジオネート(VO(TMHD)2)及びバナジン酸からなる群より選択される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の焼付系。
【請求項3】
前記バナジウムの化合物が、バナジン酸リチウムLi3VO4、バナジン酸ナトリウムNa3VO4、バナジン酸カリウムK3VO4、メタバナジン酸リチウムLiVO3、メタバナジン酸ナトリウムNaVO3及びメタバナジン酸カリウムKVO3からなる群より選択される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の焼付系。
【請求項4】
バナジウムの化合物が、バナジン酸リチウム又はバナジン酸ナトリウムである請求項1に記載の焼付系。
【請求項5】
(a)ブロックトポリイソシアネートと、
(b)ポリイソシアネート反応性基を有するポリマーと、
(c)酸化状態が少なくとも+4であるバナジウムの有機化合物及び/又は無機化合物を1つ以上と、
(d)水及び/又は有機溶剤又は混合溶剤と、
(e)所望により更に添加物及び助剤と、
を含み、
(a)+(b)の量が20〜89.9重量部、(c)が0.01〜5重量部、(d)が10〜70重量部、ならびに(e)が0〜10重量部であって、成分(a)〜(e)の合計が100重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の焼付系。
【請求項6】
ブロックトポリイソシアネート(a)として脂肪族イソシアネートを使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の焼付系。
【請求項7】
ブロックトポリイソシアネート(a)として芳香族イソシアネートを使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の焼付系。
【請求項8】
ブロックトポリイソシアネート(a)として、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、それらの誘導体、及び/又は混合物に基づくポリイソシアネートを使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の焼付系。
【請求項9】
前記ポリイソシアネート(a)が親水性化されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の焼付系。
【請求項10】
バナジウム化合物(c)として、バナジン酸の塩又はその縮合物を使用することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の焼付系。
【請求項11】
バナジウム化合物(c)として、オルト-及びメタ-バナジン酸のリチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩を使用することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の焼付系。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の焼付系を調製する方法であって、成分(d)中に分散又は溶解させる前に成分(c)を成分(a)及び/又は(b)中に導入することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の焼付系を調製する方法であって、成分(d)中に成分(a)及び/又は(b)を分散又は溶解させる前に成分(c)を成分(d)中に導入することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の水性又は水分散性系を調製する方法であって、分散媒としての水を加える前に成分(a)、(b)、(d)及び/又は(e)の1つ以上に成分(c)を加えることを特徴とする方法。
【請求項15】
塗料、インキ及び接着剤を調製するための請求項1〜11のいずれかに記載の焼付系の使用。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載の焼付系から得られる皮膜で被覆された基材。

【公表番号】特表2006−519890(P2006−519890A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501852(P2006−501852)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001424
【国際公開番号】WO2004/076520
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】