4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質及びその製造方法
【課題】検量線を作成するフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の収率を向上させて、また、氷冷下での滴下ではなく室温の環境下で合成することで生産環境を向上させて生産性を高めることで、工業生産が容易な上記4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、標準物質が2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンと、ハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種の化合物との縮合反応によって得られる化1〜化4の何れか一つの構造式を有することを特徴とする。
【解決手段】4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、標準物質が2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンと、ハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種の化合物との縮合反応によって得られる化1〜化4の何れか一つの構造式を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機元素を自動定量分析する標準物質及びその製造方法に関し、詳細には試料中の微量な4種類のハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)及び硫黄の有機元素を、迅速に高精度で自動定量分析する際の検量線を作成する、4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州WEEE/RoHS指令等の環境規制から、製品や廃棄物等に含まれる有機ハロゲン・硫黄化合物中の微量なハロゲン及び硫黄の定量分析を、迅速に高精度で行いたいとする需要が世界的規模で高まっている。
上記有機ハロゲン・硫黄化合物の例として、廃棄物固形燃料(RDF)には、古紙系のものに臭素をはじめとするハロゲンが多く含まれており、また、乾燥土壌(ピート)中には、産地が北海道の火山地域のため火山に由来する硫黄およびフッ素が含まれている。これらの例にみられるように、上記RDFやピート中の有機ハロゲン及び硫黄元素を、一度の測定で迅速且つ高精度に定量分析できる自動分析装置の開発が望まれていたが、近年、一度の測定で4種類のハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)及び硫黄の5元素のイオンクロマトグラフが得られる有機ハロゲン・硫黄の自動分析装置が開発され利用されている。
【0003】
しかしながら、5元素のイオンクロマトグラフが得られたとしても、元素ごとの検量線の作成が必要であり、一つの元素の検量線を作成するのに多大な時間が必要なために、5元素の検量線を作成するのに要する時間が膨大となっている。そこで、本発明者等は、1分子に上記5元素を含む標準物質の合成の開発に取り組み、ハロゲン化アニリン化合物とハロゲン化ベンゼンスルホニル化合物を縮合させることにより、1分子に上記5元素を含む標準物質の合成に成功し、この標準物質を用いて廃棄物等の各種環境試料の定量分析を行なったところ、この標準物質が検量線を作成するのに有用であることが実証でき、特許文献1に記載の発明である「自動分析装置に用いる検量線作成用化合物」の完成に至った(特許文献1参照)。
【0004】
この検量線作成用化合物は、以下に記載の合成方法で製造するものであるが、その収率は43%と低率であった。上記合成方法は、ピリジン3mlに溶解した2−ヨウ化−4−臭化−アニリン1.00g(3.37mmol)に、ピリジン4mlに溶解した3−塩化−4−フッ化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)を氷冷下で攪拌しながら約30分にわたって滴下し、その後室温で3日間静置し、反応液を1mol/l塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し水で洗浄して、沈澱物をカラムクロマトグラフで分離精製後、再結晶を行って精製することで、検量線作成用化合物である白色結晶(融点133℃)が得られた。その得られた検量線作成用化合物はIR、NMR並びに元素分析によって前記構造式を有するN−(2’−ヨウ化−4’−臭化フェニル)−3−塩化−4−フッ化ベンゼンスルホンアミド(検量線作成用化合物)であることが開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、分子中にフッ素を5〜15%、塩素を5〜20%、臭素を10〜20%、硫黄を5〜15%含有している通常の医薬化合物を、大量に消費させることなく有機元素分析の標準試料として用いることができる標準試料の提供を課題として、その課題を解決するための手段として、ハロゲノベンゼンスルホンアミド構造を有する以下のハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体が開示されている(特許文献2参照)。
式中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子または臭素原子を示す。ただし、式中のフッ素原子の数は2であり、塩素原子の数は1であり、臭素原子の数は1である。
【0006】
ハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体の実施例1として、以下の構造の化合物を製造する方法が記載されている。
具体的には、氷浴冷却下、2、4−ジフルオロアニリン、ピリジン、およびN、N−ジメチルホルムアミドの混合物に4−クロロベンゼンスルホニルクロリドのN、N−ジメチルホルムアミド溶液を30分間かけて滴下して加えた後、4時間撹拌した。水を加えた反応混合物を酢酸エチルで抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣にヘキサンを加えて撹拌することにより析出した固体を濾取して、N−(2、4−ジフルオロフェニル)−4−クロロベンゼンスルホンアミドを得た。そして、該クロロベンゼンスルホンアミド、4−ブロモベンジルブロミド、炭酸カリウム、およびN,N−ジメチルホルムアミドの混合物を、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルを加えた後、濾過し、濾液を水で洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出した後、併せた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して溶媒を留去した。得られた固体を酢酸エチルから再結晶することにより、目的のハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体の結晶を得た。そして、このハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体は、有機元素分析を実施する際に標準試料として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−254420号公報
【特許文献2】特関2008−100967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の検量線作成用化合物は、2−ヨウ化−4−臭化−アニリンに3−塩化−4−フッ化−ベンゼンスルホニルクロリドを、氷冷下で30分間かけて滴下して加える必要があり、室温の環境下で合成を行うことができないこと、上記沈澱物をカラムクロマトグラフで分離精製するために、大量の有機溶剤が必要なこと、また、上記検量線作成用化合物の収率が43%と低く生産性が悪いこと、更に、合成時間が3日間と長いことから、該検量線作成用化合物の工業生産を図るには困難な問題を有している。
特許文献2に記載の発明であるハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体は、その発明の課題及びその構造から、ヨウ素を除くフッ素、塩素、臭素及び硫黄の4元素を対称とした標準資料であり、そして、その製造方法は、氷浴冷却下で、N,N−ジメチルホルムアミド等の混合物に4−クロロベンゼンスルホニルクロリドのN、N−ジメチルホルムアミド溶液を30分間かけて滴下して加える必要があり、室温の環境下で合成を行うことができない製造方法である。特許文献2には、ハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体の収率についての記載はないが、特許文献2の製造方法は、氷浴冷却下で反応混合物を生成していることから、特許文献1と類似の製造方法で製造しているので、その収率も低いものと推測される。
【0009】
それ故に、本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、検量線を作成するフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の収率を向上させて、また、氷冷下での滴下ではなく室温の環境下で合成することで生産環境を向上させて生産性を高めることで、工業生産が容易な上記4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等が開発した特許文献1に記載の検量線作成用化合物は、以下に示す問題点を有している。その1番目の問題点は、上記化合物の収率が43%と低率であること、2番目の問題点は、合成開始において氷温にて滴下を行った後、室温で長時間反応させるといった、反応性のコントロールが必要であること、3番目の問題点は、反応における目的の標準物質の選択率が低いために多段階での精製と、大量の有機溶剤が必要なこと、4番目の問題点は、合成時間が3日間と長いことが挙げられる。上記問題点のなかで工業生産を妨げる最も重大なものは、上記化合物の収率が43%と低率であることで、その低率である理由を検討するために、上記製造方法で製造した際に、大量に生成される副生成物の構造を、IR、NMR並びに元素分析で調べたところ、その副生成物は以下に示す構造式のものであった。
【0011】
そこで原料であるアニリン化合物のアミノ基の反応性に着目して、原料候補のアニリン化合物として、上記検量線作成用化合物の原料である2−ヨウ化−4−臭化アニリンと他の4種類のアニリン化合物、合計5種類のアニリン化合物をNMRで分析して、上記アミノ基のNMRにおけるケミカルシフトの測定を行った。スルホンアミドの合成を室温の環境下で行うために、上記5種類のアニリン化合物から各アミノ基のNMRにおけるケミカルシフトの低い2種類を選定して、それとハロゲン化ベンゼンスルホニル化合物との縮合反応によって得られた、4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、有機ハロゲン・硫黄化合物中の微量なハロゲン及び硫黄の定量分析を、迅速に高精度で行う標準物質として、好適な資質を備えていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下の通りのものである。
請求項1に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、検量線を作成する有機元素分析の標準物質であって、前記標準物質が2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンと、ハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種の化合物との縮合反応によって得られる下記化1〜化4の何れか一つの構造式を有することを特徴とする。
(化1〜化4)
請求項2に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、前記4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質が分子内に4種類のハロゲンであるフッ素、塩素、臭素及びヨウ素と硫黄を含むことを特徴とする。
請求項3に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、前記
2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.7であり、前記3−塩化−4−ヨウ化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.8であることを特徴とする。
請求項4に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法は、検量線を作成する4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法であって、ピリジンに溶解した2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンに、ピリジンに溶解したハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種を室温で混合し、その混合により生成された反応液を酸性溶液中に注いで沈澱物を生成し、その沈澱物を再結晶化することにより製造されることを特徴とする。
請求項5に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法前記2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.7であり、前記3−塩化−4−ヨウ化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.8であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の標準物質及びその製造方法は、ハロゲン化アニリン化合物として2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンを用いたことにより、その収率が60%以上の値であるので、標準物質の生産性が大幅に向上できる。
また、反応選択率がほぼ100%に近似の値であるので、副生成物の生成が抑制されることで、再結晶法を用いて容易に高純度化することができ、精製の簡略化が大幅に向上でき、且つ大量の有機溶剤を不要とすることができる。
そして、室温の環境下で合成することができ、また、その合成時間が1日に短縮化できるので、時間とコストの節約により生産環境を向上させて生産性を高めることで、大量生産に適している。
本願発明の標準物質及びその製造方法は、上記の各効果が総合されることにより、工業生産を容易に行うことができる。
更に、本願発明の標準物質は、4種類のハロゲン及び硫黄の検量線を一回の操作で作成することができので、元素分析の所要時間を著しく短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明の構造式の試料を分析したイオンクロマトグラフである。
【図2】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(F)の2次式のグラフである。
【図3】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(Cl)の2次式のグラフである。
【図4】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(Br)の2次式のグラフである。
【図5】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(I)の2次式のグラフである。
【図6】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(S)の2次式のグラフである。
【図7】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(F)の2次式のグラフである。
【図8】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(Cl)の2次式のグラフである。
【図9】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(Br)の2次式のグラフである。
【図10】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(I)の2次式のグラフである。
【図11】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(S)の2次式のグラフである。
【図12】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(F)の2次式のグラフである。
【図13】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(Cl)の2次式のグラフである。
【図14】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(Br)の2次式のグラフである。
【図15】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(I)の2次式のグラフである。
【図16】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(S)の2次式のグラフである。
【図17】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(F)の2次式のグラフである。
【図18】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(Cl)の2次式のグラフである。
【図19】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(Br)の2次式のグラフである。
【図20】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(I)の2次式のグラフである。
【図21】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(S)の2次式のグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上述した検量線作成用化合物の製造方法で生成された副生成物の構造式から、原料であるアニリン化合物のアミノ基の反応性が高いことが、上記検量線作成用化合物の収率を43%にする原因を生起していると推測して、原料候補のアニリン化合物として、上記検量線作成用化合物の原料である2−ヨウ化−4−臭化アニリンと、4種類の2−塩化−4−ヨウ化アニリン、2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン、3−塩化−4−ヨウ化アニリン及び2−ヨウ化−4−塩化アニリンの合計5種類のアニリン化合物をNMRで分析して、上記アミノ基のケミカルシフトの測定を行った。ケミカルシフトは以下に示す式により求められる。
【0016】
原料候補の上記アニリン化合物のケミカルシフト(ppm)は、表1に示す通りの値である。
【0017】
【表1】
なお、上記4種類のアニリン化合物を選定したのは、数少ない市販されている原料のアニリン化合物をNMRにより分析し、その原料候補化合物のアミノ基のケミカルシフトの値から、ケミカルシフトの値が小さい4種類のアニリン化合物を選び、他の検量線作成用化合物の原料である2−ヨウ化−4−臭化アニリンを加えた合計5種類のアニリン化合物をNMRにより再度精緻に分析を行った。
【0018】
特許文献1に記載の検量線作成用化合物(2−ヨウ化−4−臭化アニリン)と2−ヨウ化−4−塩化アニリンは、ケミカルシフトの値が4.1であって、他のアニリン化合物と比べて高いことが、そして、2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン及び3−塩化−4−ヨウ化アニリンは、それよりもケミカルシフトが低いことが分かった。そこで、スルホンアミドの合成を室温の環境下で行うため、その反応性の低いアニリン化合物である、2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンと、ハロゲン化ベンゼンスルホニル化合物の群から選ばれた一種の化合物との縮合反応、例えば以下に示す縮合反応によって、副生成物が殆ど生成されることなく4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質が得られた。
【0019】
4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、以下に示す化1〜化4の構造式のものが得られた。
(化1〜化4)
【0020】
表2は上記化1〜化4で示す標準物質が生成される際の反応選択率及び収率を計算して求めた結果である。なお、反応選択率は反応開始24時間後のHPLCの測定により算出した。
【0021】
【表2】
原料のうち化学反応に消費された割合を転化率と表現しており、この転化率のうち、目的生成物に実際に変わった割合を反応選択率と表現するが、例えば原料から目的生成物が1対1対応で出来るような化学反応と仮定した場合に、反応選択率は目的生成物当量/原料消費当量で計算でき、目的生成物にならなかった分は、副生成物となるわけである。
【0022】
表2が示す、化1、化3及び化4の標準物質の反応選択率は、ほぼ100%に近似の値を示し、化2の標準物質のそれは89%と高い値を示しているので、ハロゲン化アニリン化合物として2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンを用いることで、副生成物が生成されないことが判った。即ち、ハロゲン化アニリン化合物からケミカルシフトの低い2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンを選択して、ハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種の化合物と反応させたことが、高い反応選択率を達成できた要因であることは明らかである。このように、反応選択率がほぼ100%に近似の値であることは、上述した副生成物の生成を抑制していることを示している。そのことにより、再結晶法を用いて容易に高純度化することができ、精製の簡略化を図ることが可能となった。また、上記高い反応選択率によって化1〜化4の標準物質の収率は、60%以上の高い値であることを表2の収率が示している。特許文献1に記載の検量線作成用化合物の収率が43%であるのに対して、上記化1〜化4の標準物質の収率は60%以上の値であるので、標準物質の生産性を大幅に向上できることが判った。
【0023】
本発明の実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
N−(2’−フッ化−3’−塩化−4’−臭化フェニル)−4−ヨウ化ベンゼンスルホンアミドの合成:
ピリジン3mlに溶解した2−フッ化−3−塩化−4−臭化−アニリン1.00g(3.37mmol)に、ピリジン4mlに溶解した4−ヨウ化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)を室温で攪拌しながら約30分にわたって混合し、反応液を1mol/l塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し水で洗浄して、沈澱物を再結晶して精製することで、標準物質である白色結晶(融点186〜187℃)が得られた。その得られた標準物質はIR及びNMRによって前記構造式を有するN−(2’−フッ化−3’−塩化−4’−臭化フェニル)−4−ヨウ化ベンゼンスルホンアミドであることが示された。上記合成物質を生成する時間は1日であり、反応時間が短縮できた。前記構造式はNMRスペクトルの分裂パターンによって特定した。
IR: 3235cm−1 N−H、1170cm−1 S=O
NMR: 6.81(1H、N−H)、7.38〜7.50(4H、aromatic)、7.84〜7.86(2H、aromatic)
【0024】
(実施例2)
N−(3’−塩化−4’−ヨウ化フェニル)−2−フッ化−4−臭化ベンゼンスルホンアミドの合成:
ピリジン3mlに溶解した3−塩化−4−ヨウ化−アニリン1.00g(3.37mmol)に、ピリジン4mLに溶解した2−フッ化−4−臭化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)を室温で攪拌しながら約30分にわたって混合し、反応液を1mol/L塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し水で洗浄して、沈澱物を再結晶化して精製することで、標準物質である白色結晶(融点171℃)が得られた。その得られた標準物質はIR及びNMRによって前記構造式を有するN−(3’−塩化−4’−ヨウ化フェニル)−2−フッ化−4−臭化ベンゼンスルホンアミドであることが示された。上記合成物質を生成する時間は1日であり、反応時間が短縮できた。
IR: 3255cm−1 N−H、 1170cm−1 S=O
NMR: 7.15(1H、N−H)、 6.75(1H、aromatic)、7.26(1H、aromatic)、7.41(2H、aromatic)、7.68〜7.75(2H、aromatic)
【0025】
(実施例3)
N−(3’−塩化−4’−ヨウ化アニリン)−2−臭化−4−フッ化ベンゼンスルホンアミドの合成:
ピリジン3mlに溶解した2−ヨウ化−4−臭化−アニリン1.00g(3.37mmol)に、ピリジン4mlに溶解した3−塩化−4−フッ化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)を室温で攪拌しながら約30分にわたって混合し、反応液を1mol/l塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し水で洗浄して、沈澱物を再結晶して精製することで、標準物質である白色結晶(融点202℃)が得られた。その得られた標準物質はIR及びNMRによって前記構造式を有するN−(3’−塩化−4’−ヨウ化アニリン)−2−臭化−4−フッ化ベンゼンスルホンアミドであることが示された。上記合成物質を生成する時間は1日であり、反応時間が短縮できた。
IR: 3250cm−1 N−H、 1165cm−1 S=O
NMR: 7.26 (1H、N−H)、 6.77(1H、aromatic)、7.11〜7.16(1H、aromatic)、7.26(1H、aromatic)、7.46(1H、aromatic)、7.67(1H、aromatic)、8.10(1H、aromatic)
【0026】
(実施例4)
N−(3’−塩化−4’−ヨウ化フェニル)−3−フッ化−4−臭化ベンゼンスルホンアミドの合成:
3’− 塩化−4’−ヨウ化−アニリン1.00g(3.37mmol)をピリジン3mlに溶解し、これに対して3−フッ化−4−臭化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)をピリジン4mlに溶解した溶液を氷冷下で攪拌しながら約30分にわたって滴下した。滴下後室温で3日間静置し、反応液を1mol/l塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し、水で洗浄した。沈澱物を再結晶して精製した。白色結晶(融点164℃)が収率60%で得られた。得られた標準物質は下記IR及びNMRによって前記構造式を有するN−(3’−塩化−4’−ヨウ化フェニル)−3−フッ化−4−臭化ベンゼンスルホンアミドであることが示された。上記合成物質を生成する時間は1日であり、反応時間が短縮できた。
IR: 3265cm−1 N−H、 1160cm−1 S=O
NMR: 6.95(1H、N−H)、 6.74(1H、aromatic)、7.23(1H、aromatic)、7.45(1H、aromatic)、7.55(1H、aromatic)、7.68〜7.74(2H、aromatic)
【0027】
なお、臭化ベンゼンスルホニルクロリドとして、上記実施例1の4−ヨウ化−ベンゼンスルホニルクロリド、上記実施例2の2−フッ化−4−臭化−ベンゼンスルホニルクロリド、上記実施例3の3−塩化−4−フッ化−ベンゼンスルホニルクロリド、上記実施例4の3−フッ化−4−臭化−ベンゼンスルホニルクロリドを選定したのは、前記2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンに対応した、数少ない市販されている原料の臭化ベンゼンスルホニルクロリドを選定した結果である。
【0028】
化1〜化4のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質を用いる検量線の作成:
有機ハロゲン・硫黄分析装置((株)ヤナコ機器開発研究所製、燃焼炉(HNS-15)、吸収ユニット(HSU-20))を用いて上記化1〜化4のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質によってF、Cl、Br、I及びSについての検量線を同時に作成した。
図1は本願発明の構造式の試料を分析したイオンクロマトグラフである。横軸は保持時間(分)で、縦軸は強度を表している。このイオンクロマトグラフから各元素のピーク面積が得られる。
【0029】
例えば、化1のN−(2’−フッ化−3’−塩化−4’−臭化フェニル)−4−ヨウ化ベンゼンスルホンアミドによってF、CL、BR、I及びSについての検量線を作成した。図2〜図6は、化1の試料の各元素の検量線の2次式のグラフを表しており、横軸がピーク面積(x/100)を、縦軸が各元素の試料量(μg)を表している。即ち、化1のピーク面積とF、Cl、Br、I及びSの試料量の相関を示す2次式のグラフである。
なお、横軸のピーク面積をx/100としたのは、桁数を二桁減らすことでピーク面積の単位を見やすくするためである。
図2はフッ素(F)、図3は塩素(Cl)、図4は臭素(Br)、図5はヨウ素(I)、図6は硫黄(S)に関する相関図の2次式のグラフである。
【0030】
以下、同様に、図7〜図11は、化2のピーク面積(x/100)と上記各試料量(μg)の2次式の相関図のグラフであり、図面の番号順に上記順番の元素に関する2次式の相関図のグラフを示している。図12〜図16は化3の2次式の相関図のグラフであり、図17〜図21は化4の2次式の相関図のグラフである。
例えば、化1試料のF検量線データに関して、表3に示すように、その試料量(μg)として約250、500、1000、2000、3000の量を用いている。その試料量中に含まれるフッ素元素の量(μg)を測定して得られたF量とピーク面積の各値をグラフ上にプロットして描いたグラフが上記2次式の相関図のグラフである。図2〜図21のグラフは、上記試料量(μg)を用いて作成されたグラフである。
【0031】
【表3】
【0032】
なお、化1のN−(2’−フッ化−3’−塩化−4’−臭化フェニル)−4−ヨウ化ベンゼンスルホンアミドにより作成した各元素についての検量線は、図2〜図6に示すように独立係数R2において相関係数がほぼ1に近似の値を示し、検量線作成用化合物として用いることができることが判明した。すなわちR2はF、Cl、Br、I及びSについて夫々0.999、0.998、0.999、1.000及び0.999であった。なお、独立係数R2=(相関係数)2であるので、相関係数も独立係数と近似の値となっている。
【0033】
同様に、上記化2〜化4の各物質は、F、Cl、Br、I及びSの各元素に対して、相関係数が1に近似の値を示しているから、検量線作成用の標準物質として有益なものであることが判った。それ故に、上記各物質は、上記5種類の元素の検量線を1回で分析することができる標準物質である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機元素を自動定量分析する標準物質及びその製造方法に関し、詳細には試料中の微量な4種類のハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)及び硫黄の有機元素を、迅速に高精度で自動定量分析する際の検量線を作成する、4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州WEEE/RoHS指令等の環境規制から、製品や廃棄物等に含まれる有機ハロゲン・硫黄化合物中の微量なハロゲン及び硫黄の定量分析を、迅速に高精度で行いたいとする需要が世界的規模で高まっている。
上記有機ハロゲン・硫黄化合物の例として、廃棄物固形燃料(RDF)には、古紙系のものに臭素をはじめとするハロゲンが多く含まれており、また、乾燥土壌(ピート)中には、産地が北海道の火山地域のため火山に由来する硫黄およびフッ素が含まれている。これらの例にみられるように、上記RDFやピート中の有機ハロゲン及び硫黄元素を、一度の測定で迅速且つ高精度に定量分析できる自動分析装置の開発が望まれていたが、近年、一度の測定で4種類のハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)及び硫黄の5元素のイオンクロマトグラフが得られる有機ハロゲン・硫黄の自動分析装置が開発され利用されている。
【0003】
しかしながら、5元素のイオンクロマトグラフが得られたとしても、元素ごとの検量線の作成が必要であり、一つの元素の検量線を作成するのに多大な時間が必要なために、5元素の検量線を作成するのに要する時間が膨大となっている。そこで、本発明者等は、1分子に上記5元素を含む標準物質の合成の開発に取り組み、ハロゲン化アニリン化合物とハロゲン化ベンゼンスルホニル化合物を縮合させることにより、1分子に上記5元素を含む標準物質の合成に成功し、この標準物質を用いて廃棄物等の各種環境試料の定量分析を行なったところ、この標準物質が検量線を作成するのに有用であることが実証でき、特許文献1に記載の発明である「自動分析装置に用いる検量線作成用化合物」の完成に至った(特許文献1参照)。
【0004】
この検量線作成用化合物は、以下に記載の合成方法で製造するものであるが、その収率は43%と低率であった。上記合成方法は、ピリジン3mlに溶解した2−ヨウ化−4−臭化−アニリン1.00g(3.37mmol)に、ピリジン4mlに溶解した3−塩化−4−フッ化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)を氷冷下で攪拌しながら約30分にわたって滴下し、その後室温で3日間静置し、反応液を1mol/l塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し水で洗浄して、沈澱物をカラムクロマトグラフで分離精製後、再結晶を行って精製することで、検量線作成用化合物である白色結晶(融点133℃)が得られた。その得られた検量線作成用化合物はIR、NMR並びに元素分析によって前記構造式を有するN−(2’−ヨウ化−4’−臭化フェニル)−3−塩化−4−フッ化ベンゼンスルホンアミド(検量線作成用化合物)であることが開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、分子中にフッ素を5〜15%、塩素を5〜20%、臭素を10〜20%、硫黄を5〜15%含有している通常の医薬化合物を、大量に消費させることなく有機元素分析の標準試料として用いることができる標準試料の提供を課題として、その課題を解決するための手段として、ハロゲノベンゼンスルホンアミド構造を有する以下のハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体が開示されている(特許文献2参照)。
式中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子または臭素原子を示す。ただし、式中のフッ素原子の数は2であり、塩素原子の数は1であり、臭素原子の数は1である。
【0006】
ハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体の実施例1として、以下の構造の化合物を製造する方法が記載されている。
具体的には、氷浴冷却下、2、4−ジフルオロアニリン、ピリジン、およびN、N−ジメチルホルムアミドの混合物に4−クロロベンゼンスルホニルクロリドのN、N−ジメチルホルムアミド溶液を30分間かけて滴下して加えた後、4時間撹拌した。水を加えた反応混合物を酢酸エチルで抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣にヘキサンを加えて撹拌することにより析出した固体を濾取して、N−(2、4−ジフルオロフェニル)−4−クロロベンゼンスルホンアミドを得た。そして、該クロロベンゼンスルホンアミド、4−ブロモベンジルブロミド、炭酸カリウム、およびN,N−ジメチルホルムアミドの混合物を、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルを加えた後、濾過し、濾液を水で洗浄した。水層を酢酸エチルで抽出した後、併せた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して溶媒を留去した。得られた固体を酢酸エチルから再結晶することにより、目的のハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体の結晶を得た。そして、このハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体は、有機元素分析を実施する際に標準試料として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−254420号公報
【特許文献2】特関2008−100967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の検量線作成用化合物は、2−ヨウ化−4−臭化−アニリンに3−塩化−4−フッ化−ベンゼンスルホニルクロリドを、氷冷下で30分間かけて滴下して加える必要があり、室温の環境下で合成を行うことができないこと、上記沈澱物をカラムクロマトグラフで分離精製するために、大量の有機溶剤が必要なこと、また、上記検量線作成用化合物の収率が43%と低く生産性が悪いこと、更に、合成時間が3日間と長いことから、該検量線作成用化合物の工業生産を図るには困難な問題を有している。
特許文献2に記載の発明であるハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体は、その発明の課題及びその構造から、ヨウ素を除くフッ素、塩素、臭素及び硫黄の4元素を対称とした標準資料であり、そして、その製造方法は、氷浴冷却下で、N,N−ジメチルホルムアミド等の混合物に4−クロロベンゼンスルホニルクロリドのN、N−ジメチルホルムアミド溶液を30分間かけて滴下して加える必要があり、室温の環境下で合成を行うことができない製造方法である。特許文献2には、ハロゲノベンゼンスルホンアミド誘導体の収率についての記載はないが、特許文献2の製造方法は、氷浴冷却下で反応混合物を生成していることから、特許文献1と類似の製造方法で製造しているので、その収率も低いものと推測される。
【0009】
それ故に、本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、検量線を作成するフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の収率を向上させて、また、氷冷下での滴下ではなく室温の環境下で合成することで生産環境を向上させて生産性を高めることで、工業生産が容易な上記4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等が開発した特許文献1に記載の検量線作成用化合物は、以下に示す問題点を有している。その1番目の問題点は、上記化合物の収率が43%と低率であること、2番目の問題点は、合成開始において氷温にて滴下を行った後、室温で長時間反応させるといった、反応性のコントロールが必要であること、3番目の問題点は、反応における目的の標準物質の選択率が低いために多段階での精製と、大量の有機溶剤が必要なこと、4番目の問題点は、合成時間が3日間と長いことが挙げられる。上記問題点のなかで工業生産を妨げる最も重大なものは、上記化合物の収率が43%と低率であることで、その低率である理由を検討するために、上記製造方法で製造した際に、大量に生成される副生成物の構造を、IR、NMR並びに元素分析で調べたところ、その副生成物は以下に示す構造式のものであった。
【0011】
そこで原料であるアニリン化合物のアミノ基の反応性に着目して、原料候補のアニリン化合物として、上記検量線作成用化合物の原料である2−ヨウ化−4−臭化アニリンと他の4種類のアニリン化合物、合計5種類のアニリン化合物をNMRで分析して、上記アミノ基のNMRにおけるケミカルシフトの測定を行った。スルホンアミドの合成を室温の環境下で行うために、上記5種類のアニリン化合物から各アミノ基のNMRにおけるケミカルシフトの低い2種類を選定して、それとハロゲン化ベンゼンスルホニル化合物との縮合反応によって得られた、4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、有機ハロゲン・硫黄化合物中の微量なハロゲン及び硫黄の定量分析を、迅速に高精度で行う標準物質として、好適な資質を備えていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下の通りのものである。
請求項1に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、検量線を作成する有機元素分析の標準物質であって、前記標準物質が2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンと、ハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種の化合物との縮合反応によって得られる下記化1〜化4の何れか一つの構造式を有することを特徴とする。
(化1〜化4)
請求項2に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、前記4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質が分子内に4種類のハロゲンであるフッ素、塩素、臭素及びヨウ素と硫黄を含むことを特徴とする。
請求項3に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、前記
2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.7であり、前記3−塩化−4−ヨウ化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.8であることを特徴とする。
請求項4に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法は、検量線を作成する4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法であって、ピリジンに溶解した2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンに、ピリジンに溶解したハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種を室温で混合し、その混合により生成された反応液を酸性溶液中に注いで沈澱物を生成し、その沈澱物を再結晶化することにより製造されることを特徴とする。
請求項5に係る4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法前記2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.7であり、前記3−塩化−4−ヨウ化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.8であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の標準物質及びその製造方法は、ハロゲン化アニリン化合物として2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンを用いたことにより、その収率が60%以上の値であるので、標準物質の生産性が大幅に向上できる。
また、反応選択率がほぼ100%に近似の値であるので、副生成物の生成が抑制されることで、再結晶法を用いて容易に高純度化することができ、精製の簡略化が大幅に向上でき、且つ大量の有機溶剤を不要とすることができる。
そして、室温の環境下で合成することができ、また、その合成時間が1日に短縮化できるので、時間とコストの節約により生産環境を向上させて生産性を高めることで、大量生産に適している。
本願発明の標準物質及びその製造方法は、上記の各効果が総合されることにより、工業生産を容易に行うことができる。
更に、本願発明の標準物質は、4種類のハロゲン及び硫黄の検量線を一回の操作で作成することができので、元素分析の所要時間を著しく短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明の構造式の試料を分析したイオンクロマトグラフである。
【図2】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(F)の2次式のグラフである。
【図3】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(Cl)の2次式のグラフである。
【図4】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(Br)の2次式のグラフである。
【図5】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(I)の2次式のグラフである。
【図6】本願発明の構造式化1の化合物を用いて作成された検量線(S)の2次式のグラフである。
【図7】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(F)の2次式のグラフである。
【図8】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(Cl)の2次式のグラフである。
【図9】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(Br)の2次式のグラフである。
【図10】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(I)の2次式のグラフである。
【図11】本願発明の構造式化2の化合物を用いて作成された検量線(S)の2次式のグラフである。
【図12】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(F)の2次式のグラフである。
【図13】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(Cl)の2次式のグラフである。
【図14】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(Br)の2次式のグラフである。
【図15】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(I)の2次式のグラフである。
【図16】本願発明の構造式化3の化合物を用いて作成された検量線(S)の2次式のグラフである。
【図17】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(F)の2次式のグラフである。
【図18】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(Cl)の2次式のグラフである。
【図19】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(Br)の2次式のグラフである。
【図20】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(I)の2次式のグラフである。
【図21】本願発明の構造式化4の化合物を用いて作成された検量線(S)の2次式のグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上述した検量線作成用化合物の製造方法で生成された副生成物の構造式から、原料であるアニリン化合物のアミノ基の反応性が高いことが、上記検量線作成用化合物の収率を43%にする原因を生起していると推測して、原料候補のアニリン化合物として、上記検量線作成用化合物の原料である2−ヨウ化−4−臭化アニリンと、4種類の2−塩化−4−ヨウ化アニリン、2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン、3−塩化−4−ヨウ化アニリン及び2−ヨウ化−4−塩化アニリンの合計5種類のアニリン化合物をNMRで分析して、上記アミノ基のケミカルシフトの測定を行った。ケミカルシフトは以下に示す式により求められる。
【0016】
原料候補の上記アニリン化合物のケミカルシフト(ppm)は、表1に示す通りの値である。
【0017】
【表1】
なお、上記4種類のアニリン化合物を選定したのは、数少ない市販されている原料のアニリン化合物をNMRにより分析し、その原料候補化合物のアミノ基のケミカルシフトの値から、ケミカルシフトの値が小さい4種類のアニリン化合物を選び、他の検量線作成用化合物の原料である2−ヨウ化−4−臭化アニリンを加えた合計5種類のアニリン化合物をNMRにより再度精緻に分析を行った。
【0018】
特許文献1に記載の検量線作成用化合物(2−ヨウ化−4−臭化アニリン)と2−ヨウ化−4−塩化アニリンは、ケミカルシフトの値が4.1であって、他のアニリン化合物と比べて高いことが、そして、2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン及び3−塩化−4−ヨウ化アニリンは、それよりもケミカルシフトが低いことが分かった。そこで、スルホンアミドの合成を室温の環境下で行うため、その反応性の低いアニリン化合物である、2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンと、ハロゲン化ベンゼンスルホニル化合物の群から選ばれた一種の化合物との縮合反応、例えば以下に示す縮合反応によって、副生成物が殆ど生成されることなく4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質が得られた。
【0019】
4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質は、以下に示す化1〜化4の構造式のものが得られた。
(化1〜化4)
【0020】
表2は上記化1〜化4で示す標準物質が生成される際の反応選択率及び収率を計算して求めた結果である。なお、反応選択率は反応開始24時間後のHPLCの測定により算出した。
【0021】
【表2】
原料のうち化学反応に消費された割合を転化率と表現しており、この転化率のうち、目的生成物に実際に変わった割合を反応選択率と表現するが、例えば原料から目的生成物が1対1対応で出来るような化学反応と仮定した場合に、反応選択率は目的生成物当量/原料消費当量で計算でき、目的生成物にならなかった分は、副生成物となるわけである。
【0022】
表2が示す、化1、化3及び化4の標準物質の反応選択率は、ほぼ100%に近似の値を示し、化2の標準物質のそれは89%と高い値を示しているので、ハロゲン化アニリン化合物として2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンを用いることで、副生成物が生成されないことが判った。即ち、ハロゲン化アニリン化合物からケミカルシフトの低い2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンを選択して、ハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種の化合物と反応させたことが、高い反応選択率を達成できた要因であることは明らかである。このように、反応選択率がほぼ100%に近似の値であることは、上述した副生成物の生成を抑制していることを示している。そのことにより、再結晶法を用いて容易に高純度化することができ、精製の簡略化を図ることが可能となった。また、上記高い反応選択率によって化1〜化4の標準物質の収率は、60%以上の高い値であることを表2の収率が示している。特許文献1に記載の検量線作成用化合物の収率が43%であるのに対して、上記化1〜化4の標準物質の収率は60%以上の値であるので、標準物質の生産性を大幅に向上できることが判った。
【0023】
本発明の実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
N−(2’−フッ化−3’−塩化−4’−臭化フェニル)−4−ヨウ化ベンゼンスルホンアミドの合成:
ピリジン3mlに溶解した2−フッ化−3−塩化−4−臭化−アニリン1.00g(3.37mmol)に、ピリジン4mlに溶解した4−ヨウ化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)を室温で攪拌しながら約30分にわたって混合し、反応液を1mol/l塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し水で洗浄して、沈澱物を再結晶して精製することで、標準物質である白色結晶(融点186〜187℃)が得られた。その得られた標準物質はIR及びNMRによって前記構造式を有するN−(2’−フッ化−3’−塩化−4’−臭化フェニル)−4−ヨウ化ベンゼンスルホンアミドであることが示された。上記合成物質を生成する時間は1日であり、反応時間が短縮できた。前記構造式はNMRスペクトルの分裂パターンによって特定した。
IR: 3235cm−1 N−H、1170cm−1 S=O
NMR: 6.81(1H、N−H)、7.38〜7.50(4H、aromatic)、7.84〜7.86(2H、aromatic)
【0024】
(実施例2)
N−(3’−塩化−4’−ヨウ化フェニル)−2−フッ化−4−臭化ベンゼンスルホンアミドの合成:
ピリジン3mlに溶解した3−塩化−4−ヨウ化−アニリン1.00g(3.37mmol)に、ピリジン4mLに溶解した2−フッ化−4−臭化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)を室温で攪拌しながら約30分にわたって混合し、反応液を1mol/L塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し水で洗浄して、沈澱物を再結晶化して精製することで、標準物質である白色結晶(融点171℃)が得られた。その得られた標準物質はIR及びNMRによって前記構造式を有するN−(3’−塩化−4’−ヨウ化フェニル)−2−フッ化−4−臭化ベンゼンスルホンアミドであることが示された。上記合成物質を生成する時間は1日であり、反応時間が短縮できた。
IR: 3255cm−1 N−H、 1170cm−1 S=O
NMR: 7.15(1H、N−H)、 6.75(1H、aromatic)、7.26(1H、aromatic)、7.41(2H、aromatic)、7.68〜7.75(2H、aromatic)
【0025】
(実施例3)
N−(3’−塩化−4’−ヨウ化アニリン)−2−臭化−4−フッ化ベンゼンスルホンアミドの合成:
ピリジン3mlに溶解した2−ヨウ化−4−臭化−アニリン1.00g(3.37mmol)に、ピリジン4mlに溶解した3−塩化−4−フッ化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)を室温で攪拌しながら約30分にわたって混合し、反応液を1mol/l塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し水で洗浄して、沈澱物を再結晶して精製することで、標準物質である白色結晶(融点202℃)が得られた。その得られた標準物質はIR及びNMRによって前記構造式を有するN−(3’−塩化−4’−ヨウ化アニリン)−2−臭化−4−フッ化ベンゼンスルホンアミドであることが示された。上記合成物質を生成する時間は1日であり、反応時間が短縮できた。
IR: 3250cm−1 N−H、 1165cm−1 S=O
NMR: 7.26 (1H、N−H)、 6.77(1H、aromatic)、7.11〜7.16(1H、aromatic)、7.26(1H、aromatic)、7.46(1H、aromatic)、7.67(1H、aromatic)、8.10(1H、aromatic)
【0026】
(実施例4)
N−(3’−塩化−4’−ヨウ化フェニル)−3−フッ化−4−臭化ベンゼンスルホンアミドの合成:
3’− 塩化−4’−ヨウ化−アニリン1.00g(3.37mmol)をピリジン3mlに溶解し、これに対して3−フッ化−4−臭化−ベンゼンスルホニルクロリド1.00g(4.40mmol)をピリジン4mlに溶解した溶液を氷冷下で攪拌しながら約30分にわたって滴下した。滴下後室温で3日間静置し、反応液を1mol/l塩酸溶液中に注ぎ、沈澱物を濾過し、水で洗浄した。沈澱物を再結晶して精製した。白色結晶(融点164℃)が収率60%で得られた。得られた標準物質は下記IR及びNMRによって前記構造式を有するN−(3’−塩化−4’−ヨウ化フェニル)−3−フッ化−4−臭化ベンゼンスルホンアミドであることが示された。上記合成物質を生成する時間は1日であり、反応時間が短縮できた。
IR: 3265cm−1 N−H、 1160cm−1 S=O
NMR: 6.95(1H、N−H)、 6.74(1H、aromatic)、7.23(1H、aromatic)、7.45(1H、aromatic)、7.55(1H、aromatic)、7.68〜7.74(2H、aromatic)
【0027】
なお、臭化ベンゼンスルホニルクロリドとして、上記実施例1の4−ヨウ化−ベンゼンスルホニルクロリド、上記実施例2の2−フッ化−4−臭化−ベンゼンスルホニルクロリド、上記実施例3の3−塩化−4−フッ化−ベンゼンスルホニルクロリド、上記実施例4の3−フッ化−4−臭化−ベンゼンスルホニルクロリドを選定したのは、前記2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンに対応した、数少ない市販されている原料の臭化ベンゼンスルホニルクロリドを選定した結果である。
【0028】
化1〜化4のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質を用いる検量線の作成:
有機ハロゲン・硫黄分析装置((株)ヤナコ機器開発研究所製、燃焼炉(HNS-15)、吸収ユニット(HSU-20))を用いて上記化1〜化4のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質によってF、Cl、Br、I及びSについての検量線を同時に作成した。
図1は本願発明の構造式の試料を分析したイオンクロマトグラフである。横軸は保持時間(分)で、縦軸は強度を表している。このイオンクロマトグラフから各元素のピーク面積が得られる。
【0029】
例えば、化1のN−(2’−フッ化−3’−塩化−4’−臭化フェニル)−4−ヨウ化ベンゼンスルホンアミドによってF、CL、BR、I及びSについての検量線を作成した。図2〜図6は、化1の試料の各元素の検量線の2次式のグラフを表しており、横軸がピーク面積(x/100)を、縦軸が各元素の試料量(μg)を表している。即ち、化1のピーク面積とF、Cl、Br、I及びSの試料量の相関を示す2次式のグラフである。
なお、横軸のピーク面積をx/100としたのは、桁数を二桁減らすことでピーク面積の単位を見やすくするためである。
図2はフッ素(F)、図3は塩素(Cl)、図4は臭素(Br)、図5はヨウ素(I)、図6は硫黄(S)に関する相関図の2次式のグラフである。
【0030】
以下、同様に、図7〜図11は、化2のピーク面積(x/100)と上記各試料量(μg)の2次式の相関図のグラフであり、図面の番号順に上記順番の元素に関する2次式の相関図のグラフを示している。図12〜図16は化3の2次式の相関図のグラフであり、図17〜図21は化4の2次式の相関図のグラフである。
例えば、化1試料のF検量線データに関して、表3に示すように、その試料量(μg)として約250、500、1000、2000、3000の量を用いている。その試料量中に含まれるフッ素元素の量(μg)を測定して得られたF量とピーク面積の各値をグラフ上にプロットして描いたグラフが上記2次式の相関図のグラフである。図2〜図21のグラフは、上記試料量(μg)を用いて作成されたグラフである。
【0031】
【表3】
【0032】
なお、化1のN−(2’−フッ化−3’−塩化−4’−臭化フェニル)−4−ヨウ化ベンゼンスルホンアミドにより作成した各元素についての検量線は、図2〜図6に示すように独立係数R2において相関係数がほぼ1に近似の値を示し、検量線作成用化合物として用いることができることが判明した。すなわちR2はF、Cl、Br、I及びSについて夫々0.999、0.998、0.999、1.000及び0.999であった。なお、独立係数R2=(相関係数)2であるので、相関係数も独立係数と近似の値となっている。
【0033】
同様に、上記化2〜化4の各物質は、F、Cl、Br、I及びSの各元素に対して、相関係数が1に近似の値を示しているから、検量線作成用の標準物質として有益なものであることが判った。それ故に、上記各物質は、上記5種類の元素の検量線を1回で分析することができる標準物質である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検量線を作成する4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質であって、
前記標準物質が2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンと、ハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種の化合物との縮合反応によって得られる下記化1〜化4の何れか一つの構造式を有することを特徴とする4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質。
(化1〜化4)
【請求項2】
前記4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質が分子内に4種類のハロゲンであるフッ素、塩素、臭素及びヨウ素と硫黄を含むことを特徴とする請求項1に記載の4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質。
【請求項3】
前記2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.7であり、前記3−塩化−4−ヨウ化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.8であることを特徴とする請求項1又は2に記載の4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質。
【請求項4】
検量線を作成する4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法であって、
ピリジンに溶解した2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンに、ピリジンに溶解したハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種を室温で混合し、その混合により生成された反応液を酸性溶液中に注いで沈澱物を生成し、その沈澱物を再結晶することにより製造されることを特徴とする4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法。
【請求項5】
前記2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.7であり、前記3−塩化−4−ヨウ化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.8であることを特徴とする請求項4に記載の4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法。
【請求項1】
検量線を作成する4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質であって、
前記標準物質が2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンと、ハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種の化合物との縮合反応によって得られる下記化1〜化4の何れか一つの構造式を有することを特徴とする4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質。
(化1〜化4)
【請求項2】
前記4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質が分子内に4種類のハロゲンであるフッ素、塩素、臭素及びヨウ素と硫黄を含むことを特徴とする請求項1に記載の4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質。
【請求項3】
前記2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.7であり、前記3−塩化−4−ヨウ化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.8であることを特徴とする請求項1又は2に記載の4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質。
【請求項4】
検量線を作成する4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法であって、
ピリジンに溶解した2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリン又は3−塩化−4−ヨウ化アニリンに、ピリジンに溶解したハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリド化合物の群から選ばれた一種を室温で混合し、その混合により生成された反応液を酸性溶液中に注いで沈澱物を生成し、その沈澱物を再結晶することにより製造されることを特徴とする4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法。
【請求項5】
前記2−フッ化−3−塩化−4−臭化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.7であり、前記3−塩化−4−ヨウ化アニリンのアミノ基のNMRにおけるケミカルシフトが3.8であることを特徴とする請求項4に記載の4種のハロゲン及び硫黄分析用の標準物質の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−12361(P2012−12361A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152637(P2010−152637)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(506100967)株式会社 ナックテクノサービス (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(506100967)株式会社 ナックテクノサービス (4)
【Fターム(参考)】
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