説明

4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法

【課題】従来技術の問題を改善し、高純度の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、高収率で短時間に製造する方法を提供する。
【解決手段】スルホン化剤またはフェノールスルホン酸とフェノールとを、アルキル置換芳香族炭化水素を含む溶媒中で脱水反応させて4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造するに当り、反応容器が精留装置を備えることを特徴とする4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下、4,4’体ともいう)は、繊維、樹脂等の化学工業の分野において需要が増加し、各種分野において、より高純度の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが要求されるようになっている。
【0003】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法としては、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを、上記原料物質および生成4,4’体を溶解するジクロロベンゼン等の溶剤の存在下に脱水反応させる方法が知られている。しかしながら、該方法においては、目的物である4,4’体が、副生物である異性体の2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下、2,4’体ともいう)と溶解状態で異性化平衡を有するために、得られる粗製品中には20〜30重量%もの多量の2,4’体が不純物として含有され、4,4’体の収率も満足のいくものではなかった。
【0004】
そこで、4,4’体を高純度且つ高収率で収得する方法として、フェノールと硫酸とを溶剤の存在下に脱水反応させつつ、溶剤を徐々に除去して副生2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに異性化することにより、高純度の4,4’体を製造する方法が提案された(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1の方法は、溶液中の異性化平衡の問題を解消して高純度4,4’体を得る方法として画期的なものであったが、最近の増大する4,4’体の需要に対応して装置を大型化して大量生産しようとすると、改善すべき種々の問題に遭遇する。例えば、該方法では、溶剤を完全に回収した時点で流動性のない粘稠な固体を扱わねばならないために、機械的強度に優れた特殊な撹拌装置が必要となり、装置の大型化が困難となる等の問題がある。
【0006】
この問題を改善するために、反応溶媒として特にメシチレンを用い、生成する4,4’体を懸濁させつつ反応せしめることを特徴とする改良方法が提案されるに至った(特許文献2参照)。本反応においては、副生する水を除去することが反応進行に不可欠であるが、この特許文献2の方法により、該脱水反応を溶媒の沸点範囲で行い、水層は反応系外に容易に分離除去され、4,4’体の溶解度が比較的小さいために、反応系中に析出することにより高純度の4,4’−体を得ることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭55−8972号公報
【特許文献2】特開平3−101656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記従来技術の問題を改善し、高純度の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、高収率で短時間に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記に示すとおりの4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法を提供するものである。
項1. スルホン化剤またはフェノールスルホン酸とフェノールとを、アルキル置換芳香族炭化水素を含む溶媒中で脱水反応させて4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造するに当り、反応容器が精留装置を備えることを特徴とする4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
項2. 脱水反応を140〜165℃の温度範囲で行うことを特徴とする項1に記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
項3. アルキル置換芳香族炭化水素がメシチレンであることを特徴とする項1または2に記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
項4. 精留装置の塔頂温度を90〜120℃の範囲で制御することを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
項5. 精留装置の塔頂温度を92〜100℃の範囲で制御することを特徴とする項4に記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
項6. 精留装置の上方に設けた前段コンデンサーで凝縮させた高沸点成分を精留装置に戻すことを特徴とする項1〜5のいずれかに記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、スルホン化剤またはフェノールスルホン酸とフェノールとを、アルキル置換芳香族炭化水素を含む溶媒中で脱水反応させて4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造するに当り、反応容器が精留装置を備えることを特徴とする。
【0012】
特に本発明は、脱水反応で水を留出させながら、留出液を、フェノールを含むことがある水層(下層)とフェノールを含むことがある溶媒層(上層)との2層に分離し、該溶媒層(上層)を反応系内に戻し、該水層(下層)を反応系外に除去することによって脱水反応を行うことを特徴とする。
【0013】
水層に含まれる溶存フェノール濃度は、低い方が環境対策上も好ましく、そしてフェノールを含む溶媒層を反応系に戻すことが経済的である。
【0014】
本発明の方法によれば、目的とする4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、高純度、高収率で、短時間に製造することができる。本発明においては、反応容器に精留装置を備えることにより、生成水の系外への分離除去およびフェノールを含む溶媒層の反応系への戻し(リサイクル使用)を効率的に行うことができ、目的とする4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを短時間で製造することができる。
【0015】
また、本発明によれば、前記のとおり、留出液が2層に分離するために、上層(含フェノール溶媒層)を連続的に反応系に戻し、さらに、下層(含フェノール水層)も、必要により連続的に反応系外に分離除去することができるので、操作上、極めて効率的であるという特徴も具備する。
【0016】
本発明において用いることができる精留装置の概要は、図1に例示したとおりである。精留装置の具体例としては、ウィットマー型精留管、ヴィグリュー型精留管、スニーダー型精留管、ヘンペル型精留管等が挙げられる。また、工業的には、棚段式あるいは規則または不規則充填物型精留塔を用いることができる。
【0017】
本発明においては、例えば、図1に示す前段コンデンサーE1にてフェノールを含む高沸点成分を凝縮させて精留装置Dに戻し、水を含む低沸点成分は蒸気として通過させて後段コンデンサーE2にて凝縮させて上層の溶媒層Gと下層の水層Hとに分離させる。上層の溶媒層Gのみを反応機Aに戻すことにより、下層の水層Hはフェノール分をほとんど含まないので、水のみを効率良く反応系外に除去できる。
【0018】
本発明の好ましい態様は、脱水反応を140〜165℃の温度範囲で行い、留出液の水層を反応系外に排出し、フェノールを含む溶媒層を反応系内に戻すことである。反応溶媒がメシチレンである場合には、精留装置の塔頂温度を、好ましくは90〜120℃の範囲、より好ましくは92〜100℃の範囲で制御する適当な条件を選ぶ。そのような条件を選ぶことによって、留出されるフェノールを最小限度に抑制して留出した水分が反応系内に戻る量を減らし、それにより、目的とする4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを高純度・高収率で短時間に製造することができるとともに、反応系外に排出される水層に含まれるフェノール量を低減することができる。
【0019】
反応溶媒としては、実質的にアルキル置換芳香族炭化水素のみからなることが好ましい。具体的には、アルキル置換芳香族炭化水素が、90重量%以上であるのが好ましく、95重量%以上であるのがより好ましく、99重量%以上であるのが特に好ましい。
【0020】
本発明の反応溶媒として用いられるアルキル置換芳香族炭化水素としては、具体的には、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。中でも、メシチレンが好ましく用いられる。
【0021】
本発明におけるスルホン化剤としては、従来公知のものを広く使用でき、例えば、濃硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸等を挙げることができる。
【0022】
本発明の方法において、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸との使用割合は、特に限定はないが、後者に対して前者が少な過ぎる場合には、収率が低下し、後者に対して前者が過剰の場合には、フェノールに対する4,4’体の溶解性のために2,4’体の含有量が増加し、好ましくない。従って、両者を化学量論的割合またはその近傍で使用するのが最も好ましい。例えば、スルホン化剤を使用する場合には、スルホン化剤1モルに対して、フェノールを1.9〜2.1モル程度使用するのが好ましい。また、フェノールスルホン酸を使用する場合には、フェノールスルホン酸1モルに対して、フェノールを0.9〜1.1モル程度使用するのが好ましい。
【0023】
本発明においては、メシチレンを反応溶媒として用いて上記原料を脱水反応せしめ、生成する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを懸濁させつつ該反応を進行せしめることが好ましい。本発明に従い、例えば、メシチレンを反応溶媒として使用すると、通常の撹拌を行うだけで生成する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、微細粒子として容易に且つ安定に懸濁せしめつつ反応を進行せしめることができ、しかも溶剤を用いる従来法に比して、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンをより高純度且つ高収率で収得できる。
【0024】
本発明に好ましく用いられるメシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)は、165℃の沸点を有し、本発明における反応条件下では、原料物質は溶解するが、生成する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは実質的に溶解しない。メシチレンの使用量は、反応系を撹拌するのに充分な流動性を有する程度の液量以上であれば、特に限定されない。つまり、反応系において生成する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの懸濁状態を反応終了時点まで維持できる液量以上であれば、過剰量でもよく、通常、フェノールの使用量に対し、重量で5倍程度までの使用が、経済的に有利である。
【0025】
上記脱水反応は、従来の方法に従って容易に行え、通常、約120℃以上、好ましくは140〜165℃で、撹拌下に生成水をメシチレンと共に共沸蒸留し、水を分離除去し、メシチレンを還流させながら行われる。この時、加圧または減圧して行うことも可能である。
【0026】
本発明によれば、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸との脱水反応の際に、生成する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが実質的にメシチレン中に溶解せず懸濁状態で反応系に存在することにより、2,4’体の副生を著しく抑制し、選択的に4,4’体を生成させることができ、2,4’体:4,4’体の生成比は、1:10重量倍以上となる。
【0027】
本発明者らの研究によれば、上記脱水反応の進行が停止した後、さらに、生成物のメシチレン中懸濁状態で、反応系を異性化反応温度以上に保持することにより、副生2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンへの異性化反応を進行せしめることができ、一層高純度の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが高収率で得られることが認められた。このようにすれば、2,4’体:4,4’体の生成比は、1:20重量倍以上となる。また本発明によれば、異性化反応を、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの懸濁状態を維持しつつ行うことができ、しかも、この懸濁状態は通常の撹拌装置を用いて容易に且つ安定に維持できるので、従来法に比して遥かに操作が容易になり、装置の大型化を図り得る。上記異性化反応の温度は、120℃以上とするのが好ましく、120℃未満の場合には、異性化速度が遅くなって好ましくない。より好ましくは、撹拌下で140〜165℃に保持し、必要に応じてメシチレンを還流しつつ異性化反応を行う。本発明においては、上記異性化反応を4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの懸濁状態で行うことを不可欠とし、反応系から揮散するメシチレンは反応系に還流させ、上記懸濁状態を維持しつつ反応を行うのが好ましい。また、上記異性化反応を、加圧下に、より高温下で行うことも構わない。異性化反応に要する時間は、反応系の液量、反応温度等の製造条件により適宜選択されるが、通常2〜10時間程度で異性化反応は停止する。
【0028】
本発明では、上記異性化反応を行うに際して、メシチレンの一部を未反応余剰フェノールと共に系外に留去させ、残存メシチレン中での4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの懸濁状態を維持しながら、反応系を異性化温度以上、好ましくは撹拌下で120〜165℃に保持して、副生2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンへの異性化反応を進行せしめ得る。メシチレンは、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの懸濁状態を維持し得る範囲内で、その一部を未反応フェノールと共に留去する。特に、反応系が流動性を保ちつつ充分撹拌可能な限界まで、メシチレンを留去することが好ましい。この場合にも、上記異性化反応を加圧下に進めても構わない。このようにして得られる4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、さらに高純度のものとなり、2,4’体:4,4’体の生成比は、1:30重量倍以上で、収率も向上する。
【0029】
また、本発明の製造方法においては、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを、前述したように化学量論量に近い割合で用いるために、系内には未反応余剰フェノールは微量しか存在せず、この微量フェノールの一部は、還流の際にトラップに滞留されて反応系外に除かれる水層中にあり、反応系内に残存する未反応余剰フェノール量は、実際上無視できる程度である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、従来技術の問題を改善し、高純度の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、高収率で短時間に製造することができる。
【0031】
反応溶媒としてアルキル置換芳香族炭化水素を含む溶媒を用いることにより、反応に伴う留出液は、上層(含フェノール溶媒層)および下層(含フェノール水層)の2層に分離することができる。また、本発明によれば、含フェノール水層中のフェノール含有量を極めて低く抑えることができるので、排水負荷の問題が解消され、環境対策上も好ましく、これによって、フェノールの原単位削減にも寄与するなど、種々の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の脱水反応の反応容器に精留装置を備えた状態の一例を示す概略図である。
【図2】脱水反応の反応時間と反応率(水量)の関係を示す図である。
【図3】脱水反応の反応時間と反応率(水量)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例により、本発明の製造方法を、さらに具体的、詳細に説明する。
【0034】
実施例1
図1に示す温度計B、撹拌機Cおよび精留装置(精留塔)Dを備えた反応機A(1Lフラスコ)に、メシチレン260gおよびフェノール296g(3.14モル)を仕込んだ後、98%硫酸156g(1.56モル)を滴下した。オイルバスにて加熱して内容物を昇温したところ、内温144℃で、塔頂に到達したガス(高沸点成分)が前段コンデンサーE1で凝縮(留出)し始め、この凝縮液は、精留装置Dに戻された。水を含む低沸点成分は、蒸気のままで前段コンデンサーE1を通過し、後段コンデンサーE2で凝縮した。この凝縮液は、デカンターF内で上層(溶媒層)Gおよび下層(水層)Hの2層に分離され、上層Gのみを連続的に反応系内に戻しつつ、反応を継続した。
【0035】
凝縮が始まってから7時間後に、下層Hである水層が理論量の59mlに到達したために反応を終了した。水層H中のフェノールは0.9%であった。反応時間と反応率(水量)の関係を図2に示した。
【0036】
反応物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した結果、4,4’体/2,4’体/トリ体(トリヒドロキシトリフェニルジスルホン)=94.2/3.8/2.0(重量比)となり、収率は97%であった。
【0037】
比較例1
1Lフラスコに精留装置を備えない以外は、実施例1と同様にして反応を実施した。凝縮(留出)が始まってから13時間後に、下層である水層が理論量の59mlに到達したために反応を終了した。水層中のフェノールは3.5%であった。反応時間と反応率(水量)の関係を図2に示した。
【0038】
反応物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した結果、4,4’体/2,4’体/トリ体=93.4/4.5/2.1(重量比)となり、収率は95%であった。
【0039】
実施例2
図1に示す温度計B、撹拌機Cおよび精留装置(精留塔)Dを備えた反応機A(1000L反応機)に、メシチレン260kgおよびフェノール296kg(3.14kモル)を仕込んだ後、98%硫酸156kg(1.56kモル)を滴下した。熱媒オイルにて加熱して内容物を昇温したところ、内温145℃で、塔頂に到達したガス(高沸点成分)が前段コンデンサーE1で凝縮(留出)し始め、この凝縮液は、精留装置Dに戻された。水を含む低沸点成分は、蒸気のままで前段コンデンサーE1を通過し、後段コンデンサーE2で凝縮した。この凝縮液は、デカンターF内で上層(溶媒層)Gおよび下層(水層)Hの2層に分離され、上層Gのみを連続的に反応系内に戻しつつ、反応を継続した。反応中は、精留装置Dの塔頂温度を95〜100℃に制御した。
【0040】
凝縮が始まってから12時間後に、下層Hである水層が理論量の59Lに到達したために反応を終了した。水層H中のフェノールは1.4%であった。反応時間と反応率(水量)の関係を図3に示した。
【0041】
反応物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した結果、4,4’体/2,4’体/トリ体=92.0/6.0/2.0(重量比)となり、収率は96%であった。
【0042】
比較例2
1000L反応機に精留装置を備えない以外は、実施例2と同様にして反応を実施した。凝縮(留出)が始まってから20時間後に、下層である水層が理論量の59Lに到達したために反応を終了した。水層中のフェノールは3.5%であった。反応時間と反応率(水量)の関係を図3に示した。
【0043】
反応物の組成を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した結果、4,4’体/2,4’体/トリ体=93.0/5.0/2.0(重量比)となり、収率は96%であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、繊維、樹脂等の化学工業の分野において需要が多い高純度の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、高収率で短時間に製造することができる。
【符号の説明】
【0045】
A 反応機(反応容器)
B 温度計
C 撹拌機
D 精留装置(精留塔)
E1 前段コンデンサー
E2 後段コンデンサー
F デカンター
G 上層(溶媒層)
H 下層(水層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン化剤またはフェノールスルホン酸とフェノールとを、アルキル置換芳香族炭化水素を含む溶媒中で脱水反応させて4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造するに当り、反応容器が精留装置を備えることを特徴とする4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
【請求項2】
脱水反応を140〜165℃の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1に記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
【請求項3】
アルキル置換芳香族炭化水素がメシチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
【請求項4】
精留装置の塔頂温度を90〜120℃の範囲で制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
【請求項5】
精留装置の塔頂温度を92〜100℃の範囲で制御することを特徴とする請求項4に記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
【請求項6】
精留装置の上方に設けた前段コンデンサーで凝縮させた高沸点成分を精留装置に戻すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−285383(P2010−285383A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141274(P2009−141274)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(391010895)小西化学工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】