説明

4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸、4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸および4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の新規結晶形

【課題】強力な経口活性を有し、かつその効果が長時間持続するcysLT1/cysLT2受容体拮抗作用を有する化合物の開発が求められている。
【解決手段】本発明で示される化合物IのC型結晶、化合物IIのB型結晶および化合物IIIのC型結晶は、強力にcysLT1/cysLT2受容体を拮抗し、経口投与においてもその効果が長時間持続するので、例えば、呼吸器疾患の予防および/または治療のための経口剤として有用である。また、本発明で示される化合物IのC型結晶、化合物IIのB型結晶および化合物IIIのC型結晶は、熱力学的に安定であることから製造上で安定した供給が可能であり、また光安定性および湿度安定性に優れていることにより保存安定性にも優れるため、医薬品の原薬として大変有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(以下、化合物Iと略記する場合がある。)、4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(以下、化合物IIと略記する場合がある。)および4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(以下、化合物IIIと略記する場合がある。)の新規な結晶形に関する。
【背景技術】
【0002】
気管支喘息は気道の収縮や炎症により気道が狭窄し、発作性の咳、喘鳴および呼吸困難を示す病態である。その治療剤としては強力な抗炎症作用を有する吸入ステロイド、気管支拡張薬であるβ刺激薬やテオフィリン、そして化学伝達物質の作用を抑制する薬剤等が用いられている。
【0003】
気管支喘息に関与する肥満細胞や炎症細胞から遊離される化学伝達物質としては、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどが知られている。ロイコトリエン(LT)のうち、LTC4、LTD4およびLTE4に代表されるシステイニルロイコトリエン(以下、cysLTsという。)は、ヒスタミンと比較して約1000倍強い気道収縮作用を有する。さらに、cysLTsは、炎症細胞浸潤を主体とした気道炎症の誘発、気道過敏性の亢進、および気道における粘液分泌を促進し、気管支喘息の基本病態に深く関与している。
【0004】
cysLTsはアラキドン酸の5−リポキシゲナーゼ代謝産物である生体内の生理活性物質である。cysLTsには少なくとも2種類の受容体が存在し、これまでにcysLT1受容体とcysLT2受容体がクローニングされている(Nature,399,789−793,1999、J.Biol.Chem.,275,30531−30536,2000)。cysLT1受容体は主に気道平滑筋に発現しており、気管支喘息の発症に深く関わっている(Am.J.Respir.Crit.CareMed.,163,226−233,2001)。一方、cysLT2受容体はcysLT1受容体と同様にLTC4、LTD4およびLTE4をリガンドとし、気管支平滑筋に発現していることが報告されている(J.Biol.Chem.,275,30531−30536,2000、Am.J.Respir.Crit.CareMed.,164,2098−2101,2001)。
【0005】
プランルカスト水和物、モンテルカストナトリウムおよびザフィルルカストは、現在上市されているロイコトリエン受容体拮抗剤であり、経口気管支喘息治療剤および/または経口アレルギー性鼻炎治療剤等として用いられている。
【化1】

【0006】
しかしながら、これらのロイコトリエン受容体拮抗薬は重症よりも軽症および中等症の気管支喘息により奏効すること、また軽症および中等症の中でも薬剤の有効性を十分に示さない非奏効例が存在することが知られており、これらを上回る活性を有する薬剤が望まれていた。
【0007】
目的を達成するための手段の一つは、薬剤のロイコトリエン受容体拮抗活性を高めることである。現在上市される3化合物は何れもcysLT1拮抗剤であり、拮抗活性を高める方法としては、cysLT1拮抗作用をさらに高める方法と、cysLT2拮抗作用を併せ持たせる方法が考えられる。
【0008】
ところで、喘息治療剤は、習慣的に服用する必要があるので、服薬に便利な経口剤が望まれる。また、経口剤にあっても、服薬回数が少ない薬剤が、利便性の高いものとして好まれる。すなわち、薬効の持続が長い経口喘息治療剤が望まれている。経口剤の開発において、薬効の持続性を向上させることは極めて重要な課題である。
【0009】
しかしながら、特に経口剤においては、たとえその化合物の拮抗活性が強力であったとしても、化合物自体が不安定であったり、標的臓器への移行がよくなかったり、代謝・排泄が早かったりすることがあるので、強力な効果を長時間持続する化合物を得るということは、簡単に達成できるものではない。
【0010】
特許文献1には、一般式(A)
【化2】

(式中、R1AおよびR2Aは、それぞれ独立して、保護されていてもよい酸性基を表わし、DAおよびEAは、それぞれ独立して、結合手又は主鎖の原子数1〜8のスペーサーを表わし、R3Aは置換基を表わし、環AAはさらに置換基を有していてもよい環状基を表わし、環BAはさらに置換基を有していてもよい環状基を表わし、YAおよびZAは、それぞれ独立して、炭素原子又は窒素原子を表わし、
【化3】

は、一重結合又は二重結合を表わす(ただし、YAおよび/又はZAが窒素原子を表わすとき、該結合は一重結合を表わす。))で示される化合物がcysLT2受容体拮抗作用を有することが記載されている。しかしながら、該特許文献には、様々な縮環化合物が記載されているが、具体的にどの環が薬効の持続性に寄与するのかについては、記載も示唆もない。
【0011】
特許文献2には、一般式(B)
【化4】

(式中、R11BおよびR12Bはそれぞれ独立して置換基を表わし、R51B、R52BおよびR53Bから選択される2個の基はそれぞれ独立して、保護されていてもよい酸性基を有する基を表わし、R51B、R52BおよびR53Bのうち残り1個の基は水素原子または置換基を表わし、R3B
【化5】

(基中、VBおよびWBはそれぞれ独立して、結合手または主鎖の原子数1〜8のスペーサーを表わし、環ABおよび環BBはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状基を表わす。)等を表わし、mBは0または1〜4の整数を表わし、nBは0または1〜2の整数を表わし、pBは0または1を表わし、
【化6】

は、一重結合または二重結合を表わす。ただし、mBとpBとの和は4以下の整数である。基の説明は、必要な部分を抜粋した。)で示される化合物が、強力なロイコトリエン受容体拮抗作用を有するとともに、優れた経口活性を有することが記載されている。しかしながら、該特許文献には、種々の置換基の種類については列挙されているものの、その置換基の種類および/または置換位置による効果については、記載も示唆もない。特に、強力な経口活性を維持しつつ、薬効の持続性を向上させるための手法については、一切触れられていない。また、特許文献2中、VBが三重結合を表わす実施例化合物は、実施例101に記載される4−(1−(カルボキシメチル)−7−{[2−ヒドロキシ−4−(4−フェノキシブトキシ)フェニル]エチニル}−1H−インドール−3−イル)ブタン酸のみであった。
【0012】
また、特開2010−168359(以下、特許文献3と略記する場合がある。)には、化合物I、化合物IIおよび化合物IIIが、それぞれ実施例14(2)、9および14(3)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2005/021518号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/090817号パンフレット
【特許文献3】特開2010−168359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
強力な経口活性を有し、かつその効果が長時間持続するcysLT1/cysLT2受容体拮抗剤が望まれている。
【0015】
また、結晶性化合物には、結晶多形が存在する可能性があることが知られている。結晶多形が存在する化合物は、結晶形によって、溶解度、溶解速度、または熱、光、湿度等に対する安定性等が異なることから、医薬品の製造において、その適応疾患や剤形に最も適した原薬の結晶形を選択することは、非常に重要な課題である。
【0016】
昨今、市販品のあるロットにおいて、新たな結晶多形の存在が確認され、その所為で製造中止にまで至った例がある。そのため、開発当初から、それ以外の結晶多形に転移する可能性が極めて低い最安定晶を探索し、その安定供給を目指す必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記の課題に鑑み、化合物I、化合物IIまたは化合物IIIの結晶多形について鋭意検討した。
【0018】
例えば、化合物Iについて、溶媒の組み合わせや温度等を変化させ、種々の結晶化条件を検討したところ、得られた結晶の多くは上記特許文献3に記載のA型結晶であったが、それ以外に新たなB型結晶を確認し、化合物Iに結晶多形が存在することを見出した。さらに検討を加えた結果、B型結晶の示差走査熱量測定(DSC)から、新規のC型結晶を見出した。
【0019】
本発明者らは、化合物Iの結晶多形につき種々の評価を行った結果、C型結晶は、熱力学的安定性、光安定性、湿度安定性に優れることを見出し、このC型結晶を化合物Iにおける最安定晶と定めた。しかし、化合物IがC型結晶として得られる頻度は、結晶多形スクリーニング条件全体のうち、C型結晶を含むもので0.8%(7/917)、単一なものでは0.3%(3/917)と非常に低く、極限定された条件でしかC型結晶は得られなかった。また、この条件は、医薬品として、大量かつ安定に供給できる条件として満足できるものではなかった。
【0020】
そこで、本発明者らは、上記問題を解決すべく、さらに鋭意検討を重ね、限られた条件でのみ取得できる、化合物Iの最安定晶であるC型結晶を、純度よく大量に安定して得ることに成功した。
【0021】
また、化合物IIおよび化合物IIIについても、新規の安定晶を、純度よく大量に安定して得ることに成功した。
【0022】
すなわち、本発明者らは、新規に見出した、化合物IのC型結晶、化合物IIのB型結晶または化合物IIIのC型結晶(以下、これら結晶形を本発明の結晶形と略記する場合がある。)が、光および湿度に対する安定性に優れており、さらに熱力学的に安定であるため、工業的生産上、安定供給に優れることを見出した。さらに、本発明の結晶形を、純度よく大量に安定して得ることに成功した。
【0023】
また、本発明者らは、本発明の結晶形が、強力にcysLT1/cysLT2受容体を拮抗し、経口投与においてもその効果が長時間持続する化合物であることを見出した。すなわち、本発明の結晶形は、有用な呼吸器疾患治療薬になることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
すなわち、本発明は、
(1) 粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.29、10.24、12.15、17.95および18.44度2θにピークを有する、4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(2) 粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.41、7.29、9.22、10.03、10.24、12.15、12.59、13.36、13.88、14.15、14.44、16.60、17.33、17.95、18.44、18.86、19.27、20.23、21.10、21.85、22.26、23.11、23.63および24.38度2θにピークを有する、(1)記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(3) 図3に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする(2)記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(4) 示差走査熱量測定において約157℃に吸熱ピークを有する、4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(5) 図4に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする(4)記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(6) 示差走査熱量測定において約157℃に吸熱ピークを有する、(1)記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(7) 粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約5.12、10.16、10.51、14.90および20.42度2θにピークを有する、4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(8) 粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.12、8.94、9.22、10.16、10.51、12.07、13.07、13.62、14.37、14.90、15.35、16.05、16.92、17.52、17.86、18.61、19.58、19.92、20.42、21.19、21.71、22.03、22.39、23.74および24.24度2θにピークを有する、(7)記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(9) 図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする(8)記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(10) 示差走査熱量測定において約146℃に吸熱ピークを有する、4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(11) 図6に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする(10)記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(12) 示差走査熱量測定において約146℃に吸熱ピークを有する、(7)記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(13) 粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約5.25、12.16、15.08、17.07および21.44度2θにピークを有する、4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(14) 粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.25、8.12、8.92、10.45、11.19、12.16、13.12、13.51、14.54、15.08、15.65、16.25、17.07、17.80、18.61、19.59、20.21、20.75、21.44、22.23、22.53、23.29および24.41度2θにピークを有する、(13)記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(15) 図9に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする(14)記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(16) 示差走査熱量測定において約152℃に吸熱ピークを有する、4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(17) 図10に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする(16)記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(18) 示差走査熱量測定において約152℃に吸熱ピークを有する、(13)記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(19) (1)〜(6)のいずれかに記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶を有効成分として含有してなる医薬組成物、
(20) (7)〜(12)のいずれかに記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶を有効成分として含有してなる医薬組成物、
(21) (13)〜(18)のいずれかに記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶を有効成分として含有してなる医薬組成物、
(22) cysLT1/cysLT2受容体拮抗剤である(19)〜(21)記載の組成物、
(23) cysLT1/cysLT2受容体介在性疾患の予防および/または治療剤である(22)記載の組成物、
(24) cysLT1/cysLT2受容体介在性疾患が呼吸器疾患である(23)記載の組成物、
(25) 呼吸器疾患が喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、肺炎、重症急性呼吸器症候群、急性呼吸窮迫症候群、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、肺線維症または咳嗽である(24)記載の組成物、
(26) (1)〜(6)のいずれかに記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、(7)〜(12)のいずれかに記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶または(13)〜(18)のいずれかに記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶と、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ステロイド薬、抗ヒスタミン薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、エラスターゼ阻害薬、抗コリン薬、5−リポキシゲナーゼ阻害薬、プロスタグランジン類、非ステロイド性抗炎症薬、交感神経刺激薬、トロンボキサン合成酵素阻害薬およびトロンボキサン受容体拮抗薬から選択される1種以上とを組み合わせてなる医薬、
(27) (1)〜(6)のいずれかに記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、(7)〜(12)のいずれかに記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶または(13)〜(18)のいずれかに記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする哺乳動物におけるcysLT1/cysLT2受容体介在性疾患の予防および/または治療方法、
(28) cysLT1/cysLT2受容体介在性疾患の予防および/または治療のために使用される(1)〜(6)のいずれかに記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、(7)〜(12)のいずれかに記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶または(13)〜(18)のいずれかに記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(29) cysLT1/cysLT2受容体介在性疾患の予防および/または治療薬を製造するための(1)〜(6)のいずれかに記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、(7)〜(12)のいずれかに記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶または(13)〜(18)のいずれかに記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶の使用、
(30) 4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸を、アセトンと水の混合溶媒に加える工程、ついで50〜60℃で2時間以上撹拌する工程、ついで沈殿物を形成するために混合物を冷却する工程を経て製造されることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(31) 4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸を、エタノールと水の混合溶媒に約70℃で溶解させる工程、ついで沈殿物を形成するために混合物を冷却する工程を経て製造されることを特徴とする、(7)〜(12)のいずれかに記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(32) 4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸を、エタノールに約65℃で溶解させた後、この溶液を水に内温25℃以下で滴下する工程を経て製造されることを特徴とする、(13)〜(18)のいずれかに記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶、
(33) 4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸を、アセトンと水の混合溶媒に加える工程、ついで50〜60℃で2時間以上撹拌する工程、ついで沈殿物を形成するために混合物を冷却する工程を含むことを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶の製造方法、
(34) 4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸を、エタノールと水の混合溶媒に約70℃で溶解させる工程、ついで沈殿物を形成するために混合物を冷却する工程を含むことを特徴とする、(7)〜(12)のいずれかに記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶の製造方法、および
(35) 4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸を、エタノールに約65℃で溶解させた後、この溶液を水に内温25℃以下で滴下する工程を含むことを特徴とする、(13)〜(18)のいずれかに記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の結晶形は、強力なcysLT1/cysLT2受容体拮抗作用を有するとともに、薬効の持続性に優れる化合物であるので、経口投与において、その効果が長時間持続する呼吸器疾患治療薬として大変有用である。
【0026】
また、本発明の結晶形は、熱力学的に安定であることから製造上で安定した供給が可能であり、また光安定性および湿度安定性に優れていることにより保存安定性にも優れるため、医薬品の原薬として大変有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のB型結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを示す。
【図2】4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のB型結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す。
【図3】4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のC型結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを示す。
【図4】4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のC型結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す。
【図5】4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のB型結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを示す。
【図6】4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のB型結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す。
【図7】4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のB型結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを示す。
【図8】4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のB型結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す。
【図9】4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のC型結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを示す。
【図10】4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のC型結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す。
【図11】4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のA型結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを示す。
【図12】4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のA型結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す。
【図13】4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のA型結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを示す。
【図14】4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のA型結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す。
【図15】4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のA型結晶の粉末X線回析スペクトルチャートを示す。
【図16】4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のA型結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明において、化合物Iは、以下の構造:
【化7】

で示される化合物である。
【0029】
本発明において、化合物Iには、A型結晶、B型結晶およびC型結晶の3種類の結晶多形が存在する。そのうち、A型結晶は、上記特許文献3に記載された結晶形であるが、B型結晶およびC型結晶は、本発明で初めて明らかにされた新規の結晶形である。結晶形の相違は、特に、粉末X線回折スペクトル、または/および示差走査熱量測定(DSC)によって区別される。
【0030】
すなわち、化合物IのB型結晶とは、以下の(a)および(b)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(a)および(b)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(a)以下の図1に示される粉末X線回折スペクトル、または以下の表1に示される回折角(2θ)である、(b)以下の図2に示される示差走査熱量測定(DSC)、または約127℃の吸熱ピークを有する。
【0031】
また、化合物IのC型結晶とは、以下の(c)および(d)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(c)および(d)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(c)以下の図3に示される粉末X線回折スペクトル、以下の表2に示される回折角(2θ)、または粉末X線回折スペクトルにおいて約7.29、10.24、12.15、17.95および18.44度2θにピークを有する、(d)以下の図4に示される示差走査熱量測定(DSC)、または約157℃の吸熱ピークを有する。
【0032】
一方、上記特許文献3に記載された化合物IのA型結晶とは、該特許文献に記載されている図3(粉末X線回折スペクトルチャート)、図4(示差走査熱量測定(DSC)チャート)および/または表2に示される回折角(2θ)によって特徴づけられる。また、本明細書における、図11に示される粉末X線回折スペクトル、または図12に示される示差走査熱量測定によっても特徴づけられる。
本発明において、化合物IIは、以下の構造:
【化8】

で示される化合物である。
【0033】
本発明において、化合物IIには、A型結晶およびB型結晶の2種類の結晶多形が存在する。そのうち、A型結晶は上記特許文献3に記載された結晶形であるが、B型結晶は、本発明で初めて明らかにされた新規の結晶形である。結晶形の相違は、特に、粉末X線回折スペクトル、または/および示差走査熱量測定(DSC)によって区別される。
【0034】
すなわち、化合物IIのB型結晶とは、以下の(e)および(f)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(e)および(f)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(e)以下の図5に示される粉末X線回折スペクトル、以下の表3に示される回折角(2θ)、または粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.12、10.16、10.51、14.90および20.42度2θにピークを有する、(f)以下の図6に示される示差走査熱量測定(DSC)、または約146℃の吸熱ピークを有する。
【0035】
一方、上記特許文献3に記載された化合物IIのA型結晶とは、該特許文献に記載されている図1(粉末X線回折スペクトルチャート)、図2(示差走査熱量測定(DSC)チャート)および/または表1に示される回折角(2θ)によって特徴づけられる。また、本明細書における、図13に示される粉末X線回折スペクトル、または図14に示される示差走査熱量測定によっても特徴づけられる。
【0036】
本発明において、化合物IIIは、以下の構造:
【化9】

で示される化合物である。
【0037】
本発明において、化合物IIIには、A型結晶、B型結晶およびC型結晶の3種類の結晶多形が存在する。そのうち、A型結晶は、上記特許文献3に記載された結晶形であるが、B型結晶およびC型結晶は、本発明で初めて明らかにされた新規の結晶形である。結晶形の相違は、特に、粉末X線回折スペクトル、または/および示差走査熱量測定(DSC)によって区別される。
【0038】
すなわち、化合物IIIのB型結晶とは、以下の(g)および(h)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(g)および(h)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(g)以下の図7に示される粉末X線回折スペクトル、または以下の表4に示される回折角(2θ)である、(h)以下の図8に示される示差走査熱量測定(DSC)、または約144℃の吸熱ピークを有する。
【0039】
また、化合物IIIのC型結晶とは、以下の(i)および(j)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(i)および(j)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(i)以下の図9に示される粉末X線回折スペクトル、以下の表5に示される回折角(2θ)、または粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.25、12.16、15.08、17.07および21.44度2θにピークを有する、(j)以下の図10に示される示差走査熱量測定(DSC)、または約152℃の吸熱ピークを有する。
【0040】
一方、上記特許文献3に記載された化合物IIIのA型結晶とは、該特許文献に記載されている図5(粉末X線回折スペクトルチャート)、図6(示差走査熱量測定(DSC)チャート)および/または表3に示される回折角(2θ)によって特徴づけられる。また、本明細書における、図15に示される粉末X線回折スペクトル、または図16に示される示差走査熱量測定によっても特徴づけられる。
【0041】
本発明において、化合物I、化合物IIおよび化合物IIIの各結晶形は、本明細書に記載された物理化学データによって特定されるものであるが、各スペクトルデータは、その性質上多少変わり得るものであるから、厳密に解されるべきではない。
【0042】
例えば、粉末X線回折スペクトルデータは、その性質上、結晶の同一性の認定においては、回折角(2θ)や全体的なパターンが重要であり、相対強度は結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件によって多少変わり得る。
【0043】
また、示差走査熱量測定(DSC)データにおいても、結晶の同一性の認定においては、全体的なパターンが重要であり、測定条件によって多少変わり得る。
【0044】
したがって、本発明の結晶形において、粉末X線回折スペクトルまたは示差走査熱量測定(DSC)とパターンが、それぞれ全体的に類似するものは、本発明の結晶形に含まれるものである。
【0045】
本発明において、化合物I、化合物IIおよび化合物IIIを含む、一般式(I)で示される化合物は、公知の方法、例えば以下に示す方法、これらに準ずる方法または実施例に従って製造することが出来る。
【0046】
なお、本発明において、「ジオキサン」とは1,4−ジオキサンを意味し、「ジメトキシエタン」とは1,2−ジメトキシエタンを意味する。
【0047】
化合物I、化合物IIおよび化合物IIIを含む、一般式(I)
【化10】

(式中、 ring1は、
【化11】

を表わし、R1は、水素原子、またはフッ素原子を表わす。)で示される化合物は、公知の方法、例えば以下に示す方法、これらに準ずる方法または実施例に示す方法に従って製造することができる。
【0048】
一般式(I)で示される化合物は、一般式(II)
【化12】

(式中、R5は、C1〜6アルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基)を表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物をアルカリ加水分解反応に付すことによって製造することができる。
【0049】
一般式(II)で示される化合物のアルカリ加水分解反応は、例えば、有機溶媒(エチレングリコール、メタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグリム等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)またはアルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはその水溶液もしくはこれらの混合物を用いて、0〜120℃の温度で行なわれる。好ましくは、メタノールまたはエタノールとテトラヒドロフランまたはジメトキシエタンの混合有機溶媒中、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液と約25℃〜50℃で反応させることにより行われる。
【0050】
一般式(II)で示される化合物は、反応工程式1に示される方法で製造することができる。反応工程式1中、Xは臭素原子、ヨウ素原子、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基(好ましくは臭素原子)を表わし、Zはハロゲン原子、水酸基、メタンスルホニルオキシ基、またはp−トルエンスルホニルオキシ基(好ましくはハロゲン原子)を表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。
【化13】

【0051】
反応工程式1で示される、エーテル化反応、クロロホルミル化反応、アルキン形成反応、およびクロスカップリング反応は、公知の条件、例えば以下に示す条件、または本明細書中に記載された実施例の条件で行うことができる。
【0052】
一般式(III)で示される化合物と一般式(IV)で示される化合物のエーテル化反応は、(1)Zがハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、またはp−トルエンスルホニルオキシ基の場合には、例えば、有機溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、クロロホルム、塩化メチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、ベンゼン、トルエン等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)またはアルカリ金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)、アルカリ金属のリン酸塩(リン酸カリウム等)あるいはその水溶液もしくはこれらの混合物の存在下、相間移動触媒(例えば、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム等)、アルカリ金属のハロゲン化物(ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム等)の存在下または非存在下、0〜120℃で反応させることにより行なわれる。好ましくは、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはN,N−ジメチルアセトアミド中、炭酸カリウム、リン酸カリウムまたは炭酸セシウムの存在下、ヨウ化カリウム水溶液の存在下または非存在下、約40〜80℃で反応させることにより行われる。(2)Zが水酸基の場合には、例えば、有機溶媒(ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン等)中、アゾ化合物(アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)等)およびホスフィン化合物(トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン等)の存在下、0〜60℃で反応させることにより行なわれる。
反応工程式1中、一般式(V)で示される化合物のクロロホルミル化反応は、例えば、ホルミル化剤(N,N−ジメチルホルムアミド、N−ホルミルピロリジン、N−ホルミルピペリジン、N−メチルホルムアニリド、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルジフェニルアミン、N−ホルミルジエチルアミン、N−ホルミルジイソプロピルアミン等)中、またはこれらホルミル化剤と有機溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、二塩化エチレン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン等)中、クロロ化剤(オキシ塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、三塩化リン等)を、0〜120℃で反応させることにより行なわれる。好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド中、オキシ塩化リンを約25℃で反応させることにより行われる。
【0053】
反応工程式1中、一般式(VI)で示される化合物のアルキン形成反応は、例えば、有機溶媒(ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグリム、ベンゼン、トルエン、エチレングリコール、メタノール、エタノール、2−プロパノール等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ金属のアルコキシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム t-ブトキシド、カリウム t-ブトキシド等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)または炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)、アルカリ金属のリン酸塩(リン酸カリウム等)あるいはその水溶液もしくはこれらの混合物の存在下、相間移動触媒(例えば、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム等)の存在下または非存在下、0〜100℃で反応させることにより行なわれる。好ましくは、ジメチルスルホキシドまたはジオキサン中、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム水溶液と約50〜70℃で反応させることにより行われる。
【0054】
一般式(VII)で示される化合物と一般式(VIII)で示される化合物のクロスカップリング反応は、例えば、有機溶媒(酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、エタノール、2−プロパノール、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、アセトニトリル、水、またはそれらの混合物等)中または無溶媒条件下、塩基(ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピリジン、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、フッ化カリウム等)および触媒(パラジウム触媒(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl2(PPh3)2)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)、二塩化パラジウム(PdCl2)、パラジウム黒、ビス{1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン}ジクロロパラジウム(PdCl2(dppf)2)、ジクロロビス(アリルパラジウム)(Pd2Cl2(allyl)2)、ヨウ化フェニルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PhPdI(PPh3)2)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(tBu3P)2)等)単独で、または配位子(例えば、トリフェニルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン等)との混合物、またはそれらと銅触媒(ヨウ化銅(I)等)との混合物等)存在下または非存在下、相間移動触媒(例えば、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム等)の存在下または非存在下、室温〜120℃で反応させることにより行われる。好ましくは、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフランまたはアセトニトリル中または無溶媒条件下、トリエチルアミンまたはジイソプロピルアミンおよび触媒(二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl2(PPh3)2)またはビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(tBu3P)2)単独で、またはトリフェニルホスフィンとの混合物、またはそれらとヨウ化銅(I)との混合物)と、約60〜85℃で反応させることにより行われる。
【0055】
出発原料または試薬として用いる一般式(III)および(IV)で示される化合物は、それ自体公知であるか、本明細書中に記載された実施例、あるいは公知の方法、例えば、「Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations 2nd Edition(Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 1999)」に記載された方法を用いることにより容易に製造することができる。
【0056】
一般式(VIII)で示される化合物は、反応工程式2に示される方法で製造することができる。反応工程式2中、R2は、C1〜6アルキル基または水素原子(好ましくは、エチル基、ブチル基)を表わし、R3は、C1〜6アルキル基または水素原子(好ましくはエチル基、ブチル基)を表わし、R4は、ハロゲン原子(好ましくは臭素原子)を表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。
【化14】

【0057】
反応工程式2で示される、アルキル化反応、加水分解反応およびエステル化反応は、公知の条件、例えば以下に示す条件、または本明細書中に記載された実施例の条件で行うことができる。
【0058】
反応工程式2中、一般式(IX)で示される化合物のアルキル化反応は、例えば、有機溶媒(ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジグリム、ベンゼン、トルエン等)中、アルカリ金属のリン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)、アルカリ金属のアルコキシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム t-ブトキシド、カリウム t-ブトキシド等)、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)と一般式(X)で示される4−ハロ酪酸エステルを相間移動触媒(例えば、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム等)の存在下または非存在下、0〜100℃で反応させることにより行なわれる。好ましくは、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノンまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン中、リン酸カリウムまたは炭酸セシウムと4−ブロモ酪酸エチルを約45〜60℃で反応させることにより行われる。
【0059】
反応工程式2中、一般式(XI)で示される化合物の加水分解反応は、例えば、有機溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグリム等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)の水溶液、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)の水溶液を0〜100℃で反応させることにより行なわれる。好ましくは、メタノールまたはエタノールとテトラヒドロフランまたはジメトキシエタンの混合有機溶媒中、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液と約25℃〜50℃で反応させることにより行われる。
【0060】
反応工程式2中、一般式(XII)で示される化合物のエステル化反応は、例えば、有機溶媒(メタノール等)中、有機酸(硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)、または固体酸(アンバーライト等)を0〜65℃で反応させることにより行なわれる。好ましくは、メタノール中、硫酸と約50℃で反応させることにより行われる。
【0061】
別法としては、有機溶媒(ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトシキエタン、ジグリム等)中、メチル化剤(ヨウ化メチル、硫酸ジメチル等)およびアルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)を0〜100℃で反応させることにより行なわれる。
【0062】
出発原料または試薬として用いる一般式(IX)および(X)で示される化合物は、それ自体公知であるか、本明細書中に記載された実施例、あるいは公知の方法、例えば、「Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations 2nd Edition(Richard C. Larock, John Wiley & Sons Inc, 1999)」に記載された方法を用いることにより容易に製造することができる。
【0063】
本明細書中の各反応において、加熱を伴う反応は、当業者にとって明らかなように、水浴、油浴、砂浴またはマイクロ波を用いて行なうことができる。
【0064】
本明細書中の各反応において、適宜、高分子ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール等)に担持させた固相担持試薬を用いてもよい。
【0065】
本明細書中の各反応において、反応生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、イオン交換樹脂、スカベンジャー樹脂あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶などの方法により精製することができる。精製は反応ごとに行なってもよいし、いくつかの反応終了後に行なってもよい。
【0066】
本発明において、本発明の結晶形は、公知の方法、例えば以下に示す方法、これらに準ずる方法または実施例に従って製造することが出来る。なお、再結晶を行う際、種晶は、使用しても、または使用しなくてもよい。
【0067】
化合物IのC型結晶は、例えば上記特許文献3の実施例14(2)、または後述の実施例10(1)と同様に製造した化合物Iから、例えば下記の方法によって製造することができる。
【0068】
化合物Iを、アセトンと水の混合溶媒に加え約70℃で8時間以上撹拌する。その後、室温まで冷却することで、化合物IのC型結晶を得ることができる。
【0069】
または、化合物Iをアセトンと水の混合溶媒に加え、さらに種晶を加えて、50〜60℃で2時間以上撹拌する。その後、室温まで冷却することで、化合物IのC型結晶を得ることができる。
【0070】
化合物IのC型結晶を得る方法として好ましくは、下記の方法である。
化合物Iをアセトンと水の混合溶媒に加え、さらに種晶を加えて、50〜60℃で2時間以上撹拌する。その後、室温まで冷却する。
【0071】
化合物IIのB型結晶は、例えば、上記特許文献3の実施例9、または後述の実施例9と同様に製造した化合物IIから、例えば下記の方法によって製造することができる。
【0072】
化合物IIを混合溶媒(例えば、エタノール、アセトニトリル、1−プロパノールまたは2−プロパノールと水の混合溶媒、アセトニトリルまたはt−ブチルメチルエーテルとオクタンの混合溶媒)に溶解し、その後冷却することで、化合物IIのB型結晶を得ることができる。
【0073】
化合物IIのB型結晶を得る方法として好ましくは、下記の方法である。
化合物IIをエタノールと水の混合溶媒に約70℃で溶解する。その後、室温まで冷却する。
【0074】
化合物IIIのC型結晶は、例えば、上記特許文献3の実施例14(3)、または後述の実施例10(2)と同様に製造した化合物IIIから、例えば下記の方法によって製造することができる。
【0075】
化合物IIIをエタノールに約65℃で溶解し、この溶液を水に内温25℃以下で滴下することで、化合物IIIのC型結晶を得ることができる。
【0076】
[毒性]
化合物IのC型結晶、化合物IIのB型結晶または化合物IIIのC型結晶の毒性は非常に低いものであり、医薬として使用するために十分安全である。
【0077】
[医薬品への適用]
本発明の結晶形はcysLT1/cysLT2受容体に拮抗するため、例えば、気道収縮抑制薬、炎症細胞(例えば、好酸球、好中球、リンパ球、好塩基球等)の浸潤抑制薬、粘液分泌抑制薬、気道過敏性亢進抑制薬として有用である。
また、本発明の結晶形は、cysLT1/cysLT2受容体が関与する疾患、例えば、呼吸器疾患(例えば、喘息(気管支喘息、アスピリン喘息、運動誘発性喘息等)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、慢性気管支炎、肺炎(間質性肺炎、好酸球性肺炎等)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、無呼吸性症候群(睡眠時無呼吸症候群、アデノイド/扁桃肥大に伴う睡眠呼吸障害、アデノイド/扁桃肥大術後の睡眠呼吸障害等)、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎等)、肺線維症、咳嗽(慢性咳嗽等、空咳等)等)の予防および/または治療薬や去痰薬、鎮咳薬として有用である。
【0078】
また、本発明の結晶形は、呼吸器機能改善薬としても有用である。呼吸器機能とは、例えば、空気を肺に出し入れする機能(肺活量能)や、酸素を肺から血液中に送り込み、二酸化炭素を血液中から体外に運び出す機能(酸素交換能)や呼吸抵抗能等をいう。
【0079】
本発明において、呼吸器とは、例えば、気道、口腔、鼻腔、副鼻腔、気管、気管支、細気管支、肺等の呼吸に関与する体部を意味する。
【0080】
さらにcysLT1/cysLT2受容体が関与する疾患として、本発明の結晶形は、心臓血管系疾患(例えば、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞等)、急性冠症候群、心不全、不整脈、心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症等)、心膜炎、弁膜炎、心筋炎、心タンポナーゼ、心低拍出量症候群、僧帽弁狭窄症等)、肺高血圧症(原発性肺高血圧症等)、嚢胞性線維症、アテローム性動脈硬化、肺線維症、脳卒中(脳梗塞等)、脳浮腫、間質性膀胱炎、動脈瘤、頭痛(片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛等)、婦人科疾患(子宮内膜症、月経困難症等)、メニエール病、てんかん、癌、腎疾患、消化管潰瘍、炎症性腸疾患、皮疹、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症等の治療および/または予防にも有用である。
【0081】
また、本発明の結晶形は、熱力学的に安定であることから製造上で安定した供給が可能であり、また光安定性および湿度安定性に優れていることにより保存安定性にも優れるため、医薬品の原薬として大変有用である。
【0082】
本発明において、cysLT1/cysLT2受容体拮抗作用とは、cysLT1受容体とcysLT2受容体のどちらも拮抗する作用を表わす。
【0083】
本発明の結晶形は、(1)本発明の結晶形等の予防および/または治療効果の補完および/または増強、(2)本発明の結晶形等の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または(3)本発明の結晶形等の副作用の軽減のために他の薬剤と組み合わせて、投与してもよい。
【0084】
本発明の結晶形等と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を含有する配合剤にして投与する形態をとってもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明の結晶形等を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明の結晶形等を後に投与してもかまわず、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0085】
前記他の薬剤は、低分子化合物であってもよく、また高分子の蛋白、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(DNA、RNA、遺伝子)、アンチセンス、デコイ、抗体であるか、またはワクチン等であってもよい。他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明の結晶形等と他の薬剤の配合比は、投与対象の年齢および体重、投与方法、投与時間、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、本発明の結晶形等1質量部に対し、他の薬剤を0.01乃至100質量部用いればよい。他の薬剤は以下に示す同種群および異種群から任意に1種または2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、本発明の結晶形等の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0086】
上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明の結晶形等の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0087】
本発明の結晶形の喘息に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、エラスターゼ阻害薬、抗コリン薬、抗アレルギー薬(化学伝達物質遊離抑制薬、ヒスタミン拮抗薬、トロンボキサン合成酵素阻害薬、トロンボキサン受容体拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬)、ステロイド薬、気管支拡張薬(キサンチン誘導体、交感神経刺激薬、副交感神経遮断薬)、ワクチン療法薬、金製剤、漢方薬、非ステロイド抗炎症薬、5−リポキシゲナーゼ阻害薬、5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質拮抗薬、ロイコトリエン合成阻害薬、プロスタグランジン類、カンナビノイド−2受容体刺激薬、鎮咳薬、去痰薬、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液等が挙げられる。
【0088】
ロイコトリエン受容体拮抗薬としては、例えば、プランルカスト水和物、モンテルカストナトリウム、ザフィルルカスト、MK−571、LY−203647、WY−46016、WY−48422、WY−49353、WY−49451、RG−12553、MDL−43291、CGP−44044A、RG−14524、LY−287192、LY−290324、L−695499、RPR−105735B、WAY−125007、OT−4003、LM−1376、LY−290154、SR−2566、L−740515、LM−1453、CP−195494、LM−1484、CR−3465、アブルカスト、ポビルカスト、スルカスト、L−648051、RG−12525、RG−7152、SK&F−106203、SR−2640、WY−50295、イラルカストナトリウム、ベルルカスト、MCC−847、BAY−x−7195、リトルカスト、シナルカスト、CGP−44826、FK−011、YM−158、MEN−91507、KCA−757、RS−601、RS−635、S−36496、ZD−3523、DS−4574、ピロドマスト、AS−35、YM−57158、MCI826、NZ−107、4414−CERM、YM−16638、Wy−48252、Wy−44329、Wy−48090、VUF−4679、トメルカスト、SM−11044、SC−39070、OT−3473、N−2401、LY−243364、L−649923、ドクアラスト、DP−1934、YM−17551、Wy−47120、VUF−K−8707、SK&F−88046、SK&F−101132、SK&F−102922、LY−137617、LY−163443、LY−302905、L−647438、L−708738、KY−234、FPL−55712、CP−288886、S−36527、CGP−35949、CS−615、MDL−19301D、SCH−40120、またはZD−3705が挙げられる。
【0089】
ロイコトリエン受容体拮抗薬として好ましくは、プランルカスト水和物、モンテルカストナトリウム、ザフィルルカスト、MK−571であり、さらに好ましくは、プランルカスト水和物、モンテルカストナトリウム、ザフィルルカストである。
【0090】
抗ヒスタミン薬としては、例えば、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェニルピラリン、テオクル酸ジフェニルピラリン、フマル酸クレマスチン、ジメンヒドリナート、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸トリプロリジン、塩酸プロメタジン、酒石酸アリメマジン、塩酸イソチペンジル、塩酸ホモクロルシクリジン、ヒドロキシジン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸レボカバスチン、アステミゾール、ベポタスチン、デスロラタジン、TAK−427、ZCR−2060、NIP−530、モメタゾンフロエート、ミゾラスチン、BP−294、アンドラスト、オーラノフィン、アクリバスチン等が挙げられる。
【0091】
ホスホジエステラーゼ阻害薬としては、ホスホジエステラーゼ4阻害薬が好ましく、ホスホジエステラーゼ4阻害薬としては、例えば、ロリプラム、シロミラスト(商品名アリフロ)、Bay19−8004、NIK−616、ロフルミラスト(BY−217)、シパムフィリン(BRL−61063)、アチゾラム(CP−80633)、SCH−351591、YM−976、V−11294A、PD−168787、D−4396、IC−485等が挙げられる。
【0092】
エラスターゼ阻害薬としては、例えば、シベレスタットナトリウム水和物(ONO−5046)、ONO−6818、MR−889、PBI−1101、EPI−HNE−4、R−665、ZD−0892、ZD−8321、GW−311616、AE−3763、DMP−777、L−659286、L−658758、L−680833、L−683845等が挙げられる。
【0093】
抗コリン薬としては、例えば、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化フルトロピウム、臭化シメトロピウム、テミベリン、臭化チオトロピウム、レバトロペート(UK−112166)等が挙げられる。
【0094】
抗アレルギー薬のうち、化学伝達物質遊離抑制薬としては、例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、アンレキサノクス、レピリナスト、イブジラスト、ペミロラストカリウム、ダザノラスト、ネドクロミル、クロモグリカート、イスラパファント等が挙げられる。
【0095】
抗アレルギー薬のうち、ヒスタミン拮抗薬としては、例えば、フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、メキタジン、テルフェナジン、フマル酸エメダスチン、塩酸エピナスチン、エバスチン、塩酸セチリジン、塩酸オロパタジン、ロラタジン、フェキソフェナジン等が挙げられる。
【0096】
抗アレルギー薬のうち、トロンボキサン合成酵素阻害薬としては、例えば、塩酸オザグレル、イミトロダストナトリウム等が挙げられる。
【0097】
抗アレルギー薬のうち、トロンボキサン拮抗薬としては、例えば、セラトロダスト、ラマトロバン、ドミトロバンカルシウム水和物、KT−2−962等が挙げられる。
【0098】
抗アレルギー薬のうち、Th2サイトカイン阻害薬としては、例えば、トシル酸スプラタスト等が挙げられる。
【0099】
ステロイド薬のうち、外用薬としては、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸ジフロラゾン、フルオシノニド、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジフルプレドナート、プデソニド、吉草酸ジフルコルトロン、アムシノニド、ハルシノニド、デキサメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、吉草酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸デプロドン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、プレドニゾロン、フルドロキシコルチド等が挙げられる。
【0100】
ステロイド薬のうち、内服薬、注射薬としては、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、酢酸ハロプレドン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、パルミチン酸デキサメタゾン、酢酸パラメタゾン、ベタメタゾン等、吸入薬としては、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、フルニソリド、トリアムシノロン、ST−126P、シクレソニド、デキサメタゾンパロミチオネート、モメタゾンフランカルボネート、プラステロンスルホネート、デフラザコート、メチルプレドニゾロンスレプタネート、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム等が挙げられる。
【0101】
気管支拡張薬のうち、キサンチン誘導体としては、例えば、アミノフィリン、テオフィリン、ドキソフィリン、シパムフィリン、ジプロフィリン、プロキシフィリン、コリンテオフィリン等が挙げられる。
【0102】
気管支拡張薬のうち、交感神経刺激薬としては、例えば、エピネフリン、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプロテレノール、塩酸イソプロテレノール、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸フォルモテロール、塩酸クレンブテロール、塩酸マブテロール、キシナホ酸サルメテロール、R,R−フォルモテロール、ツロブテロール、塩酸ピルブテロール、塩酸リトドリン、バンブテロール、塩酸ドペキサミン、酒石酸メルアドリン、AR−C68397、レボサルブタモール、KUR−1246、KUL−7211、AR−C89855、S−1319等が挙げられる。
【0103】
気管支拡張薬のうち、副交感神経遮断薬としては、例えば、臭化イプラトロピウム、臭化フルトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化シメトロピウム、テミベリン、臭化チオトロピウム、レバトロペート(UK−112166)等が挙げられる。
【0104】
ワクチン療法薬としては、例えば、パスパート、アストレメジン、ブロンカスマ・ベルナ、CS−560等が挙げられる。
【0105】
金製剤としては、例えば、金チオリンゴ酸ナトリウム等が挙げられる。
塩基性非ステロイド抗炎症薬としては、例えば、塩酸チアラミド、塩酸チノリジン、エピリゾール、エモルファゾン等が挙げられる。
【0106】
5−リポキシゲナーゼ阻害薬としては、例えば、ザイリュートン、ドセベノン、ピリポスト、SCH−40120、WY−50295、E−6700、ML−3000、TMK−688、ZD−2138、メシル酸ダルブフェロン、R−68151、E−6080、DuP−654、SC−45662、CV−6504、NE−11740、CMI−977、NC−2000、E−3040、PD−136095、CMI−392、TZI−41078、Orf−20485、IDB−18024、BF−389、A−78773、TA−270、FLM−5011、CGS−23885、A−79175、ETH−615、AM−103、MK−0633等が挙げられる。
【0107】
5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質拮抗薬としては、例えば、MK−591、MK−886、MK−0633、AM−103等が挙げられる。
【0108】
ロイコトリエン合成阻害薬としては、例えば、オーラノフィン、マレイン酸プログルメタシン、L−674636、A−81834、UPA−780、A−93178、MK−886、REV−5901A、SCH−40120、MK−591、Bay−x−1005、Bay−y−1015、DTI−0026、アムレキサノックス、E−6700等が挙げられる。
【0109】
プロスタグランジン類(以下、PGと略記する。)としては、PG受容体アゴニスト、PG受容体アンタゴニスト等が挙げられる。
【0110】
PG受容体としては、PGE受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)、PGD受容体(DP、CRTH2)、PGF受容体(FP)、PGI受容体(IP)、TX受容体(TP)等が挙げられる。
【0111】
鎮咳薬としては、例えば、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール、臭化水素酸デキストロメトルファン、クエン酸ペントキシベリン、リン酸ジメモルファン、クエン酸オキセラジン、クロペラスチン、リン酸ベンプロペリン、塩酸クロフェダノール、塩酸ホミノベン、ノスカピン、ヒベンズ酸チペピジン、塩酸エプラジノン、シャゼンソウエキス等が挙げられる。
【0112】
去痰薬としては、例えば、アンモニアウイキョウ精、炭酸水素ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩酸ブロムヘキシン、桜皮エキス、カルボシステイン、フドステイン、塩酸アンブロキソール、塩酸アンブロキゾール徐放薬、メチルシステイン塩酸塩、アセチルシステイン、塩酸L−エチルシステイン、チロキサポール等が挙げられる。
【0113】
該他の薬剤として好ましくは、ロイコトリエン受容体拮抗薬、ステロイド薬または交感神経刺激薬である。
【0114】
本発明を実施するための製剤としては、cysLT1/cysLT2受容体に拮抗する化合物と該化合物の治療効果を補完および/または増強する他の薬剤とを、1つの製剤に配合した製剤でもよく、それぞれの成分を別々に製剤化した製剤でもよい。これらの製剤化は、公知の方法によって行なうことができる。
【0115】
本発明の結晶形等、または本発明の結晶形等と他の薬剤の併用剤を含有してなる医薬組成物を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0116】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、1回につき、1mgから1000mgの範囲で、1日1回から数回(好ましくは、1日1回)経口投与されるか、または成人一人あたり、1回につき、0.1mgから100mgの範囲で、1日1回から数回非経口投与(好ましくは、静脈内投与)されるか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0117】
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
【0118】
本発明の目的で化合物を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤および、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤、吸入剤等として用いられる。
【0119】
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤のカプセルには、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。
【0120】
このような内服用固形剤においては、1種または2種以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらに、ゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0121】
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0122】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解、懸濁または乳濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳濁させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0123】
非経口投与のための点眼剤の剤形としては、点眼液、懸濁型点眼液、乳濁型点眼液、用時溶解型点眼液および眼軟膏が含まれる。
【0124】
これらの点眼剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、点眼液の場合には、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、界面活性剤(ポリソルベート80(商品名)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、安定化剤(クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等)、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)などを必要に応じて適宜選択して製造される。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。
【0125】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用液剤または吸入用粉末剤が含まれ、吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解、懸濁または乳濁させて使用する形態であってもよい。
【0126】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して製造される。
【0127】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(ステアリン酸およびその塩(ステアリン酸マグネシウム等)等)、結合剤(デンプン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して製造される。
【0128】
吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(例えば、アトマイザー、ネブライザー等)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0129】
非経口投与のためのその他の製剤としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、軟膏剤、塗布剤、スプレー剤、坐剤および膣内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0130】
スプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第2,868,691号および同第3,095,355号に詳しく記載されている。
【実施例】
【0131】
以下、実施例、生物学的実施例、熱力学的試験および光安定性試験によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
クロマトグラフィーによる分離の箇所、TLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表わす。NMRの箇所に示されているカッコ内の溶媒は、測定に使用した溶媒を示している。
【0133】
また、実施例に示される化合物名は、ACD/Name(バージョン6.00、Advanced Chemistry Development Inc.社製)によって命名した。
【0134】
実施例1
エチル 4−(7−ブロモ−2−メチル−1H−インドール−3−イル)ブタノアート
(2−ブロモフェニル)ヒドラジン塩酸塩(14g)のエタノール溶液(60mL)に5−アセチルバレリン酸(9.0g)を加え、反応混合物を50℃で40分撹拌後、濃硫酸(6.0mL)を加え、16時間加熱還流した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にあけ、酢酸エチルにて抽出後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)にて精製することによって以下の物性値を有する標題化合物(15g)を得た。
TLC:Rf 0.54(ヘキサン:酢酸エチル=3:1);
1H−NMR(CDCl3):δ 1.23, 1.89-2.00, 2.31, 2.39, 2.72, 4.10, 6.95, 7.24, 7.43, 7.91。
【0135】
実施例2
ジエチル 4,4’−(7−ブロモ−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル)ジブタノアート
実施例1で製造した化合物(18g)をジメチルスルホキシド(110mL)に溶解し、4−ブロモ酪酸エチル(76g)および炭酸セシウム(145g)を加え、反応混合物を50℃で16時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を中圧分取液体クロマトグラフ W−prep 2XY(山善社製、カラム:メインカラム4L、インジェクトカラム3L;ヘキサン:酢酸エチル=9:1→4:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(24g)を得た。
TLC:Rf 0.31(ヘキサン:アセトン=17:3);
1H−NMR(CDCl3):δ 1.24, 1.26, 1.83-1.98, 1.98-2.12, 2.30, 2.36, 2.39, 2.73, 4.09-4.20, 4.47-4.52, 6.88, 7.26, 7.42。
【0136】
実施例3
ジエチル 4,4’−(7−{[4−(アセチルオキシ)フェニル]エチニル}−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル)ジブタノアート
実施例2で製造した化合物(5.5g)および4−エチニルフェニル アセタート(3.8g)のアセトニトリル(25mL)溶液にアルゴン雰囲気下、ジイソプロピルアミン(3.3mL)およびビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(320mg)を加え、室温で15時間撹拌した。この反応混合物を、セライト(登録商標)を通してろ過後、ろ液を濃縮し、得られた残渣を中圧分取液体クロマトグラフ W−prep 2XY(山善社製、カラム:メインカラム3L、インジェクトカラム2L;ヘキサン:酢酸エチル=9:1→7:3)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(5.9g)を得た。
TLC:Rf 0.26(ヘキサン:酢酸エチル=3:1);
1H−NMR(CDCl3):δ 1.21, 1.24, 1.86-1.98, 2.10-2.22, 2.25-2.37, 2.75, 4.04-4.14, 4.59-4.65, 7.03, 7.11, 7.32, 7.50, 7.55。
【0137】
実施例4
ジエチル 4,4’−{7−[(4−ヒドロキシフェニル)エチニル]−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル}ジブタノアート
実施例3で製造した化合物(5.9g)のエタノール(11mL)およびジメトキシエタン(11mL)溶液に炭酸カリウム(3.1g)を加え、室温で15時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を中圧分取液体クロマトグラフ W−prep 2XY(山善社製、カラム:メインカラム2L、インジェクトカラムL;ヘキサン:酢酸エチル=9:1→6:4)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(4.8g)を得た。
TLC:Rf 0.29(ヘキサン:酢酸エチル=2:1);
1H−NMR(CDCl3):δ 1.22, 1.26, 1.82-1.99, 2.05-2.21, 2.32, 2.36, 2.75, 4.04-4.14, 4.62, 5.39, 6.83, 7.01, 7.30, 7.42. 7.48。
【0138】
実施例5
4−(ペンタフルオロフェニル)ブタ−3−イン−1−オール
1−ブロモ−2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゼン(50g)のトリエチルアミン(200mL)溶液に3−ブチン−1−オール(15g)、トリフェニルホスフィン(2.7g)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(3.6g)およびヨウ化銅(I)(1.9g)を加え、80℃で16時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、t−ブチルメチルエーテル(500mL)を加え、0℃で30分間撹拌した。反応混合物を、セライト(登録商標)を通してろ過後、ろ液を濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5→65:35)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(43g)を得た。
TLC:Rf 0.28(ヘキサン:酢酸エチル=4:1);
1H−NMR(CDCl3):δ 1.81, 2.78, 3.86。
【0139】
実施例6
4−(ペンタフルオロフェニル)ブタン−1−オール
実施例5で製造した化合物(43g)のエタノール(430mL)溶液に10%パラジウム炭素(50%含水品、4.3g)を加え、反応系中をアルゴンで置換した後に水素雰囲気下室温で6時間撹拌した。10%パラジウム炭素(50%含水品、4.3g)を追加し、水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応混合物を、セライト(登録商標)を通してろ過後、ろ液を濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物(41g)を得た。
TLC:Rf 0.31(ヘキサン:酢酸エチル=4:1);
1H−NMR(CDCl3):δ 1.20-1.38, 1.52-1.76, 2.74, 3.68。
【0140】
実施例7
4−(ペンタフルオロフェニル)ブチル 4−メチルベンゼンスルホナート
実施例6で製造した化合物(40g)のトルエン(330mL)溶液にトリエチルアミン(46mL)を加え0℃で撹拌した。p−トルエンスルホニルクロリド(41g)およびトリメチルアミン塩酸塩(1.6g)を加え、0℃で2時間撹拌後、室温で20時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、N,N−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(7.3g)を加え15分間撹拌した。反応液に水を加え、2N塩酸で水層を酸性にした後、有機層を分取した。水層をトルエンで抽出し、併せた有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後溶媒を減圧留去した。固体成分をヘキサン−酢酸エチル(10:1)で洗浄し、以下の物性値を有する標題化合物(52g)を得た。
TLC:Rf 0.48(ヘキサン:酢酸エチル=5:1);
1H−NMR(CDCl3):δ 1.55-1.77, 2.45, 2.66, 4.05, 7.35, 7.78。
【0141】
実施例8
ジエチル 4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタノアート
実施例4で製造した化合物(180mg)および実施例7で製造した化合物(150mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(1.0mL)溶液に炭酸セシウム(220mg)を加え、室温で10時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水,飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。中圧分取液体クロマトグラフ W−prep 2XY(山善社製、カラム:メインカラムM、インジェクトカラムS;ヘキサン:酢酸エチル=9:1→8:2)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(160mg)を得た。
TLC:Rf 0.52(ヘキサン:酢酸エチル=3:1);
1H−NMR(CDCl3):δ 1.19-1.26, 1.71-2.00, 2.05-2.10, 2.25-2.40, 2.68-2.85, 3.99-4.18, 4.62, 6.87, 7.01, 7.31, 7.42-7.52。
【0142】
実施例9
4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物II)
【化15】

実施例8で製造した化合物(150mg)のジメトキシエタン(2.0mL)およびエタノール(2.0mL)溶液に2N水酸化ナトリウム水溶液(1.0mL)を加え、室温で4時間撹拌した。氷冷下、反応液に氷冷2N塩酸(1.0mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をジイソプロピルエーテル−ヘキサン(9:1)洗浄し、減圧下乾燥することにより、以下の物性値を有する標題化合物(120mg)を得た。
TLC:Rf 0.40(塩化メチレン:メタノール=9:1);
1H−NMR(DMSO-D6):δ 1.63-1.82, 1.87-2.02, 2.14-2.24, 2.33, 2.67, 2.76, 4.03, 4.54, 6.94-7.03, 7.22, 7.44-7.54, 12.08。
【0143】
実施例10
4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸
【化16】

(2−ブロモフェニル)ヒドラジン塩酸塩の代わりに、(2−ブロモ−5−フルオロフェニル)ヒドラジン(以下の製造方法によって製造した。:2−ブロモ−5−フルオロアニリン(20g)を、氷冷下、5N塩酸(200mL)に注ぎ、20分間撹拌した後、亜硝酸ナトリウム(8.0g)の水(20mL)溶液をゆっくり加え、40分間撹拌した。この反応液および5N水酸化ナトリウム水溶液(150mL)を、氷冷下、亜硫酸ナトリウム(33g)およびリン酸二水素ナトリウム(1.7g)の水溶液(200mL)に、pH6以上を保ちながら加えた後、75℃で1時間撹拌した。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた残渣を60℃の濃塩酸に注ぎ、2時間撹拌した後、室温にて終夜撹拌した。この反応液を、氷冷下、12N水酸化ナトリウム水溶液で中和した。析出した固体をろ過し、水で洗浄した後、酢酸エチルに溶解させた。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮することにより、ヒドラジン化合物を得た。)を用いて、実施例1→実施例2→実施例3→実施例4→実施例8→実施例9と同様の操作を行って、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.43(塩化メチレン:メタノール=9:1);
1H−NMR(DMSO-D6):δ 1.64-1.84, 1.88-2.02, 2.14-2.23, 2.33, 2.68-2.82, 4.02, 4.49-4.59, 6.76, 6.97, 7.19, 7.47, 12.08。
【0144】
実施例10(1)〜(2)
(2−ブロモフェニル)ヒドラジン塩酸塩の代わりに、上記(2−ブロモ−5−フルオロフェニル)ヒドラジンを用い、実施例7で製造した化合物の代わりに、相当するスルホナートを用いて、実施例1→実施例2→実施例3→実施例4→実施例8→実施例9と同様の操作を行って、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
【0145】
実施例10(1)
4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物I)
TLC:Rf 0.58(塩化メチレン:メタノール=9:1);
1H−NMR(DMSO-D6):δ 1.59-1.85, 1.87-2.05, 2.10-2.26, 2.32, 2.59-2.82, 4.05, 4.48-4.63, 6.76, 6.91-7.06, 7.08-7.16, 7.20, 7.48, 12.08。
【0146】
実施例10(2)
4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物III)
TLC:Rf 0.57(塩化メチレン:メタノール=9:1);
1H−NMR(DMSO-D6):δ 1.61-1.83, 1.87-2.02, 2.13-2.23, 2.32, 2.64-2.79, 4.02, 4.49-4.61, 6.76, 6.97, 7.20, 7.38-7.58, 12.08。
【0147】
実施例11
4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物I)のB型結晶
実施例10(1)で製造した化合物(500mg)をトルエン(300mL)に80℃で溶解した。この溶液をn−ヘプタン(150mL)に50℃以下で滴下した。0℃まで冷却後、結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題の結晶(490mg)を得た。
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルを図1に、示差走査熱量測定(DSC)のチャートを図2にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
装置:BRUKER axs製 D8 DISCOVER with GADDS、ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:40mA。
概結晶は、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、以下の表1で示される回折角(2θ)および相対強度のデータによって特徴づけられる。
【0148】
【表1】

(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置、試料量:1.14mg、試料セル:アルミパン40μL、窒素ガス流量:40ml/min、昇温速度:5℃/min(25〜300℃)。
化合物IのB型結晶は、127℃で第一の吸熱ピークを示し、ついで146℃で第二の吸熱ピークを示し、ついで157℃で第三の吸熱ピークを示す。127℃におけるピークは、B型結晶の融解に対応する。146℃および157℃におけるピークは、それぞれA型結晶およびC型結晶の融解に対応する。
【0149】
実施例12
4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物I)のC型結晶
実施例10(1)で製造した化合物(30mg)にアセトン(0.3mL)および水(0.3mL)の混合溶媒を加えた。70℃まで昇温し、70℃で15時間撹拌した。続いて、25℃まで降温し、25 ℃で3時間撹拌した。結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題の結晶(29mg)を得た。
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルを図3に、示差走査熱量測定(DSC)のチャートを図4にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
装置:BRUKER axs製 D8 DISCOVER with GADDS、ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:40mA。
概結晶は、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、以下の表2で示される回折角(2θ)および相対強度のデータによって特徴づけられる。
【0150】
【表2】

(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置、試料量:7.67mg、試料セル:アルミパン40μL、窒素ガス流量:40ml/min、昇温速度:5℃/min(25〜300℃)。
化合物IのC型結晶は、157℃でC型結晶の融解に対応する吸熱ピークを示す。
【0151】
実施例13
4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物I)のC型結晶
実施例12で示される4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸のC型結晶は、以下の方法でも製造することができる。
実施例10(1)で製造した化合物(10g)をアセトン(80mL)および水(8mL)の混合溶媒に室温で加えた。水(30mL)を加え、種晶10mg加えた。続いて水(12mL)を加え、55℃で2時間30分撹拌した後、室温まで冷却した。室温で30分間撹拌した後、結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題の結晶(9.68g)を得た。
【0152】
実施例14
4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物II)のB型結晶
実施例9で製造した化合物(93.8g)をエタノール(1.23L)および水(308mL)の混合溶媒に72℃で溶解した。熱時濾過を行いエタノール(27mL)および水(68mL)の混合溶媒で洗いこみ、放冷した。内温22℃まで冷却後、結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題の結晶(91.2g)を得た。
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルを図5に、示差走査熱量測定(DSC)のチャートを図6にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
装置:BRUKER axs製 D8 DISCOVER with GADDS、ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:40mA。
概結晶は、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、以下の表3で示される回折角(2θ)および相対強度のデータによって特徴づけられる。
【0153】
【表3】

(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置、試料量:3.27mg、試料セル:アルミパン40μL、窒素ガス流量:40ml/min、昇温速度:5℃/min(25〜300℃)。
化合物IIのB型結晶は、146℃でB型結晶の融解に対応する吸熱ピークを示す。
【0154】
実施例15
4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物III)のB型結晶
実施例10(2)で製造した化合物(50mg)を2-プロパノール(0.8mL)および水(0.2mL)の混合溶媒に80℃で溶解した。0℃まで冷却後、結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題の結晶(24mg)を得た。
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルを図7に、示差走査熱量測定(DSC)のチャートを図8にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
装置:BRUKER axs製 D8 DISCOVER with GADDS、ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:40mA。
概結晶は、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、以下の表4で示される回折角(2θ)および相対強度のデータによって特徴づけられる。
【0155】
【表4】

(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置、試料量:1.10mg、試料セル:アルミパン40μL、窒素ガス流量:40ml/min、昇温速度:5℃/min(25〜300℃)。
化合物IIIのB型結晶は、144℃で第一の吸熱ピークを示し、ついで164℃で第二の吸熱ピークを示す。144℃におけるピークは、B型結晶の融解に対応する。164℃におけるピークは、A型結晶の融解に対応する。
【0156】
実施例16
4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物III)のC型結晶
実施例10(2)で製造した化合物(500mg)をエタノール(15mL)に65℃で溶解し、この溶液を水(7.5mL)に内温25℃以下で滴下した。結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題の結晶(475mg)を得た。
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルを図9に、示差走査熱量測定(DSC)のチャートを図10にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
装置:BRUKER axs製 D8 DISCOVER with GADDS、ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:40mA。
概結晶は、Cu−Kα線を使用して得られる粉末X線回折スペクトルにおいて、以下の表5で示される回折角(2θ)および相対強度のデータによって特徴づけられる。
【0157】
【表5】

(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置、試料量:3.28mg、試料セル:アルミパン40μL、窒素ガス流量:40ml/min、昇温速度:5℃/min(25〜300℃)。
化合物IIIのC型結晶は、152℃でC型結晶の融解に対応する吸熱ピークを示す。
【0158】
比較例1
4,4’−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物I)のA型結晶
実施例10(1)で製造した化合物(30mg)をt−ブチルメチルエーテル(2.4mL)に60℃で溶解し、室温まで冷却した。結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題化合物(24mg)を得た。
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルを図11に、示差走査熱量測定(DSC)のチャートを図12にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
装置:BRUKER axs製 D8 DISCOVER with GADDS、ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:40mA。
(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置、試料量:3.30mg、試料セル:アルミパン40μL、窒素ガス流量:40ml/min、昇温速度:5℃/min(25〜300℃)。
化合物IのA型結晶は、146℃でA型結晶の融解に対応する吸熱ピークを示す。
【0159】
比較例2
4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物II)のA型結晶
実施例9で製造した化合物(50mg)をt−ブチルメチルエーテル(1.5mL)に50℃で溶解した。この溶液に室温下n−ヘプタン(0.75mL)を加えた後、30分間放置した。結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題化合物(39mg)を得た。
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルを図13に、示差走査熱量測定(DSC)のチャートを図14にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
装置:BRUKER axs製 D8 DISCOVER with GADDS、ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:40mA。
(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置、試料量:1.37mg、試料セル:アルミパン40μL、窒素ガス流量:40ml/min、昇温速度:5℃/min(25〜300℃)。
化合物IIのA型結晶は、143℃でA型結晶の融解に対応する吸熱ピークを示す。
【0160】
比較例3
4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(化合物III)のA型結晶
実施例10(2)で製造した化合物(50mg)を酢酸エチル(1.4mL)に70℃で溶解し、この溶液に室温下n−ヘプタン(0.68mL)を加えた後、0℃まで冷却した。結晶をろ別し、減圧乾燥させることで、標題化合物(39mg)を得た。
下記の条件で測定した該結晶の粉末X線回析スペクトルを図15に、示差走査熱量測定(DSC)のチャートを図16にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
装置:BRUKER axs製 D8 DISCOVER with GADDS、ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:40mA。
(2)示差走査熱量測定(DSC)
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置、試料量:4.70mg、試料セル:アルミパン40μL、窒素ガス流量:40ml/min、昇温速度:5℃/min(25〜300℃)。
化合物IIIのA型結晶は、164℃でA型結晶の融解に対応する吸熱ピークを示す。
本発明の結晶形の効果は、以下の実験によって証明することができる。以下に実験方法を示すが、これに限定されるものではない。
【0161】
生物学的実施例1:LTD4による細胞内カルシウム上昇に対する作用
ヒトcysLT1受容体の発現細胞(CHO)を、96穴プレート1穴あたり0.4×105個ずつ播種し、F-12培地を用いて、37℃にて5%CO2下で24時間培養した。細胞は、7.5μM Fura2−AM、20mM HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)および2.5mM プロベネシドを含む培地中で、37℃で約60分間インキュベーションした。Fura2−AMを取り込ませた細胞はアッセイバッファー(20mM HEPESを含むハンクス緩衝液)で一回洗浄し、FDSS2000(浜松ホトニクス)でLTD4による細胞内カルシウム流入を測定した。本発明の結晶形はLTD4刺激30分前に処置し、100nMのLTD4で誘発される反応を150秒間経時的に測定した。本発明の結晶形の受容体拮抗作用は、LTD4刺激150秒後までの最大値の蛍光強度で評価し、各化合物について50%阻害濃度(IC50)を算出した。
【0162】
その結果、化合物IのC型結晶(実施例12で製造した化合物)、化合物IIのB型結晶(実施例14で製造した化合物)および化合物IIIのC型結晶(実施例16で製造した化合物)は、それぞれ1.8、1.1、および7.0nMのIC50値を示した。
【0163】
生物学的実施例2:LTD4による細胞内カルシウム上昇に対する作用
ヒトcysLT2受容体の発現細胞(HEK293)を、96穴プレート1穴当たり1×105個ずつ播種し、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)を用いて、37℃にて5%CO2下で24時間培養した。細胞は、7.5μM Fura2−AM、20mM HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)および2.5mM プロベネシドを含む培地中、37℃で約60分間インキュベーションした。Fura2−AMを取り込ませた細胞はアッセイバッファー(20mM HEPESを含むハンクス緩衝液)で一回洗浄し、FDSS2000(浜松ホトニクス)でLTD4による細胞内カルシウム流入を測定した。本発明の結晶形はLTD4刺激30分前に処置し、100nMのLTD4で誘発される反応を150秒間経時的に測定した。本発明の結晶形の受容体拮抗活性は、LTD4刺激150秒後までの最大値の蛍光強度で評価し、各化合物について50%阻害濃度(IC50)を算出した。
【0164】
その結果、化合物IのC型結晶(実施例12で製造した化合物)、化合物IIのB型結晶(実施例14で製造した化合物)および化合物IIIのC型結晶(実施例16で製造した化合物)は、それぞれ44、2.8および15nMのIC50値を示した。
【0165】
生物学的実施例3:LTD4によるモルモット気道収縮に対する作用
モルモットをペントバルビタールナトリウム(75mg/kg、i.p.)にて麻酔し、切開して気管にポリエチレン細管を挿入した。LTD4を投与するために、頸静脈にカテーテルを挿入した。気管に挿入したカニューレの片側は定量式人工呼吸装置に接続し、換気量5mL、換気回数70回/分で人工呼吸した。気道収縮反応はLTD4を静脈内投与することにより誘発し、コンツェットレスラー(Konzett&Rossler)法により、気道抵抗を測定した。気道収縮反応はLTD4誘発10分後まで測定し、気管を完全に閉塞して得られる最大通気圧を100%として、経時的に気道収縮率を算出した。なお、本発明の結晶形は、LTD4誘発1、2、4、8、12、18、24、36および48時間前に経口投与した。本実施例においては、気道収縮の抑制率が95%を超えるものを、完全に抑制したものと評価した。LTD4誘発2および24時間前に経口投与した結果について、表6および7に示した。
【0166】
その結果、表6に示すように、三重結合を有するエチニルインドール化合物である、本発明の結晶形は、経口投与において、モルモット気道の収縮を完全に抑制することがわかった。しかも、LTD4誘発2時間前投与のみならず、LTD4誘発24時間前投与においても、完全に抑制することが示された。表6中、括弧内の数値は投与量を表わし、表内の数値は抑制率(%)を表わす。
【0167】
【表6】

【0168】
すなわち、三重結合を有するエチニルインドール化合物である、本発明の結晶形は、経口投与においてもその効果が長時間持続する化合物であって、経口呼吸器疾患治療薬として有用であることが示された。
【0169】
ところで、前記特許文献3の比較例2、1、3に記載される4,4’−{4−フルオロ−7−[(E)−2−{4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}ビニル]−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル}ジブタン酸(以下、比較例4と略記する。)、4,4’−{2−メチル−7−[(E)−2−{4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}ビニル]−1H−インドール−1,3−ジイル}ジブタン酸(以下、比較例5と略記する。)、4,4’−{4−フルオロ−2−メチル−7−[(E)−2−{4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}ビニル]−1H−インドール−1,3−ジイル}ジブタン酸(以下、比較例6と略記する。)は、それぞれ表6で示される化合物の三重結合の部分が二重結合であるエテニルインドール化合物である。比較例4〜6を表6で示される化合物と同量投与した場合の気道収縮の抑制率を測定したところ、表7に示すように、LTD4誘発2時間前投与であれば完全に抑制する場合もあるが、LTD4誘発24時間前投与においては、完全には抑制しなかった。表7中、括弧内の数値は投与量を表わし、表内の数値は抑制率(%)を表わす。
【0170】
【表7】

【0171】
熱力学的安定性試験
化合物I、化合物IIおよび化合物IIIの各結晶形の熱力学的安定性を示差走査熱量測定(DSC)により分析した。その結果、本発明の結晶形が、熱力学的安定性に優れた結晶形であることが明らかとなった。
【0172】
例えば、化合物IのA型結晶(比較例1)、B型結晶(実施例11)およびC型結晶(実施例12)のDSCの具体的なデータを、それぞれ図12、図2および図4に示す。化合物IのA型結晶、B型結晶およびC型結晶の吸熱ピークは、それぞれ146℃、127℃および157℃であり、C型結晶の融点が一番高かった。また、化合物IのA型結晶、B型結晶およびC型結晶の融解エンタルピーは、それぞれ96.3J/g、57.2J/gおよび105.6J/gであり、C型結晶の融解エンタルピーが一番高かった。これらの結果から、化合物Iにおいて、C型結晶が最も熱力学的に安定な結晶形であることが確認された。化合物IIにおけるB型結晶および化合物IIIにおけるC型結晶についても熱力学的に安定な結晶形であることが確認された。
【0173】
光安定性試験
化合物I、化合物IIおよび化合物IIIの各結晶形をそれぞれ約5mgずつ秤量し密封して、25℃±2℃の条件下、D65ランプにより総照度として120万lx・h以上、および総近紫外放射エネルギーとして200W・h/m2以上に保存した。
その結果、本発明の結晶形が、光安定性に優れた結晶形であることが明らかとなった。
【0174】
例えば、化合物IIのA型結晶とB型結晶の外観を目視にて確認したところ、保存前の色に対して、保存後の黄色への変色度合いはA型結晶の方が大きかった。すなわち、化合物IIにおいて、B型結晶のほうが光に安定な結晶形であることが確認された。化合物IにおけるC型結晶および化合物IIIにおけるC型結晶についても光に安定な結晶形であることが確認された。
【0175】
[製剤例]
本発明の実施に用いられる製剤例を以下に示す。
【0176】
製剤例1
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得た。
・4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(100g)のB晶;
・カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤)(20g);
・ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)(10g);
・微結晶セルロース(870g)。
【0177】
製剤例2
以下の各成分を常法により混合した後、除塵フィルターでろ過し、5mlずつアンプルに充填し、オートクレーブで加熱滅菌して、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル1万本を得た。
・4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸(200g)のB晶;
・マンニトール(2kg);
・蒸留水(50L)。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明で示される化合物IのC型結晶、化合物IIのB型結晶および化合物IIIのC型結晶は、強力なcysLT1/cysLT2受容体拮抗作用を有するとともに、薬効の持続性に優れる化合物であるので、経口投与において、その効果が長時間持続する喘息治療薬等として大変有用である。
【0179】
また、本発明で示される化合物IのC型結晶、化合物IIのB型結晶および化合物IIIのC型結晶は、熱力学的に安定であることから製造上で安定した供給が可能であり、また光安定性および湿度安定性に優れていることにより保存安定性にも優れるため、医薬品の原薬として大変有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.29、10.24、12.15、17.95および18.44度2θにピークを有する、4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項2】
粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.41、7.29、9.22、10.03、10.24、12.15、12.59、13.36、13.88、14.15、14.44、16.60、17.33、17.95、18.44、18.86、19.27、20.23、21.10、21.85、22.26、23.11、23.63および24.38度2θにピークを有する、請求項1記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項3】
図3に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする請求項2記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項4】
示差走査熱量測定において約157℃に吸熱ピークを有する、4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項5】
図4に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする請求項4記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項6】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約5.12、10.16、10.51、14.90および20.42度2θにピークを有する、4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項7】
粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.12、8.94、9.22、10.16、10.51、12.07、13.07、13.62、14.37、14.90、15.35、16.05、16.92、17.52、17.86、18.61、19.58、19.92、20.42、21.19、21.71、22.03、22.39、23.74および24.24度2θにピークを有する、請求項6記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項8】
図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする請求項7記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項9】
示差走査熱量測定において約146℃に吸熱ピークを有する、4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項10】
図6に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする請求項9記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項11】
粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約5.25、12.16、15.08、17.07および21.44度2θにピークを有する、4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項12】
粉末X線回折スペクトルにおいて、約5.25、8.12、8.92、10.45、11.19、12.16、13.12、13.51、14.54、15.08、15.65、16.25、17.07、17.80、18.61、19.59、20.21、20.75、21.44、22.23、22.53、23.29および24.41度2θにピークを有する、請求項11記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項13】
図9に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする請求項12記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項14】
示差走査熱量測定において約152℃に吸熱ピークを有する、4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項15】
図10に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする請求項14記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の4,4'−[4−フルオロ−7−({4−[4−(3−フルオロ−2−メチルフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−2−メチル−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶を有効成分として含有してなる医薬組成物。
【請求項17】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の4,4’−[2−メチル−7−({4−[4−(ペンタフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶を有効成分として含有してなる医薬組成物。
【請求項18】
請求項11〜15のいずれか1項に記載の4,4’−[4−フルオロ−2−メチル−7−({4−[4−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ブトキシ]フェニル}エチニル)−1H−インドール−1,3−ジイル]ジブタン酸の結晶を有効成分として含有してなる医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−25739(P2012−25739A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136551(P2011−136551)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】