説明

5α−レダクターゼ酵素活性を阻害するための化合物の使用、並びにそれを含有する医薬及び化粧品組成物

本発明の目的は、酵素5α−レダクターゼの活性を阻害するようにデザインされた化合物の使用である。これは、酵素5α−レダクターゼの作用を阻害するようにデザインされた医薬又は化粧品組成物における有効成分としての、一般式(I):CH(−CH=CH)−R(I)[式中、n=2〜7であり、Rは、CHO、CHOH、CHO−CO−R’及びCO−O(−)から選択される(ここで、R’は、H及びC〜C22のアルキルから選択される)]の化合物の新規な使用であって、各化合物が単独で又は他の化合物との混合物で使用される使用、及びそれに由来する医薬又は化粧品組成物の新規な使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、酵素5α−レダクターゼの活性を阻害するようにデザインされた化合物の使用にある。
【背景技術】
【0002】
皮膚、メラノサイト、線維芽細胞及びケラチノサイトに含まれる酵素、5α−レダクターゼの活性に関する報告が十分にあり、それは、尋常性ざ瘡、多毛症、脂漏症及び脱毛症を含めた多くの皮膚疾患において重要な役割を果たすホルモン、ジヒドロテストステロン(DHT)にテストステロンを変える。そのテーマに関する参考文献(非特許文献1〜12)は、言及する価値がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Baxendale, P.M. et al, (1983) Clinical Endocrinology, 18:447.
【非特許文献2】Bayne E.K., Flanagan J., Instein M., Ayala J., Chang B., Azzolina B., Whiting D.A., Mumford R.A., Thiboutot D., Singer I.I., Harris G. (1999). Immunohistochemical localization of types 1 and 2 5-alpha reductase in human scalp. Br J Dermatol Seo; 141(3): 481-91.
【非特許文献3】Bernard, F.-X., Barrault, C., Deguercy, A., De Wever, B. and Rosdy, M. (2002). Expression of type 1 5α-reductase and metabolism of testosterone in reconstructed human epidermis (SkinEthic(登録商標)): a new model for screening skin-targeted androgen modulators. Int. J. Cosmet. Sci.,22(6):397.
【非特許文献4】Colin W. Bayne, Frank Donnelly, Margaret Ross, Fouad K. Habib. (1999).“Serenoa repens (Permixon): a 5alpha-reductase types I and II inhibitor: new evidence in a coculture model of BPH.”Prostate 40(4): 232-41.
【非特許文献5】Delos S., Carsol J.L., Ghazarossian E., Raynaud J.P., Martin P.M. (1995). Testosterone metabolism in primary cultures of human prostate epithelial cells and fibroblasts. J Steroid Biochem Mol Biol, 55(3-4): 375-83.
【非特許文献6】Gomella Leonard, G. (2005). Chemoprevention using dutasteride: the REDUCE trial. Curr. Opin. Urol., 15(1):29-32.
【非特許文献7】Iehle C., Delos S., Guirou O., Tate R., Raynaud J.P., Martin PM. (1995). Human prostatic steroid 5 alpha-reductase isoforms - a comparative study of selective inhibitors. J Steroid Biochem Mol Biol, 54:(5-6): 273-9.
【非特許文献8】J. Clin. Periodontol., 25(1):67.
【非特許文献9】Prager N., Bickett K., French N., Marcovici G.A. (2002). Randomized, double-blind, placebo-controlled trial to determine the effectiveness of botanically derived inhibitors of 5-alpha-reductase in the treatment of androgenetic alopecia. J Altern Complement Med., 8(2):143-52.
【非特許文献10】Rittmaster, R.S. (1994). Finasteride. N. Engl. J. Med., 330:120-125.
【非特許文献11】Santner S.J., Albertson B., Zhang G.Y., Zhang G.H., Santulli M., Wang C., Deners L.M., Shackleton, Santen R.J. (1998). Comparative rates of androgen production and metabolism in Caucasian and Chinese subjects. J Clin Endocrinol Metab, 83(6):2104-9.
【非特許文献12】Soory, M. and Virdi., H. (1998). Effects of the anti-androgen finasteride on 5α-reductase activity in human gingival fibroblasts in response to minocycline.
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、酵素5α−レダクターゼの活性を阻害するようにデザインされた化合物の使用にある。これは、酵素5α−レダクターゼの作用を阻害するようにデザインされた医薬又は化粧品組成物における有効成分としての、一般式(I):
CH(−CH=CH)−R (I)
[式中、
n=2〜7であり、
Rは、CHO、CHOH、CHO−CO−R’及びCO−O(−)から選択される(ここで、R’は、H及びC〜C22のアルキルから選択される)]の化合物の新規な使用を含み、一般式(I)の各化合物は、単独で又は他の化合物との混合物で使用される。
【0005】
本発明の他の目的は、それに由来する医薬及び化粧品組成物に関係する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書の一部として以下に報告される実験的な研究によれば、驚くべきことに、本発明に係る前記化合物を使用した場合、インビトロのマウス線維芽細胞の細胞株において、酵素5α−レダクターゼを強く阻害できることが実証された。
【0007】
従って、本発明は、酵素5α−レダクターゼの前記阻害が有利な効果をもたらすあらゆる治療用途又は化粧用途の有効成分として配合される化合物(I)の使用について言及する。特に、これは、ヒトにおける以下の適用について言及する。
・あらゆる形態の脱毛症の治療への適用
・毛髪再成長の促進への適用
・セボ調節(seboregulation)の促進への適用
・コラーゲンを増加し、エラスチンを強化することによって皮膚の完全性を促進するための適用
・にきび治療への適用
・前立腺癌又は前立腺肥大症の前立腺疾患の治療への適用
【0008】
本発明の他の目的は、上記用途用の組成物であって、治療目的の他に化粧目的を示す組成物であり、それは、前記有効成分を備えてなり、局所投与用及び全身投与用、例えば経口使用用である。
【0009】
本発明に係る組成物は、該組成物の0.05〜0.3%w/wの範囲内の量で前記有効成分を備えることが好ましい。
【0010】
本発明に従って配合される好適な化合物(I)は、以下の通りである。
2,4,6−オクタトリエン−1−オール
2,4,6−オクタトリエン酸
2,4,6−オクタトリエン酸ナトリウム塩
2,4,6−オクタトリエン酸L−リシン塩
2,4,6−オクタトリエン−1−オールパルミタート
2,4,6−オクタトリエナール
【0011】
以下に示す例は、本発明を説明するものであるが、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0012】
以下、一般式(I)の化合物の一部についての特性データ及び式を与える。
【0013】
【化1】


12O mw 124.18
2E,4E,6E−オクタトリエン−1−オール
CAS#:130971−00−5
【0014】
【化2】


10 mw 138.17
2E,4E,6E−オクタ−2,4,6−トリエン酸
CAS#:5205−32−3
【0015】
【化3】


10O mw 122.17
2,4,6−オクタトリエナール(E,E,E),オール−トランス−2,4,6−オクタトリエナール
CAS#:16326−86−6
【0016】
【化4】


・Na mw 160.15
2E,4E,6E−オクタ−2,4,6−トリエン酸ナトリウム塩
CAS#:利用不可
【0017】
【化5】


・C15 mw 284.36
2E,4E,6E−オクタ−2,4,6−トリエン酸L−リシン塩
CAS#:利用不可
【0018】
【化6】


2442 mw 362.60
2E,4E,6E−オクタトリエン−1−オール,パルミタート
CAS#:利用不可
【0019】
上述の用途に特に適した組成物の非制限的な例を以下に与える。
【0020】
成分は、INCI名に従って特定され、その量は、重量/重量の百分率として示される。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
【表5】

【実施例】
【0026】
実験的な研究:マウス線維芽細胞に関する5α−レダクターゼ活性の調節の生体外評価
研究化合物
以下のものと比較された、本発明に係る2,4,6オクタトリエン−1−オール:
・代替ヤブマオ属
・伝統ヤブマオ属
・アジュガ・レプタンスエキス
・フィナステリド
【0027】
行われた試験
マウス線維芽細胞の細胞株において上述の化合物によって48時間処理した後の5α−レダクターゼ活性の調節の評価。
【0028】
研究の説明
目的
この試験のため、線維芽細胞をテストステロンで前処理し、5α−レダクターゼの基礎産生を増加させ、次いで、それらを上述の化合物により48時間処理した。
【0029】
処理が終わり、二方向ELISAを用い、処理された細胞培養物及び未処理細胞培養物におけるテストステロンのDHTへの転換を測定した。この手順は、5α−レダクターゼの比活性のパーセンテージ阻害又は刺激の推定を可能にする。
【0030】
正の対照として、我々は、滴定されたセレノア・レペンス(ノコギリヤシ)の抽出物を用いた。それは、薬局方において5α−レダクターゼを阻害する能力が知られている植物であり、男性の前立腺肥大症の治療における前記目的のために推奨されている。
【0031】
【表6】

【0032】
実験モデル
生体外試験に用いた細胞モデルは、マウス線維芽細胞Balb/c−3T3からなる。
【0033】
この細胞株は、スイスアルビノマウス胎児の線維芽細胞に由来する。
【0034】
上記化合物のサンプルを以下の通り可溶化した。
・2,4,6−オクタトリエン−1−オール:無水エタノール中で1mg/ml
・代替ヤブマオ属(Boehmeria):成長培地+5%DMSO中で5mg/ml
・伝統ヤブマオ属:成長培地+5%DMSO中で2.5mg/ml
・アジュガ・レプタンスエキス:成長培地+5%DMSO中で5mg/ml
・フィナステリド:無水エタノール中で5mg/ml
・セレノア・レペンス:無水エタノール中で10μl/ml
【0035】
処理及び曝露
プレ−インキュベーション
10%FBS(胎児ウシ血清)を加えた25cmフラスコ(T25)中のDMEM(ダルベッコ最小必須培地)に細胞を蒔いた。コンフルエンスに達したら、すぐに培養物を10ng/mlのテストステロンで24時間処理した。
【0036】
処理
プレ−インキュベーション段階後、細胞培養物を最終濃度0.1mg/mlの前記サンプルで処理した。0.1mg/mlのセレノア・レペンスエキスを正の対照として用い、一方、負の対照は、溶媒で処理したプレートにある。曝露は、24時間毎に培地を新しくしながら、37℃、5%COのインキュベーター中で48時間続けた。各サンプルを二通り試験した。
【0037】
実験が終わって、細胞のカウントを行い、あらゆる細胞毒性効果を評価した。細胞外部の区画(調整された成長培地)及び細胞内部の区画(細胞抽出物)における免疫診断テスト(ELISA)を用いて、DHT及びテストステロンの含有量を測定した。
【0038】
細胞抽出物の組成
実験が終わって、成長培地を各フラスコから集め、細胞抽出物を用意した。
【0039】
これは、四段階で行われた。
・フラスコ内における細胞層のインサイチューでのトリプシン処理
・細胞の遠心分離及びペレット状態の細胞の収集
・TritonX−100(基礎培地中で1%)による抽出
・30分間の超音波処理
【0040】
DHT及びテストステロン測定
2つのホルモン、DHT及びテストステロンを上澄み(細胞外DHT/テストステロン)及び細胞抽出物(細胞内DHT/テストステロン)の両方で測定した。
【0041】
5α−レダクターゼの試験を展開する際に、我々は、どちらのホルモンの濃度がなんであっても、テストステロンが8.7%の量については(架橋して)DHT測定を妨害すると確証することができた。従って、新たに合成されたDHTと区別するため、試験の終了時に残存するテストステロンの量を決定することは、根本的に重要である。また、成長培地における主成分である胎児ウシ血清(FBS)におけるDHTの存在は、外来性DHTの源を示しており、テストステロンから開始する細胞によって実際に産生されたDHTを算出する際に考慮される必要がある。
【0042】
その方法は、適切な範囲の濃度で計算された標準曲線の組成を含み、DHT/テストステロンに対する固体基質上に固定化された特異抗体と、該抗体への結合を競合する試薬とを使用する。
【0043】
その反応は、基質溶液を用いて検出され、発色がDHT/テストステロン量の濃度に反比例する化合物を示す。各サンプルについて、450nmの吸光度を読む。DHTの最終計算は、テストステロンの干渉及び成長培地におけるFBSが一因となる外因性DHTの干渉の引き算を含む。
【0044】
結果
【表7】

【0045】
【表8】

【0046】
最終ジヒドロ−テストステロン(DHT)決定
上述の通り、DHTの実際の濃度を式:[測定DHT]−[ウシ血清DHT]−[テストステロン架橋]に従って推定する。
【0047】
成長培地に含まれるDHTの量(ウシ血清に由来する)は、0.1ng/mlである。
【0048】
テストステロン架橋を式:[テストステロン濃度]×8.7/100に従って算出する。
【0049】
【表9】

【0050】
上澄みの体積が10mlであり、細胞抽出物の体積が0.5mlであると分かっているため、セル培養物のフラスコ当たりで産生されるDHTの総量を計算することができる。
【0051】
【表10】

【0052】
次いで、パーセンテージ5α−レダクターゼ阻害を計算することができる。その結果は、実験的測定の平均として表される。全体的な実験誤差は、10%以下であると推定される。様々な計算におけるこのばらつきを統合することは、以下の最終的な表において±0.xとして表される信頼区間の予測を可能にする。
【0053】
【表11】

【0054】
* フィナステリドの信頼区間は±−18〜15であるだろう;パーセンテージ阻害がマイナスとすることができないと考えれば、0をその下限と仮定して結果を表す。
【0055】
コメント
それらの結果は、先に定義した化合物の4つが酵素5α−レダクターゼを有意に阻害することができることを実証した。即ち、2,4,6−オクタトリエン−1−オール、伝統ヤブマオ属、アジュガ・レプタンスエキス及び代替ヤブマオ属である。
【0056】
特に、アジュガ・レプタンスエキスは、正の対照セレノア・レペンス(46−49%)と比べて強い阻害効果(85−87%)があり、一方、2,4,6−オクタトリエン−1−オール及び伝統ヤブマオ属によって誘発される阻害は、およそ27〜48%であった。
【0057】
最も小さい活性物質は、代替ヤブマオ属であった。
【0058】
記載された実験条件では、5α−レダクターゼの阻害剤として文献において知られているフィナステリドは、実質的な阻害効果がないことが分かった。この所見は、5α−レダクターゼが、含まれる組織に応じて別々に発現する2つのイソ型が存在するという事実によって説明できる。なお、タイプ1は、皮膚において優勢であり、タイプ2は、主に前立腺において見られる。更に、フィナステリドは、イソ酵素5α−レダクターゼタイプ2を優先的に阻害し、タイプ1への効果が制限されることが知られている(Rittmaster,1994;Soory and Virdi,1998;Bernard et al.,2002;Gomella Leonard,2005)。その結果、フィナステリドが上述のモデルの細胞培養物において5α−レダクターゼを有意に阻害しないことには、ほとんど驚かない。
【0059】
セレノア・レペンスエキスは、本実験によって確認されるように、タイプ1及びタイプ2の両方の酵素を阻害する。フィナステリドによる処理後と比べてセレノア・レペンスによる処理後の方が強い阻害であることを見出したPrager(2002)によっても、同様の結果が報告された:Pragerモデルでは、セレノア・レペンスによって誘発される阻害は、本研究の場合のように50〜60%であった。Iehle et al(1995)によって報告されたデータは、それらの結果を確認した。
【0060】
結論
上記の実験的な研究においては、本発明に係る化合物2,4,6−オクタトリエン−1−オールと、伝統ヤブマオ属及びアジュガ・レプタンスエキスとがすべて、未処理の対照との比較により、生体外での5α−レダクターゼの活性を有意に阻害した。
【0061】
代替ヤブマオ属だけは、未処理の対照との比較により、生体外での5α−レダクターゼの活性をわずかに阻害するものであった(<10%)。
【0062】
フィナステリドは、有意な阻害効果を示さなかった。
【0063】
臨床研究:アンドロゲン性脱毛症及び円形脱毛症の治療
また、臨床的なパイロット研究を行い、男性及び女性のアンドロゲン性脱毛症及び円形脱毛症の治療における本発明に係る組成物の有効性を評価した。
【0064】
この臨床研究の目的を形成する本発明に係る化合物においては、前記有効成分が、2,4,6−オクタトリエン酸の塩、特にはカリウム塩であり、頭皮への局所投与用に、一日一回の投与量で処方された。
【0065】
材料及び方法
グループ1:アンドロゲン性脱毛症
18〜55歳の間で、アンドロゲン性脱毛症(男性についてはハミルトンスケールに従ってグレードI〜III、女性についてはラディックスケールに従ってグレードI〜II)を患う男女30人(男性15人及び女性15人)を採用した。これはパイロット研究であるため、本発明の組成物を投与するオープントライアルを行った。
【0066】
研究からの排除基準は、次の通りである。
・併用ホルモン療法及び/又は薬理療法
・妊娠及び授乳
・全身性ホルモン疾患、代謝疾患及び自己免疫疾患
・過去三カ月の特異的な毛髪学的治療
・頭皮の同時炎症性疾患、例えば脂漏性皮膚炎、刺激性皮膚炎又はアレルギー性皮膚炎
【0067】
治療する人の臨床的ダーモスコピー評価は、毛髪軸径、毛包周囲ハローの存在、バルブのエピルミネセンス研究による成長期の評価に焦点を合わせた。
【0068】
治療を始める前のTでの基礎評価後に、2つの治療後評価を行った。一つは1月後のTでの評価で、もう一つは3カ月後のTでの評価である。
【0069】
結果
毛髪軸径
それぞれの追跡評価にて、既に確立された区域と標識した区域における毛髪軸径を確立するエピルミネセンス(MoleMax II,Dermal Instruments イタリア)を用いて臨床評価を行った。
【0070】
毛髪軸径の増大が以下のように判断された。
A)62%の場合で、非常に有意であった。
B)21%の場合で、有意であった。
C)17%の場合で、有意でなかった。
【0071】
この改善の割合は、T1からT2に増大した。
【0072】
特に、その結果は、すべての個人においてT0での平均毛髪軸径が0.4mmであったことを示した。
【0073】
T2にて、上述のグループA)は、毛髪軸径が0.7mmであった。
【0074】
グループB)では、毛髪軸径がT2で0.6mmであった。
【0075】
グループC)は、毛髪軸径がT2で0.4mmであった。
【0076】
成長期におけるバルブのパーセンテージ
成長期におけるT0でのバルブのパーセンテージは、検討された全ての個人について平均56%であった。
【0077】
T2にて、それは、以下のように変化した。
A)83%
B)74%
C)61%
【0078】
2)円形脱毛症のグループ
円形脱毛症(エリア・セルシともいう)は、突然の脱毛を伴う疾患であり、典型的には禿げた部分(又は領域)を生じさせる。
【0079】
円形脱毛症の発展段階の大きな特徴は、「エクスクラメーションマーク」毛髪の存在である。なお、それは、底部に向かって漸減して見えるためにそう呼ばれる。
【0080】
試験された人のグループについて、パイロット研究は、我々が、以下のパラメータに基づき、検討された短い期間内での、即ち治療開始前の基礎Tから3カ月の治療後のTまでの、傾向(臨床的改善、安定性、悪化)を確認だけできるようにした。
・脱毛
・頭皮上の禿げた部分の進行
・エクスクラメーションマーク毛髪の存在
【0081】
結果
脱毛:円形脱毛症にかかった領域における毛髪の脱けは、アンドロゲン性脱毛症が盛んな人の55%で減少した。
【0082】
禿げた部分の進行:43%の人において禿げた部分の進行の停止及び禿げた部分の程度のわずかな減少の痕跡があり、15%の人において該部分の安定化の痕跡があった。
【0083】
エクスクラメーションマーク毛髪の存在:エクスクラメーションマーク毛髪の数は、禿げた部分の安定化又はわずかな改善があった人においてT0で平均82%からT2で46%に変化し、禿げた部分が悪化した人においてはT0で平均83%から平均82%に変化した。
【0084】
結論
この臨床研究は、本発明に係る組成物(有効成分:2,4,6−オクタトリエン酸のカリウム塩)の頭皮への局所投与が、以下の通り、アンドロゲン性脱毛症及びエリア・セルシを患う毛髪のバルブへの効果的な作用を有することを実証した。
【0085】
アンドロゲン性脱毛症グループ
アンドロゲン性脱毛症の基本パラメータ及び特徴的パラメータは、治療した人の83%において、全体的にプラスに修正された。毛髪軸径及び成長期におけるバルブの割合の両方が、治療を受けた個人において有意に増大した。製品を用いた後に副作用を示す人はいなかった。
【0086】
円形脱毛症グループ
パイロット研究から、全体的に改善に向かう傾向が治療された人の58%において報告されたことが分かった(禿げた部分の臨床的な改善及び安定化)。
【0087】
エクスクラメーションマーク毛髪(エリア・セルシの特徴的な兆候)の数は、治療後に改善の傾向があった人において有意に減少し、治療の影響を受けなかった人においては、変化がなかった。
【0088】
製品を用いた後に副作用を示す人はいなかった。
【0089】
更なる適応
更に、更なる臨床研究において得られたデータは、本発明に係る組成物による頭皮の局所的処置が、頭皮への毛髪の移植を受けた移植毛包における早期アポトーシス及び休止期の予防に期待されていることを示した(有効成分:2,4,6−オクタトリエン酸塩,移植の15日前から移植の90日後まで1日に1回)。
【0090】
全体的に、上述の記載に基づき、本発明に係る化合物は、最初に述べた目的の他、更なる利点を達成することを実証するという結論が出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける酵素5α−レダクターゼの作用を阻害するための医薬又は化粧品組成物における有効成分としての、一般式(I):
CH(−CH=CH)−R (I)
[式中、
n=2〜7であり、
Rは、CHO、CHOH、CHO−CO−R’及びCO−O(−)から選択される(ここで、R’は、H及びC〜C22のアルキルから選択される)]を有する化合物の単独又はその混合物での使用。
【請求項2】
脱毛症を治療するための請求項1に記載の使用。
【請求項3】
毛髪の成長を促進するための請求項1に記載の使用。
【請求項4】
ヒト頭皮上でのセボ調節を促進するための請求項1に記載の使用。
【請求項5】
コラーゲン及びエラスチンの頑健性を向上させることによって皮膚の完全性を促進するための請求項1に記載の使用。
【請求項6】
にきびを治療するための請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前立腺疾患、即ち前立腺癌及び前立腺肥大症を治療するための請求項1に記載の使用。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の使用のための組成物であって、
前記有効成分が、一般式(I):
CH(−CH=CH)−R (I)
[式中、
n=2〜7であり、
Rは、CHO、CHOH、CHO−CO−R’及びCO−O(−)から選択される(ここで、R’は、H及びC〜C22のアルキルから選択される)]の化合物又はその混合物であることを特徴とする組成物。
【請求項9】
前記有効成分が、2,4,6−オクタトリエン−1−オールであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記有効成分が、2,4,6−オクタトリエン酸であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記有効成分が、一般式(I)を有する化合物(ここで、RがCO−O(−)である)であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記有効成分が、2,4,6−オクタトリエン酸の塩であることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記有効成分が、2,4,6−オクタトリエン酸ナトリウム塩であることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記有効成分が、2,4,6−オクタトリエン酸L−リシン塩であることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記有効成分が、2,4,6−オクタトリエン−1−オール,パルミタートであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
前記有効成分が、2,4,6−オクタトリエナールであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項17】
前記有効成分が、式(I)の化合物の2種以上の混合物であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項18】
前記有効成分を0.05〜0.3重量%の範囲の量で含むことを特徴とする請求項8〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記有効成分を皮膚又は頭皮上への局所投与に適した任意の賦形剤と共に含むことを特徴とする請求項8〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記有効成分を経口投与に適した任意の賦形剤と共に含むことを特徴とする請求項8〜19のいずれかに記載の組成物。

【公表番号】特表2012−508214(P2012−508214A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535128(P2011−535128)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064881
【国際公開番号】WO2010/052329
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(504244025)ギウリアニ ソシエタ ペル アチオニ (7)
【Fターム(参考)】