説明

5’−キサンチル酸を生産する微生物

本発明は5'-キサンチル酸を生産するコリネバクテリウムアンモニアゲネス(Corinebacterium ammoniagenes) CJXOL 0201 KCCM 10447に関する。より詳細には、本発明は、コリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340の変異株であってオリゴマイシン耐性を有するコリネバクテリウムアンモニアゲネス CJXOL 0201 KCCM 10447に関する。強化された呼吸活性を有する変異株を取得するために、本発明はコリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340を親株として選定し、通常の方法により紫外線照射およびN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)などの変異誘発剤で処理した。従って、本発明のコリネバクテリウムアンモニアゲネス CJXOL 0201 KCCM 10447は、同一の発酵時間でATP再生活性を増大させることができ、培養液中の5'-キサンチル酸を高収率および高濃度で蓄積させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は5'-キサンチル酸を生産する微生物自体に関し、より詳細には、コリネバクテリウムアンモニアゲネス(Corinebacterium ammoniagenes) KCCM 10340の変異株であって、呼吸活性を強化する目的で、ATP合成酵素の活性を阻害し酸化的燐酸化過程を阻害するオリゴマイシンに対する耐性を有し、ATP再生活性を強化して同一の発酵時間内に5'-キサンチル酸を高収率および高濃度で培養液中に蓄積させる微生物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
5'-キサンチル酸は核酸生合成代謝系の中間物質であって、動植物の体内で生理的に重要な意味を有するだけでなく、食品・医薬品および各種の医療分野など多方面に利用されており、本発明は、公知の菌株コリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340から得られた、オリゴマイシン耐性を有し、直接発酵法により高収率かつ高濃度で5'-キサンチル酸を生産する変異株に関する。
【0003】
5'-キサンチル酸はプリンヌクレオチド生合成代謝系の中間生成物であって5'-グアニル酸(GMP)の製造原料として重要な物質である。純度(fineness)が高く、高品質の5'-グアニル酸の製造方法として現在広く利用されている方法は微生物発酵法であって、まず5'-キサンチル酸を生産し次にこれを酵素学的に5'-グアニル酸に変換するため、5'-グアニル酸を生産するには対応する量の5'-キサンチル酸が必要である。従来の5'-キサンチル酸の製造方法としては、化学合成法、酵母中のリボ核酸を分解した結果生産される5'-グアニル酸を脱アミノ化する方法、発酵培地中に前駆物質としてキサンチンを添加する発酵方法、微生物の変異株を使用する発酵方法、抗生物質添加による製造法(日本特許 昭42-1477、昭44-20390)および界面活性剤添加による製造法(日本特許 昭42-3825、昭42-3838)などが知られている。このうちでも微生物の変異株による5'-キサンチル酸の直接発酵法が工業的に有利であるため、本発明者らは、既存のコリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340が所有している形質を改良して5'-キサンチル酸を高収率で生産する形質に変換することにより、5'-キサンチル酸の生産性が向上した変異株を開発した。
【0004】
大部分の微生物は充分な栄養成分の供給がなされた場合、一定の通気条件下で培養を持続すると菌体量がそれ以上増加し得ない状態に至り、特に成長依存的産物である1次代謝産物を生産する微生物の場合にはそれ以上産物の濃度が増加し得ない状態に至る。この現象は、主に溶存酸素の供給が制限されるために起こる。溶存酸素供給の制限を解除するためには、通気条件および攪拌条件を強化する方法があるが、実際の生産法では技術的および経済的な限界が存在する。このような限界を克服し、制限された溶存酸素の供給のもとで、微生物の菌体量および諸生理活性を高めることによって5'-キサンチル酸の収率および濃度を増加させるためには、本発明者らは、同一の溶存酸素条件で微生物の呼吸活性およびATP再生活性を高める手法が有用であろうと考えた。このようにして本発明者らは様々な呼吸阻害剤に耐性を有する微生物の菌株を検討した。
【発明の開示】
【0005】
その結果、こうした微生物の中でもオリゴマイシンに耐性を付与した変異株が最も効果的であり、直接発酵法により5'-キサンチル酸を既存の方法に比べて高収率・高濃度で生産できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0006】
本発明はコリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340の変異株であって、5'-キサンチル酸を生産するコリネバクテリウムアンモニアゲネス CJXOL 0201 (KCCM 10447)に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の微生物コリネバクテリウムアンモニアゲネス CJXOL 0201は以下の方法で取得した。すなわち、コリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340を、通常の方法に従い紫外線照射およびN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)などの変異誘発剤で処理した後、異なる濃度レベルのオリゴマイシン(1,2,5,10,20,50 mg/L)を添加した培地(葡萄糖 20 g/L,第一燐酸カリウム 1 g/L,第二燐酸カリウム 1 g/L,ウレア 2 g/L,硫酸アンモニウム 3 g/L,硫酸マグネシウム 1 g/L,塩化カルシウム 100 mg/L,硫酸鉄 20 mg/L,硫酸マンガン 10 mg/L,硫酸亜鉛 10 mg/L,ビオチン 30 μg/L,塩酸チアミン 0.1 mg/L,硫酸銅 0.8 mg/L,アデニン 20 mg/L,グアニン 20 mg/L,pH7.2)で生育できるものの中から変異株を選択した。この際、培地中に0〜50 mg/Lの濃度のオリゴマイシンを培地に添加したところ、オリゴマイシン濃度20 mg/Lまでは耐性が見られたが、20 mg/Lを超える濃度レベルでは生育が観察されなかった。本発明者らはオリゴマイシン濃度20 mg/Lでも生育する菌株を選別し、その菌株をCJXOL 0201と命名し、ブダペスト条約に従い2002年11月21日付で韓国種菌協会(KCCM:Korean Culture Center of Microorganisms)に寄託し寄託番号KCCM 10447を得た。
【0008】
本発明において分離した新規の変異株CJXOL 0201の生化学的特性を以下の表1に示す。表1によると、本発明の微生物は10 mg/L濃度のオリゴマイシン添加培地でも増殖可能であることが分かる。培地は30℃で5日間発酵させた。
【表1】

【0009】
【実施例1】
【0010】
使用菌株:コリネバクテリウムアンモニアゲネス CJXOL 0201およびコリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340
種培地:葡萄糖 30 g/L,ペプトン 15 g/L,酵母抽出物 15 g/L,塩化ナトリウム 2.5 g/L,ウレア 3 g/L,アデニン 150 mg/L,グアニン 150 mg/L,pH7.2
発酵培地:(1)A培地:葡萄糖 60 g/L,硫酸マグネシウム 10 g/L,硫酸鉄 20 mg/L,硫酸亜鉛 10 mg/L,硫酸マンガン 10 mg/L,アデニン 30 mg/L,グアニン 30 mg/L,ビオチン 100 μg/L,硫酸銅 1 mg/L,塩酸チアミン 5 mg/L,塩化カルシウム 10 mg/L,pH7.2
(2)B培地:第一燐酸カリウム 10 g/L,第二燐酸カリウム 10 g/L,ウレア 7 g/L,硫酸アンモニウム 5 g/L。
【0011】
発酵方法:前記種培地5 mLを直径18 mmの試験管に注ぎ込み、通常の方法により加圧滅菌した。滅菌後、コリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340およびコリネバクテリウムアンモニアゲネス CJXOL 0201をそれぞれ培地に接種し、180 rpm、30℃で18時間振とう培養した。得られた培養液を種培養液として用いた。次に発酵培地としてA培地とB培地を別々に、通常の方法に従い加圧滅菌した。A培地29mLとB培地10 mLをそれぞれ滅菌済みの500 mL振とう用三角フラスコに注ぎ込み、前記種培養液を1 mL植菌し、200 rpm、30℃で90時間発酵させた。培養完了後、培地中の5'-キサンチル酸の蓄積量は、KCCM 10340が23.0 g/Lであり、CJXOL 0201が26.5 g/Lであった(蓄積した5'-キサンチル酸の濃度は5'-キサンチル酸ナトリウム・7H2Oで表した)。
【0012】
【実施例2】
【0013】
使用菌株:実施例1と同一
1次種培地:実施例1の種培地と同一
2次種培地:葡萄糖 60 g/L,第一燐酸カリウム 2 g/L,第二燐酸カリウム 2 g/L,硫酸マグネシウム 1 g/L,硫酸鉄 22 mg/L,硫酸亜鉛 15 mg/L,硫酸マンガン 10 mg/L,硫酸銅 1 mg/L,塩化カルシウム 100 mg/L,ビオチン 150 μg/L,アデニン 150 mg/L,グアニン 150 mg/L,塩酸チアミン 5 mg/L,消泡剤 0.6 mL/L,pH7.2
発酵培地:葡萄糖 151 g/L,燐酸 32 g/L,水酸化カリウム 25 g/L,アデニン 198 mg/L,グアニン 119 mg/L,硫酸鉄 60 mg/L,硫酸亜鉛 42 mg/L,硫酸マンガン 15 mg/L,硫酸銅 2.4 mg/L,アラニン 塩22 mg/L,NCA 7.5 mg/L,ビオチン 0.4 mg/L,硫酸マグネシウム 15 g/L,シスチン塩 30 mg/L,ヒスチジン塩 30 mg/L,塩化カルシウム 149 mg/L,塩酸チアミン 15 mg/L,消泡剤 0.7 mL/L,CSL 27 mL/L,マグロ抽出物 6 g/L,pH7.3。
【0014】
1次種培養:前記1次種培養培地50 mLを500 mL振とう用3角フラスコに注ぎ込み、121℃で20分間加圧滅菌した。冷却後、コリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340およびコリネバクテリウムアンモニアゲネス CJXOL 0201をそれぞれ接種し、30℃、180 rpmで24時間振とう培養した。
【0015】
2次種培養:2次種培地を5 L容量の実験用発酵槽に2 Lずつ注ぎ込み、121℃で10分間加圧滅菌した。冷却後、前記1次種培養液50 mLを接種後、空気を0.5 vvmで供給しながら900 rpm、31℃で24時間培養した。培養中のpHはアンモニア溶液で調節しながら7.3に維持した。
【0016】
発酵方法:前記発酵培地を30 L容量の実験用発酵槽に8 Lずつ注入し、121℃で20分間加圧滅菌した。冷却後、前記2次種培養液を1.5 Lずつ接種した後、空気を1 vvmで供給しながら400 rpm、33℃で培養した。培養プロセス中に残存糖レベルが1%より低くなった場合、滅菌された葡萄糖を供給して発酵培養液中の合計糖レベルを30%に維持した。培養プロセス中のpHは、アンモニア溶液で調節して7.3に維持し、90時間培養した。培養完了後、5'-キサンチル酸の培地中の蓄積量はKCCM 10340が137.2 g/Lであり、CJXOL 0201が148.4 g/Lであった(蓄積した5'-キサンチル酸の濃度は5'-キサンチル酸ナトリウム・7H2Oで表した)。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明はコリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340を親株として選定し、通常の方法により紫外線照射またはN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)などの変異誘発剤で処理した。培養プロセス中に蓄積する高濃度の5'-キサンチル酸、高濃度の葡萄糖、および培地に添加した様々な炭素源が引き起こす浸透圧は、菌体外の浸透圧を高くし、5'-キサンチル酸生産細胞の正常な生理活性を阻害し菌体生成を鈍化させ、5'-キサンチル酸の生産を減少させるが、KCCM 10340株はこうした浸透圧に耐性を有する。浸透圧耐性の形質が強化され呼吸活性が強化された菌株を取得するために、本発明はコリネバクテリウムアンモニアゲネス KCCM 10340を改変し、オリゴマイシン(ATP合成活性および酸化的燐酸化反応を阻害する)耐性を有し、ATP再生活性が強化され5'-キサンチル酸を同じ発酵時間で培養液中に高収率および高濃度で蓄積させる変異株を選択した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴマイシンに対して耐性を有し、5'-キサンチル酸を生産することを特徴とする、コリネバクテリウムアンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes) CJXOL 0201 KCCM 10447。
【請求項2】
請求項1記載のコリネバクテリウムアンモニアゲネス CJXOL 0201 KCCM 10447を利用した5'-キサンチル酸を生産する方法。

【公表番号】特表2006−502740(P2006−502740A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558538(P2004−558538)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002703
【国際公開番号】WO2004/053109
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(502429213)シージェイ コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】CJ CORPORATION
【Fターム(参考)】