説明

5’−キサントシン一リン酸生産能が向上されたコリネバクテリア菌株およびそれを用いた5’−キサントシン一リン酸の生産方法

【課題】本発明は、野生型より高いリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性を有する新規微生物に関する。
【解決手段】また、図1の切断地図に示された構造を有する組換えベクター、前記ベクターで形質転換されたコリネバクテリア菌株、および前記形質転換された菌株を培養することによって、5’−キサントシン一リン酸を生産する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号7の遺伝子を含む図1の切断地図に示された構造を有する組換えベクター、前記組換えベクターで形質転換された、内在的リンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性よりも高い活性を有するコリネバクテリア菌株(Corynebacteria strain)に関する。また、本発明は、前記コリネバクテリア菌株を用いた5’−キサントシン一リン酸の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5’−グアノシン一リン酸(5'-guanosine monophosphate:以下、“GMP”という)は、イノシン一リン酸(inosine monophosphate:以下、“IMP”という)のような香味増進剤として広く使用される食品添加剤である。GMPは、うま味を引き出し、その使用は、また使用されるグルタミン酸一ナトリウム(MSG)に左右される。これは、普通にIMPと共に使用され、MSGのうま味の強さを増加させる。
【0003】
今まで知られているGMPの製造方法の例には、(1)酵母RNAの酵素的分解法、(2)GMPへの直接微生物発酵法、(3)グアノシンへの微生物発酵に続いて化学的リン酸化する方法、(4)グアノシンへの微生物発酵に続いて酵素的リン酸化する方法、(5)キサントシン5’−一リン酸(xanthosine 5’-monophosphate:以下、“XMP”という)への微生物発酵に続いてコリネバクテリア菌株によってGMPに転換する方法、(6)XMPへの微生物発酵に続いてアミナーゼ活性を有するエシェリキア・コリ(Escherichia coli)によってXMPをGMPに転換する方法が含まれる。このうち、方法(1)は、物質供給の困難さがあり、経済的に無益であり、方法(2)は、GMPの膜透過性によって低い収率の短所がある。したがって、他の方法が産業的適用で広く用いられる。
【0004】
XMPを生産してGMPに転換させる方法において、XMPの生産性を増加させるのは重要である。例えば、韓国特許出願第10−1991−018016号は、XMPを高収率で生産できるXMPアミナーゼ不活性菌株を開示しており、これは、アデニンおよびグアニンに対して半栄養要求性であり、グアノシン類似体に耐性があり、細胞壁を破壊する酵素のリゾチームに対して非常に敏感である。韓国特許出願第10−2001−000513号には、培養培地にXMPを高濃度で直接蓄積させ得るコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、およびそれを用いたXMPの生産方法を開示している。前記菌株は、親株をUV光で照射し、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)などの突然変異誘発源で処理し、親株の形質を変形させてXMPの生合成に影響を及ぼすバリンの類似体であるノルバリンに耐性の変異株を選別することによって製造される。韓国特許出願第10−2008−006537号においては、XMPの生合成に関連した遺伝子のpurNおよびpurHを変形させてXMP収率を増加させる方法を開示している。
【0005】
一方、ATP生産は、XMP収得を誘導するが、これはATPがXMPの生合成に関与するためである。また、リンゴ酸デヒドロゲナーゼの活性は、ATPの生産に大きな影響を及ぼす。しかし、XMP生産収率を増加させるためにリンゴ酸デヒドロゲナーゼの活性を増進させるように考案された微生物および方法は、以前文献のどこにも言及されたことがない。
【0006】
XMP生産菌株のATP生産を増加させることが重要であるということに留意し、本発明者らは、集中研究を行い、そういう増加の原因になる遺伝子を明らかにした。また、前記遺伝子の2つのコピーを連続的に含む組換えベクターで形質転換されたコリネバクテリア菌株がXMPを高収率で生産できることを明らかにした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、内在的リンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性よりも高い活性を有するコリネバクテリア菌株を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、配列番号7の遺伝子を含む図1の切断地図に示された構造を有する組換えベクターを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、前記組換えベクターで形質転換されたコリネバクテリア菌株を提供することである。
【0010】
本発明の他のさらなる目的は、前記形質転換された微生物を培養し、培養液からXMPを収得することによってXMPを生産する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様により、本発明は、内在的リンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性よりも増進された活性を有するコリネバクテリア菌株に関する。好ましくは、本発明のコリネバクテリア菌株は、内在的活性よりも高いリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性を有するように変更されてXMP生産能が向上する。
【0012】
本願で使用される用語“リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(malate dehydrogenase)”は、脱水素化によるリンゴ酸のオキザロ酢酸への転換を触媒する酵素を意味する。この酵素は、乳酸デヒドロゲナーゼと共に生物の非常に広い領域で発見され、その活性のために補助因子としてDPNおよびNADを必要とし、これらは普通乳酸デヒドロゲナーゼを伴う。本発明によるコリネバクテリア菌株において、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性は増加されてXMPを高収率で生産する。
【0013】
本願で使用されたような用語“内在的活性”は、野生型微生物中の関心のある酵素活性を表そうとするものである。用語“内在的活性よりも高い活性”は、酵素それ自体による活性増加からもたらされたものでもまたは、内在的遺伝子または外来遺伝子による活性増加からもたらされたものでも、内在的変種の活性と比較して増加された酵素活性を意味する。例えば、酵素活性の増加は、これに制限されないが、遺伝子コピー数の増加または減少、関心のあるプロモーターの代替、変形または突然変異などをはじめとする、技術分野において十分公知の任意の方法によって達成され得る。
【0014】
本発明により増加される活性を有する標的酵素であるリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、コリネバクテリアのmqo遺伝子によってエンコードされる。mqo遺伝子と生物学的に同一であるとか、符合する限り、任意の変異体または類似体が本発明で使用され得る。すなわち、遺伝子の活性がmqo遺伝子の活性と実質的に同一であるとか、類似する場合、mqo遺伝子の範囲内に属する任意の遺伝子が本発明で有用である。好ましくは、本発明に有用な遺伝子は、mqo配列と70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より一層好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する。より好ましくは、リンゴ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号7のヌクレオチド配列によってエンコードされる。遺伝子コピーの増加は、外来遺伝子の導入および/または内在的遺伝子の増幅によって達成され得る。遺伝子のコピー数は、必要および目的に応じて当業者によって容易に決定され得る。内在的遺伝子の増幅は、また、当技術分野に公知の方法、例えば、圧力下で適当な選択培地で培養する方法を用いて行うことができる。好ましい例において、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を運ぶベクターをコリネバクテリア菌株へ導入して、内在的活性よりも増進された活性を有する形質転換された微生物を生成した。
【0015】
当技術分野に公知され、コリネバクテリア属微生物に属する限り、任意の菌株が制限なく本発明で使用され得る。好ましくは、本発明に有用なコリネバクテリア菌株の例としては、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、およびブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)が含まれるが、これらに制限されない。詳細には、コリネバクテリア菌株中で、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6872、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)FERM BP−1539、コリネバクテリウム・グルタミクム ATCC 13032、コリネバクテリウム・グルタミクム R、ブレビバクテリウム・フラバム ATCC 14067、ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム ATCC 13869およびこれらの誘導体がある。好ましいのは、コリネバクテリア・アンモニアゲネス KCCM−10530から形質転換されたコリネバクテリウム・アンモニアゲネス KCJ−1304である。
【0016】
本発明の他の態様により、本発明は、配列番号7の遺伝子を運ぶ図1の切断地図に示された構造を有する組換えベクターに関する。
【0017】
配列番号7の遺伝子は、コリネバクテリアからのmqo遺伝子の野生型ヌクレオチド配列を有する。しかし、前記したように、誘導体または類似体がmqo遺伝子と生物学的に同一であるか、相応する限り、mqo遺伝子の誘導体または類似体を運ぶ組換えベクターも本発明に有用であることが明らかである。本願で使用される用語“mqo遺伝子”は、“リンゴ酸:キノン酸化還元酵素(malate:quinone oxidoreductase)”遺伝子の略語であって、リンゴ酸をオキサロ酢酸に酸化させる役割を果たすリンゴ酸オキサロ酢酸をコードする遺伝子を意味する。
【0018】
好ましい実施態様において、配列番号7のmqo遺伝子を運ぶ組換えベクターを提供する。mqo遺伝子を運ぶ限り、任意の通常的組換えベクターが制限なく本発明で使用され得る。好ましいのは、pDZ−mqoである。本発明の好ましい例において、配列番号7を含有するmqo遺伝子を用いて組換えpDZ−mqoベクターを構築した(図1参照)。
【0019】
本発明のさらなる態様により、本発明は、mqo遺伝子を運ぶ組換えベクターで形質転換されたコリネバクテリア菌株に関する。
【0020】
コリネバクテリア由来mqo遺伝子は、制限なく当技術分野に公知の形質転換を用いて使用され得る。好ましくは、mqo遺伝子は細胞への形質転換に使用するためのベクターにクローン化される。
【0021】
当該技術分野に公知された場合、任意の形質転換方法が形質転換のために使用され得る。本願に使用されたような用語“形質転換”とは、外部DNAの導入、ゲノム統合および発現による細胞の遺伝的変更を意味する。典型的な形質転換方法には、CaCl沈殿法、DMSO(ジメチルスルホキシド)と組合せてCaCl沈殿の効果が改善されたハナハン(Hanahan)方法、電気穿孔法、リン酸カルシウム形質移入法、原形質体融合法、シリコンカーバイド繊維媒介形質転換法、アグロバクテリウム媒介形質転換法、PEG媒介形質転換法、デキストラン硫酸、リポフェクタミン、および乾燥/抑制媒介形質転換法などが含まれる。本発明によるpDZ−mqoでの形質転換は、形質転換の例に限定されず、当技術分野に公知の任意の方法を制限なく使用して達成され得る。
【0022】
本願で使用されたような用語“ベクター”は、外部遺伝物質を適合な宿主細胞に運ぶビヒクルとして使用されるDNA分子を意味し、転移遺伝子が宿主ゲノムと組換わるように許容する調節要素を含有するDNA構築物である。好ましくは、本発明によるmqoベクターを運ぶ組換えベクターは、図1の切断地図に示された構造を有することができる。図1の切断地図によって示されたベクターは、コリネバクテリアに順次にまたは、同時に導入され得る。本発明の好ましい実施態様により、組換えベクターは、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス KCCM−10530中に形質転換された後、選択培地で培養して2つのコピーのmqo遺伝子を相同組換えを介して宿主のゲノムに統合させ、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス KCJ−1304と命名したコリネバクテリウム・アンモニアゲネスを生成する。これを受託番号 KCCM10972Pとして寄託した。
【0023】
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスKCJ−1304は、KCCM−10530のゲノムに統合されたmqo遺伝子の2つのコピーを有するが、これは前記菌株への図1の切断地図に示された構造を有するpDZ−mqoの導入および内在的遺伝子と2つのコピーのmqo遺伝子との相同組換えに起因する。
【0024】
本発明のさらに別の態様により、本発明は、前記形質転換されたコリネバクテリア菌株を培養し、培養液からXMPを回収する段階を含む、XMPの生産方法に関する。本発明において、XMPは形質転換された微生物の直接発酵によって高収率で生産される。好ましくは、形質転換された微生物は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性が内在的活性よりも増進されたコリネバクテリア菌株である。組換えベクターのmqo遺伝子は、好ましくは形質転換された微生物のゲノムに統合されることによってXMPを高収率で生産することができる。好ましい実施態様において、微生物は、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスKCCM10972Pである。
【0025】
当技術分野で公知の任意の培地が、XMPを生産できる菌株の培養に制限なく使用され得る。好ましくは、培地は、グルコースを炭素源として含有し、任意に様々な他の炭素源を含有する。関心のある微生物の培養に使用するために、培地は微生物の成長のための要求条件を満たさなければならない。コリネバクテリア菌株に対する培養培地は公知されている(例えば、文献[Manual of Methods for General Bacteriology. American Society for Bacteriology. Washington D.C.、USA,1981]参照)。コリネバクテリア菌株に有用な炭素源の例としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デンプン、セルロースなどのような糖および炭水化物、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ヤシ油などのようなオイルおよび脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸などのような脂肪酸、グリセロール、エタノールなどのようなアルコール、酢酸のような有機酸が含まれる。これらの炭素源は、個別的にまたは組合せて使用され得る。ペプトン、酵母抽出物、牛肉抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、大豆粕のような有機物質、および尿素、および塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムのような無機化合物が培地で窒素源として個別的にまたは組合せて使用され得る。リン酸二水素カリウムまたはリン酸水素二カリウム、または相応するナトリウム塩がリン源として使用され得る。また、培養培地は、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄などのような金属塩を含有することができる。さらに、アミノ酸および/またはビタミンが必須要素として要求され得る。培養培地は、また適合な前駆体を含有することができる。これらの物質は、回分式または連続式で培地に添加され得る。
【0026】
培養培地は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのような塩基性化合物または、リン酸または硫酸のような酸性化合物によってpHを調節することができる。脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を使用して培養中に気泡の生成を防止することができる。培地は、酸素または、酸素含有気体(例えば、空気)で通気するようにして好気状態を維持するか、窒素、水素または二酸化炭素ガスで嫌気状態を維持する。培養温度は、一般的に20℃〜45℃、好ましくは、30℃〜35℃で維持する。培養は、最大量のXMPが得られる時まで持続する。これに関連して、10〜160時間の期間が要求される。
【0027】
これで生産された5XMPは、培養培地に分泌されるか、細胞内に残っている。本発明によるXMP生産方法は、細胞または培養培地からXMPを回収することを含む。細胞または培養培地からXMPを回収するために、当技術分野でよく公知された任意の方法が用いられる。そのような方法の例としては、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化およびHPLCが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明で使用されたような用語“5’−キサントシン一リン酸”は、核酸生合成の中間体であって、動植物において生理学上重要性を有する。したがって、食品産業、製薬産業および医療産業をはじめとする様々な分野で適用され得る。キサントシン一リン酸は、特にMSGとともに相乗作用をするキノコ味を提供するための核酸系香味増進剤として使用される食品添加剤である。XMPは、IMPから形成されるプリン代謝系の中間物質で、GMPを形成する。本発明による形質転換された微生物を使用する場合、XMPは既存の微生物に比べて約6%増進された高収率で生成され得る。
【発明の効果】
【0029】
本発明の形質転換されたコリネバクテリア菌株は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼの増進された活性によって、既存の微生物に比べて高収率でXMPを生産する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、2つのコピーのmqo遺伝子がpDZベクターに挿入された組換えベクターpDZ−mqoの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
例示のために提示された下記実施例を介して本発明をさらによく理解できるが、これは本発明を制限しようとするものではない。
【0032】
実施例1:XMP生産菌株コリネバクテリウム・アンモニアゲネスKCCM−10530由来mqoのクローニングおよびゲノム統合のための組換えベクター(pDZ−mqo)の構築
mqo遺伝子のヌクレオチド配列(NCBI ID_3345228)をNIHジェンバンク(GenBank)のデータから得た。前記配列に基づいて、2対のプライマー(配列番号1〜4)を合成した。
コリネバクテリウムKCCM−10530を鋳型としながら、高信頼DNAポリメラーゼ PfuΜltraTM(ストラタジーン(Stratagene))の存在下で前記配列番号1〜4のプライマーを使用して95℃で30秒間変性させ、55℃で30秒間アニーリングさせ;68℃で2分間伸長させることを25回繰り返した。こうして得たPCR生成物は、それぞれ2.1kbのmqo遺伝子2つのコピー(mqo−A、mqo−B)であり、これを配列番号1と2、および配列番号3と4の2つのセットをそれぞれ使用して増幅させた。

配列番号1:gctctagaATCGGTCATTCCATGAACCC
配列番号2:cgcggatccCATCGATATCGCCAACTCCA
配列番号3:cgcggatccATCGGTCATTCCATGAACCC
配列番号4:gctctagaCATCGATATCGCCAACTCCA

適合した制限酵素で処理した後に(mqo−A:XbaI+BamHI、mqo−B:BamHI+XbaI)、PCR生成物であるmqo−Aおよびmqo−Bを3片接合を介してXbaIとエビアルカリ性リン酸加水分解酵素で以前に処理したpDZベクターへ挿入した(大韓民国特許出願第10−2007−94433号参考)。最終的に、mqo遺伝子2つのコピーが連続的にクローン化された組換えpDZ−mqoベクターを得た。図1は、コリネバクテリウムゲノムに統合させるための組換えpDZ−mqoベクターの構造を示す模式図である。
【0033】
実施例2:mqo挿入された菌株の生成
前記pDZ−mqoベクターをKCCM−10530菌株に形質転換し、ゲノム上のmqo遺伝子に隣接した位置で一つのmqo遺伝子を挿入するためにゲノムと相同組換えを行った。こうして、そのゲノム上に2つのコピーのmqo遺伝子を有する、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスKCJ−1304と命名した新規XMP生産菌株を得た。2つコピーのmqo遺伝子の連続的挿入は、2つコピーのmqo遺伝子のヌクレオチド配列の上流と下流を標的とするプライマーセット(配列5および6)を用いたPCRで確認した。

配列番号5 CTTTTCGATGACGCCCAA
配列番号6 CCACTTTATCGGGTGAGACCA

【0034】
実施例3:mqo挿入された菌株のリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性
実施例2で製造されたXMP生産コリネバクテリウム・アンモニアゲネスKCJ−1304に対して下記のようにリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性を分析した。前記菌株をバクトペプトン10g/l、バクト牛肉抽出物5g/l、バクト酵母抽出物5g/l、NaCl2.5g/l、アデニン50mg/l、およびグアニン50mg/lを含有した培地に接種し、30℃で12時間OD10が得られるまでインキュベーションさせた。細胞培養液10mlを回収して50mM HEPES、10mM 酢酸カリウム、10mM CaClおよび10mM MgClを含む緩衝液で2回洗浄し、同じ緩衝液1mlに懸濁させた。超音波粉砕機(sonicator)を用いて中断させた後、細胞溶解物を遠心分離させた。上澄液を再び遠心分離してペレットを得た後、これを緩衝液100μlに懸濁させた。この懸濁液のうち、10μlを酵素液として使用した。50mM HEPES、10mM酢酸カリウムおよび50μM2,6−ジクロロインドフェノール(Cl2Ind)を混合して反応緩衝液を製造した。ClIndは、解凍させて反応直前に混合した。前記反応混合物980μlに基質として100mMリンゴ酸10μlおよび酵素液10μlを添加した後、30℃で15分間振盪しながらインキュベーションさせた。酵素活性は、還元されたClIndの濃度を測定することによって決定した。ClIndは、600nmで22cm−1mM−1の吸収係数を有した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示されたように、KCJ−1304は、母菌株KCCM−10530に比べてリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性が30.6%増加したことが観察された。
【0037】
実施例4:mqo挿入された菌株のXMP生産
XMPを生産するために、実施例2で製造されたXMP生産菌株であるコリネバクテリウム・アンモニアゲネスKCJ−1304を下記のように培養した。母菌株コリネバクテリウム・アンモニアゲネスKCCM−10530および変異株KCJ−1304をそれぞれ下記の種培地3mlを含有する14mlチューブにそれぞれ接種し、30℃で20時間200rpmで振盪しながらインキュベーションさせた。その後、種培養液を0.4mlの量でそれぞれ250mlコーナーバッフル(corner-baffle)フラスコに含まれた32mlの下記の生産培地(24ml本培地+8ml培地A)に添加した後、続いて30℃で230rpmで96時間振盪培養した。以後、HPLCを用いて5’−XMPの生産を定量的に測定した。コリネバクテリウム・アンモニアゲネズKCJ−1304から生産されたXMPの量を下記の表2に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
種培地:グルコース30g/l、ペプトン15g/l、酵母抽出物15g/l、NaCl2.5g/l、尿素3g/l、アデニン150mg/l、グアニン150mg/l、pH7.2
生産培地(本培地):グルコース80g/l、硫酸マグネシウム10g/l、硫酸鉄20mg/l、硫酸亜鉛10mg/l、硫酸マンガン10mg/l、アデニン30mg/l、グアニン30mg/l、ビオチン100μg/l、硫酸銅1mg/l、塩化チアミン5mg/l、塩化カルシウム10mg/l、pH7.2
生産培地(培地A):リン酸一水素カリウム10g/l、リン酸二水素カリウム10g/l、尿素7g/l、硫酸アンモニウム5g/l
【0040】
表2のデータから明らかなように、KCJ−1304は、母菌株KCCM−10530と比較して、XMP生産が5.9%増加に相応する1.7g/l増加したことが確認された。
【0041】
本発明の好ましい実施態様が例示的な目的のために開示されたが、当業者は添付された請求項に開示されたような本発明のカテゴリーおよび趣旨を逸脱することなく、様々な変更、付加および代替が可能であることが理解されよう。
【0042】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型より高いリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性を有する、5’−キサントシン一リン酸を生産するためのコリネバクテリア菌株。
【請求項2】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼの活性がmqo発現増加によって増進された請求項1に記載のコリネバクテリア菌株。
【請求項3】
図1の切断地図に示された構造を有する組換えベクター。
【請求項4】
請求項3の組換えベクターで形質転換されたコリネバクテリア菌株。
【請求項5】
向上したリンゴ酸デヒドロゲナーゼの活性を示す請求項4に記載のコリネバクテリア菌株。
【請求項6】
菌株が向上した5’−キサントシン一リン酸生産能を有するコリネバクテリウム・アンモニアゲネスである請求項4に記載のコリネバクテリア菌株。
【請求項7】
菌株がコリネバクテリウム・アンモニアゲネスKCCM10972Pである請求項6に記載のコリネバクテリア菌株。
【請求項8】
請求項4によるコリネバクテリア菌株を培養する段階;および培養液から5’−キサントシン一リン酸を回収する段階を含む、5’−キサントシン一リン酸の生産方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−511925(P2012−511925A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542009(P2011−542009)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007559
【国際公開番号】WO2010/071367
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511148961)シージェイ チェイルジェダン コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】