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5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスの製造方法
説明

5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスの製造方法

【課題】 マッシュルームの抽出物のどの成分がPPARγ活性化能を有するかを解明し、有効成分を効率よく抽出する方法を提供する。
【解決手段】 (1)マッシュルームに、マッシュルームの質量に対して0.5〜50倍の質量の水を加えた後、マッシュルームを破砕して、マッシュルーム破砕物を得、次いで前記マッシュルーム破砕物を加熱することにより、殺菌を行うと共に、マッシュルームの組織を部分的に分解し、マッシュルーム破砕加熱物を得る工程;および、(3)前記マッシュルーム破砕加熱物を、40〜121℃に加熱して熱水抽出を行い、マッシュルーム抽出物を得る工程;を有する、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッシュルームから、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン(以下、「MTA」とも称する)を含むエキスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、暮らしが豊かになったことによる飽食、および高脂肪食摂取への食生活の欧米化、また社会環境の変化による肉体労働の減少、それに伴う運動量の減少、そしてストレスが引き金の一つとされる暴飲暴食により、現代人は肥満になりやすい状態にある。
【0003】
肥満は増加の一途を辿っており、WHO(世界保健機関)は肥満に関わる糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、脂肪肝などの生活習慣病に対するリスクの増大に対して世界各国に警告を発している。肥満による内臓脂肪の蓄積が元となって、糖代謝異常(糖尿病)、脂質代謝異常(高脂血症)、高血圧などの動脈硬化の危険因子が複数重なった状態をメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)という。
【0004】
メタボリックシンドロームは、日本では、平成16年の国民健康・栄養調査において、該当者は、940万人いると推計され、予備軍も合わせると1,960万人にのぼり、とりわけ40歳から74歳の中年男性に多く、その4分の1を占めている。平成20年4月からは、医療保険者(国保・被用者保険)において、40歳以上の被保険者・被扶養者を対象とする、内蔵脂肪型肥満に着目した検診および保健指導の事業実施が義務付けられるなど、国をあげて対策に取り組んでいる。
【0005】
メタボリックシンドロームにおいて、糖尿病を例にすると、原因の一つにインスリン抵抗性(グルコース代謝の異常)が挙げられる。インスリン抵抗性とは、インスリンの作用効果が低下している状態である。インスリン抵抗性は、肥満体の人に比較的多く見られる。基礎代謝を上回る栄養分が継続的に細胞に取り込まれると脂肪細胞が肥大化し、インスリンの働きを向上させる物質(アディポネクチン)の分泌量が減る一方、インスリンの働きを阻害する物質(TNA−αや遊離脂肪酸)が多く分泌されるようになる。その結果、インスリンの作用効果が低下していくことにより、やがて糖尿病を疾患しうる。このインスリン抵抗性を改善する治療薬の成分として、チアゾリジン誘導体が知られている(例えば、特許文献1)。該治療薬の作用機序は、該誘導体が核内受容体であるPPARγに結合し、PPARγの活性を上昇させ、前駆脂肪細胞を肥大化していない正常な脂肪細胞に分化誘導すると同時に、肥大化した脂肪細胞のアポトーシスを誘導する。分化した脂肪細胞は、アディポネクチンを積極的に分泌するため、糖および脂質代謝が活発になり、血液中からの糖の取り込みが促進され、インスリン抵抗性を改善する。このような脂肪細胞の働きで糖尿病のみならず、高脂血症の予防に繋がることになる。このような効果は、薬用ニンジンに含まれるサポニンでも確認されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1によるように、合成化合物を使用する場合には、人体に対して有害な副作用を引き起こす可能性があり、食品のように日常的に摂取することは難しい。このため、人体に対して有害な副作用を生じさせることなく、優れた分化促進効果を発揮する物質の開発が待望されている。
【0007】
このような問題をかんがみて、経口での摂取が可能な食品由来の抽出物であって脂肪細胞への分化を促進する効果を有するものの研究がなされている。例えば、アブラナ科植物のスプラウト由来の組成物(例えば、特許文献2)、グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療組成物(例えば、特許文献3)などが報告されている。特許文献2の組成物は、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への細胞分化促進活性を有し、糖尿病や関連疾患の進行防止や改善に期待できる。また、特許文献3の組成物は、生体内における脂肪の合成を抑制し、脂肪の分解を促進し、さらには効果的に脂肪を燃焼する作用を有する。
【0008】
本発明者らは、上記したような経口での摂取が可能な食素材について、前駆脂肪細胞を脂肪細胞へと分化促進させる活性を広範にスクリーニングした。その結果、マッシュルームの抽出物にPPARγ活性化能があり、前駆脂肪細胞を脂肪細胞へと分化促進させる活性があることを見出した(特許文献4)。この際、従来は、マッシュルームを水抽出、特に熱水抽出することによって、PPARγ活性化能を有するマッシュルーム抽出物を得ていた。
【0009】
他方で、本発明者らは、従来の熱水抽出に、殺菌(前殺菌)をかねての加熱(煮沸)操作および植物組織崩壊酵素であるセルラーゼまたはヘミセルラーゼを所定のpHで作用させる酵素処理操作を組み合わせることで、抽出効率を上げることができることを見出している(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−143556号公報
【特許文献2】特開2007−70271号公報
【特許文献3】特開2008−291002号公報
【特許文献4】特開2009−263344号公報
【特許文献5】特開2010−220526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のいずれの文献においても、マッシュルームの抽出物のどの成分がPPARγ活性化能を有するかが特定されていなかった。一方で、さらに効率よく分化を促進する有効成分を効率よく抽出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。その結果、マッシュルームの抽出物中の5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンという成分が、PPARγ活性を有する有効成分であることを見出した。
【0013】
そこで、本発明者らは、(1)マッシュルームに、マッシュルームの質量に対して0.5〜50倍の質量の水を加えた後、マッシュルームを破砕して、マッシュルーム破砕物を得、次いで前記マッシュルーム破砕物を加熱することにより、殺菌を行うと共に、マッシュルームの組織を部分的に分解し、マッシュルーム破砕加熱物を得る工程;および、(3)前記マッシュルーム破砕加熱物を、40〜121℃に加熱して熱水抽出を行い、マッシュルーム抽出物を得る工程;を有する、製造方法を用いることにより、より効率的に、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスを抽出することに成功した。さらには、前記マッシュルーム抽出物を、合成吸着樹脂によるクロマトグラフィーにかけることによって、より効率的に、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを抽出することに成功した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、PPARγ活性化能を有する有効成分である、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスを、マッシュルームから効率的に抽出することができる。また、マッシュルーム中の有効成分が、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンであることを特定したことによって、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの投与量(薬効)などを調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、PPARγ活性化能の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<本発明の第1>
本発明の第1は、(1)マッシュルームに、マッシュルームの質量に対して0.5〜50倍の質量の水を加えた後、マッシュルームを破砕して、マッシュルーム破砕物を得、次いで前記マッシュルーム破砕物を加熱することにより、殺菌を行うと共に、マッシュルームの組織を部分的に分解し、マッシュルーム破砕加熱物を得る工程;および、(3)前記マッシュルーム破砕加熱物を、40〜121℃に加熱して熱水抽出を行い、マッシュルーム抽出物を得る工程;を有する、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスの製造方法である。
【0017】
本発明者らは、マッシュルーム中の有効成分が、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンであることを特定し、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンに、高いPPARγ活性化能があることを見出した。高いPPARγ活性化能は、前駆脂肪細胞を脂肪細胞へと分化促進させる活性に優れる。ここで、「PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)」とは、ステロイド受容体スーパーファミリーに属する核内受容体タンパク質であり、現在までにα,γ,δの三つのサブタイプが報告されている。このうち、PPARαは、肝臓、膵臓、骨格筋に多く発現し、脂肪酸燃焼を調節し、PPARγは、脂肪細胞の分化に重要な役割を果たしている。PPARγの活性が上昇すると、前駆脂肪細胞を肥大化していない正常な脂肪細胞に分化誘導すると同時に、肥大化した脂肪細胞のアポトーシスを誘導する。分化した脂肪細胞は、アディポネクチンを積極的に分泌するため、糖および脂質代謝が活発になり、血液中からの糖の取り込みが促進され、インスリン抵抗性を改善する。このような脂肪細胞の働きで糖尿病のみならず、高脂血症の予防に繋がることになる。
【0018】
本発明によれば、マッシュルーム中の有効成分が、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンであることを特定したことによって、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの投与量(薬効)などを調節することができる。したがって、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンとしての脂肪細胞分化誘導促進物質の投与量などを適宜調節することによって、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への細胞分化促進を目的とする医薬品、食品等(食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示が付された食品、または、病者用食品)などへの利用への期待がさらに高まる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
1.工程(1)
本工程では、マッシュルームに、マッシュルームの質量に対して0.5〜50倍の質量の水を加えた後、マッシュルームを破砕して、マッシュルーム破砕物を得る。
【0021】
本発明で用いられるマッシュルームは、生物学的分類でいえば、ハラタケ科(Agaricaceae)ハラタケ属(Agaricus)に属するAgaricus bisporusまたはAgaricus campestrisと表される。
【0022】
品種に関しては、特に限定されることなく、ホワイト種、オフホワイト種、クリーム種、ブラウン種、Agaricus bitorquis種などが例示され、いずれも好ましく使用することができる。
【0023】
また、前記マッシュルームの利用可能な部位についても特に限定されることはなく、傘、ひだ、管孔、柄、肉、つば、つぼ、石突き、グレバ等よりなる部位から選択される一種以上が挙げられる。すなわち、一部位を単独で用いてもよく、また、複数の部位を混合して用いてもよい。
【0024】
さらに、マッシュルームは、生、乾燥、冷凍、凍結乾燥したもののいずれであっても好ましく使用される。
【0025】
使用するマッシュルームは、そのままでも使用することができるが、水洗することが好ましい。水洗することによりマッシュルームに付着した不純物を取り除くことができ、抽出物の純度を向上させることができる。このような場合には、マッシュルームの水洗後、マッシュルームを乾燥してもよい。
【0026】
本工程では、マッシュルームに、マッシュルームの質量に対して、0.5〜50倍の質量の水を加え、破砕し、マッシュルーム破砕物を得る。上記水の添加量は、上記範囲であれば特に制限されないが、マッシュルームの状態によって適宜調節されることが好ましい。例えば、マッシュルームを生や冷凍状態で使用する場合には、マッシュルームは水をある程度含んでいる。このため、このような場合には、水は比較的少量添加すれば十分であり、具体的には、水を、マッシュルームの質量に対して、0.5〜10倍の質量で、より好ましくは1〜5倍の質量で、添加することが好ましい。また、マッシュルームを乾燥物や凍結乾燥物の形態で使用する場合には、マッシュルームは水を少量しか含んでいないあるいはほとんど含んでいない。このため、このような場合には、水を、生や冷凍状態で使用する場合に比して、比較的多量添加する必要があり、具体的には、水を、マッシュルームの質量に対して、5〜50倍の質量で、より好ましくは10〜30倍の質量で、添加することが好ましい。このような範囲であれば、マッシュルームを効率よく破砕できる。なお、本明細書において、「マッシュルームの質量に対して」とは、工程(1)の出発原料であるマッシュルームの質量を基準とすることを意味する。
【0027】
また、本工程で使用される水は、特に制限されず、水道水、蒸留水、純水、イオン交換水など、いずれを使用してもよい。
【0028】
また、本工程の破砕は、特に制限されず、公知の方法によって行われる。例えば、ブレンダー、石臼式破砕機、ローラーミル、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、ハンマーミル等の破砕機を使用できる。または、マッシュルームを予め上記したような粉砕機を用いて機械的処理して、マッシュルームの粗片を得た後、当該粗片をさらに超音波による破砕を行うことによって、マッシュルーム破砕物を得てもよい。後者の場合に機械的処理されるマッシュルームは、10μm以下程度の大きさになるように破砕されることが好ましい。超音波破砕条件は、マッシュルームが適度な大きさになるような条件であれば特に制限されないが、5〜20分間、処理することが好ましい。本工程で得られるマッシュルーム破砕物の大きさは、特に制限されない。好ましくは、マッシュルーム破砕物の大きさが、0.001〜2mm、より好ましくは0.005〜1mm程度である。このような大きさであれば、好ましい実施形態において行われうる、後の工程(2)で酵素処理が効率よく行われ、さらに工程(3)での熱水抽出操作による5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの抽出効率の向上が期待できる。
【0029】
上記操作において、加熱処理や酵素処理等の効率の向上を目的として、破砕後に、必要であれば、さらに水を添加してもよい。この際、水の添加量は、特に制限されず、所望の効果によって適宜選択される。好ましくは、工程(1)中、マッシュルームに添加される水の全量が、マッシュルームの質量に対して上記範囲となるような量である。
【0030】
次に、得られたマッシュルーム破砕物を加熱(殺菌)する。マッシュルームには、多数の微生物が付着しているため、殺菌処理を行わないと、好ましい実施形態である、次工程(2)において、これら微生物が増殖し、微生物そのものあるいは微生物からの分泌物が次工程(2)における酵素処理を阻害する可能性がある。また、次工程(2)もしくは(3)において繁殖した微生物が抽出成分を資化する、もしくは食品としては好ましくない毒素等を分泌する可能性があるため、このような加熱(殺菌)操作により、マッシュルームに付着している細菌の繁殖を以降の製造工程において防ぐことができる。また、マッシュルーム破砕物の組織(例えば、細胞壁)を更に部分的に熱分解することもできるため、得られるマッシュルーム破砕加熱物は、好ましい実施形態である、次の工程(2)で酵素処理を受けやすくなり、その結果、工程(3)での抽出効率を上げることができる。
【0031】
マッシュルーム破砕物の加熱条件は、上記したような効果が達成できるような条件であれば、特に制限されない。例えば、マッシュルーム破砕物を、80〜121℃で5〜60分間、加熱することが好ましく、80〜121℃で10〜30分間、加熱することがより好ましい。
【0032】
2.工程(2)
本発明の好ましい実施形態によれば、工程(2)において、上記工程(1)で得られたマッシュルーム破砕加熱物を、40〜60℃程度まで冷却後、セルラーゼまたはヘミセルラーゼを添加して酵素処理し、マッシュルーム破砕酵素処理物を得る。酵素処理を行うことにより、マッシュルームの細胞壁を分解し、細胞から5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを効率よく放出させて、工程(3)による抽出効率を向上することが可能となる。
【0033】
ここで、セルラーゼまたはヘミセルラーゼは、植物組織崩壊酵素である。また、セルラーゼ及びヘミセルラーゼは、一方を単独で使用してもあるいは双方を組み合わせて使用してもよい。ここで、セルラーゼやヘミセルラーゼは、セルラーゼ活性やヘミセルラーゼ活性を有するいずれの源由来であってもよく、特に制限されない。例えば、Aspergillus niger、Trichoderma reesei、Trichoderma viride、Trichoderma longibrachiatum、Streptomyces lividans、Bacillus subtilis、Pyrococcus horikoshii、Clostridium thermocellum、Humicola、Pyrococcus horikoshii等の細菌由来;アワビ、エゾボラ、ヒメエゾボラ、エゾバイ、サザエ、タマキビ等の巻き貝、二枚貝等の貝由来;マツノザイセンチュウ等の線虫由来;ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、タカサゴシロアリ(Nasutitermes takasagoensis)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)および豪州産イエシロアリ近縁種(C. acinaciformis)等のシロアリ由来などが挙げられる。また、セルラーゼやヘミセルラーゼは、上記適当な源から公知の方法によって製造してもよいが、市販品を使用してもよい。セルラーゼの市販品としては、例えば、セルラーゼ A「アマノ」3、セルラーゼ T「アマノ」4(いずれも天野エンザイム(株)製);スペザイム CP、GC220、マルチフェクト CL、プリマファースト、インディエイジ、インディエイジ ニュートラ、アクセレラーゼ、オプチマッシュ、マルチフェクトCX10L、オプチマーゼCX40L、ピュラダックス HA(いずれもジェネンコア協和(株)製);GODO−TCF、GODO−TCL、GODO TCD−H3(いずれも合同酒精(株)製);ソフィターゲン・C−1(タイショーテクノス(株)製);超耐熱性セルラーゼ((株)耐熱性酵素研究所製);セルライザー、セルラーゼ XL−522、セルチーム C、セルライザー HT コンク、セルラーゼ SS、セルラーゼ XL−531(いずれもナガセケムテックス(株)製);ベイクザイム XE(日本シイベルヘグナー(株)製);セルソフト、デニマックス、ケアザイム、セルザイム、セルクラスト(いずれもノボザイムズジャパン(株)製);セルロシン AC40、セルロシン AL、セルロシンT3、セルロシンTF(A飼料)(いずれもエイチビイアイ(株)製);セルラーゼ ”オノズカ” 3S、セルラーゼY−NC、パンセラーゼ br(いずれもヤクルト薬品工業(株)製);CellSEB Ts((株)樋口商会製);スミチームAC、スミチームC(いずれも新日本化学工業(株)製);スクラーゼ C(三菱化学フーズ(株)製);エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット、バイオスター、フェドラーゼ(いずれも洛東化成工業(株)製)などが挙げられる。また、ヘミセルラーゼの市販品としては、例えば、ヘミセルラーゼ 「アマノ」90(天野エンザイム(株)製);ベイクザイム HS2000、ベイクザイム l Conc(いずれも日本シイベルヘグナー(株)製);エンチロンLQ(洛東化成工業(株)製)などが挙げられる。なお、上記セルラーゼまたはヘミセルラーゼは、上記に限定されるものではない。また、上記セルラーゼまたはヘミセルラーゼは、それぞれ、単独で使用されてももしくは2種以上を組み合わせて使用されてもよく、またはセルラーゼとヘミセルラーゼとを適宜組み合わせて使用してもよい。
【0034】
また、上記セルラーゼまたはヘミセルラーゼの添加量は、上記工程(1)で得られたマッシュルーム破砕加熱物を十分酵素処理できる量であれば特に制限されず、また、使用する酵素の種類などによって適宜選択できる。例えば、セルラーゼまたはヘミセルラーゼの添加量は、工程(1)の出発原料であるマッシュルームの質量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.02〜5質量%であることがより好ましい。このような範囲であれば、マッシュルーム破砕加熱物を十分酵素処理できる。なお、酵素処理中は、マッシュルーム破砕加熱物と酵素(セルラーゼやヘミセルラーゼ)とが均一にかつ十分混合できるように、攪拌機等で混合することが好ましい。
【0035】
酵素処理条件もまた、上記工程(1)で得られたマッシュルーム破砕加熱物を十分酵素処理できる条件であれば特に制限されない。例えば、酵素処理温度は、30〜60℃、より好ましくは35〜55℃の範囲が好ましく、酵素処理時間は、0.1〜16時間、より好ましくは1〜8時間の範囲が好ましい。なお、2種以上の酵素を併用する場合には、同時に添加して酵素処理を行っても、あるいは各酵素を単独で使用して酵素処理を繰り返し行ってもよい。このうち、各酵素の至適条件が異なる場合には、後者の処理を行うことが好ましい。なお、酵素処理を繰り返し行う場合には、各酵素処理間にも酵素失活処理を行うことが好ましい。
【0036】
3.工程(3)
本工程では、前記(1)で得られたマッシュルーム破砕加熱物または前記(2)で得られたマッシュルーム破砕酵素処理物を、40〜121℃に加熱して熱水抽出を行い、マッシュルーム抽出物を得る。当該工程によって、マッシュルーム破砕酵素処理物から、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを高い効率で抽出することができる。
【0037】
本工程において、熱水抽出条件は、マッシュルーム破砕加熱物またはマッシュルーム破砕酵素処理物から5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを効率よく抽出できる条件であれば特に制限されない。前述したように、工程(1)において、水を添加しているため、本工程で別途水を添加しなくとも、マッシュルーム破砕酵素処理物を十分熱水抽出できる。しかし、本工程において、水を別途添加してもよく、このような場合の水の添加量は、特に制限されないが、通常、マッシュルーム破砕加熱物またはマッシュルーム破砕酵素処理物の質量に対して、1.5〜3倍の質量の水を加えることもできる。
【0038】
また、熱水抽出温度は、40〜121℃であり、好ましくは40〜90℃である。ここで、熱水抽出温度が40℃未満であると、水の温度が低すぎて、抽出効率が十分でなく、逆に、121℃を超えると、温度が高すぎて、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンが分解する可能性がある。また、熱水抽出時間は、1〜16時間、より好ましくは1〜8時間の範囲であることが好ましい。上記抽出操作中は、マッシュルーム破砕加熱物またはマッシュルーム破砕酵素処理物を攪拌していてもよい。攪拌により、熱がマッシュルーム破砕加熱物またはマッシュルーム破砕酵素処理物に均一にいきわたり、熱水抽出が均等に行える。なお、上記抽出工程は、1回行ってもよいが、抽出効率が低い場合には、2回以上、繰り返し行ってもよい。なお、100℃超にするためには、適宜、加圧するなどして行えばよい。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記(1)または(2)の工程のいずれかにおいて、マッシュルーム破砕物またはマッシュルーム破砕加熱物のpHが3〜6になるように、酸を添加することが好ましい。本明細書中では、簡略して、「酸は、マッシュルーム破砕物に添加される」と一括して記載することもある。
【0040】
このように酸の添加によりマッシュルーム、マッシュルーム破砕物、マッシュルーム破砕加熱物またはマッシュルーム破砕酵素処理物のpHを酵素が作用しやすいpHにすることで、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンのマッシュルーム破砕加熱物からの抽出効率を更に高めることができる。ここで、酸の添加(pH調整)時期は、上記工程(1)または工程(2)の工程いずれかにおいてなされればよい。具体的には、(ア)破砕を行う前に酸をマッシュルームに添加する;(イ)破砕後加熱を行う前に酸をマッシュルーム破砕物に添加する;(ウ)工程(1)終了後酵素処理前に酸をマッシュルーム破砕加熱物に添加する;(エ)工程(2)終了後工程(3)開始前に酸をマッシュルーム破砕酵素処理物に添加する、などが挙げられる。上記(ア)〜(エ)は、単独で実施されてもあるいは2種以上を組み合わせて実施されてもよい。
【0041】
当該pH調整工程において、好ましくは、マッシュルーム破砕物またはマッシュルーム破砕加熱物のpHが3〜6、より好ましくは3.5〜5.5になるように酸が添加される。このようなpH範囲であると、酵素の活性が高まり5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンのマッシュルーム破砕加熱物からの抽出効率を更により高めることができる。
【0042】
ここで、酸としては、マッシュルーム破砕物またはマッシュルーム破砕加熱物のpHを所定のレベルに調節して5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの抽出効率を高められるものであれば特に制限されず、無機酸または有機酸のいずれも使用されうる。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸等の無機酸;およびリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、フマル酸、フタル酸、グルコン酸、アジピン酸、食酢、ギ酸、シュウ酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸などが挙げられる。これらのうち、安全性、pHの調節しやすさ、などを考慮すると、有機酸が好ましく使用される。また、例えば、医薬品、食品(健康食品)または飲料(健康飲料)に使用される場合には、安全性などを考慮して、食品添加物として認められているものが好ましい。この点を考慮すると、食品添加物として認められている塩酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、フマル酸、フタル酸、グルコン酸、アジピン酸、食酢等が好ましい。リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、フマル酸、フタル酸、グルコン酸、アジピン酸、食酢等がより好ましい。この際、酸は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、酸は、pH調整を目的として、そのままの形態で添加されてもよいが、水溶液等の他の形態で添加されてよい。後者の場合、溶液中の酸濃度は、マッシュルーム破砕物/マッシュルーム破砕加熱物のpHを所定のレベルに調節できる濃度であれば特に制限されず、取り扱いのしやすさ、酸の種類などによって適宜調節されうる。
【0043】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記工程(3)後に、前記工程(3)で得られたマッシュルーム抽出物を合成吸着樹脂によるクロマトグラフィーにかけて、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの含有率を向上させる工程(工程(6−1));をさらに有する。
【0044】
本発明のさらに別の好ましい実施形態によれば、上記工程(3)後に、前記工程(3)で得られたマッシュルーム抽出物をさらに遠心分離または濾過して、残渣を分離して、抽出液を得る(工程(4))。(4)で得られた抽出液を濃縮して、濃縮液を得(工程(5))、かかる濃縮液を合成吸着樹脂によるクロマトグラフィーにかけて、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの含有率を向上させる(工程(6−1))。
【0045】
以下、工程(3)、工程(4)、工程(5)、工程(6−1)の順で経る方法について詳説するが、工程(3)から直接工程(6−1)を行ってもよいし、あるいは、工程(3)、工程(4)、工程(6−1)の順で経てもよい(つまり、工程(4)の抽出液を合成吸着樹脂によるクロマトグラフィーにかけて、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの含有率を向上させてもよい)。また、工程(6−1)の後に、工程(6−2)、工程(7)、工程(8)を経てもよい。
【0046】
4.工程(4)
遠心分離条件は、水不溶性部分を分離できる条件であれば特に制限されない。具体的には、マッシュルーム抽出物を、4〜50℃で、3000〜12000rpm、5〜30分間、遠心分離することが好ましく、4〜30℃で、4000〜10000rpm、5分〜30分間、遠心分離することがより好ましい。
【0047】
濾過操作は、水不溶性部分を分離できれば特に制限されず、公知の方法が採用できる。例えば、濾紙、ミクロフィルターなどが使用される。また、上記フィルターの孔径は、有効成分は残しつつ水不溶性部分を分離できれば特に制限されない。具体的には、フィルターの孔径は、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜3μmである。
【0048】
なお、上記遠心分離または濾過操作は、それぞれ、1回行われてももしくは2回以上繰り返し行われてもよく、または上記遠心分離及び濾過操作を適宜組み合わせて行ってもよい。また、繰り返し行う場合には、各操作条件は、それぞれ、同一であってもあるいは異なる条件であってもよい。
【0049】
上記工程(3)後に、さらに、前記(4)で得られた抽出液を濃縮して、濃縮液を得る(工程(5))ことが好ましい。
【0050】
5.工程(5)
濃縮方法は、特に制限されず、減圧濃縮、限外濾過、真空濃縮、凍結濃縮、膜濃縮等、公知の方法が使用できる。また、濃縮条件は、特に制限されないが、通常、80℃以下、より好ましくは30〜70℃で、濃縮装置により減圧下濃縮することが好ましい。また、濃縮後の液量もまた、特に制限されず、使用する状況により適当な質量とすればよい。
【0051】
なお、濃縮液中のMTAの含有量を測定するために、かかる濃縮液を凍結乾燥させてエキス末とした場合、かかるエキス末1g中のMTAの含有量(μg)は、好ましくは10〜250μg、より好ましくは30〜200μg、さらに好ましくは50〜150μgの範囲である。
【0052】
6.1.工程(6−1)
前記濃縮液を合成吸着樹脂によるクロマトグラフィーにかけて、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの含有率を向上させる。このようにすることによって、高い含有率を有するMTAエキスを得る。以下、工程(6−1)の好ましい態様を説明する。
【0053】
前記濃縮液は、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンのさらなる含有率の向上という観点からは、逆相カラムクロマトグラフィーでも処理されることにより精製されることが好ましいが、かかる処理前又は後に(好ましくは処理前に)、合成吸着樹脂処理に供することが特に望ましい。合成吸着樹脂の使用方法としては、処理する液中に樹脂を直接投入して攪拌、接触させるバッチ方式と、樹脂を充填したカラムに液を通液する方式が知られているが、一般的にはカラムを用いる方法がよく用いられている。
【0054】
本工程の好ましい形態によれば、カラムに、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンと、不純物とを含む前記濃縮液を通液し、先ず樹脂に5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン成分を吸着させる。その後、水もしくは低濃度のアルコール水溶液(1)(好ましくは濃度10〜55体積%、より好ましくは20〜50体積%)または水および低濃度のアルコール水溶液(1)の双方で樹脂を洗浄して親水性の不純物を溶出させ、その後、30〜60体積%のメタノール水溶液で5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン成分(溶出画分)を回収する方法が好ましい。なお、本明細書中に記載の「アルコール」は、メタノール、エタノールまたはプロパノールが好ましい。
【0055】
かかる合成吸着樹脂は、特に限定されないが、例えば、比表面積が約300〜約1500m/g程度、最頻度半径が20〜700Å程度の無極性の多孔質吸着樹脂が好ましい。このような合成吸着剤の具体例としては、ダイヤイオン(登録商標)HP20SS、HP20、HP21等のHP樹脂、セパピーズ(登録商標)SP825、SP850、SP207等のSP樹脂(以上、三菱化学(株)製)、アンバーライトXAD−2、XAD−4、XAD−16(以上、ローム アンド ハース社製)等のスチレン−ジビニルベンゼン系樹脂;ダイヤイオン(登録商標)HP2MG(三菱化学(株)製)、アンバーライトXAD−7、XAD−8(以上、ローム アンド ハース社製)等のアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0056】
精製処理の際の合成吸着樹脂への5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン成分を含む溶液の通過速度は特に限定されない。通過速度が速いほど単位時間当たりの処理量を確保できるが、有効成分のロスが多くなったり精製が不十分となったりする場合がある。また、通過速度が遅いほど、有効成分と不純物との分離性を向上させることができるが、逆に単位時間当たりの処理量が低下する。従って、通過速度としては、SV値が通常0.1以上、中でも0.5以上が好ましく、また、通常10以下、中でも5以下が好ましい。
【0057】
このようにして得られた5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン成分を含む溶液(溶出画分)は、そのままの形態で使用しても良いが、保存時の安定性や流通時・使用時の取り扱いの容易性の観点から、好ましくは濃縮又は乾燥粉末化した形態とした上で使用することが好ましい。濃縮又は乾燥粉末化の方法は、上記工程(5)で述べた方法を必要に応じ適宜組み合わせて適用することができる。
【0058】
このようにして得られた濃縮乾燥粉末をアルコール水溶液(2)(好ましくは濃度10〜80体積%、より好ましくは20〜60体積%)に溶解する。この際、必要に応じ、ボルテックスなどで攪拌を行えばよい。このようにして得られた濃縮乾燥粉末のアルコール水溶液は、より含有率を高めた5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを得たい場合は、このまま逆相カラムクロマトグラフィーで処理して精製してもよいが、好ましくは、不純物をさらに除去することが好ましい。不純物を除去する方法も特に制限はなく、遠心分離を用いる場合の、遠心分離条件は、水不溶性部分を分離できる条件であれば特に制限されない。具体的には、0〜35℃で、5000〜20000rpm、5〜30分間、遠心分離することが好ましく、0〜25℃で、5000〜15000rpm、5〜20分間、遠心分離することがより好ましい。
【0059】
なお、溶出画分中のMTAの含有量を測定するために、かかる溶出画分を凍結乾燥させて、溶出画分エキス末とした場合、かかる溶出画分エキス末1g中のMTAの含有量(μg)は、好ましくは50〜2500μgであり、より好ましくは、160〜2500μgである。
【0060】
6.2.工程(6−2)
逆相カラムクロマトグラフィーは、移動相に、水、メタノール、アセトニトリル等の極性を有する溶出溶媒を用い、固定相に、オクタデシル基等を化学結合した無極性の充鎮剤を用いたカラムクロマトグラフィーのことであり、移動相より固定相に溶け易い成分ほど遅く溶出するため、極性の大きいものほど早く溶出する。
【0061】
逆相カラムクロマトグラフィーを用いてアルコール水溶液(2)(アルコール水溶液の溶解画分)から有効成分を抽出する方法は、従来公知の知見を参照し、あるいは組み合わせて適用することができる。充填するシリカゲルの形状にも、特に制限はなく、破砕形状、立方体形状、円柱形状、円錐形状、三角錐形、状雲形形状、星型形状、球状などが挙げられるが、中でも、球状のものが好ましく用いられ、特には、全多孔性球状シリカゲルが好ましい。また、シリカゲルの粒径にも特に制限はないが、抽出効率の観点から、30〜200μm程度が好ましく、100〜150μm程度が好ましい。シリカゲルの平均細孔径に関しても特に制限はないが、抽出効率の観点から、100〜140Å程度が好ましい。また、シリカゲルの比表面積についても特に制限はないが、抽出効率の観点から、200〜400m/g程度が好ましい。化学結合基は、上記のように、オクタデシル基であることが好ましく、残存シラノール基を有しているとよい。かような固定相として、特に、ナカライテスク株式会社のコスモシール(登録商標)C18−OPNを使用することが好ましい。コスモシールC18−OPN 充填剤は、C18型充填剤の外側表面を親水性化し、極性の高い展開溶媒との親和性を向上させ、かつ充填剤の細孔内部のオクタデシル基の疎水性によって、疎水性相互作用による逆相分配型の分離を達成させる浸水型の逆相充填剤である。
【0062】
本工程における好ましい形態によれば、一般的なクロマト管に、オクタデシル基等を化学結合した無極性の充鎮剤を充填し、展開溶媒で洗浄を行う。次いで、上記のアルコール水溶液の溶解画分を添加し、分離を行う。展開溶媒としては、アルコール水溶液を用いることが好ましく、TLCなどを適宜活用しながら、有効成分が含まれる活性画分を得る。この際のアルコール水溶液に関しては、適宜濃度を変えながら抽出することが好ましい。本発明の有効成分は、10〜80体積%のアルコール水溶液を用いる際に、活性画分を効率よく得ることができる。
【0063】
上記工程(6−2)まで経ることによって、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを単離することができる。
【0064】
上記工程(6−1)あるいは(6−2)後に、溶出画分または活性画分を80℃以上で滅菌して、滅菌抽出液を得る(工程(7))ことが好ましい。このような操作により、安全性が確保され、医薬品、食品(健康食品)または飲料(健康飲料)などに好適に使用される。
【0065】
7.工程(7)
滅菌条件は、80℃以上であれば、十分、滅菌できるが、好ましくは80〜121℃、より好ましくは90〜121℃の温度で、好ましくは10〜60分間、より好ましくは10〜30分間、滅菌する。このような温度および時間範囲であれば、濃縮液中の有効成分の活性は維持しつつ、滅菌を十分行うことができる。なお、上記滅菌操作は、1回行われてもあるいは2回以上繰り返し行われてもよく、また、繰り返し行う場合には、各操作条件は、同一であってもあるいは異なる条件であってもよい。
【0066】
上記工程(7)後に、さらに、前記工程(7)で得られた滅菌抽出液を乾燥する(工程(8))ことが好ましい。当該工程(8)によって得られた乾燥粉末は、水が存在しないため、保存(貯蔵)安定性に優れ、また、軽質量であるため、運搬などにも便利である。
【0067】
8.工程(8)
滅菌抽出液の乾燥方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、凍結乾燥、スプレードライ乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、蒸気乾燥、バレル乾燥、スピン乾燥、吸引乾燥、赤外線乾燥、対流伝熱乾燥、気流乾燥、流動層乾燥、加熱水蒸気乾燥、回転ドラム乾燥、マイクロ波乾燥、超臨界乾燥等の方法によって、滅菌抽出液を乾燥粉末化することもできる。
【0068】
本発明の製造方法を適用することによって、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスを、マッシュルームから効率的に抽出することができる。このように効率的に抽出した5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスを、食品等、あるいは、医薬品に適用する際に、含有量をどの程度にするのかが適切であるかの判断が容易となる。特に、本発明においては、マッシュルーム(天然物)を出発原料とするが、含有される有効成分の量のバラツキに関らず、その判断を容易とすることができる。
【0069】
このように、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンとしての脂肪細胞分化誘導促進物質の投与量などを適宜調節することができるようになったことによって、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への細胞分化促進を目的とする、食品等、あるいは、医薬品などへの利用への期待がさらに高まる。
【0070】
さらに、本発明の好ましい実施形態においては、天然物を出発原料とし、さらに、食品等での安全性に問題のある溶媒、条件などを使用していないため、得られる有効成分(5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン)は、医薬品、食品(健康食品)または飲料(健康飲料に、そのままの形態(濃縮・乾燥した粉末形態)で、あるいは上記形態を適宜加工し、使用することができる。つまり、既知の合成ルートで合成するような場合とは異なり、安全性の問題を大きく低減することができる。要するに、既知の合成ルートで合成した場合、不純物を完全に除去することができずに、下記本発明の第2または第3に適用した場合、安全性に問題が残る。本発明によれば、天然物であるマッシュルームを出発物質としているので、仮に、MTA以外の不純物が残ったとしても、それはマッシュルーム由来であるため、安全性に問題がない。
【0071】
<本発明の第2>
本発明の第2は、本発明の第1の製造方法によって製造された5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスを有効成分(以下、単に「本発明のエキス」とも称する)として含有する、医薬品である。本発明の第2の医薬品としては、インスリン抵抗性に起因する疾病に対する予防剤若しくは治療剤であれば特に制限させることはなく、例えば、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、肥満症、アルツハイマー(特開2008−285438号公報 参照)などに対する予防剤または治療剤などが挙げられる。
【0072】
本発明の第2の医薬品としては、本発明のエキスを単体で、または製薬上許容される担体と配合した、または製薬上許容される溶剤に溶解もしくは懸濁した組成物として、治療の施行前または施行中、または施行後に、経口的または非経口的に患者に投与される。
【0073】
本剤を経口投与用とする場合には、本発明のエキスを単体で、または適当な添加剤、例えば、乳糖、ショ糖、マンニット、トウモロコシデンプン、合成もしくは天然ガム、結晶セルロース等の賦形剤、デンプン、セルロース誘導体、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボシキメチルセルロースカルシウム、カルボシキメチルセルロースナトリウム、デンプン、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム等の滑沢剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の充填剤または希釈剤等と適宜混合して、錠剤、粉剤、乳剤、懸濁剤、液剤、散剤(粉末)、丸剤、および顆粒剤等の固形製剤にすることができる。また、硬質または軟質のゼラチンカプセル等を用いてカプセル剤としてもよい。これらの固形製剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートフタレート、メタアクリレートコポリマー等の被覆用基剤(コーティング剤)を用いて腸溶性被覆(腸溶性コーティング)を施してもよい。さらに、本発明のエキスを、精製水、生理食塩水等の一般的に用いられる不活性希釈剤に溶解して、必要に応じて、この溶液に浸潤剤、乳化剤、分散助剤、界面活性剤、甘味料、フレーバー、芳香物質等を適宜添加することにより、シロップ剤、エリキシル剤等の液状製剤とすることもできる。
【0074】
また、非経口投与用とする場合には、本発明のエキスを精製水、リン酸緩衝液等の適当な緩衝液、生理的食塩水、リンガー溶液(リンゲル液)、ロック溶液等の生理的塩類溶液、エタノール、グリセリン及び慣用される界面活性剤等と適当に組み合わせた滅菌された水溶液、非水溶液、懸濁液、リポソームまたはエマルジョンとして、好ましくは注射用滅菌水溶液として、静脈内、皮下、筋肉内等に投与する形態とする。この際、液状製剤は、生理学的なpH、好ましくは6〜8の範囲内のpHを有することが好ましい。また、ローション剤、懸濁剤、乳剤等の液状製剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏等の半固形製剤、散剤、粉剤(粉状)もしくは用時溶解(液状)して塗布するための顆粒剤等の固形製剤として、または貼付剤などの外用剤として、標的部位およびその周辺部位に経皮的に投与してもよい。さらに、ペレットによる埋め込み、または坐薬用基剤を用いた坐薬として投与されることも可能である。上述したうち、好ましい製剤や投与形態等は、担当の医師によって選択される。前記医薬品のローション剤、クリーム剤及び軟膏などの半固形製剤は、前記医薬品を、脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、蝋、硬膏剤、樹脂、プラスチック、グリコール類、高級アルコール、グリセリン、水、乳化剤及び懸濁化剤などよりなる群から選択される一種以上と適宜混和することにより得られる。
【0075】
本発明の第2の医薬品に含まれる、本発明のエキスの濃度は、投与形態、疾病の種類や重篤度や目的とする投与量などによって様々であるが、一般的には、医薬品の原料の全質量に対して、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン換算で、0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜60質量%である。特に、本発明の製剤が経口投与される場合には、医薬品の原料の全質量に対して、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン換算で、0.001〜100質量%、好ましくは0.01〜100質量%であり、非経口投与される場合には、医薬品の原料の全質量に対して、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン換算で、0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜60質量%であることが好ましい。
【0076】
本発明の第2の医薬品に含まれる、本発明のエキスの用量は、患者の年齢、体重及び症状、目的とする投与形態や方法、治療効果、および処置期間等によって異なり、正確な量は医師により決定されるものであるが、通常、経口、非経口投与ともに、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの投与量換算で、毎回0.1〜2000mg/kg体重の投与量の範囲である。より好ましくは、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの投与量換算で、毎回0.5〜500mg/kg体重の投与量の範囲である。
【0077】
<本発明の第3>
本発明の第3は、本発明のエキスを含む、食品である。
【0078】
本発明の第3において、「食品」は、医薬以外のものであって、哺乳動物が経口摂取可能な形態のものであれば特に制限はなく、その形態も液状物(溶液、懸濁液、乳濁液など)、半液体状物、粉末、または固体成形物のいずれのものであってもよい。このため食品は、例えば飲料の形態であってもよく、また、サプリメントのような栄養補助食品の錠剤形態であってもよい。
【0079】
食品として具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、ジュース、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉などの小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、ようかん、和菓子、デザート菓子などの菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類;乳飲料、牛乳、乳清飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、プリン、アイスクリーム類、クリーム類などの乳製品;魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品などの水産加工品;畜肉ハム・ソーセージなどの畜産加工品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品;栄養食品などが挙げられる。
【0080】
また、通常の食品原料として使用されているもの、すなわち、デキストリン、セルロース、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料及び保存剤よりなる群から選択される1種以上を適宜配合してもよい。
【0081】
本発明の第3の食品は、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、肥満症に罹患しているか、または罹患していることが疑われる者、あるいは糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、肥満症への罹患のリスクが高い者に対して好適に使用することができる。ここで、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、肥満症への罹患のリスクが高い者としては、例えば、体組成や食生活をはじめとする各種の指標を考慮して、または、健康診断等の診断・診察から、当該リスクが高いと判断された者や、そのようなリスクが高いと本人または周囲の者から認識されるに至った者が含まれる。
【0082】
本発明において「食品」には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示が付された食品、栄養機能食品、または、病者用食品のような分類のものも包含される。さらに「食品」という用語は、ヒト以外の哺乳動物を対象として使用される場合には、飼料を含む意味で用いられうる。ここでいう特定保健用食品とは、体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整えるのに役立つなどの特定の保健の用途に資する旨を表示するものをいう。このような食品は、食品が疾病リスクを低減する可能性があること表示した食品、すなわち、疾病リスク低減表示を付した食品であってもよい。ここで、疾病リスク低減表示とは、疾病リスクを低減する可能性のある食品の表示であって、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)の定める規格に基づいて、またはその規格を参考にして、定められた表示または認められた表示でありうる。
【0083】
本発明の他の形態によれば、本発明のエキスを有効量含有する食品であって、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、肥満症を予防および/または改善する機能を有し、その機能表示が付された食品が提供される。ここで食品に付される機能表示は、例えば、製品の本体、容器、包装、説明書、添付文書、または宣伝物のいずれかに付することができる。
【0084】
本発明の第3の食品の製造にあたっては、通常の食品の処方設計に用いられている糖類、香料、果汁、食品添加剤、安定剤などを適宜添加することができる。食品の製造は、当該技術分野に公知の製造技術を参照して実施することができる。
【0085】
本発明の第3の食品に含まれる、本発明のエキスの含有量は、各食品の組成などによって様々であるため特に限定されることはないが、前記食品の全質量に対して、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシン換算で、0.0001〜50質量%であることが好ましく、0.0001〜10質量%であることがより好ましい。上記した範囲内の場合、食事療法などの効果が有意に向上しうる。
【0086】
上記、本発明の第1〜第3で述べたように、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンが、PPARγ活性を示し、インスリン抵抗性を改善する治療薬の成分として用いられることによって、つまり、本発明の第2の医薬品または本発明の第3の食品として用いられることによって、以下の機構を有する。すなわち、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンがペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)に結合し、核内受容体転写因子であるレチノイドX受容体(RXR)とヘテロダイマーを形成し、標的遺伝子のプロモーター領域にあるPPAR応答配列(PPRE)にリガンド依存的に結合し、標的遺伝子の転写を促進させ、前駆脂肪細胞を肥大化していない正常な脂肪細胞(成熟脂肪細胞(小型脂肪細胞))に分化誘導する。また、肥大化した脂肪細胞(肥大化脂肪細胞)のアポトーシスを誘導する。分化した脂肪細胞は、アディポネクチンを積極的に分泌するため、糖や脂質の代謝が活発になり、血液中からの糖の取り込みが促進され、インスリン抵抗性を改善する。
【0087】
なお、本発明の範囲は、上記した実施態様に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0088】
本発明について、下記の実施例によりさらに詳細に説明するが、当該実施例はあくまで例示にすぎず、本発明は以下に限定されることはない。
【0089】
1.MTAの精製法
市販の生のマッシュルーム1000gを測り採り、水洗したものに、等量の蒸留水1000mlを加え、ブレンダーで破砕し、約1mm以下の大きさのマッシュルーム破砕物を得た。得られたマッシュルーム破砕物に、マッシュルーム破砕物の細胞壁を部分的に分解すること、および殺菌を目的として、100℃で10分間、煮沸を行い、マッシュルーム破砕加熱物を得た。次に、このマッシュルーム破砕加熱物に蒸留水2000gを加えた。その後、生マッシュルームの質量に対して、1.05質量%のクエン酸を加え、pHを4に調節し、40℃まで冷却した。さらに、この冷却したマッシュルーム破砕加熱物に、生マッシュルームの質量に対して、0.1質量%の植物組織崩壊酵素であるセルラーゼ製剤を加え、緩やかに攪拌させながら、40℃で1時間、酵素処理を行い、マッシュルーム破砕酵素処理物を得た。
【0090】
次に、このマッシュルーム破砕酵素処理物を60℃まで加温し、ゆるやかに攪拌させながら2時間、熱水(60℃)抽出を行い、マッシュルーム抽出物を得た。得られたマッシュルーム抽出物を、8000rpm、10分間、遠心分離を行った後、ろ紙で濾過し、残渣を除いて、抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、濃縮液を得た。また、MTA含有量測定用に、一部凍結乾燥を行い、乾燥粉末を得た。
【0091】
得られた濃縮液を、合成吸着樹脂HP20充填カラム(ダイヤイオン(登録商標)HP20)にSV=3で通液した。その後、蒸留水6L、40%メタノール6LでSV=3で洗浄した後、60%メタノール6Lで通液し、60%メタノール溶出画分を得た。得られた60%メタノール溶出画分を濃縮後、凍結乾燥を行い、乾燥粉末を0.792g得た。
【0092】
得られた乾燥粉末0.5gに50mlの20% MeOHを添加しボルテックスにて撹拌した。その後、10,000rpm, 10min, 4℃にて遠心分離を行い不溶物の除去を行った。20% MEOH溶解画分について下記の条件に基づき逆相クロマトグラフィーを行った。
【0093】
110 x 40mmのガラスクロマト管にCosmosil 140C18−OPNをMeOHを用いて充填し、10倍量の20% MeOHを用いて平衡化を行った。その後、上述の遠心にて得られた20% MeOH溶解画分を添加した。その後、400mLの20, 30, 40及び100% MeOHにて溶出を行った。溶出液は200mL毎に分離した。PPARγ活性化能の認められた30%MeOHの画分(300−400mL画分)を、減圧下濃縮を行うことにより活性成分を得た。
【0094】
2.活性成分の構造解析
高分解能Positive ion FABマススペクトルを測定したところ、m/z 298.099にM+Hのシグナルが観察され、その分子式はC1115Sであることが示された。またHおよび13C−NMRスペクトルにおいて、下記に示したように6−aminopurin,riboseおよびS−methyl基の存在を示すシグナルが観察された。これらシグナルは、5−deoxy−5’−(methylthio)−adenosineのシグナルと完全に一致した。以上の結果から、以下の構造を同定した。
【0095】
【化1】

【0096】
【表1】

【0097】
3.MTA含有量の測定
上記で調製したマッシュルームエキス末(MTA含有量測定用乾燥粉末)80mgをエッペンチューブに測り取り、5倍量(400μL)のMeOHを加えてホモジナイザーで30秒間ホモジナイズした。その後、遠心分離し(10,000rpm、10分)、上清を回収した。
【0098】
次に、沈殿に上記と同量のMeOHを加え、ホモジナイザーで30秒間ホモジナイズを行い、遠心分離し(10,000rpm、10分)、上清を回収した。ホモジナイズ処理を計5回実施した。回収した上清をNガスおよび真空下で乾燥させ、乾燥粉末を得た。得られた粉末に20mM CHCOONH−CHCOOH(pH4.1)/MeOH(90/10)を0.8mL加え十分に攪拌した後、0.45μm(ADVANTEC Desmic 25−cs)のフィルターを通し、下記の条件のHPLCで分析を行った。
【0099】
分析条件は、カラムとしてHydrosphire C18(4.6mm×150mm、YMC社)を用い、溶離液は、A溶液には20mM CHCOONH−CHCOOH(pH4.1)、B溶液にはMeOHを用い、流速は1.0mL/minで、A:B=90:10でイソクラティック溶出を行った。カラム温度は35℃、MTAの検出は254nmの吸光度の測定により行い、ピークの面積値からMTAを定量した。HPLCはLc−10Avp(島津製作所)を用いた。
【0100】
結果、上記エキス末1g当たり約80μg含まれていることを確認した。
【0101】
4.PPARγ活性化能の評価法
4.1
2.で同定した活性成分をジメチルスルホキシド(DMSO)で1000μg/mLになるように、溶解させた。
【0102】
4.2 COS−1細胞の形質転換および被検試料の添加
COS−1細胞をトリプシン処理により回収し、1000rpm、4℃で、3分間遠心分離した後、上清を除去した。得られた細胞を、2mlの培地(DMEM培地)に分散して、60mm培養シャーレ(Corning社)に5×10cell/wellの密度で播いた後、37℃、5% CO存在下にて、24時間、培養した。
【0103】
形質転換には、Effectene Transfection Reagent(QIAGEN 社)を使用した。即ち、1.5mlのチューブに、Buffer EC 150μl、pM−hPPARγ−GAL4 1μg、pUASg−tk−Luc 1μg、pSEAP−control vector 1μg、及び最後にEnhancer 24μlを入れ、ボルテックス(vortex)で1秒間攪拌した。25℃で3分間放置した後、Effecteneを25μl加え、ボルテックス(vortex)で10秒間攪拌した後、25℃で7分間放置した。この間に、60mm培養シャーレの培地(DMEM培地)を除去し、新しく培地(DMEM培地)を4ml入れて培地交換をした。7分後、1.5mlのチューブに培地を1ml加え、2回、ピペッティングにより懸濁して60mm培養シャーレに全量を滴下し、37℃、5% CO存在下にて、16時間、培養した。
【0104】
形質転換した細胞をトリプシン処理により回収し、1000rpm、4℃で、3分間、遠心分離した後、上清を除去した。得られた細胞を、10mlの培地(DMEM培地)に懸濁して96well plate(NUNC)に125μl/well播き、37℃、5% CO存在下にて、1〜2時間、培養した。その後、4.1で調製した被検試料を最終濃度250μg/mLとなるように添加し、穏やかに攪拌して、37℃、5% CO存在下にて、24時間培養した。
【0105】
4.3 Luciferase活性測定
4.2における、被検試料添加から24時間後、96well plateから培地を25μl/well回収し、96well white plateに移した。その後、残りの100μl/wellに、37℃にて融解したルシフェラーゼ(Luciferase)活性測定用溶液を100μl/well添加し、暗所にて35分間反応させた後、それぞれのLuciferaseの発光強度(下記式中の、「被検試料のLuciferase発光強度」)を測定した。なお、上記方法において、比較対照として、被検試料を添加する代わりにDMSOを添加する以外は、同様の実験を行った(下記式中の、「DMSOのLuciferase発光強度」)。また、Luciferase活性測定用溶液は、下記に従って調製された。
【0106】
4.4 Secreted alkaline phosphatase(SEAP)活性の測定
4.2における、被検試料添加から24時間後、96well plateから回収した培地25μl/wellに、1×Dillution Buffer 25μl/wellを添加した。セロハンテープで蓋をした後、穏やかに攪拌し、65℃で30分間、放置した。その後、4℃に冷却し、25℃に戻してから、Assay Buffer 90μl/wellを添加して、穏やかに攪拌した。25℃で5分間放置し、MUP solution 10μl/wellを添加して、穏やかに攪拌した。暗所にて25℃で60分間反応させた後、4−methyl umbelliferoneに基づくSEAPの蛍光強度(Ex=360nm、Em=460nm)(下記式中の、「被検試料のSEAP蛍光強度」)を測定した。なお、上記方法において、比較対照として、被検試料を添加する代わりにDMSOを添加する以外は、同様の実験を行った(下記式中の、「DMSOのSEAP蛍光強度」)。また、1×Dillution Buffer、Assay Buffer及びMUP solutionは、1.5に従って調製された。
【0107】
4.5 試薬の調製法
4.3で使用されるLuciferase活性測定用溶液は、以下のようにして調製した。すなわち、60mM Tricine−NaOH(pH7.8)、16mM (MgCOMg(OH)・5HO(塩基性MgCO)、0.4mM EDTA、10% Surfact−Amps X−100(Thermo)、0.5mM D−Luciferin potassium salt(ナカライテスク)、1.5mM Adenosine 5’−triphosphate(SIGMA)、0.5mM Coenzyme A(SIGMA)、及び0.1mM β−Mercapto ethanolを超純水で調製し、10ml程度ずつ分注して使用直前まで−20℃で保存した。
【0108】
また、4.4で使用される1×Dillution Bufferは、以下のようにして調製した。すなわち、使用直前に、5×Dillution BufferをHOで希釈した。ここで、5×Dillution Bufferは、NaCl 4.38g、Tris 2.42gを90mlの超純水で溶解することによって調製した。12N HClを加えてpH7.2に調整し、使用直前まで4℃で保存した。
【0109】
また、4.4で使用されるAssay Bufferは、以下のようにして調製した。すなわち、L−homoarginine 0.9g、MgCl0.04gを超純水158mlに溶解し、diethanolamine 42mlを加えた。12N HClを加えてpH9.8に調整し、使用直前まで4℃に保存した。
【0110】
また、4.4で使用されるMUP solutionは、以下のようにして調製した。すなわち、1×Dillution Buffer 2.7μl/well、Assay Buffer 7μl/well、10×MUP 0.3μl/wellを混ぜた。10×MUP、4−methylumbelliferyl phosphate(MUP)2.56mgを超純水1000μlで溶解し、使用直前まで−20℃にて保存した。
【0111】
4.6 PPARγ活性化能の評価
4.3で測定されたLuciferaseの発光強度、および4.4で測定されたSEAPの蛍光強度から、下記数式1に従い、PPARγ活性化能を算出した。結果、9373であった。PPARγ活性化能の結果を図1に示す。
【0112】
【数1】

【0113】
<実施例2>
最終濃度を125μg/mLとなるように添加した以外は、実施例1と同様に実験を行い、PPARγ活性化能を算出した。結果、6080であった。PPARγ活性化能の結果を図1に示す。
【0114】
<実施例3>
最終濃度を63μg/mLとなるように添加した以外は、実施例1と同様に実験を行い、PPARγ活性化能を算出した。結果、3348であった。PPARγ活性化能の結果を図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)マッシュルームに、マッシュルームの質量に対して0.5〜50倍の質量の水を加えた後、マッシュルームを破砕して、マッシュルーム破砕物を得、次いで前記マッシュルーム破砕物を加熱することにより、殺菌を行うと共に、マッシュルームの組織を部分的に分解し、マッシュルーム破砕加熱物を得る工程;および、
(3)前記マッシュルーム破砕加熱物を、40〜121℃に加熱して熱水抽出を行い、マッシュルーム抽出物を得る工程;を有する、
5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンを含むエキスの製造方法。
【請求項2】
(6−1)前記マッシュルーム抽出物を合成吸着樹脂によるクロマトグラフィーにかけて、5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの含有率を向上させる工程;をさらに有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(2)前記(1)の工程に記載のマッシュルーム破砕加熱物を、40〜60℃の温度でセルラーゼまたはヘミセルラーゼを用いて酵素処理を行い、マッシュルーム破砕酵素処理物を得る工程;をさらに有し
前記(3)の工程に記載のマッシュルーム破砕加熱物の代わりに、前記マッシュルーム破砕酵素処理物の熱水抽出を行う、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
(1)マッシュルームに、マッシュルームの質量に対して0.5〜50倍の質量の水を加えた後、マッシュルームを破砕して、マッシュルーム破砕物を得、次いで前記マッシュルーム破砕物を加熱することにより、殺菌を行うと共に、マッシュルームの組織を部分的に分解し、マッシュルーム破砕加熱物を得る工程;
(2)前記マッシュルーム破砕加熱物を、40〜60℃の温度でセルラーゼまたはヘミセルラーゼを用いて酵素処理を行い、マッシュルーム破砕酵素処理物を得る工程;
(3)前記マッシュルーム破砕酵素処理物を、40〜121℃に加熱して熱水抽出を行い、マッシュルーム抽出物を得る工程;および、
(6−1)前記マッシュルーム抽出物を合成吸着樹脂によるクロマトグラフィーにかける工程;を有し、
前記(1)または(2)の工程のいずれかにおいて、マッシュルーム破砕物のpHが3〜6になるように、酸を添加する工程を有する、
5’−デオキシ−5’−メチルチオアデノシンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−184177(P2012−184177A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46973(P2011−46973)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】