説明

5−アシル−6−アルキル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル類の製造方法

【課題】 認知症治療薬の合成中間体として有用な式(I)で表される化合物を、高い選択性で高収率に合成できる方法を提供する。
【解決手段】 式(I)(式中、Rは置換されていてもよいアリール基等を意味し、Rは低級アルキル基を意味する。)で表される化合物の製造方法であって、式(II)(式中、Xはジ低級アルキルアミノ基等を意味し、RおよびRは前掲と同じものを意味する。)の化合物と2−シアノアセトアミドの混合物、または式(III)の化合物をカルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下に塩基で処理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、認知症治療薬等の原薬製造のための中間体として有用な5−アシル−6−アルキル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症治療薬として期待される5−置換−3−オキサジアゾール−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン誘導体は、特許文献1に開示されている。5−アシル−6−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル類はこの誘導体の鍵中間体の一つであり、そのいくつかの製造方法が特許文献1に開示されている。その中でも下図に示す方法は5−(3−メトキシフェニル)−3−(5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン(6)の工業的製法として有望である。
【0003】
【化1】

【0004】
上記の製法では、鍵中間体5−(3−メトキシベンゾイル)−6−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル(4)は、化合物(2)と2−シアノアセトアミドの反応生成物を閉環させることにより得られる。この閉環反応では、化合物(3)の2つのカルボニル基がともに反応点となり得るため、鍵中間体(4)と不要な幾何異性体(5)が約1:1の割合で生成し、鍵中間体(4)の収率は36%と低収率であった。そのため、鍵中間体(4)を選択的に合成する改良製造方法が望まれていた。
【0005】
非対称なジケトンから選択的に目的の異性体を得ようとする試みは下図に示す方法などが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【化2】


しかし、当手法ではカルボニル基の保護および脱保護の工程が増加する上、収率も低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第1999/03857号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Heterocyclic Chem., 1990年, 27, P.511〜518
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、認知症治療薬として期待される5−置換−3−オキサジアゾリル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン誘導体の合成中間体として有用な5−アシル−6−アルキル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル類を、公知の製法から工程数を増やすことなく、高い選択性で高収率に合成できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンを反応系中に存在させることにより目的の鍵中間である構造異性体を選択的に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明によれば、以下の態様を含む5−アシル−6−アルキル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル類の選択的製造方法が提供される。
【0010】
〔項1〕 下記式(I)
【化3】

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を意味し、Rは低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、
【0011】
下記式(II)
【化4】


(式中、Xは、ジ低級アルキルアミノ基、環状アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味し、RおよびRは前掲と同じものを意味する。)
で表される化合物と2−シアノアセトアミドをカルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて処理する方法。
【0012】
〔項2〕 項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法であって、
項1に記載の式(II)で表される化合物と2−シアノアセトアミドを反応させて下記式(III)
【化5】


(式中、RおよびRは前掲と同じものを意味する。)
で表される化合物を製造し、該化合物をカルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて処理する方法。
【0013】
〔項3〕 カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて処理する方法が、該金属カチオンをカウンターカチオンとして有するルイス酸の存在下で塩基を用いて処理する方法である項1または項2に記載の製造方法。
【0014】
〔項4〕 カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有するルイス酸が、塩化リチウム、臭化リチウムまたは臭化マグネシウムである項3に記載の製造方法。
〔項5〕 カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有するルイス酸が、塩化リチウムである項3に記載の製造方法。
〔項6〕 カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて処理する方法が、該金属カチオンをカウンターカチオンとして有する塩基を用いて処理する方法である項1または項2に記載の製造方法。
〔項7〕 カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有する塩基が、炭酸リチウム、リチウムtert−ブトキシドまたはマグネシウムエトキシドである項6に記載の製造方法。
【0015】
〔項8〕 カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有する塩基が、リチウムtert−ブトキシドである項6に記載の製造方法。
【0016】
〔項9〕 Xがジ低級アルキルアミノ基である項1〜8いずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、位置選択的な閉環反応を可能にすることで、認知症治療薬として有用な化合物の鍵中間体を選択的かつ高収率で合成できる。そして、製造過程において不要の構造異性体を大量に廃棄する必要がない。したがって、本発明は認知症治療薬として有用な化合物の効率的な製造法として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願明細書における用語について以下に説明する。特に断らなければ、本明細書中の基または用語について提示する最初の定義は、個別または別の基の一部として、本願明細書および特許請求の範囲中の基または用語に適用する。
【0019】
「低級アルキル基」とは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基(C1〜6アルキル基)を意味し、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0020】
「置換されていてもよいアリール基」とはハロゲン原子、C1〜3アルキル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシ基、C1〜3アルコキシル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、アミノ基およびニトロ基からなる群から選ばれる1〜3個の原子または基で置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基を意味し、具体例としてはフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、3−メトキシフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0021】
「置換されていてもよいヘテロアリール基」とは、ハロゲン原子、C1〜C3アルキル基、ヒドロキシ基、C1〜C3アルコキシ基、アミノ基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選択される同一または異なって1〜2個のヘテロ原子を含んでなる5〜6員芳香族複素環を意味し、該5〜6員芳香族複素環の具体例としてはピリジル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基などが挙げられる。
【0022】
「低級アルコキシ基」とは炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシ基を意味し、具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0023】
「ジ低級アルキルアミノ基」とは同一または異なる2つの炭素数1〜4のアルキル基が置換しているアミノ基を意味し、具体例としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基などが挙げられる。
【0024】
「環状アミノ基」とは窒素原子を少なくとも1個含み、酸素原子を含んでいてもよい5員環〜7員環の環状アミンを意味し、具体例としてはアジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル、チアモルホリニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル基などが挙げられ、好ましくはピロリジニル基およびピペリジニル基である。
【0025】
「ハロゲン原子」とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。
【0026】
次に、本願発明の製造方法について以下に説明する。
【0027】
式(I)で表される5−アシル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル類は、式(II)で表される化合物と2−シアノアセトアミドをカルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下に塩基で処理する以下の方法によって位置選択的に縮合閉環させることにより製造される。
【0028】
製法1
式(I)の化合物は、適当な溶媒中、適当な塩基およびカルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有するルイス酸存在下で式(II)の化合物を2−シアノアセトアミドと反応させることにより製造される。当該反応は、式(II)の化合物と2−シアノアセトアミドの反応から式(III)の化合物が生成する反応と、式(III)の化合物が閉環して式(I)の化合物が生成する反応を含んでおり、これらの反応は、通常、連続して進行させる。
【0029】
溶媒の具体例としては、メタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。好ましくはN−メチル−2−ピロリドンである。
【0030】
塩基の具体例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。塩基の量は、通常、式(I)の化合物に対して0.1〜10当量であるが、好ましくは0.5〜2当量である。
【0031】
カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有するルイス酸の具体例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、臭化マグネシウムなどが挙げられる。ルイス酸の量は、通常、式(II)の化合物に対して0.1〜10当量であるが、好ましくは0.5〜2当量である。
【0032】
反応温度は、通常−70℃〜30℃であり、好ましくは−30℃〜10℃である。
【0033】
製法2
式(I)の化合物は、適当な溶媒中、カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有する塩基を用いて式(II)の化合物と2−シアノアセトアミドを反応させることにより製造される。当該反応も、式(II)の化合物と2−シアノアセトアミドの反応から式(III)の化合物が生成する反応と、式(III)の化合物が閉環して式(I)の化合物が生成する反応を含んでおり、これらの反応は、通常、連続して進行させる。
【0034】
溶媒の具体例としては、メタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。好ましくはN−メチル−2−ピロリドンである。
【0035】
カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有する塩基の具体例としては、炭酸リチウム、リチウムtert−ブトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。塩基の量は、通常、式(I)の化合物に対して0.1〜10当量であるが、好ましくは0.5〜2当量である。
【0036】
反応温度は、通常−70℃〜30℃であり、好ましくは−30℃〜10℃である。
【0037】
式(I)の化合物は、対応する1,3−ジケトン化合物とN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールの反応から式(II)の化合物を製造した後、これを単離することなく連続して前記の製法1または製法2を実施することによっても製造される。
【0038】
式(II)の化合物はJ. Heterocyclic Chem., 1990年, 27, P.511〜518に記載の方法、あるいはこれに準じた方法により製造することができ、単離精製して、あるいは単離精製することなしに使用することができる。
【0039】
式(II)の化合物と2−シアノアセトアミドを塩基存在下に縮合させて得られる式(III)の化合物は、常法によって製造・単離することができる。カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて式(II)の化合物を閉環させると高収率で式(I)の化合物が生成する。式(II)の化合物の閉環反応は、前記の製法1および製法2と同様にして行われる。
【0040】
式(I)の化合物は、特許文献1の実施例に記載の方法で認知症治療薬として期待される5−置換−3−オキサジアゾール−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン誘導体へと誘導される。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本願発明を更に具体的に説明するが、本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例、参考例および比較例に記載の化合物は、特許文献1に記載の方法で製造した化合物とHPLCの保持時間および単離結晶のH−NMRで比較同定した。特許文献1に記載の方法で製造した下記化合物は、H−NMR、元素分析等の機器データを測定して化学構造を確認した。1H-NMRのケミカルシフトはテトラメチルシランを内部標準として報告した。
【0042】
化合物の純度はHPLCを用いて下記条件で分析した。
実施例1および比較例1の化合物
移動相:0.05%TFA水溶液/アセトニトリル (70/30)
カラム:SHISEIDO CAPCELL PAK C-18 SG120 S-5μm (4.6φx150 mm)
温度:40 ℃
流量:1 mL/min
波長:254 nm
【0043】
実施例2および比較例2の化合物
移動相:0.05%TFA水溶液/アセトニトリル (75/25)
カラム:SHISEIDO CAPCELL PAK C-18 SG120 S-5μm (4.6φx150 mm)
温度:40 ℃
流量:1 mL/min
波長:254 nm
【0044】
参考例1
1−(3−メトキシフェニル)ブタン−1,3−ジオンの製造:
ナトリウムメトキシド(314.8 g,5.82 mol)のトルエン(4.2 L)懸濁液に、20〜22 ℃で3−メトキシアセトフェノン(350.0 g,2.33 mol)の酢酸エチル(410.7 g,4.66 mol)溶液を7分かけて加えた。反応混合液を65〜75 ℃で2時間撹拌した。反応混合液を氷冷した後、氷水(1.05 L)を10〜15 ℃で加え、続いて36%塩酸を滴下してpH2に調整した。有機層を分離し、水(700 mL)、続いて塩化ナトリウム水(130 g/700 mL)で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して目的物439.8 gを得た。収率98.2%。
【0045】
比較例1
5−(3−メトキシベンゾイル)−6−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリルの製造:
1−(3−メトキシフェニル)ブタン−1,3−ジオン(5.00 g, 26.0 mmol) およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール (3.72 g, 31.2 mmol) の混合物を80 ℃で2時間撹拌した後、氷冷した。
ナトリウムメトキシド (1.54 mL, 28.6 mmol)および2−シアノアセトアミド (2.4 g, 28.6 mmol) のN-メチル-2-ピロリドン (50 mL) 溶液に、氷冷下、上記の反応混合物を滴下した。滴下終了後、氷冷下で2時間撹拌した。反応混合液に水 (50 mL) 加えた後、酢酸 (5 mL) を滴下して酸性とした。析出結晶をろ取し、水、イソプロパノール、イソプロピルエーテルで順にかけ洗いした。得られた粗結晶をN,N−ジメチルホルムアミド―メタノール (21 mL/21 mL) に加え約20 ℃で一晩撹拌した後、析出結晶をろ取し、メタノール、イソプロピルエーテルで順にかけ洗いして目的物3.33 gを得た。収率48%、純度98%。
【0046】
参考例2
2−ジメチルアミノメチレン−1−(3−メトキシフェニル)ブタン−1,3−ジオンの製造:
1−(3−メトキシフェニル)ブタン−1,3−ジオン (200.0 g, 1.04 mol) およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール (148.8 g, 1.25 mol) の混合物を70 ℃で2時間撹拌した。反応混合液を減圧濃縮して目的物260.1 gを得た。収率101%。
【0047】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃) δ:7.74 (1 H, s), 7.45-7.30 (3 H, m), 7.10-7.05 (1 H, m) 3.86 (3 H, s), 3.80-2.30 (6 H, br), 2.01 (3 H, s).MS(ESI):247 (M+H).融点:64 ℃.
【0048】
実施例1
5−(3−メトキシベンゾイル)−6−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリルの製造:
20〜22 ℃でリチウムtert-ブトキシド (1.78 g, 22.2 mmol)、2−シアノアセトアミド (1.87 g, 22.2 mmol) およびN−メチル−2−ピロリドン (25 mL) の混合物を15分間撹拌した後、−2 ℃まで冷却した。上記の反応混合物に参考例2の生成物(5 g, 20.2 mmol)のN-メチル-2-ピロリドン (20 mL) 溶液を3 ℃以下で滴下し、同温度で3時間撹拌した。反応混合液に水 (50 mL) を加えた後、酢酸 (5 mL) を滴下して酸性とした。析出結晶をろ取し、水 (15 mL)、2−プロパノール (15 mL) で順にかけ洗いし、送風乾燥 (60 ℃、12時間) して粗生成物4.95 g を得た。得られた結晶にN,N−ジメチルホルムアミド (15 mL) を加え22 ℃で3時間撹拌した後、析出結晶をろ取し、2−プロパノール (15 mL) でかけ洗いし、送風乾燥 (60 ℃、12時間) して目的物4.08 g を得た。収率74.6%、純度98.9%。
【0049】
1H-NMR(400 MHz, DMSO, 23 ℃) δ:13.03 (1 H, s), 8.10 (1 H, s), 7.46 (1 H, t, J=7.6 Hz), 7.30-7.20 (3 H, m) 3.81 (3 H, s), 2.39 (3 H, s).元素分析計算値C15H12N2O3:C,67.16;H,4.51;N,10.44.実測値:66.99;H,4.50;N,10.50.MS(APCI):269 (M+H).融点:266 ℃.
【0050】
参考例3
1−(3−チエニル)ブタン−1,3−ジオンの製造:
カリウムtert-ブトキシド(66.7 g,594 mmol)のジイソプロピルエーテル(600 mL)懸濁液に、約20〜25 ℃で3−アセチルチオフェン(50 g,396 mmol)を加え10分間撹拌した。反応混合液に酢酸エチル(69.8 g,792 mmol)を約20〜25 ℃で滴下した後、2時間加熱還流撹拌した。反応混合液を氷冷した後、水(300 mL)で2回抽出し水層に氷冷撹拌下、濃塩酸/水(40 mL/80 mL)を滴下して酸性とした。クロロホルム (300 mL) で2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、濃縮して目的物71.9gを得た。収率108%。
【0051】
比較例2
6−メチル−2−オキソ−5−(チオフェン−3−カルボニル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリルの製造:
1−(3−チエニル)ブタン−1,3−ジオン (71.9 g, 427 mmol) およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール (56 g, 470 mol) の混合物を80 ℃で2時間撹拌した後、氷冷した。
2−シアノアセトアミド (35.9 g, 427 mol) およびカリウムtert−ブトキシド(52.7 g, 470 mol) のN−メチル−2−ピロリドン (720 mL) 溶液に、−20℃で上記の反応混合物を滴下した。同温度で1.5時間撹拌した。反応混合液に水 (1440 mL) 加えた後、酢酸 (60 g) を滴下して酸性とした。析出結晶をろ取し、水 (500 mL)、イソプロパノール (200 mL) で順にかけ洗いした。得られた結晶にN,N−ジメチルホルムアミド/メタノール (250 mL/500 mL) を加え約20 ℃で4時間撹拌した後、析出結晶をろ取し、メタノールでかけ洗いして目的物56.9 gを得た。収率59%、純度85%。
【0052】
実施例2
6−メチル−2−オキソ−5−(チオフェン−3−カルボニル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリルの製造:
1−(3−チエニル)ブタン−1,3−ジオン (7.0 g, 41.61 mmol) およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール (5.45 g, 45.77 mmol) の混合物を80℃で1時間撹拌した。
氷冷下、カリウムtert−ブトキシド (5.60 g, 49.93 mmol) のN−メチル−2−ピロリドン (70 mL) 溶液に塩化リチウム (2.12 g, 49.93 mmol) を加え、10分間撹拌した。2−シアノアセトアミド(4.20 g, 49.93 mmol) を加えた後、氷冷攪拌下(5℃)、上記反応混合液を滴下し、30分間撹拌した。反応混合液に水 (140 mL) を注入した後、酢酸 (6 mL) を滴下して酸性とし、析出結晶を濾取、水洗後、イソプロパノール (50 ml) で洗浄した。粗結晶にメタノール (80 ml) を加え、約20 ℃で1時間撹拌した後、析出結晶を濾取、メタノール (30 ml)で洗浄、乾燥し目的物6.54 gを得た。収率68%、純度96.6%。
【0053】
1H-NMR:(400 MHz, DMSO, 23 ℃) δ:12.99 (1 H, s), 8.27 (1 H, dd, J=1.4, 2.8 Hz), 8.25 (1 H, s), 7.69 (1 H, dd, J=2.8, 5.2 Hz), 7.47 (1 H, dd, J=1.4, 5.2 Hz), 2.38 (3 H, s).MS(ESI):245 (M+H), 262 (M+NH4).融点:273 ℃(分解).
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の製造方法により、式(I)で表される5−アシル−6−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル類を高選択的に合成できるため、製造においても不要の異性体を大量に廃棄する必要がない。したがって、本発明は認知症治療薬として期待される5−置換−3−オキサジアゾール−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン誘導体の効率的な製造法として極めて有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】


(式中、Rは置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を意味し、Rは低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、
下記式(II)
【化2】


(式中、Xは、ジ低級アルキルアミノ基、環状アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味し、RおよびRは前掲と同じものを意味する。)
で表される化合物と2−シアノアセトアミドをカルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて処理する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法であって、
請求項1に記載の式(II)で表される化合物と2−シアノアセトアミドを反応させて下記式(III)
【化3】


(式中、Rは置換されていてもよいアリール基または置換されていてもよいヘテロアリール基を意味し、Rは低級アルキル基を意味する。)
で表される化合物を製造し、該化合物をカルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて処理する方法。
【請求項3】
カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて処理する方法が、該金属カチオンをカウンターカチオンとして有するルイス酸の存在下で塩基を用いて処理する方法である請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有するルイス酸が、塩化リチウム、臭化リチウムまたは臭化マグネシウムである請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有するルイス酸が、塩化リチウムである請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンの存在下で塩基を用いて処理する方法が、該金属カチオンをカウンターカチオンとして有する塩基を用いて処理する方法である請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有する塩基が、炭酸リチウム、リチウムtert−ブトキシドまたはマグネシウムエトキシドである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
カルボニル基と共にキレート構造を構築可能な金属カチオンをカウンターカチオンとして有する塩基が、リチウムtert−ブトキシドである請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
Xがジ低級アルキルアミノ基である請求項1〜8いずれか一項に記載の製造方法。


【公開番号】特開2010−208966(P2010−208966A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54793(P2009−54793)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】