説明

5−アミノレブリン酸を含む固体組成物

本発明は、消化器系下方部分における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断法において使用される、固体組成物及び固体薬品に関する。この固体製剤組成物及び薬品は、5-アミノレブリン酸(5-ALA)、5-ALAの前駆体若しくは誘導体、又は、その薬学的に許容可能な塩である活性成分を含む。本発明はさらに、下部消化管の、癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断法であって、該固体製剤組成物及び薬品が使用される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化器系下方部分における癌、前癌、及び非癌状態に関する光力学診断法において使用される、固体組成物及び固体薬品に関する。この固体製剤組成物及び薬品は、5-アミノレブリン酸(5-ALA)、又は5-ALAの前駆体又は誘導体、又は、その薬学的に許容可能な塩である活性成分を含む。本発明はさらに、下部消化管の癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断法であって、該固体製剤組成物及び薬品が使用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光力学診断法(PDD)は、前癌病巣、癌、及び非癌性疾患を診断するための比較的新しい技術である。PDDは、光感受性物質又はその前駆体を対象区域に向けて投与することを含む。該光感受性物質又はその前駆体は、細胞の中に取り込まれ、そこにおいて、光感受性物質の前駆体は光感受性物質に変換される。対象区域が光に暴露されると、光感受性物質は励起され、反応して蛍光を示し、これが検出される。この光感受性物質は、代謝的に活性な組織、例えば、炎症性又は新形成組織に好んで蓄積する。したがって、このような組織は、健康な組織と区別することが可能である。このメカニズムはまだ完全には理解されていないけれども、研究から、蓄積は癌細胞による選択的取り込みによるものではないことが示唆されている。すなわち、全ての細胞タイプにおいて同様のレベルの取り込みが行われるのであるが、変換及び排除プロセスが、新生組織などの代謝的に活性な組織では異なっており、これが、例えば、炎症性/新形成組織及び正常組織の間に濃度勾配をもたらすと考えられている。
【0003】
いくつかの光感受性物質及び光感受性物質前駆体が知られており、文献に記載されている。5-アミノレブリン酸(5-ALA)、及びそのいくつかの誘導体、例えば、5-ALAエステルは、光感受性物質の前駆体であるが、これは、一旦細胞内に取り込まれると、プロトポルフィリン、例えば、プロトポルフィリンIX(PpIX)に変換される。現在、フォトキユアASA(オスロ、ノルウェー)によって開発された一薬品Hexvix(登録商標)--5-ALAヘキシルエステルを含む--が、膀胱癌及び前癌病巣のPDD用として臨床的に使用されている。このPDD処置では、Hexvixは、水溶液として膀胱中に挿入されるが、この水溶液は、5-ALAヘキシルエステルの凍結乾燥粉末及び溶媒から現場で直前に調製される。これは、水性媒体における5-ALA及び5-ALAエステルの安定性が低く、これが、5-ALA及び5-ALAエステルの存在する、含水性薬品の有効保存期間を制限するためである。
【0004】
この課題を克服する試みとして、これまでいくつかの異なる戦略が採用されてきた。例えば、Galderma S.A.によるMetvix(登録商標)は、光線角化症及び基底細胞癌の光力学治療用水中油乳剤(クリーム)であるが、このものは低温状態で保存される。DUSA Pharmaceuticalsによって開発されたLevulan Kerastick(登録商標)は、5-ALAを含む、皮膚病の光力学治療用製品であるが、凍結乾燥5-ALA保有一分画を含む2分画システムとして販売され、5-ALA溶液は、服用の直前にこの2分画システムから調製される。
【0005】
しかしながら、これらのアプローチは不利である。例えば、薬剤を低温状態で輸送、保存することは必ずしも好都合であるとは限らない。さらに、製薬組成物は、すぐに使用可能な形状として提供することが一般に好ましい。なぜならば、これは、医療実施者及びスタッフにとってもっとも好都合だからである。さらに、直接使用可能形状を実現することによって、その組成物を、高信頼度で正確な濃度に調製することが可能となる。このことは、癌を含む大多数の疾患、すなわち、治療薬又は診断薬の適正で効率的な用量の投与が治療の成否を決める可能性のある疾患の治療及び診断には特に重要である。
【0006】
特許文献1は、安定な5-ALA処方を提供するための別アプローチを記載する。このアプローチでは、5-ALA又はその誘導体は、25°Cにおいて80未満の誘電率を有する非水性液体中に溶解又は分散され、上記液体は、5-ALA又はその誘導体を安定化する。非水性液体の使用は、5-ALAのエノール形の形成を促進し、次に、これが、5-ALAの分解を阻止すると仮定されている。しかしながら、安定性データは示されていない。特許文献1に言及される適切な非水性液体の例としては、グリセロール、及び、C1-C20カルボン酸との、そのモノ-、ジ-、及びトリ-エステル、プロピレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ポリ(アルキレングリコール)、リン脂質、DMSO、N-ビニルピロリドン、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。この組成物は、治療又は診断用キットの一部を形成してもよい。キットの他の一部は、組成物含有水である。この場合、キットの二つの部分は使用前に混合される。したがって、特許文献1のアプローチは、Levulan Kerastick(登録商標)と同様の欠点、すなわち、医療実施者に、実際に投与される薬品の処方を委ねる形状として製剤を提供することは一般的には望ましくないという点で、同じ欠点を抱える。
【0007】
消化管の下部、特に、結腸及び直腸は、腸炎、結腸・直腸癌、クローン病、過敏性腸疾患、及び各種の局所感染症など、いくつかの、重大で危機的疾患と関連する場合がある。これらのうち、潜在的にもっとも重大なのが結腸・直腸癌である。結腸・直腸癌に関する最近の診断法は、大便中の出血、下腹痛又は体重減少などの臨床症状の監視、結腸内視鏡検査及びX線による画像法を含む。結腸・直腸癌患者の予後は、他の多くの癌形態と同様、診断時における疾病段階、特に、その患者において遠方転移が起こっているかどうかに依存する。今日、結腸・直腸癌の治療にはいくつかの治療薬が臨床的に使用されるが、最近の薬剤にはそれぞれ臨床的限界があり、したがって、医学界において、さらに新たな治療処方、及び別の早期診断法が依然として求められている。
【0008】
非特許文献1は、滅菌リン酸緩衝生理的食塩水に溶解した5-ALAヘキシルエステルを含む浣腸使用の蛍光内視鏡検査による、結腸の前癌状態検出に関する臨床実験を記載する。著者らは、PDDの使用は、白色光内視鏡画像法に比べ、28%も数多いポリープを検出することを示している。
【0009】
非特許文献2は、ラットの慢性腸炎モデルにおいて、異形成病巣の蛍光検出のために、5-ALA、及び各種5-ALAエステル、すなわち、メチルエステル、ベンジルエステル、及びヘキシルエステルを用いた。5-ALA及び5-ALAエステル誘導体は滅菌液であり、これは局所プローブとして投与された。これらの実験における感度及び特異性は、エステルの選択に依存した。例えば、5-ALAヘキシルエステルの場合、感度は60%であり、特異性は51%であった。
【0010】
上述の浣腸及び局所投与プローブは、消化器系下部の状態の診断に使用される場合、いくつかの欠点を有する。これらは、その保存有効期間の安定性及び投与形態に関連する。プローブの局所投与は、浣腸の投与同様、投与時、さらに、浣腸の場合には、下剤の作用時、看護師及び/又は医師などの健康な職員の存在を必要とする。さらに、PDDにおける前駆体として5-ALA及び5-ALAエステルを使用することは、それらを、光感受性物質、すなわち、プロトポルフィリンへ変換することを必要とするが、この変換は直接的プロセスではない。したがって、このような前駆体の投与と、光の励起、したがって診断との間には、インキュベーション期間という形の遅延が生じる。最善の診断結果を得るためには、浣腸液又は局所投与プローブは、このインキュベーション期間の間、結腸壁に接触していなければならないが、患者によっては、その期間中、浣腸をその結腸内に維持することができない場合もあろう。
【0011】
したがって、5-ALA及び5-ALAエステルの別処方、消化管下部、特に結腸及び直腸のPDDに使用するための、5-ALA及び5-ALAエステルを含む薬品が求められている。
【0012】
特許文献2において、我々は、消化管下部、特に結腸及び直腸のPDDに使用するための固体薬品を記載する。上記固体薬品は、経口投与用であってもよいし、坐剤の形状を取ってもよい。経口用固体薬品は、カプセル、ペレット、粉末、錠剤、顆粒、丸剤、又はミニ錠剤の形状を取ってもよく、或いは、上記ミニ錠剤、粉末、顆粒、又はペレットはさらに、カプセル内に納められるか、又は、錠剤に圧縮されて提供されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US 2003/125388
【特許文献2】WO 2009/074811
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】B. Mayinger et al. in Endoscopy 40, 106-109, 2008
【非特許文献2】E. Endlicher et al. in Gastrointestinal Endoscopy 60(3), 449-454, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この度、我々は、驚くべきことに、消化管下部、特に結腸及び直腸のPDDに使用するための5-ALA又はその誘導体(例えば、ALAエステル)を含む、新規の代替固体処方を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この新規固体処方は、室温で安定性を有し、医療担当者にとっては--浣腸及び局所プローブに比べ--取扱いがより易しく、患者にとってもより好都合である。本処方はさらに、消化器系の下部、特に、小腸の最下部、結腸及び直腸全体に簡単に送達させることが可能である。したがって、本処方は、従来技術の前述の欠点を克服し、所望の部位、すなわち、消化管下部に、有効濃度の5-ALA又はその誘導体を供給することが可能であり、さらに--これは重要である--上記所望部位に5-ALA又はその誘導体(例えば、ALAエステル)の実質的に均質な(すなわち、均一な)送達を実現すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】図1aは、11In-放射線標識水溶液を含むEnterion(商標=TM)カプセルを投与した6名の検査対象消化管の活性化2時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。カプセルは、末端回腸/盲腸においてその内容物を放出するように活性化された。
【図1b】図1bは、上述の6名の検査対象消化管の活性化6時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。
【図1c】図1cは、上述の6名の検査対象消化管の活性化12時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。
【図2a】図2aは、200 mgのMiglyol(登録商標) 812及び100 mgのGelucire(登録商標) 44/14に溶解した100 mgのHAL HClから成る11In-放射線標識組成物を含むEnterionTMカプセルを投与された4名の検査対象消化管の、活性化2時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。
【図2b】図2bは、上述の4名の検査対象消化管の活性化6時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。
【図2c】図2cは、上述の4名の検査対象消化管の活性化12時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。
【図3a】図3aは、200 mgのMiglyol(登録商標) 812及び100 mgのGelucire(登録商標) 44/14に溶解した100 mgのHAL HClから成る11In-放射線標識組成物を含む腸溶コートカプセルを投与された6名の検査対象消化管の、活性化2時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。カプセルは、pH≧6.5において崩壊した。
【図3b】図3bは、上述の6名の検査対象消化管の活性化6時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。
【図3c】図3cは、上述の4名の検査対象消化管の活性化12時間後のガンマ・シンチグラフィー画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
したがって、第1局面から見ると、本発明は、下部消化管の癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断に使用される固体薬品であって、
a) 5-ALA、5-ALAの前駆体又は5-ALAの誘導体、及び、その薬学的に許容可能な塩から選ばれる活性成分;
b) 1種類以上のトリグリセリド;及び、
c) 1種類以上の乳化剤、
を含む、固体薬品を提供する。
【0019】
「固体」という用語は、薬品の物理的状態、すなわち、液体又は気体ではなく、固体としての物理的状態を指す。したがって、液体、分散液、及び溶液は、本用語によって包含されない。さらに、ゲル、軟膏、ペースト、及びクリームなどの半固体もこの用語によって包含されない。本発明によって包含される固体薬品の代表例としては、カプセル、錠剤、ペレット、顆粒、散剤、及び坐剤が挙げられる。
【0020】
「薬品」という用語は、治療対象、例えば、ヒト又は非ヒト動物に対し実際に投与される実体を指す。
【0021】
「前癌状態」という用語は、治療せずに放置されると癌に至る可能性のある、病気、症候群、又は所見を示す。これは、癌リスクの著しい増大と関連する一般的状態である。前癌状態は、例えば、細胞の広範/異常な増殖、例えば、過形成及び新形成によって自ずから顕在化されてもよい。
【0022】
「非癌状態」という用語は、下部消化管に局在する腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、及び、他のウィルス、細菌、又は真菌感染症又は炎症の様な病的状態を含む。
【0023】
「活性成分」という用語は、5-ALA及びその薬学的に許容可能な塩、5-ALAの前駆体及びその薬学的に許容可能な塩、並びに、5-ALAの誘導体及びその薬学的に許容可能な塩を示す。
【0024】
「5-ALA」という用語は、5-アミノレブリン酸、すなわち、5-アミノ-4-オキソ-ペンタン酸を示す。
【0025】
「5-ALAの前駆体」という用語は、代謝的に5-ALAに変換され、したがって、5-ALAに対して実質的に等価な化合物を示す。したがって、「5-ALA前駆体」という用語は、ヘム生合成の代謝経路におけるプロトポルフィリンの生物学的前駆体をカバーする。
【0026】
「5-ALAの誘導体」という用語は、化学的に修飾された5-ALA、例えば、エステルを示す。
【0027】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本固体薬品において使用するのに好適で、例えば、安全性、バイオアベラビリティー、及び耐性に関連する要件(例えば、P. H. Stahl et al. (eds.) Handbook of Pharmaceutical Salts, Publisher Helvetica Chimica Acta, Zurich, 2002を参照されたい)を満たす塩を示す。
【0028】
本発明の薬品は、治療対象、例えば、ヒト又は非ヒト動物に対して投与される際、固体である。本発明の好ましい固体薬品は、少なくとも18°Cの温度において固体であり、より好ましくは少なくとも25°Cの温度において、さらに好ましくは少なくとも30°Cの温度において固体である。
【0029】
本固体薬品が坐剤の形状を取らない場合、本発明の固体薬品は、もっとも好ましくは、少なくとも40°Cの温度において固体である。
【0030】
本固体薬品が坐剤の形状を取る場合、本発明の固体薬品は、もっとも好ましくは、室温で固体であるが、治療対象、すなわち、それが投与されるヒト又は非ヒト動物の体温において融解/溶解する。
【0031】
好ましい実施態様では、本発明による固体薬品は、下部消化管、好ましくは結腸及び直腸における癌及び前癌状態の光力学診断に使用される。
【0032】
PDT及びPDDにおける、5-ALA、及びその誘導体、例えば、5-ALAエステルの使用は、科学文献及び特許文献において周知されており、例えば、WO 96/28412、WO 2006/051269、WO 2005/092838、WO 03/011265、WO 02/09690、WO 02/10120、WO 2003/041673、及びUS 6,034,267を参照されたい。なお、これらの内容を引用により本明細書に含める。これらの5-ALA誘導体及びその薬学的に許容可能な塩は、全て、本明細書に記載される方法において使用するのに好適である。
【0033】
5-ALAの合成は当該技術分野において公知である。さらに、5-ALA及びその薬学的に許容可能な塩は市販されており、例えば、Sigma Aldrichから販売されている。
【0034】
本発明において有用な5-ALA誘導体は、プロトポルフィリンを形成することが可能な5-ALA誘導体であるならばいずれの誘導体であってもよく、例えば、PpIX、又はインビボにおけるPpIX誘導体であってもよい。通常、このような誘導体は、PpIX又はPpIX誘導体の前駆体、例えば、ヘムの生合成経路におけるPpIXエステルであり、したがって、投与後、インビボにおいてPpIXの蓄積を誘発することが可能な前駆体である。PpIX又はPpIX誘導体の好適な前駆体としては、インビボにおけるPpIXの生合成の際、中間体として5-ALAを形成することが可能な5-ALAプロドラッグ、又は、中間体として5-ALAを形成することなく、例えば酵素的にポルフィリンに変換され得る5-ALAプロドラッグが挙げられる。5-ALAエステル、及びその薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載される本発明に使用が可能な好ましい化合物の中に入る。
【0035】
必要に応じてN-置換される5-ALAのエステルは、本発明において使用するのに好ましい。5-アミノ基が置換されていない化合物、すなわち、5-ALAエステルは特に好ましい。このような化合物は周知され、文献に記載される。例えば、フォトキュアASAのWO 96/28412及びWO 02/10120を参照されたい。なお、これらの内容を引用により本明細書に含める。
【0036】
置換又は非置換アルカノールを有する5-ALAのエステル、すなわち、アルキルエステル及び置換アルキルエステル、及び、その薬学的に許容可能な塩は、本発明において使用するのに特に好ましい誘導体である。このような化合物の例として、下記の一般式Iのもの、及び、その薬学的に許容可能な塩が挙げられる:
R22N-CH2COCH2-CH2CO-OR1(I)
上式において、
R1は、置換又は非置換アルキル基を表し;且つ、
R2は、それぞれ独立に、水素原子又はR1基を表す。
【0037】
本明細書で用いる「アルキル」という用語は、そうではないと明言しない限り、いずれの長さでもよい長鎖又は短鎖、環状、直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和の、脂肪族炭化水素基を含む。不飽和アルキル基は、モノ又はポリ不飽和性であってもよく、アルケニル基及びアルキニル基の両方を含んでもよい。そうではないと明言しない限り、このアルキル基は、最大40個の炭素原子を含んでもよい。しかしながら、最大30個の炭素原子、好ましくは最大10個、特に好ましくは最大8個、特に好ましくは最大6個の炭素原子を含むアルキル基が好ましい。
【0038】
式Iの化合物において、R1基は、置換又は非置換アルキル基である。R1が置換アルキル基である場合、一つ以上の置換基は、そのアルキル基に結合するか、及び/又は、そのアルキル基を分断する。アルキル基に結合する適切な置換基は、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アリール、ニトロ、オキソ、フルオロ、-SR3、-NR32、及び-PR32から選ばれるものである。上式において、R3は、水素原子又はC1-6アルキル基である。アルキル基を分断する適切な置換基は、-O-、-NR3-、-S-、又は-PR3-から選ばれるものである。
【0039】
好ましい実施態様では、R1は、一つ以上のアリール置換基、すなわち、アリール基によって、好ましくは、一つのアリール基によって置換されたアルキル基である。
【0040】
本明細書で用いる「アリール基」という用語は、窒素、酸素、又は硫黄などのヘテロ原子を含んでもよく、又は含まなくてもよい芳香族基を示す。ヘテロ原子を含まないアリール基が好ましい。好ましいアリール基は、最大20個の炭素原子、より好ましくは最大12個の炭素原子、例えば、10個又は6個の炭素原子を含む。アリール基の好ましい実施態様は、フェニル及びナフチルであり、特にフェニルである。さらに、アリール基は、必要に応じて、一つ以上の、より好ましくは一つ又は二つの置換基によって置換されてもよい。好ましくは、アリール基は、メタ又はパラ位において、もっとも好ましくはパラ位において置換される。適切な置換基としては、トリフルオロメチルなどのハロアルキル、アルコキシ、好ましくは、1から6個の炭素原子を含むアルコキシ基、ヨード、ブロモ、クロロ、又はフルオロ、好ましくはクロロ及びフルオロなどのハロ、ニトロ、及び、C1-6アルキル、好ましくはC1-4アルキルである。好ましいC1-6アルキルとしては、メチル、イソプロピル、及びt-ブチルが挙げられるが、特にメチルである。特に好ましいアリール置換基は、クロロ及びニトロである。しかしながら、さらに好ましくは、非置換のアリール基である。
【0041】
上記好ましいアリール置換R1基は、ベンジル、4-イソプロピルベンジル、4-メチルベンジル、2-メチルベンジル、3-メチルベンジル、4-[t-ブチル]ベンジル、4-[トリフルオロメチル]ベンジル、4-メトキシベンジル、3,4-[ジ-クロロ]ベンジル、4-クロロベンジル、4-フルオロベンジル、2-フルオロベンジル、3-フルオロベンジル、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル、3-ニトロベンジル、4-ニトロベンジル、2-フェニルエチル、4-フェニルブチル、3-ピリジニル-メチル、4-ジフェニル-メチル、及びベンジル-5-[(1-アセチルオキシエトキシ)-カルボニル]である。比較的好ましいR1基は、ベンジル、4-イソプロピルベンジル、4-メチルベンジル、4-ニトロベンジル、及び4-クロロベンジルである。もっとも好ましいのはベンジルである。
【0042】
R1基が置換アルキル基である場合、一つ以上のオキソ置換基が好ましい。好ましくは、この基が直鎖のC4-12アルキル基であって、一つ以上のオキソ基、好ましくは1から5個のオキソ基によって置換された直鎖のC4-12アルキル基である。オキソ基は、この置換アルキル基において、互い違いの順序で存在し、そのため、短いポリエチレングリコール置換基が得られることが好ましい。このような基の好ましい例としては、3,6-ジオキサ-1-オクチル、及び3,6,9-トリオキサ-1-デシルが挙げられる。
【0043】
R1基が非置換アルキル基である場合、直鎖又は分枝鎖の飽和アルキル基であるR1基が好ましい。R1が直鎖の飽和アルキル基である場合、C1-10直鎖アルキル基が好ましい。適切な直鎖アルキル基の代表的例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、及びn-オクチルが挙げられる。特に好ましいのはC1-6直鎖アルキル基であり、もっとも好ましいのはメチル及びn-ヘキシルである。R1が分枝鎖飽和アルキル基である場合、この分枝鎖アルキル基は、好ましくは、4から8個、好ましくは5から8個の直鎖炭素原子のステムからなり、且つ、上記ステムは、一つ以上のC1-6アルキル基、好ましくはC1-2アルキル基によって分枝される。このような分枝飽和アルキル基の例としては、2-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1-エチルブチル、及び、3,3-ジメチル-1-ブチルが挙げられる。
【0044】
式Iの化合物において、R2は、それぞれ独立に、水素原子又はR1基を表す。本発明における使用に特に好ましいのは、少なくとも一つのR2が水素原子を表す、式Iの化合物である。特に好ましい化合物では、各R2は水素原子を表す。
【0045】
好ましくは、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩において、R1が、メチル又はヘキシル、より好ましくはn-ヘキシルであり、二つのR2が共に水素を表す化合物、すなわち、5-ALAメチルエステル、5-ALAヘキシルエステル、及び、その薬学的に許容される塩、好ましくはHCl塩である、化合物及びその塩が、本発明の固体薬品において使用される。本発明の固体薬品において使用するのに好ましい化合物は、5-ALAヘキシルエステル及びその薬学的に許容される塩、好ましくはHCl塩、又はスルフォン酸塩、又はスルフォン酸誘導体塩である。
【0046】
本発明において使用される5-ALAエステル及びその薬学的に許容される塩は、当該技術分野で利用可能な、いずれの従来手順によって、例えば、WO 96/28412及びWO 02/10120中に記載された手順によって調製されてもよい。簡潔に述べると、5-ALAエステルは、触媒、例えば、酸の存在下に、適切なアルコールと5-ALAを反応させることによって調製してもよい。5-ALAエステルの薬学的に許容される塩は、前述のように、薬学的に許容される5-ALA塩、例えば、5-ALA塩酸を適切なアルコールと反応させることによって調製してもよい。それとは別に、5-ALAメチルエステル又は5-ALAヘキシルエステルのような、本発明に使用される化合物は、例えば、フォトキュアASAノルウェーから購入することも可能である。
【0047】
本発明において使用される5-ALAエステルは、遊離アミン、例えば、-NH2、-NHR2、又は-NR2R2の形状を取ってもよいが、好ましくは、薬学的に許容される塩の形状を取る。このような塩は、好ましくは、薬学的に許容される有機又は無機酸による酸添加塩である。適切な酸としては、例えば、塩酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、スルフォン酸及びスルフォン酸誘導体が挙げられ、後者は、フォトキュアASAのW02005/092838において記載される。なお、この特許の全内容を引用により本明細書に含める。好ましい酸は、塩化水素酸、HCl、スルフォン酸、及びスルフォン酸誘導体である。塩形成のための手法は当該技術分野で周知される。
【0048】
したがって、本発明の好ましい実施態様は、下部消化管の癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断に使用される固体薬品であって、
a) 5-ALA及びその薬学的に許容可能な塩、好ましくは、5-ALAエステル又はその薬学的に許容可能な塩;
b) 一つ以上のトリグリセリド;及び、
c) 一つ以上の乳化剤、
を含む、固体薬品である。
【0049】
ある好ましい実施態様では、上記5-ALAエステルは、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、式中R1は、非置換アルキル基、好ましくは、非置換の直鎖又は分枝した飽和アルキル基、より好ましくは、非置換の直鎖の飽和C1-10アルキル基である。より好ましくは、上記5-ALAエステルは5-ALAヘキシルエステルであり、さらに別の好ましい実施態様では、5-ALAヘキシルエステルの、上記薬学的に許容される塩は、HCl塩、又はスルフォン酸塩、又はスルフォン酸誘導体塩、例えば、メシル酸塩、トシル酸塩、又はナプシル酸塩である。
【0050】
前述の化合物は、本発明による固体薬品の製造のためにいずれの従来法において使用されてもよい。本発明の薬品における5-ALA、5-ALA誘導体、又は5-ALA前駆体の所望濃度は、いくつかの因子、すなわち、該化合物の性質、該化合物が提供される製品の性質及び形状、意図する投与方法、及び治療対象、すなわち、ヒト及び非ヒト動物を含む因子に依存して変動する。しかしながら、一般に、5-ALA、又は5-ALA誘導体、又は5-ALA前駆体、又はその薬学的に許容される塩の濃度は、成分a)プラスb)プラスc)の合計の全重量に対し、重量で、1から50%、好ましくは1から40%、例えば、2から35%、より好ましくは5から30%の範囲にあると好都合である。
【0051】
本発明による固体薬品は、一つ以上のトリグリセリド、すなわち、トリアシルグリセロール類を含む。トリグリセリドは、1分子のグリセロール、及び脂肪酸3分子から構成される。この三つの脂肪酸は、同一であっても、異なる脂肪酸であってもよい。
【0052】
トリグリセリドは、室温において、すなわち、約18°Cから約25°Cの温度において固体であっても液体であってもよい。固体トリグリセリドは一般に脂肪と表示され、一方、液体トリグリセリドは一般に脂肪油と表示される。固体トリグリセリドが使用される場合、上記固体トリグリセリドは、該固体製品が投与されるヒト又は非ヒト動物の体温以下の融点を有することが好ましい。好ましい実施態様では、固体薬品はヒトに投与され、上記薬品に含まれる固体トリグリセリドの融点は、約26°Cと37°Cの間にある。
【0053】
トリグリセリドは、合成、半合成、又は、動物及び/又は植物由来であってもよい。トリグリセリドは、純粋/単離トリグリセリドであってもよいし、又は、混合物、例えば、トリグリセリド、モノグリセリド、及び/又はジグリセリド、及び/又は遊離脂肪酸、及び/又は非鹸化性脂質の混合物の一部であってもよい。これらの混合物は、典型的には、動物及び/又は植物由来の食用油であることが認められる。トリグリセリドが混合物の一部である場合、それらは、上記混合物の主要部分を構成することが好ましい。下記では、この混合物も「トリグリセリド」と表示される。
【0054】
これらのトリグリセリドは、ヒト又は非ヒト動物において使用される、本発明による薬品に使用されるのであるから、該トリグリセリドは、医薬品グレードである必要があり、生理学的受容性、耐性、及び安全性に関する、そのような製品の要件及び基準を満たす必要がある。
【0055】
さらに、このトリグリセリドは、不活性化合物、すなわち、活性成分a)と反応しないか、又は、活性成分の劣化を促進しない化合物でなければならない。
【0056】
「一つ以上のトリグリセリド」という用語は、本発明による固体薬品が、一つのトリグリセリド、又はいくつかの異なるトリグリセリドを含むことを意味する。例として挙げると、固体薬品は、トリカプリリン(カプリン酸トリグリセリド)、又は、トリカプリリン及びカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを含んでもよい。さらに、例として挙げると、固体薬品は、大豆油、すなわち、アルファ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸のトリグリセリド混合物である大豆油を含んでもよい。
【0057】
好ましいトリグリセリドは、動物及び/又は植物起源の食用油、例えば、大豆油、パーム油、シュロ核油、コーン油、オリーブ油、アーモンド油、サフラワー油、ピーナツ油、ココナッツツ油、ひまわり油、ヒマシ油、パイン油、ホホバ油、ココアバター、及びパームオレインなどの食用油、及び/又はその断片から選ばれる。好ましいトリグリセリドの追加例としては、イリッペバター、シアバター、ココアバター、コクムバター、サルバター、及びその他の天然油脂、又はその断片がある。好ましいトリグリセリドの他の例としては、水素添加又は部分的に水素添加されたトリグリセリド、すなわち、部分的又は完全水素添加大豆油、菜種油、綿実油、ひまわり油、ココナッツツ油、及びその断片から選ばれるトリグリセリドが挙げられる。このトリグリセリドは、中等鎖長トリグリセリド(MCT)などの、合成又は半合成トリグリセリドであってもよい。
【0058】
好ましい実施態様では、トリグリセリドは、グリセロール、及び、三つの同じか又は異なるC2-C22脂肪酸、より好ましくは三つの同じか又は異なるC4-C18脂肪酸、さらに好ましくは三つの同じか又は異なるC6-C18脂肪酸、及びもっとも好ましくは三つの同じか又は異なるC6-C12脂肪酸から構成されるトリグリセリドである。より好ましい実施態様では、トリグリセリドは、グリセロール、及び、三つの同じC2-C22脂肪酸、より好ましくは三つの同じC4-C18脂肪酸、さらに好ましくは三つの同じC6-C18脂肪酸、及びもっとも好ましくは三つの同じC6-C12脂肪酸から構成されるトリグリセリドである。
【0059】
もっとも好ましい固体トリグリセリドは、ココアバター、木蝋、ハードファット、水素添加ココ-グリセリド、水素添加パーム油、トリステアリン、トリパルミチン、及びトリミリスチンである。これらの固体トリグリセリドは、その固体薬品が坐剤である場合は、特に好まれる。坐剤の場合、必要に応じてグリセリルリシノレエートと混ぜ合わされる水素添加ココ-グリセリド、例えば、"Witepsol(登録商標)"及び"Massa Estarinum(登録商標)"の名称の下に市販されるものが好ましく、より好ましくは、低いヒドロキシル価と、31°Cと38°Cの間に融点を有する水素添加ココ-グリセリド、すなわち、Witepsol H32、Witepsol H35、Witepsol H37、及びMassa Estrinum(登録商標) 299である。
【0060】
もっとも好ましい液体トリグリセリドは、トリカプリリン、トリカプロイン、トリヘプタノイン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、及びカプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドであり、これらの液体トリグリセリドのうちのあるものは、"Myglyol(登録商標)"の名称の下に市販される。例えば、Miglyol 812はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであり、Miglyol 818はカプリル酸/カプリン酸/リノレン酸トリグリセリドであり、且つ、Miglyol 808はトリカプリリンである。このようなトリグリセリドのメーカーとしては、例えば、Sasol、Witten(ドイツ国)がある。
【0061】
一般に、本発明の薬品におけるトリグリセリドの量は、成分a)プラスb)プラスc)の合計重量に対し、重量で、50から90%、より好ましくは60から80%である。
【0062】
本発明において使用されるトリグリセリドは、当該技術分野で周知の標準的工程及び手順を用いて調製してもよいが、一般に、Sasol、Croda、Cognis、Gattefosse、その他などの種々のメーカーから市場を通じて購入することが可能である。
【0063】
本発明による固体薬品は一つ以上の乳化剤を含む。
【0064】
別名界面活性剤、界面活性物質、又はエマルジェントとも呼ばれる乳化剤は、エマルジョンを安定化する物質である。薬品において使用することが可能なエマルジョンを調製するために、広く多様な乳化剤が使用される。
【0065】
「一つ以上の乳化剤」という用語は、本発明による固体薬品が、一つの乳化剤又はいくつかの異なる乳化剤を含むことを意味する。
【0066】
本発明の固体薬品において使用される乳化剤は、室温、すなわち、約18°Cから約25°Cの温度において固体であっても、液体であってもよい。
【0067】
好ましい実施態様では、乳化剤は非イオン性乳化剤である。
【0068】
好ましい非イオン性乳化剤は、短鎖部分的グリセリドの群、すなわち、短鎖脂肪酸を有するグリセロールエステル類であって、存在するヒドロキシル基の一部だけがエステル化された、すなわち、モノ又はジグリセリド、又はモノ及びジグリセリドの混合物から成るグリセロールエステル類から選ばれる。好ましい部分的グリセリドは、C6-C10脂肪酸のモノ又はジグリセリド、又は、C6-C10脂肪酸のモノ及びジグリセリドの混合物である。
【0069】
さらに別の好ましい非イオン性乳化剤は、グリセロールの、脂肪酸及びアルファ-ヒドロキシ酸によるエステル類であって、例えば、グリセリルステアレートシトレート、グリセロールシトレート/ラクテート/オレエート/リノレエート、グリセリルココエート/シトレート/ラクテート、及びグリセリルイソステアレートである。
【0070】
さらに別の好ましい非イオン性乳化剤は、セトステアリルアルコール又はセトマクロゴールなどの、脂肪性アルコール及び/又はエトキシル化脂肪性アルコールである。
【0071】
さらに別の好ましい非イオン性乳化剤は、エトキシル化ひまし油などのエトキシル化脂肪酸である。
【0072】
さらに別の好ましい非イオン性乳化剤は、"Span"及び"Tween"の名称の下に市販される、ソルビタン及び脂肪酸の非エトキシル化及びエトキシル化エステル類、すなわち、ポリソルベート、好ましくは、(ポリオキシエチレン)ソルビタンモノラウレート、(ポリオキシエチレン)ソルビタンモノパルミテート、(ポリオキシエチレン)ソルビタンモノステアレート、(ポリオキシエチレン)ソルビタンモノオレエート、(ポリオキシエチレン)ソルビタントリステアレート、又は(ポリオキシエチレン)ソルビタントリオレエートである。
【0073】
さらに別の好ましい非イオン性乳化剤は、レシチン類、例えば、卵黄レシチン又は大豆レシチン、又は、レシチン、好ましくはフォスファチジルコリンから得られるリン脂質である。
【0074】
さらに別の好ましい非イオン性乳化剤は、ポリエチレングリコール400モノステアレートなどの、ポリエチレングリコール系化合物である。
【0075】
さらに別の好ましい非イオン性乳化剤は、エトキシル化グリセリド類であり、例えば、エトキシル化カプリロカプロイルグリセリドであるか、又は、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂、例えば、パーム核油、水素添加パーム核油、ひまし油、水素添加ひまし油、アーモンド油、杏子核油などとの反応から得られる生成物である。
【0076】
この後者の非イオン性乳化剤の方がより好ましく、好ましい例としては、ラウロイルマクロゴール-32グリセリド、Gelucire(登録商標) 44/14(Gattefosse);ステアロイルマクロゴールグリセリド、Gelucire(登録商標) 50/13(Gattefosse);PEG-50ひまし油、Emalex C-50(日本エマルジョン);Eumulgin(登録商標) HRE 40(Cognis);PEG-45水素添加ひまし油、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド、Labrasol(登録商標)(Gattefosse);それぞれ単独、又は他の乳化剤との混合物がある。好ましい実施態様では、いくつかのGelucire類、例えば、Gelucire(登録商標) 44/14を、Gelucire(登録商標) 50/02(飽和ポリグリコール化グリセリド)と、又はGelucire(登録商標) 33/01(C8-C18飽和脂肪酸のグリセロールエステル)と混ぜ合わせる。
【0077】
他の、さらに別の好ましい非イオン性乳化剤は、ポロキサマー類、すなわち、ポリオキシエチレンの二つの親水鎖によって挟まれる、ポリオキシプロピレンから成る中央疎水鎖から構成されるトリブロックコポリマーである。ポロキサマー類は、商品名Pluronics(登録商標)で知られる。もっとも好ましいプロキサマーは、液体であり、7未満のpHを有するもの、例えば、Pluronic(登録商標) L43、HLB 7-12、及びPluronic(登録商標) L44、HLB 12-18、それぞれ単独であるか、又は、他の乳化剤、好ましくは、Pluronic(登録商標) F68などの他のポロキサマーとの混合物である。
【0078】
活性成分a)が、5-ALAのC1-C10アルキルエステル、又はその薬学的に許容される塩である場合、好ましくは高い親水・親油平衡値(HLB値)、さらに好ましくは少なくとも7のHLB値、好ましくは少なくとも12のHLB値、より好ましくは約12-18のHLB値を有する非イオン性乳化剤を使用することが好ましい。一つを超える乳化剤を使用する場合、複数乳化剤から得られる混合物が少なくとも7のHLB値、好ましくは約12-18のHLB値を有する限り、7未満、又は18を超えるHLB値を有する乳化剤を使用することも可能である。
【0079】
一般に、乳化剤は、本固体薬品において、使用部位、例えば、結腸及び直腸における該薬品の均一分布を促進するのに必要な量として存在する。乳化剤の量は、トリグリセリドの量に配慮して選択するのが適切である。好ましくは、乳化剤は、本発明の薬品において、該固体薬品の全重量に対し、重量で、0.5から50%、好ましくは1から35%、より好ましくは2から30%の量として存在する。
【0080】
本発明において使用される乳化剤は、当該技術分野で周知の標準的工程及び手順を用いて調製してもよいが、ただし多くのものは、Sasol、Croda、Cognis、Gattefosse、米国のレシチン会社、BASF、Cytecその他など、種々のメーカーから市場を通じて購入することが可能である。
【0081】
本固体薬品はさらに:
d) 必要に応じて一つ以上の粘性接着剤;
e) 必要に応じて、b)及びc)以外の、一つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤;
f) 必要に応じて、一つ以上の表面浸透剤;及び、
g) 必要に応じて、一つ以上のキレート剤
を含む。
【0082】
本発明による固体薬品は、必要に応じて、一つ以上の粘性接着剤、すなわち、一つの変性接着剤、又はいくつかの異なる粘性接着剤を含む。
【0083】
「粘性接着剤」という用語は、粘膜表面に対して親和性を示す化合物、すなわち、粘膜表面に対し、一般にその性質が非共有結合性である結合を--その結合が、粘液及び/又は下層細胞との相互作用によって起こるのかどうかとは無関係に--形成することによって接着する化合物を示す。本発明の主旨に基づけば、粘膜表面は、下部消化管の粘膜表面、特に、結腸及び直腸の粘膜である。
【0084】
本発明の固体薬品中に必要に応じて存在する粘性接着剤は、好ましくは、下部消化管、特に結腸及び直腸に存在する細菌性及び非細菌性酵素によって分解又は代謝されない粘性接着剤である。
【0085】
本発明の固体薬品において使用が可能な粘性接着剤は、天然又は合成化合物の、ポリアニオン系、ポリカチオン系、又は中性のポリマーであって、水溶性、又は水に不溶の、好ましくは大きな、例えば500 kDaから3000 kDa、例えば1000 kDaから2000 kDaの分子量を有し、水に不溶の架橋ポリマー、例えば、水和前にポリマーの全重量に対し0.05%から2%の架橋剤を含み、水素結合を形成することが可能な水膨潤性ポリマーであってもよい。この粘性接着化合物は、Smartら、1984, J. Pharm. Pharmacol., 36, pp 295-299の方法による評価において、インビトロで標準に対するパーセント相対値で表した場合、100よりも大きく、特に好ましくは120よりも大きく、特に150よりも大きい粘性接着力を有することが好ましい。
【0086】
好ましい粘性接着剤は、多糖類、好ましくは、デキストラン、ペクチン、アミロペクチン又は寒天;ゴム類、好ましくは、グアーガム、又はローカストビーンガム;アルギン酸塩、好ましくはアルギン酸ナトリウム、又はアルギン酸マグネシウム;ポリ(アクリル酸)、及び、ポリ(アクリル酸)と、ポリ(アクリル酸)誘導体、例えば、カルボマー(カルボポル)のような塩及びエステルとの架橋又は非架橋コポリマーから選ばれる。
【0087】
存在する場合、粘性接着剤は、本発明による固体薬品の全体重量に対し、重量で、0.05%から50%、好ましくは0.1から25%、例えば、0.2から10%の濃度範囲において提供されると好都合である。
【0088】
本発明による固体薬品は、賦形剤b)、c)、及び選択的賦形剤d)とは異なる、一つ以上の薬学的に許容される賦形剤を必要に応じて含んでもよい。このように必要に応じて選択される、一つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、抗接着剤、充填剤、結合剤、芳香剤、着色剤、臭気強化剤、滑走剤、潤滑剤、崩壊剤、溶媒、又は防腐剤からなる群から選ばれてもよい。当業者ならば、例えば、選択される投与ルートに基づいて適切な賦形剤を選ぶことが可能であろう。本明細書に記載される薬品に使用が可能な賦形剤は、種々のハンドブックの中に挙げられる(例えば、D.E. Bugay and W.P. Findlay (編) Pharmaceutical excipients(製薬賦形剤)(Marcel Dekker, New York, 1999), E-M Hoepfner, A. Reng and P.C. Schmidt (編) Fiedler Encyclopedia of Excipients for Pharmaceuticals, Cosmetics and Related Areas (製薬、化粧品及び関連領域賦形剤のFielder百科全書)(Edition Cantor, Munich, 2002) 及び、H.P. Fielder (編) Lexikon der Hilfsstoffe fiir Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete(製薬、化粧品及び関連領域賦形剤百科全書)(Edition Cantor Aulendorf, 1989)).
本発明による固体薬品が、必要に応じて、一つ以上の薬学的に許容される溶媒を含む場合、その溶媒は、遊離脂肪酸、遊離脂肪性アルコール、水溶液、例えば、バッファー又は水であってもよい。しかしながら、本発明による固体薬品は、まったく水を含まないこと、すなわち、無水であることが好ましい。無水であるとは、その固体薬品に水が添加されないこと、及び、製品において何らかの測定可能な水分含量があるとしても、それは、成分a)-g)のいずれかに偶発的に含まれる可能性のある水分によるものであることを意味する。
【0089】
本発明による固体薬品は、必要に応じて、一つ以上の表面浸透促進剤を含む。この薬剤は、本発明の薬品中に存在する5-ALA、5-ALAの誘導体、又は5-ALAの前駆体の光感受作用の強化に有益な作用を及ぼす可能性がある。
【0090】
したがって、表面浸透促進剤、特に、ジアルキルスルフォキシド、例えば、ジメチルスルフォキシド(DMSO)を本薬品中に含めてもよい。表面浸透促進剤は、薬学文献に記載される皮膚浸透促進剤のうちのいずれのものであってもよく、例えば、キレート剤(例えば、EDTA)、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、非界面活性剤、胆汁酸塩(デオキシコール酸ナトリウム)、及び脂肪酸(例えば、オレイン酸)であってもよい。適切な表面浸透促進剤の例としては、イソプロパノール、1-[2-(デシルチオ)エチル]-アザシクロペンタン-2-オン(HPE-101、久光製薬社によって市販される)、DMSO及びその他のジアルキルスルフォキシド、特に、n-デシルメチルスルフォキシド(NDMS)、ジメチルスルフォアセタミド、ジメチルフォルムアミド(DMFA)、ジメチルアセタミド、イソプロピルミリステート、オレイルアルコール、及びオレイン酸、各種ピロリドン誘導体(Woodford et al., J. Toxicol. Cut. & Ocular Toxicology, 1986, 5: 167-177)、及びAzone(登録商標) (Stoughton et al., Drug Dpv. Ind. Pharm. 1983, 9: 725-744)、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0091】
表面浸透促進剤としてプロピレングリコールなどのグリコール類を使用することは推奨されない。なぜなら、それは、本発明による固体薬品中の活性成分a)の分解を早める可能性があるからである。
【0092】
表面浸透促進剤は、それが存在する薬品の全重量に対し、重量で、0.2から50%の濃度範囲で、例えば、それが存在する固体薬品の全重量に対し、重量で、約0.5から5%の濃度範囲で提供されると好都合である可能性がある。
【0093】
本発明による固体薬品は、必要に応じて、一つ以上のキレート剤を含む。このような薬剤はさらに、本発明の薬品中に存在する5-ALA、5-ALA誘導体、又は5-ALA前駆体の光感受性作用の強化に有益な作用を及ぼす可能性がある。
【0094】
キレート剤は、例えば、PbIXの蓄積を強化するために含めてもよい。なぜならば、キレート剤による鉄のキレート化は、酵素フェロキラターゼの作用によって鉄がPbIX中に取り込まれてヘムを形成することを阻止するからである。このため、光感受性作用は強化される。
【0095】
本固体薬品に含めてもよい適切なキレート剤は、アミノポリカルボン酸、例えば、金属の無毒化、又は、磁気画像造影剤における常磁性金属イオンのキレート化に関して文献に記載されるキレート剤であってもよい。特に、EDTA、CDTA(シクロヘキサントリアミンテトラ酢酸)、DTPA、及びDOTA、及び、それらの、周知の誘導体及び類縁体が挙げられてもよい。EDTA及びDTPAが特に好ましい。他の適切なキレート剤としては、デスフェリオキサミン、及びシデロフォアがあり、これらは、それぞれ単独に使用されてもよいし、又は、EDTAなどの、アミノポリカルボン酸キレート剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0096】
上述のキレート剤のあるものはさらに、表面浸透促進作用を示すものまである、例えば、EDTAがそれである。
【0097】
存在する場合、キレート剤は、本固体薬品の全重量に対し、重量で、0.01から12%、例えば、0.1から10%の濃度において好適に使用される。
【0098】
本発明による固体薬品は、経口投与又は直腸投与用のいずれであってもよいが、好ましくは経口投与用である。
【0099】
直腸投与(直腸挿入)の場合、本発明による固体薬品は、好ましくは、坐剤として提供される。
【0100】
好ましくは、坐剤として提供される本発明による固体薬品(以下、「本発明の坐剤」と表示される)は、一つ以上のトリグリセリドb)として、その坐剤が投与されるヒト又は非ヒト動物の体温以下の融点を有する、一つ以上の固体トリグリセリドを含む。好ましい実施態様では、該坐剤はヒトに対して投与され、上記一つ以上の固体トリグリセリドの融点は、約26°Cと37°Cの間にある。好ましい固体トリグリセリドは、ココアバター、木蝋、ハードファット、水素添加ココ-グリセリド、より好ましくは水素添加ココ-グリセリド、例えば、"Witepsol(登録商標)"及び"Massa Estarinum(登録商標)"(例えば、Sasolによって)の名称の下に市販されるものであり、より好ましくは、低いヒドロキシル価と、31°Cと38°Cの間に融点を有する水素添加ココ-グリセリド、すなわち、Witepsol(登録商標) H32、Witepsol(登録商標) H35、Witepsol(登録商標) H37、及びMassa Estrinum(登録商標) 299である。体温を超える融点を有する固体トリグリセリド、例えば、水素添加パーム油、トリステアリン、トリパルミチン、又はトリミリスチンは、液体又は固体トリグリセリドとの混合物として、該混合物の融点が約26°Cと37°Cの間にある限り、使用が可能である。
【0101】
好ましくは、坐剤として提供される本発明による固体薬品(以下、「本発明の坐剤」と表示される)は、一つ以上の乳化剤として、レシチン、フォスファチジルコリン、ポロキサマー、エトキシル化脂肪性アルコール、又は、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂との反応から得られる生成物を含む。
【0102】
坐剤は、従来のいずれの方法を用いて調製してもよく、例えば、化合物a)-c)、及び必要に応じてd)-h)を直接圧縮するか、顆粒化後に圧縮してもよいし、或いは成形後、例えば、一つ以上の固体トリグリセリドを融解し、それらを、活性成分、一つ以上の乳化剤、及びその他の任意の他の化合物と混ぜ合わせ、その混合物を鋳造金型に注入し、冷却、固化することによる成形によって調製してもよい。
【0103】
固体薬品が、直腸投与用坐剤の形状を取る場合、活性成分は、坐剤から、治療対象、例えば、該坐剤が投与されるヒト又は非ヒト動物の体温において、又は、それよりも低温で放出されなければならない。したがって、坐剤形状を取る、好ましい固体薬品は、それが投与される治療対象の体温よりも低い温度では固体であり、より好ましくは少なくとも30°Cの温度では固体であり、それを超える温度で、例えば、31°Cから約42°Cの範囲で融解する。治療対象がヒトである場合、本固体薬品は、好ましくは、約31°Cから約37°Cの範囲で融解する。
【0104】
経口投与では、本発明による固体薬品は、従来の固体形状として、例えば、粉末、顆粒、ペレット、錠剤、又はカプセルとして提供され、上述のカプセルは、粉末、顆粒、ペレット、ミニ錠剤の形状として、又は、半固形物又は液体として成分a)-c)と任意成分d)-g)を含む。
【0105】
一つの好ましい実施態様では、カプセルの形状で提供される本発明による固体薬品は、一つ以上のトリグリセリドb)として、一つ以上の液体トリグリセリド、好ましくは、グリセロール、及び三つの同じか又は異なるC2-C22脂肪酸、より好ましくは、三つの同じか又は異なるC4-C18脂肪酸、さらに好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C18脂肪酸、もっとも好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C12脂肪酸から構成されるトリグリセリド、より好ましくは、トリカプリリン、トリカプロイン、トリヘプタノイン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノレン酸トリグリセリド、及びもっとも好ましくはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドから選ばれる、一つ以上の液体トリグリセリドを含む。本固体薬品を調製するように、すなわち、カプセルを充填するように、この一つ以上の液体トリグリセリドは、一つ以上の乳化剤及び必要に応じて選ばれる他の化合物d)-g)と共に、活性成分と混ぜ合わされてもよい。好ましい乳化剤は、レシチン、フォスファチジルコリン、エトキシル化グリセリド、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー、及び、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂との反応から得られる生成物である。
【0106】
別の好ましい実施態様では、カプセルの形で提供される本発明による固体薬品は、一つ以上のトリグリセリドb)として、該カプセルが投与されるヒト又は非ヒト動物の体温よりも低いか、同温に融点を有する一つ以上の固体トリグリセリドを含む。好ましい実施態様では、カプセルはヒトに投与され、上記一つ以上の固体トリグリセリドの融点は、約26°Cと37°Cの間にある。好ましいこのような固体トリグリセリドは、ココアバター、木蝋、ハードファット、水素添加ココ-グリセリド、水素添加パーム油、トリステアリン、トリパルミチン、又はトリミリスチンであり、より好ましくは、必要に応じてグリセリルリシノレエートと混ぜ合わされる水素添加ココ-グリセリド、例えば、"Witepsol(登録商標)"及び"Massa Estarinum(登録商標)"の名称の下に市販されるものであり、さらに好ましくは、低いヒドロキシル価と、31°Cと38°Cの間に融点を有する水素添加ココ-グリセリド、すなわち、Witepsol(登録商標) H32、Witepsol(登録商標) H35、Witepsol(登録商標) H37、及びMassa Estrinum(登録商標) 299である。本固体薬品を調製するように、すなわち、カプセルを充填するように、この一つ以上の固体トリグリセリドは融解されてもよく、活性成分は、一つ以上の乳化剤及び必要に応じて選ばれる他の化合物d)-g)と共に、該融解トリグリセリドと混ぜ合わされる。好ましい乳化剤は、レシチン、フォスファチジルコリン、エトキシル化グリセリド、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー、及び、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂との反応から得られる生成物から選ばれる。
【0107】
さらに別の好ましい実施態様では、カプセルの形で提供される本発明による固体薬品は、液体であり固体であるいくつかのトリグリセリドb)、例えば、一つの固体トリグリセリド及び一つの液体トリグリセリドを含む。固体トリグリセリドは、カプセルが投与されるヒト又は非ヒト動物の体温よりも低いか、同温の融点を有する。好ましい実施態様では、カプセルはヒトに投与され、上記一つ以上の固体トリグリセリドの融点は、約26°Cと37°Cの間にある。好ましい液体トリグリセリドは、グリセロール、及び三つの同じか又は異なるC2-C22脂肪酸、より好ましくは、三つの同じか又は異なるC4-C18脂肪酸、さらに好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C18脂肪酸、もっとも好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C12脂肪酸から構成されるトリグリセリド、より好ましくは、トリカプリリン、トリカプロイン、トリヘプタノイン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノレン酸トリグリセリド、及びもっとも好ましくはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドから選ばれる。好ましい固体トリグリセリドは、ココアバター、木蝋、ハードファット、水素添加ココ-グリセリド、水素添加パーム油、トリステアリン、トリパルミチン、又はトリミリスチン、より好ましくは、水素添加ココ-グリセリドで、必要に応じてグリセリルリシノレエートと混合されるもの、例えば、"Witepsol(登録商標)"及び"Massa Estarinum(登録商標)"の名称の下に市販されるものであり、さらに好ましくは、低いヒドロキシル価と、31°Cと38°Cの間に融点を有する水素添加ココ-グリセリド、すなわち、Witepsol(登録商標) H32、Witepsol(登録商標) H35、Witepsol(登録商標) H37、及びMassa Estrinum(登録商標) 299である。本固体薬品を調製するように、すなわち、カプセルを充填するように、この一つ以上の固体トリグリセリドは融解されて、一つ以上の液体トリグリセリド、活性成分、一つ以上の乳化剤、及び必要に応じて選ばれる他の化合物d)-g)と共に混ぜ合わされてもよい。好ましい乳化剤は、レシチン、フォスファチジルコリン、エトキシル化グリセリド、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂と、エトキシル化脂肪性アルコールとの反応から得られる生成物から選ばれる。
【0108】
より好ましい実施態様では、カプセルの形で提供される本発明による固体薬品は、液体トリグリセリドb)、すなわち、グリセロール、及び三つの同じか又は異なるC2-C22脂肪酸、より好ましくは、三つの同じか又は異なるC4-C18脂肪酸、さらに好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C18脂肪酸、もっとも好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C12脂肪酸から構成されるトリグリセリド、より好ましくは、トリカプリリン、トリカプロイン、トリヘプタノイン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノレン酸トリグリセリド、及びもっとも好ましくはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドから選ばれる液体トリグリセリド、及び、非イオン性乳化剤、すなわち、ポロキサマー、又は、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂との反応から得られる生成物、より好ましくは、Pluronic(登録商標) L43、Pluronic(登録商標) L44、ラウリルマクロゴイル-32グリセリド、Gelucire(登録商標) 44/14 (Gattefosse);又は、ステアロイルマクロゴールグリセリド、Gelucire(登録商標) 50/13 (Gattefosse)である、非イオン性乳化剤を含む。本固体薬品を調製するように、すなわち、カプセルを充填するように、この一つ以上の固体トリグリセリドは融解されて、一つ以上の液体トリグリセリド、活性成分、一つ以上の乳化剤、及び必要に応じて選ばれる他の化合物d)-g)と共に混ぜ合わされてもよい。それとは別に、この液体トリグリセリド、乳化剤、及び必要に応じて選ばれる他の化合物d)-g)は、ペレット、ミニ錠剤、又は顆粒に形成されてもよく、そのようなペレット、ミニ錠剤、又は顆粒形成において当該技術分野で公知の賦形剤、例えば、粘性強化剤又は充填剤を加えてもよい。次に、このようにして形成されるペレット、ミニ錠剤、又は顆粒はカプセル中に充填される。
【0109】
経口投与のために、本発明による固体薬品が、粉末、顆粒、錠剤、ペレット、カプセル、又はミニ錠剤の形で提供される場合、上記薬品は、前述の一つ以上のトリグリセリドとして、固体及び/又は液体トリグリセリドを含む。錠剤、粉末、顆粒、ペレット、又はミニ錠剤は、従来のいずれの方法によって調製してもよい。好ましくは、錠剤及びミニ錠剤は、化合物a)-c)、及び必要に応じて選ばれるd)-g)の直接的圧縮、又は、顆粒化後の圧縮によって調製される。
【0110】
この経口用固体薬品は、消化器系の下方部分における癌、前癌、及び非癌状態の光力学治療又は診断において使用されるのであるから、該薬品は、消化器系の下部に元のままで到達すること、すなわち、活性成分がそれ以前に放出されることなく到達することが必要である。下部消化管への送達を成功裡に実行するためには、活性成分は、上部消化管、例えば、胃及び上部小腸による吸収及び/又は環境からは保護され、次いで、下部消化管、すなわち、小腸の下端及び盲腸に放出される必要がある。活性成分は、下部消化管全体に実質的に均等(すなわち、均一)に分布されると有利である。このためには、活性成分は、下部消化管、すなわち、小腸の下端及び盲腸に放出されるだけでなく、活性成分が、放出部位から、結腸及び直腸のより遠位部分まで分布/拡散することが必要である。これは遅延放出によって実現されてもよい、すなわち、活性成分の放出は、小腸の下端及び盲腸で始まるが、突発的ではなく遅延され、そのため、薬品は、活性成分を徐々に放出しながら結腸中を移動することが可能とされる。別の実施態様では、このことは、異なる放出プロフィールを持つ、本発明による二つ以上の経口用固体薬品、或いは、ミニ錠剤を含むカプセル、ペレット、又は顆粒を用いることによって実現されてもよい。
【0111】
経口による製剤活性成分の結腸送達に関しては、経口用薬品に、活性成分の調節的放出を実現する一つ以上の製剤賦形剤を含ませること、及び/又は、そのような時間調節放出を実現するコーティングによって経口用薬品をコートすることに基づく、種々の公知の方法及びシステムがある。
【0112】
圧調節システムは、活性成分の放出を実行するために、内腔内容物の圧の増加を利用する。一実施態様では、活性成分は、一つ以上の乳化剤と共に、体温において融解する融解固体トリグリセリド(坐剤基剤)中に分散され、この混合物が冷却されて、本発明による固体薬品が得られる。本固体薬品は、エチルセルロースによってコートされる。本薬品が嚥下された後、体温によって坐剤基剤の融解が誘発され、これがコート内部の体積を増すので、液体で充たされたエチルセルロースのバルーンが形成される。このバルーンは、小腸では原形を維持することが可能であるが、結腸において遭遇する、より強度な収縮及びより高い粘度の内腔内容物に暴露されると破裂する。
【0113】
時間調節システム(脈動性放出システム)は、該システムが口から結腸へ転送されるまで薬剤放出時間を遅らせる原理に基づく。脈動性放出システムは、所定の無放出遅延期間と、それに続く、負荷薬剤(単数又は複数)の迅速かつ完全放出又は遅延放出を経過するように処方される。通常、5時間の遅滞時間は十分と考えられる。なぜなら、小腸転送は約3-4時間であり、これは比較的定常で、ほとんど投与される処方の性質に影響されないからである。一実施態様では、本経口用固体薬品は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのような界面活性剤と共に、カルナウバワックス及び/又は蜜蝋などの脂質障壁によってコートされる。本薬品が水性媒体と接触すると、コートは、遅滞時間後、コートの厚みに応じて乳化又は崩壊する。このシステムの遅滞時間は、消化管の運動性、pH、酵素、及び胃内滞留時間には依存しない。別実施態様では、本薬品(液体又は固体)は、膨潤性ヒドロゲルのプラグによって密封される不溶のカプセル体収容部の中に充填される。消化液に接触すると、このプラグは膨張して、遅滞時間後、自らカプセルからはみ出る。遅滞時間は、プラグの位置及び大きさによって調節される。プラグ材料は、(i)不溶であるが浸透性のポリマー、例えば、ポリメタクリレートによってコートされた膨潤性材料;(ii)HPMC、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドのような、崩壊性圧縮ポリマー;(iii)グリセリルモノオレエートのような、固化融解ポリマー、又は、ペクチンのような、酵素的に調節される崩壊性ポリマーから構成されてもよい。好ましい実施態様では、胃内滞留時間の変動に対処するために、カプセルは、腸溶コーティングによってコートされる。
【0114】
細菌依存性送達は、下部消化管、特に結腸--この部の細菌数は、近位消化管の細菌数よりも約1000万倍高い--における細菌の酵素活性に依存する。結腸に送達される薬剤は、結腸細菌から生産され分泌された酵素によって分解される化合物又は基質として処方される。一実施態様では、本発明による固体薬品は、天然のポリサッカリド、好ましくはアミロースによってコートされる。ガラス状態では、アミロースは、優れたフィルム形成能を有し、小腸における膵臓酵素による分解に耐性を有する。親水性アミロースの活性成分の膨潤及び放出を抑える水に不溶のポリマー、例えば、エチルセルロースと組み合わせると、フィルムコーティングは、錠剤又はペレットとして製剤されるか、或いは、液体、ペレット又は顆粒として製剤された後、カプセルに充填された本固体薬品に容易に適用することができる。
【0115】
本発明の経口用固体薬品の活性成分を調節放出するためには、pH依存性システムが好ましい。小腸のpHは反対側に向かって増すから、pH 6.5からpH 7.5の範囲(遠位小腸、すなわち、回腸末端)に溶解閾値を有する、薬学的に許容されるpH感受性賦形剤が、下部消化管、例えば、結腸に送達されるべき薬剤のpH調節放出には好適である。末端回腸におけるpHは、盲腸のそれよりも約1-2 pH単位高く、薬学的に許容されるpH感受性賦形剤及びコーティングは、末端回腸/盲腸の領域において安定性を失い始め、分解し始める。好ましい実施態様では、本発明による固体薬品は、pH 6.5からpH 7.5の範囲において活性成分a)のpH調節放出を実現する経口用固体薬品である。このことを実現するために、本固体薬品は、好ましくは、一つ以上の腸溶コーティングによってコートされる。このようなコーティングとして使用するのに好適な材料の代表例としては、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルとポリビニールアセトフタレートのコポリマーが挙げられる。他の適切なコーティングとしては、セルロースアセテートフタレート(CAP)、エチルセルロース、ジブチルフタレート、及びジエチルフタレートが挙げられる。好ましい実施態様には、腸溶コーティングは、メタクリル酸及びメタクリレートの陰イオンポリマーから構成される腸溶コーティング(Eudragit(登録商標))である。さらに、持続放出が可能なポリマーのEudragit(登録商標)グレードは、コーティング材料として使用するのに特に好適である。これらは、原料として、官能基として四級アンモニウム基を有するアクリル酸塩及びメタクリル酸塩のコポリマー以外に、中性エステル基を有するエチルアクリレートメチルメタクリレート・コポリマーを使用する。これらのポリマーは、不溶であるが浸透可能であり、その放出プロフィールは、混合比及び/又はコート厚を変動させることによって変えることが可能である。好適なEudragit(登録商標)ポリマーとしては、Eudragit(登録商標)S-型及びL-型が挙げられる。より好ましい実施態様では、本固体薬品は、第1及び第2腸溶コーティングによってコートされ、その際、上記第1腸溶コーティングについては、材料は、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセトフタレート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、エチルセルロース、ジブチルフタレート、及びジエチルフタレートから選ばれる材料が使用され、上記第2コーティングは、メタクリル酸及びメタクリレートのアニオン性ポリマーから構成される。
【0116】
前述のように、消化器系の下方部分において、活性成分の、高く、かつ、実質的に均質な(すなわち均一な)濃度を実現することが望ましい。結腸における活性成分放出の時間及び部位を調節することによって、且つ、適切なトリグリセリド/乳化剤の組み合わせを選ぶことによって、所望の均一な分布を実現することが可能である。
【0117】
この点で使用に好適なのは、複数の個別用量を含む剤形又は薬剤処方であって、例えば、錠剤、カプセル、又はペレットの混合物の形状を取る本発明の薬品で、投与後、様々な速度、及び/又は様々な時間間隔で活性成分を放出することが可能な薬品である。この個別用量は単一剤形内に含まれてもよく、例えば、複数のナノ粒子、マイクロ粒子、ペレット、小型丸剤、顆粒、又はミニ錠剤を、単一の錠剤又はカプセル中に納め、そこにおいて、これら個別粒子、ペレット、丸剤、顆粒、又はミニ錠剤が、活性成分について種々の放出プロフィールを発揮することが可能となるようにしてもよい。これらは一般に「マルチ粒形システム」と呼ばれる。それとは別に、投与物は、分離又は同時投与が意図される、一つ以上の、好ましくはいくつかの単一剤形で、その放出プロフィールが異なる剤形、例えば、一つ以上の錠剤又はカプセルを含んでもよい。患者を検査する場合は、活性成分を含み、異なる放出プロフィールを有する、二つ以上の異なる投薬物(例えば、カプセル又は錠剤)を投与することを意図してもよい。例えば、三つの異なるカプセルを使用する場合は、結腸の開始部、中間部、及び終末部を標的することが可能である。結腸の蠕動運動によって、異なる投薬物は結腸をさらに遠くまで下降し、それによって、活性成分のより優れた、より均一な分布が確保される。投与処方が一単位を超える用量を含む場合、異なる単位用量同士は、同時でも、又は種々の時間間隔で投与することも可能である。
【0118】
所望の放出プロフィールは、遅延放出プロフィールであってもよく、そのような異なる放出プロフィールは--個別の粒状物、例えば、ペレットが、単一剤形内から放出されるものであれ、又は複数の単一剤形から放出されるものであれ--従来記載される方法のうちのいずれによっても、例えば、トリグリセリド、乳化剤、及び必要に応じて選ばれる薬学的に許容される賦形剤の性質、組成、及び/又は濃度を変えることによって、或いは、適切なコーティングを設けることによって実現することが可能である。コーティングを使用する場合、コーティング材料の性質、その厚み、及び/又は、コーティング内の成分の濃度は、所望の遅延放出プロフィールが得られるよう適宜変えてもよい。複数のペレット、錠剤、又はカプセルをコートするために同じコーティング材料が使用される場合、放出プロフィールの変動は、個別投与物をコートするのに使用されるコーティング剤の濃度を増すことによってコーティングの厚みに変動をもたらし、それによって放出プロフィールに変動をもたらして実現することが可能である。コートされたペレット又は錠剤が、カプセル内に充填されるか、又は共に圧縮されて錠剤を形成する場合、その剤形は多粒子剤形と考えられる。コートされたペレット又は顆粒を含む、これらの錠剤又はカプセルはさらに、適切な腸溶コーティング、すなわち、該ペレット及び顆粒のコーティングに使用されたものと同じか、又は異なる腸溶コーティングによってコートすることが可能である。
【0119】
それとは別に、所望放出プロフィールを実現するために、急速及び緩徐放出をもたらす処方同士の組み合わせを用いてもよい。適切な投与処方は、例えば、異なる放出剤を含む複数のカプセル又は錠剤の投与を含んでもよい。
【0120】
本明細書に記載される経口投与処方は、異なる放出プロフィールを有する、複数の個別投与物を含むパックとして提供されてもよい。使用の便利のために、個別投与物(例えば、カプセル)は、異なる色によってカラーコードされてもよい。このようなパックも本発明の一部を形成する。
【0121】
本発明の固体薬品の利点は、それらが安定であることである。特に、本発明の薬品内に存在する活性成分は、劣化及び/又は分解の傾向を示さない。そのため、これらの薬品は、例えば、室内の温度及び湿度において、少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも12ヶ月、さらに好ましくは少なくとも24ヶ月又はそれ以上、例えば、最大36ヶ月保存することが可能である。
【0122】
本発明の固体薬品は、経口的に、又は直腸内に挿入することによって投与される。好ましい投与ルートは、いくつかの因子、例えば、診断される癌、前癌病巣、又は非癌状態の重度及び性質、その部位、及び活性成分の性質を含む因子に依存する。
【0123】
消化器系下部における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断は、通常、下部消化管、すなわち、結腸及び小腸の遠位部分の内視鏡検査によって、すなわち、該内視鏡検査を受けるヒト又は非ヒト動物対象の肛門を通過する屈曲性チューブに取り付けられたカメラによって実行される。診断の外に、該検査によってさらに、疑わしい病巣又はポリープのバイオプシー又は除去の機会が得られる。
【0124】
PDDが適切に実行されるには、結腸は、固体物質を全く含んでいてはならない。1から3日間、PDDを予定される検査対象、すなわち、非ヒト動物又はヒト、すなわち、患者には、低繊維性又は透明液だけの食餌の摂取を要求してもよい。PDDの前日、腸は完全に掃除する必要がある。すなわち、一般に、腸内清掃又は浣腸と呼ばれる手順である。種々の浣腸剤が、溶液又は錠剤形として利用可能である。浣腸錠剤は、ビサコジルのような化合物を含み、浣腸液は、リン酸ナトリウム又はポリエチレングリコール、及び電解質のような化合物を含む。結腸内視鏡検査用の標準的処方では、注入される浣腸液の量は約4リットルである。
【0125】
PDDの当日、好ましくは内視鏡検査の4-12時間前、本発明による経口用固体薬品は、所定の投与処方にしたがって、例えば、1単位の単一投与、又は数単位の単一投与、又は複数投与として投与される。患者には液体を飲むことは許可してもよい。本固体薬品が坐剤である場合、該坐剤は、検査部位に置かれる。下部消化管全体を検査する場合、坐剤は、遠位結腸、例えば、盲腸に置かれる。
【0126】
投与と、光活性化、すなわち、試験部位の光暴露を含む内視鏡検査との間の期間は、薬品の性質、その形状、及び活性成分の性質に依存する。一般に、上記薬品内の活性成分は、光感受性物質に変換されること、及び、光活性化の前に、検査部位において有効組織濃度を実現することが必要である。
【0127】
好ましい実施態様では、薬品中の活性成分が下部消化管全体へ分布するのを促進するため、患者に、「ブースター」液、好ましくは浣腸液を与える。ブースターの量は、通常250と750 mlの間、好ましくは約500 mlであり、ブースターは、本発明による薬品の投与後約15分から90分、好ましくは約30から60分に投与される。別の実施態様では、第2ブースター液、好ましくは浣腸液が、薬品投与後約120分から150分に患者に対し投与されてもよい。活性成分の均一な分布はさらに、患者を一方から他方へ動かすか、又は転がすことによって、例えば、右側を下に10分間寝かせ、転がして仰向けにし仰臥位で10分間寝かせ、左側に転がし左側を下に10分間寝かせることによって促進することが可能である。
【0128】
内視鏡検査の際、検査される区域は、光活性化、すなわち、所望の光力学作用の実現に適切な光に対して暴露される。検査区域は、典型的には、380 - 450 nmの範囲の青色光に対して暴露される。被爆量は、レーザーが使用される場合は、20 - 200 mW/cm2の強度によって10 - 100 Joules/cm2の用量レベルで与えられ、ランプが照射される場合は、50 - 150 mW/cm2の強度によって10 - 100 J/cm2の用量で印加される。次に、発射蛍光(635 nm)を用いて、侵された癌組織又は前癌病巣、又は、炎症のような他の非癌状態を選択的に検出する。適切な内視鏡、すなわち、結腸内視鏡は、白色光以外に上記青色光の発光を、例えば、主に青色光を通過させる内部フィルターアッセンブリを備えることによって可能とするように適合させた最新型結腸内視鏡である。フットペダルを用いると、白色光と青色光の切替が好都合に可能となる。光源はレーザーであっても、ランプであってもよい。蛍光を可視化するために、結腸内視鏡は、反射青色光の大部分を阻止する、一体型フィルターを備えてもよい。下部消化管の画像を捕捉するために、改良型カラー電荷結合素子(CCD)カメラを使用してもよく、下部消化管の画像を表示するために、標準型カラーモニターを使用してもよい。被爆は5から30分実行することが好ましい。単一被爆を使用してもよいし、又はそれとは別に、光分割用量、すなわち、光用量が、数個の断片として、例えば、照射の間に数分から数時間の間隔を置いて配送される投与形態を用いてもよい。複数回照射を与えてもよい。検査区域はさらに、青色光による被爆前、その最中、またはその後に白色光を用いて検査してもよい。その蛍光によって特定されるポリープ、癌組織、又は前癌病巣は、被爆時、又は白色光下に除去されてもよい。
【0129】
第2局面では、本発明は、
下部消化管における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断に使用するための固体組成物又は固体薬品の製造における、
a) 5-ALA、5-ALAの前駆体、又は5-ALAの誘導体、及びその薬学的に許容可能な塩から選ばれる活性成分;
b) 一つ以上のトリグリセリド;及び
c) 一つ以上の乳化剤
の使用を提供する。
【0130】
好ましい実施態様では、本発明は、
下部消化管、特に、結腸及び直腸における癌及び前癌状態の光力学診断に使用するための固体組成物又は固体薬品の製造における、
a) 5-ALA、5-ALAの前駆体、又は5-ALAの誘導体、及びその薬学的に許容可能な塩から選ばれる活性成分;
b) 一つ以上のトリグリセリド;及び
c) 一つ以上の乳化剤
の使用を提供する。
【0131】
さらに別の局面では、本発明は、
下部消化管における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断法であって、
(a) 対象、例えば、ヒト又は非ヒト動物に対し、本明細書に定義される固体薬品又は固体組成物を投与すること;
(b) 上記薬品内の活性成分が光感受性物質に変換され、下部消化管の所望部位において有効組織濃度を実現するのに必要な期間待機すること;
(c) 光感受性物質を光活性化すること;及び、
(d) 上記光感受性物質から、癌、前癌、及び非癌状態を示す蛍光を検出すること、
を含む上記方法を提供する。
【0132】
本固体薬品は新規であり、したがって、さらに別局面では、本発明は、
a) 5-ALA、5-ALAの前駆体、又は5-ALAの誘導体、及びその薬学的に許容可能な塩から選ばれる活性成分;
b) 一つ以上のトリグセリド;及び
c) 一つ以上の乳化剤
を含む固体組成物を提供する。
【0133】
本固体組成物の好ましい実施態様は、上述の下部消化管における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断において使用される固体薬品の好ましい実施態様、すなわち、好ましい化合物a)、b)、及びc)、及び、さらにこれも上述されるそれらの好ましい組み合わせと同じである。
【0134】
さらに別の好ましい実施態様では、固体組成物は、
a) 5-ALA、5-ALAの前駆体、又は5-ALAの誘導体、及びその薬学的に許容可能な塩から選ばれる活性成分;
b) 一つ以上のトリグリセリド;及び
c) 一つ以上の乳化剤
からなる。
【0135】
好ましい実施態様では、上記固体組成物は坐剤の形状をとる。
【0136】
好ましくは、本発明による固体組成物は、活性成分が5-ALAの誘導体、好ましくは5-ALAエステル又はその薬学的に許容される塩であり、一つ以上のトリグリセリドが、ココアバター、木蝋、ハードファット、水素添加ココ-グリセリド、水素添加パーム油、トリステアリン、トリパルミチン、及びトリミリスチンから選ばれる固体トリグリセリドであるか、若しくは、グリセロール、及び三つの同じか又は異なるC2-C22脂肪酸、より好ましくは、三つの同じか又は異なるC4-C18脂肪酸、さらに好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C18脂肪酸、及びもっとも好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C12脂肪酸から構成されるトリグリセリド、特に、トリカプリリン、トリカプロイン、トリヘプタノイン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノレン酸トリグリセリド、及びカプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドから選ばれる液体トリグリセリドであり、且つ、一つ以上の乳化剤が、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂との反応から得られる非イオン性乳化剤である、組成物である。
【0137】
好ましい固体組成物は、無水である。
【0138】
一つの好ましい実施態様では、固体組成物は、固体カプセル、好ましくは、一つ以上の腸溶コーティングによってコートされるカプセル、より好ましくは、pH 6.5からpH 7.5の範囲において活性成分a)のpH調節放出を実現する一つ以上の腸溶コーティングによってコートされるカプセルに充填される、化合物a)-c)の、液状、半固形、又は固体混合物を含む。
【0139】
さらに別の局面では、本発明は、化合物a)-c)の、液状、半固形、又は固体混合物を含むカプセルを提供する。好ましくは、上記カプセルは、一つ以上の腸溶コーティングによってコートされ、より好ましくは、pH 6.5からpH 7.5の範囲において活性成分a)のpH調節放出を実現する一つ以上の腸溶コーティングによってコートされる。好ましい実施態様では、本発明は、化合物a)-c)から成る、液状、半固形、又は固体混合物を含むカプセルを提供する。好ましくは、上記カプセルは、一つ以上の腸溶コーティングによってコートされ、より好ましくは、pH 6.5からpH 7.5の範囲において活性成分a)のpH調節放出を実現する一つ以上の腸溶コーティングによってコートされる。
【0140】
別の局面では、本発明は、薬剤として使用される前述の固体組成物又はカプセルを提供する。好ましい実施態様では、本発明は、薬剤として使用される前述の固体組成物を提供する。
【0141】
さらに別の局面では、本発明は、消化器系の下方部分における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断において使用される前述の固体組成物、カプセル、又は坐剤を提供する。好ましい実施態様では、本発明は、消化器系の下方部分における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断において使用される前述の固体組成物を提供する。
【実施例】
【0142】
本発明は、下記の実施例によって具体的に説明される。
【0143】
[実施例1]
本発明による固体組成物
n-ヘキシルアミノレブリン酸エステル(HAL)塩酸塩(HAL HCl)(フォトキュアASA、ノルウェー)を含むコートされたカプセルは、「カプセル組成物」の下に列挙される化合物同士を、それらの融点よりも高い温度で混ぜ合わせることによって調製した。この混合物を、白色HPMCカプセル中に注入し、HPMC(3.1 mg)、ジェランガム(0.015 mg)、及びクエン酸三ナトリウム(0.05 mg)の水溶液によって結合させた。このカプセルを、湿度耐性コーティング(6.3 mg/cm2、Opadry AMB)によってコートし、次いで、腸溶コーティング(8 mg/cm2、共に水中に分散させた、80% Eudragit(登録商標) L30 D-55及び20% Eudragit(登録商標) FS 30Dの混合物による)によってコートし、6.5以上のpHで崩壊するpH感受性フィルムを得た。
【0144】
【表1】

【0145】
カプセルは全てトリグリセリドとしてMiglyol 812を含んでいた。但し、それは乳化剤を含まないため、カプセルAは、本発明の範囲外の固体薬品である。カプセルB及びCは陰イオン性乳化剤を含み、カプセルD-Hは非イオン性乳化剤を含む。
【0146】
[実施例2]
HALの溶解
実施例1に従って調製されたカプセルA-Hはインビトロ溶解実験に用いた。ヒトの胃内状態を模倣するために、カプセルを先ず、500 mlの0.1M HClの溶解媒体(1)中に37°Cで1時間浸漬させた。次に、カプセルをこの媒体から取り出し、ヒトの末端回腸の状態、すなわち、水性環境及びpHを模倣すべく、pH 6.5、37°Cの温度を有する、500 mlの水性リン酸バッファーの溶解媒体(2)に浸漬させた。両浸漬において、パドル及びシンカーを備えた穏やかな溶解装置"USP 711"を用いた。カプセルをシンカーに置き、溶解媒体中に沈めた。75 rpmの回転速度を選んだ。5、15、30、60、120、及び180分において、溶解媒体の2 mlサンプルを手で取りだした。このサンプルをろ過し(40 μm HDPEフィルター)、HAL含量をHPLCによって定量した。このサンプルのHAL含量は、標準曲線との比較によって計算した。六つのカプセルA-HのHAL放出を分析した。下記の表は平均放出を示す。
【0147】
結果
溶解媒体(1)ではHAL放出は観察されなかった。
【0148】
HALの放出は、溶解媒体(2)では下記のように観察された。
【0149】
【表2】

【0150】
全てのカプセルにおいて、その内容物は溶解媒体(2)中に直ちに放出された。
【0151】
カプセルAの内容物の溶解媒体への放出後、組成物から、高度の変動性を有する、HALの不安定な放出が観察された。この放出組成物は、溶解媒体の表面に浮かんだ。
【0152】
カプセルB及びCの組成物は、カプセルAの組成物に比べ、HAL放出プロフィールの改善を示さなかった。カプセルAと同様、これらにおいても、最初の120分におけるHAL放出の着実な増加、次いで、残りの60分における平坦なHAL濃度から成る放出プロフィールが示された。180分後、油性小球が溶解媒体の表面に存在した。陰イオン性乳化剤ドキュセートナトリウムの、2%及び25%濃度における存在が、この水性溶解媒体においてHALの拡散/溶解を促進しなかったことは明らかである。
【0153】
カプセルDの組成物では、この処方から、HALがやや大きく放出されることが示された。しかしながら、180分後、油性小球が溶解媒体の表面に現われた。非イオン性乳化剤Pluronic(登録商標) L44の、10%濃度における存在は、この水性溶解媒体におけるHALの拡散/溶解を促進しなかったことは明らかである。
【0154】
カプセルEの組成物では、HALの顕著に異なる放出プロフィールが示された。すなわち、30分後に完全な放出、15分後には約80%の放出があった。溶解媒体の表面には油性小球は観察されなかった。非イオン性乳化剤Pluronic(登録商標) L44の、25%濃度における存在は、この水性溶解媒体におけるHALの拡散/溶解をある程度促進したことは明らかである。
【0155】
カプセルFからHの組成物では、全て、30分以内にHALの完全放出が示された。肉眼観察から、放出後直ちにエマルジョンが形成され、次いでこれらが凝集して溶解媒体の表面上に油層を形成することが示唆された。試験結果から、この作用は、溶解媒体に対するHALの溶解を可能とするのに十分であることが確認された。非イオン性乳化剤Gelucire(登録商標) 44/14の、10%、25%、及び50%濃度における存在により、水性溶解媒体においてHALの拡散/溶解が顕著に促進されたことは明らかである。この結果はさらに、Gelucire(登録商標) 44/14濃度が、25%を超えると、HAL溶解の増大をもたらさないことを示した。さらに、25%のGelucire(登録商標) 44/14の存在下では、10%のGelucire(登録商標) 44/14の存在下よりも、15分以内の、組成物からのHAL放出量が増した(82.4%対50.2%)。これは、乳化剤の量が、水相に対するHALの溶解に影響するだけでなく、組成物からのHALの放出速度にも影響を及ぼすことも示す。
【0156】
[実施例3]
インビボにおけるHAL HClの放出
腸溶コートカプセル、すなわち、本発明による固体薬品の消化器移送の評価において、上記腸溶コートカプセルから組成物が放出される部位、及び、空っぽの、すなわち、洗浄後の結腸におけるHAL HClの分布を決定するために、健康な男性ボランティアにおいてガンマ・シンチグラフィー実験を実施した。
【0157】
ガンマ・シンチグラフィー画像法は、本発明による固体薬品が消化管を移動する際、該薬品の物理的集結度を評価することを可能とする。薬品の崩壊のタイミング及び解剖学的地点に関する詳細な情報を得ることが可能である。このガンマ・シンチグラフィー実験には、消化管に対し領域標的性薬剤送達を可能とする、EnterionTM部位特異的送達カプセルを用いた。カプセルは長さが35 mm、直径が10-12 mmであり、溶液、懸濁液、又は粉末を特定部位に送達することが可能である。消化管におけるカプセルの位置は、ガンマ・シンチグラフィーを用いて決定する。カプセルは、評価の対象とする処方で負荷される薬剤チェンバーを含む。活性ユニットの発生する低強度磁場によって、カプセルは活性化され、処方は放出される。カプセルの活性化は、活性化が起こるとカプセルから発光される信号を介して確認され、活性ユニットに戻される。消化管の通過中カプセルの追跡を可能とするために、カプセル内マーカーとしてインジウム-111を用いる。水溶性放射能マーカー、テクネチウム-ジエチレントリアミンペンタ酢酸(99mTc-DTPA)は、カプセルによって取り込まれる水と混合されると、検査対象の消化管解剖形態の視覚的(シンチグラフィー)確認を実現する。
【0158】
検査対象は全て腸内洗浄を受けた。投与の前の晩、翌朝投与前に腸が洗浄されるよう、MoviPrep(登録商標)を投与した。
【0159】
対照群
6名の検査対象から成る群に対して処置Aを施した。すなわち、1 MBq以下の111In-DTPAによって放射線標識した水性処方(処方A)を、EnterionTMカプセルを介して末端回腸/盲腸に送達させ、その部においてカプセルの内容物を放出させた。EnterionTMカプセルは、4 MBq以下の99mTc-DTPAによって放射線標識した、合計500 mLの水と共に送達された。この99mTc-標識水は、250 mLから成る、二つの分液として投与された、すなわち、第1分液はカプセルの投与時で、第2分液は、カプセルが胃から排出された後である。ガンマ・シンチグラフィーを実行し、結腸全体における処方Aの分布程度を決定した。活性化1時間後では、分布は狭く、盲腸及び上行結腸に限局していた。最大分布、すなわち、結腸全体への分布は、活性化後平均7時間後に観察された。図1a-cは、活性化後2、6、及び12時間における分布を示す。
【0160】
処方Aの分布は、「最良ケース状況」と仮定された。これは、水性環境(結腸)において水溶液として処方された比較的親水性化合物(111In-DTPA)の分布であり、したがって、水性環境(結腸)において水溶液として処方される、比較的親水性の高い化合物HAL HClの分布を模倣すると考えられるからである。
【0161】
処置群1
4名の検査対象から成る群に対し処置Bを施した。すなわち、1 MBq以下の111In-DTPAによって放射線標識した、200 mgのMiglyol(登録商標) 812及び100 mgのGelucire(登録商標) 44/14に溶解させた100 mgのHAL HClからなる組成物(組成物B)を、EnterionTMカプセルを介して末端回腸/盲腸に送達させ、その部においてカプセルの内容物を放出させた。EnterionTMカプセルは、4 MBq以下の99mTc-DTPAによって放射線標識した、合計500 mLの水と共に送達された。この99mTc-標識水は、250 mLから成る、二つの分液として投与された、すなわち、第1分液はカプセルの投与時で、第2分液は、カプセルが胃から排出された後である。ガンマ・シンチグラフィーを実行し、結腸全体における処方Bの分布程度を決定した。活性化1時間後では、組成物の結腸到着は、1名の検査対象にしか見られなかった。最大分布、すなわち、結腸全体への分布は、活性化後平均10時間後に観察された。組成物Bの分布は、処方Aのものと同様である、すなわち、水の分布に匹敵することが認められた。図2a-c参照。同図は、活性化後2、6、及び12時間における分布を示す。
【0162】
処置群2
6名の検査対象から成る群に対し処置Cを施した。すなわち、1 MBq以下の111In-DTPAによって放射線標識した、200 mgのMiglyol(登録商標) 812及び100 mgのGelucire(登録商標) 44/14に溶解した100 mgのHAL HClから成る組成物(組成物C)を、実施例1で記述した通りの腸溶コートカプセルを介して送達させた。この腸溶コートカプセルは、4 MBq以下の99mTc-DTPAによって放射線標識した、合計500 mLの水と共に送達された。この99mTc-標識水は、250 mLから成る、二つの分液として投与された、すなわち、第1分液はカプセルの投与時で、第2分液は、カプセルが胃から排出された後である。ガンマ・シンチグラフィーを実行し、結腸全体における処方Cの分布程度を決定した。組成物Cの分布は、処方Aのものと同様である、すなわち、水の分布に匹敵することが認められた。図3a-c参照。同図は、放出後2、6、及び12時間における分布を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部消化管における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断に使用するための固体薬品であって、
a) 5-ALA、5-ALAの前駆体、又は5-ALAの誘導体、及びその薬学的に許容可能な塩から選ばれる活性成分;
b) 一つ以上のトリグリセリド;及び
c) 一つ以上の乳化剤
を含む固体薬品。
【請求項2】
前記活性成分が、5-ALAの誘導体、好ましくは5-ALAエステル又はその薬学的に許容可能な塩であることを特徴とする、請求項1に記載の固体薬品。
【請求項3】
前記活性成分が、式Iの化合物、又は、その許容可能な塩であり、
R22N-CH2COCH2-CH2CO-OR1(I)
上式において、
R1は、置換又は非置換アルキル基を表し;且つ、
R2は、それぞれ独立に、水素原子又はR1基を表す、
ことを特徴とする、請求項1及び2に記載の固体薬品。
【請求項4】
前記一つ以上のトリグリセリドが、グリセロールと、三つの同じか又は異なるC2-C22脂肪酸、より好ましくは三つの同じか又は異なるC4-C18脂肪酸、さらに好ましくは三つの同じか又は異なるC6-C18脂肪酸、及びもっとも好ましくは三つの同じか又は異なるC6-C12脂肪酸とからなるトリグリセリドであることを特徴とする、前項のいずれにも記載の固体薬品。
【請求項5】
前記一つ以上のトリグリセリドが、ココアバター、木蝋、ハードファット、水素添加ココ-グリセリド、水素添加パーム油、トリステアリン、トリパルミチン及びトリミリスチンから選ばれる固体トリグリセリドであるか、又は、トリカプリリン、トリカプロイン、トリヘプタノイン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノレン酸トリグリセリドから選ばれる液体トリグリセリドであることを特徴とする、前項のいずれにも記載の固体薬品。
【請求項6】
前記一つ以上の乳化剤が非イオン性であることを特徴とする、前項のいずれにも記載の固体薬品。
【請求項7】
前記一つ以上の乳化剤が、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂との反応から得られる非イオン性乳化剤であることを特徴とする、前項のいずれにも記載の固体薬品。
【請求項8】
d) 必要に応じて一つ以上の粘性接着剤;
e) 必要に応じて、b)、c)及びd)以外の、一つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤;
f) 必要に応じて、一つ以上の表面浸透剤;及び、
g) 必要に応じて、一つ以上のキレート剤
をさらに含むことを特徴とする、前項のいずれにも記載の固体薬品。
【請求項9】
前記薬品が、坐剤、又は、一つ以上の腸溶コーティングを含む経口用固体薬品であって、pH 6.5からpH 7.5の範囲において活性成分a)のpH調節放出を実現する薬品であることを特徴とする、前項のいずれにも記載の固体薬品。
【請求項10】
前記固体薬品が水を含まないことを特徴とする、前項のいずれにも記載の固体薬品。
【請求項11】
a) 5-ALA、5-ALAの前駆体又は5-ALAの誘導体、及びその薬学的に許容可能な塩から選ばれる活性成分;
b) 一つ以上のトリグリセリド;及び
c) 一つ以上の乳化剤
を含む固体組成物。
【請求項12】
前記活性成分が、5-ALAの誘導体、好ましくは、5-ALAエステル又はその薬学的に許容可能な塩であり、前記一つ以上のトリグリセリドが、ココアバター、木蝋、ハードファット、水素添加ココ-グリセリド、水素添加パーム油、トリステアリン、トリパルミチン及びトリミリスチンから選ばれる固体トリグリセリドであるか、又は、グリセロールと、三つの同じか又は異なるC2-C22脂肪酸、より好ましくは、三つの同じか又は異なるC4-C18脂肪酸、さらに好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C18脂肪酸、及びもっとも好ましくは、三つの同じか又は異なるC6-C12脂肪酸からなるトリグリセリドから選ばれる液体トリグリセリドであり、且つ、前記一つ以上の乳化剤が、ポリエチレングリコールと、天然又は水素添加油脂との反応から得られる非イオン性乳化剤である、ことを特徴とする請求項11に記載の固体組成物。
【請求項13】
薬剤として使用される、請求項11及び12に記載の固体組成物。
【請求項14】
下部消化管における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断において使用される、請求項11及び12に記載の固体組成物。
【請求項15】
下部消化管における癌、前癌、及び非癌状態の光力学診断法において使用され、前記方法が:
(a) 対象、例えば、ヒト又は非ヒト動物に対し、請求項1〜10に記載の固体薬品、又は請求項11〜14に記載の固体組成物を投与すること;
(b) 前記薬品内の活性成分が光感受性物質に変換され、下部消化管の所望部位において有効組織濃度を達成するのに必要な期間待機すること;
(c) 該光感受性物質を光活性化すること;及び、
(d) 前記光感受性物質から、癌、前癌、及び非癌状態を示す蛍光を検出すること、
を含む、請求項1〜10に記載の固体薬品、又は請求項11〜14に記載の固体組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公表番号】特表2012−529451(P2012−529451A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514392(P2012−514392)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003531
【国際公開番号】WO2010/142456
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(501361529)フォトキュア エイエスエイ (6)
【Fターム(参考)】