説明

5−アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法及びその用途

【課題】 低刺激性の5-アミノレブリン酸の新規な塩、その製造方法、これを含有する医療用組成物及びこれを含有する植物活力剤組成物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)
HOCOCH2CH2COCH2NH2・HOP(O)(OR1)n(OH)2-n (1)
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数7〜26のアラルキル基又はフェニル基を示し;nは0〜2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物・発酵、動物・医療、植物等の分野において有用な5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法、これを含有する医療用組成物及びこれを含有する植物活力剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
5-アミノレブリン酸は、微生物・発酵分野においては、VB12生産、ヘム酵素生産、微生物培養、ポルフィリン生産など、動物・医療分野においては、感染症治療(非特許文献1)、殺菌、ヘモフィラス診断、誘導体原料、除毛、リウマチ治療(非特許文献2)、がん治療(非特許文献3)、血栓治療(非特許文献4)、癌術中診断(非特許文献5)、動物細胞培養、UVカット、ヘム代謝研究、育毛、重金属中毒ポルフィリン症診断、貧血予防などに、植物分野においては農薬などに有用なことが知られている。
【0003】
一方、5-アミノレブリン酸は塩酸塩としてのみ製造法が知られており、原料として馬尿酸(特許文献1参照)、コハク酸モノエステルクロリド(特許文献2参照)、フルフリルアミン(例えば、特許文献3参照)、ヒドロキシメチルフルフラール(特許文献4参照)、オキソ吉草酸メチルエステル(特許文献5参照)、無水コハク酸(特許文献6参照)を使用する方法が報告されている。
【0004】
しかしながら、5-アミノレブリン酸塩酸塩は塩酸を含んでいるため、製造過程、調剤・分包過程で気化した塩化水素により、装置腐食や刺激性を発生することを考慮する必要があり、これらを防止する措置を講ずることが望ましい。また、5-アミノレブリン酸塩酸塩を、直接、ヒトへの経口投与や皮膚への塗布の場合、舌や皮膚に灼熱感を感じるような刺激性がある。よって、医薬の分野で利用する5−アミノレブリン酸として、5−アミノレブリン酸塩酸塩よりも低刺激性の5−アミノレブリン酸の塩が求められていた。
【0005】
また、5−アミノレブリン酸塩酸塩は植物の分野に利用されている(特許文献7参照)が、植物に対して一般的に使用されている殺菌剤成分の硝酸銀等と混合して使用すると、5−アミノレブリン酸塩酸塩と硝酸銀が反応して塩化銀の沈殿が発生する場合があり、噴霧器のノズルが詰まって噴霧できなくなる可能性があり、操作上、注意を要した。
また、5−アミノレブリン酸塩酸塩水溶液を果実へ直接噴霧をした場合、塩化物イオンが存在すると、果実の着色が十分ではない場合があった。
【非特許文献1】Peter W. et. al., J. Am. Acad. Dermatol., 31, 678-680(1994)
【非特許文献2】Kenneth T., United States Patent 5, 368, 841(1994)
【非特許文献3】Hillemanns P. et. al., Int. J. Cancer, 85, 649-653(2000)
【非特許文献4】山田一郎 et. al., 日本形成外科学会要旨集(1988)
【非特許文献5】Kamasaki N. et. al., 日本レーザー医学会誌 22, 255-262(2001)
【特許文献1】特開昭48-92328号公報
【特許文献2】特開昭62-111954号公報
【特許文献3】特開平2-76841号公報
【特許文献4】特開平6-172281号公報
【特許文献5】特開平7-188133号公報
【特許文献6】特開平9-316041号公報
【特許文献7】特開平4−338305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は低刺激性の5-アミノレブリン酸の新規な塩、その製造方法、これを含有する医療用組成物及びこれを含有する植物活力剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる実情に鑑み鋭意検討を行った結果、陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノレブリン酸を溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することにより、上記要求が満たされる5-アミノレブリン酸リン酸塩が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0009】
HOCOCH2CH2COCH2NH2・HOP(O)(OR1)n(OH)2-n (1)
【0010】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数7〜26のアラルキル基又はフェニル基を示し;nは0〜2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩を提供するものである。
【0011】
本発明はまた、陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノレブリン酸を溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することを特徴とする前記一般式(1)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明は更に、前記一般式(1)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩を含有する光力学的治療又は光力学的診断用組成物を提供するものである。本発明は更に、前記一般式(1)で表される5−アミノレブリン酸リン酸塩を含有する植物活力剤組成物を提供する
ものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、臭気が感じられず、そのため取り扱いやすい物質である。しかも、皮膚や舌に対して低刺激性であり、また皮膚等への透過性も良好であることからこれを含有する組成物に光力学的治療又は診断用薬として有用である。本発明の製造方法によれば、簡便かつ効率よく5-アミノレブリン酸リン酸塩を製造することができる。また、水溶液にした場合の塩化物イオン濃度が低いため、植物への投与において、塩素被害が生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
前記一般式(1)中、R1で示される炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状鎖のいずれでもよい。直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、エチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチルヘプチル基、n-ノニル基、イソノニル基、1-メチルオクチル基、エチルヘプチル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、n-ウンデシル基、1,1-ジメチルノニル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基等が挙げられる。環状鎖又は環状鎖を含むアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、2-シクロプロピルエチル基、2-シクロブチルエチル基、2-シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、2-シクロヘキシルエチル基、シクロヘプチルメチル基、2-シクロオクチルエチル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、2-メチルシクロオクチル基、3-(3-メチルシクロヘキシル)プロピル基、2-(4-メチルシクロヘキシル)エチル基、2-(4-エチルシクロヘキシル)エチル基、2-(2-メチルシクロオクチル)エチル基等が挙げられる。上記炭素数1〜18のアルキル基としては、炭素数1〜16のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-ヘキサデシル基又は2-エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0015】
炭素数2〜18のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、1,1-ジメチルアリル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、4-ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、4-メチルシクロヘキセニル基、4-エチルシクロヘキセニル基、2-シクロペンテニルエチル基、シクロヘキセニルメチル基、シクロヘプテニルメチル基、2-シクロブテニルエチル基、2-シクロオクテニルエチル基、3-(4-メチルシクロヘキセニル)プロピル基、4-シクロプロペニルブチル基、5-(4-エチルシクロヘキセニル)ペンチル基、オレイル基、バクセニル基、リノレイル基、リノレニル基等が挙げられ、オレイル基が好ましい。
【0016】
炭素数7〜26のアラルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜20のアリール基とから構成されるものが好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜26のアラルキル基のうち、ベンジル基又はフェネチル基が好ましく、ベンジル基が特に好ましい。当該アラルキル基のアリール基は、上記記載の炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、カルボキシ基等の置換基1〜3個によって置換されていてもよい。
【0017】
一般式(1)で表わされる本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、固体でも溶液でもよい。固体とは、結晶を示すが、水和物でもよい。溶液とは、水をはじめとする溶媒に溶解又は分散した状態を示すが、そのpHがpH調整剤等によって調整されたものでもよい。また、水をはじめとする溶媒は、2種以上を混合して使用してもよい。pH調整剤としては、リン酸、ホウ酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸、トリス、酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フタル酸、マレイン酸やそれらの塩などを用いた緩衝液又はグッドの緩衝液が挙げられる。
【0018】
溶液形態の5-アミノレブリン酸リン酸塩としては、水溶液が好ましい。該水溶液中の5-アミノレブリン酸リン酸塩濃度は0.01wt ppm〜10wt%、さらに0.1wt ppm〜5wt%、特に1wt ppm〜1wt%が好ましい。また、この水溶液のpHは3〜7、さらに3.5〜7、特に4〜7が好ましい。また、この水溶液中には、5-アミノレブリン酸リン酸塩以外の塩が含まれていてもよく、その場合塩化物イオン濃度は5-アミノレブリン酸リン酸塩の50モル%以下、さらに10モル%以下、特に3モル%以下が好ましい。
【0019】
本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノレブリン酸をイオン含有水溶液で溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することにより製造することができる。また、その混合液に貧溶媒を加えて結晶化させることにより、5-アミノレブリン酸リン酸塩を固体として得ることができる。陽イオン交換樹脂に吸着させる5-アミノレブリン酸としては、特に制限されず、純度なども制限されない。すなわち、特開昭48-92328号公報、特開昭62-111954号公報、特開平2-76841号公報、特開平6-172281号公報、特開平7-188133号公報等、特開平11-42083号公報に記載の方法に準じて製造したもの、それらの精製前の化学反応溶液や発酵液、また市販品なども使用することができる。尚、好ましくは、5-アミノレブリン酸塩酸塩が用いられる。
【0020】
陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂又は弱酸性陽イオン交換樹脂のいずれでもよい。また、キレート樹脂も好適に使用できる。これらのうちで、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂の種類としては、ポリスチレン系樹脂にスルホン酸基が結合したものが好ましい。
【0021】
5-アミノレブリン酸の陽イオン交換樹脂への吸着は、適当な溶媒に溶解した5-アミノレブリン酸溶液を陽イオン交換樹脂に通液することにより実施できる。このような溶媒としては、5-アミノレブリン酸が溶解すれば特に制限されないが、水;ジメチルスルホキシド;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系;ピリジン系などが挙げられ、水、ジメチルスルホキシド、メタノール又はエタノールが好ましく、水、メタノール又はエタノールが特に好ましい。また、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。また、精製前の化学反応溶液や発酵液を使用する場合には、反応溶媒の除去や適当な溶媒による希釈を行ってもよい。なお、上記溶媒、精製前の化学反応溶液や発酵液は、前記pH調整剤により、pH調整してもよい。
【0022】
溶出に用いられるイオン含有水溶液としては特に限定されないが、リン酸、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩、アンモニア、アミン、アミノ基を有する化合物を水に溶解したものが好ましく、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンを水に溶解したものがより好ましく、アンモニアを水に溶解したものが特に好ましい。これらの水溶液は2種以上を組み合わせて使用してもよい。アンモニア水の濃度は、0.01〜10Nが好ましく、0.1〜3Nが特に好ましい。
【0023】
5-アミノレブリン酸の溶出液と混合されるリン酸類としては、一般式:HOP(O)(OR1)n(OH)2-n(2)〔R1及びnは前記定義のとおりである。〕で表わされる化合物を使用することができる。このようなリン酸類としては、例えば、リン酸;メチルリン酸、エチルリン酸、n-ブチルリン酸、2-エチルヘキシルリン酸、ヘキサデシルリン酸、ベンジルリン酸、オレイルリン酸、フェニルリン酸等のリン酸モノエステル;ジメチルリン酸、ジエチルリン酸、ジn-ブチルリン酸、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸、ジヘキサデシルリン酸、ジベンジルリン酸、ジオレイルリン酸、ジフェニルリン酸等のリン酸ジエステルが挙げられ、メチルリン酸、エチルリン酸、オレイルリン酸、フェニルリン酸、ジメチルリン酸、ジエチルリン酸、ジn-ブチルリン酸、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸、ジヘキサデシルリン酸、ジベンジルリン酸、ジオレイルリン酸又はジフェニルリン酸が特に好ましい。また、次亜リン酸又は亜リン酸も好適に使用できる。
【0024】
リン酸類は、水和物又は塩のいずれでもよく、また適当な溶媒に溶解又は分散したものも好適に使用できる。リン酸類の混合量は、吸着した5-アミノレブリン酸量から想定される5-アミノレブリン酸溶出量に対して、1〜5000倍モル量が好ましく、より好ましくは1〜500倍モル量、特に1〜50倍モル量が好ましい。なお、吸着した5-アミノレブリン酸量から想定される5-アミノレブリン酸溶出量は、陽イオン交換樹脂や溶出液の種類、溶出液の通流量によっても異なるが、通常、吸着した5-アミノレブリン酸量に対し、90〜100%である。
【0025】
このような溶媒としては、水;ジメチルスルホキシド;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系;ピリジン系などが挙げられ、水、ジメチルスルホキシド、メタノール又はエタノールが好ましく、水、メタノール又はエタノールが特に好ましい。また、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0026】
貧溶媒としては、固体が析出するものであれば特に制限されないが、このような溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、γ-ブチロラクトン等のエステル系;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系などが挙げられ、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、アセトン又はアセトニトリルが好ましく、酢酸メチル、γ-ブチロラクトン、アセトン又はアセトニトリルが特に好ましい。また、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0027】
イオン含有水溶液による溶出及び溶出液とリン酸類との混合の温度は、溶出液及びリン酸類が固化しない状態において、-20〜60℃が好ましく、-10〜30℃が特に好ましい。
【0028】
本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸のアミノ基がアシル基で保護されたものや、アミノ基に1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル型分子骨格となるような保護基が結合したもののように、アミノ基が加水分解可能な保護基で保護された5-アミノレブリン酸から製造してもよい。また、本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、本発明以外の製造方法、すなわち、2-フェニル-4-(β-アルコキシカルボニル-プロピオニル)-オキサゾリン-5-オンを所望のリン酸を用いて加水分解する方法や5-アミノレブリン酸塩酸塩等のリン酸塩以外の塩を溶媒中で所望のリン酸類と接触させる方法によっても得てもよい。リン酸類としては前記一般式(2)のもの、反応溶媒としては前記記載のものを使用することができる。
【0029】
5-アミノレブリン酸リン酸塩(1)は、後記実施例に示すように、5-アミノレブリン酸塩酸塩に比べて、臭気は感じられず、皮膚や舌に対する刺激性が弱く、更に変異原性が認められない。更に、動物の皮膚及び植物の表皮への透過性に優れている。従って、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸塩酸塩と同様に、ヒトを含む動物における光力学的治療又は光力学的診断剤として有用である。光力学的治療又は診断剤としては、癌、感染症、リウマチ、血栓、にきび等の治療又は診断剤が挙げられる。
【0030】
5-アミノレブリン酸リン酸塩の光力学的治療剤又は診断剤としての使用に際しては、公知の条件で使用すればよく、具体的には、特表2001−501970号公報、特表平4−500770号公報、特表2005−501050号公報、特表2004−506005号公報、特表2001−518498号公報、特表平8−507755号公報に開示されている処方、方法で使用すればよい。
【0031】
5-アミノレブリン酸リン酸塩を含有する光力学的治療又は光力学的診断用組成物は、皮膚外用剤、注射剤、経口剤、坐剤等の剤形にすることができる。これらの剤形にするにあたっては、薬学的に許容される担体を用いることができる。当該担体としては、水、結合剤、崩壊剤、溶解促進剤、滑沢剤、充填剤、賦形剤等が用いられる。
【0032】
また、5-アミノレブリン酸リン酸塩を例えば、植物用途に使用する場合、一般的に使用される肥料成分等を含有してもよい。肥料成分としては、特許文献7に開示されている物質が挙げられる。
5-アミノレブリン酸リン酸塩は、植物活性化剤としても有用である。植物活性化剤としての使用に際しては、公知の条件で使用すればよく、具体的には、特許文献7に開示されている方法で植物に対して使用すればよい。
【実施例】
【0033】
以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
実施例1 5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造
強酸性イオン交換樹脂(AMBERLITE IR120B Na、オルガノ(株)製) 180 mLをカラムに詰めた。イオン交換樹脂は、塩酸処理してナトリウムイオン型から水素イオン型に変換してから使用した。次いで、当該カラムに、5-アミノレブリン酸塩酸塩 20.00 g(119 mmol)をイオン交換水 1000 mLに溶解したものを通液した後、イオン交換水 1000 mLを通液した。次に、1N アンモニア水をゆっくりと通液し、黄色の溶出液 346 mLを採取した。採取した溶出液を85% リン酸 16mL(H3PO4 238 mmol)に加え、エバポレータで濃縮した。濃縮液にアセトン 400 mLを加え、スタラーで激しく攪拌してから4 ℃で16時間静置した。析出した固体を吸引ろ過で回収し、アセトン 500 mLで洗浄した。得られた固体を12時間減圧乾燥し、目的物 23.04 g(101 mmol)を得た。その物性データを以下に示す。
【0035】
融点:108〜109 ℃
1H-NMR(D2O, 400 MHz) δ ppm: 2.67 (t, 2H, CH2), 2.86 (t, 2H, CH2), 4.08 (s, 2H, CH2) 13C-NMR(D2O, 100 MHz) δ ppm: 30 (CH2), 37 (CH2), 50 (CH2), 180 (CO), 207 (COO)元素分析値:C5H9NO3・H3PO4として
理論値:C 26.21%;H 5.28%;N 6.11%
実測値:C 25.6% ;H 5.2% ;N 6.1%
イオンクロマトグラフィーによるPO43-の含有率:
理論値:41.45%
実測値:43%
イオンクロマトグラフィー分析条件;分離カラム:日本ダイオネクス製 IonPac AS12A、溶離液:Na2CO3とNaHCO3を含有する水溶液(Na2CO3:3.0 mmol/L、NaHCO3:0.5 mmol/L)、流速:1.5 mL/min.、試料導入量:25 μL、カラム温度:35℃、検出器:電気伝導度検出器。
【0036】
実施例2 5−アミノレブリン酸(リン酸ジ−n−ブチル)塩の製造
強酸性イオン交換樹脂(AMBERLITE IR120B Na、オルガノ(株)製) 180 mLをカラムに詰めた。イオン交換樹脂は、塩酸処理してナトリウムイオン型から水素イオン型に変換してから使用した。次いで、当該カラムに、5-アミノレブリン酸塩酸塩 20.00 g(119 mmol)をイオン交換水 1000 mLに溶解したものを通液した後、イオン交換水 1000 mLを通液した。次に、1N アンモニア水をゆっくりと通液し、黄色の溶出液 321 mLを採取した。採取した溶出液をリン酸ジ−n−ブチル50.00g (238 mmol)に加え、エバポレータで濃縮した。濃縮液にアセトン 400 mLを加え、スタラーで激しく攪拌してから-25 ℃で16時間静置した。析出した固体を吸引ろ過で回収した。得られた固体を12時間減圧乾燥し、目的物 14.67 g(43 mmol)を得た。その物性データを以下に示す。
1H-NMR(D2O, 400MHz)δppm: 0.75(6H, CH3), 1.23(4H, CH2), 1.41(4H, CH2), 2.46(2H, CH2), 2.59(2H, CH2), 3.66(4H, CH2), 3.80(2H, CH2)
13C-NMR(D2O, 100MHz)δppm: 14(CH3), 20(CH2), 29(CH2), 34.2(CH2), 34.3(CH2),36(CH2), 67(CH2O), 176(COO), 204(CO)
【0037】
実施例3 5-アミノレブリン酸リン酸塩の臭気測定
5人の被験者が、実施例1で製造した5-アミノレブリン酸リン酸塩の水溶液(カラムからの溶出液とリン酸の混合液)及びその固体の臭気を直接嗅ぎ、下記の基準に従って臭気を評価した。結果を表1に示す。
【0038】
・評価基準
○:臭いが感じられない。
△:臭いはするが不快ではない。
×:不快な臭いがする。
【0039】
比較例1
5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液及び固体を使用する以外は実施例3と同様にして、臭気を評価した。なお、5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液は、実施例1の5-アミノレブリン酸塩リン酸塩の水溶液の、5-アミノレブリン酸及びリン酸イオン濃度と、5-アミノレブリン酸及び塩化物イオン濃度とが、それぞれ同モル濃度となるように、5-アミノレブリン酸塩酸塩の固体と塩酸とイオン交換水により、調製した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例4
5-アミノレブリン酸リン酸塩0.5gを水1mLに溶解した水溶液を使用する以外は実施例3と同様にして、臭気を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
比較例2
5-アミノレブリン酸塩酸塩0.5gを水1mLに溶解した水溶液を使用する以外は実施例3と同様にして、臭気を評価した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表1、2より、5-アミノレブリン酸リン酸塩の水溶液は、5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液に比較して臭気が認められなかった。5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液の製造に必要な臭気対策や腐食性ガス対策が簡略化され、取り扱いがより簡便であった。また、5-アミノレブリン酸リン酸塩の固体も、5-アミノレブリン酸塩酸塩の固体と比べると臭気が認められず、秤量、分封等の取り扱いがより簡便であった。
【0045】
実施例5 5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液の酸性度測定
濃度1〜1000mMの5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液、5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液を各々調製し、その酸性度を25℃にてpHメーターで測定した。結果を図1に示す。図1から明らかなように、同一濃度の場合、5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液の酸性度は、5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液よりも低かった。
【0046】
実施例6 5-アミノレブリン酸リン酸塩の刺激試験
5人の被験者が、実施例1で得た5-アミノレブリン酸リン酸塩の固体 5mgを直接舌にのせ、下記の基準に従って味覚を評価した。結果を表3に示す。
【0047】
・評価基準
○:刺激が感じられない。
△:刺激はあるが弱い。
×:強い刺激がある。
【0048】
比較例3
5-アミノレブリン酸塩酸塩の固体 5mgを使用する以外は実施例6と同様にして、味覚を評価した。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
表3より、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸塩酸塩と比較して強い刺激が認められなかった。
【0051】
実施例7 微生物(細菌)を用いる変異原性試験(復帰突然変異試験)
試験は、「微生物を用いる変異原性試験の基準」(昭和63年労働省告示第77号)(平成9年労働省告示第67号による一部改正)及び「新規化学物質等に係る試験の方法について」(平成15年11月21日付け:薬食発1121002号、平成15・11・13製局第2号、環保企発第031121002号)の「細菌を用いる復帰突然変異試験」に準拠して行った。5-アミノレブリン酸リン酸塩を蒸留水(和光純薬工業)に5%(w/v)溶解した溶液0.1mLに0.1Mナトリウム−リン酸緩衝液(pH7.4)0.5mL(代謝活性化試験ではS9mix0.5mL)を加え、更に各試験菌液(ヒスチジン要求性のSalmonella typhimurium TA100,TA98,TA1535及びTA1537 ならびにトリプトファン要求性のEscherichia coli WP2 uvrA の5種類の菌株を使用(日本バイオアッセイ研究センター))0.1mLを加え、37℃で20分間振盪しながら、プレインキュベーションした。培養終了後,あらかじめ45℃に保温したトップアガーを2.0mLを加え、最小グルコース寒天平板培地に重層した。また、最小グルコース寒天平板培地は、各用量2枚設けた。ただし、溶媒対照(陰性対照)は3枚設けた。37℃で48時間培養した後、テスト菌株の生育阻害の有無を実体顕微鏡を用いて観察し、出現した復帰変異コロニー数を計数した。計測に際しては自動コロニーアナライザー(CA-11:システムサイエンス(株))を用い86mm径プレート(内径84mm)の約80mm径内を計測し面積補正及び数え落とし補正をパーソナルコンピューターで行い算出した。ただし、コロニー数が1500以上では、自動コロニーアナライザーの信頼性が落ちるため、実体顕微鏡にてプレート内5点をマニュアル測定し平均値に面積補正を行った。用量設定試験は、ガイドライン上定められた最高用量である用量5000 μg/plateを最高とし公比4で希釈した7用量を実施した。その結果、S9 mixの有無によらず、いずれの菌株においても溶媒対照と比較して2倍以上の復帰変異コロニー数の増加は認められなかった。本被験物質の菌に対する生育阻害は認められなかった。本被験物質の沈殿も認められなかった。従って,本試験はガイドライン上定められた最高用量である用量5000 μg/plateを最高とし公比2で希釈した5用量を設定した。その結果、代謝活性の有無によらず、いずれの菌株においても溶媒対照と比較して2倍以上の復帰変異コロニー数の増加は認められなかったことから(表4)、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、突然変異誘発能を有さないことが確認された。
【0052】
【表4】

【0053】
実施例8 急性経口毒性試験
試験は、OECDガイドラインNo.423「急性経口毒性−急性毒性等級法」(2001年12月17日採択)に準拠して行った。一群3匹の絶食させた雌のラット(Sprague−Dawley CD種)に5−アミノレブリン酸リン酸塩を体重1kg当たり300mgの投与量で処理した。更に別の絶食させた複数郡の雌ラットを体重1kg当たり2000mgの投与量で処理した。投与後2週間連続して観察した。その結果、いずれのラットにおいても死亡が確認されず(表5)、全身毒性の徴候もなく、全てのラットで通常の体重増加が示され(表6)、急性経口半数致死量(LD50)は、体重1kg当たり2500mgより大きいと推定された。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
実施例9 急性皮膚刺激性試験
試験は、OECDガイドラインNo.404「急性皮膚刺激性/腐蝕性試験」(1992年7月17日採択)及びEU委員会指令92/69/EEC B4法 急性毒性(皮膚刺激性)に準拠して行った。ニュージーランド白ウサギ3匹(雄)を用い、毛をそった2.5cm四方の無傷な皮膚に5−アミノレブリン酸リン酸塩0.5gを蒸留水0.5mLに溶解したもの(pH3.1)を4時間塗布し、1、24、48、72時間まで観察を行った。その結果、24時間以内でごく軽度な赤斑が観察されたが、48時間後の観察では正常となった(表7、8)。また、ニュージーランド白ウサギ1匹(雄)を用いて、毛をそった2.5cm四方の無傷な皮膚に5−アミノレブリン酸リン酸塩0.5gを蒸留水0.5mLに溶解したもの(pH3.1)を3分、1時間塗布し、1、24、48、72時間まで観察を行った結果では、何の皮膚刺激性も観察されなかった(表7、8)。このことより、P.I.I値(一次皮膚刺激性指数)は0.5であり、現行の国連勧告GHSでの刺激性分類では分類外で刺激性物質には当てはまらないことが確認された。なお、対照として5−アミノレブリン酸塩酸塩0.5gを蒸留水0.5mLに溶解したものは、pHが2.0以下でOECDガイドラインより腐蝕性ありと判断されるため、行わなかった。
【0057】
【表7】

【0058】
【表8】

【0059】
実施例10 動物表皮透過性試験
透析セル(有効面積1.13cm2、図2)を用い、受容層にpH6.8の生理食塩水17mLを攪拌しながら37℃に保った。前処理した豚皮全層(表皮+真皮)をメンブランフィルターにのせ、透析セルに設置した。供与層には、1mMの5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液を0.5mL添加した。所定時間毎に受容層の溶液を0.2mL採取し、新たに生理食塩水を補充した。採取した試料又は標準液それぞれ0.05mLとA液(アセチルアセトン/エタノール/水=15/10/75(v/v/v)の混合溶液1Lに塩化ナトリウム4g含む)3.5mLとB液(ホルマリン85mLを水で1Lに希釈した溶液)0.45mLを混合し30分間加熱処理し、30分後水冷して5-アミノレブリン酸濃度をHPLCで測定し(分析条件は、蛍光検出器:励起波長473nm、蛍光波長363nmを用い、溶離液はメタノール/2.5%酢酸水溶液=40/60(v/v)溶液を用い、カラムはWakosil-II 5C18HG、4.6mφ×150mmを用い、流速は1.0mL/min、温度25℃で行った。)、標準液のピーク面積から各濃度を算出した。
次に、豚皮の替わりにタマネギの表皮を使用して、供与層の5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液の濃度を0.1mMにして同様に行った。その結果を図3、4に示す。図3、4から解るように、豚皮、タマネギ表皮において5−アミノレブリン酸塩酸塩と5−アミノレブリン酸リン酸塩は、同様の透過性を示した。
【0060】
比較例4
5-アミノレブリン酸リン酸塩の代わりに5-アミノレブリン酸塩酸塩を使用する以外は、実施例10と同様にして、透過性を測定した。
【0061】
このことより、実施例9で示したように、5-アミノレブリン酸塩酸塩を直接、皮膚に塗布した場合、刺激性があるが、5-アミノレブリン酸リン酸塩では、皮膚刺激性は感じられず、皮膚への透過性が同等であり、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸塩酸塩以上に医療(光線力学治療や光力学的診断剤)や植物に有効な塩であることが確認できた。
【0062】
実施例11 (塩化銀の沈殿発生実験)
5-アミノレブリン酸リン酸塩0.5 gと硝酸銀0.5 gをイオン交換水10 mLに溶解し、5分静置し液の様子を観察した。沈殿の発生は認められなかった。
なお、5-アミノレブリン酸塩酸塩0.5 gと硝酸銀0.5 gをイオン交換水10 mLに溶解し、5分静置し液の様子を観察した。沈殿の発生が認められた。
【0063】
実施例12(りんごの着色実験)
実施例1で得られた、5-アミノレブリン酸リン酸塩をイオン交換水に溶解させ、表の所定濃度とした。その液に展着剤(丸和バイオケミカル(株)社製「アプローチBI」)を濃度が0.1重量%となるように加えた。pHはリン酸を用いて調整した。
上記の5-アミノレブリン酸リン酸塩を5-アミノレブリン酸塩酸塩として、またpH調整のリン酸を塩酸とする以外は同様にして5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液を調製した。
りんご「ふじ」の子実が着果し、未だ赤色に着色していない主枝3本に対し、調製した液を1枝当たり2L噴霧した(9月15日)。約2ヵ月後(11月6日)にりんごを収穫し、着色度を調べた。着色の測定にはミノルタ社製、色彩度計CR−200を用いた。結果を表9に示す。
【0064】
【表9】

【0065】
表9中のLab値では、Lは明るさ、aは赤、bは黄を表す。従ってaの値が高いほど赤が濃いことになる。5-アミノレブリン塩酸塩よりも5-アミノレブリン酸リン酸塩の方が赤の着色が濃かった。
【0066】
実施例13(植物活力効果)
内径12cmの磁気製ポットに火山灰土壌が600 g充填されかつ、1つのポットに高さ15 cmまで育ったツユクサが1本植えられているものを12個ずつ用意して20℃の恒温環境におき、1日1回下記散布液による茎葉散布処理を行った。21日後の葉の様子を観察した。その結果を表10にまとめた。
【0067】
【表10】

【0068】
表10の結果より、5−アミノレブリン酸リン酸塩に、5−アミノレブリン酸塩酸と同等以上の植物の活力効果が認められた。
【0069】
実施例14(植物生長調節効果)
イネ種(アキニシキ)をベンレート(住化タケダ園芸(株)製)(200倍)水溶液に一昼夜浸漬し、その後、暗条件、30℃にてインキュベートし催芽した。ハト胸期のステージのそろった種子を選び、カッターナイフで溝をつけた発泡ポリエチレンシートに、ピンセットを用いて1シート当たり10粒挟み込み、表11に示す各濃度の5−アミノレブリン酸リン酸塩150mLを満たした腰高シャーレにこのシートを浮かべ、25℃、5,000ルクス連続光照射下で24時間インキュベートした。反復数は各濃度3反復とした。3日後、調査を行い各区の第一葉鞘長、及び種子根長を測定し無処理区に対する比を算出し、それらの平均値を算出した。その結果を表11に示す。
【0070】
【表11】

【0071】
5−アミノレブリン酸リン酸塩は5−アミノレブリン酸塩酸塩と同等以上の植物生長促進効果を示した。
【0072】
実施例15(耐塩性向上効果)
内径12cmの排水穴のない磁気製ポットに畑土壌を600g充填し、ワタの種子(品種;M−5 Acala)を7〜8粒播種して1cm覆土し、温室内で育成させた。その後通常の管理を行い、子葉展開時に、表12に示す濃度の供試化合物と展着剤(ネオエステリン:クミアイ化学社製)を0.05%(v/v)含有する耐塩性向上剤を調製し、10アール当たり100リットルの散布水量で茎葉に散布処理した。各々の供試化合物は表12の濃度とした。4日後、表12に示すように土壌重量当たり0〜1.5重量%に相当する量の塩化ナトリウムを30mLの水に溶解させて土壌に滴下処理した。更に通常の栽培を続け、23日後に調査を行った。調査は目視観察によって行い、結果は塩害を以下に示す6段階で評価した。結果を表12に示す。
【0073】
(評価段階)
0:全く塩害が見られない。
1:極弱い塩害が見られる。
2:弱い塩害が見られる。
3:明らかな塩害が見られる。
4:強い塩害が見られる。
5:植物体は塩害により枯死した。
【0074】
【表12】

【0075】
表12に示したように、5−アミノレブリン酸リン酸塩は5−アミノレブリン酸塩酸塩と同等以上の耐塩性向上効果を示した。
【0076】
上記実施例で用いた5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液中の塩化物イオン濃度を、以下の条件のイオンクロマト法で測定した結果、いずれも検出限界(0.1ppm)以下であった。
測定条件は、A.分離カラム(日本ダイオネクス製 IonPac AS12A)、B.ガードカラム(日本ダイオネクス製 IonPac AG12A)、C.溶離液(Na2CO3:3.0mmol/L、NaHCO3:0.5mmol/Lからなる水溶液)、D.流量(1.5mL/min)、E.サプレッサ(ASRS(リサイクルモード、電流値50mA))、F.試料導入量(25μL)、G.恒温槽温度(35度)、H.検出器(電気伝導度検出器)による。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】5-アミノレブリン酸塩水溶液の濃度とpHとの関係を示す図である。
【図2】透析セル概略図である。
【図3】5-アミノレブリン酸のリン酸塩と塩酸塩の豚皮透過性結果を示す図である。
【図4】5-アミノレブリン酸のリン酸塩と塩酸塩のタマネギ表皮透過性結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
HOCOCH2CH2COCH2NH2・HOP(O)(OR1)n(OH)2-n (1)
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数7〜26のアラルキル基又はフェニル基を示し;nは0〜2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩。
【請求項2】
R1が、水素原子、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ヘキサデシル基、2-エチルヘキシル基、オレイル基、ベンジル基又はフェニル基である請求項1記載の5-アミノレブリン酸リン酸塩。
【請求項3】
水溶液の形態である請求項1又は2記載の5-アミノレブリン酸リン酸塩。
【請求項4】
固体の形態である請求項1又は2記載の5-アミノレブリン酸リン酸塩。
【請求項5】
陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノレブリン酸を溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造方法。
【請求項6】
アンモニア水で溶出させる請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載の5-アミノレブリン酸リン酸塩を含有する光力学的治療又は光力学的診断用組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項記載の5-アミノレブリン酸リン酸塩を含有する植物活力剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−182753(P2006−182753A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51217(P2005−51217)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】