説明

5−アリール置換ジヒドロピリドピリミジン類およびジヒドロピリダジン類および鉱質コルチコイドアンタゴニストとしてのそれらの使用

本願は、新規アリール置換複素二環式化合物、それらの製造方法、障害の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに、障害、特に心血管障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、新規置換アリール置換複素二環式化合物、それらの製造方法、疾患の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに、疾患、特に心血管障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルドステロンは、遠位ネフロンの上皮において、ナトリウム貯留およびカリウム排泄を促進し、かくして細胞外体積を一定に保し、それにより血圧の調節に貢献することにより、体液および電解質の恒常性維持において鍵となる役割を果たす。これに加えて、アルドステロンは、心臓および血管系の構造と機能に対する直接的作用を示すが、根底にあるメカニズムは、未だ完全には説明されていない [R.E. Booth, J.P. Johnson, J.D. Stockand, Adv. Physiol. Educ. 26 (1), 8-20 (2002)]。
【0003】
アルドステロンは、副腎皮質で形成されるステロイドホルモンである。その産生は、間接的に、まさに実質的に、腎血流に依存して調節される。腎血流のいかなる減少も、腎臓における酵素レニンの循環血への放出を導く。これは、次いで、アンジオテンシンIIの形成を活性化し、それは一方で動脈血管に対する収縮作用を有するが、他方では、副腎皮質におけるアルドステロンの形成も刺激する。かくして、腎臓は、循環血の血圧のセンサーとして、従って間接的な体積センサーとして作用し、そして、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系を介して、一方で血圧を高めることにより(アンジオテンシンII効果)、他方では、腎臓でのナトリウムおよび水の再吸収の増加によって血管系の充填状態の均衡を再び保つことにより(アルドステロン効果)、決定的な体積の喪失に対抗する。
【0004】
この制御システムは、様々な方法で病的に損なわれ得る。かくして、腎血流の慢性的低下(例えば、心不全およびそれに起因する静脈系における鬱血の結果として)は、慢性的なアルドステロンの過剰放出を導く。次いで、これに続いて血液量の拡大が起こり、それにより、心臓への過剰量の供給を介して、心臓の弱さを増大させる。息切れを伴う肺における鬱血および四肢における浮腫形成、並びに、腹水および胸水貯留が起こり得て、腎血流はさらに低下する。加えて、過剰なアルドステロン効果は、血液中および細胞外液中のカリウム濃度の低下を導く。以前に別の要因で損傷を受けた心筋において、決定的最低レベルを下回る逸脱があるならば、致死的転帰を伴う心不整脈が誘導され得る。これは、心不全患者で頻発する心臓性突然死の主原因の一つと見込まれる。
【0005】
加えて、アルドステロンはまた、典型的には心不全において観察される数々の心筋再構築過程を担うと考えられる。従って、高アルドステロン症は、例えば心筋梗塞、心筋の炎症または高血圧などの様々なタイプの損傷により元々は誘導され得る心不全の病理および予後において、重大な構成要素である。この仮説は、慢性心不全および急性心筋梗塞後の患者の群に対する広範囲の臨床研究において、アルドステロンアンタゴニストの使用により、全体的な死亡率の顕著な減少があったという事実により支持される[B. Pitt, F. Zannad, W.J. Remme et al., N. Engl. J. Med. 341, 709-717 (1999); B. Pitt, W. Remme, F. Zannad et al., N. Engl. J. Med. 348, 1309-1321 (2003)]。とりわけ、心臓性突然死の発生率の低下により、これを達成することが可能であった。
【0006】
最近の研究によると、本態性高血圧症に罹患している少なからぬ数の患者が、いわゆる原発性高アルドステロン症の正常カリウム血性異型を有することも見出されている[全ての高血圧患者の11%に昇る罹患率:L. Seiler and M. Reincke, Der Aldosteron-Renin-Quotient bei sekundaerer Hypertonie, Herz 28, 686-691 (2003)]。正常カリウム血性高アルドステロン症の最良の診断方法は、レニン血漿濃度に対するアルドステロンの相対的上昇も診断し最終的に処置できるように、対応する血漿濃度のアルドステロン/レニンの比率である。この理由で、本態性高血圧に関連して診断される高アルドステロン症は、原因的および予防的に有意義な治療のための出発点である。
【0007】
上記で詳述した高アルドステロン症のタイプよりもかなり一般性が低いのは、欠陥が副腎自体のホルモン産生細胞に見出されるか、または、その数または体積が過形成または増殖により増大している、いずれかの病状である。副腎皮質の腺腫または瀰漫性過形成は、コン症候群と呼ばれる原発性高アルドステロン症の最も一般的な原因であり、その主症状は、高血圧と低カリウム血性アルカローシスである。ここでの優先順位も、罹患組織の外科的除去に加えて、アルドステロンアンタゴニストによる医学療法である[H.A. Kuehn and J. Schirmeister (Editors), Innere Medizin, 4th edition, Springer Verlag, Berlin, 1982]。
【0008】
典型的に血漿アルドステロン濃度の上昇を伴う他の病状は、進行した肝硬変である。この場合のアルドステロン上昇の原因は、主に、肝機能の欠陥に起因する、低下したアルドステロン分解である。体液過負荷、浮腫および低カリウム血症は、典型的な結果であり、それは、アルドステロンアンタゴニストによる臨床的実施において成功裏に緩和できる。
【0009】
アルドステロンの作用は、標的細胞の細胞内に局在する鉱質コルチコイド受容体により媒介される。今日までに利用可能なアルドステロンアンタゴニストは、アルドステロン自体と同様に、塩基性ステロイド構造を有する。そのようなステロイド性アンタゴニストの有用性は、他のステロイドホルモンの受容体とのそれらの相互作用により制限され、それは、女性化乳房および不能などのかなりの副作用および治療の中止を導く場合がある[M.A. Zaman, S. Oparil, D.A. Calhoun, Nature Rev. Drug Disc. 1, 621-636 (2002)]。
【0010】
鉱質コルチコイド受容体に対してより選択的である強力な非ステロイド性アンタゴニストの使用は、この副作用のプロフィールを回避し、かくして顕著な治療的利点を達成する可能性をもたらす。
【0011】
本発明の目的は、障害、特に心血管障害の処置用の、選択的鉱質コルチコイド受容体アンタゴニストとして使用できる新規化合物を提供することである。
【0012】
EP0133530−A、EP0173933−A、EP0189898−AおよびEP0234516−Aは、血管障害の処置用のカルシウム拮抗作用を有する4−アリール−置換1,4−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン類および−ナフチリジノン類を開示している。加えて、1,4−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン誘導体は、WO02/10164で、様々な、特に泌尿器科の障害の処置用の、カリウムチャネル開口薬として特許請求されている。4−フルオレノニル−および4−クロメノニル−1,4−ジヒドロピリジン誘導体は、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニストとして、WO2005/087740およびWO2007/009670に記載されている。WO2006/066011は、4−アリール−3−シアノ−1,4−ジヒドロピリジン−5−カルボン酸エステルおよびカルボキサミドを、いくつかの場合ではステロイドホルモン受容体およびL型カルシウムチャネルの二重のモジュレーターとして開示しており、WO2005/097118は、4−アリール−1,4−ジヒドロピリジンコア構造を有する化合物を、アルドステロン受容体アンタゴニストとして特許請求している。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、一般式(I)
【化1】

[式中、
Dは、NまたはC−R
{式中、Rは、水素、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、(C−C)−アルキルチオ、アミノ、モノ−(C−C)−アルキルアミノまたはジ−(C−C)−アルキルアミノである}
であり、
Eは、NまたはC−R
{式中、Rは、水素または(C−C)−アルキルである}
であり、
ここで、DがC−Rであり、かつ、EがNであるか、または、DがNであり、かつ、EがC−Rであり、
【0014】
Arは、式
【化2】

{式中、
*は、結合点であり、
は、水素またはハロゲンであり、
は、メチルまたはエチルであり、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチルまたは(C−C)−アルキルであり、
は、水素またはフッ素であり、
10は、ハロゲン、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり、
11は、シアノまたはニトロであり、
12は、水素、ハロゲン、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、(C−C)−アルキルチオまたはジ−(C−C)−アルキルアミノであり、該(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルキルチオラジカル中のアルキル基は、各場合で、3個までのフッ素により置換されていてもよいか、
または、フェニルであり、それは、ハロゲン、(C−C)−アルキルまたはトリフルオロメチルにより置換されていてもよく、
13は、水素、ハロゲンまたは(C−C)−アルキルであり、
Gは、CH、C−R10またはNであり、
そして、nは、0、1または2の数であり、
置換基R10が1個より多く存在する場合、その意味は同一であっても異なっていてもよい}
の基であり、
【0015】
は、シアノ、ニトロまたは式−C(=O)−R14もしくは−C(=O)−O−R15
{式中、R14は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルまたは1個ないし3個のフッ素により置換されていてもよい)またはフェニル(ハロゲン、シアノ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシまたはトリフルオロメトキシにより置換されていてもよい)または(C−C)−シクロアルキルであり、
そして、R15は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルまたは1個ないし3個のフッ素により置換されていてもよい)または(C−C)−シクロアルキルである}
の基であり、
は、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、シクロプロピル、シクロブチル、(C−C)−アルコキシまたは(C−C)−アルキルチオであり、
そして、Rは、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、(C−C)−アルキルチオ、アミノ、モノ−(C−C)−アルキルアミノまたは式−O−SO−R16
{ここで、該(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルキルチオラジカルは、各場合で(C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよく、
そして、
16は、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−シクロアルキル、フェニルまたは、N、Oおよび/またはSの群から2個までのヘテロ原子を有する5員または6員のヘテロアリールであり、
フェニルおよびヘテロアリールは、1個または2個の同一かまたは異なるハロゲン、シアノ、ニトロ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシおよび/またはトリフルオロメトキシにより各々置換されていてもよい}
の基である]
の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物に関する。
【0016】
本発明の化合物は、式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物;式(I)に包含される後述の式の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、および、式(I)に包含される例示的実施態様として後述する化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物(式(I)に包含される後述の化合物が、まだ塩、溶媒和物および塩の溶媒和物ではない場合に)である。
【0017】
本発明の化合物は、それらの構造次第で、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在し得る。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物に関する。そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、立体異性的に純粋な構成分を、既知方法で単離できる。
本発明の化合物が互変異性体で存在し得る場合、本発明は、全ての互変異性体を包含する。
【0018】
本発明の目的上、好ましいは、本発明の化合物の生理的に許容し得る塩である。それら自体は医薬的使用に適さないが、例えば本発明の化合物の単離または精製に使用できる塩も包含される。
【0019】
本発明の化合物の生理的に許容し得る塩には、無機酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0020】
本発明の化合物の生理的に許容し得る塩には、常套の塩基の塩、例えば、そして、好ましくは、アルカリ金属塩(例えばナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムおよびマグネシウム塩)およびアンモニアまたは1個ないし16個のC原子を有する有機アミン(例えば、そして、好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩が含まれる。
【0021】
本発明の目的上、溶媒和物は、固体または液体状態で溶媒分子との配位により錯体を形成している本発明による化合物の形態を表す。水和物は、配位が水と起こる、溶媒和物の特別な形態である。水和物は、本発明に関して好ましい溶媒和物である。
【0022】
加えて、本発明は、本発明の化合物のプロドラッグを包含する。用語「プロドラッグ」は、それら自体は生物学的に活性であっても不活性であってもよいが、それらの体内残存時間中に(例えば、代謝または加水分解により)本発明の化合物に変換される化合物を包含する。
【0023】
本発明に関して、置換基は、断りの無い限り、以下の意味を有する:
(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルは、本発明に関して、各々1個ないし6個、1個ないし4個および1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表す。1個ないし4個、特に好ましくは1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルが好ましい。例えば、そして好ましくは、以下のものに言及し得る:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−エチルプロピル、n−ペンチル、イソ−ペンチルおよびn−ヘキシル。
【0024】
(C−C)−シクロアルキル、(C−C)−シクロアルキルおよび(C−C)−シクロアルキルは、本発明に関して、各々3個ないし7個、3個ないし6個および3個ないし5個の炭素原子を有する飽和単環式シクロアルキル基を表す。好ましいのは、3個ないし6個、特に好ましくは3個ないし5個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルである。例えば、そして好ましくは、以下のものに言及し得る:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル。
【0025】
(C−C)−アルコキシ、(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルコキシは、本発明に関して、各々1個ないし6個、1個ないし4個および1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルを表す。1個ないし4個、特に好ましくは1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルが好ましい。例えば、そして好ましくは、以下のものに言及し得る:メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシおよびn−ヘキソキシ。
【0026】
(C−C)−アルキルチオおよび(C−C)−アルキルチオは、本発明に関して、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルチオラジカルを表す。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルチオラジカルが好ましい。例えば、そして好ましくは、以下のものに言及し得る:メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、n−ペンチルチオおよびn−ヘキシルチオ。
【0027】
モノ−(C−C)−アルキルアミノおよびモノ−(C−C)−アルキルアミノは、本発明に関して、各々、1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する1個の直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のモノアルキルアミノラジカルが好ましい。例えば、そして好ましくは、以下のものに言及し得る:メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノおよびn−ヘキシルアミノ。
【0028】
ジ−(C−C)−アルキルアミノおよびジ−(C−C)−アルキルアミノは、本発明に関して、各々、1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を各々が有する2個の同一かまたは異なる直鎖または分枝鎖のアルキル置換基を有するアミノ基を表す。1個ないし4個の炭素原子を各々が有する直鎖または分枝鎖のジアルキルアミノラジカルが好ましい。例えば、そして好ましくは、以下のものに言及し得る:N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノ、N−tert−ブチル−N−メチルアミノ、N−エチル−N−n−ペンチルアミノおよびN−n−ヘキシル−N−メチルアミノ。
【0029】
5員または6員のヘテロアリールは、本発明に関して、N、Oおよび/またはSの群からの1個または2個の環原子を含む5個または6個の環原子を有し、環の炭素原子を介して結合している、芳香族性複素環(複素芳香環)を表す。例えば、そして好ましくは、以下のものに言及し得る:フリル、ピロリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニルおよびピラジニル。
【0030】
ハロゲンは、本発明に関して、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。フッ素または塩素が好ましい。
【0031】
本発明の化合物中のラジカルが置換されているならば、そのラジカルは、断りのない限り、一置換または多置換されていてよい。本発明に関して、1個より多く存在する全てのラジカルは、相互に独立した意味を有する。1個、2個または3個の同一かまたは異なる置換基による置換が好ましい。1個の置換基による置換がことさら特に好ましい。
【0032】
好ましいのは、式中、
Dが、NまたはC−R
{式中、Rは、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、(C−C)−アルキルチオ、アミノ、モノ−(C−C)−アルキルアミノまたはジ−(C−C)−アルキルアミノである}
であり、
Eが、NまたはC−R
{式中、Rは、水素またはメチルである}
であり、
ここで、DがC−Rであり、かつ、EがNであるか、または、DがNであり、かつ、EがC−Rであり、
Arが、式
【化3】

{式中、
*は、結合点であり、
は、水素、フッ素、塩素またはシアノであり、
10は、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり、
11は、シアノまたはニトロであり、
12は、塩素、臭素、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、(C−C)−アルキルチオまたはトリフルオロメチルチオであり、
そして、nは、0または1の数である}
の基であり、
が、シアノ、アセチル、トリフルオロアセチルまたは式−C(=O)−O−R15
{式中、R15は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルまたは1個ないし3個のフッ素により置換されていてもよい)または(C−C)−シクロアルキルである}
の基であり、
が、メチルまたはトリフルオロメチルであり、
そして、
が、アミノ、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシまたは式−O−SO−R16
{ここで、R16は、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−シクロアルキル、フェニルまたはチエニルであり、
フェニルおよびチエニルは、1個または2個の同一かまたは異なるフッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシおよび/またはトリフルオロメトキシにより各々置換されていてもよい}
の基である、
式(I)の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0033】
特に好ましいのは、式中、
Dが、C−R
{式中、Rは、水素、アミノ、メトキシまたはメチルチオである}
であり、
EがNであり、
Arが、式
【化4】

{式中、
*は、結合点であり、
そして、R12は、エチル、メトキシまたはトリフルオロメトキシである}
の基であり、
が、シアノ、アセチル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルであり、
が、メチルまたはトリフルオロメチルであり、
そして、Rが、アミノ、(C−C)−アルコキシまたは式−O−SO−R16
{式中、R16は(C−C)−アルキルである}
の基である、
式(I)の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0034】
ラジカルの各々の組合せまたは好ましい組合せで特別に示されるラジカルの定義は、それらのラジカルについて示される特定の組合せに関係なく、所望により他の組合せのラジカルの定義によっても置き換えられる。
上述の好ましい範囲の2つまたはそれ以上の組合せがことさら特に好ましい。
【0035】
本発明は、さらに、本発明の式(I−A)
【化5】

{式中、Ar、R、RおよびRは、各々上記の意味を有し、
そして、R3Aは、(C−C)−アルコキシ((C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよい)であるか、トリフルオロメトキシであるか、または、式−O−SO−R16(式中、R16は上記の意味を有する)の基である}
の化合物の製造方法に関し、それは、
式(II)
【化6】

(式中、Arは上記の意味を有する)
の化合物を、1段階(ワンポット反応)で、または、2段階の工程で、式(III)
【化7】

(式中、Rは上記の意味を有し、
そして、Tは、メチルまたはエチルである)
の化合物および式(IV)
【化8】

(式中、RおよびRは上記の意味を有する)
の化合物と反応させ、
式(V)
【化9】

(式中、Ar、R、R、RおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、
【0036】
後者を酸の存在下で加水分解し、式(VI)
【化10】

(式中、Ar、R、R、RおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、酸の存在下でヒドラジンと縮合し、式(VII)
【化11】

(式中、Ar、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、
【0037】
次いで、不活性溶媒中、必要に応じて塩基の存在下、式(VIII)の化合物または式(IX)のトリアルキルオキソニウム塩
【化12】

(式中、R17は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよい)であるか、または、トリフルオロメチルであり、
17Aは、メチルまたはエチルであり、
Qは、ハロゲン、メシレート、トシレートまたはトリフレートなどの脱離基であり、
そして、Zは、テトラフルオロボレートなどの非求核性陰イオンである)
でアルキル化し、式(I−A1)
【化13】

(式中、Ar、R、R、RおよびR17は、各々上記の意味を有する)
の化合物を得るか、
【0038】
または、式(VII)の化合物を、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(X)
【化14】

(式中、R16は上記の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(I−A2)
【化15】

(式中、Ar、R、R、RおよびR16は、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、必要に応じて、得られる式(I−A1)または(I−A2)の化合物を、当業者に知られている方法によりそれらのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離する、および/または、適当な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換することを特徴とする。
【0039】
工程(II)+(III)+(IV)→(V)は、一般的に、不活性溶媒中、+20℃ないし溶媒の沸点の温度範囲で、大気圧下で実施する。
【0040】
この目的に適する不活性溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノールなどのアルコール類、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタンまたは1,2−ジクロロエタンなどのハロ炭化水素類、または、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ピリジンまたは氷酢酸などの他の溶媒である。これらの反応は、好ましくは、ジクロロメタン、トルエン、エタノールまたはイソプロパノール中、各々の還流温度で、大気圧下で実施する。
【0041】
工程(II)+(III)+(IV)→(V)は、必要に応じて、酸、酸/塩基の組合せ、および/または、例えばモレキュラー・シーブなどの脱水剤の存在下で、有利に行うことができる。適する酸の例は、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸である;適する塩基は、特に、ピペリジンまたはピリジン[下記反応スキーム8を参照せよ;1,4−ジヒドロピリジンの合成について、D.M. Stout, A.I. Meyers, Chem. Rev. 1982, 82, 223-243; H. Meier et al., Liebigs Ann. Chem. 1977, 1888; H. Meier et al., ibid. 1977, 1895; H. Meier et al., ibid. 1976, 1762; F. Bossert et al., Angew. Chem. 1981, 93, 755 も参照せよ]。
【0042】
工程(V)→(VI)は、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたは酢酸などの水混和性の不活性有機溶媒とともに、水中で、好都合に実施する;アセトンを好ましくは用いる。この加水分解に適する酸は、鉱酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸もしくはリン酸、または、有機酸、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸もしくはトリフルオロメタンスルホン酸の希薄な水溶液である;塩酸を好ましくは使用する。
【0043】
反応(V)→(VI)は、一般的に、0℃ないし+50℃の温度範囲で行う。この反応は、大気圧、加圧または減圧下(例えば、0.5ないし5bar)で実施できる。それは、一般的に、大気圧下で実施する。
【0044】
工程(VI)→(VII)用の不活性溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンもしくはキシレンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼンもしくはクロロトルエンなどのハロ炭化水素類、または、アセトニトリル、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)もしくはN−メチルピロリドン(NMP)などの他の溶媒である。上述の溶媒の混合物を使用することが同様に可能である。好ましくはエタノールを用いる。
【0045】
工程(VI)→(VII)に適する酸は、特に、有機酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸である;好ましくは酢酸を使用する。
【0046】
反応(VI)→(VII)は、一般的に、+20℃ないし+150℃の温度範囲で、好ましくは+60℃ないし+120℃で行う。この反応は、大気圧、加圧または減圧下(例えば、0.5ないし5bar)で実施できる。それは、一般的に、大気圧下で実施する。
【0047】
工程(VII)+(VIII)→(I−A1)、(VII)+(IX)→(I−A1)および(VII)+(X)→(I−A2)の不活性溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンまたは石油留分などの炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼンまたはクロロトルエンなどのハロ炭化水素類、または、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン(NMP)、ピリジンまたはアセトニトリルなどの他の溶媒である。該溶媒の混合物を使用することが同様に可能である。好ましいのは、工程(VII)+(VIII)→(I−A1)におけるテトラヒドロフランまたはジメチルホルムアミドの、工程(VII)+(IX)→(I−A1)におけるジクロロメタンの、そして、工程(VII)+(X)→(I−A2)におけるピリジンの使用である。
【0048】
工程(VII)+(VIII)→(I−A1)に適する塩基は、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはセシウム、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムまたはカリウム、アミド、例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド、有機金属化合物、例えば、ブチルリチウムまたはフェニルリチウム、または、ホスファゼン塩基、例えば、P2−t−BuまたはP4−t−Bu[いわゆる「シュベジンガー(Schwesinger)塩基」、R. Schwesinger, H. Schlemper, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 26, 1167 (1987); T. Pietzonka, D. Seebach, Chem. Ber. 124, 1837 (1991) を参照せよ]。水素化ナトリウムまたはホスファゼン塩基P4−t−Buを好ましくは使用する。
【0049】
工程(VII)+(X)→(I−A2)に適する塩基は、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはセシウム、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムまたはカリウム、有機金属化合物、例えば、ブチルリチウムまたはフェニルリチウム、または、有機アミン、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)または1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(登録商標))である。好ましくはピリジンが使用され、同時に溶媒として働く。
工程(VII)+(IX)→(I−A1)は、一般的に、塩基を添加せずに実施する。
【0050】
反応(VII)+(VIII)→(I−A1)、(VII)+(IX)→(I−A1)および(VII)+(X)→(I−A2)は、一般的に、−20℃ないし+100℃、好ましくは0℃ないし+50℃の温度範囲で行う。これらの反応は、大気圧、加圧または減圧(例えば、0.5ないし5bar)で実施できる;それらは、一般的に大気圧下で実施する。
【0051】
式(II)の化合物は、購入できるか、文献から知られているか、または、文献からわかる方法と同様に製造できる(下記反応スキーム1−7を参照せよ)。式(III)、(IV)、(VIII)、(IX)および(X)の化合物は、多くの場合、購入できるか、文献から知られているか、または、文献からわかる方法により製造できる。
【0052】
本発明は、さらに、本発明の式(I−B)
【化16】

{式中、Ar、R、RおよびRは、各々上記の意味を有し、
そして、R3Bは、(C−C)−アルコキシまたは(C−C)−アルキルチオ(これらの各々は、(C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよい)であるか、または、トリフルオロメトキシ、アミノ、モノ−(C−C)−アルキルアミノもしくは式−O−SO−R16(式中、R16は上記の意味を有する)の基である}
の化合物の製造方法に関し、それは、
式(II)
【化17】

(式中、Arは上記の意味を有する)
の化合物を、式(XI)
【化18】

(式中、RおよびRは上記の意味を有する)
の化合物と縮合し、式(XII)
【化19】

(式中、Ar、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、後者を、
[B−1]不活性溶媒中、式(XIII)
【化20】

(式中、R3BおよびRは上記の意味を有する)
の化合物と反応させるか、または、
【0053】
[B−2]先ず、不活性溶媒中、式(XIV)
【化21】

(式中、Rは上記の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(XV)
【化22】

(式中、Ar、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、後者を、不活性溶媒中、必要に応じて塩基の存在下、式(VIII)の化合物または式(IX)のトリアルキルオキソニウム塩
【化23】

(式中、R17は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよい)であるか、または、トリフルオロメチルであり、
17Aは、メチルまたはエチルであり、
Qは、ハロゲン、メシレート、トシレートまたはトリフレートなどの脱離基であり、
そして、Zは、テトラフルオロボレートなどの非求核性陰イオンである)
でアルキル化し、式(I−B1)
【化24】

(式中、Ar、R、R、RおよびR17は、各々上記の意味を有する)
の化合物を得るか、
【0054】
または、式(XV)の化合物を、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(X)
【化25】

(式中、R16は上記の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(I−B2)
【化26】

(式中、Ar、R、R、RおよびR16は、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、必要に応じて、得られる式(I−B)、(I−B1)または(I−B2)の各々の化合物を、当業者に知られている方法によりそれらのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離する、および/または、適当な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換することを特徴とする。
【0055】
工程(II)+(XI)→(XII)は、一般的に、不活性溶媒中、+20℃ないし溶媒の沸点の温度範囲で、大気圧下で実施する。
【0056】
この場合に適する不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタンもしくは1,2−ジクロロエタンなどのハロ炭化水素類、または、アセトニトリル、氷酢酸、ピリジン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエンもしくはキシレンなどの他の溶媒である。この反応は、好ましくは、ジクロロメタンまたはトルエン中、特定の還流温度で、大気圧下で行う。
【0057】
反応(II)+(XI)→(XII)は、酸の存在下、塩基としてのピペリジンまたはピリジンと、および/または、例えば、モレキュラー・シーブなどの脱水剤と組み合わせて、有利に実施する。適する酸は、例えば、酢酸またはp−トルエンスルホン酸である。この反応は、好ましくは、酢酸ピペリジニウムを添加して実施する。
【0058】
工程(XII)+(XIII)→(I−B)および(XII)+(XIV)→(XV)用の不活性溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノールなどのアルコール類、または、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、トルエンもしくは氷酢酸などの他の溶媒である。これらの反応は、一般的に、+50℃ないし+120℃の温度範囲で行う。反応は、好ましくは、エタノールまたはイソプロパノール中、特定の還流温度で、大気圧下で実施する。
【0059】
工程(XV)+(VIII)→(I−B1)、(XV)+(IX)→(I−B1)および(XV)+(X)→(I−B2)の不活性溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンまたは石油留分などの炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼンまたはクロロトルエンなどのハロ炭化水素類、または、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン(NMP)、ピリジンまたはアセトニトリルなどの他の溶媒である。上述の溶媒の混合物を使用することが同様に可能である。好ましいのは、工程(XV)+(VIII)→(I−B1)におけるテトラヒドロフランまたはジメチルホルムアミドの、工程(XV)+(IX)→(I−B1)におけるジクロロメタンの、そして、工程(XV)+(X)→(I−B2)におけるピリジンの使用である。
【0060】
工程(XV)+(VIII)→(I−B1)に適する塩基は、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはセシウム、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムまたはカリウム、アミド、例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド、有機金属化合物、例えば、ブチルリチウムまたはフェニルリチウム、または、ホスファゼン塩基、例えば、P2−t−BuまたはP4−t−Bu[いわゆる「シュベジンガー(Schwesinger)塩基」、R. Schwesinger, H. Schlemper, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 26, 1167 (1987); T. Pietzonka, D. Seebach, Chem. Ber. 124, 1837 (1991) を参照せよ]。水素化ナトリウムまたはホスファゼン塩基P4−t−Buを好ましくは使用する。
【0061】
工程(XV)+(X)→(I−B2)に適する塩基は、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはセシウム、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムまたはカリウム、有機金属化合物、例えば、ブチルリチウムまたはフェニルリチウム、または、有機アミン、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)または1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(登録商標))である。好ましくはピリジンが使用され、同時に溶媒として働く。
工程(XV)+(IX)→(I−B1)は、一般的に、塩基を添加せずに実施する。
【0062】
反応(XV)+(VIII)→(I−B1)、(XV)+(IX)→(I−B1)および(XV)+(X)→(I−B2)は、一般的に、−20℃ないし+100℃、好ましくは0℃ないし+50℃の温度範囲で行う。これらの反応は、大気圧、加圧または減圧(例えば、0.5ないし5bar)で実施できる;それらは、一般的に大気圧下で実施する。
【0063】
式(II)の化合物は、購入できるか、文献から知られているか、または、文献からわかる方法と同様に製造できる(下記反応スキーム1−7を参照せよ)。式(XIII)および(XIV)は、購入できる場合もあり、他に、文献から知られているか、または、文献の方法により製造できる(反応スキーム9およびそこで引用する文献を参照)。
【0064】
式(VIII)、(IX)、(X)および(XI)の化合物は、多くの場合、購入できるか、文献から知られているか、または、文献からわかる方法により製造できる。
【0065】
本発明の化合物の製造は、以下の合成スキームにより例示説明できる:
スキーム1
【化27】

[a):臭化アリル、炭酸カリウム、cat.ヨウ化カリウム、アセトン、還流;b):230℃、4時間;c):ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、トルエン、120℃、16時間;d):塩化アセチル、水素化ナトリウム、THF、10−25℃、16時間;e):1. オゾン、ジクロロメタン、−60℃、30分;2. 硫化ジメチル]。
【0066】
スキーム2
【化28】

[a):n−ブチルリチウム、THF、60℃、3時間;b):無水酢酸、ピリジン、還流、6時間;c):濃HSO、HNO、0℃、1時間;d):N−ブロモスクシンイミド、AIBN、テトラクロロメタン、還流;e):N−メチルモルホリンN−オキシド、アセトニトリル、還流]。
【0067】
スキーム3
【化29】

[a):塩化スズ(II)二水和物、酢酸エチル、70℃;b):1. 亜硝酸ナトリウム、硫酸、0℃、1.5時間;2. シアン化銅(I)、シアン化ナトリウム、水/酢酸エチル、0℃、45分;c):N−ブロモスクシンイミド、AIBN、テトラクロロメタン、還流;d):N−メチルモルホリンN−オキシド、アセトニトリル、還流]。
【0068】
スキーム4
【化30】

[a):トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ピリジン、0℃→RT、30分;b):tert−ブチルアクリレート、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、DMF、120℃、24時間;c):cat.四酸化オスミウム、cat.ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、過ヨウ素酸ナトリウム、THF/水、20−25℃、2時間]。
【0069】
スキーム5
【化31】

[a):n−ブチルリチウム、THF、−78℃、次いで、N−ホルミルモルホリン;b):シアン化亜鉛、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、DMF、マイクロ波250℃/5分]。
【0070】
スキーム6
【化32】

[a):N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、DMF、140−180℃;b):過ヨウ素酸ナトリウム、THF/水]。
【0071】
スキーム7
【化33】

[a):N−ブロモスクシンイミド、2,2'−アゾビス−2−メチルプロパンニトリル、テトラクロロメタン、還流;b):N−メチルモルホリンN−オキシド、アセトニトリル、3Åモレキュラー・シーブ]。
【0072】
スキーム8
【化34】

[a):酢酸、ピペリジン、ジクロロメタン、還流;b):4−アミノ−3−ペンタン−2−オン(R=CH−CO−)またはエチル3−アミノブト−2−エノエート(R=EtOOC−)、イソプロパノール、還流;c):塩酸、アセトン、RT;d):ヒドラジン水和物、エタノール/酢酸、100℃;e):トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート、ジクロロメタン、RT]。
【0073】
スキーム9
【化35】

[X、Y=N、OまたはS;a):R−YH、塩基;例えば、R.A. Nugent et al., J. Med. Chem. 1998, 41, 3793-3803 参照。b):R−XH、塩基;例えば、P. Manesiotis et al., J. Org. Chem. 2005, 70, 2729-2738 (X = N); B. Roth et al., J. Am. Chem. Soc. 1951, 73, 2864-2868 (X = O) 参照。c):NaOEt、EtOH;A. Bendich et al., J. Am. Chem. Soc. 1948, 70, 3109-3113 参照。d):R−I、EtOHまたはR−I、KCO、アセトン;例えば、E.C. Taylor, C.K. Cain, J. Am. Chem. Soc. 1952, 74, 1644-1647 参照。e):クロロ酢酸、硫酸;例えば、A. Bendich et al., J. Am. Chem. Soc. 1948, 70, 3109-3113 参照。f):(RBF、ジクロロメタン]。
【0074】
スキーム10
【化36】

[X、Y=N、OまたはS;a):イソプロパノール、還流、12時間;b):RBF、ジクロロメタン、RT、2−12時間;c):R−SO−Cl、ピリジン、RT、1−3時間]。
【0075】
本発明の化合物は、鉱質コルチコイド受容体のアンタゴニストとして作用し、予想し得なかった価値ある範囲の薬理効果を示す。従って、それらは、ヒトおよび動物の疾患の処置および/または予防用の医薬としての使用に適する。
【0076】
本発明の化合物は、様々な障害および疾患関連症状、特に、血漿アルドステロン濃度の上昇または血漿レニン濃度に対する血漿アルドステロン濃度の変化を特徴とするか、またはこれらの変化に関連する障害の予防および/または処置に適する。言及し得る例は:特発性原発性高アルドステロン症、副腎の過形成に伴う高アルドステロン症、副腎腺腫および/または副腎癌、肝硬変に伴う高アルドステロン症、心不全に伴う高アルドステロン症、および本態性高血圧に伴う(相対的)高アルドステロン症である。
【0077】
本発明の化合物は、また、それらの作用メカニズムのために、心臓性突然死による死亡のリスクが高い患者における心臓性突然死の予防にも適する。これらは、特に、例えば以下の障害の1つに罹患している患者である:高血圧、心不全、冠動脈心疾患、安定および不安定狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、拡張型心筋症、ショック、動脈硬化症、心房性および心室性不整脈、一過性および虚血性発作、卒中、炎症性心血管障害、末梢および心臓血管障害、末梢血流の障害、肺高血圧、冠動脈および末梢動脈の攣縮、血栓症、血栓塞栓性障害および血管炎。
【0078】
加えて、本発明の化合物は、浮腫形成、例えば、肺浮腫、腎性浮腫または心不全に関連する浮腫、および、例えば血栓溶解治療、経皮経管的血管形成術(PTA)および経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、心臓移植およびバイパス術後の再狭窄の予防および/または処置に使用できる。
【0079】
本発明の化合物は、さらに、利尿剤としての使用、および、例えば高カルシウム血症などの電解質異常のための使用に適する。
【0080】
加えて、本発明の化合物は、真性糖尿病、および、例えば神経障害および腎障害などの糖尿病の後遺症、急性および慢性腎不全および慢性腎機能不全の予防および/または処置に用いることができる。
【0081】
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明の化合物の使用に関する。
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための本発明の化合物の使用に関する。
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明の化合物の有効量を使用することによる、障害、特に上述の障害の処置および/または予防方法に関する。
【0082】
本発明の化合物は、単独で、または、必要であれば、他の有効成分と組み合わせて用いることができる。本発明は、さらに、特に上述の障害の処置および/または予防のための、少なくとも1種の本発明の化合物および1種またはそれ以上のさらなる有効成分を含む医薬に関する。組合せに適する有効成分は、例えば、そして好ましくは、以下のものである:
・例えば、そして好ましくは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、エンドセリンアンタゴニスト、レニン阻害剤、アルファ−受容体遮断薬、ベータ−受容体遮断薬およびRho−キナーゼ阻害剤の群からの、血圧を下げる有効成分;
・利尿剤、特に、ループ利尿剤およびチアジド類およびチアジド様利尿剤;
・例えば、そして好ましくは、血小板凝集阻害剤、抗凝血剤または線維素溶解促進性物質の群からの、抗血栓作用を有する物質;
・例えば、そして好ましくは、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成阻害剤、例えば、そして好ましくは、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤またはスクアレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、CETP阻害剤、MTP阻害剤、PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよび/またはPPAR−デルタアゴニスト、コレステロール吸収阻害剤、リパーゼ阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収阻害剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニストの群からの、脂質代謝を改変する活性物質;
・有機硝酸塩およびNO供給源、例えば、ニトロプルシドナトリウム、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、モルシドミンまたはSIN−1および吸入NO;
・陽性変力作用を有する化合物、例えば、強心配糖体(ジゴキシン)、ベータ−アドレナリンおよびドーパミンアゴニスト、例えば、イソプロテレノール、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンおよびドブタミン;
・環状グアノシン一リン酸(cGMP)および/または環状アデノシン一リン酸(cAMP)の分解を阻害する化合物、例えば、ホスホジエステラーゼ(PDE)1、2、3、4および/または5の阻害剤、特にPDE5阻害剤、例えば、シルデナフィル、バルデナフィルおよびタダラフィル、および、PDE3阻害剤、例えば、アムリノンおよびミルリノン;
・ナトリウム利尿ペプチド、例えば、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP、アナリチド(anaritide))、B型ナトリウム利尿ペプチドまたは脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP、ネシリチド)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)およびウロジラチン(urodilatin);
・カルシウム感受性増強薬、例えば、そして好ましくは、レボシメンダン;
・カリウム・サプリメント;
・NOに依存しないが、ヘムに依存するグアニル酸シクラーゼの刺激剤、例えば、特に、WO00/06568、WO00/06569、WO02/42301およびWO03/095451に記載の化合物;
・NOおよびヘムに依存しないグアニル酸シクラーゼの活性化剤、例えば、特に、WO01/19355、WO01/19776、WO01/19778、WO01/19780、WO02/070462およびWO02/070510に記載の化合物;
・ヒト好中球エラスターゼ(HNE)の阻害剤、例えば、シベレスタットまたはDX−890(レルトラン(reltran));
・シグナル伝達カスケードを阻害する化合物、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、特に、ソラフェニブ、イマチニブ、ゲフィチニブおよびエルロチニブ;および/または、
・心臓のエネルギー代謝に影響を与える化合物、例えば、そして好ましくは、エトモキシル、ジクロロ酢酸、ラノラジンまたはトリメタジジン。
【0083】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物は、利尿剤、例えば、そして好ましくは、フロセミド、ブメタニド、トルセミド、ベンドロフルメチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリクロルメチアジド、クロルタリドン、インダパミド、メトラゾン、キネタゾン、アセタゾラミド、ジクロロフェナミド(dichlorophenamide)、メタゾラミド、グリセロール、イソソルビド、マンニトール、アミロライドまたはトリアムテレンと組み合わせて投与される。
【0084】
血圧を下げる物質は、好ましくは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、エンドセリンアンタゴニスト、レニン阻害剤、アルファ受容体遮断薬、ベータ受容体遮断薬、Rhoキナーゼ阻害剤および利尿剤の群からの化合物を意味する。
【0085】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、カルシウム拮抗薬、例えば、そして好ましくは、ニフェジピン、アムロジピン、ベラパミルまたはジルチアゼムと組み合わせて投与する。
【0086】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタンまたはエンブサルタン(embusartan)と組み合わせて投与する。
【0087】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、ACE阻害剤、例えば、そして好ましくは、エナラプリル、カプトプリル、リシノプリル、ラミプリル、デラプリル、ホシノプリル、キノプリル(quinopril)、ペリンドプリルまたはトランドプリル(trandopril)と組み合わせて投与する。
【0088】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、エンドセリンアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ボセンタン、ダルセンタン(darusentan)、アンブリセンタンまたはシタキセンタン(sitaxsentan)と組み合わせて投与する。
【0089】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、レニン阻害剤、例えば、そして好ましくは、アリスキレン、SPP−600またはSPP−800と組み合わせて投与する。
【0090】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、アルファ−1受容体遮断薬、例えば、そして好ましくは、プラゾシンと組み合わせて投与する。
【0091】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、ベータ−受容体遮断薬、例えば、そして好ましくは、プロプラノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、アルプレノロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ブプラノロール、メチプラノロール、ナドロール、メピンドロール、カラザロール(carazalol)、ソタロール、メトプロロール、ベタキソロール、セリプロロール、ビソプロロール、カルテオロール、エスモロール、ラベタロール、カルベジロール、アダプロロール(adaprolol)、ランジオロール、ネビボロール、エパノロールまたはブシンドロールと組み合わせて投与する。
【0092】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、Rhoキナーゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、ファスジル、Y−27632、SLx−2119、BF−66851、BF−66852、BF−66853、KI−23095またはBA−1049と組み合わせて投与する。
【0093】
抗血栓作用を有する物質(抗血栓剤)は、好ましくは、血小板凝集阻害剤、抗凝血剤または線維素溶解促進性物質の群からの化合物を意味する。
【0094】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、血小板凝集阻害剤、例えば、そして好ましくは、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンまたはジピリダモールと組み合わせて投与する。
【0095】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、トロンビン阻害剤、例えば、そして好ましくは、キシメラガトラン、メラガトラン、ビバリルジンまたはクレキサン(clexane)と組み合わせて投与する。
【0096】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、GPIIb/IIIaアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、チロフィバンまたはアブシキシマブと組み合わせて投与する。
【0097】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、Xa因子阻害剤、例えば、そして好ましくは、リバロキサバン(rivaroxaban)(BAY59−7939)、DU−176b、アピキサバン(apixaban)、オタミキサバン(otamixaban)、フィデキサバン(fidexaban)、ラザキサバン(razaxaban)、フォンダパリナックス、イドラパリナックス、PMD−3112、YM−150、KFA−1982、EMD−503982、MCM−17、MLN−1021、DX9065a、DPC906、JTV803、SSR−126512またはSSR−128428と組み合わせて投与する。
【0098】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、ヘパリンまたは低分子量(LMW)ヘパリン誘導体と組み合わせて投与する。
【0099】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、ビタミンKアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、クマリンと組み合わせて投与する。
【0100】
脂質代謝を改変する物質は、好ましくは、CETP阻害剤、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成阻害剤、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤またはスクアレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、MTP阻害剤、PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよび/またはPPAR−デルタアゴニスト、コレステロール吸収阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収阻害剤、リパーゼ阻害剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニストの群からの化合物を意味する。
【0101】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、CETP阻害剤、例えば、そして好ましくは、トルセトラピブ(CP−529414)、JJT−705、BAY60−5521、BAY78−7499またはCETPワクチン(Avant)と組み合わせて投与する。
【0102】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、甲状腺受容体アゴニスト、例えば、そして好ましくは、D−チロキシン、3,5,3'−トリヨードサイロニン(T3)、CGS23425またはアキシチロム(axitirome)(CGS26214)と組み合わせて投与する。
【0103】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、スタチン類のクラスからのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチンまたはピタバスタチンと組み合わせて投与する。
【0104】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、スクアレン合成阻害剤、例えば、そして好ましくは、BMS−188494またはTAK−475と組み合わせて投与する。
【0105】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、ACAT阻害剤、例えば、そして好ましくは、アバシミブ(avasimibe)、メリナミド、パクチミブ(pactimibe)、エフルシミブ(eflucimibe)またはSMP−797と組み合わせて投与する。
【0106】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、MTP阻害剤、例えば、そして好ましくは、インプリタピド(implitapide)、BMS−201038、R−103757またはJTT−130と組み合わせて投与する。
【0107】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、PPAR−ガンマアゴニスト、例えば、そして好ましくは、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンと組み合わせて投与する。
【0108】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、PPAR−デルタアゴニスト、例えば、そして好ましくは、GW−501516またはBAY68−5042と組み合わせて投与する。
【0109】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、コレステロール吸収阻害剤、例えば、そして好ましくは、エゼチミブ、チクエシド(tiqueside)またはパマクエシドと組み合わせて投与する。
【0110】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、リパーゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、オーリスタットと組み合わせて投与する。
【0111】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、ポリマー性胆汁酸吸着剤、例えば、そして好ましくは、コレスチラミン、コレスチポール、コレソルバム(colesolvam)、コレスタゲル(CholestaGel)またはコレスチミドと組み合わせて投与する。
【0112】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、胆汁酸再吸収阻害剤、例えば、そして好ましくは、ASBT(=IBAT)阻害剤、例えば、AZD−7806、S−8921、AK−105、BARI−1741、SC−435またはSC−635と組み合わせて投与する。
【0113】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の化合物を、リポタンパク質(a)アンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ゲンカベン(gemcabene)カルシウム(CI−1027)またはニコチン酸と組み合わせて投与する。
【0114】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明の化合物を、通常は1種またはそれ以上の、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と共に含む医薬、および上述の目的でのそれらの使用に関する。
【0115】
本発明の化合物は、全身的および/または局所的作用を有し得る。この目的で、それらは、適する方法で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜もしくは耳の経路で、またはインプラントもしくはステントとして、投与できる。
本発明の化合物を、これらの投与経路に適する投与形で投与できる。
【0116】
経口投与に適するのは、先行技術に準じて機能し、本発明の化合物を迅速に、かつ/または、改変された方法で送達し、本発明の化合物を結晶形および/または無定形および/または溶解形態で含有するものであり、例えば、錠剤(非被覆および被覆錠剤、例えば、胃液耐性であるか、または、不溶であるかもしくは遅延して溶解し、本発明の化合物の放出を制御する被覆を有する錠剤)、口中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、粉末剤、乳剤、懸濁剤、エアゾル剤または液剤である。
【0117】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形は、とりわけ、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤形態の注射および点滴用製剤である。
【0118】
他の投与経路に適するのは、例えば、吸入用医薬形態(とりわけ、粉末吸入器、噴霧器)、点鼻薬、液、スプレー;舌、舌下または頬側投与用の錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、耳および眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントである。
経口または非経腸投与、特に経口投与が好ましい。
【0119】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの補助剤には、とりわけ、担体(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味および/または臭気の隠蔽剤が含まれる。
【0120】
一般に、非経腸投与で約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると明らかになった。経口投与では、投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは約0.1ないし10mg/体重kgである。
【0121】
それにも拘わらず、必要に応じて、特に、体重、投与経路、有効成分に対する個体の応答、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。比較的大量に投与する場合、これらを1日に亘る複数の個別用量に分配するのが望ましいことがある。
【0122】
下記の例示的実施態様は、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
以下の試験および実施例における百分率のデータは、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に基づく。
【実施例】
【0123】
A. 実施例
略号および頭字語:
【表1】

【0124】
LC−MS、GC−MSおよびHPLCの方法:
方法1(LC−MS):
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;溶離剤A:水1l+50%ギ酸0.5ml、溶離剤B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0125】
方法2(LC−MS):
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;溶離剤A:水1l+50%ギ酸0.5ml、溶離剤B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0126】
方法3(LC−MS):
装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Quattro LCZ;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;溶離剤A:水1l+50%ギ酸0.5ml、溶離剤B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:208−400nm。
【0127】
方法4(LC−MS):
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD;カラム:Phenomenex Gemini 3μ 30 mm x 3.00 mm;溶離剤A:水1l+50%ギ酸0.5ml、溶離剤B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0128】
方法5(LC−MS):
装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Platform LCZ;カラム:Thermo Hypersil GOLD 3μ 20 mm x 4 mm;溶離剤A:水1l+50%ギ酸0.5ml、溶離剤B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分100%A→0.2分100%A→2.9分30%A→3.1分10%A→5.5分10%A;オーブン:50℃;流速:0.8ml/分;UV検出:210nm。
【0129】
方法6(LC−MS):
装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Platform LCZ;カラム:Thermo HyPURITY Aquastar 3μ 20 mm x 2.1 mm;溶離剤A:水1l+50%ギ酸0.5ml、溶離剤B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分100%A→0.2分100%A→2.9分30%A→3.1分10%A→5.5分10%A;オーブン:50℃;流速:0.8ml/分;UV検出:210nm。
【0130】
方法7(GC−MS):
装置:Micromass GCT, GC 6890;カラム:Restek RTX-35MS, 30 m x 250 μm x 0.25 μm;ヘリウムの一定流速:0.88ml/分;オーブン:60℃;入口:250℃;グラジエント:60℃(0.30分間保持)、50℃/分→120℃、16℃/分→250℃、30℃/分→300℃(1.7分間保持)。
【0131】
方法8(HPLC):
装置:DAD 検出を備えた HP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;溶離剤A:HClO(70%)5ml/水1l、溶離剤B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分90%B→9.2分2%B→10分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0132】
方法9(キラルHPLC):
カラム:250 mm x 46 mm、キラルセレクターポリ(N−メタクリロイル−D−ロイシンtert−ブチルアミド)をベースとする;溶離剤:イソヘキサン/酢酸エチル1:1;温度:24℃;流速:2ml/分;UV検出:260nm。
【0133】
方法10(キラルHPLC):
カラム:Daicel Chiralpak AD-H, 5 μm, 250 mm x 4 mm;溶離剤:イソヘキサン/イソプロパノール80:20;温度:35℃;流速:2ml/分;UV検出:250nm。
【0134】
方法11(LC−MS):
装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Quattro LCZ;カラム:Phenomenex Gemini 3 μ 30 mn x 3.00 mm;溶離剤A:水1l+50%ギ酸0.5ml、溶離剤B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:208−400nm。
【0135】
出発化合物および中間体:
実施例1A
1−[2−(アリルオキシ)フェニル]エタノン
【化37】

2−ヒドロキシアセトフェノン542g(3.9mol)を、臭化アリル592g(4.9mol)、炭酸カリウム1000g(7.2mol)およびヨウ化カリウム13.2g(79mmol)と共に、アセトン2.4l中、24時間還流に加熱する。室温に冷却し、続いて濾過し、溶媒を真空で除去する。残渣をトルエンに溶解し、10%強度水酸化ナトリウム溶液および水で洗浄する。濃縮し、表題化合物689g(理論値の98%)を得る。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 2.68 (s, 3H), 4.68 (dd, 2H), 5.89 (dd, 2H), 6.09 (m, 1H), 6.99 (dd, 2H), 7.44 (m, 1H), 7.71 (d, 1H).
【0136】
実施例2A
1−(3−アリル−2−ヒドロキシフェニル)エタノン
【化38】

1−[2−(アリルオキシ)フェニル]エタノン160g(0.9mol)を、金属槽中で、230−240℃で4時間撹拌する。室温に冷却後、生成物を、薄膜式エバポレーター中、140℃および0.4mbarで蒸留する。表題化合物155g(理論値の97%)を得る。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 2.68 (s, 3H), 3.44 (d, 2H), 5.09 (m, 2H), 6.01 (m, 1H), 6.85 (t, 1H), 7.38 (dd, 1H), 7.62 (dd, 1H), 12.61 (s, 1H).
【0137】
実施例3A
1−{2−ヒドロキシ−3−[(1E)−プロプ−1−エン−1−イル]フェニル}エタノン
【化39】

1−(3−アリル−2−ヒドロキシフェニル)エタノン40g(227mmol)を、トルエン120mlに溶解し、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)2.17g(5.6mmol)を添加する。反応混合物を120℃で終夜加熱する。室温に冷却し、続いて珪藻土で濾過し、溶媒を真空で除去する。表題化合物20.9g(理論値の95%)を得、さらに精製せずに次の段階で反応させる。
LC-MS (方法 1): Rt = 2.36 分; [M+H]+ = 177
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 1.91 (dd, 3H), 2.63 (s, 3H), 6.32 (m, 1H), 6.73 (dd, 1H), 6.85 (t, 1H), 7.59 (m, 2H), 12.74 (s, 1H).
【0138】
実施例4A
2−メチル−8−[(1E)−プロプ−1−エン−1−イル]−4H−クロメン−4−オン
【化40】

60%水素化ナトリウム12.52g(313.2mmol)(鉱油中の懸濁液)を、無水THF300mlに、アルゴン下、10℃で導入する。1−{2−ヒドロキシ−3−[(1E)−プロプ−1−エン−1−イル]フェニル}エタノン18.4g(104.4mmol)を懸濁液にゆっくりと滴下して添加する。15分後、塩化アセチル9g(114.9mmol)を添加する。反応混合物を室温で終夜撹拌する。水300mlで加水分解を実施し、混合物を酢酸エチルで数回抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、続いて硫酸ナトリウムで乾燥する。次いで、溶媒を真空で除去する。残渣をメタノール200mlに取り、20%強度塩酸50mlと共に、80℃で30分間加熱する。次いで、溶媒を真空で除去し、残渣を水400mlと混合する。ジクロロメタンによる数回の抽出を実施する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を真空で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(移動相:ジクロロメタン/メタノール98:2)で精製する。表題化合物10.5g(理論値の50.2%)を黄色油状物として得る。
LC-MS (方法 2): Rt = 2.07 分; [M+H]+ = 201
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 1.98 (dd, 3H), 2.43 (s, 3H), 6.18 (s, 1H), 6.40 (m, 1H), 6.85 (dd, 1H), 7.31 (t, 1H), 7.72 (dd, 1H), 8.05 (dd, 1H).
【0139】
実施例5A
2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−カルボアルデヒド
【化41】

2−メチル−8−[(1E)−プロプ−1−エン−1−イル]−4H−クロメン−4−オン18.5g(62.8mmol)を、ジクロロメタン400mlに溶解し、−60℃に冷却する。オゾンを反応溶液に30分間通気する。次いで、硫化ジメチルを反応混合物に添加する。室温に温めた後、溶媒を真空で除去し、残渣を少量のメタノールでスラリー化する。濾過後に残っている固体をジエチルエーテルから再結晶する。表題化合物9.1g(理論値の77.4%)を得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.31 分; [M+H]+ = 189
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 2.48 (s, 3H), 6.27 (s, 1H), 7.51 (m, 1H), 8.21 (dd, 1H), 8.46 (dd, 1H), 10.67 (s, 1H).
【0140】
実施例6A
3−[(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)メチレン]ペンタン−2,4−ジオン
【化42】

無水ジクロロメタン400ml中の2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−カルボアルデヒド20g(106mmol)、2,4−ペンタンジオン12ml(116mmol)、酢酸9.1ml(159mmol)およびピペリジン0.21ml(2.1mmol)を、水トラップを用いて、還流下、24時間撹拌する。冷却後、反応溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。残渣をイソプロパノールから再結晶する。表題化合物24.3g(理論値の73%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 4): Rt = 1.91 分; [M+H]+ = 271
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 2.24 (s, 3H), 2.44 (s, 3H), 2.54 (s, 3H), 6.33 (s, 1H), 7.49 (t, 1H), 7.64 (dd, 1H), 7.97 (s, 1H), 8.07 (dd, 1H).
【0141】
実施例7A
エチル2−[(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)メチレン]−3−オキソブタノエート
【化43】

無水ジクロロメタン50ml中の2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−カルボアルデヒド5g(26.57mmol)、エチル3−オキソブタノエート3.4ml(26.57mmol)、酢酸1.9ml(33.21mmol)およびピペリジン263μl(2.66mmol)を、水トラップを用いて、還流下、24時間撹拌する。冷却後、溶液をジクロロメタン(50ml)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。残渣をイソプロパノールから再結晶する。表題化合物7.63g(理論値の91%)をE/Z混合物として得る。
LC-MS (方法 3): Rt = 1.91 および 2.03 分; [M+H]+ = 301
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 1.04 (t, 1.5H), 1.28 (t, 1.5H), 2.34 (s, 1.5H), 2.42 (s, 1.5H), 2.49 (s, 1.5H), 2.55 (s, 1.5H), 4.14 (q, 1H), 4.29 (q, 1H), 6.32 (s, 0.5H), 6.33 (s, 0.5H), 7.47 (t, 0.5H), 7.52 (t, 0.5H), 7.65 (dd, 0.5H), 7.65 (dd, 0.5H), 7.98 (s, 0.5H), 8.07 (dd, 0.5H), 8.08 (s, 0.5H), 8.09 (dd, 0.5H).
【0142】
実施例8A
4−ブロモ−2−(トリフルオロメトキシ)ベンズアルデヒド
【化44】

4−ブロモ−2−(トリフルオロメトキシ)ヨードベンゼン20.00g(54.51mmol)を、THF200mlに溶解し、−78℃に冷却する。次いで、2.5M n−ブチルリチウムのヘキサン溶液26.16ml(65.41mmol)を滴下して添加する。混合物を30分間撹拌し、次いでN−ホルミルモルホリン14.43g(125.37mmol)を量り入れる。完全な変換が検出された後(TLCチェック)、加溶媒分解を−78℃でイソプロパノールを用いて実施する。室温に温め、続いて水を添加し、ジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去する。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル5:1)により精製する。表題化合物11.43g(理論値の78%)を得る。
GC-MS (方法 7): Rt = 4.24 分; MS (EIpos): m/z = 270 [M+H]+
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 7.85-7.92 (m, 3H), 10.20 (s, 1H).
【0143】
実施例9A
4−ホルミル−3−(トリフルオロメトキシ)ベンゾニトリル
【化45】

4−ブロモ−2−(トリフルオロメトキシ)ベンズアルデヒド10.63g(39.51mmol)、シアン化亜鉛3.43g(29.24mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)1.37g(1.19mmol)を、DMF80mlに溶解する。次いで、反応混合物を、数回に分けて、シングルモードのマイクロ波(Emrys Optimizer、5分、220℃)中で反応させる。合わせた混合物を水と混合し、トルエンで2回抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル10:1)により精製する。表題化合物3.32g(理論値の78%)を、純度80%(LC−MSによる)で得る。
MS (EIpos): m/z = 215 [M]+
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 7.85-7.91 (m, 3H), 10.20 (s, 1H).
【0144】
実施例10A
ナトリウム1−シアノプロプ−1−エン−2−オラート
【化46】

ナトリウム(7.69g、335mmol)を、無水メタノール350mlに数回に分けて導入する。反応混合物を25℃に冷却した後、5−メチルイソオキサゾール(27.8g、335mmol)をゆっくりと数回に分けて添加する(発熱反応)。添加の完了後、混合物をRTで4時間撹拌し、次いで濃縮する。残渣を少量のジエチルエーテルで洗浄し、吸引濾過し、オイルポンプの真空下で乾燥する。表題化合物32.0g(理論値の91%)を得る。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 3.18 (s, 1H), 1.51 (s, 3H).
【0145】
実施例11A
4−シアノ−2−メトキシフェニルトリフルオロメタンスルホネート
【化47】

トリフルオロメタンスルホン酸無水物24ml(141mmol)を、ピリジン(80ml)中の4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾニトリル20g(134mmol)の溶液にゆっくりと滴下して添加し、氷浴を利用して反応温度を25℃より低く維持する。次いで、懸濁液をRTで1時間撹拌する。氷水(400ml)を添加し、室温に達するまで懸濁液をさらに撹拌する。次いでそれを濾過し、固体を酢酸エチルに溶解し、この溶液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。表題化合物37.13g(理論値の92%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 4): Rt = 2.54 分; MS (EIpos): m/z = 282 [M+H]+
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 3.97 (s, 3H), 7.60 (dd, 1H), 7.71 (d, 1H), 7.92 (d, 1H).
【0146】
実施例12A
tert−ブチル(2E)−3−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)アクリレート
【化48】

ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド4g(5.7mmol)を、DMF(250ml)中の4−シアノ−2−メトキシフェニルトリフルオロメタンスルホネート37.13g(132mmol)、tert−ブチルアクリレート35ml(245mmol)およびトリエチルアミン90ml(645mmol)の脱気した溶液に添加する。溶液を100℃で、保護ガス雰囲気下で、24時間撹拌する。次いで、氷水(1000ml)を添加し、懸濁液を酢酸エチル(3x100ml)で抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル10:1)で精製する。表題化合物24.6g(理論値の72%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 2.59 分; MS (EIpos): m/z = 260 [M+H]+
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 1.48 (s, 9H), 3.93 (s, 3H), 6.65 (d, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.74 (d, 1H), 7.89 (d, 1H).
【0147】
実施例13A
4−ホルミル−3−メトキシベンゾニトリル
【化49】

メタ過ヨウ素酸ナトリウム79g(370mmol)を、水/THF(2:1)750ml中のtert−ブチル(2E)−3−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)アクリレート48g(185mmol)、四酸化オスミウム207mg(0.81mmol)およびベンジルトリエチル塩化アンモニウム1.4g(6.14mmol)の激しく撹拌した溶液に数回に分けて添加し、反応温度を30℃より低く保つ。溶液をRTでさらに1時間撹拌する。水(2000ml)を添加し、次いで、混合物を濾過する。残っている固体を酢酸エチルに溶解し、溶液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。残渣を石油エーテルと撹拌する。表題化合物21.18g(理論値の71%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 4): Rt = 1.87 分; MS (EIpos): m/z = 162 [M+H]+
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 3.98 (s, 3H), 7.53 (d, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 10.37 (s, 1H).
【0148】
実施例14A
4−(2−アセチル−3−オキソブト−1−エン−1−イル)−3−メトキシベンゾニトリル
【化50】

乾燥ジクロロメタン400ml中の4−ホルミル−3−メトキシベンゾニトリル21g(130mmol)、2,4−ペンタンジオン14.7ml(143mmol)、酢酸11.2ml(195mmol)およびピペリジン2.6ml(26mmol)を、水トラップを用いて、還流下、24時間撹拌する。冷却後、反応溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。残渣をジエチルエーテルから再結晶する。表題化合物23.2g(理論値の92%)を淡い茶色の固体として得る。
LC-MS (方法 4): Rt = 2.05 分; [M+H]+ = 244
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 2.20 (s, 3H), 2.42 (s, 3H), 3.89 (s, 3H), 7.37 (d, 1H), 7.46 (dd, 1H), 7.60 (d, 1H), 7.68 (s, 1H).
【0149】
実施例15A
4−(2−アセチル−3−オキソブト−1−エン−1−イル)ベンゾニトリル
【化51】

無水ジクロロメタン40ml中の4−ホルミルベンゾニトリル2.3g(17.5mmol)、2,4−ペンタンジオン1.98ml(19.29mmol)、酢酸1ml(26mmol)およびピペリジン0.34ml(3.5mmol)を、水トラップを用いて、還流下、24時間撹拌する。冷却後、反応溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。残渣をジエチルエーテルから再結晶する。表題化合物3.18g(理論値の85%)を淡い茶色の固体として得る。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 2.26 (s, 3H), 2.46 (s, 3H), 7.60 (d, 2H), 7.76 (s, 1H), 7.93 (d, 2H).
【0150】
実施例16A
9−オキソ−9H−フルオレン−4−カルボアルデヒド
【化52】

メチル9−オキソ−9H−フルオレン−4−カルボキシレート(9.85g、41.3mmol)を、アルゴン下で無水THF180mlに導入する。RTで、RED−AL(登録商標)(38ml、136mmol)[ナトリウムビス−(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド、70%強度溶液、トルエン中]を、90分間かけて滴下して添加し、次いで、反応混合物を1時間撹拌する。水15mlを注意深く滴下して添加することにより、混合物を加水分解する。次いで、6N塩酸60mlを添加し、混合物を酢酸エチルで抽出する(4x各回150ml)。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し(2x各回100ml)、硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮する。対応するアルコール12.1gを得る。これの8.77g(41.3mmol)をジオキサン200mlに溶解し、活性化した二酸化マンガン(25.1g、289mmol)を添加する。混合物をRTで1時間、次いで50℃で30分間撹拌する。酸化剤を吸引濾過し、フィルター上の残渣をジオキサンで洗浄し(3x各回50ml)、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮する。得られる粗製物質をシリカゲルのクロマトグラフィー(移動相グラジエント:シクロヘキサン→シクロヘキサン/酢酸エチル3:1)により精製する。表題化合物6.50g(理論値の76%)を得る。
LC-MS (方法 5): Rt = 2.14 分; MS (ESIpos): m/z = 209 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.50 (dd, 1H), 7.62 (dd, 1H), 7.69 (m, 2H), 7.90 (d, 1H), 8.12 (d, 1H), 8.39 (d, 1H), 10.5 (s, 1H).
【0151】
実施例17A
3−オキソ−2−[(9−オキソ−9H−フルオレン−4−イル)メチレン]ブタンニトリル
【化53】

実施例11Aの化合物(5.21g、25.0mmol)を、ジクロロメタン180mlに導入し、実施例16Aの化合物(2.89g、27.5mmol)、酢酸(1.72ml、30.0mmol)およびピペリジン(0.25ml、2.50mmol)を添加する。混合物を沸点で、水トラップを用いて4時間撹拌する。RTに冷却し、続いてジクロロメタン30mlで希釈し、水で洗浄し(2x50ml)、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。得られる粗生成物をシリカゲル60のクロマトグラフィーにより、移動相としてジクロロメタンを用いて精製する。生成物画分を合わせ、溶媒を除去し、表題化合物5.40g(理論値の79%)をE/Z異性体の混合物として得る。
LC-MS (方法 5): Rt = 2.24 分; MS (ESIpos): m/z = 274 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 2.64 (s, 3H), 7.49 (t, 1H), 7.59 (t, 1H), 7.64 (d, 1H), 7.69 (d, 1H), 7.73 (d, 1H), 7.81 (d, 1H), 7.90 (d, 1H), 8.88 (s, 1H).
【0152】
実施例18A
6−エトキシピリミジン−2,4−ジアミン
【化54】

水素化ナトリウム(鉱油中60%、4.36mmol)174mgを、数回に分けて、アルゴン雰囲気下、激しく撹拌したDMF10ml中の2,6−ジアミノピリミジン−4−オール500mg(3.96mmol)の溶液に添加する。30分後、エチルトリフルオロメタンスルホネート700μl(5.15mmol)を滴下して添加し、溶液をさらに20分間撹拌する。次いで、メタノール(1ml)を反応混合物に添加し、それを分取HPLCにより直接精製する。生成物画分を合わせ、溶媒を除去し、表題化合物370mg(理論値の64%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 5): Rt = 2.24 分; MS (ESIpos): m/z = 155 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 1.21 (t, 3H), 4.12 (q, 2H), 5.00 (s, 1H), 5.87 (s, 2H), 6.01 (s, 2H).
【0153】
実施例19A
6−アセチル−7−メチル−5−(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化55】

3−[(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)メチレン]ペンタン−2,4−ジオン500mg(1.85mmol)を、6−アミノピリミジン−4(3H)−オン308mg(2.77mmol)と混合し、イソプロパノール10mlに溶解し、還流下、アルゴン下で2日間加熱する。次いで、混合物を濃縮し、残渣をメタノールから再結晶する。表題化合物341mg(理論値の51%)を黄色固体として得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.08 分; [M+H]+ = 364
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 2.12 (s, 3H), 2.30 (s, 3H), 2.36 (s, 3H), 5.49 (s, 1H), 6.18 (s, 1H), 7.33 (t, 1H), 7.66 (dd, 1H), 7.80 (dd, 1H), 7.91 (s, 1H), 9.35 (s, 1H), 11.95 (br. s, 1H).
【0154】
実施例20A
6−イソプロポキシピリミジン−2,4−ジアミン
【化56】

水素化ナトリウム(鉱油中60%、17.12mmol)634mgを、数回に分けて、アルゴン雰囲気下、激しく撹拌したDMF20ml中の2,6−ジアミノピリミジン−4−オール1.8g(14.27mmol)の溶液に添加する。30分後、臭化イソプロピル1.6ml(17.12mmol)を滴下して添加し、溶液を40℃で12時間撹拌する。次いで、メタノール(1mol)を反応混合物に添加し、それを分取HPLCにより直接精製する。生成物画分を合わせ、溶媒を除去し、表題化合物250mg(理論値の12%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 5): Rt = 2.31 分; MS (ESIpos): m/z = 169 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 1.31 (d, 6H), 5.22 (s, 1H), 5.25 (m, 1H), 6.19 (s, 2H), 7.25 (s, 2H).
【0155】
実施例21A
8−(6−アセチル−2−アミノ−4−ヒドロキシ−7−メチル−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−5−イル)−2−メチル−4H−クロメン−4−オン
【化57】

3−[(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)メチレン]ペンタン−2,4−ジオン500mg(1.85mmol)を、2,6−ジアミノピリミジン−4−オール349mg(2.77mmol)と混合し、イソプロパノール10mlに溶解し、還流下、アルゴン下で2日間加熱する。混合物を濾過し、残っている固体をイソプロパノールで洗浄する。表題化合物660mg(理論値の94%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.03 分; [M+H]+ = 379
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 2.08 (s, 3H), 2.27 (s, 3H), 2.36 (s, 3H), 5.34 (s, 1H), 6.17 (s, 1H), 6.28 (s, 2H), 7.30 (t, 1H), 7.62 (dd, 1H), 7.78 (dd, 1H), 9.25 (s, 1H), 10.22 (s, 1H).
【0156】
実施例22A
エチル2−(4−シアノ−2−メトキシベンジリデン)−3−オキソブタノエート
【化58】

乾燥ジクロロメタン70ml中の4−ホルミル−3−メトキシベンゾニトリル3g(18.61mmol)、エチル3−オキソブタノエート2.6ml(20.47mmol)、酢酸1.33ml(23.26mmol)およびピペリジン0.18ml(1.85mmol)を、水トラップを用いて、還流下、24時間撹拌する。冷却後、反応溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。残渣をジエチルエーテルから再結晶する。表題化合物5.01g(理論値の98%)を、E/Z異性体混合物として、淡い黄色の固体の形態で得る。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 1.11 (t, 2H), 1.26 (t, 1H), 2.31 (s, 1H), 2.42 (s, 2H), 3.88 (s, 1H), 3.90 (s, 2H), 4.16 (q, 1.3H), 4.25 (q, 0.7H), 7.38 (d, 0.35H), 7.42 (d, 0.75H), 7.45 (dd, 0.35H), 7.49 (dd, 0.65H), 7.60 (d, 0.35H), 7.62 (d, 0.65H), 7.67 (s, 0.35H), 7.80 (s, 0.65H).
【0157】
実施例23A
エチル2−(4−シアノ−2−メトキシベンジリデン)−4,4−ジエトキシ−3−オキソブタノエート
【化59】

ジクロロメタン20ml中のエチル4,4−ジエトキシ−3−オキソブタノエート[Johnson et al., J. Am. Chem. Soc. 41, 812 (1919)]618.2mg(2.83mmol)、4−ホルミル−3−メトキシベンゾニトリル500.0mg(2.58mmol)、酢酸232.0mg(3.86mmol)およびピペリジン43.9mg(0.51mmol)を、逆水トラップを用いて、還流下、終夜加熱する。冷却し、続いて水で2回洗浄し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル4:1)により精製する。表題化合物824mg(理論値の77.0%)を、E/Z異性体の混合物として得る。
LC-MS (方法 4): Rt = 2.63 分 および 2.69 分; [M-EtOH+H]+ (EIpos): m/z = 316.
【0158】
実施例24A
エチル5−アセチル−4−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−2−ホルミル−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキシレート
【化60】

エチル2−(4−シアノ−2−メトキシベンジリデン)−4,4−ジエトキシ−3−オキソブタノエート720mg(1.992mmol)を、イソプロパノール15mlに取り、4−アミノ−3−ペンタン−2−オン197.5mg(4.84mmol)を添加し、混合物を還流温度で終夜加熱する。次いで、混合物を濃縮し、残渣を分取HPLC(溶離剤:アセトニトリル/水、0.1%ギ酸を含む、グラジエント20:80→95:5)により精製する。エチル5−アセチル−4−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−2−(ジエトキシメチル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキシレート250mg(理論値の28.6%)を得る[LC-MS (方法 11): Rt = 2.48 分; [M+H]+ (EIpos): m/z = 443].
【0159】
かくして得られるジヒドロピリジンアセタール250mg(0.565mmol)を、アセトン7mlに取り、6N塩酸0.38mlを添加する。混合物を、室温で、完全な変換が検出されるまで(約2時間、TLCチェック)撹拌する。反応混合物を重炭酸ナトリウム溶液で中和し、アセトンをロータリーエバポレーターで除去する。酢酸エチルで3回抽出を実施し、合わせた有機相を重炭酸ナトリウム溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下で留去し、残渣を高真空下で乾燥する。表題化合物824mg(理論値の77.0%)を得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 2.00 分; [M+H]+ (EIpos): m/z = 369
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 1.21 (t, 3H), 2.18 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 4.17 (m, 2H), 5.37 (s, 1H), 7.12 (d, 1H), 7.33 (d, 1H), 7.43 (s, 1H), 9.06 (s, 1H), 10.90 (br. s, 1H).
【0160】
実施例25A
4−(3−アセチル−2−メチル−5−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリダジン−4−イル)−3−メトキシベンゾニトリル
【化61】

エチル5−アセチル−4−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−2−ホルミル−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキシレート208mg(0.565mmol)およびヒドラジン水和物41.5mg(0.830mmol)を、エタノール/酢酸(10:1)6.6mlに取り、100℃で5時間反応させる。揮発性成分をロータリーエバポレーターで除去し、残渣をアセトニトリルに取る。沈殿した生成物を濾過し、高真空下で乾燥する。表題化合物66mg(理論値の34.7%)を得る。
LC-MS (方法 4): Rt = 1.49 分; [M+H]+ (EIpos): m/z = 337
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 2.14 (s, 3H), 2.19 (s, 3H), 3.81 (s, 3H), 5.36 (s, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.31 (dd, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.64 (s, 1H), 9.51 (s, 1H), 12.47 (s, 1H).
【0161】
実施例26A
エチル4−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−2−メチル−5−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリダジン−3−カルボキシレート
【化62】

ジエチル4−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−2−ホルミル−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボキシレートを、実施例24Aの製造と同様にして、エチル3−アミノブト−2−エノエートおよびエチル2−(4−シアノ−2−メトキシベンジリデン)−4,4−ジエトキシ−3−オキソブタノエート(実施例23A)から得ることができる[Satoh et al., Chem. Pharm. Bull. 39, 3189-3201 (1991) も参照]。
【0162】
かくして製造されるホルミルジヒドロピリジン115.5mg(0.290mmol)およびヒドラジン水和物21.3mg(0.426mmol)を、エタノール/酢酸(10:1)6.6mlに取り、100℃で5時間反応させる。揮発性成分をロータリーエバポレーターで除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Biotage 40S カートリッジ、溶離剤:酢酸エチル)により精製する。生成物画分を濃縮し、残渣をジクロロメタンと撹拌し、沈殿した生成物を濾過し、黄色の結晶を高真空下で乾燥する。表題化合物67mg(理論値の63.0%)を得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.57 分; [M+H]+ (EIpos): m/z = 367
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 1.09 (t, 3H), 2.27 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 3.92 (m, 2H), 5.23 (s, 1H), 7.29 (s, 2H), 7.37 (s, 1H), 7.59 (s, 1H), 9.51 (s, 1H), 12.40 (s, 1H).
【0163】
例示的実施態様:
実施例1
8−(6−アセチル−4−エトキシ−7−メチル−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−5−イル)−2−メチル−4H−クロメン−4−オン
【化63】

6−アセチル−7−メチル−5−(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン140mg(0.38mmol)を、アルゴン雰囲気下、ジクロロメタン(7ml)に懸濁し、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート219mg(1.15mmol)を添加し、混合物をRTで12時間撹拌する。次いで、反応混合物をメタノールと混合し、濃縮する。残渣を分取HPLCにより精製し、表題化合物9mg(理論値の6%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.62 分; [M+H]+ = 392
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 1.05 (t, 3H), 2.14 (s, 3H), 2.35 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 4.15 (m, 2H), 5.65 (s, 1H), 6.22 (s, 1H), 7.34 (t, 1H), 7.66 (dd, 1H), 7.82 (dd, 1H), 8.25 (s, 1H), 10.06 (s, 1H).
【0164】
実施例2
6−アセチル−2−アミノ−7−メチル−5−(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−イルトリフルオロメタンスルホネート
【化64】

8−(6−アセチル−2−アミノ−4−ヒドロキシ−7−メチル−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−5−イル)−2−メチル−4H−クロメン−4−オン200mg(0.52mmol)を、ピリジン5mlに導入し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物188μl(1.057mmol)を添加し、混合物をRTで30分間撹拌する。次いで、混合物を濃縮し、残渣を分取HPLC(溶離剤:アセトニトリル/水、0.1%ギ酸を含む、グラジエント20:80→95:5)により精製する。表題化合物95mg(理論値の35%)を、淡い黄色の固体として得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.85 分; MS (EIpos): m/z = 510 [M+H]+
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 2.16 (s, 3H), 2.32 (s, 3H), 2.34 (s, 3H), 5.52 (s, 1H), 6.20 (s, 1H), 6.95 (s, 2H), 7.36 (t, 1H), 7.60 (dd, 1H), 7.84 (dd, 1H), 10.18 (s, 1H).
【0165】
実施例3
6−アセチル−7−メチル−5−(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4−イルトリフルオロメタンスルホネート
【化65】

6−アセチル−7−メチル−5−(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン50mg(0.13mmol)を、ピリジン2mlに導入し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物29μl(0.165mmol)を添加し、混合物をRTで30分間撹拌する。次いで、混合物を濃縮し、残渣を分取HPLC(溶離剤:アセトニトリル/水、0.1%ギ酸を含む、グラジエント20:80→95:5)により精製する。表題化合物31mg(理論値の45%)を、淡い黄色の固体として得る。
LC-MS (方法 2): Rt = 2.31 分; MS (EIpos): m/z = 496 [M+H]+
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 2.21 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 2.36 (s, 3H), 5.79 (s, 1H), 6.21 (s, 1H), 7.38 (t, 1H), 7.68 (dd, 1H), 7.88 (dd, 1H), 8.52 (s, 1H), 10.79 (s, 1H).
【0166】
実施例4
8−(6−アセチル−2−アミノ−4−エトキシ−7−メチル−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−5−イル)−2−メチル−4H−クロメン−4−オン
【化66】

3−[(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)メチレン]ペンタン−2,4−ジオン270mg(1mmol)および6−エトキシピリミジン−2,4−ジアミン170mg(1.1mmol)を、イソプロパノール5mlに溶解し、還流下、アルゴン下で2日間加熱する。次いで、混合物を濃縮し、残渣を分取HPLCにより精製する。表題化合物230mg(理論値の56%)を黄色固体として得る。
LC-MS (方法 3): Rt = 1.68 分; [M+H]+ = 407
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 1.00 (t, 3H), 2.09 (s, 3H), 2.31 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 4.04 (m, 2H), 5.48 (s, 1H), 6.18 (s, 2H), 6.21 (s, 1H), 7.32 (t, 1H), 7.59 (dd, 1H), 7.79 (dd, 1H), 9.49 (s, 1H).
【0167】
実施例5
8−(6−アセチル−2−アミノ−4−イソプロポキシ−7−メチル−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−5−イル)−2−メチル−4H−クロメン−4−オン
【化67】

3−[(2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イル)メチレン]ペンタン−2,4−ジオン100mg(0.37mmol)および6−イソプロポキシピリミジン−2,4−ジアミン62mg(0.37mmol)を、イソプロパノール5mlに溶解し、還流下、アルゴン下で2日間加熱する。混合物を濾過し、残っている固体をイソプロパノールで洗浄する。表題化合物80mg(理論値の51%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.63 分; [M+H]+ = 421
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 0.66 (t, 3H), 1.19 (t, 3H), 2.08 (s, 3H), 2.30 (s, 3H), 2.40 (s, 3H), 5.01 (m, 1H), 5.44 (s, 1H), 6.15 (s, 2H), 6.22 (s, 1H), 7.32 (t, 1H), 7.58 (dd, 1H), 7.78 (dd, 1H), 9.46 (s, 1H).
【0168】
実施例6
2−アミノ−4−イソプロポキシ−7−メチル−5−(9−オキソ−9H−フルオレン−4−イル)−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−カルボニトリル
【化68】

3−オキソ−2−[(9−オキソ−9H−フルオレン−4−イル)メチレン]ブタンニトリル81mg(0.29mmol)を、6−イソプロポキシピリミジン−2,4−ジアミン50mg(0.29mmol)と共に、イソプロパノール5mlに溶解し、還流下、アルゴン下で6時間加熱する。懸濁液を冷却し、次いで、吸引濾過し、残っている固体をイソプロパノールで洗浄する。表題化合物74mg(理論値の59%)を、白色固体として得る。
LC-MS (方法 8): Rt = 4.29 分; [M+H]+ = 424
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 0.53 (d, 3H), 0.92 (d, 3H), 2.22 (s, 3H), 4.68 (s, 2H), 5.01 (m, 1H), 5.57 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 7.20 (t, 1H), 7.31 (t, 2H), 7.51 (t, 1H), 7.55 (d, 1H), 7.72 (d, 1H), 7.98 (d, 1H).
【0169】
実施例7
エチル4−アミノ−5−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−7−メチル−2−(メチルチオ)−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−カルボキシレート
【化69】

エチル2−(4−シアノ−2−メトキシベンジリデン)−3−オキソブタノエート740mg(2.70mmol)および2−(メチルチオ)ピリミジン−4,6−ジアミン422mg(2.70mmol)を、イソプロパノール5mlに溶解し、還流下、アルゴン下で12時間加熱する。混合物を濾過し、残っている固体をイソプロパノールで洗浄する。表題化合物395mg(理論値の35%)を白色固体として得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 2.06 分; [M+H]+ = 412
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 1.02 (t, 3H), 2.33 (s, 3H), 2.36 (s, 3H), 3.86 (q, 2H), 3.90 (s, 3H), 5.19 (s, 1H), 6.27 (s, 2H), 7.36 (s, 2H), 7.47 (s, 1H), 7.92 (dd, 1H), 9.58 (s, 1H).
【0170】
実施例8
4−(3−アセチル−5−エトキシ−2−メチル−1,4−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリダジン−4−イル)−3−メトキシベンゾニトリル
【化70】

4−(3−アセチル−2−メチル−5−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリダジン−4−イル)−3−メトキシベンゾニトリル65mg(0.193mmol)を、アルゴン雰囲気下、無水ジクロロメタン4mlおよびトリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート73.4mg(0.386mmol)と混合する。室温で2時間の反応時間の後(HPLCによる反応チェック)、変換は不完全なままである。さらに2当量のトリエチルオキソニウムテトラフルオロボレートを添加する。さらに3時間の反応時間の後、混合物をメタノール5mlおよび水0.5mlと混合し、再度2時間撹拌する。次いで、それを水20mlで希釈し、ジクロロメタンで3回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残渣を分取HPLC(溶離剤:アセトニトリル/水、0.1%ギ酸を含む、グラジエント20:80→95:5)により精製する。表題化合物8mg(理論値の11.3%)を得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.68 分; [M+H]+ (EIpos): m/z = 365
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 1.20 (t, 3H), 2.11 (s, 3H), 2.28 (s, 3H), 3.84 (s, 3H), 4.27 (m, 2H), 5.47 (s, 1H), 7.26 (d, 1H), 7.31 (dd, 1H), 7.41 (d, 1H), 8.48 (s, 1H), 9.66 (s, 1H).
【0171】
実施例9
エチル4−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−5−エトキシ−2−メチル−1,4−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリダジン−3−カルボキシレート
【化71】

エチル4−(4−シアノ−2−メトキシフェニル)−2−メチル−5−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロピリド[2,3−d]ピリダジン−3−カルボキシレート50mg(0.136mmol)を、アルゴン雰囲気下、無水ジクロロメタン5mlおよびトリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート51.8mg(0.273mmol)と混合する。室温で2時間の反応時間の後、混合物をメタノール5mlおよび水0.5mlと混合し、再度1時間撹拌する。次いで、それを水20mlで希釈し、ジクロロメタンで3回抽出する。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残渣を分取HPLC(溶離剤:アセトニトリル/水、0.1%ギ酸を含む、グラジエント20:80→95:5)により精製する。表題化合物15mg(理論値の27.8%)を得る。
LC-MS (方法 1): Rt = 1.97 分; [M+H]+ (EIpos): m/z = 395
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 1.06 (t, 3H), 1.17 (t, 3H), 2.33 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 3.90 (q, 2H), 4.24 (m, 2H), 5.36 (s, 1H), 7.29 (m, 2H), 7.36 (s, 1H), 8.45 (s, 1H), 9.66 (s, 1H).
【0172】
B. 薬理活性の評価
略号:
【表2】

【0173】
本発明の化合物の有利な薬理特性を、以下のアッセイで示すことができる:
1. 他のステロイドホルモン受容体と比較して阻害性MR活性およびMR選択性を測定するための細胞のインビトロアッセイ
ヒト鉱質コルチコイド受容体(MR)のアンタゴニストは同定されており、組換え細胞株を利用して本明細書に記載の化合物の活性を定量する。この細胞は、元々、ハムスターの卵巣上皮細胞に由来する(Chinese Hamster Ovary, CHO K1, ATCC: American Type Culture Collection, VA 20108, USA)。
【0174】
ヒトステロイドホルモン受容体のリガンド結合ドメインが酵母転写因子GAL4のDNA結合ドメインに融合されている、確立されたキメラ系を、このCHO K1細胞株で使用する。かくして産生されたGAL4−ステロイドホルモン受容体キメラは、CHO細胞中の受容体コンストラクトと同時形質移入され、安定に発現される。
【0175】
クローニング:
GAL4−ステロイドホルモン受容体キメラを生成させるために、ベクターpFC2dbd(Stratagene より)のGAL4 DNA結合ドメイン(アミノ酸1−147)を、PCRで増幅された鉱質コルチコイド受容体(MR、アミノ酸734−985)、糖質コルチコイド受容体(GR、アミノ酸443−777)、プロゲステロン受容体(PR、アミノ酸680−933)およびアンドロゲン受容体(AR、アミノ酸667−919)のリガンド結合ドメインと共に、ベクターpIRES2(Clontech より)にクローニングする。チミジンキナーゼプロモーターの上流に5コピーのGAL4結合部位を含む受容体コンストラクトは、活性化およびGAL4−ステロイドホルモン受容体キメラの結合の後、各々の特異的アゴニストのアルドステロン(MR)、デキサメタゾン(GR)、プロゲステロン(PR)およびジヒドロテストステロン(AR)により、ホタル−ルシフェラーゼ(フォチナス・フィラリス(Photinus pyralis))の発現を導く。
【0176】
アッセイ方法:
MR、GR、PRおよびAR細胞を、96(または384または1536)ウェルマイクロタイタープレート中の培地(Optimem、2.5%FCS、2mMグルタミン、10mM HEPES)に、アッセイ前日に播き、細胞インキュベーター中で維持する(湿度96%、5%v/vCO、37℃)。アッセイ当日に、被験物質を上述の培地に取り、細胞に添加する。試験物質添加の約10ないし30分後、ステロイドホルモン受容体の各々の特異的アゴニストを添加する。さらに5ないし6時間のインキュベーション時間の後、ビデオカメラを利用してルシフェラーゼ活性を測定する。物質濃度の関数として測定される相対的光量単位は、S字型刺激曲線をもたらす。GraphPad PRISM コンピュータープログラム (Version 3.02) を利用してIC50値を算出する。
MRアッセイにおいて、本発明の化合物は、20−250nMの範囲のIC50値を有する。
【0177】
2. 存在し得るL型カルシウムチャネルへの結合活性を測定するためのインビトロアッセイ
Wistar ラットの大脳皮質の膜調製物を、標準的アッセイとして文献に詳述されている放射能結合アッセイの出発材料として供し [Ehlert, F.J., Roeske, W.R., Itoga E., Yamamura, H.I., Life Sci. 30, 2191-2202 (1982); Gould, R.J., Murphy, K.M.M., Snyder, S.H., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 79, 3656-3660]、商業的なサービス提供業者(例えば、MDS Pharma Services)による受託調査に使用する。この結合アッセイでは、試験化合物のDMSO中の連続希釈物を、膜調製物およびトリチウム標識リガンドのニトレンジピン(0.1nM)と共に、50mM TrisHClバッファー(pH7.7)中、25℃で、典型的には90分間インキュベートし、特異的に置き換えられた放射性標識リガンドを定量することにより、試験化合物の特異的結合を測定する。非線形回帰分析によりIC50値を決定する。
【0178】
このL型カルシウムチャネル結合アッセイで、通常のジヒドロピリジン型のカルシウムアンタゴニスト、例えばニトレンジピンについて測定されるIC50値は0.3nMであり、一方、本明細書に記載の本発明の化合物の調査した実施例のIC50値は、150nMであり、従って、L型カルシウムチャネルについて示された親和性は、少なくとも500倍減少している。L型カルシウムチャネルに対してそのような低い残留結合親和性を有する化合物は、一般的に、もはやL型カルシウムチャネルにより媒介される明白な血行動態的作用をインビボで示さない。
【0179】
3. 心血管効果を検出するためのインビボアッセイ:代謝ケージ中の覚醒ラットに対する利尿調査
Wistar ラット(体重250−350g)を、飼料(Altromin)および飲用水に自由に接近させて飼育する。試験開始の約72時間前から、動物は通常の飼料の代わりに、塩化ナトリウム含有量0.02%の低塩の飼料(ssniff R/M-H、10 mm、0.02% Naを含む、S0602-E081、ssniff Spezialdiaeten GmbH, D-59494 Soest)を専ら受容する。試験中、この体重クラスのラットに適する代謝ケージ(Tecniplast Germany GmbHより, D-82383 Hohenpeissenberg)中で動物を一匹ずつ飼育し、約24時間にわたり低塩飼料および飲料水に自由に接近させる。試験開始時に、胃管栄養法を利用して、0.5ml/体重kgの量の適する溶媒中で、被験物質を胃に投与する。対照動物は、溶媒のみを受容する。対照および物質の試験を、同日に並行して実施する。対照群および物質投与群は、各々3匹ないし6匹の動物からなる。試験中に、動物により排出される尿を、ケージの底のレシーバーに継続的に回収する。単位時間当たりの尿量を、各動物につき個別に測定し、尿中の排出されるナトリウムおよびカリウムイオンの濃度を、炎光光度法の標準的方法により測定する。これらの測定値から、物質の効果の尺度として、ナトリウム/カリウム比を算出する。測定間隔は、典型的には試験開始後8時間まで(日中の間隔)および試験開始後8ないし24時間の期間(夜間の間隔)である。改変された試験計画では、日中の間隔の間、2時間の間隔で尿を回収し、測定する。この目的で十分な量の尿を得るために、試験開始時に、次いで2時間の間隔で、動物は定められた量の水を胃管栄養法により受容する。
【0180】
4. DOCA/塩モデル
ラットでの高塩食餌および一側性腎臓除去の組合せにおける酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)の投与は、比較的低いレニンレベルを特徴とする高血圧を誘導する。この内分泌性高血圧(DOCAはアルドステロンの直接の前駆物質である)の結果として、選択されるDOCA濃度に応じて、心肥大およびさらなる末端器官の損傷(例えば腎臓の)があり、それは、とりわけ、タンパク尿および糸球体硬化を特徴とする。従って、このラットモデルで、抗肥大的効果および末端器官保護効果の存在について、試験物質を調査することが可能である。
【0181】
約8週齢(体重250ないし300g)の雄の Sprague-Dawley (SD) ラットが、左の一側性腎摘出を受ける。この目的で、66%NOおよび33%Oの混合物中の1.5−2%イソフルランでラットを麻酔し、側腹部の切開により腎臓を除去する。腎臓が除去されない、いわゆる偽手術された動物は、後で対照動物として役立つ。
【0182】
一側性腎摘出されたSDラットは、飲用水中の1%塩化ナトリウム、および、肩甲骨間に注射される酢酸デオキシコルチコステロン(ゴマ油に溶解;Sigmaより)の皮下注射を週に1回受容する(高用量:100mg/kg/週s.c.;通常用量:30mg/kg/週s.c.)。
【0183】
インビボでの保護効果について調べようとする物質を、胃管栄養法により、または、飼料(Ssniffより)を介して、投与する。試験開始の前日に、動物をランダム化し、同一の動物数(通常n=10)の群に割り当てる。試験を通して、飲用水および飼料は、動物にとって自由に利用可能である。4−8週にわたり、飼料を介して、または、胃管栄養法により1日1回、物質を投与する。プラセボ群として役立つ動物は、同じ方法で処置するが、溶媒のみ、または、試験物質を含まない飼料のいずれかを受容する。
【0184】
血行動態パラメーター[血圧、心拍数、変力作用(dp/dt)、緩和時間(tau)、最大左室圧、左室拡張末期圧(LVEDP)]を測定し、心臓、腎臓および肺の重量を決定し、タンパク質排出を測定し、心臓組織からのRNA単離後に、RT/TaqMan PCR を利用してバイオマーカー(例えば、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)およびBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド))の遺伝子発現を測定することにより、試験物質の効果を決定する。
【0185】
統計的分析は、均一性についての分散の事前調査後に、スチューデントのt検定を使用して行う。
【0186】
C. 医薬組成物の例示的実施態様
本発明の化合物は、以下の方法で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明の化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)(BASF Co., Ludwigshafen, Germany)10mgおよびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg、直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明の化合物、ラクトースおよびデンプンの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。乾燥後、顆粒をステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を通常の打錠機で打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のためのガイドラインの打錠力は、15kNである。
【0187】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明の化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMC のキサンタンガム、Pennsylvania, USA)400mgおよび水99g。
経口懸濁剤10mlは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明の化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。混合物を、Rhodigelの膨潤が完了するまで、約6時間撹拌する。
【0188】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明の化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明による化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明の化合物を、ポリエチレングリコールとポリソルベートの混合物中に撹拌しながら懸濁する。本発明による化合物が完全に溶解するまで、撹拌過程を継続する。
【0189】
i.v.液剤:
本発明の化合物を、生理的に耐容される溶媒(例えば、等張生理食塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に、飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、パイロジェンを含まない注射容器に充填するのに使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Dは、NまたはC−R
{式中、Rは、水素、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、(C−C)−アルキルチオ、アミノ、モノ−(C−C)−アルキルアミノまたはジ−(C−C)−アルキルアミノである}
であり、
Eは、NまたはC−R
{式中、Rは、水素または(C−C)−アルキルである}
であり、
ここで、DがC−Rであり、かつ、EがNであるか、または、DがNであり、かつ、EがC−Rであり、
Arは、式
【化2】

{式中、
*は、結合点であり、
は、水素またはハロゲンであり、
は、メチルまたはエチルであり、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチルまたは(C−C)−アルキルであり、
は、水素またはフッ素であり、
10は、ハロゲン、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり、
11は、シアノまたはニトロであり、
12は、水素、ハロゲン、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、(C−C)−アルキルチオまたはジ−(C−C)−アルキルアミノであり、該(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルキルチオラジカル中のアルキル基は、各場合で、3個までのフッ素により置換されていてもよいか、
または、フェニルであり、それは、ハロゲン、(C−C)−アルキルまたはトリフルオロメチルにより置換されていてもよく、
13は、水素、ハロゲンまたは(C−C)−アルキルであり、
Gは、CH、C−R10またはNであり、
そして、nは、0、1または2の数であり、
置換基R10が1個より多く存在する場合、その意味は同一であっても異なっていてもよい}
の基であり、
は、シアノ、ニトロまたは式−C(=O)−R14もしくは−C(=O)−O−R15
{式中、R14は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルまたは1個ないし3個のフッ素により置換されていてもよい)またはフェニル(ハロゲン、シアノ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシまたはトリフルオロメトキシにより置換されていてもよい)または(C−C)−シクロアルキルであり、
そして、R15は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルまたは1個ないし3個のフッ素により置換されていてもよい)または(C−C)−シクロアルキルである}
の基であり、
は、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、シクロプロピル、シクロブチル、(C−C)−アルコキシまたは(C−C)−アルキルチオであり、
そして、Rは、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、(C−C)−アルキルチオ、アミノ、モノ−(C−C)−アルキルアミノまたは式−O−SO−R16
{ここで、該(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルキルチオラジカルは、各場合で(C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよく、
そして、R16は、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−シクロアルキル、フェニルまたは、N、Oおよび/またはSの群から2個までのヘテロ原子を有する5員または6員のヘテロアリールであり、
フェニルおよびヘテロアリールは、1個または2個の同一かまたは異なるハロゲン、シアノ、ニトロ、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシおよび/またはトリフルオロメトキシにより各々置換されていてもよい}
の基である]
の化合物およびその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項2】
式中、
Dが、NまたはC−R
{式中、Rは、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、(C−C)−アルキルチオ、アミノ、モノ−(C−C)−アルキルアミノまたはジ−(C−C)−アルキルアミノである}
であり、
Eが、NまたはC−R
{式中、Rは、水素またはメチルである}
であり、
ここで、DがC−Rであり、かつ、EがNであるか、または、DがNであり、かつ、EがC−Rであり、
Arが、式
【化3】

{式中、
*は、結合点であり、
は、水素、フッ素、塩素またはシアノであり、
10は、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり、
11は、シアノまたはニトロであり、
12は、塩素、臭素、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシ、(C−C)−アルキルチオまたはトリフルオロメチルチオであり、
そして、nは、0または1の数である}
の基であり、
が、シアノ、アセチル、トリフルオロアセチルまたは式−C(=O)−O−R15
{式中、R15は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルまたは1個ないし3個のフッ素により置換されていてもよい)または(C−C)−シクロアルキルである}
の基であり、
が、メチルまたはトリフルオロメチルであり、
そして、Rが、アミノ、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメトキシまたは式−O−SO−R16
{ここで、R16は、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−シクロアルキル、フェニルまたはチエニルであり、
フェニルおよびチエニルは、1個または2個の同一かまたは異なるフッ素、塩素、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシおよび/またはトリフルオロメトキシにより各々置換されていてもよい}
の基である、
請求項1に記載の式(I)の化合物およびその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項3】
式中、
Dが、C−R
{式中、Rは、水素、アミノ、メトキシまたはメチルチオである}
であり、
EがNであり、
Arが、式
【化4】

{式中、
*は、結合点であり、
そして、R12は、エチル、メトキシまたはトリフルオロメトキシである}
の基であり、
が、シアノ、アセチル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルであり、
が、メチルまたはトリフルオロメチルであり、
そして、Rが、アミノ、(C−C)−アルコキシまたは式−O−SO−R16
{式中、R16は(C−C)−アルキルである}
の基である、
請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物およびその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項4】
式(I−A)
【化5】

{式中、Ar、R、RおよびRは、請求項1または請求項2に記載の意味を有し、
そして、R3Aは、(C−C)−アルコキシ((C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよい)であるか、トリフルオロメトキシであるか、または、式−O−SO−R16(式中、R16は請求項1または請求項2に記載の意味を有する)の基である}
の化合物の製造方法であって、
式(II)
【化6】

(式中、Arは請求項1または請求項2に記載の意味を有する)
の化合物を、1段階(ワンポット反応)で、または、2段階の工程で、式(III)
【化7】

(式中、Rは上記の意味を有し、
そして、Tは、メチルまたはエチルである)
の化合物および式(IV)
【化8】

(式中、RおよびRは請求項1または請求項2に記載の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(V)
【化9】

(式中、Ar、R、R、RおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、後者を酸の存在下で加水分解し、式(VI)
【化10】

(式中、Ar、R、R、RおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、酸の存在下でヒドラジンと縮合し、式(VII)
【化11】

(式中、Ar、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、不活性溶媒中、必要に応じて塩基の存在下、式(VIII)の化合物または式(IX)のトリアルキルオキソニウム塩
【化12】

(式中、R17は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよい)であるか、または、トリフルオロメチルであり、
17Aは、メチルまたはエチルであり、
Qは、ハロゲン、メシレート、トシレートまたはトリフレートなどの脱離基であり、
そして、Zは、テトラフルオロボレートなどの非求核性陰イオンである)
でアルキル化し、式(I−A1)
【化13】

(式中、Ar、R、R、RおよびR17は、各々上記の意味を有する)
の化合物を得るか、または、式(VII)の化合物を、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(X)
【化14】

(式中、R16は請求項1または請求項2に記載の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(I−A2)
【化15】

(式中、Ar、R、R、RおよびR16は、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、必要に応じて、得られる式(I−A1)または(I−A2)の化合物を、当業者に知られている方法によりそれらのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離する、および/または、適当な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換することを特徴とする、方法。
【請求項5】
式(I−B)
【化16】

{式中、Ar、R、RおよびRは、請求項1ないし請求項3に記載の意味を有し、
そして、R3Bは、(C−C)−アルコキシまたは(C−C)−アルキルチオ(これらの各々は、(C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよい)であるか、または、トリフルオロメトキシ、アミノ、モノ−(C−C)−アルキルアミノもしくは式−O−SO−R16(式中、R16は請求項1ないし請求項3に記載の意味を有する)の基である}
の化合物の製造方法であって、
式(II)
【化17】

(式中、Arは請求項1ないし請求項3に記載の意味を有する)
の化合物を、式(XI)
【化18】

(式中、RおよびRは請求項1ないし請求項3に記載の意味を有する)
の化合物と縮合し、式(XII)
【化19】

(式中、Ar、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、後者を、
[B−1]不活性溶媒中、式(XIII)
【化20】

(式中、R3BおよびRは請求項1ないし請求項3に記載の意味を有する)
の化合物と反応させるか、または、
[B−2]先ず、不活性溶媒中、式(XIV)
【化21】

(式中、Rは請求項1ないし請求項3に記載の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(XV)
【化22】

(式中、Ar、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、後者を、不活性溶媒中、必要に応じて塩基の存在下、式(VIII)の化合物または式(IX)のトリアルキルオキソニウム塩
【化23】

(式中、R17は、(C−C)−アルキル((C−C)−シクロアルキルにより置換されていてもよい)であるか、または、トリフルオロメチルであり、
17Aは、メチルまたはエチルであり、
Qは、ハロゲン、メシレート、トシレートまたはトリフレートなどの脱離基であり、
そして、Zは、テトラフルオロボレートなどの非求核性陰イオンである)
でアルキル化し、式(I−B1)
【化24】

(式中、Ar、R、R、RおよびR17は、各々上記の意味を有する)
の化合物を得るか、または、式(XV)の化合物を、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(X)
【化25】

(式中、R16は請求項1ないし請求項3に記載の意味を有する)
の化合物と反応させ、式(I−B2)
【化26】

(式中、Ar、R、R、RおよびR16は、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、必要に応じて、得られる式(I−B)、(I−B1)または(I−B2)の化合物を、当業者に知られている方法によりそれらのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離する、および/または、適当な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換することを特徴とする、方法。
【請求項6】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
アルドステロン症、高血圧、慢性心不全、心筋梗塞の後遺症、肝硬変、腎不全および卒中の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と組み合わせて、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物を含む、医薬。
【請求項9】
ACE阻害剤、レニン阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、ベータ−遮断薬、アセチルサリチル酸、利尿剤、カリウム・サプリメント、カルシウム拮抗薬、スタチン類、ジギタリス(ジゴキシン)誘導体、カルシウム感受性増強薬、硝酸塩および抗血栓剤からなる群から選択される1種またはそれ以上のさらなる有効成分と組み合わせて、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物を含む、医薬。
【請求項10】
アルドステロン症、高血圧、慢性心不全、心筋梗塞の後遺症、肝硬変、腎不全および卒中の処置および/または予防用の、請求項8または請求項9のいずれかに記載の医薬。
【請求項11】
有効量の少なくとも1種の請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物、または、請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の医薬を使用することによる、ヒトおよび動物におけるアルドステロン症、高血圧、慢性心不全、心筋梗塞の後遺症、肝硬変、腎不全および卒中の処置および/または予防方法。

【公表番号】特表2009−539784(P2009−539784A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513573(P2009−513573)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004690
【国際公開番号】WO2007/140894
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】