5−ウンデセン酸の製造方法
【課題】従来より短工程で、六価クロム化合物などの毒性のある物質を使用しない、高収率で、実用的な(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を製造する方法を提供する。
【解決手段】(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドの懸濁溶液に塩基を加えて反応させ、続いてヘキサナールを加えることにより、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を製造する。必要に応じて、カラムクロマトグラフィーなどによる精製で純度を高めることができる。
【解決手段】(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドの懸濁溶液に塩基を加えて反応させ、続いてヘキサナールを加えることにより、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を製造する。必要に応じて、カラムクロマトグラフィーなどによる精製で純度を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒメマルカツオブシムシを誘引する物質である(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒメマルカツオブシムシ(学名:Anthrenus verbasci)は、日本を初め世界各地に生息し、その幼虫は、羊毛、絹織物、毛皮等の動物性繊維、乾物等の乾燥食品、動物の剥製や昆虫標本等を食害する。日本国内では通常年1回の発生で、幼虫で越冬し、3〜5月に蛹化し、5〜6月に成虫になる。成虫の発生及び飛来を予察することは、幼虫の被害を未然に防ぐために重要な手段となる。発生予察には、ヒメマルカツオブシムシに対して誘引効果のある性フェロモンを利用することが効果的であり、性フェロモンを使った発生予察用トラップが実用化されている。ヒメマルカツオブシムシの性フェロモンは、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸であることが知られている。
【0003】
(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の合成法として、
(1) ω−アセトキシアルカナールとトリフェニルホスホニウムブロミドを反応させ、続いて加水分解し、最後にジョーンズ試薬で酸化することにより3工程で合成する方法(非特許文献1)や、
(2) 2,3−ジヒドロピランを水和させ、続いてホスホランと反応させ、最後にジョーンズ試薬で酸化することにより3工程で合成する方法(非特許文献2)
などが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、公知技術である上記(1)及び(2)の合成法は、3工程もあり5−ウンデセン酸の実用的な製造には適さない。また、ジョーンズ試薬は、劇物で毒性の強い六価クロム化合物を含んでいるため、排出規制や環境保護の観点から実用的な合成法ではない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来より短工程で、六価クロム化合物などの毒性のある物質を使用しない、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の実用的で高収率な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることにより、1工程で(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、第一に、ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることにより、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を得ることを特徴とする、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法である。
第二に、前記塩基が、ソジウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、t−ブトキシカリウムの何れかであることを特徴とする、上記第一に記載の(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法である。
【0008】
以下、本発明にかかる(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明では、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドの懸濁溶液に塩基を加えて反応させ、続いてヘキサナールを加えることで、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を得ることができる。後処理としては、水で希釈して反応を終了させ、混合液をヘキサンで洗浄後、水層に塩酸を加えて、酸性にする。得られた水層をエーテルで抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、有機層を濃縮する。必要に応じて、カラムクロマトグラフィーなどによる精製で純度を高めることができる。
【0010】
塩基としては、一般的にn−ブチルリチウムや水素化ナトリウムが用いられるが、本発明においては、これらの塩基は不適であり、ソジウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)、t−ブトキシカリウム(t−BuOK)などが適している。
【0011】
原料のヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドは、それらの由来は問わないが、いずれも市販されているものが使用でき、入手も容易である。
【0012】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基と反応させるときの温度は、0℃から60℃で、好ましくは20℃から40℃である。ヘキサナールを加える時の温度は、−10℃から40℃で、好ましくは5℃から25℃である。
【0013】
溶媒は、反応の進行を妨げるもの以外の溶媒であればいずれのものでも使用でき、具体的にはテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド等が好適である。
【0014】
反応は、不活性ガス雰囲気下で行なうことが望ましい。
【0015】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドの使用量は、ヘキサナールに対してモル比で1当量以上であれば問題なく反応するが、収率をあげる為には1.5から2当量使用することが望ましい。
【0016】
塩基の使用量は、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドに対して、モル比で2当量以上必要であり、2.0から2.5当量が好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることにより、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を、1工程で、六価クロム化合物などの有毒物質を使用することなく、高収率で、実用的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(8.9g)のTHF(50ml)懸濁液に、室温下でNaHMDS(1.0M THF溶液)(40ml)を加えた。30分間攪拌後、ヘキサナール(1.0g)のTHF(2ml)溶液を滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌し、水で希釈し反応を終了させ、ヘキサンで洗浄後、水層に塩酸を加えて、酸性にした。水層をエーテルで3回抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過し、減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の混合物(1.6g、収率87%)が得られた。ガスクロマトグラフィーを使った分析により、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の比率は90:10であった。
【実施例2】
【0020】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(5.0g)のTHF(20ml)懸濁液に、室温下でLiHMDS(1.0M THF溶液)(23ml)を加えた。30分間攪拌後、ヘキサナール(0.56g)のTHF(1ml)溶液を滴下した。以下、実施例1と同様の操作を行い、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の混合物(0.91g、収率87%)が得られた。ガスクロマトグラフィーを使った分析により、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の比率は73:27であった。
【実施例3】
【0021】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(10g)のTHF(20ml)懸濁液に、室温下でt−BuOK(5.1g)を加えた。30分間攪拌後、ヘキサナール(1.5g)のTHF(2ml)溶液を滴下した。以下、実施例1と同様の操作を行い、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の混合物(2.38g、収率86%)が得られた。ガスクロマトグラフィーを使った分析により、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の比率は90:10であった。
【0022】
[比較例1]
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(8.9g)のTHF(50ml)懸濁液に、0℃で水素化ナトリウム(1.6g)を加えた。室温で30分間攪拌後、ヘキサナール(1.0g)のTHF(2ml)溶液を滴下した。以下、実施例1と同様の操作を行ったが、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸は得られなかった。
【0023】
[比較例2]
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(8.9g)のTHF(50ml)懸濁液に、0℃でn−ブチルリチウム(1.65M ヘキサン溶液)(24ml)を加えた。30分間攪拌後、ヘキサナール(1.0g)のTHF(2ml)溶液を滴下した。以下、実施例1と同様の操作を行い、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の混合物(0.26g、収率7%)が得られた。ガスクロマトグラフィーを使った分析により、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の比率は69:31であった。
【0024】
以上の実施例より、ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることで、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を、1工程で、六価クロム化合物などの有毒物質を使用することなく、実用的に製造することができることがわかる。また、収率も高く、非常に効率の良い製造方法であることがわかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Appl. Ent. Zool.、 第20巻、第3号、354―356頁、1985年
【非特許文献2】Agric. Biol. Chem.、 第53巻、第5号、1439―1440頁、1989年
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒメマルカツオブシムシを誘引する物質である(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒメマルカツオブシムシ(学名:Anthrenus verbasci)は、日本を初め世界各地に生息し、その幼虫は、羊毛、絹織物、毛皮等の動物性繊維、乾物等の乾燥食品、動物の剥製や昆虫標本等を食害する。日本国内では通常年1回の発生で、幼虫で越冬し、3〜5月に蛹化し、5〜6月に成虫になる。成虫の発生及び飛来を予察することは、幼虫の被害を未然に防ぐために重要な手段となる。発生予察には、ヒメマルカツオブシムシに対して誘引効果のある性フェロモンを利用することが効果的であり、性フェロモンを使った発生予察用トラップが実用化されている。ヒメマルカツオブシムシの性フェロモンは、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸であることが知られている。
【0003】
(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の合成法として、
(1) ω−アセトキシアルカナールとトリフェニルホスホニウムブロミドを反応させ、続いて加水分解し、最後にジョーンズ試薬で酸化することにより3工程で合成する方法(非特許文献1)や、
(2) 2,3−ジヒドロピランを水和させ、続いてホスホランと反応させ、最後にジョーンズ試薬で酸化することにより3工程で合成する方法(非特許文献2)
などが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、公知技術である上記(1)及び(2)の合成法は、3工程もあり5−ウンデセン酸の実用的な製造には適さない。また、ジョーンズ試薬は、劇物で毒性の強い六価クロム化合物を含んでいるため、排出規制や環境保護の観点から実用的な合成法ではない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来より短工程で、六価クロム化合物などの毒性のある物質を使用しない、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の実用的で高収率な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることにより、1工程で(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、第一に、ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることにより、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を得ることを特徴とする、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法である。
第二に、前記塩基が、ソジウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、t−ブトキシカリウムの何れかであることを特徴とする、上記第一に記載の(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法である。
【0008】
以下、本発明にかかる(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明では、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドの懸濁溶液に塩基を加えて反応させ、続いてヘキサナールを加えることで、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を得ることができる。後処理としては、水で希釈して反応を終了させ、混合液をヘキサンで洗浄後、水層に塩酸を加えて、酸性にする。得られた水層をエーテルで抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、有機層を濃縮する。必要に応じて、カラムクロマトグラフィーなどによる精製で純度を高めることができる。
【0010】
塩基としては、一般的にn−ブチルリチウムや水素化ナトリウムが用いられるが、本発明においては、これらの塩基は不適であり、ソジウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)、t−ブトキシカリウム(t−BuOK)などが適している。
【0011】
原料のヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドは、それらの由来は問わないが、いずれも市販されているものが使用でき、入手も容易である。
【0012】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基と反応させるときの温度は、0℃から60℃で、好ましくは20℃から40℃である。ヘキサナールを加える時の温度は、−10℃から40℃で、好ましくは5℃から25℃である。
【0013】
溶媒は、反応の進行を妨げるもの以外の溶媒であればいずれのものでも使用でき、具体的にはテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド等が好適である。
【0014】
反応は、不活性ガス雰囲気下で行なうことが望ましい。
【0015】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドの使用量は、ヘキサナールに対してモル比で1当量以上であれば問題なく反応するが、収率をあげる為には1.5から2当量使用することが望ましい。
【0016】
塩基の使用量は、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドに対して、モル比で2当量以上必要であり、2.0から2.5当量が好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることにより、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を、1工程で、六価クロム化合物などの有毒物質を使用することなく、高収率で、実用的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(8.9g)のTHF(50ml)懸濁液に、室温下でNaHMDS(1.0M THF溶液)(40ml)を加えた。30分間攪拌後、ヘキサナール(1.0g)のTHF(2ml)溶液を滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌し、水で希釈し反応を終了させ、ヘキサンで洗浄後、水層に塩酸を加えて、酸性にした。水層をエーテルで3回抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過し、減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の混合物(1.6g、収率87%)が得られた。ガスクロマトグラフィーを使った分析により、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の比率は90:10であった。
【実施例2】
【0020】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(5.0g)のTHF(20ml)懸濁液に、室温下でLiHMDS(1.0M THF溶液)(23ml)を加えた。30分間攪拌後、ヘキサナール(0.56g)のTHF(1ml)溶液を滴下した。以下、実施例1と同様の操作を行い、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の混合物(0.91g、収率87%)が得られた。ガスクロマトグラフィーを使った分析により、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の比率は73:27であった。
【実施例3】
【0021】
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(10g)のTHF(20ml)懸濁液に、室温下でt−BuOK(5.1g)を加えた。30分間攪拌後、ヘキサナール(1.5g)のTHF(2ml)溶液を滴下した。以下、実施例1と同様の操作を行い、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の混合物(2.38g、収率86%)が得られた。ガスクロマトグラフィーを使った分析により、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の比率は90:10であった。
【0022】
[比較例1]
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(8.9g)のTHF(50ml)懸濁液に、0℃で水素化ナトリウム(1.6g)を加えた。室温で30分間攪拌後、ヘキサナール(1.0g)のTHF(2ml)溶液を滴下した。以下、実施例1と同様の操作を行ったが、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸は得られなかった。
【0023】
[比較例2]
(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(8.9g)のTHF(50ml)懸濁液に、0℃でn−ブチルリチウム(1.65M ヘキサン溶液)(24ml)を加えた。30分間攪拌後、ヘキサナール(1.0g)のTHF(2ml)溶液を滴下した。以下、実施例1と同様の操作を行い、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の混合物(0.26g、収率7%)が得られた。ガスクロマトグラフィーを使った分析により、(Z)−5−ウンデセン酸と(E)−5−ウンデセン酸の比率は69:31であった。
【0024】
以上の実施例より、ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることで、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を、1工程で、六価クロム化合物などの有毒物質を使用することなく、実用的に製造することができることがわかる。また、収率も高く、非常に効率の良い製造方法であることがわかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Appl. Ent. Zool.、 第20巻、第3号、354―356頁、1985年
【非特許文献2】Agric. Biol. Chem.、 第53巻、第5号、1439―1440頁、1989年
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることにより、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を得ることを特徴とする、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法。
【請求項2】
前記塩基が、ソジウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、t−ブトキシカリウムの何れかであることを特徴とする、請求項1に記載の(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法。
【請求項1】
ヘキサナールと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを塩基存在下で反応させることにより、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸を得ることを特徴とする、(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法。
【請求項2】
前記塩基が、ソジウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、t−ブトキシカリウムの何れかであることを特徴とする、請求項1に記載の(Z)−5−ウンデセン酸及び(E)−5−ウンデセン酸の製造方法。
【公開番号】特開2012−111720(P2012−111720A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262685(P2010−262685)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(391020584)富士フレーバー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(391020584)富士フレーバー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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