説明

5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩共重合ポリ乳酸系樹脂及びその製造方法

【課題】 分散性をさらに向上させた5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩共重合ポリ乳酸系樹脂を提供する。
【解決手段】 開環重合触媒(A)、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を含有する組成物(B)、ラクチド(C)を含有する原料組成物(X)を加熱混合する工程を含み、前記組成物(B)が下記式(1)で示される5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩100重量部に対し、グリコール0.5〜6重量部を含有し、遷移金属含有量が0.0001重量部以下である組成物である、共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩基が共重合により分子鎖に導入されている共重合ポリ乳酸系樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題に対する意識の高まりから、天然素材または生分解性合成素材を利用した商品の開発が盛んに行われている。ポリ乳酸系樹脂についても各種用途開発が盛んに進められている。特に、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩の導入したポリ乳酸系樹脂は、無機顔料、着色顔料、フィラー等の分散性に優れ、塗料、コーティング材、インキ、接着剤、顔料マスターバッチ等への展開が進められている(たとえば特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、従来市販品として入手できる5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩は純度が低く、二量体や環状オリゴマー等の反応副生物およびエチレングリコール等の残留溶媒が含まれている。例えば5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩は市販品が入手できるが、残留溶媒や副生成物、環状化合物等の不純物が混入しており、純度は80〜85%程度である。これを共重合ポリ乳酸系の合成原料として用いると、ポリ乳酸系樹脂の一部の分子には5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩が導入されないものが必然的に生じ、ポリ乳酸系樹脂1分子あたりの5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩の導入率の向上には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−147248号公報
【特許文献2】特開2005−248139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、分散性をさらに向上させた5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩共重合ポリ乳酸系樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
現状の5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩共重合ポリ乳酸系樹脂であっても顔料等の高い分散性およびPETフィルム等への高い密着性を示すことが既に知られているが、ポリ乳酸系樹脂1分子あたりの5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩の導入率をさらに向上させることにより、更なる分散性および密着性の向上がもたらされることが期待できるものと考えられる。本発明者らは、鋭意検討した結果、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を含むグリコール溶液から再結晶により特定の高純度の5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を製造することができることを見い出し、更に、これを用いて共重合ポリ乳酸系樹脂を製造することによって従来品よりも高い分散性を示す共重合ポリ乳酸系樹脂を得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の構成よりなる。
(1) 開環重合触媒(A)、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を含有する組成物(B)、ラクチド(C)を含有する原料組成物(X)を加熱混合する工程を含み、
前記組成物(B)が下記式(1)で示される5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩100重量部に対し、グリコール0.5〜6重量部を含有し、遷移金属含有量が0.0001重量部以下である組成物である、
共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【化1】

但し、式(1)中、Rは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基、Mn+はn価のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン、nは1または2の整数をそれぞれ示す。
(2) 前記原料組成物(X)がさらに共重合成分(D)を含有し、
前記共重合成分(D)が、
水酸基を有する化合物(D1)、
カルボン酸エステル基を有する環状オリゴマーである化合物(D2)、
の少なくともいずれか1種以上からなる、(1)に記載の共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。
(3) 前記化合物(D2)が乳酸以外のヒドロキシカルボン酸の環状二量体および/またはカプロラクトンである請求項2に記載の共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。
(4) 前記遷移金属がMnである請求項1〜3いずれかに記載の共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。
(5) 請求項1〜4いずれかの製造方法で得られた共重合ポリ乳酸系樹脂。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来から市販されている低純度の5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を用いて製造された共重合ポリ乳酸系樹脂よりも分散性に優れた共重合ポリ乳酸系樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、開環重合触媒(A)、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を含有する組成物(B)、ラクチド(C)を含有し、更に共重合成分(D)を含有していても良い原料組成物(X)を加熱混合する工程を含み、前記組成物(B)が式(1)で示される5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩100重量部に対し、グリコール0.5〜6重量部を含有し、遷移金属含有量は0.0001重量部以下である組成物である、共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法、およびこの製造方法によって得られる共重合ポリ乳酸系樹脂に関する。
【0011】
本発明の開環重合触媒(A)は、ラクチドの開環重合に対して触媒作用をもつ従来公知の触媒のいずれか1種あるいは2種以上の混合物であり、好ましい例として、オクチル酸スズ、アルミニウムアセチルアセトナートを挙げることができる。
【0012】
本発明の組成物(B)は、下記式(1)で示される5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を含有する。
【0013】
【化1】

【0014】
式(1)において、Rは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を示し、Mn+はLi、Na、K、Mg等の1価または2価の金属イオンを示す。また、Mn+はLi、Na、Kの1価の金属イオンであることが顔料分散性の面から好ましい。さらに、エステル交換性の点で、ヒドロキシアルキル基がヒドロキシエチル基、金属がアルカリ金属であるものが好ましく、5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩がより好ましい。
【0015】
本発明の組成物(B)は、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩100重量部に対し、グリコール0.5〜6重量部を含有し、遷移金属含有率が0.0001重量部以下である組成物である。
【0016】
本発明の組成物(B)は、例えば、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を30〜60重量%含むグリコール溶液から、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を再結晶することにより得ることができる。好ましくは30〜50重量%、より好ましくは30〜40重量%の5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を含む溶液からの再結晶を行うことにより、高純度の組成物(B)を得ることができる。
【0017】
本発明の組成物(B)の遷移金属含有量は、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩100重量部に対して0.0001重量部以下である。遷移金属、例えばMnが検出可能な濃度で含まれていると結晶が生成しないため、再結晶法により高純度の5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を得ることができない。
【0018】
但し、本発明の組成物(B)は、再結晶法により精製されたものには限定されず、その他の公知の精製方法や重合方法によって得られらものであっても差し支えないことは言うまでもない。
【0019】
本発明のラクチド(C)としては、メソラクチド、D−ラクチド、L−ラクチドおよびDL−ラクチドのいずれか1種、あるいはこれらの2種以上の混合物、を使用することができる。
【0020】
本発明の共重合成分(D)は、本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂における、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩以外の共重合成分であり、水酸基を有する化合物(D1)、カルボン酸エステルエステル機を有する環状オリゴマーである化合物(D2)から選ばれる少なくとも1種以上からなる。
【0021】
本発明の化合物(D1)は水酸基を有する化合物であり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール化合物、ラクトース、トレハロース等の糖類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール化合物、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の分子の末端および/または側鎖に水酸基を有するポリマーおよびオリゴマーを例示することができる。本発明の化合物(D1)は、ラクチド(C)の開環重合の開始剤として作用し、共重合ポリ乳酸系樹脂の共重合成分となる。
【0022】
本発明の化合物(D2)は、カルボン酸エステル基を有する環状オリゴマーであり、数平均分子量500以下のものであって、ラクチド以外のものである。好ましい例としては、グリコリド等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状二量体、ε−カプロラクトン等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状自己縮合体が挙げられる。
【0023】
本発明の原料組成物(X)は、開環重合触媒(A)、組成物(B)、ラクチド(C)を必須成分とし、さらに共重合成分(D)およびその他の成分を含有していても良い。
【0024】
本発明の原料組成物(X)を加熱混合することによって、共重合ポリ乳酸系樹脂を製造することができる。加熱温度は140℃〜200℃であることが好ましく、加熱時間は1時間〜5時間であることが好ましい。
【0025】
本発明の原料組成物(X)を加熱混合する工程の開始前および/または工程の途中で一般式(2)および/または一般式(3)で表される有機リン化合物を添加することができ、得られる共重合ポリ乳酸系樹脂の耐加水分解性を向上させる等の効果が発揮される場合がある。
【0026】
【化2】

但し、一般式(2)においてR1は水素またはアルキル基、R2はアルキル基、R3は一価の有機基をあらわす。
【0027】
【化3】

但し、R1、R2、R3、R4は水素またはアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良く、nは1以上の整数を表す。
【0028】
本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法において、前記加熱混合工程よりも後に、減圧工程を行うことが好ましい。減圧工程では未反応のラクチドやその他揮発性成分が留去され、得られる共重合ポリ乳酸系樹脂の耐加水分解性を向上させる等の効果が発揮される場合がある。
【0029】
本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法において、前記加熱混合工程よりも後に、リン酸、ピロリン酸等のリン酸類、亜りん酸等の亜リン酸類、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート等のリン化合物に代表される、開環重合触媒(A)を失活させることのできる化合物を添加することができる。この操作により、得られる共重合ポリ乳酸系樹脂の耐加水分解性を向上させる等の効果が発揮される場合がある。
【0030】
本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂において、スルホン酸金属塩濃度は5〜150eq/106gの濃度範囲であることが好ましい。5eq/106g以下であると、良好な無機顔料、有機顔料等の分散性およびインキの安定性が得られない傾向にある。また、150eq/106gを超えると、樹脂溶液粘度が高くなりすぎて、塗料、インキ、接着剤などにおける良好なコーティング適性や良好な生分解性が得られない傾向にある。
【0031】
本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂の還元粘度は、0.1〜1.1dl/gの範囲であることが好ましい。還元粘度が0.1dl/gよりも低いと、塗料、インキ、接着剤等で使用する場合には塗膜物性が低下してしまい、問題が生じることがある。また、還元粘度が高すぎると、塗料、インキ、接着剤等で使用する場合には溶液粘度が増大し、良好なコーティング適性が得られないことがある。
【0032】
本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂を用いて顔料分散体を製造する場合、用いることのできる顔料は通常用いられるものであれば特に限定されず、たとえば、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、アルミニウム粉、雲母、チタン粉等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料各種の有機顔料等が挙げられる。これらは、1種類でも2種類以上でも用いることができる。
【0033】
本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂を用いて顔料分散体を製造する場合、溶剤を併用してもよい。この場合の溶剤としては、本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂の溶解性、作業性、乾燥速度等の点から、好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール等が用いられる。これらは、1種類でも2種類以上でも用いることができる。
【0034】
また、本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂を用いて顔料分散体を製造する場合、分散方法は従来公知の方法であれば特に限定されず、通常用いられる方法によって調製される。たとえば、上記乳酸系樹脂を上記溶剤に溶解させ、これに上記顔料を配合し、ボールミルやガラスビーズ等を用いて分散させる等の方法で製造することができる。
【0035】
ここで、上記各成分の配合量は、共重合ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、顔料を1〜1000質量部、溶剤を100〜2000質量部配合するのが好ましい。より好ましくは、乳酸系樹脂100質量部に対して、インキ顔料2〜500質量部であり、溶剤200〜1500質量部である。
【実施例】
【0036】
以下に実例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の主旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。なお、実施例中の純度、金属含有量、分散性は以下のように測定したものである。
【0037】
純度:生成物15mgをDMSO−d6 0.5mlに溶解し、400MHzの核磁気共鳴(NMR)スペクトル装置(Varian製)を用いて1H−NMR分析を行った。測定条件は、室温、d1=26sである。例えば、5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステル金属塩の場合、エチレングリコール残基のメチレン基に由来するプロトンの積分値とメチルエステルのメチル基に由来するプロトンの積分値から純度を算出した。
【0038】
金属含有量:白金るつぼに5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩1.0gを精秤した後、電気マッフル炉により550℃/8時間の条件で加熱した。加熱後、1.2M塩酸溶液20mlを加え、ICP測定用の試料溶液とした。ICP発光分析装置(島津製作所製、ICPS−2000)を用いて発光強度を測定し、金属含有量を定量化した。なお、今回用いた測定法による検出下限濃度は、1mg/kgである。
【0039】
還元粘度:共重合ポリ乳酸系樹脂をクロロホルムに濃度0.125g/25mlで溶解し、測定温度25℃で、ウベローデ粘度管を用いて測定した。
【0040】
分散性:共重合ポリ乳酸系樹脂10部を酢酸エチル10部に溶解させ、カーボンブラック1部を加えガラスビーズを10部加えてペイントシェーカーにて6時間混合分散させた。ポリエステルフィルムに塗布し乾燥して得られた塗膜について、ハンディ光沢計グロスチェッカ(HORIBA製)で光沢度を測定した。
【0041】
(実施例1)
5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩を33重量%含むエチレングリコール溶液から再結晶により得た5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩を用いた。純度および金属含有量の結果をそれぞれ、表1、2に示す。
DL−ラクチド500部、5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩3.56部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去することによりポリ乳酸の主鎖中にスルホン酸金属塩を有する乳酸系樹脂を得た。還元粘度と分散性を評価した。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2)
5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩を33重量%含むエチレングリコール溶液から再結晶により得た5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩を用いた。純度および金属含有量の結果をそれぞれ、表1、2に示す。
L−ラクチド250部、DL−ラクチド250部、5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩3.56部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去することによりポリ乳酸の主鎖中にスルホン酸金属塩を有する乳酸系樹脂を得た。還元粘度と分散性を評価した。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例3)
5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩を33重量%含むエチレングリコール溶液から再結晶により得た5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩を用いた。純度および金属含有量の結果をそれぞれ、表1、2に示す。
L−ラクチド400部、D−ラクチド100部、5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩3.56部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去することによりポリ乳酸の主鎖中にスルホン酸金属塩を有する乳酸系樹脂を得た。還元粘度と分散性を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
市販品の5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩の純度および金属含有量の測定を行った。それぞれの結果を表1、2に示す。
DL−ラクチド500部、5−スルホイソフタル酸ジエチレングリコールエステルナトリウム塩3.56部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.1部を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で1時間加熱し、開環重合を進め、その後、残留ラクチドを減圧下留去することによりポリ乳酸の主鎖中にスルホン酸金属塩を有する乳酸系樹脂を得た。還元粘度と分散性を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
表1に示す結果の通り、本発明の共重合ポリ乳酸系樹脂は、分散性に優れることが明らかとなった。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によると、高純度の5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を共重合することで高分散性の共重合ポリ乳酸系樹脂が得られるため、短時間で分散でき、工程時間を短くできる。また、分散性に優れているため、長期間顔料が沈降せず、保存安定性に優れ、さらに、インキ、塗料として用いると、光沢に優れる塗膜を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開環重合触媒(A)、5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩を含有する組成物(B)、ラクチド(C)を含有する原料組成物(X)を加熱混合する工程を含み、
前記組成物(B)が下記式(1)で示される5−スルホイソフタル酸ジグリコールエステル金属塩100重量部に対し、グリコール0.5〜6重量部を含有し、遷移金属含有量が0.0001重量部以下である組成物である、
共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【化1】

但し、式(1)中、Rは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基、Mn+はn価のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン、nは1または2の整数をそれぞれ示す。
【請求項2】
前記原料組成物(X)がさらに共重合成分(D)を含有し、
前記共重合成分(D)が、
水酸基を有する化合物(D1)、
カルボン酸エステル基を有する環状オリゴマーである化合物(D2)、
の少なくともいずれか1種以上からなる、請求項1に記載の共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記化合物(D2)が乳酸以外のヒドロキシカルボン酸の環状二量体および/またはカプロラクトンである請求項2に記載の共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記遷移金属がMnである請求項1〜3いずれかに記載の共重合ポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの製造方法で得られた共重合ポリ乳酸系樹脂。

【公開番号】特開2011−132328(P2011−132328A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292090(P2009−292090)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】