説明

5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物およびその製造方法

【課題】直接的なトリフルオロメチル化法による、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法、および、当該化合物を提供する。
【解決手段】4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物と、(トリフルオロメチル)トリメチルシランとを、好ましくは相間移動触媒および塩基の存在下、溶液中で反応させると共に、必要に応じて反応後に酸処理を行うことにより、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物、および、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、5−トリフルオロメチル−2−イソキサゾリン化合物は、有害生物防除剤として注目を集めている。また、5−トリフルオロメチル−2−イソキサゾリン化合物は、医薬品や電子材料等の機能性材料の製造中間体としても有用な化合物である。その有用性から、従来、非常に多くの5−トリフルオロメチル−2−イソキサゾリン化合物が合成されている。しかしながら、全ての合成法が、予めトリフルオロメチル基を有した化合物を用いて合成するビルディングブロック法であり、トリフルオロメチル基を2−イソキサゾリン化合物に直接的に導入する合成法の報告例はない。即ち、従来の報告例は、ヒドロキサム酸ハライド類とトリフルオロメチル置換オレフィンとの環化反応(特許文献1,2,3)、および、β−トリフルオロメチル−α,β−不飽和カルボニル化合物とヒドロキシルアミンとの反応(特許文献4,5,6および非特許文献1)である。よって、トリフルオロメチル基を2−イソキサゾリン化合物に直接的に導入して、5−トリフルオロメチル−2−イソキサゾリン化合物を合成する方法の開発が望まれている。
【0003】
また、5−トリフルオロメチル−2−イソキサゾリン化合物の4位にニトロ基が導入された5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物は、これまでに合成報告例がなく、それゆえ、新しい基本骨格として有害生物防除剤への展開や、医薬品や電子材料等の機能性材料の製造中間体として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2005/085216号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/019760号公報
【特許文献3】国際公開WO2009/045999号公報
【特許文献4】国際公開WO2009/001942号公報
【特許文献5】国際公開WO2009/126668号公報
【特許文献6】国際公開WO2009/063910号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Matoba, K.; Kawai, H.; Furukawa, T.; Kusuda, A.; Tokunaga, E.; Nakamura, S.; Shiro, M.; Shibata, N. Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49, 5762.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、トリフルオロメチル基を2−イソキサゾリン化合物に直接的に導入する、即ち、直接的なトリフルオロメチル化法による、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法、および、新規な化合物群である5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、発明者らは、トリフルオロメチル化試薬として、Ruppert試薬として知られている(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(CFSiMe)を用い、反応基質として、電子求引基であるニトロ基を4位に有する4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物を用いることで、トリフルオロメチルアニオンが4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物の5位に共役付加した生成物、つまり、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物を得ることに成功した。また、発明者らは、得られた5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物に酸処理を行うことによって、一方のジアステレオマーのみを得ることができることを見出した。
【0008】
本発明に係る5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物は、下記一般式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、RおよびRは、互いに独立して置換若しくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基を示す。)
で表される。
【0011】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係る5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法は、上記一般式(1)で表される5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法であって、下記一般式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、RおよびRは、一般式(1)と同じ。)
で表される4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物と、(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(CFSiMe)とを反応させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上記の製造方法によれば、電子求引基であるニトロ基を4位に有する4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物の5位に、トリフルオロメチルアニオンを共役付加させる。つまり、トリフルオロメチル基を4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物の5位に直接的に導入するので、直接的なトリフルオロメチル化法による、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法を提供することができる。また、新規な化合物群である5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物を提供することができる。上記5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物は、有害生物防除剤や、医薬品や電子材料等の機能性材料の製造中間体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、以下に詳しく説明する。
【0016】
本発明において、「5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物」とは、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリンの3位および5位に、置換若しくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基を有する化合物群を指す。また、本発明において、「4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物」とは、4−ニトロ−2−イソキサゾリンの3位および5位に、置換若しくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基を有する化合物群を指す。
【0017】
本発明に係る5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物は、上記一般式(1)で表される。
【0018】
5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の絶対配置は、(S,S)配置,(S,R)配置,(R,S)配置および(R,R)配置の何れであってもよい。つまり、光学異性体またはジアステレオ異性体(ジアステレオマー)等の立体異性体、並びに、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体は、何れも本発明の範疇に包含される。
【0019】
一般式(1)中、RおよびRで示される置換若しくは未置換のアルキル基としては、互いに独立して、炭素数1ないし20程度のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基,オクチル基,ノニル基,デシル基,ウンデシル基,ドデシル基,トリデシル基,テトラデシル基,ペンタデシル基,ヘキサデシル基,ヘプタデシル基,オクタデシル基,ノナデシル基,イコシル基等の直鎖状アルキル基、または、これらの環状アルキル基、分枝鎖状アルキル基等が挙げられる。
【0020】
上記アルキル基は、フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基等の置換基で水素原子が置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合には、それら置換基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0021】
一般式(1)中、RおよびRで示される置換若しくは未置換のアルケニル基またはアルキニル基としては、互いに独立して、炭素数2ないし20程度のアルケニル基またはアルキニル基が挙げられる。これらアルケニル基またはアルキニル基に含まれる不飽和結合の数は、特に限定されるものではないが、好ましくは一つないし二つ程度である。該アルケニル基またはアルキニル基は、直鎖状または分枝鎖状の何れでもよい。
【0022】
上記アルケニル基は、フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基等の置換基で水素原子が置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合には、それら置換基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0023】
また、上記アルキニル基は、フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基等の置換基で水素原子が置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合には、それら置換基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0024】
一般式(1)中、RおよびRで示される置換若しくは未置換のアリール基には、ヘテロアリール基も包含される。アリール基としては、互いに独立して、炭素数2〜30のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基,ナフチル基,アンスラニル基,ピレニル基,ビフェニル基,インデニル基,テトラヒドロナフチル基,ピリジル基,ピリミジニル基,ピラジニル基,ピリダニジル基,ピペラジニル基,ピラゾリル基,イミダゾリル基,キニリル基,ピロリル基,インドリル基,フリル基等が挙げられる。
【0025】
上記アリール基は、アルキル基,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子,シアノ基,ニトロ基,アリール基,アシル基,アルコキシ基,アリールオキシ基,アシルオキシ基等の置換基で水素原子が置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合には、それら置換基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0026】
一般式(1)中のRとしては、メチル基、置換若しくは未置換のビニル基(アルケニル基)、置換若しくは未置換のフェニル基がより好ましい。
【0027】
一般式(1)中のRとしては、メチル基、置換若しくは未置換のフェニル基がより好ましい。
【0028】
従って、上記一般式(1)で表される5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物のうち、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−5−スチリル−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−5−((E)−2−(ナフタレン−4−イル)ビニル)−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−5−((E)−2−(ナフタレン−3−イル)ビニル)−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(4−メチルスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(4−メトキシスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(2−クロロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(3−クロロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(4−クロロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(4−ブロモスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(4−ニトロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(2−クロロ−5−ニトロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−5−((E)−2−(フラン−2−イル)ビニル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−3−フェニル−5−スチリル−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−5−スチリル−3−p−トリル−2−イソキサゾール、5−(4−メチルスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−3−フェニル−2−イソキサゾール、5−(4−クロロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−3−フェニル−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−3,5−ジフェニル−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−5−フェニル−3−p−トリル−2−イソキサゾール、3−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−5−フェニル−2−イソキサゾール、3−(4−ブロモ−3−メチルフェニル)−5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−5−メチル−4−ニトロ−3−フェニル−2−イソキサゾール、5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−5−メチル−4−ニトロ−3−p−トリル−2−イソキサゾールがより好ましい。
【0029】
本発明に係る5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法は、上記一般式(1)で表される5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法であって、上記一般式(2)で表される4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物と、(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(CFSiMe)とを反応させる方法である。上記反応は、相間移動触媒および塩基の存在下、溶液中で行われることがより好ましい。
【0030】
一般式(2)中、RおよびRで示される置換若しくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基は、一般式(1)中のRおよびRと同じであるので、その説明を省略する。
【0031】
4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物1モルに対する(トリフルオロメチル)トリメチルシランの量は、0を超え、1モル以下であればよいが、副生成物が生じることを抑制するために、0.2モル程度にすることがより好ましい。
【0032】
反応に用いる溶媒は、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物、4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物、および、(トリフルオロメチル)トリメチルシランが溶解する溶媒であればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ジエチルエーテル,ジイソプロピルエーテル,n−ブチルメチルエーテル,tert−ブチルメチルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン,ヘプタン,シクロペンタン,シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;クロロホルム,四塩化炭素,塩化メチレン,ジクロロエタン,トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ベンゼン,トルエン,キシレン,クメン,シメン,メシチレン,ジイソプロピルベンゼン,ピリジン,ピリミジン,ピラジン,ピリダジン等の芳香族系溶媒;メタノール,エタノール,プロパノール,iso−プロピルアルコール,アミノエタノール,N,N−ジメチルアミノエタノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド,ジメチルホルムアミド;等が挙げられる。上記例示の溶媒のうち、ジメチルホルムアミドが最も好ましい。これら溶媒は単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いることも可能である。
【0033】
溶液中の4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物の濃度は、より高い方が効率的であるので好ましいものの、特に限定されるものではない。
【0034】
反応に用いる相間移動触媒は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、長鎖アルキルアンモニウムカチオンを生じる塩、即ち、テトラエチルアンモニウム塩,テトラプロピルアンモニウム塩,テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩,ベンジルトリエチルアンモニウム塩,ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩,ベンジルトリブチルアンモニウム塩,デシルトリメチルアンモニウム塩,セチルトリメチルアンモニウム塩,セチルトリエチルアンモニウム塩等が挙げられる。対アニオンを生じる原子としてはフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子等が挙げられる。上記例示の塩のうち、セチルトリメチルアンモニウム塩,セチルトリエチルアンモニウム塩が最も好ましく、相間移動触媒のうち、セチルトリメチルアンモニウムブロミドが最も好ましい。
【0035】
4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物に対する相間移動触媒の量は、0を超え、1当量以下であればよい。
【0036】
反応に用いる塩基は、無機塩基,有機塩基,有機金属試薬等が挙げられ、具体的には、例えば、炭酸カリウム,炭酸セシウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム,酢酸カリウム等の酢酸塩;テトラメチルアンモニウムフロリド,テトラエチルアンモニウムフロリド,テトラブチルアンモニウムフロリド等のアンモニウムフロリド;フッ化カリウム,フッ化セシウム等のフッ化アルカリ金属類;水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の水酸化物;ナトリウムメトキシド,カリウムtert−ブトキシド等のアルコキシド化合物;DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン),DBU(ジアザビシクロウンデセン),トリエチルアミン,N,N−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基;n−ブチルリチウム,sec−ブチルリチウム,tert−ブチルリチウム,リチウムジイソプロピルアミド,ヘキサメチルジシラザンリチウム塩等のリチウム塩;等が挙げられる。上記例示の塩基のうち、酢酸ナトリウムが最も好ましい。
【0037】
4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物に対する塩基の量は、1〜10当量であればよく、好ましくは1.5当量である。
【0038】
反応器は、特に限定されるものではなく、大気開放型の反応器;オートクレーブ等の密閉型の反応器;の何れであっても使用可能である。
【0039】
溶媒に添加する4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物、(トリフルオロメチル)トリメチルシラン、相間移動触媒、および、塩基の順序(タイミング)は、特に限定されるものではないが、副生成物が生じることを抑制するために、4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物、相間移動触媒、および、塩基を含む溶液に、(トリフルオロメチル)トリメチルシランを添加することがより好ましい。
【0040】
反応温度は、特に限定されるものではないが、通常、−80℃ないし120℃であり、より好ましくは室温(25℃)付近である。反応圧力は、大気圧下,加圧下の何れであってもよい。反応時間は、特に限定されるものではないが、通常、3〜9時間で反応が完結する。
【0041】
上記反応によって、つまり、反応基質として4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物を用い、電子求引基であるニトロ基を4位に有する当該4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物の5位に、トリフルオロメチル化試薬であるトリフルオロメチルアニオンを共役付加させることによって、新規な化合物群である5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物が得られる。
【0042】
必要に応じて酸処理を行った後の反応液から5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物を単離および精製する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な手法を採用することができる。具体的には、例えば、反応液を濃縮した後、シリカゲル,アルミナ,ゼオライト等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製、塩析、再結晶等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記実施例の範囲に限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕
上記一般式(1)で表される5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物としての下記化合物1a〜1vを、以下の製造方法でそれぞれ製造した。
【0045】
即ち、上記一般式(2)で表される4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物(0.20mmol)、相間移動触媒としてのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(21.9mg,0.06mmol)、および、塩基としての酢酸ナトリウム(24.6mg,0.30mmol)を、溶媒であるジメチルホルムアミド1mLに溶解した。得られた溶液に、室温で、(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(59.1μL,0.04mmol)を加えた。その後、反応液を室温で3〜9時間撹拌することにより、4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物と(トリフルオロメチル)トリメチルシランとを反応させた。
【0046】
反応後、1Mの塩酸1mLを反応液に加えて、室温でさらに1時間撹拌して酸処理を行った。
【0047】
続いて、酢酸エチルを反応液に加えて抽出操作を行い、集めた有機相を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフ法にて精製し、5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物としての下記化合物1a〜1vを結晶状態で得た。
【0048】
以下に、化合物1a〜1vの構造式および各種分析結果を示す。
【0049】
【化3】

【0050】
化合物1a:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−5−スチリル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.18 (s, 3H), 5.88 (s, 1H), 6.09 (d, J = 16.2 Hz), 7.11 (d, J = 15.9 Hz), 7.33-7.37 (m, 5H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 88.7 (q, J = 30.7 Hz), 95.9, 112.5, 122.9 (q, J = 286.7 Hz), 127.3, 128.8, 129.5, 134.3, 138.7, 149.5; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.9 (s, 3F); IR (KBr) 3058, 3002, 1655, 1562, 1496, 1436, 1395, 1366, 1330, 1263, 1227, 1190, 1144, 1094, 975, 908, 879, 839, 752, 693 cm−1; mp = 111.5-114.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 300 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C13H10FNO [M-H]-: 299.0641 Found: 299.0644; 87%収率
【0051】
【化4】

【0052】
化合物1b:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−5−((E)−2−(ナフタレン−4−イル)ビニル)−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.21 (s, 3H), 5.93 (s, 1H), 6.15 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 7.41-7.58 (m, 4H), 7.83-7.91 (m, 3H), 7.98-8.01 (m, 1H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.7, 88.8 (q, J = 30.7 Hz), 96.0, 115.9, 122.9 (q, J = 286.2 Hz), 123.5, 124.7, 125.4, 126.2, 126.7, 128.5, 129.7, 131.0, 132.3, 133.4, 136.4, 149.6; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.8 (s, 3F); IR (KBr) 3063, 3019, 2929, 1814, 1648, 1573, 1435, 1370, 1329, 1272, 1195, 1134, 1005, 978, 885, 778, 722, 665, 638, 585, 549, 488 cm−1; mp = 75.0-76.5 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 350 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C17H12FNO [M-H]-: 349.0798 Found: 349.0800; 81%収率
【0053】
【化5】

【0054】
化合物1c:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−5−((E)−2−(ナフタレン−3−イル)ビニル)−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.18 (s, 3H), 5.91 (s, 1H), 6.20 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.47-7.53 (m, 3H), 7.78-7.83 (m, 4H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 88.8 (q, J = 29.2 Hz), 95.9, 112.6, 122.9 (q, J = 286.7 Hz), 123.2, 126.6, 126.9, 127.7, 128.3, 128.52, 128.55, 131.7, 133.2, 133.8, 138.8, 149.6; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.8 (s, 3F); IR (KBr) 3061, 2994, 2925, 1925, 1650, 1564, 1438, 1275, 1180, 1005, 976, 897, 861, 809, 768, 747, 718, 664, 471 cm−1; mp = 77.0-79.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 350 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C17H12FNO [M-H]-: 349.0805 Found: 349.0800; 85%収率
【0055】
【化6】

【0056】
化合物1d:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(4−メチルスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.17 (s, 3H), 2.35 (s, 3H), 5.87 (s, 1H), 6.03 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 8.7 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.7, 21.2, 88.8 (q, J = 30.7 Hz), 95.8, 111.3, 122.9 (q, J = 286.2 Hz), 127.2, 129.4, 131.5, 138.5, 139.7, 149.6; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.9 (s, 3F); IR (KBr) 2999, 2926, 1901, 1656, 1566, 1517, 1434, 1366, 1328, 1263, 1184, 1144, 1093, 1043, 981, 910, 882, 798, 910, 882, 798, 768, 719, 664 cm−1; mp = 81.0-83.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 314 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C14H12FNO [M-H]-: 313.0800 Found: 313.0798; 84%収率
【0057】
【化7】

【0058】
化合物1e:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(4−メトキシスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.16 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 5.87 (s, 1H), 5.94 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.7 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 55.3, 88.9 (q, J = 30.2 Hz), 95.9, 109.8, 114.2, 122.9 (q, J = 286.2 Hz), 127.1, 128.8, 138.0, 149.5, 160.7; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -81.0 (s, 3F); IR (KBr) 3000, 2838, 1655, 1609, 1563, 1515, 1435, 1266, 1185, 1092, 1037, 978, 909, 849, 805, 769, 723, 664, 522, 484 cm−1; mp = 76.0-79.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 330 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C14H12FNO [M-H]-: 329.0749 Found: 329.0746; 82%収率
【0059】
【化8】

【0060】
化合物1f:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(2−クロロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.19 (s, 3H), 5.90 (s, 1H), 6.09 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.22-7.30 (m, 2H), 7.36-7.42 (m, 2H), 7.49 (d, J = 15.9 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.7, 88.5 (q, J = 30.7 Hz), 95.9, 115.7, 122.8 (q, J = 286.2 Hz), 127.0, 127.5, 129.9, 130.4, 132.8, 134.0, 135.3, 149.5; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.7 (s, 3F); IR (KBr) 3002, 1562, 1473, 1444, 1392, 1365, 1332, 1277, 1182, 1146, 1092, 1054, 973, 910, 881, 757, 709, 663 cm−1; mp = 74.0-76.5 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 334 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C13HClFNO [M-H]-: 333.0258 Found: 333.0254; 88%収率
【0061】
【化9】

【0062】
化合物1g:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(3−クロロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.18 (s, 3H), 5.89 (s, 1H), 6.11 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.24-7.30 (m, 3H), 7.37 (s, 1H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 88.5 (q, J = 30.7 Hz), 95.8, 114.1, 122.8 (q, J = 286.2 Hz), 125.6, 127.1, 129.5, 130.0, 134.8, 136.0, 137.4, 149.6; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.8 (s, 3F); IR (KBr) 2998, 1658, 1565, 1475, 1433, 1394, 1366, 1330, 1272, 1188, 1144, 1095, 974, 908, 877, 782, 703, 680, 632, 566, 500, 439 cm−1; mp = 91.0-93.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 334 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C13HClFNO (M-): 333.0254 Found: 333.0251; 90%収率
【0063】
【化10】

【0064】
化合物1h:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(4−クロロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.18 (s, 1H), 5.88 (s, 1H), 6.07 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.31 (s, 5H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 88.6 (q, J = 30.7 Hz), 95.9, 113.2, 122.8 (q, J = 286.7 Hz), 128.6, 129.0, 132.8, 135.5, 137.5, 149.5; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.1 (s, 3F); IR (KBr) 2999, 1905, 1769, 1655, 1594, 1493, 1435, 1193, 1093, 1013, 979, 923, 851, 807, 720, 703, 626, 591, 507, 451 cm−1; mp = 120.0-123.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 334 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C13HClFNO [M-H]-: 333.0254 Found: 333.0255; 96%収率
【0065】
【化11】

【0066】
化合物1i:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(4−ブロモスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.18 (s, 3H), 5.88 (s, 1H), 6.08 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 8.4 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 88.6 (q, J = 31.2 Hz), 95.9, 113.3, 122.8 (q, J = 286.2 Hz), 123.7, 128.8, 132.0, 133.2, 137.6, 149.5; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.8 (s, 3F); IR (KBr) 2997, 1901, 1655, 1566, 1489, 1434, 1403, 1367, 1326, 1261, 1188, 1143, 1073, 1010, 978, 910, 884, 842, 803, 767, 718, 692 cm−1; mp = 124.0-126.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 378 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C13HBrFNO [M-H]-: 376.9749 Found: 376.9756; 88%収率
【0067】
【化12】

【0068】
化合物1j:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(4−ニトロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.21 (s, 3H), 5.93 (s, 1H), 6.26 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.22 (d, J = 9.0 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 88.3 (q, J = 30.7 Hz), 95.9, 117.3, 122.6 (q, J = 286.2 Hz), 124.1, 128.1, 136.6, 140.3, 148.2, 149.7; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.6 (s, 3F); IR (KBr) 3082, 3000, 1928, 1601, 1561, 1521, 1435, 1353, 1265, 1188, 1143, 1095, 1043, 1015, 978, 913, 886, 859, 821, 749, 694, 618 cm−1; mp = 121.0-124.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 345 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C13HBrFNO [M-H]-: 344.0498 Found: 344.0494; 84%収率
【0069】
【化13】

【0070】
化合物1k:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(2−クロロ−5−ニトロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.22 (s, 3H), 5.96 (s, 1H), 6.29 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.14 (dd, J = 2.6, 8.9 Hz, 1H), 8.28 (d, J = 2.7 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 88.3 (q, J = 31.2 Hz), 95.9, 118.9, 122.4, 122.6 (q, J = 286.2 Hz), 124.7, 131.1, 133.5, 134.2, 140.6, 146.7, 149.7; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.5 (s, 3F); IR (KBr) 3071, 3007, 1760, 1608, 1562, 1529, 1463, 1433, 1349, 1260, 1192, 1143, 1095, 1047, 985, 911, 822, 768, 741, 721, 665 cm−1; mp = 155.0-157.5 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 379 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C13HClFNO [M-H]-: 378.0105 Found: 378.0106; 67%収率
【0071】
【化14】

【0072】
化合物1l:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−5−((E)−2−(フラン−2−イル)ビニル)−4,5−ジヒドロ−3−メチル−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.17 (s, 3H), 5.87 (s, 1H), 6.03 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 6.39-6.43 (m, 2H), 6.87 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.40 (s, 1H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 11.8, 88.7 (q, J = 31.2 Hz), 95.9, 110.2, 111.8, 112.6, 122.8 (q, J = 286.7 Hz), 126.0, 143.8, 149.6, 150.2; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.9 (s, 3F); IR (KBr) 3000, 2925, 1663, 1566, 1488, 1435, 1395, 1366, 1328, 1266, 1186, 1143, 1092, 1018, 1143, 1092, 1018, 969, 930, 909, 882, 801, 768, 743, 636 cm−1; mp = 64.0-67.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 290 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C11HFNO [M-H]-: 289.0436 Found: 289.0436; 86%収率
【0073】
【化15】

【0074】
化合物1m:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−3−フェニル−5−スチリル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 6.18 (d, J = 15.9 Hz), 6.40 (s, 1H), 7.21 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.34-7.52 (m, 8H), 7.68 (d, J = 7.2 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 89.9 (q, J = 30.5 Hz), 93.6, 112.1, 121.9 (q, J = 287.2 Hz), 125.7, 126.7, 127.4, 128.8, 129.5, 129.6, 131.9, 134.3, 139.3, 151.9; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.4 (s, 3F); IR (KBr) 2990, 1651, 1563, 1448, 1346, 1265, 1212, 1188, 1139, 1066, 978, 937, 911, 784, 756, 691, 545, 519, 499 cm−1; mp = 122.0-125.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 362 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C18H12FNO [M-H]-: 361.0800 Found: 361.0800; 90%収率
【0075】
【化16】

【0076】
化合物1n:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−5−スチリル−3−p−トリル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.40 (s, 3H), 6.18 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.38 (s, 1H), 7.20 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.34-7.41 (m, 5H), 7.57 (d, J = 7.8 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 21.5, 89.7 (q, J = 30.7 Hz), 93.7, 112.2, 122.87, 122.91 (q, J = 287.2), 126.6, 127.4, 128.8, 129.6, 130.1, 134.3, 139.2, 142.6, 151.9; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.4 (s, 3F); IR (KBr) 2990, 1652, 1568, 1451, 1344, 1266, 1191, 1140, 1068, 978, 933, 909, 867, 818, 753, 691, 564, 538, 499, 471 cm−1; mp = 139.0-141.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 376 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C19H14FNO [M-H]-: 375.0957 Found: 375.0956; 95%収率
【0077】
【化17】

【0078】
化合物1o:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(4−メチルスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−3−フェニル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.35 (s, 3H), 6.12 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 6.38 (s, 1H), 7.14-7.19 (m, 3H), 7.30 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.44-7.55 (m, 3H), 7.66-7.69 (m, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 21.3, 90.0 (q, J = 30.7 Hz), 93.6, 110.9, 122.9 (q, J = 286.7 Hz), 125.8, 126.6, 127.3, 129.42, 129.48, 131.6, 131.9, 139.1, 139.8, 151.9; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.5 (s, 3F); IR (KBr) 3001, 1652, 1575, 1514, 1447, 1346, 1262, 1206, 1181, 1139, 1067, 975, 904, 796, 754, 687, 565, 506 cm−1; mp = 111.0-112.5 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 376 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C19H14FNO [M-H]-: 375.0957 Found: 379.0958; 90%収率
【0079】
【化18】

【0080】
化合物1p:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(4−クロロスチリル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−3−フェニル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 6.16 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.40 (s, 1H), 7.16 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.33 (s, 4H), 7.44-7.53 (m, 3H), 7.68 (dd, J = 1.8, 7.8 Hz); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 89.8 (q, J = 30.7 Hz), 93.6, 112.8, 122.8 (q, J = 286.7 Hz), 125.6, 126.7, 128.6, 129.1, 129.5, 132.0, 132.7, 135.5, 138.0, 152.0; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -80.4 (s, 3F); IR (KBr) 2990, 1653, 1563, 1493, 1446, 1409, 1349, 1279, 1213, 1185, 1144, 1092, 993, 978, 938, 911, 849, 804, 782, 755, 687, 565, 503 cm−1; mp = 115.0-117.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 396 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C18H11ClFNO [M-H]-: 395.0410 Found: 395.0413; 96%収率
【0081】
【化19】

【0082】
化合物1q:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−3,5−ジフェニル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 6.65 (s, 1H), 7.42 (m, 6H), 7.62-7.64 (m, 2H), 7.71-7.74 (m, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 91.6 (q, J = 30.2 Hz), 94.1, 123.1 (q, J = 288.2 Hz), 125.4, 126.4, 126.7, 128.1, 129.0, 129.5, 130.6, 132.0, 152.6; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -78.6 (s, 3F); IR (KBr) 3010, 1581, 1498, 1450, 1345, 1261, 1199, 1073, 997, 974, 936, 906, 787, 753, 711, 684, 645, 559, 516 cm−1; mp = 123.0-124.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 336 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C16H10FNO [M-H]-: 335.0644 Found: 335.0641; 86%収率
【0083】
【化20】

【0084】
化合物1r:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−5−フェニル−3−p−トリル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.40 (s, 3H), 6.62 (s, 1H), 7.27 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.44-7.46 (m, 3H), 7.62 (d, J = 8.1 Hz, 4H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 21.5, 91.4 (q, J = 29.7 Hz), 94.3, 122.6, 123.1 (q, J = 287.7 Hz), 126.4, 126.6, 128.2, 128.9, 130.2, 130.5, 142.8, 152.6; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -78.6 (s, 3F); IR (KBr) 2986, 1567, 1498, 1452, 1363, 1269, 1203, 1167, 1076, 991, 933, 906, 817, 765, 729, 697, 647, 565, 530 cm−1; mp = 114.5-116.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 350 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C17H12FNO [M-H]-: 349.0800 Found: 349.0801; 85%収率
【0085】
【化21】

【0086】
化合物1s:(4S,5S)and (4R,5R)−3−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−5−フェニル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 6.60 (s, 1H), 7.42-7.48 (m, 5H), 7.60-7.62 (m, 2H), 7.64-7.69 (m, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 91.9 (q, J = 29.7 Hz), 94.0, 123.0 (q, J = 287.2 Hz), 123.9, 126.3, 127.9, 129.0, 129.9, 130.7, 138.4, 151.7; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -78.6 (s, 3F); IR (KBr) 3080, 3002, 1573, 1496, 1453, 1404, 1338, 1261, 1173, 1094, 1071, 1040, 995, 940, 908, 838, 765, 730, 702, 645, 557, 512 cm−1;mp = 110.0-113.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 370 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C16HClFNO [M-H]-: 369.0254 Found: 369.0250; 89%収率
【0087】
【化22】

【0088】
化合物1t:(4S,5S)and (4R,5R)−3−(4−ブロモ−3−メチルフェニル)−5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−4−ニトロ−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 2.45 (s, 3H), 6.56 (s, 1H), 7.34-7.37 (m, 1H), 7.49-7.51 (m, 3H), 7.59 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.65 (d, J = 8.4 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 23.0, 90.5 (q, J = 30.7 Hz), 93.9, 122.6 (q, J = 287.7 Hz), 125.1, 125.3, 128.6, 129.7, 131.0, 131.2, 133.7, 136.0, 139.9, 152.1; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -78.3 (s, 3F); IR (KBr) 3084, 3020, 1573, 1484, 1423, 1365, 1344, 1262, 1227, 1188, 1105, 1034, 989, 931, 902, 865, 822, 806, 686, 664, 580, 519 cm−1; mp = 141.0-144.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 496 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C17HBrClFNO [M-H]-: 494.9126 Found: 494.9131; 88%収率
【0089】
【化23】

【0090】
化合物1u:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−5−メチル−4−ニトロ−3−フェニル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 1.71 (s, 3H), 6.27 (s, 1H), 7.43-7.51 (m, 3H), 7.63-7.66 (m, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 13.9, 87.8 (q, J = 30.7 Hz), 93.0, 123.4 (q, J = 286.2 Hz), 125.7, 126.5, 129.4, 131.8, 151.9; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -82.2 (s, 3F); IR (KBr) 2994, 2915, 1967, 1565, 1499, 1449, 1367, 1288, 1174, 1098, 1000, 937, 858, 784, 755, 716, 689, 580, 562, 537, 500, 450 cm−1; mp = 44.0-46.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 274 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C11HFNO [M-H]-: 273.0487 Found: 273.0482; 72%収率
【0091】
【化24】

【0092】
化合物1v:(4S,5S)and (4R,5R)−5−(トリフルオロメチル)−4,5−ジヒドロ−5−メチル−4−ニトロ−3−p−トリル−2−イソキサゾール
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 1.70 (s, 1H), 2.39 (s, 3H), 6.25 (s, 1H), 7.26 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.53 (d, J = 8.1 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl, 150.9 MHz) δ 13.9, 21.5, 87.5 (q, J = 30.7 Hz), 93.1, 122.9, 123.4 (q, J = 286.7 Hz), 126.5, 130.1, 142.5, 151.8; 19F NMR (CDCl, 188 MHz) δ -82.2 (s, 3F); IR (KBr) 2980, 2927, 1917, 1574, 1451, 1365, 1285, 1173, 1096, 1045, 934, 861, 818, 774, 710, 613, 580, 562, 533, 499, 471 cm−1; mp = 85.0-86.0 ℃ (CHCl/Hexane); MS (ESI, m/z) 288 (M-), HRMS (ESI) calcd. for C12H10FNO [M-H]-: 287.0644 Found: 287.0644; 64%収率
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物は、有害生物防除剤や、医薬品や電子材料等の機能性材料の製造中間体として有用である。また、本発明に係る製造方法は、有害生物防除剤や、医薬品や電子材料等の機能性材料の製造中間体を製造することができるので有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、RおよびRは、互いに独立して置換若しくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基を示す。)
で表される5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物。
【請求項2】
上記Rが、メチル基、置換若しくは未置換のビニル基、または、置換若しくは未置換のフェニル基である請求項1に記載の5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物。
【請求項3】
上記Rが、メチル基、または、置換若しくは未置換のフェニル基である請求項1または2に記載の5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物。
【請求項4】
下記一般式(1)
【化2】

(式中、RおよびRは、互いに独立して置換若しくは未置換のアルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基を示す。)
で表される5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)
【化3】

(式中、RおよびRは、一般式(1)と同じ。)
で表される4−ニトロ−2−イソキサゾール化合物と、(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(CFSiMe)とを反応させることを特徴とする5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法。
【請求項5】
相間移動触媒および塩基の存在下、溶液中で反応させることを特徴とする請求項4に記載の5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法。
【請求項6】
上記相間移動触媒がセチルトリメチルアンモニウムブロミドであることを特徴とする請求項5に記載の5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法。
【請求項7】
上記塩基が酢酸ナトリウムであることを特徴とする請求項5に記載の5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法。
【請求項8】
反応後に酸処理を行うことによって、一方のジアステレオマーのみを得ることを特徴とする請求項4から7の何れか一項に記載の5−トリフルオロメチル−4−ニトロ−2−イソキサゾリン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−111745(P2012−111745A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231067(P2011−231067)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】