説明

5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法

【課題】合成中間体として有用な5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法等を提供すること。
【解決手段】式(2)


で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物に、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが微生物細胞内に導入されて得られる形質転換体の培養物若しくはその処理物を作用させる反応工程を含むことを特徴とする、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールは、医薬品、農薬品等の合成中間体であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
当該化合物の製造方法としては、イソチオシアン酸アリル誘導体に塩素化剤を反応させた後、液体アンモニア又はヘキサメチレンテトラミンを反応させる方法が特許文献1に記載されている。
N−カルバモイルアミノ化合物は、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの前駆体となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−234864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、合成中間体として有用な5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、このような状況下鋭意検討を行った結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.式(2)

で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物(以下、化合物(2)と記すこともある。)に、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素(以下、本酵素と記すこともある。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド(以下、本ポリヌクレオチドと記すこともある。)が微生物細胞内に導入されて得られる形質転換体(以下、本形質転換体と記すこともある。)の培養物若しくはその処理物を作用させる反応工程を含むことを特徴とする、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法(以下、本発明製造方法と記すこともある。);
2.前記酵素が、下記のアミノ酸配列のいずれかを有する酵素であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列。
b)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列であって、且つ、前記N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列。
c)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、且つ、前記N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列。
3.式(2)

で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物に、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換するための触媒としての、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが微生物細胞内に導入されて得られる形質転換体の培養物若しくはその処理物の使用(以下、本発明使用と記すこともある。);
4.前記酵素が、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する酵素であることを特徴とする前項3記載の使用;
5.式(1)

(式中、Rは直鎖状又は環状のアルキル基を表わす。該アルキル基は置換基を有していてもよく、該アルキル基の炭素数は1〜6である。)
で表わされるイソ尿素化合物に、当該イソ尿素化合物を対応するN−カルバモイルアミノ化合物に変換する能力を有する酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を作用させて式(2)

で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物を得る前工程、及び、
前工程で得られたN−カルバモイルアミノ化合物に、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが微生物細胞内に導入されて得られる形質転換体の培養物若しくはその処理物を作用させる反応工程を含むことを特徴とする、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法;
6.前記酵素が、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する酵素であることを特徴とする前項5記載の製造方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、新たな5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法等を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載される発明は記載されている特定の方法論、プロトコ−ル、及び、試薬に限定されず、可変であると考えられる。また、本明細書で用いる用語は単に特定の実施形態を記載するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではないと考えられる。
特に断りの無い限り、本明細書で用いる全ての技術用語、及び、化学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者に共通に理解されているものと同じ意味を持つ。本発明を実施又は試験する上で、本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法、及び、材料のいずれを用いてもよいが、以下、好ましい方法、装置、及び、材料を記載する。
【0008】
以下、更に詳細に本発明を説明する。
本発明製造方法は、式(2)

で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物(即ち、化合物(2))に、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素(即ち、本酵素)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが微生物細胞内に導入されて得られる形質転換体(即ち、本形質転換体)の培養物若しくはその処理物を作用させる反応工程を含む。
【0009】
本発明製造方法において用いられる触媒としての本形質転換体の培養物若しくはその処理物は、化合物(2)を5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素(即ち、本酵素)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド(即ち、本ポリヌクレオチド)を、通常の遺伝子工学的手法を用いて微生物細胞内に導入することによって調製すればよい。
【0010】
本形質転換体の外来遺伝子導入に係る調製方法について説明する。
まずは、本酵素としては、例えば、下記のアミノ酸配列のいずれかを有する酵素を挙げることができる。
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列。
b)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列であって、且つ、前記N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列。
c)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、且つ、前記N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列。
【0011】
本ポリヌクレオチドは、例えば、天然の遺伝子であってもよく、又は、天然の遺伝子に変異を導入(部位特異的変異導入法、突然変異処理等)することにより作出された遺伝子であってもよい。天然の遺伝子を検索する場合には、化合物(2)を5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素の産生能を有する微生物、又は、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する酵素の産生能を有する微生物を対象にすればよい。
このような微生物を探索する場合には、具体的には例えば、試験管に滅菌済み培地5mlを入れ、これに各菌株保存機関より購入することにより入手された菌体又は土壌中から純粋分離することにより調製された菌体を植菌する。これを30℃で好気条件下、振盪培養する。培養終了後、遠心分離により菌体を回収することにより、生菌体を得る。得られる生菌体に0.2Mリン酸カリウムバッファー(pH7)を1.5ml加え、懸濁後、ジメチルスルホキシド15μlに溶解したN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素を1.5mg添加した後、得られる混合物を30℃で2〜3日間振盪させる。
反応終了後、反応液をサンプリングし、反応液中に生成する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの量を液体クロマトグラフィー等により分析する。
このようにして、N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素の産生能を有する微生物を選抜する。
【0012】
本発明製造方法において用いられる触媒としての酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物としては、例えば、下記の微生物群Aから選ばれる少なくとも1つ以上の微生物由来のものを挙げることができる。
<微生物群A>
ブレビバクテリウム・カゼイ(Brevibacterium casei)、コリネバクテリウム・ミシガネンス(Corynebacterium michiganense)、フラボバクテリウム・カプスラタム(Flavobacterium capsulatum)、ハンセニアスポラ・ヴァルビエンシス(Hanseniaspora valbyensis)、ミコプラナ・ブラータ(Mycoplana bullata)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、リゾプス・キネンシス(Rhizopus chinensis)、スフィンゴモナス・エスピー(Sphingomonas sp.)、ステノトロホモナス・アシドアミニフィラ(Stenotrophomonas acidaminiphila)、ステノトロホモナス・コーリエンシス(Stenotrophomonas koreensis)、ステノトロホモナス・ニトリティレデュセンス(Stenotrophomonas nitritireducens)、ステノトロフォモナス・リゾフィラ(Stenotrophomonas rhizophila)、ステノトロフォモナス・エスピー(Stenotrophomonas sp.)、バリオボラックス・パラドクサス(Variovorax paradoxus)、キサントモナス・マルトフィリア(Xanthomonas maltophilia)
【0013】
更に、本発明製造方法において用いられる好ましい触媒としての酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物としては、例えば、下記の微生物群Bから選ばれる少なくとも1つ以上の微生物由来の形質転換体を挙げることができる。
<微生物群B>
ブレビバクテリウム・カゼイ(Brevibacterium casei) JCM 2594t、コリネバクテリウム・ミシガネンス(Corynebacterium michiganense) ATCC 10202、フラボバクテリウム・カプスラタム(Flavobacterium capsulatum) JCM 7452t、ハンセニアスポラ・ヴァルビエンシス(Hanseniaspora valbyensis) IFO 1758、ミコプラナ・ブラータ(Mycoplana bullata) IFO 13290t、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens) Biotype F ATCC 17513、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens) IFO 3903、シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes) JCM 5968t、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis) IFO 12320、リゾプス・キネンシス(Rhizopus chinensis) IFO 4768、スフィンゴモナス・エスピー(Sphingomonas sp.) IFO 15164、スフィンゴモナス・エスピー(Sphingomonas sp.) JCM 7514、ステノトロホモナス・アシドアミニフィラ(Stenotrophomonas acidaminiphila) JCM13310、ステノトロホモナス・コーリエンシス(Stenotrophomonas koreensis) JCM13256、ステノトロホモナス・ニトリティレデュセンス(Stenotrophomonas nitritireducens) JCM13311、ステノトロフォモナス・リゾフィラ(Stenotrophomonas rhizophila) JCM13333、ステノトロフォモナス・エスピー(Stenotrophomonas sp.) SC-1(FERM-BP 10785) 、バリオボラックス・パラドクサス(Variovorax paradoxus) IFO 15149t、キサントモナス・マルトフィリア(Xanthomonas maltophilia) JCM 1975t
【0014】
尚、これら菌株は天然から分離してもよいし、例えば、下記の菌株保存機関より購入することにより容易に入手することができる。
【0015】
1.IFO(Institute of Fermentation Osaka:財団法人 醗酵研究所)
現在は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門(NBRC)で取り扱い可能であり、入手に際しては http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCDispSearchServlet?lang=jp にアクセスすればよい。
2.ATCC(American Type Culture Collection)
住商ファーマインターナショナル株式会社 ATCC事業グループで取り扱い可能であり、入手に際しては http://www.summitpharma.co.jp/japanese/service/s_ATCC.html にアクセスすればよい。
3.IAMカルチャーコレクション
現在は、IAMカルチャーコレクション保存菌株のうち、細菌、酵母、糸状菌の場合には独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(JCM)に、また微細藻類の場合には独立行政法人 国立環境研究所微生物系統保存施設(NIES)に移管されている。入手に際しては http://www.jcm.riken.go.jp/JCM/aboutJCM_J.shtml、http://mcc.nies.go.jp/aboutOnlineOrder.do にアクセスすればよい。
4.JCM(理化学研究所微生物系統保存施設 (Japan Collection of Microorganisms, JCM)
現在は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター (RIKEN BRC) 微生物材料開発室に移管されている。入手に際しては http://www.jcm.riken.go.jp/JCM/aboutJCM_J.shtml にアクセスすればよい。
【0016】
本発明製造方法において用いられる、更により好ましい触媒としての酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物としては、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属及びステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属からなる群より選ばれる1以上の微生物由来のものを挙げることができる。尚、ステノトロフォモナス・エスピー(Stenotrophomonas sp.) 寄託番号FERM-BP 10785として製品評価技術基盤機構・生物資源部門に登録されている菌株が更により好ましい。例えば、Rhodococcus R312 (ブレビバクテリウムR 312(CBS 717-73))等のロドコッカス属に属する微生物由来のものを更により好ましく挙げることができる。尚、Rhodococcus R312を購入できる菌株保存機関として、例えば、Centraalbureau voor Schimmelcultures が挙げられる。現在は、「Rhodococcus sp. Zopf 1891 AL」という菌株名で保存されており、入手に際しては http://www.cbs.knaw.nl/databases/nccb/search_bac_plas.aspx 等にアクセスすればよい。
【0017】
本ポリヌクレオチドは、化合物(2)を5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有している。
【0018】
本ポリヌクレオチドにおいて「配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、例えば「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989年、農村文化社発行)、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))等に記載されているサザンハイブリダイゼーション法において、(1)高イオン濃度下[例えば、6XSSC(900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム)が挙げられる。]に、65℃でハイブリダイズさせることにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、又は、配列番号2で示される塩基配列からなるDNA、とDNA−DNAハイブリッドを形成し、また(2)低イオン濃度下[例えば、0.1 X SSC(15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム)が挙げられる。]に、65℃で30分間保温した後でも該ハイブリッドが維持されうるようなDNAをいう。
【0019】
具体的には例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、又は、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAにおいて、その一部の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAと配列相同性が80%以上であるDNA等があげられる。かかるDNAは、自然界に存在するDNAの中からクローニングされたDNAであっても、このクローニングされたDNAの塩基配列において、その一部の塩基の欠失、置換または付加が人為的に導入されてなるDNAであっても、人為的に合成されたDNAであってもよい。
【0020】
配列番号2で示される塩基配列において、1個または数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列としては、例えば、(i) 配列番号2で示される塩基配列において、1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)の塩基が欠失した塩基配列、(ii)配列番号2で示される塩基配列の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)の塩基が他の塩基で置換された塩基配列、(iii)配列番号2で示される塩基配列に1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)の塩基が付加した塩基配列、(iv)上記(i)〜(iii)を組み合わせた塩基配列が挙げられる。
【0021】
配列番号2で示される塩基配列において1または数個の核酸に欠失、置換若しくは付加などの変異の生じた塩基配列を有するポリヌクレオチドは、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press (1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons (1987-1997))、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kunkel (1988) Method. Enzymol. 85: 2763-6等に記載される部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
【0022】
また、ポリヌクレオチドに変異を導入するには、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えば、QuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社)等を用いて行うことができる。
【0023】
本ポリヌクレオチドは、例えば、以下のようにして調製することができる。
【0024】
Rhodococcus R312 (ブレビバクテリウムR 312(CBS 717-73))等のロドコッカス属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法)に準じてDNAライブラリーを調製し、調製されたDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA及び/又は配列番号2で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本ポリヌクレオチドのDNAを調製することができる。
【0025】
また、前記DNAライブラリーを鋳型として、かつ配列番号3に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号4に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行うことにより、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本ポリヌクレオチドのDNAを調製することができる。
【0026】
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
【0027】
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
【0028】
また、配列番号1で示されるようなアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するオリゴヌクレオチドは、配列番号1で示されるようなアミノ酸配列に対応するforwardプライマーとreverseプライマーとを約40bpの長さずつに切り分ける形で合成し、これらのプライマー群をつなげ合わせる方法(Assembly PCR法)で合成することもできる。
【0029】
また、前記DNAライブラリーを鋳型として配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列から選ばれる部分塩基配列を有するオリゴヌクレオチド等(例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする5’末端側の約14塩基程度以上の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)とDNAライブラリー構築に用いられたベクターのDNA挿入部位近傍の塩基配列に相補的な塩基配列からなる約14塩基程度以上のオリゴヌクレオチドとをプライマーとして用いてPCRを行うことによっても、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAや、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA等を増幅して本ポリヌクレオチドのDNAを調製することができる。
【0030】
上記のようにして増幅されたDNAを「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223-3(Pharmacia社製)などが挙げられる。
【0031】
また、本ポリヌクレオチドのDNAは、例えば、微生物又はファージ由来のベクターに挿入されたDNAライブラリーに配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列から選ばれる部分塩基配列を有する約15塩基程度以上の塩基配列からなるDNAをプローブとして後述する条件にてハイブリダイズさせ、該プローブが特異的に結合するDNAを検出することによっても取得することができる。
【0032】
染色体DNA又はDNAライブラリーにプローブをハイブリダイズさせる方法としては、例えば、コロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーションを挙げることができ、ライブラリーの作製に用いられたベクターの種類に応じて方法を選択することができる。
【0033】
使用されるライブラリーがプラスミドベクターを用いて作製されている場合にはコロニーハイブリダイゼーションを利用するとよい。具体的には、ライブラリーのDNAを宿主微生物に導入することにより形質転換体を取得し、得られた形質転換体を希釈した後、該希釈物を寒天培地上にまき、コロニーが現われるまで培養する。
【0034】
使用されるライブラリーがファージベクターを用いて作製されている場合にはプラークハイブリダイゼーションを利用するとよい。具体的には、宿主微生物とライブラリーのファージとを感染可能な条件下で混合し、さらに軟寒天培地と混合した後、該混合物を寒天培地上にまき、プラークが現われるまで培養する。
【0035】
次いで、いずれのハイブリダイゼーションの場合にも、前記の培養を行った寒天培地上にメンブレンを置き、形質転換体又はファージを該メンブレンに吸着・転写させる。このメンブレンをアルカリ処理した後、中和処理し、次いでDNAを該メンブレンに固定する処理を行う。より具体的には、例えば、プラークハイブリダイゼーションの場合には、前記寒天培地上にニトロセルロースメンブレン又はナイロンメンブレン(例えば、Hybond-N+(アマシャム社登録商標))を置き、約1分間静置してファージ粒子をメンブレンに吸着・転写させる。次に、該メンブレンをアルカリ溶液(例えば1.5M塩化ナトリウム、0.5M水酸化ナトリウム)に約3分間浸してファージ粒子を溶解させることによりファージDNAをメンブレン上に溶出させた後、中和溶液(例えば、1.5M塩化ナトリウム、0.5Mトリス−塩酸緩衝溶液pH7.5)に約5分間浸す。次いで該メンブレンを洗浄液(例えば、0.3M塩化ナトリウム、30mMクエン酸、0.2Mトリス−塩酸緩衝液pH7.5)で約5分間洗った後、例えば、約80℃で約90分間加熱することによりファージDNAをメンブレンに固定する。
【0036】
このように調製されたメンブレンを用いて、上記DNAをプローブとしてハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションは、例えば、J.Sambrook, E.F.Frisch, T.Maniatis著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition(1989)」 Cold Spring Harbor Laboratory Press等の記載に準じて行うことができる。
【0037】
プローブに用いるDNAは、放射性同位元素により標識されたものや、蛍光色素で標識されたものであってもよい。
プローブに用いるDNAを放射性同位元素により標識する方法としては、例えば、Random Primer Labeling Kit(宝酒造社製)等を利用することにより、PCR反応液中のdCTPを(α−32P)dCTPに替えて、プローブに用いるDNAを鋳型にしてPCRを行う方法が挙げられる。
また、プローブに用いるDNAを蛍光色素で標識する場合には、例えば、アマシャム製のECL Direct Nucleic Acid Labeling and Detection System等を用いることができる。
【0038】
ハイブリダイゼーションは、例えば、以下の通りに行うことができる。
450〜900mMの塩化ナトリウム及び45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含みドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を0.1〜1.0重量%の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μl/mlの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポリビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2重量%の濃度で含んでいてもよいプレハイブリダイゼーション液(好ましくは900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1.0重量%のSDS及び100μl/mlの変性Calf-thymusDNAを含むプレハイブリダイゼーション液)を上記のようにして作製したメンブレン1cm2当たり50〜200μlの割合で準備し、該プレハイブリダイゼーション液に前記メンブレンを浸して42〜65℃で1〜4時間保温する。
次いで、例えば、450〜900mMの塩化ナトリウム及び45〜90mMのクエン酸ナトリウムを含み、SDSを0.1〜1.0重量%の濃度で含み、変性した非特異的DNAを0〜200μg/mlの濃度で含み、場合によってはアルブミン、フィコール、ポロビニルピロリドン等をそれぞれ0〜0.2重量%の濃度で含んでいてもよいハイブリダイゼーション溶液(好ましくは、900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム、1.0重量%のSDS及び100μg/mlの変性Calf-thymusDNAを含むハイブリダイゼーション溶液)と前述の方法で調製して得られたプローブ(メンブレン1cm2当たり1.0×104〜2.0×106cpm相当量)とを混合した溶液をメンブレン1cm2当たり50〜200μlの割合で準備し、該ハイブリダイゼーション溶液に浸し42〜65℃で12〜20時間保温する。
【0039】
当該ハイブリダイゼーション後、メンブレンを取り出し、15〜300mMの塩化ナトリウム1.5〜30mMクエン酸ナトリウム及び0.1〜1.0重量%のSDS等を含む42〜65℃の洗浄液(好ましくは15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム及び1.0重量%のSDSを含む65℃の洗浄液)等を用いて洗浄する。洗浄したメンブレンを2×SSC(300mM塩化ナトリウム、30mMクエン酸ナトリウム)で軽くすすいだ後、乾燥する。このメンブレンを例えばオートラジオグラフィー等に供してメンブレン上のプローブの位置を検出することにより、用いたプローブとハイブリダイズするDNAのメンブレン上の位置に相当するクローンを元の寒天培地上で特定し、これを釣菌することにより、当該DNAを有するクローンを単離する。
【0040】
このようにして得られるクローンを培養して得られる培養菌体から本ポリヌクレオチドを調製することができる。
【0041】
本ポリヌクレオチドを宿主細胞で発現させるには、例えば、宿主細胞で機能可能なプロモーターと本ポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなるDNAを宿主細胞に導入する。
【0042】
ここで、「機能可能な形で」とは、当該DNAを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本ポリヌクレオチドが、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのlacプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのtrpプロモーター、または、tacプロモーター、trcプロモーターのように独自に改変・設計された、大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。また、ラムダファージ由来のPLプロモーター及びPRプロモーター、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)、アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)、中性プロテアーゼプロモーター(npr)、α−アミラーゼプロモーター(amy)等を挙げることができる。また、ロドコッカス(Rhodococcus)R312等において本ポリヌクレオチドの発現を制御しているプロモーターを利用してもよい。
【0043】
一般的には、宿主細胞において機能可能なプロモーターと機能可能な形で接続されてなるDNAを「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。
【0044】
用いられるベクターとしては、本ポリヌクレオチドを保持し、且つ、複製可能(例えば、宿主細胞中にてプラスミドが増殖するために必要なDNA配列、プロモーター、リボソーム結合配列、転写ターミネーター(転写終結配列)、選択マーカー遺伝子を含む。)であれば、特段の制約を受けるものではなく、それぞれの宿主に適したベクターを使用することができる。例えば、プラスミドDNA、バクテリオファージ等を挙げることができる。
プラスミドDNAとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(pBR322、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII(東洋紡社製)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223-3(Pharmacia社製)等のColE系プラスミド等)、放線菌由来のプラスミド(pIJ486等)、酵母由来のプラスミド(YEp13、YEp 24、Ycp50等)が挙げられる。ファージDNAとしては、λファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11等)、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNA等を挙げることができる。
尚、ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子や、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして選択することができる。また、リボソーム結合配列としては、SD配列やKozak配列が知られており、これらの配列を変異遺伝子の上流に挿入することができる。原核生物を宿主に用いるときにはSD配列を、真核細胞を宿主に用いるときにはKozak配列をPCR法等により付加してもよい。SD配列としては、大腸菌由来、ロドコッカス属細菌または枯草菌由来の配列等を挙げることができるが、所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。例えば、16SリボゾームRNAの3’末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作製してこれを利用してもよい。転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター等が利用できる。
【0045】
これらのベクターに本ポリヌクレオチドを組み込むには、本ポリヌクレオチドを含むDNAを適当な制限酵素で切断し、必要であれば適当なリンカーを付加した後、適当な制限酵素で切断したベクターと結合させることにより行うことができる。また、本ポリヌクレオチドを含むDNAを適当な制限酵素認識配列を含むプライマーを用いてPCR増幅し、増幅産物を制限酵素処理した後、適当な制限酵素で切断したベクターと結合させることによっても行うことができる。
【0046】
宿主細胞において機能可能なプロモーターと機能可能な形で接続されてなる本ポリヌクレオチド又はこれを保有する組換ベクター等を宿主細胞へ導入する方法は、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO-471-50338-X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coli Pulser System」 Bio-Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
【0047】
ここで「宿主細胞」としては、例えば、大腸菌(具体的には例えば、K12株、B株、JM109株、XL1-Blue株、C600株、W3110株)、枯草菌、酵母、カビ、ロドコッカス属細菌等の微生物を挙げることができる。好ましくは、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属、Saccharomyces属(具体的には例えば、Saccharomyces cerevisiae)、Schizosaccharomyces属(具体的には例えば、Schizosaccharomyces pombe)、Pichia属(具体的には例えば、Pichia pastoris)、Kluyveromyces属、Aspergillus属及びRhodococcus属(具体的には例えば、Rhodococcus rhodochrousATCC 12674株、Rhodococcus rhodochrous J-1株(FERM BP-1478))に属する微生物等があげられる。
【0048】
次いで本形質転換体の培養物を化合物(2)に作用させる。反応生成物中の5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの量を分析することにより、得られたDNAがかかる能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードすることが確認できる。
【0049】
また、DNAの塩基配列を慣用の方法により配列決定することにより確認することもできる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(例えば、F.Sanger, S.Nicklen, A.R.Coulson著、Proceeding of Natural Academy of Science U.S.A.(1977) 74: 5463-5467頁参照)等により解析することができる。塩基配列分析用の試料調製には、例えば、パーキンエルマー社のABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit等の市販の試薬を用いてもよい。また、適当なDNAシークエンサーを利用して塩基配列を解析することもできる。
【0050】
前記のような発現ベクターの宿主細胞への導入方法としては、DNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等を挙げることができる。
大腸菌への発現プラスミドの導入方法としては、例えば、ヒートショックによる方法を挙げることができ、その際、予め作製したコンピテントセルを用いてもよい。酵母への発現プラスミドの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
【0051】
宿主細胞において機能可能なプロモーターと機能可能な形で接続されてなる本ポリヌクレオチド又はこれを保有する組換ベクター等が導入された形質転換体を選抜するには、例えば、前述のようなベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
当該形質転換体が本ポリヌクレオチドを保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
【0052】
このように作製した発現ベクターを宿主細胞に導入すれば、本酵素を高度に発現する形質転換体が得られる。当該形質転換体を培養することにより、本酵素を発現させることができる。
【0053】
次に、本形質転換体の培養に係る調製方法について説明する。
本形質転換体は、炭素源、窒素源、有機塩、無機塩等を適宜含有する各種の微生物を培養するための培地を用いて培養すればよい。
【0054】
炭素源としては、例えば、グルコ−ス、デキストリン、シュ−クロ−ス等の糖類、グリセロ−ル等の糖アルコ−ル、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1%(w/v)〜30%(w/v)程度である。
【0055】
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コ−ン・スティ−プ・リカ−(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1%(w/v)〜30%(w/v)程度である。
【0056】
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001%(w/v)〜5%(w/v)程度である。
【0057】
プロモーターとして誘導性のプロモーターと本ポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体を培養する場合には、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと本ポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体を培養する場合には、本酵素の産生を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio-β-D-galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。また、trpプロモーター等のインドール酢酸(IAA)で誘導されるタイプのプロモーターと本ポリヌクレオチドとが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体を培養する場合には、本酵素の産生を誘導するための誘導剤として、例えば、IAAを培地中に少量加えることもできる。
【0058】
培養方法としては、例えば、固体培養、液体培養(試験管培養、フラスコ培養、ジャーファーメンター培養等)が挙げられる。
培養温度及び培養液のpHは、本形質転換体が生育する範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、培養温度は約15℃〜約45℃、好ましくは10℃〜37℃の範囲、培養液のpHは約4〜約8の範囲を挙げることができる。培養時間は、培養条件により適宜選択することができるが、通常、約1日間〜約7日間である。尚、ロドコッカス属に属する微生物の好ましい培養は、4℃〜36℃、好ましくは、20℃〜30℃で18時間〜96時間で行えばよい。
【0059】
本形質転換体の培養物は、そのまま本発明製造方法の触媒として用いることができる。本形質転換体の培養物を用いる方法のうち、本形質転換体の菌体をそのまま用いる方法としては、例えば、(1)培養液をそのまま用いる方法、(2)培養液を遠心分離等することにより回収された菌体(必要に応じて、緩衝液又は水で洗浄した後の湿菌体)を用いる方法等を挙げることができる。
【0060】
また本発明製造方法の触媒として、本形質転換体の培養物の処理物を用いることもできる。当該処理物としては、例えば、培養して得られた菌体を有機溶媒(アセトン、エタノール等)処理したもの、凍結乾燥処理したもの若しくはアルカリ処理したもの、又は、菌体を物理的若しくは酵素的に破砕したもの、又は、これらのものから分離・抽出された粗酵素等を挙げることができる。さらに、前記処理物には、前記処理を施した後、公知の方法により固定化処理したものも含まれる。
【0061】
本形質転換体の培養物から本酵素を精製する方法としては、通常のタンパク質の精製において使用される方法を適用すればよい。例えば、次のような方法を挙げることができる。
【0062】
まず、本形質転換体の培養物から遠心分離等により菌体を集めた後、これを超音波処理、ダイノミル処理、フレンチプレス処理等の物理的破砕法又は界面活性剤若しくはリゾチ−ム等の溶菌酵素を用いる化学的破砕法等によって破砕する。得られた破砕液から遠心分離、メンブレンフィルタ−濾過等により不純物を除去することにより無細胞抽出液を調製し、これを陽イオン交換クロマトグラフィ−、陰イオン交換クロマトグラフィ−、疎水クロマトグラフィ−、ゲルろ過クロマトグラフィ−、金属キレ−トクロマトグラフィ−等の分離精製方法を適宜用いて分画することによって、本酵素を精製することができる。
クロマトグラフィ−に使用する担体としては、例えば、カルボキシメチル(CM)基、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、フェニル基若しくはブチル基を導入したセルロ−ス、デキストリン又はアガロ−ス等の不溶性高分子担体が挙げられる。市販の担体充填済カラムを用いることもでき、かかる市販の担体充填済カラムとしては、例えば、Q−Sepharose FF、Phenyl−Sepharose HP(商品名、いずれもアマシャム ファルマシア バイオテク社製)、TSK−gel G3000SW(商品名、東ソ−社製)等が挙げられる。
尚、本酵素を含む画分を選抜するには、例えば、本発明における「式(2)で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力」の存在有無又はその程度に基づき選抜すればよい。
【0063】
具体的な形態としては、例えば、本形質転換体の培養物、かかる培養物の処理物(例えば、無細胞抽出液、粗精製タンパク質、精製タンパク質及びこれらの固定化物等)を挙げることができる。ここで、培養物の処理物としては、例えば、凍結乾燥微生物、有機溶媒処理微生物、乾燥微生物、微生物摩砕物、微生物の自己消化物、微生物の超音波処理物、微生物抽出物、微生物のアルカリ処理物を挙げることができる。また、固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロ−ス、イオン交換樹脂等に本酵素等を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギ−ナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本酵素等を閉じ込める方法)を挙げることができる。
【0064】
尚、本形質転換体を用いた工業的な生産を考慮すれば、未処理状態の微生物を用いる方法よりも当該微生物を死滅化させた処理物を用いる方法のほうが製造設備の制限等の点から好ましい場合がある。そのための死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコ−ル、フェノ−ル、アミン、サルファイド、エ−テル、アルデヒド、ケトン、シアン、抗生物質)を挙げることができる。一般的には、これらの殺菌法のうちできるだけ本酵素の前記「式(2)で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力」を失活させず、且つ、反応系への残留、汚染等の影響が少ない処理方法を選択することが望ましい。
【0065】
以下、更に具体的に説明する。
1.培養物の処理物(その1)
本形質転換体の培養物から菌体を回収するには、遠心分離法や膜ろ過法を用いることができる。遠心分離は、限定されるわけではないが、例えば、3,000〜4,500×g、5〜20分間、4℃の条件で行うことができる。回収された本形質転換体を、必要に応じて、リン酸−ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液等で洗浄し、懸濁することができる。このようにして菌体懸濁液が得られる。
菌体の破砕方法としては、超音波処理、フレンチプレスやホモジナイザーによる高圧処理、ガラスビーズ等による磨砕処理、リゾチーム、セルラーゼ、ペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍結融解処理、低張液処理、ファージによる溶菌誘導処理等を利用することができる。破砕処理は、必要に応じて氷冷下で行う。例えば、菌体懸濁液を超音波破砕機VP−15S(タイテック、日本)を用いて、出力コントロール4、DUTY CYCLE 40%、PULS、TIMER=Bモード10sの条件で氷冷下に1〜5分、好ましくは3分間破砕すればよい。また、例えば、菌体懸濁液を100 MPa加圧条件でNiro Soavi社製ホモジナイザーPANDA2K型を用いて破砕してもよい。
破砕後、本形質転換体の破砕物から、必要に応じて菌体の破砕残渣を除くことができる。残渣を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過等が挙げられる。必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。遠心分離は、限定されるわけではないが、例えば、4,000〜25,000×g、3〜45分間、4℃の条件で行うことができる。このようにして破砕物から残渣を除去すればよい。
【0066】
2.培養物の処理物(その2)
前記の本形質転換体の破砕物や無細胞抽出液を加熱処理することにより、本酵素以外の多くのタンパク質を変性させることができる。従って、本形質転換体の破砕物又は無細胞抽出液を加熱処理することにより、本酵素液を可溶性画分として取得することができる。本酵素には、上記のように取得される本酵素液が含まれる。
ここで「加熱処理」とは、本形質転換体に由来する本酵素以外のタンパク質を変性させるために行う熱失活操作をいい、当該加熱処理の温度は好ましくは50℃以上75℃以下、さらに好ましくは60℃以上70℃以下である。加熱処理の時間は特に限定されないが、本形質転換体の破砕物や無細胞抽出液が設定温度となってから10分以上が好ましい。さらに好ましくは1時間以上5時間以下である。
例えば、加熱処理は、本形質転換体の破砕物等を試験管に入れ、所定の温度に設定したウォーターバスにおいて所定の時間インキュベートすることにより行うことができる。また、温度計を付した三ツ口フラスコに本形質転換体の破砕物等を入れ、所定の温度まで加熱し、所定の時間加熱処理を行うこともできる。
また、本発明において、本形質転換体の破砕物を加熱処理(前加熱)した後、破砕残渣を除き、その後再び加熱処理を行ってもよい。再加熱の際、亜鉛塩を存在させてもよい。
加熱処理により生じた不溶性物を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過等が挙げられ、必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して除去効率を上げることもできる。必要があれば、各種クロマトグラフィー等(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等)を用いて更に精製してもよい。
【0067】
本発明製造方法は、通常、水の存在下で行われる。この場合の水は、緩衝液の形態であってもよい。当該緩衝液に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸のアルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
また本発明製造方法は、更に疎水性有機溶媒を用いて、水と疎水性有機溶媒との存在下で行うこともできる。この場合に用いられる疎水性有機溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−オクチルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル類、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合物を挙げることができる。
また本発明製造方法は、更に親水性有機溶媒を用いて、水と水性媒体との存在下で行うこともできる。この場合に用いられる親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0068】
本発明製造方法は、通常、水層のpHが3〜10の範囲内で行われるが、反応が進行する範囲内で適宜変化させてもよい。
【0069】
本発明製造方法は、通常、約0℃〜約60℃の範囲内で行われるが、反応が進行する範囲内で適宜変化させてもよい。
【0070】
本発明製造方法は、通常、約0.5時間〜約10日間の範囲内で行われる。反応の終点は、原料化合物である式(2)で示されるN−カルバモイルアミノ化合物(即ち、化合物(2))の添加終了後、例えば、反応液中の当該式(2)で示されるN−カルバモイルアミノ化合物の量を、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により測定することにより確認することができる。
【0071】
本発明製造方法における原料化合物である式(2)で示されるN−カルバモイルアミノ化合物(即ち、化合物(2))の濃度は、通常、50%(w/v)以下であり、反応系中の当該式(2)で示されるN−カルバモイルアミノ化合物の濃度を略一定に保つために、当該式(2)で示されるN−カルバモイルアミノ化合物(即ち、化合物(2))を反応系に連続又は逐次加えてもよい。
【0072】
本発明製造方法では、必要に応じて反応系に、例えば、グルコース、シュークロース、フルクトース等の糖類、又は、TritonX−100若しくはTween60等の界面活性剤等を加えることもできる。
【0073】
反応液からの5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの回収は、一般に知られている任意の方法で行えばよい。
例えば、反応液の有機溶媒抽出操作、濃縮操作等の後処理を、必要によりカラムクロマトグラフィ−、蒸留等を組み合わせて、行うことにより精製する方法を挙げることができる。
具体的には例えば、反応液に塩酸等の鉱酸を加えて、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの鉱酸塩として結晶精製する方法を好ましく挙げることができる。
【0074】
本発明製造方法は、原料化合物である式(2)で示されるN−カルバモイルアミノ化合物(即ち、化合物(2))の製造方法として前工程を更に含むこともできる。
このような前工程は、式(1)

(式中、Rは直鎖状又は環状のアルキル基を表わす。該アルキル基は置換基を有していてもよく、該アルキル基の炭素数は1〜6である。)
で表わされるイソ尿素化合物(以下、化合物(1)と記すこともある。)に、当該イソ尿素化合物を対応するN−カルバモイルアミノ化合物に変換する能力を有する酵素(以下、前工程酵素と記すこともある。)又は該酵素の産生能を有する微生物(以下、前工程微生物と記すこともある。)の培養物若しくはその処理物を作用させて式(2)

で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物を得る工程を含む。
【0075】
ここで、化合物(1)における「直鎖状又は環状のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。該アルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、炭素数1〜4程度の直鎖状アルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜4程度の直鎖状アルコキシ基等が挙げられ、置換基を有する(直鎖状又は環状の)アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基等の分枝状アルキル基、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基等のハロゲン化アルキル基、例えば、メトキシメチル基等のアルコキシアルキル基等が挙げられる。
好ましいRとしては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0076】
前記の前工程において用いられる触媒としての酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物は、化合物(1)を化合物(2)に変換する能力を有する。このような能力を有する微生物(即ち、前工程微生物)としては、シュードモナス(Pseudomonas)属及びステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属からなる群より選ばれる1以上の微生物を挙げることができる。
また、このような能力を有する微生物(即ち、前工程微生物)としては、下記の微生物群Aから選ばれる少なくとも1つ以上の微生物を挙げることができる。
<微生物群A>
アクチノプラネス・ウタヘンシス(Actinoplanes utahensis)、アエロモナス・リクエファシエンス(Aeromonas liquefaciens)、アルスロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・モリタイ(Bacillus moritai)、クリプトコッカス・フミコルス(Cryptococcus humicolus)、クルイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、マイコバクテリウム・ディエルンホフェリ(Mycobacterium diernhoferi)、ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea)、シュードノカルディア・オートトロフィカ(Pseudonocardia autotrophica)、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)、ステノトロホモナス・ニトリティレデュセンス(Stenotrophomonas nitritireducens)、ステノトロフォモナス・リゾフィラ(Stenotrophomonas rhizophila)、ステノトロフォモナス・エスピー(Stenotrophomonas sp.)、ストレプトマイセス・カルノサス(Streptomyces carnosus)、トリコスポロン・アクアタイル(Trichosporon aquatile)
更に、このような能力を有する好ましい微生物としては、例えば、下記の微生物群Bから選ばれる少なくとも1つ以上の微生物を挙げることができる。
<微生物群B>
アクチノプラネス・ウタヘンシス(Actinoplanes utahensis) IFO 13244t、アエロモナス・リクエファシエンス(Aeromonas liquefaciens) IFO 12978、アルスロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.) ATCC 27778、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans) IFO6353、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis) IFO 3331、バシラス・モリタイ(Bacillus moritai) ATCC 21282、クリプトコッカス・フミコルス(Cryptococcus humicolus) IFO 1527、クルイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus) IFO 0541、マイコバクテリウム・ディエルンホフェリ(Mycobacterium diernhoferi) IFO 3707、ピキア・アノマラ(Pichia anomala) IFO 0963、ピキア・アノマラ(Pichia anomala) IFO 1181、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) IAM 1002、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) IFO 14671、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) IFO 14796、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) JCM 6156、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) JCM 6157、シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea) JCM 2783t、シュードノカルディア・オートトロフィカ(Pseudonocardia autotrophica)IFO 12743T、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.) ATCC 19148、ステノトロホモナス・ニトリティレデュセンス(Stenotrophomonas nitritireducens) JCM13311、ステノトロフォモナス・リゾフィラ(Stenotrophomonas rhizophila)JCM13333、ステノトロフォモナス・エスピー(Stenotrophomonas sp.) SC-1(FERM-BP 10785)、ストレプトマイセス・カルノサス(Streptomyces carnosus) IFO 13025t、トリコスポロン・アクアタイル(Trichosporon aquatile) ATCC 22310
【0077】
これら菌株は天然から分離してもよいし、各菌株保存機関より購入することにより容易に入手することができる。更にステノトロフォモナス・エスピー(Stenotrophomonas sp.)としては寄託番号FERM-BP 10785として製品評価技術基盤機構・生物資源部門に登録されている菌株がより好ましい。
このような菌株を購入できる各菌株保存機関として、例えば、下記の菌株保存機関を挙げることができる。
【0078】
1.IFO(Institute of Fermentation Osaka:財団法人 醗酵研究所)
現在は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門(NBRC)で取り扱い可能であり、入手に際しては http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCDispSearchServlet?lang=jp にアクセスすればよい。
2.ATCC(American Type Culture Collection)
住商ファーマインターナショナル株式会社 ATCC事業グループで取り扱い可能であり、入手に際しては http://www.summitpharma.co.jp/japanese/service/s_ATCC.html にアクセスすればよい。
3.IAMカルチャーコレクション
現在は、IAMカルチャーコレクション保存菌株のうち、細菌、酵母、糸状菌の場合には独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(JCM)に、また微細藻類の場合には独立行政法人 国立環境研究所微生物系統保存施設(NIES)に移管されている。入手に際しては http://www.jcm.riken.go.jp/JCM/aboutJCM_J.shtml、http://mcc.nies.go.jp/aboutOnlineOrder.do にアクセスすればよい。
4.JCM(理化学研究所微生物系統保存施設 (Japan Collection of Microorganisms, JCM)
現在は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター (RIKEN BRC) 微生物材料開発室に移管されている。入手に際しては http://www.jcm.riken.go.jp/JCM/aboutJCM_J.shtml にアクセスすればよい。
【0079】
また、前工程において用いられる触媒としての酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物は、化合物(1)を化合物(2)に変換する能力を有する酵素又は微生物を探索することにより入手・調製することもできる。具体的には、例えば、試験管に滅菌済み培地5mlを入れ、これに各菌株保存機関より購入することにより入手された菌体又は土壌中から純粋分離することにより調製された菌体を植菌する。これを30℃で好気条件下、振盪培養する。培養終了後、遠心分離により菌体を回収することにより、生菌体を得る。得られる生菌体に0.2Mリン酸カリウムバッファー(pH7)を1.5ml加え、懸濁後、ジメチルスルホキシド15μlに溶解したN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチルイソ尿素を1.5mg添加した後、得られる混合物を30℃で2〜3日間振盪させる。
反応終了後、反応液をサンプリングし、反応液中に生成するN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素の量を液体クロマトグラフィー等により分析する。
このようにして、イソ尿素化合物を対応するN−カルバモイルアミノ化合物に変換する能力を有する酵素の産生能を有する微生物を選抜する。
【0080】
次に、前工程微生物の調製方法について説明する。
前工程微生物は、炭素源、窒素源、有機塩、無機塩等を適宜含有する各種の微生物を培養するための培地を用いて培養すればよい。
【0081】
炭素源としては、例えば、グルコ−ス、デキストリン、シュ−クロ−ス等の糖類、グリセロ−ル等の糖アルコ−ル、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1%(w/v)〜30%(w/v)程度である。
【0082】
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コ−ン・スティ−プ・リカ−(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1%(w/v)〜30%(w/v)程度である。
【0083】
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001%(w/v)〜5%(w/v)程度である。
【0084】
培養方法としては、例えば、固体培養、液体培養(試験管培養、フラスコ培養、ジャーファーメンター培養等)が挙げられる。
培養温度及び培養液のpHは、前工程微生物が生育する範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、培養温度は約15℃〜約45℃の範囲、培養液のpHは約4〜約8の範囲を挙げることができる。培養時間は、培養条件により適宜選択することができるが、通常、約1日間〜約7日間である。
【0085】
前工程微生物の培養物は、そのまま前工程の触媒として用いることができる。前工程微生物の培養物を用いる方法のうち、前工程微生物の菌体をそのまま用いる方法としては、例えば、(1)培養液をそのまま用いる方法、(2)培養液を遠心分離等することにより回収された菌体(必要に応じて、緩衝液又は水で洗浄した後の湿菌体)を用いる方法等を挙げることができる。
【0086】
また前工程の触媒として、前工程微生物の培養物の処理物を用いることもできる。当該処理物としては、例えば、培養して得られた菌体を有機溶媒(アセトン、エタノール等)処理したもの、凍結乾燥処理したもの若しくはアルカリ処理したもの、又は、菌体を物理的若しくは酵素的に破砕したもの、又は、これらのものから分離・抽出された粗酵素等を挙げることができる。さらに、前記処理物には、前記処理を施した後、公知の方法により固定化処理したものも含まれる。
【0087】
前工程微生物の培養物から前工程酵素を精製する方法としては、通常のタンパク質の精製において使用される方法を適用すればよい。例えば、次のような方法を挙げることができる。
【0088】
まず、前工程微生物の培養物から遠心分離等により菌体を集めた後、これを超音波処理、ダイノミル処理、フレンチプレス処理等の物理的破砕法又は界面活性剤若しくはリゾチ−ム等の溶菌酵素を用いる化学的破砕法等によって破砕する。得られた破砕液から遠心分離、メンブレンフィルタ−濾過等により不純物を除去することにより無細胞抽出液を調製し、これを陽イオン交換クロマトグラフィ−、陰イオン交換クロマトグラフィ−、疎水クロマトグラフィ−、ゲルろ過クロマトグラフィ−、金属キレ−トクロマトグラフィ−等の分離精製方法を適宜用いて分画することによって、前工程酵素を精製することができる。
クロマトグラフィ−に使用する担体としては、例えば、カルボキシメチル(CM)基、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、フェニル基若しくはブチル基を導入したセルロ−ス、デキストリン又はアガロ−ス等の不溶性高分子担体が挙げられる。市販の担体充填済カラムを用いることもでき、かかる市販の担体充填済カラムとしては、例えば、Q−Sepharose FF、Phenyl−Sepharose HP(商品名、いずれもアマシャム ファルマシア バイオテク社製)、TSK−gel G3000SW(商品名、東ソ−社製)等が挙げられる。
尚、前工程酵素を含む画分を選抜するには、例えば、前工程における「イソ尿素化合物を対応するN−カルバモイルアミノ化合物に変換する能力」の存在有無又はその程度に基づき選抜すればよい。
【0089】
具体的な形態としては、例えば、前工程微生物の培養物、かかる培養物の処理物(例えば、無細胞抽出液、粗精製タンパク質、精製タンパク質及びこれらの固定化物等)を挙げることができる。ここで、培養物の処理物としては、例えば、凍結乾燥微生物、有機溶媒処理微生物、乾燥微生物、微生物摩砕物、微生物の自己消化物、微生物の超音波処理物、微生物抽出物、微生物のアルカリ処理物を挙げることができる。また、固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロ−ス、イオン交換樹脂等に本酵素等を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギ−ナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本酵素等を閉じ込める方法)を挙げることができる。
【0090】
尚、前工程微生物を用いた工業的な生産を考慮すれば、未処理状態の微生物を用いる方法よりも当該微生物を死滅化させた処理物を用いる方法のほうが製造設備の制限等の点から好ましい場合がある。そのための死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコ−ル、フェノ−ル、アミン、サルファイド、エ−テル、アルデヒド、ケトン、シアン、抗生物質)を挙げることができる。一般的には、これらの殺菌法のうちできるだけ前工程酵素の前記「イソ尿素化合物を対応するN−カルバモイルアミノ化合物に変換する能力」を失活させず、且つ、反応系への残留、汚染等の影響が少ない処理方法を選択することが望ましい。
【0091】
前工程は、通常、水の存在下で行われる。この場合の水は、緩衝液の形態であってもよい。当該緩衝液に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸のアルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
また前工程は、更に疎水性有機溶媒を用いて、水と疎水性有機溶媒との存在下で行うこともできる。この場合に用いられる疎水性有機溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−オクチルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル類、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合物を挙げることができる。
また前工程は、更に親水性有機溶媒を用いて、水と水性媒体との存在下で行うこともできる。この場合に用いられる親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0092】
前工程は、通常、水層のpHが3〜10の範囲内で行われるが、反応が進行する範囲内で適宜変化させてもよい。
【0093】
前工程は、通常、約0℃〜約60℃の範囲内で行われるが、反応が進行する範囲内で適宜変化させてもよい。
【0094】
前工程は、通常、約0.5時間〜約10日間の範囲内で行われる。反応の終点は、原料化合物である式(1)で示されるイソ尿素化合物(即ち、化合物(1))の添加終了後、例えば、反応液中の当該式(1)で示されるイソ尿素化合物の量を、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により測定することにより確認することができる。
【0095】
前工程における原料化合物である式(1)で示されるイソ尿素化合物(即ち、化合物(1))の濃度は、通常、50%(w/v)以下であり、反応系中の当該式(1)で示されるイソ尿素化合物の濃度を略一定に保つために、当該式(1)で示されるイソ尿素化合物(即ち、化合物(1))を反応系に連続又は逐次加えてもよい。
【0096】
前工程では、必要に応じて反応系に、例えば、グルコース、シュークロース、フルクトース等の糖類、又は、TritonX−100若しくはTween60等の界面活性剤等を加えることもできる。
【0097】
反応液からの式(2)で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物の回収は、一般に知られている任意の方法で行えばよい。
例えば、反応液の有機溶媒抽出操作、濃縮操作等の後処理を、必要によりカラムクロマトグラフィ−、蒸留等を組み合わせて、行うことにより精製する方法を挙げることができる。
【0098】
原料化合物である式(1)で示されるイソ尿素化合物(即ち、化合物(1))の製造方法としては、例えば、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと式(3)

(式中、Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされる化合物(以下、化合物(3)と記すことがある)とを混合することにより、例えば、下記のようにして得ることができる。
化合物(3)としては、例えば、O−メチル−N−ニトロイソ尿素、O−エチル−N−ニトロイソ尿素等を挙げることができる。
【0099】
特開平10−120666号公報の実施例1〜16に準じた方法に従い、まず、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと化合物(3)とを水中、室温で反応させることにより、式(4)

(式中、Rは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされる化合物(以下、化合物(4)と記すことがある)を主として製造し、次いで得られた化合物(4)を脱ニトロ化することにより、化合物(1)を得ればよい。
【0100】
尚、上記方法では、化合物(4)を主として製造する際に、副生物として化合物(1)も直接的に製造されるため、これを回収して利用してもよい。
より具体的には例えば、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールと化合物(3)とを反応させて、中間体として有用な化合物(4)を製造する方法としては、化合物(3)を、必要に応じて、水に溶解させた後、10℃〜35℃程度の温度で5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールを混合して、化合物(4)及び化合物(1)を含む混合物を得、結晶として析出する化合物(4)を濾過、遠心分離等で固液分離して、化合物(4)を取り出す方法等を挙げることができる。そして、結晶として化合物(4)を取り出した濾液は、化合物(1)を含む水溶液として得ることができる。
【実施例】
【0101】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1 (本ポリヌクレオチドを有するプラスミドの合成法(その1))
下記の参考例3記載の方法に準じて選抜された、N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する微生物(Rhodococcus sp.)からQIAGEN Genomic-tip (Qiagen社製)を用いて染色体DNA(A)を調製した。
Rhodococcus R312 (ブレビバクテリウムR 312(CBS 717-73))のアミダーゼ遺伝子配列を基に、配列番号3で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号4で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。
合成された2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを1組のプライマーセットとして、且つ、前記で調製された染色体DNA(A)を鋳型にして、下記の反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用した。)
【0102】
[反応液組成]
染色体DNA溶液(A) 20μl
dNTP(各2.5mM-mix) 1μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.4μl
5xbuffer(with MgCl) 10μl
enz.expandHiFi (5U/ml) 0.5μl
超純水 17.7μl
【0103】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(10秒間)‐60℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを30回行い、さらに72℃で7分間保持した。
【0104】
その後、PCR反応液の一部をとり、アガロースゲル電気泳動を行ったところ、約1.6kbpのDNA断片のバンドが検出された。
約1.6kbpのDNA断片のバンドが検出されたPCR反応液のそれぞれをそのまま用いて、上記の約1.6kbpのDNA断片を、pCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションし(Invitrogen社製TOPOTMTA cloningキット使用)、得られたライゲーション液で大腸菌DH5α株を形質転換した。
50μg/mlのアンピシリンを含有するLB(1%バクト−トリプトン、0.5%バクト−酵母エキス、1%塩化ナトリウム)寒天培地に5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド(以下、X−galと記す)4%水溶液30μl及び0.1M IPTG30μlを塗布し、そこに得られた形質転換体を接種し培養した。形成したコロニーのうち白いコロニーを1個ずつとり、このコロニーを50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(30℃、24時間)。それぞれの培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。
以下、得られたDNA断片に由来するプラスミドをプラスミドpCRamiと記すこともある。
プラスミドpCRamiに挿入されたDNA断片の塩基配列を解析したところ、挿入されたDNA断片の塩基配列は配列番号2で示される塩基配列を有することが分かった。
尚、プラスミドに挿入されたDNA断片の塩基配列の解析は、Dye Terminator Cycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いて各プラスミドを鋳型としてシークエンス反応を行い、得られたDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析することにより行った。
【0105】
得られたプラスミドpCRamiを2種類の制限酵素(SacI及びKpnI)により2重消化し、次いで、このようにして2重消化された約1.6kbpのDNA断片を精製した。
一方、プラスミドベクターpTV118N(宝酒造社製)を2種類の制限酵素(SacI及びKpnI)により2重消化し、次いで、このようにして2重消化されたDNA断片を精製した。
得られた2種類の精製させたDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした後、次いで得られたライゲーション液で大腸菌DH5α株を形質転換した。
得られた形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養し、生育してきたコロニーの中から3コロニーを無作為に選抜した。この選抜したコロニーをそれぞれ50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(30℃、24時間)。それぞれの培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。
尚、取り出されたプラスミドのそれぞれの一部を、SacIとKpnIとの2種類の制限酵素により2重消化した後、2重消化されたDNA断片をゲル電気泳動することにより、当該取り出されたプラスミドの全てには前記約1.6kbpのDNA断片が挿入されていることを確認した。(以下、このプラスミドをプラスミドpTVamiと記すこともある。)
【0106】
このようにして得られたプラスミドpTVamiを用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。得られた形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(100ml)に接種し、振盪培養した(30℃、26時間)。得られた培養液を遠心分離することにより、本形質転換体を得た。
【0107】
実施例2 (本酵素を産生する大腸菌組換え体を用いたN−カルバモイルアミノ化合物からの5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造例)
実施例1で得られた本形質転換体(即ち、プラスミドpTVamiを有する大腸菌DH5α株)を50μg/mlのアンピシリンとを含有する滅菌LB培地(100ml)に接種し、振盪培養した(30℃、26時間)。得られた培養液を遠心分離し、湿菌体約0.6gを得た。得られた湿菌体に、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素5mg、ジメチルスルホキシド50μl、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)5mlを混合し、37℃で144時間攪拌した。
反応終了後、反応液を0.6mlサンプリングした。当該サンプリング液から菌体を除去した後、生成した5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの量を液体クロマトグラフィーにより分析した。その結果、反応に用いたN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素の量に対して5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールは91.6%生成していることがわかった。
<含量分析条件>
カラム:Cadenza CD−C18(4.6mmφ×15cm、3μm)(Imtakt社製)
移動相:A液 (5mmol/Lオクタンスルホン酸ナトリウム+50mmol/Lリン酸2水素カリウム水溶液、B液 アセトニトリル
時間(分) A液(%):B液(%)
0 90:10、
5 90:10、
25 50:50、
40 50:50、
40.1 90:10
流量:1ml/分
カラム温度:40℃
検出:254nm
【0108】
実施例3 (本酵素の調製)
参考例3記載の方法に準じて選抜された、N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する微生物(Rhodococcus sp.)から湿菌体約2.2gを調製し、20mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)20mlに懸濁しマルチビーズショッカー(安井器械製、ガラスビーズ0.1mmΦ、2500rpm、20分)で破砕した。得られた破砕液を遠心分離(10000rpm、10分間)し、得られた上清にプロタミン硫酸を添加した後、再度遠心分離(10000rpm、10分間)することにより、遠心上清を得た。
得られた遠心上清約20mlを限外ろ過膜(30kNMWL)で2mlにまで濃縮した。得られた濃縮物をイオン交換クロマトグラフィーカラム[HiTrap Q FF(アマシャムバイオサイエンス社製)][リン酸カリウムバッファー(20mM、pH7)で平衡化したもの]に展着し、塩化ナトリウムを溶解したリン酸カリウムバッファー(塩化ナトリウム濃度0→1.0Mの濃度勾配)を移動層として溶出することにより、還元酵素活性を有する画分として塩化ナトリウム濃度0.14〜0.65Mの画分4mlを得た。
得られた活性画分4mlを限外ろ過膜(30kNMWL)で2mlにまで濃縮した後、得られた濃縮物に硫酸アンモニウムをその濃度が1.5Mになるまで徐々に加えた。これを疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム[HiTrap Butyl FF(アマシャムバイオサイエンス社製)][1.5M硫酸アンモニウムを含むリン酸カリウムバッファー(20mM、pH7)で平衡化したもの]に展着し、硫酸アンモニウムを溶解したリン酸カリウムバッファー(硫酸アンモニウム濃度1.5M→0Mの濃度勾配)を移動層として溶出することにより、還元酵素活性を有する画分として硫酸アンモニウム濃度が0.25〜0.47Mの溶出画分1mlを得た。
得られた活性画分4mlを、限外ろ過膜(30kNMWL)により0.15MのNaClを含むリン酸ナトリウムバッファー(50mM、pH7)にて脱塩し、バッファー交換し、約0.1mlまで濃縮した。得られた濃縮物をゲル濾過[カラム:スーパーデックス200(10/300GL)(アマシャムバイオサイエンス社製)][移動層:0.15MのNaClを含むリン酸ナトリウムバッファー(50mM、pH7)]することにより、N−カルバモイルアミノ化合物を5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに加水分解する活性を有する画分として分子量約98000ダルトンの本酵素を含む約1mlの活性画分を得た。
尚、クロマトグラフィー等で得られた画分について、以下の操作により加水分解酵素活性を測定した。ジメチルスルホキシド15μlに溶解したN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素を1.5mg添加した後、クロマトグラフィー等により得られた溶出画分と0.2Mリン酸カリウムバッファー(pH7)とを加えて全量を1.5mlとし、得られた混合物を30℃で1〜2日間振盪させた。
反応終了後、反応液を0.6mlサンプリングし、反応液中に生成した5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの量を液体クロマトグラフィーにより画分の加水分解酵素活性を求めた。
<含量分析条件>
カラム:Cadenza CD−C18(4.6mmφ×15cm、3μm)(Imtakt社製)
移動相:A液 (5mmol/Lオクタンスルホン酸ナトリウム+50mmol/Lリン酸2水素カリウム水溶液、B液 アセトニトリル
時間(分) A液(%):B液(%)
0 90:10、
5 90:10、
25 50:50、
40 50:50、
40.1 90:10
流量:1ml/分
カラム温度:40℃
検出:254nm
【0109】
実施例4 (本ポリヌクレオチドを有するプラスミドの合成法(その2))
配列番号1で示されるアミノ酸配列に対応するforwardプライマーとreverseプライマーとを約40bpの長さずつに切り分ける形でそれぞれ39本のプライマーを合成する。これらのプライマーを以下の条件でAssembly PCR法を行う。
【0110】
[反応液組成]
dNTP(各2.5mM-mix) 1μl
プライマーmix(250μM) 0.5μl
5xbuffer(with MgCl) 10μl
enz.expandHiFi (5U/μl) 0.5μl
超純水 38μl
【0111】
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System 9700にセットした後、94℃(30秒間)‐52℃(30秒間)‐68℃(30秒間)のサイクルを55回行う。
【0112】
反応終了後、反応液をテンプレートにして再び以下の反応条件でPCRを行う。94℃(2分間)に加熱した後、94℃(30秒間)‐53℃(30秒間)‐68℃(1.5分間)のサイクルを30回行った。このとき、配列番号3で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドプライマーとを使用する。
【0113】
[反応液組成]
テンプレート 1μl
dNTP(各2.5mM-mix) 1μl
プライマー(250μM) 各0.5μl
5xbuffer(with MgCl) 10μl
enz.expandHiFi (5U/μl) 0.5μl
超純水 36.5μl
【0114】
その後、PCR反応液を一部とりアガロースゲルで精製し、2種類の制限酵素(SacI及びKpnI)を加え、約1500bpのDNA断片を2重消化し、次いで酵素消化されたDNA断片を精製する。
一方、プラスミドベクターpTV118N(TakaRa社製)を2種類の制限酵素(SacI及びKpnI)により2重消化させ、酵素消化されたDNA断片を精製する。
【0115】
これらの2種の酵素消化させたDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションし、得られたライゲーション液で大腸菌DH5α株を形質転換する。
得られた形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養し、生育してきたコロニーをそれぞれ50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養する(37℃、17時間)。このようにして、プラスミドpTVamiを有する大腸菌DH5α株(即ち、本形質転換体)を得ることができる。
尚、上記の培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出すことにより、プラスミドpTVamiを得る。
【0116】
参考例1 (化合物(1)の製造方法)
N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチル−N’−ニトロイソ尿素(化合物(4)のRがメチル基である化合物)50gをアセトニトリル400mL中で攪拌しながら、当該混合物に28%アンモニウム水58.6gを25〜30℃で滴下した。
得られた混合物を1時間保温した後、減圧下アセトニトリルを留去した。得られた残渣を酢酸エチル120mLで希釈し、無水硫酸マグネシウム5gで脱水、不溶成分を濾過して減圧濃縮した。
このように得られた油状物質にトルエン50mL、n−ヘキサン30mLを加えて溶解し、得られた溶解物にn−ヘキサンを徐々に加えていくと結晶が析出した。これを濾取した後、同様にトルエン/n−ヘキサンより再結晶して濾取し、次いで減圧乾燥することにより、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチルイソ尿素の白色結晶18gを得た。得られた白色結晶の物性は下記の通りであった。
【0117】
<白色結晶の物性>
液体クロマトグラフィー面積百分率による純度:98.3%
融点:71〜72℃
1H−NMR:3.7(s,3H)、4.4(s,2H)、4.9(s,2H)、7.4(s,1H)
【0118】
参考例2 (化合物(2)の製造方法)
シアン酸カリウム24.3gを水340mLに溶解し、当該溶解物に50℃で5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾール塩酸塩水溶液(含量35wt%)135gを滴下した。
得られた混合物を1時間保温すると結晶が析出した。これを室温まで冷却した後、これを濾過して温水で洗浄し、次いで減圧乾燥することにより、N−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素の白色結晶45gを得た。得られた白色結晶の物性は下記の通りであった。
【0119】
<白色結晶の物性>
液体クロマトグラフィー面積百分率による純度:98.6%
融点:173℃
1H−NMR:4.3(s,2H)、5.7(s,2H)、6.6(s,1H)、7.5(s,1H)
【0120】
参考例3 (N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素の産生能を有する微生物の探索)
試験管に滅菌済み培地(1Lの水に、グルコース20g、ポリペプトン5g、酵母エキス3g、肉エキス3g、硫酸アンモニウム2g、リン酸2水素カリウム1g及び硫酸マグネシウム7水和物0.5gを加えた後、pHを7.0に調整したもの)5mlを入れ、これに、各菌株保存機関より購入することにより入手された菌体又は土壌中から純粋分離することにより調製された菌体を植菌する。これを30℃で好気条件下、振盪培養する。培養終了後、遠心分離により菌体を回収することにより、生菌体を得る。ねじ口試験管に0.2Mリン酸カリウムバッファー(pH7)を1.5ml入れ、これに上記の生菌体を加えた後、懸濁する。得られる懸濁液に、ジメチルスルホキシド15μlに溶解したN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素を1.5mg添加した後、得られる混合物を30℃で2〜3日間振盪させる。
反応終了後、反応液を0.6mlサンプリングする。サンプリングされた反応液から菌体を除去した後、反応液中に生成した5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの量を液体クロマトグラフィーにより分析する。
このようにして、N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素の産生能を有する微生物を選抜する。
【0121】
<含量分析条件>
カラム:Cadenza CD−C18(4.6mmφ×15cm、3μm)(Imtakt社製)
移動相:A液 (5mmol/Lオクタンスルホン酸ナトリウム+50mmol/Lリン酸2水素カリウム水溶液、B液 アセトニトリル
時間(分) A液(%):B液(%)
0 90:10、
10 90:10、
30 50:50、
45 50:50、
45.1 90:10
流量:1ml/分
カラム温度:40℃
検出:254nm
【0122】
参考例4 (イソ尿素化合物からのN−カルバモイルアミノ化合物の製造例)
試験管に滅菌済み培地(1Lの水に、グルコース20g、ポリペプトン5g、酵母エキス3g、肉エキス3g、硫酸アンモニウム2g、リン酸2水素カリウム1g及び硫酸マグネシウム7水和物0.5gを加えた後、pHを7.0に調整したもの)5mlを入れ、これに表1で示された各種の菌体を植菌した。これを30℃で好気条件下、振盪培養した。培養終了後、遠心分離により菌体を回収することにより、生菌体を得た。ねじ口試験管に0.2Mリン酸カリウムバッファー(pH7)を1.5ml入れ、これに上記の生菌体を加えた後、懸濁した。得られた懸濁液に、ジメチルスルホキシド15μlに溶解したN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−O−メチルイソ尿素を1.5mg添加した後、得られた混合物を30℃で2〜3日間振盪させた。
反応終了後、反応液を0.6mlサンプリングした。サンプリングされた反応液から菌体を除去した後、反応液中に生成したN−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−尿素の量を液体クロマトグラフィーにより分析した。得られた結果を表2に示す。
【0123】
<含量分析条件>
カラム:Cadenza CD−C18(4.6mmφ×15cm、3μm)(Imtakt社製)
移動相:A液 (5mmol/Lオクタンスルホン酸ナトリウム+50mmol/Lリン酸2水素カリウム水溶液、B液 アセトニトリル
時間(分) A液(%):B液(%)
0 90:10、
10 90:10、
30 50:50、
45 50:50、
45.1 90:10
流量:1ml/分
カラム温度:40℃
検出:254nm
【0124】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明により、新たな5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法等を提供することが可能となる。
【0126】
「配列表フリーテキスト」
配列番号3
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)

で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物に、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが微生物細胞内に導入されて得られる形質転換体の培養物若しくはその処理物を作用させる反応工程を含むことを特徴とする、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法。
【請求項2】
前記酵素が、下記のアミノ酸配列のいずれかを有する酵素であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列。
b)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列であって、且つ、前記N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列。
c)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、且つ、前記N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列。
【請求項3】
式(2)

で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物に、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換するための触媒としての、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが微生物細胞内に導入されて得られる形質転換体の培養物若しくはその処理物の使用。
【請求項4】
前記酵素が、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する酵素であることを特徴とする請求項3記載の使用。
【請求項5】
式(1)

(式中、Rは直鎖状又は環状のアルキル基を表わす。該アルキル基は置換基を有していてもよく、該アルキル基の炭素数は1〜6である。)
で表わされるイソ尿素化合物に、当該イソ尿素化合物を対応するN−カルバモイルアミノ化合物に変換する能力を有する酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を作用させて式(2)

で表わされるN−カルバモイルアミノ化合物を得る前工程、及び、
前工程で得られたN−カルバモイルアミノ化合物に、当該N−カルバモイルアミノ化合物を対応する5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールに変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが微生物細胞内に導入されて得られる形質転換体の培養物若しくはその処理物を作用させる反応工程を含むことを特徴とする、5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾールの製造方法。
【請求項6】
前記酵素が、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する酵素であることを特徴とする請求項5記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−200182(P2011−200182A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71808(P2010−71808)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】