5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの塩
式Iによって表される化合物5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドのマレイン酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、およびシュウ酸塩と、その調製方法とが開示されている。本発明は、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドである、医薬品として有用な塩と、医薬品として有用な塩を合成する新規な方法とに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本特許出願は、一般に、医薬品として有用な塩と、医薬品として有用な塩を調製する新規な方法とに関する。詳細には、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドである、医薬品として有用な塩と、医薬品として有用な塩を合成する新規な方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミド(式Iの化合物)の調製は、その全体が本明細書に組み込まれている2005年5月16日出願の、特許文献1(’009号公報)に開示されている。
【0003】
【化1】
式Iの化合物を含めた’009号公報に開示されている新規な化合物は、PDE−4阻害剤化合物として分類され、炎症状態、例えばCOPDや喘息などの治療に有用な治療薬である。
【0004】
’009号公報に報告されているように、式Iの化合物は、TLCおよびLC/MS技法によって特徴付けられた。’009号公報に記載された手順は、結晶性固体塩酸性塩の形をとる式Iの化合物をもたらした。しかし、この方法によって単離された塩酸性塩形態は、吸湿性が高く、薬剤に加工することが難しくなる。
【0005】
一般に、治療活性を有することが確認された化合物は、医薬品として使用するために、非常に純度の高い形で提供されなければならない。さらに、医薬品としての使用を目的とした化合物は、薬剤に組み込むために容易に処理されるような形で提供することも望ましい。薬剤に組み込まれた形の化合物は、化学分解に耐性を示す十分堅牢な特徴を有し、それによって薬剤に長い貯蔵寿命が与えられることも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/116009号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(目的)
前述の事項を考慮すると、求められているものは、純度の高い形で治療薬を提供するのに役立つ治療薬の形である。また、処理されかつ貯蔵される環境条件下で分解に対して堅牢な治療薬の形も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
これらおよびその他の目的は、本発明によって有利に提供され、その一態様において式Iの化合物は、結晶性の、周囲環境で安定な、必要に応じて内部に1種または複数の溶媒分子を組み込んだ塩形態、例えば結晶性一水和物の形で提供される。いくつかの実施形態では、塩形態の化合物Iは、マレイン酸塩形態、トシル酸塩形態、フマル酸塩形態、およびシュウ酸塩形態から選択される。いくつかの実施形態では、化合物Iの好ましい塩形態が、マレイン酸一水和物塩である。
【0009】
本発明の一態様は、結晶性マレイン酸一水和物塩形態の、式Iの化合物を提供するための方法であり、
【0010】
【化2】
この方法は、
(a)少なくとも50体積%のi−プロパノールを含む混合イソプロパノール/水溶媒中に、式Iの遊離塩基化合物を一定分量懸濁させるステップであって、この懸濁した材料と溶媒との比が、重量(g)/体積(ml)を単位とした場合に少なくとも約1:8であるステップと、
(b)ステップ「a」で調製された懸濁液を、少なくとも50℃まで加熱するステップと、
(c)ステップ「b」で調製された加熱された懸濁液と、少なくとも1当量のマレイン酸を溶解するのに十分な量の混合溶媒に溶解することによって作製された溶液とを、10分間にわたって混合するステップであって、この混合溶媒が、50体積%のi−プロパノールおよび50体積%の水を含むステップと、
(d)溶液の温度を少なくとも約50℃の温度に維持しながら、ステップ「c」からの混合物を濾過して溶液を得るステップと、
(e)混合物を少なくとも約50℃の温度に維持しながら、ステップ「d」からの濾液に、ステップ「a」で使用した水の体積に基づきさらに約1.25体積の水を10分間にわたって添加するステップと、
(f)ステップ「e」からの溶液を、30分間にわたって約40℃まで冷却し、それによって沈殿物スラリーを形成するステップと、
(g)ステップ「f」からのスラリーを、約40℃の温度で第1の時間にわたり撹拌し、その後、スラリーを2時間にわたって5℃まで冷却するステップと、
(h)必要に応じて、ステップ「g」で沈殿した固形分を収集し、この固形分を、少なくとも66体積%のイソプロパノールを含有する混合イソプロパノール/水溶媒中で洗浄するステップと、
(i)必要に応じて、ステップ「h」で得られた固形分を真空炉内で、55℃で5時間乾燥するステップと
を含む。
【0011】
本発明の別の態様は、上述の発明による5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性マレイン酸一水和物塩(式IIのマレイン酸一水和物化合物)であり、この塩は、
【0012】
【化3−1】
下記の化学シフトデータを与えるプロトンNMR分析(1H NMR、400MHz、DMSO)によって特徴付けられ、
【0013】
【化3−2】
この結晶性形態は、図10に概略的に示される赤外線スペクトルと、回折角(2θで、全ての値は±0.2の精度を反映している)、格子「d」間隔(単位:オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表Iに示されるX線粉末回折パターンとによって特徴付けられる。
【0014】
【表1】
本発明の一態様は、式Iの化合物の、結晶性トシル酸水和物塩形態Iを提供するための方法であり、
【0015】
【化4】
この方法は、
(a)(1)式Iの遊離塩基化合物の一定分量を、懸濁させる式Iの化合物1gに対して少なくとも10mlのアセトニトリル中に、懸濁させるステップ、
(2)ステップ「a」で調製された懸濁液を、少なくとも約60℃の温度まで加熱するステップ、
(3)少なくとも1当量のトルエンスルホン酸を、懸濁液中に混合するステップ、
(4)ステップ「c」で調製された混合物を、少なくとも約70℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(5)t−ブチルメチルエーテルを、混合物中のアセトニトリル:t−ブチルメチルエーテルが13:8の比をもたらす量で、ステップ「d」で調製された高温溶液中に少なくとも20分間にわたって混合するステップ、
(6)混合物を、周囲温度で少なくとも約2時間にわたり冷却し、式Iの化合物の結晶性無水トルエンスルホン酸(トシル酸)塩を沈殿させるステップ
によって、無水結晶性トシル酸塩を調製するステップと、
(b)ステップ「a(6)」で調製された沈殿物の塩の一定分量を収集し、第1の固体スカムを生成するのに必要な期間にわたり、ある量の水と一緒に合わせて水6ml/塩1gの比を得るステップと、
(c)ステップ「b」で生成された固体スカムを、ステップ「b」で使用された水の量の1.66倍に等しい量の水でスラリー化するステップと、
(d)ステップ「c」で調製されたスラリーを、湿潤ケークを生成するのに必要な時間にわたり撹拌するステップと、
(e)ステップ「c」で添加された水の量の3倍量をさらに添加して、ステップ「d」で生成された湿潤ケークで第2のスラリーを形成し、スラリーを5日間撹拌するステップと、
(f)周囲温度の真空中で、ステップ「e」で生成されたスラリーからの固形分を乾燥し、それによって、式Iの化合物のトルエンスルホン酸水和物形態I塩形態を生成するステップと
を含む。
【0016】
本発明の別の態様は、上述の手順に従って、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性トシル酸水和物塩形態I(式IVのトシル酸三水和化合物)を提供することであり、
【0017】
【化5】
この結晶性塩形態は、図11に概略的に示される赤外線スペクトルと、回折角(2θで、全ての値は±0.2の精度を反映している)、格子「d」間隔(単位:オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表IIに示されるX線粉末回折パターンとによって、特徴付けられる。
【0018】
【表2】
本発明の別の態様は、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性フマル酸塩形態(式Vの構造を有するフマル酸塩化合物)を調製するための方法であり、
【0019】
【化6】
この方法は、
(a)アセトニトリル50ml中に、式Iの構造を有する遊離塩基化合物の一定分量を懸濁させるステップと、
(b)ステップ「a」で形成された懸濁液を、約60℃まで加熱するステップと、
(c)加熱された懸濁液と、少なくとも1当量のフマル酸とを混合するステップと、
(d)ステップ「c」で調製された混合物を、懸濁した材料が溶解する温度にまで加熱するステップと、
(e)ステップ「d」で調製された溶液を、約2時間にわたり周囲温度まで冷却して、沈殿物を得るステップと、
(f)沈殿物を収集し、約50℃の温度の真空炉内で乾燥するステップと
を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ステップ「d」の混合物は、少なくとも約80℃まで加熱することが好ましい。いくつかの実施形態では、好ましい周囲温度は約25℃である。
【0021】
本発明の別の態様は、上述の方法により調製された、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性フマル酸塩形態を提供することであり、この結晶性形態は、回折角(2θで、全ての値は±0.2の精度を反映している)、格子「d」間隔(単位:オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表IIIに示されるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0022】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】式Iの化合物の結晶性無水マレイン酸塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度 CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図2】式Iの化合物の結晶性無水マレイン酸塩形態の、特性示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸:熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図3】式Iの化合物の結晶性無水マレイン酸塩形態の、熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図4】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図5a】加熱速度10℃/分で得られた、式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図5b】加熱速度2℃/分で得られた、式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図6】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図7】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態2塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図8】式IIの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態2塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)を表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図9】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態2塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図10】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性赤外線スペクトルパターンを表す図である[縦軸:透過率%;横軸:波数(cm−1)]。
【図11a】式Iの化合物の、結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性赤外線スペクトルパターンを表す図である。図11aは、2000cm−1から1000cm−1の範囲にわたるスペクトルを含み;図11bは、1600cm−1から900cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含み;図11cは、900cm−1から200cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含む[縦軸:透過率%;横軸:波数(cm−1)]。
【図11b】式Iの化合物の、結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性赤外線スペクトルパターンを表す図である。図11aは、2000cm−1から1000cm−1の範囲にわたるスペクトルを含み;図11bは、1600cm−1から900cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含み;図11cは、900cm−1から200cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含む[縦軸:透過率%;横軸:波数(cm−1)]。
【図11c】式Iの化合物の、結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性赤外線スペクトルパターンを表す図である。図11aは、2000cm−1から1000cm−1の範囲にわたるスペクトルを含み;図11bは、1600cm−1から900cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含み;図11cは、900cm−1から200cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含む[縦軸:透過率%;横軸:波数(cm−1)]。
【図12】式Iの化合物の結晶性フマル酸塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図13】式IIの化合物の結晶性フマル酸塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図14】式Iの化合物の結晶性フマル酸塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図15】式Iの化合物の結晶性トシル酸形態I塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図16】式Iの化合物の結晶性トシル酸形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図17】式Iの化合物の結晶性トシル酸形態I塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図18】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図19】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図20】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図21】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態II塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図22】式IIの化合物の結晶性トシル酸水和物形態II塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図23】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態II塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図24】式Iの化合物の結晶性シュウ酸形態I塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図25】式IIの化合物の結晶性シュウ酸形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図26】式Iの化合物の結晶性シュウ酸形態I塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−キノリン−5−イル]−4−オキサゾールカルボキサミドとも呼ばれる5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミド(式Iの化合物)の塩形態は、PDE IV阻害剤化合物として有用な医薬品としての活性を有する。
【0025】
【化7】
本明細書に開示される式Iの化合物の塩形態は、式Iの遊離塩基と比較した場合、少なくとも1種の溶媒に対して改善されたその溶解度、改善された化学的安定性、周囲環境での改善された物理的安定性、および改善された熱的安定性の1つまたは複数に関して加工上の利点を有する。これらの改善された性質は、有用な薬剤を提供する際に有益である。さらに、マレイン酸塩、トシル酸塩、およびフマル酸塩のそれぞれは、その他の形の化合物に比べて下記の利点を有する形をした式Iの化合物をもたらす、1つまたは複数の結晶性形態を有し:その利点とは、より低い不純物含量、およびより一貫した生成物の品質、即ち、より一貫した色、溶解速度、および取扱い易さを含めたより一貫した物理的性質;並びに薬剤に組み込むときのより長時間にわたる安定性である。
【0026】
以下に詳述される、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶性塩形態のそれぞれは、互いに、また非晶質形態から、それぞれの塩形態の特性X線回折パターン(図1、4、7、10、12、15、18、21、および24参照)、特性赤外線スペクトル(図10および11参照)、特性分析示差走査熱量法(DSC)サーモグラム(図2、5a、5b、8、13、16、19、22、および25)、および特性熱重量分析(TGA)サーモグラム(図3、6、9、14、17、20、23、および26)の1つまたは複数について試験をすることによって、容易に区別することができる。
【0027】
本発明者らは、上述の式Iの化合物のオキサゾリン環の左側の側基である第1級アミン官能基が、単独でプロトン化して、所望の物理的性質および安定性を有する式IIIの塩化合物を提供できることを認めた、最初の者である
【0028】
【化8−1】
(式中、「A−」は、陰イオン部分であり、例えばメシレート、フマレート、マレエート、トシレート、スルフェート、オキサレート、ホスフェート、および塩化物である)。
【0029】
本発明者らは、式Iのプロトン化化合物の各分子ごとに、溶媒、例えば水、エタノール、およびメタノールの1つまたは複数の分子を組み込んだ、以下に詳述されるある結晶性塩形態が、式Iの化合物に比べて所望の取扱い特性および安定性を有する化合物の結晶性形態を提供することを認めた最初の者でもある。
【0030】
塩の好ましい結晶性形態は、通常の環境で処理し貯蔵されたときにその他の形態に変換されず、熱的に安定であり、また所望の溶解度および取扱い特性を有することに加え、薬剤に容易に組み込まれかつ広く様々な環境条件下で安定な塩形態で式Iの化合物が提供されるという点で、熱力学的に堅牢である。
【0031】
知られているように、治療薬は、約pH1から約pH7のpH範囲にわたって約10mg/ml未満の水性溶解度を有する場合、典型的には不十分な吸収速度を示す。さらに、経口投与された治療薬が、このpH範囲内で約1mg/ml未満の溶解度を示す場合、典型的にはそのような治療薬は、溶解度および吸収は経口投与された薬剤に関連するので、溶解速度によって制限された吸収を示す。本明細書に開示される塩の一部は、式Iの遊離塩基化合物に比べて改善された溶解度特性を有する。したがって、これらの塩の改善された溶解度特性は、治療薬として式Iの化合物が送達されるように設計された薬剤の、経口投与形態を提供するのに重要である。これらの所望の改善された溶解度特性に加え、以下に詳述するように、選択された塩は、追加の有利な物理的性質を示した。
【0032】
一般に、化合物塩は、式Iの化合物と、フマル酸、塩酸、マレイン酸、メチルスルホン酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、およびトルエンスルホン酸から選択された酸とから調製される。以下に他に特に指示しない限り、酸性塩は、下記の手順に従って調製した:
i)計量した遊離塩基を、撹拌しながら溶媒に懸濁させる;
ii)測定量の酸または酸溶液を添加する;
iii)混合物を、周囲よりも高い温度まで加熱して、懸濁した材料を溶解し、周囲まで冷却して、塩を沈殿させる;および
iv)必要に応じて、収集した塩を再結晶させる。
【0033】
このように調製した塩を、いくつかの技法によって分析した。
【0034】
(分析手順)
式Iの化合物の結晶性塩形態のそれぞれを、X線粉末回折分光法(PXDR)、示差走査熱量分析(DSC)、熱重量分析(TGA)を含めた1つまたは複数の技法によって特徴付け、かつ/または溶解度研究および安定性研究を含めた物理的方法によって、さらに特徴付けた。
【0035】
(赤外線分光法)
サンプルを、Avatar Smart Miracle Attenuated Total Reflectance(ATR)サンプル区画を備えたNicolet Instruments NEXUS 670 FTIRを使用する減衰全反射(ATR)赤外線分光法を利用して、特徴付けた。スペクトルを、下記のパラメータを利用して収集した:DTGS KBr検出器;KBrビームスプリッタ;走査レンジ600cm−1から4000cm−1;アパーチャ設定100;分解能2;64スキャン/サンプル。分析は、バックグラウンドスペクトルを収集し、次いでATR結晶上に参照標準または特定サンプル(典型的にはサンプルを3mgから5mg)を置き、このサンプルに、製造業者の推奨に従って、機器の圧力アームで力を加えることによって実施した。次いで試料(参照またはサンプル)のスペクトルを、製造業者専有ソフトウェアを利用して、バックグラウンドのスペクトルと試料のスペクトルとの比として得た。
【0036】
いくつかのサンプルに関しては、透過モードのNexus 670 FT−IRを使用して、フーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトルを得た。サンプルをKBrマトリックスに分散させ、下記のパラメータを利用してスペクトルを収集した:DTGS KBr検出器;KBrビームスプリッタ;走査レンジ400cm−1から4000cm−1;アパーチャ設定100;分解能4;32スキャン/サンプル。データを、製造業者から提供されたソフトウェアを使用して分析した。
【0037】
(X線粉末回折分光法)
X線粉末回折分光法を、下記の手順の1つを使用してサンプルに関して得た。
【0038】
Rigaku Miniflex分光器を使用して得られたサンプルの分析では、下記の手順を用いた(PXRD法I)。PXRD法Iによって分析された試料を、低バックグラウンドプレート上に軽く充填した。試料を、周囲温度および周囲湿度の室温環境に曝した。Rigaku製分光器は、試料を54rpmで回転させる6プレートカルーセルを備えており、研究がなされるサンプル中の結晶の好ましい配向を最小限に抑えた。Rigaku製分光器は、Kα2フィルタなしで利用される銅Kα放射線源も備えていた。分光器は、可変発散スリットおよび0.3mm受容スリットも備えていた。スキャンレンジは、2.0から40°2θで実施した。機器の較正は、111平面に関してCu Kα1ピークを使用して検証した。走査中、ステップサイズは、0.6秒のステップ持続時間中、0.02度であった。データ分析は、Jade Plus(リリース5.0.26)分析ソフトウェアを使用して実現した。データを、11ポイントでSavitzky−Golay放物線フィルタにより平坦化した。典型的には、「d」間隔の値は、±0.04A以内で正確である。
【0039】
X線粉末回折分光分析を、Bruker D8回折計を使用していくつかのサンプルに関して得た。Bruker回折計は、GOBELビーム集束ミラーと、固定放射状ソーラスリットを備えたPSD検出器とを利用する、並列の光学構成を備えていた。Bruker回折計は、Anton Paar TTK450温度ステージと共に使用した。放射線源は銅(Kα)である。発散スリットは、0.6mmに固定した。Bruker回折計は、トップローディングブラスブロックサンプルホルダを利用した。PSD高速スキャンを使用して、4.0°から39.9°までスキャンした。回折パターンを得るために、試料をサンプルホルダに投入し、顕微鏡スライドガラスで平らにした。サンプルチャンバ温度を、周囲湿度で、窒素をパージせずに、かつ真空ではない状態で、25℃、30℃、または120℃に設定した。機器の較正は、マイカ標準を使用して検証した。スキャン中、ステップサイズは、0.5から10秒のステップ持続時間にわたり0.013度から0.02度であった。データ分析を、SOCABIM(登録商標)によって書かれた、Bruker(登録商標)から提供されたEVA分析ソフトウェア、バージョン7.0.0.1を使用して実現した。データを、ソフトウェアにより0.1から0.15に平滑化した。
【0040】
X線粉末回折分光分析は、銅Kα放射線源を備えたShimadzu XRD−6000X線回折計を使用して、いくつかのサンプルに関して得られた。サンプルを、0.6秒のステップ持続時間にわたり0.02度のステップサイズで、2.0から40.0°2θ(シータ)まで分析した。データ分析は、Shimadzuから供給されたBasic Processソフトウェア、バージョン2.6を使用して実施した。データを、ソフトウェアの自動平滑化プロセスを使用して平滑化した。
【0041】
X線粉末回折(「PXRD」)による分析用のサンプルを、いかなる形態変化も生じないように最小限の調製にかけた。サンプル粒子をサンプルホルダに軽く充填して、確実に滑らかな表面が形成されかつ凝集しないようにした。上述の手順により調製された溶媒和物サンプル以外について、溶媒なしで、乾燥またはその他の調製ステップを使用した。
【0042】
(示差走査熱量法)
熱量測定研究は、TA Instruments製の変調示差走査熱量計(DSC)を利用して実施した。他に指示しない限り、DSCスキャンは、ピンホール付きの蓋を備えた密閉皿をおよび40ml/分の窒素パージを使用して、加熱速度10℃/分で行った。いくつかの分析は、40ml/分の速度で流れる窒素中で開放アルミニウム皿を使用して、加熱速度2℃/分で行った。
【0043】
溶解度試験は、問題となっている溶媒の一定分量に、過剰な化合物を入れ、そのスラリーを、選択された温度条件下(典型的には周囲温度)で平衡にすることによって実施した。溶媒が水の場合、pHは、塩酸および水酸化ナトリウムで所望の値に調節した。スラリー混合物が平衡になったら、過剰な固形分を上澄みから遠心分離にかけるか(水)、または上澄みから濾過し(全てのその他の溶媒)、溶解した化合物の量を、希釈した一定分量の上澄み液のHPLC分析を使用して定量した。医薬品級溶媒を用いた。
【0044】
化学的安定性試験は、式Iの化合物の塩形態の正確に計量されたサンプルを、ポリエチレンバッグに入れることによって、問題となっている塩形態の一定分量に関して実施した。バッグに入れられたサンプルを、金属キャップが取り付けられたファイバボード管に封入し、これを、指示された湿度および温度条件下で指示された時間にわたり貯蔵した。分析は、バイアルの内容物を溶解し、HPLC分析を利用して溶質の量を定量することにより、実施した。一定分量は、ポリエチレンバッグの代わりに指示される条件下で、キャップ付きのアンバーバイアルに貯蔵した。
【実施例】
【0045】
式Iの化合物のマレイン酸塩(3形態)、フマル酸塩、シュウ酸塩、およびトシル酸塩(3形態)を、次のように調製した。式Iの化合物の塩形態のそれぞれは、下記の分光技法、即ち上述の手順を使用した、X線粉末回折分光法、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、赤外線分光法、およびNMR分光法を含めたものの1つまたは複数によっても特徴付けることができる。選択された塩形態を、上述の手順に従って、その安定性、溶解度、およびその他の改善された物理的性質に関して分析した。
【0046】
以下に論じられる塩のそれぞれを調製する際に使用される、式Iの遊離塩基化合物は、それ自体を、2005年5月16日出願の係属中の特許文献1(’009号公報)に開示されている粗製塩酸性塩から調製した。全ての反応性の結晶化、再結晶化、およびスラリーの手順は、特定級(一般に、他に特に指示しない限り、医薬品または食品級)の市販の溶媒中で実施し、受け容れたままの状態で使用した(他に特に指示しない限り)。
【0047】
(式Iの化合物のマレイン酸塩)
無水マレイン酸形態1塩形態の調製
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量11.0g(21.1mmol)を、アセトニトリル160ml中に懸濁した。懸濁液を60℃に加熱し、マレイン酸3.2g(27.6mmol、1.31当量)を懸濁液に添加した。酸の添加が終了すると溶液が得られ、その後、塩を沈殿させた。次いで沈殿混合物上の溶液を加熱還流し、溶媒の約80mlを、1気圧で蒸留することによって除去した。混合物を遠心分離した後、65℃に冷却し、t−ブチルメチルエーテル80mlを、滴下漏斗を使用して20分間にわたり添加した。得られた懸濁液を、2時間かけて5℃に冷却した。結晶性固形分を沈殿させ、これを濾過によって収集し50℃の真空炉内で10時間乾燥させた結果、白色の針状結晶が11.1g(81.6%)得られた。乾燥した結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図1)、示差走査熱量測定(図2)、および熱重量分析(図3)によって分析した。プロトンNMR分析(1H NMR、400MHz、DMSO)により、下記の化学シフトデータが得られた:
【0048】
【化8−2】
熱分析では、融点が191℃(図9、10)の無水物形態であることが明らかにされ、これはDCSにおいて、約191℃で鮮明な吸熱があることに該当する。175℃より前では、著しい重量損失が観察されなかった。
【0049】
X線粉末回折分光法は、マレイン酸塩のサンプルに関して得られ(図1)、表IVに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示している。
【0050】
【表4】
図1に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表Vは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、これらは、下記の表Vに示されるように、2シータ度(°2θ)で表される回折角、対応する「d」間隔(オングストローム(A))、および下記の表記によるシグナルの相対強度(「RI」)で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0051】
【表5】
表Vに示される式Iの化合物の、マレイン酸形態Iの塩の特徴を示す、12個のピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、5.9、9.8、11.7、16.9、18.5、21.0、23.7、および25.4に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、5.9、11.7、21.0、および25.4に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0052】
図2は、上述の手順により得られた、式Iの化合物のマレイン酸形態Iの無水塩の、DSCサーモグラムを示し、図3は、マレイン酸無水物形態I塩形態の、熱重量分析を示す。この熱分析は、塩が、191℃の融点を有する無水物であることを確立している(DSCでは、191℃での鮮明な吸熱に該当する)。さらに、塩は、約175℃まで安定であることを示しており、TGAは、その温度よりも低い場合に著しい重量損失を示さない。
【0053】
(マレイン酸一水和物形態1塩形態の調製)
方法A
式Iの化合物の一定分量(10.0g、19.2mmol)を、イソプロパノール40mlおよび水40mlの混合物を含む溶媒に、懸濁した。懸濁液を50℃に加熱した。この懸濁液に、この懸濁液を50℃に維持しながら5分間かけて、イソプロパノール10mlおよび水10mlを含む溶媒に溶解したマレイン酸2.9g(1.3当量)を含む、50℃に加熱した溶液を添加した。混合物をその温度で濾過し、別の50mlの水を50℃に加熱して、濾液に添加した。濾過の後、溶液を撹拌しながら、30分間かけて40℃に冷却した。溶液を30分間撹拌し、針状結晶を沈殿させた。撹拌を中断し、溶液を2時間かけて5℃に冷却し、結晶性マレイン酸一水和物形態1の塩を形成した。2時間後、沈殿物を真空濾過によって収集し、フィルタケークを、イソプロパノール10mlおよび水20mlを含む混合物で洗浄し、真空炉内で、50℃で10時間乾燥した。
【0054】
いくつかの実施形態では、溶媒およびスラリーのマトリックスとして、水:i−プロパノールの体積比50:50を使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、i−プロパノールを約65体積%含む溶媒を使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、水が約50体積%から約70体積%、好ましくは水が約50体積%から約65体積%、より好ましくは水が約55体積%から約65%である含水量を有する溶媒を、使用することが好ましい。
【0055】
方法B
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量27.0g(51.7mmol)を、n−プロパノール120mlおよび水90mlの混合物中に懸濁した。懸濁液を50℃に加熱した。マレイン酸8.7g(75.0mmol、1.45当量)を、n−プロパノール30mlおよび水30mlの混合物中に溶かした溶液を、加熱した懸濁液に10分間かけて添加することにより、懸濁材料を溶解させた。溶液を50℃に維持しながら、10分間かけて、追加の水180mlを、滴下漏斗を使用してこの溶液に添加した。次いで溶液を、30分間かけて40℃に冷却し、一水和物塩を沈殿させた。懸濁液を40℃で1時間撹拌した後、2時間かけて5℃に冷却した。固形分を濾過によって収集し、真空炉内で、55℃で5時間乾燥することにより、オフホワイトの針状物質が32.8g(96.6%)得られた。乾燥した針状物質の含水量を、Karl Fischer滴定によって分析した。分析は、含水量が2.8%であることを示した(一水和物の場合、理論的には2.7%)。
【0056】
方法Bによって生成された、マレイン酸一水和物形態I塩形態の乾燥結晶を、上述の手順に従って、赤外線分光法(図10)、X線粉末回折分光法(図1)、示差走査熱量測定(図2)、および熱重量分析(図3)によって分析した。元素分析を実施した。C28H25F5N4O9の計算値(一水和物656.5):C,51.25;H,3.84;N,8.53 実測値:C,51.27;H,3.59;N,8.54。
【0057】
X線粉末回折分光法は、マレイン酸一水和物形態Iの塩のサンプル(図4)に関して得られ、これは、表VIに示される強度を有する下記の回折角での、吸収ピークを示している。
【0058】
【表6−1】
【0059】
【表6−2】
図4に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表VIIは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、これらは、2シータ度(°2θ)で表される回折角、対応する「d」間隔(オングストローム(A))、および下記の表記によるシグナルの相対強度(「RI」)で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0060】
【表7】
表VIIに示される式Iの化合物の、マレイン酸一水和物形態Iの塩の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、6.5、7.5、14.8、21.2、22.2、25.6、27.2、および31.5に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、6.5、7.5、21.2、および27.2に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0061】
図5aは、上述の手順に従って10℃/分の加熱速度で得られた、式Iの化合物のマレイン酸一水和物形態I塩形態の、DSCサーモグラムを示し、図6は、上述の手順に従って得られた、マレイン酸一水和物形態I塩形態の、熱重量分析を示す。このDSC分析は、一水和物形態1が、100℃から140℃の範囲にわたって脱水することを示す。このTGA分析は、125℃で観察される鮮明な2.7%の重量損失と、約150℃よりも高い温度での低速分解とによって、材料が一水和物であることを確認する。TGAおよび125℃で観察された重量損失は、一水和物に関する理論上の含水量2.7重量%に該当する。
【0062】
図5bに示されるDSCサーモグラフは、式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態Iの塩のサンプルに関し、2℃の加熱速度で得られ、図6のTGAサーモグラムと重ね合った状態で現れる。図示されるように、DCSには2つの異なる領域があり、約84℃での第1の吸熱ピークは一水和物の脱水に対応し(TGAによって確認される)、113.5℃での第2の領域のピークは結晶相の分解に対応する。結晶性マレイン酸一水和物形態Iの塩のサンプルを、その脱水温度よりも高い温度で、しかしその分解温度よりも低い温度で加熱することによって、冷却しかつ水蒸気に曝したときにその初期の一水和物構造に戻る脱水構造が得られることが決定された。
【0063】
式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態Iの塩を、ICH−光安定性条件に従って、その光安定性に関して調査した。1サイクルのICH光安定性条件に曝された塩のサンプルは、著しい分解を全く示さなかった。式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態Iの塩のサンプルは、その化学的安定性についても調査し、その結果を下記の表VIIIに示す。
【0064】
【表8】
表VIIIのデータは、結晶性マレイン酸一水和物塩形態Iが、試験条件下で分解を全く示さないことを示している。式Iの化合物のマレイン酸一水和物形態Iの塩形態は、相対湿度5%から95%の周囲条件下でも調査をし、その結果、(a)5%RH、測定可能な水分吸収なし;(b)35%RH、0.06%の吸収;(c)55%RH、0.12%の吸収;(d)75%RH、0.18%の吸収;および(e)95%RH、0.20%の吸収であった。このように塩形態は、通常の周囲条件下で優れた水分安定性を示す。
【0065】
(マレイン酸一水和物形態2塩形態の調製)
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量5.0g(9.57mmol)を、アセトニトリル10mlおよびt−ブチルメチルエーテル(TBME)25mlの混合物中に懸濁した。懸濁液を50℃に加熱し、マレイン酸1.4g(1.3当量)を添加した結果、懸濁材料が溶解した。溶液を、30分間かけて周囲温度(約25℃)に冷却し、白色沈殿物が生成された。固形分を、濾過によって得た(4.6g)。計算された収率は、出発時の遊離塩基に対して76%であった。
【0066】
マレイン酸一水和物形態2の塩の乾燥結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図7)、示差走査熱量測定(図8)、および熱重量分析(図9)によって分析した。
【0067】
図7に出現する、マレイン酸一水和物形態2の塩のサンプルに関して得られたX線粉末回折スペクトルは、表IXに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0068】
【表9】
図7に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表Xは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、これらは、2シータ度(°2θ)で表される回折角、対応する「d」間隔(オングストローム(A))、および下記の表記によるシグナルの相対強度(「RI」)で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0069】
【表10】
表Xに示される式Iの化合物の、マレイン酸一水和物形態2の塩の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、4.7、9.3、13.9、18.1、18.5、19.4、20.6、および23.0に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、4.7、9.3、18.5、および19.4に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0070】
図8は、上述の手順に従って得られた、式Iの化合物のマレイン酸一水和物形態2塩形態のDSCサーモグラムを示し、図9は、マレイン酸一水和物形態2塩形態の、熱重量分析を示す。DSC分析は、一水和物形態2が、40℃から85℃の範囲にわたって脱水することを示す。この温度範囲では、TGA分析は、約2.7%の重量損失を示し、これは、1当量の水/塩分子の損失に一致しており、構造が一水和物であることが確認される。TGAはさらに、約150℃よりも高い温度で低速分解することを示す。
【0071】
(式Iの化合物のフマル酸塩形態の調製)
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量6.0g(11.5mmol)を、アセトニトリル50mlに懸濁した。懸濁液を60℃に加熱し、フマル酸1.4g(12.1mmol、1.05当量)を添加した。混合物を80℃に加熱して、溶液を得た。溶液を、2時間かけて室温(約25℃)に冷却し、固形分を沈殿させた。固形分を、真空濾過によって収集し、真空炉内で、50℃で2時間にわたり乾燥した結果、針状結晶6.8gが得られた(計算収率、出発時の遊離塩基に対して92.7%)。
【0072】
このように調製された、式Iの化合物のフマル酸塩形態の乾燥結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図12)、示差走査熱量測定(図13)、および熱重量分析(図14)によって分析した。
【0073】
図12に出現する、上記調製された結晶性フマル酸塩形態のサンプルで得られたX線粉末回折スペクトルは、表XIXに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0074】
【表19】
図12に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表XIは、下記の表XIに示される回折角および相対強度での、12個の最も特徴的なピークを列挙している。表XIは、図12のX線データから決定された、計算による格子面間隔も列挙している。表XIにおいて、回折角は、2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で、またシグナルの相対強度(「RI」)は、下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0075】
【表11】
表XIに示される式Iの化合物の、結晶性フマル酸塩形態の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、4.0、7.8、8.0、18.0、19.9、22.5、25.5、および25.6に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、8.0、19.9、22.5、および25.6に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0076】
図13は、上述の手順に従って得られた、式Iの化合物のフマル酸塩のDSCサーモグラムを示し、図14は、フマル酸塩の熱重量分析を示す。DSC分析は、フマル酸塩が、25℃から200℃の範囲にわたって安定であること、および約215℃で鮮明な融点があることを示す。TGA分析では、材料が溶媒和物でないことが確認され、DSCによって示される融点まで著しい重量損失がないことを示している。
【0077】
上記調製された結晶性フマル酸塩形態を、相対湿度5%から95%の周囲条件下で調査し、その結果、(a)5%RH、測定可能な水分吸収なし;(b)35%RH、0.21%の吸収;(c)55%RH、0.40%の吸収;(d)75%RH、0.64%の吸収;および(e)95%RH、0.80%の吸収であった。このように塩形態は、通常の周囲条件下で優れた水分安定性を示す。
【0078】
(トシル酸無水物の調製)
式Iの化合物の形態Iの塩形態
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量11.0g(21.1mmol)を、アセトニトリル130mlに懸濁した。懸濁液を60℃に加熱し、トルエンスルホン酸4.5g(23.7mmol、1.19当量)を添加した。混合物をさらに70℃に加熱し、t−ブチルメチルエーテル80mlを、滴下漏斗を使用して20分かけて添加した。得られた溶液を、2時間かけて周囲温度(約25℃)に冷却し、白色の針状物質を沈殿させた。固形分を、濾過によって収集した(13.7g)。計算収率は、出発時の遊離塩基に対して93.7%であった。
【0079】
トシル酸無水物形態Iの塩の乾燥結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図15)、示差走査熱量測定(図16)、および熱重量分析(図17)によって分析した。
【0080】
図15に出現する、式Iの化合物の、トシル酸無水物形態1塩形態のサンプルに関して得られたX線粉末回折スペクトルは、表XIIに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0081】
【表12】
図15に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表XIIIは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、回折角は、2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で、またシグナルの相対強度(「RI」)は、下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0082】
【表13】
表XIIIに示される式Iの化合物の、トシル酸無水物形態1塩形態の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、5.5、6.6、12.9、16.8、20.5、23.9、25.2、および28.5に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、6.6、16.8、20.5、および23.9に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0083】
図16は、上述の手順により得られた、式Iの化合物のトシル酸無水物形態1塩形態の、DSCサーモグラムを示し、図17は、トシル酸無水物形態1塩の熱重量分析を示す。この熱分析は、非溶媒和塩形態でありかつ135℃の融点を有する、トシル酸無水物形態1塩と一致している。
【0084】
(式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態の調製)
上記にて調製された、式Iの化合物のトシル酸無水物形態1塩形態の一定分量(1.5g、2.2mmol)を、密閉容器内で3日間、水9.0mLと一緒に合わせて、スカム様材料を生成した。スカム様材料を収集し、破砕し、追加の水15mLと一緒に合わせて、スラリーを生成した。スラリーを、25℃および350RPMで6日間振盪させて、湿潤ケークを生成した。さらに水45mLを湿潤ケークに添加して、スラリーを生成し、これを25℃および350RPMで5日間振盪させた。振盪期間が終了した後、得られた固形分を真空濾過により収集し、室温で一晩真空乾燥して、式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態を生成した。
【0085】
トシル酸水和物形態I塩の乾燥結晶を、上述の手順によりX線粉末回折分光法(図18)、示差走査熱力測定(図19)、および熱重量分析(図20)によって分析した。
【0086】
図18に出現する、式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態のサンプルに関して得られたX線粉末回折スペクトルは、表XIVに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0087】
【表14−1】
【0088】
【表14−2】
図18に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表XVは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、回折角は、2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で、またシグナルの相対強度(「RI」)は下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0089】
【表15−1】
【0090】
【表15−2】
表XVに示される式Iの化合物の、トシル酸水和物形態1塩形態の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、5.2、6.9、12.5、15.4、20.0、26.3、27.1、および27.5に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、5.2、12.5、20.0、および26.3に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0091】
図19は、上述の手順により得られた、式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態の、DSCサーモグラムを示し、図20は、トシル酸水和物形態I塩の熱重量分析を示す。DSC分析は、トシル酸水和物形態I塩が、約105℃でピークに達する50から120℃までの広範な吸熱もたらすことを示し、これは、トシル酸水和物形態1塩の脱水に相当する。約8%の重量損失が、同じ温度範囲でTGAで観察されたが、これは、約3個の水分子/塩の分子に相当する。
【0092】
(式Iの化合物のトシル酸水和物形態2塩形態の調製)
上記にて調製された、式Iの化合物のトシル酸無水物形態1塩形態の一定分量(1.5g、2.2mmol)を、メタノール4.5mLに溶解した。溶液を、真空蒸留によって3日後に濃縮乾固した。固形分を、2−プロパノール4.5mLでスラリー化し、これを25℃および350RPMで6日間振盪させることにより、沈殿物が得られた。固形分を真空濾過によって収集し、室温で12時間にわたり真空乾燥した。得られた式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態2塩形態を、上述の手順に従って、X線結晶解析(図21)、DSC(図22)、およびTGA(図23)によって分析した。
【0093】
図21で出現した、上記にて調製された結晶性フマル酸塩形態のサンプルで得られたX線粉末回折スペクトルは、表XXに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0094】
【表20−1】
【0095】
【表20−2】
図21に示される、式Iの化合物のトシル酸水和物形態2塩形態のスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表XVIは、下記の表XVIに示される回折角および相対強度で12個の最も特徴的な吸収ピークを列挙している。表XVIは、図21のX線データから決定された、計算による格子面間隔も列挙する。表XVIにおいて、回折角は2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で、またシグナルの相対強度(「RI」)は下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0096】
【表16】
表XVIに示される式Iの化合物の、トシル酸水和物形態I塩形態の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、5.9、9.2、11.9、14.9、17.4、20.8、23.2、および15.3に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、5.9、9.2、11.9、および14.9に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0097】
図22は、上述の手順により得られた、式Iの化合物のトシル酸水和物形態2塩形態の、DCSサーモグラムを示し、図23は、トシル酸水和物形態2塩の熱重量分析を示す。DSC分析は、約185℃で単一の鮮明な融点を有する、水和しておりかつ溶媒和していないサンプルに一致している。TGAは、化合物の融点よりも低い温度では著しい重量損失を示さず、その後分解し、非溶媒和結晶性塩形態に一致している。
【0098】
(式Iの化合物のシュウ酸形態I塩形態の調製)
式Iの化合物の一定分量(遊離塩基形態、11.0g、21.1mmol)を、エタノール300mlに懸濁した。懸濁液を60℃に加熱した。シュウ酸(3.2g、25.4mmol、1.2当量)を懸濁液に添加し、混合物を撹拌しながら75℃に加熱し、75℃に1時間保持することにより、溶液を得た。溶液を、1時間かけて10℃の温度に冷却し、固形分を沈殿させた。固形分を、真空濾過によって収集し、エタノールで洗浄し、100℃の真空炉内で5時間乾燥した結果、白色の針状結晶が9.0g(69.6%)得られた。
【0099】
式Iの化合物の、シュウ酸形態I塩形態の乾燥結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図24)、示差走査熱量測定(図25)、および熱重量分析(図26)によって分析した。
【0100】
シュウ酸形態I塩のサンプルで得られた、X線粉末回折分光法(図24)は、表XVIIに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0101】
【表17】
図24に示されるスペクトルに出現したピークのうち、下記の表XVIIIは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的な吸収ピークを列挙しており、回折角は、2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で表され、またシグナルの相対強度(「RI」)は、下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0102】
【表18】
表XVIIIに示される式Iの化合物の、シュウ酸形態I塩の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、6.8、7.6、9.3、14.9、18.9、22.7、26.7、および34.2に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、6.8、9.3、14.9、および18.6に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0103】
図25は、上述の手順によって得られた、式Iの化合物のシュウ酸形態I塩形態の、DSCサーモグラムを示し、図26は、シュウ酸無水物形態I塩の熱重量分析を示す。DSC分析は、シュウ酸無水物形態I塩が、25℃から85℃の範囲にわたって脱溶媒和することを示す。TGA分析は、材料が、この温度範囲にわたって5%の重量損失を引き起こすことを示し、これは、結晶中に存在する式Iの化合物の量に対してメタノール溶媒和物が約1当量であることに相当する。
【0104】
上記にて調製された式Iの化合物の結晶性シュウ酸塩形態を、その光安定性について、ICH−光安定性条件に従って調査した。1サイクルのICH光安定性条件に曝された塩のサンプルは、著しい分解を全く示さなかった。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本特許出願は、一般に、医薬品として有用な塩と、医薬品として有用な塩を調製する新規な方法とに関する。詳細には、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドである、医薬品として有用な塩と、医薬品として有用な塩を合成する新規な方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミド(式Iの化合物)の調製は、その全体が本明細書に組み込まれている2005年5月16日出願の、特許文献1(’009号公報)に開示されている。
【0003】
【化1】
式Iの化合物を含めた’009号公報に開示されている新規な化合物は、PDE−4阻害剤化合物として分類され、炎症状態、例えばCOPDや喘息などの治療に有用な治療薬である。
【0004】
’009号公報に報告されているように、式Iの化合物は、TLCおよびLC/MS技法によって特徴付けられた。’009号公報に記載された手順は、結晶性固体塩酸性塩の形をとる式Iの化合物をもたらした。しかし、この方法によって単離された塩酸性塩形態は、吸湿性が高く、薬剤に加工することが難しくなる。
【0005】
一般に、治療活性を有することが確認された化合物は、医薬品として使用するために、非常に純度の高い形で提供されなければならない。さらに、医薬品としての使用を目的とした化合物は、薬剤に組み込むために容易に処理されるような形で提供することも望ましい。薬剤に組み込まれた形の化合物は、化学分解に耐性を示す十分堅牢な特徴を有し、それによって薬剤に長い貯蔵寿命が与えられることも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/116009号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(目的)
前述の事項を考慮すると、求められているものは、純度の高い形で治療薬を提供するのに役立つ治療薬の形である。また、処理されかつ貯蔵される環境条件下で分解に対して堅牢な治療薬の形も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
これらおよびその他の目的は、本発明によって有利に提供され、その一態様において式Iの化合物は、結晶性の、周囲環境で安定な、必要に応じて内部に1種または複数の溶媒分子を組み込んだ塩形態、例えば結晶性一水和物の形で提供される。いくつかの実施形態では、塩形態の化合物Iは、マレイン酸塩形態、トシル酸塩形態、フマル酸塩形態、およびシュウ酸塩形態から選択される。いくつかの実施形態では、化合物Iの好ましい塩形態が、マレイン酸一水和物塩である。
【0009】
本発明の一態様は、結晶性マレイン酸一水和物塩形態の、式Iの化合物を提供するための方法であり、
【0010】
【化2】
この方法は、
(a)少なくとも50体積%のi−プロパノールを含む混合イソプロパノール/水溶媒中に、式Iの遊離塩基化合物を一定分量懸濁させるステップであって、この懸濁した材料と溶媒との比が、重量(g)/体積(ml)を単位とした場合に少なくとも約1:8であるステップと、
(b)ステップ「a」で調製された懸濁液を、少なくとも50℃まで加熱するステップと、
(c)ステップ「b」で調製された加熱された懸濁液と、少なくとも1当量のマレイン酸を溶解するのに十分な量の混合溶媒に溶解することによって作製された溶液とを、10分間にわたって混合するステップであって、この混合溶媒が、50体積%のi−プロパノールおよび50体積%の水を含むステップと、
(d)溶液の温度を少なくとも約50℃の温度に維持しながら、ステップ「c」からの混合物を濾過して溶液を得るステップと、
(e)混合物を少なくとも約50℃の温度に維持しながら、ステップ「d」からの濾液に、ステップ「a」で使用した水の体積に基づきさらに約1.25体積の水を10分間にわたって添加するステップと、
(f)ステップ「e」からの溶液を、30分間にわたって約40℃まで冷却し、それによって沈殿物スラリーを形成するステップと、
(g)ステップ「f」からのスラリーを、約40℃の温度で第1の時間にわたり撹拌し、その後、スラリーを2時間にわたって5℃まで冷却するステップと、
(h)必要に応じて、ステップ「g」で沈殿した固形分を収集し、この固形分を、少なくとも66体積%のイソプロパノールを含有する混合イソプロパノール/水溶媒中で洗浄するステップと、
(i)必要に応じて、ステップ「h」で得られた固形分を真空炉内で、55℃で5時間乾燥するステップと
を含む。
【0011】
本発明の別の態様は、上述の発明による5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性マレイン酸一水和物塩(式IIのマレイン酸一水和物化合物)であり、この塩は、
【0012】
【化3−1】
下記の化学シフトデータを与えるプロトンNMR分析(1H NMR、400MHz、DMSO)によって特徴付けられ、
【0013】
【化3−2】
この結晶性形態は、図10に概略的に示される赤外線スペクトルと、回折角(2θで、全ての値は±0.2の精度を反映している)、格子「d」間隔(単位:オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表Iに示されるX線粉末回折パターンとによって特徴付けられる。
【0014】
【表1】
本発明の一態様は、式Iの化合物の、結晶性トシル酸水和物塩形態Iを提供するための方法であり、
【0015】
【化4】
この方法は、
(a)(1)式Iの遊離塩基化合物の一定分量を、懸濁させる式Iの化合物1gに対して少なくとも10mlのアセトニトリル中に、懸濁させるステップ、
(2)ステップ「a」で調製された懸濁液を、少なくとも約60℃の温度まで加熱するステップ、
(3)少なくとも1当量のトルエンスルホン酸を、懸濁液中に混合するステップ、
(4)ステップ「c」で調製された混合物を、少なくとも約70℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(5)t−ブチルメチルエーテルを、混合物中のアセトニトリル:t−ブチルメチルエーテルが13:8の比をもたらす量で、ステップ「d」で調製された高温溶液中に少なくとも20分間にわたって混合するステップ、
(6)混合物を、周囲温度で少なくとも約2時間にわたり冷却し、式Iの化合物の結晶性無水トルエンスルホン酸(トシル酸)塩を沈殿させるステップ
によって、無水結晶性トシル酸塩を調製するステップと、
(b)ステップ「a(6)」で調製された沈殿物の塩の一定分量を収集し、第1の固体スカムを生成するのに必要な期間にわたり、ある量の水と一緒に合わせて水6ml/塩1gの比を得るステップと、
(c)ステップ「b」で生成された固体スカムを、ステップ「b」で使用された水の量の1.66倍に等しい量の水でスラリー化するステップと、
(d)ステップ「c」で調製されたスラリーを、湿潤ケークを生成するのに必要な時間にわたり撹拌するステップと、
(e)ステップ「c」で添加された水の量の3倍量をさらに添加して、ステップ「d」で生成された湿潤ケークで第2のスラリーを形成し、スラリーを5日間撹拌するステップと、
(f)周囲温度の真空中で、ステップ「e」で生成されたスラリーからの固形分を乾燥し、それによって、式Iの化合物のトルエンスルホン酸水和物形態I塩形態を生成するステップと
を含む。
【0016】
本発明の別の態様は、上述の手順に従って、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性トシル酸水和物塩形態I(式IVのトシル酸三水和化合物)を提供することであり、
【0017】
【化5】
この結晶性塩形態は、図11に概略的に示される赤外線スペクトルと、回折角(2θで、全ての値は±0.2の精度を反映している)、格子「d」間隔(単位:オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表IIに示されるX線粉末回折パターンとによって、特徴付けられる。
【0018】
【表2】
本発明の別の態様は、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性フマル酸塩形態(式Vの構造を有するフマル酸塩化合物)を調製するための方法であり、
【0019】
【化6】
この方法は、
(a)アセトニトリル50ml中に、式Iの構造を有する遊離塩基化合物の一定分量を懸濁させるステップと、
(b)ステップ「a」で形成された懸濁液を、約60℃まで加熱するステップと、
(c)加熱された懸濁液と、少なくとも1当量のフマル酸とを混合するステップと、
(d)ステップ「c」で調製された混合物を、懸濁した材料が溶解する温度にまで加熱するステップと、
(e)ステップ「d」で調製された溶液を、約2時間にわたり周囲温度まで冷却して、沈殿物を得るステップと、
(f)沈殿物を収集し、約50℃の温度の真空炉内で乾燥するステップと
を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ステップ「d」の混合物は、少なくとも約80℃まで加熱することが好ましい。いくつかの実施形態では、好ましい周囲温度は約25℃である。
【0021】
本発明の別の態様は、上述の方法により調製された、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性フマル酸塩形態を提供することであり、この結晶性形態は、回折角(2θで、全ての値は±0.2の精度を反映している)、格子「d」間隔(単位:オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表IIIに示されるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0022】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】式Iの化合物の結晶性無水マレイン酸塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度 CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図2】式Iの化合物の結晶性無水マレイン酸塩形態の、特性示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸:熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図3】式Iの化合物の結晶性無水マレイン酸塩形態の、熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図4】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図5a】加熱速度10℃/分で得られた、式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図5b】加熱速度2℃/分で得られた、式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図6】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図7】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態2塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図8】式IIの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態2塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)を表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図9】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態2塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図10】式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態I塩形態の、特性赤外線スペクトルパターンを表す図である[縦軸:透過率%;横軸:波数(cm−1)]。
【図11a】式Iの化合物の、結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性赤外線スペクトルパターンを表す図である。図11aは、2000cm−1から1000cm−1の範囲にわたるスペクトルを含み;図11bは、1600cm−1から900cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含み;図11cは、900cm−1から200cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含む[縦軸:透過率%;横軸:波数(cm−1)]。
【図11b】式Iの化合物の、結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性赤外線スペクトルパターンを表す図である。図11aは、2000cm−1から1000cm−1の範囲にわたるスペクトルを含み;図11bは、1600cm−1から900cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含み;図11cは、900cm−1から200cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含む[縦軸:透過率%;横軸:波数(cm−1)]。
【図11c】式Iの化合物の、結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性赤外線スペクトルパターンを表す図である。図11aは、2000cm−1から1000cm−1の範囲にわたるスペクトルを含み;図11bは、1600cm−1から900cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含み;図11cは、900cm−1から200cm−1の範囲にわたって広がるスペクトルを含む[縦軸:透過率%;横軸:波数(cm−1)]。
【図12】式Iの化合物の結晶性フマル酸塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図13】式IIの化合物の結晶性フマル酸塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図14】式Iの化合物の結晶性フマル酸塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図15】式Iの化合物の結晶性トシル酸形態I塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図16】式Iの化合物の結晶性トシル酸形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図17】式Iの化合物の結晶性トシル酸形態I塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図18】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図19】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図20】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態I塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図21】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態II塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図22】式IIの化合物の結晶性トシル酸水和物形態II塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図23】式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態II塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【図24】式Iの化合物の結晶性シュウ酸形態I塩形態の、特性X線粉末回折パターンを表す図である[縦軸:強度CPS、カウント(平方根);横軸:2θ(度)]。
【図25】式IIの化合物の結晶性シュウ酸形態I塩形態の、特性示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを表す図である[縦軸;熱流(cal/秒/g);横軸:温度(℃)]。
【図26】式Iの化合物の結晶性シュウ酸形態I塩形態の、特性熱重量分析(TGA)を表す図である[横軸;温度、℃、縦軸;サンプル中の重量損失%]。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−キノリン−5−イル]−4−オキサゾールカルボキサミドとも呼ばれる5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミド(式Iの化合物)の塩形態は、PDE IV阻害剤化合物として有用な医薬品としての活性を有する。
【0025】
【化7】
本明細書に開示される式Iの化合物の塩形態は、式Iの遊離塩基と比較した場合、少なくとも1種の溶媒に対して改善されたその溶解度、改善された化学的安定性、周囲環境での改善された物理的安定性、および改善された熱的安定性の1つまたは複数に関して加工上の利点を有する。これらの改善された性質は、有用な薬剤を提供する際に有益である。さらに、マレイン酸塩、トシル酸塩、およびフマル酸塩のそれぞれは、その他の形の化合物に比べて下記の利点を有する形をした式Iの化合物をもたらす、1つまたは複数の結晶性形態を有し:その利点とは、より低い不純物含量、およびより一貫した生成物の品質、即ち、より一貫した色、溶解速度、および取扱い易さを含めたより一貫した物理的性質;並びに薬剤に組み込むときのより長時間にわたる安定性である。
【0026】
以下に詳述される、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶性塩形態のそれぞれは、互いに、また非晶質形態から、それぞれの塩形態の特性X線回折パターン(図1、4、7、10、12、15、18、21、および24参照)、特性赤外線スペクトル(図10および11参照)、特性分析示差走査熱量法(DSC)サーモグラム(図2、5a、5b、8、13、16、19、22、および25)、および特性熱重量分析(TGA)サーモグラム(図3、6、9、14、17、20、23、および26)の1つまたは複数について試験をすることによって、容易に区別することができる。
【0027】
本発明者らは、上述の式Iの化合物のオキサゾリン環の左側の側基である第1級アミン官能基が、単独でプロトン化して、所望の物理的性質および安定性を有する式IIIの塩化合物を提供できることを認めた、最初の者である
【0028】
【化8−1】
(式中、「A−」は、陰イオン部分であり、例えばメシレート、フマレート、マレエート、トシレート、スルフェート、オキサレート、ホスフェート、および塩化物である)。
【0029】
本発明者らは、式Iのプロトン化化合物の各分子ごとに、溶媒、例えば水、エタノール、およびメタノールの1つまたは複数の分子を組み込んだ、以下に詳述されるある結晶性塩形態が、式Iの化合物に比べて所望の取扱い特性および安定性を有する化合物の結晶性形態を提供することを認めた最初の者でもある。
【0030】
塩の好ましい結晶性形態は、通常の環境で処理し貯蔵されたときにその他の形態に変換されず、熱的に安定であり、また所望の溶解度および取扱い特性を有することに加え、薬剤に容易に組み込まれかつ広く様々な環境条件下で安定な塩形態で式Iの化合物が提供されるという点で、熱力学的に堅牢である。
【0031】
知られているように、治療薬は、約pH1から約pH7のpH範囲にわたって約10mg/ml未満の水性溶解度を有する場合、典型的には不十分な吸収速度を示す。さらに、経口投与された治療薬が、このpH範囲内で約1mg/ml未満の溶解度を示す場合、典型的にはそのような治療薬は、溶解度および吸収は経口投与された薬剤に関連するので、溶解速度によって制限された吸収を示す。本明細書に開示される塩の一部は、式Iの遊離塩基化合物に比べて改善された溶解度特性を有する。したがって、これらの塩の改善された溶解度特性は、治療薬として式Iの化合物が送達されるように設計された薬剤の、経口投与形態を提供するのに重要である。これらの所望の改善された溶解度特性に加え、以下に詳述するように、選択された塩は、追加の有利な物理的性質を示した。
【0032】
一般に、化合物塩は、式Iの化合物と、フマル酸、塩酸、マレイン酸、メチルスルホン酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、およびトルエンスルホン酸から選択された酸とから調製される。以下に他に特に指示しない限り、酸性塩は、下記の手順に従って調製した:
i)計量した遊離塩基を、撹拌しながら溶媒に懸濁させる;
ii)測定量の酸または酸溶液を添加する;
iii)混合物を、周囲よりも高い温度まで加熱して、懸濁した材料を溶解し、周囲まで冷却して、塩を沈殿させる;および
iv)必要に応じて、収集した塩を再結晶させる。
【0033】
このように調製した塩を、いくつかの技法によって分析した。
【0034】
(分析手順)
式Iの化合物の結晶性塩形態のそれぞれを、X線粉末回折分光法(PXDR)、示差走査熱量分析(DSC)、熱重量分析(TGA)を含めた1つまたは複数の技法によって特徴付け、かつ/または溶解度研究および安定性研究を含めた物理的方法によって、さらに特徴付けた。
【0035】
(赤外線分光法)
サンプルを、Avatar Smart Miracle Attenuated Total Reflectance(ATR)サンプル区画を備えたNicolet Instruments NEXUS 670 FTIRを使用する減衰全反射(ATR)赤外線分光法を利用して、特徴付けた。スペクトルを、下記のパラメータを利用して収集した:DTGS KBr検出器;KBrビームスプリッタ;走査レンジ600cm−1から4000cm−1;アパーチャ設定100;分解能2;64スキャン/サンプル。分析は、バックグラウンドスペクトルを収集し、次いでATR結晶上に参照標準または特定サンプル(典型的にはサンプルを3mgから5mg)を置き、このサンプルに、製造業者の推奨に従って、機器の圧力アームで力を加えることによって実施した。次いで試料(参照またはサンプル)のスペクトルを、製造業者専有ソフトウェアを利用して、バックグラウンドのスペクトルと試料のスペクトルとの比として得た。
【0036】
いくつかのサンプルに関しては、透過モードのNexus 670 FT−IRを使用して、フーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトルを得た。サンプルをKBrマトリックスに分散させ、下記のパラメータを利用してスペクトルを収集した:DTGS KBr検出器;KBrビームスプリッタ;走査レンジ400cm−1から4000cm−1;アパーチャ設定100;分解能4;32スキャン/サンプル。データを、製造業者から提供されたソフトウェアを使用して分析した。
【0037】
(X線粉末回折分光法)
X線粉末回折分光法を、下記の手順の1つを使用してサンプルに関して得た。
【0038】
Rigaku Miniflex分光器を使用して得られたサンプルの分析では、下記の手順を用いた(PXRD法I)。PXRD法Iによって分析された試料を、低バックグラウンドプレート上に軽く充填した。試料を、周囲温度および周囲湿度の室温環境に曝した。Rigaku製分光器は、試料を54rpmで回転させる6プレートカルーセルを備えており、研究がなされるサンプル中の結晶の好ましい配向を最小限に抑えた。Rigaku製分光器は、Kα2フィルタなしで利用される銅Kα放射線源も備えていた。分光器は、可変発散スリットおよび0.3mm受容スリットも備えていた。スキャンレンジは、2.0から40°2θで実施した。機器の較正は、111平面に関してCu Kα1ピークを使用して検証した。走査中、ステップサイズは、0.6秒のステップ持続時間中、0.02度であった。データ分析は、Jade Plus(リリース5.0.26)分析ソフトウェアを使用して実現した。データを、11ポイントでSavitzky−Golay放物線フィルタにより平坦化した。典型的には、「d」間隔の値は、±0.04A以内で正確である。
【0039】
X線粉末回折分光分析を、Bruker D8回折計を使用していくつかのサンプルに関して得た。Bruker回折計は、GOBELビーム集束ミラーと、固定放射状ソーラスリットを備えたPSD検出器とを利用する、並列の光学構成を備えていた。Bruker回折計は、Anton Paar TTK450温度ステージと共に使用した。放射線源は銅(Kα)である。発散スリットは、0.6mmに固定した。Bruker回折計は、トップローディングブラスブロックサンプルホルダを利用した。PSD高速スキャンを使用して、4.0°から39.9°までスキャンした。回折パターンを得るために、試料をサンプルホルダに投入し、顕微鏡スライドガラスで平らにした。サンプルチャンバ温度を、周囲湿度で、窒素をパージせずに、かつ真空ではない状態で、25℃、30℃、または120℃に設定した。機器の較正は、マイカ標準を使用して検証した。スキャン中、ステップサイズは、0.5から10秒のステップ持続時間にわたり0.013度から0.02度であった。データ分析を、SOCABIM(登録商標)によって書かれた、Bruker(登録商標)から提供されたEVA分析ソフトウェア、バージョン7.0.0.1を使用して実現した。データを、ソフトウェアにより0.1から0.15に平滑化した。
【0040】
X線粉末回折分光分析は、銅Kα放射線源を備えたShimadzu XRD−6000X線回折計を使用して、いくつかのサンプルに関して得られた。サンプルを、0.6秒のステップ持続時間にわたり0.02度のステップサイズで、2.0から40.0°2θ(シータ)まで分析した。データ分析は、Shimadzuから供給されたBasic Processソフトウェア、バージョン2.6を使用して実施した。データを、ソフトウェアの自動平滑化プロセスを使用して平滑化した。
【0041】
X線粉末回折(「PXRD」)による分析用のサンプルを、いかなる形態変化も生じないように最小限の調製にかけた。サンプル粒子をサンプルホルダに軽く充填して、確実に滑らかな表面が形成されかつ凝集しないようにした。上述の手順により調製された溶媒和物サンプル以外について、溶媒なしで、乾燥またはその他の調製ステップを使用した。
【0042】
(示差走査熱量法)
熱量測定研究は、TA Instruments製の変調示差走査熱量計(DSC)を利用して実施した。他に指示しない限り、DSCスキャンは、ピンホール付きの蓋を備えた密閉皿をおよび40ml/分の窒素パージを使用して、加熱速度10℃/分で行った。いくつかの分析は、40ml/分の速度で流れる窒素中で開放アルミニウム皿を使用して、加熱速度2℃/分で行った。
【0043】
溶解度試験は、問題となっている溶媒の一定分量に、過剰な化合物を入れ、そのスラリーを、選択された温度条件下(典型的には周囲温度)で平衡にすることによって実施した。溶媒が水の場合、pHは、塩酸および水酸化ナトリウムで所望の値に調節した。スラリー混合物が平衡になったら、過剰な固形分を上澄みから遠心分離にかけるか(水)、または上澄みから濾過し(全てのその他の溶媒)、溶解した化合物の量を、希釈した一定分量の上澄み液のHPLC分析を使用して定量した。医薬品級溶媒を用いた。
【0044】
化学的安定性試験は、式Iの化合物の塩形態の正確に計量されたサンプルを、ポリエチレンバッグに入れることによって、問題となっている塩形態の一定分量に関して実施した。バッグに入れられたサンプルを、金属キャップが取り付けられたファイバボード管に封入し、これを、指示された湿度および温度条件下で指示された時間にわたり貯蔵した。分析は、バイアルの内容物を溶解し、HPLC分析を利用して溶質の量を定量することにより、実施した。一定分量は、ポリエチレンバッグの代わりに指示される条件下で、キャップ付きのアンバーバイアルに貯蔵した。
【実施例】
【0045】
式Iの化合物のマレイン酸塩(3形態)、フマル酸塩、シュウ酸塩、およびトシル酸塩(3形態)を、次のように調製した。式Iの化合物の塩形態のそれぞれは、下記の分光技法、即ち上述の手順を使用した、X線粉末回折分光法、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、赤外線分光法、およびNMR分光法を含めたものの1つまたは複数によっても特徴付けることができる。選択された塩形態を、上述の手順に従って、その安定性、溶解度、およびその他の改善された物理的性質に関して分析した。
【0046】
以下に論じられる塩のそれぞれを調製する際に使用される、式Iの遊離塩基化合物は、それ自体を、2005年5月16日出願の係属中の特許文献1(’009号公報)に開示されている粗製塩酸性塩から調製した。全ての反応性の結晶化、再結晶化、およびスラリーの手順は、特定級(一般に、他に特に指示しない限り、医薬品または食品級)の市販の溶媒中で実施し、受け容れたままの状態で使用した(他に特に指示しない限り)。
【0047】
(式Iの化合物のマレイン酸塩)
無水マレイン酸形態1塩形態の調製
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量11.0g(21.1mmol)を、アセトニトリル160ml中に懸濁した。懸濁液を60℃に加熱し、マレイン酸3.2g(27.6mmol、1.31当量)を懸濁液に添加した。酸の添加が終了すると溶液が得られ、その後、塩を沈殿させた。次いで沈殿混合物上の溶液を加熱還流し、溶媒の約80mlを、1気圧で蒸留することによって除去した。混合物を遠心分離した後、65℃に冷却し、t−ブチルメチルエーテル80mlを、滴下漏斗を使用して20分間にわたり添加した。得られた懸濁液を、2時間かけて5℃に冷却した。結晶性固形分を沈殿させ、これを濾過によって収集し50℃の真空炉内で10時間乾燥させた結果、白色の針状結晶が11.1g(81.6%)得られた。乾燥した結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図1)、示差走査熱量測定(図2)、および熱重量分析(図3)によって分析した。プロトンNMR分析(1H NMR、400MHz、DMSO)により、下記の化学シフトデータが得られた:
【0048】
【化8−2】
熱分析では、融点が191℃(図9、10)の無水物形態であることが明らかにされ、これはDCSにおいて、約191℃で鮮明な吸熱があることに該当する。175℃より前では、著しい重量損失が観察されなかった。
【0049】
X線粉末回折分光法は、マレイン酸塩のサンプルに関して得られ(図1)、表IVに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示している。
【0050】
【表4】
図1に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表Vは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、これらは、下記の表Vに示されるように、2シータ度(°2θ)で表される回折角、対応する「d」間隔(オングストローム(A))、および下記の表記によるシグナルの相対強度(「RI」)で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0051】
【表5】
表Vに示される式Iの化合物の、マレイン酸形態Iの塩の特徴を示す、12個のピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、5.9、9.8、11.7、16.9、18.5、21.0、23.7、および25.4に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、5.9、11.7、21.0、および25.4に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0052】
図2は、上述の手順により得られた、式Iの化合物のマレイン酸形態Iの無水塩の、DSCサーモグラムを示し、図3は、マレイン酸無水物形態I塩形態の、熱重量分析を示す。この熱分析は、塩が、191℃の融点を有する無水物であることを確立している(DSCでは、191℃での鮮明な吸熱に該当する)。さらに、塩は、約175℃まで安定であることを示しており、TGAは、その温度よりも低い場合に著しい重量損失を示さない。
【0053】
(マレイン酸一水和物形態1塩形態の調製)
方法A
式Iの化合物の一定分量(10.0g、19.2mmol)を、イソプロパノール40mlおよび水40mlの混合物を含む溶媒に、懸濁した。懸濁液を50℃に加熱した。この懸濁液に、この懸濁液を50℃に維持しながら5分間かけて、イソプロパノール10mlおよび水10mlを含む溶媒に溶解したマレイン酸2.9g(1.3当量)を含む、50℃に加熱した溶液を添加した。混合物をその温度で濾過し、別の50mlの水を50℃に加熱して、濾液に添加した。濾過の後、溶液を撹拌しながら、30分間かけて40℃に冷却した。溶液を30分間撹拌し、針状結晶を沈殿させた。撹拌を中断し、溶液を2時間かけて5℃に冷却し、結晶性マレイン酸一水和物形態1の塩を形成した。2時間後、沈殿物を真空濾過によって収集し、フィルタケークを、イソプロパノール10mlおよび水20mlを含む混合物で洗浄し、真空炉内で、50℃で10時間乾燥した。
【0054】
いくつかの実施形態では、溶媒およびスラリーのマトリックスとして、水:i−プロパノールの体積比50:50を使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、i−プロパノールを約65体積%含む溶媒を使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、水が約50体積%から約70体積%、好ましくは水が約50体積%から約65体積%、より好ましくは水が約55体積%から約65%である含水量を有する溶媒を、使用することが好ましい。
【0055】
方法B
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量27.0g(51.7mmol)を、n−プロパノール120mlおよび水90mlの混合物中に懸濁した。懸濁液を50℃に加熱した。マレイン酸8.7g(75.0mmol、1.45当量)を、n−プロパノール30mlおよび水30mlの混合物中に溶かした溶液を、加熱した懸濁液に10分間かけて添加することにより、懸濁材料を溶解させた。溶液を50℃に維持しながら、10分間かけて、追加の水180mlを、滴下漏斗を使用してこの溶液に添加した。次いで溶液を、30分間かけて40℃に冷却し、一水和物塩を沈殿させた。懸濁液を40℃で1時間撹拌した後、2時間かけて5℃に冷却した。固形分を濾過によって収集し、真空炉内で、55℃で5時間乾燥することにより、オフホワイトの針状物質が32.8g(96.6%)得られた。乾燥した針状物質の含水量を、Karl Fischer滴定によって分析した。分析は、含水量が2.8%であることを示した(一水和物の場合、理論的には2.7%)。
【0056】
方法Bによって生成された、マレイン酸一水和物形態I塩形態の乾燥結晶を、上述の手順に従って、赤外線分光法(図10)、X線粉末回折分光法(図1)、示差走査熱量測定(図2)、および熱重量分析(図3)によって分析した。元素分析を実施した。C28H25F5N4O9の計算値(一水和物656.5):C,51.25;H,3.84;N,8.53 実測値:C,51.27;H,3.59;N,8.54。
【0057】
X線粉末回折分光法は、マレイン酸一水和物形態Iの塩のサンプル(図4)に関して得られ、これは、表VIに示される強度を有する下記の回折角での、吸収ピークを示している。
【0058】
【表6−1】
【0059】
【表6−2】
図4に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表VIIは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、これらは、2シータ度(°2θ)で表される回折角、対応する「d」間隔(オングストローム(A))、および下記の表記によるシグナルの相対強度(「RI」)で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0060】
【表7】
表VIIに示される式Iの化合物の、マレイン酸一水和物形態Iの塩の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、6.5、7.5、14.8、21.2、22.2、25.6、27.2、および31.5に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、6.5、7.5、21.2、および27.2に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0061】
図5aは、上述の手順に従って10℃/分の加熱速度で得られた、式Iの化合物のマレイン酸一水和物形態I塩形態の、DSCサーモグラムを示し、図6は、上述の手順に従って得られた、マレイン酸一水和物形態I塩形態の、熱重量分析を示す。このDSC分析は、一水和物形態1が、100℃から140℃の範囲にわたって脱水することを示す。このTGA分析は、125℃で観察される鮮明な2.7%の重量損失と、約150℃よりも高い温度での低速分解とによって、材料が一水和物であることを確認する。TGAおよび125℃で観察された重量損失は、一水和物に関する理論上の含水量2.7重量%に該当する。
【0062】
図5bに示されるDSCサーモグラフは、式Iの化合物の、結晶性マレイン酸一水和物形態Iの塩のサンプルに関し、2℃の加熱速度で得られ、図6のTGAサーモグラムと重ね合った状態で現れる。図示されるように、DCSには2つの異なる領域があり、約84℃での第1の吸熱ピークは一水和物の脱水に対応し(TGAによって確認される)、113.5℃での第2の領域のピークは結晶相の分解に対応する。結晶性マレイン酸一水和物形態Iの塩のサンプルを、その脱水温度よりも高い温度で、しかしその分解温度よりも低い温度で加熱することによって、冷却しかつ水蒸気に曝したときにその初期の一水和物構造に戻る脱水構造が得られることが決定された。
【0063】
式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態Iの塩を、ICH−光安定性条件に従って、その光安定性に関して調査した。1サイクルのICH光安定性条件に曝された塩のサンプルは、著しい分解を全く示さなかった。式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物形態Iの塩のサンプルは、その化学的安定性についても調査し、その結果を下記の表VIIIに示す。
【0064】
【表8】
表VIIIのデータは、結晶性マレイン酸一水和物塩形態Iが、試験条件下で分解を全く示さないことを示している。式Iの化合物のマレイン酸一水和物形態Iの塩形態は、相対湿度5%から95%の周囲条件下でも調査をし、その結果、(a)5%RH、測定可能な水分吸収なし;(b)35%RH、0.06%の吸収;(c)55%RH、0.12%の吸収;(d)75%RH、0.18%の吸収;および(e)95%RH、0.20%の吸収であった。このように塩形態は、通常の周囲条件下で優れた水分安定性を示す。
【0065】
(マレイン酸一水和物形態2塩形態の調製)
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量5.0g(9.57mmol)を、アセトニトリル10mlおよびt−ブチルメチルエーテル(TBME)25mlの混合物中に懸濁した。懸濁液を50℃に加熱し、マレイン酸1.4g(1.3当量)を添加した結果、懸濁材料が溶解した。溶液を、30分間かけて周囲温度(約25℃)に冷却し、白色沈殿物が生成された。固形分を、濾過によって得た(4.6g)。計算された収率は、出発時の遊離塩基に対して76%であった。
【0066】
マレイン酸一水和物形態2の塩の乾燥結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図7)、示差走査熱量測定(図8)、および熱重量分析(図9)によって分析した。
【0067】
図7に出現する、マレイン酸一水和物形態2の塩のサンプルに関して得られたX線粉末回折スペクトルは、表IXに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0068】
【表9】
図7に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表Xは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、これらは、2シータ度(°2θ)で表される回折角、対応する「d」間隔(オングストローム(A))、および下記の表記によるシグナルの相対強度(「RI」)で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0069】
【表10】
表Xに示される式Iの化合物の、マレイン酸一水和物形態2の塩の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、4.7、9.3、13.9、18.1、18.5、19.4、20.6、および23.0に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、4.7、9.3、18.5、および19.4に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0070】
図8は、上述の手順に従って得られた、式Iの化合物のマレイン酸一水和物形態2塩形態のDSCサーモグラムを示し、図9は、マレイン酸一水和物形態2塩形態の、熱重量分析を示す。DSC分析は、一水和物形態2が、40℃から85℃の範囲にわたって脱水することを示す。この温度範囲では、TGA分析は、約2.7%の重量損失を示し、これは、1当量の水/塩分子の損失に一致しており、構造が一水和物であることが確認される。TGAはさらに、約150℃よりも高い温度で低速分解することを示す。
【0071】
(式Iの化合物のフマル酸塩形態の調製)
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量6.0g(11.5mmol)を、アセトニトリル50mlに懸濁した。懸濁液を60℃に加熱し、フマル酸1.4g(12.1mmol、1.05当量)を添加した。混合物を80℃に加熱して、溶液を得た。溶液を、2時間かけて室温(約25℃)に冷却し、固形分を沈殿させた。固形分を、真空濾過によって収集し、真空炉内で、50℃で2時間にわたり乾燥した結果、針状結晶6.8gが得られた(計算収率、出発時の遊離塩基に対して92.7%)。
【0072】
このように調製された、式Iの化合物のフマル酸塩形態の乾燥結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図12)、示差走査熱量測定(図13)、および熱重量分析(図14)によって分析した。
【0073】
図12に出現する、上記調製された結晶性フマル酸塩形態のサンプルで得られたX線粉末回折スペクトルは、表XIXに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0074】
【表19】
図12に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表XIは、下記の表XIに示される回折角および相対強度での、12個の最も特徴的なピークを列挙している。表XIは、図12のX線データから決定された、計算による格子面間隔も列挙している。表XIにおいて、回折角は、2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で、またシグナルの相対強度(「RI」)は、下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0075】
【表11】
表XIに示される式Iの化合物の、結晶性フマル酸塩形態の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、4.0、7.8、8.0、18.0、19.9、22.5、25.5、および25.6に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、8.0、19.9、22.5、および25.6に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0076】
図13は、上述の手順に従って得られた、式Iの化合物のフマル酸塩のDSCサーモグラムを示し、図14は、フマル酸塩の熱重量分析を示す。DSC分析は、フマル酸塩が、25℃から200℃の範囲にわたって安定であること、および約215℃で鮮明な融点があることを示す。TGA分析では、材料が溶媒和物でないことが確認され、DSCによって示される融点まで著しい重量損失がないことを示している。
【0077】
上記調製された結晶性フマル酸塩形態を、相対湿度5%から95%の周囲条件下で調査し、その結果、(a)5%RH、測定可能な水分吸収なし;(b)35%RH、0.21%の吸収;(c)55%RH、0.40%の吸収;(d)75%RH、0.64%の吸収;および(e)95%RH、0.80%の吸収であった。このように塩形態は、通常の周囲条件下で優れた水分安定性を示す。
【0078】
(トシル酸無水物の調製)
式Iの化合物の形態Iの塩形態
式Iの化合物(遊離塩基形態)の一定分量11.0g(21.1mmol)を、アセトニトリル130mlに懸濁した。懸濁液を60℃に加熱し、トルエンスルホン酸4.5g(23.7mmol、1.19当量)を添加した。混合物をさらに70℃に加熱し、t−ブチルメチルエーテル80mlを、滴下漏斗を使用して20分かけて添加した。得られた溶液を、2時間かけて周囲温度(約25℃)に冷却し、白色の針状物質を沈殿させた。固形分を、濾過によって収集した(13.7g)。計算収率は、出発時の遊離塩基に対して93.7%であった。
【0079】
トシル酸無水物形態Iの塩の乾燥結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図15)、示差走査熱量測定(図16)、および熱重量分析(図17)によって分析した。
【0080】
図15に出現する、式Iの化合物の、トシル酸無水物形態1塩形態のサンプルに関して得られたX線粉末回折スペクトルは、表XIIに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0081】
【表12】
図15に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表XIIIは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、回折角は、2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で、またシグナルの相対強度(「RI」)は、下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0082】
【表13】
表XIIIに示される式Iの化合物の、トシル酸無水物形態1塩形態の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、5.5、6.6、12.9、16.8、20.5、23.9、25.2、および28.5に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、6.6、16.8、20.5、および23.9に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0083】
図16は、上述の手順により得られた、式Iの化合物のトシル酸無水物形態1塩形態の、DSCサーモグラムを示し、図17は、トシル酸無水物形態1塩の熱重量分析を示す。この熱分析は、非溶媒和塩形態でありかつ135℃の融点を有する、トシル酸無水物形態1塩と一致している。
【0084】
(式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態の調製)
上記にて調製された、式Iの化合物のトシル酸無水物形態1塩形態の一定分量(1.5g、2.2mmol)を、密閉容器内で3日間、水9.0mLと一緒に合わせて、スカム様材料を生成した。スカム様材料を収集し、破砕し、追加の水15mLと一緒に合わせて、スラリーを生成した。スラリーを、25℃および350RPMで6日間振盪させて、湿潤ケークを生成した。さらに水45mLを湿潤ケークに添加して、スラリーを生成し、これを25℃および350RPMで5日間振盪させた。振盪期間が終了した後、得られた固形分を真空濾過により収集し、室温で一晩真空乾燥して、式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態を生成した。
【0085】
トシル酸水和物形態I塩の乾燥結晶を、上述の手順によりX線粉末回折分光法(図18)、示差走査熱力測定(図19)、および熱重量分析(図20)によって分析した。
【0086】
図18に出現する、式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態のサンプルに関して得られたX線粉末回折スペクトルは、表XIVに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0087】
【表14−1】
【0088】
【表14−2】
図18に示されるスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表XVは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的なピークを列挙しており、回折角は、2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で、またシグナルの相対強度(「RI」)は下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0089】
【表15−1】
【0090】
【表15−2】
表XVに示される式Iの化合物の、トシル酸水和物形態1塩形態の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、5.2、6.9、12.5、15.4、20.0、26.3、27.1、および27.5に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、5.2、12.5、20.0、および26.3に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0091】
図19は、上述の手順により得られた、式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態の、DSCサーモグラムを示し、図20は、トシル酸水和物形態I塩の熱重量分析を示す。DSC分析は、トシル酸水和物形態I塩が、約105℃でピークに達する50から120℃までの広範な吸熱もたらすことを示し、これは、トシル酸水和物形態1塩の脱水に相当する。約8%の重量損失が、同じ温度範囲でTGAで観察されたが、これは、約3個の水分子/塩の分子に相当する。
【0092】
(式Iの化合物のトシル酸水和物形態2塩形態の調製)
上記にて調製された、式Iの化合物のトシル酸無水物形態1塩形態の一定分量(1.5g、2.2mmol)を、メタノール4.5mLに溶解した。溶液を、真空蒸留によって3日後に濃縮乾固した。固形分を、2−プロパノール4.5mLでスラリー化し、これを25℃および350RPMで6日間振盪させることにより、沈殿物が得られた。固形分を真空濾過によって収集し、室温で12時間にわたり真空乾燥した。得られた式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物形態2塩形態を、上述の手順に従って、X線結晶解析(図21)、DSC(図22)、およびTGA(図23)によって分析した。
【0093】
図21で出現した、上記にて調製された結晶性フマル酸塩形態のサンプルで得られたX線粉末回折スペクトルは、表XXに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0094】
【表20−1】
【0095】
【表20−2】
図21に示される、式Iの化合物のトシル酸水和物形態2塩形態のスペクトル中に出現したピークのうち、下記の表XVIは、下記の表XVIに示される回折角および相対強度で12個の最も特徴的な吸収ピークを列挙している。表XVIは、図21のX線データから決定された、計算による格子面間隔も列挙する。表XVIにおいて、回折角は2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で、またシグナルの相対強度(「RI」)は下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0096】
【表16】
表XVIに示される式Iの化合物の、トシル酸水和物形態I塩形態の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、5.9、9.2、11.9、14.9、17.4、20.8、23.2、および15.3に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、5.9、9.2、11.9、および14.9に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0097】
図22は、上述の手順により得られた、式Iの化合物のトシル酸水和物形態2塩形態の、DCSサーモグラムを示し、図23は、トシル酸水和物形態2塩の熱重量分析を示す。DSC分析は、約185℃で単一の鮮明な融点を有する、水和しておりかつ溶媒和していないサンプルに一致している。TGAは、化合物の融点よりも低い温度では著しい重量損失を示さず、その後分解し、非溶媒和結晶性塩形態に一致している。
【0098】
(式Iの化合物のシュウ酸形態I塩形態の調製)
式Iの化合物の一定分量(遊離塩基形態、11.0g、21.1mmol)を、エタノール300mlに懸濁した。懸濁液を60℃に加熱した。シュウ酸(3.2g、25.4mmol、1.2当量)を懸濁液に添加し、混合物を撹拌しながら75℃に加熱し、75℃に1時間保持することにより、溶液を得た。溶液を、1時間かけて10℃の温度に冷却し、固形分を沈殿させた。固形分を、真空濾過によって収集し、エタノールで洗浄し、100℃の真空炉内で5時間乾燥した結果、白色の針状結晶が9.0g(69.6%)得られた。
【0099】
式Iの化合物の、シュウ酸形態I塩形態の乾燥結晶を、上述の手順に従って、X線粉末回折分光法(図24)、示差走査熱量測定(図25)、および熱重量分析(図26)によって分析した。
【0100】
シュウ酸形態I塩のサンプルで得られた、X線粉末回折分光法(図24)は、表XVIIに示される強度を有する下記の回折角で、吸収ピークを示す。
【0101】
【表17】
図24に示されるスペクトルに出現したピークのうち、下記の表XVIIIは、X線粉末回折スペクトルの12個の最も特徴的な吸収ピークを列挙しており、回折角は、2シータ度(°2θ)で表され、対応する「d」間隔はオングストローム(A)で表され、またシグナルの相対強度(「RI」)は、下記の表記で表される:S=強、M=中、W=弱;V=非常に、およびD=拡散。
【0102】
【表18】
表XVIIIに示される式Iの化合物の、シュウ酸形態I塩の特徴を示すピークの中で、8個の最も特徴的なピークは、6.8、7.6、9.3、14.9、18.9、22.7、26.7、および34.2に等しい回折角(°2θ)で出現するものであり、4個の最も特徴的なピークは、6.8、9.3、14.9、および18.6に等しい回折角(°2θ)で出現するものである。
【0103】
図25は、上述の手順によって得られた、式Iの化合物のシュウ酸形態I塩形態の、DSCサーモグラムを示し、図26は、シュウ酸無水物形態I塩の熱重量分析を示す。DSC分析は、シュウ酸無水物形態I塩が、25℃から85℃の範囲にわたって脱溶媒和することを示す。TGA分析は、材料が、この温度範囲にわたって5%の重量損失を引き起こすことを示し、これは、結晶中に存在する式Iの化合物の量に対してメタノール溶媒和物が約1当量であることに相当する。
【0104】
上記にて調製された式Iの化合物の結晶性シュウ酸塩形態を、その光安定性について、ICH−光安定性条件に従って調査した。1サイクルのICH光安定性条件に曝された塩のサンプルは、著しい分解を全く示さなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性マレイン酸一水和物塩形態I、結晶性トシル酸水和物塩形態I、結晶性フマル酸塩形態、および結晶性シュウ酸塩形態から選択された、化合物Iの結晶性塩形態
【化9】
。
【請求項2】
結晶性マレイン酸一水和物塩形態Iである、請求項1に記載の結晶性塩形態。
【請求項3】
(a)少なくとも50体積%のi−プロパノールを含む混合イソプロパノール/水溶媒中に、式Iの遊離塩基化合物を一定分量懸濁させるステップであって、懸濁させた材料と溶媒との比が、重量(g)/体積(ml)を単位とした場合に少なくとも約1:8であるステップと、
(b)ステップ「a」で調製された懸濁液を、少なくとも50℃まで加熱するステップと、
(c)ステップ「b」で調製された加熱された懸濁液と、少なくとも1当量のマレイン酸を溶解するのに十分な量の混合溶媒に溶解することによって作製された溶液とを、10分間にわたって混合するステップであって、この混合溶媒が、50体積%のi−プロパノールおよび50体積%の水を含むステップと、
(d)溶液の温度を少なくとも約50℃の温度に維持しながら、ステップ「c」からの混合物を濾過して溶液を得るステップと、
(e)混合物を少なくとも約50℃の温度に維持しながら、ステップ「d」からの濾液に、ステップ「a」で使用された水の体積に基づきさらに約1.25体積の水を10分間にわたって添加するステップと、
(f)ステップ「e」からの溶液を、30分間にわたって約40℃まで冷却し、それによって沈殿物スラリーを形成するステップと、
(g)ステップ「f」からのスラリーを、約40℃の温度で第1の時間にわたり撹拌し、その後、スラリーを2時間にわたって5℃まで冷却するステップと、
(h)必要に応じて、ステップ「g」で沈殿した固形分を収集し、少なくとも66体積%のイソプロパノールを含有する混合イソプロパノール/水溶媒中で洗浄するステップと、
(i)必要に応じて、ステップ「h」で得られた固形分を真空炉内で、55℃で5時間乾燥するステップと
を含む、式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物塩形態を作製するための方法
【化10】
。
【請求項4】
図10の赤外線スペクトルによって特徴付けられ、回折角(2θ、全ての値は±0.2の精度を反映する)、格子面「d」間隔(オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)で表される表Iに示されたX線粉末回折パターンによってさらに特徴付けられる、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドのマレイン酸塩の結晶性マレイン酸一水和物塩形態I
【表1A】
。
【請求項5】
(a)(1)式Iの遊離塩基化合物の一定分量を、懸濁させる式Iの化合物1gに対して少なくとも10mlのアセトニトリル中に懸濁させるステップ、
(2)ステップ「a」で調製された懸濁液を、少なくとも約60℃の温度まで加熱するステップ、
(3)少なくとも1当量のトルエンスルホン酸を、懸濁液中に混合するステップ、
(4)ステップ「c」で調製された混合物を、少なくとも約70℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(5)t−ブチルメチルエーテルを、混合物中のアセトニトリル:t−ブチルメチルエーテルが13:8の比をもたらす量で、ステップ「d」で調製された高温溶液中に少なくとも20分間にわたって混合するステップ、および
(6)混合物を、周囲温度で少なくとも約2時間にわたり冷却し、式Iの化合物の結晶性無水トリスルホン酸塩を沈殿させるステップ
によって、結晶性トシル酸無水塩を調製するステップと、
(b)ステップ「a(6)」で調製された沈殿物の塩の一定分量を収集し、そして第1の固体スカムを生成するのに必要な期間にわたり、ある量の水と一緒に合わせて水6ml/塩1gの比を得るステップと、
(c)ステップ「b」で生成された固体スカムを、ステップ「b」で使用された水の量の1.66倍に等しい水の量でスラリー化するステップと、
(d)ステップ「c」で調製されたスラリーを、湿潤ケークを生成するのに必要な時間にわたり撹拌するステップと、
(e)ステップ「c」で添加された水の3倍量をさらに添加して、ステップ「d」で生成された湿潤ケークで第2のスラリーを形成し、スラリーを5日間撹拌するステップと、
(f)周囲温度の真空中で、ステップ「e」で生成されたスラリーからの固形分を乾燥し、それによって、式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態を生成するステップと
を含む、式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物塩形態Iを作製するための方法
【化11】
。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって作製された、式IVの5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミド化合物の結晶性トシル酸水和物塩形態Iであって、
【化12】
図11に示される赤外線スペクトルと、回折角(2θ、全ての値は±0.2の精度を反映する)、格子面「d」間隔(オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表IIに示されるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶性トシル酸水和物塩形態I
【表2A】
。
【請求項7】
(a)アセトニトリル50ml中に、式Iの構造を有する遊離塩基化合物の一定分量を懸濁させるステップと、
(b)ステップ「a」で形成された懸濁液を、約60℃まで加熱するステップと、
(c)加熱された懸濁液と、少なくとも1当量のフマル酸とを混合するステップと、
(d)ステップ「c」で調製された混合物を、懸濁材料が溶解する温度にまで加熱するステップと、
(e)ステップ「d」で調製された溶液を、約2時間にわたり周囲温度まで冷却して、沈殿物を得るステップと、
(f)沈殿物を収集し、約50℃の温度の真空炉内で乾燥するステップと
を含む、式Vの構造を有する5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドフマル酸塩化合物の結晶性フマル酸塩形態を作製するための方法
【化13】
。
【請求項8】
前記加熱ステップ「d」において、混合物が少なくとも約80℃の温度に加熱され、冷却ステップ「e」において、周囲温度が約25℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
回折角(2θ、全ての値は±0.2の精度を反映する)、格子面「d」間隔(オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表IIIに示されるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、上述の方法により調製された式Vの5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性フマル酸塩形態
【表3A】
。
【請求項10】
請求項3に記載の方法によって生成された式IIのマレイン酸塩化合物から作製される、請求項4に記載の結晶性マレイン酸一水和物塩形態I
【化14】
。
【請求項1】
結晶性マレイン酸一水和物塩形態I、結晶性トシル酸水和物塩形態I、結晶性フマル酸塩形態、および結晶性シュウ酸塩形態から選択された、化合物Iの結晶性塩形態
【化9】
。
【請求項2】
結晶性マレイン酸一水和物塩形態Iである、請求項1に記載の結晶性塩形態。
【請求項3】
(a)少なくとも50体積%のi−プロパノールを含む混合イソプロパノール/水溶媒中に、式Iの遊離塩基化合物を一定分量懸濁させるステップであって、懸濁させた材料と溶媒との比が、重量(g)/体積(ml)を単位とした場合に少なくとも約1:8であるステップと、
(b)ステップ「a」で調製された懸濁液を、少なくとも50℃まで加熱するステップと、
(c)ステップ「b」で調製された加熱された懸濁液と、少なくとも1当量のマレイン酸を溶解するのに十分な量の混合溶媒に溶解することによって作製された溶液とを、10分間にわたって混合するステップであって、この混合溶媒が、50体積%のi−プロパノールおよび50体積%の水を含むステップと、
(d)溶液の温度を少なくとも約50℃の温度に維持しながら、ステップ「c」からの混合物を濾過して溶液を得るステップと、
(e)混合物を少なくとも約50℃の温度に維持しながら、ステップ「d」からの濾液に、ステップ「a」で使用された水の体積に基づきさらに約1.25体積の水を10分間にわたって添加するステップと、
(f)ステップ「e」からの溶液を、30分間にわたって約40℃まで冷却し、それによって沈殿物スラリーを形成するステップと、
(g)ステップ「f」からのスラリーを、約40℃の温度で第1の時間にわたり撹拌し、その後、スラリーを2時間にわたって5℃まで冷却するステップと、
(h)必要に応じて、ステップ「g」で沈殿した固形分を収集し、少なくとも66体積%のイソプロパノールを含有する混合イソプロパノール/水溶媒中で洗浄するステップと、
(i)必要に応じて、ステップ「h」で得られた固形分を真空炉内で、55℃で5時間乾燥するステップと
を含む、式Iの化合物の結晶性マレイン酸一水和物塩形態を作製するための方法
【化10】
。
【請求項4】
図10の赤外線スペクトルによって特徴付けられ、回折角(2θ、全ての値は±0.2の精度を反映する)、格子面「d」間隔(オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)で表される表Iに示されたX線粉末回折パターンによってさらに特徴付けられる、5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドのマレイン酸塩の結晶性マレイン酸一水和物塩形態I
【表1A】
。
【請求項5】
(a)(1)式Iの遊離塩基化合物の一定分量を、懸濁させる式Iの化合物1gに対して少なくとも10mlのアセトニトリル中に懸濁させるステップ、
(2)ステップ「a」で調製された懸濁液を、少なくとも約60℃の温度まで加熱するステップ、
(3)少なくとも1当量のトルエンスルホン酸を、懸濁液中に混合するステップ、
(4)ステップ「c」で調製された混合物を、少なくとも約70℃に加熱して、溶液を得るステップ、
(5)t−ブチルメチルエーテルを、混合物中のアセトニトリル:t−ブチルメチルエーテルが13:8の比をもたらす量で、ステップ「d」で調製された高温溶液中に少なくとも20分間にわたって混合するステップ、および
(6)混合物を、周囲温度で少なくとも約2時間にわたり冷却し、式Iの化合物の結晶性無水トリスルホン酸塩を沈殿させるステップ
によって、結晶性トシル酸無水塩を調製するステップと、
(b)ステップ「a(6)」で調製された沈殿物の塩の一定分量を収集し、そして第1の固体スカムを生成するのに必要な期間にわたり、ある量の水と一緒に合わせて水6ml/塩1gの比を得るステップと、
(c)ステップ「b」で生成された固体スカムを、ステップ「b」で使用された水の量の1.66倍に等しい水の量でスラリー化するステップと、
(d)ステップ「c」で調製されたスラリーを、湿潤ケークを生成するのに必要な時間にわたり撹拌するステップと、
(e)ステップ「c」で添加された水の3倍量をさらに添加して、ステップ「d」で生成された湿潤ケークで第2のスラリーを形成し、スラリーを5日間撹拌するステップと、
(f)周囲温度の真空中で、ステップ「e」で生成されたスラリーからの固形分を乾燥し、それによって、式Iの化合物のトシル酸水和物形態I塩形態を生成するステップと
を含む、式Iの化合物の結晶性トシル酸水和物塩形態Iを作製するための方法
【化11】
。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって作製された、式IVの5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミド化合物の結晶性トシル酸水和物塩形態Iであって、
【化12】
図11に示される赤外線スペクトルと、回折角(2θ、全ての値は±0.2の精度を反映する)、格子面「d」間隔(オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表IIに示されるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶性トシル酸水和物塩形態I
【表2A】
。
【請求項7】
(a)アセトニトリル50ml中に、式Iの構造を有する遊離塩基化合物の一定分量を懸濁させるステップと、
(b)ステップ「a」で形成された懸濁液を、約60℃まで加熱するステップと、
(c)加熱された懸濁液と、少なくとも1当量のフマル酸とを混合するステップと、
(d)ステップ「c」で調製された混合物を、懸濁材料が溶解する温度にまで加熱するステップと、
(e)ステップ「d」で調製された溶液を、約2時間にわたり周囲温度まで冷却して、沈殿物を得るステップと、
(f)沈殿物を収集し、約50℃の温度の真空炉内で乾燥するステップと
を含む、式Vの構造を有する5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドフマル酸塩化合物の結晶性フマル酸塩形態を作製するための方法
【化13】
。
【請求項8】
前記加熱ステップ「d」において、混合物が少なくとも約80℃の温度に加熱され、冷却ステップ「e」において、周囲温度が約25℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
回折角(2θ、全ての値は±0.2の精度を反映する)、格子面「d」間隔(オングストローム)、および相対ピーク強度(「RI」)に関して表された表IIIに示されるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、上述の方法により調製された式Vの5−(1(S)−アミノ−2−ヒドロキシエチル)−N−[(2,4−ジフルオロフェニル)−メチル]−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリン]−4−オキサゾールカルボキサミドの結晶性フマル酸塩形態
【表3A】
。
【請求項10】
請求項3に記載の方法によって生成された式IIのマレイン酸塩化合物から作製される、請求項4に記載の結晶性マレイン酸一水和物塩形態I
【化14】
。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2010−500406(P2010−500406A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524638(P2009−524638)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/017848
【国際公開番号】WO2008/021271
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/017848
【国際公開番号】WO2008/021271
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】
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