説明

5−HT(2B)受容体でアンタゴニスト活性を有する高選択性5−HT(2C)受容体アゴニスト

高選択性5-HT(2C)受容体アゴニスト受容体が、開示されている。5-HT(2C)受容体アゴニストは、5-HT(2C)受容体の調節が有効である肥満や精神疾患などの疾患および病態の治療において使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の関与に関する陳述)
本発明は、NIH/NIDAから付与された許可番号R01 DA022317、R01 MH61887、N01 MH80032、およびU19 MH82441の下で、政府の支援を受けて完成されたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(関連出願に関する相互参照)
本願は、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する2010年2月4日に特許出願された米国仮特許出願第61/301,441号の利益を享受するものである。
【0003】
(発明の技術分野)
本願発明は、5-HT(2)受容体を調節する化合物に関する。具体的には、本願発明は、5-HT(2B)受容体でアンタゴニスト活性を示すこともできる高選択性5-HT(2C)アゴニストに関する。当該化合物は、5-HT(2)受容体の調節が有効である肥満や精神疾患などの疾患および病態を治療する方法において使用される。
【背景技術】
【0004】
5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)は、例えば、特に、認識、情動、注意、および欲求などの様々な行為を媒介または調節する。加えて、実際に得たデータは、5-HTが、コカインや3,4-メチレンジオキシ-メタニフェタミン(MDMAまたは「エクスタシー」)などの精神運動刺激剤の効果の媒介に関与されていることを示している。幾つかの証拠は、脳内のセロトニン作動系が、ドーパミン作動性報酬系、それに、服薬行動を維持する環境因子である条件付け効果を含むその他の因子をも調節することを示している。
【0005】
5-HTの様々な生理学的効果が、異なる細胞内シグナル伝達系を活性化する多数の異なる5-HT受容体サブタイプとの相互作用に基づくものであることが理解されている。3つのサブタイプ(5-HT(2A)、5-HT(2B)、および5-HT(2C)受容体)が公知である5-HT2受容体ファミリーを含む5-HT受容体の7つのファミリーが同定されている。セロトニン受容体の5-HT(2)受容体ファミリーは、脳内のセロトニンの作用の重要な部位を示すものであり、および統合失調症、鬱病、不安神経症、摂食障害、強迫神経症、慢性疼痛病態、および肥満などの様々な疾患の治療に用いられる薬剤の主要な分子標的を含むものと考えられる。
【0006】
優れた中枢性セロトニン受容体サブタイプである5-ヒドロキシトリプタミン2C受容体(5-HT(2C))は、中枢神経系(CNS)全体にわたって広範に分布しており、および情緒、食欲、ならびに性行動などの様々な行動プロセスを調節する役割を果たしているものと考えられている(1-4)。5-HT(2A)受容体は、リセルグ酸ジエチルアミド(LSD)などの薬物の幻覚誘発活性を媒介し、および統合失調症、不眠症、およびその他の障害を治療するための主要な標的である(5)。5-HT(2B)受容体は、処方薬として用いられる幾つかの化合物の致死的となり得る弁膜症の副作用を媒介する(6, 7)。
【0007】
5-HT(2C)アゴニストは、鬱病、肥満、中毒、および精神病の前臨床モデルにおいて効果が実証されている(8-10)。5-HT(2C)受容体を標的とする治療法は、CNS関連障害の治療のための有望な手段を提案するものである。しかしながら、5-HT(2C)受容体は、その他の2つのファミリーメンバーに対して相同であるので(11)、臨床用途のために開発された5-HT(2C)アゴニストは、それらのサブタイプで活性があったとしても、ごく僅かな活性でしかないことは重要である(12)。今までに、幾つかの5-HT(2C)アゴニストが、前臨床動物モデルにおいて効果を示しており(13-15)、および目下のところ、ヒトに対して試験が行われている(13)。特に、最も研究の進んだ5-HT(2C)受容体アゴニストの一つが、ロルカセリンであり、このものは、現在のところ、2つのフェーズIII試験が行われている経口抗肥満薬である(16)。
【0008】
薬剤は、一つ以上の5-HT(2)受容体サブタイプと相互作用することができ、その結果、潜在的に望ましくない副作用をもたらす。例えば、モノアミン輸送体に加えて、フェンフルラミンも、in vivoで5-HT(2C)受容体活性化作用を示し、およびフェンフルラミンのこの食欲抑制作用は、少なくとも実験動物での主に後者の活性に起因するものである。5-HT(2C)受容体活性化作用が、フェンフルラミンおよび関連薬物の望ましくない心肺活動に関与していることも明らかである。
【0009】
これらの知見は、5-HT(2)受容体サブタイプに対して選択的に相互作用する薬剤、および、特に、5-HT(2A)ならびに5-HT(2B)受容体に関して最低限の効果を示す選択性5-HT(2C)受容体アゴニストが、当該技術分野で待望されていることを示すものである。選択性5-HT(2C)受容体アゴニストは、肥満、それに、高血圧、脂質異常症、糖尿病、および循環器疾患などの関連または関係する障害の治療において有用であり、および、例えば、5-HT(2B)受容体サブタイプの活性化が関係した心臓弁膜症、および5-HT(2A)受容体サブタイプの活性化が関係した幻覚など、有意な罹患率および死亡率に関係した幾つかの関連あるいは非関連の受容体との相互作用を回避する。
【0010】
選択性5-HT(2C)受容体アゴニストは、肥満の他にも、鬱病、不安神経症、パニック障害、統合失調症、CCD、癲癇、および片頭痛の治療においても有用である。5-HT(2C)受容体アゴニストは、WO 2006/065600において、アルツハイマー病の治療、老人斑の予防または治療、および勃起障害の治療を含む男性および女性での性的機能不全の治療において有用であることがさらに開示されている。
【0011】
5-HT(2C)受容体アゴニスト活性を示す多くの合成化合物が、例えば、米国特許第6,962,939号;第6,777,407号;第7,012,089号;第6,953,787号;および第7,071,185号;米国特許公開公報第2005/197380号;第2005/020573号;第2006/154290号;第2005/026925号;第2005/0143452号;第2002/032199号;および第2005/0261347号;および公開PCT出願WO 2000/035922;WO 2006/065600;WO 2006/077025;およびWO 2005/007614において報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当該技術分野における重要な進展とは、例えば、精神疾患、常習行為、認知障害、肥満、運動障害、および化合物中毒などの5-HT(2C)受容体活性化作用が有効である疾患および病態の治療において有用な選択性5-HT(2C)受容体アゴニストの発見である。このような疾患および病態の治療において効果的な化合物、組成物、および方法のいずれか、あるいはこれらの疾患および病態を治療するために使用されてきたその他の治療法との組み合わせが当該技術分野では待望されている。本願発明は、この要望を満たすことに関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、5-HT(2C)受容体アゴニスト、5-HT(2C)受容体アゴニストを含む医薬組成物、および治療を必要とする個体に治療有効量の5-HT(2C)受容体アゴニストを投与することを含む、精神疾患や肥満などの5-HT(2C)受容体の活性化作用が有効な疾患および病態を治療する方法に関する。本願発明の5-HT(2C)受容体アゴニストは、5-HT(2)ファミリーの受容体のその他のメンバーに対するよりも選択性を示す。
【0014】
具体的には、本願発明は、構造式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
式中、
R1は、独立して、C1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルケニル、-CF3、-OCF3、C1-6ヘテロアルキル、-ORa、-SRa、ハロ、-N02、-CN、-NC、-C(=0)Ra、-C(=C)ORa、-N(Ra)(Rb)、-C(=0)N(Ra)(Rb)、-S02N(Ra)(Rb)、-NRcC(=0)Ra、-N=C(Ra)(Rb)、-NRcC(=0)ORa、-S02Ra、-S03Ra、-P(0)(ORa)、-P(=0)(ORa)(ORb)、および-NH-P(=0)(ORa)(ORb)からなるグループから選択され、
RaおよびRbは、独立して、水素、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルからなるグループから選択され、
Rcは、水素またはC1-6アルキルであり、および
nは、0、1、2、3、または4の整数である、
構造式(I)を有する5-HT(2C)アゴニスト、または医薬として許容し得るその塩または水和物に関する。
【0017】
本願発明の化合物は、受容体の5-HT(2)ファミリーの受容体、特に、5-HT(2C)受容体を調節する。幾つかの実施態様において、本願発明の化合物は、5-HT(2C)受容体を選択的に調節し、その一方で、5-HT(2B)受容体に関しては、活性を全く示さないか、あるいは、ほんの僅かな活性しか示さない。幾つかの実施態様において、本願発明の化合物は、5-HT(2C)受容体を選択的に調節し、その一方で、5-HT(2A)受容体に関しては、活性を全く示さないか、あるいは、ほんの僅かな活性しか示さない。幾つかの実施態様において、本願発明の化合物は、5-HT(2C)受容体についてのアゴニストである。好ましい実施態様において、本願発明の化合物は、5-HT(2C)受容体についての選択的アゴニストであり、その一方で、5-HT(2A)受容体および/または5-HT(2B)受容体に関しては、アゴニスト活性を全く示さないか、あるいは、ほんの僅かなアゴニスト活性しか示さない。
【0018】
その他の実施態様において、本願発明は、治療を必要とする個体に治療有効量の構造式(I)の5-HT(2C)受容体アゴニストを投与することを含む、病態または疾患を治療する方法を提供する。関係する疾患または病態、例えば、精神疾患、常習行為、認知障害、肥満、運動障害、および化合物中毒は、5-HT(2C)受容体の活性を調節することによって治療することができる。
【0019】
本願発明のその他の実施態様は、ヒトなどの治療を必要とする個体に、治療有効量の構造式(I)の化合物を投与することを含む、5-HT(2C)受容体活性を調節することによって、疾患または病態を治療する方法を提供する。構造式(I)の化合物は、単独療法として、あるいは疾患または病態の治療において有用な治療有効量の第二治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0020】
その他の実施態様において、本願発明は、構造式(I)の化合物、および医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本願発明のその他の実施態様は、5-HT(2C)受容体活性の調節が有効である疾患または病態の個体を治療する方法において、構造式(I)の化合物と任意の治療効果のある第二治療薬を利用することである。
【0022】
さらなる実施態様において、本願発明は、関係する疾患または病態、例えば、精神疾患を治療するための薬剤の製造するための構造式(I)の化合物と任意の第二治療薬を含む組成物の使用を提供する。
【0023】
本願発明のさらに他の実施態様は、(a)容器、(b1)構造式(I)の化合物を含む包装した組成物、および、(b2)関係する疾患および病態の治療において有用な第二治療薬を含む任意の包装した組成物、および、(c)関係する疾患および病態の治療において、同時または連続的に投与する一つまたはそれ以上の組成物の使用に関する注意を掲載した添付文書を含む、ヒトの医薬用途に供されるキットを提供する。
【0024】
構造式(I)の化合物および第二治療薬は、単一の単位用量として、あるいは、複数の単位用量から個々の用量で投与することができ、構造式(I)の化合物は、第二治療薬より以前に、あるいは、以後に投与される。一用量またはそれ以上の用量の構造式(I)の化合物、および/または、一用量またはそれ以上の用量の第二治療薬を投与可能にすることも意図している。
【0025】
ある実施態様において、構造式(I)の化合物および第二治療薬は、同時に投与される。関連する実施態様において、構造式(I)の化合物および第二治療薬は、単一の組成物または個別の組成物から投与される。さらに別の実施態様において、構造式(I)の化合物および第二治療薬は、連続して投与される。構造式(I)の化合物は、約0.005〜約500mg/用量、約0.05〜約250mg/用量、または、約0.5〜約100 mg/用量の量で投与することができる。
【0026】
本願発明のさらに別の実施態様は、受容体と一つまたはそれ以上の構造式(I)の化合物とを接触させることを含む、5-HT(2C)受容体を、in vivoまたはin vitroで調節するための方法である。具体的な実施態様において、本願発明の方法は、5-HT(2C)受容体を刺激または活性化する。具体的な実施態様において、構造式(I)の化合物は、5-HT(2C)受容体アゴニストまたは選択性アゴニストである。
【0027】
本願発明の上記した実施態様およびそれ以外の実施態様は、本願発明の好適な実施態様を詳細に記載した以下の開示から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願発明は、5-HT(2C)活性の新規の調節因子、および、例えば、精神疾患、肥満、認知障害、中毒、運動障害、および化合物中毒の治療法でのそれらの使用に関する。幾つかの実施態様において、本願発明の化合物は、その他の5-HT(2)受容体よりも5-HT(2C)受容体を選択的に調節する。
【0029】
本願発明は、好ましい実施態様に関連して説明される。しかしながら、本願発明は、開示された実施態様に限定されるものではない。本明細書に開示された実施態様の説明を参酌することで、当業者であれば、それらに様々な修正を施すことができる、ことが理解される。
【0030】
用語「5-HT(2C)受容体の調節が有効である疾患または病態」とは、例えば、それら疾患または病態の発症、進行、発現において、5-HT(2C)受容体、および/または、5-HT(2C)受容体の作用が重要または必要である病態、または5-HT(2C)受容体の調節によって治療できることが公知の疾患または病態に関連する。そのような病態の例として、統合失調性感情障害、統合失調症、臨床的鬱病、双極性障害、常習行為、化合物中毒(例えば、コカイン、メタンフェタミン、およびアンフェタミン)、強迫性障害、運動障害(例えば、ハンチントン病、パーキンソン病、および運動障害);認知障害(例えば、アルツハイマー病、および軽度認識障害)、代謝異常(例えば、脂質異常症、2型糖尿病、代謝症候群、および肥満)、および摂食障害などがあるが、これらに限定されない。当業者であれば、例えば、特定の化合物の活性を評価するために好都合に使用することができるアッセイによって、対象とする化合物が、特定の細胞型に対する5-HT(2C)受容体によって媒介された疾患または病態を治療できるかどうかを容易に決定することができる。
【0031】
用語「第二治療薬」とは、構造式(I)の化合物とは異なる治療薬であって、かつ、関係する疾患および病態を治療するための公知の治療薬のことを指す。例えば、関係する疾患および病態が肥満である場合には、第二治療薬として、例えば、公知の抗肥満薬を使用することができる。
【0032】
本明細書で使用する用語「治療する」、「治療している」、「治療」は、疾患および病態、および/または、それらに関連する症状を、解消、回復、除去、軽減、および/または、緩和することを指す。疾患および病態を治療するということは、疾患、病態、または、それらに関連する症状を完全に解消することまで求めているものではなく、急性または慢性の兆候、症状、および/または、機能不全の治療をも包含している。本明細書で使用する用語「治療する」、「治療している」、「治療」に、疾患および病態の再発症、または、予め抑制した疾患および病態の再発は認められないものの、その危険性または疑いがある個体において、疾患および病態の再発症、または、予め抑制した疾患および病態の再発の可能性を低減することを指す「予防的治療」を含めることができる。したがって、「治療」は、再発予防、または、フェーズ予防も含む。用語「治療する」とその同義語は、そのような治療を必要とする個体に対して、治療有効量の本願発明の化合物を投与することを意図している。治療は、症状に応じて、例えば、症状を抑えるなどして行うことができる。治療は、短期間に実効ならしめることができ、また、中期にわたって行うことができ、あるいは、例えば、維持療法の関係で長期間にわたって行うこともできる。
【0033】
本明細書で使用する用語「治療有効量」または「有効量」は、関係する病態または疾患の治療のために、治療を必要とする個体に対して投与する際に、有効成分を効率よく誘導する上で十分な有効成分の量のことを指す。
【0034】
用語「容器」は、医薬品の貯蔵、輸送、流通、および/または、取り扱いに好適な容器と閉鎖要素のことを指す。
【0035】
用語「添付文書」は、医薬品に添付されている情報のことを指しており、そこには、医師、薬剤師、および、患者が、医薬品の使用に関する詳細な情報を得た上で決断を行うために必要な安全性および薬効のデータに基づいた医薬品の投与方法が記載されている。通常は、医薬品の「ラベル」を、添付文書と見なしている。
【0036】
用語「併用投与」、「組み合わせて投与される」、「同時投与」、それに、同様の表現は、二つまたはそれ以上の薬剤が、治療をしようとしている個体に対して、併用して投与されることを意味している。「併用」という表現は、それぞれの薬剤が、同時に投与されるか、あるいは、異なる時点において順序を問わず個別に投与されることを意味している。しかしながら、同時に投与されない場合には、それら薬剤は、所望の治療効果を得ると共に、相乗的に作用を奏するに十分な短時間の内に連続して、個体に投与されることを意味している。例えば、構造式(I)の化合物は、同時に投与することができ、あるいは、第二治療薬として、異なる時点において順序を問わず連続的に投与することができる。本願発明の化合物および第二治療薬は、好適な形態で、かつ、好適な経路で、個別に投与することができる。本願発明の化合物と第二治療薬が、併用して投与されない場合には、投与を必要としている個体に対して、順序を問わず投与することができるものと理解されている。例えば、本願発明の化合物は、第二治療薬による治療法に、先行して(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または、12週間前に)、それと同時に、または、それに引き続いて(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または、12週間後に)、治療を必要とする個体に対して投与することができる。様々な実施態様において、構造式(I)の化合物と第二治療薬は、1分間、10分間、30分間、1時間未満、1時間、1〜2時間、2〜3時間、3〜4時間、4〜5時間、5〜6時間、6〜7時間、7〜8時間、8〜9時間、9〜10時間、10〜11時間、11〜12時間、24時間未満、または、48時間時間未満の時間を開けて投与される。ある実施態様において、併用療法の成分は、1分〜24時間の時間を開けて投与される。
【0037】
用語「アゴニスト」は、一般的には、受容体の5-HT2ファミリーの一種以上の受容体などの受容体と相互作用し、およびそれらを活性化し、およびそれら受容体に特徴的な生理学的または薬理学的応答を惹起する化合物のことを指す。
【0038】
用語「アンタゴニスト」は、一般的には、アゴニストと同じ部位で当該受容体に結合はするが、当該受容体の活性型によって惹起された細胞内応答は活性化しない化合物のことを指し、および当該アンタゴニストは、アゴニストによる細胞内応答を阻害することができる。
【0039】
本明細書で使用する用語「選択性5-HT(2C)受容体アゴニスト」は、受容体の5-HT2ファミリーでのその他の受容体と比較して、5-HT(2C)受容体への結合および活性化が選択的であるアゴニスト化合物を意味している。本願発明のアゴニストは、5-HT(2B)受容体よりも5-HT(2C)受容体、5-HT(2A)受容体よりも5-HT(2C)受容体、または5-HT(2B)および5-HT(2A)受容体の双方よりも5-HT(2C)受容体に対して選択的とすることができる。幾つかの実施態様において、本願発明の5-HT(2C)受容体アゴニストは、5-HT(2A)受容体に関して、アゴニスト活性を示すことができる。選択性5-HT(2C)受容体アゴニストは、5-HT(2B)または5-HT(2A)受容の一方または双方と比較して、5-HT(2C)受容体に対して、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、または200倍、またはそれ以上の活性を示すことができる。
【0040】
選択性は、例えば、異なる受容体についてのEC50有効濃度を決定することによって評価することができる。受容体アゴニスト活性を測定するための当該技術分野で周知の信頼できる正確ないずれの方法も、対象とするアゴニストの選択性を評価するために使用することができる。当業者が理解しているように、選択性は、例えば、受容体結合分析または機能分析を用いて決定することができる。具体的な実施態様において、本明細書の実施例で説明した方法、あるいは本明細書で引用した文献に詳述された方法を使用することができる。本明細書の具体的な実施態様において、本願発明の5-HT(2C)受容体アゴニストは、5-HT2ファミリーの受容体以外の5-HTファミリーの受容体に対しても選択性を示すことができる。本明細書の具体的な実施態様において、本願発明の5-HT(2C)受容体アゴニストは、5-HT(2B)受容体に対してアンタゴニスト活性を示すことができる。
【0041】
幾つかの実施態様において、本願発明の5-HT(2C)受容体アゴニストは、ヒト5-HT(2C)受容体の活性化に関して、100nM以下のEC50値を示す。好ましい実施態様において、5-HT(2C)受容体アゴニストは、ヒト5-HT(2C)受容体の活性化に関して、25nM以下のEC50値を示す。さらに好ましい実施態様において、5-HT(2C)受容体アゴニストは、ヒト5-HT(2C)受容体の活性化に関して、10nM以下のEC50値を示す。幾つかの実施態様において、本願発明の化合物は、EC50有効濃度の決定によって評価したところ、5-HT(2B)受容体または5-HT(2A)受容体と比較して、5-HT(2C)受容体に対するアゴニストとして5倍以上の選択性を示す。幾つかの実施態様において、本願発明の化合物は、EC50有効濃度の決定によって評価したところ、5-HT(2B)受容体または5-HT(2A)受容体と比較して、5-HT(2C)受容体に対するアゴニストとして10倍以上の選択性を示す。好ましい実施態様において、本願発明の化合物は、EC50有効濃度の決定によって評価したところ、5-HT(2B)受容体または5-HT(2A)受容体と比較して、5-HT(2C)受容体に対するアゴニストとして100倍以上の選択性を示す。
【0042】
本願発明に関係する記載(特に、特許請求の範囲の欄の記載)での「一つの」、「ある」、「当該」、および、同様の表現は、特に断りのない限りは、単数および複数のものの双方を包含するものと解釈される。本明細書に記載の数値範囲は、特に断りのない限りは、本明細書に記載の範囲に属する個々の数値を個別に指し示すための簡素な方法に過ぎず、また、それら個別の数値と一部の数値範囲が、本明細書に個別に記載されている場合には、それらは、本明細書に組み込まれていることとなる。本明細書に記載のありとあらゆる例示用語(例えば、「など」や「のような」)は、特に断りのない限りは、本願発明の明解な例示を意図しているものであって、本願発明の範囲の限縮を意図するものではない。本明細書で用いられていない用語は、特許請求の範囲の欄に記載がされていない本願発明を実施する上で必須の構成要素を示すものと解釈すべきである。
【0043】
選択性5-HT(2C)受容体アゴニストは、公知である。例えば、以下の化合物1は、5-HT(2A)および5-HT(2B)よりも、それぞれ120倍および14倍もの選択性(2A、2B、および2CサブタイプでのEC50は、それぞれ、585、65、および4.8nMである)を有するやや強力な選択性5-HT(2C)アゴニストである。化合物1(10〜60mg/kg)では、一般的に利用されている行動試験において、適度の抗鬱剤様効果も実証されている(15)。
【0044】
【化2】

【0045】
しかしながら、化合物1は、潜在的臨床候補として資格を得るために、5-HT(2B)受容体に対して十分な選択性を示すには至っていない。特に、選択性の度合いは、5-HT(2B)活性に影響を与える副作用を回避するには低すぎるものと考えられた。したがって、二元的な5-HT(2B)受容体拮抗作用/5-HT(2C)受容体活性化作用を含む改善されたサブタイプ選択性を有する新規の薬剤候補が探索された。
【0046】
本願発明は、構造式(I):
【0047】
【化3】

【0048】
式中、
R1は、独立して、C1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルケニル、-CF3、-OCF3、C1-6ヘテロアルキル、-ORa、-SRa、ハロ、-N02、-CN、-NC、-C(=0)Ra、-C(=C)ORa、-N(Ra)(Rb)、-C(=0)N(Ra)(Rb)、-S02N(Ra)(Rb)、-NRcC(=0)Ra、-N=C(Ra)(Rb)、-NRcC(=0)ORa、-S02Ra、-S03Ra、-P(0)(ORa)、-P(=0)(ORa)(ORb)、および-NH-P(=0)(ORa)(ORb)からなるグループから選択され、
RaおよびRbは、独立して、水素、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルからなるグループから選択され、
Rcは、水素またはC1-6アルキルであり、および
nは、0、1、2、3、または4の整数である、
構造式(I)の5-HT(2C)受容体アゴニスト、構造式(I)の化合物または医薬として許容し得るその塩または水和物、および構造式(I)の化合物または医薬として許容し得るその塩または水和物の治療上の使用に関する。
【0049】
幾つかの好ましい実施態様において、R1は、ハロ、ORa、SRa、N02、CN、NC、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、OCF3、C1-6ヘテロアルキル、およびヒドロキシC1-6アルキルからなるグループから選択される。さらに好ましい実施態様において、R1は、F、Br、Cl、OH、OCH3、OCF3、CF3、CH3、およびN02からなるグループから選択される。好ましい実施態様において、nは、0、1、または2である。
【0050】
構造式(I)の化合物は、様々な疾患および病態の治療において有用である。特に、構造式(I)の化合物は、5-HT(2C)受容体の活性が有効である疾患または病態、例えば、精神障害および肥満を治療する方法に用いられる。これらの方法は、治療を必要とする個体に、治療有効量の構造式(I)の化合物を投与することを含む。
【0051】
本願発明の方法は、構造式(I)の化合物に加えて、個体に対して、第二治療薬を投与することも含む。この第二治療薬は、疾患または病態を患った個体を治療する上で有用であることが知られている薬物やアジュバントなどの薬剤、例えば、特定の精神疾患の治療において有用であることが知られている化学療法剤などから選択される。
【0052】
本明細書で用いられている用語「アルキル」は、直鎖の炭化水素基および分岐した飽和炭化水素基を指すものであって、メチル基、エチル基、および、所定の数の炭素原子を有する直鎖および分岐したプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、および、オクチル基などがあるが、これらに限定されない。用語Cnは、アルキル基が、「n」個の炭素原子を有することを示している。
【0053】
用語「アルキレン」は、アルカンから二つの水素原子を除去して得られた二座部分を指している。「アルキレン」は、二つの異なる化学基の間に位置し、それらを繋ぐ役割を果たしている。アルキレン基の例として、-(CH2)n-がある。アルキル基、例えば、メチル基、または、アルキレン基、例えば、-CH2CH2-は、独立して、例えば、ハロ、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルキルアミノ基、およびアミノ基の一つまたはそれ以上と置換をすることができる。
【0054】
用語「アルケニル」は、炭素-炭素間の二重結合、例えば、エテニル、プロペニル、および、ブテニルを含んでいることを除けば、「アルキル」と等しく定義される。 「アルケニレン」の用語は、炭素-炭素間の二重結合を含んでいることを除けば、「アルキレン」と等しく定義される。用語「アルケニレン」の用語は、炭素-炭素間の二重結合を含んでいる基であることを除けば、「アルキレン」と等しく定義される。
【0055】
用語「ヘテロアルキル」は、アルキル基の炭素鎖に、一つ以上のヘテロ原子、通常は、1〜3個のヘテロ原子を有するアルキル基のことを指している。これらのヘテロ原子は、独立して、O、S、および、NRから選択され、式中のRは、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、および、ヘテロアリールである。用語「C1−6ヘテロアルキル」などは、ヘテロ原子に加えて、1〜6個の炭素原子を有する基であることを示している。
【0056】
用語「ペルフルオロアルキル」は、すべての水素原子が、フッ素原子で置換されているアルキル基として定義される。
【0057】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、および、ヨードとして定義される。
【0058】
用語「ヒドロキシ」は、-OHとして定義される。
【0059】
用語「アルコキシ」は、-ORとして定義され、式中のRは、アルキルである。用語「ペルフルオロアルコキシ」は、すべての水素原子が、フッ素原子で置換されているアルキル基として定義される。
【0060】
用語「アミノ」は、-NR2として定義され、式中のRは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、または、アリールであり、あるいは、3〜8員環を形成するために、双方のR基が、共に窒素に結合して一体化している。
【0061】
用語「ニトロ」は、-NO2として定義される。
【0062】
用語「シアノ」は、-CNとして定義される。
【0063】
用語「トリフルオロメチル」は、-CF3として定義される。
【0064】
用語「トリフルオロメトキシ」は、-OCF3として定義される。
【0065】
本明細書で使用する、
【0066】
【化4】

【0067】
の化合物は、
【0068】
【化5】

【0069】
の省略形である。
【0070】
加えて、本明細書で使用する、
【0071】
【化6】

【0072】
の化合物は、
【0073】
【化7】

【0074】
の省略形である。
【0075】
本明細書で使用する用語「アリール」は、単環式芳香族基、例えば、フェニル基を指している。特に断りのない限りは、アリール基は、非置換であるか、あるいは、例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、-OCF3、-NO2、-CN、-NC、-OH、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、-CO2H、-CO2アルキル、アルキニル、シクロアルキル、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シリル、アルキルチオ、スルフォニル、スルホンアミド、アルデヒド、ヘテロシクロアルキル、トリフルオロメチル、アリール、および、ヘテロアリールからなるグループから独立して選択される、一つ以上、特に、1〜5個の基で置換される。アリール基の例として、フェニル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4-メトキシクロロフェニルなどがあるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用する用語「ヘテロアリール」は、芳香族環に少なくとも一つの窒素原子、酸素原子、または、硫黄原子を含んでいる単環式環系を指すものである。特に断りのない限り、ヘテロアリール基は、非置換であるか、あるいは、例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、-OCF3、-NO2、-CN、-NC、-OH、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、-CO2H、-CO2アルキル、アルキニル、シクロアルキル、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シリル、アルキルチオ、スルフォニル、スルホンアミド、アルデヒド、ヘテロシクロアルキル、トリフルオロメチル、アリール、および、ヘテロアリールからなるグループから選択される、一つ以上、特に、1〜4個の置換基で置換することができる。ヘテロアリール基の例として、チエニル、フリル、オキサゾリル、チオフェニル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、オキサゾリル、ピロリル、および、トリアジニルなどがあるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用する用語「C3-8シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子を有する、飽和または不飽和のいずれかの単環式脂肪族環を意味している。
【0078】
本明細書で使用する用語「ヘテロシクロアルキル」は、全部で3〜10個の原子を有する、飽和または不飽和のいずれかの単環式または二環式の脂肪族環を意味しており、その内の1〜5個の原子は、独立して、窒素、酸素、および、硫黄から選択され、その他の原子は、炭素である。
【0079】
用語「ハロアルキル」は、本明細書で定義したように1個以上のハロゲン化物(すなわち、F-、C1-、I-、および/またはBr-)によって置換された、本明細書で定義したような同一または異なるアルキル基を指す。
【0080】
用語「ヒドロキシアルキル」は、1個以上のヒドロキシル基で置換されたアルキル基を指す。ヒドロキシアルキル基の例として、ヒドロキシメチル(-CH2-OH)がある。
【0081】
アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール基は、置換することができ、あるいは置換しなくともよい。これらの化学基は、本明細書に記載したようにして任意に置換することができ、および当該化学基での炭素原子およびその他の原子の数、および当該化学基の不飽和度に応じて、非水素置換基を含むことができる。
【0082】
したがって、本明細書で定義したすべての化学基は、任意に置換することができる。任意の置換とは、以下の官能基:ニトロ、アジド、シアノ、イソシアノ、ハロゲン(Cl、F、Br、またはI)、ヒドロキシル、アルキル(C1-6アルキルを含む)、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクリル、アシル、フォルミル、アセチル、ハロアルキル、ハロアリ、アルキルオキシ(C1-6アルコキシを含む)、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、フェニルオキシ(ベンゾイル)、アシルオキシ、アルキルアシルオキシ、オキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル-NH2(または-NH3+)、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、アルキルアミド、アリールアミド、-CO-NH2、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、エーテル、チオエーテル、-SH、スルフェニル、アルキルスルフェニル(C1-6アルキルスルフェニルおよびC1-C3アルキルスルフェニルを含む)、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、トリフルオロメチル、スルホン酸塩、スルフォニル、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、またはシリルの1つ以上で置換することを指し、これらの官能基におけるアルキル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、およびヘテロシクロアルキル基は、次いで、ニトロ、アジド、シアノ、イソシアノ、ハロゲン、-NH2(または-NH3+)、ヒドロキシル、-CO-NH2、-COOH(またはカルボン酸塩)、または-SHの1つ以上で、任意に置換される。
【0083】
さらに、本願発明の5-HT(2C)受容体アゴニストも本願発明に含まれており、また、これらは、本明細書に記載された方法にも用いることができる。本願発明は、構造式(I)の化合物の考え得るすべての立体異性体および幾何異性体もさらに含む。本願発明は、ラセミ化合物と光学活性異性体の双方を含む。構造式(I)の化合物を単一の鏡像異性体として得る場合には、最終産物の分割、あるいは、異性体純度の高い出発物質、または、キラル補助試薬を用いた立体特異的な合成のいずれかによって得ることができ、例えば、Z. Ma et al., Tetrahedron: Asymmetry, 8(6), pp. 883-888 (1997)を参照されたい。最終産物、中間体、または、出発物質の分割は、当該技術分野で周知の好適な方法によって行うことができる。さらに、構造式(I)の化合物の互変異性体が可能な場合において、本願発明は、その化合物のすべての互変異性体を含むことを意図している。
【0084】
本願発明の化合物は、塩として存在することができる。 本願発明の5-HT(2C)受容体アゴニストの医薬として許容し得る塩は、本願発明の方法において好適に利用できる場合が多い。本明細書で使用する用語「医薬として許容し得る塩」は、双性イオンの形態の構造式(I)の化合物の塩を指すものである。式(I)の化合物の塩は、化合物の最終単離および最終精製を行っている間に、あるいは、好適なカチオンを有する酸と化合物を反応させることによって個別に調製することができる。構造式(I)の化合物の医薬として許容し得る塩は、医薬として許容し得る酸を用いて形成をした酸付加塩とすることができる。医薬として許容し得る塩を形成するために用いることができる酸の例として、硝酸、ホウ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、および、リン酸などの無機酸、および、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、および、クエン酸などの有機酸がある。本願発明の化合物の塩の例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、リン酸塩、リン酸水素、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、イセチオン酸塩、サリチル酸塩、メタンスルホン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、および、p-トルエンスルホン酸塩などがあるが、これらに限定されない。加えて、本願発明の化合物において利用可能なアミノ基は、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、および、ヨウ化ブチル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、および、硫酸ジアミル、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、臭化ステアリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチル、および、ヨウ化ステアリル、および、臭化ベンジル、および、臭化フェネンチルで四級化することができる。上記事項に照らして、本明細書における本願発明の化合物に関する言及は、構造式(I)の化合物、ならびに、それらの医薬として許容し得る塩、水和物、または、プロドラッグをも含む、ことが意図されている。
【0085】
構造式(I)の化合物は、異なる立体異性体として存在できるように、1個以上の不斉炭素原子を含むことができる。これらの化合物は、例えば、ラセミ化合物、または光学活性体となることができる。したがって、本願発明は、構造式(I)の化合物のラセミ体、ならびにそれらの個別の光学異性体および非ラセミ混合物を含む。光学活性体は、ラセミ化合物の分割、または不斉合成によって取得することができる。本願発明の幾つかの好ましい実施態様において、本願発明の光学異性体は、+(ポジティブ)である比旋光度を示す。好ましくは、(+)光学異性体は、対応する(-)光学異性体を実質的に含んでいない。よって、対応する光学異性体を実質的に含んでいない光学異性体とは、分離技術を介して単離または分離された化合物、または対応する光学異性体を含まずに調製された化合物のことを指す。「実質的に含まない」とは、当該化合物のほぼすべてが、一つの光学異性体であることを意味する。好ましい実施態様において、当該化合物の少なくとも約90重量%は、好ましい光学異性体である。本願発明の他の実施態様において、当該化合物の少なくとも約99重量%は、好ましい光学異性体である。好ましい光学異性体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびキラル塩の形成および結晶化、または、本明細書に開示された方法による調製など、当業者に周知の方法によって、ラセミ混合物から単離することができる。例えば、Jacques, et al.,「光学異性体、ラセミ化合物および分割(Enantiomers, Racemates and Resolutions)」(Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen, S.H., et al., Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, E.L.「炭素化合物の立体化学(Stereochemistry of Carbon Compounds)」(McGraw-Hill, N.Y., 1962); Wilen, S.H.「分割剤および光学分割の一覧(Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions)」p.268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, Ind. 1972)を参照されたい。
【0086】
(合成方法)
本願発明の化合物は、本明細書に記載の方法を利用して調製され、あるいは、例えば、当該技術分野での標準技術に鑑みて、出発物質の選択、または試薬、溶媒、および/または精製方法の変更を行うなどして、本明細書に記載の方法に通常の修正または変更を加えた方法で調製される。
【0087】
本願発明の化合物は、化合物12および18に関する以下の合成スキームを用いて調製された。出発物質を適切に選択することによって、さらなる化合物を調製することができる。特に、2-シクロプロピルメチルオキシ-5-フルオロ置換誘導体12は、スキーム1に示した工程にしたがって合成された。出発化合物9は、先に報告した標準的な一連の反応を利用することによって調製された(15)。フェノール誘導体9のアミノ基は、Boc-無水物を用いて保護された。N-Bocは、誘導体10を保護し、次いで、臭化シクロプロピルメチルでアルキル化され、そして、ラセミ化合物12を提供するために脱保護をした。
【0088】
(スキーム1a)
【0089】
【化8】

【0090】
a 試薬および条件:(a) Boc20、トリエチルアミン、CH2C12、0度〜室温、5時間、(b)(ブロモメチル)シクロプロパン、K2C03、DMF、60℃、20時間、(c) 2M HC1、室温、48時間。
【0091】
2-シクロプロピルメチルオキシ-5-ヒドロキシ置換誘導体18を合成するために、2-シクロプロピルメチルオキシ中間体16は、一連の選択的保護工程およびアルキル化工程によって調製された(17)。次に、最終産物18を提供するために、ピバロイルおよびBoc保護基を連続して除去した(スキーム2)。
【0092】
(スキーム2)
【0093】
【化9】

【0094】
a 試薬および条件:(a)(i)BBr3、CH2C12、-78℃〜室温、6時間; (ii) Boc20、リエチルアミン、CH2C12、0℃〜室温、l時間。(b) Piv-Cl、CH2C12、トリエチルアミン、0℃〜室温、6時間。(c)(ブロモメチル)シクロプロパン、K2C03、DMF、60℃、20時間。(d) NaOtBu、MeOH、室温、1時間。(e) 2M HC1、室温、48時間。
【0095】
光学的に純粋な化合物12の光学異性体を調製するために(スキーム3)、N-Boc保護フルオロ誘導体11のキラル分離を、キラルパックADカラムを用いて行った。アイソクラチック条件下(7%イソプロパノールのヘキサン)で、個々の光学異性体は、都合良く、純粋(>99%)な状態にまで分離された。分割度の高さが故に、処理量を増やすために、スタックドインジェクションを用いることができた。酸性条件下において、分離が容易で、しかも、得られた光学異性体の開裂が素早いため、中間体11に関するキラル分離が行われた。
【0096】
次いで、得られた光学異性体(+)-11および(-)-11は、ラセミ化合物について先述したのと同じ方法を用いて、それぞれ、(-)-および(+)-塩酸トランス-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-フルオロフェニル)シクロプロピル]-メチルアミン((-)-12および(+)-12)へと変換された。化合物18の純粋な光学異性体を調製するために、キラル分離のために、中間体17が使用された。
【0097】
(スキーム3a)
【0098】
【化10】

【0099】
a 試薬および条件:(a) 2M HCl、室温、48時間。
【0100】
化合物12および18の詳細な調製手順は、以下の通りである。
【0101】
概説。1Hおよび13C NMRスペクトルは、Bruker Avance分光計を用いて、それぞれ、400MHzおよび100MHzで取得された。1H化学シフト(δ)は、内部Me4Siからのダウンフィールドppmで報告がされた。質量スペクトルは、ポジティブモードエレクトロスプレイイオン化(ESI)で測定された。旋光度は、AUTOPOL IV(Rudolph Research Analytical)機器で測定された。TLCは、シリカゲル60F 254ガラスプレートで実施された。カラムクロマトグラフィーは、RediSep(登録商標)Rfを用いたCombiFlash(登録商標)Rfシステム、あるいはMerckシリカゲル(230〜400メッシュ)を用いて実施された。分析HPLCは、Phenomenex Luna C 18カラム(4.6×150mm; 5μm)を装備した可変波長検出器G1314Aシステムを用いたAgilent 1100を使って実施された。方法: H20/MeCNまたはMeOH(0.1% TFA)、18分間で90/10→ 0/100、+2分間のアイソクラチック条件、1.6ml/分の流量、λ=280nm。標的化合物の純度は、分析HPLCによって、>98%であると決定された。キラルHPLCは、UV-Visを用いたShimadzu LC8A HPLCシステムを使用して実施された。SPD-10avp検出システムは、キラルHPLC分析および分離のために使用するChiralpak AD(10.0×250mm、DAICEL)およびChiralpak AD(30.0×250mm、DAICEL)カラムを、それぞれ装備していた。出発物質は、Aldrich社、Alfa Aesar社、またはAcros社から入手された。溶媒は、Fisher Scientific社またはAldrich社から入手され、および、特に断りのない限り、さらなる精製を行わずに使用された。
【0102】
(塩酸トランス-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-フルオロフェニル)シクロプロピル]メチルアミンの調製(12))
(工程A:トランス-[2-(5-フルオロフェニル-2-ヒドロキシ)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエスエル(10))
トランス2-(5-フルオロフェニル-2-ヒドロキシ)シクロプロピルメチルアミン(9)(10.0 g、55.2mmol)およびBoc20(13.2g、60.7mmol)を含むCH2C12(100ml)の溶液に対して、0℃で、トリエチルアミン(30.8ml、221mmol)を加えられた。この混合物を、0℃で、30分間かけて攪拌し、次いで、室温で、30分間かけて攪拌をした。得られた混合物に、飽和NaHC03水溶液を加えた。有機層を、水でさらに洗浄し(×l)、Na2S04の上で乾燥し、および真空濃縮した。残渣を、0% EtOAc-ヘキサン〜30% EtOAc-ヘキサンの勾配溶出を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物を、白色固体として得た(10.5g、67.6%収率)。1H NMR(400 MHz, CDC13) 66.79-6.74 (m, 2H), 6.62-6.59 (m, 1H), 5.04 (bs, 1H), 3.52-3.44 (m, 2H), 2.90-2.85 (m, 1H), 1.93-1.89 (m, 1H), 1.47 (s, 9H), 0.95-0.90 (m, 1H), 0.77-0.73 (m, lH)。
【0103】
(工程B:トランス-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-フルオロフェニル)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル(11))
化合物10(5g、17.8mmol)を含むDMFの溶液に対して、K2C03(9.8g、71.1mmol)および(ブロモメチル)シクロプロパン(6.90ml、71.1mmol)を加えた。混合物を、70℃で、一晩かけて攪拌した後に、有機層を、塩水で洗浄し、Na2S04の上で乾燥し、濾過し、および濃縮した。粗生成物を、0% EtOAc-ヘキサン〜20% EtOAc-ヘキサンの勾配溶出を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物を、無色油状物として得た(5.8g、97.3%収率)。1H NMR(400 MHz, CDC13)δ 6.83-6.78 (m, 1H), 6.73-6.70 (m, 1H), 6.67-6.64 (m, 1H), 5.31 (bs, 1H), 3.98-3.94 (m, 1H), 3.72-3.64 (m, 2H), 2.71-2.67 (m, 1H), 1.90-1.85 (m, 1H), 1.45-1.40 (m, 10H), 1.03-0.99 (m, 2H), 0.84-0.80 (m, 1H), 0.69-0.65 (m, 2H), 0.40-0.35 (m, 2H)。
【0104】
(工程C)
保護されたアミン11(5.8g、17.3mmol)は、2N HC1溶液を含むジエチルエーテル(43ml、86mmol)に溶解され、および反応混合物は、常温で、48時間かけて攪拌された。数時間後に、白色の沈殿物が形成され、おとびTLCによって反応の完了が認められるまで、混合物の攪拌を行った。粗沈殿物を濾過し、およびエタノール/Et2Oからの再結晶化によって精製をしたところ、標記化合物を、白色粉体として得た(4.3g、91.5%収率)。HPLC純度:12.0分、99.8%。1H NMR(400 MHz, MeOD)δ 6.86-6.70 (m, 3H), 3.91-3.78 (m, 2H), 3.04 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 2.18-2.12 (m, 1H), 1.32-1.28 (m, 1H), 1.16-1.02 (m, 2H), 0.64-0.62 (m, 2H), 0.39-0.37 (m, 2H)。13C NMR(100 MHz, MeOD)δ 158.6 (d, 1 J CF = 236.9 Hz), 155.4, 132.7 (d, 3 J CF = 7.6 Hz), 114.5, 114.2, 114.2, 114.0, 114.0, 75.1, 45.2, 19.8, 18.4, 13.4, 11.4, 4.0, 3.6。MS (ESI) m/z 236.2 [MH+]。
【0105】
(塩酸トランス-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-ヒドロキシフェニル)シクロプロピル]メチルアミンの調製(18))
(工程A:トランス-[2-(2,5-ジヒドロキシフェニル)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエスエル(14))
トランス-[2-(2,5-ジメトキシフェニル)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル(13)(4.20g、13.7mmol)を含むCH2C12(30ml)の溶液に対して、-78℃で、BBr3(1.0 M溶液を含むCH2C12)(47.8ml、47.8mmol)を、滴下して加えた。この溶液を、室温にまで加温し、および反応混合物を、MeOH(110ml)でクエンチし、および真空濃縮した。粗生成物として淡黄色の油状物を得るためにMeOHを加えた時に、煙霧が認められなくなるまで、このプロセスは、反復して行われた。粗生成物は、さらなる精製を行わずに使用された。粗生成物、Boc20(3.28g、15.0mmol)、およびトリエチルアミン(7.62ml、54.7mmol)を含むCH2C12(30ml)の溶液は、室温で、30分間かけて攪拌された。得られた混合物に対して、飽和NaHC03水溶液が加えられ、および水層が、CH2C12で抽出された(×2)。有機層を、水でさらに洗浄し(×1)、Na2S04の上で乾燥し、濾過し、および真空濃縮した。残渣を、0% EtOAc-ヘキサン〜30% EtOAc-ヘキサンの勾配溶出を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物を、淡黄色の油状物として得た(2.55g、66.8%収率)。1H NMR(400 MHz, CDC13) δ 6.73 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.57 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.6 Hz, 1H), 6.42 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 5.01 (bs, 1H), 4.45 (s, 1H), 3.51-3.44 (m, 1H), 2.92-2.85 (m, 1H), 1.89-1.87 (m, 1H), 1.47 (s, 9H), 1.06-1.01 (m, 1H), 0.92-0.90 (m, 1H), 0.75-0.72 (m, 1H)。
【0106】
(工程B:トランス-[2-2-ヒドロキシ-5-トリメチルアセトキシフェニル)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル(15))
化合物14(1.01g、3.62mmol)を含む無水CH2C12(10ml)の攪拌溶液に対して、0℃で、塩化ピバロイル(0.489ml、3.98mmol)およびトリエチルアミン(0.554ml、3.98mmol)を加えた。水を添加する前に、得られた混合物は、室温で、6時間かけて攪拌された。反応混合物は、CH2C12で抽出され(×3)、および合わせた有機抽出物を、塩水で洗浄し、Na2S04の上で乾燥し、濾過し、および真空濃縮した。残渣を、0% EtOAc-ヘキサン〜30% EtOAc-ヘキサンの勾配溶出を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物を、茶褐色の油状物として得た(0.63g、47.9%収率)。1H NMR(400 MHz, CDC13) δ 7.17 (s, 1H), 6.86 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.77 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.6 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 5.05 (m, 1H), 3.52-3.45 (m, 1H), 2.92-2.85 (m, 2H), 1.47 (s, 9H), 1.33 (s, 9H), 1.08-1.03 (m, 1H), 0.92-0.90 (m, 1H), 0.74-0.72 (m, 1H)。
【0107】
(工程C:トランス-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-トリメチルアセトキシフェニル)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル(16))
化合物15(0.168g、0.462mmol)、(ブロモメチル)シクロプロパン(0.179ml、1.85mmol)、およびK2C03(0.256g、1.85mmol)を含むDMF(0.5ml)の溶液は、60℃で、24時間かけて攪拌された。当該反応混合物は、EtOAcで希釈され、および、水で洗浄された。水層は、EtOAcで抽出され(×2)、および合わせた有機層を、Na2S04の上で乾燥し、濾過し、および真空濃縮した。残渣を、0% EtOAc-ヘキサン〜30% EtOAc-ヘキサンの勾配溶出を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物を、無色の油状物として得た(0.150g、78%収率)。1H NMR(400 MHz, CDC13) δ 6.83-6.75 (m, 2H), 6.64 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.35 (bs, 1H), 4.01-3.97 (m, 1H), 3.74-3.67 (m, 2H), 2.68-2.63 (m, 1H), 1.88-1.83 (m, 1H), 1.45-1.41 (m, 10H), 1.33 (s, 9H), 1.05-1.02 (m, 2H), 0.80-0.78 (m, 1H), 0.68-0.66 (m, S6 2H), 0.39-0.36 (m, 2H)。
【0108】
(工程D:トランス-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-ヒドロキシフェニル)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル(17))
化合物16(127mg、0.304mmol)を含むMeOH(1ml)の溶液は、0℃で、NaOtBu(146mg、1.52mmol)で処理をされた。室温で、4時間の攪拌を行った後に、飽和NH4C1(2ml)を加えて反応をクエンチし、およびEtOAcで抽出が行われた。合わせた有機層を、塩水で洗浄し、Na2S04の上で乾燥し、濾過し、および真空濃縮した。残渣を、0% EtOAc-ヘキサン〜30% EtOAc-ヘキサンの勾配溶出を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物を、濃い油状物として得た(95mg、94%収率)。1H NMR(400 MHz, CDC13) δ 6.68-6.60 (m, 2H), 6.48-6.44 (m, 2H), 5.48 (bs, 1H), 3.94-3.90 (m, 1H), 3.70-3.65 (m, 2H), 2.64-2.60 (m, 1H), 1.84-1.81 (m, 1H), 1.45-1.39 (m, 10H), 0.98-0.95 (m, 2H), 0.76-0.73 (m, 1H), 6.64-6.62 (m, 2H), 0.35-0.34 (m, 2 H)。
【0109】
(工程E)
化合物12に関して記載したのと同じt-Boc脱保護手順にしたがって調製を行った(35mg、75%収率)。HPLC純度: 9.0分、98.8%. 1H NMR(400 MHz, MeOD)δ 6.73 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.56 (dd, J = 8.8 Hz, J = 3.0 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 3.85-3.73 (m, 2H), 3.05-2.97 (m, 2H), 2.13-2.07 (m, 1H), 1.31-1.22 (m, 2H), 1,13-1.11 (m, 1H), 1.02-0.99 (m, 1H), 0.65-0.60 (m, 2H), 0.34-0.36 (m, 2H)。13C NMR(100MHz, MeOD)δ 152.6, 152.5, 131.9, 114.7, 114.5, 114.3, 75.5, 45.4, 19.9, 18.4, 15.5, 13.2, 11.5, 4.0, 3.6。MS (ESI) m/z 234.2 [MH+]。
【0110】
(塩酸(+)-トランス-(S,S)-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-フルオロフェニル)シクロプロピル]メチルアミン((+)-12)の調製)
(工程A:(-)-トランス-(S,S)-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-フルオロフェニル)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル((-)-11))
化合物11(5g、18mmol)を、Chiralpak ADカラムを用いるキラルHPLC(ヘキサン/i PrOH、96/4 アイソクラチック、スタックインジェクションズ、12ml/分の流量、λ=280nm)で分離したところ、無色固体として、ピーク1を有する(+)-異性体(2.4g、48%収率)、およびピーク2を有する(-)-異性体(2.2g、44%収率)が得られた。(+)-ll:キラルHPLC純度: 16.8分、99.1%. [α] D +47.2°(c 1.0, CHC13), (-)-11:キラルHPLC純度: 13.2分、99.8%. [α] D -45.9° (c 1.0, CHCl3)。
【0111】
(工程B)
上記した化合物12の合成手順を参照し、工程Cでの化合物11に代えて、化合物(-)-11(2.18g、6.50mmol)を用いる(1.5g、85%収率)。 1H NMR(400MHz, MeOD) δ 6.86-6.70 (m, 3H), 3.91-3.78 (m, 2H), 3.04 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 2.18-2.12 (m, 1H), 1.32-1.28 (m, 1H), 1.16-1.02 (m, 2H), 0.64-0.62 (m, 2H), 0.39-0.37 (m, 2H)。 13C NMR(100MHz, MeOD) δ 158.6 (d, 1 J CF = 236.9 Hz), 155.4, 132.7 (d, 3 J CF = 7.6 Hz), 114.5, 114.2, 114.2, 114.0, 114.0, 75.1, 45.2, 19.8, 18,4, 13.4, 11.4, 4.0, 3.6. MS (ESI) m/z 236.2 [MH+]。 [α] D +5.4°(c 1.0, MeOD)。
【0112】
(塩酸(+)-トランス-(S,S)-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-ヒドロキシフェニル)シクロプロピル]メチルアミン((+)-18)の調製)
(工程A:(-)-トランス-(S,S)-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-ヒドロキシフェニル)シクロプロピルメチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル((-)-17))
化合物17(60mg、0.144mmol)を、Chiralpak ADカラムを用いるキラルHPLC(ヘキサン/i PrOH、87/13 アイソクラチック、スタックインジェクションズ、12ml/分の流量、λ = 280nm)で分離したところ、無色固体として、ピーク1を有する(-)-異性体(27.6mg、46%収率)、およびピーク2を有する(+)-異性体(28.2mg、47%収率)が得られた。(-)-17: キラルHPLC純度: 21.9分、99.7%。[α] D -23.8°(c 1.0, CHC13)、(+)-17:キラルHPLC純度: 23.9分、99.3%。[α] D +21.5°(c 1.0, CHC13)。
【0113】
(工程B)
上記した化合物12の合成手順を参照し、工程Cでの化合物11に代えて、化合物(-)-17(27.6mg、0.083mmol)を用いる(0.018g、93%収率)。HPLC純度: 8.0分、97.9%。1H NMR(400MHz, MeOD) δ 6.73 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.56 (dd, J = 8.8 Hz, J - 3.0 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 3.85-3.73 (m, 2H), 3.05-2.97 (m, 2H), 2.13-2.07 (m, 1H), 1.31-1.22 (m, 2H), 1.13-1.11 (m, 1H), 1.02-0.99 (m, 1H), 0.65-0.60 (m, 2H), 0.34-0.36 (m, 2H)。13C NMR (100 MHz, MeOD) δ 152.6, 152.5, 131.9, 114.7, 114.5, 114.3, 75.5, 45.4, 19.9, 18.4, 15.5, 13.2, 11.5, 4.0, 3.6。MS (ESI) m/z 234.2 [MH+]。[α] D +18.5°(c 1.0, MeOD)。
【0114】
ある実施態様において、本願発明は、治療を必要とする個体に対して、治療有効量の構造式(I)の化合物を投与することを含む、5-HT(2C)受容体の受容体活性化作用が有効である疾患または病態を有する個体を治療する方法に関する。
【0115】
本明細書に記載の方法は、構造式(I)の化合物と、5HT(2C)受容体活性の調節が有効である疾患および病態の治療において有用な任意の第二治療薬の使用に関する。本願発明の方法は、構造式(I)の化合物を、純品の化合物または医薬組成物として投与することができる。医薬組成物または純品の構造式(I)の化合物の投与は、関係する疾患または病態の発症の間またはその後に行うことができる。通常は、医薬組成物は、 滅菌済のものであり、また、投与した際に副作用を招かない毒性、発癌性、変異原性化合物を含んでいない。
【0116】
多くの実施態様において、構造式(I)の化合物は、5-HT(2C)受容体の調節が有効である疾患または病態の治療において有用な任意の第二治療薬と共に投与される。第二治療薬は、構造式(I)の化合物とは異なる。構造式(I)の化合物と第二治療薬は、同時に、または、連続的に投与することができる。加えて、構造式(I)の化合物と第二治療薬は、単一の組成物または別個の二つの組成物から投与することができる。構造式(I)の化合物と第二治療薬は、所望の効果を獲得するために、同時に、または、連続的に投与することができる。
【0117】
第二治療薬は、所望の治療効果を獲得しうる用量で提供される。それぞれの第二治療薬についての有効用量の範囲は、当該技術分野で公知であり、また、第二治療薬は、定められた範囲内で、治療を必要とする個体に対して投与される。
【0118】
したがって、本願発明は、5-HT(2C)受容体の調節が有効である疾患または病態を治療するための組成物と方法に関する。また、本願発明は、構造式(I)の化合物と、5-HT(2C)受容体の調節が有効である疾患および病態の治療において有用な任意の第二治療薬とを含む医薬組成物に関する。さらに、構造式(I)の化合物と、それと個別または一緒に梱包がされた5-HT(2C)受容体の調節が有効である疾患および病態の治療において有用な任意の第二治療薬、それに、これら活性薬剤の使用についての指示事項を記載した添付文書を含むキットも提供される。
【0119】
構造式(I)の化合物および第二治療薬は、単一の単位用量で一緒に投与することも、あるいは、複数の単位用量を分けて投与すること、つまり、構造式(I)の化合物を第二治療薬よりも先に投与したり、あるいは、その逆の順序で投与することもできる。一つ以上の用量の構造式(I)の化合物、および/または、一つ以上の用量の第二治療薬を投与することができる。したがって、構造式(I)の化合物は、一つ以上の第二治療薬、例えば、精神疾患を治療するための公知の薬剤と共に使用することができるが、それに限定されるものではない。
【0120】
本願発明において、用語「疾患」または「病態」または「障害」は、定めによって病理学的状態または作用とみなされている攪乱現象、および/または、異常現象を指すものであって、また、それら自体が、特定の兆候、症状、および/または、異常となって表れる場合もある。以下に実証したように、構造式(I)の化合物は、5-HT(2C)受容体の強力な調節剤であり、5-HT(2C)受容体の調節が有効である疾患および病態の治療において使用することができる。
【0121】
したがって、構造式(I)の化合物は、一般的に、受容体の5-HT(2)ファミリーの調節剤(アゴニスト、部分的アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アンタゴニスト、ならびに選択性アゴニスト)として機能する。より具体的には、本願発明の化合物は、5-HT(2)受容体のアゴニストとして機能する。なおもさらに具体的には、本願発明の化合物は、5-HT(2C)受容体のアゴニストまたは選択性アゴニストとして機能する。したがって、構造式(I)の化合物は、5-HT(2C)受容体が関係する疾患、病態、および障害の治療、または望ましくない症状の緩和において使用することができる。
【0122】
5-HT(2C)受容体が関係する疾患、病態、障害、症状として、肥満、摂食障害、糖尿病、循環器疾患、睡眠障害(例えば、睡眠時無呼吸)、中枢神経系の障害、中枢神経系の損傷(例えば、外傷、脳卒中、または脊髄損傷)、胃腸障害、鬱病、非定型鬱病、双極性障害、不安神経症、強迫神経症、対人恐怖症または対人パニック症、性的機能不全、精神病、統合失調症、片頭痛、頭部痛またはその他の疼痛が関係するその他の病態、頭蓋内圧亢進、癲癇、人格障害、アルツハイマー病、加齢に伴う行動障害、認知症に関連した行動障害、器質性精神障害、小児精神障害、攻撃性、加齢に伴う記憶障害、慢性疲労症候群、薬物およびアルコール中毒、多食症、拒食症、および月経前緊張症などがある。
【0123】
構造式(I)の化合物で治療することができる5-HT(2C)受容体が関係する障害、病態、疾患、および症状として、肥満、摂食障害(例えば、過食症、多食症、または拒食症)、胃腸障害、胃腸運動の機能不全、糖尿病、睡眠障害、睡眠時無呼吸、高血圧、高血圧、脂質異常症、循環器疾患、中枢神経系障害、外傷に関係した中枢神経系の損傷、脳卒中、または脊髄損傷または合併症、精神疾患、強迫神経症、不安神経症、パニック障害、統合失調症、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、L-DOPA-誘発精神病、精神病、認知症、記憶障害、アルツハイマー病に関係した知的障害、双極性障害、適応障害、鬱病、運動障害、筋失調症、慢性疼痛、パーキンソン病、アルツハイマー病、男性または女性での性的機能不全、勃起障害、癲癇、頭痛、および片頭痛などがある。5-HT(2C)受容体アゴニストは、肥満およびその併存疾患、例えば、2型糖尿病、循環器疾患、高血圧、脂質異常症、脳卒中、変形性関節症、睡眠時無呼吸、胆嚢疾患、痛風、ある種の癌、ある種の不妊症、および若年死亡などの治療において特に有用である。
【0124】
5-HT(2C)受容体アゴニストは、個体の食料摂取量を減少させる方法、個体に満腹感を誘発する方法、個体の体重増加を制御する方法、および、一般的には、個体に対して有効に体重減少をもたらす方法においても有用である。
【0125】
5-HT(2C)受容体が関係し、および本願発明の化合物で治療することができるその他の疾患および病態は、本明細書の一部を構成するものとしてその各々の内容を援用する米国特許出願公開公報第2008/0119477号およびWO 2006/065600号に開示されている。
【0126】
本願発明は、治療または予防の必要のある個体、治療を必要とする哺乳動物に対して治療有効量の本願発明の化合物を投与することを含む、哺乳動物、特に、ヒトでの障害、疾患、病態、および症状を治療する方法を提供する。治療の結果、障害、病態、または一つ以上のその症状の部分的または完全な緩和、阻害、予防、改善、および/または、軽減として現れる。投与は、所定のタイプの疾患または障害に対して有効であることが当該技術分野で周知であり、適切な剤形での投与を含むことが意図されており、および化合物、医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、またはエステルを、それら単独で、あるいは医薬として許容し得るその担体と共に投与することがさらに意図されている如何なる形態の投与の他に、あるいは体内に等量の活性化合物または活性物質を形成する本願発明の化合物のプロドラッグ誘導体または類似体の投与をも含んでいる。治療または予防の必要な個体として、所定の障害または病態であると診断がされた者、および、例えば、それら障害または病態での特定の症状の発現の結果、それらが疑われる者などがある。
【0127】
ある実施態様において、本願発明は、先に開示した疾患および病態を治療する方法を提供するものであって、治療を必要とする個体に対して、治療有効量の構造式(I)の化合物を投与することを含む。
【0128】
ある実施態様において、本願発明は、先に開示した疾患および病態を治療する方法を提供するものであって、治療を必要とする個体に対して、当該病態を治療する上で十分な量の構造式(I)の化合物または医薬として許容し得るその塩を投与することを含む。構造式(I)の化合物は、単一の治療剤として使用することができ、あるいは、当該病態のための第二の治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0129】
さらに別の実施態様において、本願発明は、先に開示した疾患および病態を治療する方法を提供するものであって、(a) 治療を必要とする個体に対して、ある量の構造式(I)の化合物を投与し、および、(b)当該個体に対して、当該疾患または病態の治療において有用なある量の第二治療薬を投与することを含む。投与量は、当該疾患または病態を治療する上で有効な各々の量である。その他の実施態様において、投与量は、当該疾患または病態を治療する上で有効な併用時の量である。
【0130】
その他の実施態様において、本願発明は、先に開示した疾患および病態を治療する方法を提供するものであって、前記方法は、治療を必要とする個体に対して、当該疾患または病態を治療する上で有効な量の構造式(I)の化合物を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0131】
ある実施態様において、構造式(I)の化合物または医薬として許容し得るその塩は、第二治療薬の投与前に投与される。
【0132】
その他の実施態様において、構造式(I)の化合物または医薬として許容し得るその塩は、第二治療薬と共に投与される。
【0133】
構造式(I)の化合物と併用可能な適切な医薬品として、抗肥満薬、例えば、アポリポタンパク質-B分泌/ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(apo-B/MTP)阻害剤、MCR-4アゴニスト、コレシストキニン-A(CCKA)アゴニスト、セロトニンならびにノルエピネフリン再摂取阻害剤(例えば、シブトラミン)、交感神経様作用薬、アドレナリン受容体アゴニスト、ドーパミンアゴニスト(例えば、ブロモクリプチン)、メラニン細胞刺激ホルモン受容体類似体、カンナビノイド1受容体アンタゴニスト(例えば、SR141716: N-(ピペリジン-l-イル)-5-(4-クロロフェニル)-1-(2,4-ジクロロフェニル)-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド]、メラミン凝集ホルモンアンタゴニスト、レプトン(OBタンパク質)、レプチン類似体、レプチン受容体アゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、リパーゼ阻害剤(テトラヒドロリプスタチン、すなわち、オーリスタットなど)、食欲抑制剤(ボンベシンアゴニストなど)、神経ペプチド-Yアンタゴニスト、甲状腺ホルモン剤、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、グルココルチコイド受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、オレキシン受容体アンタゴニスト、ウロコルチン結合タンパク質アンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、毛様体神経栄養因子(Axokine(商標)など)、ヒトアグ−チ関連タンパク質(AGRP)、グレリン受容体アンタゴニスト、ヒスタミン3受容体 アンタゴニストまたはリバースアゴニスト、ニューロメジンU受容体アゴニスト、ノルアドレナリン食欲抑制剤(例えば、フェンテルミン、マジンドールなど)、および食欲抑制薬(例えば、ブプロピオン)などがある。幾つかの実施態様において、当該抗肥満薬は、オルリスタット、シブトラミン、ブロモクリプチン、エフェドリン、レプチン、フェンテルミン、およびプソイドエフェドリンからなるグループから選択される。
【0134】
上記した薬剤をはじめとしたその他の抗肥満薬は、当業者に周知であり、あるいは、本明細書の開示に照らして自明の事項である。
【0135】
本願発明の化合物と、その他の抗肥満薬、食欲抑制剤、食欲抑制薬、および関連薬剤との併用療法の範囲が、上記したものに限定されるものではなく、原則として、過体重および肥満の個体の治療に有用な医薬品または医薬組成物とのいかなる組み合わせをも含むことが理解されるであろう。
【0136】
抗肥満薬の他に、構造(I)の化合物と併用可能なその他の適切な医薬品として、合併症の治療において有用な薬剤がある。例えば、過体重または肥満の個体は、合併症に起因する罹患率および死亡率が高まる危険性があり、該合併症として、鬱血性心不全、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、脂質異常症、高インスリン血症、高血圧、インスリン抵抗性、高血糖、網膜症、腎症、および神経病などがあるが、これらに限定されない。本明細書で引用した1種以上の疾患の治療は、以下に列挙した薬物のクラスに属する当該技術分野で周知の1種以上の医薬品の使用を含み、該薬物として:スルフォニル尿素、メグリチニド、ビグアニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、ペルオキシソーム増殖活性化受容体-γ(すなわち、PPAR-γ)アゴニスト、インスリン、インスリン類似体、HMG-CoA還元酵素阻害剤、コレステロール低下薬(例えば、フェノフィブラート系薬、ベザフィブラート系薬、ゲムフィブロジル、クロフィブラート系薬などのフィブラート系薬;コレスチラミン、コレスチポールなどの胆汁酸抑制薬;および、ナイアシン)、抗血小板薬(例えば、アスピリン、およびクロピドグレル、チクロピジンなどのアデノシン二リン酸受容体アンタゴニスト)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、およびアディポネクチンなどがあるが、これらに限定されない。本願発明のある態様では、本願発明の化合物は、本明細書で引用した薬物の1種以上のクラスに属する医薬品または薬剤と併用することができる。
【0137】
本願発明の幾つかの実施態様は、本明細書に記載した疾患、障害、または病態の治療方法を含み、該方法は、そのような治療を必要とする個体に、治療有効量または治療有効用量の構造式(I)の化合物を、スルフォニル尿素、メグリチニド、ビグアニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、ペルオキシソーム増殖活性化受容体-γ(すなわち、PPAR-γ)アゴニスト、インスリン、インスリン 類似体、HMG-CoA還元酵素阻害剤、コレステロール低下薬(例えば、フェノフィブラート系薬、ベザフィブラート系薬、ゲムフィブロジル、クロフィブラート系薬などのフィブラート系薬;コレスチラミン、コレスチポールなどの胆汁酸抑制薬;および、ナイアシン)、抗血小板薬(例えば、アスピリン、およびクロピドグレル、チクロピジンなどのアデノシン二リン酸受容体アンタゴニスト)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、およびアディポネクチンからなるグループから選択される少なくとも一つの医薬品と共に投与することを含む。
【0138】
構造式(I)の化合物と併用可能な適切な医薬品として、α-グルコシダーゼ阻害剤がある。α-グルコシダーゼ阻害剤は、膵臓および/または小腸でのα-アミラーゼ、マルターゼ、α-デキストリナーゼ、スクラーゼなどの消化酵素を競合的に阻害する薬物のクラスに属する。α-グルコシダーゼ阻害剤による可逆阻害は、デンプンおよび糖質の消化を遅延させることによって、血糖値を、抑制、減少、あるいは低下させる。α-グルコシダーゼ阻害剤の代表例として、アカルボース、N(1,3-ジヒドロキシ-2-プロピル)バリオラミン(一般名;ボグリボース)、ミグリトール、および当該技術分野で周知のα-グルコシダーゼ阻害剤などがある。
【0139】
本願発明の化合物と併用可能な適切な医薬品として、スルフォニル尿素がある。スルフォニル尿素(SU)は、細胞膜のSU受容体を介してインスリン分泌のシグナルを伝達することによって、膵臓13細胞からインスリンの分泌を促す薬物である。スルフォニル尿素の例として、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、およびその他の当該技術分野で周知のスルフォニル尿素などがある。
【0140】
構造式(I)の化合物と併用可能な適切な医薬品として、メグリチニドがある。メグリチニドは、食後高血糖を標的とし、およびスルフォニル尿素が示すHbAlcの低下と同程度の効果を示す。メグリチニドの例として、レパグリニド、ナテグリニド、およびその他の当該技術分野で周知のメグリチニドなどがある。
【0141】
構造式(I)の化合物と併用可能な適切な医薬品として、ビグアニドがある。ビグアニドは、嫌気的解糖を刺激し、末梢組織でのインスリンに対する感受性を増大し、腸からのグルコース吸収を阻害し、肝臓でのグルコース新生を抑制し、および脂肪酸の酸化を阻害する薬物のクラスを代表格である。ビグアニドの例として、フェンホルミン、メトホルミン、ブホルミン、およびその他の当該技術分野で周知のビグアニドなどがある。
【0142】
構造式(I)の化合物と併用可能な適切な医薬品として、α-グルコシダーゼ阻害剤がある。α-グルコシダーゼ阻害剤は、膵臓および/または小腸でのα-アミラーゼ、マルターゼ、α-デキストリナーゼ、スクラーゼなどの消化酵素を競合的に阻害する薬物のクラスに属する。α-グルコシダーゼ阻害剤による可逆阻害は、デンプンおよび糖質の消化を遅延させることによって、血糖値を、抑制、減少、あるいは低下させる。α-グルコシダーゼ阻害剤の例として、アカルボース、N-(1,3-ジヒドロキシ-2-プロピル)バリオラミン(一般名;ボグリボース)、ミグリトール、および当該技術分野で周知のα-グルコシダーゼ阻害剤などがある。
【0143】
構造式(I)の化合物と併用可能な適切な医薬品として、ペルオキシソーム増殖活性化受容体-γ(すなわち、PPAR-γ)アゴニストがある。ペルオキシソーム増殖活性化受容体-γアゴニストは、核内受容体PPAR-γを活性化し、それ故に、グルコースの生産、輸送および利用の制御に関係するインスリン応答遺伝子の転写を調節する化合物のクラスを代表するものである。このクラスの薬物は、脂肪酸代謝の調節も促す。PPAR-γアゴニストの例として、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、テサグリタザル、ネトグリタゾン、GW-409544、GW-501516、および当該技術分野で周知のPPAR-γアゴニストなどがある。
【0144】
構造式(I)の化合物と併用可能な適切な医薬品として、HMG-CoA還元酵素阻害剤がある。このHMG-CoA還元酵素阻害剤は、ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG-CoA)還元酵素を阻害することによって、血中コレステロール濃度を下げる薬物のクラスに属するスタチン化合物とも称されている薬物である。HMG-CoA還元酵素は、コレステロールの生合成におけつ律速酵素である。スタチンは、LDL受容体の活性をアップレギュレートすることによって血清LDL濃度を下げ、および血中からのLDLの除去に関与している。スタチン化合物の幾つかの代表的な事例として、ロスバスタチン、プラバスタチンおよびそのナトリウム塩、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、BMSの「スーパースタチン」、および当該技術分野で周知のHMG-CoA還元酵素阻害剤などがある。
【0145】
本願発明の化合物と併用可能な適切な医薬品として、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤がある。アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、アンジオテンシン変換酵素を阻害することによって、血糖値をある程度まで下げ、ならびに血圧を下げる薬物のクラスに属する。アンジオテンシン変換酵素阻害剤の例として、カプトプリル、エナラプリル、アラセプリル、デラプリル; ラミプリル、リシノプリル、イミダプリル、ベナゼプリル、セロナプリル、シラザプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、キナプリル、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、および当該技術分野で周知のアンジオテンシン変換酵素阻害剤などがある。
【0146】
本願発明の化合物と併用可能な適切な医薬品として、アンジオテンシンII受容体アンタゴニストがある。アンジオテンシンII受容体アンタゴニストは、アンジオテンシンII受容体サブタイプ1(すなわち、AT1)を標的としており、および高血圧に関しては薬効が実証されている。アンジオテンシンII受容体アンタゴニストの例として、ロサルタン(およびナトリウム塩形態)、および当該技術分野で周知のアンジオテンシンII受容体アンタゴニストなどがある。
【0147】
本明細書で引用した1種以上の疾患のその他の治療は、以下の薬物のクラスに属する当該技術分野で周知の医薬品の使用を含み、該薬物として、アミリンアゴニスト(例えば、 プラムリンチド)、インスリン分泌促進物質(例えば、GLP-1アゴニスト;エキセンジン-4; インスリノトロピン(NN2211); ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤(例えば、 NVP-DPP-728)、アシルCoAコレステロールアセチルl転移酵素阻害剤(例えば、エゼチミブ、エフルシミブ、およびそれら様化合物)、コレステロール吸収阻害剤(例えば、エゼチミブ、パマクエシド、およびそれら様化合物)、コレステロールエステル輸送タンパク質阻害剤(例えば、CP-529414、JTT-705、CETi-1、およびそれら様化合物)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質阻害剤(例えば、インプリタピド、およびそれら様化合物)、コレステロール調節剤(例えば、NO-1886、およびそれら様化合物)、胆汁酸調節剤(例えば、GT103-279およびそれら様化合物)、およびスクアレン合成酵素阻害剤などがあるが、これらに限定されない。
【0148】
スクアレン合成阻害剤は、スクアレンの合成を阻害することによって、血中コレステロール濃度を下げる薬物のクラスに属する。スクアレン合成阻害剤の例として、(S)-α-[ビス[2,2-ジメチル-1-オキソプロポキシ)メトキシ]ホスフィニル]-3-フェノキシベンゼンブタンスルホン酸、一カリウム塩(BMS-188494)、および当該技術分野で周知のスクアレン合成阻害剤などがある。
【0149】
本願発明の方法において、一般的には、薬務にしたがって製剤された治療有効量の一つ以上の構造式(I)の化合物が、それを必要とするヒトに対して投与される。治療方法は、個々の症例に応じて指示され、また、出現している兆候、症状、および/または、機能不全、そして、特定の兆候、症状、および/または、機能不全が進行する危険性、それに、その他の要因を考慮する医学的評価(診断)に供される。
【0150】
構造式(I)の化合物は、例えば、経口投与、経頬投与、吸入、局所投与、眼科的局所投与、経鼻投与、気管支投与、舌下投与、直腸内投与、膣内投与、腰椎穿刺を介した嚢内または髄腔内投与、経尿道投与、経鼻吸入、経皮的投与、すなわち、経皮投与、あるいは、(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、冠状動脈内投与、皮内投与、乳腺内投与、腹腔内投与、関節内投与、髄腔内投与、眼球後方、肺内注射、および/または、特定部位への外科的埋め込みなどを含む)非経口投与などの適切な経路で投与することができる。 非経口投与は、針または注射器、あるいは、高圧技術を用いて行うことができる。
【0151】
医薬組成物として、所定の治療目的を達成する有効量が投与されるに十分な量の構造式(I)の化合物を含んだ組成物がある。正確な処方、投与経路、および、用量は、診断をした病態または疾患を考慮して、個々の医師によって決定される。投与量と投与間隔は、治療効果を維持するに十分なレベルの構造式(I)の化合物を提供するために、個別に調整をすることができる。
【0152】
構造式(I)の化合物の毒性や治療効果は、細胞培養物や実験動物を用いた標準的な製剤手法、例えば、LD50(個体群の50%に対する致死用量)やED50(個体群の50%に対する治療効果用量)によって決定される。毒性と治療効果との間の用量比は、LD50とED50との間の比率として表される治療指数である。大きな治療指数を示す化合物が望ましい。これらデータから取得されるデータは、ヒトに対して用いる用量の範囲を決定するために用いることができる。この用量は、ED50を含む循環化合物の濃度の範囲内にあり、その毒性は皆無か、あるいは、ほとんどない。これら用量は、使用する剤形や、利用した投与経路に応じて、この範囲内で変化する。治療有効量の決定は、当業者が十分に実施可能な範囲内の事項であり、特に、本明細書での開示を参照することで十分に対処可能である。
【0153】
治療の際に必要な構造式(I)の化合物の治療有効量は、治療する病態の性質、活性を必要とする期間、および、患者の年齢と状態、そして、最終的には、診察にあたる医師の判断によって定まることとなる。投与量と投与間隔は、所望の治療効果を維持するに十分な構造式(I)の化合物の血漿レベルを提供するために、個別に調整をすることができる。所望の投与量は、便宜上、単一用量で投与することができ、あるいは、複数回の投与を、適切な間隔で分けて、例えば、1日に1回、2回、3回、4回、または、それ以上の回数に分けて投与することもできる。複数回の投与が望ましい場合や、必要とされる場合がよくある。例えば、構造式(I)の化合物は、1日に1回を4日間かけて投与してなる4用量(q4d×4)、1日に1回を3日間の間隔を空けて投与してなる4用量(q3d×4)、1日に1回を5日間の間隔を空けて投与してなる1用量(qd×5)、1週間に1回を3週間で投与してなる1用量(qwk3)、2日の休止期間の後に毎日1回投与してなる5用量(5/2/5)、あるいは、状況に応じて適切に決定されたその他の用量に関する頻度でもってして投与することができる。
【0154】
構造式(I)の化合物を含む組成物、あるいは、それを含む組成物の用量は、約1ng/kg〜約200mg/kg、約1μg/kg〜約100 mg/kg、または、約1mg/kg〜約50mg/体重kgとすることができる。組成物の用量としては、約1μg/kg、10μg/kg、25μg/kg、50 μg/kg、75μg/kg、100μg/kg、125μg/kg、150μg/kg、175μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、425μg/kg、450μg/kg、475μg/kg、500μg/kg、525μg/kg、550μg/kg、575μg/kg、600μg/kg、625μg/kg、650μg/kg、675μg/kg、700μg/kg、725μg/kg、750μg/kg、775μg/kg、800μg/kg、825μg/kg、850μg/kg、875μg/kg、900μg/kg、925μg/kg、950μg/kg、975μg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10 mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25 mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125 mg/kg、150 mg/kg、175 mg/kg、または、200mg/kgなどがあるが、これらに限定されない。前述した用量は、平均的な事例を例示したものでしかなく、それら用量を増減することで所定の効果を引き出す場合も当然にあるのであって、そのような事例も、本願発明の範囲内の事項である。実際には、医師は、個々の患者に最も適した投与計画を決定し、そして、個々の患者の年齢、体重、それに、反応性を見ながら用量を調整する。
【0155】
一般的に、本願発明の方法で用いた構造式(I)の化合物は、約0.005〜約500mg/用量、約0.05〜約250mg/用量、または、約0.5〜約100mg/用量の量で投与される。例えば、構造式(I)の化合物は、0.005〜500mgの範囲のすべての用量を含む、用量当たりで、約0.005、0.05、0.5、5、10、20、30、40、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または、500mgの量で投与することができる。
【0156】
本願発明の化合物は、一般的に、意図している投与経路や標準的薬務に照らして選択した薬学的担体と組み合わせて投与される。本願発明に従って使用する医薬組成物は、構造式(I)の化合物の加工を促す添加剤や助剤を含む一つ以上の生理学的に許容可能な担体を用いて、従来の方法によって製剤される。
【0157】
用語「担体」は、構造式(I)の化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、または、添加剤のことを指す。かような医薬用担体は、水の他に、落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油などの石油、動物、植物、または、合成物由来の油脂といった液体担体とすることができる。これらの担体として、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などが使用可能である。加えて、助剤、安定剤、増粘剤、滑剤、および、着色剤を使用することもできる。医薬として許容し得る担体は、滅菌がされてある。水は、構造式(I)の化合物が静脈投与される場合の好ましい担体である。生理食塩水、および、水性デキストロース、および、グリセロール溶液は、液体担体として、特に、注射剤のための液体担体として使用することもできる。好適な医薬用担体は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゲラチン、麦芽、米、小麦、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどの添加剤も含んでいる。本願発明の組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいは、pH緩衝剤を含むことができる。
【0158】
これらの医薬組成物は、例えば、従来の混合法、溶解法、造粒法、糖衣形成法、乳化法、カプセル化法、封入法、または、凍結乾燥法などの従来技術を用いて製造することができる。選択した投与経路に応じて適切な製剤が調製される。治療有効量の構造式(I)の化合物を経口投与する場合には、一般的に、組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末、溶液、または、エリキシル剤の形態となる。錠剤の形態で投与を行う場合には、その組成物は、ゼラチンやアジュバントなどの固形担体をさらに含むことができる。錠剤、カプセル剤、および、粉末は、約0.01%〜約95%、好ましくは、約1%〜約50%の構造式(I)の化合物を含む。液剤の形態で投与を行う場合には、水、石油、または、動物または植物由来の油脂などの液体担体を加えることができる。この液体組成物は、生理食塩水、ブドウ糖またはその他の糖溶液、または、グリコールをさらに含むことができる。液剤の形態で投与を行う場合、この組成物は、約0.1重量%〜約90重量%、好ましくは、約1重量%〜約50重量%の構造式(I)の化合物を含む。
【0159】
治療有効量の構造式(I)の化合物を、静脈内投与、皮膚投与、または、皮下注射によって投与する場合には、発熱物質を含まず、非経口的に許容可能な溶液の形態で投与される。pH、等張性、安定性などが関係して非経口的に許容可能な溶液を調製することは、当該技術分野で周知の事項である。静脈内投与、皮膚投与、または、皮下注射に適した組成物は、一般的に、等張性の賦形剤を含んでいる。構造式(I)の化合物は、その他の液体と一緒に、10〜30分の時間、または、数時間をかけて点滴することができる。
【0160】
構造式(I)の化合物を、当該技術分野で周知の医薬として許容し得る担体と共に容易に組み合わせることができる。このような担体は、治療を受ける患者の経口摂取に供するために、活性成分を、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などに取り込んで製剤することができる。経口投与用医薬品は、構造式(I)の化合物を固形賦形剤に対して加え、得られた混合物を任意に粉砕し、そして、必要に応じて、適切な助剤を加えた後に、錠剤または糖衣錠の核材を取得するために顆粒の混合物を加工する、ことによって製造することができる。適切な賦形剤として、例えば、増量剤やセルロース調製物などがある。必要に応じて、崩壊剤を加えることもできる。
【0161】
構造式(I)の化合物を、例えば、急速静注法や連続注入法などの注射による非経口投与のために製剤することができる。注射用製剤は、防腐剤を加えてなる、例えば、アンプルまたは複合投与用容器に収容された単一投与量の形態で提供することができる。これら組成物は、懸濁液、溶液、または、油性または水性賦形剤中型乳剤の形態にすることができ、また、懸濁剤、安定剤、および/または、分散剤などの調剤を含むことができる。
【0162】
非経口投与用の医薬組成物として、水溶性活性成分の水性溶液がある。加えて、構造式(I)の化合物の懸濁液を、適切な油状注射用懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒または親油性賦形剤として、脂肪油、または、合成脂肪酸エステルなどがある。水性注射用懸濁液に、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有させることができる。また、これら懸濁液に、適切な安定剤や、化合物の溶解性を増大させて、高濃度溶液の調製を可能にする薬剤なども任意に含有させることができる。あるいは、本願発明の組成物を、使用前に適切な賦形剤、例えば、滅菌した発熱物質を含まない水で溶かして使用する粉末形態にすることができる。
【0163】
構造式(I)の化合物は、例えば、従来の坐薬基剤を含む坐薬または停留浣腸のような、直腸用組成物に製剤することもできる。前述した製剤に加えて、構造式(I)の化合物は、デポー製剤として製剤することもできる。このような長期持続性製剤は、移植(例えば、 皮下または筋肉内移植)、または、筋肉内注射によって投与することができる。よって、例えば、構造式(I)の化合物を、適切な重合物質または疎水性物質(例えば、許容可能な油中型乳剤)、または、イオン交換樹脂を用いて製剤に供することができる。
【0164】
具体的には、構造式(I)の化合物は、デンプンやラクトースなどの賦形剤を含む錠剤、カプセル剤または胚珠の単体あるいは賦形剤とそれらの組み合わせ、エリキシル剤、あるいは、着香料または着色剤を含んだ懸濁液の形態で、経口的、経頬的、または、舌下に投与することができる。そのような液体製剤は、懸濁剤のような医薬として許容し得る添加物を用いて調製することができる。構造式(I)の化合物を、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、または、冠動脈内などに、非経口的に注射することもできる。非経口投与を行うにあたって、構造式(I)の化合物は、血液に対して等張性を示す溶液を調製するために、例えば、マンニトールやグルコースなどの塩類や単糖類などのその他の物質を含有することができる滅菌した水性溶液の形態のものが最善である。
【0165】
構造式(I)の化合物が調製され、および受容体の5-HT(2)ファミリーの活性を調節する能力についてアッセイが行われた。具体的には、化合物50-53が調製され、および受容体の5-HT(2)ファミリーに関する効果を決定するためのアッセイが行われた。結果は、以下の表1にまとめてある。
【0166】
【化11】

【0167】
【表1】

【0168】
このデータは、化合物50および51が、5-HT(2A)および5-HT(2B)受容体において活性を示さない一方で、5-HT(2C)受容体を調節していることを示している。
【0169】
(+)および(-)-光学異性体を含む化合物12および18も、受容体の5-HT(2)ファミリーに関するそれらの効果について試験が行われた。これら化合物の機能活性は、ヒト5-HT(2A)、ヒト5-HT(2B)、およびヒト5-HT(2C)(INI)受容体を安定して発現するHEK-293細胞でのGaqが媒介した細胞内カルシウム動員を測定することによって決定された(18)。結果は、表2にまとめてある。
【0170】
機能分析において、ラセミ化合物12が、5-HT(2A)または5-HT(2B)受容体のいずれをも活性化せず、および、5-HT(2C)受容体では、254nMのEC50を有することが明らかとなった。さらに活性な光学異性体(+)-12も、これらのin vitro機能分析において選択性を示した。これとは対照的に、活性の乏しい異性体(-)-12は、5-HT(2C)アッセイにおいて、約2.4μMのEC50しか有していなかった。
【0171】
比較の目的で、肥満に関する第3相試験を行っている5-HT(2C)リガンドロルカセリン(2)が試験された。化合物2は、5-HT(2C)受容体にあっては、低い強度(nM)しか示さない。しかしながら、5-HT(2B)サブタイプでは、124nMのEC50と92%のEMAXを示しており、かなりの活性が認められる。したがって、心臓弁膜症は、化合物2によって誘発されるかもしれない。5-HTと同様に、その他の公知の5-HT(2C)アゴニスト、すなわち、バビカセリン(3)およびWay化合物(4)ならびに(5)も、参考までに、このアッセイで利用した。化合物WAY 629(5)によって示された薬理学的特性は、化合物(+)-12によって示された薬理学的特性と同様である。
【0172】
【化12】

【0173】
5-HT(2B)の最小活性化を示す(+)-12および(+)-18の双方の薬理学的性質のさらなる特徴づけを行うために、これらの化合物は、5-HT(2B)アンタゴニストとしての機能するそれらの性質について試験がされた。化合物(+)-12および(+)-18では、最大5-HT応答が弱まることなく、カルシウム流出実験での5-HTの濃度曲線が右方向に移動していることが認められており、このことは、結合反応速度が大きいことを示している。シルドは、それぞれ、5.50±0.06、5.79±0.07、および5.92±0.02のpA2(±SEM)値(n=3)が得られたと分析している。これらの結果は、試験化合物が、5-HT(2B)受容体で、適度の強度の全長アンタゴニストとして作用することを示している。
【0174】
【表2】

【0175】
これら化合物のin vitroでの薬理学的性質に基づいて、光学異性体(+)-12および(+)-l8は、さらなるin vivo試験に供された。具体的には、PCPで処理をした動物における攪乱したプレパルス抑制(PPI)を正常化する能力が試験された。PPIとは、弱い前刺激の「プレパルス」から、それに続く、ずっと大きな驚愕刺激、または「パルス」が、動物の反応を阻害することができる神経精神病学の動物モデルである。一般的に、これらの研究で使用される刺激は、音(デシベルまたはdBの単位)であるが、触感、光線、または空気の吹きつけなどのその他の刺激を使用することができる。驚愕反応の強度の減少は、生物を警告するために、初期に弱い信号が与えられている場合において、大きな感覚刺激に対して一時的に適合しようとする神経系の能力を示すものである。生物が刺激に適合できる程度は、生理系の宿主に影響を及ぼすものであるが、PPIに関する薬物の効果を評価するために、一般的には、筋肉反応の変化を計測することが好都合である。統合失調症では、いわゆる感覚情報の洪水の結果として、PPI応答の攪乱がよく認められ、したがって、さほど重要でない情報を除去する能力も無くなってしまうことは周知の事項である(Swerdlow et al., Arch Gen Psychiatry. 1994; 51(2): 139-154)。
【0176】
マウスにおいてフェンシクリジン(PCP、NMDA受容体アンタゴニスト)が誘発したPPIの攪乱の効果を正常化する本願発明の5-HT(2C)リガンドの性質が試験された。このPCPモデルは、広く受け入れられた非定型抗精神病活性のモデルであり(19, 20)、および5-HT(2C)アゴニストの抗精神病活性を特徴づけるために以前から使用されていた(21)。化合物(+)-12および(+)-18、ならびに対照化合物としてのバビカセリン(3)が、PCP(6mg/kg)が攪乱したPPIを正常化する性質について試験がされた。(+)-12および(+)-18の双方が、10mg/kgの用量で、PCPが攪乱したPPIを正常化することができ、およびバビカセリンの活性に匹敵するものであることが明らかになった。5mg/kgの用量レベルで、(+)-12およびバビカセリンは、依然として効果的である。
【0177】
(+)-化合物12に関して、シトクロムP-450スクリーニング、代謝安定性試験、およびhERGアッセイも行われた。データを、表3〜5にまとめてある。組換えCYP阻害試験において、化合物(+)-12は、10μMで、CYP2C9(19.55%)、CYP2D6(26.97%)、およびCYP3A4(基質として、ミダゾラムおよびテストステロンを用いて、それぞれ21.68%および25.13%)に対する阻害は比較的に軽度のものであった。さらに、化合物(+)-12は、対照薬物であるベラパミルと比較して、許容し得るミクロソーム安定性を有しており(表4)、および5および10μMの濃度では、hERGアッセイにおいて活性を示さなかった。
【0178】
【表3】

【0179】
【表4】

【0180】
(生物学的アッセイプロトコール)
(カルシウム流出アッセイ)
カルシウム流出アッセイは、実質的に、以前に報告された方法にしたがって行われた(N.H. Jensen et al., Neuropsychopharmacology. (2008) 33, 2303-2312.)。5-HT(2A)、5-HT(2B)、または5-HT(2C)(INI)受容体を安定に発現するHEK293細胞は、組織培養用の黒色透明底384ウェルプレート(Greiner社、ドイツ)に入れられた50U/mlペニシリンおよび50μg/ml硫酸ストレプトマイシンを含む血清不含のDMEMに接種され、および20時間インキュベーションされ、該プレートは、50mg/lのポリ-L-リシン(Sigma社、P-1524)を含むPBSの20μl/ウェルで、コーティングされた。これらの細胞は、20μlの再構成fura-4系カルシウム染色液(カルシウムプラスアッセイキット、Molecular Devices社)を含むアッセイ緩衝液(カルシウムおよびマグネシウム(Invitrogen社、14065-056)、50mM HEPES、2.5mM プロベネシド、100mg/l アスコルビン酸、pH 7.4を含むハンクス平衡塩類溶液)を用いて、加湿インキュベーターで、37℃で、75分間かけて、前培養された。これらのプレートは、10分以上かけて、室温にまで冷却され、およびFLIPRテトラ蛍光画像プレートリーダー(Molecular Devices社)に移された。試験化合物を含む15μlのアッセイ緩衝液が自動的に添加され、および蛍光値(励起:470-495nm、発光:515-575nm)は、3分間、刻々と計測された。ベースラインは、添加直前の10箇所から得た数値を平均したものであり、および結果は、添加後の60秒間においてベースラインを超える最大反応として表示された。化合物は、10μM〜10pMの7つの濃度で、各3回、計測された。EC50値およびEmax値は、Prism(Graphpad社)を用いて、S字状用量依存的モデルに対する非線形曲線フィットから得られた。
【0181】
(プレパルス抑制の動物実験)
プレパルス阻害(PPI)試験と分析は、以前に報告された方法にしたがって行われた(A.I. Abbas, et al. JNeurosci (2009), 29, 7124-36.)。すべての実験において、8〜12週齢の雄および雌の成体のC57BL/6Jマウス(Jackson Labs社、Bar Harbor、ME)が用いられた。マウスに対して、賦形剤(0.9%生理食塩水; 10ml/kg、腹腔内投与)を予め投与し、あるいは、(+)-12、(+)-18、またはバビカセリン(3)の用量を増大してから、各々の飼育箱へと戻された。30分後に、動物には、フェンサイクリジン(6mg/kg、腹腔内投与)が投与され、および、即座にPPI機器(SR-ラボ驚愕反応システム、San Diego Instruments社)へと送られた。62dBの白色雑音に5分間順化させてから、動物は、74回の聴覚試験が行われ、そこでは、開始時と終了時に、各々5回の驚愕刺激(40ミリ秒間の120dB白色雑音の負荷)だけが与えられた。残りの64回の試験は、以下のタイプの試験:驚愕刺激だけを与える8回の試験、刺激を与えない8回の(無刺激)試験、驚愕刺激と組み合わされていないプレパルス刺激(62dBのバックグラウンドよりも4、8、12、および16dB以上の刺激、各々4の強度、20ミリ秒間)を与える16回の試験(プレパルスだけの試験)、および100ミリ秒間の120dBの驚愕刺激と、それに続くプレパルス刺激の開始とを組み合わせてプレパルス刺激(62dBのバックグラウンドよりも4、8、12、および16dB以上の刺激、各々8の強度)を与える32回の試験、から無作為に実施をした。試験は、変動時間間隔(8〜15秒間)によって分けられており、各動物についての合計試験時間は、26〜30分間に及んでいた。PPI率を算出するために用いた式は:100-((プレパルス後の驚愕刺激/プレパルス無しでの驚愕刺激)×100)であった。データは、SR LABプログラムを用いて分析され、および平均値±平均値の標準誤差として示される。被験者内効果としてのプレパルス強度(4、8、12、および16dB)と、被験者間効果としての化合物と用量(化合物ごとに利用された用量)を用いて、プレパルス依存性PPLに関する試験化合物の効果を確認するために、反復測定ANOVA(Graphpad Prism 5.0を利用している)が用いられた。治療グループ間での差は、ボンフェローニ補正対比比較を用いて決定された。すべての事例において、p<0.05は、統計的に有意であると考慮された。
【0182】
(CYPアイソザイムの阻害)
各々の阻害アッセイのために、以下のもの:MgCl2(20μl、50mM溶液)、リン酸緩衝液(100μl、100mM溶液)、水(38μl)、組換え酵素(20μl、200pM溶液)、および1μlの以下の基質:トルブタミド(40mM、CYP2C9用基質)、デキストロメトルファン(2mM、CYP2D6用基質)、またはミダゾラム(1mM、CYP3A4用基質)、およびテストステロン(10mM、CYP3A4用基質)のいずれかが使用された。試験化合物の最終濃度は、10μMである。この混合物は、37℃で、2分間、予め加温され、その後、NADPH (20μl、10mM)の添加によって反応が開始された。反応系は、37℃で、5分間(CYP3A4用基質)、または20分間(CYP2D9およびCYP2D6)加熱され、およびMeCN(0.6ml)の添加によって反応は停止された。試料を、遠心分離(16000rpm、10分間)し、LC-MS-MS分析のために、200μlの画分が取得された。試料成分の分離は、0.1%ギ酸を含むMeCNと0.1%ギ酸水溶液との間の移動相混合物を用いるWaters ACQUITY UPLC CI 8(2.1mm×50mm)カラム(溶出速度 0.5ml/分、カラム温度 25℃)で行われた。以下の機器設定を行った:衝突温度 500℃、イオンスプレー電圧 +5500V; CYP2C9(決定されたヒドロキシトルブタミド)、Ql 287.2, Q3 188.1, DP 86 V, EP 8 V, CE 18 V, CXP 11 V;CYP 2D6 (決定されたデキストロルファン) Ql 259.2, Q3 158.2, DP 84 V, EP 9 V, CE 52 V, CXP 8 V; CYP3A4(決定された1-ヒドロキシミダゾラム) Ql 343.2, Q3 325.0, DP 100 V, EP 10 V, CE 29 V, CXP 21 V、および(6-β-ヒドロキシテストステロン) Q1 305.2, Q3 269.1, DP 70 V, EP 8 V, CE 22 V, CXP 16 V。
【0183】
(肝臓ミクロソームでの安定性)
試験をされる各試料について、以下のものが混合された: ミクロソーム(50μl、0.5mg/ml)、MgCl2溶液(50μl、50mM)、リン酸緩衝液(250μl、100mM)、水(95μl)、試験化合物(+)-12(5μl、200μM)。ベラパミルは、ポジティブコントロールとして使用された。反応は、37℃で実施され、およびNADPH(50μl、10mM)の添加によって反応は開始され、あるいは、ネガティブコントロールについては、水(50μl)の添加によって反応は開始された。0、15、30、45、および60分後に、50μlの画分が溶液から取得され、および、この画分に150μlの冷メタノールを加えることによって、反応は停止された。試料を、遠心分離(16000rpm、10分間)した。LC-MS-MS分析のために、100μlの上清が用いられた。すべてのインキュベーションは、2回ずつ行われた。試料成分の分離は、0.1%ギ酸を含むMeCNと0.1%ギ酸水溶液との間の移動相混合物を用いるWaters ACQUITY UPLC CI 8(2.1mm×50mm)カラム(溶出速度 0.5ml/分、カラム温度 25℃)で行われた。以下の機器設定を行った:衝突温度 500℃、イオンスプレー電圧 +5500V。In vitroでの半減期は、in vitro t1/2 = -(0.693 / k)、式中、kは、親薬物のピーク面積対インキュベーション時間曲線の線形回帰によって決定された勾配である式で算出された。In vitroでの固有クリアランス(in vitro CLint)は、in vitro CLint = (0.693 / t1/2) × (インキュベーションの体積(μl) / タンパク質の量(mg))にしたがって算出された。
【0184】
(hERGアッセイ)
ヒトhERGチャンネルを安定に発現するHEK-293細胞を用いて、FLIPR Tetra蛍光画像プレートリーダー(Molecular Devices社)を利用するFluxORタリウムアッセイキット(Invitrogen社)で、化合物は、1μMおよび10μMでのhERG阻害をスクリーニングされた。1μMおよび10μMのシサプリドは、標準品(IC50 = 490nM)として使用された。25%を超える阻害を示す化合物は、32nM〜32μMで、PatchXpress 7000A自動平行面パッチクランプシステムを用いて検証された(H. Zeng et al., Assay Drug Dev Technol. (2008), 6, 235-41)。
【0185】
従来の5-HT(2C)アゴニストは、治療剤の開発を妨げる性質を有していた。本願発明の重要な特徴事項によると、構造式(I)の化合物が、合成され、および5-HT(2C)アンタゴニストに対するアゴニストの阻害剤として評価された。構造式(I)の化合物は、5-HT(2C)受容体の強力なアゴニストであるが、5-HT(2B)および5-HT(2A)受容体に関しては不活性である。幾つかの実施態様において、構造式(I)の化合物は、5-HT(2B)受容体アンタゴニストである。
【0186】
(参考文献)
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22. J. Dunlop et al, J Pharmacol Exp Ther. (2005) 313, 862-9.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式:
【化1】

式中、
R1は、独立して、C1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C1-6アルケニル、-CF3、-OCF3、C1-6ヘテロアルキル、-ORa、-SRa、ハロ、-N02、-CN、-NC、-C(=0)Ra、-C(=C)ORa、-N(Ra)(Rb)、-C(=0)N(Ra)(Rb)、-S02N(Ra)(Rb)、-NRcC(=0)Ra、-N=C(Ra)(Rb)、-NRcC(=0)ORa、-S02Ra、-S03Ra、-P(0)(ORa)、-P(=0)(ORa)(ORb)、および-NH-P(=0)(ORa)(ORb)からなるグループから選択され、
RaおよびRbは、独立して、水素、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルからなるグループから選択され、
Rcは、水素またはC1-6アルキルであり、および
nは、0、1、2、3、または4の整数である、
構造式を有する化合物、または医薬として許容し得るその塩または水和物。
【請求項2】
R1が、ハロ、ORa、SRa、N02、CN、NC、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、OCF3、C1-6ヘテロアルキル、およびヒドロキシC1-6アルキルからなるグループから選択され、および、
nが、0、1または2である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が、C1-3アルキル、ハロ、およびORaからなるグループから選択され、および、
nが、0、1または2である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1が、F、Br、Cl、OH、N02、OCH3、OCF3、CF3、CH3、およびC3H7からなるグループから選択され、および、
nが、0または1である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
構造式:
【化2】

式中、
R1が、C1-3アリル、ハロ、ORa、N02、OCF3、またはCF3であり、および、
nが、0または1である構造式を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R1が、F、Br、Cl、OH、N02、OCH3、OCF3、CF3、CH3、またはC3H7であり、および、
nが、0または1である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物のラセミ混合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物の(+)光学異性体。
【請求項9】
実質的に(-)光学異性体を含まない請求項8に記載の(+)光学異性体。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物の(-)光学異性体。
【請求項11】
実質的に(+)光学異性体を含まない請求項8に記載の(-)光学異性体。
【請求項12】
塩酸(+)-トランス(S,S)-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-フルオロフェニル)シクロプロピル]メチルアミン、塩酸(+)-トランス(S,S)-[2-(2-シクロプロピルメチルオキシ-5-ヒドロキシフェニル)シクロプロピル]メチルアミン、または医薬として許容し得るその塩または水和物。
【請求項13】
(a)請求項1に記載の化合物、(b)5-HT(2C)の調節が有効である疾患または病態の治療において有用な第二治療薬、および(c)任意の賦形剤、および/または医薬として許容し得る担体を含む組成物。
【請求項14】
前記第二治療薬が、精神疾患、代謝異常、または摂食障害の治療において有用な治療薬を含む請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物、および医薬として許容し得る担体または媒体を含む医薬組成物。
【請求項16】
5-HT(2C)受容体の調節が有効である疾患または病態を治療する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を、治療を必要とする個体に投与することを含む方法。
【請求項17】
前記5-HT(2C)受容体が活性化されている請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患または病態の治療において有用な治療有効量の第二治療薬を投与することをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物と前記第二治療薬とが、同時に投与される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物と前記第二治療薬とが、別個に投与される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記疾患または病態が、段落番号[0100]〜[0102]に開示された薬剤から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患または病態が、中枢神経系障害、または中枢神経系の損傷である請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記中枢神経系障害が、不安神経症、パニック障害、統合失調性感情障害、統合失調症、精神病、適応障害、筋失調症、臨床的鬱病、双極性障害、常習行為、化合物中毒、強迫性障害、運動障害、または認知障害である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患または病態が、代謝障害、または摂食障害である請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記代謝障害、または摂食障害が、脂質異常症、2型糖尿病、尿崩症、代謝症候群、または肥満である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患または病態が、胃腸障害、睡眠時無呼吸、高血圧、脂質異常症、循環器疾患、認知症、記憶障害、軽度認識障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、アルツハイマー病が関係した知的障害、ハンチントン病、運動障害、慢性疼痛、片頭痛、癲癇、アルコールおよび薬物に対する依存性または中毒、または、男性または女性での性的機能不全である請求項16に記載の方法。
【請求項27】
治療有効量の請求項1に記載の化合物を個体に投与することを含む、個体の食料摂取量を減少させるための方法。
【請求項28】
治療有効量の請求項1に記載の化合物を個体に投与することを含む、個体における満腹感を誘発させるための方法。
【請求項29】
治療有効量の請求項1に記載の化合物を、体重管理に悩んでいる個体に投与することを含む、個体の体重増加を制御するための方法。
【請求項30】
請求項1に記載の受容体化合物と接触することを含む、in vivoまたはin vitroにおいて、5-HT(2C)受容体を調節するための方法。
【請求項31】
前記5-HT(2C)受容体が、活性化され、または刺激されている請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記5-HT(2C)受容体が、5-HT(2A)受容体および5-HT(2B)受容体との関係で、選択的に活性化され、または刺激されている請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記5-HT(2B)受容体が、拮抗されている請求項32に記載の方法。

【公表番号】特表2013−518894(P2013−518894A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552072(P2012−552072)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2011/023535
【国際公開番号】WO2011/097336
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(500033634)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (21)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
【出願人】(512203621)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (1)
【Fターム(参考)】