5−HT2Aインバースアゴニスト及びアンタゴニストの抗精神病薬との併用
ピマバンセリンなどの5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストをリスペリドンなどの抗精神病薬と併用すると、抗精神病薬単独による治療と比較したとき、抗精神病作用の迅速な発現が誘発され、レスポンダー数が増加することが示される。こうした効果は低用量の抗精神病薬で実現することができ、従って副作用の発生率が低下する。併用はまた、抗精神病薬によって引き起こされる体重増加の発生率及びグルコース値又はプロラクチン値の上昇の低減にも有効である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年3月19日に出願された米国仮特許出願第60/895,735号明細書;2007年3月29日に出願された同第60/908,921号明細書;2007年12月10日に出願された同第61/012,771号明細書;及び2008年2月4日に出願された同第61/026,092号明細書の利益を主張し、これらの全ては表題が「COMBINATIONS OF N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N−(4−FLUOROPHENYLMETHYL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)WITH ANTIPSYCHOTICS」であり、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、化学及び医学の分野に関する。より詳細には、本発明のある実施形態は、5−HT2A受容体インバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病薬との同時投与に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
セロトニン、すなわち5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)は、哺乳動物の生体機能において重要な役割を果たす。中枢神経系では、5−HTは、睡眠、摂食、歩行運動、痛みの知覚、学習及び記憶、性行動、体温及び血圧の制御などの多様な行動及び反応に関わる重要な神経伝達物質及び神経調節物質である。脊柱では、セロトニンは求心性末梢侵害受容器の制御系において重要な役割を果たす(Moulignier,Rev.Neurol.150:3−15,(1994))。心血管系、血液系及び胃腸系の末梢機能もまた、5−HTに基づくとされている。5−HTは、血管及び非血管平滑筋収縮、及び血小板凝集を含め、様々な収縮作用、分泌作用、及び電気生理学的作用を媒介することが分かっている。(Fuller,Biology of Serotonergic Transmission,1982;Boullin,Serotonin In Mental Abnormalities 1:316(1978);Barchas,et al.,Serotonin and Behavior,(1973))。5−HT2A受容体サブタイプ(サブクラスとも称される)は、高度な認知及び情動機能の調節に関わると想定される多くの皮質、辺縁、及び前脳領域を含め、ヒト脳において広範囲にわたり、但し個別に発現する。この受容体サブタイプは成熟血小板においても発現し、そこで一つには、血管血栓症の過程における初期段階の1つである血小板凝集を媒介する。
【0004】
セロトニンの体内における広範囲な分布を考えれば、セロトニン作動系に作用する薬物に多大な利益が存在することは、納得のいくことである(Gershon,et al.,The Peripheral Actions of 5−Hydroxytryptamine,246(1989);Saxena,et al.,J.Cardiovascular Pharmacol.15:Supp.7(1990))。セロトニン受容体は、細胞間情報伝達のトランスデューサーとして機能する膜貫通タンパク質の大規模なヒト遺伝子ファミリーのメンバーである。これらは、ニューロン及び血小板を含む様々な細胞型の表面上に存在し、内因性リガンドセロトニン又は体外から投与された薬物のいずれかにより活性化されると、その立体配座構造が変化し、続いて細胞シグナル伝達の下流のメディエーターと相互作用する。5−HT2Aサブクラスを含め、こうした受容体の多くはGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化することによってシグナルを伝達し、その結果、サイクリックAMP、イノシトールリン酸、及びジアシルグリセロールなどの二次メッセンジャー分子を生成、又は阻害する。こうした二次メッセンジャーは、次にキナーゼ及びイオンチャネルを含む様々な細胞内酵素の機能を調節し、最終的にはこれが細胞の興奮性及び機能に作用する。
【0005】
少なくとも15種の遺伝学的に異なる5−HT受容体サブタイプが同定され、7つのファミリー(5−HT1〜7)のうちの1つに割り当てられている。各サブタイプは、固有の分布、各種リガンドに対する選択性、及び機能的相関を示す。
【0006】
セロトニンは、特定の精神障害(鬱病、攻撃性、パニック発作、強迫性障害、精神病、統合失調症、自殺傾向)、特定の神経変性障害(アルツハイマー型認知症、パーキンソニズム、ハンチントン舞踏病)、食欲不振症、過食症、アルコール中毒に関連する障害、脳血管障害、及び片頭痛などの様々なタイプの病理学的病態における重要な構成要素であり得る(Meltzer,Neuropsychopharmacology,21:106S−115S(1999);Barnes & Sharp,Neuropharmacology,38:1083−1152(1999);Glennon,Neurosci.Biobehavioral Rev.,14:35(1990))。
【0007】
セロトニンの体内における広範囲な分布、並びに多岐にわたる生理学的及び病理学的過程におけるその役割を考えれば、セロトニン作動系に作用する薬物に多大な利益があることは、納得のいくことである(Gershon,et al.,The Peripheral Actions of 5−Hydroxytryptamine,246(1989);Saxena,et al.,J.Cardiovascular Pharmacol.15:Supp.7(1990))。
【0008】
セロトニンの効果は少なくとも15種の遺伝学的に異なる5−HT受容体サブタイプによって媒介され、これらのサブタイプは同定されて、7つのファミリー(5−HT1〜7)のうちの1つに割り当てられている。各サブタイプは、固有の分布、各種リガンドに対する選択性、及び機能的相関を示す。セロトニン受容体は、細胞間情報伝達のトランスデューサーとして機能する膜貫通タンパク質の大規模なヒト遺伝子ファミリーのメンバーである。これらは、ニューロン及び血小板を含む様々な細胞型の表面上に存在し、内因性リガンドセロトニン又は体外から投与された薬物のいずれかにより活性化されると、その立体配座構造が変化し、続いて細胞シグナル伝達の下流のメディエーターと相互作用する。5−HT2Aサブクラスを含め、こうした受容体の多くはGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化することによってシグナルを伝達し、その結果、サイクリックAMP、イノシトールリン酸、及びジアシルグリセロールなどの二次メッセンジャー分子を生成、又は阻害する。こうした二次メッセンジャーは、次にキナーゼ及びイオンチャネルを含む様々な細胞内酵素の機能を調節し、最終的にはこれが細胞の興奮性及び機能に作用する。
【0009】
5−HT2A受容体サブタイプ(サブクラスとも称される)は、高度な認知及び情動機能の調節に関わると想定される多くの皮質、辺縁、及び前脳領域を含め、ヒト脳において広範囲にわたり、但し個別に発現する。この受容体サブタイプは成熟血小板においても発現し、そこで一つには、血管血栓症の過程における初期段階の1つである血小板凝集を媒介する。最近のエビデンスでは、5−HT2受容体サブタイプは、高血圧症、血栓症、片頭痛、血管痙攣、虚血、鬱病、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害及び食欲障害などの医学的病態の原因に強く関連付けられている。
【0010】
統合失調症は、人口の約1%が罹患する特に破滅的な精神神経障害である。この疾患の罹患者の診断、治療、及び社会的生産力の損失にかかる経済的な負担総額は、米国の国民総生産(GNP)の2%を上回ると推定されている。現行の治療は主に、抗精神病薬として知られる薬物クラスによる薬物療法を伴うものである。抗精神病薬は、陽性症状(例えば、幻覚及び妄想)の寛解に有効であるが、陰性症状(例えば、社会的及び心理的離脱、無関心、及び会話の貧困)は改善しないことが多い。
【0011】
現在、精神病症状の治療には9つの主要な抗精神病薬クラスが処方されている。しかしながら、こうした化合物の利用はその副作用プロファイルによって制限されている。「定型の」、すなわち旧世代の化合物は、ほぼ全てがヒトの運動機能に対し著しい有害作用を有する。こうした「錐体外路の」副作用(調節性のヒト運動系に対する作用から、このように呼ばれる)は、急性(例えば、ジストニー反応、生命を脅かす恐れがあるが、稀である神経遮断薬による悪性症候群)及び慢性(例えば、静坐不能、振戦、及び遅発性ジスキネジー)の双方であり得る。従って、創薬の試みは、こうした有害作用のうちのあるものを含まない最新の「非定型の」薬剤に焦点が置かれている。しかしながら、非定型薬剤もまた、脳卒中のリスクの増加、睡眠パターンの異常なずれ、極度の疲労及び衰弱、代謝疾患(高血糖症及び糖尿病を含む)、及び体重増加を含む重篤な副作用を生じる可能性を有する。抗精神病薬剤のノンコンプライアンス及び使用中断について最もよく見られる理由の1つは、体重増加である。ノンコンプライアンスは、入院の長期化及び医療費の増加につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
抗精神病薬は、ドパミン作動性受容体、セロトニン作動性受容体、アドレナリン作動性受容体、ムスカリン受容体、及びヒスタミン作動性受容体を含め、多数の中枢モノアミン作動性神経伝達物質受容体と相互作用することが示されている。こうした薬物の治療作用及び有害作用は、異なる受容体サブタイプによって媒介されるものと思われる。これらの受容体サブタイプ間の高度な遺伝的及び薬理学的相同性により、サブタイプ選択的化合物の開発、並びに任意の特定の受容体サブタイプについての通常の生理学的又は病態生理学的役割の決定が妨げられてきた。従って、モノアミン作動性神経伝達物質受容体のなかの個々の受容体クラス及びサブクラスに対して選択的な薬物の開発が必要とされている。
【0013】
抗精神病薬の作用機序については、ドパミンD2受容体の拮抗作用が関与しているとする理論が一般的である。残念なことに、ドパミンD2受容体の拮抗作用はまた、錐体外路副作用、並びに抗精神病治療薬の何らかの付加的な望ましくない作用、例えば、鬱症状の悪化、無快感症及び認知過程の機能障害なども媒介するものと思われる。5−HT2A受容体の拮抗作用は、抗精神病効果を有する薬物の代替的な分子機構であり、セロトニン作動系を通じた高度な、又は過剰なシグナル伝達の拮抗作用を介している可能性がある。従って5−HT2Aアンタゴニストは、錐体外路副作用又はドパミンD2受容体の遮断に関連した他の望ましくない作用を有しない、精神病の治療に適した候補である。
【0014】
伝統的に、5−HT2A受容体などのGPCRは、アゴニスト(受容体を活性化させる薬物)が結合することによって活性化されない限り、静止状態で存在すると考えられてきた。現在では、セロトニン受容体を含め、一部ではあるが多くのGPCRモノアミン受容体が、その内因性アゴニストなしに部分的に活性化された状態で存在し得ることが認められている。この高い基礎活性(恒常的活性)は、インバースアゴニストと称される化合物によって阻害することができる。アゴニスト及びインバースアゴニストの双方とも、ある受容体における固有の活性を有し、すなわち、単独でこれらの分子をそれぞれ活性化又は不活性化することができる。対照的に、古典的、すなわち中立的なアンタゴニストは、受容体への到達に関してアゴニスト及びインバースアゴニストと競合するが、高い基礎的又は恒常的な受容体反応を阻害する内在的な能力は有しない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、抗精神病薬による治療に適した病態の治療方法を含み、これは、第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを投与することと、第2の量の抗精神病剤を投与することとを含み、ここで第1の量及び第2の量は、その抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な作用がより速く実現される量である。ある実施形態において、第2の量は、その抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である。ある実施形態において、第2の量は、その抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である。
【0016】
ある実施形態において、第1の量及び第2の量は、抗精神病剤の有効用量による単独投与と比較して、抗精神病剤に起因する1つ又は複数の副作用の重症度又は発現を軽減する量である。ある実施形態において、副作用は体重増加である。ある実施形態において、副作用は、錐体外路副作用、ヒスタミン性副作用、αアドレナリン作動性副作用、及び抗コリン作動性副作用からなる群から選択される。ある実施形態において、副作用は、脳卒中、振戦、鎮静、胃腸障害、神経学的障害、死亡リスクの増加、脳血管イベント、運動障害、ジストニー、静坐不能、パーキンソン病様(parkinsoniam)運動障害、遅発性ジスキネジー、認知障害、プロラクチン血症、カタレプシー、精神病、神経遮断薬悪性症候群、心臓障害、呼吸器系障害、糖尿病、肝不全、自殺傾向、鎮静、起立性低血圧、窒息感、めまい感、頻脈、血液異常、トリグリセリド値の異常、コレステロール値の上昇、異常脂質血症、高血糖症、失神、痙攣発作、嚥下障害、持続勃起症、血栓性血小板減少性紫斑病、体温調節失調、不眠症、激越、不安、傾眠、攻撃的反応、頭痛、便秘、悪心、消化不良症、嘔吐、腹痛、唾液増加、歯痛、鼻炎、咳嗽、副鼻腔炎、咽頭炎、呼吸困難、背痛、胸痛、発熱、発疹、乾皮症、脂漏、上気道感染の増加、視覚異常、関節痛、感覚鈍麻、躁反応、集中力障害、口内乾燥症、疼痛、疲労、ざ瘡、皮膚そう痒症、筋肉痛、骨痛、高血圧症、下痢、錯乱、無力症、尿失禁、眠気、睡眠時間の増加、調節障害、動悸、勃起機能障害、射精機能障害、オルガスム(orgastic)機能障害、倦怠感、色素沈着の増加、食欲亢進、自動症、夢遊行動の増加、性欲の減退、神経過敏、鬱病、無関心、緊張病性反応、多幸症、リビドー亢進、健忘症、情動不安定(emotional liability)、悪夢、譫妄、あくび、構音障害、眩暈、昏迷、錯感覚、失語症、感覚減退、舌麻痺、下肢痙攣、斜頸、筋緊張低下、昏睡、片頭痛(migrain)、反射亢進、舞踏アテトーゼ、食欲不振症、鼓腸、口内炎、下血、痔核、胃炎、便失禁、おくび(erutation)、胃食道逆流症(gastroeophageal reflux)、胃腸炎、食道炎、舌変色、胆石症(choleithiasis)、舌浮腫、憩室炎、歯肉炎、変色糞、消化管出血、吐血、浮腫、悪寒、不快感、蒼白、腹部膨張、腹水、サルコイドーシス、潮紅、過換気、気管支攣縮、肺炎、喘鳴(tridor)、喘息、喀痰の増加、誤嚥、光線過敏症、発汗過多、ざ瘡、発汗減少、脱毛症、角質増殖症、皮膚剥脱、水疱性発疹、皮膚潰瘍、乾癬の憎悪、せつ腫症、疣贅、苔癬様皮膚炎、多毛症、性器そう痒症、蕁麻疹、心室頻拍症、狭心症、心房期外収縮、T波逆転、心室期外収縮、ST鬱病、房室ブロック、心筋炎、調節異常、眼球乾燥症、複視、眼痛、眼瞼炎、光視症、羞明、流涙異常、低ナトリウム血症、クレアチンホスホキナーゼ増加、口渇、体重減少、血清鉄の減少、悪液質、脱水、低カリウム血症、低タンパク血症、高リン血症、高グリセリド血症、高尿酸血症、低血糖症、多尿、煩渇多飲症、血尿(hemturia)、排尿困難、尿閉、膀胱炎、腎不全、関節症、骨癒合症、滑液包炎、関節炎、月経過多、膣乾燥症、非産褥性乳汁分泌(nonpeurperal lactation)、無月経、女性乳房痛、白帯下、乳腺炎、月経困難症、女性会陰痛、中間期出血、膣出血、SGOT上昇、SGPT上昇、胆汁うっ滞性肝炎、胆嚢炎、胆石症(choleithiasis)、肝炎、肝細胞傷害、鼻出血、表在性静脈炎、血栓性静脈炎(thromboplebitis)、血小板減少症、耳鳴り、聴覚過敏、聴力低下、貧血、低色素性貧血、正球性貧血、顆粒球減少症、白血球増多、リンパ節症、白血球減少、ペルゲル・フエット核異常、女性化乳房、男性乳房痛、抗利尿ホルモン異常(antiduretic hormone disorder)、苦味、排尿障害、注視痙攣、歩行異常、不随意筋収縮、及び外傷増加からなる群から選択される。
【0017】
ある実施形態において、病態は精神病であり、有効な作用は抗精神病作用である。ある実施形態において、精神病は、統合失調症に関連する。ある実施形態において、精神病は、急性精神病憎悪である。ある実施形態において、治療に適した病態は、統合失調症、双極性障害、激越、精神病、アルツハイマー病における行動障害、精神病の特徴又は双極性の徴候を有する鬱病、強迫性障害、心的外傷後ストレス症候群、不安、人格障害(境界型及び統合失調型)、認知症、激越を伴う認知症、高齢者における認知症、トゥレット症候群、下肢静止不能症候群、不眠症、社会不安障害、気分変調症、ADHD、及び自閉症からなる群から選択される。
【0018】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病作用の迅速な発現を誘発する方法を含み、これは、精神病に罹患している対象者に対し、抗精神病作用が迅速に発現されるように5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む。
【0019】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗鬱作用の迅速な発現を誘発する方法を含み、これは、鬱病に罹患している対象者に対し、抗鬱作用が迅速に発現されるように5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む。
【0020】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病治療に反応する患者の割合を増加させる方法を含み、これは、精神病に罹患している対象者に対し、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べてより高い割合の患者に有効な作用が生じるように、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む。
【0021】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病剤の投与に伴う体重増加を軽減又は抑制する方法を含み、これは、抗精神病剤の投与に伴う体重増加のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含む。
【0022】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病治療中の患者コンプライアンスを高める方法を含み、これは、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含み、ここで同時投与の用量は、抗精神病剤の有効用量を単独投与するときのコンプライアンスと比較して患者コンプライアンスが高まる用量である。
【0023】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコースの上昇を軽減又は抑制する方法を含み、これは、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含む。
【0024】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇を軽減又は抑制し、且つ体重増加を軽減又は抑制する方法を含み、これは、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇及び体重増加のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含む。
【0025】
本明細書に開示される別の実施形態は、第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと第2の量の抗精神病剤とを含む医薬組成物を含み、ここで第1の量及び第2の量は、その組成物を投与すると、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な抗精神病作用がより速く実現される量である。ある実施形態において、第2の量は、抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である。ある実施形態において、第2の量は、抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である。
【0026】
本明細書に開示される別の実施形態は、第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと、第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニスト及び第2の量の抗精神病剤の投与についての使用説明書とを含むパッケージを含み、ここで第1の量及び第2の量は、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な抗精神病作用がより速く実現される量である。ある実施形態において、第2の量は、抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である。ある実施形態において、第2の量は、抗精神病剤を単独投与するときの有効用量未満である。
【0027】
上述した実施形態のいくつかにおいて、抗精神病剤は定型抗精神病薬である。ある実施形態において、抗精神病剤は非定型抗精神病薬である。ある実施形態において、抗精神病剤はD2アンタゴニストである。ある実施形態において、抗精神病剤はリスペリドンである。ある実施形態において、抗精神病剤はハロペリドールである。ある実施形態において、抗精神病剤は、フェノチアジン、フェニルブチルピペリジン、ジベンザピン(dibenzapine)、ベンゾイソオキシジル(benzisoxidil)、及びリチウム塩からなる群から選択される。ある実施形態において、フェノチアジンは、クロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、メソリダジン(Serentil(登録商標))、プロクロルペラジン(Compazine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril)、フルフェナジン(Prolixin(登録商標))、ペルフェナジン(Trilafon(登録商標))、及びトリフルオペラジン(Stelazine(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、フェニルブチルピペリジンは、ピモジド(Orap(登録商標))である。ある実施形態において、ジベンザピン(dibenzapine)は、クロザピン(Clozaril(登録商標))、ロキサピン(Loxitane(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroquel(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、ベンゾイソオキシジル(benzisoxidil)は、ジプラシドン(Geodon(登録商標))である。ある実施形態において、リチウム塩は、炭酸リチウムである。ある実施形態において、抗精神病剤は、アリピプラゾール(Abilify(登録商標))、Etrafon(登録商標)、ドロペリドール(Inapsine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril(登録商標))、チオチキセン(Navane(登録商標))、プロメタジン(Phenergan(登録商標))、メトクロプラミド(Reglan(登録商標))、クロルプロチキセン(Taractan(登録商標))、Triavil(登録商標)、モリンドン(Moban(登録商標))、セルチンドール(Serlect(登録商標))、ドロペリドール、アミスルプリド(Solian(登録商標))、メルペロン、パリペリドン(Invega(登録商標))、及びテトラベナジンからなる群から選択される。
【0028】
本明細書に記載される別の実施形態は、リスペリドンの投与により引き起こされる高プロラクチン血症を軽減又は抑制する方法を含み、これは、リスペリドンの投与に伴う高プロラクチン血症のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを1日6mg未満のリスペリドンと同時投与することを含む。
【0029】
上述した実施形態の任意のいくつかにおいて、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、式(I):
【化1】
の化合物である。
【0030】
他の実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、
【化2】
からなる群から選択される化合物である。
【0031】
さらに他の実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、アダタンセリン、アルタンセリン、ベナンセリン、ブロナンセリン、ブタンセリン、シナンセリン、エプリバンセリン、ファナンセリン、フリバンセリン、グレマンセリン、イフェランセリン、ケタンセリン、リダンセリン、ミアンセリン、ペランセリン、プルバンセリン、リタンセリン、セガンセリン、及びトロパンセリンからなる群から選択される。
【0032】
上述した方法の任意のいくつかにおいて、投与は18歳未満のヒトを対象とする。
【0033】
本明細書に記載される別の実施形態は、第1の医薬剤が第2の医薬剤の薬理学的特性を調節することを判断することと、第1の医薬剤の半減期が第2の医薬剤より長いことを判断することと、第1の医薬剤と第2の医薬剤とを患者に同時投与することとを含む治療方法を含む。ある実施形態において、薬理学的特性は受容体占有率である。ある実施形態において、薬理学的特性は、第2の医薬剤の最小有効用量である。ある実施形態において、第1の薬剤の半減期は、第2の薬剤の半減期より少なくとも約1.5倍長い。ある実施形態において、同時投与する結果、第2の薬剤は、第2の薬剤の連続投薬時間の少なくとも約50%にわたり有効なレベルで存在する。ある実施形態において、同時投与する結果、第2の薬剤は、第2の薬剤の連続投薬時間の実質的に全てにわたり有効なレベルで存在し、且つ、第1の薬剤が同じ投薬スケジュール及び投薬量により単独で投与されていたならば、連続投薬の実質的に全期間にわたって前記第2の薬剤が有効なレベルで存在することはなかったであろう。ある実施形態において、前記第2の治療剤が単独投与された場合に前記第2の治療剤が有効なレベルで存在し得る期間より長い期間にわたり、前記第2の薬理作用剤が有効なレベルで存在する結果となるような用量及び時間間隔で、第1の薬理作用剤及び前記第2の薬理作用剤が投与される。
【0034】
本明細書に記載される別の実施形態は、試験治療剤が、第1の半減期を有する治療剤との併用治療に適した候補であるかどうかを判断する方法を含み、これは、前記第1の半減期より長い第2の半減期を有する試験治療剤を確保することと、前記試験治療剤を前記治療剤との併用で投与することにより、単独で投与したときには効果を有しないレベルで前記治療剤が有効となり得るかどうかを評価することを含む。ある実施形態は、前記試験治療剤が、前記治療剤によって標的化される受容体の占有率レベルを亢進するかどうかを判断することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】単剤投与についての薬物濃度及び治療ウィンドウを表すグラフである。
【図1B】同様の半減期を有する2種の薬物の同時投与についての薬物濃度及び治療ウィンドウを表すグラフである。
【図1C】異なる半減期を有する2種の薬物の同時投与についての薬物濃度及び治療ウィンドウを表すグラフである。
【図2】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSSスコアの変化を表すグラフである。
【図3A】リスペリドン及びハロペリドールの単独での、及びピマバンセリンとの併用による治療に対する15日目のレスポンダー率を表す棒グラフである。
【図3B】リスペリドン及びハロペリドールの単独での、及びピマバンセリンとの併用による治療に対する43日目のレスポンダー率を表す棒グラフである。
【図4A】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSS陽性尺度の変化を表すグラフである。
【図4B】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSS陰性尺度の変化を表すグラフである。
【図5A】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSS精神病理尺度の変化を表すグラフである。
【図5B】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSS認知尺度の変化を表すグラフである。
【図6】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのCGI重症度尺度の変化を表すグラフである。
【図7A】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときの、体重増加が起こった被験者の百分率を表す棒グラフである。
【図7B】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときの被験者における体重増加平均値を表す棒グラフである。
【図8A】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときの男性におけるプロラクチン値の変化を表すグラフである。
【図8B】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときの女性におけるプロラクチン値の変化を表すグラフである。
【図9】リスペリドンを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのグルコース値を表す棒グラフである。
【図10】リスペリドン又はハロペリドールの単独での、又はピマバンセリンとの併用による治療に対するレスポンダー率を表すグラフである。
【図11】リスペリドンの単独での、又はピマバンセリンとの併用による治療に対するレスポンダー率を表すグラフである。
【図12A】ピマバンセリン、ハロペリドール、又はハロペリドールとの併用でピマバンセリンを投与したときのアンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおけるマウスの移動距離を表すグラフである。
【図12B】アンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、ハロペリドール、又はハロペリドールとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を表すグラフである。
【図13A】ジゾシルピン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、ハロペリドール、又はハロペリドールとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を表すグラフである。
【図13B】ハロペリドールをピマバンセリンとの併用で投与したときの相乗作用を実証するアイソボログラムを表すグラフである。
【図14A】ジゾシルピン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、リスペリドン、又はリスペリドンとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を表すグラフである。
【図14B】リスペリドンをピマバンセリンとの併用で投与したときの相乗作用を実証するアイソボログラムを表すグラフである。
【図15A】ピマバンセリン、アリピプラゾール、又はアリピプラゾールとの併用でピマバンセリンを投与したときのアンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおけるマウスの移動距離を示すグラフである。
【図15B】アンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、アリピプラゾール、又はアリピプラゾールとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を示すグラフである。
【図16A】ピマバンセリン、クエチアピン、又はクエチアピンとの併用でピマバンセリンを投与したときのアンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおけるマウスの移動距離を示すグラフである。
【図16B】アンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、クエチアピン、又はクエチアピンとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を示すグラフである。
【図17】クエチアピンをピマバンセリンとの併用で投与したときの相加性を実証するアイソボログラムを表すグラフである。
【図18】新規物体体認識アッセイにおいて、媒体、ピマバンセリン、リスペリドン、オランザピン、及びリスペリドン又はオランザピンとの併用でピマバンセリンを投与したときの新規物体体認識率を表す棒グラフである。
【図19】放射状迷路生体内マウス認知モデルにおいて、媒体、リスペリドン、ピマバンセリン、及びピマバンセリンとの併用でリスペリドンを投与したときの反復試験後の作業記憶エラーを表すグラフである。
【図20A】リスペリドン、ハロペリドール、又はピマバンセリンを投与したときの血清プロラクチン値を表すグラフである。
【図20B】リスペリドン又はハロペリドールとの併用でピマバンセリンを投与したときの血清プロラクチン値を表す棒グラフである。
【図21A】ピマバンセリンを投与したときのラットにおけるハロペリドール誘発性カタレプシーに関する用量反応曲線を表す。
【図21B】ピマバンセリンを投与したときのラットにおけるリスペリドン誘発性カタレプシーに関する用量反応曲線を表す。
【図22】リスペリドンを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのプロラクチン値の平均変化量を表すグラフである。
【図23】連日個別に投与したときのリスペリドン及びピマバンセリンの血漿濃度を表すグラフである。
【図24】リスペリドン及びピマバンセリンを連日個別に投与したときの5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図25】ピマバンセリンを1mgのリスペリドンとの併用で連日投与したときの5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図26A】3mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含まない5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図26B】3mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含まない5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図27A】3mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンについての5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図27B】3mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンについての5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図28A】3mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図28B】3mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図29A】1mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含まない5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図29B】1mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含まない5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図30A】1mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図30B】1mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図31A】1mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図31B】1mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ある実施形態は、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を含む。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、抗精神病剤の効力を亢進し、その一方で、抗精神病剤によって引き起こされる副作用を低下させる。いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、抗精神病剤のD2拮抗活性を調節することができると考えられる。具体的には、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、精神病的な作用(例えば、幻覚)に関与する脳の領域においてD2拮抗活性を亢進し、それと同時に有害な副作用(例えば、認知機能障害、鬱病、及び錐体外路副作用(extrapyrmaidal side effect))を引き起こす脳の領域においてD2拮抗活性を低減すると考えられる。これらの2つの作用、すなわち、運動制御又は認知機能に関連する脳の領域においてD2受容体遮断という望ましくない作用が低下し、それと同時に所望の抗精神病作用の有効性が増すことにより、結果として抗精神病効力が増加し、同時に副作用が減少し得る。
【0037】
「同時投与」又は「併用での」投与とは、2種以上の薬剤が患者の血流中に同時に存在し得ることを意味し、ここでそれらの薬剤が実際にいつ、又はどのように投与されるかには関しない。一実施形態において、薬剤は同時に投与される。かかる一実施形態において、併用投与は、薬剤を単一の剤形に組み合わせることによって達成される。別の実施形態において、薬剤は逐次的に投与される。一実施形態において、薬剤は同じ経路を介して投与される。例えば、ある実施形態では、双方の薬剤とも経口投与される。別の実施形態において、薬剤は異なる経路を介して投与される。例えば、一実施形態では、一方の薬剤が経口投与され、他方の薬剤が静脈内投与される。
【0038】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを使用することにより、抗精神病剤の用量を低減することが可能となる。この低減により、結果として抗精神病剤により引き起こされる副作用の重症度が解消又は軽減される。加えて、ある実施形態において、抗精神病剤の投薬量を低減することにより、上記のD2拮抗作用の有益な局所的調節を奏効させることが可能となる。いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、抗精神病剤の投薬量が過多であれば、結果としてD2拮抗活性が高くなり、ひいては上記のD2拮抗作用の局所的調節はそれほど大きい有効作用を有しないと考えられる。
【0039】
ある実施形態において、本明細書に記載される同時投与により、抗精神病薬が有効用量で単独投与されるときの、それによって引き起こされる1つ又は複数の副作用の重症度が解消又は軽減される。様々な実施形態において、副作用は、脳卒中、振戦、鎮静、胃腸障害、神経学的障害、死亡リスクの増加、脳血管イベント、運動障害、ジストニー、静坐不能、パーキンソン病様(parkinsoniam)運動障害、遅発性ジスキネジー、認知障害、プロラクチン血症、カタレプシー、精神病、神経遮断薬悪性症候群、心臓障害、呼吸器系障害、糖尿病、肝不全、自殺傾向、鎮静、起立性低血圧、窒息感、めまい感、頻脈、血液異常(トリグリセリド値の異常、コレステロール値の上昇、異常脂質血症、及び高血糖症を含む)、失神、痙攣発作、嚥下障害、持続勃起症、血栓性血小板減少性紫斑病、体温調節失調、不眠症、激越、不安、傾眠、攻撃的反応、頭痛、便秘、悪心、消化不良症、嘔吐、腹痛、唾液増加、歯痛、鼻炎、咳嗽、副鼻腔炎、咽頭炎、呼吸困難、背痛、胸痛、発熱、発疹、乾皮症、脂漏、上気道感染の増加、視覚異常、関節痛、感覚鈍麻、躁反応、集中力障害、口内乾燥症、疼痛、疲労、ざ瘡、皮膚そう痒症、筋肉痛、骨痛、高血圧症、下痢、錯乱、無力症、尿失禁、眠気、睡眠時間の増加、調節障害、動悸、勃起機能障害、射精機能障害、オルガスム(orgastic)障害、倦怠感、色素沈着の増加、食欲亢進、自動症、夢遊行動の増加、性欲の減退、神経過敏、鬱病、無関心、緊張病性反応、多幸症、リビドー亢進、健忘症、情動不安定(emotional liability)、悪夢、譫妄、あくび、構音障害、眩暈、昏迷、錯感覚、失語症、感覚減退、舌麻痺、下肢痙攣、斜頸、筋緊張低下、昏睡、片頭痛(migrain)、反射亢進、舞踏アテトーゼ、食欲不振症、鼓腸、口内炎、下血、痔核、胃炎、便失禁、おくび(erutation)、胃食道逆流症(gastroeophageal reflux)、胃腸炎、食道炎、舌変色、胆石症(choleithiasis)、舌浮腫、憩室炎、歯肉炎、変色糞、消化管出血、吐血、浮腫、悪寒、不快感、蒼白、腹部膨張、腹水、サルコイドーシス、潮紅、過換気、気管支攣縮、肺炎、喘鳴(tridor)、喘息、喀痰の増加、誤嚥、光線過敏症、発汗過多、ざ瘡、発汗減少、脱毛症、角質増殖症、皮膚剥脱、水疱性発疹、皮膚潰瘍、乾癬の憎悪、せつ腫症、疣贅、苔癬様皮膚炎、多毛症、性器そう痒症、蕁麻疹、心室頻拍症、狭心症、心房期外収縮、T波逆転、心室期外収縮、ST鬱病、房室ブロック、心筋炎、調節異常、眼球乾燥症、複視、眼痛、眼瞼炎、光視症、羞明、流涙異常、低ナトリウム血症、クレアチンホスホキナーゼ増加、口渇、体重減少、血清鉄の減少、悪液質、脱水、低カリウム血症、低タンパク血症、高リン血症、高グリセリド血症、高尿酸血症、低血糖症、多尿、煩渇多飲症、血尿(hemturia)、排尿困難、尿閉、膀胱炎、腎不全、関節症、骨癒合症、滑液包炎、関節炎、月経過多、膣乾燥症、非産褥性乳汁分泌(nonpeurperal lactation)、無月経、女性乳房痛、白帯下、乳腺炎、月経困難症、女性会陰痛、中間期出血、膣出血、SGOT上昇、SGPT上昇、胆汁うっ滞性肝炎、胆嚢炎、胆石症(choleithiasis)、肝炎、肝細胞傷害、鼻出血、表在性静脈炎、血栓性静脈炎(thromboplebitis)、血小板減少症、耳鳴り、聴覚過敏、聴力低下、貧血、低色素性貧血、正球性貧血、顆粒球減少症、白血球増多、リンパ節症、白血球減少、ペルゲル・フエット核異常、女性化乳房、男性乳房痛、抗利尿ホルモン異常(antiduretic hormone disorder)、苦味、排尿障害、注視痙攣、歩行異常、不随意筋収縮、及び外傷増加からなる群から選択される。一実施形態において、副作用は体重増加である。一実施形態において、副作用は、18歳未満の小児に対する抗精神病薬の投与に関連する。一実施形態において、小児における副作用は、精神病、統合失調症、広汎性発達障害、自閉症、トゥレット症候群、行為障害、攻撃性、注意欠陥多動障害(例えば、ADD、ADHD)から選択される。ある実施形態において、小児では、体重増加、心律動障害、及び糖尿病の副作用が、より重篤である。
【0040】
ある実施形態において、本明細書に記載される同時投与は副作用が減少するため、抗精神病治療中の患者コンプライアンスの向上に用いることができる。
【0041】
ある実施形態において、抗精神病剤は最大下レベルで投与される。かかる様々な実施形態において、抗精神病剤の投薬量は、最高用量の約75%、60%、50%、40%、30%、20%、又は10%未満である。「最高用量」とは、薬剤を単独で投与したとき、それ以上用量を増やしても治療効果にいかなる有意な増加も得られない最小の用量を意味する。ある実施形態において、抗精神病剤は、抗精神病薬が単独で投与されるときのその有効用量未満の用量で投与される。様々な実施形態において、投薬量は有効用量の約75%、60%、50%、40%、30%、20%、又は10%未満である。「有効用量」とは、薬剤を単独で投与したとき、臨床的に妥当性のある治療効果を実現するために必要な最小の投薬量を意味する。
【0042】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与する結果、有効な作用が迅速に発現する。換言すれば、ある実施形態では、抗精神病剤を単独投与するときと比べて有効な活性がより速く実現される。様々な実施形態において、有効な活性の迅速な発現は、臨床的に妥当性のある治療効果が、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて、約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、130%、150%、200%、300%、400%、又は500%超、さらに速く実現されることにより実証される。ある実施形態において、有効な活性の迅速な発現は、抗精神病剤の有効用量による単独投与と比較したとき、特定の治療期間後に有効な作用を経験する患者の割合がより高いことによって実証される。様々な実施形態において、有効な作用を経験する患者の割合は、抗精神病剤の有効用量による単独投与と比較したとき、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、130%、150%、200%、300%、400%、又は500%超、増加する。ある実施形態において、特定の期間は2週間である。
【0043】
様々な実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いて、限定はされないが、統合失調症、統合失調性感情障害、躁病、鬱病(気分変調症、治療抵抗性鬱病、及び精神病に関連する鬱病を含む)、認知障害、攻撃性(衝動的攻撃性を含む)、パニック発作、強迫性障害、境界性人格障害、境界性障害、多重性発達障害(multiplex developmental disorder:MDD)、行動障害(加齢性認知症に関連する行動障害を含む)、精神病(パーキンソン病治療などの治療によって誘発されるか、又は心的外傷後ストレス障害に関連した、認知症に関連する精神病、パーキンソン病に関連する精神病、アルツハイマー病に関連する精神病を含む)、自殺傾向、双極性障害、睡眠障害(睡眠持続障害不眠症、慢性不眠症、一過性不眠症、及び睡眠時周期的四肢運動(PLMS)を含む)、依存症(薬物又はアルコール依存症、オピオイド依存症、及びニコチン中毒を含む)、注意欠陥多動障害(ADHD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、トゥレット症候群、不安(全般性不安障害(GAD)を含む)、自閉症、ダウン症候群、学習障害、心身症、アルコール離脱症、癲癇、疼痛(慢性疼痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、糖尿病性末梢神経障害、線維筋痛症、帯状疱疹後神経痛、及び反射性交感神経性ジストロフィーを含む)、低グルタミン酸作動性(hypoglutamatergia)に関連する障害(統合失調症、小児自閉症、及び認知症を含む)、及びセロトニン症候群を含む精神神経障害の症状が、治療、予防、又は改善される。
【0044】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いて、限定はされないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳萎縮症(sphinocerebellar atrophy)、前頭側頭型認知症、核上性麻痺、又はレビー小体認知症を含む神経変性障害の症状が、治療、予防、又は改善される。
【0045】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いて、限定はされないが、ジスキネジー(パーキンソン病の治療によって誘発されるものなど)、動作緩慢、硬直、精神運動の緩慢化、チック、静坐不能(神経遮断薬又はSSRI薬剤によって誘発されるものなど)、フリードリッヒ失調症、マシャド・ジョセフ病、ジストニー、振戦、下肢静止不能症候群、又はミオクローヌスを含む錐体外路障害の症状が、治療、予防、又は改善される。
【0046】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いて、化学療法によって誘発された嘔吐、虚弱、オン・オフ現象、インスリン非依存性真性糖尿病、メタボリックシンドローム、自己免疫障害(ループス及び多発性硬化症を含む)、敗血症、眼圧の上昇、緑内障、レチナール疾患(加齢性黄斑変性症を含む)、シャルル・ボネ症候群、物質乱用、睡眠時無呼吸、膵炎(pancreatis)、食欲不振症、過食症、アルコール中毒に関連する障害、脳血管障害、筋萎縮性側索硬化症、AIDS関連認知症、外傷性脳損傷又は脊髄損傷、耳鳴り、閉経期症状(のぼせなど)、性機能障害(女性性機能障害、女性性覚醒機能不全、性的欲求低下障害、リビドー減退、疼痛、嫌悪、女性オルガスム障害、及び射精障害を含む)、男性低妊孕性、低精子運動能、脱毛又は菲薄化、失禁、痔核、片頭痛、高血圧症、血栓症(心筋梗塞、脳卒中、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、及び末梢血管疾患に関連する血栓症を含む)、ホルモン活性の異常(異常レベルのACTH、コルチコステロン、レンニン、又はプロラクチンなど)、ホルモン障害(クッシング病、アジソン病、及び高プロラクチン血症を含む)、下垂体腫瘍(プロラクチノーマを含む)、下垂体腫瘍に関連する副作用(高プロラクチン血症、不育症、月経の変化、無月経、乳汁漏出症、リビドー消失、腟乾燥、骨粗鬆症、インポテンス、頭痛、失明、及び複視を含む)、血管痙攣、虚血、心不整脈、心不全、喘息、気腫、又は食欲障害の症状が、治療、予防、又は改善される。
【0047】
ある実施形態において、同時投与は、精神病を治療、予防、又は改善するために用いられる。精神病の機能的原因としては、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病、双極性障害、重症の臨床的鬱病、重症の心理社会的ストレス、断眠、神経障害(脳腫瘍、レビー小体を伴う認知症、多発性硬化症、及びサルコイドーシスを含む)、電解質障害(低カルシウム血症、高ナトリウム血症、低ナトリウム血症(hyonatremia)、低カリウム血症(hyopkalemia)、低マグネシウム血症、高マグネシウム血症、高カルシウム血症、低リン血症、及び低血糖症を含む)、ループス、AIDS、ハンセン病、マラリア、流感、ムンプス、向精神薬中毒症又は離脱症状(アルコール、バルビツール酸系薬、ベンゾジゼペイン(benzodizepeine)、抗コリン薬、アトロピン、スコポラミン、チョウセンアサガオ、抗ヒスタミン剤、コカイン、アンフェタミン、並びに、大麻、LSD、シロシビン、メスカリン、MDMA、及びPCPを含む幻覚剤を含む)を挙げることができる。精神病としては、妄想、幻覚、解体した会話、解体した行動、現実の著しい歪曲化、知能障害、情動反応障害、意識水準の変動、運動協調性低下、単純な知的作業の実施不能、人物、場所又は時間に対する失見当識、錯乱、又は記憶障害などの症状を挙げることができる。一実施形態において、患者は精神病の急性増悪を経験しているところである。本明細書に記載される特定の併用による迅速な発現特性は、精神病の急性増悪の治療に特に有利である。ある実施形態において、その併用は、統合失調症、具体的には、統合失調症に関連する精神病を治療又は改善するために用いられる。一実施形態において、患者は、それ以前に抗精神病治療に対し反応を示している。一実施形態において、患者は、中等度の精神病理を示す。
【0048】
一実施形態において、同時投与は鬱病の治療に用いられる。一実施形態において、同時投与する結果、典型的な抗鬱薬(例えば、SSRI)において認められる活性の発現と比較して、抗鬱活性が迅速に発現する。様々な実施形態において、有効な抗鬱活性は、約8週間、6週間、4週間、又は2週間未満で実現される。
【0049】
多くの抗精神病剤が、血清グルコース値を上昇させる。意外にも、5−HT2Aインバースアゴニストをかかる抗精神病薬と併用する結果、血清グルコースの上昇が減り、その一方で効力は維持されることが発見された。従って、様々な実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いると、抗精神病剤の投与に関連した血清グルコース上昇が抑制又は軽減される。
【0050】
また、多くの抗精神病剤が体重増加も引き起こす。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いると、抗精神病剤の投与に関連する体重増加の亢進が抑制又は軽減される。
【0051】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、5−HT2A受容体に対し選択的である。「選択的」とは、5−HT2A受容体からの所望の反応を生じさせるのに十分な量の化合物が、他の特定の受容体のタイプ、サブタイプ、クラス、又はサブクラスの活性にはほとんど又は全く効果を有しないことを意味する。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、5−HT2A受容体のシグナル伝達が強力に、又は完全に阻害される濃度では、他のセロトニン受容体(5−HT 1A、1B、1D、1E、1F、2B、2C、4A、6、及び7)とそれほど強く相互作用しない。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、ドパミン作動性受容体、ヒスタミン作動性受容体、アドレナリン作動性受容体及びムスカリン受容体などの他のモノアミン結合受容体に関して選択的である。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、D2受容体においてほとんど又は全く活性を有しない。
【0052】
様々な実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、アダタンセリン塩酸塩、アルタンセリン酒石酸塩、ベナンセリン塩酸塩、ブロナンセリン、ブタンセリン、シナンセリン塩酸塩、エプリバンセリン、ファナンセリン、フリバンセリン、グレマンセリン、イフェランセリン、ケタンセリン、リダンセリン、ミアンセリン塩酸塩、ペランセリン塩酸塩、プルバンセリン、リタンセリン、セガンセリン、トロパンセリン塩酸塩、イロペリドン、セルチンドール、EMR−62218、Org−5222、ゾテピン、アセナピン、オカペリドン、APD125、及びAVE8488からなる群から選択される。
【0053】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、米国特許第6,756,393号明細書;同第6,911,452号明細書;又は同第6,358,698号明細書又は米国特許出願公開第2004−0106600号明細書(これらは全て、全体として参照により本明細書に援用される)に開示される化合物から選択される。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、以下の構造又はプロドラッグ、代謝産物、水和物、溶媒和物、多形、及びこれらの薬学的に許容可能な塩のなかの1つから選択される。
【化3】
【0054】
一実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、ピマバンセリン又はプロドラッグ、代謝産物、水和物、溶媒和物、多形、及びこれらの薬学的に許容可能な塩である。ピマバンセリンは、N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N−(4−フルオロフェニルメチル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド、N−[(4−フルオロフェニル)メチル]−N−(1−メチル−4−ピペリジニル)−N’−[[4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]メチル]−尿素、1−(4−フルオロベンジル)−1−(1−メチルピペリジン−4−イル)−3−[4−(2−メチルプロポキシ)ベンジル]尿素、又はACP−103としても知られ、式(I):
【化4】
の構造を有する。
【0055】
ピマバンセリンは、様々な塩及び結晶形態で得ることができる。例示的な塩としては、酒石酸塩、ヘミ酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、及びエジシル酸塩(エタンジスルホン酸塩)が挙げられる。特に前述のイオンを含むピマバンセリン塩が、2005年9月26日出願の「SALTS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND THEIR PREPARATION」と題される米国特許出願公開第2006−0111399号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。酒石酸塩のいくつかの結晶形態は、A型、B型、C型、D型、E型及びF型結晶と称され、2006年9月26日出願の「SYNTHESIS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND ITS TARTRATE SALT AND CRYSTALLINE FORMS」と題される米国特許出願公開第2006−0106063号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。ある実施形態において、ピマバンセリンの酒石酸塩の結晶形態はA型である。別の実施形態において、ピマバンセリンの酒石酸塩の結晶形態はC型である。ピマバンセリン(例えば酒石酸塩を含むもの)は、「PHARMACEUTICAL FORMULATIONS OF PIMAVANSERIN」と各々題される2007年5月15日出願の米国特許出願公開第2007−0260064号明細書及び2007年5月15日出願の米国特許出願公開第2007−0264330号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)にさらに詳細に記載されるように、錠剤として製剤化され得る。
【0056】
「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される薬剤を指す。プロドラッグは、ある状況下では親薬物より投与が容易であり得るため、多くの場合に有用である。例えば、プロドラッグは経口投与によるバイオアベイラビリティを有し得るのに対し、親薬物はそれを有しない。プロドラッグはまた、医薬組成物中における溶解度が親薬物を上回る高さであり得る。プロドラッグの例としては、限定なしに、水溶性であることが移動度について不利となる細胞膜を通じた送達を促進するためエステル(「プロドラッグ」)として投与され、その後、水溶性が有利となる細胞内に入ると、代謝的に加水分解されて活性体であるカルボン酸となる化合物を挙げることができる。プロドラッグの別の例としては、酸性基に結合した短鎖ペプチド(ポリアミノ酸)を挙げることができ、この場合ペプチドが代謝されて活性部分が出現する。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び調製についての従来の手順は、例えば、Design of Prodrugs(ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985)(本明細書によって全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0057】
代謝産物としては、親化合物を生物学的環境の中に導入すると産生される活性種が挙げられる。
【0058】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、投与対象の生体に対して著しい刺激作用を引き起こすことがなく、且つ化合物の生物活性及び特性が消失することのない化合物の塩を指す。ある実施形態において、塩は化合物の酸付加塩である。薬学的塩は、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸又は臭化水素酸)、硫酸、硝酸、及びリン酸などの無機酸と化合物を反応させることによって得ることができる。薬学的塩はまた、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸又はスルホン酸、例えば、酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸又はナフタレンスルホン酸などの有機酸と化合物を反応させることによって得ることもできる。薬学的塩はまた、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩などの塩を形成する塩基、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C1〜C7アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどの有機塩基の塩、並びにアルギニン、リジンなどのアミノ酸を伴う塩などと化合物を反応させることによって得ることもできる。
【0059】
医薬製剤の製造に医薬賦形剤と塩形態の活性成分との均質混合が関わる場合、非塩基性の医薬賦形剤、すなわち、酸性又は中性の賦形剤を使用することが望ましいこともある。
【0060】
ピマバンセリンは、モノアミン受容体、具体的にはセロトニン受容体において活性を呈し、特に5−HT2A受容体においてインバースアゴニストとして作用する。この化合物は、細胞に基づく生体内機能アッセイを用いるとともに、放射性リガンド結合アッセイを用いると、5HT2A受容体においてインバースアゴニスト(及び競合アンタゴニスト)として高い効力を示す。この化合物がインバースアゴニスト(及び競合アンタゴニスト)として5−HT2C受容体で呈する効力は、細胞に基づく生体内機能アッセイを用いると、及び放射性リガンド結合アッセイにおいてより低い。この化合物は、ドパミン受容体サブタイプにおける活性を欠いている。既存の非定型抗精神病薬とは異なり、ピマバンセリンは、他の抗精神病薬のいくつかの用量制限的な副作用に関与している様々な他の標的に対する有意な効力を有しない。例えば、クロザピン及びオランザピンとは異なり、ピマバンセリンは、鎮静及び潜在的に体重増加を媒介するムスカリン受容体及びヒスタミン作動性受容体において有意な効力を有しない。この化合物はまた、心血管の副作用に寄与し得るクロザピン、オランザピン、リスペリドン、及びジプラシドンのα−アドレナリン作動性拮抗活性を欠いている。さらに、この化合物は、胃腸機能及び心筋発達を制御する5HT2B受容体における効力を欠いている。
【0061】
ピマバンセリンは、ラットにおけるDOI((±)−2,5−ジメトキシ−4−ヨードアンフェタミン、セロトニン作動薬)誘発性の頭部攣縮などの抗精神病活性及びN−メチル−D−アスパラギン酸アンタゴニストMK−801によって誘発されたマウスにおける多活動の減弱を予測すると思われる数多くのモデルにおいて活性を有する。この化合物は、これらのモデルにおいて、3及び10mg/kgの経口用量で有効であった。統合失調症者が示すものと同様の、感覚運動のゲーティングが欠損したラットモデルでは、1及び3mg/SC1kgの用量のピマバンセリンが、DOIによって誘発されたゲーティングの欠損を強力に逆転させた。ピマバンセリンはまた、32mg/kgまでの腹腔内用量では、マウスの単純な自動形成反応の学習を混乱させることもなかった。ピマバンセリンの薬理学的プロファイルは、それがこのクラスの他の化合物に一般的な副作用なしに、抗精神病剤として有効であり得ることを示唆している。このように、ピマバンセリンは統合失調症の対象者の治療に用いられるとき、抗精神病活性を有し得る。
【0062】
ピマバンセリンは、以下に記載される方法か、又はそれらを改良した方法によって合成され得る。方法論的な改良手段としては、特に、温度、溶媒、試薬等の改良が挙げられる。
【0063】
以下に例示される合成の第1のステップは、酢酸、NaBH3CN、及びメタノールの存在下に行われ、式(II)の化合物が生成される:
【化5】
【0064】
式(IV)の化合物は、式(III)の化合物を、約80℃のジメチルホルムアミド(DMF)中で臭化イソブチル及び炭酸カリウムにより処理することによって合成され得る:
【化6】
【0065】
式(IV)の化合物は、メタノール/水中で水酸化カリウムと反応させることによって式(V)の化合物に変換され得る:
【化7】
【0066】
式(V)の化合物をテトラヒドロフラン(THF)中でジフェニルホスホニルアジド(DPPA)及びプロトンスポンジにより加熱還流すると、式(VI)の化合物が生成される:
【化8】
【0067】
最後に、式(II)の化合物を式(VI)の化合物と塩化メチレン中で反応させると、式(I)の化合物が生成される:
【化9】
【0068】
5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと同時投与され得る好適な抗精神病剤の非限定的な例としては、フェノチアジン、フェニルブチルピペリジン、ジベンザピン(dibenzapine)、ベンゾイソオキシジル(benzisoxidil)、及びリチウム塩が挙げられる。ある実施形態において、フェノチアジンは、クロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、メソリダジン(Serentil(登録商標))、プロクロルペラジン(Compazine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril)、フルフェナジン(Prolixin(登録商標))、ペルフェナジン(Trilafon(登録商標))、及びトリフルオペラジン(Stelazine(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、フェニルブチルピペリジンは、ハロペリドール(Haldol(登録商標))及びピモジド(Orap(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、ジベンザピン(dibenzapine)は、クロザピン(Clozaril(登録商標))、ロキサピン(Loxitane(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroquel(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、ベンゾイソオキシジル(benzisoxidil)は、リスペリドン(Risperdal(登録商標))及びジプラシドン(Geodon(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、リチウム塩は炭酸リチウムである。ある実施形態において、抗精神病剤は、アリピプラゾール(Abilify(登録商標))、Etrafon(登録商標)、ドロペリドール(Inapsine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril(登録商標))、チオチキセン(Navane(登録商標))、プロメタジン(Phenergan(登録商標))、メトクロプラミド(Reglan(登録商標))、クロルプロチキセン(Taractan(登録商標))、Triavil(登録商標)、モリンドン(Moban(登録商標))、セルチンドール(Serlect(登録商標))、ドロペリドール、アミスルプリド(Solian(登録商標))、メルペロン、パリペリドン(Invega(登録商標))、及びテトラベナジンからなる群から選択される。ある実施形態において、抗精神病薬はD2アンタゴニストである。ある実施形態において、抗精神病薬は定型抗精神病薬である。ある実施形態において、抗精神病薬は非定型抗精神病薬である。
【0069】
一実施形態において、ピマバンセリンは、抗精神病薬のハロペリドールと同時投与される。別の実施形態において、ピマバンセリンは、抗精神病薬のリスペリドンと同時投与される。様々な実施形態において、ハロペリドールの投与用量は、1日当たり約0.5mg、1mg、2mg、又は3mg未満である。様々な実施形態において、リスペリドンの投与用量は、1日当たり約0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、又は6mg未満である。一実施形態において、リスペリドンの投与用量は、1日当たり約2mgである。様々な実施形態において、ピマバンセリンの投与用量は、1日当たり約10mg〜約15mg、約15mg〜約20mg、約20mg〜約25mg、約25mg〜約30mg、約30mg〜約40mg、約40mg〜約50mg、約50mg〜約60mg、約60mg〜約70mg、又は約70mg〜約80mgである。一実施形態において、ピマバンセリンの投与用量は、1日当たり約20mgである。
【0070】
ある実施形態は、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤との双方を単一剤形に含む医薬組成物を含む。かかる医薬組成物は、生理学的に許容可能な表面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑化剤、懸濁剤、皮膜形成物質、及びコーティング助剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。治療用途に許容可能な担体又は希釈剤は、医薬分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。本医薬組成物には、防腐剤、安定剤、色素、甘味料、芳香剤、及び香味剤などが提供されてもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸及びパラオキシ安息香酸エステルが防腐剤として添加されてもよい。さらに、抗酸化剤及び懸濁剤が用いられてもよい。様々な実施形態において、アルコール、エステル、及び硫酸化脂肪族アルコールなどが表面活性剤として用いられてもよく;スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶化セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、及びカルボキシメチルセルロースカルシウムなどが賦形剤として用いられてもよく;ステアリン酸マグネシウム、タルク、及び硬化油などが平滑化剤として用いられてもよく;ヤシ油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、大豆が懸濁剤又は潤滑剤として用いられてもよく;セルロース又は糖などの炭水化物の誘導体としての酢酸フタル酸セルロース、又はポリビニルの誘導体としての酢酸メチル−メタクリル酸塩コポリマーが懸濁剤として用いられてもよく;及びフタル酸エステルなどの可塑剤が懸濁剤として用いられてもよい。
【0071】
用語「担体」は化合物の細胞又は組織への取り込みを促進する化学的化合物を定義する。例えばジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物の細胞又は組織への多くの有機化合物の取り込みを促進するため一般的に利用される担体である。
【0072】
用語「希釈剤」は水中に希釈される化学的化合物を定義し、目的の化合物を溶解すると同時に化合物の活性型を生物学的に安定化させるものである。緩衝液中に溶解される塩が当該技術分野における希釈剤として利用される。一般的に使用される緩衝液の一つはリン酸緩衝生理食塩水であり、これはそれがヒト血液の塩分条件を模倣しているためである。緩衝塩は溶液のpHを低濃度で制御できるため、化合物の生物活性を改変することはほとんどない。
【0073】
用語「生理学的に許容可能な」は、化合物の生物活性及び特性を抑止しない担体又は希釈剤を定義する。
【0074】
本明細書に記載の組成物の製剤及び投与の技法は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、Easton、ペンシルベニア州、第18版、1990年に見出され得る。
【0075】
投与の好適な経路としては、例えば、経口、経直腸、経粘膜、又は経腸投与;筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、ならびに髄腔内、直接に脳室内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内注射を含む、非経口送達が挙げられる。本化合物はまた、所定の速度で長期投与及び/又は定刻に間欠投与するための、デポー注射、浸透圧ポンプ、丸薬、及び経皮(電気輸送を含む)パッチなどの持効性又は徐放性剤形でも投与され得る。
【0076】
本発明の医薬組成物は、それ自体既知の方式、例えば、従来の混合、溶解、造粒、ドラジェ作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入又は打錠処理で製造されてもよい。
【0077】
本明細書に記載の使用向け医薬組成物は従って、薬学的に使用され得る、活性化合物の調製物への処理を促進する、賦形剤及び助剤を含んでなる1つ又は複数の生理学的に許容可能な担体を使用する従来の方式で調合されてもよい。適正な製剤は選択される投与経路に依存する。任意の周知の技法、担体、及び賦形剤が、好適なとおり、かつ当該技術分野において理解されるとおり使用され得る;例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、上記。
【0078】
注射剤は、液状の溶液若しくは懸濁液か、注射前に液状に溶解若しくは懸濁するのに適した固体形態か、又は乳剤のいずれかとして、従来の形態で調製され得る。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、及び塩酸システインなどである。加えて、必要に応じて注射用医薬組成物は、湿潤剤及びpH緩衝剤などの少量の非毒性補助物質を含有し得る。生理学的に適合性を有する緩衝液としては、限定はされないが、ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩緩衝液が挙げられる。必要に応じて、吸収促進調製剤(例えば、リポソーム)を利用してもよい。
【0079】
経粘膜投与については、透過すべき障壁に適した浸透剤が製剤中に使用され得る。
【0080】
例えばボーラス注射又は持続注入よる非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。加えて、適切な油性注射懸濁液として活性化合物の懸濁液が調製されてもよい。好適な脂溶性溶媒又は媒体としては、ゴマ油などの脂肪油、又は他の有機油、例えば、ダイズ油、グレープフルーツ油若しくはアーモンド油など、又は合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリド、又はリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランを含有してもよい。場合により、懸濁液はまた、好適な安定剤又は化合物の溶解度を増加させることで高度に濃縮された調製溶液を可能にする薬剤を含有してもよい。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、防腐剤が添加されたアンプル又は頻回用量容器で提供され得る。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又は乳剤といった形態をとってもよく、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合剤を含有してもよい。或いは、活性成分は、使用前に好適な媒体、例えば、無菌パイロジェンフリー水を用いて構成するための粉末形態であってもよい。
【0081】
経口投与用に、化合物は、活性化合物を当該技術分野において周知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることにより容易に調合され得る。かかる担体は、本発明の化合物が、処置されるべき患者による経口摂取用の錠剤、丸薬、ドラジェ、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして調合されることを可能にする。経口使用向け医薬調製物は、活性化合物をを固形賦形剤と組み合わせることにより、場合により結果として得られる混合物を粉砕すること、及び所望であれば、錠剤又はドラジェ核を得るべく好適な助剤の添加後、顆粒の混合物を処理することにより得られ得る。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、ショ糖、マンニトール、又はソルビトールを含む糖類;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物などの賦形剤である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩などの崩壊剤が添加されてもよい。ドラジェ核には好適なコーティングが提供される。本目的上、濃縮糖液が使用されてもよく、これは場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有し得る。染料又は色素が、識別用に、又は活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴づけるため、錠剤又はドラジェコーティングに添加されてもよい。この目的で濃縮糖液が使用されてもよく、これは場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有し得る。種々の組み合わせの活性化合物用量を識別又は特徴付けることができるよう、錠剤又はドラジェコーティングに色素又は顔料が添加されてもよい。
【0082】
経口的に使用され得る医薬調製物としては、ゼラチンで作製されるプッシュフィット型カプセル、ならびにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で作製されるソフトなシールドカプセルが挙げられる。プッシュフィット型カプセルは、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び場合により安定剤との混合物中に活性成分を含有できる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁されてもよい。加えて、安定剤が添加されてもよい。全ての経口投与用製剤はかかる投与に好適な投与量とされるべきである。
【0083】
口腔投与用に、組成物は従来の方式で調合される錠剤又はロゼンジの形態をとってもよい。
【0084】
吸入による投与用に、本発明に従う使用向け化合物は好都合にも加圧パック又は噴霧器からのエアロゾル噴霧剤提供物の形態で、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適な気体の使用を伴い送達される。加圧エアロゾルの場合、服用単位は定量を送達するためのバルブを設けることにより決定されてもよい。例えば、インへラー又は吸入器における使用向けゼラチンのカプセル及びカートリッジが、化合物の混合粉体及びラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤を含有して調合されてもよい。
【0085】
さらに本明細書には、眼内、鼻腔内、及び耳介内送達を含む使用について医薬分野で周知されている様々な医薬組成物が開示される。こうした使用に好適な浸透剤は、一般に当該技術分野において公知である。眼内送達用の医薬組成物としては、点眼剤などの水溶性形態の活性化合物の水性点眼液、又はジェランガム(Shedden et al.,Clin.Ther.,23(3):440−50(2001))若しくはハイドロゲル(Mayer et al.,Ophthalmologica,210(2):101−3(1996));眼軟膏;液体担体媒質中に懸濁される薬物含有ポリマー小粒子である微粒子などの眼科用懸濁剤(Joshi,A.,J.Ocul.Pharmacol.,10(1):29−45(1994))、脂溶性製剤(Alm et al.,Prog.Clin.Biol.Res.,312:447−58(1989))、及びマイクロスフェア(Mordenti,Toxicol.Sci.,52(1):101−6(1999));及び眼用インサートが挙げられる。上述の参考文献は、全て全体として参照により本明細書に援用される。かかる好適な医薬製剤は、ほとんどの場合に、且つ好ましくは、安定性及び快適性のため、無菌性、等張性で、且つ緩衝されて製剤化される。鼻腔内送達用の医薬組成物としては、正常な繊毛作用が確実に維持されるよう、多くの点で鼻汁を模倣して調製されることの多い滴下剤及び噴霧剤も挙げることができる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(全体として参照により本明細書に援用される)に開示され、且つ当業者に周知のとおり、好適な製剤は、ほとんどの場合に、且つ好ましくは、等張性で、僅かに緩衝されることで5.5〜6.5のpHを維持し、及びほとんどの場合に、且つ好ましくは、抗菌性防腐剤及び適当な薬物安定剤を含む。耳介内送達用の医薬製剤は、耳における局所適用向けの懸濁液及び軟膏を含む。かかる耳用製剤に一般的な溶媒としては、グリセリン及び水が挙げられる。
【0086】
化合物はまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を含有する坐薬又は停留浣腸などの直腸用組成物中に調合されてもよい。
【0087】
先述される製剤に加え、本化合物はデポー調製物として調合されてもよい。かかる長時間作用型製剤は、植え込みにより(例えば皮下又は筋肉内に)、又は筋肉内注射により投与されてもよい。従って、例えば、化合物は、好適なポリマー又は疎水性材料(例えば乳剤として許容可能な油)又はイオン交換樹脂を伴い、又は難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として調合されてもよい。
【0088】
疎水性化合物に好適な医薬担体は、ベンジルアルコール、無極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、及び水相を含んでなる共溶媒系であり得る。一般的に使用される共溶媒系はVPD共溶媒系であり、これは、無水エタノールにおける容量で作製される、3%w/vベンジルアルコール、8%w/vの無極性界面活性剤ポリソルベート(Polysorbate)80(商標)、及び65%w/vのポリエチレングリコール300の溶液である。当然ながら、共溶媒系の比率はその溶解度及び毒性特性を破壊することなく相当に変動し得る。さらに、共溶媒構成成分の同一性は変動し得る:例えば、ポリソルベート(POLYSORBATE)80(商標)の代わりに他の低毒性無極性界面活性剤が使用されてもよい;ポリエチレングリコールの画分サイズは変動し得る;他の生体適合性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンがポリエチレングリコールに代わってもよい;及び他の糖類又は多糖類がデキストロースに代わってもよい。
【0089】
或いは、疎水性医薬化合物用の他の送達系が用いられてもよい。リポソーム及び乳剤は、疎水性薬物用の送達媒体又は担体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒もまた用いられ得るが、通常はより高い毒性という代償がある。加えて、化合物は、治療剤を含有する疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスなどの徐放系を使用して送達されてもよい。様々な徐放材料が確立されているとともに当業者に周知である。徐放カプセルは、それらの化学的性質に応じ、数週間から100日間を超えるまで化合物を放出してもよい。治療用試薬の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のための追加的な方策が用いられてもよい。
【0090】
細胞内投与が意図される薬剤は、当業者に周知の技術を用いて投与され得る。例えば、かかる薬剤はリポソームに封入され得る。リポソームを形成する時点で水溶液中に存在する全ての分子が水性の内部に入り込む。リポソームの内容物は外部の微小環境から保護されるとともに、リポソームは細胞膜と融合することから、細胞質に効率的に送達される。リポソームは、組織特異抗体によってコーティングされ得る。リポソームは所望の器官を標的化し、その器官によって選択的に取り込まれる。或いは、小型の疎水性有機分子が直接細胞内に投与されてもよい。
【0091】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは長時間作用型であり、一方、同時投与される抗精神病薬は短時間作用型である。長時間作用型又は短時間作用型の特性は、それぞれ半減期が長い、及び短いことに起因し得る。多くの抗精神病薬はD2受容体における占有時間が比較的短い。同様の短時間作用型の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストをかかる抗精神病薬との併用で使用したならば、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストのD2活性に対する調節作用が減少すると同時にD2受容体占有率が低くなるため、結果として効力が低下する可能性があり、低用量の抗精神病薬が用いられる場合には問題は悪化する。対照的に、いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、抗精神病薬と比べて比較的長く受容体を占有する5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを使用する場合には、D2受容体占有率が最低であるときも、その期間にわたって高い5−HT2A受容体占有率が、及び結果的にD2調節作用が維持される。
【0092】
短時間作用型治療剤の治療ウィンドウを改善する長時間作用型の薬物を併用する利点は、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニスト以外のものとのD2アンタゴニストとの併用にも適用することができる。例えば、いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、多くの薬物の効力は、薬物の濃度範囲(治療ウィンドウ)に制限されると考えられる。図1Aは、単一の薬物を逐次投与したときの薬物濃度の例示的なグラフである。治療ウィンドウ(グラフにおいて影付き領域として図示される)は、下側では、治療利益を実現するために存在すべき薬物の最低レベルで区切られ、上側では、薬物がその血漿濃度を上回ると、毒性がいかなる治療利益にも勝るような薬物レベルで区切られている。狭い治療ウィンドウを有する一部の薬物について図示されるとおり、最適用量でさえ、血漿濃度は治療ウィンドウの上下双方の境界の外側に出る(薬物は毒性によって制限される効力を有する)。すなわち、いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、薬物濃度が特定の濃度に達すると、この薬物は毒性を生じるため、投与可能な最大投薬量は制限されると考えられる。従って、所与の半減期を有する単独投与薬物を連続投薬する期間中、薬物レベルは治療ウィンドウを繰り返し出たり入ったりし得るため、投薬の合間に、薬物濃度は薬物の効力に求められるレベル未満に下がり得る。
【0093】
いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、二次薬物は、効力に関連する血漿濃度を降下させることによって一次薬物の治療ウィンドウを大きくすることができると考えられる。しかしながら、二次薬物の半減期が短い場合、治療ウィンドウに対する有益な作用は一過性であり、一次薬剤の薬物濃度が最低になった時点で消えているであろう。従って、調節性薬剤の有益な効果は認められない可能性がある。図1Bは、一次薬物と二次薬物とが類似した半減期を有する場合の治療ウィンドウの拡張を例示する。一次薬物の薬物濃度のみが図示される。図1Bは、治療ウィンドウのサイズは大きくなったが、単独投与した一次薬物(図1Aを参照)と比較して、一次薬物が治療ウィンドウの範囲内にある時間はそれほど大幅には増えていないことを示している。例えば、一次薬物がD2受容体アンタゴニストであり、二次薬物が5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストであるとするならば、二次薬物のレベルがそれ自身の所要の効力レベルを上回ると、5−HT2Aアンタゴニスト又はインバースアゴニストはD2アンタゴニストの治療ウィンドウを増加させると考えられる。二次薬物は一次薬物の所要レベルを下げるが、これは、一次薬物のレベルが既に高いときにそうなる。結果的に、治療が有効性を有する時間の割合は、この手法によっては増えないであろうと考えられる。
【0094】
いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、二次薬物の半減期が一次薬物より長い場合、広がった治療ウィンドウが次の投薬まで維持され得ると考えられる。図1Cは、結果として得られた治療ウィンドウの持続的な増加を図示する。二次薬物が一次薬物の各投薬期間全体を通じて高いレベルで存在するため、治療ウィンドウの下限は一貫して低く留まる。従って、一次薬物は常に治療ウィンドウの範囲内にあり、ひいては治療が有効性を有する時間の割合が劇的に増加する。これは、一次薬物の用量を、その効力を維持しながら、その毒性作用が減少するレベルまで下げ得る可能性があることを含意する。
【0095】
従って、ある実施形態は、第1の薬剤を第2の薬剤と併用して投与することを含み、ここで第1の薬剤は半減期が第2の薬剤より長い。ある実施形態において、第1の薬剤の半減期は、第2の薬剤の半減期と比べて少なくとも約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0倍長いか、又は4.0倍よりさらに長い。ある実施形態において、第1の薬剤は第2の薬剤の活性を調節する。ある実施形態において、第1の薬剤及び第2の薬剤は、それらの相対的な半減期及び第1の薬剤の第2の薬剤に対する調節作用により、結果として第2の薬剤が、第2の薬剤の連続投薬時間の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、又は100%にわたって有効用量で存在するように選択される。
【0096】
ある実施形態は、上述の結果を実現するのに適当な医薬剤を選択することを含む。かかる実施形態のあるものは、インビトロアッセイ又はインビボ測定によるなどして、第1の医薬剤が第2の医薬剤の薬理学的特性を調節するかどうかを判断することを含む。一実施形態において、調節される薬理学的特性は受容体占有率である。例えば、第1の医薬剤は、特定の受容体の占有率を低下又は増加させ得る。一実施形態において、薬理学的特性は、第2の医薬剤が有効な作用を有する最小用量である。例えば、第1の医薬剤は、第2の医薬剤の最小有効用量を低下させ得る。ある実施形態は、第1の医薬剤の半減期が第2の医薬剤より長いかどうかを判断することをさらに含む。
【0097】
ある実施形態において、第1の薬剤は、D2アンタゴニスト活性を有する(例えば、ハロペリドール又はリスペリドン)。ある実施形態において、第2の薬剤は、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストである。例えば、ある実施形態において、第2の薬剤は、ピマバンセリン又は本明細書に記載される5−HT2Aインバースアゴニスト若しくはアンタゴニストのいずれかである。
【実施例】
【0098】
実施例1−統合失調症患者に投与されるハロペリドール及びリスペリドンの併用
精神病の急性増悪を伴う統合失調症被験者の多施設二重盲検無作為化試験を行った。DSM−IVにより統合失調症と診断され、且つ陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)におけるベースラインスコアが少なくとも65(重度の精神病理)で、精神病下位尺度の2項目でスコアが4以上の被験者の参加を得た。被験者は、ハロペリドール1日2mgをプラセボとの同時投与か、ハロペリドール1日2mgをピマバンセリン1日20mgとの同時投与か、リスペリドン1日2mgをプラセボとの同時投与か、リスペリドン1日2mgをピマバンセリン20mgとの同時投与か、又はリスペリドン1日6mgをプラセボとの同時投与で投与するように無作為に割り当てた。1日2mgのリスペリドンを投与される被験者は、各1mgの2回の投薬を受けた。1日6mgのリスペリドンを投与される被験者は、各3mgの2回の投薬を受けた。この試験は約9週間継続され、それ以前の抗精神病薬を排出させるためのスクリーニング期間(2〜14日間)と、それに続く6週間の能動的な所定の投薬が含まれた。2週間後、経過観察のため被験者に再び診療所に来診してもらった。被験者は、スクリーニング中及び治験の最初の14日間は入院患者として処置し、その後、各治験責任者(PI)の判断により治験を完了し、外来患者とした。被験者は、薬物を使用しない導入期間(ベースライン−1日目)後のスクリーニングにおいて、及びその後は定期的に、PANSS、臨床全般印象評価尺度−重症度(CGI−S)、統合失調症に関するカルガリー鬱病評価尺度(CDSS)、シンプソン・アンガス評価尺度(SAS)、及びバーンズアカシジア評価尺度(BAS)により評価した。
【0099】
18〜65歳の年齢が含まれる、統合失調症の臨床診断(DSM−IV 295.XX)を有する男性及び女性の被験者の参加を得た。被験者は急性精神病憎悪を患っており、少なくとも中等度の精神病理(PANSSにおける合計スコアが65以上)を有し、且つ以下の4つのPANSS項目、すなわち、妄想、幻覚様行動、概念の解体又は猜疑心のうち2つについて(2項目のうち少なくとも一方は、妄想又は幻覚様行動でなければならない)4以上のスコアを有する。被験者は、抗精神病治療に対し陽性反応の精神病憎悪の既往病歴を有し、且つ少なくとも3ヶ月の先行する抗精神病治療歴を有する。換言すれば、抗精神病治療に対して抗療性であった病歴を有するか、又は精神病の発現を初めて経験している最中の被験者は除外される。
【0100】
全ての被験者が、1日2回(BID)の試験薬剤の経口投薬を受けた。ハロペリドールを与えられた被験者は、1日合計2mgを午前の単回投薬で、それに続き午後にプラセボ投薬を受けた。1日2mgのリスペリドンを投与された被験者は、各1mgの2回の投薬を受けた。1日6mgのリスペリドンを投与された被験者は、各3mgの2回の投薬を受けた。ピマバンセリンを投与された被験者は、1日合計20mgを午前の単回投薬で、それに続き午後にプラセボ投薬を受けた。このように各被験者が、盲検方式で試験薬剤のBID投薬を受けた。
【0101】
被験者は、ベースライン/参加時(試験−1日目)と、その後は定期的に、治験の能動的な投薬部分全体にわたって(試験1、8、15、22、29、36、及び43日目)評価した。これらの臨床評価には、バイタルサイン、病歴及び検査(精神医学的及び簡易神経学的評価を含む)、ECG測定値、臨床評価尺度の適用、報告又は観察された有害事象を含む安全性評価、臨床化学(1、22及び36日目を除く)、並びに、ピマバンセリン、ハロペリドール、及びリスペリドン濃度用の血漿試料採取が含まれた。治験の能動投薬部分の終了後2週間経った57日目の最後の経過観察来診には、医学的評価、安全性臨床検査、並びに、ピマバンセリン、ハロペリドール、及びリスペリドン濃度用の血漿試料採取が含まれた。プロラクチン値、体重増加、及びグルコース値もまたモニタした。
【0102】
精神病及び陰性症状の臨床評価尺度は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)である。臨床全般印象評価尺度(CGI−S)は、臨床重症度の全般的な評価である。錐体外路症状(EPS)の尺度としては、シンプソン・アンガス評価尺度(SAS)及びバーンズアカシジア評価尺度(BAS)が挙げられる。最終的に、統合失調症用のカルガリー鬱病評価尺度(CDSS)が含まれた。
【0103】
PANSSは、30項目、7点の評価システムであり、簡易精神症状評価尺度から構成されたものである。これは、具体的に統合失調症の対象者における陽性症状、陰性症状、及び全般的な精神病理を測定するセクションを有する。PANSSは抗精神病薬治療の治験で広範に用いられており、かかる使用向けに公式に認められている。全ての尺度を、スクリーニング時、ベースライン時(試験−1日目)、並びに試験1日目及び57日目を除く各臨床評価のなかで適用した。
【0104】
CGI−Sは3つの下位尺度からなる。CGI−S(疾病の重症度)は、疾病の全般的な重症度を評価するように設計されている。CGI−Sは、ベースライン時(試験−1日目)、並びに試験1日目及び57日目を除く各臨床評価において適用した。
【0105】
SASは錐体外路運動の影響の評価基準である。この10項目、5点の尺度は、歩行障害、筋緊張、及び振戦を含む様々な錐体外路症状を評価するように設計されている。この尺度を、ベースライン時(試験−1日目)、並びに試験57日目を除く全ての臨床評価において適用した。
【0106】
BASは別の錐体外路運動の影響の評価基準である。BASは、特に抗精神病剤を使用することで起こる薬物誘発性の静坐不能を測定するように設計された。BASは、4項目の完全に固定された尺度である。3項目(すなわち、他覚的静坐不能、不穏状態の自覚、及び不穏に関連する自覚的苦痛)は4点尺度で評価し、静坐不能の全般的な臨床評価には6点尺度を用いる。この尺度を、ベースライン時(試験−1日目)、並びに試験57日目を除く全ての臨床評価において適用した。
【0107】
ピマバンセリンによる補助治療の情動症状に対する効果もまた評価した。CDSSは9項目、4点尺度であり、特に、精神病被験者のうつ症状を、こうした集団に認められる陽性、陰性、及び錐体外路症状は別にして測定するよう設計されたものである。これは、統合失調症の治療治験で広範に用いられており、かかる使用向けに認められている。この尺度を、スクリーニング時、並びに1日目及び57日目を除く全ての臨床評価において適用した。
【0108】
スクリーニング期間中(スクリーニングから試験−1日目まで)、全ての被験者が、必要と判断されときに認められた併用薬剤のみを服用する。少なくとも無作為化(−1日目)の2日前には、全ての前抗精神病薬、気分安定剤及び抗鬱治療剤を完全に排出させる。その後、調査対象の試験薬物は全て、治験期間中1日2回投与する。
【0109】
図2は、各処置群についてPANSSスコアのベースラインからの総変化(平均値±SE)を表すグラフである。ピマバンセリン/リスペリドンの併用は15日目以降、低用量のリスペリドン(2mg)と比較してPANSSスコアの有意に大幅な低下を生じた。図3Aは、15日目にPANSS合計が20%以上改善した被験者の百分率を表す棒グラフである。図3Bは、43日目における同じデータを示す。ピマバンセリン/リスペリドンに対する反応は、15日目には低用量(2mg)及び高用量(6mg)のリスペリドンと比べて有意に大きく(それぞれ、p=0.002及び0.013)、43日目には低用量のリスペリドンと比べて有意に大きかった(p=0.001)。
【0110】
図4Aは、PANSS陽性症状尺度のベースラインからの変化(平均値±SE)を表すグラフである。ピマバンセリン/リスペリドンの併用に対する反応は、15〜36日目に低用量のリスペリドンと比べて有意に大きかった(p<0.05)。この併用は、高用量のリスペリドンとの有意な差はなかった。図4Bは、PANSS陰性症状尺度の変化を示す。ピマバンセリン/リスペリドンの併用に対する反応は、15日目以降、低用量のリスペリドンと比べて有意に大きかった(p<0.05)。この併用は、高用量のリスペリドンとの有意な差はなかった。
【0111】
図5Aは、PANSS全般精神病理尺度のベースラインからの変化(平均値±SE)を表すグラフである。ピマバンセリン/リスペリドンの併用に対する反応は、低用量のリスペリドンと比べ、15日目以降の全ての時点において有意に大きかった(p<0.005)。この併用はまた、15日目及び20日目に高用量のリスペリドンと比較して変化が大きい傾向を示した。図5Bは、PANSS認知尺度の変化を示す。ピマバンセリン/リスペリドンの併用に対する反応は、低用量のリスペリドンと比べて36日目に有意に良好で(p<0.05)、22日目(p<0.05)及び43日目(p<0.07)には上回る傾向があった。
【0112】
図6は、CGI重症度尺度のベースラインからの変化(平均値±SE)を表すグラフである。ピマバンセリン/リスペリドンを併用するときの変化は、15〜43日目に低用量のリスペリドンと有意な差があった。この併用と高用量のリスペリドンとの間に有意な差は認められなかった。
【0113】
図7Aは、試験終了時に少なくとも7%の体重増加があった被験者の百分率を表す棒グラフである。この結果は、低用量(p=0.08)又は高用量(p=0.031)のリスペリドンのいずれかを単独で与えられた患者と比較して、ピマバンセリン/リスペリドンの併用を受けたときには、臨床的に有意な体重増加を起こした患者がより少なかったことを示している。図7Bは、ベースラインと比較した試験終了時の体重増加平均値を表す棒グラフである。ピマバンセリン/リスペリドンの併用を受けた患者は、高用量のリスペリドンと比べて体重増加が少なかった(p=0.05)。
【0114】
図8A及び8Bは、それぞれ男性及び女性についての、治療終了時におけるプロラクチン値のベースラインからの変化(平均値±SE;ng/mL)を表すグラフである。男性及び女性の双方とも、ピマバンセリン/リスペリドン併用の患者のプロラクチン値は、高用量のリスペリドンを与えられた患者と比べて有意に低かった(男性p=0.015、女性p=0.004)。
【0115】
図9は、グルコース値のベースラインからの変化を示す棒グラフである。この結果から、ピマバンセリン/リスペリドンの併用を受けた患者は、高用量のリスペリドンを与えられた患者と比べてグルコースの増加量が小さかった(p=0.024)ことが示された。
【0116】
試験の結果は、ピマバンセリンをハロペリドールと同時投与すると、ハロペリドールの単独投与と同様の効力を有する高度に有意な抗精神病効力が提供された(p<0.0001)ことを実証している。図10は、レスポンダー率を表すグラフであり、レスポンダーは、PANSSスコアの少なくとも20%の低下を生じた被験者として定義される。この結果は、併用処置によって効力がより速く発現する傾向があったことを示している。具体的には、治療開始後2週間目に、ハロペリドール/ピマバンセリン併用のレスポンダー率は、ハロペリドール単独のレスポンダー率より高かった。
【0117】
表1に示すとおり、ハロペリドール/ピマバンセリンの併用もまた、ハロペリドールを単独投与したときに認められる体重増加と比べて増加幅が小さくなる結果となった。
【0118】
【表1】
【0119】
ピマバンセリンのリスペリドンとの同時投与はまた、高度に有意な抗精神病効力ももたらした(p<0.0001)。2mgのリスペリドンの単独投与と比較したとき、効力の亢進が認められ(PANNSスコアの平均変化が16.6点に対して23.0点)、6mgのリスペリドンの単独投与と比較したとき、同程度の効力が認められた。この併用の効力は、精神病の陽性症状及び陰性症状の双方について認められた。この同時投与により、1日6mgのリスペリドンの単独投与と比較して、情動的な離脱症状、自発性及び会話の脈絡の欠如、異常なわざとらしさ及び不自然な姿勢、運動発達遅滞、非協力性、判断力及び洞察力の欠如、衝動調節の低下、並びに先入観の治療が改善される結果となった。
【0120】
図11は、リスペリドンを与えられた被験者についてのレスポンダー率を表すグラフであり、レスポンダーは、PANSSスコアの少なくとも20%の低下を生じた被験者として定義される。この結果は、併用処置により効力がより速く発現したことを示している。具体的には、治療開始後2週間目に、リスペリドン/ピマバンセリン併用のレスポンダー率は、リスペリドン単独(2mg及び6mgの双方の用量)のレスポンダー率より高かった。
【0121】
表2に示すとおり、リスペリドン/ピマバンセリンの併用は、6mgのリスペリドンを単独投与したときに認められる体重増加と比べて増加幅が小さくなる結果となった。差は、統計的有意差に近かった(p=0.0784)。
【0122】
【表2】
【0123】
結論:低用量のリスペリドンのピマバンセリンとの併用は、反応の発現時間及び臨床反応が良好な患者の割合の点で、低用量又は高用量のいずれのリスペリドン単独よりも優れていた。ハロペリドールの効力は、ピマバンセリンによっては強化されなかったが、これはおそらく、ハロペリドールは単独でD2受容体の占有率が最適となる結果を十分に実現するが、低用量のリスペリドンは単独では十分でないためである。低用量の非定型+ピマバンセリンを用いる利点は、代謝計測値及びEPSの副作用負荷の軽減、及び潜在的に、効力の拡大にまで及ぶ。
【0124】
結論は、以下のとおり要約される:
・ピマバンセリンは低用量のリスペリドンの精神病理に対する効力を強化した一方、副作用を軽減した。
・ピマバンセリンはハロペリドールの効力を強化しなかった。
・低用量のリスペリドンは、他の処置と比べて有効性が有意に低かった。
・ピマバンセリンは、PANSS合計、POS、NEG、全般、及びCGIに関し、2週間目以降の全ての時点において低用量のリスペリドンの効力を亢進した。
・ピマバンセリン/リスペリドンは、PANSS合計が20%以上低下した患者の割合に関して、高用量のリスペリドン及び低用量のリスペリドンと比べて15日目の有効性が高かった。
・ピマバンセリン/リスペリドンは、全ての時点において、あらゆる評価基準で高用量のリスペリドン、ハロペリドール及びピマバンセリン/ハロペリドールと同程度の有効性であった。
・ピマバンセリン/リスペリドンは、7%以上体重が増加した患者の割合が、高用量のリスペリドン又は低用量のリスペリドンと比べて低かった。
・血清グルコース及びプロラクチン値(PRL)は、高用量のリスペリドンと比べてピマバンセリン/リスペリドンで低かった;PRL値は、リスペリドン患者と比較してハロペリドール処置患者で低かった。
・個別のリスペリドン及びハロペリドール治療群と比較して、ピマバンセリン併用治療群で静坐不能(akathesia)が少ない傾向があった。
【0125】
実施例2−マウスにおける薬物誘発性多活動を抑制するためのハロペリドール及びリスペリドンのピマバンセリンとの併用
雄性ノンスイスアルビノ(NSA)マウス及びスプラーグドーリーラット(SD)ラット(Harlan,San Diego,CA)を、本研究の被験動物として供した。動物は、環境が制御された室内において、0600時に照明を入れる12/12明暗サイクルで飼育した。ラットは2匹の群ごとに飼育し、マウスは8匹の群ごとに飼育した。餌及び水は、実験手順の期間を除き、自由に摂取させた。試験時、マウスの体重は20〜30gであり、ラットの体重は275〜325gであった。
【0126】
アンフェタミン、ジゾシルピン(すなわち、MK−801)、及びハロペリドールは、Sigma(St.Louis,MO)から入手した。リスペリドンは、Toronto Research Chemicals(North York,ON,カナダ国)から入手した。ピマバンセリンは、ACADIA Pharmaceuticals,Inc.が合成したものであった。薬物はいずれも、体重10g当たり0.1mL又は体重1kg当たり1.0mLの量で、それぞれマウス及びラットに投与した。アンフェタミン、ジゾシルピン、及びACP−103に使用した媒体は生理食塩水であった。アンフェタミン及びジゾシルピンは腹腔内(ip)投与した。ハロペリドール及びリスペリドンに使用した媒体は、特記されない限り、生理食塩水中の10%Tween 80であった。ハロペリドール及びリスペリドンは、特に注記されない限り、皮下(sc)投与した。ピマバンセリンの用量は遊離塩基として表され、sc経路で投与した。
【0127】
アンフェタミン誘発性過剰歩行活性アッセイ:マウスにおいて、運動活性チャンバ(AccuScan Instruments,Columbus,OH)に入れる15分前にアンフェタミン(3mg/kg)を投与することにより過剰歩行を生じさせた。媒体又は一定用量のピマバンセリン(0.03mg/kg)の存在下のハロペリドールについて、用量反応曲線を作成した。媒体又はハロペリドールは、活性チャンバに入れる30分前に注射した。媒体又はピマバンセリンはハロペリドールより30分前(すなわち、活性チャンバに入る60分前)に与えた。マウスを活性チャンバに入れる直前に、水平ワイヤテスト(Vanover et al.,2004)を用いて運動失調及び筋肉の協調運動障害があるか判定した。チャンバに入れた後、15分間のセッションの間の合計移動距離(DT)をcm単位で測定した。用量反応曲線を求めるため、DTローデータを%MPIに変換した:%MPI=((薬物又は薬物の併用のDT−アンフェタミン対照のDT)/(媒体対照のDT−アンフェタミン対照のDT))×100。ID50値と、それに対応する95%CIを先述のとおり決定した。マウスは事前にチャンバに曝露されることはなく、各用量の組み合わせは別個のマウス群で試験した。
【0128】
ジゾシルピン誘発性過剰歩行活性アッセイ:マウスにおいて、運動活性チャンバに入れる15分前にジゾシルピン(0.3mg/kg)を投与することにより過剰歩行を生じさせた。ハロペリドール、リスペリドン及びピマバンセリンについて、用量反応曲線を作成した。活性チャンバに入れる30分前にハロペリドール又はリスペリドンを注射し、60分前にピマバンセリンを投与した。マウスを活性チャンバに入れる直前に、先述のとおり運動失調及び筋肉の協調運動障害があるか判定し、15分間のセッションの間のDTを測定した。ローデータを%MPIに変換し、ID50値と、それに対応する95%CIを先述のとおり決定した。マウスは事前にチャンバに曝露されることはなく、各用量の組み合わせは別個のマウス群で試験した。
【0129】
薬物相互作用試験:アイソボログラム解析を用いることにより、ジゾシルピン誘発性過剰歩行活性の抑制に対するハロペリドール又はリスペリドンのいずれかとピマバンセリンとの間の薬物相互作用の性質を決定した。この方法は、各個別薬剤の用量が等しい有効性となるように決定される用量の組み合わせの比較に基づく。今回の場合、用量反応曲線は、個別のID50計算値に基づく一定の用量比でハロペリドール又はリスペリドンのいずれかをピマバンセリンと同時投与した後に作成した。従って、別個の群に以下を与えた:ピマバンセリンID50+ハロペリドール又はリスペリドンID50;(ピマバンセリンID50+ハロペリドール又はリスペリドンID50)/2;(ピマバンセリンID50+ハロペリドール又はリスペリドンID50)/4;及び(ピマバンセリンID50+ハロペリドール又はリスペリドンID50)/8。併用した薬剤(すなわち、ピマバンセリン+ハロペリドール又はピマバンセリン+リスペリドン)について得られた用量反応曲線に基づき、各薬物併用のID50値及び95%CIを得た。
【0130】
マウスにおけるアンフェタミン誘発性過剰歩行の抑制に対するハロペリドール単独での、及びピマバンセリンとの併用での効果:図12Aは、様々な投与薬剤についての、ハロペリドール用量に応じた移動距離を示すグラフである。媒体対照(白抜き丸印)と比べて、アンフェタミン(白抜き三角印)ではマウスにおいて過剰歩行活性が有意に増加した(DTは媒体対照で得られた876±42cmから2764±230cmに増加)。0.03mg/kgの用量のピマバンセリン(黒丸印)は、アンフェタミンによって生じた過剰歩行を抑制できなかった。対照的に、ハロペリドール(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって生じた多活動を用量依存的に減弱した。しかしながら、ハロペリドールは、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、アンフェタミン誘発性過剰歩行活性の抑制の亢進を示した。
【0131】
図12Aに含まれるローデータを%MPIに変換して、図12Bに表される用量反応曲線を生成した。ハロペリドール(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって誘発された多活動の用量依存的な減弱を生じ、ID50計算値は0.012mg/kg(0.009〜0.016;95%CI)であった。しかしながら、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、ハロペリドールの用量反応曲線は約10倍左にシフトし、ID50計算値は0.0013mg/kg(0.0005〜0.0031;95%CI)であった。ピマバンセリンとハロペリドールとを併用すると、効力が9.5倍(3.8〜23.8;95%CI)シフトする結果となった。各データ点は最小n数が8に相当する。
【0132】
マウスにおけるジゾシルピン誘発性過剰歩行の抑制に対するハロペリドール及びピマバンセリンの単独及び併用での効果:図13Aは、ハロペリドール(白抜き四角印)、ピマバンセリン(黒四角印)、及びハロペリドールのピマバンセリンとの1:1の一定用量比での併用(黒丸印)についての、ジゾシルピン誘発性多活動の抑制に関する用量反応曲線を表すグラフである。各データ点は最小n数が16に相当する。予想されたとおり、ジゾシルピン処置ではDTが媒体対照で得られた792±40cmから2227±116cmに有意に増加した。ハロペリドール又はピマバンセリンのいずれかを投与すると、ジゾシルピン誘発性過剰歩行の用量依存的な減弱が誘発され、それぞれ、0.07mg/kg(0.063〜0.087;95%CI)及び0.09mg/kg(0.067〜0.12;95%CI)のID50値が実現した。このアッセイにおいてハロペリドールとピマバンセリンとが等効力であったことを考え、1:1の一定用量比(ハロペリドール:ACP−103)を、0.06+0.06mg/kgの近似ID50用量の組み合わせの分数で投与した(ID50/2=0.03+0.03mg/kg;ID50/4=0.015+0.015mg/kg;ID50/8=0.0075+0.0075mg/kg)。ハロペリドールとピマバンセリンとを同時投与すると、ジゾシルピンによって誘発された過剰歩行活性の用量依存的な減弱が生じ、103±6%の%MPIが実現した。
【0133】
等効力の比を用いてアイソボログラム解析を行い、その結果のアイソボログラムを図13Bに提示する。ピマバンセリン及びハロペリドールの単独投与時のID50(及び95%CI)計算値(白抜き四角印)が、それぞれx軸上及びy軸上にプロットされる。これらの2つの点を結ぶ破線は、理論上の相加ラインを表す。用量併用のID50実験値(黒丸印、B)は、ID50理論値(黒四角印、A)と比べて有意に低かったことから、相乗的な相互作用が示される。用量を混ぜたID50実験値は、ID50理論値と比べて有意に低く、値はそれぞれ0.04mg/kg(0.03〜0.05;95%CI)及び0.08mg/kg(0.68〜0.93;95%CI)であった。これらの結果は、50%のハロペリドール用量で効力が維持されることを示している。
【0134】
マウスにおけるジゾシルピン誘発性過剰歩行の抑制に対するリスペリドン及びピマバンセリンの単独及び併用での効果:図14Aは、リスペリドン(白抜き四角印)、ピマバンセリン(黒四角印)、及びリスペリドンのピマバンセリンとの1:18の一定用量比の併用(黒丸印)についての、ジゾシルピン誘発性多活動の抑制に関する用量反応曲線を表すグラフである。各データ点は最小n数が16に相当する。前の実験と同じく、ジゾシルピン処置では合計DTが媒体対照で得られた649±67cmから2020±223cmに有意に増加した。リスペリドン又はピマバンセリンのいずれかを投与すると、ジゾシルピン誘発性過剰歩行の用量依存的な減弱が誘発され、それぞれ0.0045mg/kg(0.003〜0.006;95%CI)及び0.09mg/kg(0.067〜0.12;95%CI)のID50値が実現した。このアッセイにおいて、ピマバンセリンと比べてリスペリドンの効力がより高かったことを考え、1:18の一定用量比(リスペリドン:ピマバンセリン)を0.005+0.09mg/kgの近似ID50用量の組み合わせの分数で投与した(ID50/2=0.0025+0.045mg/kg;ID50/4=0.00125+0.0225mg/kg;ID50/8=0.000625+0.01125mg/kg)。リスペリドンとピマバンセリンとを同時投与すると、ジゾシルピンによって誘発された過剰歩行活性の用量依存的な減弱が生じ、82±8%の%MPIが実現した。
【0135】
一定用量比を用いてアイソボログラム解析を行い、その結果のアイソボログラムを図14Bに提示する。ピマバンセリン及びリスペリドンの単独投与時のID50(及び95%CI)計算値(白抜き四角印)が、それぞれx軸上及びy軸上にプロットされる。これらの2点を結ぶ破線は、理論上の相加ラインを表す。用量併用のID50(黒丸印、B)はID50理論値(黒四角印、A)と比べて有意に低かったことから、相乗的な相互作用が示される。用量を混ぜたID50実験値は、ID50理論値と比べて有意に低く、それぞれ値が0.0032mg/kg(0.0007〜0.0058 95%CI)及び0.045mg/kg(0.035〜0.054;95%CI)であった。これらの結果は、1/3のリスペリドン用量で効力が維持されることを示している。
【0136】
結論:ピマバンセリンはアンフェタミン誘発性多活動を抑制しない用量でも、ハロペリドールと併用されると、アンフェタミン誘発性多活動に対するハロペリドールの効力は約10倍のシフトを生じた。さらに、ピマバンセリンは、ハロペリドールと、及びリスペリドンと相乗的に相互作用して、ジゾシルピン誘発性多活動を軽減した。ピマバンセリンの上記の相加作用は、ピマバンセリンの存在下ではこれらの薬剤の脳内曝露が大きく変わることはなかったため、ハロペリドール又はリスペリドンのいずれかの薬物動態を単純に変えただけでは実現されなかった。例えば、表3は、様々な投薬量のピマバンセリン及びハロペリドールの脳内レベルを示す。この結果は、半分のハロペリドール脳濃度との併用を用いて完全な効力を実現できることを示している。これらの試験で用いられる用量は、5−HT2A受容体の作用機構に整合的である。これらのデータは、5−HT2A受容体に対して高親和性を有する化合物であっても、抗精神病様活性を誘発する用量では、完全な5−HT2A受容体の占有は実現されそうにないことを示している。
【0137】
【表3】
【0138】
これらのモデルでは、5−HT2A受容体の遮断が抗精神病薬(APD)の作用を亢進する機序は分かっていないが、微量透析法及び他の試験がいくつかの可能性を示唆している。いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、1つの可能性は、5−HT2Aインバースアゴニストがドパミン(DA)伝達に対して局所的に特異的な効果を有し得ることである。先行研究は、DOIによりDA放出が増加し、側坐核(NAC)におけるアンフェタミン誘発性のDA放出が高まることを示しており、これは、5−HT2A受容体インバースアゴニストが、基礎的なDA放出ではなく、誘発された放出を調節する傾向が強いことを示唆している。アンフェタミン多活動を強力に阻害するハロペリドールは、ピマバンセリンによって遮断される効果であるNACにおけるDA放出を逆説的に増加させることが示されている。これらのデータは、ピマバンセリンが、NACにおいて誘発されたDA放出の直接的又は間接的な調節を介してハロペリドールの作用を強化し得ることを示唆する。別の可能性は、5−HT2Aインバースアゴニストが辺縁又は皮質構造におけるAPD誘発性のセロトニン作動性伝達の亢進に関連する「精神病促進」動因を遮断し得ることである。NMDAアンタゴニストの全身投与後、NAC及び内側前頭前皮質(mPFC)において細胞外DA及び5−HT濃度は上昇する。高用量のクロザピン及びオランザピンなどの非定型APDは、NACと比較してmPFCにおけるDA放出の選択的な上昇を生じさせるが、これはハロペリドールなどの定型APDには該当せず、これは非定型APDが統合失調症における認知をどのように改善するかを説明し得る特性である。機序が何であれ、これらの知見は、ピマバンセリンが抗精神病作用の予測モデルにおいてAPDに対する用量節約効果を有することを示している。
【0139】
結論として、上記のデータは、ピマバンセリンが、5−HT2A受容体拮抗作用又は逆作動を介して、抗精神病効力を維持するか、又は向上させると同時に、D2受容体拮抗作用によって媒介される望ましくない副作用の重症度を軽減することができるような有意な用量節約効果をもたらすことを示唆している。リスペリドンでの知見は、5−HT2A受容体に対して本質的に高親和性を有する非定型APDであっても、このピマバンセリンの用量節約利益が現れることを示唆している。これは、5−HT2A受容体に対して比較的高親和性のAPDであっても、臨床上の耐性用量では5−HT2A受容体遮断が完全には実現されないという臨床知見と一致する。
【0140】
実施例3−マウスにおける薬物誘発性多活動を抑制するためのアリピプラゾール及びクエチアピンのピマバンセリンとの併用
アリピプラゾール及びクエチアピン抗精神病薬を用いて、上記の実施例2のプロトコルを繰り返した。図15Aは、様々な投与薬剤についての、アリピプラゾール用量に応じた移動距離を示すグラフである。媒体対照(白抜き丸印)と比べて、アンフェタミン(白抜き三角印)はマウスにおける過剰歩行活性を有意に増加させる。0.03mg/kgの用量のピマバンセリン(黒丸印)は、アンフェタミンによって生じた過剰歩行を抑制できなかった。対照的に、アリピプラゾール(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって生じた多活動を用量依存的に減弱した。しかしながら、アリピプラゾールは、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、アンフェタミン誘発性過剰歩行活性の抑制の亢進を示した。
【0141】
図15Aに含まれるローデータを%MPIに変換して、図15Bに図示される用量反応曲線を生成した。アリピプラゾール(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって誘発された多活動の用量依存的な減弱を生じさせた。しかしながら、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、アリピプラゾールの用量反応曲線は左に大きくシフトした。
【0142】
図16Aは、様々な投与薬剤についての、クエチアピン用量に応じた移動距離を示すグラフである。媒体対照(白抜き丸印)と比べて、アンフェタミン(白抜き三角印)はマウスにおける過剰歩行活性を有意に増加させる。0.03mg/kgの用量のピマバンセリン(黒丸印)は、アンフェタミンによって生じた過剰歩行を抑制できなかった。対照的に、クエチアピン(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって生じた多活動を用量依存的に減弱した。しかしながら、クエチアピンは、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、アンフェタミン誘発性過剰歩行活性の抑制の亢進を示した。
【0143】
図16Aに含まれるローデータを%MPIに変換して、図16Bに図示される用量反応曲線を生成した。クエチアピン(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって誘発された多活動の用量依存的な減弱を生じさせた。しかしながら、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、クエチアピンの用量反応曲線は左にシフトした。
【0144】
マウスにおけるジゾシルピン誘発性過剰歩行の抑制に対するクエチアピン及びピマバンセリンの単独及び併用での効果もまた評価した。アイソボログラム解析を行い、その結果のアイソボログラムを図17に提示する。ピマバンセリン及びクエチアピンの単独投与時のID50(及び95%CI)計算値(白抜き四角印)が、それぞれx軸上及びy軸上にプロットされる。これらの2点を結ぶ破線は、理論上の相加ラインを表す。用量併用のID50実験値(黒四角印、B)はID50理論値(黒丸印、A)との有意な差を有しなかったことから、相加的な相互作用が示される。
【0145】
実施例4−抗精神病薬を投与されたマウスにおいて認知機能障害を逆転させるためのピマバンセリンの使用
生体内マウス認知モデルにおいて、様々な抗精神病薬を単独で、又はピマバンセリンとの併用でマウスに投与した。化合物は、訓練後1時間(動物が通常、新しい物体と見慣れた物体とを行動上識別する時点)、及び訓練後2時間(これらの動物が通常、それ以上物体の間の違いを識別しなくなる時点)でマウスに投与した。
【0146】
図18は、媒体、ピマバンセリン(0.3mg/kg)、リスペリドン、オランザピン、及びピマバンセリンをリスペリドン又はオランザピンとの併用で投与したときの、新規物体認識率の棒グラフである。この結果は、ピマバンセリンが、リスペリドン及びオランザピンによって引き起こされた新規物体の認識機能障害を逆転させることを示している。
【0147】
放射状迷路生体内マウス認知モデルにおいて、ピマバンセリンとリスペリドンとの併用もまた評価した。図19は、媒体、リスペリドン、ピマバンセリン(1mg/kg)、及びリスペリドンをピマバンセリンとの併用で投与したときの、反復試験後の作業記憶エラーを示すグラフである。この結果から、ピマバンセリンが、リスペリドン(ripseridone)によって誘発された認知障害を改善したことが示された。
【0148】
実施例5−ピマバンセリンを抗精神病薬と同時投与したときの他の副作用の減弱
プロラクチンアッセイ:ハロペリドール、リスペリドン及びピマバンセリンについて、血清プロラクチン値に関する用量反応曲線を生成した。ラットに媒体(100%ジメチルスルホキシド)、ハロペリドール又はリスペリドンを腹腔内投与し、一方、ピマバンセリン又は媒体(生理食塩水)を皮下投与した。媒体、ハロペリドール又はリスペリドンの投与後30分、又はピマバンセリンの投与後60分に血液試料を採取した。ラットはイソフルランで深麻酔をかけ、心穿刺により血液試料を採取してそのまま凝血させ、その後12,000rpmで10分間遠心にかけて分析用の血清を得た。市販の酵素免疫測定キット(ALPCO Diagnostics,Windham,NH)を用いて血清プロラクチン値を定量した。
【0149】
ハロペリドール又はリスペリドンとピマバンセリンとの間の血清プロラクチン値に対する潜在的な相互作用を調査するため、ラットに媒体又は様々な用量のピマバンセリンのいずれかを皮下投与し、その30分後、媒体又は一定用量のハロペリドール又はリスペリドンのいずれかを腹腔内投与した。媒体、ハロペリドール又はリスペリドンの投与後30分に(すなわち、媒体又はピマバンセリン投与後60分に)血液試料を採取した。試料採取の時点は、自身及び他の者(Liegeois et al.,2002b)の研究に基づき選択したもので、こうした研究は、30分が、それぞれリスペリドン又はハロペリドールの処置後にプロラクチンピーク値を検出できる時間と考えられることを示している。一定用量のハロペリドール(0.1mg/kg)及びリスペリドン(0.01mg/kg)を選択し、これは、それらの用量が、統計的に有意で、且つ再現性があり、しかし最大下のプロラクチン上昇を誘発し、従って潜在的な上昇並びに降下の検出を可能としたためであった。
【0150】
ラットにおける血清プロラクチン値に対するハロペリドール及びリスペリドンの単独及びピマバンセリンとの併用での効果:図20Aは、ラットにおいて、リスペリドン(黒四角印)、ハロペリドール(白抜き四角印)及びピマバンセリン(黒丸印)の様々な用量に従い得られたプロラクチン値の用量反応を表すグラフである。媒体処置対照で得られた血清プロラクチン値は、30分後及び60分後にそれぞれ24±3ng/mL及び31±3ng/mLであった。予測されたとおり、ハロペリドール処置後60分でラットは、媒体対照と比較して、血清プロラクチン値の用量に関係した増加を示した。同様に、リスペリドン処置後30分で、血清プロラクチン値の用量依存的な増加が認められた。対照的に、最高3mg/kgのピマバンセリン処置によっては、媒体処置対照と比較して、血清プロラクチン値は有意に上昇しなかった。むしろ、ピマバンセリンで処置されたラットは、媒体及び3mg/kgのピマバンセリンの後に得られた値が、それぞれ31±3ng/mL及び15±0ng/mLであったとおり、血清プロラクチン濃度の有意な低下を示した。3mg/kgのピマバンセリンで処置した全てのラットは、検出限界未満の血清プロラクチン濃度を有した;従って、15ng/mLの値を割り当てた。
【0151】
図20Bは、ラットにおいて、媒体又は様々な用量のピマバンセリンの存在下で一定用量のリスペリドン(0.01mg/kg;黒いバー)又はハロペリドール(0.1mg/kg;白抜きのバー)に従い得られた血清プロラクチン値を表す。各データ点は最小n数が12に相当する。**はp<0.01を示す;*はp<0.05を示す。ハロペリドールの用量により、血清プロラクチン値は31±3ng/mLから102±12ng/mLに有意に上昇した。同様に、リスペリドンも血清プロラクチン値が24±3ng/mLから102±12ng/mLに有意に上昇した。しかしながら、5−HT2A受容体の遮断と一致する用量のピマバンセリンの存在下では、ハロペリドール又はリスペリドンのいずれかによって誘発されたプロラクチン血症の大きさが有意に減弱された。
【0152】
カタレプシー評価:ラットに、前肢を水平なバー(直径10mm)の上に載せ;卓上の上方10cmに持ち上げられた姿勢をとらせ、カタレプシーの間、カタレプシー最高値が120秒間となるまで硬直発作を記録した。カタレプシー値(CV)は、リスペリドン又はハロペリドールの腹腔内投与後、それぞれ30分及び60分でとった。ピマバンセリンの用量は、ハロペリドール又はリスペリドンのいずれかの60分前に皮下投与した。用量反応曲線を生成するため、未加工CVを最高可能カタレプシーパーセンテージ(%MPC)に変換した:%MPC=((CV薬物又は薬物併用−CV媒体対照)/(120−CV媒体対照))×100。最高カタレプシーの50%を誘発する用量(CD50)と、それに対応する95%CIを、各化合物について先述のとおり確定した。各用量又は用量の組み合わせは別個のラット群で評価した。
【0153】
ラットにおけるハロペリドール及びリスペリドン誘発性カタレプシーに対するピマバンセリンの効果:図21Aは、ハロペリドール用量に応じた用量反応曲線を表す。予測されたとおり、ハロペリドール(白抜き丸印)は、ラットにおいてカタレプシー時間の用量依存的な増加を生じさせた。ピマバンセリンは、試験用量のいずれにおいてもハロペリドール誘発性カタレプシーを強化することはなかった。ピマバンセリンの1mg/kg(黒丸印)又は3mg/kg(白抜き四角印)のハロペリドールとの併用は、ハロペリドール誘発性カタレプシーを有意に変化させることなく、CD50値はそれぞれ0.24mg/kg(0.16〜0.36;95%CI)及び0.38mg/kg(0.24〜0.61;95%CI)であった。しかしながら、10mg/kgのピマバンセリンをハロペリドールに加えると(黒四角印)、CD50観測値が0.27mg/kg(0.19〜0.39;95%CI)から0.53mg/kg(0.31−0.91;95%CI)へと有意に増加したことから、カタレプシーの軽減が示された。
【0154】
図21Bは、リスペリドン用量に応じた用量反応曲線を表す。予測されたとおり、リスペリドン(白抜き丸印)は、ラットにおいてカタレプシー時間の用量依存的な増加を生じさせた。各データ点は最小n数が12に相当する。媒体処置は、6.8±0.9秒間の最高CVを誘発した。ピマバンセリンは、10mg/kgに至るまでの用量でカタレプシーを誘発せず、10.5±2.4秒間の最高CVを実現したが、この値は媒体処置対照で得られた値と有意な差がなかった。対照的に、ハロペリドール及びリスペリドンの双方とも、用量依存的且つ顕著なCVの増加を生じさせ、それぞれ0.27mg/kg(0.19〜0.39;95%CI)及び1.1mg/kg(0.79〜1.62;95%CI)のCD50値が得られた。ピマバンセリンは、あらゆる試験用量において、カタレプシーについてのリスペリドン用量反応曲線の用量依存的で有意な右側への移動をもたらした。1mg/kg(黒丸印)、3mg/kg(白抜き四角印)又は10mg/kg(黒四角印)のピマバンセリンの存在下におけるリスペリドンのCD50計算値は、それぞれ、2.0mg/kg(1.3〜3.0;95%CI)、4.4mg/kg(2.6〜7.5;95%CI)及び5.1mg/kg(3.2〜8.3;95%CI)であったことから、カタレプシーの軽減が示される。
【0155】
考察:D2受容体の拮抗作用は、実験的にも臨床的にも、強いプロラクチン血症を生じさせる。同様に、非定型APDのリスペリドンもまた、ヒトにおいてハロペリドールと同程度に重篤なプロラクチン血症を誘発することが示されている。本研究では、ハロペリドール及びリスペリドンが、双方とも血清プロラクチンの強い上昇を生じさせた一方、ピマバンセリン単独では血清プロラクチン値は上昇せず、実際のところ僅かに低下したことが実証された。重要なことに、ピマバンセリンは、これらのAPDによって生じた高プロラクチン血症を強化せず、むしろ減弱した。下垂体における5−HT2受容体の発現を支持する解剖学的エビデンスがあるにもかかわらず、優位なデータにより、5−HT2A受容体によって媒介されるプロラクチン分泌の調節が、視床下部のレベルで起こることが示唆されている。血液脳関門(BBB)の外側にある下垂体D2受容体は、プロラクチン分泌の持続的な抑制を及ぼす一方、視床下部における5−HT2A受容体は活性化することで、プロラクチン上昇をもたらすDA放出を抑制する。従って、純粋なD2アンタゴニストは下垂体で直接作用することによりプロラクチン血症を誘発するが、それに対し、高度に脳透過性のAPD、特に高い5−HT2A/D2親和性比を有するもの(すなわち、オランザピン及びクロザピン)は、顕著な高プロラクチン血症を誘発することはなく、これは、こうした薬物が視床下部において十分な5−HT2A受容体遮断を実現して、下垂体におけるD2受容体遮断の作用に拮抗するためである。これは、ラットにおいて最高2.5mg/kgの用量で、線条体と比較して下垂体のD2受容体を選択的に占有することが示されているリスペリドンに関しては決定的に重要である。リスペリドンが実際にBBBを上手く通過できないのであれば、下垂体のD2における直接的な作用が、BBBの内部での5−HT2A受容体遮断によって拮抗される可能性は低いため、この薬物のプロファイルは非定型APDよりもむしろ定型薬と一層整合的である。この見解は、DOIによって生じた頭部の攣縮を減弱するのに必要な容量以下の用量でリスペリドンがプロラクチンを上昇させることを示した本研究における所見と整合的である。さらに、ピマバンセリンをリスペリドンと併用することにより、BBB内部において、リスペリドン誘発性高プロラクチン血症に拮抗するのに十分なレベルの5−HT2A受容体占有率に達した。まとめると、これらのデータは、ラット又はヒトにおいて、有意なD2受容体の拮抗作用がないとき、BBB内部ではリスペリドンが5−HT2A受容体の最高占有率を実現しないと思われることを示している。高プロラクチン血症は性機能障害などの数々の合併症と相関を有し、性機能障害は、特に男性において、これらの薬剤のノンコンプライアンスの突出した原因であるため、これらの知見は有意な臨床的妥当性を有する。
【0156】
最後に、この研究から、ハロペリドール及びリスペリドンは双方とも用量依存的なカタレプシーを生じたが、ピマバンセリン単独では、10mg/kgほどの高さ、すなわちDOI頭部攣縮アッセイにおけるID50より50倍高い用量でも検出可能なカタレプシーが誘発されず、D2受容体に対する親和性の欠如と整合的であることが実証された。ピマバンセリンはハロペリドール及びリスペリドンの効力を強化したが、ピマバンセリンは明らかに、いずれの薬物によって生じたカタレプシーも強化しなかったことが実証された。代わりに、最大上の5−HT2A受容体占有率が予測され得る用量(すなわち、10mg/kg)のピマバンセリンで、ハロペリドール誘発性カタレプシーの小さいが有意な軽減が認められた。ピマバンセリンは、5−HT2Aに対し5−HT2Cを約50倍上回る選択性を示す。これは、ピマバンセリンによるカタレプシーの減弱が、そのより弱い5−HT2C受容体相互作用を動因とし得ることを示唆している。インビボデータに基づくと、ピマバンセリンの5−HT2A受容体に対する選択性は5−HT2C受容体に対する選択性の約50倍であり、これは先行文献のインビトロデータと一致している。ピマバンセリンはまた、リスペリドン誘発性カタレプシーの有意な減弱も生じるが、これは1mg/kg程の低い用量である。ピマバンセリンによりリスペリドン誘発性カタレプシーに対して示される明らかな効力のシフトは、線条体D2受容体の70%超を占有すると推定されるリスペリドンの用量において存在すると予想される過剰量の5−HT2Aアンタゴニストの機能と思われる。従って、これらの用量を併用したときに予測され得るような、最大5−HT2A受容体占有率をはるかに超過した系においては、ピマバンセリン、及びおそらくはリスペリドンのより弱い5−HT2C拮抗特性が顕在化する可能性が高い。
【0157】
実施例6−ピマバンセリンのリスペリドンとの同時投与におけるプロラクチン値
第II相統合失調症併用治療治験において、ピマバンセリンをリスペリドンとの併用で用いてプロラクチン値を計測し、リスペリドンの単独投与と比較した。図22のグラフに表されるとおり、ピマバンセリン+リスペリドン(2mg)による併用治療群の患者は、リスペリドン(6mg)+プラセボ治療群の患者と比較して、処置42日後のプロラクチン値が有意に低かった(p=0.0001)。
【0158】
実施例7−同時投与後のピマバンセリン及びリスペリドン定常状態血漿濃度並びに5−HT2A及びD2受容体占有率のシミュレーション
20mgのピマバンセリンを1日1回経口投与した後の血漿濃度−時間プロファイル
平均血漿濃度−時間データを1−コンパートメントモデル(一次入力、遅延時間なし及び一次排出)に適用することにより、シミュレーションの初期パラメータを求めた。50mgのピマバンセリンを14回目に経口投薬した後の頻回用量平均血漿濃度−時間データを当てはめた。モデルに基づき、表4に示される薬物動態パラメータを推定した。
【0159】
【表4】
【0160】
表4に提供される薬物動態パラメータは、先行研究で報告されているピマバンセリンの頻回経口投薬後に得られた薬物動態パラメータと良く一致した。1つの例外は経口クリアランスで、これについては、推定されたパラメータが先行研究で報告された値(25.2L/時間)と比較していくらか低い。
【0161】
20mgのピマバンセリンを1日1回経口投与した後のピマバンセリンの血漿濃度−時間プロファイルを、表5に提供される初期パラメータを使用してシミュレートした。ピマバンセリンの単独投与についてシミュレートしたプロファイルを図23に示す。
【0162】
【表5】
【0163】
5mgのリスペリドンを1日1回経口投与した後の血漿濃度−時間プロファイル
平均血漿濃度−時間データを2−コンパートメントモデル(一次入力、ミクロ定常、遅延時間なし及び一次排出)に適用することにより、シミュレーションの初期パラメータを求めた。4mgのリスペリドンの単回経口用量を投与した後に得られた平均血漿濃度−時間データを当てはめた。モデルに基づき、表6に示される薬物動態パラメータを推定した。
【0164】
【表6】
【0165】
表6に提供される薬物動態パラメータは、リスペリドンについて先行研究で報告されている薬物動態パラメータと適度に良く一致する。しかしながら、モデルによって推定された二次パラメータは、パラメータの変動係数により示されるとおり不十分であった。
【0166】
表7に提供される初期パラメータを用いて、5mgのリスペリドンを1日1回経口投与した後のリスペリドンの血漿濃度−時間プロファイルをシミュレートした。リスペリドンの単独投与についてシミュレートしたプロファイルを図23に示す。
【0167】
【表7】
【0168】
リスペリドンは半減期が、ピマバンセリンの57.3時間と比較して19.9時間と短いため、ピーク血漿濃度とトラフ血漿濃度との間の変動はリスペリドンの方が大きいと見られる。ピマバンセリンが定常状態濃度に達するのは、8日間に相当する約200時間後である。ピマバンセリンのCmin,SS及びCmax,SSは、それぞれ約27.2及び34.5ng/mLである。定常状態最高濃度に達するのは、投薬約4時間である。
【0169】
ピマバンセリン及びリスペリドンの血漿薬物動態からの、セロトニン5−HT2A及びドパミンD2受容体占有率の経時的なシミュレーション
式1、Φ=(CR/CR+Kd)×100を用いて(式中、CRは受容体の周辺の非結合薬物の濃度(nM)であり、Kdは解離定数(nM)である)、受容体占有率(Φ、%)を計算した。
【0170】
CRは、血漿中の非結合薬物濃度が等しいことが仮定され、これは、血漿と脳との間の平衡が速く、脳に分布する間に薬物の能動輸送が起きないことを意味する。次にCRは、式2、CR=fu×Cpl(t)(式中、fuは血漿中の薬物の遊離画分であり、Cpl(t)は時刻tにおける血漿濃度である)を用いて計算され得る。
【0171】
表7のパラメータ及び上記で求めたCpl(t)を用いて、ピマバンセリン及びリスペリドンの5HT2A及びD2受容体占有率を推定した。
【0172】
【表8】
【0173】
ピマバンセリン(20mg/24時間)及びリスペリドン(5mg/24時間)を別々に投与したときの受容体占有率−時間プロファイルを図24に示す。D2受容体及び5HT受容体の双方に作用するリスペリドンは、双方の受容体において高い占有率を実現した。リスペリドンより半減期の長いピマバンセリンが示した5HT受容体占有率の変動は、より小さかった。
【0174】
20mgのピマバンセリンの最初の経口投薬後、投薬後5時間で71%の5HT2A受容体占有率(tmax)に達した。対応するピマバンセリンの血漿濃度(Cmax)は8.6ng/mLである。ピマバンセリンの定常状態の5HT2A受容体占有率は、88〜91%を変動する。
【0175】
5mgのリスペリドンの最初の経口投薬後2.4時間における5HT2A受容体及びD2受容体の占有率計算値は、それぞれ98%及び96%である。対応するリスペリドンの血漿濃度は32.3ng/mLである。リスペリドンの定常状態のD2受容体占有率は、80%〜97%の範囲である。定常状態における5HT受容体の占有率は86%〜98%である。対応するリスペリドンの定常状態血漿濃度の最低値及び最高値は、4.9ng/mL及び36.6ng/mLである。
【0176】
ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のD2受容体及び5HT受容体の受容体占有率−時間プロファイルを図25に示す。ピマバンセリンの用量は、図24にあるとおり1日1回20mgに維持したが、リスペリドンの1日量は1日1回1mgまで減少させた。この結果は、D2受容体占有率が、より高用量のリスペリドンの単独投与と比較して有意に減少し(図24を参照)、一方、5HT受容体占有率は高レベルに維持されることを示している。これらの結果は、併用すると、5HTに関連する効力に影響を与えることなく、D2関連副作用の発生率の低下がもたらされ得ることを支持している。
【0177】
式1を用いてD2受容体占有率を計算した。式3:Φ=(CR1/(CR1+Kd5HT,1(1+CR2/Kd5HT,2))+(CR2/(CR2+Kd5HT,2(1+CR1/Kd5HT,1)))×100を用いて(式中、CR1、CR2、Kd5HT,1、Kd5HT,2は、それぞれ、ピマバンセリンの非結合濃度、リスペリドンの非結合濃度、ピマバンセリンの5HT2A受容体に対する解離定数及びリスペリドンの5HT2Aに対する解離定数である)、5HT受容体占有率を計算した。
【0178】
他のいくつかのリスペリドン用量もまた評価した。1日2回3mgのリスペリドン単独による治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図26Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図26Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回3mgに維持した。パリペリドンの受容体プロファイルに対する寄与は考慮に入れなかった。図26A及び図26Bは、1日2回3mgを投薬したときのリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により亢進されたことを示す。特に、半減期が短いピマバンセリンは長時間作用型であるため、併用では5HT受容体占有率の変動が減少した。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。
【0179】
1日2回3mgのリスペリドン単独による治療後のパリペリドン(リスペリドンの代謝産物)についてのD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図27Aに示す。リスペリドン用量は1日2回3mgに維持した。ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のパリペリドンについてのD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図27Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回3mgに維持した。受容体プロファイルに対するリスペリドン(risperdone)の寄与は考慮に入れなかった。図27A及び図27Bはさらに、1日2回3mgを投薬したときのリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により僅かに亢進したことを示す。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。
【0180】
リスペリドン及びパリペリドンの双方を考慮した1日2回3mgのリスペリドンによる治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図28Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図28Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回3mgに維持した。図28A及び図28Bはさらに、1日2回3mgを投薬したときのリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により僅かに亢進したことを示す。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。
【0181】
1日2回1mgのリスペリドン単独による治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図29Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図29Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回1mgに維持した。図29A及び図29Bについて、パリペリドンの受容体プロファイルに対する寄与は考慮に入れなかった。図29A及び図29Bは、1日2回1mgを投薬するリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により有意に亢進したことを示す。5HT受容体占有率の変動が併用では実質的に減少したことから、長時間作用型ピマバンセリンを短時間作用型リスペリドンと併用することの有益な効果が実証された。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。図26B(1日2回3mg用量のリスペリドンを示す)との比較から、D2受容体占有率の低下を伴う5HT受容体占有率のより有意な亢進が示される。
【0182】
1日2回1mgのリスペリドン単独による治療後のパリペリドンについてのD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図30Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のパリペリドンについてのD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図30Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回1mgに維持した。図30A及び図30Bについては、リスペリドン(risperdone)の受容体プロファイルに対する寄与は考慮に入れなかった。図30A及び図30Bは、1日2回1mgを投薬するリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により有意に亢進したことを示す。併用においては、5HT受容体占有率の変動の減少もまた認められた。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。図27B(1日2回3mg用量のリスペリドンを示す)との比較から、D2受容体占有率の低下を伴う5HT受容体占有率のより有意な亢進が示される。
【0183】
リスペリドン及びパリペリドンの双方を考慮した1日2回1mgの治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図31Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図31Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回1mgに維持した。図31A及び図31Bは、1日2回1mgを投薬するリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により有意に亢進されたことを示す。併用においては、5HT受容体占有率の変動の減少もまた認められた。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。図28B(1日2回3mg用量のリスペリドンを示す)との比較から、D2受容体占有率の低下を伴う5HT受容体占有率のより有意な亢進が示される。
【0184】
まとめると、図24〜図31Bは、ピマバンセリンと低用量のリスペリドンとの併用により、結果として低用量のリスペリドン単独治療と比較して5HT2A受容体の受容体占有率が亢進され、リスペリドンの用量が低いため、D2受容体占有率の低下を実現し得ることを実証している。従って、ピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療は、D2受容体の占有に起因する副作用を増加させることなく、抗精神病治療の効力を高めることができる。さらに、この結果は、長時間作用型薬物のピマバンセリンを短時間作用型薬物のリスペリドンと併用する結果、5−HT2A受容体占有率の変動が有意に小さくなり、投薬の合間も高レベルの占有率の維持が可能となることを実証している。
【0185】
本発明は、実施形態及び実施例を参照して説明されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく、数多くの様々な修正を加え得ることは理解されなければならない。従って、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年3月19日に出願された米国仮特許出願第60/895,735号明細書;2007年3月29日に出願された同第60/908,921号明細書;2007年12月10日に出願された同第61/012,771号明細書;及び2008年2月4日に出願された同第61/026,092号明細書の利益を主張し、これらの全ては表題が「COMBINATIONS OF N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N−(4−FLUOROPHENYLMETHYL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)WITH ANTIPSYCHOTICS」であり、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、化学及び医学の分野に関する。より詳細には、本発明のある実施形態は、5−HT2A受容体インバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病薬との同時投与に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
セロトニン、すなわち5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)は、哺乳動物の生体機能において重要な役割を果たす。中枢神経系では、5−HTは、睡眠、摂食、歩行運動、痛みの知覚、学習及び記憶、性行動、体温及び血圧の制御などの多様な行動及び反応に関わる重要な神経伝達物質及び神経調節物質である。脊柱では、セロトニンは求心性末梢侵害受容器の制御系において重要な役割を果たす(Moulignier,Rev.Neurol.150:3−15,(1994))。心血管系、血液系及び胃腸系の末梢機能もまた、5−HTに基づくとされている。5−HTは、血管及び非血管平滑筋収縮、及び血小板凝集を含め、様々な収縮作用、分泌作用、及び電気生理学的作用を媒介することが分かっている。(Fuller,Biology of Serotonergic Transmission,1982;Boullin,Serotonin In Mental Abnormalities 1:316(1978);Barchas,et al.,Serotonin and Behavior,(1973))。5−HT2A受容体サブタイプ(サブクラスとも称される)は、高度な認知及び情動機能の調節に関わると想定される多くの皮質、辺縁、及び前脳領域を含め、ヒト脳において広範囲にわたり、但し個別に発現する。この受容体サブタイプは成熟血小板においても発現し、そこで一つには、血管血栓症の過程における初期段階の1つである血小板凝集を媒介する。
【0004】
セロトニンの体内における広範囲な分布を考えれば、セロトニン作動系に作用する薬物に多大な利益が存在することは、納得のいくことである(Gershon,et al.,The Peripheral Actions of 5−Hydroxytryptamine,246(1989);Saxena,et al.,J.Cardiovascular Pharmacol.15:Supp.7(1990))。セロトニン受容体は、細胞間情報伝達のトランスデューサーとして機能する膜貫通タンパク質の大規模なヒト遺伝子ファミリーのメンバーである。これらは、ニューロン及び血小板を含む様々な細胞型の表面上に存在し、内因性リガンドセロトニン又は体外から投与された薬物のいずれかにより活性化されると、その立体配座構造が変化し、続いて細胞シグナル伝達の下流のメディエーターと相互作用する。5−HT2Aサブクラスを含め、こうした受容体の多くはGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化することによってシグナルを伝達し、その結果、サイクリックAMP、イノシトールリン酸、及びジアシルグリセロールなどの二次メッセンジャー分子を生成、又は阻害する。こうした二次メッセンジャーは、次にキナーゼ及びイオンチャネルを含む様々な細胞内酵素の機能を調節し、最終的にはこれが細胞の興奮性及び機能に作用する。
【0005】
少なくとも15種の遺伝学的に異なる5−HT受容体サブタイプが同定され、7つのファミリー(5−HT1〜7)のうちの1つに割り当てられている。各サブタイプは、固有の分布、各種リガンドに対する選択性、及び機能的相関を示す。
【0006】
セロトニンは、特定の精神障害(鬱病、攻撃性、パニック発作、強迫性障害、精神病、統合失調症、自殺傾向)、特定の神経変性障害(アルツハイマー型認知症、パーキンソニズム、ハンチントン舞踏病)、食欲不振症、過食症、アルコール中毒に関連する障害、脳血管障害、及び片頭痛などの様々なタイプの病理学的病態における重要な構成要素であり得る(Meltzer,Neuropsychopharmacology,21:106S−115S(1999);Barnes & Sharp,Neuropharmacology,38:1083−1152(1999);Glennon,Neurosci.Biobehavioral Rev.,14:35(1990))。
【0007】
セロトニンの体内における広範囲な分布、並びに多岐にわたる生理学的及び病理学的過程におけるその役割を考えれば、セロトニン作動系に作用する薬物に多大な利益があることは、納得のいくことである(Gershon,et al.,The Peripheral Actions of 5−Hydroxytryptamine,246(1989);Saxena,et al.,J.Cardiovascular Pharmacol.15:Supp.7(1990))。
【0008】
セロトニンの効果は少なくとも15種の遺伝学的に異なる5−HT受容体サブタイプによって媒介され、これらのサブタイプは同定されて、7つのファミリー(5−HT1〜7)のうちの1つに割り当てられている。各サブタイプは、固有の分布、各種リガンドに対する選択性、及び機能的相関を示す。セロトニン受容体は、細胞間情報伝達のトランスデューサーとして機能する膜貫通タンパク質の大規模なヒト遺伝子ファミリーのメンバーである。これらは、ニューロン及び血小板を含む様々な細胞型の表面上に存在し、内因性リガンドセロトニン又は体外から投与された薬物のいずれかにより活性化されると、その立体配座構造が変化し、続いて細胞シグナル伝達の下流のメディエーターと相互作用する。5−HT2Aサブクラスを含め、こうした受容体の多くはGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化することによってシグナルを伝達し、その結果、サイクリックAMP、イノシトールリン酸、及びジアシルグリセロールなどの二次メッセンジャー分子を生成、又は阻害する。こうした二次メッセンジャーは、次にキナーゼ及びイオンチャネルを含む様々な細胞内酵素の機能を調節し、最終的にはこれが細胞の興奮性及び機能に作用する。
【0009】
5−HT2A受容体サブタイプ(サブクラスとも称される)は、高度な認知及び情動機能の調節に関わると想定される多くの皮質、辺縁、及び前脳領域を含め、ヒト脳において広範囲にわたり、但し個別に発現する。この受容体サブタイプは成熟血小板においても発現し、そこで一つには、血管血栓症の過程における初期段階の1つである血小板凝集を媒介する。最近のエビデンスでは、5−HT2受容体サブタイプは、高血圧症、血栓症、片頭痛、血管痙攣、虚血、鬱病、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害及び食欲障害などの医学的病態の原因に強く関連付けられている。
【0010】
統合失調症は、人口の約1%が罹患する特に破滅的な精神神経障害である。この疾患の罹患者の診断、治療、及び社会的生産力の損失にかかる経済的な負担総額は、米国の国民総生産(GNP)の2%を上回ると推定されている。現行の治療は主に、抗精神病薬として知られる薬物クラスによる薬物療法を伴うものである。抗精神病薬は、陽性症状(例えば、幻覚及び妄想)の寛解に有効であるが、陰性症状(例えば、社会的及び心理的離脱、無関心、及び会話の貧困)は改善しないことが多い。
【0011】
現在、精神病症状の治療には9つの主要な抗精神病薬クラスが処方されている。しかしながら、こうした化合物の利用はその副作用プロファイルによって制限されている。「定型の」、すなわち旧世代の化合物は、ほぼ全てがヒトの運動機能に対し著しい有害作用を有する。こうした「錐体外路の」副作用(調節性のヒト運動系に対する作用から、このように呼ばれる)は、急性(例えば、ジストニー反応、生命を脅かす恐れがあるが、稀である神経遮断薬による悪性症候群)及び慢性(例えば、静坐不能、振戦、及び遅発性ジスキネジー)の双方であり得る。従って、創薬の試みは、こうした有害作用のうちのあるものを含まない最新の「非定型の」薬剤に焦点が置かれている。しかしながら、非定型薬剤もまた、脳卒中のリスクの増加、睡眠パターンの異常なずれ、極度の疲労及び衰弱、代謝疾患(高血糖症及び糖尿病を含む)、及び体重増加を含む重篤な副作用を生じる可能性を有する。抗精神病薬剤のノンコンプライアンス及び使用中断について最もよく見られる理由の1つは、体重増加である。ノンコンプライアンスは、入院の長期化及び医療費の増加につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
抗精神病薬は、ドパミン作動性受容体、セロトニン作動性受容体、アドレナリン作動性受容体、ムスカリン受容体、及びヒスタミン作動性受容体を含め、多数の中枢モノアミン作動性神経伝達物質受容体と相互作用することが示されている。こうした薬物の治療作用及び有害作用は、異なる受容体サブタイプによって媒介されるものと思われる。これらの受容体サブタイプ間の高度な遺伝的及び薬理学的相同性により、サブタイプ選択的化合物の開発、並びに任意の特定の受容体サブタイプについての通常の生理学的又は病態生理学的役割の決定が妨げられてきた。従って、モノアミン作動性神経伝達物質受容体のなかの個々の受容体クラス及びサブクラスに対して選択的な薬物の開発が必要とされている。
【0013】
抗精神病薬の作用機序については、ドパミンD2受容体の拮抗作用が関与しているとする理論が一般的である。残念なことに、ドパミンD2受容体の拮抗作用はまた、錐体外路副作用、並びに抗精神病治療薬の何らかの付加的な望ましくない作用、例えば、鬱症状の悪化、無快感症及び認知過程の機能障害なども媒介するものと思われる。5−HT2A受容体の拮抗作用は、抗精神病効果を有する薬物の代替的な分子機構であり、セロトニン作動系を通じた高度な、又は過剰なシグナル伝達の拮抗作用を介している可能性がある。従って5−HT2Aアンタゴニストは、錐体外路副作用又はドパミンD2受容体の遮断に関連した他の望ましくない作用を有しない、精神病の治療に適した候補である。
【0014】
伝統的に、5−HT2A受容体などのGPCRは、アゴニスト(受容体を活性化させる薬物)が結合することによって活性化されない限り、静止状態で存在すると考えられてきた。現在では、セロトニン受容体を含め、一部ではあるが多くのGPCRモノアミン受容体が、その内因性アゴニストなしに部分的に活性化された状態で存在し得ることが認められている。この高い基礎活性(恒常的活性)は、インバースアゴニストと称される化合物によって阻害することができる。アゴニスト及びインバースアゴニストの双方とも、ある受容体における固有の活性を有し、すなわち、単独でこれらの分子をそれぞれ活性化又は不活性化することができる。対照的に、古典的、すなわち中立的なアンタゴニストは、受容体への到達に関してアゴニスト及びインバースアゴニストと競合するが、高い基礎的又は恒常的な受容体反応を阻害する内在的な能力は有しない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、抗精神病薬による治療に適した病態の治療方法を含み、これは、第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを投与することと、第2の量の抗精神病剤を投与することとを含み、ここで第1の量及び第2の量は、その抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な作用がより速く実現される量である。ある実施形態において、第2の量は、その抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である。ある実施形態において、第2の量は、その抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である。
【0016】
ある実施形態において、第1の量及び第2の量は、抗精神病剤の有効用量による単独投与と比較して、抗精神病剤に起因する1つ又は複数の副作用の重症度又は発現を軽減する量である。ある実施形態において、副作用は体重増加である。ある実施形態において、副作用は、錐体外路副作用、ヒスタミン性副作用、αアドレナリン作動性副作用、及び抗コリン作動性副作用からなる群から選択される。ある実施形態において、副作用は、脳卒中、振戦、鎮静、胃腸障害、神経学的障害、死亡リスクの増加、脳血管イベント、運動障害、ジストニー、静坐不能、パーキンソン病様(parkinsoniam)運動障害、遅発性ジスキネジー、認知障害、プロラクチン血症、カタレプシー、精神病、神経遮断薬悪性症候群、心臓障害、呼吸器系障害、糖尿病、肝不全、自殺傾向、鎮静、起立性低血圧、窒息感、めまい感、頻脈、血液異常、トリグリセリド値の異常、コレステロール値の上昇、異常脂質血症、高血糖症、失神、痙攣発作、嚥下障害、持続勃起症、血栓性血小板減少性紫斑病、体温調節失調、不眠症、激越、不安、傾眠、攻撃的反応、頭痛、便秘、悪心、消化不良症、嘔吐、腹痛、唾液増加、歯痛、鼻炎、咳嗽、副鼻腔炎、咽頭炎、呼吸困難、背痛、胸痛、発熱、発疹、乾皮症、脂漏、上気道感染の増加、視覚異常、関節痛、感覚鈍麻、躁反応、集中力障害、口内乾燥症、疼痛、疲労、ざ瘡、皮膚そう痒症、筋肉痛、骨痛、高血圧症、下痢、錯乱、無力症、尿失禁、眠気、睡眠時間の増加、調節障害、動悸、勃起機能障害、射精機能障害、オルガスム(orgastic)機能障害、倦怠感、色素沈着の増加、食欲亢進、自動症、夢遊行動の増加、性欲の減退、神経過敏、鬱病、無関心、緊張病性反応、多幸症、リビドー亢進、健忘症、情動不安定(emotional liability)、悪夢、譫妄、あくび、構音障害、眩暈、昏迷、錯感覚、失語症、感覚減退、舌麻痺、下肢痙攣、斜頸、筋緊張低下、昏睡、片頭痛(migrain)、反射亢進、舞踏アテトーゼ、食欲不振症、鼓腸、口内炎、下血、痔核、胃炎、便失禁、おくび(erutation)、胃食道逆流症(gastroeophageal reflux)、胃腸炎、食道炎、舌変色、胆石症(choleithiasis)、舌浮腫、憩室炎、歯肉炎、変色糞、消化管出血、吐血、浮腫、悪寒、不快感、蒼白、腹部膨張、腹水、サルコイドーシス、潮紅、過換気、気管支攣縮、肺炎、喘鳴(tridor)、喘息、喀痰の増加、誤嚥、光線過敏症、発汗過多、ざ瘡、発汗減少、脱毛症、角質増殖症、皮膚剥脱、水疱性発疹、皮膚潰瘍、乾癬の憎悪、せつ腫症、疣贅、苔癬様皮膚炎、多毛症、性器そう痒症、蕁麻疹、心室頻拍症、狭心症、心房期外収縮、T波逆転、心室期外収縮、ST鬱病、房室ブロック、心筋炎、調節異常、眼球乾燥症、複視、眼痛、眼瞼炎、光視症、羞明、流涙異常、低ナトリウム血症、クレアチンホスホキナーゼ増加、口渇、体重減少、血清鉄の減少、悪液質、脱水、低カリウム血症、低タンパク血症、高リン血症、高グリセリド血症、高尿酸血症、低血糖症、多尿、煩渇多飲症、血尿(hemturia)、排尿困難、尿閉、膀胱炎、腎不全、関節症、骨癒合症、滑液包炎、関節炎、月経過多、膣乾燥症、非産褥性乳汁分泌(nonpeurperal lactation)、無月経、女性乳房痛、白帯下、乳腺炎、月経困難症、女性会陰痛、中間期出血、膣出血、SGOT上昇、SGPT上昇、胆汁うっ滞性肝炎、胆嚢炎、胆石症(choleithiasis)、肝炎、肝細胞傷害、鼻出血、表在性静脈炎、血栓性静脈炎(thromboplebitis)、血小板減少症、耳鳴り、聴覚過敏、聴力低下、貧血、低色素性貧血、正球性貧血、顆粒球減少症、白血球増多、リンパ節症、白血球減少、ペルゲル・フエット核異常、女性化乳房、男性乳房痛、抗利尿ホルモン異常(antiduretic hormone disorder)、苦味、排尿障害、注視痙攣、歩行異常、不随意筋収縮、及び外傷増加からなる群から選択される。
【0017】
ある実施形態において、病態は精神病であり、有効な作用は抗精神病作用である。ある実施形態において、精神病は、統合失調症に関連する。ある実施形態において、精神病は、急性精神病憎悪である。ある実施形態において、治療に適した病態は、統合失調症、双極性障害、激越、精神病、アルツハイマー病における行動障害、精神病の特徴又は双極性の徴候を有する鬱病、強迫性障害、心的外傷後ストレス症候群、不安、人格障害(境界型及び統合失調型)、認知症、激越を伴う認知症、高齢者における認知症、トゥレット症候群、下肢静止不能症候群、不眠症、社会不安障害、気分変調症、ADHD、及び自閉症からなる群から選択される。
【0018】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病作用の迅速な発現を誘発する方法を含み、これは、精神病に罹患している対象者に対し、抗精神病作用が迅速に発現されるように5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む。
【0019】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗鬱作用の迅速な発現を誘発する方法を含み、これは、鬱病に罹患している対象者に対し、抗鬱作用が迅速に発現されるように5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む。
【0020】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病治療に反応する患者の割合を増加させる方法を含み、これは、精神病に罹患している対象者に対し、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べてより高い割合の患者に有効な作用が生じるように、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む。
【0021】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病剤の投与に伴う体重増加を軽減又は抑制する方法を含み、これは、抗精神病剤の投与に伴う体重増加のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含む。
【0022】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病治療中の患者コンプライアンスを高める方法を含み、これは、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含み、ここで同時投与の用量は、抗精神病剤の有効用量を単独投与するときのコンプライアンスと比較して患者コンプライアンスが高まる用量である。
【0023】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコースの上昇を軽減又は抑制する方法を含み、これは、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含む。
【0024】
本明細書に記載される別の実施形態は、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇を軽減又は抑制し、且つ体重増加を軽減又は抑制する方法を含み、これは、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇及び体重増加のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含む。
【0025】
本明細書に開示される別の実施形態は、第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと第2の量の抗精神病剤とを含む医薬組成物を含み、ここで第1の量及び第2の量は、その組成物を投与すると、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な抗精神病作用がより速く実現される量である。ある実施形態において、第2の量は、抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である。ある実施形態において、第2の量は、抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である。
【0026】
本明細書に開示される別の実施形態は、第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと、第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニスト及び第2の量の抗精神病剤の投与についての使用説明書とを含むパッケージを含み、ここで第1の量及び第2の量は、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な抗精神病作用がより速く実現される量である。ある実施形態において、第2の量は、抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である。ある実施形態において、第2の量は、抗精神病剤を単独投与するときの有効用量未満である。
【0027】
上述した実施形態のいくつかにおいて、抗精神病剤は定型抗精神病薬である。ある実施形態において、抗精神病剤は非定型抗精神病薬である。ある実施形態において、抗精神病剤はD2アンタゴニストである。ある実施形態において、抗精神病剤はリスペリドンである。ある実施形態において、抗精神病剤はハロペリドールである。ある実施形態において、抗精神病剤は、フェノチアジン、フェニルブチルピペリジン、ジベンザピン(dibenzapine)、ベンゾイソオキシジル(benzisoxidil)、及びリチウム塩からなる群から選択される。ある実施形態において、フェノチアジンは、クロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、メソリダジン(Serentil(登録商標))、プロクロルペラジン(Compazine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril)、フルフェナジン(Prolixin(登録商標))、ペルフェナジン(Trilafon(登録商標))、及びトリフルオペラジン(Stelazine(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、フェニルブチルピペリジンは、ピモジド(Orap(登録商標))である。ある実施形態において、ジベンザピン(dibenzapine)は、クロザピン(Clozaril(登録商標))、ロキサピン(Loxitane(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroquel(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、ベンゾイソオキシジル(benzisoxidil)は、ジプラシドン(Geodon(登録商標))である。ある実施形態において、リチウム塩は、炭酸リチウムである。ある実施形態において、抗精神病剤は、アリピプラゾール(Abilify(登録商標))、Etrafon(登録商標)、ドロペリドール(Inapsine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril(登録商標))、チオチキセン(Navane(登録商標))、プロメタジン(Phenergan(登録商標))、メトクロプラミド(Reglan(登録商標))、クロルプロチキセン(Taractan(登録商標))、Triavil(登録商標)、モリンドン(Moban(登録商標))、セルチンドール(Serlect(登録商標))、ドロペリドール、アミスルプリド(Solian(登録商標))、メルペロン、パリペリドン(Invega(登録商標))、及びテトラベナジンからなる群から選択される。
【0028】
本明細書に記載される別の実施形態は、リスペリドンの投与により引き起こされる高プロラクチン血症を軽減又は抑制する方法を含み、これは、リスペリドンの投与に伴う高プロラクチン血症のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを1日6mg未満のリスペリドンと同時投与することを含む。
【0029】
上述した実施形態の任意のいくつかにおいて、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、式(I):
【化1】
の化合物である。
【0030】
他の実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、
【化2】
からなる群から選択される化合物である。
【0031】
さらに他の実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、アダタンセリン、アルタンセリン、ベナンセリン、ブロナンセリン、ブタンセリン、シナンセリン、エプリバンセリン、ファナンセリン、フリバンセリン、グレマンセリン、イフェランセリン、ケタンセリン、リダンセリン、ミアンセリン、ペランセリン、プルバンセリン、リタンセリン、セガンセリン、及びトロパンセリンからなる群から選択される。
【0032】
上述した方法の任意のいくつかにおいて、投与は18歳未満のヒトを対象とする。
【0033】
本明細書に記載される別の実施形態は、第1の医薬剤が第2の医薬剤の薬理学的特性を調節することを判断することと、第1の医薬剤の半減期が第2の医薬剤より長いことを判断することと、第1の医薬剤と第2の医薬剤とを患者に同時投与することとを含む治療方法を含む。ある実施形態において、薬理学的特性は受容体占有率である。ある実施形態において、薬理学的特性は、第2の医薬剤の最小有効用量である。ある実施形態において、第1の薬剤の半減期は、第2の薬剤の半減期より少なくとも約1.5倍長い。ある実施形態において、同時投与する結果、第2の薬剤は、第2の薬剤の連続投薬時間の少なくとも約50%にわたり有効なレベルで存在する。ある実施形態において、同時投与する結果、第2の薬剤は、第2の薬剤の連続投薬時間の実質的に全てにわたり有効なレベルで存在し、且つ、第1の薬剤が同じ投薬スケジュール及び投薬量により単独で投与されていたならば、連続投薬の実質的に全期間にわたって前記第2の薬剤が有効なレベルで存在することはなかったであろう。ある実施形態において、前記第2の治療剤が単独投与された場合に前記第2の治療剤が有効なレベルで存在し得る期間より長い期間にわたり、前記第2の薬理作用剤が有効なレベルで存在する結果となるような用量及び時間間隔で、第1の薬理作用剤及び前記第2の薬理作用剤が投与される。
【0034】
本明細書に記載される別の実施形態は、試験治療剤が、第1の半減期を有する治療剤との併用治療に適した候補であるかどうかを判断する方法を含み、これは、前記第1の半減期より長い第2の半減期を有する試験治療剤を確保することと、前記試験治療剤を前記治療剤との併用で投与することにより、単独で投与したときには効果を有しないレベルで前記治療剤が有効となり得るかどうかを評価することを含む。ある実施形態は、前記試験治療剤が、前記治療剤によって標的化される受容体の占有率レベルを亢進するかどうかを判断することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】単剤投与についての薬物濃度及び治療ウィンドウを表すグラフである。
【図1B】同様の半減期を有する2種の薬物の同時投与についての薬物濃度及び治療ウィンドウを表すグラフである。
【図1C】異なる半減期を有する2種の薬物の同時投与についての薬物濃度及び治療ウィンドウを表すグラフである。
【図2】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSSスコアの変化を表すグラフである。
【図3A】リスペリドン及びハロペリドールの単独での、及びピマバンセリンとの併用による治療に対する15日目のレスポンダー率を表す棒グラフである。
【図3B】リスペリドン及びハロペリドールの単独での、及びピマバンセリンとの併用による治療に対する43日目のレスポンダー率を表す棒グラフである。
【図4A】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSS陽性尺度の変化を表すグラフである。
【図4B】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSS陰性尺度の変化を表すグラフである。
【図5A】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSS精神病理尺度の変化を表すグラフである。
【図5B】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのPANSS認知尺度の変化を表すグラフである。
【図6】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのCGI重症度尺度の変化を表すグラフである。
【図7A】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときの、体重増加が起こった被験者の百分率を表す棒グラフである。
【図7B】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときの被験者における体重増加平均値を表す棒グラフである。
【図8A】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときの男性におけるプロラクチン値の変化を表すグラフである。
【図8B】リスペリドン及びハロペリドールを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときの女性におけるプロラクチン値の変化を表すグラフである。
【図9】リスペリドンを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのグルコース値を表す棒グラフである。
【図10】リスペリドン又はハロペリドールの単独での、又はピマバンセリンとの併用による治療に対するレスポンダー率を表すグラフである。
【図11】リスペリドンの単独での、又はピマバンセリンとの併用による治療に対するレスポンダー率を表すグラフである。
【図12A】ピマバンセリン、ハロペリドール、又はハロペリドールとの併用でピマバンセリンを投与したときのアンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおけるマウスの移動距離を表すグラフである。
【図12B】アンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、ハロペリドール、又はハロペリドールとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を表すグラフである。
【図13A】ジゾシルピン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、ハロペリドール、又はハロペリドールとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を表すグラフである。
【図13B】ハロペリドールをピマバンセリンとの併用で投与したときの相乗作用を実証するアイソボログラムを表すグラフである。
【図14A】ジゾシルピン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、リスペリドン、又はリスペリドンとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を表すグラフである。
【図14B】リスペリドンをピマバンセリンとの併用で投与したときの相乗作用を実証するアイソボログラムを表すグラフである。
【図15A】ピマバンセリン、アリピプラゾール、又はアリピプラゾールとの併用でピマバンセリンを投与したときのアンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおけるマウスの移動距離を示すグラフである。
【図15B】アンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、アリピプラゾール、又はアリピプラゾールとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を示すグラフである。
【図16A】ピマバンセリン、クエチアピン、又はクエチアピンとの併用でピマバンセリンを投与したときのアンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおけるマウスの移動距離を示すグラフである。
【図16B】アンフェタミン誘発性過剰歩行アッセイにおける、ピマバンセリン、クエチアピン、又はクエチアピンとの併用でのピマバンセリンのマウスに対する投与に関する用量反応曲線を示すグラフである。
【図17】クエチアピンをピマバンセリンとの併用で投与したときの相加性を実証するアイソボログラムを表すグラフである。
【図18】新規物体体認識アッセイにおいて、媒体、ピマバンセリン、リスペリドン、オランザピン、及びリスペリドン又はオランザピンとの併用でピマバンセリンを投与したときの新規物体体認識率を表す棒グラフである。
【図19】放射状迷路生体内マウス認知モデルにおいて、媒体、リスペリドン、ピマバンセリン、及びピマバンセリンとの併用でリスペリドンを投与したときの反復試験後の作業記憶エラーを表すグラフである。
【図20A】リスペリドン、ハロペリドール、又はピマバンセリンを投与したときの血清プロラクチン値を表すグラフである。
【図20B】リスペリドン又はハロペリドールとの併用でピマバンセリンを投与したときの血清プロラクチン値を表す棒グラフである。
【図21A】ピマバンセリンを投与したときのラットにおけるハロペリドール誘発性カタレプシーに関する用量反応曲線を表す。
【図21B】ピマバンセリンを投与したときのラットにおけるリスペリドン誘発性カタレプシーに関する用量反応曲線を表す。
【図22】リスペリドンを単独で、及びピマバンセリンとの併用で投与したときのプロラクチン値の平均変化量を表すグラフである。
【図23】連日個別に投与したときのリスペリドン及びピマバンセリンの血漿濃度を表すグラフである。
【図24】リスペリドン及びピマバンセリンを連日個別に投与したときの5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図25】ピマバンセリンを1mgのリスペリドンとの併用で連日投与したときの5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図26A】3mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含まない5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図26B】3mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含まない5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図27A】3mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンについての5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図27B】3mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンについての5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図28A】3mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図28B】3mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図29A】1mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含まない5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図29B】1mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含まない5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図30A】1mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図30B】1mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図31A】1mgのリスペリドンを1日2回単独で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【図31B】1mgのリスペリドンを1日2回ピマバンセリンとの併用で投与したときの、パリペリドンの寄与を含めた5−HT2A及びD2受容体占有率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ある実施形態は、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を含む。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、抗精神病剤の効力を亢進し、その一方で、抗精神病剤によって引き起こされる副作用を低下させる。いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、抗精神病剤のD2拮抗活性を調節することができると考えられる。具体的には、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、精神病的な作用(例えば、幻覚)に関与する脳の領域においてD2拮抗活性を亢進し、それと同時に有害な副作用(例えば、認知機能障害、鬱病、及び錐体外路副作用(extrapyrmaidal side effect))を引き起こす脳の領域においてD2拮抗活性を低減すると考えられる。これらの2つの作用、すなわち、運動制御又は認知機能に関連する脳の領域においてD2受容体遮断という望ましくない作用が低下し、それと同時に所望の抗精神病作用の有効性が増すことにより、結果として抗精神病効力が増加し、同時に副作用が減少し得る。
【0037】
「同時投与」又は「併用での」投与とは、2種以上の薬剤が患者の血流中に同時に存在し得ることを意味し、ここでそれらの薬剤が実際にいつ、又はどのように投与されるかには関しない。一実施形態において、薬剤は同時に投与される。かかる一実施形態において、併用投与は、薬剤を単一の剤形に組み合わせることによって達成される。別の実施形態において、薬剤は逐次的に投与される。一実施形態において、薬剤は同じ経路を介して投与される。例えば、ある実施形態では、双方の薬剤とも経口投与される。別の実施形態において、薬剤は異なる経路を介して投与される。例えば、一実施形態では、一方の薬剤が経口投与され、他方の薬剤が静脈内投与される。
【0038】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを使用することにより、抗精神病剤の用量を低減することが可能となる。この低減により、結果として抗精神病剤により引き起こされる副作用の重症度が解消又は軽減される。加えて、ある実施形態において、抗精神病剤の投薬量を低減することにより、上記のD2拮抗作用の有益な局所的調節を奏効させることが可能となる。いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、抗精神病剤の投薬量が過多であれば、結果としてD2拮抗活性が高くなり、ひいては上記のD2拮抗作用の局所的調節はそれほど大きい有効作用を有しないと考えられる。
【0039】
ある実施形態において、本明細書に記載される同時投与により、抗精神病薬が有効用量で単独投与されるときの、それによって引き起こされる1つ又は複数の副作用の重症度が解消又は軽減される。様々な実施形態において、副作用は、脳卒中、振戦、鎮静、胃腸障害、神経学的障害、死亡リスクの増加、脳血管イベント、運動障害、ジストニー、静坐不能、パーキンソン病様(parkinsoniam)運動障害、遅発性ジスキネジー、認知障害、プロラクチン血症、カタレプシー、精神病、神経遮断薬悪性症候群、心臓障害、呼吸器系障害、糖尿病、肝不全、自殺傾向、鎮静、起立性低血圧、窒息感、めまい感、頻脈、血液異常(トリグリセリド値の異常、コレステロール値の上昇、異常脂質血症、及び高血糖症を含む)、失神、痙攣発作、嚥下障害、持続勃起症、血栓性血小板減少性紫斑病、体温調節失調、不眠症、激越、不安、傾眠、攻撃的反応、頭痛、便秘、悪心、消化不良症、嘔吐、腹痛、唾液増加、歯痛、鼻炎、咳嗽、副鼻腔炎、咽頭炎、呼吸困難、背痛、胸痛、発熱、発疹、乾皮症、脂漏、上気道感染の増加、視覚異常、関節痛、感覚鈍麻、躁反応、集中力障害、口内乾燥症、疼痛、疲労、ざ瘡、皮膚そう痒症、筋肉痛、骨痛、高血圧症、下痢、錯乱、無力症、尿失禁、眠気、睡眠時間の増加、調節障害、動悸、勃起機能障害、射精機能障害、オルガスム(orgastic)障害、倦怠感、色素沈着の増加、食欲亢進、自動症、夢遊行動の増加、性欲の減退、神経過敏、鬱病、無関心、緊張病性反応、多幸症、リビドー亢進、健忘症、情動不安定(emotional liability)、悪夢、譫妄、あくび、構音障害、眩暈、昏迷、錯感覚、失語症、感覚減退、舌麻痺、下肢痙攣、斜頸、筋緊張低下、昏睡、片頭痛(migrain)、反射亢進、舞踏アテトーゼ、食欲不振症、鼓腸、口内炎、下血、痔核、胃炎、便失禁、おくび(erutation)、胃食道逆流症(gastroeophageal reflux)、胃腸炎、食道炎、舌変色、胆石症(choleithiasis)、舌浮腫、憩室炎、歯肉炎、変色糞、消化管出血、吐血、浮腫、悪寒、不快感、蒼白、腹部膨張、腹水、サルコイドーシス、潮紅、過換気、気管支攣縮、肺炎、喘鳴(tridor)、喘息、喀痰の増加、誤嚥、光線過敏症、発汗過多、ざ瘡、発汗減少、脱毛症、角質増殖症、皮膚剥脱、水疱性発疹、皮膚潰瘍、乾癬の憎悪、せつ腫症、疣贅、苔癬様皮膚炎、多毛症、性器そう痒症、蕁麻疹、心室頻拍症、狭心症、心房期外収縮、T波逆転、心室期外収縮、ST鬱病、房室ブロック、心筋炎、調節異常、眼球乾燥症、複視、眼痛、眼瞼炎、光視症、羞明、流涙異常、低ナトリウム血症、クレアチンホスホキナーゼ増加、口渇、体重減少、血清鉄の減少、悪液質、脱水、低カリウム血症、低タンパク血症、高リン血症、高グリセリド血症、高尿酸血症、低血糖症、多尿、煩渇多飲症、血尿(hemturia)、排尿困難、尿閉、膀胱炎、腎不全、関節症、骨癒合症、滑液包炎、関節炎、月経過多、膣乾燥症、非産褥性乳汁分泌(nonpeurperal lactation)、無月経、女性乳房痛、白帯下、乳腺炎、月経困難症、女性会陰痛、中間期出血、膣出血、SGOT上昇、SGPT上昇、胆汁うっ滞性肝炎、胆嚢炎、胆石症(choleithiasis)、肝炎、肝細胞傷害、鼻出血、表在性静脈炎、血栓性静脈炎(thromboplebitis)、血小板減少症、耳鳴り、聴覚過敏、聴力低下、貧血、低色素性貧血、正球性貧血、顆粒球減少症、白血球増多、リンパ節症、白血球減少、ペルゲル・フエット核異常、女性化乳房、男性乳房痛、抗利尿ホルモン異常(antiduretic hormone disorder)、苦味、排尿障害、注視痙攣、歩行異常、不随意筋収縮、及び外傷増加からなる群から選択される。一実施形態において、副作用は体重増加である。一実施形態において、副作用は、18歳未満の小児に対する抗精神病薬の投与に関連する。一実施形態において、小児における副作用は、精神病、統合失調症、広汎性発達障害、自閉症、トゥレット症候群、行為障害、攻撃性、注意欠陥多動障害(例えば、ADD、ADHD)から選択される。ある実施形態において、小児では、体重増加、心律動障害、及び糖尿病の副作用が、より重篤である。
【0040】
ある実施形態において、本明細書に記載される同時投与は副作用が減少するため、抗精神病治療中の患者コンプライアンスの向上に用いることができる。
【0041】
ある実施形態において、抗精神病剤は最大下レベルで投与される。かかる様々な実施形態において、抗精神病剤の投薬量は、最高用量の約75%、60%、50%、40%、30%、20%、又は10%未満である。「最高用量」とは、薬剤を単独で投与したとき、それ以上用量を増やしても治療効果にいかなる有意な増加も得られない最小の用量を意味する。ある実施形態において、抗精神病剤は、抗精神病薬が単独で投与されるときのその有効用量未満の用量で投与される。様々な実施形態において、投薬量は有効用量の約75%、60%、50%、40%、30%、20%、又は10%未満である。「有効用量」とは、薬剤を単独で投与したとき、臨床的に妥当性のある治療効果を実現するために必要な最小の投薬量を意味する。
【0042】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与する結果、有効な作用が迅速に発現する。換言すれば、ある実施形態では、抗精神病剤を単独投与するときと比べて有効な活性がより速く実現される。様々な実施形態において、有効な活性の迅速な発現は、臨床的に妥当性のある治療効果が、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて、約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、130%、150%、200%、300%、400%、又は500%超、さらに速く実現されることにより実証される。ある実施形態において、有効な活性の迅速な発現は、抗精神病剤の有効用量による単独投与と比較したとき、特定の治療期間後に有効な作用を経験する患者の割合がより高いことによって実証される。様々な実施形態において、有効な作用を経験する患者の割合は、抗精神病剤の有効用量による単独投与と比較したとき、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、130%、150%、200%、300%、400%、又は500%超、増加する。ある実施形態において、特定の期間は2週間である。
【0043】
様々な実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いて、限定はされないが、統合失調症、統合失調性感情障害、躁病、鬱病(気分変調症、治療抵抗性鬱病、及び精神病に関連する鬱病を含む)、認知障害、攻撃性(衝動的攻撃性を含む)、パニック発作、強迫性障害、境界性人格障害、境界性障害、多重性発達障害(multiplex developmental disorder:MDD)、行動障害(加齢性認知症に関連する行動障害を含む)、精神病(パーキンソン病治療などの治療によって誘発されるか、又は心的外傷後ストレス障害に関連した、認知症に関連する精神病、パーキンソン病に関連する精神病、アルツハイマー病に関連する精神病を含む)、自殺傾向、双極性障害、睡眠障害(睡眠持続障害不眠症、慢性不眠症、一過性不眠症、及び睡眠時周期的四肢運動(PLMS)を含む)、依存症(薬物又はアルコール依存症、オピオイド依存症、及びニコチン中毒を含む)、注意欠陥多動障害(ADHD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、トゥレット症候群、不安(全般性不安障害(GAD)を含む)、自閉症、ダウン症候群、学習障害、心身症、アルコール離脱症、癲癇、疼痛(慢性疼痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、糖尿病性末梢神経障害、線維筋痛症、帯状疱疹後神経痛、及び反射性交感神経性ジストロフィーを含む)、低グルタミン酸作動性(hypoglutamatergia)に関連する障害(統合失調症、小児自閉症、及び認知症を含む)、及びセロトニン症候群を含む精神神経障害の症状が、治療、予防、又は改善される。
【0044】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いて、限定はされないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳萎縮症(sphinocerebellar atrophy)、前頭側頭型認知症、核上性麻痺、又はレビー小体認知症を含む神経変性障害の症状が、治療、予防、又は改善される。
【0045】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いて、限定はされないが、ジスキネジー(パーキンソン病の治療によって誘発されるものなど)、動作緩慢、硬直、精神運動の緩慢化、チック、静坐不能(神経遮断薬又はSSRI薬剤によって誘発されるものなど)、フリードリッヒ失調症、マシャド・ジョセフ病、ジストニー、振戦、下肢静止不能症候群、又はミオクローヌスを含む錐体外路障害の症状が、治療、予防、又は改善される。
【0046】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いて、化学療法によって誘発された嘔吐、虚弱、オン・オフ現象、インスリン非依存性真性糖尿病、メタボリックシンドローム、自己免疫障害(ループス及び多発性硬化症を含む)、敗血症、眼圧の上昇、緑内障、レチナール疾患(加齢性黄斑変性症を含む)、シャルル・ボネ症候群、物質乱用、睡眠時無呼吸、膵炎(pancreatis)、食欲不振症、過食症、アルコール中毒に関連する障害、脳血管障害、筋萎縮性側索硬化症、AIDS関連認知症、外傷性脳損傷又は脊髄損傷、耳鳴り、閉経期症状(のぼせなど)、性機能障害(女性性機能障害、女性性覚醒機能不全、性的欲求低下障害、リビドー減退、疼痛、嫌悪、女性オルガスム障害、及び射精障害を含む)、男性低妊孕性、低精子運動能、脱毛又は菲薄化、失禁、痔核、片頭痛、高血圧症、血栓症(心筋梗塞、脳卒中、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、及び末梢血管疾患に関連する血栓症を含む)、ホルモン活性の異常(異常レベルのACTH、コルチコステロン、レンニン、又はプロラクチンなど)、ホルモン障害(クッシング病、アジソン病、及び高プロラクチン血症を含む)、下垂体腫瘍(プロラクチノーマを含む)、下垂体腫瘍に関連する副作用(高プロラクチン血症、不育症、月経の変化、無月経、乳汁漏出症、リビドー消失、腟乾燥、骨粗鬆症、インポテンス、頭痛、失明、及び複視を含む)、血管痙攣、虚血、心不整脈、心不全、喘息、気腫、又は食欲障害の症状が、治療、予防、又は改善される。
【0047】
ある実施形態において、同時投与は、精神病を治療、予防、又は改善するために用いられる。精神病の機能的原因としては、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病、双極性障害、重症の臨床的鬱病、重症の心理社会的ストレス、断眠、神経障害(脳腫瘍、レビー小体を伴う認知症、多発性硬化症、及びサルコイドーシスを含む)、電解質障害(低カルシウム血症、高ナトリウム血症、低ナトリウム血症(hyonatremia)、低カリウム血症(hyopkalemia)、低マグネシウム血症、高マグネシウム血症、高カルシウム血症、低リン血症、及び低血糖症を含む)、ループス、AIDS、ハンセン病、マラリア、流感、ムンプス、向精神薬中毒症又は離脱症状(アルコール、バルビツール酸系薬、ベンゾジゼペイン(benzodizepeine)、抗コリン薬、アトロピン、スコポラミン、チョウセンアサガオ、抗ヒスタミン剤、コカイン、アンフェタミン、並びに、大麻、LSD、シロシビン、メスカリン、MDMA、及びPCPを含む幻覚剤を含む)を挙げることができる。精神病としては、妄想、幻覚、解体した会話、解体した行動、現実の著しい歪曲化、知能障害、情動反応障害、意識水準の変動、運動協調性低下、単純な知的作業の実施不能、人物、場所又は時間に対する失見当識、錯乱、又は記憶障害などの症状を挙げることができる。一実施形態において、患者は精神病の急性増悪を経験しているところである。本明細書に記載される特定の併用による迅速な発現特性は、精神病の急性増悪の治療に特に有利である。ある実施形態において、その併用は、統合失調症、具体的には、統合失調症に関連する精神病を治療又は改善するために用いられる。一実施形態において、患者は、それ以前に抗精神病治療に対し反応を示している。一実施形態において、患者は、中等度の精神病理を示す。
【0048】
一実施形態において、同時投与は鬱病の治療に用いられる。一実施形態において、同時投与する結果、典型的な抗鬱薬(例えば、SSRI)において認められる活性の発現と比較して、抗鬱活性が迅速に発現する。様々な実施形態において、有効な抗鬱活性は、約8週間、6週間、4週間、又は2週間未満で実現される。
【0049】
多くの抗精神病剤が、血清グルコース値を上昇させる。意外にも、5−HT2Aインバースアゴニストをかかる抗精神病薬と併用する結果、血清グルコースの上昇が減り、その一方で効力は維持されることが発見された。従って、様々な実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いると、抗精神病剤の投与に関連した血清グルコース上昇が抑制又は軽減される。
【0050】
また、多くの抗精神病剤が体重増加も引き起こす。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストの抗精神病剤との同時投与を用いると、抗精神病剤の投与に関連する体重増加の亢進が抑制又は軽減される。
【0051】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、5−HT2A受容体に対し選択的である。「選択的」とは、5−HT2A受容体からの所望の反応を生じさせるのに十分な量の化合物が、他の特定の受容体のタイプ、サブタイプ、クラス、又はサブクラスの活性にはほとんど又は全く効果を有しないことを意味する。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、5−HT2A受容体のシグナル伝達が強力に、又は完全に阻害される濃度では、他のセロトニン受容体(5−HT 1A、1B、1D、1E、1F、2B、2C、4A、6、及び7)とそれほど強く相互作用しない。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、ドパミン作動性受容体、ヒスタミン作動性受容体、アドレナリン作動性受容体及びムスカリン受容体などの他のモノアミン結合受容体に関して選択的である。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、D2受容体においてほとんど又は全く活性を有しない。
【0052】
様々な実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、アダタンセリン塩酸塩、アルタンセリン酒石酸塩、ベナンセリン塩酸塩、ブロナンセリン、ブタンセリン、シナンセリン塩酸塩、エプリバンセリン、ファナンセリン、フリバンセリン、グレマンセリン、イフェランセリン、ケタンセリン、リダンセリン、ミアンセリン塩酸塩、ペランセリン塩酸塩、プルバンセリン、リタンセリン、セガンセリン、トロパンセリン塩酸塩、イロペリドン、セルチンドール、EMR−62218、Org−5222、ゾテピン、アセナピン、オカペリドン、APD125、及びAVE8488からなる群から選択される。
【0053】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、米国特許第6,756,393号明細書;同第6,911,452号明細書;又は同第6,358,698号明細書又は米国特許出願公開第2004−0106600号明細書(これらは全て、全体として参照により本明細書に援用される)に開示される化合物から選択される。ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、以下の構造又はプロドラッグ、代謝産物、水和物、溶媒和物、多形、及びこれらの薬学的に許容可能な塩のなかの1つから選択される。
【化3】
【0054】
一実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは、ピマバンセリン又はプロドラッグ、代謝産物、水和物、溶媒和物、多形、及びこれらの薬学的に許容可能な塩である。ピマバンセリンは、N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N−(4−フルオロフェニルメチル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド、N−[(4−フルオロフェニル)メチル]−N−(1−メチル−4−ピペリジニル)−N’−[[4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]メチル]−尿素、1−(4−フルオロベンジル)−1−(1−メチルピペリジン−4−イル)−3−[4−(2−メチルプロポキシ)ベンジル]尿素、又はACP−103としても知られ、式(I):
【化4】
の構造を有する。
【0055】
ピマバンセリンは、様々な塩及び結晶形態で得ることができる。例示的な塩としては、酒石酸塩、ヘミ酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、及びエジシル酸塩(エタンジスルホン酸塩)が挙げられる。特に前述のイオンを含むピマバンセリン塩が、2005年9月26日出願の「SALTS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND THEIR PREPARATION」と題される米国特許出願公開第2006−0111399号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。酒石酸塩のいくつかの結晶形態は、A型、B型、C型、D型、E型及びF型結晶と称され、2006年9月26日出願の「SYNTHESIS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND ITS TARTRATE SALT AND CRYSTALLINE FORMS」と題される米国特許出願公開第2006−0106063号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。ある実施形態において、ピマバンセリンの酒石酸塩の結晶形態はA型である。別の実施形態において、ピマバンセリンの酒石酸塩の結晶形態はC型である。ピマバンセリン(例えば酒石酸塩を含むもの)は、「PHARMACEUTICAL FORMULATIONS OF PIMAVANSERIN」と各々題される2007年5月15日出願の米国特許出願公開第2007−0260064号明細書及び2007年5月15日出願の米国特許出願公開第2007−0264330号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)にさらに詳細に記載されるように、錠剤として製剤化され得る。
【0056】
「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される薬剤を指す。プロドラッグは、ある状況下では親薬物より投与が容易であり得るため、多くの場合に有用である。例えば、プロドラッグは経口投与によるバイオアベイラビリティを有し得るのに対し、親薬物はそれを有しない。プロドラッグはまた、医薬組成物中における溶解度が親薬物を上回る高さであり得る。プロドラッグの例としては、限定なしに、水溶性であることが移動度について不利となる細胞膜を通じた送達を促進するためエステル(「プロドラッグ」)として投与され、その後、水溶性が有利となる細胞内に入ると、代謝的に加水分解されて活性体であるカルボン酸となる化合物を挙げることができる。プロドラッグの別の例としては、酸性基に結合した短鎖ペプチド(ポリアミノ酸)を挙げることができ、この場合ペプチドが代謝されて活性部分が出現する。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び調製についての従来の手順は、例えば、Design of Prodrugs(ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985)(本明細書によって全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0057】
代謝産物としては、親化合物を生物学的環境の中に導入すると産生される活性種が挙げられる。
【0058】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、投与対象の生体に対して著しい刺激作用を引き起こすことがなく、且つ化合物の生物活性及び特性が消失することのない化合物の塩を指す。ある実施形態において、塩は化合物の酸付加塩である。薬学的塩は、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸又は臭化水素酸)、硫酸、硝酸、及びリン酸などの無機酸と化合物を反応させることによって得ることができる。薬学的塩はまた、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸又はスルホン酸、例えば、酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸又はナフタレンスルホン酸などの有機酸と化合物を反応させることによって得ることもできる。薬学的塩はまた、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩などの塩を形成する塩基、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C1〜C7アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどの有機塩基の塩、並びにアルギニン、リジンなどのアミノ酸を伴う塩などと化合物を反応させることによって得ることもできる。
【0059】
医薬製剤の製造に医薬賦形剤と塩形態の活性成分との均質混合が関わる場合、非塩基性の医薬賦形剤、すなわち、酸性又は中性の賦形剤を使用することが望ましいこともある。
【0060】
ピマバンセリンは、モノアミン受容体、具体的にはセロトニン受容体において活性を呈し、特に5−HT2A受容体においてインバースアゴニストとして作用する。この化合物は、細胞に基づく生体内機能アッセイを用いるとともに、放射性リガンド結合アッセイを用いると、5HT2A受容体においてインバースアゴニスト(及び競合アンタゴニスト)として高い効力を示す。この化合物がインバースアゴニスト(及び競合アンタゴニスト)として5−HT2C受容体で呈する効力は、細胞に基づく生体内機能アッセイを用いると、及び放射性リガンド結合アッセイにおいてより低い。この化合物は、ドパミン受容体サブタイプにおける活性を欠いている。既存の非定型抗精神病薬とは異なり、ピマバンセリンは、他の抗精神病薬のいくつかの用量制限的な副作用に関与している様々な他の標的に対する有意な効力を有しない。例えば、クロザピン及びオランザピンとは異なり、ピマバンセリンは、鎮静及び潜在的に体重増加を媒介するムスカリン受容体及びヒスタミン作動性受容体において有意な効力を有しない。この化合物はまた、心血管の副作用に寄与し得るクロザピン、オランザピン、リスペリドン、及びジプラシドンのα−アドレナリン作動性拮抗活性を欠いている。さらに、この化合物は、胃腸機能及び心筋発達を制御する5HT2B受容体における効力を欠いている。
【0061】
ピマバンセリンは、ラットにおけるDOI((±)−2,5−ジメトキシ−4−ヨードアンフェタミン、セロトニン作動薬)誘発性の頭部攣縮などの抗精神病活性及びN−メチル−D−アスパラギン酸アンタゴニストMK−801によって誘発されたマウスにおける多活動の減弱を予測すると思われる数多くのモデルにおいて活性を有する。この化合物は、これらのモデルにおいて、3及び10mg/kgの経口用量で有効であった。統合失調症者が示すものと同様の、感覚運動のゲーティングが欠損したラットモデルでは、1及び3mg/SC1kgの用量のピマバンセリンが、DOIによって誘発されたゲーティングの欠損を強力に逆転させた。ピマバンセリンはまた、32mg/kgまでの腹腔内用量では、マウスの単純な自動形成反応の学習を混乱させることもなかった。ピマバンセリンの薬理学的プロファイルは、それがこのクラスの他の化合物に一般的な副作用なしに、抗精神病剤として有効であり得ることを示唆している。このように、ピマバンセリンは統合失調症の対象者の治療に用いられるとき、抗精神病活性を有し得る。
【0062】
ピマバンセリンは、以下に記載される方法か、又はそれらを改良した方法によって合成され得る。方法論的な改良手段としては、特に、温度、溶媒、試薬等の改良が挙げられる。
【0063】
以下に例示される合成の第1のステップは、酢酸、NaBH3CN、及びメタノールの存在下に行われ、式(II)の化合物が生成される:
【化5】
【0064】
式(IV)の化合物は、式(III)の化合物を、約80℃のジメチルホルムアミド(DMF)中で臭化イソブチル及び炭酸カリウムにより処理することによって合成され得る:
【化6】
【0065】
式(IV)の化合物は、メタノール/水中で水酸化カリウムと反応させることによって式(V)の化合物に変換され得る:
【化7】
【0066】
式(V)の化合物をテトラヒドロフラン(THF)中でジフェニルホスホニルアジド(DPPA)及びプロトンスポンジにより加熱還流すると、式(VI)の化合物が生成される:
【化8】
【0067】
最後に、式(II)の化合物を式(VI)の化合物と塩化メチレン中で反応させると、式(I)の化合物が生成される:
【化9】
【0068】
5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと同時投与され得る好適な抗精神病剤の非限定的な例としては、フェノチアジン、フェニルブチルピペリジン、ジベンザピン(dibenzapine)、ベンゾイソオキシジル(benzisoxidil)、及びリチウム塩が挙げられる。ある実施形態において、フェノチアジンは、クロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、メソリダジン(Serentil(登録商標))、プロクロルペラジン(Compazine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril)、フルフェナジン(Prolixin(登録商標))、ペルフェナジン(Trilafon(登録商標))、及びトリフルオペラジン(Stelazine(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、フェニルブチルピペリジンは、ハロペリドール(Haldol(登録商標))及びピモジド(Orap(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、ジベンザピン(dibenzapine)は、クロザピン(Clozaril(登録商標))、ロキサピン(Loxitane(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroquel(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、ベンゾイソオキシジル(benzisoxidil)は、リスペリドン(Risperdal(登録商標))及びジプラシドン(Geodon(登録商標))からなる群から選択される。ある実施形態において、リチウム塩は炭酸リチウムである。ある実施形態において、抗精神病剤は、アリピプラゾール(Abilify(登録商標))、Etrafon(登録商標)、ドロペリドール(Inapsine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril(登録商標))、チオチキセン(Navane(登録商標))、プロメタジン(Phenergan(登録商標))、メトクロプラミド(Reglan(登録商標))、クロルプロチキセン(Taractan(登録商標))、Triavil(登録商標)、モリンドン(Moban(登録商標))、セルチンドール(Serlect(登録商標))、ドロペリドール、アミスルプリド(Solian(登録商標))、メルペロン、パリペリドン(Invega(登録商標))、及びテトラベナジンからなる群から選択される。ある実施形態において、抗精神病薬はD2アンタゴニストである。ある実施形態において、抗精神病薬は定型抗精神病薬である。ある実施形態において、抗精神病薬は非定型抗精神病薬である。
【0069】
一実施形態において、ピマバンセリンは、抗精神病薬のハロペリドールと同時投与される。別の実施形態において、ピマバンセリンは、抗精神病薬のリスペリドンと同時投与される。様々な実施形態において、ハロペリドールの投与用量は、1日当たり約0.5mg、1mg、2mg、又は3mg未満である。様々な実施形態において、リスペリドンの投与用量は、1日当たり約0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、又は6mg未満である。一実施形態において、リスペリドンの投与用量は、1日当たり約2mgである。様々な実施形態において、ピマバンセリンの投与用量は、1日当たり約10mg〜約15mg、約15mg〜約20mg、約20mg〜約25mg、約25mg〜約30mg、約30mg〜約40mg、約40mg〜約50mg、約50mg〜約60mg、約60mg〜約70mg、又は約70mg〜約80mgである。一実施形態において、ピマバンセリンの投与用量は、1日当たり約20mgである。
【0070】
ある実施形態は、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤との双方を単一剤形に含む医薬組成物を含む。かかる医薬組成物は、生理学的に許容可能な表面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑化剤、懸濁剤、皮膜形成物質、及びコーティング助剤、又はこれらの組み合わせを含み得る。治療用途に許容可能な担体又は希釈剤は、医薬分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。本医薬組成物には、防腐剤、安定剤、色素、甘味料、芳香剤、及び香味剤などが提供されてもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸及びパラオキシ安息香酸エステルが防腐剤として添加されてもよい。さらに、抗酸化剤及び懸濁剤が用いられてもよい。様々な実施形態において、アルコール、エステル、及び硫酸化脂肪族アルコールなどが表面活性剤として用いられてもよく;スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶化セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、及びカルボキシメチルセルロースカルシウムなどが賦形剤として用いられてもよく;ステアリン酸マグネシウム、タルク、及び硬化油などが平滑化剤として用いられてもよく;ヤシ油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、大豆が懸濁剤又は潤滑剤として用いられてもよく;セルロース又は糖などの炭水化物の誘導体としての酢酸フタル酸セルロース、又はポリビニルの誘導体としての酢酸メチル−メタクリル酸塩コポリマーが懸濁剤として用いられてもよく;及びフタル酸エステルなどの可塑剤が懸濁剤として用いられてもよい。
【0071】
用語「担体」は化合物の細胞又は組織への取り込みを促進する化学的化合物を定義する。例えばジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物の細胞又は組織への多くの有機化合物の取り込みを促進するため一般的に利用される担体である。
【0072】
用語「希釈剤」は水中に希釈される化学的化合物を定義し、目的の化合物を溶解すると同時に化合物の活性型を生物学的に安定化させるものである。緩衝液中に溶解される塩が当該技術分野における希釈剤として利用される。一般的に使用される緩衝液の一つはリン酸緩衝生理食塩水であり、これはそれがヒト血液の塩分条件を模倣しているためである。緩衝塩は溶液のpHを低濃度で制御できるため、化合物の生物活性を改変することはほとんどない。
【0073】
用語「生理学的に許容可能な」は、化合物の生物活性及び特性を抑止しない担体又は希釈剤を定義する。
【0074】
本明細書に記載の組成物の製剤及び投与の技法は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、Easton、ペンシルベニア州、第18版、1990年に見出され得る。
【0075】
投与の好適な経路としては、例えば、経口、経直腸、経粘膜、又は経腸投与;筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、ならびに髄腔内、直接に脳室内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内注射を含む、非経口送達が挙げられる。本化合物はまた、所定の速度で長期投与及び/又は定刻に間欠投与するための、デポー注射、浸透圧ポンプ、丸薬、及び経皮(電気輸送を含む)パッチなどの持効性又は徐放性剤形でも投与され得る。
【0076】
本発明の医薬組成物は、それ自体既知の方式、例えば、従来の混合、溶解、造粒、ドラジェ作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入又は打錠処理で製造されてもよい。
【0077】
本明細書に記載の使用向け医薬組成物は従って、薬学的に使用され得る、活性化合物の調製物への処理を促進する、賦形剤及び助剤を含んでなる1つ又は複数の生理学的に許容可能な担体を使用する従来の方式で調合されてもよい。適正な製剤は選択される投与経路に依存する。任意の周知の技法、担体、及び賦形剤が、好適なとおり、かつ当該技術分野において理解されるとおり使用され得る;例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、上記。
【0078】
注射剤は、液状の溶液若しくは懸濁液か、注射前に液状に溶解若しくは懸濁するのに適した固体形態か、又は乳剤のいずれかとして、従来の形態で調製され得る。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、及び塩酸システインなどである。加えて、必要に応じて注射用医薬組成物は、湿潤剤及びpH緩衝剤などの少量の非毒性補助物質を含有し得る。生理学的に適合性を有する緩衝液としては、限定はされないが、ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩緩衝液が挙げられる。必要に応じて、吸収促進調製剤(例えば、リポソーム)を利用してもよい。
【0079】
経粘膜投与については、透過すべき障壁に適した浸透剤が製剤中に使用され得る。
【0080】
例えばボーラス注射又は持続注入よる非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。加えて、適切な油性注射懸濁液として活性化合物の懸濁液が調製されてもよい。好適な脂溶性溶媒又は媒体としては、ゴマ油などの脂肪油、又は他の有機油、例えば、ダイズ油、グレープフルーツ油若しくはアーモンド油など、又は合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリド、又はリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランを含有してもよい。場合により、懸濁液はまた、好適な安定剤又は化合物の溶解度を増加させることで高度に濃縮された調製溶液を可能にする薬剤を含有してもよい。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、防腐剤が添加されたアンプル又は頻回用量容器で提供され得る。組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又は乳剤といった形態をとってもよく、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合剤を含有してもよい。或いは、活性成分は、使用前に好適な媒体、例えば、無菌パイロジェンフリー水を用いて構成するための粉末形態であってもよい。
【0081】
経口投与用に、化合物は、活性化合物を当該技術分野において周知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることにより容易に調合され得る。かかる担体は、本発明の化合物が、処置されるべき患者による経口摂取用の錠剤、丸薬、ドラジェ、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして調合されることを可能にする。経口使用向け医薬調製物は、活性化合物をを固形賦形剤と組み合わせることにより、場合により結果として得られる混合物を粉砕すること、及び所望であれば、錠剤又はドラジェ核を得るべく好適な助剤の添加後、顆粒の混合物を処理することにより得られ得る。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、ショ糖、マンニトール、又はソルビトールを含む糖類;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物などの賦形剤である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩などの崩壊剤が添加されてもよい。ドラジェ核には好適なコーティングが提供される。本目的上、濃縮糖液が使用されてもよく、これは場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有し得る。染料又は色素が、識別用に、又は活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴づけるため、錠剤又はドラジェコーティングに添加されてもよい。この目的で濃縮糖液が使用されてもよく、これは場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有し得る。種々の組み合わせの活性化合物用量を識別又は特徴付けることができるよう、錠剤又はドラジェコーティングに色素又は顔料が添加されてもよい。
【0082】
経口的に使用され得る医薬調製物としては、ゼラチンで作製されるプッシュフィット型カプセル、ならびにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で作製されるソフトなシールドカプセルが挙げられる。プッシュフィット型カプセルは、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び場合により安定剤との混合物中に活性成分を含有できる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁されてもよい。加えて、安定剤が添加されてもよい。全ての経口投与用製剤はかかる投与に好適な投与量とされるべきである。
【0083】
口腔投与用に、組成物は従来の方式で調合される錠剤又はロゼンジの形態をとってもよい。
【0084】
吸入による投与用に、本発明に従う使用向け化合物は好都合にも加圧パック又は噴霧器からのエアロゾル噴霧剤提供物の形態で、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適な気体の使用を伴い送達される。加圧エアロゾルの場合、服用単位は定量を送達するためのバルブを設けることにより決定されてもよい。例えば、インへラー又は吸入器における使用向けゼラチンのカプセル及びカートリッジが、化合物の混合粉体及びラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤を含有して調合されてもよい。
【0085】
さらに本明細書には、眼内、鼻腔内、及び耳介内送達を含む使用について医薬分野で周知されている様々な医薬組成物が開示される。こうした使用に好適な浸透剤は、一般に当該技術分野において公知である。眼内送達用の医薬組成物としては、点眼剤などの水溶性形態の活性化合物の水性点眼液、又はジェランガム(Shedden et al.,Clin.Ther.,23(3):440−50(2001))若しくはハイドロゲル(Mayer et al.,Ophthalmologica,210(2):101−3(1996));眼軟膏;液体担体媒質中に懸濁される薬物含有ポリマー小粒子である微粒子などの眼科用懸濁剤(Joshi,A.,J.Ocul.Pharmacol.,10(1):29−45(1994))、脂溶性製剤(Alm et al.,Prog.Clin.Biol.Res.,312:447−58(1989))、及びマイクロスフェア(Mordenti,Toxicol.Sci.,52(1):101−6(1999));及び眼用インサートが挙げられる。上述の参考文献は、全て全体として参照により本明細書に援用される。かかる好適な医薬製剤は、ほとんどの場合に、且つ好ましくは、安定性及び快適性のため、無菌性、等張性で、且つ緩衝されて製剤化される。鼻腔内送達用の医薬組成物としては、正常な繊毛作用が確実に維持されるよう、多くの点で鼻汁を模倣して調製されることの多い滴下剤及び噴霧剤も挙げることができる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(全体として参照により本明細書に援用される)に開示され、且つ当業者に周知のとおり、好適な製剤は、ほとんどの場合に、且つ好ましくは、等張性で、僅かに緩衝されることで5.5〜6.5のpHを維持し、及びほとんどの場合に、且つ好ましくは、抗菌性防腐剤及び適当な薬物安定剤を含む。耳介内送達用の医薬製剤は、耳における局所適用向けの懸濁液及び軟膏を含む。かかる耳用製剤に一般的な溶媒としては、グリセリン及び水が挙げられる。
【0086】
化合物はまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を含有する坐薬又は停留浣腸などの直腸用組成物中に調合されてもよい。
【0087】
先述される製剤に加え、本化合物はデポー調製物として調合されてもよい。かかる長時間作用型製剤は、植え込みにより(例えば皮下又は筋肉内に)、又は筋肉内注射により投与されてもよい。従って、例えば、化合物は、好適なポリマー又は疎水性材料(例えば乳剤として許容可能な油)又はイオン交換樹脂を伴い、又は難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として調合されてもよい。
【0088】
疎水性化合物に好適な医薬担体は、ベンジルアルコール、無極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、及び水相を含んでなる共溶媒系であり得る。一般的に使用される共溶媒系はVPD共溶媒系であり、これは、無水エタノールにおける容量で作製される、3%w/vベンジルアルコール、8%w/vの無極性界面活性剤ポリソルベート(Polysorbate)80(商標)、及び65%w/vのポリエチレングリコール300の溶液である。当然ながら、共溶媒系の比率はその溶解度及び毒性特性を破壊することなく相当に変動し得る。さらに、共溶媒構成成分の同一性は変動し得る:例えば、ポリソルベート(POLYSORBATE)80(商標)の代わりに他の低毒性無極性界面活性剤が使用されてもよい;ポリエチレングリコールの画分サイズは変動し得る;他の生体適合性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンがポリエチレングリコールに代わってもよい;及び他の糖類又は多糖類がデキストロースに代わってもよい。
【0089】
或いは、疎水性医薬化合物用の他の送達系が用いられてもよい。リポソーム及び乳剤は、疎水性薬物用の送達媒体又は担体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒もまた用いられ得るが、通常はより高い毒性という代償がある。加えて、化合物は、治療剤を含有する疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスなどの徐放系を使用して送達されてもよい。様々な徐放材料が確立されているとともに当業者に周知である。徐放カプセルは、それらの化学的性質に応じ、数週間から100日間を超えるまで化合物を放出してもよい。治療用試薬の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のための追加的な方策が用いられてもよい。
【0090】
細胞内投与が意図される薬剤は、当業者に周知の技術を用いて投与され得る。例えば、かかる薬剤はリポソームに封入され得る。リポソームを形成する時点で水溶液中に存在する全ての分子が水性の内部に入り込む。リポソームの内容物は外部の微小環境から保護されるとともに、リポソームは細胞膜と融合することから、細胞質に効率的に送達される。リポソームは、組織特異抗体によってコーティングされ得る。リポソームは所望の器官を標的化し、その器官によって選択的に取り込まれる。或いは、小型の疎水性有機分子が直接細胞内に投与されてもよい。
【0091】
ある実施形態において、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストは長時間作用型であり、一方、同時投与される抗精神病薬は短時間作用型である。長時間作用型又は短時間作用型の特性は、それぞれ半減期が長い、及び短いことに起因し得る。多くの抗精神病薬はD2受容体における占有時間が比較的短い。同様の短時間作用型の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストをかかる抗精神病薬との併用で使用したならば、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストのD2活性に対する調節作用が減少すると同時にD2受容体占有率が低くなるため、結果として効力が低下する可能性があり、低用量の抗精神病薬が用いられる場合には問題は悪化する。対照的に、いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、抗精神病薬と比べて比較的長く受容体を占有する5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを使用する場合には、D2受容体占有率が最低であるときも、その期間にわたって高い5−HT2A受容体占有率が、及び結果的にD2調節作用が維持される。
【0092】
短時間作用型治療剤の治療ウィンドウを改善する長時間作用型の薬物を併用する利点は、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニスト以外のものとのD2アンタゴニストとの併用にも適用することができる。例えば、いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、多くの薬物の効力は、薬物の濃度範囲(治療ウィンドウ)に制限されると考えられる。図1Aは、単一の薬物を逐次投与したときの薬物濃度の例示的なグラフである。治療ウィンドウ(グラフにおいて影付き領域として図示される)は、下側では、治療利益を実現するために存在すべき薬物の最低レベルで区切られ、上側では、薬物がその血漿濃度を上回ると、毒性がいかなる治療利益にも勝るような薬物レベルで区切られている。狭い治療ウィンドウを有する一部の薬物について図示されるとおり、最適用量でさえ、血漿濃度は治療ウィンドウの上下双方の境界の外側に出る(薬物は毒性によって制限される効力を有する)。すなわち、いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、薬物濃度が特定の濃度に達すると、この薬物は毒性を生じるため、投与可能な最大投薬量は制限されると考えられる。従って、所与の半減期を有する単独投与薬物を連続投薬する期間中、薬物レベルは治療ウィンドウを繰り返し出たり入ったりし得るため、投薬の合間に、薬物濃度は薬物の効力に求められるレベル未満に下がり得る。
【0093】
いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、二次薬物は、効力に関連する血漿濃度を降下させることによって一次薬物の治療ウィンドウを大きくすることができると考えられる。しかしながら、二次薬物の半減期が短い場合、治療ウィンドウに対する有益な作用は一過性であり、一次薬剤の薬物濃度が最低になった時点で消えているであろう。従って、調節性薬剤の有益な効果は認められない可能性がある。図1Bは、一次薬物と二次薬物とが類似した半減期を有する場合の治療ウィンドウの拡張を例示する。一次薬物の薬物濃度のみが図示される。図1Bは、治療ウィンドウのサイズは大きくなったが、単独投与した一次薬物(図1Aを参照)と比較して、一次薬物が治療ウィンドウの範囲内にある時間はそれほど大幅には増えていないことを示している。例えば、一次薬物がD2受容体アンタゴニストであり、二次薬物が5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストであるとするならば、二次薬物のレベルがそれ自身の所要の効力レベルを上回ると、5−HT2Aアンタゴニスト又はインバースアゴニストはD2アンタゴニストの治療ウィンドウを増加させると考えられる。二次薬物は一次薬物の所要レベルを下げるが、これは、一次薬物のレベルが既に高いときにそうなる。結果的に、治療が有効性を有する時間の割合は、この手法によっては増えないであろうと考えられる。
【0094】
いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、二次薬物の半減期が一次薬物より長い場合、広がった治療ウィンドウが次の投薬まで維持され得ると考えられる。図1Cは、結果として得られた治療ウィンドウの持続的な増加を図示する。二次薬物が一次薬物の各投薬期間全体を通じて高いレベルで存在するため、治療ウィンドウの下限は一貫して低く留まる。従って、一次薬物は常に治療ウィンドウの範囲内にあり、ひいては治療が有効性を有する時間の割合が劇的に増加する。これは、一次薬物の用量を、その効力を維持しながら、その毒性作用が減少するレベルまで下げ得る可能性があることを含意する。
【0095】
従って、ある実施形態は、第1の薬剤を第2の薬剤と併用して投与することを含み、ここで第1の薬剤は半減期が第2の薬剤より長い。ある実施形態において、第1の薬剤の半減期は、第2の薬剤の半減期と比べて少なくとも約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0倍長いか、又は4.0倍よりさらに長い。ある実施形態において、第1の薬剤は第2の薬剤の活性を調節する。ある実施形態において、第1の薬剤及び第2の薬剤は、それらの相対的な半減期及び第1の薬剤の第2の薬剤に対する調節作用により、結果として第2の薬剤が、第2の薬剤の連続投薬時間の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、又は100%にわたって有効用量で存在するように選択される。
【0096】
ある実施形態は、上述の結果を実現するのに適当な医薬剤を選択することを含む。かかる実施形態のあるものは、インビトロアッセイ又はインビボ測定によるなどして、第1の医薬剤が第2の医薬剤の薬理学的特性を調節するかどうかを判断することを含む。一実施形態において、調節される薬理学的特性は受容体占有率である。例えば、第1の医薬剤は、特定の受容体の占有率を低下又は増加させ得る。一実施形態において、薬理学的特性は、第2の医薬剤が有効な作用を有する最小用量である。例えば、第1の医薬剤は、第2の医薬剤の最小有効用量を低下させ得る。ある実施形態は、第1の医薬剤の半減期が第2の医薬剤より長いかどうかを判断することをさらに含む。
【0097】
ある実施形態において、第1の薬剤は、D2アンタゴニスト活性を有する(例えば、ハロペリドール又はリスペリドン)。ある実施形態において、第2の薬剤は、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストである。例えば、ある実施形態において、第2の薬剤は、ピマバンセリン又は本明細書に記載される5−HT2Aインバースアゴニスト若しくはアンタゴニストのいずれかである。
【実施例】
【0098】
実施例1−統合失調症患者に投与されるハロペリドール及びリスペリドンの併用
精神病の急性増悪を伴う統合失調症被験者の多施設二重盲検無作為化試験を行った。DSM−IVにより統合失調症と診断され、且つ陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)におけるベースラインスコアが少なくとも65(重度の精神病理)で、精神病下位尺度の2項目でスコアが4以上の被験者の参加を得た。被験者は、ハロペリドール1日2mgをプラセボとの同時投与か、ハロペリドール1日2mgをピマバンセリン1日20mgとの同時投与か、リスペリドン1日2mgをプラセボとの同時投与か、リスペリドン1日2mgをピマバンセリン20mgとの同時投与か、又はリスペリドン1日6mgをプラセボとの同時投与で投与するように無作為に割り当てた。1日2mgのリスペリドンを投与される被験者は、各1mgの2回の投薬を受けた。1日6mgのリスペリドンを投与される被験者は、各3mgの2回の投薬を受けた。この試験は約9週間継続され、それ以前の抗精神病薬を排出させるためのスクリーニング期間(2〜14日間)と、それに続く6週間の能動的な所定の投薬が含まれた。2週間後、経過観察のため被験者に再び診療所に来診してもらった。被験者は、スクリーニング中及び治験の最初の14日間は入院患者として処置し、その後、各治験責任者(PI)の判断により治験を完了し、外来患者とした。被験者は、薬物を使用しない導入期間(ベースライン−1日目)後のスクリーニングにおいて、及びその後は定期的に、PANSS、臨床全般印象評価尺度−重症度(CGI−S)、統合失調症に関するカルガリー鬱病評価尺度(CDSS)、シンプソン・アンガス評価尺度(SAS)、及びバーンズアカシジア評価尺度(BAS)により評価した。
【0099】
18〜65歳の年齢が含まれる、統合失調症の臨床診断(DSM−IV 295.XX)を有する男性及び女性の被験者の参加を得た。被験者は急性精神病憎悪を患っており、少なくとも中等度の精神病理(PANSSにおける合計スコアが65以上)を有し、且つ以下の4つのPANSS項目、すなわち、妄想、幻覚様行動、概念の解体又は猜疑心のうち2つについて(2項目のうち少なくとも一方は、妄想又は幻覚様行動でなければならない)4以上のスコアを有する。被験者は、抗精神病治療に対し陽性反応の精神病憎悪の既往病歴を有し、且つ少なくとも3ヶ月の先行する抗精神病治療歴を有する。換言すれば、抗精神病治療に対して抗療性であった病歴を有するか、又は精神病の発現を初めて経験している最中の被験者は除外される。
【0100】
全ての被験者が、1日2回(BID)の試験薬剤の経口投薬を受けた。ハロペリドールを与えられた被験者は、1日合計2mgを午前の単回投薬で、それに続き午後にプラセボ投薬を受けた。1日2mgのリスペリドンを投与された被験者は、各1mgの2回の投薬を受けた。1日6mgのリスペリドンを投与された被験者は、各3mgの2回の投薬を受けた。ピマバンセリンを投与された被験者は、1日合計20mgを午前の単回投薬で、それに続き午後にプラセボ投薬を受けた。このように各被験者が、盲検方式で試験薬剤のBID投薬を受けた。
【0101】
被験者は、ベースライン/参加時(試験−1日目)と、その後は定期的に、治験の能動的な投薬部分全体にわたって(試験1、8、15、22、29、36、及び43日目)評価した。これらの臨床評価には、バイタルサイン、病歴及び検査(精神医学的及び簡易神経学的評価を含む)、ECG測定値、臨床評価尺度の適用、報告又は観察された有害事象を含む安全性評価、臨床化学(1、22及び36日目を除く)、並びに、ピマバンセリン、ハロペリドール、及びリスペリドン濃度用の血漿試料採取が含まれた。治験の能動投薬部分の終了後2週間経った57日目の最後の経過観察来診には、医学的評価、安全性臨床検査、並びに、ピマバンセリン、ハロペリドール、及びリスペリドン濃度用の血漿試料採取が含まれた。プロラクチン値、体重増加、及びグルコース値もまたモニタした。
【0102】
精神病及び陰性症状の臨床評価尺度は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)である。臨床全般印象評価尺度(CGI−S)は、臨床重症度の全般的な評価である。錐体外路症状(EPS)の尺度としては、シンプソン・アンガス評価尺度(SAS)及びバーンズアカシジア評価尺度(BAS)が挙げられる。最終的に、統合失調症用のカルガリー鬱病評価尺度(CDSS)が含まれた。
【0103】
PANSSは、30項目、7点の評価システムであり、簡易精神症状評価尺度から構成されたものである。これは、具体的に統合失調症の対象者における陽性症状、陰性症状、及び全般的な精神病理を測定するセクションを有する。PANSSは抗精神病薬治療の治験で広範に用いられており、かかる使用向けに公式に認められている。全ての尺度を、スクリーニング時、ベースライン時(試験−1日目)、並びに試験1日目及び57日目を除く各臨床評価のなかで適用した。
【0104】
CGI−Sは3つの下位尺度からなる。CGI−S(疾病の重症度)は、疾病の全般的な重症度を評価するように設計されている。CGI−Sは、ベースライン時(試験−1日目)、並びに試験1日目及び57日目を除く各臨床評価において適用した。
【0105】
SASは錐体外路運動の影響の評価基準である。この10項目、5点の尺度は、歩行障害、筋緊張、及び振戦を含む様々な錐体外路症状を評価するように設計されている。この尺度を、ベースライン時(試験−1日目)、並びに試験57日目を除く全ての臨床評価において適用した。
【0106】
BASは別の錐体外路運動の影響の評価基準である。BASは、特に抗精神病剤を使用することで起こる薬物誘発性の静坐不能を測定するように設計された。BASは、4項目の完全に固定された尺度である。3項目(すなわち、他覚的静坐不能、不穏状態の自覚、及び不穏に関連する自覚的苦痛)は4点尺度で評価し、静坐不能の全般的な臨床評価には6点尺度を用いる。この尺度を、ベースライン時(試験−1日目)、並びに試験57日目を除く全ての臨床評価において適用した。
【0107】
ピマバンセリンによる補助治療の情動症状に対する効果もまた評価した。CDSSは9項目、4点尺度であり、特に、精神病被験者のうつ症状を、こうした集団に認められる陽性、陰性、及び錐体外路症状は別にして測定するよう設計されたものである。これは、統合失調症の治療治験で広範に用いられており、かかる使用向けに認められている。この尺度を、スクリーニング時、並びに1日目及び57日目を除く全ての臨床評価において適用した。
【0108】
スクリーニング期間中(スクリーニングから試験−1日目まで)、全ての被験者が、必要と判断されときに認められた併用薬剤のみを服用する。少なくとも無作為化(−1日目)の2日前には、全ての前抗精神病薬、気分安定剤及び抗鬱治療剤を完全に排出させる。その後、調査対象の試験薬物は全て、治験期間中1日2回投与する。
【0109】
図2は、各処置群についてPANSSスコアのベースラインからの総変化(平均値±SE)を表すグラフである。ピマバンセリン/リスペリドンの併用は15日目以降、低用量のリスペリドン(2mg)と比較してPANSSスコアの有意に大幅な低下を生じた。図3Aは、15日目にPANSS合計が20%以上改善した被験者の百分率を表す棒グラフである。図3Bは、43日目における同じデータを示す。ピマバンセリン/リスペリドンに対する反応は、15日目には低用量(2mg)及び高用量(6mg)のリスペリドンと比べて有意に大きく(それぞれ、p=0.002及び0.013)、43日目には低用量のリスペリドンと比べて有意に大きかった(p=0.001)。
【0110】
図4Aは、PANSS陽性症状尺度のベースラインからの変化(平均値±SE)を表すグラフである。ピマバンセリン/リスペリドンの併用に対する反応は、15〜36日目に低用量のリスペリドンと比べて有意に大きかった(p<0.05)。この併用は、高用量のリスペリドンとの有意な差はなかった。図4Bは、PANSS陰性症状尺度の変化を示す。ピマバンセリン/リスペリドンの併用に対する反応は、15日目以降、低用量のリスペリドンと比べて有意に大きかった(p<0.05)。この併用は、高用量のリスペリドンとの有意な差はなかった。
【0111】
図5Aは、PANSS全般精神病理尺度のベースラインからの変化(平均値±SE)を表すグラフである。ピマバンセリン/リスペリドンの併用に対する反応は、低用量のリスペリドンと比べ、15日目以降の全ての時点において有意に大きかった(p<0.005)。この併用はまた、15日目及び20日目に高用量のリスペリドンと比較して変化が大きい傾向を示した。図5Bは、PANSS認知尺度の変化を示す。ピマバンセリン/リスペリドンの併用に対する反応は、低用量のリスペリドンと比べて36日目に有意に良好で(p<0.05)、22日目(p<0.05)及び43日目(p<0.07)には上回る傾向があった。
【0112】
図6は、CGI重症度尺度のベースラインからの変化(平均値±SE)を表すグラフである。ピマバンセリン/リスペリドンを併用するときの変化は、15〜43日目に低用量のリスペリドンと有意な差があった。この併用と高用量のリスペリドンとの間に有意な差は認められなかった。
【0113】
図7Aは、試験終了時に少なくとも7%の体重増加があった被験者の百分率を表す棒グラフである。この結果は、低用量(p=0.08)又は高用量(p=0.031)のリスペリドンのいずれかを単独で与えられた患者と比較して、ピマバンセリン/リスペリドンの併用を受けたときには、臨床的に有意な体重増加を起こした患者がより少なかったことを示している。図7Bは、ベースラインと比較した試験終了時の体重増加平均値を表す棒グラフである。ピマバンセリン/リスペリドンの併用を受けた患者は、高用量のリスペリドンと比べて体重増加が少なかった(p=0.05)。
【0114】
図8A及び8Bは、それぞれ男性及び女性についての、治療終了時におけるプロラクチン値のベースラインからの変化(平均値±SE;ng/mL)を表すグラフである。男性及び女性の双方とも、ピマバンセリン/リスペリドン併用の患者のプロラクチン値は、高用量のリスペリドンを与えられた患者と比べて有意に低かった(男性p=0.015、女性p=0.004)。
【0115】
図9は、グルコース値のベースラインからの変化を示す棒グラフである。この結果から、ピマバンセリン/リスペリドンの併用を受けた患者は、高用量のリスペリドンを与えられた患者と比べてグルコースの増加量が小さかった(p=0.024)ことが示された。
【0116】
試験の結果は、ピマバンセリンをハロペリドールと同時投与すると、ハロペリドールの単独投与と同様の効力を有する高度に有意な抗精神病効力が提供された(p<0.0001)ことを実証している。図10は、レスポンダー率を表すグラフであり、レスポンダーは、PANSSスコアの少なくとも20%の低下を生じた被験者として定義される。この結果は、併用処置によって効力がより速く発現する傾向があったことを示している。具体的には、治療開始後2週間目に、ハロペリドール/ピマバンセリン併用のレスポンダー率は、ハロペリドール単独のレスポンダー率より高かった。
【0117】
表1に示すとおり、ハロペリドール/ピマバンセリンの併用もまた、ハロペリドールを単独投与したときに認められる体重増加と比べて増加幅が小さくなる結果となった。
【0118】
【表1】
【0119】
ピマバンセリンのリスペリドンとの同時投与はまた、高度に有意な抗精神病効力ももたらした(p<0.0001)。2mgのリスペリドンの単独投与と比較したとき、効力の亢進が認められ(PANNSスコアの平均変化が16.6点に対して23.0点)、6mgのリスペリドンの単独投与と比較したとき、同程度の効力が認められた。この併用の効力は、精神病の陽性症状及び陰性症状の双方について認められた。この同時投与により、1日6mgのリスペリドンの単独投与と比較して、情動的な離脱症状、自発性及び会話の脈絡の欠如、異常なわざとらしさ及び不自然な姿勢、運動発達遅滞、非協力性、判断力及び洞察力の欠如、衝動調節の低下、並びに先入観の治療が改善される結果となった。
【0120】
図11は、リスペリドンを与えられた被験者についてのレスポンダー率を表すグラフであり、レスポンダーは、PANSSスコアの少なくとも20%の低下を生じた被験者として定義される。この結果は、併用処置により効力がより速く発現したことを示している。具体的には、治療開始後2週間目に、リスペリドン/ピマバンセリン併用のレスポンダー率は、リスペリドン単独(2mg及び6mgの双方の用量)のレスポンダー率より高かった。
【0121】
表2に示すとおり、リスペリドン/ピマバンセリンの併用は、6mgのリスペリドンを単独投与したときに認められる体重増加と比べて増加幅が小さくなる結果となった。差は、統計的有意差に近かった(p=0.0784)。
【0122】
【表2】
【0123】
結論:低用量のリスペリドンのピマバンセリンとの併用は、反応の発現時間及び臨床反応が良好な患者の割合の点で、低用量又は高用量のいずれのリスペリドン単独よりも優れていた。ハロペリドールの効力は、ピマバンセリンによっては強化されなかったが、これはおそらく、ハロペリドールは単独でD2受容体の占有率が最適となる結果を十分に実現するが、低用量のリスペリドンは単独では十分でないためである。低用量の非定型+ピマバンセリンを用いる利点は、代謝計測値及びEPSの副作用負荷の軽減、及び潜在的に、効力の拡大にまで及ぶ。
【0124】
結論は、以下のとおり要約される:
・ピマバンセリンは低用量のリスペリドンの精神病理に対する効力を強化した一方、副作用を軽減した。
・ピマバンセリンはハロペリドールの効力を強化しなかった。
・低用量のリスペリドンは、他の処置と比べて有効性が有意に低かった。
・ピマバンセリンは、PANSS合計、POS、NEG、全般、及びCGIに関し、2週間目以降の全ての時点において低用量のリスペリドンの効力を亢進した。
・ピマバンセリン/リスペリドンは、PANSS合計が20%以上低下した患者の割合に関して、高用量のリスペリドン及び低用量のリスペリドンと比べて15日目の有効性が高かった。
・ピマバンセリン/リスペリドンは、全ての時点において、あらゆる評価基準で高用量のリスペリドン、ハロペリドール及びピマバンセリン/ハロペリドールと同程度の有効性であった。
・ピマバンセリン/リスペリドンは、7%以上体重が増加した患者の割合が、高用量のリスペリドン又は低用量のリスペリドンと比べて低かった。
・血清グルコース及びプロラクチン値(PRL)は、高用量のリスペリドンと比べてピマバンセリン/リスペリドンで低かった;PRL値は、リスペリドン患者と比較してハロペリドール処置患者で低かった。
・個別のリスペリドン及びハロペリドール治療群と比較して、ピマバンセリン併用治療群で静坐不能(akathesia)が少ない傾向があった。
【0125】
実施例2−マウスにおける薬物誘発性多活動を抑制するためのハロペリドール及びリスペリドンのピマバンセリンとの併用
雄性ノンスイスアルビノ(NSA)マウス及びスプラーグドーリーラット(SD)ラット(Harlan,San Diego,CA)を、本研究の被験動物として供した。動物は、環境が制御された室内において、0600時に照明を入れる12/12明暗サイクルで飼育した。ラットは2匹の群ごとに飼育し、マウスは8匹の群ごとに飼育した。餌及び水は、実験手順の期間を除き、自由に摂取させた。試験時、マウスの体重は20〜30gであり、ラットの体重は275〜325gであった。
【0126】
アンフェタミン、ジゾシルピン(すなわち、MK−801)、及びハロペリドールは、Sigma(St.Louis,MO)から入手した。リスペリドンは、Toronto Research Chemicals(North York,ON,カナダ国)から入手した。ピマバンセリンは、ACADIA Pharmaceuticals,Inc.が合成したものであった。薬物はいずれも、体重10g当たり0.1mL又は体重1kg当たり1.0mLの量で、それぞれマウス及びラットに投与した。アンフェタミン、ジゾシルピン、及びACP−103に使用した媒体は生理食塩水であった。アンフェタミン及びジゾシルピンは腹腔内(ip)投与した。ハロペリドール及びリスペリドンに使用した媒体は、特記されない限り、生理食塩水中の10%Tween 80であった。ハロペリドール及びリスペリドンは、特に注記されない限り、皮下(sc)投与した。ピマバンセリンの用量は遊離塩基として表され、sc経路で投与した。
【0127】
アンフェタミン誘発性過剰歩行活性アッセイ:マウスにおいて、運動活性チャンバ(AccuScan Instruments,Columbus,OH)に入れる15分前にアンフェタミン(3mg/kg)を投与することにより過剰歩行を生じさせた。媒体又は一定用量のピマバンセリン(0.03mg/kg)の存在下のハロペリドールについて、用量反応曲線を作成した。媒体又はハロペリドールは、活性チャンバに入れる30分前に注射した。媒体又はピマバンセリンはハロペリドールより30分前(すなわち、活性チャンバに入る60分前)に与えた。マウスを活性チャンバに入れる直前に、水平ワイヤテスト(Vanover et al.,2004)を用いて運動失調及び筋肉の協調運動障害があるか判定した。チャンバに入れた後、15分間のセッションの間の合計移動距離(DT)をcm単位で測定した。用量反応曲線を求めるため、DTローデータを%MPIに変換した:%MPI=((薬物又は薬物の併用のDT−アンフェタミン対照のDT)/(媒体対照のDT−アンフェタミン対照のDT))×100。ID50値と、それに対応する95%CIを先述のとおり決定した。マウスは事前にチャンバに曝露されることはなく、各用量の組み合わせは別個のマウス群で試験した。
【0128】
ジゾシルピン誘発性過剰歩行活性アッセイ:マウスにおいて、運動活性チャンバに入れる15分前にジゾシルピン(0.3mg/kg)を投与することにより過剰歩行を生じさせた。ハロペリドール、リスペリドン及びピマバンセリンについて、用量反応曲線を作成した。活性チャンバに入れる30分前にハロペリドール又はリスペリドンを注射し、60分前にピマバンセリンを投与した。マウスを活性チャンバに入れる直前に、先述のとおり運動失調及び筋肉の協調運動障害があるか判定し、15分間のセッションの間のDTを測定した。ローデータを%MPIに変換し、ID50値と、それに対応する95%CIを先述のとおり決定した。マウスは事前にチャンバに曝露されることはなく、各用量の組み合わせは別個のマウス群で試験した。
【0129】
薬物相互作用試験:アイソボログラム解析を用いることにより、ジゾシルピン誘発性過剰歩行活性の抑制に対するハロペリドール又はリスペリドンのいずれかとピマバンセリンとの間の薬物相互作用の性質を決定した。この方法は、各個別薬剤の用量が等しい有効性となるように決定される用量の組み合わせの比較に基づく。今回の場合、用量反応曲線は、個別のID50計算値に基づく一定の用量比でハロペリドール又はリスペリドンのいずれかをピマバンセリンと同時投与した後に作成した。従って、別個の群に以下を与えた:ピマバンセリンID50+ハロペリドール又はリスペリドンID50;(ピマバンセリンID50+ハロペリドール又はリスペリドンID50)/2;(ピマバンセリンID50+ハロペリドール又はリスペリドンID50)/4;及び(ピマバンセリンID50+ハロペリドール又はリスペリドンID50)/8。併用した薬剤(すなわち、ピマバンセリン+ハロペリドール又はピマバンセリン+リスペリドン)について得られた用量反応曲線に基づき、各薬物併用のID50値及び95%CIを得た。
【0130】
マウスにおけるアンフェタミン誘発性過剰歩行の抑制に対するハロペリドール単独での、及びピマバンセリンとの併用での効果:図12Aは、様々な投与薬剤についての、ハロペリドール用量に応じた移動距離を示すグラフである。媒体対照(白抜き丸印)と比べて、アンフェタミン(白抜き三角印)ではマウスにおいて過剰歩行活性が有意に増加した(DTは媒体対照で得られた876±42cmから2764±230cmに増加)。0.03mg/kgの用量のピマバンセリン(黒丸印)は、アンフェタミンによって生じた過剰歩行を抑制できなかった。対照的に、ハロペリドール(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって生じた多活動を用量依存的に減弱した。しかしながら、ハロペリドールは、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、アンフェタミン誘発性過剰歩行活性の抑制の亢進を示した。
【0131】
図12Aに含まれるローデータを%MPIに変換して、図12Bに表される用量反応曲線を生成した。ハロペリドール(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって誘発された多活動の用量依存的な減弱を生じ、ID50計算値は0.012mg/kg(0.009〜0.016;95%CI)であった。しかしながら、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、ハロペリドールの用量反応曲線は約10倍左にシフトし、ID50計算値は0.0013mg/kg(0.0005〜0.0031;95%CI)であった。ピマバンセリンとハロペリドールとを併用すると、効力が9.5倍(3.8〜23.8;95%CI)シフトする結果となった。各データ点は最小n数が8に相当する。
【0132】
マウスにおけるジゾシルピン誘発性過剰歩行の抑制に対するハロペリドール及びピマバンセリンの単独及び併用での効果:図13Aは、ハロペリドール(白抜き四角印)、ピマバンセリン(黒四角印)、及びハロペリドールのピマバンセリンとの1:1の一定用量比での併用(黒丸印)についての、ジゾシルピン誘発性多活動の抑制に関する用量反応曲線を表すグラフである。各データ点は最小n数が16に相当する。予想されたとおり、ジゾシルピン処置ではDTが媒体対照で得られた792±40cmから2227±116cmに有意に増加した。ハロペリドール又はピマバンセリンのいずれかを投与すると、ジゾシルピン誘発性過剰歩行の用量依存的な減弱が誘発され、それぞれ、0.07mg/kg(0.063〜0.087;95%CI)及び0.09mg/kg(0.067〜0.12;95%CI)のID50値が実現した。このアッセイにおいてハロペリドールとピマバンセリンとが等効力であったことを考え、1:1の一定用量比(ハロペリドール:ACP−103)を、0.06+0.06mg/kgの近似ID50用量の組み合わせの分数で投与した(ID50/2=0.03+0.03mg/kg;ID50/4=0.015+0.015mg/kg;ID50/8=0.0075+0.0075mg/kg)。ハロペリドールとピマバンセリンとを同時投与すると、ジゾシルピンによって誘発された過剰歩行活性の用量依存的な減弱が生じ、103±6%の%MPIが実現した。
【0133】
等効力の比を用いてアイソボログラム解析を行い、その結果のアイソボログラムを図13Bに提示する。ピマバンセリン及びハロペリドールの単独投与時のID50(及び95%CI)計算値(白抜き四角印)が、それぞれx軸上及びy軸上にプロットされる。これらの2つの点を結ぶ破線は、理論上の相加ラインを表す。用量併用のID50実験値(黒丸印、B)は、ID50理論値(黒四角印、A)と比べて有意に低かったことから、相乗的な相互作用が示される。用量を混ぜたID50実験値は、ID50理論値と比べて有意に低く、値はそれぞれ0.04mg/kg(0.03〜0.05;95%CI)及び0.08mg/kg(0.68〜0.93;95%CI)であった。これらの結果は、50%のハロペリドール用量で効力が維持されることを示している。
【0134】
マウスにおけるジゾシルピン誘発性過剰歩行の抑制に対するリスペリドン及びピマバンセリンの単独及び併用での効果:図14Aは、リスペリドン(白抜き四角印)、ピマバンセリン(黒四角印)、及びリスペリドンのピマバンセリンとの1:18の一定用量比の併用(黒丸印)についての、ジゾシルピン誘発性多活動の抑制に関する用量反応曲線を表すグラフである。各データ点は最小n数が16に相当する。前の実験と同じく、ジゾシルピン処置では合計DTが媒体対照で得られた649±67cmから2020±223cmに有意に増加した。リスペリドン又はピマバンセリンのいずれかを投与すると、ジゾシルピン誘発性過剰歩行の用量依存的な減弱が誘発され、それぞれ0.0045mg/kg(0.003〜0.006;95%CI)及び0.09mg/kg(0.067〜0.12;95%CI)のID50値が実現した。このアッセイにおいて、ピマバンセリンと比べてリスペリドンの効力がより高かったことを考え、1:18の一定用量比(リスペリドン:ピマバンセリン)を0.005+0.09mg/kgの近似ID50用量の組み合わせの分数で投与した(ID50/2=0.0025+0.045mg/kg;ID50/4=0.00125+0.0225mg/kg;ID50/8=0.000625+0.01125mg/kg)。リスペリドンとピマバンセリンとを同時投与すると、ジゾシルピンによって誘発された過剰歩行活性の用量依存的な減弱が生じ、82±8%の%MPIが実現した。
【0135】
一定用量比を用いてアイソボログラム解析を行い、その結果のアイソボログラムを図14Bに提示する。ピマバンセリン及びリスペリドンの単独投与時のID50(及び95%CI)計算値(白抜き四角印)が、それぞれx軸上及びy軸上にプロットされる。これらの2点を結ぶ破線は、理論上の相加ラインを表す。用量併用のID50(黒丸印、B)はID50理論値(黒四角印、A)と比べて有意に低かったことから、相乗的な相互作用が示される。用量を混ぜたID50実験値は、ID50理論値と比べて有意に低く、それぞれ値が0.0032mg/kg(0.0007〜0.0058 95%CI)及び0.045mg/kg(0.035〜0.054;95%CI)であった。これらの結果は、1/3のリスペリドン用量で効力が維持されることを示している。
【0136】
結論:ピマバンセリンはアンフェタミン誘発性多活動を抑制しない用量でも、ハロペリドールと併用されると、アンフェタミン誘発性多活動に対するハロペリドールの効力は約10倍のシフトを生じた。さらに、ピマバンセリンは、ハロペリドールと、及びリスペリドンと相乗的に相互作用して、ジゾシルピン誘発性多活動を軽減した。ピマバンセリンの上記の相加作用は、ピマバンセリンの存在下ではこれらの薬剤の脳内曝露が大きく変わることはなかったため、ハロペリドール又はリスペリドンのいずれかの薬物動態を単純に変えただけでは実現されなかった。例えば、表3は、様々な投薬量のピマバンセリン及びハロペリドールの脳内レベルを示す。この結果は、半分のハロペリドール脳濃度との併用を用いて完全な効力を実現できることを示している。これらの試験で用いられる用量は、5−HT2A受容体の作用機構に整合的である。これらのデータは、5−HT2A受容体に対して高親和性を有する化合物であっても、抗精神病様活性を誘発する用量では、完全な5−HT2A受容体の占有は実現されそうにないことを示している。
【0137】
【表3】
【0138】
これらのモデルでは、5−HT2A受容体の遮断が抗精神病薬(APD)の作用を亢進する機序は分かっていないが、微量透析法及び他の試験がいくつかの可能性を示唆している。いかなる特定の理論によっても制約されることはないが、1つの可能性は、5−HT2Aインバースアゴニストがドパミン(DA)伝達に対して局所的に特異的な効果を有し得ることである。先行研究は、DOIによりDA放出が増加し、側坐核(NAC)におけるアンフェタミン誘発性のDA放出が高まることを示しており、これは、5−HT2A受容体インバースアゴニストが、基礎的なDA放出ではなく、誘発された放出を調節する傾向が強いことを示唆している。アンフェタミン多活動を強力に阻害するハロペリドールは、ピマバンセリンによって遮断される効果であるNACにおけるDA放出を逆説的に増加させることが示されている。これらのデータは、ピマバンセリンが、NACにおいて誘発されたDA放出の直接的又は間接的な調節を介してハロペリドールの作用を強化し得ることを示唆する。別の可能性は、5−HT2Aインバースアゴニストが辺縁又は皮質構造におけるAPD誘発性のセロトニン作動性伝達の亢進に関連する「精神病促進」動因を遮断し得ることである。NMDAアンタゴニストの全身投与後、NAC及び内側前頭前皮質(mPFC)において細胞外DA及び5−HT濃度は上昇する。高用量のクロザピン及びオランザピンなどの非定型APDは、NACと比較してmPFCにおけるDA放出の選択的な上昇を生じさせるが、これはハロペリドールなどの定型APDには該当せず、これは非定型APDが統合失調症における認知をどのように改善するかを説明し得る特性である。機序が何であれ、これらの知見は、ピマバンセリンが抗精神病作用の予測モデルにおいてAPDに対する用量節約効果を有することを示している。
【0139】
結論として、上記のデータは、ピマバンセリンが、5−HT2A受容体拮抗作用又は逆作動を介して、抗精神病効力を維持するか、又は向上させると同時に、D2受容体拮抗作用によって媒介される望ましくない副作用の重症度を軽減することができるような有意な用量節約効果をもたらすことを示唆している。リスペリドンでの知見は、5−HT2A受容体に対して本質的に高親和性を有する非定型APDであっても、このピマバンセリンの用量節約利益が現れることを示唆している。これは、5−HT2A受容体に対して比較的高親和性のAPDであっても、臨床上の耐性用量では5−HT2A受容体遮断が完全には実現されないという臨床知見と一致する。
【0140】
実施例3−マウスにおける薬物誘発性多活動を抑制するためのアリピプラゾール及びクエチアピンのピマバンセリンとの併用
アリピプラゾール及びクエチアピン抗精神病薬を用いて、上記の実施例2のプロトコルを繰り返した。図15Aは、様々な投与薬剤についての、アリピプラゾール用量に応じた移動距離を示すグラフである。媒体対照(白抜き丸印)と比べて、アンフェタミン(白抜き三角印)はマウスにおける過剰歩行活性を有意に増加させる。0.03mg/kgの用量のピマバンセリン(黒丸印)は、アンフェタミンによって生じた過剰歩行を抑制できなかった。対照的に、アリピプラゾール(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって生じた多活動を用量依存的に減弱した。しかしながら、アリピプラゾールは、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、アンフェタミン誘発性過剰歩行活性の抑制の亢進を示した。
【0141】
図15Aに含まれるローデータを%MPIに変換して、図15Bに図示される用量反応曲線を生成した。アリピプラゾール(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって誘発された多活動の用量依存的な減弱を生じさせた。しかしながら、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、アリピプラゾールの用量反応曲線は左に大きくシフトした。
【0142】
図16Aは、様々な投与薬剤についての、クエチアピン用量に応じた移動距離を示すグラフである。媒体対照(白抜き丸印)と比べて、アンフェタミン(白抜き三角印)はマウスにおける過剰歩行活性を有意に増加させる。0.03mg/kgの用量のピマバンセリン(黒丸印)は、アンフェタミンによって生じた過剰歩行を抑制できなかった。対照的に、クエチアピン(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって生じた多活動を用量依存的に減弱した。しかしながら、クエチアピンは、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、アンフェタミン誘発性過剰歩行活性の抑制の亢進を示した。
【0143】
図16Aに含まれるローデータを%MPIに変換して、図16Bに図示される用量反応曲線を生成した。クエチアピン(白抜き四角印)は、アンフェタミンによって誘発された多活動の用量依存的な減弱を生じさせた。しかしながら、一定用量のピマバンセリンと併用すると(0.03mg/kg、黒四角印)、クエチアピンの用量反応曲線は左にシフトした。
【0144】
マウスにおけるジゾシルピン誘発性過剰歩行の抑制に対するクエチアピン及びピマバンセリンの単独及び併用での効果もまた評価した。アイソボログラム解析を行い、その結果のアイソボログラムを図17に提示する。ピマバンセリン及びクエチアピンの単独投与時のID50(及び95%CI)計算値(白抜き四角印)が、それぞれx軸上及びy軸上にプロットされる。これらの2点を結ぶ破線は、理論上の相加ラインを表す。用量併用のID50実験値(黒四角印、B)はID50理論値(黒丸印、A)との有意な差を有しなかったことから、相加的な相互作用が示される。
【0145】
実施例4−抗精神病薬を投与されたマウスにおいて認知機能障害を逆転させるためのピマバンセリンの使用
生体内マウス認知モデルにおいて、様々な抗精神病薬を単独で、又はピマバンセリンとの併用でマウスに投与した。化合物は、訓練後1時間(動物が通常、新しい物体と見慣れた物体とを行動上識別する時点)、及び訓練後2時間(これらの動物が通常、それ以上物体の間の違いを識別しなくなる時点)でマウスに投与した。
【0146】
図18は、媒体、ピマバンセリン(0.3mg/kg)、リスペリドン、オランザピン、及びピマバンセリンをリスペリドン又はオランザピンとの併用で投与したときの、新規物体認識率の棒グラフである。この結果は、ピマバンセリンが、リスペリドン及びオランザピンによって引き起こされた新規物体の認識機能障害を逆転させることを示している。
【0147】
放射状迷路生体内マウス認知モデルにおいて、ピマバンセリンとリスペリドンとの併用もまた評価した。図19は、媒体、リスペリドン、ピマバンセリン(1mg/kg)、及びリスペリドンをピマバンセリンとの併用で投与したときの、反復試験後の作業記憶エラーを示すグラフである。この結果から、ピマバンセリンが、リスペリドン(ripseridone)によって誘発された認知障害を改善したことが示された。
【0148】
実施例5−ピマバンセリンを抗精神病薬と同時投与したときの他の副作用の減弱
プロラクチンアッセイ:ハロペリドール、リスペリドン及びピマバンセリンについて、血清プロラクチン値に関する用量反応曲線を生成した。ラットに媒体(100%ジメチルスルホキシド)、ハロペリドール又はリスペリドンを腹腔内投与し、一方、ピマバンセリン又は媒体(生理食塩水)を皮下投与した。媒体、ハロペリドール又はリスペリドンの投与後30分、又はピマバンセリンの投与後60分に血液試料を採取した。ラットはイソフルランで深麻酔をかけ、心穿刺により血液試料を採取してそのまま凝血させ、その後12,000rpmで10分間遠心にかけて分析用の血清を得た。市販の酵素免疫測定キット(ALPCO Diagnostics,Windham,NH)を用いて血清プロラクチン値を定量した。
【0149】
ハロペリドール又はリスペリドンとピマバンセリンとの間の血清プロラクチン値に対する潜在的な相互作用を調査するため、ラットに媒体又は様々な用量のピマバンセリンのいずれかを皮下投与し、その30分後、媒体又は一定用量のハロペリドール又はリスペリドンのいずれかを腹腔内投与した。媒体、ハロペリドール又はリスペリドンの投与後30分に(すなわち、媒体又はピマバンセリン投与後60分に)血液試料を採取した。試料採取の時点は、自身及び他の者(Liegeois et al.,2002b)の研究に基づき選択したもので、こうした研究は、30分が、それぞれリスペリドン又はハロペリドールの処置後にプロラクチンピーク値を検出できる時間と考えられることを示している。一定用量のハロペリドール(0.1mg/kg)及びリスペリドン(0.01mg/kg)を選択し、これは、それらの用量が、統計的に有意で、且つ再現性があり、しかし最大下のプロラクチン上昇を誘発し、従って潜在的な上昇並びに降下の検出を可能としたためであった。
【0150】
ラットにおける血清プロラクチン値に対するハロペリドール及びリスペリドンの単独及びピマバンセリンとの併用での効果:図20Aは、ラットにおいて、リスペリドン(黒四角印)、ハロペリドール(白抜き四角印)及びピマバンセリン(黒丸印)の様々な用量に従い得られたプロラクチン値の用量反応を表すグラフである。媒体処置対照で得られた血清プロラクチン値は、30分後及び60分後にそれぞれ24±3ng/mL及び31±3ng/mLであった。予測されたとおり、ハロペリドール処置後60分でラットは、媒体対照と比較して、血清プロラクチン値の用量に関係した増加を示した。同様に、リスペリドン処置後30分で、血清プロラクチン値の用量依存的な増加が認められた。対照的に、最高3mg/kgのピマバンセリン処置によっては、媒体処置対照と比較して、血清プロラクチン値は有意に上昇しなかった。むしろ、ピマバンセリンで処置されたラットは、媒体及び3mg/kgのピマバンセリンの後に得られた値が、それぞれ31±3ng/mL及び15±0ng/mLであったとおり、血清プロラクチン濃度の有意な低下を示した。3mg/kgのピマバンセリンで処置した全てのラットは、検出限界未満の血清プロラクチン濃度を有した;従って、15ng/mLの値を割り当てた。
【0151】
図20Bは、ラットにおいて、媒体又は様々な用量のピマバンセリンの存在下で一定用量のリスペリドン(0.01mg/kg;黒いバー)又はハロペリドール(0.1mg/kg;白抜きのバー)に従い得られた血清プロラクチン値を表す。各データ点は最小n数が12に相当する。**はp<0.01を示す;*はp<0.05を示す。ハロペリドールの用量により、血清プロラクチン値は31±3ng/mLから102±12ng/mLに有意に上昇した。同様に、リスペリドンも血清プロラクチン値が24±3ng/mLから102±12ng/mLに有意に上昇した。しかしながら、5−HT2A受容体の遮断と一致する用量のピマバンセリンの存在下では、ハロペリドール又はリスペリドンのいずれかによって誘発されたプロラクチン血症の大きさが有意に減弱された。
【0152】
カタレプシー評価:ラットに、前肢を水平なバー(直径10mm)の上に載せ;卓上の上方10cmに持ち上げられた姿勢をとらせ、カタレプシーの間、カタレプシー最高値が120秒間となるまで硬直発作を記録した。カタレプシー値(CV)は、リスペリドン又はハロペリドールの腹腔内投与後、それぞれ30分及び60分でとった。ピマバンセリンの用量は、ハロペリドール又はリスペリドンのいずれかの60分前に皮下投与した。用量反応曲線を生成するため、未加工CVを最高可能カタレプシーパーセンテージ(%MPC)に変換した:%MPC=((CV薬物又は薬物併用−CV媒体対照)/(120−CV媒体対照))×100。最高カタレプシーの50%を誘発する用量(CD50)と、それに対応する95%CIを、各化合物について先述のとおり確定した。各用量又は用量の組み合わせは別個のラット群で評価した。
【0153】
ラットにおけるハロペリドール及びリスペリドン誘発性カタレプシーに対するピマバンセリンの効果:図21Aは、ハロペリドール用量に応じた用量反応曲線を表す。予測されたとおり、ハロペリドール(白抜き丸印)は、ラットにおいてカタレプシー時間の用量依存的な増加を生じさせた。ピマバンセリンは、試験用量のいずれにおいてもハロペリドール誘発性カタレプシーを強化することはなかった。ピマバンセリンの1mg/kg(黒丸印)又は3mg/kg(白抜き四角印)のハロペリドールとの併用は、ハロペリドール誘発性カタレプシーを有意に変化させることなく、CD50値はそれぞれ0.24mg/kg(0.16〜0.36;95%CI)及び0.38mg/kg(0.24〜0.61;95%CI)であった。しかしながら、10mg/kgのピマバンセリンをハロペリドールに加えると(黒四角印)、CD50観測値が0.27mg/kg(0.19〜0.39;95%CI)から0.53mg/kg(0.31−0.91;95%CI)へと有意に増加したことから、カタレプシーの軽減が示された。
【0154】
図21Bは、リスペリドン用量に応じた用量反応曲線を表す。予測されたとおり、リスペリドン(白抜き丸印)は、ラットにおいてカタレプシー時間の用量依存的な増加を生じさせた。各データ点は最小n数が12に相当する。媒体処置は、6.8±0.9秒間の最高CVを誘発した。ピマバンセリンは、10mg/kgに至るまでの用量でカタレプシーを誘発せず、10.5±2.4秒間の最高CVを実現したが、この値は媒体処置対照で得られた値と有意な差がなかった。対照的に、ハロペリドール及びリスペリドンの双方とも、用量依存的且つ顕著なCVの増加を生じさせ、それぞれ0.27mg/kg(0.19〜0.39;95%CI)及び1.1mg/kg(0.79〜1.62;95%CI)のCD50値が得られた。ピマバンセリンは、あらゆる試験用量において、カタレプシーについてのリスペリドン用量反応曲線の用量依存的で有意な右側への移動をもたらした。1mg/kg(黒丸印)、3mg/kg(白抜き四角印)又は10mg/kg(黒四角印)のピマバンセリンの存在下におけるリスペリドンのCD50計算値は、それぞれ、2.0mg/kg(1.3〜3.0;95%CI)、4.4mg/kg(2.6〜7.5;95%CI)及び5.1mg/kg(3.2〜8.3;95%CI)であったことから、カタレプシーの軽減が示される。
【0155】
考察:D2受容体の拮抗作用は、実験的にも臨床的にも、強いプロラクチン血症を生じさせる。同様に、非定型APDのリスペリドンもまた、ヒトにおいてハロペリドールと同程度に重篤なプロラクチン血症を誘発することが示されている。本研究では、ハロペリドール及びリスペリドンが、双方とも血清プロラクチンの強い上昇を生じさせた一方、ピマバンセリン単独では血清プロラクチン値は上昇せず、実際のところ僅かに低下したことが実証された。重要なことに、ピマバンセリンは、これらのAPDによって生じた高プロラクチン血症を強化せず、むしろ減弱した。下垂体における5−HT2受容体の発現を支持する解剖学的エビデンスがあるにもかかわらず、優位なデータにより、5−HT2A受容体によって媒介されるプロラクチン分泌の調節が、視床下部のレベルで起こることが示唆されている。血液脳関門(BBB)の外側にある下垂体D2受容体は、プロラクチン分泌の持続的な抑制を及ぼす一方、視床下部における5−HT2A受容体は活性化することで、プロラクチン上昇をもたらすDA放出を抑制する。従って、純粋なD2アンタゴニストは下垂体で直接作用することによりプロラクチン血症を誘発するが、それに対し、高度に脳透過性のAPD、特に高い5−HT2A/D2親和性比を有するもの(すなわち、オランザピン及びクロザピン)は、顕著な高プロラクチン血症を誘発することはなく、これは、こうした薬物が視床下部において十分な5−HT2A受容体遮断を実現して、下垂体におけるD2受容体遮断の作用に拮抗するためである。これは、ラットにおいて最高2.5mg/kgの用量で、線条体と比較して下垂体のD2受容体を選択的に占有することが示されているリスペリドンに関しては決定的に重要である。リスペリドンが実際にBBBを上手く通過できないのであれば、下垂体のD2における直接的な作用が、BBBの内部での5−HT2A受容体遮断によって拮抗される可能性は低いため、この薬物のプロファイルは非定型APDよりもむしろ定型薬と一層整合的である。この見解は、DOIによって生じた頭部の攣縮を減弱するのに必要な容量以下の用量でリスペリドンがプロラクチンを上昇させることを示した本研究における所見と整合的である。さらに、ピマバンセリンをリスペリドンと併用することにより、BBB内部において、リスペリドン誘発性高プロラクチン血症に拮抗するのに十分なレベルの5−HT2A受容体占有率に達した。まとめると、これらのデータは、ラット又はヒトにおいて、有意なD2受容体の拮抗作用がないとき、BBB内部ではリスペリドンが5−HT2A受容体の最高占有率を実現しないと思われることを示している。高プロラクチン血症は性機能障害などの数々の合併症と相関を有し、性機能障害は、特に男性において、これらの薬剤のノンコンプライアンスの突出した原因であるため、これらの知見は有意な臨床的妥当性を有する。
【0156】
最後に、この研究から、ハロペリドール及びリスペリドンは双方とも用量依存的なカタレプシーを生じたが、ピマバンセリン単独では、10mg/kgほどの高さ、すなわちDOI頭部攣縮アッセイにおけるID50より50倍高い用量でも検出可能なカタレプシーが誘発されず、D2受容体に対する親和性の欠如と整合的であることが実証された。ピマバンセリンはハロペリドール及びリスペリドンの効力を強化したが、ピマバンセリンは明らかに、いずれの薬物によって生じたカタレプシーも強化しなかったことが実証された。代わりに、最大上の5−HT2A受容体占有率が予測され得る用量(すなわち、10mg/kg)のピマバンセリンで、ハロペリドール誘発性カタレプシーの小さいが有意な軽減が認められた。ピマバンセリンは、5−HT2Aに対し5−HT2Cを約50倍上回る選択性を示す。これは、ピマバンセリンによるカタレプシーの減弱が、そのより弱い5−HT2C受容体相互作用を動因とし得ることを示唆している。インビボデータに基づくと、ピマバンセリンの5−HT2A受容体に対する選択性は5−HT2C受容体に対する選択性の約50倍であり、これは先行文献のインビトロデータと一致している。ピマバンセリンはまた、リスペリドン誘発性カタレプシーの有意な減弱も生じるが、これは1mg/kg程の低い用量である。ピマバンセリンによりリスペリドン誘発性カタレプシーに対して示される明らかな効力のシフトは、線条体D2受容体の70%超を占有すると推定されるリスペリドンの用量において存在すると予想される過剰量の5−HT2Aアンタゴニストの機能と思われる。従って、これらの用量を併用したときに予測され得るような、最大5−HT2A受容体占有率をはるかに超過した系においては、ピマバンセリン、及びおそらくはリスペリドンのより弱い5−HT2C拮抗特性が顕在化する可能性が高い。
【0157】
実施例6−ピマバンセリンのリスペリドンとの同時投与におけるプロラクチン値
第II相統合失調症併用治療治験において、ピマバンセリンをリスペリドンとの併用で用いてプロラクチン値を計測し、リスペリドンの単独投与と比較した。図22のグラフに表されるとおり、ピマバンセリン+リスペリドン(2mg)による併用治療群の患者は、リスペリドン(6mg)+プラセボ治療群の患者と比較して、処置42日後のプロラクチン値が有意に低かった(p=0.0001)。
【0158】
実施例7−同時投与後のピマバンセリン及びリスペリドン定常状態血漿濃度並びに5−HT2A及びD2受容体占有率のシミュレーション
20mgのピマバンセリンを1日1回経口投与した後の血漿濃度−時間プロファイル
平均血漿濃度−時間データを1−コンパートメントモデル(一次入力、遅延時間なし及び一次排出)に適用することにより、シミュレーションの初期パラメータを求めた。50mgのピマバンセリンを14回目に経口投薬した後の頻回用量平均血漿濃度−時間データを当てはめた。モデルに基づき、表4に示される薬物動態パラメータを推定した。
【0159】
【表4】
【0160】
表4に提供される薬物動態パラメータは、先行研究で報告されているピマバンセリンの頻回経口投薬後に得られた薬物動態パラメータと良く一致した。1つの例外は経口クリアランスで、これについては、推定されたパラメータが先行研究で報告された値(25.2L/時間)と比較していくらか低い。
【0161】
20mgのピマバンセリンを1日1回経口投与した後のピマバンセリンの血漿濃度−時間プロファイルを、表5に提供される初期パラメータを使用してシミュレートした。ピマバンセリンの単独投与についてシミュレートしたプロファイルを図23に示す。
【0162】
【表5】
【0163】
5mgのリスペリドンを1日1回経口投与した後の血漿濃度−時間プロファイル
平均血漿濃度−時間データを2−コンパートメントモデル(一次入力、ミクロ定常、遅延時間なし及び一次排出)に適用することにより、シミュレーションの初期パラメータを求めた。4mgのリスペリドンの単回経口用量を投与した後に得られた平均血漿濃度−時間データを当てはめた。モデルに基づき、表6に示される薬物動態パラメータを推定した。
【0164】
【表6】
【0165】
表6に提供される薬物動態パラメータは、リスペリドンについて先行研究で報告されている薬物動態パラメータと適度に良く一致する。しかしながら、モデルによって推定された二次パラメータは、パラメータの変動係数により示されるとおり不十分であった。
【0166】
表7に提供される初期パラメータを用いて、5mgのリスペリドンを1日1回経口投与した後のリスペリドンの血漿濃度−時間プロファイルをシミュレートした。リスペリドンの単独投与についてシミュレートしたプロファイルを図23に示す。
【0167】
【表7】
【0168】
リスペリドンは半減期が、ピマバンセリンの57.3時間と比較して19.9時間と短いため、ピーク血漿濃度とトラフ血漿濃度との間の変動はリスペリドンの方が大きいと見られる。ピマバンセリンが定常状態濃度に達するのは、8日間に相当する約200時間後である。ピマバンセリンのCmin,SS及びCmax,SSは、それぞれ約27.2及び34.5ng/mLである。定常状態最高濃度に達するのは、投薬約4時間である。
【0169】
ピマバンセリン及びリスペリドンの血漿薬物動態からの、セロトニン5−HT2A及びドパミンD2受容体占有率の経時的なシミュレーション
式1、Φ=(CR/CR+Kd)×100を用いて(式中、CRは受容体の周辺の非結合薬物の濃度(nM)であり、Kdは解離定数(nM)である)、受容体占有率(Φ、%)を計算した。
【0170】
CRは、血漿中の非結合薬物濃度が等しいことが仮定され、これは、血漿と脳との間の平衡が速く、脳に分布する間に薬物の能動輸送が起きないことを意味する。次にCRは、式2、CR=fu×Cpl(t)(式中、fuは血漿中の薬物の遊離画分であり、Cpl(t)は時刻tにおける血漿濃度である)を用いて計算され得る。
【0171】
表7のパラメータ及び上記で求めたCpl(t)を用いて、ピマバンセリン及びリスペリドンの5HT2A及びD2受容体占有率を推定した。
【0172】
【表8】
【0173】
ピマバンセリン(20mg/24時間)及びリスペリドン(5mg/24時間)を別々に投与したときの受容体占有率−時間プロファイルを図24に示す。D2受容体及び5HT受容体の双方に作用するリスペリドンは、双方の受容体において高い占有率を実現した。リスペリドンより半減期の長いピマバンセリンが示した5HT受容体占有率の変動は、より小さかった。
【0174】
20mgのピマバンセリンの最初の経口投薬後、投薬後5時間で71%の5HT2A受容体占有率(tmax)に達した。対応するピマバンセリンの血漿濃度(Cmax)は8.6ng/mLである。ピマバンセリンの定常状態の5HT2A受容体占有率は、88〜91%を変動する。
【0175】
5mgのリスペリドンの最初の経口投薬後2.4時間における5HT2A受容体及びD2受容体の占有率計算値は、それぞれ98%及び96%である。対応するリスペリドンの血漿濃度は32.3ng/mLである。リスペリドンの定常状態のD2受容体占有率は、80%〜97%の範囲である。定常状態における5HT受容体の占有率は86%〜98%である。対応するリスペリドンの定常状態血漿濃度の最低値及び最高値は、4.9ng/mL及び36.6ng/mLである。
【0176】
ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のD2受容体及び5HT受容体の受容体占有率−時間プロファイルを図25に示す。ピマバンセリンの用量は、図24にあるとおり1日1回20mgに維持したが、リスペリドンの1日量は1日1回1mgまで減少させた。この結果は、D2受容体占有率が、より高用量のリスペリドンの単独投与と比較して有意に減少し(図24を参照)、一方、5HT受容体占有率は高レベルに維持されることを示している。これらの結果は、併用すると、5HTに関連する効力に影響を与えることなく、D2関連副作用の発生率の低下がもたらされ得ることを支持している。
【0177】
式1を用いてD2受容体占有率を計算した。式3:Φ=(CR1/(CR1+Kd5HT,1(1+CR2/Kd5HT,2))+(CR2/(CR2+Kd5HT,2(1+CR1/Kd5HT,1)))×100を用いて(式中、CR1、CR2、Kd5HT,1、Kd5HT,2は、それぞれ、ピマバンセリンの非結合濃度、リスペリドンの非結合濃度、ピマバンセリンの5HT2A受容体に対する解離定数及びリスペリドンの5HT2Aに対する解離定数である)、5HT受容体占有率を計算した。
【0178】
他のいくつかのリスペリドン用量もまた評価した。1日2回3mgのリスペリドン単独による治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図26Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図26Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回3mgに維持した。パリペリドンの受容体プロファイルに対する寄与は考慮に入れなかった。図26A及び図26Bは、1日2回3mgを投薬したときのリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により亢進されたことを示す。特に、半減期が短いピマバンセリンは長時間作用型であるため、併用では5HT受容体占有率の変動が減少した。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。
【0179】
1日2回3mgのリスペリドン単独による治療後のパリペリドン(リスペリドンの代謝産物)についてのD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図27Aに示す。リスペリドン用量は1日2回3mgに維持した。ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のパリペリドンについてのD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図27Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回3mgに維持した。受容体プロファイルに対するリスペリドン(risperdone)の寄与は考慮に入れなかった。図27A及び図27Bはさらに、1日2回3mgを投薬したときのリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により僅かに亢進したことを示す。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。
【0180】
リスペリドン及びパリペリドンの双方を考慮した1日2回3mgのリスペリドンによる治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図28Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図28Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回3mgに維持した。図28A及び図28Bはさらに、1日2回3mgを投薬したときのリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により僅かに亢進したことを示す。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。
【0181】
1日2回1mgのリスペリドン単独による治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図29Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図29Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回1mgに維持した。図29A及び図29Bについて、パリペリドンの受容体プロファイルに対する寄与は考慮に入れなかった。図29A及び図29Bは、1日2回1mgを投薬するリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により有意に亢進したことを示す。5HT受容体占有率の変動が併用では実質的に減少したことから、長時間作用型ピマバンセリンを短時間作用型リスペリドンと併用することの有益な効果が実証された。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。図26B(1日2回3mg用量のリスペリドンを示す)との比較から、D2受容体占有率の低下を伴う5HT受容体占有率のより有意な亢進が示される。
【0182】
1日2回1mgのリスペリドン単独による治療後のパリペリドンについてのD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図30Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとによる併用治療後のパリペリドンについてのD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図30Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回1mgに維持した。図30A及び図30Bについては、リスペリドン(risperdone)の受容体プロファイルに対する寄与は考慮に入れなかった。図30A及び図30Bは、1日2回1mgを投薬するリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により有意に亢進したことを示す。併用においては、5HT受容体占有率の変動の減少もまた認められた。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。図27B(1日2回3mg用量のリスペリドンを示す)との比較から、D2受容体占有率の低下を伴う5HT受容体占有率のより有意な亢進が示される。
【0183】
リスペリドン及びパリペリドンの双方を考慮した1日2回1mgの治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図31Aに示す。ピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療後のD2受容体及び5HT受容体占有率−時間プロファイルを図31Bに示す。ピマバンセリン用量は1日20mgに維持し、リスペリドン用量は1日2回1mgに維持した。図31A及び図31Bは、1日2回1mgを投薬するリスペリドン単独治療と比べて、5HTの受容体占有率がピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療により有意に亢進されたことを示す。併用においては、5HT受容体占有率の変動の減少もまた認められた。D2の受容体占有率は実質的に変化がないままであった。図28B(1日2回3mg用量のリスペリドンを示す)との比較から、D2受容体占有率の低下を伴う5HT受容体占有率のより有意な亢進が示される。
【0184】
まとめると、図24〜図31Bは、ピマバンセリンと低用量のリスペリドンとの併用により、結果として低用量のリスペリドン単独治療と比較して5HT2A受容体の受容体占有率が亢進され、リスペリドンの用量が低いため、D2受容体占有率の低下を実現し得ることを実証している。従って、ピマバンセリンとリスペリドンとの併用治療は、D2受容体の占有に起因する副作用を増加させることなく、抗精神病治療の効力を高めることができる。さらに、この結果は、長時間作用型薬物のピマバンセリンを短時間作用型薬物のリスペリドンと併用する結果、5−HT2A受容体占有率の変動が有意に小さくなり、投薬の合間も高レベルの占有率の維持が可能となることを実証している。
【0185】
本発明は、実施形態及び実施例を参照して説明されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく、数多くの様々な修正を加え得ることは理解されなければならない。従って、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗精神病薬による治療に適した病態の治療方法であって、
第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを投与することと、
第2の量の前記抗精神病剤を投与することと、
を含み、前記第1の量及び前記第2の量が、前記抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な作用がより速く実現される量である、方法。
【請求項2】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の量及び前記第2の量が、前記抗精神病剤の有効用量による単独投与と比較して、前記抗精神病剤に起因する1つ又は複数の副作用の重症度又は発現を軽減する量である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記副作用が体重増加である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記副作用が、錐体外路副作用、ヒスタミン性副作用、αアドレナリン作動性副作用、及び抗コリン作動性副作用からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記副作用が、脳卒中、振戦、鎮静、胃腸障害、神経学的障害、死亡リスクの増加、脳血管イベント、運動障害、ジストニー、静坐不能、パーキンソン病様運動障害、遅発性ジスキネジー、認知障害、プロラクチン血症、カタレプシー、精神病、神経遮断薬悪性症候群、心臓障害、呼吸器系障害、糖尿病、肝不全、自殺傾向、鎮静、起立性低血圧、窒息感、めまい感、頻脈、血液異常、トリグリセリド値の異常、コレステロール値の上昇、異常脂質血症、高血糖症、失神、痙攣発作、嚥下障害、持続勃起症、血栓性血小板減少性紫斑病、体温調節失調、不眠症、激越、不安、傾眠、攻撃的反応、頭痛、便秘、悪心、消化不良症、嘔吐、腹痛、唾液増加、歯痛、鼻炎、咳嗽、副鼻腔炎、咽頭炎、呼吸困難、背痛、胸痛、発熱、発疹、乾皮症、脂漏、上気道感染の増加、視覚異常、関節痛、感覚鈍麻、躁反応、集中力障害、口内乾燥症、疼痛、疲労、ざ瘡、皮膚そう痒症、筋肉痛、骨痛、高血圧症、下痢、錯乱、無力症、尿失禁、眠気、睡眠時間の増加、調節障害、動悸、勃起機能障害、射精機能障害、オルガスム障害、倦怠感、色素沈着の増加、食欲亢進、自動症、夢遊行動の増加、性欲の減退、神経過敏、鬱病、無関心、緊張病性反応、多幸症、リビドー亢進、健忘症、情動不安定、悪夢、譫妄、あくび、構音障害、眩暈、昏迷、錯感覚、失語症、感覚減退、舌麻痺、下肢痙攣、斜頸、筋緊張低下、昏睡、片頭痛、反射亢進、舞踏アテトーゼ、食欲不振症、鼓腸、口内炎、下血、痔核、胃炎、便失禁、おくび、胃食道逆流症、胃腸炎、食道炎、舌変色、胆石症、舌浮腫、憩室炎、歯肉炎、変色糞、消化管出血、吐血、浮腫、悪寒、不快感、蒼白、腹部膨張、腹水、サルコイドーシス、潮紅、過換気、気管支攣縮、肺炎、喘鳴、喘息、喀痰の増加、誤嚥、光線過敏症、発汗過多、ざ瘡、発汗減少、脱毛症、角質増殖症、皮膚剥脱、水疱性発疹、皮膚潰瘍、乾癬の憎悪、せつ腫症、疣贅、苔癬様皮膚炎、多毛症、性器そう痒症、蕁麻疹、心室頻拍症、狭心症、心房期外収縮、T波逆転、心室期外収縮、ST鬱病、房室ブロック、心筋炎、調節異常、眼球乾燥症、複視、眼痛、眼瞼炎、光視症、羞明、流涙異常、低ナトリウム血症、クレアチンホスホキナーゼ増加、口渇、体重減少、血清鉄の減少、悪液質、脱水、低カリウム血症、低タンパク血症、高リン血症、高グリセリド血症、高尿酸血症、低血糖症、多尿、煩渇多飲症、血尿、排尿困難、尿閉、膀胱炎、腎不全、関節症、骨癒合症、滑液包炎、関節炎、月経過多、膣乾燥症、非産褥性乳汁分泌、無月経、女性乳房痛、白帯下、乳腺炎、月経困難症、女性会陰痛、中間期出血、膣出血、SGOT上昇、SGPT上昇、胆汁うっ滞性肝炎、胆嚢炎、胆石症、肝炎、肝細胞傷害、鼻出血、表在性静脈炎、血栓性静脈炎、血小板減少症、耳鳴り、聴覚過敏、聴力低下、貧血、低色素性貧血、正球性貧血、顆粒球減少症、白血球増多、リンパ節症、白血球減少、ペルゲル・フエット核異常、女性化乳房、男性乳房痛、抗利尿ホルモン異常、苦味、排尿障害、注視痙攣、歩行異常、不随意筋収縮、及び外傷増加からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記病態が精神病であり、前記有効な作用が抗精神病作用である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記精神病が統合失調症に関連する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記精神病が急性精神病憎悪である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記病態が、統合失調症、双極性障害、激越、精神病、アルツハイマー病における行動障害、精神病性の特徴又は双極性の徴候を有する鬱病、強迫性障害、心的外傷後ストレス症候群、不安、人格障害(境界型及び統合失調型)、認知症、激越を伴う認知症、高齢者における認知症、トゥレット症候群、下肢静止不能症候群、不眠症、社会不安障害、気分変調症、ADHD、及び自閉症からなる群から選択される治療に適している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗精神病作用の迅速な発現を必要とする患者を特定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
抗精神病作用の迅速な発現を誘発する方法であって、精神病に罹患している対象者に対し、抗精神病作用が迅速に発現されるように5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む、方法。
【請求項14】
抗鬱作用の迅速な発現を誘発する方法であって、鬱病に罹患している対象者に対し、抗鬱作用が迅速に発現されるように5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む、方法。
【請求項15】
抗精神病治療に反応する患者の割合を増加させる方法であって、精神病に罹患している対象者に対し、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べてより高い割合の患者に有効な作用が生じるように、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと前記抗精神病剤とを同時投与することを含む、方法。
【請求項16】
抗精神病剤の投与に伴う体重増加を軽減又は抑制する方法であって、抗精神病剤の投与に伴う体重増加のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを前記抗精神病剤と同時投与することを含む、方法。
【請求項17】
抗精神病治療中の患者コンプライアンスを高める方法であって、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含み、前記同時投与の用量が、前記抗精神病剤の有効用量を単独投与するときの患者コンプライアンスと比較してコンプライアンスが高まる用量である、方法。
【請求項18】
抗精神病剤の投与に伴う血清グルコースの上昇を軽減又は抑制する方法であって、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを前記抗精神病剤と同時投与することを含む、方法。
【請求項19】
抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇を軽減又は抑制し、且つ体重増加を軽減又は抑制する方法であって、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇及び体重増加のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを前記抗精神病剤と同時投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記抗精神病剤が定型抗精神病薬である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗精神病剤が非定型抗精神病薬である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗精神病剤がD2アンタゴニストである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗精神病剤がリスペリドンである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗精神病剤がハロペリドールである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗精神病剤が、フェノチアジン、フェニルブチルピペリジン、ジベンザピン、ベンゾイソオキシジル、及びリチウム塩からなる群から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記フェノチアジンが、クロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、メソリダジン(Serentil(登録商標))、プロクロルペラジン(Compazine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril)、フルフェナジン(Prolixin(登録商標))、ペルフェナジン(Trilafon(登録商標))、及びトリフルオペラジン(Stelazine(登録商標))からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記フェニルブチルピペリジンがピモジド(Orap(登録商標))である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ジベンザピンが、クロザピン(Clozaril(登録商標))、ロキサピン(Loxitane(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroquel(登録商標))からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ベンゾイソオキシジルがジプラシドン(Geodon(登録商標))である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記リチウム塩が炭酸リチウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記抗精神病剤が、アリピプラゾール(Abilify(登録商標))、Etrafon(登録商標)、ドロペリドール(Inapsine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril(登録商標))、チオチキセン(Navane(登録商標))、プロメタジン(Phenergan(登録商標))、メトクロプラミド(Reglan(登録商標))、クロルプロチキセン(Taractan(登録商標))、Triavil(登録商標)、モリンドン(Moban(登録商標))、セルチンドール(Serlect(登録商標))、ドロペリドール、アミスルプリド(Solian(登録商標))、メルペロン、パリペリドン(Invega(登録商標))、及びテトラベナジンからなる群から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
リスペリドンの投与により引き起こされる高プロラクチン血症を軽減又は抑制する方法であって、リスペリドンの投与に伴う高プロラクチン血症のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを1日6mg未満のリスペリドンと同時投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、式(I):
【化1】
の化合物である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、
【化2】
からなる群から選択される化合物である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、アダタンセリン、アルタンセリン、ベナンセリン、ブロナンセリン、ブタンセリン、シナンセリン、エプリバンセリン、ファナンセリン、フリバンセリン、グレマンセリン、イフェランセリン、ケタンセリン、リダンセリン、ミアンセリン、ペランセリン、プルバンセリン、リタンセリン、セガンセリン、及びトロパンセリンからなる群から選択される、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記投与が18歳未満のヒトを対象とする、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
医薬組成物であって、
第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと、
第2の量の抗精神病剤と、
を含み、前記第1の量及び前記第2の量が、前記組成物を投与すると、前記抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な抗精神病作用がより速く実現される量である、医薬組成物。
【請求項38】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、式(I):
【化3】
の化合物である、請求項37〜39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記抗精神病剤がリスペリドンである、請求項37〜40のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと、
前記第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニスト及び第2の量の抗精神病剤の投与についての使用説明書と、
を含むパッケージであって、前記第1の量及び前記第2の量が、前記抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な抗精神病作用がより速く実現される量である、パッケージ。
【請求項43】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である、請求項42に記載のパッケージ。
【請求項44】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である、請求項42に記載のパッケージ。
【請求項45】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、式(I):
【化4】
の化合物である、請求項42〜44のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項46】
前記抗精神病剤がリスペリドンである、請求項42〜45のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項47】
第1の医薬剤が第2の医薬剤の薬理学的特性を調節することを判断することと、
前記第1の医薬剤の半減期が前記第2の医薬剤より長いことを判断することと、
前記第1の医薬剤と前記第2の医薬剤とを患者に同時投与することと、
を含む、治療方法。
【請求項48】
前記薬理学的特性が受容体占有率である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記薬理学的特性が前記第2の医薬剤の最小有効用量である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の薬剤の半減期が前記第2の薬剤の半減期より少なくとも約1.5倍長い、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記同時投与の結果、前記第2の薬剤が、前記第2の薬剤の連続投薬時間の少なくとも約50%にわたり有効なレベルで存在する、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記同時投与の結果、前記第2の薬剤が、前記第2の薬剤の連続投薬時間の実質的に全てにわたり有効なレベルで存在し、且つ、前記第1の薬剤が同じ投薬スケジュール及び投薬量により単独で投与されていたならば、連続投薬の実質的に全期間にわたって前記第2の薬剤が有効なレベルで存在することはなかったであろう、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の治療剤が単独投与された場合に、前記第2の治療剤が有効なレベルで存在し得る期間より長い期間にわたり、前記第2の薬理作用剤が有効なレベルで存在する結果となるような用量及び時間間隔で、前記第1の薬理作用剤及び前記第2の薬理作用剤が投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
試験治療剤が第1の半減期を有する治療剤との併用治療に適した候補であるかどうかを判断する方法であって、
前記第1の半減期より長い第2の半減期を有する試験治療剤を確保することと、
前記試験治療剤を前記治療剤との併用で投与することにより、単独で投与したときには効果を有しないレベルで前記治療剤が有効となり得るかどうかを評価することと、
を含む、方法。
【請求項55】
前記試験治療剤が、前記治療剤によって標的化される受容体の占有率レベルを亢進するかどうかを判断することをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項1】
抗精神病薬による治療に適した病態の治療方法であって、
第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを投与することと、
第2の量の前記抗精神病剤を投与することと、
を含み、前記第1の量及び前記第2の量が、前記抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な作用がより速く実現される量である、方法。
【請求項2】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の量及び前記第2の量が、前記抗精神病剤の有効用量による単独投与と比較して、前記抗精神病剤に起因する1つ又は複数の副作用の重症度又は発現を軽減する量である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記副作用が体重増加である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記副作用が、錐体外路副作用、ヒスタミン性副作用、αアドレナリン作動性副作用、及び抗コリン作動性副作用からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記副作用が、脳卒中、振戦、鎮静、胃腸障害、神経学的障害、死亡リスクの増加、脳血管イベント、運動障害、ジストニー、静坐不能、パーキンソン病様運動障害、遅発性ジスキネジー、認知障害、プロラクチン血症、カタレプシー、精神病、神経遮断薬悪性症候群、心臓障害、呼吸器系障害、糖尿病、肝不全、自殺傾向、鎮静、起立性低血圧、窒息感、めまい感、頻脈、血液異常、トリグリセリド値の異常、コレステロール値の上昇、異常脂質血症、高血糖症、失神、痙攣発作、嚥下障害、持続勃起症、血栓性血小板減少性紫斑病、体温調節失調、不眠症、激越、不安、傾眠、攻撃的反応、頭痛、便秘、悪心、消化不良症、嘔吐、腹痛、唾液増加、歯痛、鼻炎、咳嗽、副鼻腔炎、咽頭炎、呼吸困難、背痛、胸痛、発熱、発疹、乾皮症、脂漏、上気道感染の増加、視覚異常、関節痛、感覚鈍麻、躁反応、集中力障害、口内乾燥症、疼痛、疲労、ざ瘡、皮膚そう痒症、筋肉痛、骨痛、高血圧症、下痢、錯乱、無力症、尿失禁、眠気、睡眠時間の増加、調節障害、動悸、勃起機能障害、射精機能障害、オルガスム障害、倦怠感、色素沈着の増加、食欲亢進、自動症、夢遊行動の増加、性欲の減退、神経過敏、鬱病、無関心、緊張病性反応、多幸症、リビドー亢進、健忘症、情動不安定、悪夢、譫妄、あくび、構音障害、眩暈、昏迷、錯感覚、失語症、感覚減退、舌麻痺、下肢痙攣、斜頸、筋緊張低下、昏睡、片頭痛、反射亢進、舞踏アテトーゼ、食欲不振症、鼓腸、口内炎、下血、痔核、胃炎、便失禁、おくび、胃食道逆流症、胃腸炎、食道炎、舌変色、胆石症、舌浮腫、憩室炎、歯肉炎、変色糞、消化管出血、吐血、浮腫、悪寒、不快感、蒼白、腹部膨張、腹水、サルコイドーシス、潮紅、過換気、気管支攣縮、肺炎、喘鳴、喘息、喀痰の増加、誤嚥、光線過敏症、発汗過多、ざ瘡、発汗減少、脱毛症、角質増殖症、皮膚剥脱、水疱性発疹、皮膚潰瘍、乾癬の憎悪、せつ腫症、疣贅、苔癬様皮膚炎、多毛症、性器そう痒症、蕁麻疹、心室頻拍症、狭心症、心房期外収縮、T波逆転、心室期外収縮、ST鬱病、房室ブロック、心筋炎、調節異常、眼球乾燥症、複視、眼痛、眼瞼炎、光視症、羞明、流涙異常、低ナトリウム血症、クレアチンホスホキナーゼ増加、口渇、体重減少、血清鉄の減少、悪液質、脱水、低カリウム血症、低タンパク血症、高リン血症、高グリセリド血症、高尿酸血症、低血糖症、多尿、煩渇多飲症、血尿、排尿困難、尿閉、膀胱炎、腎不全、関節症、骨癒合症、滑液包炎、関節炎、月経過多、膣乾燥症、非産褥性乳汁分泌、無月経、女性乳房痛、白帯下、乳腺炎、月経困難症、女性会陰痛、中間期出血、膣出血、SGOT上昇、SGPT上昇、胆汁うっ滞性肝炎、胆嚢炎、胆石症、肝炎、肝細胞傷害、鼻出血、表在性静脈炎、血栓性静脈炎、血小板減少症、耳鳴り、聴覚過敏、聴力低下、貧血、低色素性貧血、正球性貧血、顆粒球減少症、白血球増多、リンパ節症、白血球減少、ペルゲル・フエット核異常、女性化乳房、男性乳房痛、抗利尿ホルモン異常、苦味、排尿障害、注視痙攣、歩行異常、不随意筋収縮、及び外傷増加からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記病態が精神病であり、前記有効な作用が抗精神病作用である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記精神病が統合失調症に関連する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記精神病が急性精神病憎悪である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記病態が、統合失調症、双極性障害、激越、精神病、アルツハイマー病における行動障害、精神病性の特徴又は双極性の徴候を有する鬱病、強迫性障害、心的外傷後ストレス症候群、不安、人格障害(境界型及び統合失調型)、認知症、激越を伴う認知症、高齢者における認知症、トゥレット症候群、下肢静止不能症候群、不眠症、社会不安障害、気分変調症、ADHD、及び自閉症からなる群から選択される治療に適している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗精神病作用の迅速な発現を必要とする患者を特定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
抗精神病作用の迅速な発現を誘発する方法であって、精神病に罹患している対象者に対し、抗精神病作用が迅速に発現されるように5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む、方法。
【請求項14】
抗鬱作用の迅速な発現を誘発する方法であって、鬱病に罹患している対象者に対し、抗鬱作用が迅速に発現されるように5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと抗精神病剤とを同時投与することを含む、方法。
【請求項15】
抗精神病治療に反応する患者の割合を増加させる方法であって、精神病に罹患している対象者に対し、抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べてより高い割合の患者に有効な作用が生じるように、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと前記抗精神病剤とを同時投与することを含む、方法。
【請求項16】
抗精神病剤の投与に伴う体重増加を軽減又は抑制する方法であって、抗精神病剤の投与に伴う体重増加のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを前記抗精神病剤と同時投与することを含む、方法。
【請求項17】
抗精神病治療中の患者コンプライアンスを高める方法であって、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを抗精神病剤と同時投与することを含み、前記同時投与の用量が、前記抗精神病剤の有効用量を単独投与するときの患者コンプライアンスと比較してコンプライアンスが高まる用量である、方法。
【請求項18】
抗精神病剤の投与に伴う血清グルコースの上昇を軽減又は抑制する方法であって、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを前記抗精神病剤と同時投与することを含む、方法。
【請求項19】
抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇を軽減又は抑制し、且つ体重増加を軽減又は抑制する方法であって、抗精神病剤の投与に伴う血清グルコース上昇及び体重増加のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを前記抗精神病剤と同時投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記抗精神病剤が定型抗精神病薬である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗精神病剤が非定型抗精神病薬である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗精神病剤がD2アンタゴニストである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗精神病剤がリスペリドンである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗精神病剤がハロペリドールである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗精神病剤が、フェノチアジン、フェニルブチルピペリジン、ジベンザピン、ベンゾイソオキシジル、及びリチウム塩からなる群から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記フェノチアジンが、クロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、メソリダジン(Serentil(登録商標))、プロクロルペラジン(Compazine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril)、フルフェナジン(Prolixin(登録商標))、ペルフェナジン(Trilafon(登録商標))、及びトリフルオペラジン(Stelazine(登録商標))からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記フェニルブチルピペリジンがピモジド(Orap(登録商標))である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ジベンザピンが、クロザピン(Clozaril(登録商標))、ロキサピン(Loxitane(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroquel(登録商標))からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ベンゾイソオキシジルがジプラシドン(Geodon(登録商標))である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記リチウム塩が炭酸リチウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記抗精神病剤が、アリピプラゾール(Abilify(登録商標))、Etrafon(登録商標)、ドロペリドール(Inapsine(登録商標))、チオリダジン(Mellaril(登録商標))、チオチキセン(Navane(登録商標))、プロメタジン(Phenergan(登録商標))、メトクロプラミド(Reglan(登録商標))、クロルプロチキセン(Taractan(登録商標))、Triavil(登録商標)、モリンドン(Moban(登録商標))、セルチンドール(Serlect(登録商標))、ドロペリドール、アミスルプリド(Solian(登録商標))、メルペロン、パリペリドン(Invega(登録商標))、及びテトラベナジンからなる群から選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
リスペリドンの投与により引き起こされる高プロラクチン血症を軽減又は抑制する方法であって、リスペリドンの投与に伴う高プロラクチン血症のリスクを有するか、又はそれを被っている対象者に対し、5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストを1日6mg未満のリスペリドンと同時投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、式(I):
【化1】
の化合物である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、
【化2】
からなる群から選択される化合物である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、アダタンセリン、アルタンセリン、ベナンセリン、ブロナンセリン、ブタンセリン、シナンセリン、エプリバンセリン、ファナンセリン、フリバンセリン、グレマンセリン、イフェランセリン、ケタンセリン、リダンセリン、ミアンセリン、ペランセリン、プルバンセリン、リタンセリン、セガンセリン、及びトロパンセリンからなる群から選択される、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記投与が18歳未満のヒトを対象とする、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
医薬組成物であって、
第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと、
第2の量の抗精神病剤と、
を含み、前記第1の量及び前記第2の量が、前記組成物を投与すると、前記抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な抗精神病作用がより速く実現される量である、医薬組成物。
【請求項38】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、式(I):
【化3】
の化合物である、請求項37〜39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記抗精神病剤がリスペリドンである、請求項37〜40のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストと、
前記第1の量の5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニスト及び第2の量の抗精神病剤の投与についての使用説明書と、
を含むパッケージであって、前記第1の量及び前記第2の量が、前記抗精神病剤を有効用量で単独投与するときと比べて有効な抗精神病作用がより速く実現される量である、パッケージ。
【請求項43】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその最高用量未満である、請求項42に記載のパッケージ。
【請求項44】
前記第2の量が、前記抗精神病剤を単独投与するときのその有効用量未満である、請求項42に記載のパッケージ。
【請求項45】
前記5−HT2Aインバースアゴニスト又はアンタゴニストが、式(I):
【化4】
の化合物である、請求項42〜44のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項46】
前記抗精神病剤がリスペリドンである、請求項42〜45のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項47】
第1の医薬剤が第2の医薬剤の薬理学的特性を調節することを判断することと、
前記第1の医薬剤の半減期が前記第2の医薬剤より長いことを判断することと、
前記第1の医薬剤と前記第2の医薬剤とを患者に同時投与することと、
を含む、治療方法。
【請求項48】
前記薬理学的特性が受容体占有率である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記薬理学的特性が前記第2の医薬剤の最小有効用量である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の薬剤の半減期が前記第2の薬剤の半減期より少なくとも約1.5倍長い、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記同時投与の結果、前記第2の薬剤が、前記第2の薬剤の連続投薬時間の少なくとも約50%にわたり有効なレベルで存在する、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記同時投与の結果、前記第2の薬剤が、前記第2の薬剤の連続投薬時間の実質的に全てにわたり有効なレベルで存在し、且つ、前記第1の薬剤が同じ投薬スケジュール及び投薬量により単独で投与されていたならば、連続投薬の実質的に全期間にわたって前記第2の薬剤が有効なレベルで存在することはなかったであろう、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の治療剤が単独投与された場合に、前記第2の治療剤が有効なレベルで存在し得る期間より長い期間にわたり、前記第2の薬理作用剤が有効なレベルで存在する結果となるような用量及び時間間隔で、前記第1の薬理作用剤及び前記第2の薬理作用剤が投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
試験治療剤が第1の半減期を有する治療剤との併用治療に適した候補であるかどうかを判断する方法であって、
前記第1の半減期より長い第2の半減期を有する試験治療剤を確保することと、
前記試験治療剤を前記治療剤との併用で投与することにより、単独で投与したときには効果を有しないレベルで前記治療剤が有効となり得るかどうかを評価することと、
を含む、方法。
【請求項55】
前記試験治療剤が、前記治療剤によって標的化される受容体の占有率レベルを亢進するかどうかを判断することをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図30A】
【図30B】
【図31A】
【図31B】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図30A】
【図30B】
【図31A】
【図31B】
【公表番号】特表2010−522198(P2010−522198A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554722(P2009−554722)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/057557
【国際公開番号】WO2008/116024
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508338751)アカドイア プハルマセウチカルス インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/057557
【国際公開番号】WO2008/116024
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508338751)アカドイア プハルマセウチカルス インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
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