説明

5−HT4受容体アゴニスト化合物に対する中間体を調製するためのプロセス

本発明は、5−HT受容体アゴニスト化合物の調製に有用な、式(I)の8−アザビシクロ[3.2.1]オクチル中間体を提供する。本発明はまた、そのような有用な中間体の調製のためのプロセスも提供する。例えば、本発明の化合物は、式(I)の化合物またはその塩であって、ここで、Rは、水素、−OHおよび−OPから選択され、ここで、Pはヒドロキシ保護基であり、Aは、−OC(O)−、−S(O)−および共有結合から選択され、Wは、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)および特定の部分から選択され、ここで、Zは、NC(O)R、NS(O)、S(O)、NHおよびNPから選択され、R、R、RおよびRは、独立してC1〜3アルキルであり、Pはアミノ保護基であり、nは0または1である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、5−HT受容体アゴニストとしての活性を実証した化合物の調製に有用な8−アザビシクロ[3.2.1]オクチル中間体に関する。本発明は、そのような有用な中間体の調製のためのプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
(技術水準)
近年、相当の研究努力が、5−HT受容体でアゴニスト活性を示す化合物の同定に捧げられた。そのような化合物は、胃腸管の運動性低下の障害を治療するための治療剤として有用であることが予想される。例えば、同一出願人による特許文献1および特許文献2は、5−HT受容体アゴニストとしてそれぞれ新規のインダゾール−カルボキサミド−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクタンおよびキノリノン−カルボキサミド−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン化合物を開示する。
【0003】
8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン基を含む化合物の調製のための効率的なプロセスは、新しい胃腸運動剤を提供するのに有利であろう。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0197335号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0228014号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、5−HT受容体アゴニストの調製のために有用な中間体である8−アザビシクロ−[3.2.1]−オクタン基を含有する化合物、およびそのような有用な中間体の調製のためのプロセスを提供する。
【0005】
したがって、本発明は、式(I)
【0006】
【化7】

の化合物またはその塩を提供し、上式で、
は、水素、−OHおよび−OPから選択され、ここで、Pはヒドロキシ保護基であり、
は=Oまたは−NRであり、ここで、RおよびRは独立して水素またはPであって、ここで、Pはアミノ保護基であり、
Aは、−OC(O)−、−S(O)−および共有結合から選択され、
Wは、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)および式(a)
【0007】
【化8】

の部分から選択され、上式で、Zは、NC(O)R、NS(O)、S(O)、NHおよびNPから選択され、
、R、RおよびRは、独立してC1〜3アルキルであり、
nは0または1である。
【0008】
本発明は、さらに、式(Ia)
【0009】
【化9】

の化合物またはその塩、およびその調製のためのプロセスを提供する。
【0010】
さらに、本発明は、式(Ib)
【0011】
【化10】

の化合物またはその塩、およびその調製のためのプロセスを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
以下の置換基および値は、本発明の様々な態様の代表例を提供するためのものとする。これらの代表値は、そのような態様をさらに定義するためのものであり、他の値を排除するものでも、本発明の範囲を限定するためのものでもない。
【0013】
本発明の具体的な態様では、Rは、水素、−OHおよび−OPから選択され、ここで、Pはヒドロキシ保護基である。
【0014】
他の具体的な態様では、Rは水素であるか、または、Rは−OHもしくは−OPである。
【0015】
本発明の具体的な態様では、Rは=Oまたは−NRであり、ここで、RおよびRは独立して水素またはアミノ保護基Pである。
【0016】
他の具体的な態様では、Rは=Oである。
【0017】
他の具体的な態様では、Rは−NHである。
【0018】
他の具体的な態様では、Rは−NHRであり、ここで、Rはベンジルであり、または、Rは−NRであり、ここで、RおよびRの両方はベンジルである。
【0019】
具体的な態様では、Aは、−OC(O)−、−S(O)−および共有結合から選択される。
【0020】
他の具体的な態様では、Aは共有結合である。
【0021】
具体的な態様では、Wは、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)および式(a)
【0022】
【化11】

の部分から選択される。
【0023】
他の具体的な態様では、Wは、−N(R)C(O)Rまたは−N(R)S(O)であり、ここで、R、R、RおよびRは、独立してC1〜3アルキルである。
【0024】
他の具体的な態様では、Wは、−N(R)C(O)Rまたは−N(R)S(O)であり、ここで、R、R、RおよびRはメチルである。
【0025】
他の具体的な態様では、Wは式(a)の部分であり、ここで、Zは、NC(O)R、NS(O)、S(O)、NHおよびNPから選択され、RおよびRは、独立してC1〜3アルキルである。
【0026】
他の態様では、Wは式(a)の部分であり、ここで、Zは、NC(O)R、NS(O)およびS(O)から選択され、RおよびRはメチルである。
【0027】
他の態様では、Wは式(a)の部分であり、ここで、Zは、NHもしくはNPであり、または、ZはNHである。
【0028】
具体的な態様では、nは0である。
【0029】
他の具体的な態様では、nは1である。
【0030】
本発明の一態様では、nは0であり、Rは水素である。
【0031】
本発明の他の態様では、nは1であり、Rは−OHまたは−OPである。
【0032】
(定義)
本発明の化合物および方法を記載するにあたって、特に明記しない限り、以下の用語は以下の意味を有する。
【0033】
用語「アルキル」は、直鎖または分枝鎖でよい一価の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル(n−Pr)およびイソプロピル(i−Pr)を意味する。
【0034】
用語「アミノ保護基」は、アミノ態窒素での不要な反応を阻止するのに適当な保護基を意味する。代表的なアミノ保護基には、それらには限定されないが、ホルミル;アシル基、例えばアセチルなどのアルカノイル基;tert−ブトキシカルボニル(Boc)などのアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などのアリールメトキシカルボニル基;ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)、ジフェニルメチルおよび1,1−ジ−(4’−メトキシフェニル)メチルなどのアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)およびtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)などのシリル基;その他が含まれる。
【0035】
用語「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ基での不要な反応を阻止するのに適当な保護基を意味する。代表的なヒドロキシ保護基には、それらには限定されないが、メチル、エチルおよびtert−ブチルなどのアルキル基;アシル基、例えばアセチルなどのアルカノイル基;ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)およびジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などのアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)およびtert−ブチルジメチルシリル(TBS)などのシリル基;その他が含まれる。
【0036】
特定の官能基のための保護基の使用、ならびに保護および脱保護のための適当な条件は、当技術分野で公知である。例えば、多数の保護基ならびにそれらの導入および除去は、T. W. GreeneおよびG. M. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、New York、1999年、およびその中の引用文献で記載されている。
【0037】
本明細書で用いる化学物質命名法を、例1の化合物について図示する:
【0038】
【化12】

本化合物は、市販のAutoNomソフトウェア(MDL Information systems,GmbH、Frankfurt、ドイツ)を用いて、1−{4[2−((1R,3R,5S)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)エチル]ピペラジン−1−イル}エタノンと呼ばれる。記号(1S,3R,5S)は、二環式の環系と結合する結合の相対配向を記載する。本化合物は、1−{4−[2−(3−エンド−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)エチル]ピペラジン−1−イル}エタノンとも表される。Rが−NRである本発明の化合物の全ては、エンド配置である。
【0039】
(合成手順)
一合成方法では、式(Ia)
【0040】
【化13】

のトロパナミンを、式(Ib)
【0041】
【化14】

のトロパノンの還元アミノ化によって調製し、変数R、A、Wおよびnは上で定義の通りである。
【0042】
一般に、化合物(Ib)は、メタノールまたはエタノールなどの不活性の希釈液中で、約15から約25当量の大過剰のギ酸アンモニウムと反応させる。一般に、メタノールまたはエタノールに関しては約0.1から約0.2容積当量の少量の水が、不活性希釈液に含まれる。遷移金属触媒、一般に炭素上のパラジウムまたは水酸化パラジウムの存在下で実施される反応は、高い立体特異性を有するエンド配置の中間体(Ia)を提供する。一般に、生成物(Ia)のエキソ配置に対するエンド配置の比は、約99:1よりも大きい。反応は一般に、約10℃から約30℃の温度の間で約12時間から約72時間の間、または、反応が実質的に完了するまで実施される。生成物は、従来の抽出手順によって精製することができる。
【0043】
或いは、トロパナミン(Ia)はトロパノン(Ib)からスキームA
【0044】
【化15】

で図示する2工程プロセスに従って調製することができ、上式で、Qは水素またはアミノ保護基Pを表す。
【0045】
スキームAのプロセスに従い、最初にトロパノン(Ib)を、約1から約1.5当量の還元剤および約0.5当量の酢酸の存在下で約1から約1.5当量の保護されたアミンNHPQ(1)と接触させ、保護されたトロパナミン(Ic)を提供する。保護基Pは、ベンジルまたはジフェニルメチルを選択することが有利である。有用な保護されたアミン(1)には、ベンジルアミン、ジベンジルアミンおよびジフェニルメチルアミンが含まれる。一般に、ジクロロメタンがこの反応のための不活性希釈液として用いられる。代わりの希釈液としては、ジメトキシエタンなどのエーテルがある。反応は一般に、約10℃から約30℃の温度の間で約12時間から約72時間の間、または、反応が実質的に完了するまで実施される。一般的な還元剤には、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド、水素化ホウ素ナトリウムおよびナトリウムシアノボロハイドライドが含まれる。
【0046】
第2工程では、保護されたトロパナミン(Ic)を、従来の手順によって脱保護する。例えば、Pがベンジルまたはジフェニルメチルである場合、保護基は、例えば、ギ酸水素またはギ酸アンモニウムおよび炭素上パラジウムなどのVIII族金属触媒を用いる還元によって除去して、化合物(Ia)を提供することができる。
【0047】
トロパノン中間体(Ib)は、二環式の環形成およびアミン結合が同じ反応工程で達成されるスキームBのプロセスに従い、入手が容易な出発物質から有利に調製される。
【0048】
【化16】

スキームBで示すように、酸性の水性環境でスクシンアルデヒド(3)に加水分解された2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン(2)を、約1から約1.5当量のアミン(II)およびわずかに過剰な、例えば約1.1当量の3−オキソペンタン二酸(4)、通常1,3−アセトンジカルボン酸と接触させる。反応は、過剰の、例えば約3から約6当量の、酢酸ナトリウムまたはリン酸水素ナトリウムなどの緩衝剤の存在下で実施し、反応混合物のpHを約4から約6に維持する。反応混合物は一般に、約40℃から約50℃に約1時間から約4時間、または、反応が実質的に完了するまで加熱する。生成物(Ib)は、従来の手順によって抽出する。
【0049】
Wが式(a)
【0050】
【化17】

の部分であり、ここで、ZがNC(O)RまたはNS(O)である式(Ib)の化合物は、Wが式(a)の部分であり、ここで、ZがNHである化合物、すなわちWがピペラジニルである式(Ib)の化合物から、標準条件下での従来の試薬との反応により調製することもできる。例えば、ZがNC(O)CHである場合、無水酢酸をアシル化反応のための試薬として用いることができる。ZがNS(O)CHである場合、メタンスルホニルクロリドを用いて、Wがピペラジニルである式(Ib)の化合物から式(Ib)の化合物を調製することができる。
【0051】
式(II)のアミンは、市販されているか、または、当業者に公知である手順によって、一般に入手できる出発物質から調製することができる。式(I)の化合物またはその中間体を調製するための具体的な反応条件および他の手順に関するさらなる詳細は、下記実施例で記載する。
【0052】
したがって、方法の態様において、本発明は、式(Ia)の化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、
(a)式(Ib)の化合物を、遷移金属触媒の存在下で少なくとも15当量のギ酸アンモニウムと反応させること、または、
(b)式(Ib)の化合物を、還元剤の存在下で式NHPQの保護されたアミンと反応させ、その後1つまたは複数の保護基を除去すること
によって、式(Ia)の化合物またはその塩を提供することを含むプロセスを提供する。
【0053】
第2の方法の態様において、本発明は、式(Ib)の化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、
(a)酸性の水性媒体中で2,5−ジメトキシテトラヒドロフランを加水分解することおよび、
(b)工程(a)の生成物を緩衝剤の存在下で式(II)の化合物および3−オキソペンタン二酸と反応させること
によって、式(Ib)の化合物またはその塩を提供することを含むプロセスを提供する。
【0054】
本発明の化合物は、5−HT受容体アゴニストの調製のための有用な中間体である。例えば、式(Ia)の化合物を1−イソプロピル−1H−インダゾール−3−カルボン酸と反応させて、インダゾール−カルボキサミド5−HT受容体アゴニスト化合物、例えば米国特許第2005/0197335号、米国特許第2006/0183901号に記載の化合物またはその中間体を提供することができる。
【0055】
5−HT受容体アゴニストである化合物は、5−HT受容体によって媒介されるかまたは5−HT受容体活性と関連する医学的状態、すなわち5−HT受容体アゴニストによる治療で改善される医学的状態の治療に有用であることが予想される。そのような医学的状態には、それらには限定されないが、過敏性腸症候群(IBS)、慢性便秘、機能性消化不良、遅延性胃内容排出、胃食道逆流疾患(GERD)、胃不全麻痺、糖尿病性および特発性の胃疾患、手術後イレウス、腸偽閉塞ならびに薬物誘発性遅延性輸送が含まれる。さらに、一部の5−HT受容体アゴニスト化合物は、認知障害、行動障害、気分障害および自律神経機能制御障害を含む中枢神経系障害の治療で用いることができることが示唆された。
【0056】
詳細には、そのような化合物は胃腸(GI)管の運動性を増大させることが予想され、したがって、ヒトを含む哺乳動物で運動性低下に起因するGI管の障害を治療するために有用であることが予想される。これらのGI運動性障害には、例として、慢性便秘、便秘が主な過敏性腸症候群(C−IBS)、糖尿病性および特発性の胃不全麻痺ならびに機能性消化不良が含まれる。
【実施例】
【0057】
以下の合成例は本発明を例示するために提供されているものであり、本発明の範囲を制限するものと決して解釈されるべきでない。下で定義されない略記号は、それらの一般に認められる意味を有する。
【0058】
試薬および溶媒は民間の納入業者(Aldrich、Fluka、Sigma、その他)から購入し、さらなる精製なしで用いた。特記されていなければ、反応は窒素雰囲気下で実施した。反応混合物の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析高速液体クロマトグラフィー(分析HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)および気液クロマトグラフィー(GC)によって監視し、その詳細は、下で、反応の具体例の中で別々に示す。反応混合物は、各反応で具体的に記載するように操作した。通常、それらは、抽出および他の精製法、例えば温度依存性および溶媒依存性結晶化、ならびに沈殿によって精製した。反応生成物の特性評価は、質量分析およびH−NMR分光分析によって通常どおり実施した。NMR測定のために、試料を重水素の溶媒(DO、CDClまたはDMSO−d)で溶解し、H−NMRスペクトルは、Varian Gemini 2000機器(300MHz)により標準の観察条件下で取得した。
【0059】
分析HPLCのための一般プロトコル
未精製化合物を0.5〜1.0mg/mLの濃度で50%MeCN/HO(0.1%TFAを含有)に溶解し、以下の条件を用いて分析した。
【0060】
カラム:Zorbax Bonus−RP(5.0μmの粒径、4.6×150mm)
流速:2.0mL/分
検出器波長:214、254および280nm。
【0061】
(実施例1)
(1R,5S)−8−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オンの合成
濃塩酸(50mL)を、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン(490.2mL、3.78mol)の水(1200mL)溶液に加えた。生じた黄色溶液を、約70〜72℃で約2時間撹拌した。
【0062】
1−(2−アミノエチル)ピペラジン(546.4mL、4.16mol、1.1当量)を、15℃の酢酸ナトリウム(1225.5g)の水(3700mL)溶液に加えた。内部温度を25℃以下に保ったまま、濃塩酸(350mL)を徐々に加えた。混合物を15℃に冷却した後に、3−オキソペンタン二酸(607.8g、4.16mol)を加え、溶液温度を再び15℃に冷却した。上で調製した黄色水溶液を約10分間かけて徐々に加え、生じた黄色混合物を、二酸化炭素の発生が低下するまで、約20℃で約30分間撹拌した。混合物を40〜45℃で2時間撹拌し、反応混合物の色は暗褐色に変化した。
【0063】
混合物を、約15℃に冷却した。pH13に到達するまで、温度を25℃以下に保ったまま、水酸化ナトリウム水溶液(50%、約470mL)を少量ずつ加えた。塩化ナトリウム(600g)を加え、混合物を完全溶解まで撹拌した。生成物をジクロロメタン(DCM)(1×2000mL、2×1500mL)で抽出した。合わせた有機相を乾燥、ろ過し、溶液を2500mLまで濃縮した。
【0064】
濃縮溶液を15℃に冷却し、温度を25℃以下に保ったまま、無水酢酸(500mL)を徐々に加えた。溶液を30分間撹拌し、水(1500mL)を15℃で加えた。混合物を10分間撹拌し、次に、1M塩酸を用いてpH1に酸性化した。
【0065】
DCM相および水相を分離した。ガスクロマトグラフィー分析は、DCM相に残留生成物が存在しないことを明らかにした。内部温度を25℃以下に保ちながら水相水酸化ナトリウム(50%水溶液、約500mL)を少量ずつ添加することによって、水相をpH14に塩基性化した。生成物をDCM(3×1500mL)で抽出し、収集した有機相(暗褐色)を合わせ、乾燥させ、セライトでろ過し、蒸留して、粘性褐色油(650g、ガスクロマトグラフィーによる純度94%)の標記化合物を生じた。
【0066】
【化18】

(実施例2)
1−{4−[2−((1R,3R,5S)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)エチル]ピペラジン−1−イル}エタノンの合成
実施例1で記載のように調製した(1R,5S)−8−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン(31.0g、0.111mol)を、室温でイソプロピルアルコール(100mL)に溶解した。溶液を約60℃に加熱し、イソプロピルアルコール(70mL)に溶解させた1,5−ナフタレンジスルホン酸四水化物を、撹拌しながら1時間かけて徐々に加えた。酸の添加を完了した後、添加漏斗をイソプロピルアルコール(50mL)で洗浄した。混合物を約60℃で1時間撹拌し、室温に冷却し、次に15時間撹拌した。混合物をろ過し、生じたケーキをイソプロピルアルコール(2×50mL)で洗浄し、フィルタの上に30分間保った。次に、生成物をフラスコへ移し、高真空下で24時間乾燥させ、(1R,5S)−8−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オンの1,5−ナフタレンジスルホン酸塩を、ベージュ結晶性非吸湿物質(51.7g)として生成した。
【0067】
【化19】

5℃に冷却した撹拌した(1R,5S)−8−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]−8−アザビシクロ−[3.2.1]−オクタン−3−オンの1,5−ナフタレンジスルホン酸塩(51.6g)の水(500mL)溶液を、温度を15℃以下に保ちながら水酸化ナトリウム水溶液(50%)を用いてpH14に塩基性化した。DCM(300mL)を加え、形成したエマルションをセライトでろ過した。層を分離し、水層をDCM(3×100mL)で洗浄した。合わせた有機相を24時間乾燥させ、(1R,5S)−8−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン(23.3g、塩ベースで93%の収率)を生成した。
【0068】
(1R,5S)−8−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン(58.2g、0.209mol)を、室温でメタノール(300mL)に溶解した。この溶液に、ギ酸アンモニウム(263.1g、4.17mol、20当量)を加え、次に、メタノール(100mL)および水(85mL)を加えた。パラジウム(湿性10%パラジウム活性炭、58g)を混合物に加え、次に、メタノール(150mL)を加えた。ガスクロマトグラフィー分析がケトンの完全な変換を明らかにするまで、反応混合物を室温で約20時間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、生じたケーキをメタノール(約700mL)で洗浄し、溶媒を除去した。残留物を水(300mL)に溶解し、溶液を5℃に冷却し、50%水酸化ナトリウムを用いて溶液をpH14に塩基性化した。溶液を塩化ナトリウムで飽和させ、生成物をDCM(400mL)で抽出した。水層をDCM(3×150mL)で洗浄した。合わせた有機分画を高真空下で約24時間乾燥させ、粘性淡褐色油(43g、ガスクロマトグラフィーによる純度91%)の標記化合物を生成した。
【0069】
【化20】

(実施例3)
1−{4−[2−((1R,3R,5S)−3−ベンジルアミノ−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル)エチル]ピペラジン−1−イル}−エタノンの合成
(1R,5S)−8−[2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)エチル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン(9.5g、0.034mol)を、室温でDCM(200mL)に溶解した。この溶液に、ベンジルアミン(4.49g、0.041mol、1.2当量)および酢酸(1.02g、0.017mol、0.5当量)を加え、次に、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(14.42g、0.068mol、2当量)をin situで添加した。混合物を室温で24時間撹拌し、氷浴で約10℃に冷却し、温度を20℃以下に保ちながら5M水酸化ナトリウム(200mL)を加えた。2つの相を分離し、有機相を乾燥(NaSO)させた。蒸留により溶媒を除去した後、未精製生成物を高真空下で48時間乾燥させ、褐色油の標記化合物11.2g(89%)を得た。
【0070】
【化21】

(実施例4)
1−{4−[2−[(1R,3R,5S)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]エチル]ピペラジン−1−イル}エタノンの合成(代替経路)
実施例3の生成物1−{4−[2−((1R,3R,5S)−3−ベンジルアミノ−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル)エチル]ピペラジン−1−イル}−エタノン(17.6g、0.0475mol)を、メタノール(250mL)に溶解した。酢酸(8.55g、0.142mol、3当量)を加え、次に、パラジウム触媒(湿性10%パラジウム活性炭、3.6g、20重量%)を添加した。40psiのH圧を用いて、水素化を室温で24時間実施した。混合物をセライトでろ過し、溶媒を蒸留により除去した。残留物を水(200mL)に溶解し、50%水酸化ナトリウムでpH14に調節した。水溶液を塩化ナトリウムで飽和させ、生成物をDCMで抽出した。有機相をNaSOで乾燥させた。蒸留により溶媒を除去し、さらに高真空下で24時間乾燥させた後、淡褐色油の標記化合物(11.3g、85%)を得た。標記化合物のH NMRは、実施例2で報告する化合物のそれに合致した。
【0071】
(実施例5)
1−(4−{2−[(1R,3R,5S)−3−(ベンズヒドリル−アミノ)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]エチル}−ピペラジン−1−イル)−エタノンの合成
実施例3のベンジルアミンを1,1−ジフェニルメタンアミンで置換したことを除いて実施例5で記載のプロセスに従い、標記化合物を得た。
【0072】
(実施例6)
1−{4−[2−((1R,3R,5S)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)エチル]ピペラジン−1−イル}エタノンの合成(第2代替経路)
1−{4−[2−((1R,3R,5S)−3−ベンジルアミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)エチル]ピペラジン−1−イル}エタノンを1−(4−{2−[(1R,3R,5S)−3−(ベンズヒドリル−アミノ)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]エチル}−ピペラジン−1−イル)−エタノンで置換したことを除いて、実施例4で記載のプロセスに従い、標記化合物を得た。
【0073】
(実施例7)
N{(2R)−2−ヒドロキシ−3−[(1R,5S)−3−オキソ−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル]プロピル}−N−メチルメタンスルホンアミドの合成
a.N−メチル−N−[(S)−2−オキシラン−2−イルメチル]メタンスルホンアミドの調製
12Lフラスコに水(1L)を入れ、次に、水酸化ナトリウム(50%水溶液、146.81g、1.835mol)を加えた。水酸化ナトリウムを含有するビーカーを水(2×500mL)で洗浄し、洗浄液をフラスコに加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、約8℃に冷却した。(N−メチル)−メタンスルホンアミド(200.2g、1.835mol)の水(500mL)溶液を、5分かけて加えた。混合物を約4℃で1時間撹拌し、(S)−2−クロロメチルオキシラン(339.6g、3.67mol)を加えた。混合物を、3〜4℃で20時間撹拌した。ジクロロメタン(2L)を加え、混合物を5〜10℃で30分間撹拌した。2つの層を10分間分離させ、収集した。有機層(約2.5L)を12Lフラスコへ戻し、1Mリン酸(800mL)および塩水(800mL)で洗浄した。ジクロロメタンは、回転蒸発によって除去した。トルエン(400mL)を未精製生成物に加え、次に、回転蒸発によって除去した。追加の3サイクルのトルエンプロセス後、標記中間体を得た(228.2g)。
【0074】
b.N−((R)−3−アミノ−2−メチルプロピル)−N−メチルメタンスルホンアミドの調製
N−メチル−N−[(S)−2−オキシラン−2−イルメチル]メタンスルホンアミドをエタノールに溶解し、ベンジルアミン(1〜1.1当量)を溶液に加える。(或いは、N−メチル−N−[(S)−2−オキシラン−2−イルメチル]メタンスルホンアミドをエタノールに溶解し、1,1−ジフェニル−メタンアミン(1〜1.1当量)を溶液に加える。)混合物を、反応の完了まで還流させる。生成物を単離、抽出する。
【0075】
前工程の生成物を、炭素触媒上のパラジウムを用いて、酢酸(0.9〜1.1当量)の存在下で、メタノール中のHガスによる水素化によって脱保護する。ろ過による触媒の除去後、標記中間体を単離、抽出する。
【0076】
c.N{(2R)−2−ヒドロキシ−3−[(1R,5S)−3−オキソ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]プロピル}−N−メチルメタンスルホンアミドの合成
実施例1の1−(2−アミノエチル)−ピペラジンをN−((R)−3−アミノ−2−メチルプロピル)−N−メチルメタンスルホンアミドで置換する以外、実施例1で記載のプロセスに従い、標記化合物を得る。
【0077】
(実施例8)
N−{(2R)−2−ヒドロキシ−3−[(1R,5S)−3−オキソ−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル]プロピル}−N−メチルメタンスルホンアミドの合成(代替経路による)
a.N−((R)−3−アミノ−2−メチルプロピル)−N−メチルメタンスルホンアミドの調製
N−メチル−N−[(S)−2−オキシラン−2−イルメチル]メタンスルホンアミドをジメチルホルムアミドに溶解し、アジ化ナトリウム(1〜1.1当量)を溶液に加える。混合物を、反応の完了まで還流させる。溶液への塩水の添加およびエーテル溶媒による抽出によって生成物を単離する。
【0078】
前工程の生成物を、パラジウム触媒を用いて、酢酸(0.9〜1.1当量)の存在下で、メタノール中のHガスによる水素化によって脱保護する。ろ過による触媒の除去後、標記中間体を単離、抽出する。
【0079】
b.N−{(2R)−2−ヒドロキシ−3−[(1R,5S)−3−オキソ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル]プロピル}−N−メチルメタンスルホンアミドの合成
実施例1の1−(2−アミノエチル)−ピペラジンを、前工程のプロセスで調製されたN−((R)−3−アミノ−2−メチルプロピル)−N−メチルメタンスルホンアミドで置換する以外、実施例1で記載のプロセスに従い、標記化合物を得る。
【0080】
本発明はその具体的な実施形態に関して記載されているが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることおよび同等物で置換することができることは、当業者によって理解されるはずである。加えて、特定の状況、材料、物質組成、プロセス、プロセスの工程を本発明の目的、精神および範囲に適応させるために、多くの修正を加えることもできる。そのような修正の全ては、本明細書に付属する特許請求の範囲内であるものとする。さらに、先に引用される全ての刊行物、特許および特許文書は、個々に参照により組み込まれるが如く、本明細書で参照により完全に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】

またはその塩であって、ここで、
は、水素、−OHおよび−OPから選択され、ここで、Pはヒドロキシ保護基であり、
Aは、−OC(O)−、−S(O)−および共有結合から選択され、
Wは、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)および式(a)
【化2】

の部分から選択され、ここで、Zは、NC(O)R、NS(O)、S(O)、NHおよびNPから選択され、
、R、RおよびRは、独立してC1〜3アルキルであり、
はアミノ保護基であり、
nは0または1である、
化合物またはその塩。
【請求項2】
nが0であり、Rが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが1であり、Rが−OHまたは−OPである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Aが共有結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Wが式(a)の部分である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Zが、NC(O)R、NS(O)およびS(O)から選択され、RおよびRがそれぞれメチルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
ZがNHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
Wが−N(R)C(O)Rまたは−N(R)S(O)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式(Ib)
【化3】

の化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、ここで、R、A、Wおよびnは請求項1において定義される通りであって、該プロセスは、
(a)水性酸性媒体中で2,5−ジメトキシテトラヒドロフランを加水分解すること、および
(b)工程(a)の生成物を反応混合物中で緩衝剤の存在下にて式(II)
【化4】

の化合物および3−オキソペンタン二酸と反応させること
によって、式(Ib)の化合物またはその塩を提供することを包含する、プロセス。
【請求項10】
前記緩衝剤が前記反応混合物のpHを約4と約6との間に維持するのに十分な量で存在する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
式(Ia)
【化5】

の化合物またはその塩を調製するためのプロセスであって、ここで、R、A、Wおよびnは請求項1において定義される通りであり、該プロセスは、
(a)式(Ib)
【化6】

の化合物を、遷移金属触媒の存在下で少なくとも15当量のギ酸アンモニウムと反応させること、または
(b)式(Ib)の化合物を、還元剤の存在下で式NHPQの保護されたアミンと反応させ、その後該保護基を除去する工程であって、ここで、Qは水素またはPであり、Pはアミノ保護基であること
によって、式(Ia)の化合物またはその塩を提供することを含むプロセス。
【請求項12】
工程(a)を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記式(Ia)の生成物が99:1よりも大きいエンド対エキソ比を有する、請求項12に記載のプロセス。

【公表番号】特表2009−526852(P2009−526852A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555330(P2008−555330)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/003961
【国際公開番号】WO2007/097976
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】