説明

5−HT4受容体作動薬としてのカルバメート化合物

本発明は、以下の式(I)の新規のベンゾイミダゾロン−カルボキサミド由来カルバメート5−HT受容体作動薬化合物であって:式中、R、R、R、R、a、及びbが本開示内容に定義される、化合物を提供する。本発明は又、このような化合物を含む薬学的組成物、このような化合物を使用して5−HT受容体活性に関連する疾患を治療する方法、並びにこのような化合物を調製するのに有用なプロセス及び中間体も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−HT受容体作動薬として有用なベンゾイミダゾロン−カルボキサミド由来カルバメート化合物を対象とする。本発明は又、このような化合物を含む薬学的組成物、このような化合物を使用して5−HT受容体活性により媒介される病態を治療又は予防するためにこのような化合物を使用する方法、並びにこのような化合物を調製するのに有用なプロセス及び中間体を対象とする。
【背景技術】
【0002】
セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン、5−HT)は、中枢神経系及び末梢系の両方において、身体全体にわたって広く分布している神経伝達物質である。セロトニン受容体の少なくとも7つのサブタイプが確認されており、セロトニンとこれらの異なる受容体との間の相互作用は、多種多様な生理的機能と連関している。従って、特定の5−HT受容体サブタイプを標的にする治療薬を開発することに大きな関心が寄せられてきた。
【0003】
特に、5−HT受容体の特性付け及びそれらと相互作用する医薬品の同定に、最近の重要な活動が集中している(例えば、非特許文献1を参照)。5−HT受容体作動薬は、消化管の運動性低下障害を治療するのに有用である。このような障害としては、過敏性腸管症候群(IBS)、慢性便秘、機能性消化不良、遅延胃内容排出、胃食道逆流疾患(GERD)、胃不全麻痺、手術後の腸閉塞、偽閉塞、及び薬剤誘発の輸送遅延等が含まれる。更に、幾つかの5−HT受容体作動薬化合物は、認知障害、行動障害、気分障害、及び自律神経機能の制御障害等の中枢神経系障害の治療において使用される場合があることが示唆されている。
【0004】
5−HT受容体の活性を調節する医薬品は広く有用であるにもかかわらず、現在のところ臨床において使用されている5−HT受容体作動薬化合物は殆どない。
【0005】
従って、最小限の副作用で所望の効果を達成する新規の5−HT受容体作動薬が必要とされている。好ましい薬剤は、他の特性の中でも、改善された選択性、効力、薬物動態特性、及び/又は作用の持続性を有する場合がある。
【非特許文献1】Langlois and Fischmeister, J. Med. Chem. 2003, 46, p. 319−344
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、5−HT受容体作動薬活性を有する新規化合物を提供する。本発明の化合物は、他の特性の中でも、強力且つ選択的な5−HT受容体作動薬であることが見出されている。更に、本発明の化合物は、経口投与において良好なバイオアベイラビリティーが期待される、好ましい薬物動態特性を示すことが見出されている。
【0007】
従って、本発明は、以下の式(I)の化合物であって:
【0008】
【化12】

式中、
が、ハロ又はC1−3アルキルであり、ここで、C1−3アルキルは、場合によりヒドロキシ又はハロで置換され;
が、水素又はC1−3アルキルであり、ここで、C1−3アルキルは、場合によりヒドロキシで置換され;
が、C1−3アルキル又は水素であり;
が、−(CH1−3C(O)NR
【0009】
【化13】

であるか;
或いはR及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、
(i)以下の式(a)の部分:
【0010】
【化14】

(ii)以下の式(b)の部分:
【0011】
【化15】

;及び
(iii)式(c)の部分:
【0012】
【化16】

から選択される部分を形成し;
式中:
が、−OC(O)NR、−C(O)NR、−NRS(O)1−3アルキル、−NRC(O)R、−NRS(O)NR、又は−NRC(O)ORであり;
が、−C(O)R、−(CHOR、−S(O)NR、−S(O)1−3アルキル、又は−S(O)(CH1−3S(O)1−3アルキルであり;
、R、及びRが、独立して水素又はC1−3アルキルであり;
が、水素又はC1−3アルキルであり、ここで、C1−3アルキルは、場合によりヒドロキシで置換され;
が、C1−3アルキルであり;
が、水素、C1−3アルキル、テトラヒドロフラニル、又は−NRであり;
が、水素又はC1−3アルキルであり;
aが、0、1又は2であり;
bが、0、1、2又は3であり;
cが、0、1、2又は3であり;
dが、1又は2であり;
eが、1又は2であるが;
但し、cが0の場合は、dが2であり、Rが−C(O)NRであって、cが2の場合は、dが1である、
化合物;或いはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物又は立体異性体を提供する。
【0013】
本発明は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0014】
更に、本発明は、5−HT受容体活性に関連した疾患又は病態(例えば、消化管の運動性低下障害等)を治療する方法であって、本発明の化合物又は薬学的組成物の治療有効量を哺乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
本発明の化合物は又、試験手段として、即ち、生体系又は生体試料を試験するため、又は他の化学化合物の活性を試験するために使用することもできる。従って、その方法の別の態様において、本発明は、生体系又は生体試料を試験するため、又は新規の5−HT受容体作動薬を発見するための試験手段として、式(I)の化合物或いはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物又は立体異性体を使用する方法であって、生体系又は生体試料を本発明の化合物と接触させる手順、及び前記生体系又は試料に対する前記化合物により引き起こされる効果を測定する手順を含む、方法を提供する。
【0016】
別の異なる態様において、本発明は又、本発明の化合物を調製するのに有用な、本明細書に記載の合成プロセス及び中間体も提供する。
【0017】
本発明は又、医学的治療において使用するための本明細書に記載の本発明の化合物、並びに哺乳類における5−HT受容体活性に関連した疾患又は病態(例えば、消化管の運動性低下障害)を治療する配合物又は医薬品を製造することにおける本発明の化合物の使用も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、式(I)の新規ベンゾイミダゾロン−カルボキサミド由来カルバメート5−HT受容体作動薬、或いはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物又は立体異性体を提供する。以下の置換基及び値は、本発明の種々の態様の一般的な例を提供することを目的としたものである。これらの一般的な値は、このような態様を更に明確にすることを目的としたものであって、他の値を除外したり本発明の適用範囲を限定したりすることを目的としたものではない。
【0019】
本発明の特定の態様において、Rは、ハロ又はC1−3アルキルであり;又はRは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はメチルである。
【0020】
特定の態様において、Rは水素である。
【0021】
別の特定の態様において、RはC1−3アルキルであり、ここで、C1−3アルキルは、場合によりヒドロキシで置換される。
【0022】
更に別の特定の態様において、Rは、水素又はC1−3アルキルである。
【0023】
本発明の他の特定の態様において、Rは、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルであるか;Rは、エチル又はイソプロピルであるか;或いはRはイソプロピルである。
【0024】
特定の態様において、Rは、C1−3アルキルであるか;Rは、メチル又はエチルであるか;或いはRはメチルである。
【0025】
特定の態様において、Rは−(CH1−3C(O)NRである。
【0026】
別の特定の態様において、Rは、
【0027】
【化17】

である。
【0028】
更に別の特定の態様において、Rは、−(CH1−3C(O)NR、又は
【0029】
【化18】

である。
【0030】
本発明の特定の態様において、R及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(a)の部分、式(b)の部分、及び式(c)の部分から選択される部分を形成する。
【0031】
特定の態様において、R及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(a)の部分を形成する。別の特定の態様において、R及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(a)の部分(式中、Rは、−OC(O)NR又は−C(O)NRである)を形成する。
【0032】
特定の態様において、R及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(b)の部分を形成する。他の特定の態様において、R及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(b)の部分(式中、Rは、−C(O)R、−(CHOR、又は−S(O)NRであるか;或いはRは−C(O)Rであり、eは1である)を形成する。
【0033】
本発明の更に別の態様において、R及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(c)の部分を形成する。
【0034】
特定の態様において、R、R、R、R、及びRは、独立して水素、メチル、又はエチルであるか;或いはR、R、R、R、及びRは、独立して水素又はメチルである。
【0035】
特定の態様において、Rは、メチル又はエチルであるか;或いはRはメチルである。
【0036】
特定の態様において、Rは、C1−3アルキル、テトラヒドロフラニル、又は−NRであるか;或いはRは、メチル、テトラヒドロフラニル、又は−NRである。
【0037】
別の特定の態様において、Rは、テトラヒドロフラニルである。
【0038】
他の特定の態様において、Rは、C1−3アルキルであるか、又はRはメチルである。
【0039】
更に別の特定の態様において、Rは−NRであり、ここで、R及びRは、本明細書に定義される通りである。
【0040】
特定の態様において、aは、0又は1であるか;或いはaは、0又は2である。別の特定の態様において、aは0である。
【0041】
特定の態様において、bは、0、1、又は2であるか;或いはbは、1又は2である。別の特定の態様において、bは1である。
【0042】
特定の態様において、cは、1又は2である。別の特定の態様において、cは1である。
【0043】
特定の態様において、dは1である。
【0044】
特定の態様において、eは1である。
【0045】
一態様において、本発明は、式(I)の化合物であって、式中、cが1又は2であり;dが1であり;eが1である、化合物を提供する。
【0046】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物であって、式中、
が、C1−3アルキルであり;
が、−(CH1−3C(O)NR、又は
【0047】
【化19】

であるか;
或いは、R及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(a)の部分、式(b)の部分、及び式(c)の部分から選択される部分を形成し、
式中、
が、−OC(O)NR又は−C(O)NRであり;
が、−C(O)R、−(CHOR、又は−S(O)NRである、
化合物を提供する。
【0048】
更に別の態様において、本発明は、式(I)の化合物であって、式中、
及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(a)の部分、式(b)の部分、及び式(c)の部分から選択される部分を形成し、
式中、
が、−OC(O)NR又は−C(O)NRであり;
が、−C(O)R、−(CHOR、又は−S(O)NRであり;
、R、及びRが、独立して水素又はメチルであり;
が、メチル、テトラヒドロフラニル、又は−NRであり;
cが、1又は2であり;dが1であり;eが1である、
化合物を提供する。
【0049】
更に別の態様において、本発明は、式(I)の化合物であって、式中、
が、エチル、又はイソプロピルであり;
が、C1−3アルキルであり;
が、(CH1−3C(O)NR、又は
【0050】
【化20】

であるか;
或いは、R及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(a)の部分、式(b)の部分、及び式(c)の部分から選択される部分を形成し;
式中、
が、−OC(O)NR又は−C(O)NRであり;
が、−C(O)R、−(CHOR、又は−S(O)NRであり;
、R、及びRが、独立して水素、又はメチルであり;
が、メチル、テトラヒドロフラニル、又は−NRであり;
aが0であり;cが、1又は2であり;dが1であり;eが1である、
化合物を提供する。
【0051】
本明細書で使用される化学物質の命名規則は、以下の実施例1の化合物:
【0052】
【化21】

で例示され、その名前は、MDL情報システムのGmbH(ドイツ フランクフルト)によって提供されるAutoNomソフトウェアにより、4−(テトラヒドロフラン−2−カルボニル)ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステルと命名される。(1S、3R、5R)の名称は、実線及び点線のくさび形状で描写した二環式環系に関連する結合の相対的な配向を説明するものである。上に示した本発明の全ての化合物において、ベンゾイミダゾロン−カルボキサミドは、そのアザビシクロオクタン基に対してエンドである。
【0053】
特定の例としては、以下の化合物が含まれる:
4−(テトラヒドロフラン−2−カルボニル)ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−アセチル−ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−ジメチルカルバモイルオキシピペリジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
3−カルバモイルピペリジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
1,1−ジオキソ−18−チオモルホリン−4−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
(1,1−ジオキソテトラヒドロ−18−チオフェン−3−イル)メチルカルバミン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
(R)−2−カルバモイルピロリジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−アセチル−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
ジメチルカルバモイルメチル−メチルカルバミン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−ジメチルカルバモイルピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;及び
4−ジメチルスルファモイルピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル。
【0054】
上に列挙した特定の化合物によって例示されるように、本発明の化合物は1つ以上のキラル中心を含んでもよい。従って、本発明は、特に明記しない限り、ラセミ混合物、純粋な立体異性体、及びこのような異性体による立体異性体に富んだ混合物を包含する。特定の立体異性体が示される場合、特に明記しない限り、本発明の組成物中で少量の他の立体異性体が存在し得ることは当業者によって理解されるところであるが、但し、この組成物の全体としての如何なる有用性も、このような他の異性体の存在によって失われるものではない。
【0055】
(定義)
本発明の化合物、組成物及び方法を記述する場合、以下のような用語は、特に明記しない限り、以下の意味を有する。
【0056】
「アルキル」という用語は、一価の飽和炭化水素基であって、直鎖状又は分岐鎖状或いはこれらの組み合わせであってもよいものを意味する。一般的なアルキル基としては、一例として、メチル、エチル、n−プロピル(n−Pr)、イソプロピル(i−Pr)、n−ブチル(n−Bu)、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル等が含まれる。
【0057】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。
【0058】
「化合物」という用語は、合成によって調製された化合物又は他の任意の様式で(例えば、代謝によって)製造された化合物を意味する。
【0059】
「治療有効量」とは、治療を必要とする患者に投与した場合に、治療に効果を発揮するのに十分な量を意味する。
【0060】
本明細書で使用される「治療」という用語は、哺乳類(特に、ヒト)等の患者における疾患、障害、又は病態の治療を意味し、この用語は以下を包含する:
(a)疾患、障害、又は病態が生じるのを予防すること(即ち、患者の予防的処置);
(b)疾患、障害、又は病態を改善すること(即ち、患者における疾患、障害、又は病態を取り除くかその退行を引き起こすこと);
(c)疾患、障害、病態を抑制すること(即ち、患者における疾患、障害又は病態の進行を遅延させるか又は阻止すること);或いは、
(d)患者における疾患、障害、又は病態の症状を軽減すること。
【0061】
「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳類等の患者に投与することが許容される、酸又は塩基から調製された塩を意味する。このような塩は、薬学的に許容される無機酸又は有機酸、並びに薬学的に許容される塩基から生成され得る。通常、本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、酸から調製される。
【0062】
薬学的に許容される酸から調製される塩としては、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、キナホイック(xinafoic)酸(1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸等が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
「溶媒和物」という用語は、溶質(即ち、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩)の1つ以上の分子と、溶媒の1つ以上の分子とにより形成された錯体又は凝集体を意味する。このような溶媒和物は、一般的には、溶質及び溶媒の実質的に不変のモル比を有する結晶性固体である。一般的な溶媒としては、一例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸等が含まれる。溶媒が水の場合、形成される溶媒和物は、水和物である。
【0064】
「或いはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物又は立体異性体」という用語は、塩、溶媒和物及び立体異性体の全ての変形(例えば、式(I)の化合物の立体異性体の薬学的に許容される塩の溶媒和物)を含むことが意図される。
【0065】
「脱離基」という用語は、求核置換反応等の置換反応において、別の官能基又は原子によって置換され得る官能基又は原子を意味する。一例として、一般的な脱離基としては、クロロ、ブロモ、及びヨード基;スルホン酸エステル基(例えば、メシレート、トシレート、ブロシレート、ノシレート等);アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ等)が含まれる。「脱離基」という用語は、更に、−OC、−CCl、パラ−OCNO、及びイミダゾリル等の基を包含する。
【0066】
「それらの保護誘導体」という用語は、その化合物の一つ以上の官能基が、保護基又は封鎖基によって望ましくない反応から保護されている、特定の化合物の誘導体を意味する。保護され得る官能基としては、一例として、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基等が含まれる。一般的な保護基としては、カルボン酸に対しては、エステル(p−メトキシベンジルエステル等)、アミド、ヒドラジド等が含まれ;アミノ基に対しては、カルバメート(tert−ブトキシカルボニル等)及びアミド等が含まれ;ヒドロキシル基に対しては、エーテル及びエステル等が含まれ;チオール基に対しては、チオエーテル及びチオエステル等が含まれ;カルボニル基に対しては、アセタール及びケタール等が含まれる。このような保護基は、当業者に周知であり、例えば、T.W. Greene and G.M. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis, Third Edition, Wiley, New York, 1999、及び該文献で引用されている参考文献に記載されている。
【0067】
「アミノ保護基」という用語は、アミノ窒素を望ましくない反応から保護するのに好適な保護基を意味する。一般的なアミノ保護基としては、ホルミル基;アシル基(例えば、アセチルのようなアルカノイル基);アルコキシカルボニル基(例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc));アリールメトキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)及び9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc));アリールメチル基(例えば、ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)及び1,1−ジ−(4’−メトキシフェニル)メチル;シリル基(例えば、トリメチルシリル(TMS)及びtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS))等が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
(基本合成手順)
本発明の化合物は、以下の基本的な方法及び手順を使用して、容易に入手可能な出発物質から調製され得る。本発明の特定の態様を以下のスキームに示すが、当業者は、本発明の全ての態様が、本明細書中に記載される方法、又は当業者に公知の他の方法、試薬及び出発物質を使用して調製され得ることを認識している。又、一般的又は好ましい処理条件(例えば、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられる場合、特に明記しない限り、他の処理条件も使用され得ることが理解される。最適な反応条件は、使用する特定の反応物又は溶媒によって変わり得るが、このような条件は、従来の最適化手順によって、当業者により決定され得る。
【0069】
更に、特定の官能基を望ましくない反応から保護するために、従来の保護基が必要とされ得ることは当業者に明らかである。特定の官能基に好適な保護基、並びに保護化及び脱保護化に好適な条件の選択は、当該技術分野で周知である。例えば、多数の保護基並びにそれらの導入及び除去については、T.W. Greene and G.M. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis, Third Edition, Wiley, New York, 1999、及び該文献で引用される参考文献に記載されている。
【0070】
以下のスキームで示す置換基及び変数は、特に明記しない限り、本明細書に示した定義を有する。
【0071】
1つの合成方法において、式(I)の化合物は、スキームAで図示されているようにして調製され得る。
【0072】
【化22】

ベンゾイミダゾロン−カルボキサミドトロパン中間体(III)は、式(IV)の化合物(式中、Lは、脱離基である)と反応して式(I)の化合物を生成する。一般的に、Lは、例えばクロロ、ヨード、又はブロモ等のようなS2型の脱離基である。式(IV)の化合物を、不活性希釈剤中において、塩基(例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA))、及び触媒(例えば、ヨウ化ナトリウム)の存在下で約0.25〜約1.5当量の間のベンゾイミダゾロン−カルボキサミドトロパン(III)と接触させる。好適な不活性希釈剤としては、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等が含まれる。又、好適な塩基としては、例えば、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、及び炭酸カリウム等が含まれる。又、好適な触媒としては、例えば、ヨウ化カリウム、及びヨウ化テトラブチルアンモニウム等が含まれる。この反応は一般的に、約40℃〜約100℃の範囲の温度で、約2〜24時間か、又は反応が実質的に完了するまで行われる。
【0073】
式(I)の生成物は、従来の手順により、単離及び精製される。例えば、この生成物は、減圧下にて乾固状態まで濃縮し、弱酸水溶液に溶かし、そして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製することができる。
【0074】
スキームAの方法、及び式(III)の化合物を使用する本明細書に記載の他のプロセスにおいて、式(III)の化合物は、当業者に既知の通り、必要であれば反応条件を適切に調整して、遊離塩基の形態又は塩の形態で供給され得ることが理解されるであろう。
【0075】
式(III)の化合物は、以下のスキームBに示す通りに調製することができる。
【0076】
【化23】

スキームBにおいて、場合により置換された1,3−ジヒドロベンゾ−イミダゾール−2−オンの中間体(a)は、中間体(b)[式中、Wは脱離基(例えば、ハロ等、即ち、フルオロ、クロロ、又はブロモ等)であり、Aは、Wとは異なる条件で反応するように選択された脱離基であるか(例えば、−OC、−CCl、パラ−OCNO、又はイミダゾール−1−イル);或いは、W及びAはそれぞれイミダゾール−1−イルである]と反応し、式(V)の化合物を提供し、式(V)の化合物は中間体(c)と反応して(式中、Pは、Bocのようなアミノ保護基を表す)、中間体(d)を生成する。保護基Pは、標準的な手順によって中間体(d)から取り除かれ、式(III)の化合物を生成する。
【0077】
最適な反応条件は、使用する特定の反応物又は溶媒に依存して変わり得るが、このような条件は、慣習的な最適化手順によって、当業者により容易に決定され得る。
【0078】
例えば、中間体(b)として4−ニトロフェニルクロロホルメートを使用する例示的なプロセスでは、ベンゾイミダゾロン中間体(a)を、強塩基(例えば、水素化ナトリウム、リチウムジイソプロピルアミン、及びn−ブチルリチウム等)の存在下において、不活性雰囲気下で不活性希釈剤(例えば、テトラヒドロフラン、エーテル、DMF、又はこれらの組み合わせ等)に溶解し、約1〜約1.3当量の4−ニトロフェニルクロロホルメートと接触させる。混合物を約0〜約40℃にて約12〜24時間又は反応が実質的に完了するまで攪拌して、活性化エステルである式(V)の化合物を形成させる。式(V)の化合物は、単離し精製するか、又はin situで、不活性希釈剤(例えば、テトラヒドロフラン等)の存在下において、保護アミノ−トロパンである中間体(c)と約30℃〜90℃にて約10〜24時間反応させ、保護中間体(d)を生成する。
【0079】
従来の方法を使用して、アミノ保護基Pを中間体(d)から取り除き、式(III)のベンゾイミダゾロン−カルボキサミドトロパン化合物を生成する。中間体(b)として4−ニトロフェニルクロロホルメートを使用して中間体(III)を調製する種々の上記のプロセスは、後述の実施例13において説明する。
【0080】
或いは、式(I)の化合物は、以下のスキームCに示す通りに調製することができる。
【0081】
【化24】

ベンゾイミダゾロン−カルボキサミド中間体(V)は、式(VI)のトロパン−アルキレン−カルボキサミド化合物と反応して、式(I)の化合物を生成する。スキームBにおいてその合成方法が示されている式(V)の化合物を、単離し精製するか、又はin situで、不活性希釈剤(例えば、テトラヒドロフラン等)の存在下において、約30℃〜約90℃にて約10〜24時間又は反応が完了するまで式(VI)の化合物と反応させ、式(I)の化合物を得る。
【0082】
ベンゾイミダゾロン中間体(a)は、下記のスキームDに示す通りに調製することができる。
【0083】
【化25】

スキームDにおいて、場合により置換される2−フルオロニトロベンゼンは、中間体(e)の第一級アミンと反応して、中間体(f)を生成し、その中間体(f)は還元されてジアミノフェニルである中間体(g)となる。ジアミノフェニルを、不活性希釈剤(例えば、テトラヒドロフラン等)の存在下において、約20℃〜40℃にて約12〜30時間カルボニルジイミダゾールと反応させて、ベンゾイミダゾロン中間体(a)を得る。
【0084】
中間体(a)の化合物の一般的な合成方法は、後述の調製例1において説明する。又、中間体(a)の置換された化合物も、文献に記載された手順と同様の手順にて、容易に調製することができる。例えば、The Journal of Chemical Research (1), 21−22 (2005); Heteroatom Chemistry, 5(5/6):437−40 (1994);及びGer. Offen., 3839743, 31 May 1990を参照されたい。
【0085】
本明細書に記載の反応において使用される、保護アミノトロパンである中間体(c)は、容易に入手可能な出発物質から調製される。例えば、アミノ保護基PがBocの場合、保護アミノトロパンは、下記のスキームEに示す通りに調製することができる。
【0086】
【化26】

以下の調製例2で詳述する通り、Boc保護中間体(c’)を調製するために、2,5−ジメトキシテトラヒドロフランを、酸性水溶液中で、緩衝剤(例えば、リン酸水素ナトリウム)の存在下にて、約1〜2当量の間のベンジルアミン及び僅かに過剰(例えば、約1.1当量)な1,3−アセトンジカルボン酸と接触させる。その反応混合物を、約60〜100℃の間に加熱して、生成物である8−ベンジル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン(通例、N−ベンジルトロパノン)における任意のカルボキシル化中間体を確実に脱カルボキシル化する。
【0087】
N−ベンジルトロパノン中間体は通常、水素雰囲気下において、遷移金属触媒の存在下にて、僅かに過剰(例えば、約1.1当量)なジ−tert−ブチルジカーボネート(通例、(Boc)O)と反応して、3−オキソ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルを生成する。この反応は通常、室温で約12時間〜約72時間行われる。最終的に、3−オキソ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルを、不活性希釈剤中(例えば、メタノール)において、遷移金属触媒存在下で大過剰(例えば、少なくとも25当量)のギ酸アンモニウムと接触させて、生成物である中間体(c)を高い立体特異性(例えば、エンドのエキソに対する比>99:1)を有するエンド立体配置において生成する。この反応は通常、室温で、約12時間〜約72時間又は反応が実質的に完了するまで行われる。ギ酸アンモニウム試薬は、少しずつ添加することが有利である。例えば、3−オキソ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルは、約15〜25当量のギ酸アンモニウムの最初の部分と接触する。約12時間〜約36時間の間隔を開けた後、更に約5当量〜約10当量のギ酸アンモニウムを加える。それに続く添加は、同様の間隔で繰り返され得る。生成物の中間体(c)は、従来の手順(例えば、アルカリ抽出)によって精製され得る。
【0088】
式(IV)の化合物は、下記のスキームFに記載されているように、一般的な出発物質から標準的な手順によって容易に調製することができる。
【0089】
【化27】

スキームFにおいて、中間体(h)(式中、L及びLは、脱離基である)は、第二級アミン(i)と反応して、式(IV)の化合物を生成する。第二級アミン(i)を不活性希釈剤中(例えば、ジクロロメタン等)に溶解し、そして塩基(例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等)の存在下において、約0〜40℃の範囲の温度で約30分間〜4時間にわたって中間体(h)を加える。生成物の式(IV)の化合物は、従来の手順(例えば、HPLC等)によって精製され得る。
【0090】
通常、L及びLは、ハロ脱離基(例えば、クロロ、ヨード、ブロモ等)であり、又、メシレートも脱離基Lとして使用され得る。好適な塩基としては、例えば、トリエチルアミン、DBU、及び炭酸カリウム等が含まれる。好適な不活性希釈剤としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、及びN,N−ジメチルホルムアミド等が含まれる。
【0091】
式(h)及び(i)の中間体化合物は、市販されているか、又は容易に入手可能な出発物質から合成できる。多くの第二級アミン、即ちスキームFにおいて使用され得る式(i)の中間体化合物の合成については、本明細書の実施例において説明する。
【0092】
式(VI)の化合物は、スキームGに示す通りに調製することができる。
【0093】
【化28】

スキームGにおいて、中間体(j)(式中、Pはアミノ保護基である)は、式(IV)の化合物と反応して保護化中間体(k)を生成する。その後、この中間体(k)は脱保護され、式(VI)の化合物を生成する。スキームGの反応は一般的に、上記スキームAの反応で説明したアミノカップリングの条件下で行われる。
【0094】
式(j)の化合物は、保護化アミノトロパン中間体(c)のアミノ窒素原子をアミノ保護基Pによって保護し、その後アザビシクロオクタン基の窒素原子からPを除去することによって調製され得る。保護基P及びPは、それらが異なる条件下で除去されるように選択される。例えば、PにBocが選択される場合、PとしてCbzが使用され得る。保護基Bocは一般的に、酸(例えば、トリフルオロ酢酸)で処理することによって除去され、この中間体の酸性塩を生成する。中間体の酸塩は、所望の場合、塩基による従来の処理によって遊離塩基に変換され得る。保護基Cbzは、好都合には、好適な金属触媒(例えば、炭素上パラジウム)上で水素化分解することによって除去される。本発明の一般的な化合物又はその中間体を調製するための特定の反応条件及び他の手順に関する更なる詳細は、以下の実施例で説明する。
【0095】
従って、一方法の態様において、本発明は、式(I)の化合物であって、式中、R、R、R、R、a、及びbが、本明細書に定義される通りである、化合物、或いはその塩或いはその溶媒和物又は立体異性体を調製するためのプロセスであって、式(I)の化合物;或いはその塩又は溶媒和物又は立体異性体を提供するために、
(a)以下の式(III)の化合物:
【0096】
【化29】

を、以下の式(IV)の化合物:
【0097】
【化30】

(式中、Lは脱離基である)
と反応させる手順;或いは、
(b)以下の式(V)の化合物:
【0098】
【化31】

(式中、Aは脱離基である)を、以下の式(VI)の化合物:
【0099】
【化32】

を反応させる手順
を含む、プロセスを提供する。
【0100】
更なる実施形態において、本発明は、本明細書に記載の他のプロセス、並びに本明細書に記載の任意のプロセスによって調製された生成物に関する。
【0101】
(薬学的組成物)
本発明のベンゾイミダゾロン−カルボキサミド由来カルバメート化合物は通常、薬学的組成物の形態で患者に投与される。このような薬学的組成物は、任意の許容される投与経路(経口、直腸内、膣内、鼻腔内、吸入、局所(経皮を含めて)、及び非経口の投与様式を含むがこれらに限定されない)により、患者に投与され得る。
【0102】
従って、その組成物の態様の1つにおいて、本発明は、薬学的に許容される担体又は賦形剤、並びに式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を治療有効量含む薬学的組成物に関する。このような薬学的組成物は、所望される場合、必要に応じて、他の治療剤及び/又は配合剤を含有してもよい。
【0103】
本発明の薬学的組成物は一般的に、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を治療有効量において含有する。一般的には、このような薬学的組成物は、約0.1〜約95重量%;好ましくは、約5〜約70重量%;より好ましくは、約10〜約60重量%の活性剤を含有する。
【0104】
本発明の薬学的組成物中において、任意の従来の担体又は賦形剤が使用されてもよい。特定の担体又は賦形剤、或いは担体又は賦形剤の組合せの選択は、特定の患者又は特定の種類の病態又は疾患の状態を治療するために使用される投与様式に依存する。このことに関して、特定の投与様式のための好適な薬学的組成物の調製は、十分に薬学的分野の当業者の技術範囲内に含まれる。加えて、このような組成物の成分は、例えばSigma(P.O. Box 14508, St. Louis, MO 63178)から市販されている。更なる例として、従来の配合技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & White, Baltimore, Maryland (2000);及びH.C. Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Edition, Lippincott Williams & White, Baltimore, Maryland (1999)に記載されている。
【0105】
薬学的に許容される担体として機能し得る物質の代表例としては、(1)糖類(例えば、ラクトース、グルコース及びショ糖);(2)デンプン(例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン);(3)セルロース(例えば、微結晶セルロース)及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース));(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑石;(8)賦形剤(例えば、カカオ脂及び坐薬ワックス);(9)油(例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、とうもろこし油及び大豆油);(10)グリコール(例えば、プロピレングリコール);(11)ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール);(12)エステル(例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル);(13)寒天;(14)緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム);(15)アルギン酸;(16)発熱物質非含有の水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;並びに(21)薬学的組成物で使用される他の非毒性の適合性物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
本発明の薬学的組成物は一般的に、本発明の化合物を、薬学的に許容される担体及び1種以上の任意の成分と十分且つ密接に混合又はブレンドすることより調製される。必要な場合又は所望される場合、得られた均一にブレンドされた混合物は、従来の手順及び装置を使用して、錠剤、カプセル、ピル等に成型又は充填され得る。
【0107】
本発明の薬学的組成物は、好ましくは、単位投薬量形態に包装される。「単位投薬量形態」という用語は、患者に投薬するのに好適な物理的に別個の投薬量単位を意味し、即ち、各単位は、単独で、又は1つ以上の更なる単位量と組み合わせて、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性剤を含有する。例えば、このような単位投薬量形態は、カプセル、錠剤、ピル等であってもよい。
【0108】
好ましい実施形態において、本発明の薬学的組成物は、経口投与に好適である。経口投与に好適な薬学的組成物は、カプセル、錠剤、ピル、ロゼンジ、カシェ剤、糖衣錠、粉末剤、顆粒;或いは、水性液体又は非水性液体の溶液又は懸濁液;或いは、水中油型液状乳化剤又は油中水型液状乳化剤;或いは、エリキシル剤又はシロップ等の形態であってもよく;各々は、活性成分として、所定量の本発明の化合物を含有する。
【0109】
固形投薬形態(即ち、カプセル、錠剤、ピル等)で経口投与することが意図される場合、本発明の薬学的組成物は通常、活性成分としての本発明の化合物及び1つ以上の薬学的に許容される担体(例えば、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム)を含有する。必要に応じて、又は代替的に、このような固形投薬形態は:(1)充填剤又は増量剤(例えば、デンプン、微結晶セルロース、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアカシア);(3)湿潤剤(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩及び/又は炭酸ナトリウム;(5)溶液遅延剤(例えば、パラフィン);(6)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物);(7)湿潤剤(例えば、セチルアルコール及び/又はグリセリンモノステアレート;(8)吸収剤(例えば、カオリン及び/又はベントナイト粘土);(9)滑沢剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及び/又はそれらの混合物;(10)着色剤;並びに(11)緩衝剤を含有してもよい。
【0110】
離型剤、湿潤剤、被覆剤、甘味料、香料及び芳香剤、防腐剤並びに酸化防止剤も又、本発明の薬学的組成物中に含有され得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例としては;(1)水溶解性の抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム);(2)脂溶性抗酸化剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル酸、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロール);及び(3)金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸)等が含まれる。錠剤、カプセル、ピル等の被覆剤としては、腸溶コーティングに使用されるもの(例えば、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、酢酸ケイ酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)等)が含まれる。
【0111】
又、所望の場合、本発明の薬学的組成物は、一例として、種々の割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース;又は他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/又は微小球体を使用して、その活性成分の持続放出又は制御放出を提供するように配合され得る。
【0112】
それに加えて、本発明の薬学的組成物は、場合により乳白剤を含有してもよく、そして活性成分のみを放出するか、又は選択的に、胃腸管の特定の部分において、必要に応じて遅延様式で放出するように配合され得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが含まれる。又、この活性成分も、適切な場合、上記の賦形剤の1種以上を含有するマイクロカプセルの形態であり得る。
【0113】
経口投与に好適な液体の投薬形態としては、例として、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤が含まれる。このような液体の投薬形態は、一般的に、活性成分及び不活性希釈剤(例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、落花生油、とうもろこし油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物)を含有する。懸濁液は、活性成分に加えて、懸濁剤(例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天(agar−agar)及びトラガカント、並びにそれらの混合物)を含有してもよい。
【0114】
或いは、本発明の薬学的組成物は、吸入による投与のために配合される。吸入による投与に好適な薬学的組成物は一般的に、エアロゾル又は粉末の形態である。このような組成物は、一般的に、周知の送達デバイス(例えば、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、噴霧器又は類似の送達デバイス)を使用して投与される。
【0115】
加圧容器を使用して吸入により投与される場合、本発明の薬学的組成物は通常、活性成分及び好適な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適な気体)を含有する。
【0116】
更に、この薬学的組成物は、本発明の化合物、及び粉末吸入器で使用するのに適当な粉末剤を含有するカプセル又はカートリッジ(これは、例えば、ゼラチンから製造される)の形態であり得る。好適な粉末基剤としては、一例として、ラクトース又はデンプンが含まれる。
【0117】
本発明の化合物は又、公知の経皮送達系及び賦形剤を使用して、経皮的に投与され得る。例えば、本発明の化合物は、浸透促進剤(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オン等)と混合され得、そしてパッチ又は類似の送達システムに取り込まれ得る。所望の場合、ゲル化剤、乳化剤及び緩衝液等の更なる賦形剤を、このような経皮組成物において使用してもよい。
【0118】
以下の配合は、本発明の一般的な薬学的組成物を例示する:
【0119】
【化33】

一般的な手順:これらの成分を十分にブレンドし、次いで、硬質ゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり260mgの組成物)。
【0120】
【化34】

一般的な手順:これらの成分を十分にブレンドし、次いで、No.45メッシュU.S.シーブに通し、そして硬質ゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり200mgの組成物)。
【0121】
【化35】

一般的な手順:これらの成分を十分にブレンドし、次いで、ゼラチンカプセルに充填する(カプセル当たり310mgの組成物)。
【0122】
【化36】

一般的な手順:この活性成分、デンプン、及びセルロースをNo.45メッシュU.S.シーブに通し、そして十分に混合する。ポリビニルピロリドンの溶液を、得られた粉末と混合し、次いで、この混合物をNo.14メッシュU.S.シーブに通す。このようにして製造した顆粒を、50〜60℃にて乾燥させ、No.18メッシュU.S.シーブに通す。次いで、これらの顆粒に、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、及びタルク(あらかじめ、No.60メッシュU.S.シーブに通したもの)を加える。混合した後、その混合物を錠剤機で圧縮して、100mgの重量の錠剤を得る。
【0123】
【化37】

一般的な手順:これらの成分を十分にブレンドし、次いで、圧縮して錠剤を形成する(錠剤当たり、440mgの組成物)。
【0124】
【化38】

一般的な手順:これらの成分を十分にブレンドし、圧縮して、シングルスコア錠剤を形成する(錠剤当たり、215mgの組成物)。
【0125】
【化39】

一般的な手順:これらの成分を混合して、懸濁液を形成する(これは、懸濁液10mL当たり、活性成分10mgを含有する)。
【0126】
【化40】

一般的な手順:この活性成分を微粉にし、次いで、ラクトースとブレンドする。次いで、このブレンドした混合物をゼラチン吸入カートリッジに充填する。このカートリッジの内容物を、粉末吸入器を使用して、投与する。
【0127】
配合実施例I
以下のようにして、定量吸入器における吸入投与用の乾燥粉末剤を調製する:
一般的な手順:200mLの脱イオン水中に0.2gのレシチンを溶解させた溶液に、10gの活性成分を平均粒子径が10μmより小さい微粉末化粒子として分散することにより、5重量%の本発明の化合物及び0.1重量%のレシチンを含む懸濁液を調製する。この懸濁液を噴霧乾燥させ、得られた物質を、1.5μm未満の平均粒径を有する粒子へと微粉末化する。これらの粒子を、加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンと共に、カートリッジに充填する。
【0128】
【化41】

一般的な手順:上記成分をブレンドし、そのpHを、0.5NのHCl又は0.5NのNaOHを使用して、4±0.5に調整する。
【0129】
【化42】

一般的な手順:これらの成分を十分にブレンドし、次いで、ゼラチンカプセル(サイズ#1,白色、不透明)に充填する(カプセル当たり、264mgの組成物)。
【0130】
【化43】

一般的な手順:これらの成分を十分にブレンドし、次いで、ゼラチンカプセル(サイズ#1,白色、不透明)に充填する(カプセル当たり、148mgの組成物)。
【0131】
上記の薬学的組成物中において、特定の投与様式に好適な本発明の化合物の任意の形態(即ち、遊離塩基、薬学的塩、又は溶媒和物)が使用され得ることは理解されるところである。
【0132】
(有用性)
本発明のベンゾイミダゾロン−カルボキサミド由来カルバメート化合物は、5−HT受容体作動薬であり、従って、5−HT受容体によって媒介される病態或いは5−HT受容体活性に関連する病態(即ち、5−HT受容体作動薬での治療により回復する病態)を治療するのに有用であることが期待される。このような病態としては、過敏性腸症候群(IBS)、慢性便秘、機能性消化不良、胃内容排出の遅延、胃食道逆流疾患(GERD)、胃不全麻痺、術後腸閉塞、腸偽閉塞、及び薬物性遅延移行が含まれるが、これらに限定されない。それに加えて、幾つかの5−HT受容体作動薬化合物は、認知障害、行動障害、気分障害、及び自律神経機能の制御障害等の中枢神経系の障害の治療において使用され得ることが示唆されている。
【0133】
特に、本発明の化合物は、胃腸(GI)管の運動性を向上させえるため、ヒトを含む哺乳類において、GI管の障害(低下した運動性によって引き起こされる)の治療に有用であることが期待される。このようなGI運動性障害の例としては、慢性便秘、便秘型過敏性腸症候群(constipation−predominant irritable bowel syndrome)(C−IBS)、糖尿病性胃不全麻痺及び特発性胃不全麻痺、並びに機能性消化不良が含まれる。
【0134】
従って、一態様において、本発明は、哺乳類において胃腸管の運動性を向上させる方法であって、薬学的に許容される担体及び本発明の化合物を含有する治療有効量の薬学的組成物を哺乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0135】
本発明の化合物を、5−HT受容体によって媒介されるGI管の運動性低下の障害又は他の状態を治療するために使用する場合、本発明の化合物は、通常、1日に1投与量又は1日に複数投与量で経口投与されるが、他の投与形態も使用され得る。1投与量当たりの投与される活性薬剤の量、又は1日に投与される総量は、通常、治療される状態、選択された投与経路、実際に投与される化合物及びその関連する活性、個々の患者の年齢、体重、及び反応、患者の症状の重症度、等の関連する状況を考慮して、医師によって決定される。
【0136】
5−HT受容体によって媒介されるGI管の運動性低下の障害又は他の障害を治療するための好適な投与量は、活性薬剤約0.0007〜約20mg/kg/日の範囲であり、約0.0007〜約1mg/kg/日の範囲を含む。この量は、平均70kgのヒトでは、活性薬剤約0.05〜約70mg/日の範囲の量にあたる。
【0137】
本発明の一態様において、本発明の化合物は、慢性便秘を治療するために使用される。慢性便秘を治療するために使用される場合、本発明の化合物は通常、1日に1投与量又は1日に複数投与量において経口投与される。好ましくは、慢性便秘を治療する投与量は、約0.05〜約70mg/日の範囲である。
【0138】
本発明の別の態様において、本発明の化合物は、過敏性腸管症候群を治療するために使用される。便秘型過敏性腸管症候群を治療するために使用される場合、本発明の化合物は通常、1日に1投与量又は1日に複数投与量において経口投与される。好ましくは、便秘型過敏性腸管症候群を治療する投与量は、約0.05〜約70mg/日の範囲である。
【0139】
本発明の別の態様において、本発明の化合物は、糖尿病性胃不全麻痺を治療するために使用される。糖尿病性胃不全麻痺を治療するために使用される場合、本発明の化合物は通常、1日に1投与量又は1日に複数投与量において経口投与される。好ましくは、糖尿病性胃不全麻痺を治療する投与量は、約0.05〜約70mg/日の範囲である。
【0140】
本発明の更に別の態様において、本発明の化合物は、機能性消化不良症を治療するために使用される。機能性消化不良症を処置するために使用される場合、本発明の化合物は一般的に、1日に1投与量又は1日に複数投与量において経口投与される。好ましくは、機能性消化不良症を治療する投与量は、約0.05〜約70mg/日の範囲である。
【0141】
本発明は又、5−HT受容体活性に関連する疾患又は病態を有する哺乳類を治療する方法であって、本発明の化合物又は本発明の化合物を含む薬学的組成物の治療有効量を哺乳類に投与することを含む、方法も提供する。
【0142】
本発明の化合物は、5−HT受容体作動薬であるため、このような化合物は、5−HT受容体を有する生物系又は生体試料を調査又は試験するための、或いは新規の5−HT受容体作動薬を発見するための試験ツールとしても有用である。更に、本発明の化合物は、他の5−HTサブタイプの受容体(特に5−HT受容体)への結合と比較して、5−HT受容体に対する結合選択性を示すため、このような化合物は、生物系又は生体試料における5−HT受容体の選択的作用(selective agonism)の効果を試験するために、特に有用である。5−HT受容体を有する任意の好適な生物系又は生体試料は、このような試験に採用されてもよく、このような試験は、in vitro又はin vivoのどちらで行われてもよい。このような試験のための一般的な生物系又は生体試料としては、細胞、細胞抽出物、原形質膜、組織試料、哺乳類(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ等)等が含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
本発明の本態様において、5−HT受容体を含む生物系又は生体試料を、5−HT受容体作用量の本発明の化合物と接触させる。次いで、5−HT受容体を作用させる効果を、従来の手順及び設備(例えば、放射リガンド結合検定及び機能検定)を使用して測定する。このような機能検定としては、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)におけるリガンド媒介性変化、酵素アデニリルシクラーゼ(これはcAMPを合成する)の活性におけるリガンド媒介性変化、GDP類似物に対するGTP類似物の受容体触媒性交換を介した、単離した膜内へのグアノシン三リン酸(GTP)のアナログ(例えば、[35S]GTPγS(グアノシン5’−O−(γ−チオ)三リン酸)又はGTP−Eu)の取り込みにおけるリガンド媒介性変化、遊離の細胞内カルシウムイオンにおけるリガンド媒介性変化(例えば、蛍光結合イメージングプレートリーダー又はMolecular Devices, Inc.からのFLIPR(登録商標)で測定される)、及びマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)活性化の測定等が含まれる。本発明の化合物は、上記で列挙した任意の機能検定、又は類似した性質の検定において、5−HT受容体の活性化に作用し得るか又はこれを増加させ得る。5−HT受容体作用量の本発明の化合物は通常、約1ナノモル濃度〜約500ナノモル濃度の範囲である。
【0144】
更に、本発明の化合物は、新規の5−HT受容体作動薬を発見するための試験ツールとして使用され得る。この実施形態において、試験化合物又は試験化合物群に対する5−HT受容体結合データ又は5−HT受容体機能データは、優れた結合活性又は優れた機能活性を有する試験化合物を識別するために(もしあれば)、本発明の化合物に対する5−HT受容体結合データ又は5−HT受容体機能データと比較される。本発明の本態様には、目的の試験化合物を識別するために、別個の実施形態として、比較データの作成(好適な検定を使用して)及び試験データの分析の両方が包含される。
【0145】
他の特徴の中でも、本発明の化合物は、5−HT受容体の強力な作動薬であり、且つ、放射リガンド結合検定において、5−HT受容体サブタイプを凌ぐ、5−HT受容体サブタイプに対する実質的な選択性を示すことが見出されている。更に、本発明の化合物は、ラットモデルにおいて、優れた薬物動態特性が実証されている。従って、本発明の化合物は、経口投与において良好なバイオアベイラビリティーを示すことが期待される。更に、hERG心臓カリウムチャネルを発現する単離された全細胞を使用したin vitro電圧固定モデルにおける試験で、本発明の一般的な化合物は、カリウムイオン電流の容認できないレベルの阻害を発現しないことを示している。電圧固定検定は、医薬品が心臓再分極のパターンを変化させる電位、得に、いわゆるQT延長(心不整脈に関連している)の原因となる電位を評価するための、認知された臨床前の方法である(Cavero et al., Opinion on Pharmacotherapy, 2000, 1, 947−73, Fermini et al., Nature Reviews Drug Discovery, 2003, 2, 439−447)。従って、本発明の化合物を含む薬学的組成物は、許容される心臓プロフィールを有することが期待される。
【0146】
本発明の化合物の特性及び有用性は、当業者に周知の種々のin vitro検定及びin vivo検定を使用して実証され得る。以下の実施例に、一般的な検定について更に詳細に記載する。
【実施例】
【0147】
以下の合成実施例及び生物学的実施例は、本発明を例示するために提供され、如何なる場合でも、本発明の適用範囲を限定するとは解釈されるべきではない。
以下の実施例において、以下の略語は、特に明記しない限り、以下の意味を有する。以下に定義されていない略語は、それらの一般的に認められた意味を有する。
Boc=tert−ブトキシドカルボニル
(Boc)O=ジ−tert−ブチルジカーボネート
DCM=ジクロロメタン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EtOAc=酢酸エチル
mCPBA=m−クロロ過安息香酸
MeCN=アセトニトリル
MTBE=tert−ブチルメチルエーテル
PyBop=ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
=保持因子
RT=室温
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
試薬(第二級アミン等)及び溶媒は、市販の供給業者(Aldrich、Fluka、Sigma等)から購入し、精製せずに使用した。反応は、特に明記しない限り、窒素雰囲気下で行った。反応混合物の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(分析HPLC)及び質量分析法でモニタリングした(それらの詳細については、以下の特定の反応実施例において、個別に示す)。反応混合物は、各々の反応において明確に記載されるようにして後処理される。即ち一般的に、それらは、抽出及び他の精製方法(例えば、温度依存性の結晶化、溶媒依存性の結晶化、及び沈殿)によって精製される。更に、反応混合物を、分取HPLCにより慣習的に精製した。その一般的なプロトコールは、以下に記載されている。反応生成物の同定は、質量分析法及びH−NMR分光法により慣習的に実施した。NMR測定については、試料を重水素化溶媒(CDOD、CDCl又はDMSO−d)に溶解し、そして標準的な観察条件下にて、Varian Gemini 2000機器(300MHz)によりH−NMRスペクトルを得た。特に明記しない限り、質量分析法による化合物の同定は、アプライドバイオシステムズ(米国カリフォルニア州フォスターシティ)モデルAPI 150 EX機器又はアジレント(米国カリフォルニア州パロアルト)モデル1100 LC/MSD機器を使用して、エレクトロスプレーイオン化法(ESMS)により、実施した。
【0148】
分析用HPLCのための基本的なプロトコール:それぞれの粗化合物を、50%のMeCN/HO(0.1%TFA含有)に0.5〜1.0mg/mLの濃度で溶解し、それを以下の条件において、分析用HPLCを使用して分析した。1)逆相分析用カラム:Zorbax Bonus−RP(粒子径3.5μm、2.1×50mm);2)流速:0.5mL/min;3)0.1%のTFAを含有する5%のMeCN/HO(無勾配;0〜0.5分);0.1%のTFAを含有する5%MeCN/HOから0.1%のTFAを含有する75%MeCN/HOまで(直線勾配;0.5〜4分);4)検出:214、254、及び280ナノメートル。他の条件については、必要に応じて示す。
【0149】
分取HPLCによる精製のための基本的なプロトコール:粗化合物を、50%の酢酸水溶液に50〜100mg/mLの濃度で溶解し、濾過して、分取HPLCを使用して分取した。1)カラム;YMC Pack−Pro C18(50a x 20mm;ID=5μm);2)直線勾配:10%A/90%Bから50%A/50%Bまで、30分間にわたって;3)流速:40mL/min;4)検出:214ナノメートル。
【0150】
(第二級アミンの調製)
式(I)の化合物の合成において中間体として使用される種々の第二級アミンの調製について以下に示す。
【0151】
ピペラジンのN−スルホニル誘導体は、N−Bocピペラジンをそれぞれの塩化スルホニル(iPrNEt、CHCl,0℃)と反応させ、その後にN−Boc基(CFCOH、CHCl)を脱保護することによって調製した。1−メタンスルホニルピペラジン:H−NMR(CDCl;中性):δ(ppm)3.1(t、4H)、2.9(t、4H)、2.7(s、3H)。又、メタンスルホニルピペラジンは、塩化メタンスルホニルを水溶液中で過剰なピペラジン(>2当量)と反応させることによっても調製される。
【0152】
ピペラジンのN−スルホニル誘導体(例えば、1−(ジメチルアミノカルボニル)ピペラジン、及び1−(ジメチルアミノスルホニル)ピペラジン)は、ピペラジンを、それぞれジメチルアミノクロロホルメート、又はジメチルアミノスルファモイルクロライドと反応させて調製した。
【0153】
3−アセチルアミノピロリジンのラセミ体又は単一キラル異性体は、塩化アセチル(iPrNEt、CHCl,0℃)でN−Boc−3−アミノピロリジン(ラセミ化合物、3R又は3S)を処理し、その後にN−Boc基(CFCOH、CHCl)を脱保護することによって調製した。3−(アセタミド)ピロリジン:H−NMR (DMSO−d; TFA salt): δ (ppm) 4.2 (quin, 1H), 3.3−3.1 (m, 3H), 2.9 (m, 1H), 2.0 (m, 1H), 1.8 (br s, 4H)。
【0154】
(3R)−アミノピロリジンのN−アルカンスルホニル誘導体は、塩化プロピオニルスルホニル又は塩化シクロヘキシルメチルスルホニル(i−PrNEt、CHCl、0℃)でN−Boc−(3R)−アミノピロリジンを処理し、N−Boc基(CFCOH、CHCl)を脱保護することによって得た。
【0155】
テトラヒドロ−3−チオフェンアミン−1,1−ジオキサイドの誘導体は、下記のプロトコール(Loev, B. J. Org. Chem. 1961, 26, 4394−9)に従い、3−スルホレンを、メタノール中のおける第一級アミン((触媒KOH、室温)と反応させて調製した。N−メチル−3−テトラヒドロチオフェン−アミン−1,1−ジオキシド(TFA塩):H−NMR (DMSO−d): δ (ppm) 9.4 (br s, 2H), 4.0−3.8 (quin, 1H), 3.6−3.5 (dd, 1H), 3.4−3.3 (m, 1H), 3.2−3.1 (m, 2H), 2.5 (s, 3H), 2.4 (m, 1H), 2.1 (m, 1H)。
【0156】
(S)−1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1λ−チオフェン−3−イルアミンは、以下のようにして調製した:
1)メタノール中における(Boc)Oにより室温で約12時間処理することによって、(S)−3−テトラヒドロチオフェンアミンをN−Boc保護化した(Dehmlow, E. V.; Westerheide, R. Synthesis 1992, 10, 947−9);2)ジクロロメタン中でmCPBAにより0℃にて約5時間処理することによって、N−Boc保護化(S)−1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1λ−チオフェン−3−イルアミンへと酸化した;3)ジクロロメタン中でTFAにより室温で1時間処理することによって、遊離アミンへとスルホン誘導体のN−Boc脱保護化を行った(該遊離アミンは、TFA塩として単離した);(R)−1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1λ−チオフェン−3−イルアミンは、(S)−3−テトラ−ヒドロチオフェンアミンの代わりに(R)−3−テトラヒドロチオフェンアミンを使用して、同じ方法で調製した。
【0157】
N−メチル−テトラヒドロ−2H−チオピラン−4−アミン−1,1−ジオキサイドは、テトラヒドロ−4H−チオピラン−4−オンから調製した:i)MeNH,NaBH;ii)(Boc)O、MeOH;iii)mCPBA、CHCl,0℃;iv)CFCOH、CHCl。(m/z): [M+H] calcd for C13NOS 164.07; found, 164.9. H−NMR (CDOD; TFA salt): δ (ppm) 3.4−3.1 (m, 5H), 2.7 (s, 3H), 2.4 (br d, 2H), 2.1 (br m, 2H)。
【0158】
プロリンジメチルアミド、イソニペコタミド(ピペリジン−4−カルボキサミド)、及び1−(テトラヒドロ−2−フロイル)ピペラジンは、市販されており、市販の供給業者から購入した。
【0159】
4−ピペリジノール−ジメチルカルバメートは、ジメチルアミノクロロギ酸をN−Boc保護化4−ピペリジノールと反応させて調製した。
【0160】
(調製1)
1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オンの調製
a.N−イソプロピル−N−(2−ニトロフェニル)アミンの調製
氷浴で冷却された、エタノール(300 mL)中における2−フルオロ−ニトロベンゼン(31.8g、0.225mol)の冷溶液に、イソプロピルアミン(54.0mL、0.634mol)を加え、更に、水(120 mL)中における炭酸カリウム(31.1g、0.225mol)の溶液を加えた。その混合物を0℃にて1時間攪拌し、その後、6時間還流した。その混合物を室温に冷やすことによって反応を終わらせ、それを減圧下で蒸発させてオレンジ色の残留物を得た。残留物をエチルエーテル(800mL)と塩水(300mL)で抽出した。有機層を乾燥させ濾過して、オレンジ色の液体として表題の中間体(39g)を得た。H−NMR (CDCl, 300 MHz): δ (ppm) 8.06 (d, 1H), 7.30 (t, 1H), 6.74 (d, 1H), 6.48 (t, 1H), 3.73 (hept, 1H), 1.20 (d, 6H)。
【0161】
b.N−(2−アミノフェニル)−N−イソプロピルアミンの調製
氷浴で冷却された、エタノール(600mL)及び2Mの水酸化ナトリウム溶液(320mL)の混合物に、緩徐にZn粉じん(59.5g)を加えた。Znスラリーを攪拌しながら、エタノール(50mL)中に溶解させたN−イソプロピル−N−(2−ニトロフェニル)アミン(41g、0.228mol)を加えた。混合物を0℃にて30分間攪拌し、その後、85℃に加熱した。混合物の還流溶液が無色になるまで、混合物を85℃にて約12時間攪拌した。その後、混合物を0℃に冷却し、濾過した。収集した固体をEtOAc(200mL)で洗浄した。濾液と洗浄溶液を集め、減圧下で蒸発させて余分な揮発性溶剤を除去した。濃縮の間に、混合物は薄茶色/黄色になった。水性濃縮物をEtOAc(800mL)で抽出した。有機溶液を乾固するまで濃縮し、茶色からピンク色のオイルとして表題の中間体(33g)を得た。この中間体は、更に処理することなしに次の手順で使用した。H−NMR (CDCl, 300 MHz): δ (ppm) 6.73−6.5 (m, 4H), 3.58−3.55 (hept, 1H), 1.2 (d, 6H)。
【0162】
c.1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オンの調製
テトラヒドロフラン(500mL)中における手順(b)の生成物N−(2−アミノフェニル)−N−イソプロピルアミン(34g、0.226mol)の溶液に、固体のカルボニルジイミダゾール(36.7g、0.226mol)を加えた。混合物を、窒素ガス雰囲気下にて室温で約24時間攪拌した。混合物を真空濃縮し、得られた暗茶色の残留物をEtOAc(700 mL)及び塩水(300mL)で抽出した。その後、有機層を、その色が暗茶色から薄黄色に変わるまで、1Mのリン酸で複数回洗浄した(約3×300mL)。有機溶液を乾固するまで蒸発させ、薄黄色のオイルとして表題の中間体(34g)を得た。このオイルは静置すると緩徐に凝固した。H−NMRによりその物質の純度を評価したが、不純物は検出されなかった:H−NMR (CDOD, 300 MHz): δ (ppm) 7.2 (m, 1H), 7.0 (m, 3H), 4.6 (hept, 1H), 1.46 (d, 6H). (m/z): [M+H] calcd for C1012O 177.09; found 177.2。
【0163】
分析用HPLC:保持時間=2.7分(99%純度):1)カラム:Zorbax、Bonus−RP、粒子径3.5μm、2.1x50mm;2)流速:0.5mL/min;3)0〜0.5分間の無勾配状態(10%溶媒B/90%溶媒A);次いで、50%溶媒B/50%溶媒Aへの5分にわたる直線勾配(溶媒A=98%水/2%MeCN/0.1%TFA;溶媒B=90%MeCN/10%水/0.1%TFA)。TLC分析(シリカゲルプレート):R=0.5(CHCl)。液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)(m/z):[M+H]+C1012Oに対する計算値177.09;実測値177.3
(調製2)
(1S,3R,5R)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
a.8−ベンジル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オンの調製
濃塩酸(30mL)を、水(170mL)中における2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン(82.2g、0.622mol)の不均一溶液に、撹拌しながら加えた。0℃(氷浴)まで冷却した別のフラスコにおいて、水(350mL)中におけるベンジルアミン(100g、0.933mol)の溶液に、濃塩酸(92mL)を緩徐に加えた。この2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン溶液をおよそ20分間撹拌し、水(250mL)で希釈し、次いで、このベンジルアミン溶液を加え、次いで、水(400mL)中における1,3−アセトンジカルボン酸(100g、0.684mol)の溶液を加え、次いで、水(200mL)中におけるリン酸水素ナトリウム(44g、0.31mol)を加えた。40%のNaOHを使用して、そのpHをpH1からpH約4.5へと調整した。得られた溶液を一晩攪拌した。その後、50%の塩酸を使用して、この溶液をpH7.5からpH3へと酸性化し、85℃に加熱して、2時間撹拌した。この溶液を室温まで冷却し、40%のNaOHを使用してpH12に塩基性化し、DCM(3×500mL)で抽出した。収集した有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ、濾過し、そして減圧下にて濃縮して、粘性の褐色のオイル(52g)として表題の粗中間体を得た。
【0164】
メタノール(1000mL)中におけるこの粗中間体の溶液に、0℃にてジ−tert−ブチルジカーボネート(74.6g、0.342mol)を加えた。その溶液を室温まで温め、一晩撹拌した。減圧下でメタノールを除去し、得られたオイルをジクロロメタン(1000mL)に溶解させた。この中間体を1MのHPO(1000mL)に抽出し、ジクロロメタン(3×250mL)で洗浄した。NaOH水溶液を使用して、水層をpH12に塩基性化し、ジクロロメタン(3×500mL)で抽出した。収集した有機層を乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粘性の明褐色のオイルとして表題の中間体を得た。H−NMR (CDCl) δ (ppm) 7.5−7.2 (m, 5H, C), 3.7 (s, 2H, CHPh), 3.45 (broad s, 2H, CH−NBn), 2.7−2.6 (dd, 2H, CHCO), 2.2−2.1 (dd, 2H, CHCO), 2.1−2.0 (m, 2H, CHCH), 1.6 (m, 2H, CHCH). (m/z): [M+H] calcd for C1417NO 216.14; found, 216.0。
【0165】
b.3−オキソ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
EtOAc(300mL)中における8−ベンジル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン(75g、0.348mol)の溶液に、EtOAc(300mL)中におけるジ−tert−ブチルジカーボネート(83.6g、0.383mol、1.1当量)の溶液を加えた。得られた溶液及び洗浄液(100mL EtOAc)を、23gの水酸化パラジウム(乾燥基準で20重量%Pd、炭素担持、水による約50%湿潤;例えば、パールマン触媒)を含む1L Parr水素化容器に窒素気流下にて加えた。この反応容器を脱ガスし(真空及びNを交互に5回)、次いでHガスで60psiまで加圧した。必要であれば、H圧を60psiに保つためにHを再充填して、シリカ薄層クロマトグラフィーでモニタリングしながら反応が完了するまでこの反応溶液を2日間攪拌した。次いで、この黒色溶液をCelite(登録商標)のパッドを通して濾過し、減圧下にて濃縮して、粘性の黄色から橙色のオイルとして表題の中間体を得た。それを、更に処理することなく、次の手順で使用した。H NMR (CDCl) δ(ppm) 4.5 (broad, 2H, CH−NBoc), 2.7 (broad, 2H, CHCO), 2.4−2.3 (dd, 2H, CHCH), 2.1 (broad m, 2H, CHCO), 1.7−1.6 (dd, 2H, CHCH), 1.5 (s, 9H, (CHCOCON))。
【0166】
c.(1S,3R,5R)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
メタノール(1L)中における先の手順の生成物(75.4g、0.335mol)の溶液に、機械攪拌機によって撹拌しながら、N気流下にて、ギ酸アンモニウム(422.5g、6.7mol)、水(115mL)、及び活性炭上に担持したパラジウム65g(乾燥基準で10%、水による約50%湿潤;Degussa型E101NE/W)を加えた。24時間及び48時間後に、追加分のギ酸アンモニウム(132g、2.1mol)をそれぞれの時間において加えた。分析用HPLCにより、反応の進行の停止を確認し、Celite(登録商標)(>500g)を加え、得られた濃い懸濁液を濾過し、収集した固体をメタノール(約500mL)で洗浄した。濾液を収集し、減圧下で濃縮した。次いで、得られた白濁二相溶液を、pH2で最終容量が約1.5〜2.0Lとなるまで1Mリン酸で希釈し、そしてジクロロメタン(3×700mL)で洗浄した。水層を、40%のNaOH水溶液を使用してpH12まで塩基性化し、ジクロロメタン(3×700mL)で抽出した。収集した有機層をMgSOで乾燥させ、濾過して、ロータリーエバポレーターにより濃縮し、次いで、高真空下で濃縮して、白色から淡黄色の固体として52g(70%)の表題中間体(通例、N−Boc−エンド−3−アミノトロパン)を得た。この生成物の、エンドアミンのエキソアミンに対する異性体比は、H−NMR分析に基づいて>99:1であった(分析用HPLCでは>96%純度)。H NMR (CDCl) δ (ppm) 4.2−4.0 (broad d, 2H, CHNBoc), 3.25 (t, 1H, CHNH), 2.1−2.05 (m, 4H), 1.9 (m, 2H), 1.4 (s, 9H, (CHOCON), 1.2−1.1 (broad, 2H). (m/z): [M+H] calcd for C1222 227.18; found, 227.2. Analytical HPLC (isocratic method; 2:98 (A:B) to 90:10 (A:B) over 5 min): retention time = 3.68 min。
【0167】
(実施例1)
4−(テトラヒドロフラン−2−カルボニル)ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステルの合成
【0168】
【化44】

a.(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
氷浴中で、乾燥THF(1000L)中における水素化ナトリウム(9.25g;231.4mmol;鉱油中に60%分散)の冷懸濁液に、窒素雰囲気下にて、THF(50mL)中における調製1の生成物1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(27.2g、154.2mmol)を加えた。その混合物を約0〜5℃にて30分間攪拌し、次いで、THF(50mL)中における4−ニトロフェニルクロロホルメート(34.2g、170mmol)を加えた。その混合物を一晩攪拌し、その間に混合物は徐々に室温まで温まった。次いで、形成された活性化エステルに、THF(50mL)中における(1S,3R,5R)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(36.7g、162mmol)を加えた。その混合物を室温で約12時間、及び約75℃にて3時間攪拌した。この時点で反応試料のLCMSはカップリング反応が完了していることを示した。その混合物を真空濃縮し、ジクロロメタン(1L)に溶解させ、それを、最初に1MのHPOで洗浄し、次に飽和NaHCO溶液で洗浄した。乾燥後、有機溶液を蒸発させ、薄黄色の残留物として表題の中間体を得た。そしてこの中間体は更に処理することなく、次の手順で使用した。
【0169】
b.トリフルオロアセテート塩としてのN−[(1S,3R,5R)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボン酸(8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)アミドの調製
氷浴で、ジクロロメタン(200mL)中における(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ−イミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(前手順の生成物)の冷溶液に、トリフルオロ酢酸(200mL)を加えた。その混合物を約5℃にて約30分間攪拌し、次いで室温で約1時間攪拌した。混合物を蒸発させた後、オイル状の残留物にエチルエーテル(約500mL)を加えると、その残留物は固体化した。沈殿物を収集し、大量のエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥させて、TFA塩として表題の中間体(47g)を得た。又、表題の中間体は一般的に、エンド−N−(8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−1−カルボキサミドとも呼ばれる。
【0170】
c.N−[(1S,3R,5R)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボン酸(8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)アミド(遊離塩基)の調製
ジクロロメタン(500mL)中における前手順の生成物(15g、33.9mmol)の懸濁液に、水(500mL)を加えた。その反応混合物にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(約20mL)を加えて、水層をpH8〜9にした。層を分けて有機層を回収した。水層をジクロロメタン(100mL)でもう一度抽出した。結果として得られた抽出物を収集し、それを塩水で洗浄した。NaSOで乾燥させ、濾過した後、溶媒を除去して、遊離塩基として黄色の粉末の標題の化合物(9.7g)を得た。H NMR (DMSO−d): 1.48 (d, 6H), 1.40−2.00 (m, 8H), 3.53 (m, 2H), 4.07 (m, 1H), 4.69 (septet, 1H), 7.21 (m, 2H), 7.45 (d, 1H), 8.08 (d, 1H), 9.31 (d, 1H). (m/z): [M+H] calcd for C1824 329.20; found 329.2. Analytical HPLC: (2−50% MeCN/HO over 6 min) retention time = 3.67 min。
【0171】
d.3−クロロプロピル−4−(テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル)ピペラジン−1−カルボキシレートの調製
ジクロロメタン(5mL)中における1−(テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル)ピペラジン(202mg、1.1mmol)の0℃の溶液に、3−クロロプロピルクロロホルメート(133μL、1.1mmol)を加え、次いで、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(192μL、1.1mmol)を加えた。反応物を2時間にわたって室温に戻し、この時点で、反応物を蒸発させて、小麦色のオイルとして表題の化合物を得た。この化合物は更に精製することなく使用した。
【0172】
e.4−(テトラヒドロフラン−2−カルボニル)ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステルの合成
3−クロロプロピル−4−(テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(335mg、1.1mmol)をジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解させて、手順(c)の固体遊離塩基(118mg、0.36mmol)及びNaI(164mg、0.72mmol)に加えた。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(64μL、0.36mmol)を加え、その混合物を90℃にて一晩攪拌した。揮発物を除去し、分取HPLC(逆相)(15〜45%の勾配で50分間;流速20mL/分)による精製を行い、TFA塩(45mg)として白色固体である表題の化合物を得た。(m/z): [M+H] calcd for C3144 597.33; found 597.1. Analytical HPLC: (5−65% MeCN/HO over 4 min) retention time = 2.58。
【0173】
(実施例2)
4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステルの合成
【0174】
【化45】

実施例1の手順(d)において1−(テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル)ピペラジンの代わりに2−ピペラジン−1−イルエタノールを使用することを除いて、実施例1に記載のプロセスにより、TFA塩として表題の化合物を調製した(13.8mg)。(m/z): [M+H] calcd for C2842 543.32; obsd. 543.5。
【0175】
(実施例3〜12)
実施例1の手順(d)において1−(テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル)ピペラジンの代わりに適切な試薬を使用することを除いて、実施例1に記載のプロセスにより、以下の実施例3〜12の化合物を調製した。
【0176】
【化46】

【0177】
【化47】

(実施例13)
1,1−ジオキソ−18−チオモルホリン−4−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステルの代替合成
【0178】
【化48】

a.(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
1−イソプロピル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(17.6g、100mmol)及び4−ニトロフェニルクロロホルメート(20.2g、100mmol)が入った窒素雰囲気の500mL反応フラスコに、ジクロロメタン(350mL)を加え、次いで、トリエチルアミン(30.5mL、220mmol)を緩徐に加えた。その溶液を15分間攪拌し、次いで、(1S,3R,5R)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(22.6g、100mmol)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×200mL)で洗浄した。蒸留によりジクロロメタンを取り除き、次いでMTBE(350mL)を加えた。このMTBE溶液を、1Nの燐酸(2×200mL)、飽和重炭酸ナトリウム(200mL)、及び水(200mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム(40g)で乾燥させ、濾過して、次いで、蒸留により溶媒を除去して黄褐色の固体として表題の中間体を得た(35.7g、収率83%)。
【0179】
b.N−[(1S,3R,5R)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボン酸(8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)アミドトリフルオロアセテート塩の調製
500mLフラスコで、(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(21.4g、50mmol)をジクロロメタン(200mL)に溶解させた。トリフルオロ酢酸(37mL、500mmol)を加え、その反応混合物を室温で3時間攪拌した。その反応混合物を水(2×100mL)で洗浄した。有機層の溶媒を蒸留によって除去し、粗生成物である残留物を更にMTBE(200mL)を加えてトリチュレートした。室温で1時間攪拌した後、濾過により固体を単離し、MTBE(2x25mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて表題の中間体を得た(21.0g、収率97%)。
【0180】
c.1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボン酸−3−クロロプロピルエステルの調製
500mLフラスコにおいて、チオモルホリンジオキシド(13.5g、100mmol)を室温でジクロロメタン(150mL)に溶解し、次いで、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(19.2mL、110mmol)を加えた。室温で10分間攪拌した後、反応混合物を氷浴で約5℃に冷却した。反応混合物に、滴下ロートにより、反応温度を10℃以下に維持する速度で1−クロロ−3−クロロメトキシプロパン(11.8mL、100mmol)を加えた。添加が完了した時、反応混合物を室温まで温めた。反応混合物を水(2×100mL)で洗浄し、その有機層を無水硫酸ナトリウム(25g)で乾燥させた。濾過後、蒸留により溶媒を除去して、オイル状固体として表題の化合物を得た(24.0g、収率94%)。この化合物は静置すると固体化した。
【0181】
e.1,1−ジオキソ−18−チオモルホリン−4−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステルの合成
ジクロロメタン(100mL)中におけるN−[(1S,3R,5R)−3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボン酸(8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)アミドトリフルオロアセテート塩(8.8g、20mmol)の溶液に、水(100mL)を加えた。水層のpHを約12に調整し、この塩の遊離塩基を得た。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸留により溶媒を除去した。遊離塩基をN−メチル−2−ピロリドン(100mL)に溶解させ、その溶液を、1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボン酸−3−クロロプロピルエステル(7.2g、28mmol)及びNaI(3.0g、20mmol)の入った250mLのフラスコに移した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.2mL、24mmol)を加え、その反応混合物を18時間50℃に加熱した。蒸留により溶媒を除去した。粗生成物である残留物をEtOAc(200mL)に溶解させ、水(2×50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(10g)で乾燥させた。そして、蒸留により溶媒を除去して、粗生成物である残留物(約12g)を得た。
【0182】
粗生成物である残留物を、2”カラムの分取HPLC(充填剤:塩基−不活性化シリカ(BDS)、流量:200mL/分;溶離剤A:0.1%TFA水溶液;溶離剤B:90%アセトニトリル/10%0.1%TFA水溶液;勾配(時間、%B):(0、5);(25、30);(35、80);(45、80);(50、5);(60、5))により精製した。純粋な留分を凍結乾燥することにより生成物を単離し、表題の化合物(3.4g、収率26%)を得た。H−NMR (DMSO−d) δ(ppm): 9.35 (d, 1H), 8.07 (d, 1H), 7.46 (d, 1H), 7.22 (t, 1H), 7.16 (t, 1H), 4.69 (septet, 1H), 4.20−4.00 (m, 3H), 4.12 (t, 2H), 3.90−3.70 (m, 4H), 3.70 (t, 2H), 3.25−3.05 (m, 4H), 2.5−2.0 (m, 8H), 2.15 (dt, 2H), 1.49 (d, 6H). (m/z): [M+H] calcd for C2637S 548.2; found, 548.4。
【0183】
(検定1:5−HT4(c)ヒト受容体における放射リガンド結合検定)
a.膜調製5−HT4(c)
ヒト5−HT4(c)受容体cDNAで安定的にトランスフェクトしたHEK−293(ヒト胚腎臓)細胞(Bmax=約6.0pmol/mgタンパク質、[H]−GR113808膜放射リガンド結合検定を使用して測定)を、T−225フラスコ中において、10%ウシ胎仔血清(FBS)(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号10437)、2mMのL−グルタミン及び(100単位)ペニシリン−(100μg)ストレプトマイシン/ml(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号15140)を補充したDulbecco改変イーグル培地(DMEM)(4,500mg/L D−グルコース及び塩化ピリドキシン含有)(GIBCO−Invitrogen Corp.[米国カリフォルニア州カールズバッド]:カタログ番号11965)中で、5%COインキュベーター加湿インキュベーター内で37℃にて増殖させた。細胞を、800μg/mLのジェネテシン(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号10131)の培地への添加による連続的な選択圧の下で増殖させた。
【0184】
細胞を、およそ60〜80%コンフルーエンシーまで増殖させた(35代未満の継代培養)。回収の20〜22時間前、細胞を2回洗浄し、次いで無血清DMEMを供給した。膜調製の全ての手順を氷上で行った。細胞単層を、緩徐にした機械撹拌及び25mLピペットでの破砕により取り出した。細胞を1000rpm(5分間)の遠心分離により回収した。
【0185】
膜調製のために、細胞ペレットを、氷冷50mM 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、pH7.4(膜調製緩衝液)(40mL/30〜40個のT225フラスコから得られた細胞総数)中に再懸濁し、そしてポリトロン破砕機(設定19,2回×10秒)を使用して、氷上で均質化した。得られたホモジネートを、1200gで5分間、4℃にて遠心分離した。ペレットを捨て、上清を40,000gで遠心分離した(20分間)。ペレットを、膜調製緩衝液を用いた再懸濁及び40,000gでの遠心分離(20分間)により1回洗浄した。最終ペレットを、pH7.4の50mMのHEPES(検定緩衝液)(1つのT225フラスコ/1mLに相当)中に再懸濁した。膜懸濁液のタンパク質濃度を、Bradford(Bradford、1976)の方法により決定した。膜を、−80℃にてアリコート中に凍結保存した。
【0186】
b.放射リガンド結合検定
放射リガンド結合検定は、1.1mLの96ディープウェルポリプロピレン検定プレート(Axygen)中で、総検定容量400μL(0.025%ウシ血清アルブミン(BSA)含有の50mMのHEPES(pH7.4)中に2μg膜タンパク質含有)において行った。放射リガンドのK値決定のための飽和結合試験を、[H]−GR113808(Amersham Inc.、Bucks、UK:カタログ番号TRK944;約82Ci/mmolの特異的活性)を用い、0.001nM〜5.0nMの範囲の8〜12の異なる濃度で実施した。化合物のpK値の決定のための置換検定を、0.15nMでの[H]−GR113808を用い、10pM〜100μMの範囲の11の異なる濃度の化合物で実施した。
【0187】
試験化合物を、DEMSO中における10mMのストック溶液として受け入れ、次いで0.1%BSA含有の50mMのHEPES(pH7.4)中に400μMまで25℃にて希釈し、次いで、同じ緩衝液中で連続希釈(1:5)を行った。非特異的結合を、1μMの非標識化GR113808の存在下で決定した。検定を室温で60分間インキュベートし、次いで、結合反応を停止させるため、事前に0.3%ポリエチレンイミン中に浸しておいた96ウェルGF/Bグラスファイバーフィルタープレート(Packard BioScience Co.[米国コネティカット州メリデン])を迅速な通して濾過させた。フィルタープレートを、濾過緩衝液(氷冷した50mM HEPES、pH7.4)で3回洗浄し、非結合の放射活性を除去した。プレートを乾燥させ、35μLのMicroscint−20液体シンチレーション液(Packard BioScience Co.[米国コネティカット州メリデン])を各ウェルに加え、そしてプレートを、Packard Topcount液体シンチレーションカウンター(Packard BioScience Co.[米国コネティカット州メリデン])中で計数した。
【0188】
結合データを、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.[米国カリフォルニア州サンディエゴ])で1部位競合についての3パラメータモデルを使用して非線形回帰分析により分析した。底(BOTTOM)(曲線最小値)を、1μMのGR113808の存在下で決定されるような非特異結合についての値に固定した。試験化合物についてのK値を、Prismにおいて最適化IC50値及び放射リガンドのK値から、Cheng−Prusoff方程式(Cheng and Prusoff, Biochemical Pharmacology, 1973, 22, 3099−108)を使用して計算した:K=IC50/(1+[L]/K)、ここで、[L]=濃度[H]−GR113808である。結果を、K値の負の10進法対数、pKとして表す。
【0189】
この検定においてより高いpK値を有する試験化合物は、5−HT受容体に対してより高い結合親和性を有する。この検定において試験した本発明の化合物は、約7.0〜約9.0までの範囲一般的に、約7.5〜約8.5までの範囲のpK値を有した。例えば、実施例1の化合物は、この検定において7.9のpK値を示した。
【0190】
(検定2:5−HTAヒト受容体における放射リガンド結合検定:受容体サブタイプ選択性の決定)
a.膜調製5−HT3A
ヒト5−HT3A受容体cDNAにより安定的にトランスフェクトしたHEK−293(ヒト胚腎臓)細胞を、Michael Bruess博士(University of Bonn、GDR)から得た(Bmax=約9.0pmol/mgタンパク質、[H]−GR65630膜放射リガンド結合検定を使用して決定)。細胞を、T−225フラスコ又は細胞ファクトリー中の、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone[米国ユタ州ローガン]:カタログ番号SH30070.03)及び(50単位)ペニシリン−(50μg)ストレプトマイシン/ml(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号15140)を補充した50%Dulbecco改変イーグル培地(DMEM)(GIBCO−Invitrogen Corp.[米国カリフォルニア州カールズバッド]:カタログ番号11965)及び50%のHam’s F12(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号11765)中で、5%CO中で、加湿インキュベーター内で37℃にて増殖させた。
【0191】
細胞を、およそ70〜80%コンフルーエンシーまで増殖させた(35代未満の継代培養)。膜調製の全ての手順を氷上で行った。細胞を回収するため、培地を吸引によって除去し、そして細胞を、Ca2、Mg2+非含有Dulbeccoリン酸緩衝化生理食塩水(dPBS)で洗浄した。この細胞単層を緩徐にした機械攪拌により取り出した。細胞を1000rpm(5分)の遠心分離により収集した。膜調製のその後の手順は、5−HT4(c)受容体を発現する膜について上記のプロトコールに従った。
【0192】
b.放射リガンド結合検定
放射リガンド結合検定を、96ウェルポリプロピレン検定プレート中で、総検定容量200μL(0.025%BSA検定緩衝液を含有する50mMのHEPES(pH7.4)中に1.5〜2μg膜タンパク質含有)において行った。放射リガンドのK値決定のための飽和結合試験を、[H]−GR65630(PerkinElmer Life Sciences Inc.[米国マサチューセッツ州ボストン]:カタログ番号NET1011、約85Ci/mmolの特異的活性)を使用して、0.005nM〜20nMの範囲の12の異なる濃度で実施した。化合物のpK値の決定のための置換検定を、0.50nMでの[H]−GR65630を使用して、10pM〜100μMの範囲の11の異なる濃度の化合物で実施した。化合物は、DEMSO(3.1節を参照)中における10mMストック溶液として受け入れ、そして0.1%BSA含有の50mM HEPES(pH7.4)中に400μMまで25℃にて希釈し、次いで、同じ緩衝液中で、連続希釈(1:5)を行った。非特異結合を、10μMの非標識MDL72222の存在下で決定した。検定を、室温で60分間インキュベートし、次いで、結合反応を、事前に0.3%ポリエチレンイミン中に浸しておいた96ウェルGF/Bグラスファイバーフィルタープレート(Packard BioScience Co.[米国コネティカット州メリデン])を通す迅速な濾過により停止させた。フィルタープレートを、濾過緩衝液(氷冷した50mM HEPES、pH7.4)で3回洗浄して非結合の放射活性を除去した。プレートを乾燥させ、35μLのMicroscint−20液体シンチレーション液(Packard BioScience Co.[米国コネティカット州メリデン])を各ウェルに加え、そしてプレートを、Packard Topcount液体シンチレーションカウンター(Packard BioScience Co.[米国コネティカット州メリデン])中で計数した。
【0193】
結合データを、上述の非線形回帰手順により分析してK値を決定した。底(曲線最小値)を、10μMのMDL72222の存在下で決定されるような非特異結合についての値として固定した。Cheng−Prusoff方程式における量[L]を、濃度[H]−GR65630として定義した。
【0194】
5−HT受容体サブタイプに対する5−HT受容体サブタイプの選択性を、K(5−HT3A)/K(5−HT4(c))比として計算した。この検定において試験した本発明の化合物は、約10〜約950の範囲の、一般的には約50〜約500の範囲の5−HT/5−HT受容体サブタイプ選択性を有した。例えば、実施例1の化合物は160のサブタイプ選択性を示した。
【0195】
(検定3:ヒト5−HT4(c)受容体を発現するHEK293細胞での全細胞cAMP蓄積フラッシュプレート検定)
この検定において、試験化合物の機能効力を、5−HT受容体を発現するHEK−293細胞が異なる濃度の試験化合物と接触させられた時、産生された環状AMPの量を測定することによって決定した。
【0196】
a.細胞培養
クローン化ヒト5−HT4(c)受容体cDNAにより安定的にトランスフェクトしたHEK−293(ヒト胚腎臓)細胞を、次の2つの異なる密度で受容体を発現するように調製した:(1)約0.5〜0.6pmol/mgタンパク質の密度([H]−GR113808膜放射リガンド結合検定を使用して決定)、及び(2)約6.0pmol/mgタンパク質の密度。細胞を、T−225フラスコ中で、10%ウシ胎仔血清(FBS)(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号10437)及び(100単位)ペニシリン−(100μg)ストレプトマイシン/ml(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号15140)を補充したDulbecco改変イーグル培地(DMEM)(4,500mg/L D−グルコース含有)(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号11965)において、5%COにて、加湿インキュベーター内で37℃にて増殖させた。細胞を、ジェネテシン(800μg/mL:GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号10131)の培地への添加による連続的な淘汰圧の下で増殖させた。
【0197】
b.細胞調製
細胞を、およそ60〜80%コンフルーエンシーまで増殖させた。回収の20〜22時間前、細胞を2回洗浄し、そして4,500mg/L D−グルコース含有無血清DMEM(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号11965)を供給した。細胞を回収するため、培地を吸引によって除去し、そして各T−225フラスコに、10mLヴァルセン(GIBCO−Invitrogen Corp.:カタログ番号15040)を加えた。細胞を室温で5分間インキュベートし、次いで、機械撹拌によりフラスコから引きはがした。この細胞懸濁液を、等量の予熱した(約37℃)dPBSを含む遠心チューブに移し、5分間1000rpmで遠心分離した。上清を捨て、そしてペレットを、予熱した(37℃)刺激緩衝液(2〜3のT−225フラスコにつき10mL当量)中に再懸濁した。この時間を書きとめ、時間0として記録した。細胞を、Coulter counterで計数した(8μmより上で計数、フラスコ収量は1〜2×10細胞/フラスコであった)。細胞を、予熱した(37℃)の刺激緩衝液(フラッシュプレートキット中に提供される)中に、5×10細胞/mlの濃度で再懸濁し、そして37℃にて10分間予熱した。
【0198】
cAMP検定を、125I−cAMPでのフラッシュプレートアデニリルシクラーゼ活性化検定システム(SMP004B、PerkinElmer Life Sciences Inc.[米国マサチューセッツ州ボストン])を用いた放射免疫検定様式で、製造業者の指示に従って実施した。
【0199】
細胞を、上述のように増殖させて調製した。この検定における細胞の最終濃度は、25×10細胞/ウェルであり、最終検定容量は100μLであった。試験化合物は、DMSO中における10mMストック溶液として受け入れ、25℃にて、0.1%BSA含有50mM HEPES(pH7.4)中に400μMまで希釈し、次いで、同じ緩衝液中に連続希釈(1:5)した。サイクリックAMP蓄積検定を、10pM〜100μM(最終検定濃度)の範囲の11の異なる濃度の化合物で実施した。5−HT濃度応答曲線(10pM〜100μM)は、全てのプレート上に含まれた。細胞を、振とうしながら37℃にて15分間インキュベートし、そして、各ウェルへの100μlの氷冷検出緩衝液(フラッシュプレートキット中に提供される)の添加により反応を停止させた。このプレートを密閉し、4℃にて一晩インキュベートした。結合放射活性を、Topcount(Packard BioScience Co.[米国コネティカット州メリデン)を使用してシンチレーション近似分光法によって定量した。
【0200】
産生された反応物1mL当たりのcAMPの量を、製造業者の使用者用手引きにおいて提供される指示に従って、cAMP標準曲線から外挿した。データを、3パラメータシグモイド用量応答モデルを使用して、GraphPad Prismソフトウェアパッケージで非線形回帰分析により分析した。効力データを、pEC50値(EC50値の負の10進法対数)として報告する。ここで、EC50は、最大応答の50%に対する有効濃度である。
【0201】
この検定においてより高いpEC50値を示す試験化合物は、5−HT受容体を作用させる(agonizing)ことにおいてより高い効力を有する。約0.5〜0.6pmol/mgタンパク質の密度の細胞株(1)を使用して、この検定で試験した本発明の化合物は、約7.5〜約9.0の範囲の、一般的には約8.0〜約9.0の範囲のpEC50値を有していた。例えば、実施例1の化合物は、8.4のpEC50値を有していた。
【0202】
(検定4:hERG心臓カリウムチャネルを発現する全細胞における、カリウムイオン電流の阻害のin vitro電圧固定検定)
hERG cDNAにより安定的にトランスフェクトしたCHO−K1細胞を、ウィスコンシン大学のGail Robertsonから入手した。細胞は、必要とされるまで極低温貯蔵で保管した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)及び200μg/mlジェネテシンを補充したDulbecco改変イーグル培地/F12中で増殖させ、そして継代した。細胞を、単離された細胞が全細胞電位固定試験のために選別され得る密度で、35mmディッシュ(2mL培地含有)中のポリ−D−リジン(100μg/mL)コートしたカバーガラス上に播種した。このディッシュを、加湿した5%CO環境にて37℃にて維持した。
【0203】
細胞外溶液を、少なくとも7日毎に調製し、使用しない場合は4℃にて保存した。細胞外溶液は、NaCl(137)、KCl(4)、CaCl(1.8)、MgCl(1)、グルコース(10)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(10)を含有し(カッコ内はmM)、NaOHによってpH7.4とした。試験化合物の存在又は非存在下において、細胞外溶液を貯蔵器内に入れ、そこから細胞外溶液を、約0.5mL/分で記録チャンバー内へ流した。細胞内溶液を調製し、アリコートにして、使用する日まで−20℃にて保存した。細胞内溶液は、以下を含有する(カッコ内はmM):KCl(130)、MgCl(1)、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)N、N、N’、N’−テトラ酢酸塩(EGTA)(5)、MgATP(5)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(10)、KOHによってpH7.2とした。全ての実験を、室温(20〜22℃)で実施した。
【0204】
細胞が上に播種されているカバーガラスを、記録チャンバーに移動し、連続的に灌流した。ギガオームシールを細胞とパッチ電極との間に形成した。安定なパッチが達成されると、−80mVにおける初期保持電位で電位固定様式で記録を開始した。全細胞電流が安定した後、細胞を試験化合物に曝露した。標準電圧プロトコールは:4.8秒間の−80mVの維持電位から+20mVへ手順し、5秒間−50mVに再分極し、次いで、最初の維持電位(−80mV)に戻る、というものであった。この電位プロトコールを15秒ごとに1回(0.067Hz)実施した。再分極期の間のピーク電流振幅をpClampソフトウェアを使用して決定した。3μMの濃度で試験化合物を5分間細胞上に灌流し、その後、化合物の非存在下において5分間の洗浄を行った。最終的に、陽性対照(シサプリド、20nM)を灌流液に加え、細胞の機能を試験した。−80mVから+20mVへの手順は、hERGチャネルを活性化し、その結果として、外向き電流が生じる。−50mVへ戻る手順は、チャネルが不活性化から回復し、非活性化するので、結果として外向きテール電流を生じる。
【0205】
再分極期の間のピーク電流振幅を、pCLAMPソフトウェアを使用して決定した。対照データ及び被験物品データを、Origin(登録商標)(OriginLab Corp.[米国マサチューセッツ州ノーサンプトン])にエクスポートし、個々の電流振幅を化合物非存在下での初期電流振幅に対して正規化した。各条件に対して正規化した電流の平均及び標準誤差を計算し、実験の時間経過に対してプロットした。
【0206】
被験物品又はビヒクル対照(通常、0.3%DMSO)のどちらかへの5分間の曝露後に観察されたK電流阻害の間での比較を行った。実験群の間での統計学的比較は、2つの母集団の対応なしのt検定(Microcal Origin v.6.0)により実施した。2つの母集団の差は、pが0.05未満で有意とみなした。
【0207】
この検定においてカリウムイオン電流の阻害の比率が小さいほど、治療剤として用いた場合に試験化合物が心臓再分極のパターンを変化する可能性は低くなる。この検定において3μMの濃度で試験した本発明の化合物は、約40%未満(一般的には、約25%未満)のカリウムイオン電流の阻害を示した。例えば、実施例1の化合物は、この検定において約9%の阻害を示した。
【0208】
(検定5:経口生体利用可能性のin vitroモデル:Caco−2浸透検定)
経口投与後、試験化合物の、腸を通って血流に入る能力をモデリングするために、Caco−2浸透検定を実施した。ヒト小腸単層の密着結合を模倣するように設計した細胞の単層に、溶液中の試験化合物が浸透する速度を決定した。
【0209】
Caco−2(結腸、線癌;ヒト)細胞を、ATCC(American Type Culture Collection;米国メリーランド州ロックビル)から得た。浸透試験のために、事前に湿らせておいたtranswellポリカーボネートフィルター(Costar;米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)上に、63,000細胞/cm2の密度で細胞を播種した。細胞単層は、培養21日後に形成された。トランスウェルプレート中での細胞培養後、細胞単層を含む膜を、トランスウェルプレートから分離し、拡散チャンバー(Costar;米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)内に挿入した。温度を制御するために、サーモスタットで調節した37℃の水が外部を循環する加熱ブロック中にこの拡散チャンバーを挿入した。空気分流板は、95%O/5%COを拡散チャンバーの各半分に送達し、細胞単層を横切る層流パターンを作り出し、非撹拌境界層の減少に有効であった。
【0210】
100μMの濃度の試験化合物及び14C−マンニトールを使用して浸透試験を行い、単層の完全性をモニタリングした。全ての実験を、約37℃にて60分間行った。試料を、チャンバーのドナーサイド及びレシーバサイドの両方から0分、30分及び60分で採取した。試料を、試験化合物濃度及びマンニトール濃度についてHPLC又は液体シンチレーション計数により分析した。cm/秒を単位とする浸透係数(K)を計算した。
【0211】
本検定において、約10×10−6cm/秒より大きいK値を、良好なバイオアベイラビリティーを示すものと見なす。この検定において試験した本発明の化合物は、通常約20×10−6cm/秒〜約60×10−6cm/秒、より一般的には、約30×10−6cm/秒〜60×10−6cm/秒のK値を示した。例えば、実施例1の化合物は60×10−6cm/秒のK値を示した。
【0212】
(検定6:ラットにおける薬物動態学的試験)
試験化合物の水溶液配合物を、約pH5〜約pH6のpHにて、0.1%乳酸中で調製した。雄のSprague−Dawleyラット(CD系統、Charles River Laboratories[米国マサチューセッツ州ウィルミントン])に、静脈内投与(IV)を介して試験化合物を2.5mg/kgの投与量、又は、経口胃管栄養法(OP)により5mg/kgの投与量で投薬した。投与量は、IV投与について1mL/kg、PO投与について2mL/kgであった。連続的な血液試料を、投与前及び投与後2分(IVのみ)、5分、15分、30分及び1時間、2時間、4時間、8時間、24時間に動物から採取した。血漿中の試験化合物の濃度を、最低定量限度1ng/mLの液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS/MS)(MDS SCIEX、API 4000,Applied Biosystems[米国カリフォルニア州フォスターシティ])によって決定した。
【0213】
標準的な薬物動態パラメータを、WinNonlin(バージョン4.0.1,Pharsight[米国カリフォルニア州マウンテンビュー])を使用して非区画分析(IVについて201モデル、POについて200モデル)によって評価した。Cmaxは、血漿中試験化合物濃度対時間の曲線における最大値を意味する。投薬の時間から最後の測定可能な濃度までの、濃度対時間曲線下の面積(AUC(0−t))を、線形台形公式によって計算した。経口バイオアベイラビリティー(F(%))、即ちIV投与についてのAUC(0−t)に対するPO投与についてのAUC(0−t)の投与量正規化の比率を以下のように計算した:
【0214】
【化49】

この検定で、Cmax、AUC(0−t)、及びF(%)のパラメータにおいて大きな値を示す試験化合物は、経口投与された場合、より高い生体利用可能性を有することが期待される。この検定において試験した本発明の化合物は、約0.15〜約0.35μg/mLの範囲のCmax値、及び約0.5〜1.1μg・hr/mLの範囲のAUC(0−t)値を有した。特に、実施例1の化合物は、以下の値を有していた:0.32mg/mLのCmax;0.97mg・hr/mLのAUC(0t);及び55%の経口バイオアベイラビリティーF(%)。
【0215】
本発明は、その具体的な実施態様を参照して説明されているが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得、そして等価物が置き換えられ得ることを、当業者は理解すべきである。更に、特定の状況、物質、組成物、処理、処理手順、又は手順を本発明の客観的な趣旨及び範囲に適合させるための多くの改変がなされ得る。このような改変の全ては、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。更に、上記で引用した全ての刊行物、特許及び特許文献は、あたかも個別に参考として本明細書で援用されているかのごとく、参考として本明細書で詳細に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物であって:
【化1】

式中、
が、ハロ又はC1−3アルキルであり、ここで、C1−3アルキルは、場合によりヒドロキシ又はハロで置換され;
が、水素又はC1−3アルキルであり、ここで、C1−3アルキルは、場合によりヒドロキシで置換され;
が、C1−3アルキル又は水素であり;
が、−(CH1−3C(O)NR
【化2】

であるか;
或いはR及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、
(i)以下の式(a)の部分:
【化3】

(ii)以下の式(b)の部分:
【化4】

;及び
(iii)式(c)の部分:
【化5】

から選択される部分を形成し;
式中:
が、−OC(O)NR、−C(O)NR、−NRS(O)1−3アルキル、−NRC(O)R、−NRS(O)NR、又は−NRC(O)ORであり;
が、−C(O)R、−(CHOR、−S(O)NR、−S(O)1−3アルキル、又は−S(O)(CH1−3S(O)1−3アルキルであり;
、R、及びRが、独立して水素又はC1−3アルキルであり;
が、水素又はC1−3アルキルであり、ここで、C1−3アルキルは、場合によりヒドロキシで置換され;
が、C1−3アルキルであり;
が、水素、C1−3アルキル、テトラヒドロフラニル、又は−NRであり;
が、水素又はC1−3アルキルであり;
aが、0、1又は2であり;
bが、0、1、2又は3であり;
cが、0、1又は2であり;
dが、1又は2であり;
eが、1又は2であるが;
但し、cが0の場合は、dが2であり、Rが−C(O)NRであって、cが2の場合は、dが1である、
化合物;或いはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物又は立体異性体。
【請求項2】
aが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、エチル又はイソプロピルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
bが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(b)の部分を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(c)の部分を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、エチル又はイソプロピルであり;
が、C1−3アルキルであり;
が、−(CH1−3C(O)NR、又は;
【化6】

であるか;
或いはR及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(a)の部分、式(b)の部分、及び式(c)の部分から選択される部分を形成し;
ここで、Rが、−OC(O)NR又は−C(O)NRであり;
が、−C(O)R、−(CHOR、又は−S(O)NRであり;
、R、及びRが、独立して水素又はメチルであり;
が、メチル、テトラヒドロフラニル、又は−NRであり;
aが0であり;
bが1であり;
cが1又は2であり;
dが1であり;
eが1である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、式(b)の部分(式中、Rは−C(O)Rである)を形成する、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、
4−(テトラヒドロフラン−2−カルボニル)ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−アセチル−ピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−ジメチルカルバモイルオキシピペリジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
3−カルバモイルピペリジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
(1,1−ジオキソテトラヒドロ−1λ−チオフェン−3−イル)メチルカルバミン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ−[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
(R)−2−カルバモイルピロリジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−アセチル−[1,4]ジアゼパン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−ベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
ジメチルカルバモイルメチル−メチルカルバミン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−ジメチルカルバモイルピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;
4−ジメチルスルファモイルピペラジン−1−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル;及び
それらの薬学的に許容される塩又は溶媒和物又は立体異性体
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリン−4−カルボン酸−3−{(1S,3R,5R)−3−[(3−イソプロピル−2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−1−カルボニル)アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル}プロピルエステル、或いはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物又は立体異性体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
治療有効量の請求項1〜10の何れか1項に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
治療で使用するための、請求項1〜10の何れか1項に記載の化合物。
【請求項13】
5−HT受容体活性に関連した、哺乳類における病態を治療する医薬品を製造するための、請求項1〜10の何れか1項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
前記病態が消化管の運動性低下障害である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記運動性低下障害が、慢性便秘、便秘型過敏性腸症候群、糖尿病性及び特発性胃不全麻痺、又は機能性消化不良である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
以下の式(I)の化合物であって:
【化7】

式中、R、R、R、R、a、及びbが、請求項1に定義される通りである、
化合物、或いはその塩又は溶媒和物又は立体異性体を調製するためのプロセスであって、式(I)の化合物或いはその塩又は溶媒和物又は立体異性体を提供するために、
(a)以下の式(III)の化合物:
【化8】

を、以下の式(IV)の化合物:
【化9】

(式中、Lは脱離基である)
と反応させる手順;或いは、
(b)以下の式(V)の化合物:
【化10】

(式中、Aは脱離基である)を、以下の式(VI)の化合物:
【化11】

と反応させる手順
を含む、プロセス。
【請求項17】
請求項16に記載のプロセスによって調製される生成物。
【請求項18】
5−HT受容体活性に関連した病態を有する哺乳類を治療するための方法であって、薬学的に許容される担体と請求項1〜10の何れか1項に記載の化合物とを含む治療有効量の薬学的組成物を、該哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記病態が、過敏性腸症候群、慢性便秘、機能性消化不良、胃内容排出の遅延、胃食道逆流疾患、胃不全麻痺、術後腸閉塞、腸偽閉塞、又は薬剤性遅延移行である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
哺乳類における消化管の運動性低下障害を治療する方法であって、薬学的に許容される担体と請求項1〜10の何れか1項に記載の化合物とを含む治療有効量の薬学的組成物を、該哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項21】
前記運動性低下障害が、慢性便秘、便秘型過敏性腸症候群、糖尿病性及び特発性胃不全麻痺、又は機能性消化不良である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
5−HT受容体を含む生物系又は生体試料を試験する方法であって、
(a)該生物系又は生体試料を請求項1〜10の何れか1項に記載の化合物と接触させる手順;及び
(b)該生物系又は生体試料に対する該化合物によって引き起こされる影響を測定する手順、
を含む、方法。

【公表番号】特表2009−516745(P2009−516745A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542415(P2008−542415)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045099
【国際公開番号】WO2007/062058
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】