説明

5位にイミノ基を有するアジン系化合物の製造方法。

【課題】 5位にイミド基を有するアジン系化合物又はその塩を、簡便、好収率且つ工業的に安価で、高純度に製造する方法を提供する。
【解決手段】
一般式(I)で表わされるアジン系化合物の製造方法において、一般式(II)で表わされる化合物を還元して、一般式(III)で表わされる化合物として、該還元体と一般式(IV)で表わされる化合物とを反応させて一般式(V)で表わされる化合物を得、該一般式(V)で表わされる化合物を酸化して一般式(I)で表わされる化合物を得ることを特徴とする製造方法。簡便で、より高い収率で純度の高い化合物を得ることができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、染料、蛍光色素、生体材料のラベル化剤等の分野で有用な5位にイミノ基を有するアジン系化合物(塩も含む)の製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
5位にイミノ基を有するアジン系化合物は医薬品、染料、蛍光色素、生体材料のラベル化剤として有用な化合物であることが知られている(非特許文献1)。近年、5位のイミノ基にヘテロ環基を導入したフェノキサジン系化合物がマラリヤ薬として有用なことが開示されている(特許文献1)。しかしながら、非特許文献1、及び特許文献1に記載の合成方法においては、イミノ基を最後の工程で導入しているために、工程数が多くなる問題点を有しており、より簡便な方法で、且つ収率の高い製造方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO/2009/113569号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサイエティー(Journal of the American Chemical Society)”1952年 72巻 584〜586頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、医薬品、染料、蛍光色素、生体材料のラベル化剤等の分野で有用な5位にイミド基を有するアジン系化合物又はその塩を、簡便に好収率且つ工業的に安価で、高純度な5位にイミド基を有するアジン系化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、前記課題を達成した5位にイミド基を有するアジン系化合物又はその塩の新規な合成法を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の方法によって達成される。
【0007】
<1>下記一般式(I)で表わされるアジン系化合物の製造方法において、下記一般式(II)で表わされる化合物を還元して下記一般式(III)として、一般式(III)で表わされる還元体と下記一般式(IV)で表わされる化合物とを反応させ一般式(V)とし、次いで一般式(V)を酸化することを特徴とする一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。一般式(I)〜一般式(V)で表わされる化合物は、互変異性体であってもよく、また、塩を形成していてもよい。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は置換基を表わし、RとR、RとR、RとR、RとRは互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。Xは、−N(R)−、−O−、−S−、又は−SO−を表わし、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表わす。Zはアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表わす。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、R、R、R、R、R、R、R、及びXは、一般式(I)のそれらと同義である。
【0012】
【化3】

【0013】
式中、R、R、R、R、R、R、R、及びXは、一般式(I)のそれらと同義である。
【0014】
【化4】

【0015】
式中、Zは、一般式(I)におけるそれと同義であり、Lは、ハロゲン原子、又は−OSO又は−SO−Rを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表わす。
【0016】
【化5】

【0017】
式中、R、R、R、R、R、R、R、X、及びZは、一般式(I)のそれらと同義である。
【0018】
<2>請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物が、下記一般式(VI)で表わされることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【0019】
一般式(VI)
【化6】

【0020】
式中、R〜R、X、及びZは、一般式(I)におけるそれらと同義である。R10、及びR11、は、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表わし、R10とR11、R10とR、R11とRとが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。一般式(VI)で表わされる化合物は、互変異性体であってもよく、また、塩を形成していてもよい。
【0021】
<3>一般式(I)及び一般式(VI)で表わされる化合物が下記一般式(VII)で表わされることを特徴とする請求項1、請求項2に記載の製造方法。
【0022】
【化7】

【0023】
式中、R、R、R、X、及びZは、一般式(I)及び一般式(VI)のそれらと同義であり、R10及びR11、は、一般式(VI)のそれらと同義である。Yは置換基を表わし、mは0〜4の整数を表わす。R10とR11、R10とR、R11とR、RとRとが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。一般式(VII)で表わされる化合物は互変異性体であってよく、塩を形成していてもよい。
【0024】
<4>一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされる化合物のXが−O−、又は−S−であることを特徴とする請求項(1)〜請求項(3)記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【0025】
<5>一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされるXが−O−又は−S−で表わされ、一般式(I)〜一般式(VII)で表わされる化合物のZがアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表わされることを特徴とする請求項(1)〜請求項(4)記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【0026】
<6>一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされるXが−O−で表わされ、一般式(I)〜一般式(VII)で表わされるZがアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表わされることを特徴とする請求項(1)〜請求項(5)記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【0027】
<7>一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされるXが−O−で表わされ、一般式(I)〜一般式(VII)で表わされるZがテロ環基で表わさる請求項1〜6記載の一般式(1)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【0028】
<8>一般式(I)〜一般式(VII)のZがピリジル基又はピリミジル基であることを特徴とする請求項1〜請求項7記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【0029】
<9>一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法において、一般式(II)で表わされる化合物の還元工程において、亜鉛、もしくは鉄を用いることを特徴とする請求項1〜8に記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、医薬品、染料、蛍光色素、生体材料ラベル化剤等の分野で有用な5位にイミノ基を有するアジン系化合物又はその塩を、簡便な方法により好収率、高純度で且つ工業的に安価に製造することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。
一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされる化合物は、互変異性体であってもよく、塩を形成していてもよい。一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされる化合物の塩としては、公知の無機酸と形成する塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩)や、公知の有機酸と形成する塩(例えば、酢酸塩、トリフロロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、1,5−ナフタレンジスルホン酸塩、蓚酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、フマル酸塩)が挙げられる。
一般式(I)〜一般式(III)、一般式(V)で表わされる化合物を更に詳しく説明する。
【0032】
【化8】

【0033】
式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は置換基を表わし、RとR、RとR、RとR、RとRは互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。Xは、−N(R)−、−O−、−S−、又は−SO−を表わし、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表わす。Zはアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表わす。
【0034】
一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)中のR、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は置換基を表わし、R、R、R、R、R、R、及びRの置換基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アルキル基(直鎖、分岐鎖、又は環状の好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜16、更に好ましくは1〜12のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、2−エチルヘキシル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘシル、アダマンチル)、アルケニル基(直鎖、分岐鎖、又は環状の好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜4のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜14、更に好ましくは6〜10のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子の少なくとも1種を含有する、5員、6員又は7員のヘテロ環基で、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜5のヘテロ環基で、例えば、モルホニル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジニル、ピラジルリジル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、チサジアゾリル)、シリル基(好ましくは炭素数3〜24、より好ましくは炭素数3〜12のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ヘキシルジメチルシリル)、アルコキシ基(炭素数1〜36、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは1〜8のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ドデシルオキシ、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ドデカノイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、
【0035】
カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜36、よりこの好ましくは炭素数1〜12のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N−ブチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ、N−プロピルスルファモイルオキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ、シクロヘキシルスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ)、アシル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアシル基で、例えば、ホルミル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、テトラデカノイル、シクロヘキサノイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、Nーエチル−N−オクチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチルN−フェニルカルバモイル、N,N−ジシクロヘキシルカルバモイル)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数12以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、テトラデシルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜12のアニリノ基で、例えば、アニリノ、N−メチルアニリノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは2〜12のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、ピバロイルアミド、シクロヘキサンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のウレイド基で、例えば、ウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−フェニルウレイド)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数12以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ)、
【0036】
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜18のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、シクロヘキサンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ、3−ピラゾリルアゾ)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ピリジルチオ、1−フェニルテトラゾリルチオ)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、オクチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数12以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ)を表す。
【0037】
一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)中のRとR、RとR、RとR、RとRは互いに結合して、2個の炭素原子と共に5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。形成される5員の環としては、シクロペンテン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環、フラン環等が挙げられる。また6員環としては、シクロヘキセン環、、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロピリミジン環、テトラヒドロピラジン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ジヒドロピラン環等が挙げられる。更に7員環としては、シクロヘプテン環、テトラヒドロアゼピン環等が挙げられる。これらの形成される5員、6員、及び7員の環は、更に前記R〜Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。また、形成される5員、6員、又は7員の環は更に、5員、6員、又は7員の環が縮合していてもよい。
【0038】
一般式(1)〜一般式(III)、及び一般式(V)中のXは、−N(R)−、−O−、−S−、又は−SO−を表わし、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表わし、Rのアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基は、前記R〜Rの置換基で説明したアルキル基、アルケニル基、アッリール基、及びヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。Rのアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基は、更に前記R〜Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
一般式(I)及び一般式(V)中のZは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表わし、Zのアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基は、前記R〜Rの置換基で説明したアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。Zのアルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基は、更に前記R〜Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
次に、一般式(IV)で表わされる化合物について詳しく説明する。
【0041】
【化4】

【0042】
式中、Zは、一般式(I)及び一般式(V)におけるそれと同義であり、Lは、ハロゲン原子、−OSO、又は−SOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表わす。
【0043】
一般式(IV)中のLは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、−OSO、又は−SOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表わす。
【0044】
のアルキル基、アルケニル基、アリール基は、前記R〜Rの置換基で説明したアルキル基、アルケニル基、アリール基と同義である。
のアルキル基、アルケニル基、アリール基は、前記R〜Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合にはそれらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
は、アルキル基又はアリール基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロルフェニル基、p−ニトロフェニル基である。
【0046】
Zがアルキル基又はアルケニル基の場合には、Lは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−OSOが好ましく、臭素原子、ヨウ素原子、−OSOがより好ましい。Zがアリール基又はヘテロ環基の場合には、Lはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、−SOが好ましく、フッ素原子、塩素原子、−SOがより好ましい。
【0047】
次に一般式(VI)で表わされる化合物について説明する。
【0048】
【化6】

【0049】
式中、R〜R、X、及びZは、一般式(I)におけるそれらと同義である。R10、及びR11は、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表わし、R10とR11、R10とR、R11とRとが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。一般式(VI)で表わされる化合物は、互変異性体であってもよく、また、塩を形成していてもよい。
【0050】
一般式(VI)中のR〜Rは、前記一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)で説明したそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0051】
一般式(VI)中のR10、R11のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基は、前記、Rの置換基で説明したアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。Rのアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基は、更に前記Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合にはそれらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
一般式(VI)中のR10とR11、R10とR、R11とRとが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R10とR11とが互いに結合して窒素原子と共に形成する5員の環としては、例えば、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、オキサゾリジン環、チアゾリジン環、オキサジアゾリジン環、チアジアゾリジン環等が挙げられる。6員環としては例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。7員環としては、アゼパン環、ジアゼパン環、オキシアゼパン環、チアゼパン環等が挙げられる。
【0053】
一般式(VI)中のR10とR、R11とRとが互いに結合して、窒素原子と共に形成する5員、6員、及び7員の環としては、前記一般式(I)において説明した5員、6員、及び7員の環と同義である。
【0054】
一般式(VI)中のRとR、RとRとが互いに結合して、2個の炭素原子と共に形成する5員、6員、及び7員の環としては、前記一般式(I)において説明した5員、6員、及び7員の環と同義である。
【0055】
一般式(VI)中の、R10とR、R11とR、RとR、RとRとが互いに結合して形成する5員、6員、又は7員の環が置換可能である場合には、前記Rで説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合にはそれらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
また、形成される5員、6員、及び7員の環は、更に5員、6員、又は7員の環が縮環していてもよい。
【0056】
一般式(VI)で表わされる化合物は、互変異性体であってもよく、また、前記一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)で説明した無機酸、又は有機酸との塩を形成していてもよい。
【0057】
次に一般式(VII)で表わされる化合物について説明する。
【0058】
【化7】

【0059】
式中、R、R、R、X、及びZは、一般式(I)及び一般式(VI)のそれらと同義であり、好まし範囲も同様である。R10及びR11は、一般式(VI)のそれらと同義であり、好ましい範囲も同様である。Yは置換基を表わし、mは0〜4の整数を表わす。R10とR11、R10とR、R11とR、RとRが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員、および7員の環は、前記一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)で説明した5員、6員、及び7員の環と同義である。
【0060】
一般式(VII)中のYは置換基を表わし、前記Rの置換基で説明した基と同じ意味の基を表わし、好ましい範囲も同様である。mは0〜4の整数を表わす。
【0061】
一般式(VII)で表わされる化合物は互変異性体であってよく、前記一般式(I)〜一般式(III))、及び一般式(V)で説明した)で説明した無機酸、又は有機酸との塩を形成していてもよい。
【0062】
次に、一般式(I)で表わされる化合物の好ましい範囲について説明するが、以下に述べる各置換基の好ましい範囲、より好ましい範囲、及び最もこのましい範囲の組み合わせのより上位の組み合わせが、より好ましい化合物を表わす。
【0063】
一般式(I)で表わされる化合物は、好ましくは一般式(VI)で表わされ、より好ましくは一般式(VII)で表わされる。
【0064】
一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、イミド基、アルコキシカルボニル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基がより好ましい。最も好ましくは、アミノ基、アシルアミノ基である。
【0065】
一般式(I)〜一般式(III)、一般式(V)〜一般式(VII)中のR〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基がより好ましく、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子、アルキル基である。
【0066】
一般式(I)〜一般式(III)、一般式(V)、一般式(VI)中のR、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、及びRとRとが互いに結合して5員又は6員環を形成することが好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、及びRとRとが互いに結合して5員又は6員環を形成することがより好ましく、更に好ましくはRとRとが互いに結合して5員又は6員環を形成するこである。最も好ましくは、RとRとが互いに結合して6員環を形成することである。
【0067】
一般式(I)〜一般式(III)、一般式(V)、及び一般式(VI)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、最も好ましくは水素原子である。
【0068】
一般式(I)〜一般式(III)、一般式(V)〜一般式(VII)中のX、好ましくは−O−又は−S−で表わされ、より好ましくは、−O−で表わされる。
【0069】
一般式(I)、一般式(IV)、一般式(V)、一般式(VI)、一般式(VII)中のZは、好ましくはアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表わされ、より好ましくはアルキル基、又はヘテロ環基で表わされ、更に好ましくは5員又は6員のヘテロ環基で表わされる。最も好ましくは6員のヘテロ環基で表わされる。
【0070】
以下に本発明の製造方法に従って合成可能な化合物(一般式(I)、一般式(VI)、一般式(VII))の一部を示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0071】
【化9】

【0072】
【化10】

【0073】
【化11】

【0074】
【化12】

【化13】

【0075】
【化14】

【化15】

【0076】
【化16】

【0077】
次に本発明の実施の態様を以下に説明する。
本発明の一般的な反応スキームを以下に示す。
【0078】
【化17】

【0079】
一般式(II)で表わされる化合物の還元反応においては、通常は、窒素、又はアルゴンガス等の不活性なガス気流下で行なうことが好ましく、公知の還元方法を用いることができる。例えば、水素ガスとパラジウム−炭素触媒、ラネーニッケル等の還元触媒を使用した接触還元法、ヒドラジン、ギ酸、ハイドロサルファイトソーダ、亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムボロハイドライド、リチウムアルミニウムハイドライド等の還元剤を用いる還元法、金属(鉄、亜鉛)と酸を用いる還元法等が有効に用いられる。還元反応においては、溶媒は使用しなくてもよいが、アルコール系(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール)、アミド系(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)、エステル系(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、水、エーテル系(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、THP)、炭化水素系(例えば、ヘプタン、ベンゼン、トルエン)ハロゲン化炭化水素系(クロロホルム、クロルベンゼン)、アセトニトリル等の溶媒を用いることが好ましい。また、これらの溶媒を混合した混合溶媒も好適に使用できる。アルコール系、及びアミド系の溶媒を用いることがより好ましい。
【0080】
還元反応の温度は、通常は−80℃〜200℃で行うことができるが、0℃〜120℃で行うのが好ましく、10℃から100℃で行うことがより好ましい。
還元反応の反応時間は、反応の温度にもよるが、通常は10分〜1日で完結する。
【0081】
一般式(II)で表わされる化合物の還元反応から得られる一般式(III)で表わされる化合物は、酸(例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸)との塩を形成させて反応液から取り出すことは可能であるが、一般式(III)で表わされる化合物は、速やかに酸化されて一般式(II)の化合物にもどるので、単離しないほうが好ましい。
【0082】
一般式(III)で表わされる化合物と、一般式(IV)で表わされる化合物の置換反応においては、使用されるモル比は、通常は、1:0.5〜1:20の範囲で用いることができるが、好ましくは1:10、より好ましくは1:5、更に好ましくは1:3で用いることができる。
【0083】
一般式(III)で表わされる化合物と、一般式(IV)で表わされる化合物の置換反応においては、溶媒を用いなくてもよいが、通常は溶媒を用いることが好ましい。用いられる溶媒は、水、又は前記の還元反応において説明した溶媒を用いることができる。また、それらの混合溶媒も好適に用いることができる。好ましい溶媒としては、アルコール系、アミド系、エーテル系、炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、アセトニトリル等が挙げられる。より好ましくは、アルコール系、及びアミド系の溶媒である。
【0084】
一般式(III)で表わされる化合物と、一般式(IV)で表わされる化合物の置換反応の温度は、0℃〜200℃で可能であるが、50℃〜150℃で行うことが好ましく、80℃〜140℃で行うことがより好ましい。
反応時間は、反応温度と使用する溶媒にもよるが、通常は1時間から24時間で行うことができる。
【0085】
一般式(III)で表わされる化合物と、一般式(IV)で表わされる化合物の置換反応においては、塩基を使用してもしなくてもよい。用いられる塩基としては、公知の塩基を用いることができる。例えば有機塩基(例えば、トリエチルアミン、DBU、ジメチルアミノピリジン、ピリジン、キノリン、ジエチルアニリン、ピコリン)、無機塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)が使用できる。塩基を用いる場合には有機塩基を用いることが好ましい。
塩基の使用量としては、一般式(III)の化合物に対して好ましくは0〜20倍モル、より好ましくは0〜10倍モル、更に好ましくは0〜5倍モルである。
【0086】
一般式(III)で表わされる化合物と、一般式(IV)で表わされる化合物の置換反応において得られる一般式(V)で表わされる化合物は、反応液から、フリー体や、酸を使用して塩を形成させて単離してもよい。使用できる酸としては、前記一般式(III)で述べた酸を用いることができる。一般式(V)で表わされる化合物は、酸化され易く単離しないほうが好ましい。
【0087】
一般式(V)で表わされる化合物の酸化反応による一般式(VI)の合成においては、溶媒をしなくても使用してもよいが、溶媒を用いることが好ましい。使用できる溶媒としては、前記の一般式(III)の還元反応において説明した溶媒が挙げられる。アルコール系、アミド系等が好適に用いられる。
【0088】
一般式(V)で表わされる化合物の酸化反応に用いる酸化剤としては、公知の酸化剤を用いることができる。例えば、空気(酸素)、過酸化水素、二酸化マンガン、過硫酸塩類(例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム)、過マンガン酸カリウム、過酸類(例えば、過酢酸、過安息香酸、モノパーオキシフタル酸カリウム)等を用いることができる。
【0089】
一般式(V)で表わされる化合物の酸化反応における反応温度は、−20℃〜100℃で行うことができ、0℃〜80℃が好ましく、0℃〜50℃がより好ましい。
反応時間は、反応温度によるが、通常は10分〜24時間で行うことができる。
【0090】
次に、本発明の一般式(I)で表わされる化合物の合成の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0091】
化合物A−2の合成
以下に反応スキーム(A)を示す。
【0092】
【化18】

【0093】
(中間体a)の合成
Nile Blue A(APOLLO社製)3.66g(0.01モル)、還元鉄 1.34g(0.024モル)にエチレングリコール 30mlを加えて、アルゴンガス気流下で60℃に加熱、撹拌した。この溶液に酢酸 2.40g(0.04モル)を滴下した。滴下終了後、反応液を80℃〜90℃に加熱して、2時間撹拌した。反応液の色が青色から黄褐色に変化した。中間体aの溶液を得た。
【0094】
(中間体b)の合成
前記の方法で得た中間体aの溶液をアルゴンガス気流下で85℃〜90℃に加熱して撹拌した。この溶液に4−クロルピリジン塩酸塩 3.75g(0.025モル)を添加した。添加終了後、この反応液を120℃〜130℃に加熱して、5時間撹拌し反応を完結させた。反応終了後、この反応液を室温まで冷却してからメタノール 30mlを滴下した。次いでこの反応液に炭酸水素ナトリウム 4.2gを添加して室温で1時間撹拌した。中間体bの溶液を得た。
【0095】
(例示化合物A−2の合成)
前記の方法で得た中間体bの溶液を、室温で撹拌した。この溶液に二酸化マンガン 1.05gをゆっくり添加した。添加終了後、この反応液を2時間撹拌して反応を完結させた。反応終了後、この反応液に水 10mlを滴下して結晶を析出させた。析出した結晶をろ過して、メタノール 30ml、次いで水 30mlで洗浄した後乾燥した。この結晶をクロロホルム50mlに加熱溶解した後、濾過して不溶解物を濾過して除去し、この溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにチャージしてクロロホルム/酢酸エチルの2/1の混合溶媒で分離精製した。溶出液を濃縮した後、析出した結晶をメタノールに分散させて濾過して乾燥した。例示化合物A−2を2.60g(収率:65.8%)で得た。
1HNMR(CDC13)σ(ppm)
8.64(d,1H)、8.62〜8.50(m,3H)、7.70〜7.62(m,2H)、7.51(d,1H)、6.85(d,2H)、6.56(d,1H)、6.30(S,1H)、6.14(S,1H)、3.42(q,4H)、1.22(t,6H)
(比較例1)
【0096】
WO2009/113569号公報ページ13〜14に記載の方法に従って、該公報記載の化合物1Bを合成した結果は、収率38%であった。
【実施例2】
【0097】
実施例1におけるNile Blue Aの還元反応に使用した還元鉄の代わりに、等モルの亜鉛粉末を使用した以外は、実施例1の方法と同様な方法で中間体a〜例示化合物A−2を合成した。実施例1と同等の収率、及び純度で例示化合物A−2が得られた。
【実施例3〜7】
【0098】
実施例1におけるNile Blue Aの還元反応に使用した酢酸の代わりに、等モル(濃硫酸は1/2モル)の下記表1に記載の酸を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様な方法に従って中間体a〜例示化合物A−2を合成した。収率を表1に示した。
【0099】
【表1】

【実施例8】
【0100】
実施例1における還元反応の溶媒をエチレングリコールから等質量のジメチルアセトアミドに変更し、且つ、4−クロルピリジンとの置換反応の反応温度を100℃〜110℃で6時間に変更して行った以外は実施例1に記載の方法に従って例示化合物A−2を合成した。収率は60.8%であった。
【実施例9】
【0101】
実施例1における中間体bの酸化反応に使用した酸化剤(二酸化マンガン)の代わりに等モルの過硫酸アンモニウムを使用した以外は、実施例1の方法と同様な方法に従って例示化合物 を合成した。例示化合物A−2の収率は63.7%であった。
【実施例10】
【0102】
実施例1における中間体bの酸化反応に用いた二酸化マンガンの代わりに、中間体bの溶液を70℃〜75℃に加熱して空気を6時間バブリングして酸化した以外は、実施例1の方法と同様な方法に従って例示化合物A−2を合成した。例示化合物A−2の収率は71.1%であった。
【実施例11】
【0103】
(中間体a)の合成
Nile Blue A(APOLLO社製)3.66g(0.01モル)、炭酸水素ナトリウム 8.4gにジエチレングリコール 60mlと水 5mlを加えて、アルゴンガス気流下で80℃に加熱、撹拌した。この溶液にハイドロサルファイトソーダ 3.5gを5回に分けて添加した。添加終了後、反応液を80℃〜90℃に加熱して、3時間撹拌した。反応液の色が青色から茶褐色に変化した。中間体aの溶液を得た。
この中間体aのエチレングリコール溶液を用いて、実施例1の方法と同じ方法に従って中間体b及び例示化合物A−2を合成した。例示化合物A−2が収率44.1%で得られた。
【実施例12】
【0104】
(Nile Blue Aのフリー体の合成)
Nile Blue A(APOLLO社製)36.6g(0.1モル)にメタノール500mlを添加して室温で撹拌した。この分散液に水酸化ナトリウム 4.8g(0.12モル)を水 10mlに溶解させた水溶液を滴下した。滴下終了後、40℃に加熱して1時間撹拌した。析出している結晶をろ過して、水洗し、乾燥した。Nile Blue Aのフリー体 20.7g(65.0%)を得た。
このようにして得たNile Blue Aフリー体 3.18g(0.01モル)、5%パラジウム−炭素触媒 0.1gにエチレングリコール 50mlを加えてオートクレーブ中で、水素ガス圧 10kg/mに加圧して40℃〜45℃で2時間反応して還元を行った。反応終了後、反応液を窒素気流下で濾過して、パラジウム炭素触媒を除去した。中間体aのエチレングリコール溶液を得た。この様にして得た中間体aに4−クロルピリジン塩酸塩 3.75g(0.025モル)を添加して、実施例1に記載の方法に従って、中間体b及び例示化合物A−2を合成した。収率は69.3%であった。
【実施例13】
【0105】
実施例12の方法で得たNile Blue Aのフリー体3.18g(0.01モル)、パラジウム−炭素触媒 0.1gにエチレングリコール 50mlを加えて80℃〜85℃に加熱して撹拌した。この溶液にヒドラジン1水和物 0.625gを滴下した。滴下終了後、80℃〜85℃で2時間撹拌を行い反応を完結させた。反応終了後、反応液を室温に冷却してから窒素気流下で濾過してパラジウム−炭素触媒を除去した。中間体aの溶液を得た。この中間体aの溶液に4−クロルピリジン塩酸塩 3.75gを加えて、実施例1に記載の方法に従って中間体b及び例示化合物A−2を合成した。例示化合物A−2を収率57.5%得た。
【実施例14】
【0106】
実施例13で用いたヒドラジンの代わりに等モルのギ酸アンモニウムを用いた以外は実施例12と同様な方法に従って中間体aを得た後、実施例1の方法に従って中間体b、及び例示化合物A−2を合成した。例示化合物A−2を50.8%得た。
【実施例15】
【0107】
例示化合物A−4の合成
実施例1に記載の方法で得た中間体aの溶液と、実施例1に記載の4−クロルピリジン塩酸塩の代わりに等モルの2−クロルピリミジンを用いた以外は実施例1と同様な方法に従って合成した。例示化合物A−4を53.3%で得た。
1HNMR(CDCl) σppm
8.74(d,2H)、8.67(d,1H)、8.63(d,1H)、7.70〜7.60(m,2H)、7.02(t,1H)、6.63(dd,1H)、6.59(s,1H)、6.34(d,1H)、3.43(q,4H)、1.23(t,6H)
(比較例2)
【0108】
WO2009/113569号公報に記載の方法に従って、該公報記載の化合物1L(本発明のA−4)を合成した結果は、収率24%であった。
【実施例16】
【0109】
例示化合物B−1の合成
実施例1記載の方法で得た中間体aの溶液を用いて、実施例1に記載の4−クロルピリジン塩酸塩の代わりに2,6−ジクロロベンゾチアゾールを同モル用いた以外は実施例1と同様な方法で合成した。例示化合物B−1を57.6%で得た。
1HNMR(CDCl) σppm
8.66〜8.64(m,2H)、7.80(d,1H)、7.75(d,1H)、7.71〜7.61(m,2H)、7.59(S,1H)、7.56(d,1H)、7.37(dd,1H)、6.65(dd,1H)、6.40(d,1H)、3.44(q,4H)、1.24(t,6H)
(比較例3)
【0110】
WO2009/113569号公報に記載の方法に従って、該公報記載の化合物11(本発明B−1)を合成した結果は、収率45%であった。
【実施例17】
【0111】
(例示化合物C−1の合成)
実施例1に記載の方法に従って、例示化合物C−1を合成した結果、例示化合物C−2を収率65%で得た。
1HNMR σppm
8.57〜8.53(m,3H)、7.97(dd,1H)、7.52(d,1H)、7.23(brs、1H)6.86(d,2H)、6.59(dd,1H)、6.33(d,1H)、6.13(s,1H)、3.97(s,3H)、3.05(s,6H)
【実施例18】
【0112】
(例示化合物C−7の合成)
反応スキームBを以下に示す。
【0113】
【化19】

(中間体cの合成)
Darrow Red3.4g(0.01モル)、ピリジン塩酸塩 4.62g(0.04モル)にエチレングリコール 35mlを加えてアルゴン気流下に85℃〜90℃にい加熱して撹拌した。この溶液に亜鉛粉末 1.57g(0.024モル)を添加した。添加終了後、この反応液を80℃〜90℃で1時間撹拌して還元反応を完結させた。中間体cの溶液を得た。
【0114】
(中間体dの合成)
前記の方法で得た中間体cのエチレングリコール溶液をアルゴンガス気流下で100℃〜110℃に加熱して撹拌した。この溶液に4−クロルピリジン塩酸塩 3.0g(0.02モル)を添加した。添加終了後、この反応液を100℃〜110℃で3時間撹拌して反応を完結させた。中間体dの溶液を得た。
【0115】
(例示化合物C−7の合成)
前記の方法で得た中間体dのエチレングリコール溶液を室温まで冷却してから二酸化マンガン 1.0gを添加した。添加終了後、この反応液を室温で1時間撹拌して酸化反応を完結させた。この反応液を炭酸水素ナトリウム 5gを水500mlに溶解させた水溶液中に撹拌しながら注いだ。析出した結晶をろ過して乾燥した。この結晶をカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール=10/1)で分離、精製した。例示化合物C−7を1.81g(収率:47.7%)得た。
【実施例19】
【0116】
(例示化合物C−10の合成)
反応スキームCを以下に示した。
【0117】
【化20】

【0118】
Cresyl Violet Acetate(SIGMA・ALDRICH社製)6.4g(0.02モル)、還元鉄 2.68g(0.048モル)に、エチレングリコール 50mlを加えて85℃〜90℃に加熱して撹拌した。この溶液に酢酸 4.8gを滴下した。滴下終了後、85℃〜90℃で1時間撹拌を行い、還元反応を完結させた。溶液の色が濃赤色から茶褐色に変化した。中間体eの溶液を得た。
この中間体eの溶液に、4−クロルピリジン塩酸塩 12.0g(0.08モル)を添加して、120℃〜125℃に加熱して、5時間撹拌した。中間体fの溶液を得た。反応終了後、この反応液を60℃まで冷却してジメチルアセトアミド50mlと水30mlを添加して、次いで、炭酸水素ナトリウム 16gを少しづつ添加して中和した。この溶液を室温に冷却して、過硫酸アンモニウム 4.56gを少しづつ添加し、2時間撹拌して酸化した。この溶液を水 500ml中に注いで、析出した結晶をろ過して水洗し乾燥した。この結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール=10/1)で分離、精製した。溶出液を減圧下で濃縮して、残留物にメタノールを添加して結晶を析出させた。この結晶をろ過して乾燥した。例示化合物C−10を2.03g(収率:58.8%)得た。
1HNMR(DMSO−d6)σppm
9.47(s,1H)、8.59(d,1H)、8.53(d,2H)、8.46(d,1H)、8.33〜8.31(m,2H)、7.82〜7.79(m,2H)、7.68(d,1H)7.16(d,1H)、7.08(d,2H)、7.04(d,1H)6.92(d,2H)、6,08(s,1H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表わされるアジン系化合物の製造方法において、下記一般式(II)で表わされる化合物を還元して下記一般式(III)として、一般式(III)で表わされる還元体と下記一般式(IV)で表わされる化合物と反応させ一般式(V)とし、次いで一般式(V)を酸化することを特徴とする一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【化1】

(式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は置換基を表わし、RとR、RとR、RとR、RとRは互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。Xは、−N(R)−、−O−、−S−、又は−SO−を表わし、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表わす。Zはアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表わす。)
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、及びXは、一般式(I)のそれらと同義である。)
【化3】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、及びXは、一般式(I)のそれらと同義である。)
【化4】

(式中、Zは、一般式(I)におけるそれと同義であり、Lは、ハロゲン原子、又は−OSO又は−SO−Rを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表わす。)
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、X、及びZは、一般式(I)のそれらと同義である。)
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物が、下記一般式(VI)で表わされることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【化6】

(式中、R〜R、X、及びZは、一般式(I)におけるそれらと同義である。R10、及びR11は、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表わし、R10とR11、R10とR、R11とRとが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。一般式(VI)で表わされる化合物は、互変異性体であってもよく、また、塩を形成していてもよい。)
【請求項3】
一般式(I)及び一般式(VI)で表わされる化合物が下記一般式(VII)で表わされることを特徴とする請求項1、請求項2に記載の製造方法。
【化7】

(式中、R、R、R、X、及びZは、一般式(I)及び一般式(VI)のそれらと同義であり、R10及びR11、は、一般式(VI)のそれらと同義である。Yは置換基を表わし、mは0〜4の整数を表わす。R10とR11、R10とR、R11とR、RとRとが互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。一般式(VII)で表わされる化合物は互変異性体であってよく、塩を形成していてもよい。)
【請求項4】
一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされる化合物のXが−O−、又は−S−であることを特徴とする請求項(1)〜請求項(3)記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされるXが−O−又は−S−で表わされ、一般式(I)〜一般式(VII)で表わされる化合物のZがアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表わされることを特徴とする請求項(1)〜請求項(4)記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【請求項6】
一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされるXが−O−で表わされ、一般式(I)〜一般式(VII)で表わされるZがアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表わされることを特徴とする請求項(1)〜請求項(5)記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(I)〜一般式(III)、及び一般式(V)〜一般式(VII)で表わされるXが−O−で表わされ、一般式(I)〜一般式(VII)で表わされるZがテロ環基で表わさる請求項1〜6記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(I)〜一般式(VII)のZがピリジル基又はピリミジル基であることを特徴とする請求項1〜請求項7記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法において、一般式(II)で表わされる化合物の還元工程において、亜鉛、もしくは鉄を用いることを特徴とする請求項1〜8に記載の一般式(I)、一般式(VI)、及び一般式(VII)で表わされる化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−126702(P2012−126702A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294708(P2010−294708)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508075834)株式会社 シンスター・ジャパン (4)
【Fターム(参考)】