説明

5,10−メチレンテトラヒドロホラートの安定な医薬調合物

本発明は、塩基性pH値に調整及びシトラートの同時使用による5,10-メチレン-(6R)-, -(65)- 又は-(6R,S)-テトラヒドロホラートの安定な医薬調合物に関する。この安定化は還元剤の不在下で行われる。
本発明は、また凍結乾燥溶液及び凍結乾燥物又は乾燥粉末及び乾燥混合物を製造するのに特に適する。というのは安定なMTHF溶液を、高濃度で対応する容器, たとえば薬瓶, アンプル等々に充填することができるからである。凍結乾燥物は驚くほど長い貯蔵期間を有し、そして驚くほど安定である。これは水又は水溶液の添加によって問題なく再構成することができ, そして最後の澄明な注射溶液は再び優れた安定性を示す。
更に, 本発明は、MTHFの難溶性カルシウム塩又は酸性塩を高濃度で 、そして生理学的に適合しうる等張溶液として製造することさえも可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5,10-メチレン-(6R)-, -(6S)- 又は-(6R,S)-テトラヒドロホラートの安定な医薬調合物に関する。
【0002】
本明細書で, 用語“5,10-メチレンテトラヒドロホラート” (以下MTHFと呼称する。) は、遊離酸の形にある、薬学的に許容し得る塩, 特に酸性塩, 及びアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形にある 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸及びそのポリグルタマートを意味する。5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸類及びそのポリグルタマートは、光学異性体の混合物, 特にジアステレオマーの1:1混合物も、光学的純粋なジアステレオマー, 特に光学的に純粋な, 天然の5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸も含む。
【0003】
薬学的に許容し得る塩は 酸性塩, たとえば硫酸塩又はスルホン酸塩, 好ましくは硫酸塩であってよいか, 又はアルカリ金属塩又はアルカリ土類塩, 好ましくは ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩であることができる。
【技術背景】
【0004】
MTHFは、固形腫瘍の治療に広汎に使用される細胞増殖抑制剤であるフッ素化されたピリミジン, たとえば 5-フルオロウラシル (5-FU)と併用して非経口投与に使用されるのに好ましい有効成分である [非特許文献1]。MTHFは還元されたホラートであり、そしてその化学療法作用を塩基性同族体5-FdUMPと共に酵素チミジラートシンターゼ(TS)の阻害によって達成する。この酵素は、デオキシウリジラート(dUMP)をDNA 合成の中心成分であるデオキシチミジラート(dTMP)に変換するのを触媒する。この工程は、細胞中でデオキシチミジラートの唯一の新たな起源を産生するので,この鍵酵素をピリミジン塩基、たとえば5-FU 又は5-FU プロドラッグ カペシタビン (ゼローダ)によって阻害することは、癌治療で重要な出発点である。TSの脱活性化は、TS, 5-FUの代謝産物である塩基性同族体5-FdUhAP 及びMTHF間で共有結合を阻止する三重複合体の形成によって生じる。 5-FUの細胞毒性の増大を、MTHFの細胞内濃度の増加によって達成することができ、その際に三重複合体の安定性は増加される。これはDNA 合成及び修復の直接阻害を引き起こす。これは結局細胞死及び腫瘍増殖の遅延をもたらす。
【0005】
MTHFの医療使用は、空気による酸化に対するその極めて高い感受性によって制限される[非特許文献2及び非特許文献3]。MTHFは テトラヒドロ葉酸(THF)とホルムアルデヒドの付加物である [特許文献4 及び特許文献5]。 水溶液の形で、一方でMTHF間で、そして他方で THF とホルムアルデヒドの間で平衡が存在する。MTHF 溶液の安定化のために、次の処理がこれまで行われてきた:
空気不含環境で固形製剤の再構成及びMTHFの注射のために、特定の技術的装置を用いて空中酸素の激しい排除[特許文献6]。
還元剤、たとえば L(+)-アスコルビン酸又はその塩, 還元された γ-グルタチオン, β-メルカプトエタノール, チオグリセリン, N-アセチル-L-システイン等々を、感受性の高いMTHF及び特にTHFに対する酸化防止剤として添加。
シクロデキストリン包含化合物による安定化: 特許文献1。有効成分の高い濃度を使用する。
【0006】
次の方法も別の テトラヒドロ葉酸誘導体の安定化で知られている:
5-ホルミルテトラヒドロ葉酸を含有する溶液をクエン酸ナトリウム, 酢酸ナトリウム又は塩化ナトリウムの添加によって安定化:特許文献2。
5-ホルミルテトラヒドロ葉酸のナトリウム塩又はカリウム塩を含有する注射溶液をpH7.5 〜 8.5で安定化: 特許文献3。
クエン酸ナトリウムの添加によって 5-ホルミルテトラヒドロ葉酸のカルシウム塩を有する溶液を安定化:特許文献4 。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第0 579 996 号明細書(Eprova)
【特許文献2】ヨーロッパ特許第0 755 396 号明細書(Pharmachemie)
【特許文献3】ヨーロッパ特許第0 677 159 号明細書(SAPEC)
【特許文献4】米国特許第 4,931,441号明細書 (Luitpold Pharmaceutical)
【非特許文献1】Cofactor Biokeys Pharmaceuticals. Seley, K.L. Idrugs 4 (1), 99-101 (2001)
【非特許文献2】Chemical Stability and Human Plasma Pharmacokinetics of Reduced Folates. Odin, E. 等, Cancer Investigation 16 (7), 447-455 (1998)
【非特許文献3】The structure of “Active formaldehyde” (N5N10-methylene tetrahydrofolic acid), Osborn, M. J. 等, J. Am. Chem. Soc. 82, 4921-4927 (1960), Folates in Foods: Reactivity, stability during processing, and nutritional implications. Hawkes, J., and Villota, R. Food Sci. Nutr. 28, 439-538 (1989)
【非特許文献4】5,10- methylene-5,6,7,8-tetrahydrofolate. Conformation of the Tetrahydropyrazine and Imidazolidine Rings. Poe, M. 等. Biochemistry 18 (24), 5527-5530 (1979)
【非特許文献5】Tetrahydrofolic acid and formaldehyde. Kallen, R. G. Methods in Enzymology 18B, 705-716 (1971)
【非特許文献6】Chemical Stability and Human Plasma Pharmacokinetics of Reduced Folates. Odin, E. 等, Cancer Investigation 16 (7), 447-455 (1998), Fluid Transfer Systems US 4,564,054
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,5-ホルミルテトラヒドロ葉酸, 特にその溶液の安定化は, 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸溶液の安定化と比べることができない。したがって5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸において5員環に導入されたメチレン基は、5-ホルミルテトラヒドロ葉酸に比べて明らかに異なる物性をもたらす。これはたとえば明らかに異なる安定挙動及び異なる分解法で分かる。5-ホルミルテトラヒドロ葉酸と対照的に, 溶液の形にある5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、常にホルムアルデヒド及びその極めて高い酸化感受性の点で際立っているテトラヒドロ葉酸 (THF)と平衡にある。これに反して, 5-ホルミルテトラヒドロ葉酸はこの解離挙動を示さず、クエン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを添加しなくても、薬学的に許容し得る水溶液の形で一般に極めて安定である。
したがって、 今までMTHFの安定な医薬調合物は全く示めされなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は驚くべきことに、水溶液の形にある, 懸濁液の形にある及び固形、たとえば粉末又は凍結乾燥物の形にあるMTHFの安定性を、塩基性pH値に調整及びシトラート(Citrat)の同時使用によって著しく増加させることができることを見出した。この安定化は還元剤の不在下でさえ生じるのは、驚くべきことである。
したがって, 還元剤 (酸化防止剤)を添加しなくても、そして空気中の酸素を排除しなくても, MTHF溶液は何時間も安定である。これは、MTHFの安定な調合物がアセテート, オキザラート, マレアート、及びシトラートに代わるその他の酸のパートナーを用いて得ることができないだけになおさら驚きである。これはシトラートを用いて得られるのと同等の効果がアセテートを用いて得ることができる、5-ホルミルテトラヒドロ葉酸に対する状況と大違いである(ヨーロッパ特許第0 755 396号明細書)。5-ホルミルテトラヒドロ葉酸溶液の場合、シトラートが加水分解及び基本骨格の酸化開裂を減少させ、したがって生成物、たとえばp-アミノベンゾイルグルタミン酸及びプテリン- 及びテトラヒドロプテリン誘導体の形成を減少させる。これに反して, 塩基性pH域でMTHFの場合、シトラートはMTHF分子からホルムアルデヒドの離脱(加水分解)を阻止する。このことが、ホラート化合物として分類される、これら2つの化合物を挙動から著しく、驚くほど区別させる。
【0009】
更に, 本発明によれば、MTHFのそれ自体難溶性カルシウム又は酸性酸[Eprova特許: 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸の安定な塩 - ヨーロッパ特許第0 537 492号明細書]を高濃度で、そして生理学的に許容し得る等張溶液の形で製造することさえも可能にする。
【0010】
塩基性pH 値でシトラートを用いるMTHFの予期せぬ安定化は、このpH範囲での クエン酸緩衝液の驚異的な相乗作用に基づく。一方でシトラートとMTHFの間の複合体形成及び他方で、シトラートと MTHFの対イオン(塩)の間の複合体形成は、MTHF分子からホルムアルデヒドの離脱(加水分解)を阻止することによってメチレン基の安定化に決定的に貢献する。それによって、 酸化に極めて敏感であるTHFが生じて, MTHFが分解されるのを阻止する。
【0011】
本発明の調合物の場合, pH値 は7.5 - 10.5, 好ましくは 8.5 - 9.5の範囲内に調整される。 これは、安定化物質及び緩衝物質としてクエン酸, クエン酸二水素ナトリウム又はトリクエン酸ナトリウム二水和物を含むMTHF 溶液中で水酸化ナトリウム水溶液、塩酸を用いて行われる。還元剤, たとえば L(+)-アスコルビン酸又はその塩, 還元された γ-グルタチオン, β-メルカプトエタノール, チオグリセリン, N-アセチル-L-システイン等々を 酸化防止剤として添加することもできる。
【0012】
本発明の調合物は、また凍結乾燥溶液及び凍結乾燥物又は乾燥粉末及び乾燥混合物を製造するのに特に安定である。というのは安定なMTHF溶液を、高濃度で対応する容器, たとえば薬瓶, アンプル等々に充填することができるからである。凍結乾燥物は驚くほど良好に貯蔵することができ、そして驚くほど安定である。これは水又は水溶液の添加によって問題なく再構成することができ, そして最後の澄明な注射溶液は再び優れた安定性を示す。
【0013】
請求の範囲に記載された調合物は、非経口で投与されるのが好ましい。しかし, 調合物をまた腸管(たとえば経口, 舌下又は直腸) 投与又は局所 (たとえば 経皮)投与のために製造する。
【0014】
調合物を、水を主体とする溶液又は油を主体とする懸濁液として、又は凍結乾燥物としてそのまま使用するのが好ましい。非経口投与用調合物は、有効物質の滅菌水性及非水性注射溶液及び懸濁液を含む。この調合物は等張な組成を示す。
【0015】
しかし調合物をまたキャリヤーと共に投与することができる。適するキャリヤーは有機物質又は無機物質を含み、これは有効成分と反応しない。たとえば水、油, ベンジルアルコール, ポリエチレングリコール, グリセリントリアセタート又はその他の脂肪酸グリセライド, ゼラチン, レシチン, シクロデキストリン, 炭水化物、 たとえばラクトビオース又はデンプン、ステアリン酸マグネシウム等又はセルロースである。経口投与する場合、錠剤, 糖衣錠, カプセル, 粉末, シロップ, 濃縮物又は滴剤が好ましく, そして直腸投与に対して坐剤が好ましい。
【0016】
同様に、懸濁液, エマルション又はインプラントも使用することができ, そして局所投与にパッチ又はクリームを使用することができる。
【0017】
調合物は、安定剤, 医薬有効物質の調節された遊離のための添加物, 酸化防止剤, 緩衝液, 静菌剤及び等張液を調整するための助剤を含むことができる。水性及び非水性滅菌懸濁液は 懸濁液添加物及び増粘剤を含むことができる。調合物は、単回投与として又は多数回投与容器, たとえば溶接されたアンプル又はストッパー及び密封蓋のある薬瓶として存在することができ、そして凍結乾燥された生成物として貯蔵することができ、 そして必要に応じて滅菌液体, たとえば水又は生理食塩水の添加によって使用する際に調製することができる。滅菌粉末, 顆粒又は錠剤をまた同一の方法で使用することができる。
【0018】
全ての調合物は、付加的に更に1種以上の別々に又は相乗的に有効物質を含むことができる。特に, これらはフッ素化されたピリミジン塩基、たとえば 5- フルオロウラシル (5-FU), カペシタビン (ゼローダ), テガフール, UFT, ドキシフルリジン, 2¢-デオキシ-5-フルオロウリジン, 種々の細胞増殖抑制剤、たとえば ゲムシタビン(ジェムザール), ドセタキセル(タキソテール), パクリタキセル (タキソール), トポテカン (ハイカムチン), イリノテカン (CPT-11),ドキソルビシン (rubex),マイトマイシン(MTC), シスプラチン(CDDP), シクロホスファミド(CPM), メトトレキサート(アメトプテリン), ペメトレキセド(アリムタ), ビンクリスチン (VCR), シタラビン(Ara-C), エピルビシン (ellence), オキサリプラチン (エロキサチン), タモキシフェン (ノルバデックス), カルボプラチン (CBDCA), エトポシド (etopophos), イホスフェミド(ifex) 又は 酸化防止剤 たとえば ビタミン C, ビタミン E, グルタチオン, チオグリセリン及びアセチルシステイン, 並びに2つのMTHF 解離生成物 ホルムアルデヒド 及びテトラヒドロ葉酸を含む。
【0019】
調合物は1回の投薬量あたり0.001 mg 〜10,000 mg MTHF を含む。 治療において、1回の投薬量あたり 1 mg〜 1,000 mg MTHFを含む調合物を使用するのが好ましい。
【0020】
投薬量は、治療形態、調合物の使用形態、患者の年齢、体重、栄養状態及び病態に依存する。 治療は最適量以下の比較的少ない投薬量で始まり、最適な効果を得るために増加させる。治療の際の投薬量は、好ましくは1日あたり1 mg〜1,000 mg、特に1日あたり100 mg 〜 500 mgを変動することができる。投与は1回投与か又は反復投与として行うことができる。
【0021】
この調合物を、ホラート適用の全ての分野で使用することができる。
【0022】
本発明の記載にもとづいて、当業者は直ちに本発明の極めて重要な要件を推定することができ、そして本発明の基本概念及び本発明の範囲を逸脱することなく変更及び付加を行うことができ、それによって本発明を種々の要求及び条件に適合させることができる。
本明細書に引用されたすべての特許出願、特許及び文献を、本願に引用して援用する。
一般的又は具体的に記載された本発明の生成物及び(又は)処理条件を下記例に記載したものと置き換えることによって、下記例を同様な結果をもって実施することができる。同様に、次の具体的な実施態様は単に例示するものであって、決して残りの開示に限定を与えるものではない。
【実施例】
【0023】
本発明を説明するための実施例。
【0024】
例 1
5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸を含む凍結乾燥物
9900 mlの水をアルゴンで飽和する。421.9 gのクエン酸を攪拌しながら完全に前記水に溶解させる。232.0 gの 5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸, カルシウム塩を添加する。PH を水酸化ナトリウム水溶液で8.0に調整する。 その結果 5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸を徐々に溶解させる。その後, pH値を水酸化ナトリウム水溶液で 8.5に調整する。溶液を滅菌条件下に濾過し、ついで薬瓶1個あたり5.0 mlで10 mlのガラス製薬瓶に入れる。 その後, 溶液を凍結させ、ついで凍結乾燥させる。
5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸を有する薬瓶が得られる。
【0025】
例 2
5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸 (凍結乾燥物)の安定化
例1のように製造された薬瓶は次の安定性値を示す (Am 1466-A):
+4℃ (% 相対的安定性)で貯蔵
【0026】
【表1】

【0027】
-15℃で貯蔵 (% 相対的安定性)
【0028】
【表2】

【0029】
これに比べて, 5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸のカルシウム塩の未処理対照試料は次ので表わされる安定性値を示す (Co 751):
+25℃で貯蔵 (% 相対的安定性)
【0030】
【表3】

【0031】
例 3
5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸 (溶液)の安定化
例1のように製造された調合物は、生理食塩水で希釈された溶液として次の安定性値を示す (AC0448):
空気を排除せずに +25℃ (% 相対的安定性)で貯蔵
【0032】
【表4】

【0033】
例1のように製造された調合物は希釈水溶液として次の安定性値を示す(AC0447):
空気を排除せずに+25℃で貯蔵(% 相対的安定性)
【0034】
【表5】

【0035】
例1のように製造された調合物は濃縮された水溶液として次の安定性値を示す(AC0447):
空気を排除せずに +25℃で 貯蔵(% 相対的安定性)
【0036】
【表6】

【0037】
先行技術から、生理食塩溶液中の 5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸のカルシウム塩に関して、比較として次の安定性値を見出することができる[Chemical Stability and Human Plasma Pharmacokinetics of Reduced Folates. Odin, E. 等. Cancer Investigation 16 (7), 447-455 (1998)参照]。
+25℃ (% 相対的安定性)で貯蔵
例 4
5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸を含む錠剤
990 lの 水をアルゴンで飽和する。42.2 kgのクエン酸を攪拌しながら完全に前記水に溶解させる。21.4 kgの 5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸を遊離酸として添加する。PH値を水酸化ナトリウム水溶液で8.0に調整する。その結果5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸 を徐々に溶解させる。 その後, pH値を水酸化ナトリウム水溶液で 8.5に調整する。溶液を滅菌条件下に濾過し、 ついで凍結乾燥させる。 1,000 gの 5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸を有する凍結乾燥物の量を、4 kgのラクトース, 1.2 kgのデンプン, 0.2 kgの タルク及び 0.1 kgの スレアリン酸マグネシウムと共に圧縮して、各錠剤が100 mgの 5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸を含むように錠剤とする。
【0038】
錠剤をフィルム錠剤としてコーティングすることもできる。
【0039】
例 5
5-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸を含む坐薬。
例1にように製造され、そして500 gの 5,10-メチレン-(6R,S)-
テトラヒドロ葉酸を含む凍結乾燥物を、50 gの ヒドロキシプロピルセルロース及び 2 kgの半合成グリセライドと共に溶融して、各坐薬が500 mgの5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸を含むように坐薬を形成させる。
【0040】
例 6
5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸 及び その他の成分のうち5-フルオロウラシルを含む併用薬
例 1, 4, 5 及び7と同様に併用薬を製造するが,対応する適用に対して通常の5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸量に加えて、この適用に対して通常の5-フルオロウラシル量も含む。
【0041】
例 7
5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸を含む凍結乾燥物
9900mlの水をアルゴンで飽和する。316.5 gの クエン酸を攪拌しながら完全に前記水に溶解させる。212.5 gの 5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸硫酸塩を添加する。PH値を水酸化ナトリウム水溶液で8.0に調整する。その結果、 5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸 を徐々に溶解させる。その後, pH値を水酸化ナトリウム水溶液で 8.5に調整する。溶液を滅菌条件下に濾過し、 ついで薬瓶1個あたり5.0 mlで10 mlのガラス製薬瓶に入れる。 その後, 溶液を凍結させ、ついで凍結乾燥させる。
【0042】
5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸を有する薬瓶が得られる。
【0043】
例8
5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸 (溶液)の安定化
例7のように製造された調合物は、濃縮された水溶液として次の安定性値を示す (Am 1758-2/a ):
空気を排除せずに+25℃で貯蔵(% 相対的安定性)
【0044】
【化8】

【0045】
先行技術から、生理食塩溶液中の 5,10-メチレン-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸のカルシウム塩に関して、比較として, 次の安定性値を見出すことができる[Chemical Stability and Human Plasma Pharmacokinetics of Reduced Folates. Odin, E. 等. Cancer Investigation 16 (7), 447-455 (1998)参照]。
+25℃ で貯蔵(% 相対的安定性)
【0046】
【化9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5,10-メチレン-(6R)-, -(6S)-又は -(6R,S)-テトラヒドロホラートの安定な医薬調合物において, 当該調合物が5,10-メチレン-(6R)-, -(6S)-又は-(6R,S)-テトラヒドロ葉酸 又は5,10-メチレン-(6R)-, -(6S)-又は -(6R,S)-テトラヒドロ葉酸の薬学的に許容し得る塩をシトラート(Citrat)と共に含み, そして7.5 〜10.5, 好ましくは8.5 〜9.5のpH値を有することを特徴とする、上記医薬調合物。
【請求項2】
さらに別の薬学的に許容し得る有効成分及び佐薬を一緒に含む、請求項1記載の安定な医薬調合物。
【請求項3】
当該調合物が佐薬としてホルムアルデヒドを含む、請求項2記載の医薬調合物。
【請求項4】
当該調合物がさらに別の有効成分として, さらに別のホラートを含む、請求項2記載の医薬調合物。
【請求項5】
当該調合物がさらに別のホラートとしてテトラヒドロ葉酸及びその塩を含む、請求項4記載の医薬調合物。
【請求項6】
5,10-メチレン-(6R)-, -(6S)-又は -(6R,S)-テトラヒドロ葉酸の薬学的に許容し得る塩としてそのカルシウム塩又は酸性塩を使用する、請求項1記載の医薬調合物。
【請求項7】
当該調合物がさらに別の有効成分として細胞増殖抑制剤を含む、請求項2記載の医薬調合物。
【請求項8】
当該調合物がさらに別の有効成分としてフッ素化されたピリミジン誘導体を含む、請求項2記載の医薬調合物。
【請求項9】
当該調合物がフッ素化されたピリミジン誘導体として5-フルオロウラシル又は5-フルオロウラシルプロドラッグ、特に カペシタビン(ゼローダ)を含む、請求項8記載の医薬調合物。
【請求項10】
更に少なくとも1種の酸化防止剤又はラジカルスカベンジャーを含む、請求項1 〜9のいずれか1つに記載の医薬調合物。
【請求項11】
当該調合物が酸化防止剤又はラジカルスカベンジャーとしてビタミンC又は還元グルタチオンを含む、請求項10記載の医薬調合物。
【請求項12】
当該調合物が凍結乾燥物, 乾燥粉末又は乾燥混合物として存在する、請求項1〜11のいずれか1つに記載の医薬調合物。
【請求項13】
当該調合物が凍結乾燥溶液として存在する、請求項1〜11のいずれか1つに記載の医薬調合物。
【請求項14】
5,10-メチレン-(6R)-, -(6S)-又は -(6R,S)-テトラヒドロホラートを含む調合物の安定化法であって、5,10-メチレン-(6R)-, -(6S)-又は -(6R,S)-テトラヒドロ葉酸をシトラートで処理して、7.5 〜10.5, 好ましくは8.5〜9.5のpH値とすることを特徴とする、上記安定化法。
【請求項15】
5,10-メチレン-(6R)-, -(6S)-又は -(6R,S)-テトラヒドロ葉酸の薬学的に許容し得る塩及びシトラートを含む調合物を、対応する医療適応症での使用に適する医薬品を製造するために7.5 〜10.5, 好ましくは8.5〜9.5のpH値で使用する方法。

【公表番号】特表2009−514776(P2009−514776A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516067(P2006−516067)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006944
【国際公開番号】WO2004/112761
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(592010450)メルック・エプロバ・アクチエンゲゼルシヤフト (10)
【Fターム(参考)】