説明

5,7,14−トリアザテトラシクロ[10.3.1.02,11.04,9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタエンの医薬組成物

【課題】5,8,14−トリアザテトラ−シクロ[10.3.1.02,11.04,9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタエンまたはその製薬上許容可能な塩の制御放出(CR)経口製剤剤形、ならびに副作用としての悪心を低減しながら、ニコチン中毒を低減し、あるいは喫煙の中止または減少を助けるためのそれらの使用方法の提供。
【解決手段】0.1〜1 mgA/時間の速度で被験者に該化合物または塩を投与するための手段を含む被験者への投与に適した制御放出剤形であり、前記手段が被覆錠剤、マトリックス錠剤、多粒子または被覆多粒子を含む、制御放出剤形。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5,8,14−トリアザテトラ−シクロ[10.3.1.02,11.04,9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタエン1および関連化合物の制御放出(CR)経口製剤剤形に、ならびに副作用としての悪心を低減しながら、ニコチン中毒を低減し、あるいは喫煙の中止または減少を助けるためのそれらの使用方法に関する。本発明は、均一薬剤分布および効能を有する安定処方物を有する即時放出(IR)低投薬量組成物にも関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
発明の背景
7,8,9,10−テトラヒドロ−6,10−メタノ−6H−ピラジノ[2,3−h][3]−ベンズアゼピンとしても既知である化合物1は、ニューロンニコチンアセチルコリン特異的受容体部位に結合し、コリン作動性機能の調節に有用である。したがってこの化合物は、炎症性腸疾患(例えば潰瘍性結腸炎、壊疽性膿皮症およびクローン病が挙げられるが、これらに限定されない)、過敏性腸症候群、痙攣性失調症、慢性疼痛、急性疼痛、セリアックスプルー、嚢炎、血管収縮、不安、パニック障害、うつ病、双極性障害、自閉症、睡眠障害、時差ぼけ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認知機能不全、高血圧症、過食症、拒食症、肥満症、心不整脈、胃酸分泌過多、潰瘍、褐色細胞腫、進行性核上性麻痺、化学物質依存および中毒(例えばニコチン(および/またはタバコ製品)、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸塩、オピオイドまたはコカインへの依存または中毒)、頭痛、片頭痛、卒中、外傷性脳損傷(TBI)、強迫性障害(OCD)、精神病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネシア、多動症、失読症、精神分裂病、多重梗塞性痴呆症、加齢性認知減退、癲癇、例えば小発作性癲癇、アルツハイマー型老人性痴呆(AD)、パーキンソン病(PD)、注意力欠損高活動性異常(ADHD)およびツレット症候群の治療に有用である。
【0003】
化合物1およびその製薬上許容される酸付加塩は、国際特許公開WO 99/35131(1999年7月15日公表)で言及されている(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)。
【0004】
上記の化合物の即時放出(IR)剤形、すなわち嚥下時に約30分未満に溶解形態で薬剤を提供するよう意図された剤形は、血中および脳中に治療的有用レベルの薬剤を提供するが、一方、特に何人かの患者に対して治療的に有用であるのに十分に高い用量で、患者に有意レベルの悪心が認められることが観察されてきた。悪心は、患者が服薬レジメンを十分に遵守するのを妨げ得るため、悪心の発生率を低減する形態で1を提供する必要がある。
【0005】
したがって本発明は、血中および中枢神経系(CNS)中の薬剤の治療レベルを保持しながら、悪心を低減または排除する1のCR剤形を提供する。CR剤形がいくつかの場合には、悪心のような副作用の低減を提供し得ることを示唆する実例(例えばオキシコドン(J. R. Caldwell, et al., J. of Rheumatology 1999, 26, 862-869)、ベンラファキシン(R. Entsuah and
R. Chitra, Psychopharmacology Bulletin, 1997, 33, 671-676)およびパロキセチン(R. N. Golden, et
al., J. Clin. Psychiatry, 2002, 63, 577-584))が当該技術分野には存在するが、しかしCR剤形が時としては悪心の低減のために即時放出剤形より良好でないことを示し、したがって副作用の低減手段としてのCR形態の利用から離れて教示する逆の例も存在する。このかけ離れた教示teaching awayの例としては、硫酸モルヒネ(T. D. Walsh, et al., J. Clin. Oncology, 1992, 15, 268-272)、ヒドロモルホン(H. Hays, et al.,
Cancer, 1994, 74, 1808-1816)、酒石酸ジヒドロコデイン(G. Xu, et al., Zhongguo Yaowu Yilaixing Zazhi, 1999, 8, 52-57)およびカルビドパ/レボドパ(G. Block, et
al., European Neurology, 1997, 37, 23-27)が挙げられる。さらに、多くの場合、CR剤形はIR剤形と比較して生物学的利用能の低減を生じて、用量の増大を必要とし、あるいはCR剤形の使用を実行不可能にすることさえある。したがってCR剤形の中で悪心を示す薬剤のどれが実際的に有益であるかを先験的に予測することは依然として不可能である。さらに薬剤が利用可能になる速度、すなわちその溶解速度は、IR剤形よりわずかに遅いから長期間(約24時間まで)に亘って送達するまで、かなりの範囲であり得る。1に関して、一定範囲のデリバリー速度を有するCR剤形は、IR剤形と比較した場合、悪心の発生率を低減しながら治療的血中およびCNS中薬剤レベルを提供する、ということを本発明人等は発見した。本発明者等は、所望の薬剤投与速度を達成するために1を処方する特定の好ましい方法も発見した。悪心を低レベルに保持しながら、治療的薬剤レベルを提供する好ましい投与レジメンも、本発明者等は発見した。
【0006】
ニコチン受容体リガンドとしての化合物1の高効能は、投与のための低投薬量強度の使用を可能にする。取り扱いの容易性、製造および患者の便利性のために、低投薬量強度薬剤はしばしば賦形剤により高度に希釈されて処方される。しかしながらこのような希釈処方物の調製および貯蔵において、独特の挑戦が導入される。第一に、高度希釈は、賦形剤または賦形剤不純物にさえ、貯蔵中に有意の薬剤分解を引き起こさせ得る。薬剤分解に強い影響を与え得る賦形剤特性の例としては、水分含量および水分の移動性(J.T. Carstensen, Drug Stability: Principles and Practices, 2nd
Ed, Marcel Dekker, NY, 1995, 449-452参照)、ならびに局所pH微小環境に作用する賦形剤酸性度(K. Waterman et al., Pharm Dev. Tech., 2002, 7(2), 113-146参照)が挙げられる。薬剤分解に作用する賦形剤不純物の例としては、微量金属、過酸化物および蟻酸が挙げられる(K. Waterman et al., Pharm Dev. Tech., 2002, 7(1), 1-32参照)。化学構造の考察およびその中の反応性部分の同定を用いて考え得る分解経路を理論化し得るが、しかし特定の賦形剤が所定の薬剤とともに許容可能的に安定な処方物を生成するか否かを先験的に予測することは依然として不可能である。さらに、1は多数の一般的賦形剤および賦形剤不純物と反応することが観察されている。したがって1に関する適切な安定性を提供しながら、許容可能な処方物(錠剤成形のような特性)を提供し得る賦形剤および賦形剤組合せを提供する必要性が依然として存在する。所望の安定性を達成するために1を処方する特定の好ましい方法を、本発明者等は発見した。特に皮膜被覆錠剤に関して、所望の安定性を達成するための特定の処方物および方法を、本発明者等は発見した。
【0007】
高希釈で調製された強力な薬剤に関して時々観察される第二の問題点は、製造中の設備からの分離およびそれらへの付着のための効能の変動性である。この問題点は、1の処方物に伴う問題であることが判明した。低用量薬剤の配合物中の均一薬剤分布を達成するために近年報告された一方法は、担体賦形剤ラクトースを用いて微粉化薬剤とのオーダードミックスチャーを生成する(L. Wu, et al., AAPS PharmSciTech, 2000, 1(3), article 26)。小規模設備中で流動化により分離されるかまたは金属表面に付着される活性成分を回収するための手動ブラッシング段階を有効に実行し得るが、しかし手動ブラッシング段階は製造規模環境においては効率的でも望ましくもない。液体工程は、薬剤製品製造中の薬剤損失問題を最小限にし得る。しかしながら形態変化(例えば多型、水和物または溶媒和物変化)を受ける化合物は、薬剤成分安定性(物理的および化学的)を保持しながらの液体工程実施を非常に難しくする。これらの一般的問題を解決するために多数の技法が用いられてきたが、しかし所定組の薬剤および賦形剤に有効である特定技法を予測することは依然としてできない。したがって1を用いる必要のある高希釈のために、1の商品化のために適した、それにより、剤形(例えば錠剤)−剤形およびロット−ロットの適切な効能均一性が保持され得る工程の必要性が存在する。所望の均一薬剤効能および均一薬剤分布を達成するための1の処方物の下降処理の好ましい方法も、本発明者等は発見した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の要約
本発明は、それを必要とする被験者への1またはその製薬上許容される塩のある種の制御放出(CR)剤形であって、化合物またはその製薬上許容される塩、ならびに約6 mgA/時間未満(ここで、mgAは遊離塩基と等価の活性薬剤のミリグラムを指す)の速度で上記被験者に化合物またはその製薬上許容される塩をデリバリーし、それにより少なくとも約0.1 mgAの化合物またはその製薬上許容される塩が24時間に亘って投与される手段を含むCR剤形に関する。ある種の被験者においては、一連の用量でのCR剤形の投与後、本明細書中に記載したような化合物またはその製薬上許容される塩を含む即時放出(IR)剤形を投与することは、有益であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特に、本発明は、副作用としての悪心の低減を生じる1のCR製剤剤形を用いた治療方法に関する。このようなCR剤形は、約0.03 mgA/時間〜6 mgA/時間、さらに好ましくは約0.06 mgA/時間〜3 mgA/時間、もっとも好ましくは約0.10 mgA/時間〜1 mgA/時間の範囲の速度で溶解形態で消化(GI)管中に薬剤を提供することを特性化とする。本発明は、被験者への投薬量最初の投与時に、薬剤の平均最大血中濃度(Cmax)の、即時放出ボーラス初回投与に関する平均Cmaxの10〜80%、さらに好ましくは30〜70%の低減を達成するCR剤形も提供する。本発明は、この最大血中レベル濃度を達成するのにかかる時間Tmaxを増大する剤形も提供する。特に、即時放出ボーラスに関して判明した平均と比較して50%までの平均Tmaxの増大は悪心の低減を生じる、ということが判明した。本発明は、それにより、USPタイプII溶解法により測定する場合に1の放出速度が6 mgA/時間未満の放出速度を生じる、そして上記薬剤の50 w/w%の溶解のための時間が1〜15時間、さらに好ましくは2〜10時間であるような剤形も提供する。
【0010】
本発明は、これらのデリバリー速度を達成するための製剤組成物をも提供する。特に本発明は、親水性マトリックス、疎水性マトリックス、被覆CR錠剤および多粒子、頬系、経皮系、座薬およびデポー剤系のようなデリバリー手段を含む1の剤形に関する。コーティング錠の中で特に好ましい剤形は、非対称膜技術系である(米国特許第5,612,059号および第5,689,220号に記載。これらの記載内容は、参照により本明細書中に援用される)。
【0011】
本発明はさらに、持続放出の開始前8時間までの遅延期間を示す組合せ遅延放出形態+徐放形態であるような制御放出剤形を提供するが、この場合、ペンタエンは遅延期間中に約0.1 mgA/時間以下の速度で放出され、遅延期間は消化管中の位置により時間的または空間的に制御される。
【0012】
CR剤形を用いた治療過程とその後のIR剤形を用いた治療過程を開始することにより化合物1が患者に投与される場合に悪心の低減を提供することも、本発明の目的である。
【0013】
本明細書中で用いる場合、「制御放出」(CR)とは、少なくとも多少の薬剤が最初の時間に利用可能でないような速度で患者に薬剤を徐々に放出またはデリバリーする剤形を指す。CR系は、一定速度(ゼロ次)で、一定漸減速度(一次)で、あるいは不均一または拍動速度で薬剤を提供し得る。薬剤デリバリーは、初期薬剤放出におけるずれ時間も包含し得る。このずれは一時的であり得るし、あるいは身体中の薬剤の位置に関連し得る。例えばCR剤形は、経口投与後に小腸のpHに達したときに薬剤が放出される腸溶性コーティングを利用することにより調製され得る。
【0014】
本発明において、1の適切なCR剤形は、以下の2つの方法の一方または両方により同定され得る:
(1)第一の方法は、被験者への薬剤の初回投与後(薬物動態プロフィールを生じる)に血液をサンプリングし、分析することにより、剤形中の薬剤の行動を測定することを包含する。初回投与とは、初めての、あるいは任意の形態の1の以前の投与から少なくとも4日置いての被験者への薬剤投与を指す。1により悪心を低減するのに特に重要なのは、薬剤の初回投与後に到達される1の最大血中レベル(Cmax)、ならびにその最大を到達するのに要する時間(Tmax)である、ということが判明した。CmaxおよびTmaxの両方を測定する場合、投薬間および被験者間に有意の変動性が存在する、ということが当業者により認識される。CmaxおよびTmaxの適切な比較を達成し、それにより所定の剤形が悪心の所望の低減を達成するか否かを測定するためには、各実験行程間に少なくとも7日間置いた交差実験(すなわち、各被験者はIRおよびCRの両方の剤形を摂取する)において少なくとも10名の被験者に関してこれらのパラメーターを測定する必要がある。特に、平均初回IRボーラス投与で達成される値の10〜80%の値を達成するための平均初期Cmax低減が悪心低減のために必要とされ、さらに好ましいのは30〜70%であるということが判明した。Tmaxに関しては、IRボーラスと比較した場合のCR剤形に関する平均初期Tmaxの増大は、少なくとも50%であるべきである(すなわち平均CR投与量に関する時間数は、平均IRボーラス投与量に対して1.5倍)。
【0015】
(2)CR剤形を分析してそれが悪心を低減するか否かを確定するための第二の方法は、in
vitro試験を包含する。溶解された1のパーセンテージ対時間のプロットの生成は、薬剤の50%が溶解されるのに要する時間を測定するために最もよく用いられる、ということを本発明人等は見出した。このプロット生成に必要なデータは、標準USP(米国薬局方)II型溶解装置(50 rpm; 500 mLの0.01 N塩酸;37℃)、例えばHansonモデルSR8を用いて得られる。試料の分析は、逆相HPLCを用いて成し遂げられる。総用量の50%w/wが約1〜15時間、さらに好ましくは2〜10時間、溶解されることを剤形が示す場合に、悪心は低減される、ということが判明した。
【0016】
したがって本発明はさらに、均一薬剤分布および効能を有する安定剤形を生じる、被験者への投与に適した即時放出剤形であって、式1の化合物およびその製薬上許容可能な塩、ならびに製薬上許容可能な実質的に還元炭水化物無含有希釈剤を含有するコアを含む剤形に関する。本発明は特に、5,8,14−トリアザテトラ−シクロ[10.3.1.02,11.04,9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタエンのL−酒石酸塩またはクエン酸塩を含むような即時放出剤形を提供する。
【0017】
本明細書中で用いる場合、「実質的に還元炭水化物無含有の」とは、約20 w/w%未満の還元糖(例えばラクトースが挙げられるが、これに限定されない)を意味する。好ましくは本発明に従って調製される剤形は、10 w/w%未満の、さらに好ましくは5 w/w%未満の還元糖を含有する。
【0018】
本発明の即時放出剤形はさらに、滑沢剤(glidant)、崩壊剤(disintegrant)および/または滑剤(lubricant)を含み得る。本発明は、これらの即時放出剤形の製造方法にも関する。
【0019】
本発明の即時放出剤形はさらに、フィルムコーティングを含み得る。本発明は、フィルムコーティングされた即時放出剤形の製造方法にも関する。
【0020】
本発明は、このようなコーティングのための高分子結合剤が実質的にセルロースポリマーを含む1の即時放出剤形のフィルムコーティングに適した処方物も提供する。特に好ましいセルロースポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。このコーティングはさらに、不透明剤(特に二酸化チタン)、可塑剤および/またはglidantを含み、これらは全て、約20%w/w未満の還元炭水化物を含有する。特に好ましいコーティング処方物は、HPMC、二酸化チタンおよびトリアセチンまたはPEGを含む。
【0021】
本発明は、本明細書中に記載したような配合物中で良好な効能および含有物均一性を生じる方法も提供する。これらの方法としては、錠剤成形前の賦形剤を用いた薬剤の幾何級数的希釈方法が挙げられる。これらの方法は、中等度の剪断配合の使用も包含する。好ましい配合方法は、「ビン・ブレンダー」を用いる。しかしながら同様の剪断を生じるその他のブレンダーも使用可能である。
【0022】
副作用としての悪心の低減を生じる1のCR製剤剤形を用いた治療の開示された方法は、約0.03
mgA/時間〜8 mgA/時間、さらに好ましくは約0.06 mgA/時間〜3 mgA/時間、もっとも好ましくは約0.10 mgA/時間〜1 mgA/時間の範囲の速度で溶解形態で消化(GI)管中に薬剤を提供することを特性化とする。
【0023】
特に本発明は、被験者におけるニコチン中毒を低減し、あるいは喫煙の中止または減少を助けるための方法であって、ニコチン中毒を低減し、あるいは喫煙の中止または減少を助けるのに有効である量の1の制御放出剤形または即時放出剤形を上記被験者に投与することを包含する方法を提供する。本発明は特に、CRまたはIR剤形が5,8,14−トリアザテトラ−シクロ[10.3.1.02,11.04,9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタエンのL−酒石酸またはクエン酸塩を含むような方法を提供する。
【0024】
本発明はさらに、炎症性腸疾患、潰瘍性結腸炎、壊疽性膿皮症、クローン病、過敏性腸症候群、痙攣性失調症、慢性疼痛、急性疼痛、セリアックスプルー、嚢炎、血管収縮、不安、パニック障害、うつ病、双極性障害、自閉症、睡眠障害、時差ぼけ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認知機能不全、高血圧症、過食症、拒食症、肥満症、心不整脈、胃酸分泌過多、潰瘍、褐色細胞腫、進行性核上性麻痺、化学物質依存および中毒、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸塩、オピオイドまたはコカインへの依存または中毒、頭痛、片頭痛、卒中、外傷性脳損傷(TBI)、強迫性障害(OCD)、精神病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネシア、多動症、失読症、精神分裂病、多重梗塞性痴呆症、加齢性認知減退、癲癇、小発作性癲癇、アルツハイマー型老人性痴呆(AD)、パーキンソン病(PD)、注意力欠損高活動性異常(ADHD)およびツレット症候群から選択される障害または状態の治療方法であって、このような治療を必要とする被験者に、このような障害または状態を治療するのに有効である量の1の制御放出剤形または即時放出剤形を投与することを包含する方法を提供する。
【0025】
本発明は、これらの投与速度を達成するための医薬組成物をも提供する。特に本発明は、親水性マトリックス、疎水性マトリックス、浸透圧系、多粒子、浸透性コーティング制御剤形、座薬、頬系、経皮系および移殖可能系のような投与手段を含む1の剤形に関する。浸透圧系の中で、特に好ましい剤形は、非対称膜技術系である(米国特許第5,612,059号および第5,689,220号に記載。これらの記載内容は、参照により本明細書中に援用される)。
【0026】
本発明は、CR剤形を用いた治療過程とその後のIR剤形を用いた治療過程を開始することにより化合物1が患者に投与される場合に副作用としての悪心の低減を生じる投与方法をも提供する。
【0027】
本明細書中で用いる場合、「即時放出」(IR)剤形とは、経口摂取された場合に、約1時間以内に吸収される利用可能な形態で薬剤を実質的に提供する剤形を指す。
【0028】
「マトリックス」系とは、剤形からの薬剤の放出が浸食および拡散の組合せにより制御されるよう、しばしば圧縮または押出し形態で、薬剤が賦形剤と混合される特定のCR剤形を指す。薬剤デリバリーの浸食制御は、マトリックスから薬剤を漸進的に曝露し、放出するためのGI液によるマトリックス物質の緩徐除去を包含する。薬剤送達の拡散的制御は、制御方式でのマトリックス賦形剤の網状構造による可溶性薬剤の拡散を包含する。実際、多数のマトリックス剤形は、2つのメカニズムの何らかの程度の組合せを包含する。
【0029】
「親水性マトリックス」は、水溶性または水膨潤性ポリマーが薬剤を含有する網状構造を形成するマトリックスCR剤形である。薬剤が剤形の表面に拡散する速度ならびにマトリックスが分解する速度は、薬剤がGI系に利用可能にされる速度を制御する。
【0030】
「疎水性マトリックス」は、水不溶性または単に部分的水溶性物質が、薬剤がGI系の流体環境に曝露される速度を遅くし、それにより薬剤が吸収のために利用可能である速度を制御するマトリックスCR剤形である。
【0031】
「浸透性コーティング」CR系とは、錠剤を離れる薬剤に対するまたは薬剤に到達する水に対するバリアとして作用する錠剤または粒子上の種々のコーティングを指す。これらのコーティングとしては、剤形が胃に存在する場合に、pHが増大すると浸透性になる腸溶性コーティングが挙げられる。このようなコーティングの例としては、Rohm GmbH Pharma Polymers (Darmstadt, Germany)により販売されているオイドラギットEudragitsTMおよびEastman Chemical (Kingsport,
TN)により販売されているセルロースアセテート水素フタレート(CAP)が挙げられる。このような被覆CR系の一群としては、浸透圧系が挙げられる。このようなCR剤形は、GI系中の膜を横切って水を駆動するのに十分な浸透圧を含有する薬剤コアを取り囲む半透性膜を包含する。浸透圧は次に、コーティング中の予備成形またはin situ生成穴または小孔を通ってコアから薬剤を強制的に出させ得る。このような系はしばしば、コア中の浸透圧を増大するよう意図された作用物質(osmagent)の付加を伴う。このような系を記載する再検討は、G. Santus and R. W. Baker, J. Control. Rel., 1995, 35, 1-21に見出される。
【0032】
「非対称膜技術」AMTは、米国特許第5,612,059号および第5,689,220号(この記載内容は、参照により本明細書中に援用される)に記載されているようにコーティング操作中の相分離法によりコーティングが多孔性にされる特定の浸透圧CR系を説明する。
【0033】
「経皮デリバリー・システム」は、皮膚を通して患者に全身性薬剤を提供するよう意図された薬剤デリバリーデバイスである。このような系は一般に、被験者の皮膚に物質を付着するための接着剤を有する裏張り上に薬剤を含有する物質の一層を包含する。
【0034】
「頬デリバリー・システム」は、頬(内部頬)組織を通しての薬剤吸収のための方法を提供する剤形である。
【0035】
「デポー剤」は、薬剤および適切な賦形剤が皮下または筋肉内に注射され、薬剤を全身循環に徐々に提供する塊(マトリックス)を形成する制御放出剤形である。
【0036】
本発明の目的のための薬剤1は、親薬剤ならびにその全ての製薬上許容される塩およびプロドラッグを指す。
【0037】
「mgA」という用語は、遊離塩基形態の薬剤に基づく活性薬剤のミリグラム数を指す。
【0038】
「製薬上許容される」という語句は、物質または組成物が化学的、物理的および/または毒物学的に、処方物を含むその他の成分および/またはそれで治療される哺乳類に適合性でなければならないことを示す。
【0039】
「活性成分」という用語は、治療的に活性な化合物、ならびにその任意のプロドラッグ、そして化合物およびプロドラッグの製薬上許容される塩、水和物および溶媒和物を指す。
【0040】
「時間の適切な期間」または「時間の適当な期間」という用語は、所望の作用または結果を達成するのに必要な時間の期間を指す。例えば混合物は、効能分布が到達されるまで、すなわち配合混合物の所定の適用または使用のための許容可能な定性的範囲内で、配合され得る。
【0041】
本明細書中で用いる場合、「単位用量」または「単位投薬量」という用語は、所望の治療効果を生じるよう算定された予定量の活性成分を含有する物理的分離性単位を指す。単位用量または単位投薬量は、本明細書中で「単位剤形」と呼ばれる錠剤、カプセル、サッシェ等の形態であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の詳細な説明
化合物1の製造方法は米国特許第6,410,550号(この記載内容は、参照により本明細書中に援用される)に記載されており、そしてそのラセミ混合物の分割はWO 01/62736に記載されている。本発明に従って、1のCR医薬組成物は、望ましくは1回または分割投与で約0.1 mgA〜約6 mgA/日、さらに好ましくは約0.5 mgA〜約4 mgA/日、最も好ましくは約1 mgA〜約4 mgA/日の範囲の用量で投与され得るが、しかし治療される被験者の体重および状態によって、必ず変動が生じ得る。個々の応答によって、上記の範囲の下限より低い投薬量レベルで十分以上であるが、しかし他の場合には、いかなる有害副作用も引き起こさずに、さらに大きい用量が用いられ得る。
【0043】
1の任意の製薬上許容される形態が本発明とともに用いられ得るが、しかし塩形態の薬剤を用いるのが好ましい。薬剤の特に好ましい塩形態は、L−酒石酸塩である。
【0044】
1のCR剤形を用いて悪心を制御するためには、薬剤の放出速度は、IR剤形の場合よりわずかに遅い速度で薬剤吸収に利用可能な形態で薬剤がGI系中に計量供給されるようでなければならない。臨床試験において分割IR投薬量を用いて、薬剤が約12 mgA/時間(3 mgAの全用量に対して)に対応する速度で薬剤が放出される場合、悪心報告の発生率は試験した被験者の50%を超える、ということが判明した。これに対比して、約8 mgA/時間(2 mgAの全用量に対して)に対応する投与速度では、悪心に関する発生レベルは約13%に下がった。したがってこれは、CR剤形が悪心を低減するのに必要な薬剤投与の速度に関する8 mgA/時間の上限を確定する。本発明に鑑みて、悪心低減のさらに大きい改善がより遅い放出速度の使用により生じる、と予測される。経口CR剤形は一般に、個体に関する剤形の運動性によって、約18時間以下の薬剤吸収を受けると予測され得る。効能に必要な薬剤の血中レベルに基づいて、薬剤に必要な総用量は約0.5 mgA〜6 mgA/日と予測される。これに基づいて、薬剤投与の速度に関する下限は、約0.03 mgA/時間である。これらの両極端は本発明に記載された利点を確かに提供するが、しかし悪心低減を保持しながら所望の療法的血中レベルを達成するためには、薬剤は約0.06〜3 mgA/時間、さらに好ましくは0.1〜1 mgA/時間の速度で投与される、ということを本発明者等は見出した。
【0045】
薬剤投与の所望の速度を達成するためのこのようなCR系を製造するために、多数の手段が見出されてきた。このような手段の1つが、マトリックスである。特に1のマトリックス錠剤またはマトリックス多粒子が、本発明に従って調製され得る。多粒子の場合、剤形の最終提示は、カプセルに粒子を付加することにより、あるいはサッシェまたはその他のこのような提示を提供することにより成され得る。これらのマトリックス剤形は、伝統的技法を用いて、例えば錠剤プレス機を用いた圧縮により、あるいは押出しまたは融解物凝固のような工程により、形成され得る。2つの型のマトリックス剤形、すなわち親水性および疎水性剤形が、1に関しては適切である。親水性マトリックス処方物は一般に、高および低分子量水溶性ポリマーの混合物から成る。特にこれらのマトリックス物質は、異なる分子量のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリアクリレート、アルギネート、キサンタンゴムおよびその他のこのようなポリマーの組合せから成る。特に好ましいポリマーとしては、HPMCおよびPEOが挙げられる。特に好ましい処方物は、K4M
メトセルMethocelTM(Dow Corp., Midland, MIから入手可能)の商品名で市販されているHPMCおよびD−タブtabTM(Rhodia Inc., Cranbury, NJから入手可能)の商品名で市販されている二塩基性リン酸カルシウムの混合物から成る。1の疎水性マトリックス処方物は、水がそれぞれ1と接触するようになる速度を遅くするために疎水性物質を用いることにより調製され得る。特に好ましい疎水性物質としては、カルナウバ蝋、グリセリルベヘネートおよびステアリン酸が挙げられる。しかしながらその他の同様の蝋質物質が等価方式で機能する、と当業者に理解される。
【0046】
浸透性剤形も、1に関する所望の放出速度を提供し得る。このような剤形の例は、G.
Santus and R. W. Baker, J. Control. Rel., 1995, 35, 1-21(この記載内容は、参照により本明細書中に援用される)に記載されている。1に関する特に好ましい浸透性剤形は、例えば米国特許第5,612,059号および第5,689,220号における実施例に関して記載されているように、AMT系の形態である(S.M. Herbig, J. Control. Rel., 1995, 35, 127-136も参照)。このような系は、GI系全体を通しての薬剤放出の良好な制御を提供する。好ましい処方物は薬剤のL−酒石酸塩、マンニトール、微晶質セルロース、リン酸二カルシウムおよびステアリン酸マグネシウムから作られるコアから成る、ということを本発明者等は見出した。これらのコアは、直接圧縮、湿式造粒(高または低剪断湿式造粒機または流床造粒機を用いる)、押出し造粒、回転造粒またはローラー圧密化により調製され得る。ローラー圧密化は、薬剤安定性を保持しながら、薬剤分離を防止するその能力のために特に好ましい(薬剤水和物生成を生じ得る水性湿式造粒と対比して)。錠剤は、標準錠剤プレス機(回転式)で調製され得る。次に、パンコーターを用いて錠剤コアが被覆される。コーティングは、好ましくは、アセトンおよび水から被覆される酢酸セルロース(CA)およびポリエチレングリコール(PEG)の混合物から成る。構成成分の比率は、CA/PEG組合せが、所望の速度でGI管中の孔を通して薬剤を投与する多孔性半透性コーティングを生成するよう選択される。もっとも好ましくは、CA対PEGの比率は、相分離PEGが最終剤形中で高温で薬剤分解を生じることが見出されたため、PEGがCAによる単一相中にあるよう選択される。本発明の目的のための相適合性は、所望のCA対PEG配合物に関して、標準示差走査熱量計を用いて確定され得る。30℃〜50℃のPEG融解転移の不存在は単一相の指標であり、したがってこのような比率が好ましい皮膜を生成するという指標である。したがってCA/PEG比が依然として約4より上であるというのがもっとも好ましい。
【0047】
非経口CR系も、1の投与時に効力を保持しながら悪心低減を提供し得る。これらの系としては、座薬、経皮系、頬系、デポー剤および移植可能用具が挙げられる。悪心を低減するよう機能するために、これらの用具は上記のように制御放出行動を提供しなければならない。特に好ましい非経口剤形は、経皮剤形である。
【0048】
全てのCR剤形に関して、薬剤は好ましくは、約0.06〜3 mgA/時間、さらに好ましくは0.1〜1 mgA/時間の速度でデリバリーされる。本発明に関する適正は、in
vivoまたはin
vitro試験により確定され得る。特に、平均初回Cmaxが低減されて、平均初回IRボーラス投与で達成されるものの10〜80%の値を達成するのが好ましく、さらに好ましいのは30〜70%である。Tmaxに関しては、平均初回IRボーラスト比較して、CR剤形に関する平均初回Tmaxの増大が少なくとも50%であるのが好ましい。本発明のための好ましい剤形は、約1〜15時間、さらに好ましくは2〜10時間、溶液中に総用量の50%w/wを提供する。
【0049】
本発明に関するCR系は、用量が投与される時と薬剤が吸収のために利用可能である時との間に遅延またはずれ期間を包含し得る。このような遅延は、一時的であるかまたは消化管中の位置に関連し得る。これらの系は、一旦それらが吸収のために薬物を提供し始めると速度が上記の限度の範囲内に入る限り、本発明の目的のために有効である。特に好ましい遅延放出系は、腸溶性被覆錠剤または多粒子である。好ましい腸溶性系は、酢酸フタル酸セルロースのような物質または腸溶性ポリアクリル、例えばオイドラギットの商標名(Rohm Pharmaceuticalsから入手可能)で市販されているもので錠剤または多粒子を被覆することにより調製され得る。
【0050】
本発明に有用な処方物は、当該技術分野で既知の広範囲の物質および方法を用いて調製され得る。しかしながら、還元炭水化物の存在は貯蔵時の薬剤安定性にとって有害である、ということを本発明者等は見出した。特に20%w/w未満の還元炭水化物を有するCR処方物が好ましい。さらに好ましいのは、10%w/w未満の還元炭水化物を有するCR処方物であり、もっとも好ましいのは、5%w/w未満の還元炭水化物を有するCR処方物である。好ましくは回避される特定の還元糖は、ラクトースである。
【0051】
制御放出および即時放出剤形の調製のために、活性成分は、それ自体であるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物および/または水和物の形態で、用いられ得る。活性成分は、それ自体で、あるいはその製薬上許容される塩、溶媒和物および/または水和物の形態で用いられ得る。「製薬上許容される塩」という用語は、無機および有機酸由来の非毒性酸付加塩を指す。適切な塩誘導体としては、ハロゲン化物、チオシアン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、アリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ホスホン酸塩、一水素−ホスホン酸塩、二水素ホスホン酸塩、メタホスホン酸塩、ピロホスホン酸塩、アルカン酸塩、シクロアルキルアルカン酸塩、アリールアルカン酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、重グルコン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等が挙げられる。
【0052】
最終医薬組成物は、単位剤形(例えば錠剤、カプセルまたはサッシェ)に加工処理され、次に分配のために包装される。加工処理段階は、特定の単位剤形によって変わる。例えば錠剤は一般に、圧力かで所望の形状に圧縮され、カプセルまたはサッシェは単純充填操作を用いる。種々の単位剤形を製造するために用いられる手法については、当業者にとって周知である。
【0053】
即時放出剤形の活性配合物は一般に、1つまたは複数の製薬上許容される賦形剤、担体または希釈剤を含む。用いられる特定の担体、希釈剤または賦形剤は、活性成分が適用されている手段および目的によっている。概して、即時放出錠剤処方物は、希釈剤、結合剤、滑剤、滑沢剤、崩壊剤およびそれらの混合物といった物質を含む。多数のこのような賦形剤は当業者に既知であるが、しかしそれらの小集団のみがもっとも安定な処方物を提供する、ということを本発明者等は見出した。特に好ましい処方物は約20%w/w未満の還元炭水化物を含有する、ということを本発明者等は見出した。還元炭水化物は、電子の供与により還元剤として作用し得る遊離アルデヒドまたはケトン基を含有する糖およびそれらの誘導体である。還元炭水化物の例としては、単糖および二糖が挙げられ、特にラクトース、グルコース、フルクトース、マルトースおよびその他の同様の糖が挙げられる。リン酸二カルシウムを含有する処方物は特に安定している、ということを本発明人等は見出した。特に安定処方物は、約20%w/wより多いリン酸二カルシウムを用いて生成される。その他の許容される賦形剤としては、デンプン、マンニトール、カオリン、硫酸カルシウム、無機塩(例えば塩化ナトリウム)、粉末セルロース誘導体、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポロキサマー、例えばポリエチレンオキシドおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。配合物の内容物均一性を保証するために、約30μ以下の容積平均直径薬剤物質粒子サイズが好ましくは利用される。好ましい希釈剤は、微晶質セルロース(例えばアビセルAvicel(商標)PH200、PH102またはPH101(FMC Pharmaceutical, Philadelphia, PAから入手可能))および二塩基性リン酸カルシウムまたはリン酸二カルシウム(例えばA−タブTab(商標)(Rhodia, Chicago
Heights, ILから入手可能))である。微晶質セルロースに関する平均粒子サイズは一般に、約90 μm〜約200 μmの範囲である。適切な等級のリン酸二カルシウムとしては、無水物(平均約135〜180 μm、PenWest Pharmaceuticals Co., Patterson, NYまたはRhodia, Cranbury, NJから入手可能)および二水和物(約180 μm、PenWest Pharmaceuticals
Co., Patterson, NYまたはRhodia, Cranbury, NJから入手可能)が挙げられる。一般に、微晶質セルロースは約10重量%〜約70重量%の量で存在し、リン酸二カルシウムは約10重量%〜約50重量%の量で存在し、さらに好ましくは微晶質セルロースは約30〜70重量%の量で存在し、リン酸二カルシウムは約20〜40重量%の量で存在する。
【0054】
所望により、結合剤が付加され得る。適切な結合剤としては、セルロース(例えばセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシメチルセルロース)、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、デンプン、天然および合成ゴム(例えばアカシア、アルギン酸塩およびアラビアゴム)ならびに蝋のような物質が挙げられる。
【0055】
滑剤は典型的には、錠剤およびパンチが打抜きダイ中にくっ付くのを防止するために錠剤処方物中に用いられる。適切な滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、一ステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化植物油、軽鉱油、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルクおよびステアリン酸亜鉛が挙げられる。好ましい滑剤は、ステアリン酸マグネシウムである。ステアリン酸マグネシウムは一般に、約0.25重量%〜約4.0重量%の量で存在する。
【0056】
崩壊剤も、剤形を粉々にし、化合物を放出するために組成物に付加され得る。適切な崩壊剤としては、グリコール酸デンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微晶質セルロース、粉末セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、ポラクリリンカリウム、デンプン、前ゼラチン化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。これらのうち、クロスカルメロースナトリウムおよびグリコール酸デンプンナトリウムが好ましく、クロスカルメロースナトリウムがもっとも好ましい。クロスカルメロースナトリウムは一般に、約0.5重量%〜約6.0重量%の量で存在する。剤形中に含まれる崩壊剤の量は、いくつかの因子、例えば分散の特性、ポロシゲンporosigen(以下で考察)の特性、ならびに選択される崩壊剤の特性によっている。一般に崩壊剤は、剤形の1重量%〜15重量%、好ましくは1重量%〜10重量%を構成する。
【0057】
glidantの例としては、二酸化ケイ素、タルクおよびコーンスターチが挙げられる。
【0058】
即時放出剤形上の皮膜コーティングは、易嚥下性、投与中の不快な味または臭いの低減、不透明剤の使用による光安定性改善、エレガントさの改善、高速包装中の摩擦低減を、または不相溶性物質間のバリアとして提供し得る(G. Cole, J. Hogan, and M. Aulton, Pharmaceutical Coating Technology,
Taylor and Francis Ltd, Ch 1, 1995)。用いられる場合、大多数のセルロース系ポリマーを含有するコーティングは薬剤に関する優れた化学安定性を提供する、ということを本発明者等は見出した。セルロース系物質は、セルロース由来のポリマーである。ポリマーの例としては、セルロース系物質、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。好ましいポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。本発明のコーティングは、ポリマー、不透明剤、可塑剤、製薬上許容される希釈剤/充填剤および任意に着色剤を含む。不透明剤は、コーティングを通して錠剤のコアへの光の伝達を低減するのを助ける賦形剤である。不透明剤の例としては、二酸化チタンおよびタルクが挙げられる。好ましい不透明剤は、二酸化チタンである。可塑剤は、ポリマーのガラス転移温度を下げ、それにより典型的には物理的特性を改善する物質である。可塑剤の例としては、多価アルコール、例えばグリセロールおよびポリエチレングリコール、ならびに酢酸エステル、例えば三酢酸グリセリル(トリアセチン)およびクエン酸トリエチルが挙げられる。任意に本発明の組成物は、着色剤を含み得る。このような着色剤は、多数の商業的売主から入手可能であり、当業者に周知である。特に好ましいコーティング処方物は、HPMC、トリアセチンおよび二酸化チタンまたはHPMC、PEGおよび二酸化チタンを含む。
【0059】
錠剤またはカプセル製造前に配合物中の薬剤の均一分布を達成するために、2つの方法が考案されている。第一の方法では、幾何級数的希釈法が用いられるこの方法では、薬剤および賦形剤の一部の予備配合物が調製され、その後さらなる2〜5段階で残りの希釈剤を用いてさらに希釈される。第一希釈段階では、薬剤は10〜30重量%の賦形剤(単数または複数)と混合される。第二希釈では、第一予備配合物はさらに10〜40重量%の賦形剤(単数または複数)で希釈される。第三ないし第五希釈では、第二希釈配合物はさらに10〜75重量%の賦形剤(単数または複数)で希釈されて、最終配合物を生成する。好ましい希釈スキームは、薬剤をリン酸二カルシウムで2増分で希釈し、次に残りの賦形剤の配合物と併合することを包含する。
【0060】
均一薬剤分布を達成するための第二の方法は、特定レベルの剪断応力を有する処方物を配合することを包含する。剪断応力が高すぎるかまたは低すぎると、不十分な均一性または総効能を生じる、ということを本発明者等は予期せず見出した。望ましい剪断応力は、低剪断条件(200 rpm未満)で操作されるビンブレンダーまたは高剪断ブレンダーを用いて達成される、ということを本発明者等は見出した。ビンブレンダー中での配合のための典型的配合時間は、約20分〜約30分である。30分より長い配合時間が用いられ得るが、しかし配合物をデミックスしないよう注意すべきである。初期配合段階後、0.8 mmスクリーンを備えた円錐ミル(Comil 197, Quadro Engineerig, Inc., Waterloo, Ontario, Canada)を用いて、活性配合物は篩いにかけられる。次に滑剤が活性配合物に付加されて、「V」形ブレンダーまたはビンブレンダー中で約3分間配合された後、乾式造粒される。
【0061】
上記の方法は、活性成分の有意の分解を伴わずに、活性成分の効率的混合およびより均一な分布を提供する。しかしながら設備(例えばスクリーンおよび容器表面)の金属表面への化合物の分離または接着のための活性成分の損失は、特に低投薬量処方物(例えば4 mg未満/単位用量)に関する付加的挑戦を提示した。許容可能な配合物効能を獲得する第三の方法は研磨賦形剤、例えばリン酸二カルシウムの使用を包含する、ということを本発明者等は発見した。特に好ましい処方物は、10〜50重量%のリン酸二カルシウムを含有する。
【0062】
医薬組成物を用いて、約0.1 mg〜約10.0 mgの活性成分/単位投薬量、好ましくは約0.2 mg〜約5.0 mgの活性成分/単位投薬量を含有する単位剤形を製造し得る。錠剤サイズ(すなわち単位剤形)は、典型的には約100 mg〜600 mgである。
【0063】
錠剤は一般に、回転プレス機での圧縮により調製される。しかしながら錠剤成形のために用いられる特定の方法は非限定的であり、当業者に周知である。錠剤の生成後、錠剤はしばしば1つまたは複数のコーティングで被覆される。錠剤は、風味剤を覆い、密封剤として作用しおよび/または錠剤表面のロゴまたは商標を印刷するための受容体として作用するためにコーティングで被覆され得る。あるいは錠剤は、皮膜形成保護剤(単数または複数)で被覆されて、錠剤の溶解特性を改質し得る。例えば錠剤は、予測可能な期間溶解に耐え、したがって活性成分の遅延または長期放出を生じる皮膜形成コーティングで被覆され得る。適切な皮膜形成保護剤としては、セルロース(例えばヒドロキシプロピル−メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、ポリビニルピロリドンおよびエチルアクリレート−メチルメタクリレートコポリマーが挙げられる。コーティング処方物は、薬剤のエレガントな見栄えを提供するために、添加剤、例えば可塑剤(例えばポリエチレングリコールまたはトリアセチン)、防腐剤、甘味剤、風味剤、着色剤およびその他の既知の添加剤も含み得る。好ましいコーティング処方物は、40〜70重量%のセルロース系ポリマー(単数または複数)を含有する。好ましくは本発明の即時放出剤形の水性コーティングは、オパドライOpadry(商標)(YS−1−18202−A)およびオパドライクリアOpadry Clear(商標)(YS−2−19114−A)(Colorcon, West Point,
Pennsylvania製造)を含む。不透明被覆として有用なオパドライOpadry(商標)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタンおよびポリエチレングリコールまたはトリアセチンを含有する。艶出皮膜として有用なオパドライクリアOpadry Clear(商標)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびトリアセチンを含有する。
【0064】
好ましい処方物は、薬剤のL−酒石酸塩、マンニトール、微晶質セルロース、リン酸二カルシウムおよびステアリン酸マグネシウムから作られるコアから成る、ということを本発明者等は見出した。さらに好ましい処方物は、薬剤のL−酒石酸塩、微晶質セルロース、リン酸二カルシウムおよびステアリン酸マグネシウムから作られるコアから成る。さらに好ましい処方物は、薬剤のL−酒石酸塩、微晶質セルロース、リン酸二カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムから作られるコアから成る。これらのコアは、直接圧縮、湿式造粒(高または低剪断湿式造粒機または流床造粒機を用いる)、押出し造粒、回転造粒またはローラー圧密化により調製され得る。ローラー圧密化は、(薬剤水和物生成を生じ得る水性湿式造粒と対比して)薬剤安定性を保持しながら、薬剤分離を防止するその能力のために特に好ましい。錠剤は、標準錠剤プレス機(回転式)で調製され得る。次に、パンコーターを用いて錠剤コアが被覆される。好ましいコーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、ポリエチレングリコールまたはトリアセチンおよび任意に着色剤の混合物から成る。
【0065】
あるいは活性製剤配合物は、ドライ充填カプセル(DFC)とも呼ばれる硬質外殻カプセル中に充填され得る。カプセル処方物および製造工程は、報告された錠剤コア処方物および製造工程と同様である。硬質外殻カプセルは、ゼラチンおよび水またはヒドロキシプロピルメチルセルロース、水およびゲル化剤(ゼラチンゴムまたはカラジーナン)からなる。
【0066】
医薬組成物(または処方物)は、種々の方法で包装され得る。一般に、分配のための製品としては、適切な形態で医薬組成物を含有する容器が挙げられる。適切な容器は当業者に周知であり、例としては、瓶(プラスチックおよびガラス)、サッシェ、ホイルブリスターパック等のような物質が挙げられる。容器は、包装の内容物への不用意なアクセスを防止するために、いたずら防止の組立ても含み得る。さらに容器は典型的には、容器の内容物ならびに任意の適切な警告または使用説明を記載するラベルをその上に載せている。
【0067】
本明細書中に記載された化合物1を含有する医薬組成物は、とりわけ炎症性腸疾患(例えば潰瘍性結腸炎、壊疽性膿皮症およびクローン病が挙げられるが、これらに限定されない)、過敏性腸症候群、痙攣性失調症、慢性疼痛、急性疼痛、セリアックスプルー、嚢炎、血管収縮、不安、パニック障害、うつ病、双極性障害、自閉症、睡眠障害、時差ぼけ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認知機能不全、高血圧症、過食症、拒食症、肥満症、心不整脈、胃酸分泌過多、潰瘍、褐色細胞腫、進行性核上性麻痺、化学物質依存および中毒(例えばニコチン(および/またはタバコ製品)、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸塩、オピオイドまたはコカインへの依存または中毒)、頭痛、片頭痛、卒中、外傷性脳損傷(TBI)、強迫性障害(OCD)、精神病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネシア、多動症、失読症、精神分裂病、多重梗塞性痴呆症、加齢性認知減退、癲癇、例えば小発作性癲癇、アルツハイマー型老人性痴呆(AD)、パーキンソン病(PD)、注意力欠損高活動性異常(ADHD)およびツレット症候群の治療または予防に有用である。
【0068】
したがって本明細書中に記載された化合物1を含有する製剤処方物および方法は、上記の療法的適用のための薬剤の製造に用いられ得る。
【0069】
治療的有効量の製造薬剤は、このような治療または予防を必要とするヒトに投与され得る。本明細書中で用いる場合、「治療的有効量」という用語は、上記で言及された種々の病理学的状態またはその症状および後遺症を抑制または防止し得る活性成分の量を指す。
【0070】
「抑制する」または「抑制すること」という用語は、進行を妨げ、処置し、軽減し、改善し、停止させ、抑止し、遅くしまたは反転させること、あるいは治療されているそれぞれの状態に関連するかまたは結果として生じる病理学的状態または症状の重症度を低減することを指す。このようなものとして、製剤処方物は、医学療法的(急性または慢性)および/または適切な場合には予防的(防止)投与の両方のために用いられ得る。用量、頻度および継続期間は、治療されている状態の性質および重症度、宿主の年齢および全般的健康、ならびに活性成分に対する宿主の耐容性といった因子によって変わる。医薬組成物または医薬剤は、1回1日投与で、1日に多数回の投与で、あるいは毎週投与で与えられ得る。レジメンは、約2〜3日から数週間またはそれ以上継続し得る。典型的には組成物は、約0.25 mg〜約10.0 mgの単位投薬量で、1日1回または2回、ヒト患者に投与されるが、しかし上記の投薬量は、患者の年齢、体重および医学的状態、ならびに投与の種類によって適正に変更され得る。
【0071】
以下の実施例は例証目的のために提供され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
実施例に用いられる物質の以下のリストは、対応する供給元から調製されるかまたは入手され得る:
化合物1(L−酒石酸塩)は、特許出願WO9935131A1またはWO0162736A1(これらの記載内容は、参照により本明細書中に援用される)に記載された方法により調製され得る。
【0073】
微晶質セルロース(アビセルAvicelTMPH200):FMC Pharmaceutical(Philadelphia, PA)から入手可能。
【0074】
マンニトール(granular 2080):SPI Polyols, Inc.(New Castle, DE)から入手可能。
【0075】
無水リン酸二カルシウム(A-tabTM):Rhodia Inc.(Chicago Heights, IL)から入手可能。
【0076】
クロスカルメロース(Ac-Di-SolTM):FMC BioPolymer(Philadelphia, PA)から入手可能。
グリコール酸デンプンナトリウム(ExplotabTM):Penwewt(Patterson, NJ)から入手可能。
【0077】
コロイド二酸化ケイ素(Cab-O-SilTM):Cabot Corporation(Boston, MA)から入手可能。
ケイ化微晶質セルロース(ProSolvTM):Penwewt(Patterson, NJ)から入手可能。
【0078】
ヒドロキシプロピルセルロース(KlucelTM):Hercules, Inc.(Hopewell, VA)から入手可能。
無水ラクトース:Quest International(Norwich, NY)から入手可能。
ステアリン酸マグネシウム(動物または植物源):Mallinckrodt(St. Louis, MO)から入手可能。
【0079】
皮膜コーティング(オパドライOpadryTM):Colorcon(West Point, PA)から入手可能。
酢酸セルロース(398-10 NF):Eastman Chemicals(Kingsport, TN)から入手可能。
【0080】
ポリエチレングリコール(PEG3350):Union Carbide Corp.(Dow Chemical Co., Midland,
MIの支配下)から入手可能。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、K4M、methocelTM):Dow Chemical Co.(Midland,
MI)から入手可能。
【実施例】
【0081】
実施例1
1のL−酒石酸塩のためのAMT CR剤形の調製
錠剤成形造粒物の3 kgバッチを、以下のように調製した:450 gの微晶質セルロースおよび1602 gの二塩基性リン酸カルシウムを8クォートVブレンダー中で10分間混合した。配合物の半分をポリエチレン袋中に放出して、半分の配合物はブレンダー中に残したままにした。1250 ccガラス瓶に450 gのマンニトールおよび10.3 gの薬剤を付加した。ターブラTurbulaTMブレンダー(Geln Mills Inc., Clifton, NJから入手可能)を用いて、混合物を混ぜ合わせた。この物質を、上記の物質を含有するVブレンダーに付加した。さらに450 gのマンニトールを瓶に付加し、その後5分間、ターブラをブレンドして、瓶から任意の薬剤をすすいだ。この物質もまたVブレンダーに付加し、混合物を20分間混合させた。ポリエチレン袋に放出しておいた物質を次にVブレンダーに付加し、混合物をさらに20分間混ぜ合わせた。次にステアリン酸マグネシウムの22.5 gアリコートをVブレンダーに付加し、混合物を5分間混ぜ合わせた。回転圧30 kg/cm2、回転速度4.0 rpmおよび刃先速度15.6 rpmで、DSPローラーを有するTF−ミニローラー圧縮機(Vector Corp., Marion, IAから入手可能)を用いて混合物をローラー圧縮した。生成されたリボンを、300 rpmで、18メッシュConidur研磨スクリーンを有するM5Aミル(Fitzpatrick Corp., Elmhurst, ILから入手可能)を用いて粉砕した。次に粉末をVブレンダーに戻し入れ、別の15 gのステアリン酸マグネシウムを付加した後、さらに5分間混ぜ合わせた。
【0082】
9/32インチ(11 mm)SRC工具を用いてKilian T100(Kilian & Co. Inc., Horsham, PAから入手可能)錠剤プレス機を用いて、造粒物を錠剤成形して、250 mg/錠剤(0.5 mgA)の錠剤を得た。使用した前圧縮力は2.8 kN、主圧縮力は8 kNで、20 rpmの供給パドル速度で74 rpmで作動した。その結果生じた錠剤は7〜9 kpの硬度を示し、測定可能な脆砕性は認められなかった。
【0083】
4506 gのアセトンおよび1547 gの水中の538 gの酢酸セルロースおよび134.5 gのPEGから成るコーティング溶液を先ず調製することにより、錠剤を被覆した。HCT−30EXハイコーターHicoater(Vector Corp., Marian, IAから入手可能)を用いて、コーティングを実行した。27.5%増の目標コーティング重量が達成されるまで、28℃の出口温度で、20.0 g/分の噴霧率を保持した。次に錠剤を、40℃で24時間、オーブン中でトレー乾燥した。
【0084】
錠剤は、USP II型溶解を用いて、in vitroでpH非依存性溶解行動を示した(37℃、50 rpmでかき混ぜ、HPLC効能検定により分析)。溶解液中の時間の一関数としての溶解された薬剤のパーセントを以下に示す:2時間、1%;5時間、8%;8時間、35%;10時間、52%;12時間、65%;16時間、81%;24時間、95%。したがって系は、5時間のずれの後に0.03 mg/時をデリバリーする。
【0085】
実施例2
実施例1からのAMTを用いた悪心に関する臨床試験結果
絶食中の非喫煙者に関するIR剤形の臨床1回投与試験における1の使用に際しては、悪心は、用量1
mgAで被験者の50%(2/4)および用量3 mgAで被験者の75%(3/4)に関して報告された。多数回投与試験では、1 mgA/日が良好に耐容された。しかしながら持続性悪心は2
mgA/日では十分に悪性で(7/12被験者)、この試験部門を中止した。非絶食健常喫煙者の1回投与試験では、悪心または関連愁訴は、IRに関して2
mgAの最大用量を投与され他16名中2名で報告された。これに対比して、上記のAMT剤形に関する3 mgAおよび4 mgAの用量は、IR剤形の低容量で観察された悪心と同様レベルの悪心を生じた(各症例に関して2/16)。多数回投与試験では、3 mgAAMT錠剤に関する悪心のレベルは、1日2回投与された1 mgAIR錠剤に匹敵し、1日1回投与2 mgAIR錠剤より有意に優れていた。
【0086】
実施例3
1のL−酒石酸塩のための好ましいAMT CR剤形の調製
錠剤成形造粒物の7 kgバッチを、以下のように調製した:1050 gの微晶質セルロースおよび3340 gの二塩基性リン酸カルシウムを16クォートVブレンダー中で20分間混合した。8クォートブレンダーに2450 gのマンニトールおよび71.8 gの薬剤を付加した。混合物を30分間混合した。この物質を16クォーターVブレンダー(一次配合工程からの配合物を有する)に付加し、混合物を30分間混ぜ合わせた(配合物を用いて、ブレンダーをすすいで、完全移動を保証し得る)。次にステアリン酸マグネシウムの52.5 gアリコートをVブレンダーに付加し、混合物を5分間混ぜ合わせた。回転圧30 kg/cm2、回転速度4.0 rpmおよび刃先速度15 rpmで、DSPローラーを有するTF−ミニローラー圧縮機を用いて混合物をローラー圧縮し、その結果生じたリボンは0.06〜0.08インチ厚であった。リボンを、300 rpmで、18メッシュConidur研磨スクリーンを有するM5Aミル(Fitzpatrick Corp., Elmhurst, ILから入手可能)を用いて粉砕した。次に粉末をVブレンダーに戻し入れ、別の35 gのステアリン酸マグネシウムを付加した後、さらに5分間混ぜ合わせた。
【0087】
9/32インチ(11 mm)SRC工具を用いてKilian T100錠剤プレス機を用いて、造粒物を錠剤成形して、250 mg/錠剤(1.5 mgA)の錠剤を得た。使用した前圧縮力は1.2 kN、主圧縮力は8 kNで、20 rpmの供給パドル速度で74 rpmで作動した。その結果生じた錠剤は5〜8
kpの硬度を示し、測定可能な脆砕性は認められなかった。
【0088】
30.6 kgのアセトンおよび9.9 kgの水中の4095 gの酢酸セルロースおよび405 gのPEGから成るコーティング溶液を先ず調製することにより、錠剤を被覆した。HCT−60ハイコーターHicoater(Vector Corp., Marion, IAから入手可能)を用いて、40,000〜48,000錠剤/バッチでのコーティングを実行した。13%増の目標コーティング重量が達成されるまで、27℃の出口温度で、180 g/分の噴霧率を保持した。次に錠剤を、40℃で16時間、オーブン中でトレー乾燥した。
【0089】
錠剤は、USP II型溶解を用いて、in vitroでpH非依存性溶解行動を示した(37℃、50 rpmでかき混ぜ、HPLC効能検定により分析)。溶解液中の時間の一関数としての溶解された薬剤のパーセントを以下に示す:2時間、5%;5時間、30%;7時間、50%;10時間、70%;12時間、80%;24時間、97%。したがって系は、2時間のずれの後に0.1 mg/時をデリバリーする。
【0090】
実施例4
1のL−酒石酸塩のための親水性マトリックスCR剤形の調製
HPMC K4M(45,000 g)および二塩基性リン酸カルシウム50.575 gを、瓶中で10分間、ターブラTurbula混合した。この配合物約10 gを1のL−酒石酸塩3.425 gと併合し、10分間ターブラ混合した。次に最初のミックスからの残りの粉末を薬剤含有配合物に付加し、併合物を20分間ターブラ混合した。次にステアリン酸マグネシウム(1,000 g)を付加し、併合物をさらに3分間混ぜ合わせた。1/4インチSRC工具を用いてマネスティーManestyTMF−プレス機(単一パンチ錠剤成形機(Manesty Corporation, Liverpool, UKから入手可能))を用いて、錠剤を調製した。平均錠剤重量は102 mg/錠剤で、0.5 mgAに対応し、錠剤硬度は5〜7 kpであった。錠剤上錘および50 rpmで回転するパドルを有するケージを用いて、37℃で模擬腸液(pH6.8)を用いて、in vitro溶解実験を実行した。経時敵に溶解した薬剤の量は、HPLC効能検定を用いて、以下のように測定された:2時間、59%;4時間、85%;8時間、94%;16時間、97%。したがって系は、0.10 mg/時をデリバリーする。
【0091】
実施例5
1のL−酒石酸塩のための疎水性マトリックスCR剤形の調製
0.86 gの1および42.25 gのマンニトールの混合物を#30スクリーンに通し、次に2分間、ターブラTurbula混合した。カルナウバ蝋(6.04 g)およびステアリン酸(0.61 g)をビーカーに付加し、90℃の水浴を用いて融解させた。混合しながら、マンニトールおよび薬剤配合物を融解蝋およびステアリン酸混合物に付加した。次に加温物質を#20メッシュスクリーンに通してスクリーニングし、次に一晩冷却させた。当該物質を二酸化ケイ素0.09 gと併合し、2分間ターブラ混合した。ステアリン酸マグネシウム(0.17 g)を付加し、その後さらに0.5分間ターブラ混合した。5/16インチSRC工具を用いてF−プレス機を用いて錠剤を調製し、200 mg(2 mgA)の錠剤重量を得た。
【0092】
実施例6
錠剤安定性および製造実績に基づいた工程選択
本実施例は、慣用的直接圧縮および湿式造粒工程を好ましい加工処理方法としての乾式造粒と比較する。二元性および三元性希釈剤処方物を用いて、乾式造粒加工を提示する。
乾式造粒:
以下の成分をビンブレンダーに付加した。薬剤は賦形剤間に層化した:
【0093】
【表1】

【0094】
混合物を30分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムを混合物に付加し、次に3分間混ぜ合わせた。回転圧30 kg/cm2、回転速度4 rpmおよび刃先速度15 rpmで(TF−ミニローラー圧縮機(Vector Corp., Marion, IAから入手可能)を用いて)、滑化配合物をローラー圧縮してリボンを生成した。リボンを、20メッシュスクリーン(Vector Rotary造粒機)を通して粉砕して、造粒物を生成した。造粒物を10分間混ぜ合わせた。リン酸マグネシウムの第二部分を造粒物に付加し、3分間混ぜ合わせた。最終配合物を、5/16インチ標準円形凹形パンチを装備したKilian T100錠剤成形プレス機(Kilian & Co. Inc., Horsham, PA)を用いて、200 mg錠剤に圧縮した。
【0095】
直接圧縮(比較工程)
二元性希釈剤処方物(すなわち微晶質セルロースおよびリン酸二カルシウム)を、下記のレベルで調製した:
1−L−酒石酸塩 8.68 g
微晶質セルロース 621.27 g
二塩基性リン酸カルシウム 333.30 g
クロスカルメロースナトリウム 20.00 g
二酸化ケイ素(コロイド) 5.00 g
【0096】
2つの異なる配合物を調製し、「賦形剤前配合物」および「活性物質前配合物」として言及した。「賦形剤前配合物」は微晶質セルロース、二酸化ケイ素およびクロスカルメロースで構成された。これらの成分をVブレンダーに付加し、20分間混ぜ合わせた。活性物質前配合物は、薬剤ならびに半量のリン酸二カルシウムで構成された。活性物質前配合物成分をVブレンダーに付加し、30分間混ぜ合わせて、取り出した。半量の「賦形剤前配合物」を適切なサイズのブレンダーに付加し、その後、全「活性物質前配合物」を付加した後、20分間混ぜ合わせた。リン酸二カルシウムの第二部分を、「活性物質前配合物」を混合するために用いた空のブレンダーに付加し、5分間混合した。これと「賦形剤前配合物」の第二半分を、活性物質を含有するブレンダーに付加した。混合物を20分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウム(5.00 g)を混合物に付加し、次に5分間混ぜ合わせた。最終配合物を、5/16インチ標準円形凹形パンチを装備したKilian T100錠剤成形プレス機(Kilian & Co. Inc., Horsham, PA)を用いて、200 mg錠剤に圧縮した。
【0097】
湿式造粒(比較処方物および工程)
2つの異なる造粒剤、例えば水およびイソプロピルアルコールを用いて、湿式造粒加工処理を評価した。造粒剤の各々に関して調製した処方物を以下に列挙する:
【0098】
【表2】

【0099】
処方物中の不活性成分(上記)である造粒剤(水またはイソプロピルアルコール)を高剪断ブレンダーに付加し、100 rpmの撹拌羽根速度で1分間、乾燥混合した。賦形剤配合物の半分をボウルから取り出して、1−L−酒石酸塩の全量をブレンダーに付加し、取り出した配合物を被せた。この配合物を、100 rpmで1分間混合した。混合し続けながら、1000 rpmの細断機速度で300 rpmの撹拌羽根速度で、造粒剤を1分間に亘って付加した。水またはイソプロピルアルコールの付加後、湿潤造粒物をさらに15秒間混合した。乾燥造粒物を、0.050インチスクリーンおよび1770 rpmの円縁撹拌羽根を装備したコニカルミル(Comil、Quadro Engineering, Inc., Waterloo, Ontario, Canada)により粉砕した。コロイド二酸化ケイ素をこの造粒物に付加し、Vブレンダー中で20分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムをブレンダーに付加し、5分間混ぜ合わせた。最終配合物を、11/32インチ標準円形凹形パンチを装備したKilian T100錠剤成形プレス機(Kilian & Co. Inc., Horsham, PA)を用いて、300 mg錠剤に圧縮した。
【0100】
直接圧縮および乾式造粒法の配合物均一性を、以下で比較する。バッチは、同一入来バルク薬剤物質ロット、薬剤配合量(0.868%)および錠剤サイズ(200 mg)を利用した。効能および変動性データを、直接圧縮および乾式造粒法に関して、下記の表5−1に要約する。配合物均一性に及ぼす処方物の乾式造粒の影響は、配合物変動性における8.0%から1.8%RSDへの低減により実証される。
【0101】
【表3】

【0102】
錠剤を直接圧縮する前の最終配合物効能における高変動性(8%RSD)は、好ましい方法として乾式造粒を選択するための基礎であった。
【0103】
造粒配合物および錠剤効能および変動性に関して、製造実績により湿式および乾式造粒方法を比較した(相対標準偏差(%)または%RSD)。これらのバッチは、同一入来バルク薬剤物質ロット、薬剤配合量(0.57%)および錠剤サイズ(300 mg)を利用した。効能および変動性データを、ここで評価するこれら3つの造粒法に関して、下記の表6−2に要約する。
【0104】
【表4】

【0105】
造粒物および錠剤の効能値は、造粒剤として水を用いた湿式造粒法に関して意図された100%に最も近い。乾式造粒およびイソプロピルアルコールを用いる湿式造粒法は、同様の製造実績結果を生じた。
【0106】
下記の表6−3は、6週間、促進条件で貯蔵し、湿式および乾式造粒法に関してHPLCにより分析した錠剤に関する安定性結果を要約した。
【0107】
【表5】

【0108】
造粒剤として水を用いる湿式造粒は、1−L−酒石酸塩に関して無水物状態から水和物状態に転化するために物理的に不安定である、ということが判明した。水和物はその後、乾燥段階中に失われて、無水物剤形を生成した。水を用いた湿式造粒および乾燥工程中のこれらの物理的安定性変化は、好ましい方法の選択に役立った。乾式造粒およびイソプロピルアルコールを用いる湿式造粒は、1−L−酒石酸塩錠剤のための好ましい加工処理方式である。最低総不純物レベルを生じた方法は乾式造粒で、次が水を用いた湿式造粒、次いでイソプロピルアルコールを用いた湿式造粒であった。
【0109】
したがって安定性、配合物均一性および製造実績に基づいて1−L−酒石酸塩の錠剤を製造するためのもっとも好ましい造粒方法は、乾式造粒である。
【0110】
実施例7
錠剤安定性に基づいた希釈剤選択
化学的安定性および製造実績に基づいて、1−L−酒石酸塩錠剤の製造に用いる希釈剤を選択した。好ましい乾式造粒加工処理を用いて3つの希釈剤(リン酸二カルシウム、微晶質セルロースおよびマンニトール)を評価しが、2つ(二元性)または3つ(三元性)の希釈剤が処方物中に含まれた。
【0111】
【表6】

【0112】
【表7】

【0113】
下記の表7−1は、三元性または二元性(リン酸二カルシウムなし)処方物を用いた乾式造粒加工処理により調製し、促進条件で3ヶ月間貯蔵し、HPLCにより分析した錠剤に関する安定性結果を要約する。
【0114】
【表8】

【0115】
最低総不純物レベルを生じた乾式造粒により加工処理した処方物は、リン酸二カルシウムを利用した。乾式造粒により調製した好ましい処方物は、リン酸二カルシウム、微晶質セルロースおよびマンニトールの二元性または三元性希釈剤を含有する。乾式造粒により調製されるもっとも好ましい処方物は、主要希釈剤の1つとしてリン酸二カルシウムを含有する。
【0116】
下記の表7−2は、好ましい乾式造粒法を用いて、三元性希釈剤処方物に対して、3つの二元性処方物に関して、促進条件で6〜12週間貯蔵し、HPLCにより分析した錠剤に関する安定性結果を要約する。
【0117】
【表9】

【0118】
ラクトース/リン酸二カルシウム二元性希釈剤処方物は、促進温度/湿度条件下で低安定性であることが判明した。微晶質セルロース/リン酸二カルシウムおよびマンニトール/リン酸二カルシウム二元性錠剤は、図7−2に示したように、元の三元性処方物と同様の総不純物レベルを示した。したがって三元性ならびにMCC/Dicalおよびマンニトール/Dical二元性系は、本発明の好ましい実施形態である。
【0119】
実施例8
錠剤製造実績および内容物均一性に基づいた希釈剤選択
化学的安定性のみに基づいて、実施例7に挙げた2つの二元性処方物(MCC/Dicalおよびマンニトール/Dical)は、1−L−酒石酸塩の適切な処方物である。より好ましい組成物を選択するために、5/16インチSRC工具の3つの場所を有するKilian T100プレス機で、製造査定を実施した。錠剤を、4、8、12、16および20 kN力で圧縮し、各条件での重量、厚み、高度、崩壊時間および脆砕性%に関して試験した。それらのデータを、以下の表8−1に列挙する。
【0120】
【表10】

【0121】
マンニトール/リン酸二カルシウム二元性処方物は重度のキャップ形成問題を示し、3 kPより高い硬度に錠剤成形できなかったが、一方、このサイズ工具に関する目標範囲は6〜9
kPである。これらの硬度では、錠剤は、高脆砕性%(0.2%未満が望ましい)に基づいて、不十分な機械的全体性を有した。あるいはMCC/リン酸二カルシウム二元性錠剤は、目標範囲内の硬度および脆砕性値を有する錠剤を生じた。したがって製造実績に基づいたより好ましい二元性処方物は、微晶質セルロース/リン酸二カルシウムである。三元性処方物は安定性および製造を基礎にして好ましい処方物であり、そして本発明の一実施形態でもある。
【0122】
実施例9
錠剤安定性に基づいた崩壊剤選択
崩壊剤としてグリコール酸デンプンナトリウム(SSG)を含有する錠剤を純度に関して分析し、クロスカルメロースナトリウム(CS)含有錠剤と比較した。錠剤を、5℃/75%RH、40℃/75%RHおよび50℃/20%RHで、60 ccHDPE/HIS瓶中に入れて、6および12週目に分析した。6および12週純度結果を、表9−1に示す。
【0123】
【表11】

【0124】
SSG錠剤の分解(0.3〜1.1%)は、崩壊剤としてCSを含有する錠剤に関して観察された値より大きい。これらのCS含有錠剤は、6または12週目の任意の条件で錠剤中にラクトースが存在しない場合、0.3%の総分解を決して超えなかった。この理由のために、グリコール酸デンプンナトリウムと比較した場合の化学的安定性改善に基づいて、1−L−酒石酸塩錠剤のためのより望ましい崩壊剤として、クロスカルメロースナトリウムが選択されている。
【0125】
実施例10
配合物の粘着性を低減するために混入される滑沢剤(glidant)
流動特性を特性化するための標準粉末なだれ試験を用いて、錠剤処方物へのglidant(この場合はコロイド二酸化ケイ素)付加の影響を評価した。この評価に関しては、薬剤投入量が1%未満であるため、プラセボ二元性処方物を用いた。処方物を表10−1に列挙する。実施例6に記載した乾式造粒法により、これらの錠剤を調製した。
【0126】
【表12】

【0127】
分析のための各減摩段階直前に、配合物および造粒物をサンプリングした。粘着性、流動変動性および粒子サイズを評価した。その結果を表10−2に示す。2つのロットの造粒物粒子サイズは非常に類似しており、したがって、粉末なだれ結果に及ぼす作用を有さないと思われる。二酸化ケイ素の存在により、粘着性および流動変動性が改善された。その付加は、配合物に関して「低い」から「非常に低い」に、造粒物に関しては「高い」から「低い」に粘着性等級を低減した。0.50%に酸化ケイ素の存在は、造粒物流動変動性部門も中等度から低いに低減した。
【0128】
【表13】

【0129】
錠剤成形中、圧縮力の一関数として突出力をモニタリングした。表10−3は、0および0.5%二酸化ケイ素処方物に関する5〜20
kNの範囲の圧縮力に起因する突出力を列挙する。
【0130】
【表14】

【0131】
0.50%Cab−O−Silを含有する錠剤は、ほとんどのこの圧縮範囲に亘って、わずかに低い突出力を示した。粘着性、流動変動性および突出力低減の正の属性に基づいて、glidantを含有する1−L−酒石酸塩錠剤はより好ましい処方物である。
【0132】
実施例11
錠剤安定性に基づいた皮膜コーティング選択
促進挑戦条件を用いて、化学的安定性に基づいて、1−L−酒石酸塩錠剤のための好ましい白色皮膜コーティングを選択した。4つのオパドライOpadry白色皮膜コーティング系を、1つまたは複数の好ましい乾式造粒錠剤処方物上に適用した。
【0133】
回転圧密前に幾何級数的希釈配合スキームを用いてコア錠剤を作ったが、それらは以下に列挙した構成成分を含有した:
1−L−酒石酸塩 10.62 g
微晶質セルロース 744.42 g
二塩基性リン酸カルシウム 399.96 g
クロスカルメロースナトリウム 24.00 g
二酸化ケイ素(コロイド) 6.00 g
ステアリン酸マグネシウム 9.00 g
ステアリン酸マグネシウム 6.00 g
【0134】
2つの異なる配合物を調製し、「賦形剤前配合物」および「活性物質前配合物」として言及した。「賦形剤前配合物」は微晶質セルロース、二酸化ケイ素およびクロスカルメロースで構成された。これらの成分をVブレンダーに付加し、20分間混ぜ合わせた。活性物質前配合物は、薬剤ならびに半量のリン酸二カルシウムで構成された。活性物質前配合物成分をVブレンダーに付加し、30分間混ぜ合わせて、取り出した。半量の「賦形剤前配合物」を適切なサイズのブレンダーに付加し、その後、全「活性物質前配合物」を付加した後、20分間混ぜ合わせた。リン酸二カルシウムの第二部分を、「活性物質前配合物」を混合するために用いた空のブレンダーに付加し、5分間混合した。これと「賦形剤前配合物」の第二半分を、活性物質を含有するブレンダーに付加した。混合物を20分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムの第一部分を混合物に付加し、次に5分間混ぜ合わせた。滑化配合物を、回転圧30 kg/cm2、回転速度4 rpmおよび刃先速度15 rpm(VectorTF−ミニローラー圧縮機)でローラー圧縮してリボンを生成した。リボンを、20メッシュスクリーン(Vector回転造粒機)を通して粉砕して、造粒物を生成した。造粒物を10分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムの第二部分を造粒物に付加し、5分間混ぜ合わせた。最終配合物を、5/16インチ標準円形凹形パンチを装備したKilian T100錠剤成形プレス機(Kilian & Co. Inc., Horsham, PA)を用いて、200 mg錠剤に圧縮した。
【0135】
4つのコーティング系の定性的組成を、表11−1に列挙する。ロット番号Aとして示したコーティング組成物は、ラクトース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはHPMC、二酸化チタンおよびトリアセチンで構成された。非ラクトースコーティング系、B〜D間の主な差異は、ポリマーの種類(ヒドロキシメチルセルロースまたはHPMC対ポリビニルアルコールまたはPVA)および可塑剤の種類(ポリエチレングリコールまたはPEGおよびトリアセチン)であった。PVAコーティングは、タルクも含有した。最終剤形を被覆して、4重量%白色コーティングおよび0.5重量%透明コーティングとした。皮膜被覆錠剤を60 ccHDPE/HIS瓶中に入れて、5℃および70℃/75%RHで10日間試験した後、純度に関して評価した。非被覆コア錠剤も比較のために評価した。プラセボ錠剤を調製し、対照として初回時点に関する純度に関して分析した。純度結果を、表11−2に示す。
【0136】
【表15】

【0137】
【表16】

【0138】
HPMCを含有する非ラクトースベースの皮膜被覆錠剤(BおよびC)は、ラクトース/HPMC(A)またはPVA(D)皮膜被覆錠剤より化学的に安定であることが判明した。HPMCロットの全体的分解は、PEGおよびトリアセチン可塑剤に関してそれぞれ0.4〜1.2%および0.5〜1.0%の範囲であることが判明した。一方で、ラクトース対照およびPVAロットに関する全体的分解は、それぞれ3.5%および2.9%と高かった。化学的安定性改善に基づいて、好ましい皮膜コーティングは、それぞれ処方物BおよびCにおいて、HPMC、二酸化チタンおよびトリアセチンまたはPEGで構成される。
【0139】
【表17】

【0140】
実施例12
乾式造粒の工程−内容物均一性
本実施例は、配合物および錠剤効能および均一性を達成するためのより好ましい配合加工処理を実証する。Vブレンディング(幾何級数的希釈を用いた場合と用いない場合)、ビンブレンディング(バッフルを用いた場合と用いない場合、ならびに垂直回転対傾斜回転)および高剪断混合を評価した。処方物は、以下に列挙したように、リン酸二カルシウムおよび微晶質セルロースの二元性希釈剤系から成っていた:
【0141】
【表18】

【0142】
幾何級数的希釈を用いたVブレンディング
コア錠剤に関する処方物および工程説明は、実施例11に提示されている。
一段階Vブレンディング
混合物(滑剤含有せず)を30分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムの第一部分を混合物に付加し、5分間混ぜ合わせた。滑化配合物を、回転圧30 kg/cm2、回転速度4 rpmおよび刃先速度15 rpm(VectorTF−ミニローラー圧縮機)でローラー圧縮してリボンを生成した。リボンを、20メッシュスクリーン(Vector回転造粒機)を通して粉砕して、造粒物を生成した。造粒物を10分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムの第二部分を造粒物に付加し、5分間混ぜ合わせた。最終配合物を、5/16インチ標準円形凹形パンチを装備したKilian T100錠剤成形プレス機(Kilian & Co. Inc., Horsham, PA)を用いて、200 mg錠剤に圧縮した。
【0143】
ビンブレンディング
成分(滑剤含有せず)を、中間に層化した薬剤とともに、ビンブレンダーに付加した。ブレンダー形状(バッフル有りまたはなし、垂直または傾斜回転)は、据置き式であった。混合物を30分間混ぜ合わせ、ステアリン酸マグネシウムの第一部分を付加し、5分間混ぜ合わせた。滑化配合物を、回転圧30 kg/cm2、回転速度4 rpmおよび刃先速度15 rpm(VectorTF−ミニローラー圧縮機)でローラー圧縮してリボンを生成した。リボンを、20メッシュスクリーン(Vector回転造粒機)を通して粉砕して、造粒物を生成した。造粒物を10分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムの第二部分を造粒物に付加し、5分間混ぜ合わせた。最終配合物を、5/16インチ標準円形凹形パンチを装備したKilian T100錠剤成形プレス機(Kilian & Co. Inc., Horsham, PA)を用いて、200 mg錠剤に圧縮した。
【0144】
高剪断ブレンディング
成分(滑剤含有せず)を、中間に層化した薬剤とともに、高剪断ブレンダーに付加した。混合物を、200 rpmの撹拌羽根速度で、0 rpmの細断機速度で10分間混ぜ合わせた。滑剤の第一部分を付加し、5分間混ぜ合わせた。滑化配合物を、回転圧30 kg/cm2、回転速度4 rpmおよび刃先速度15 rpm(VectorTF−ミニローラー圧縮機)でローラー圧縮してリボンを生成した。リボンを、20メッシュスクリーン(Vector回転造粒機)を通して粉砕して、造粒物を生成した。造粒物を10分間、Vブレンダー中で混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムの第二部分を造粒物に付加し、5分間混ぜ合わせた。最終配合物を、5/16インチ標準円形凹形パンチを装備したKilian T100錠剤成形プレス機(Kilian & Co. Inc., Horsham, PA)を用いて、200 mg錠剤に圧縮した。
【0145】
造粒物および錠剤の効能および均一性結果を、表12−1に列挙する。一段階Vブレンディングおよび高剪断ブレンディング法は、最低造粒物効能値を生じた。より好ましいブレンディング方法は、幾何級数的希釈を用いたブレンディングならびに造粒物および錠剤の効能および均一性結果に基づいたバッフルおよび回転の任意の形状を有するビンブレンディングである。低撹拌羽根速度で運転する高剪断ブレンダー(このブレンダーでは低〜中等度剪断応力)も、本発明のより好ましい実施形態である。
【0146】
【表19】

【0147】
実施例13
造粒物内容物均一性に基づいた希釈剤選択
造粒物および錠剤の効能および均一性に基づいて、幾何級数的希釈ブレンディング法のために「活性物質前配合物」中に用いられる好ましい希釈剤を選択した。処方物内の1−L−酒石酸塩の混合に際して役立てるために、それらの担体賦形剤特性に関して、2つの主要希釈剤(リン酸二カルシウムおよびマンニトール)を調べた。三元性錠剤処方物(実施例7と同一組成)に用いられる成分およびレベルを、実施例11に記載した幾何級数的希釈スキームに従って混ぜ合わせた。「活性物質前配合物」は、半分のマンニトール(13A)またはリン酸二カルシウム(13B)を利用した。この実施例では、薬剤をジェット粉砕して、元の平均粒子サイズのおよそ半分にした後、賦形剤を用いて加工処理した。
【0148】
【表20】

【0149】
各錠剤処方物に関して、2つの異なる配合物を調製し、「賦形剤前配合物」および「活性物質前配合物」として言及した。「賦形剤前配合物」は微晶質セルロース、二酸化ケイ素、クロスカルメロースおよびリン酸二カルシウムまたはマンニトールで構成された。これらの成分をVブレンダーに付加し、20分間混ぜ合わせた。「活性物質前配合物」は、薬剤ならびに半量のマンニトール(12A)またはリン酸二カルシウム(12B)で構成された。「活性物質前配合物」成分をVブレンダーに付加し、30分間混ぜ合わせて、取り出した。半量の「賦形剤前配合物」を適切なサイズのブレンダーに付加し、その後、全「活性物質前配合物」を付加した後、20分間混ぜ合わせた。リン酸二カルシウムの第二部分を、「活性物質前配合物」を混合するために用いた空のブレンダーに付加し、5分間混合した。これと「賦形剤前配合物」の第二半分を、活性物質を含有するブレンダーに付加した。混合物を20分間混ぜ合わせた。ステアリン酸マグネシウムの第一部分を混合物に付加し、次に5分間混ぜ合わせた。滑化配合物を、回転圧30 kg/cm2、回転速度4 rpmおよび刃先速度15 rpm(VectorTF−ミニローラー圧縮機)でローラー圧縮してリボンを生成した。リボンを、20メッシュスクリーン(Vector回転造粒機)を通して粉砕して、造粒物を生成した。ステアリン酸マグネシウムの第二部分を造粒物に付加し、5分間混ぜ合わせた。最終配合物を、11/32インチ標準円形凹形パンチを装備したKilian T100錠剤成形プレス機(Kilian & Co. Inc., Horsham, PA)を用いて、300 mg錠剤に圧縮した。最終造粒物および錠剤の効能および変動性(%RSDに換算して)結果を、表13−1に列挙する。
【0150】
【表21】

【0151】
造粒物効能値は、マンニトールおよびリン酸二カルシウム「活性物質前配合物」希釈剤の両方に関して同様である。しかしながら錠剤効能値は、幾何級数的希釈ブレンディング法に用いられる「活性物質前配合物」としてマンニトールの代わりにリン酸二カルシウムを用いた場合、95.1%から97.2%に増大した。したがって幾何級数的希釈ブレンディング法の「活性物質前配合物」に用いられるより好ましい希釈剤は、リン酸二カルシウムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5,8,14−トリアザテトラ−シクロ[10.3.1.02,11.04,9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタエンまたはその製薬上許容される塩、ならびに0.1〜1 mgA/時間の速度で前記被験者に前記化合物または塩を投与するための手段を含む被験者への投与に適した制御放出剤形であり、前記手段が被覆錠剤を含む、制御放出剤形。
【請求項2】
5,8,14−トリアザテトラ−シクロ[10.3.1.02,11.04,9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタエンまたはその製薬上許容される塩、ならびに0.1〜1 mgA/時間の速度で前記被験者に前記化合物または塩を投与するための手段を含む被験者への投与に適した制御放出剤形であり、前記手段が、マトリックス錠剤、多粒子または被覆多粒子を含む、制御放出剤形。
【請求項3】
前記マトリックス錠剤または多粒子が親水性マトリックスを含む、請求項2記載の制御放出剤形。
【請求項4】
前記製薬上許容される塩がL−酒石酸またはクエン酸塩である、請求項1、2または3に記載の制御放出剤形。
【請求項5】
前記被験者がヒトである、請求項1、2、3または4に記載の制御放出剤形。
【請求項6】
被験者におけるニコチン中毒を低減し、あるいは喫煙の中止または減少を助けるために使用される、請求項1、2、3、4または5に記載の制御放出剤形。
【請求項7】
炎症性腸疾患、潰瘍性結腸炎、壊疽性膿皮症、クローン病、過敏性腸症候群、痙攣性失調症、慢性疼痛、急性疼痛、セリアックスプルー、嚢炎、血管収縮、不安、パニック障害、うつ病、双極性障害、自閉症、睡眠障害、時差ぼけ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認知機能不全、高血圧症、過食症、拒食症、肥満症、心不整脈、胃酸分泌過多、潰瘍、褐色細胞腫、進行性核上性麻痺、化学物質依存および中毒、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸塩、オピオイドまたはコカインへの依存または中毒、頭痛、片頭痛、卒中、外傷性脳損傷(TBI)、強迫性障害(OCD)、精神病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネシア、多動症、失読症、精神分裂病、多重梗塞性痴呆症、加齢性認知減退、癲癇、小発作性癲癇、アルツハイマー型老人性痴呆(AD)、パーキンソン病(PD)、注意力欠損高活動性異常(ADHD)およびツレット症候群から選択される障害または状態の治療のために使用される、請求項1、2、3、4または5に記載の制御放出剤形。


【公開番号】特開2009−108064(P2009−108064A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278533(P2008−278533)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【分割の表示】特願2003−546938(P2003−546938)の分割
【原出願日】平成14年11月4日(2002.11.4)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】