説明

6−ブロモ−2−オキシインドール又は6−ヨード−2−オキシインドールの製造方法

【課題】有機合成中間体及び医薬中間体として有用な、6−ブロモ−2−オキシインドールまたは6−ヨード−2−オキシインドールを高収率並びに高純度で得ることができる、工業的に利用可能な製造方法を提供する。
【解決手段】2−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステルまたは2−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステルを有機酸の存在下、金属で還元環化することで6−ブロモ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルまたは6−ヨード−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを合成する工程、及び、該6−ブロモ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルまたは6−ヨード−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを脱炭酸する工程を含む6−ブロモ−2−オキシインドールまたは6−ヨード−2−オキシインドールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステル又は2−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステルから6−ブロモ−2−オキシインドール又は6−ヨード−2−オキシインドールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲノオキシインドールは、有機合成中間体として広く利用されている。特に、臭素またはヨウ素で置換されたオキシインドールはハロゲン部位の反応性が高いことから有機合成、特に医薬等の合成の中間体として非常に有用である。
【0003】
6−ブロモ−2−オキシインドールを製造する方法としては、m−ブロモアニリンとブロモ酢酸エチルを出発原料として、6工程で6−ブロモ−2−オキシインドールを合成する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながらこの方法では、得られる化合物が6−ブロモ体と4−ブロモ体の混合物であること、工程が煩雑であること、収率が低いことから工業的に満足できる製造方法ではない。
【0004】
また、4−メチル−3−ニトロアニリンを出発原料として、4工程で6−ブロモ−2−オキシインドールを合成する方法が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながらこの方法では、使用している原料が高価であり、廃棄物も多くなる為、工業的に満足できる製造方法ではない。
【0005】
6−ヨード−2−オキシインドールを製造する方法としては、6−ブロモ−2−オキシインドールを出発原料として、ハロゲン交換を行うことで6−ヨード−2−オキシインドールを合成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながらこの方法では、前述したように、原料の6−ブロモ体の合成が困難であるという問題がある。
【0006】
さらに、2−(4−クロロ−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステルをメタノール溶媒中でスズ触媒存在下、塩酸を作用させて6−クロロ−2−オキシインドールを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2には、ブロモ体やヨード体についての言及はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/008985号パンフレット
【特許文献2】インド特許公開第2004MU00342号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Combinatorial Chemistry,9(4),566−568;2007
【非特許文献2】Chemical & Pharmaceutical Bulletin,33(4),1414−18;1985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、特許文献2に記載されたクロロ体の製造方法を、対応するブロモ体またはヨード体に適用した場合、塩酸と共存するスズ触媒の還元力の強さから脱ブロモ又は脱ヨード化反応が優先して進行するため、目的物の収率並びに純度が低下してしまうという問題を見出した。
したがって、本発明の課題は、簡便な方法にて、2−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステル又は2−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステルから、6−ブロモ−2−オキシインドール又は6−ヨード−2−オキシインドールを高収率並びに高純度で得る、工業的に利用可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、2−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステル又は2−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロン酸ジエステルを有機酸の存在下、金属で還元環化することで6−ブロモ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステル又は6−ヨード−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを合成し、次いで、酸を用いてこのエステル化合物を脱炭酸することにより、高収率・高純度で目的物が得られることを見出した。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
[1]一般式(1):
【化1】


(式中R及びR2は、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。式中Xは、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で示される化合物を有機酸の存在下、金属で還元環化することで、一般式(2):
【化2】


(式中R及びXは、前記と同義である)
で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを生成させる第1工程、及び、該6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを酸を用いて脱炭酸させる第2工程を含んでなることを特徴とする、一般式(3):
【化3】


(式中Xは前記と同義である)
で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【0012】
[2]前記第1工程における有機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び吉草酸からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の有機酸である[1]記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【0013】
[3]前記第1工程における金属が、鉄、亜鉛、ニッケル及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の金属である[1]または[2]記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【0014】
[4]前記第1工程における一般式(1)の化合物が、下記一般式(4):
【化4】


(式中Xは、前記と同義である)
で示されるジハロゲノニトロベンゼンと、下記一般式(5):
【化5】


(式中R及びRは、前記と同義である)
で示されるマロン酸ジエステルとを反応させて得られることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【0015】
[5]前記第1工程における一般式(1)の化合物が、過剰量で使用した一般式(5)で示されるマロン酸ジエステルに溶解して存在することを特徴とする[4]記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
[6]前記第2工程における酸が、塩酸、硫酸、硝酸及び酢酸からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の酸である[1]〜[5]のいずれか記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製法によれば、有機合成、特に医薬等の合成の中間体として有用な6−ブロモ−2−オキシインドール化合物又は6−ヨード−2−オキシインドール化合物を工業的に利用可能な方法で、高収率かつ高純度で得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明は、一般式(1):
【化6】


(式中R及びR2は、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。式中Xは、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で示される化合物を有機酸の存在下、金属で還元環化することで、一般式(2):
【化7】


(式中R及びXは、前記と同義である)
で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを生成させる第1工程、及び、該6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを酸を用いて脱炭酸させる第2工程を含む製法により、一般式(3):
【化8】


(式中Xは、前記と同義である)
で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物を得るものである。
【0019】
<第1工程>
本発明の第1工程は、一般式(1)で示される化合物から一般式(2)で示される環化中間体を得る工程である。
本発明の第1工程で用いる、一般式(1)で示される化合物の製法は特に限定されず、公知のいずれかの方法により合成することができる。例えば、下記一般式(4):
【化9】


(式中Xは、前記と同義である)
で示されるジハロゲノニトロベンゼンと、下記一般式(5):
【化10】


(式中R及びRは、前記と同義である)
で示されるマロン酸ジエステルとを、溶媒中、塩基の存在下、30〜60℃で、2〜24時間反応させることにより得ることができる。一般式(4)で示される化合物に対して、一般式(5)で示されるマロン酸ジエステルを過剰量で使用するのが好ましく、この場合には、一般式(1)の化合物及び一般式(5)のマロン酸ジエステルの混合物が得られ、この混合物は、一般式(1)の化合物が一般式(5)のマロン酸ジエステルに溶解した溶液で存在する。
【0020】
得られた溶液は、十分に水洗した後に、混合物の溶液として第1工程に用いることができる。また、得られた溶液から再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作により一般式(1)の化合物を単離して第1工程に使用してもよい。作業性を考慮すると、水洗した混合物の溶液を第1工程に用いることが好ましい。
【0021】
本発明の第1工程で用いる有機酸は、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸のような有機カルボン酸類;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類などが挙げられ、これらの化合物を単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。反応率の観点から、有機カルボン酸類が好ましく、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸が好ましい。
【0022】
前記有機酸の使用量は、一般式(1)で示される化合物に対して、0.1〜12重量倍であることが好ましく、反応率及び純度の観点から、3〜6重量倍の範囲であることがより好ましい。
【0023】
本発明の第1工程で用いる金属は、鉄、スズ、亜鉛などの金属粉末またはそれらの塩;白金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、銅などの遷移金属などが挙げられる。鉄、亜鉛、ニッケル及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の粉末又は塩を用いるのが好ましい。
【0024】
前記金属の使用量は、一般式(1)で示される化合物に対して、1〜900モル%であることが好ましく、反応率の観点から、200〜500モル%の範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明の第1工程における還元環化は、0〜120℃、好ましくは20〜70℃の温度で、10分〜6時間、好ましくは10分〜3時間反応することによって行うことができる。
【0026】
前記還元環化には、溶媒を使用してもよい。使用する溶媒は、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、所望する反応温度に応じて適宜選択される。単独で、又は2種類以上の溶媒を任意の割合で混合して用いてもよい。溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような非プロトン性極性溶媒などが使用できる。また、前記有機酸を溶媒として使用することもできる。溶媒の使用量は、一般式(1)の化合物に対して50〜1000重量%、好ましくは300〜600重量%である。
【0027】
本発明の第1工程により得られた、一般式(2)で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを含む反応溶液は、通常、そのまま本発明の第2工程に用いることができる。場合によっては、前記反応溶液から金属を分離後、一般式(2)で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作により単離して第2工程に用いることもできる。作業性を考慮すると、得られた6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルの反応溶液をそのまま本発明の第2工程に用いることが好ましい。
【0028】
<第2工程>
本発明の第2工程は、一般式(2)の化合物を酸を用いて脱炭酸して、一般式(3)の6−ハロゲノ−2−オキソインドール化合物を得る工程である。本発明の第2工程は、一般的に行われる酸による脱炭酸反応であれば特に限定されない。
【0029】
本発明の第2工程で用いる酸としては、無機酸又は有機酸のいずれも使用できる。酸として、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等が挙げられ、これらの酸を単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。作業性や入手の容易さから、塩酸が好ましい。
【0030】
前記酸の使用量は、一般式(2)で示される化合物に対して、1〜2000モル%であることが好ましく、反応率及び反応時間の観点から、200〜900モル%の範囲であることがより好ましい。
【0031】
本発明の第2工程には、溶媒を使用してもよい。使用する溶媒は、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、所望する反応温度に応じて適宜選択される。単独で、又は2種類以上の溶媒を任意の割合で混合して用いてもよい。溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような非プロトン性極性溶媒などが使用できる。また、第1工程における有機酸を第2工程の溶媒として使用することもできる。溶媒の使用量は、一般式(2)の化合物に対して50〜1000重量%、好ましくは300〜600重量%である。
【0032】
本発明の第2工程における脱炭酸は、0〜150℃、好ましくは50〜80℃の温度で、10分〜24時間、好ましくは10分〜3時間反応することによって行うことができる。
【0033】
上記反応の終了後、得られた反応液を室温まで冷却した後、水などの貧溶媒を加えることで固体を析出させ、これを濾別することで一般式(3)で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の粗生成物を得ることができる。
【0034】
得られた粗生成物が金属を含有している場合は、これを除去する工程を設けてもよい。具体的には、粗生成物をアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような非プロトン性極性溶媒に溶解し、不溶物を濾別する。得られた濾液を十分な量の水に加え、結晶を析出させ、これを濾別することで一般式(3)で示される6−ハロゲノオキシインドールを得ることができる。
【0035】
本発明の第2工程により得られた、一般式(3)で示される6−ハロゲノオキシインドールは、例えば、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によりさらに分離・精製してもよい。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明を具体的な実施例により示すが、本発明は実施例の内容に制限されるものではない。
【0037】
合成例及び実施例で得られた化合物の純度は高速液体クロマトグラフィーを用いてピーク面積より測定した。測定条件は以下の通りである。
試料調製 :試料1.0mgをアセトニトリル1.0mLに溶解
検出器 :SPD−20A(株式会社島津製作所製:測定波長254nm)
オーブン :CTO−20A(株式会社島津製作所製)
ポンプ :LC−20AD(株式会社島津製作所製)
カラム :ODS−80TM(東ソー株式会社製)
溶離液 :アセトニトリル:水:リン酸=400:600:0.5
カラム温度 :40℃
流速 :1.0mL/min
【0038】
[合成例1]
ジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネート(一般式(1)において、X=I、R=R=エチル基である化合物)の合成
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた3Lのガラス製フラスコに、アルゴン雰囲気下、N−メチルピロリドン323.4g及び62.7重量%水素化ナトリウム(ケイ・アイ化成株式会社製、流動パラフィン他37.3重量%含有)64g(1.67mol)を加え、次いで、室温で攪拌しながら、純度99%のマロン酸ジエチル269g(1.68mol)を滴下した。滴下終了後、内温60〜70℃で1時間保持し、1,4−ジヨード−2−ニトロベンゼン168g(0.45mol)をN−メチルピロリドン206gに溶かした溶液を加え、17時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、トルエン730mlを加え、攪拌しながら酢酸75.6g(1.26mol)を滴下し、水660mlを加えた。次いで、有機層を分離し、十分な量の水を加えて洗浄した。得られた有機層から減圧下でトルエンを留去し、濃縮液を流動パラフィン層と分離させて純度97%のジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネートのマロン酸ジエチル溶液300gを得た。ジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネートの純度は、UV−VIS検出器(SPD−20A:測定波長254nm)によるものである。マロン酸ジエチルは、この測定波長において吸収を有しないので、マロン酸ジエチルの存在は、ジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネートの純度に影響しない。不純物は、原料である1,4−ジヨード−2−ニトロベンゼンや、これからヨードが脱離したものなどである。
【0039】
[実施例1]
6−ヨード−2−オキシインドールの合成
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた3Lのガラス製フラスコに、合成例1で得られたジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネートのマロン酸ジエチル溶液300g、酢酸1120g及び鉄粉111.8g(2.00mol)を加えた。次いで、40〜50℃に加熱し、3時間反応させて、中間体を合成した。反応終了後、70℃まで加熱し、35重量%塩酸417g(4.00mol)を滴下し、3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水900mlを加え、析出している固体を濾別した。濾別して得られた固体をN−メチルピロリドン1100gに溶解させ濾過し、褐色の濾液を得た。
【0040】
更に、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた5Lのガラス製フラスコに、水2500mlを加え、室温で攪拌しながら、濾液を滴下した。次いで、析出してきた固体を濾過し、乾燥させ、純度99%の6−ヨード−2−オキシインドール98gを得た(収率84.3%)。
【0041】
[実施例2]
6−ヨード−2−オキシインドールの合成
合成例1で得られたジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネートのマロン酸ジエチル溶液8.34gを減圧下で濃縮し、過剰のマロン酸ジエチルを留去して、ジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネート濃縮液を得た。得られた濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル60(メルクジャパン株式会社製)、展開溶媒:トルエン/メタノール=50/1(容量比))で精製し、純度97%のジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネート4.6gを得た。
【0042】
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた50mLのガラス製フラスコに、得られたジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネート2.0g、酢酸12.2g及び鉄粉1.22g(0.02mol)を加えた。次いで、40〜50℃に加熱し、3時間反応させて、中間体を合成した。反応終了後、70℃まで加熱し、35重量%塩酸4.58g(0.04mol)を滴下し、3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水9.9mlを加え、析出している固体を濾別した。濾別して得られた固体をN−メチルピロリドン13.7gに溶解させ濾過し、褐色の濾液を得た。
【0043】
更に、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた100mLのガラス製フラスコに、水27mlを加え、室温で攪拌しながら、濾液を滴下した。次いで、析出してきた固体を濾過し、乾燥させ、純度99%の6−ヨード−2−オキシインドール1.08gを得た(収率85.0%)。
【0044】
[合成例2]
ジエチル−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)マロネート(一般式(1)において、X=Br、R=R=エチル基である化合物)の合成
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた3Lのガラス製フラスコに、アルゴン雰囲気下、N−メチルピロリドン323.4g及び61.1重量%水素化ナトリウム(ケイ・アイ化成株式会社製、流動パラフィン他38.9重量%含有)を65.5g(1.67mol)加え、次いで、室温で攪拌しながら、純度99%のマロン酸ジエチル269g(1.68mol)を滴下した。滴下終了後、内温60〜70℃で1時間保持し、1,4−ジブロモ−2−ニトロベンゼン126g(0.45mol)をN−メチルピロリドン199gに溶かした溶液を加え、17時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、トルエン730mlを加え、攪拌しながら酢酸75.6g(1.26mol)を滴下し、水660mlを加えた。次いで、有機層を分離し、十分な量の水を加えて洗浄した。得られた有機層から減圧下でトルエンを留去し、濃縮液を流動パラフィン層と分離させて純度97%のジエチル−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)マロネートのマロン酸ジエチル溶液277gを得た。不純物は、原料である1,4−ジブロモ−2−ニトロベンゼンや、これからブロモが脱離したものなどである。
【0045】
[実施例3]
6−ブロモ−2−オキシインドールの合成
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた3Lのガラス製フラスコに、合成例2で得られたジエチル−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)マロネートのマロン酸ジエチル溶液276g、酢酸1120g及び鉄粉111.8g(2.00mol)を加えた。次いで、40〜50℃に加熱し、3時間反応させて、中間体を合成した。反応終了後、70℃まで加熱し、35重量%塩酸417g(4.00mol)を滴下し、3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水900mlを加え、析出している固体を濾別した。濾別して得られた固体をN−メチルピロリドン1100gに溶解させ濾過し、褐色の濾液を得た。
【0046】
更に、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた5Lのガラス製フラスコに、水2500mlを加え、室温で攪拌しながら、濾液を滴下した。次いで、析出してきた固体を濾過し、乾燥させ、純度99%の6−ブロモ−2−オキシインドール71.1gを得た(収率75.0%)。
【0047】
[比較例1]
6−ヨード−2−オキシインドールの合成
合成例1で得られたジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネートのマロン酸ジエチル溶液8.34gを減圧下で濃縮し、過剰のマロン酸ジエチルを留去して、ジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネート濃縮液を得た。得られた濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル60(メルクジャパン株式会社製)、展開溶媒:トルエン/メタノール=50/1(容量比))で精製し、純度97%のジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネート4.6gを得た。
【0048】
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた100mlのガラス製フラスコに、メタノール12.1g、純度97%のジエチル−(4−ヨード−2−ニトロフェニル)マロネート2.92g(0.007mol)、及びスズ2.49g(0.02mol)を加え室温で22時間攪拌した。次いで35重量%塩酸8.56gを加え、還流下、3時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、水9.74mlを加え、析出している固体を濾別した。濾別して得られた固体をN−メチルピロリドン10.1gに溶解させ濾過し、褐色の濾液を得た。
【0049】
更に、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた100mlのガラス製フラスコに、水20mlを加え、室温で攪拌しながら、濾液を滴下した。次いで、析出してきた固体を濾過し、乾燥させ、純度91%の6−ヨード−2−オキシインドール0.76gを得た(収率40.7%)。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の製法によれば、有機合成、特に医薬等の合成の中間体として有用な6−ブロモ−2−オキシインドール化合物又は6−ヨード−2−オキシインドール化合物を工業的に利用可能な方法で、高収率かつ高純度で得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化11】


(式中R及びR2は、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。式中Xは、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)で示される化合物を有機酸の存在下、金属で還元環化することで、一般式(2):
【化12】


(式中R及びXは、前記と同義である)
で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを生成させる第1工程、及び、該6−ハロゲノ−2−オキシインドール−3−カルボン酸エステルを酸を用いて脱炭酸させる第2工程を含んでなることを特徴とする、一般式(3):
【化13】


(式中Xは前記と同義である)
で示される6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【請求項2】
前記第1工程における有機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び吉草酸からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の有機酸である請求項1記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【請求項3】
前記第1工程における金属が、鉄、亜鉛、ニッケル及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の金属である請求項1または2記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【請求項4】
前記第1工程における一般式(1)の化合物が、下記一般式(4):
【化14】


(式中Xは、前記と同義である)
で示される1,4−ジハロゲノニトロベンゼンと、下記一般式(5):
【化15】


(式中R及びR2は、前記と同義である)
で示されるマロン酸ジエステルとを反応させて得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【請求項5】
前記第1工程における一般式(1)の化合物が、過剰量で使用した一般式(5)で示されるマロン酸ジエステルに溶解して存在することを特徴とする請求項4記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。
【請求項6】
前記第2工程における酸が、塩酸、硫酸、硝酸及び酢酸からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の酸である請求項1〜5のいずれか一項記載の6−ハロゲノ−2−オキシインドール化合物の製法。

【公開番号】特開2011−207859(P2011−207859A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79999(P2010−79999)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000113780)マナック株式会社 (40)
【Fターム(参考)】