説明

6−ホスホグルコン酸脱水素酵素含有試薬及び6−ホスホグルコン酸脱水素酵素安定化方法

【課題】 6PGDH及び6PGDH安定化剤を含有する試薬を提供すること、及び6PGDH安定化剤を用いて6PGDHを安定化する方法を提供すること。
【解決手段】 6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)からなる群より選択される少なくとも一つの補酵素と、水溶性化合物、還元性を有し且つ硫黄原子を中心原子とする酸素酸、前記酸素酸のチオ酸、前記酸素酸または前記チオ酸の塩、およびアミノエチルアミノエタノールからなる群より選択される少なくとも一つとを含有する6PGDH含有試薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(以下、6PGDHとする)を含有する試薬及び試薬中の6PGDHを安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
6PGDHは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)やニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)などの補酵素の存在下で6−ホスホグルコン酸(以下、6PGとする)を脱水し、還元型NAD(NADH)又は還元型NADP(NADPH)を生成する反応を触媒する酵素である。この触媒作用を利用して、6PGDHは臨床検査用試薬等に用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら試薬中の6PGDHは不安定であり、試薬の保存中に酵素としての活性が著しく低下する。このため、試薬中の6PGDHの失活を抑制し、安定化することのできる技術の開発が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−250698
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、6PGDH及び6PGDHを安定化する物質(以下、6PGDH安定化剤とする)を含有する試薬を提供すること、及び6PGDH安定化剤を用いて6PGDHを安定化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)からなる群より選択される少なくとも一つの補酵素と、以下の群から選択される少なくとも一つの6PGDH安定化剤を含有する試薬を提供する:
下記式(I)
【0007】
【化1】

(R1は水素原子、CH、またはSOH;R2は、SH、CHSH、またはNHであり、R3はSH、CHSH、NH、NHCONH、またはNHC(NH)NHであり、R4は水素原子、OH、CH、NH、OCH、COOH、COOCH、またはCOOCである。ただし、R2がSHまたはCHSHの場合、R3はNH、NHCONH、またはNHC(NH)NHであり、R2がNHの場合、R3はSH、またはCHSHである)で表される水溶性化合物;
下記式(II)
【0008】
【化2】

(R5およびR6は同一または異なって、水素原子、NH、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルケニル、アラルキル、アリール、低級アルカノイル、アロイル、シンナミル、またはシンナモイルである)で表される水溶性化合物;
下記式(III)
【0009】
【化3】

(R7およびR8は同一または異なって、水素原子、低級アルキル、アリル、CHO、C(NH)NHNH、COCH、CHOCO、COCOまたは下記式(IV)
【0010】
【化4】

(R9は硫黄原子、酸素原子、NHまたはNNHであり、R10は低級アルキル、NH、NHNH、CONH、またはCONHNHである)で表される基である)で表される水溶性化合物;
還元性を有し且つ硫黄原子を中心原子とする酸素酸;
前記酸素酸のチオ酸;
前記酸素酸または前記チオ酸の塩;および
アミノエチルアミノエタノール。
【0011】
また、本発明は、6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、シクロヘキシルジアミン四酢酸(CyDTA)、Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)(PIPES)、N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid(ADA)、およびSH基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一つの6PGDH安定化剤とを含有し、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)を実質的に含有しない、6PGDH含有試薬を提供する。
【0012】
また、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)からなる群より選択される少なくとも一つの補酵素の存在下において、6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、上記の6PGDH安定化剤のうち少なくとも一つとを共存させることにより、6PGDHを安定化させる6PGDH安定化方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)の実質的不存在下で、6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、シクロヘキシルジアミン四酢酸(CyDTA)、Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)(PIPES)、N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid(ADA)、およびSH基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一つとを共存させることにより、6PGDHを安定化させる6PGDH安定化方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、6PGDH及び6PGDH安定化剤を含む試薬を提供することができる。また、試薬中の6PGDHを安定化する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施形態の6PGDH含有試薬は、6PGDHと6PGDH安定化剤とを含有する。6PGDH安定化剤とは、6PGDH含有試薬中で6PGDHと共存させることにより6PGDHの失活を抑制し、保存安定性を向上させることのできる物質を指す。本明細書においては「6PGDH安定化剤」は、6PGDH安定化剤の塩なども含む。6PGDH安定化剤の塩としては、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩等)、有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、塩基付加塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)などが挙げられる。
【0016】
6PGDHは、酵素反応の際にNADやNADPのような補酵素が必要である。補酵素は6PGDH含有試薬に含有させてもよいし、6PGDH含有試薬とは別容器に収容してもよい。
【0017】
6PGDHがNADやNADPのような補酵素と共存する場合は、補酵素が6PGDHを不安定化させる。試薬溶液中ではNADやNADPが分解してADPリボースが生成する。生成したADPリボースの一部は、酸化されてアルデヒドとなり、このアルデヒド基が6PGDHを不安定化させていると考えられる。この補酵素は強い不安定化効果をもたらすため、補酵素の存在下で6PGDHを安定化させるためには、補酵素の不安定化効果を低減する化合物を用いることができる。補酵素の不安定化効果を低減させるためには、アルコールの酸化により生成したアルデヒドの影響を低減できるような物質が好適に用いられる。このような物質として、還元性を有する化合物が挙げられる。特に、還元性を有し且つ硫黄原子を中心原子とする酸素酸、この酸素酸のチオ酸、この酸素酸またはチオ酸の塩、アミノ基を有する化合物などが有効である。アミノ基を有する化合物としては、上記式(I)や(III)の構造を有する化合物が例示される。また、分子内に電気陰性度の高い窒素、酸素、硫黄などの元素が連結した構造(NH−Nや、NH−O−など)を有する分子も有効である。このような物質としては、上記式(II)や(III)の構造を有する化合物が例示される。
【0018】
還元性を有し且つ硫黄原子を中心原子とする酸素酸およびそのチオ酸としては、スルホキシル酸〔HSO〕、亜硫酸〔HSO〕、チオ亜硫酸〔HSO〕、チオ硫酸〔HSO〕、亜ジチオン酸〔HSO〕、二亜硫酸〔HSO〕、ジチオン酸〔HSO〕、二硫酸〔HSO〕、ポリチオン酸〔HSXO(Xは3以上の整数)〕などが挙げられる。
【0019】
上記酸素酸の塩およびチオ酸の塩としては、具体的には亜硫酸アンモニウム〔(NH42SO3〕、亜硫酸カリウム〔K2SO3〕、亜硫酸カルシウム〔CaSO3〕、亜硫酸水素アンモニウム〔NH4HSO3〕、亜硫酸水素ナトリウム〔NaHSO3〕、亜硫酸ナトリウム〔Na2SO3〕、亜硫酸バリウム〔BaSO3〕、亜硫酸ビスマス〔Bi2(SO33〕、亜硫酸水素カリウム〔KHSO3〕、チオ硫酸アンモニウム〔(NH4223〕、チオ硫酸ナトリウム〔Na223〕、チオ硫酸バリウム〔BaS23〕、チオ硫酸マグネシウム〔MgS23〕、チオ硫酸カルシウム〔CaS23〕、チオ硫酸カリウム〔K223〕、亜ジチオン酸ナトリウム〔Na224〕、亜ジチオン酸カリウム〔K224〕、亜ジチオン酸カルシウム〔CaS24〕、二亜硫酸ナトリウム〔Na225〕、二亜硫酸カリウム〔K225〕、二亜硫酸マグネシウム〔MgS25〕、二亜硫酸カルシウム〔CaS25〕、ジチオン酸ナトリウム〔Na226〕、二硫酸カリウム〔K227〕、二硫酸ナトリウム〔Na227〕、四チオン酸ナトリウム〔Na246〕などが例示される。
【0020】
また、以下のような式(I)〜(III)に表されるような水溶性化合物も好適に用いられる。
【0021】
【化5】

(R1は水素原子、CH、またはSOH;R2は、SH、CHSH、またはNHであり、R3はSH、CHSH、NH、NHCONH、またはNHC(NH)NHであり、R4は水素原子、OH、CH、NH、OCH、COOH、COOCH、またはCOOCである。ただし、R2がSHまたはCHSHの場合、R3はNH、NHCONH、またはNHC(NH)NHであり、R2がNHの場合、R3はSH、またはCHSHである)
【0022】
【化6】

(R5およびR6は同一または異なって、水素原子、NH、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルケニル、アラルキル、アリール、低級アルカノイル、アロイル、シンナミル、またはシンナモイルである)
【0023】
【化7】

(R7およびR8は同一または異なって、水素原子、低級アルキル、アリル、CHO、C(NH)NHNH、COCH、CHOCO、COCOまたは下記式(IV)
【0024】
【化8】

(R9は硫黄原子、酸素原子、NHまたはNNHであり、R10は低級アルキル、NH、NHNH、CONH、またはCONHNHである)で表される基である)
【0025】
ここで、上記式(II)および(III)における低級アルキルとは、直鎖または分岐状の炭素数1〜6のアルキル(たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等)であり、置換基を有していてもよい。
上記式(II)における低級アルケニルとは、直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルケニル(たとえば、ビニル、アリル、イソプロペニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル等)であり、置換基を有していてもよい。
上記式(II)における低級アルカノイルとしては、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルカノイル(たとえば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ピバロイル、ペンタノイル等)であり、置換基を有していてもよい。
置換基としては、たとえばヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、アミノなどが挙げられる。
【0026】
上記式(I)で表される化合物は、R2またはR3のNHが補酵素のアルデヒドによる不安定化効果を低減させると推測される。また、この化合物はR2またはR3にSHを有しているため、これが直接6PGDHを安定化させる効果もあると考えられる。。
【0027】
上記式(I)で表される化合物としては、下記表1に挙げられる化合物が例示される。
【0028】
【表1】

【0029】
上記式(II)で表される化合物としては、下記表2に挙げられる化合物が例示される。
【0030】
【表2】

【0031】
上記式(III)で表される化合物としては、下記表3に挙げられる化合物が例示される。
【0032】
【表3】

【0033】
上記の他に、アミノエチルアミノエタノールも補酵素の6PGDHに対する不安定化効果を低減させることができる。
【0034】
6PGDHと、補酵素とを別々の容器に収容した場合は、補酵素によって6PGDHが不安定となることはない。しかし、元来6PGDHは不安定な酵素であるため、補酵素を実質的に含有しない溶液中でも酵素活性が低下する。補酵素の実質的不存在下では、上述したような補酵素存在下で6PGDHを安定化する物質では満足な6PGDH安定化効果を得ることができない。このため、6PGDHを安定化するために6PGDHに直接作用して6PGDHの失活を抑制することのできる物質を用いることができる。このような作用を有する物質としては、SH基を有する化合物(以下、SH化合物とする)が挙げられる。6PGDHは溶液中で酸化されて活性が減少するため、還元性を有するSH化合物を作用させることにより、失活を抑制することができると考えられる。
【0035】
補酵素の実質的不存在下で6PGDHを安定化することのできるSH化合物としては、SH基を有していれば特に限定されないが、たとえばN−アセチル−L−システイン(NAC)、チオグリセロール、β−メルカプトプロピオン酸、システイン、ジチオスレイトール(DTT)、2−メルカプトエタノール(2ME)等が挙げられる。
【0036】
また、上記以外の物質で、シクロヘキシルジアミン四酢酸(CyDTA)などのキレート剤や、PIPESやADAなどの緩衝剤も6PGDHを安定化することができる。溶液中に不純物として金属イオンが含まれているとこれが原因となって6PGDHが不安定化することがあるため、上記のようなキレート効果を有する物質も有効であると考えられる。
【0037】
上述の6PGDH安定化剤は、単独で用いてもよいし併用してもよい。
【0038】
試薬中の6PGDH安定化剤の濃度としては、6PGDHを安定化できる濃度であれば特に限定されない。
【0039】
本実施形態で用いることのできる6PGDHは、バクテリア、酵母、動植物などに由来するものであってもよく、遺伝子組み換え技術を用いて生成されたものであってもよい。
【0040】
6PGDH含有試薬の溶液状態におけるpHとしては、6PGDHを不安定化させるpHでなければ特に限定されないが、5〜8であることが好ましい。このpHを維持するために、試薬に緩衝剤を含有させることが好ましい。緩衝剤としては、例えばトリス−塩酸緩衝剤、イミダゾール−酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、グッド緩衝剤などを用いることができる。
【0041】
本実施形態の6PGDH含有試薬は臨床検査に用いることができる。生体から採取した試料あるいはこれを前処理した試料に6PGDH含有試薬を混合し、吸光度の変化などをモニターして試料中の特定の物質の定量や特定の酵素の活性測定などを行うことができる。
試料としては、例えば、血清、血漿、血液、髄液、尿、精液などが挙げられるが、血漿又は血清を用いることが好ましい。
【0042】
6PGDH含有試薬を用いて定量又は活性測定し得る物質としては、反応系に6PGDHの基質である6PGを用いていれば特に限定されない。定量し得る物質としては、例えば、中性脂肪、無機リン酸、ラクトース、マルトース、グリコーゲン、スターチ、シュークロース、グルコース、フルクトース、マンノース、クレアチンリン酸、G6P、フルクトース−6−リン酸、マルトース−6−リン酸、フルクトース−2−リン酸、L−ソルボース−6−リン酸、グルコース−1−リン酸、NAD、NADP、ウリジン三リン酸、アデノシン三リン酸(ATP)、ウリジン二リン酸グルコースなどが挙げられる。また、活性測定し得る物質としては、例えば、クレアチンキナーゼ(CK)、CKのアイソザイム(例えば、CKMBなど)、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、アミログルコシダーゼ、インベルターゼ、トランスアルドラーゼ、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、フルクトースジフォスファターゼなどの酵素が挙げられる。
【0043】
上記のうち、CKの活性測定に用いられる6PGDH含有試薬について以下に説明する。
CKとは二つのサブユニットからなる二量体のリン酸化酵素である。CKのサブユニットにはB型(脳型)及びM型(筋型)の二種類が存在する。CKには、二種類のサブユニットの組み合わせによって三種類のアイソザイム(CKMM、CKMB及びCKBB)が存在し、CKMMは骨格筋に多く含まれ、CKMBは心筋に多く含まれ、CKBBは脳に多く含まれる。心筋梗塞や筋ジストロフィーなどの疾患によって疾患の原因部位に存在するCKアイソザイムが血液中に逸脱するため、臨床検査において血清などの試料に含まれるCKアイソザイムの活性値は上記疾患を診断する際の重要な指標となる。CK活性の測定に供される試料としては、血清や血漿などを用いることができる。
【0044】
CK活性測定用試薬には、6PGDH及び6PGDH安定化剤の他に、緩衝剤、SH化合物、NAD又はNADP、ヘキソキナーゼ(HK)又はグルコキナーゼ(GK)、グルコース、G6PDH、アデノシン二リン酸(ADP)、マグネシウムイオン及びクレアチンリン酸を含有させることが好ましい。
【0045】
試料とCK活性測定用試薬とを混合すると、試料に含まれるCKがSH化合物によって活性化される(SH化合物は補酵素不存在下で6PGDHを安定化するだけでなく、CKを活性化する作用を有する)。CKは血液中に逸脱すると不活性化するため、CKの活性を測定するためには先ずSH化合物によってCKを活性化する必要がある。SH化合物としては、CKを活性化できるものであれば特に限定されないが、例えば、NAC、システアミン、DTT、システイン、グルタチオン、βメルカプトプロピオン酸、2ME及びチオグリセロールなどを用いることができる。これらの化合物は、二種類以上を組み合わせて用いてもよいし、単独で用いてもよい。SH基を有する化合物の試薬中の濃度は、5〜250mM、好ましくは5〜100mM、より好ましくは10〜40mMである。
【0046】
CKを含む試料に上記成分を含むCK活性測定用試薬を添加することにより、図1に示すような反応系が構築される。図1において、SH化合物によって活性化されたCKは、クレアチンリン酸及びADPからクレアチン及びATPを生成する反応を触媒する(反応1)。試薬に含まれるHK又はGKは、試薬に含まれるグルコース及び反応1で生成したATPからG6P及びADPを生成させる(反応2)。さらに試薬に含まれるG6PDHは、NAD又はNADP及び反応2で生成したG6Pから6−ホスホグルコン酸(6PG)及びNADH又はNADPHを生成させる(反応3)。次に、試薬に含まれる6PGDHは、NAD又はNADP及び反応3で生成した6PGから二酸化炭素、リブロース−5−リン酸及びNADH又はNADPHを生成させる(反応4)。NADH又はNADPHが生成すると試料と6PGDH含有試薬との混合液の波長340nm付近での吸光度が上昇する。この吸光度の上昇をモニターすることにより、試料中のCKの活性を測定することができる。
【0047】
CK活性測定用試薬は二種類以上の試薬からなる試薬キットであることが好ましい。第一試薬及び第二試薬からなるCK活性測定用試薬キットは、緩衝剤、ADP、グルコース、NAD又はNADP、HK又はGK、G6PDH、SH化合物、6PGDH及び6PGDH安定化剤を含む第一試薬と、クレアチンリン酸を含む第二試薬とからなることが好ましい。
【0048】
第一試薬、第二試薬及び第三試薬からなるCK活性測定用試薬キットは、緩衝剤、ADP、グルコース、NAD又はNADP、HK又はGK、G6PDH及びSH化合物を含む第一試薬と、クレアチンリン酸を含む第二試薬と、6PGDHと6PGDH安定化剤とを含む第三試薬とからなることが好ましい。
【0049】
上記成分の他に、防腐剤、キレート剤などを適宜試薬に添加してもよい。防腐剤としては例えばアジ化ナトリウムなどを用いることができる。キレート剤は試料中の金属イオンによるCK活性の阻害を抑制するために用いられ、具体的にはEDTAなどを用いることができる。
【0050】
また、界面活性作用を有する化合物を試薬に添加してもよい。例えば、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、アルブミンなどを用いることができ、具体的にはトライトン類(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.の登録商標)、エマルゲン類(花王(株)の登録商標)、ウシ血清アルブミン(BSA)などを用いることができる。
【0051】
試料にはアデニレートキナーゼが含まれていることがある。アデニレートキナーゼは特に溶血試料に多く含まれており、CKの活性測定に悪影響を及ぼす。この悪影響を回避するため、試薬にアデニレートキナーゼの作用を阻害する阻害剤を加えることが好ましい。阻害剤の種類としてはアデニレートキナーゼの作用を阻害するものであれば特に限定されないが、例えばアデノシン一リン酸(AMP)やP1P5ジアデノシン−5’−ペンタリン酸(AP5A)などを用いることができる。
【0052】
さらに、ダブルカイネティック法で活性測定することにより、アデニレートキナーゼなどの測定対象ではない酵素の悪影響を回避することも可能である。ダブルカイネティック法では、先ずアデニレートキナーゼなどの酵素の活性を測定し、その後クレアチンリン酸を添加し、CKによる酵素反応を開始させて試料に含まれるキナーゼの活性(CKの活性とアデニレートキナーゼなどの酵素の活性との和)を測定する。これらの測定結果の差がCKの活性値となる。
【0053】
なお、上述のCK活性測定用試薬キットを構成する何れかの試薬に、CKのM型サブユニットを特異的に認識する抗体(以下、抗CK−M抗体とする)を含有させることにより、試料中のCKMBの活性を測定することが可能となる(Wurzburg et al., 1977, J. Clin. Chem. Clin. Biochem., 15:131-135)。抗CK−M抗体を試薬に含有させると、試料中のCKアイソザイムのうち、CKMMのM型サブユニットに抗CK−M抗体が結合し、CKMM活性が完全に阻害される。また、試料中のCKBBの活性は無視できるほど小さい。CKMBのM型サブユニットにも抗CK−M抗体が結合するが、B型サブユニットには結合しないため、CKMBのB型サブユニットの活性を測定し、これを二倍することによりCKMB活性として算出することができる。抗CK−M抗体は、第一試薬に含有させることが好ましい。抗CK−M抗体としては、M型サブユニットを特異的に認識する抗体であればポリクローナル抗体やモノクローナル抗体でもよく、これらを混合して用いてもよい。また、抗体のフラグメント及びその誘導体を用いることもできる。抗体のフラグメント及びその誘導体としては、具体的にはFab,Fab’,F(ab)2及びsFvフラグメントなど(Blazar et al., 1997, J. Immunol., 159: 5821-5833及びBird et al., 1988, Science, 242: 423-426)が例示される。抗体のサブクラスはIgGに限定されず、IgMなどでもよい。
【0054】
以下、実施例及び比較例を示して、6PGDH安定化剤の6PGDH安定化効果を分析した。以下の実施例及び比較例において、6PGDHの活性測定は、6PGDHを含む試薬4.5μlに、基質溶液270μl(0.7mg/mlの塩化マグネシウム6水和物、0.3mg/mlのNADP及び0.9mg/mlの6PGを含む)を添加して340nmにおける吸光度を測定することにより行われた。

【0055】
(比較例1)
下記組成を含むCK活性測定用の第一試薬〜第三試薬を調製した。
<第一試薬>
イミダゾール緩衝剤 144mM(pH6.6)
NAC 20mM
EDTA 2.5mM
酢酸マグネシウム 12.5mM
ADP 2.5mM
AMP 6.25mM
AP5A 12.5μM
グルコース 25mM
NADP 2.5mM
G6PDH 1875U/l
ヘキソキナーゼ 3750U/l
<第二試薬>
クレアチンリン酸 150mM
<第三試薬>
6PGDH 200U/l
イミダゾール緩衝剤 144mM(pH6.6)
【0056】
本実施例では、上記のうち、第三試薬に含まれる6PGDHの安定化を評価したため、第三試薬のみを用いた。比較例1及び実施例1においては、この第三試薬を対照試薬とした。この対照試薬を4℃で3日間保存し、6PGDHの活性を測定した。
【0057】
次に、対照試薬に対して37℃3日間静置して温度負荷をかけた。温度負荷後、6PGDHの残存活性を測定した。
【0058】
また、対照試薬である上記第三試薬に下記のいずれかの物質を添加し、試薬を調製した。
20mM アミノグアニジン
20mM アセトヒドラジン
20mM ヒドラジン
20mM ヒドロキシルアミン
20mM セミカルバジド
1.2g/L βNADP
2.4g/L βNADP
3.6g/L βNADP
【0059】
次に、上記の試薬に対して37℃3日間静置して温度負荷をかけた。温度負荷後、6PGDHの残存活性を測定した。
【0060】
(実施例1)
比較例1で調製した対照試薬に6PGDH安定化剤として以下に示すいずれかの物質を添加し、試薬を調製した。
42.5mM チオグリセロール
85mM チオグリセロール
20mM βメルカプトプロピオン酸
20mM システイン
20mM システイン及び10mM チオグリセロール
20mM DTT
20mM 2ME
2mM CyDTA
また、144mMのイミダゾール緩衝剤ではなく、6PGDH安定化剤として144mMのPIPESを用いること以外は比較例1の対照試薬と同様にして試薬を調製した。
144mMのイミダゾール緩衝剤ではなく、6PGDH安定化剤として144mMのADAを用いること以外は、比較例1の対照試薬と同様にして試薬を調製した。
【0061】
これらの試薬を4℃3日間静置した後、6PGDH活性を測定した。次に、これらの試薬を37℃3日間静置して温度負荷をかけた。温度負荷後、6PGDH残存活性を測定した。
【0062】
比較例1および実施例1で測定された残存活性を表4に示す。残存活性は、4℃3日間静置した後に測定した6PGDH活性を100%としたときの百分率で表される。
【0063】
【表4】

【0064】
表1より、対照試薬(添加物なし)の場合は温度負荷後、6PGDH活性が温度負荷前に比べて76.1%に減少していた。
また、対照試薬にNADPを加えた場合は温度負荷後6PGDH活性が著しく低下した。このことより、NADPには強い6PGDH不安定化効果があることが確認された。
【0065】
NADPの不安定化効果を抑制して6PGDHを安定化させる物質である、比較例1の添加物は、NADPが含まれない対照試薬中では6PGDHを安定化する効果は認められなかった。
【0066】
実施例1で用いた6PGDH安定化剤を添加した場合は温度負荷後も6PGDH残存活性が100%に近い値を示した。
以上より、これらの添加物(SH化合物、CyDTA、PIPESおよびADA)は、NADPの実質的不存在下で6PGDHの保存安定性を向上できることがわかった。
【0067】
(比較例2)
200U/lの6PGDHと、144mMのイミダゾール緩衝剤(pH6.6)と、1.2g/lのNADPとを含む対照試薬を調製した。この試薬を4℃3日間静置し、6PGDH活性を測定した。次に、この試薬を37℃で3日間静置して温度負荷をかけた。温度負荷後、6PGDHの残存活性を測定した。
【0068】
また、本比較例の対照試薬に下記のいずれかの物質を添加し、試薬を調製した。
20mM NAC
40mM NAC
42.5mM チオグリセロール
85mM チオグリセロール
20mM βメルカプトプロピオン酸
20mM DTT
20mM 2ME
【0069】
次に、上記の試薬に対して37℃3日間静置して温度負荷をかけた。温度負荷後、6PGDHの残存活性を測定した。
【0070】
(実施例2)
比較例2で調製した対照試薬に下記のいずれかの物質を添加し、試薬を調製した。
20mM ヒドロキシルアミン
20mM システイン
20mM システイン及び10mM チオグリセロール
【0071】
次に、上記の試薬に対して比較例2と同様に温度負荷をかけた。温度負荷後、6PGDHの残存活性を測定した。
【0072】
比較例2及び実施例2で測定された6PGDH残存活性を表5に示す。な残存活性は、対照試薬を4℃3日間静置した後に測定した6PGDH活性を100%としたときの百分率で表される。
【0073】
【表5】

【0074】
表5より、NADPの存在下では比較例2のSH化合物を添加しても6PGDHの活性は低下し、ほとんど6PGDH安定化効果は得られなかった。しかし、実施例2のようにSH化合物であっても、アミノ基を有するシステインを添加すると、高い残存活性が得られ、6PGDHを安定化できることがわかった。また、上記式(II)で表される化合物の一つであるヒドロキシルアミンはシステインを添加した場合よりもさらに高い残存活性が得られ、6PGDHの保存安定性をより向上できることがわかった。
【0075】
(比較例3)
下記組成を含むCK活性測定用の第一試薬及び第二試薬を調製した。
<第一試薬>
イミダゾール緩衝剤 144mM(pH6.6)
EDTA 2.5mM
酢酸マグネシウム 12.5mM
ADP 2.5mM
AMP 6.25mM
AP5A 12.5μM
グルコース 25mM
NADP 2.5mM
G6PDH 1875U/l
ヘキソキナーゼ 3750U/l
6PGDH 200U/l
<第二試薬>
クレアチンリン酸 150mM
【0076】
ここでは、上記のうち、第一試薬に含まれる6PGDHの安定化を評価したため、第一試薬のみを用いた。比較例3及び実施例3においては、この第一試薬を対照試薬とした。
【0077】
この対照試薬を4℃3日間静置した後、6PGDH活性を測定した。次にこの試薬を37℃3日間静置して温度負荷をかけた。温度負荷後、6PGDHの残存活性を測定した。
【0078】
また、本比較例の対照試薬に下記のいずれかの物質を添加し、試薬を調製した。
20mM N,N−ジエチルヒドロキシルアミン
40mM N,N−ジエチルヒドロキシルアミン
20mM メルカプトエタノール
40mM メルカプトエタノール
20mM システイン酸
40mM システイン酸
【0079】
次に、上記の試薬に対して37℃3日間静置して温度負荷をかけた。温度負荷後、6PGDHの残存活性を測定した。
【0080】
(実施例3)
比較例3で調製した対照試薬に6PGDH安定化剤として以下に示すいずれかの物質を添加し、試薬を調製した。
20mM アミノグアニジン
30mM アミノグアニジン
40mM アミノグアニジン
20mM システイン
40mM システイン
20mM ヒドロキシルアミン
40mM ヒドロキシルアミン
20mM N−メチルヒドロキシルアミン
40mM N−メチルヒドロキシルアミン
20mM O−メチルヒドロキシルアミン
40mM O−メチルヒドロキシルアミン
20mM カルボキシメトキシルアミン
40mM カルボキシメトキシルアミン
20mM アセトヒドラジド
40mM アセトヒドラジド
20mM セミカルバジド
40mM セミカルバジド
20mM ヒドラジン
40mM ヒドラジン
20mM システアミン
40mM システアミン
20mM 亜硫酸ナトリウム
40mM 亜硫酸ナトリウム
20mM アミノエチルアミノエタノール
40mM アミノエチルアミノエタノール
【0081】
これらの試薬を4℃3日間静置して6PGDH活性を測定した。次に、これらの試薬に比較例3と同様にして温度負荷をかけ、温度負荷後、6PGDHの残存活性を測定した。
【0082】
比較例3及び実施例3で測定した残存活性を表6に示す。残存活性は、4℃3日間静置した後に測定した6PGDH活性を100%としたときの百分率で表される。
【0083】
【表6】

【0084】
表6より、上記式(I)〜(III)のいずれかで表される実施例3の6PGDH安定化剤を添加すると、対照試薬の6PGDH残存活性に比べて高い残存活性を示した。また、アミノエチルアミノエタノールや、還元性を有し且つ硫黄原子を中心原子とするオキソ酸の塩である亜硫酸ナトリウムを用いた場合も高い残存活性を示した。以上より、これらの物質は試薬中の6PGDHの保存安定性を向上できることがわかった。
【0085】
比較例3のN,N−ジエチルヒドロキシルアミン、2ME、およびシステイン酸のいずれかを添加した場合の残存活性は、対照試薬の残存活性とほとんど変わらない値であった。以上より、これらの物質は6PGDHを安定化することができなかった。
【0086】
N,N−ジエチルヒドロキシルアミンは、上記式(II)の構造式と類似しているが、式中のNに結合している水素原子がエチル基に置換された構造を有する。このことより、式(II)の構造を有する化合物においては、−NH−O−がNADPの6PGDH不安定化効果を抑制し、6PGDHを安定化していると考えられる。
2MEはSH化合物であるため、NADP不存在下では6PGDH安定化効果を有する(実施例1参照)が、表6からもわかるようにNADP存在下では6PGDHを安定化することができなかった。2MEは、上記式(I)の構造式と類似しているが、アミノ基を有していない点で相違する。また、システイン酸は、上記式(I)の構造式と類似しているが、SHを有していない点で相違する。
このことより、式(I)の構造を有する化合物においては、分子内のSHとアミノ基とがNADPの6PGDH不安定化効果を抑制し、6PGDHを安定化していると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】CK活性測定の反応系を示した模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)からなる群より選択される少なくとも一つの補酵素と、
下記式(I)
【化1】

(R1は水素原子、CH、またはSOH;R2は、SH、CHSH、またはNHであり、R3はSH、CHSH、NH、NHCONH、またはNHC(NH)NHであり、R4は水素原子、OH、CH、NH、OCH、COOH、COOCH、またはCOOCである。ただし、R2がSHまたはCHSHの場合、R3はNH、NHCONH、またはNHC(NH)NHであり、R2がNHの場合、R3はSH、またはCHSHである)で表される水溶性化合物、
下記式(II)
【化2】

(R5およびR6は同一または異なって、水素原子、NH、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルケニル、アラルキル、アリール、低級アルカノイル、アロイル、シンナミル、またはシンナモイルである)で表される水溶性化合物、
下記式(III)
【化3】

(R7およびR8は同一または異なって、水素原子、低級アルキル、アリル、CHO、C(NH)NHNH2、COCH3、CHOCO、COCOまたは下記式(IV)
【化4】

(R9は硫黄原子、酸素原子、NHまたはNNHであり、R10は低級アルキル、NH、NHNH、CONH、またはCONHNHである)で表される基である)で表される水溶性化合物、
還元性を有し且つ硫黄原子を中心原子とする酸素酸、
前記酸素酸のチオ酸、
前記酸素酸または前記チオ酸の塩、および
アミノエチルアミノエタノールからなる群より選択される少なくとも一つとを含有する6PGDH含有試薬。
【請求項2】
前記式(I)で表される水溶性化合物が、システインまたはシステアミンであり、前記式(II)で表される水溶性化合物が、ヒドロキシルアミン、N−メチルヒドロキシルアミン、O−メチルヒドロキシルアミン、またはカルボキシメトキシルアミンであり、前記式(III)で表される化合物が、アミノグアニジン、アセトヒドラジド、セミカルバジド、ヒドラジン、またはヒドロキシルアミンであり、前記酸素酸が亜硫酸である、請求項1記載の試薬。
【請求項3】
ヘキソキナーゼ又はグルコキナーゼ、グルコース及びアデノシン二リン酸(ADP)をさらに含む、請求項1または2に記載の6PGDH含有試薬。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の6PGDH含有試薬と、
クレアチンリン酸を含む試薬とを備える試薬キット。
【請求項5】
6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、
シクロヘキシルジアミン四酢酸(CyDTA)、Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)(PIPES)、N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid(ADA)、およびSH基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一つとを含有し、
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)を実質的に含有しない、
6PGDH含有試薬。
【請求項6】
前記SH基を有する化合物が、N-アセチル−L-システイン、チオグリセロール、β−メルカプトプロピオン酸、システイン、ジチオスレイトール(DTT)、および2−メルカプトエタノールからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項5記載の試薬。
【請求項7】
SH基を有する化合物と、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)と、ヘキソキナーゼ又はグルコキナーゼと、グルコースと、アデノシン二リン酸(ADP)とを含む試薬と、
クレアチンリン酸を含む試薬と、
請求項5または6記載の試薬とを備える試薬キット。
【請求項8】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)からなる群より選択される少なくとも一つの補酵素の存在下において、
6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、
下記式(I)
【化5】

(R1は水素原子、CH、またはSOH;R2は、SH、CHSH、またはNHであり、R3はSH、CHSH、NH、NHCONH、またはNHC(NH)NHであり、R4は水素原子、OH、CH、NH、OCH、COOH、COOCH、またはCOOCである。ただし、R2がSHまたはCHSHの場合、R3はNH、NHCONH、またはNHC(NH)NHであり、R2がNHの場合、R3はSH、またはCHSHである)で表される水溶性化合物、
下記式(II)
【化6】

(R5およびR6は同一または異なって、水素原子、NH、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルケニル、アラルキル、アリール、低級アルカノイル、アロイル、シンナミル、またはシンナモイルである)で表される水溶性化合物、
下記式(III)
【化7】

(R7およびR8は同一または異なって、水素原子、低級アルキル、アリル、CHO、C(NH)NHNH、COCH、CHOCO、COCOまたは下記式(IV)
【化8】

(R9は硫黄原子、酸素原子、NHまたはNNHであり、R10は低級アルキル、NH、NHNH、CONH、またはCONHNHである)で表される基である)で表される水溶性化合物、
還元性を有し且つ硫黄原子を中心原子とする酸素酸、
前記酸素酸のチオ酸、
前記酸素酸または前記チオ酸の塩、および
アミノエチルアミノエタノールからなる群より選択される少なくとも一つとを共存させることにより、前記6PGDHを安定化させる6PGDH安定化方法。
【請求項9】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)の実質的不存在下で、
6−ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGDH)と、
シクロヘキシルジアミン四酢酸(CyDTA)、Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)(PIPES)、N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid(ADA)、およびSH基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一つとを共存させることにより、前記6PGDHを安定化させる6PGDH安定化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−111045(P2007−111045A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259193(P2006−259193)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】