6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの多形体形態
本発明は、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの新規の多形体形態およびその調製方法に関する。このような多形体形態は、医薬組成物の成分であってよく、高増殖性障害またはタンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、そのまま参照により本願明細書に援用される2004年11月2日に提出された米国特許仮出願第60/624665号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの新規の多形体形態およびそれを調製する方法に関する。さらに本発明は、少なくとも1種の多形体形態を含む医薬組成物ならびにこのような多形体形態および組成物の治療的または予防的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
化合物6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(「化合物1」とも称される):
【0004】
【化1】
さらに、その薬学的に許容できる塩は、2003年3月18日に付与された米国特許第6534524号明細書および2003年3月11日に付与された米国特許第6531491号明細書に記載されており、その開示があらゆる目的に関して参照によりそのまま本願明細書に援用される。この化合物は、タンパク質キナーゼ受容体阻害剤であり、血管新生受容体シグナリングの合成低分子阻害剤である。
【0005】
タンパク質キナーゼは、タンパク質中の特定のチロシン、セリンまたはトレオニン残基のヒドロキシル基のリン酸化を触媒する酵素のファミリーである。通常、このようなリン酸化は、タンパク質の機能を劇的に混乱させるので、タンパク質キナーゼは、代謝、細胞増殖、細胞分化および細胞生存を含む様々な細胞プロセスの調節において重要である。タンパク質キナーゼの活性が必要であることが知られている多くの様々な細胞機能のうち、いくつかのプロセスは、ある疾患状態に治療的に介入するための魅力的なターゲットである。タンパク質キナーゼが重要な役割を果たす2つの例は、血管新生および細胞周期調節である。
【0006】
望ましくない血管新生は、網膜症、乾癬、慢性関節リウマチ、加齢性黄斑変性症(AMD)および癌(充実性腫瘍を含む)などのいくつかの疾患の顕著な特徴である(Folkman、Nature Med.、1、27〜31(1995))。血管新生プロセスに関与していることが判明しているタンパク質キナーゼには、VEGF−R2(血管内皮成長因子受容体2、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)およびFLK−1としても知られている)が含まれる。したがって、VEGF−R2のキナーゼ活性の直接的な阻害は、外来VEGFの存在下においても血管新生の低減をもたらしうる(Strawnら、Cancer Research、56、3540〜3545(1996)参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、タンパク質キナーゼの有効な阻害剤に対する必要性が存在する。さらに、当業者には理解されるであろうが、キナーゼ阻害剤が、信頼の高い製剤に適用しうる物理的特性を有することが望ましい。これらの特性には、熱、湿気および光に対する安定性が含まれる。
【0008】
結晶多形体は、同じ化合物の異なる結晶形である。多形体との用語は、同じ化合物の水和物(例えば、結晶構造中に存在している水と結合)および溶媒和物(例えば、水以外の溶媒と結合)を含む他の固体状態の分子形態を含んでも、含まなくてもよい。異なる結晶多形体は、格子内での分子の異なる充填により、異なる結晶構造を有する。これは、異なる結晶対称および/または単位セルパラメーターをもたらし、このことが、結晶または粉末のX線回折特性などの物理的特性に直接的に影響を及ぼす。例えば、異なる多形体は通常、異なるセットの角で回折し、強度的に異なる値をもたらすことになる。したがって、粉末X線回折を使用して、異なる多形体または1個を上回る多形体を含む固体形態を、再現可能および信頼可能な方法で識別することができる。
【0009】
結晶多形体形態は、薬剤工業にとって、特に、適切な剤形の開発に関与している工業にとって重要である。その多形体形態が、臨床または安定性研究の間に一定性を維持できない場合、使用または研究される正確な剤形を、ロット同士で比較することができない。さらに、化合物を臨床研究または市販品において使用する場合に、選択された多形体形態を伴う化合物を高純度で製造する方法を得ることが望ましい。それというのも、存在する不純物が、望ましくない毒性作用をもたらすことがあるためである。一定の多形体形態は、高い熱力学的安定性を示しうるか、高純度で大量に、容易に製造することができるので、医薬製剤に含有させるためにさらに適している。一定の多形体は、様々な格子エネルギーにより、吸湿傾向がない、可溶性の改善および高い溶解速度などの他の有利な物理的特性を示しうる。
【0010】
本明細書の背景技術の検討は、本発明の内容を説明するために含んでいる。このことは、言及したもののいずれかが、任意の請求項の優先日の時点で、任意の国において、公開されているか、知られているか、一般的知識の一部であることを認めるものと理解されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(「化合物1」とも称される)の新規の多形体形態に関する。
【0012】
【化2】
化合物1は、VEGF−R2の強力な阻害剤であり、非常に有利な毒性および薬理学的プロファイルを示している。さらに本発明は、化合物1の別個の多形体形態を調製する方法、医薬組成物におけるその使用ならびに望ましくない血管新生および/または細胞増殖を伴う疾患状態の治療におけるその使用に関する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、I型として示される多形体である。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なI型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約8.1および約29.8の回折角(2θ)におけるピークを含む粉末X線回折(PXRD)パターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約8.1、約18.2、約18.5および約29.8の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1、18.2±0.1、18.5±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約8.1、約9.1、約10.6、約15.4、約16.3、約17.4、約18.2、約18.5、約20.0、約20.8、約23.2、約24.0、約25.9、約27.4および約29.8の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1、9.1±0.1、10.6±0.1、15.4±0.1、16.3±0.1、17.4±0.1、18.2±0.1、18.5±0.1、20.0±0.1、20.8±0.1、23.2±0.1、24.0±0.1、25.9±0.1、27.4±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図1Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図1Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0015】
他の実施形態は、8.1±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1、18.2±0.1、18.5±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1、9.1±0.1、10.6±0.1、15.4±0.1、16.3±0.1、17.4±0.1、18.2±0.1、18.5±0.1、20.0±0.1、20.8±0.1、23.2±0.1、24.0±0.1、25.9±0.1、27.4±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
他の実施形態は、化合物1の多形体I型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール、およびメタノールなどのアルコールを含むスラリーを調製し、このスラリーを約40℃から約60℃の間で加熱し、スラリーに水を加え、スラリーを冷却し、スラリーの固体部分と他の成分とを分離することを含む。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、II型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なII型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約8.5および約18.8の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.5±0.1および18.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約8.5、約10.9、約14.8および約18.8の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.5±0.1、10.9±0.1、14.8±0.1および18.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約8.5、約10.9、約14.8、約16.2、約18.8、約21.5、約24.8、約25.9、約30.3および約32.2の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.5±0.1、10.9±0.1、14.8±0.1、16.2±0.1、18.8±0.1、21.5±0.1、24.8±0.1、25.9±0.1、30.3±0.1および32.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図2Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図2Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0018】
他の実施形態は、8.5±0.1および18.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、結晶形が8.5±0.1、10.9±0.1、14.8±0.1および18.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、結晶形が8.5±0.1、10.9±0.1、14.8±0.1、16.2±0.1、18.8±0.1、21.5±0.1、24.8±0.1、25.9±0.1、30.3±0.1および32.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
他の実施形態は、化合物1の多形体II型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールを周囲温度で湿気にさらすことを含む。他の態様では、湿気は、少なくとも相対湿度80%である。
【0020】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がIII型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なIII型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約13.0および約24.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、13.0±0.1および24.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約13.0、約13.3、約21.7および約24.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、13.0±0.1、13.3±0.1、21.7±0.1および24.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約10.5、約13.0、約13.3、約15.8、約16.4、約17.5、約19.5、約20.1、約21.4、約21.7、約24.1、約25.0および約26.9の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、10.5±0.1、13.0±0.1、13.3±0.1、15.8±0.1、16.4±0.1、17.5±0.1、19.5±0.1、20.1±0.1、21.4±0.1、21.7±0.1、24.1±0.1、25.0±0.1および26.9±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図3Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図3Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0021】
他の実施形態は、13.0±0.1および24.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、13.0±0.1、13.3±0.1、21.7±0.1および24.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、10.5±0.1、13.0±0.1、13.3±0.1、15.8±0.1、16.4±0.1、17.5±0.1、19.5±0.1、20.1±0.1、21.4±0.1、21.7±0.1、24.1±0.1、25.0±0.1および26.9±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
他の実施形態は、化合物1の多形体III型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの薬学的に許容できる塩、塩基および非プロトン性溶媒を含むスラリーを調製し、このスラリーを約45℃から約80℃の間で加熱および攪拌し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。他の態様では、非プロトン性溶媒は、酢酸エチルである。さらに他の態様では、塩基は、NaHCO3である。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がIV型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なIV型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約8.9および約15.7の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1および15.7±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約8.9、約14.6、約15.7および約19.2の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1、14.6±0.1、15.7±0.1および19.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約8.9、約12.0、約14.6、約15.2、約15.7、約17.8、約19.2、約20.5、約21.6、約23.2、約24.2、約24.8、約26.2および約27.5の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1、12.0±0.1、14.6±0.1、15.2±0.1、15.7±0.1、17.8±0.1、19.2±0.1、20.5±0.1、21.6±0.1、23.2±0.1、24.2±0.1、24.8±0.1、26.2±0.1および27.5±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図4Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図4Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0024】
他の実施形態は、8.9±0.1および15.7±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1、14.6±0.1、15.7±0.1および19.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1、12.0±0.1、14.6±0.1、15.2±0.1、15.7±0.1、17.8±0.1、19.2±0.1、20.5±0.1、21.6±0.1、23.2±0.1、24.2±0.1、24.8±0.1、26.2±0.1および27.5±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
他の実施形態は、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの別の多形体形態から化合物1の多形体IV型を製造する方法であり、これは、別の多形体形態を加熱して、その別の多形体形態を水和または溶媒和させることを含む。他の態様では、真空下に加熱する。さらに他の態様では、加熱を、約110℃から約135℃の間で行う。さらに他の態様では、別の多形体形態の溶媒和物は、メタノールの溶媒和物、エタノールの溶媒和物および酢酸エチルの溶媒和物からなる群から選択される。さらに他の態様では、別の多形体形態は、化合物1の多形体III型である。
【0026】
本発明の他の態様は、化合物1の多形体VI型を化合物1の多形体IV型に変換する方法であり、これは、芳香族溶媒中の化合物1の多形体VI型のスラリーを加熱し、スラリーの固体部分を他の成分から単離することを含む。さらなる態様では、加熱ステップを少なくとも110℃で行う。
【0027】
本実施形態の他の態様は、化合物1の多形体IV型を製造する方法であり、これは、化合物1の水和形態および芳香族溶媒を含むスラリーを約110℃から約140℃の間で加熱し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。さらなる態様では、芳香族溶媒は、トルエンまたはキシレンである。さらに他の態様では、化合物1の水和形態は、化合物1の多形体III型である。
【0028】
この実施形態の他の態様は、化合物1の多形体IV型を製造する方法であり、これは、化合物1を再結晶化させて再結晶化生成物を生じさせ、この再結晶化生成物および芳香族溶媒を含むスラリーを約110℃から約150℃の間で加熱し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。さらなる態様では、化合物1をジクロロメタンおよびメタノールを含む溶液から再結晶化させる。さらに他の態様では、芳香族溶媒は、トルエンまたはキシレンである。
【0029】
この実施形態の他の態様は、化合物1の多形体IV型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールを水溶性ポリマーの溶液から再結晶化させ、この溶液に水を加えて、固体を沈殿させ、沈殿した固体を水溶性ポリマーおよび水から分離することを含む。さらに他の態様では、水溶性ポリマーは、(ポリ)エチレングリコールである。さらに他の態様では、(ポリ)エチレングリコールは、PEG−400である。
【0030】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がVI型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なVI型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約9.6および約18.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1および18.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約9.6、約11.6、約18.1および約25.2の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1、11.6±0.1、18.1±0.1および25.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約9.6、約11.6、約17.5、約18.1、約19.9および約25.2の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1、11.6±0.1、17.5±0.1、18.1±0.1、19.9±0.1および25.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図5Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図5Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0031】
他の実施形態は、9.6±0.1および18.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1、11.6±0.1、18.1±0.1および25.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1、11.6±0.1、17.5±0.1、18.1±0.1、19.9±0.1および25.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
他の実施形態は、化合物1の多形体VI型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの薬学的に許容できる塩、塩基およびプロトン性溶媒を含むスラリーを調製し、このスラリーを約45℃から約80℃での間で加熱および攪拌し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。さらに他の態様では、プロトン性溶媒は、アルコールである。さらに他の態様では、プロトン性溶媒は、エタノールである。さらに他の態様では、塩基は、NaHCO3である。
【0033】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がVII型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なVII型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約9.4および約17.0の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1および17.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約9.4、約17.0、約23.6および約25.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1、17.0±0.1、23.6±0.1および25.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約9.4、約10.2、約16.2、約17.0、約18.9、約19.7、約21.5、約22.7、約23.6、約25.1、約26.2、約27.4および約29.3の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1、10.2±0.1、16.2±0.1、17.0±0.1、18.9±0.1、19.7±0.1、21.5±0.1、22.7±0.1、23.6±0.1、25.1±0.1、26.2±0.1、27.4±0.1および29.3±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図6Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図6Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0034】
他の実施形態は、9.4±0.1および17.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1、17.0±0.1、23.6±0.1および25.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1、10.2±0.1、16.2±0.1、17.0±0.1、18.9±0.1、19.7±0.1、21.5±0.1、22.7±0.1、23.6±0.1、25.1±0.1、26.2±0.1、27.4±0.1および29.3±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0035】
他の実施形態は、化合物1の多形体VII型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールまたはその溶媒和物およびプロトン性溶媒を含むスラリーを調製し、このスラリーを約45℃から約80℃の間で加熱および攪拌し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。さらに他の態様では、プロトン性溶媒は、イソプロパノールである。
【0036】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がVIII型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なVIII型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約24.6および約26.3の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRD図を示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、24.6±0.1および26.3±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約24.6、約25.9、約26.3および約32.0の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、24.6±0.1、25.9±0.1、26.3±0.1および32.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約10.7、約15.5、約15.9、約20.6、約22.7、約24.6、約25.9、約26.3および約32.0の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、10.7±0.1、15.5±0.1、15.9±0.1、20.6±0.1、22.7±0.1、24.6±0.1、25.9±0.1、26.3±0.1および32.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図7に示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0037】
他の実施形態は、24.6±0.1および26.3±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、24.6±0.1、25.9±0.1、26.3±0.1および32.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、10.7±0.1、15.5±0.1、15.9±0.1、20.6±0.1、22.7±0.1、24.6±0.1、25.9±0.1、26.3±0.1および32.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0038】
他の実施形態は、化合物1の多形体VIII型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールを最小量の環流非プロトン性溶媒に溶かして溶液を形成し;この溶液を冷却して結晶を生じさせ、結晶生成物を単離することを含む。さらに他の態様では、非プロトン性溶媒は、ジオキサンである。
【0039】
本発明の他の実施形態は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の固体形態であり、この固体形態は、次の結晶形:多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型のうちの少なくとも2種を含む。
【0040】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体I型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体I型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体I型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体I型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0041】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体II型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体II型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体II型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体II型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0042】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体III型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体III型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体III型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体III型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0043】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体IV型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体IV型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体IV型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体IV型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0044】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体VI型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VI型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VI型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VI型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0045】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体VII型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VII型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VII型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VII型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0046】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体VIII型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VIII型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VIII型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VIII型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0047】
本発明はさらに、少なくとも1種の化合物1の多形体形態を投与することにより、例えば哺乳動物組織においてタンパク質キナーゼ活性(例えば特に、VEGF、VEGF、FGF、CDK複合体、TEK、CHK1、LCK、FAKおよびホスホリラーゼキナーゼの受容体)を調整または阻害する方法を対象としている。
【0048】
さらに本発明は、高増殖性障害またはVEGF活性により媒介される疾患状態を治療する併用療法を対象としており、これは、前記で検討された多形体形態または医薬組成物と、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、シグナル伝達阻害剤および抗増殖剤から選択される治療有効量の1種または複数の物質との組合わせを含む医薬組成物を、治療有効量で、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む。
【0049】
「活性剤」または「活性成分」との用語は、化合物1の多形体形態または化合物1の2種以上の多形体形態を含む固体形態を指している。
【0050】
「周囲温度」との用語は、実験室設定において通常は遭遇する温度状態を指している。これには、約20から約30℃のおおよその温度範囲が含まれる。
【0051】
「水性塩基」との用語は、任意の有機または無機塩基を指している。水性塩基には、例に過ぎないが、炭酸水素ナトリウムなどの金属炭酸水素塩、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどが含まれる。
【0052】
「芳香族溶媒」との用語は、芳香族部を有する有機溶媒を指しており、例に過ぎないが、ベンゼン、トルエン、各キシレン異性体またはこれらの混合物などが含まれる。
【0053】
「化学的安定性」との用語は、特定の化合物がその化学的完全性を維持するタイプの安定性を指しており、これらに限られないが、熱安定性、光安定性および水分安定性が含まれる。
【0054】
「検出可能量」との用語は、粉末X線回折、示差走査熱量測定法、HPLC、FT−IR、ラマン分光法などの慣用の技術を使用して検出することができる量または単位用量当たりの量を指している。
【0055】
「湿気にさらす」との用語は、湿潤器、湿潤箱または相対湿度を制御することができる何らかの装置内で、物質を湿気にさらすプロセスを指している。この用語はさらに、貯蔵の間に物質を周囲湿気にさらすプロセスを指してもよい。
【0056】
「高増殖性障害」との用語は、正常細胞の異常な成長および異常な細胞の成長を含む、正常な制御メカニズムから独立した異常な細胞成長(例えば接触阻害の喪失)を指している。これには、これらに限られないが、良性および悪性腫瘍細胞(腫瘍)の異常な成長が含まれる。このような良性増殖性疾患の例は、乾癬、良性前立腺肥大、ヒトパピローマウイルス(HPV)および再狭窄である。「高増殖性障害」との用語はさらに、これらに限られないが、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頚部癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、上皮小体癌、副腎癌、軟部組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫または前記の癌の1種または複数の組合せを含む癌をも指している。前記の方法の他の実施形態では、前記の異常な細胞成長は、これらに限られないが、乾癬、良性前立腺肥大または再狭窄を含む良性増殖性疾患である。
【0057】
「不活性溶媒」との用語は、溶液またはスラリー中の他の成分と化学的に反応しない、スラリーの任意の溶媒または液体成分を指している。不活性溶媒には、例に過ぎないが、芳香族溶媒、酢酸エチル、アセトン、メチルt−ブチルエーテル、ジオキサン、THFなどの非プロトン性溶媒が含まれる。プロトン性溶媒には、例に過ぎないが、メタノール、エタノール、各プロパノール異性体、各ブタノール異性体などが含まれる。
【0058】
「VEGF活性により媒介される」との用語は、VEGFタンパク質キナーゼ活性により調節、調整または阻害される生物学的または分子的プロセスを指している。一定の用途では、CDK複合体を随伴するタンパク質キナーゼ活性の阻害、特に、血管新生および/または炎症を阻害する阻害が好ましい。本発明は、化合物1の多形体形態を投与することにより、例えば哺乳動物組織においてタンパク質キナーゼ活性を調整または阻害する方法を含む。抗増殖剤としての薬剤の活性は、既知の方法、例えば、MTTアッセイでの全細胞培養を使用することにより容易に測定される。キナーゼの活性などのタンパク質キナーゼ活性の媒介剤としての化合物1の多形体形態の活性は、in vivoおよび/またはin vitroアッセイを含む当業者が利用可能な任意の方法により測定することができる。
【0059】
「最小量」との用語は、所定の温度で物質を完全に溶解するために必要な溶媒の最も少ない量を指している。
【0060】
「薬学的に許容できる塩」との用語は、規定の化合物の遊離酸および塩基の生物学的有効性を保持しており、生物学的またはその他の点で望ましくないものではない塩を指している。本発明の化合物は、十分に酸性な基、十分に塩基性の基または両方の官能基を有するので、多くの無機または有機塩基ならびに無機および有機酸のうちの任意のものと反応して、薬学的に許容できる塩を形成しうる。薬学的に許容できる塩の例には、本発明の化合物と鉱酸もしくは有機酸または無機塩基とを反応させることにより調製される塩、例えば、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、パラトルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩およびマンデル酸塩を含む塩が含まれる。
【0061】
本発明の化合物が塩基である場合、望ましい薬学的に許容できる塩を、当技術分野で利用可能な適した方法、例えば、遊離塩基を無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などで、または有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸またはガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸または酒石酸などのα−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸またはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸またはケイ皮酸などの芳香族酸、p−トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸などのスルホン酸で処理することにより調製することができる。
【0062】
本発明の化合物が酸である場合、望ましい薬学的に許容できる塩を、適切な方法、例えば、遊離酸を無機または有機塩基、例えば、アミン(第1級、第2級または第3級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物などで処理することにより調製することができる。適切な塩の実例には、グリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第1級、第2級および第3級アミンおよびピペリジン、モルホリンおよびピペラジンなどの環式アミンに由来する有機塩ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムに由来する無機塩が含まれる。
【0063】
「多形体」との用語は、同じ化合物の異なる結晶形を指しており、これらに限られないが、同一の化合物の水和物(例えば結晶構造中に存在する水と結合)および溶媒和物(例えば水以外の溶媒と結合)を含む他の固体状態分子形態を含む。
【0064】
「ピーク強度」との用語は、所定のX線回折パターンの範囲内での相対シグナル強度を指している。相対ピーク強度に影響を及ぼしうるファクターは、試料厚および優先配向(即ち結晶粒子はランダムに分布していない)である。
【0065】
本願明細書で使用する場合、「ピーク位置」との用語は、粉末X線回折実験で測定および観察されるX線反射位置を指している。ピーク位置は単位セルの寸法に直接関与している。個々のピーク位置により識別されるピークが、化合物1の様々な多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型の回折パターンから抽出されている。
【0066】
「PEG」との用語は、ポリ(エチレングリコール)を指している。PEGは、市販されており、様々な範囲のポリマー鎖長、したがって様々な粘度を有する。PEG400は、アルコール、アセトン、ベンゼン、クロロホルム、酢酸、CCl4および水に可溶性である。
【0067】
「薬学的に許容できる担体、希釈剤または媒体」との用語は、特定の薬剤と共に含まれて、医薬製剤を形成しうる固体または液体であってよい1種の物質(または複数の物質)を指している。固体担体の例は、ラクトース、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、シロップ、落花生油、オリーブ油、水などである。同様に、担体または希釈剤には、単独か、ろう、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレートなどを伴うモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で知られている放出時間遅延または放出時間制御材料が含まれうる。
【0068】
「医薬組成物」との用語は、1種または複数の本願明細書に記載の化合物もしくは多形体またはそれらの生理学的/薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物と、生理学的/薬学的に許容できる担体および賦形剤などの他の化学的成分との混合物を指している。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0069】
「再結晶化」との用語は、必要な場合には加熱しながら第1の溶媒に固体を完全に溶解させ、次いで、通常は溶液を冷却するか、固体がほとんど溶けない第2の溶媒を加えることにより沈殿させるプロセスを指している。
【0070】
「相対湿度」との用語は、所定の温度での空気中の水蒸気の量と、その温度および圧力で保持されうる水蒸気の最大量との、パーセンテージで表される比を指している。
【0071】
「相対強度」との用語は、試料X線回折パターンに由来する強度値を指している。回折パターンのための完全縦座標距離範囲を、100の値に指定する。この範囲強度で約50%から約100%に該当する強度を有するピークは、非常に強い(vs)と称される;約50%から約25%に該当する強度を有するピークは、強い(s)と称される。付加的なより弱いピークが、通常の回折パターンに存在し、これも、所定の多形体の特徴である。
【0072】
「スラリー」との用語は、液体媒体、通常は水または有機溶媒、に懸濁されている固体物質を指している。
【0073】
「〜から分離する」との用語は、次のステップには限られないが、濾過、特別な溶媒または水での洗浄、熱および/または真空下での乾燥を含む、所望の薬剤を他の望ましくない薬剤から単離する合成の際のステップを指している。
【0074】
化合物1の特定の多形体形態に関する「実質的に純粋な」との用語は、その多形体形態が、他の化合物1の多形体形態を含む不純物を10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満、好ましくは1重量%未満含有することを意味している。このような純度は例えば、粉末X線回折により決定することができる。
【0075】
「有効量」とは、真核細胞、例えば哺乳動物、昆虫、植物またはカビの細胞の増殖を有意に阻害するか、かつ/または脱分化を予防し、示されている用途、例えば特定の治療に有効である薬剤の量を意図している。
【0076】
「治療有効量」との用語は、治療される障害の1つまたは複数の症状をある程度まで軽減する化合物または多形体の投与量を指している。癌の治療では、治療有効量は、次の効果のうちの少なくとも1つを有する量を指す:
(1)腫瘍のサイズを低下させる、
(2)腫瘍転移を阻害する(即ち、ある程度遅くするか、好ましくは止める)、
(3)腫瘍成長をある程度阻害する(即ち、ある程度遅くするか、好ましくは止める)、
(4)癌に随伴する1つまたは複数の症状をある程度軽減する(または好ましくは除去する)。
【0077】
「2シータ値」または「2θ」との用語は、X線回折実験の実験装置をベースとしたピーク位置を指しており、回折パターンでの共通横座標単位である。実験装置は、反射が回折する場合に、入射光束が一定の格子面と角度シータ(θ)を形成する際には、反射光束が角度2シータ(θ)で記録されることを必要とする。
【0078】
「治療する」、「治療すること」および「治療」との用語は、高増殖性障害および/またはその付随症状を緩和または除去する方法を指している。特に癌に関しては、これらの用語は単に、癌に冒されている個人の期待寿命を延ばすか、疾患の1つまたは複数の症状を低減しうるであろうことを意味する。
【0079】
「真空下」との用語は、実験室用オイルまたはオイルフリー膜真空ポンプにより得られる通常の圧力を指している。
【0080】
「粉末X線回折パターン」との用語は、実験的に観察されるジフラクトグラムまたはそれに由来するパラメーターを指している。粉末X線回折パターンは、ピーク位置(横座標)およびピーク強度(縦座標)により特徴づけられる。
【0081】
「キシレン」との用語は、各キシレン異性体またはそれらの混合物を指している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
物質化合物1は、1種よりも多い多形性結晶形態で存在しうることが意外にも判明した。これらの形態は、癌を含む高増殖性適応症を治療するための製剤された製品中で使用することができる。各形態は、生物学的利用率、安定性または製造可能性において他を上回る利点を有する。他の多形体形態よりもバルク調製および取扱いに適しているであろう化合物1の結晶多形体形態が発見された。高純度でこれらの多形体形態を製造するための方法が、本願明細書に記載されている。本発明の他の目的は、化合物1の他の多形体形態を実質的に含まずに、化合物1の各多形体形態を調製する方法を提供することである。加えて、前記で検討された様々な多形体形態の化合物1を含む医薬製剤およびこのような医薬製剤を投与することにより高増殖性状態を治療する方法を提供することも、本発明の目的である。
【0083】
I.化合物1の多形性形態
化合物1の各結晶形は、次のうちの1つまたは複数により特徴づけることができる:粉末X線回折パターン(即ち様々な回折角(2θ)でのX線回折ピーク)、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムの吸熱により示される融点開始(水和形態では脱水の開始)、ラマンスペクトルダイアグラム図、水溶性、調和国際会議(ICH)高強度光条件下での光安定性ならびに物理的および化学的貯蔵安定性。例えば、化合物1の多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型の試料は、その粉末X線回折パターンにおけるピークの位置および相対強度により特徴づけられた。粉末X線回折パターンは、化合物1の多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型のそれぞれで異なる。したがって化合物1のこれらの多形体形態は、粉末X線回折を使用して識別することができる。
【0084】
化合物1の各多形体または非晶質形態の粉末X線回折パターンを、40kVおよび50mAで運転されるCu Kα X線放射源(1.5406Å)を備えたShimadzu XRD−6000 X線回折計で測定した。試料を試料ホルダーに入れ、次いで密閉し、ガラス面で平らにした。分析の間、試料を60rpmで回転させ、4から40度(θ〜2θ)の角度から、0.04度段階で1分当たり5度で、または0.02度段階で1分当たり2度で分析した。限られた材料のみが利用可能な場合には、試料をケイ素プレート(ゼロ背景)に載せ、回転させずに分析した。ピーク位置および強度帰属により特徴づけられるX線回折ピークを、化合物1の各多形体形態の粉末X線ジフラクトグラムから抽出した。当業者であれば、ピーク位置(2θ)は、典型的には0.1度程度の多少の装置間変動性を示すであろうことを認めるであろう。したがって、ピーク位置(2θ)が報告される場合、当業者であれば、このような数は、このような装置間変動性を包含するものと認めるであろう。さらに、本発明の結晶形が、所定の図面に示されているX線回折パターンと実質的に同じ回折パターンを有すると記載されている場合、「実質的に同じ」との用語は、回折ピーク位置におけるこのような装置間変動性を包含するものとする。さらに、相対的ピーク強度は、装置間変動性の他に、結晶化度、好ましい配向、調製試料表面および当業者には知られている他のファクターによる変動性を示すであろうことを、当業者であれば認めるであろうし、単なる定性基準として採用すべきである。
【0085】
示差走査熱量測定法(DSC)を使用しても、化合物1の様々な多形体形態を識別することができた。DSCにより、温度上昇に伴う試料溶液と適切な参照溶媒との熱エネルギー吸収における差が測定される。通常、試料が加熱されるにつれて、DSCサーモグラムは、吸熱(エネルギー吸収を示す)により、さらに発熱(エネルギー放出を示す)により特徴づけられる。Mettler Toledo DSC821装置を使用して、10℃/分の走査速度で30〜250℃の温度範囲にわたって、DSCサーモグラフを得た。試料を40μlアルミニウムるつぼに秤量し、これを密閉し、ただ1つの穴を開けた。融点温度の外挿開始および、適用可能な場合には水和温度の開始も算出した。DSC分析が行われる加熱速度(即ち走査速度)、DSC開始時間を規定し、終了させる方法、使用される校正標準、校正装置、試料の相対湿度および化学的純度に応じて、本発明の化合物により示される吸熱は、その吸熱の上または下で変動しうる(結晶多形体溶融では約0.01〜5℃および多形体水和では約0.01から20℃)。任意の所定の例では、観察される吸熱は、装置によっても異なりうる;しかしながら、通常、装置が同様に校正されるなら、本願明細書に規定の範囲内であろう。
【0086】
化合物1の様々な多形体形態をさらに、熱重量分析(TGA)を使用して識別した。TGAを、Mettler Toledo TGA500装置で行った。TGAは、試験体を空気中または窒素などの制御雰囲気中で加熱する場合の、試験体の重量変化を記録する試験手順である。温度重量曲線(サーモグラム)により、溶媒および水含分ならびに物質の熱安定性に関する情報が得られる。
【0087】
化合物1の様々な多形体形態を、異なる安定性および異なる溶解性により識別することもできる。
【0088】
一実施形態では、本発明の多形体形態は、実質的に純粋であるが、このことは、化合物1の各多形体形態が、他の化合物1の多形体形態を含む不純物を10重量%未満、例えば5重量%未満、または例えば3重量%未満、さらに例えば1重量%未満含むことを意味する。
【0089】
本発明の固体形態は、1種を上回る多形体形態を有することもできる。所定の化合物の結晶形が単一の多形体の実質的に純粋な形態で存在することもできるし、2種以上の異なる多形体を有する結晶形で存在することもできることは、当業者であれば分るであろう。固体形態が2種以上の多形体を含有する場合、X線回折パターンは、本発明の個々の多形体それぞれのピーク特徴を有するであろう。例えば、2種の多形体を含む固体形態は、実質的に純粋な多形体形態に対応する2つのX線回折パターンが混ざり合った粉末X線回折パターンを有するであろう。一実施形態では例えば、第1および第2多形体形態を含む本発明の固体形態は、少なくとも10%の第1多形体を含む。他の実施形態では、固体形態は、少なくとも20%の第1多形体を含む。さらに他の実施形態は、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の第1多形体を含む。様々な量での個々の多形体数種のこのような多くの組合せが、可能であることは、当業者であれば分るであろう。
【0090】
A.多形体I型
高温で攪拌することによりメタノールおよび水から化合物1を直接結晶化させることにより、化合物1の多形体I型を製造することができる。化合物1の多形体I型は、80℃で化学的に安定で、相対湿度75%、40℃で少なくとも13日間安定である。化合物1の多形体I型は、pH2で179μg/mlおよびpH6.5で9μg/mLの水溶性を有する。
【0091】
I型は、次のおおよその回折角(2θ):8.1、9.1、10.6、15.4、16.3、17.4、18.2、18.5、20.0、20.8、23.2、24.0、25.9、27.4および29.8にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴づけられる。図1Aは、I型の粉末X線回折パターンを示している。図1Bに示されているI型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で183〜190℃に吸熱開始を示している。
【0092】
B.多形体II型
化合物1の多形体II型は、水和物である。化合物1の多形体I型を室温で相対湿度93%に6日間さらすことにより、化合物1の多形体II型を製造することができる。
【0093】
II型は、次のおおよその回折角(2θ):8.5、10.9、14.8、16.2、18.8、21.5、24.8、25.9、30.3および32.2にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴づけられる。図2Aは、II型の粉末X線回折パターンを示している。図2Bに示されているII型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、102、152および202℃に吸熱開始、続いて206℃に発熱および210℃にさらなる発熱を示している。
【0094】
C.多形体III型
化合物1のp−トルエンスルホン酸塩誘導体を酢酸エチル中で、NaHCO3溶液で中和することにより、化合物1の多形体III型を製造することができる。化合物1の多形体III型は通常、酢酸エチル溶媒和物である。
【0095】
III型は、次のおおよその回折角(2θ):10.5、13.0、13.3、15.8、16.4、17.5、19.5、20.1、21.4、21.7、24.1、25.0および26.9にピークを有するX線回折パターンにより特徴づけられる。図3Aは、III型の粉末X線回折パターンを示している。図3Bに示されているIII型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、125〜129℃に吸熱開始、続いて210℃にさらなる吸熱を示している。化合物1のIII型はさらに、熱重量分析(TGA)により特徴づけられている。図3Cは、多形体III型の試料の熱重量分析(TGA)プロファイルである。化合物1の多形体III型の試料の通常のTGAサーモグラムは、脱溶媒を示す。約10℃/分の走査速度での125〜129℃での10%の試料重量損失により、酢酸エチルの喪失が示されている。
【0096】
D.多形体IV型
複数の異なる手順:(i)真空中、110〜135℃での化合物1の多形体III型の直接的脱溶媒;(ii)110〜140℃でトルエンまたはキシレン中で多形体III型をスラリー化することによる多形体III型の固体状態変換を介して;(iii)ジクロロメタン/メタノール溶液からの化合物1の再結晶化、それに続く140℃、トルエン中での沈殿物のスラリー化を介して;(iv)140℃でトルエンスラリーとして多形体VI型を環流させることによる多形体VI型の固体状態変換を介して;および(v)PEG−400溶液中、水を用いての化合物1の沈殿を介して、化合物1の多形体IV型を調製することができる。多形体IV型の水溶性は、約pH1で約550μg/mL、約pH2で約157μg/mL、約pH4で約6μg/mL、約pH6.5で約2μg/mLおよび約pH8で約2μg/mLである。
【0097】
多形体IV型は、80℃および40℃で相対湿度75%で少なくとも30日間は物理的および化学的に安定である。多形体IV型は、化合物1の熱力学的に最も安定な形態であると考えられる。
【0098】
IV型は、次のおおよその回折角(2θ):8.9、12.0、14.6、15.2、15.7、17.8、19.2、20.5、21.6、23.2、24.2、24.8、26.2および27.5にピークを有するX線回折パターンによりさらに特徴づけられる。図4Aは、IV型の粉末X線回折パターンを示している。図4Bに示されているIV型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、216℃に吸熱開始を示す。
【0099】
E.多形体VI型
NaHCO3溶液中でエタノールを用いて化合物1を直接的に結晶化させることにより、化合物1の多形体VI型を調製することができる。VI型は、次のおおよその回折角(2θ):9.6、11.6、17.5、18.1、19.9および25.2にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴づけられる。図5Aは、VI型の粉末X線回折パターンを示している。図5Bに示されているVI型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、197℃に吸熱開始を示す。
【0100】
F.多形体VII型
イソプロパノール、テトラヒドロフランまたはメチル−t−ブチルエーテル中の化合物1の多形体VI型の懸濁液を環流させることにより、化合物1の多形体VII型を調製することができる。
【0101】
VII型は、次のおおよその回折角(2θ):9.4、10.2、16.2、17.0、18.9、19.7、21.5、22.7、23.6、25.1、26.2、27.4および29.3にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴づけられる。図6Aは、VII型の粉末X線回折パターンを示している。図6Bに示されているVII型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、105℃に吸熱開始、続いて115℃に発熱、次いで137および175℃に吸熱を示す。
【0102】
G.多形体VIII型
ジオキサン中の化合物1の多形体VI型の懸濁液を環流させることにより、化合物1の多形体VIII型を調製することができる。
【0103】
VII型は、次のおおよその回折角(2θ):10.7、15.5、15.9、20.6、22.7、24.6、25.9、26.3および32.0にピークを有するX線回折パターンにより特徴づけられる。図7は、VIII型の粉末X線回折パターンを示している。
【0104】
II.本発明の医薬組成物
本発明の活性剤(即ち、本願明細書に記載の化合物1の多形体またはこのような多形体の2種以上を含む固体形態)を、哺乳動物の医療使用に適している医薬組成物に配合することができる。化合物1またはその薬学的に許容できる塩の任意の多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型の有効用量を患者に提供するために、いかなる適切な投与経路を採用することができる。例えば経口または非経口製剤などを使用することができる。剤形には、カプセル、錠剤、分散剤、懸濁剤など、例えば、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の腸溶被覆カプセルおよび/または錠剤、腸溶被覆ペレットを含むカプセルおよび/または錠剤が含まれる。いずれの剤形でも、化合物1の多形体IV型またはその薬学的に許容できる塩を、他の適切な成分と混合することができる。組成物を、単位投与形態で簡便に提供することができ、薬剤分野で知られている任意の方法により調製することができる。本発明の医薬組成物は、治療有効量の活性剤ならびに1種または複数の不活性な薬学的に許容できる担体および場合によって任意の他の治療成分、安定剤などを含む。製剤の他の成分と相容性であり、その受容者に過度に有害でないという意味において、担体は、薬学的に許容できなければならない。組成物はさらに、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)、香料、矯味剤、無機塩(例えば塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば塩化ベンザルコニウム)、甘味剤、静電防止剤、界面活性剤(BASFから入手可能な「TWEEN20」および「TWEEN80」などのポリソルベートならびにF68およびF88などのプルロニック)、ソルビタンエステル、脂質(例えばレシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質、脂肪酸および脂肪エステル、ステロイド(例えばコレステロール))およびキレート化剤(例えばEDTA、亜鉛および他のこのような適切なカチオン)を含むこともできる。本発明による組成物で使用するために適している他の医薬賦形剤および/または添加剤は、「Remington:The Science &Practice of Pharmacy、19th ed.、Williams & Williams、(1995)およびPhysician’s Desk Reference、52nd ed.、Medical Economics、Moritvale、NJ(1998)およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、Third Ed.、Ed.A.H.Kibbe、Pharmaceutical Press、2000に挙げられている。本発明の活性剤を、経口、直腸、局所、経鼻、眼または非経口(腹腔内、静脈内、皮下または筋肉内注射)投与に適しているものを含む組成物に配合することができる。
【0105】
製剤中の活性剤の量は、投与形態、治療される状態、ターゲットの患者集団および他の配慮を含む様々なファクターに応じて変動し、通常、当業者によって決定される。治療有効量は、タンパク質キナーゼを調整、調節または阻害するために必要な量である。実際には、これは、特定の活性剤、治療される状態の重度、患者集団、製剤の安定性などに依存して幅広く変動しうる。組成物は通常、どのような場合でも、活性剤約0.001重量%から約99重量%、好ましくは活性剤約0.01重量%から約5重量%、さらに好ましくは活性剤約0.01重量%から約2重量%を含有し、さらに、組成物中に含まれる賦形剤/添加剤の相対量に依存する。
【0106】
本発明の医薬組成物は、治療有効量の活性成分としての活性剤と、1種または複数の適切な薬剤担体とを慣用の手順に従い組合わせることにより調製される慣用の投与形態で投与される。これらの手順は、所望の製剤に適切に成分を混合、顆粒化および圧縮または溶解することを含むことができる。
【0107】
使用される薬剤担体は、固体でも液体でもよい。固体担体の例には、ラクトース、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが含まれる。液体担体の例には、シロップ、落花生油、オリーブ油、水などが含まれる。同様に、担体は、単独か、ろう、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレートを伴うモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で知られている時間遅延または時間放出物質を含んでもよい。
【0108】
様々な医薬形態を使用することができる。したがって、固体担体を使用する場合、製剤を錠剤化し、硬質ゼラチンカプセル中に粉末またはペレット形態で装入することもできるし、またはトローチ剤またはロゼンジ剤の形態であってもよい。固体担体の量は、変動しうるが、通常は、約25mgから約1gである。液体担体を使用する場合、製剤は、シロップ、エマルション、軟質ゼラチンカプセル、アンプルまたはバイアル中の無菌注射液剤もしくは懸濁剤または非水性液体懸濁剤の形態であってよい。
【0109】
安定な水溶性投与形態を得るために、活性剤の薬学的に許容できる塩を、コハク酸またはクエン酸の0.3M溶液などの有機または無機酸の水溶液に溶解させることができる。可溶性塩形態を入手することができない場合、活性剤を、適切な補助溶媒または補助溶媒の組合せに溶かすことができる。適切な補助溶媒の例には、これらに限られないが、全体容量に対して0〜60%の範囲の濃度のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリンなどが含まれる。組成物はさらに、水または等張性食塩水などの適切な水性媒体中の活性薬剤の塩形態の溶液またはデキストロース溶液の形態であってもよい。
【0110】
本発明の組成物中で使用される活性薬剤の実際の用量は、使用される特定の結晶形、処方される特定の組成物、投与方法ならびに治療される特定の部位、ホストおよび疾患に応じて変動しうることは、理解されるであろう。薬剤の実験データを考慮する慣用の用量決定試験を使用する当業者であれば、所定の条件セットでの最適な用量を確認することができる。経口投与では、通常使用される1日用量の例は、適切な間隔で繰り返される治療経過で、約0.001から約1000mg/体重kg、さらに好ましくは約0.001から約50mg/体重kgである。プロドラッグの投与は通常、十分に活性な形態の重量レベルに化学的に相当する重量レベルで投与される。本発明を実施する際には、最も適切な投与経路、さらに、治療用量の規模は、治療される疾患の性質および重度に左右される。用量および用量頻度も、個々の患者の年齢、体重および応答に左右されうる。一般に、適切な経口投与形態は、全1日用量5mgから250mgの用量範囲をカバーすることができ、これを、1回投与または等分用量で投与する。好ましい投与範囲は、10mgから80mgである。
【0111】
本発明の組成物は、医薬組成物を調製するために一般に知られている方法で、例えば、混合、溶解、顆粒化、糖衣製造、湿式粉砕、乳化、カプセル封入、包埋または凍結乾燥などの慣用の技術を使用して製造することができる。医薬組成物を慣用の方法で、薬学的に使用することができる製剤への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および助剤から選択することができる1種または複数の生理学的に許容できる担体を使用して配合することができる。
【0112】
経口投与用には、活性剤と当技術分野で知られている薬学的に許容できる担体とを組合わせることにより、化合物を容易に製剤することができる。このような担体により、本発明の化合物を、治療される患者により経口摂取される錠剤、丸薬、糖衣丸、カプセル、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤することができる。活性製剤と混合する際に固体賦形剤を使用し、場合によっては生じた混合物を粉砕し、適切な助剤を加えた後に顆粒混合物を処理し、望ましい場合には、錠剤または糖衣丸核を得ることにより、経口使用のための医薬製剤を得ることができる。適切な賦形剤には:ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース製剤、例えば、麦芽デンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、ゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン(PVP)が含まれる。望ましい場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることもできる。
【0113】
糖衣丸核は、適切なコーティングを備えている。このために、場合によってアラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい濃縮糖溶液を使用することもできる。活性製剤の異なる組合せを識別または特徴づけるために、染料または顔料を錠剤または糖衣丸コーティングに加えることもできる。
【0114】
経口で使用することができる医薬製剤には、ゼラチン製のプッシュフィット式カプセル、ゼラチンならびにグリセロールまたはソルビトールなどの可塑化剤からなる軟質密閉カプセルが含まれる。プッシュフィット式カプセルは、活性成分をラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤および場合によって安定化剤と混合された形で含むことができる。軟質カプセルでは、活性剤を脂肪族油、流動パラフィンまたは流動ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁させることができる。加えて、安定剤を加えることができる。経口投与のための製剤はすべて、このような投与に適した用量でなければならない。バッカル投与では、組成物は、慣用の方法で製剤された錠剤またはロゼンジの形態を取ることができる。
【0115】
鼻内または吸入による投与では、本発明による使用での化合物は、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスの使用を伴う加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で簡便に輸送することができる。加圧エアロゾルの場合には、投与単位を、計測量を輸送するためのバルブを装備することにより決定することができる。吸入器または注入器などで使用するためのゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物ならびにラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末混合物を含むように製剤することができる。
【0116】
活性剤を、注射による、例えばボーラス注射または連続注入による非経口投与のために製剤することもできる。注射のための製剤は、防腐剤を加えられている単位投与形態で、例えばアンプル中で、または複数回投与用容器中で提供することができる。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルションなどの形態を取ることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含むことができる。
【0117】
非経口投与のための医薬製剤には、活性剤の懸濁剤が含まれ、これは、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な疎水性溶媒または媒体には、ゴマ油などの脂肪族油またはシュウ酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルまたはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を上昇させる物質を含んでもよい。場合によって、懸濁剤はさらに、高濃縮溶液の調製が可能であるように活性剤の可溶性を高める適切な安定剤または薬剤を含んでもよい。
【0118】
眼への投与では、化合物が、例えば前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜および強膜を含む眼の角膜および内部領域に浸透しうる十分な期間、化合物が眼表面と接触し続けられるような薬学的に許容できる眼用媒体中に、活性剤を加える。薬学的に許容できる眼用媒体は例えば、軟膏、植物油または封入材料であってもよい。本発明の活性剤は、硝子体液、房水またはサブテノンに直接注入することもできる。
【0119】
もしくは、活性成分は、適切な媒体、例えば無菌発熱物質不含水を用いて使用前に構成するための粉末形態であってもよい。化合物をさらに、例えばカカオ脂または他のグリセリドなどの慣用の座薬基剤を含む座薬または滞留浣腸剤などの直腸または膣組成物に配合することもできる。
【0120】
前記の製剤に加えて、多形体形態をデポー製剤として製剤することもできる。このような長期作用性製剤を、移植(例えば皮下または筋肉内)によりまたは筋肉内注射により投与することができる。したがって例えば、多形体形態を適切なポリマーまたは疎水性物質(例えば許容できるオイル中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂を用いて、またはわずかに可溶性な誘導体、例えばわずかに可溶性な塩として製剤することもできる。
【0121】
加えて、活性薬剤を、治療剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出系を使用して輸送することもできる。様々な持続放出物質が確立されており、当業者に知られている。持続放出系カプセルは、その化学的性質に応じて、化合物を数週間から100日以上にわたって放出し得る。治療試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質を安定化させるための付加的な方策を使用することもできる。
【0122】
医薬組成物は、適切な固体またはゲル相担体または賦形剤を含有してもよい。このような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれる。
【0123】
III.本発明の多形体の使用法
化合物1の本発明による多形体形態は、タンパク質キナーゼの活性を媒介するために有用である。さらに詳細には、これらの多形体形態は、抗血管新生薬剤として、ならびにタンパク質キナーゼの活性、例えば特にVEGF、FGF、CDK複合体、TEK、CHK1、LCK、FAKおよびホスホリラーゼキナーゼに随伴する活性を調整および/または阻害するための薬剤として有用であるので、ヒトを含む哺乳動物でのタンパク質キナーゼにより媒介される細胞増殖を伴う癌または他の疾患のための治療法をもたらす。
【0124】
本発明の薬剤の治療有効量を、典型的には医薬組成物の形態で投与して、タンパク質キナーゼの調整または調節により媒介される疾患を治療することができる。「有効量」とは、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与された場合に、チロシンキナーゼなどの1種または複数のタンパク質キナーゼの活性により媒介される疾患の治療をもたらすに十分である薬剤の量を意味することとする。したがって、本発明の化合物の治療有効量は、1種または複数のタンパク質キナーゼの活性を調整、調節または阻害して、それらの活性により媒介される疾患状態を低減または緩和するために十分な量である。所定の化合物の有効量は、疾患状態およびその重度ならびに治療を必要とする哺乳動物の同一性および状態(例えば体重)などのファクターに応じて変動するはずであるが、当業者により日常的に決定されうる。「治療すること」とは、少なくとも部分的に、チロシンキナーゼなどの1種または複数のタンパク質キナーゼの活性により影響を受けているヒトなどの哺乳動物における疾患状態の緩和を少なくとも意味することとし、特にその哺乳動物が疾患状態を有しやすいことが判明しているが、未だ疾患状態を有するとは診断されていない場合に、その哺乳動物において疾患状態が生じることを予防すること;疾患状態を調整および/または阻害すること;および/または疾患状態を緩和することを含む。疾患状態の例には、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、関節リウマチ、乾癬、加齢性黄斑変性症(AMD)および癌(充実性腫瘍)が含まれる。
【0125】
タンパク質キナーゼ活性の調整剤としての化合物1の多形体形態の活性は、in vivoおよび/またはin vitroアッセイを含む当業者が利用可能な任意の方法により測定することができる。活性測定のための適切なアッセイの例には、Parast C.ら、Biochemistry、37、16788〜16801(1998);Jeffreyら、Nature、376、313〜320(1995);国際公開第97/34876号;および国際公開第96/14843号に記載されているものが含まれる。
【0126】
本発明はさらに、高増殖性障害またはVEGF活性により媒介される疾患状態を治療する併用療法を対象としており、これは、前記で検討した任意の多形体形態または医薬組成物を、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、シグナル伝達阻害剤および抗増殖剤から選択される治療有効量の1種または複数の物質との組合わせを含有する治療有効量の医薬組成物を、その必要のある哺乳動物に投与することを含む。このような物質には、その開示がそのまま参照により本願明細書に援用される国際公開第00/38715号、国際公開第00/38716号、国際公開第00/38717号、国際公開第00/38718号、国際公開第00/38719号、国際公開第00/38730号、国際公開第00/38665号、国際公開第00/37107号および国際公開第00/38786号に開示されているものが含まれる。
【0127】
抗腫瘍剤の例には、有糸分裂阻害剤、例えば、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンおよびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド誘導体;コルチンアロコチン、ハリコンドリン(halichondrin)、N−ベンゾイルトリメチル−メチルエーテルコルヒチン酸、ドラスタチン10、マイスタンシン(maystansine)、リゾキシン、タキソール(パクリタクセル)、ドセタキセル(タキソテール)などのタキサン、2’−N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]グルタラメート(タキソール誘導体)、チオコルヒチン、トリチルシステイン、テニポシド、メトトレキセート、アザチオプリン、フルオロウリシル、シトシン アラビノシド、2’2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)、アドリアマイシンおよびミタマイシン(mitamycin)が含まれる。アルキル化剤、例えばシス−プラチン、カルボプラチン、オキシプラチン、イプロプラチン、N−アセチル−DL−サルコシル−L−ロイシンのエチルエステル(AsaleyまたはAsalex)、1,4−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルバミン酸、2,5−ビス(1−アジルジニル)−3,6−ジオキソ−ジエチルエステル(diaziquone)、1,4−ビス(メタンスルホニルオキシ)ブタン(ビスルファンまたはロイコスルファン)、クロロゾトシン、クロメソン(clomesone)、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、ジアンヒドログラクチトール、フルオロドパン(fluorodopan)、ヘプスルファム(hepsulfam)、マイトマイシンC、ヒカンテオンマイトマイシン(hycantheonemitomcin)C、マイトゾルアミド(mitozolamide)、1−(2−クロロエチル)−4−(3−クロロプロピル)−ピペラジン二塩酸塩、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、ビス(3−メシルオキシプロピル)アミン塩酸塩、マイトマイシン、シクロヘキシル−クロロエチルニトロソウレア、メチルシクロヘキシル−クロロエチルニトロソウレア、1−(2−クロロエチル)−3−(2,6−ジオキソ−3−ピペリジル)−1−ニトロソウレア、ビス(2−クロロエチル)ニトロソウレアなどのニトロソウレア剤、プロカルバジン、ダカルバジン、メクロロエタミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、エストラムスチンナトリウムリン酸塩、ストルプトゾイン(strptozoin)およびテモゾラミドなどのナイトロジェンマスタード関連化合物。DNA代謝拮抗物質、例えば、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、ヒドロキシウレア、2−[(3ヒドロキシ−2−ピリノジニル)メチレン]−ヒドラジンカルボチオアミド、デオキシフルオロウリジン、5−ヒドロキシ−2−ホルミルピリジンチオセミカルバゾン、アルファ−2’−デオキシ−6−チオグアノシン、アフィジコリングリシネート、5−アザデオキシシチジン、ベータ−チオグアニンデオキシリボシド、シクロシチジン、グアナゾール、イノシングリコジアルデヒド、マクベシン(macbecin)II、ピラゾールイミダゾール、クラドリビン、ペントスタチン、チオグアニン、メルカプトプリン、ブレオマイシン、2−クロロデオキシアデノシン、ラルチトレキセドおよびペメトレキセドジナトリウム、クロファラビン、フロクスウリジン(floxuridine)およびフルダラビンなどのチミジル酸シンターゼの阻害剤。DNA/RNA代謝拮抗物質、例えば、L−アラノシン、5−アザシチジン、アシビシン、アミノプテリンおよびN−[2−クロロ−5−[[(2,4−ジアミノ−5−メチル−6−キナゾリニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]−L−アスパラギン酸、N−[4−[[(2,4−ジアミノ−5−エチル−6−キナゾリニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]−L−アスパラギン酸、N−[2−クロロ−4−[[(2,4−ジアミノプテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]−L−アスパラギン酸などのその誘導体、可溶性ベーカーアンチフォル(Baker’s antifol)、ジクロロアリルローソン(lawsone)、ブレキナル(brequinar)、フトラフ(ftoraf)、ジヒドロ−5−アザシチジン、メトトレキセート、N−(ホスホノアセチル)−L−アスパラギン酸四ナトリウム塩、ピラゾフラン、トリメトレキセート、プリカマイシン、アクチノマイシンD、クリプトフィシンおよびクリプトフィシン−52などの類似体、例えば、N−(5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル)−L−グルタミン酸などの欧州特許出願第239362号に開示されているような好ましい代謝拮抗物質のうちの1種;成長因子阻害剤;細胞周期阻害剤;インターカレーション抗生物質、例えば、アドリアマイシンおよびブレオマイシン;タンパク質、例えば、インターフェロン;および抗ホルモン、例えば、Nolvadex(タモキシフェン)などの抗エストロゲンまたは例えばCasodex(商標)(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド)などの抗アンドロゲン。治療の個々の成分を同時か、連続してか、別々に投与することにより、このような共同治療を達成することができる。
【0128】
抗血管新生剤には、MMP−2(マトリックス−メタロプロテアーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックス−メタロプロテアーゼ9)阻害剤およびCOX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤が含まれる。有用なCOX−II阻害剤の例には、CELEBREX(商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブおよびロフェコキシブが含まれる。有用なマトリックスメタロプロアーゼ阻害剤の例は、国際公開第96/33172号(1996年10月24日発行)、国際公開第96/27583号(1996年3月7日発行)、欧州特許出願第97304971.1号明細書(1997年7月8日提出)、欧州特許出願第99308617.2号明細書(1999年10月29日提出)、国際公開第98/07697号(1998年2月26日発行)、国際公開第98/03516号(1998年1月29日発行)、国際公開第98/34918号(1998年8月13日発行)、国際公開第98/34915号(1998年8月13日発行)、国際公開第98/33768号(1998年8月6日発行)、国際公開第98/30566号(1998年7月16日発行)、欧州特許公開第606046号(1994年7月13日発行)、欧州特許公開第931788号明細書(1999年7月28日発行)、国際公開第90/05719号(1990年5月331日発行)、国際公開第99/52910号(1999年10月21日発行)、国際公開第99/52889号(1999年10月21日発行)、国際公開第99/29667号(1999年6月17日発行)、PCT国際出願第IB98/01113号(1998年7月21日提出)、欧州特許出願第99302232.1号(1999年3月25日提出)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日提出)、米国特許仮出願第60/148464号(1999年8月12日提出)、米国特許第5863949号(1999年1月26日付与)、米国特許第5861510号(1999年1月19日付与)および欧州特許公開第780386号明細書(1997年6月25日発行)に記載されており、これらはすべて、そのまま参照により本願明細書に援用される。好ましいMMP−2およびMMP−9阻害剤は、MMP−1を阻害する活性を有さないか、ほとんど有さないものである。他のマトリックスメタロプロテアーゼ(即ち、MMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12およびMMP−13)に対してMMP−2および/またはMMP−9を選択的に阻害するものが、さらに好ましい。
【0129】
MMP阻害剤の例には、AG−3340、RO32−3555、RS13−0830および次の化合物;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイルシクロペンチル)−アミノ]−プロピオン酸;3−エキソ−3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R,3R)1−[4−(2−クロロ−4−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンゼンスルホニル]−3−ヒドロキシ−3−メチル−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;4−[4−(4−フルオロフェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−シクロブチル)−アミノ]−プロピオン酸;4−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R,3R)1−[4−(4−フルオロ−2−メチル−ベンジルオキシ)−ベンゼンスルホニル]−3−ヒドロキシ−3−メチル−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−1−メチル−エチル)−アミノ]−プロピオン酸;3−[[4−(4−トリフルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(4−ヒドロキシカルバモイル−テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−アミノ]−プロピオン酸;3−エキソ−3−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−エンド−3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−フラン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;ならびにこれらの薬学的に許容できる塩、溶媒和物および水和物が含まれる。
【0130】
シグナル伝達阻害剤の例には、EGFR抗体、EGF抗体およびEGFR阻害剤である分子などのEGFR(上皮成長因子受容体)応答を阻害しうる薬剤;VEGF(血管内皮成長因子)阻害剤;およびerbB2受容体に結合する有機分子または抗体、例えばHERCEPTIN(商標)(Genentech,Inc.、South San Francisco、California、USA)などのerbB2受容体阻害剤が含まれる。
【0131】
EGFR阻害剤は例えば、国際公開第95/19970号(1995年7月27日発行)、国際公開第98/14451号(1998年4月9日発行)、国際公開第98/02434号(1998年1月22日発行)および米国特許第5747498号(1998年5月5日発行)に記載されている。EGFR阻害剤には、これらに限られないが、モノクローナル抗体C225および抗EGFR22Mab(ImClone Systems Incorporated of New York、New York、USA)化合物ZD−1839(AstraZeneca)、BIBX−1382(Boehringer Ingerlheim)、MDX−447(Medarex Inc.、Annandale、New Jersey、USA)およびOLX−103(Merck & Co.、Whitehouse Station、New Jersey、USA)、VRCTC−310(Ventech Research)およびEGF融合毒素(Seragen Inc.、Hopkinton、Massachusettes)が含まれる。
【0132】
VEGF阻害剤、例えばSU−5416およびSU−6668(Sugen Inc.、Souths San Francisco、California、USA)を、本組成物と組合わせるか、同時投与することもできる。VEGF阻害剤は例えば、国際公開第99/24440号(1999年5月20日発行)、PCT国際出願PCT/IB99/00797号(1999年5月3日提出)、国際公開第95/21613号(1995年8月17日発行)、国際公開第99/61422号(1999年12月2日発行)、米国特許第5834504号(1998年11月10日発行)、国際公開第98/50356号(1998年11月12日発行)、米国特許第5883113号明細書(1999年3月16日付与)、米国特許第5886020号明細書(1999年3月23日発行)、米国特許第5792783号明細書(1998年8月11日発行)、国際公開第99/10349号(1999年3月4日発行)、国際公開第97/32856号(1997年9月12日発行)、国際公開第97/22596号(1997年6月26発行)、国際公開第98/54093号(1998年12月3日発行)、国際公開第98/02438号(1998年1月22日発行)、国際公開第99/16755号(1999年4月8日発行)および国際公開第98/02437号(1998年1月22日発行)に記載されており、これらはすべて、そのまま参照により本願明細書に援用される。いくつかの特殊なVEGF阻害剤の他の例は、IM862(Cytran Inc、Kirkland、Washington、USA);抗VEGFモノクローナル抗体ベバシズマブ(bevacizumab)(Genentech,Inc.、South San Francisco、California)およびアンジオザイム(angiozyme)、Ribozyme(Boulder、Colorado)およびChiron(Emeryville、California)からの合成リボザイムである。
【0133】
GW−282974(Glaxo Wellcom plc)などのerbB2受容体阻害剤およびモノクローナル抗体Ar−209(Aronex Pharmaceuticals Inc.、The Woodlands、Texas、USA)および2B−1(Chiron)を、本組成物と組合わせて投与することができる。このようなerbB2阻害剤には、国際公開第98/02434号(1998年1月22日発行)、国際公開第99/35146号(1999年7月15日発行)、国際公開第99/35132号(1999年7月15日発行)、国際公開第98/02437号(1998年1月22日発行)、国際公開第97/13760号(1997年4月17日発行)、国際公開第95/19970号(1995年7月27日発行)、米国特許第5587458号(1996年12月24日付与)および米国特許第5877305号明細書(1999年3月2日付与)に記載されているものが含まれ、これらはそれぞれ、そのまま参照により本願明細書に援用される。本発明で有用なerbB2受容体阻害剤はさらに、米国特許仮出願第60/117341号(1999年1月27日提出)および米国特許仮出願第60/117346号(1999年1月27日提出)に記載されており、これらは両方とも、そのまま参照により本願明細書に援用される。
【0134】
使用することができる他の抗増殖剤には、酵素ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害剤および受容体チロシンキナーゼPDGFrの阻害剤が含まれ、これには、次の米国特許出願:第09/221946号(1998年12月28日提出)、第09/454058号(1999年12月2日提出);第09/501163号(2000年2月9日提出);第09/539930号(2000年3月31日提出);第09/202796号(1997年5月22日提出);第09/384339号(1999年8月26日提出)および第09/383755号(1999年8月26日提出)に開示および請求されている化合物ならびに次の米国特許仮出願:第60/168207号(1999年11月30日提出);第60/170119号(1999年12月10日提出);第60/177718号(2000年1月21日提出);第60/168217号(1999年11月30日提出)および第60/200834号(2000年5月1日提出)に開示および請求されている化合物が含まれる。前記の特許出願および仮特許出願はそれぞれ、そのまま参照により本願明細書に援用される。
【0135】
本発明の組成物は、異常な細胞成長または癌を治療する際に有用な他の薬剤と共に使用することができ、これには、これらに限られないが、CTLA4(細胞毒性リンパ球抗原4)抗体などの抗腫瘍免疫応答を増強しうる薬剤およびCTLA4を遮断しうる他の薬剤;および他のファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤などの抗増殖性薬剤が含まれる。本発明で使用することができる特殊なCTLA4抗体には、そのまま参照により本願明細書に援用される米国特許仮出願第60/113647号(1998年12月23日提出)に記載されているものが含まれる。
【実施例】
【0136】
次の実施例で、本発明の個々の多形体形態、即ち化合物1の多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型の調製を詳述するが、これは、本願明細書で定義または下記で請求されている本発明の範囲を制限するものではない。他に記載されていない限り、温度はすべて、摂氏温度で示されており、部およびパーセンテージはすべて、重量による。Hewlett Packard HP−1100HPLCを使用して、HPLCデータを得た。
【0137】
(実施例1)
化合物1の多形体I型の調製および特性決定
例えば米国特許第6531491号(そのまま参照により本願明細書に援用される)の実施例33(a)に従って調製された6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(4.6g)を、メタノール50mL中、50℃で15分間スラリー化させ、その後、水50mLを加えた。このスラリーを十分に攪拌し、放置して室温まで冷却した。固体を濾過により集め、水50mLで、次いで、酢酸エチル30mLで洗浄した。次いで、生成物を高真空下に乾燥させた。HPLC純度は、99%を上回った。
【0138】
図1Aは、化合物1の多形体I型の粉末X線ジフラクトグラムである。化合物1の多形体I型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図1Bは、化合物1の多形体I型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。化合物1の多形体I型の試料は、約10℃/分の走査速度で183〜190℃に吸熱開始を示した。
【0139】
(実施例2)
化合物1の多形体II型の調製および特性決定
化合物1の多形体I型(37mg)を相対湿度93%の箱に室温で6日間入れることにより、水和物である化合物1の多形体II型を生じさせた。(HPLC純度>98.5%)。図2Aは、化合物1の多形体II型の粉末X線ジフラクトグラムである。化合物1の多形体II型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図2Bは、化合物1の多形体II型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。II型は、約10℃/分の走査速度で、102、152および202℃に吸熱開始、続いて206℃に発熱および210℃にさらなる発熱を示した。
【0140】
(実施例3)
化合物1の多形体III型の調製および特性決定
化合物1のp−トルエンスルホン酸塩誘導体を酢酸エチル中で中和し、続いて真空下に65℃で乾燥させることにより、化合物1の多形体III型を調製した。化合物1のp−トルエンスルホン酸塩(421g)を0.84MのNaHCO31800mLおよび酢酸エチル1800mLに懸濁させ、65℃で2時間攪拌した。濾過により固体を集め、水1800mLおよび酢酸エチル800mLで洗浄し、実験室真空下に50℃で一晩乾燥させた。収率:92%(HPLC純度は、99%を上回った)。多形体III型は、酢酸エチル溶媒和物である。
【0141】
図3Aは、化合物1の多形体III型の粉末X線回折パターンである。化合物1の多形体III型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図3Bは、化合物1の多形体III型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。化合物1の多形体III型の試料は、約10℃/分の走査速度で125〜129℃に吸熱開始、続いて210℃にさらなる吸熱を示した。
【0142】
多形体III型を、熱重量分析(TGA)によりさらに特性決定した。図3Cは、多形体III型の試料の熱重量分析(TGA)プロファイルである。多形体III型の試料の通常のTGAサーモグラムは脱溶媒を示す。酢酸エチルの損失は、10℃/分の走査速度で125〜129℃での10%の試料重量損失により示される。
【0143】
(実施例4a)
化合物1の多形体IV型の調製および特性決定
化合物1の多形体III型から、化合物1の多形体IV型を調製した。化合物1の多形体III型の試料(1.015kg)をメタノール3Lおよび酢酸5Lに60℃で溶かした。次いで、溶液を濾過し、中真空により濃縮した。キシレン6Lを60℃で加え、次いで、高真空により除去した。キシレン4Lを加え、次いで、高真空下に除去し、続いて、付加的なキシレン4Lで処理した。次いで、高真空下にキシレンを除去して、化合物1の多形体IV型を収率92%で得た。HPLC分析により、98.5%を上回る純度が示された。
【0144】
図4Aは、化合物1の多形体IV型のX線回折パターンである。化合物1の多形体IV型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図4Bは、多形体IV型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。化合物1の多形体IV型の試料は、約10℃/分の走査速度で216℃に吸熱開始を示した。
【0145】
(実施例4b)
化合物1の多形体IV型の調製および特性決定
パラジウム触媒を使用する化合物1の合成に続いて、次の手順を実施して、残留パラジウムを除去し、化合物1を多形体IV型で結晶化させた。
【0146】
機械式攪拌機を備えた12L三つ口フラスコに、化合物1 160.20gおよびDMA1.6LおよびTHF1.6Lを充填した。20分間攪拌した後に、混合物は均一になった。この澄明な溶液に、10%システイン−シリカ800.99gを充填し、生じた混合物を室温で一晩攪拌し続けた。混合物を「中度」焼結ガラス漏斗で濾過し、ケークをDMA500mLおよびTHF500mLの溶液で洗浄した。ケークをさらに、THF2.0Lで洗浄し、濾液を別のフラスコに集めた。後者の濾液の揮発性部分を真空中で除去し、残留物を主な濾液と合わせた。合わせた濾液を12Lフラスコに戻し充填し、続いて、10%システイン−シリカ800gを充填した。フラスコに機械式攪拌機を装備し、室温で週末にわたって攪拌した。混合物を「中度」焼結ガラス漏斗で濾過し、シリカをDMA500mLおよびTHF500mLの溶媒混合物、続いてTHF3.0Lで洗浄した。濾液中の揮発性部分を真空中で除去し、残留溶液を22L三つ口フラスコに移し、水12L(20分間かけて加える)で処理すると、厚い沈殿物がこの段階で生じた。一晩攪拌した後に、混合物を濾過し、ケークを水2.0Lで洗浄し、吸引乾燥させた。
【0147】
ケークを5L三つ口フラスコに充填し、続いて、THF1.6LおよびDMF160mLを充填した。フラスコに機械式攪拌機、環流凝縮器を装備し、混合物を環流で8時間加熱した。一晩冷却させた後に、混合物をシャークスキン濾紙で濾過し、吸引乾燥させた。ケークを5L三つ口フラスコに充填し、MeOH1.6Lを加えた。フラスコに機械式攪拌機、水凝縮器を装備し、内容物を環流で6時間加熱した。一晩冷却した後に、混合物をシャークスキン濾紙で濾過し、吸引乾燥させた。回転蒸発器の水浴中で穏やかに加熱して促進しながら、ケークをHOAc1.6Lに溶かした。溶液を♯3濾紙で濾過し、濾液の全量を、回転蒸発器で60℃/60mmHgで〜500mLの容量まで減少させた。この段階では、混合物のバルクは、黄色の溶液のままであり、少量の沈殿物が生じた。フラスコに、キシレン500mLを充填し(沈殿物が生じた)、全量を、回転蒸発器で60℃/60mmHgで〜500mLの容量まで減少させた。このプロセスをさらに2回繰り返した。冷却させた後に、混合物を濾過し、ケークをキシレン500mLで洗浄し、吸引乾燥させた。ケークをガラスざらに移し、さらに80℃/27インチ真空で一晩乾燥させた。ケークはオフホワイト色で、108.38gであり、続いて、IV型の結晶形であると決定された。
【0148】
(実施例5)
化合物1の多形体VI型の調製および特性決定
化合物1の多形体III型(2g)をエタノール15mLに懸濁させた。パラトルエンスルホン酸一水和物4gを加えて、混合物を82℃で14時間加熱した。室温まで冷却した後に、飽和NaHCO3溶液25mLを加え、懸濁液を2時間攪拌した。固体を濾過により集め、水50mLで洗浄し、実験室真空、45℃で一晩乾燥させた(HPLC純度>99%)。
【0149】
図5Aは、化合物1の多形体VI型の粉末X線回折パターンである。化合物1の多形体VI型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図5Bは、化合物1の多形体VI型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。VI型は、約10℃/分の走査速度で約197℃に吸熱開始、続いて約209℃でさらなる吸熱を示した。
【0150】
(実施例6)
化合物1の多形体VII型の調製および特性決定
化合物1の多形体VI型(102mg)をイソプロピルアルコール20mL中に懸濁させ、30分間環流させ、室温まで冷却させた。固体を濾過により集め、イソプロピルアルコールで洗浄し、真空下に乾燥させた。化合物1の多形体VII型は、イソプロパノール溶媒和物である。
【0151】
図6Aは、化合物1の多形体VII型の粉末X線回折パターンである。化合物1のVII型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図6Bは、化合物1の多形体VII型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。通常のプロファイルは、試料依存性である。環流THFから単離された1つの試料は、約10℃/分の走査速度で115℃に発熱、次いで、137および175℃に吸熱を示した。
【0152】
(実施例7)
化合物1の多形体VIII型の調製および特性決定
化合物1の多形体VII型を、最小量の環流ジオキサンに約100℃で溶かし、次いで、放置して室温に一晩冷却した。大きな黄色の結晶を濾過により集め、ジオキサンで洗浄し、真空下に乾燥させた。化合物1の多形体VIII型は、ジオキサン溶媒和物である。図7は、化合物1の多形体VIII型の粉末X線回折パターンを示している。
【0153】
(実施例8)
錠剤製剤での多形体IV型の使用
ポビドン(4%w/w)を水(5倍w/w)に溶かして、顆粒化のための溶液を形成する。実施例4においてと同様に調製された化合物1の多形体IV型(37%w/w)を高シャー造粒機中でラクトース(25%w/w)、トウモロコシデンプン(16%w/w)および一部のクロスカルメロースナトリウム(2%w/w)と混合する。混合物を乾式ブレンドし、次いで、ポビドン溶液で顆粒化する。顆粒を初めに、2分間湿らせ、5%未満の乾燥減量まで60℃で乾燥させる。ふるいサイズ045Rを用いて、物質を乾式粉砕する。粉砕された物質を残りのクロスカルメロースナトリウム(3%w/w)および微結晶性セルロース(12%、w/w)とブレンドする。ブレンドされた混合物をステアリン酸マグネシウムと再びブレンドする(1%w/w)。混合物を錠剤圧縮装置で圧縮して、1錠剤当たり化合物1を160mg含有する錠剤を製造する。
【0154】
(実施例9)
化合物1の酸塩の形成
化合物1について、塩スクリーニングを行って、その水溶性を改善した。化合物1を7種の異なる100mMの酸溶液に加え、14日間攪拌して、その場で、化合物1の7種の酸塩形態を生じさせた。使用された7種の酸は、以下のものである:メタンスルホン酸;硫酸;塩酸;リン酸;臭化水素酸;マレイン酸;およびベンゼンスルホン酸。これらの異なる酸それぞれで、20mgの化合物1を密閉バイアル中、暗所で、該当する酸の100mM溶液1.6mLと共に攪拌した。最大可溶性レベルが達成されることを保証するために、試料を、定期的にチェックして、過剰な固体が存在することを保証した。8日後に、混合物400μLをとり、14000rpmで5分間遠心分離した。次いで、上澄み100μLを除去し、アセトニトリル/メタノールの1:1混合物900μLで希釈し、次いで、HPLCにより分析した。第2のデータセットを、実験開始の14日後に集めて、可溶性の何らかの長期変化を観察した。14日目の試料を、8日目の試験で記載されたと同じ手順に従い調製した。Primesphereカラム、C185μm、150×4.6mmを使用して、流速1.5mL/分および注入容量10μLで、HPLC分析を行った。2週間にわたって形成された化合物1の7種の異なる塩形態の可溶性を、下記の表にまとめる。通常、可溶性値は、8から14日でほんのわずかな変化を示した。
【0155】
【表1】
【0156】
最も高い可溶性を示した化合物1の塩形態(メタンスルホン酸、硫酸および塩酸)を、さらに特性決定した。それぞれの塩約30mgを、室温で相対湿度93%の箱内のバイアルに入れた。6日後に、吸収された水の重量パーセント、粉末X線回折パターンおよび示差走査熱量測定法データを得た。2種の多形体が、塩酸塩で観察され(I型およびII型)、3種の多形体が、メタンスルホン酸塩で観察され(I型、II型およびIII型)、3種の多形体が硫酸塩(I、IIおよびIII)で観察された。これらの多形体形態を、高強度の光に対する安定性に関してさらに分析した。それぞれの塩約0.4mgをHPLCバイアルに秤量した。これを、各塩につき、計5回繰り返して、4つの試料および1つの標準を得た。試料を高強度光箱に入れ、0、1、2および6時間照射した。HPLC分析の前に、アセトニトリル1mLおよびメタノール1mLを加えて、各標準および試料を溶かした。硫酸塩のII型を除き、すべての試料が、高強度の光にさらされると著しく(14%〜97%)分解した。
【0157】
(実施例10)
化合物1のヒトでの代謝産物
図8に示されているように、化合物1はヒトにおいて広範に代謝されて、様々な代謝産物になる。3種の酸化代謝産物M12(化合物1のスルホキシド)、M15(化合物1のスルホン)およびM9(化合物1の混合スルホキシド化/N−酸化生成物)の化学的構造を、in vivo代謝産物のクロマトグラフ保持時間および質量スペクトルをその基準参照標準と比較することにより確認した。化合物1のグルクロニド(M7)の化学的構造は、代謝産物を単離し、続いてNMR決定することにより確認した。代謝産物M5は、m/z342に[M+H]+イオンを示した。M5のMS2およびMS3生成物イオン質量スペクトルの解釈は、M5が化合物1のデピリジニルカルボン酸であることを示唆した。M5の示された構造(または元素組成)およびその主なフラグメントイオン(m/z342、311、265および237)は、正確な質量測定により決定された元素組成とすべて高度に一致した(いずれも、質量測定正確度≦1.2ppm)。代謝産物M8a、M12aおよびM14の正確な構造は、現在知られていない。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1A】化合物1の多形体I型の粉末X線回折パターンである。
【図1B】化合物1の多形体I型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で183〜190℃に吸熱開始を示す。
【図2A】化合物1の多形体II型の粉末X線回折パターンである。
【図2B】化合物1の多形体II型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で、102、152および202℃に吸熱開始、続いて206℃に発熱、210℃に別の発熱を示す。
【図3A】化合物1の多形体III型の粉末X線回折パターンである。
【図3B】化合物1の多形体III型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で、125〜129℃に吸熱開始、続いて210℃に別の吸熱を示す。
【図3C】多形体III型の熱重量分析(TGA)プロファイルである。10℃/分の走査速度で125〜129℃での10%の試料重量損失により、脱溶媒が示される。
【図4A】化合物1の多形体IV型の粉末X線回折パターンである。
【図4B】化合物1の多形体IV型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で、216℃に吸熱開始を示す。
【図5A】化合物1の多形体VI型の粉末X線回折パターンである。
【図5B】化合物1の多形体VI型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で、約197℃および約209℃に吸熱開始を示す。
【図6A】化合物1の多形体VII型の粉末X線回折パターンである。
【図6B】化合物1の多形体VII型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、試料依存性である。環流THFから単離された通常の試料は、10℃/分の走査速度で、105℃に吸熱、続いて115℃に発熱、次いで137℃および175℃で吸熱を示す。
【図7】化合物1の多形体VIII型の粉末X線回折パターンである。
【図8】化合物1の数種のヒトでの代謝物の構造を示す概略図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、そのまま参照により本願明細書に援用される2004年11月2日に提出された米国特許仮出願第60/624665号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの新規の多形体形態およびそれを調製する方法に関する。さらに本発明は、少なくとも1種の多形体形態を含む医薬組成物ならびにこのような多形体形態および組成物の治療的または予防的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
化合物6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(「化合物1」とも称される):
【0004】
【化1】
さらに、その薬学的に許容できる塩は、2003年3月18日に付与された米国特許第6534524号明細書および2003年3月11日に付与された米国特許第6531491号明細書に記載されており、その開示があらゆる目的に関して参照によりそのまま本願明細書に援用される。この化合物は、タンパク質キナーゼ受容体阻害剤であり、血管新生受容体シグナリングの合成低分子阻害剤である。
【0005】
タンパク質キナーゼは、タンパク質中の特定のチロシン、セリンまたはトレオニン残基のヒドロキシル基のリン酸化を触媒する酵素のファミリーである。通常、このようなリン酸化は、タンパク質の機能を劇的に混乱させるので、タンパク質キナーゼは、代謝、細胞増殖、細胞分化および細胞生存を含む様々な細胞プロセスの調節において重要である。タンパク質キナーゼの活性が必要であることが知られている多くの様々な細胞機能のうち、いくつかのプロセスは、ある疾患状態に治療的に介入するための魅力的なターゲットである。タンパク質キナーゼが重要な役割を果たす2つの例は、血管新生および細胞周期調節である。
【0006】
望ましくない血管新生は、網膜症、乾癬、慢性関節リウマチ、加齢性黄斑変性症(AMD)および癌(充実性腫瘍を含む)などのいくつかの疾患の顕著な特徴である(Folkman、Nature Med.、1、27〜31(1995))。血管新生プロセスに関与していることが判明しているタンパク質キナーゼには、VEGF−R2(血管内皮成長因子受容体2、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)およびFLK−1としても知られている)が含まれる。したがって、VEGF−R2のキナーゼ活性の直接的な阻害は、外来VEGFの存在下においても血管新生の低減をもたらしうる(Strawnら、Cancer Research、56、3540〜3545(1996)参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、タンパク質キナーゼの有効な阻害剤に対する必要性が存在する。さらに、当業者には理解されるであろうが、キナーゼ阻害剤が、信頼の高い製剤に適用しうる物理的特性を有することが望ましい。これらの特性には、熱、湿気および光に対する安定性が含まれる。
【0008】
結晶多形体は、同じ化合物の異なる結晶形である。多形体との用語は、同じ化合物の水和物(例えば、結晶構造中に存在している水と結合)および溶媒和物(例えば、水以外の溶媒と結合)を含む他の固体状態の分子形態を含んでも、含まなくてもよい。異なる結晶多形体は、格子内での分子の異なる充填により、異なる結晶構造を有する。これは、異なる結晶対称および/または単位セルパラメーターをもたらし、このことが、結晶または粉末のX線回折特性などの物理的特性に直接的に影響を及ぼす。例えば、異なる多形体は通常、異なるセットの角で回折し、強度的に異なる値をもたらすことになる。したがって、粉末X線回折を使用して、異なる多形体または1個を上回る多形体を含む固体形態を、再現可能および信頼可能な方法で識別することができる。
【0009】
結晶多形体形態は、薬剤工業にとって、特に、適切な剤形の開発に関与している工業にとって重要である。その多形体形態が、臨床または安定性研究の間に一定性を維持できない場合、使用または研究される正確な剤形を、ロット同士で比較することができない。さらに、化合物を臨床研究または市販品において使用する場合に、選択された多形体形態を伴う化合物を高純度で製造する方法を得ることが望ましい。それというのも、存在する不純物が、望ましくない毒性作用をもたらすことがあるためである。一定の多形体形態は、高い熱力学的安定性を示しうるか、高純度で大量に、容易に製造することができるので、医薬製剤に含有させるためにさらに適している。一定の多形体は、様々な格子エネルギーにより、吸湿傾向がない、可溶性の改善および高い溶解速度などの他の有利な物理的特性を示しうる。
【0010】
本明細書の背景技術の検討は、本発明の内容を説明するために含んでいる。このことは、言及したもののいずれかが、任意の請求項の優先日の時点で、任意の国において、公開されているか、知られているか、一般的知識の一部であることを認めるものと理解されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(「化合物1」とも称される)の新規の多形体形態に関する。
【0012】
【化2】
化合物1は、VEGF−R2の強力な阻害剤であり、非常に有利な毒性および薬理学的プロファイルを示している。さらに本発明は、化合物1の別個の多形体形態を調製する方法、医薬組成物におけるその使用ならびに望ましくない血管新生および/または細胞増殖を伴う疾患状態の治療におけるその使用に関する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、I型として示される多形体である。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なI型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約8.1および約29.8の回折角(2θ)におけるピークを含む粉末X線回折(PXRD)パターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約8.1、約18.2、約18.5および約29.8の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1、18.2±0.1、18.5±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約8.1、約9.1、約10.6、約15.4、約16.3、約17.4、約18.2、約18.5、約20.0、約20.8、約23.2、約24.0、約25.9、約27.4および約29.8の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1、9.1±0.1、10.6±0.1、15.4±0.1、16.3±0.1、17.4±0.1、18.2±0.1、18.5±0.1、20.0±0.1、20.8±0.1、23.2±0.1、24.0±0.1、25.9±0.1、27.4±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図1Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図1Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0015】
他の実施形態は、8.1±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1、18.2±0.1、18.5±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.1±0.1、9.1±0.1、10.6±0.1、15.4±0.1、16.3±0.1、17.4±0.1、18.2±0.1、18.5±0.1、20.0±0.1、20.8±0.1、23.2±0.1、24.0±0.1、25.9±0.1、27.4±0.1および29.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
他の実施形態は、化合物1の多形体I型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール、およびメタノールなどのアルコールを含むスラリーを調製し、このスラリーを約40℃から約60℃の間で加熱し、スラリーに水を加え、スラリーを冷却し、スラリーの固体部分と他の成分とを分離することを含む。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、II型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なII型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約8.5および約18.8の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.5±0.1および18.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約8.5、約10.9、約14.8および約18.8の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.5±0.1、10.9±0.1、14.8±0.1および18.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約8.5、約10.9、約14.8、約16.2、約18.8、約21.5、約24.8、約25.9、約30.3および約32.2の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.5±0.1、10.9±0.1、14.8±0.1、16.2±0.1、18.8±0.1、21.5±0.1、24.8±0.1、25.9±0.1、30.3±0.1および32.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図2Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図2Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0018】
他の実施形態は、8.5±0.1および18.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、結晶形が8.5±0.1、10.9±0.1、14.8±0.1および18.8±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、結晶形が8.5±0.1、10.9±0.1、14.8±0.1、16.2±0.1、18.8±0.1、21.5±0.1、24.8±0.1、25.9±0.1、30.3±0.1および32.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
他の実施形態は、化合物1の多形体II型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールを周囲温度で湿気にさらすことを含む。他の態様では、湿気は、少なくとも相対湿度80%である。
【0020】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がIII型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なIII型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約13.0および約24.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、13.0±0.1および24.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約13.0、約13.3、約21.7および約24.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、13.0±0.1、13.3±0.1、21.7±0.1および24.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約10.5、約13.0、約13.3、約15.8、約16.4、約17.5、約19.5、約20.1、約21.4、約21.7、約24.1、約25.0および約26.9の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、10.5±0.1、13.0±0.1、13.3±0.1、15.8±0.1、16.4±0.1、17.5±0.1、19.5±0.1、20.1±0.1、21.4±0.1、21.7±0.1、24.1±0.1、25.0±0.1および26.9±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図3Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図3Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0021】
他の実施形態は、13.0±0.1および24.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、13.0±0.1、13.3±0.1、21.7±0.1および24.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、10.5±0.1、13.0±0.1、13.3±0.1、15.8±0.1、16.4±0.1、17.5±0.1、19.5±0.1、20.1±0.1、21.4±0.1、21.7±0.1、24.1±0.1、25.0±0.1および26.9±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
他の実施形態は、化合物1の多形体III型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの薬学的に許容できる塩、塩基および非プロトン性溶媒を含むスラリーを調製し、このスラリーを約45℃から約80℃の間で加熱および攪拌し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。他の態様では、非プロトン性溶媒は、酢酸エチルである。さらに他の態様では、塩基は、NaHCO3である。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がIV型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なIV型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約8.9および約15.7の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1および15.7±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約8.9、約14.6、約15.7および約19.2の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1、14.6±0.1、15.7±0.1および19.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約8.9、約12.0、約14.6、約15.2、約15.7、約17.8、約19.2、約20.5、約21.6、約23.2、約24.2、約24.8、約26.2および約27.5の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1、12.0±0.1、14.6±0.1、15.2±0.1、15.7±0.1、17.8±0.1、19.2±0.1、20.5±0.1、21.6±0.1、23.2±0.1、24.2±0.1、24.8±0.1、26.2±0.1および27.5±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図4Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図4Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0024】
他の実施形態は、8.9±0.1および15.7±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1、14.6±0.1、15.7±0.1および19.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、8.9±0.1、12.0±0.1、14.6±0.1、15.2±0.1、15.7±0.1、17.8±0.1、19.2±0.1、20.5±0.1、21.6±0.1、23.2±0.1、24.2±0.1、24.8±0.1、26.2±0.1および27.5±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
他の実施形態は、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの別の多形体形態から化合物1の多形体IV型を製造する方法であり、これは、別の多形体形態を加熱して、その別の多形体形態を水和または溶媒和させることを含む。他の態様では、真空下に加熱する。さらに他の態様では、加熱を、約110℃から約135℃の間で行う。さらに他の態様では、別の多形体形態の溶媒和物は、メタノールの溶媒和物、エタノールの溶媒和物および酢酸エチルの溶媒和物からなる群から選択される。さらに他の態様では、別の多形体形態は、化合物1の多形体III型である。
【0026】
本発明の他の態様は、化合物1の多形体VI型を化合物1の多形体IV型に変換する方法であり、これは、芳香族溶媒中の化合物1の多形体VI型のスラリーを加熱し、スラリーの固体部分を他の成分から単離することを含む。さらなる態様では、加熱ステップを少なくとも110℃で行う。
【0027】
本実施形態の他の態様は、化合物1の多形体IV型を製造する方法であり、これは、化合物1の水和形態および芳香族溶媒を含むスラリーを約110℃から約140℃の間で加熱し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。さらなる態様では、芳香族溶媒は、トルエンまたはキシレンである。さらに他の態様では、化合物1の水和形態は、化合物1の多形体III型である。
【0028】
この実施形態の他の態様は、化合物1の多形体IV型を製造する方法であり、これは、化合物1を再結晶化させて再結晶化生成物を生じさせ、この再結晶化生成物および芳香族溶媒を含むスラリーを約110℃から約150℃の間で加熱し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。さらなる態様では、化合物1をジクロロメタンおよびメタノールを含む溶液から再結晶化させる。さらに他の態様では、芳香族溶媒は、トルエンまたはキシレンである。
【0029】
この実施形態の他の態様は、化合物1の多形体IV型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールを水溶性ポリマーの溶液から再結晶化させ、この溶液に水を加えて、固体を沈殿させ、沈殿した固体を水溶性ポリマーおよび水から分離することを含む。さらに他の態様では、水溶性ポリマーは、(ポリ)エチレングリコールである。さらに他の態様では、(ポリ)エチレングリコールは、PEG−400である。
【0030】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がVI型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なVI型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約9.6および約18.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1および18.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約9.6、約11.6、約18.1および約25.2の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1、11.6±0.1、18.1±0.1および25.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約9.6、約11.6、約17.5、約18.1、約19.9および約25.2の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1、11.6±0.1、17.5±0.1、18.1±0.1、19.9±0.1および25.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図5Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図5Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0031】
他の実施形態は、9.6±0.1および18.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1、11.6±0.1、18.1±0.1および25.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.6±0.1、11.6±0.1、17.5±0.1、18.1±0.1、19.9±0.1および25.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
他の実施形態は、化合物1の多形体VI型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールの薬学的に許容できる塩、塩基およびプロトン性溶媒を含むスラリーを調製し、このスラリーを約45℃から約80℃での間で加熱および攪拌し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。さらに他の態様では、プロトン性溶媒は、アルコールである。さらに他の態様では、プロトン性溶媒は、エタノールである。さらに他の態様では、塩基は、NaHCO3である。
【0033】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がVII型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なVII型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約9.4および約17.0の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1および17.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約9.4、約17.0、約23.6および約25.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1、17.0±0.1、23.6±0.1および25.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約9.4、約10.2、約16.2、約17.0、約18.9、約19.7、約21.5、約22.7、約23.6、約25.1、約26.2、約27.4および約29.3の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1、10.2±0.1、16.2±0.1、17.0±0.1、18.9±0.1、19.7±0.1、21.5±0.1、22.7±0.1、23.6±0.1、25.1±0.1、26.2±0.1、27.4±0.1および29.3±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図6Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図6Bに示されているものと実質的に同じ示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示すことを特徴とする、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0034】
他の実施形態は、9.4±0.1および17.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1、17.0±0.1、23.6±0.1および25.1±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。さらに一層特には、本発明は、9.4±0.1、10.2±0.1、16.2±0.1、17.0±0.1、18.9±0.1、19.7±0.1、21.5±0.1、22.7±0.1、23.6±0.1、25.1±0.1、26.2±0.1、27.4±0.1および29.3±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0035】
他の実施形態は、化合物1の多形体VII型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールまたはその溶媒和物およびプロトン性溶媒を含むスラリーを調製し、このスラリーを約45℃から約80℃の間で加熱および攪拌し、スラリーの固体部分を他の成分から分離することを含む。さらに他の態様では、プロトン性溶媒は、イソプロパノールである。
【0036】
他の実施形態では、本発明は、結晶形がVIII型として示される多形体である、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。他の実施形態では、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供するが、前記結晶形は、実質的に純粋なVIII型の多形体である。他の実施形態では、本発明は、約24.6および約26.3の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRD図を示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、24.6±0.1および26.3±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、約24.6、約25.9、約26.3および約32.0の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、24.6±0.1、25.9±0.1、26.3±0.1および32.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに特には、本発明は、約10.7、約15.5、約15.9、約20.6、約22.7、約24.6、約25.9、約26.3および約32.0の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、10.7±0.1、15.5±0.1、15.9±0.1、20.6±0.1、22.7±0.1、24.6±0.1、25.9±0.1、26.3±0.1および32.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。さらに一層特には、本発明は、図7に示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を提供する。
【0037】
他の実施形態は、24.6±0.1および26.3±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、24.6±0.1、25.9±0.1、26.3±0.1および32.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物である。さらに一層特には、本発明は、10.7±0.1、15.5±0.1、15.9±0.1、20.6±0.1、22.7±0.1、24.6±0.1、25.9±0.1、26.3±0.1および32.0±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含むPXRDパターンを示す化合物1またはその薬学的に許容できる塩の結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0038】
他の実施形態は、化合物1の多形体VIII型を製造する方法であり、これは、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールを最小量の環流非プロトン性溶媒に溶かして溶液を形成し;この溶液を冷却して結晶を生じさせ、結晶生成物を単離することを含む。さらに他の態様では、非プロトン性溶媒は、ジオキサンである。
【0039】
本発明の他の実施形態は、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の固体形態であり、この固体形態は、次の結晶形:多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型のうちの少なくとも2種を含む。
【0040】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体I型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体I型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体I型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体I型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0041】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体II型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体II型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体II型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体II型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0042】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体III型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体III型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体III型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体III型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0043】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体IV型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体IV型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体IV型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体IV型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0044】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体VI型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VI型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VI型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VI型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0045】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体VII型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VII型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VII型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VII型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0046】
本発明のさらに他の態様は、化合物1の多形体VIII型を含む医薬組成物である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VIII型を投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。さらに他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VIII型を投与することを含む、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生などの哺乳動物における高増殖性障害を治療する方法である。他の態様は、治療有効量の化合物1の多形体VIII型を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、VEGF活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法である。
【0047】
本発明はさらに、少なくとも1種の化合物1の多形体形態を投与することにより、例えば哺乳動物組織においてタンパク質キナーゼ活性(例えば特に、VEGF、VEGF、FGF、CDK複合体、TEK、CHK1、LCK、FAKおよびホスホリラーゼキナーゼの受容体)を調整または阻害する方法を対象としている。
【0048】
さらに本発明は、高増殖性障害またはVEGF活性により媒介される疾患状態を治療する併用療法を対象としており、これは、前記で検討された多形体形態または医薬組成物と、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、シグナル伝達阻害剤および抗増殖剤から選択される治療有効量の1種または複数の物質との組合わせを含む医薬組成物を、治療有効量で、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む。
【0049】
「活性剤」または「活性成分」との用語は、化合物1の多形体形態または化合物1の2種以上の多形体形態を含む固体形態を指している。
【0050】
「周囲温度」との用語は、実験室設定において通常は遭遇する温度状態を指している。これには、約20から約30℃のおおよその温度範囲が含まれる。
【0051】
「水性塩基」との用語は、任意の有機または無機塩基を指している。水性塩基には、例に過ぎないが、炭酸水素ナトリウムなどの金属炭酸水素塩、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどが含まれる。
【0052】
「芳香族溶媒」との用語は、芳香族部を有する有機溶媒を指しており、例に過ぎないが、ベンゼン、トルエン、各キシレン異性体またはこれらの混合物などが含まれる。
【0053】
「化学的安定性」との用語は、特定の化合物がその化学的完全性を維持するタイプの安定性を指しており、これらに限られないが、熱安定性、光安定性および水分安定性が含まれる。
【0054】
「検出可能量」との用語は、粉末X線回折、示差走査熱量測定法、HPLC、FT−IR、ラマン分光法などの慣用の技術を使用して検出することができる量または単位用量当たりの量を指している。
【0055】
「湿気にさらす」との用語は、湿潤器、湿潤箱または相対湿度を制御することができる何らかの装置内で、物質を湿気にさらすプロセスを指している。この用語はさらに、貯蔵の間に物質を周囲湿気にさらすプロセスを指してもよい。
【0056】
「高増殖性障害」との用語は、正常細胞の異常な成長および異常な細胞の成長を含む、正常な制御メカニズムから独立した異常な細胞成長(例えば接触阻害の喪失)を指している。これには、これらに限られないが、良性および悪性腫瘍細胞(腫瘍)の異常な成長が含まれる。このような良性増殖性疾患の例は、乾癬、良性前立腺肥大、ヒトパピローマウイルス(HPV)および再狭窄である。「高増殖性障害」との用語はさらに、これらに限られないが、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頚部癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、上皮小体癌、副腎癌、軟部組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫または前記の癌の1種または複数の組合せを含む癌をも指している。前記の方法の他の実施形態では、前記の異常な細胞成長は、これらに限られないが、乾癬、良性前立腺肥大または再狭窄を含む良性増殖性疾患である。
【0057】
「不活性溶媒」との用語は、溶液またはスラリー中の他の成分と化学的に反応しない、スラリーの任意の溶媒または液体成分を指している。不活性溶媒には、例に過ぎないが、芳香族溶媒、酢酸エチル、アセトン、メチルt−ブチルエーテル、ジオキサン、THFなどの非プロトン性溶媒が含まれる。プロトン性溶媒には、例に過ぎないが、メタノール、エタノール、各プロパノール異性体、各ブタノール異性体などが含まれる。
【0058】
「VEGF活性により媒介される」との用語は、VEGFタンパク質キナーゼ活性により調節、調整または阻害される生物学的または分子的プロセスを指している。一定の用途では、CDK複合体を随伴するタンパク質キナーゼ活性の阻害、特に、血管新生および/または炎症を阻害する阻害が好ましい。本発明は、化合物1の多形体形態を投与することにより、例えば哺乳動物組織においてタンパク質キナーゼ活性を調整または阻害する方法を含む。抗増殖剤としての薬剤の活性は、既知の方法、例えば、MTTアッセイでの全細胞培養を使用することにより容易に測定される。キナーゼの活性などのタンパク質キナーゼ活性の媒介剤としての化合物1の多形体形態の活性は、in vivoおよび/またはin vitroアッセイを含む当業者が利用可能な任意の方法により測定することができる。
【0059】
「最小量」との用語は、所定の温度で物質を完全に溶解するために必要な溶媒の最も少ない量を指している。
【0060】
「薬学的に許容できる塩」との用語は、規定の化合物の遊離酸および塩基の生物学的有効性を保持しており、生物学的またはその他の点で望ましくないものではない塩を指している。本発明の化合物は、十分に酸性な基、十分に塩基性の基または両方の官能基を有するので、多くの無機または有機塩基ならびに無機および有機酸のうちの任意のものと反応して、薬学的に許容できる塩を形成しうる。薬学的に許容できる塩の例には、本発明の化合物と鉱酸もしくは有機酸または無機塩基とを反応させることにより調製される塩、例えば、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、パラトルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩およびマンデル酸塩を含む塩が含まれる。
【0061】
本発明の化合物が塩基である場合、望ましい薬学的に許容できる塩を、当技術分野で利用可能な適した方法、例えば、遊離塩基を無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などで、または有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸またはガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸または酒石酸などのα−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸またはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸またはケイ皮酸などの芳香族酸、p−トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸などのスルホン酸で処理することにより調製することができる。
【0062】
本発明の化合物が酸である場合、望ましい薬学的に許容できる塩を、適切な方法、例えば、遊離酸を無機または有機塩基、例えば、アミン(第1級、第2級または第3級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物などで処理することにより調製することができる。適切な塩の実例には、グリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第1級、第2級および第3級アミンおよびピペリジン、モルホリンおよびピペラジンなどの環式アミンに由来する有機塩ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムに由来する無機塩が含まれる。
【0063】
「多形体」との用語は、同じ化合物の異なる結晶形を指しており、これらに限られないが、同一の化合物の水和物(例えば結晶構造中に存在する水と結合)および溶媒和物(例えば水以外の溶媒と結合)を含む他の固体状態分子形態を含む。
【0064】
「ピーク強度」との用語は、所定のX線回折パターンの範囲内での相対シグナル強度を指している。相対ピーク強度に影響を及ぼしうるファクターは、試料厚および優先配向(即ち結晶粒子はランダムに分布していない)である。
【0065】
本願明細書で使用する場合、「ピーク位置」との用語は、粉末X線回折実験で測定および観察されるX線反射位置を指している。ピーク位置は単位セルの寸法に直接関与している。個々のピーク位置により識別されるピークが、化合物1の様々な多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型の回折パターンから抽出されている。
【0066】
「PEG」との用語は、ポリ(エチレングリコール)を指している。PEGは、市販されており、様々な範囲のポリマー鎖長、したがって様々な粘度を有する。PEG400は、アルコール、アセトン、ベンゼン、クロロホルム、酢酸、CCl4および水に可溶性である。
【0067】
「薬学的に許容できる担体、希釈剤または媒体」との用語は、特定の薬剤と共に含まれて、医薬製剤を形成しうる固体または液体であってよい1種の物質(または複数の物質)を指している。固体担体の例は、ラクトース、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、シロップ、落花生油、オリーブ油、水などである。同様に、担体または希釈剤には、単独か、ろう、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレートなどを伴うモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で知られている放出時間遅延または放出時間制御材料が含まれうる。
【0068】
「医薬組成物」との用語は、1種または複数の本願明細書に記載の化合物もしくは多形体またはそれらの生理学的/薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物と、生理学的/薬学的に許容できる担体および賦形剤などの他の化学的成分との混合物を指している。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0069】
「再結晶化」との用語は、必要な場合には加熱しながら第1の溶媒に固体を完全に溶解させ、次いで、通常は溶液を冷却するか、固体がほとんど溶けない第2の溶媒を加えることにより沈殿させるプロセスを指している。
【0070】
「相対湿度」との用語は、所定の温度での空気中の水蒸気の量と、その温度および圧力で保持されうる水蒸気の最大量との、パーセンテージで表される比を指している。
【0071】
「相対強度」との用語は、試料X線回折パターンに由来する強度値を指している。回折パターンのための完全縦座標距離範囲を、100の値に指定する。この範囲強度で約50%から約100%に該当する強度を有するピークは、非常に強い(vs)と称される;約50%から約25%に該当する強度を有するピークは、強い(s)と称される。付加的なより弱いピークが、通常の回折パターンに存在し、これも、所定の多形体の特徴である。
【0072】
「スラリー」との用語は、液体媒体、通常は水または有機溶媒、に懸濁されている固体物質を指している。
【0073】
「〜から分離する」との用語は、次のステップには限られないが、濾過、特別な溶媒または水での洗浄、熱および/または真空下での乾燥を含む、所望の薬剤を他の望ましくない薬剤から単離する合成の際のステップを指している。
【0074】
化合物1の特定の多形体形態に関する「実質的に純粋な」との用語は、その多形体形態が、他の化合物1の多形体形態を含む不純物を10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満、好ましくは1重量%未満含有することを意味している。このような純度は例えば、粉末X線回折により決定することができる。
【0075】
「有効量」とは、真核細胞、例えば哺乳動物、昆虫、植物またはカビの細胞の増殖を有意に阻害するか、かつ/または脱分化を予防し、示されている用途、例えば特定の治療に有効である薬剤の量を意図している。
【0076】
「治療有効量」との用語は、治療される障害の1つまたは複数の症状をある程度まで軽減する化合物または多形体の投与量を指している。癌の治療では、治療有効量は、次の効果のうちの少なくとも1つを有する量を指す:
(1)腫瘍のサイズを低下させる、
(2)腫瘍転移を阻害する(即ち、ある程度遅くするか、好ましくは止める)、
(3)腫瘍成長をある程度阻害する(即ち、ある程度遅くするか、好ましくは止める)、
(4)癌に随伴する1つまたは複数の症状をある程度軽減する(または好ましくは除去する)。
【0077】
「2シータ値」または「2θ」との用語は、X線回折実験の実験装置をベースとしたピーク位置を指しており、回折パターンでの共通横座標単位である。実験装置は、反射が回折する場合に、入射光束が一定の格子面と角度シータ(θ)を形成する際には、反射光束が角度2シータ(θ)で記録されることを必要とする。
【0078】
「治療する」、「治療すること」および「治療」との用語は、高増殖性障害および/またはその付随症状を緩和または除去する方法を指している。特に癌に関しては、これらの用語は単に、癌に冒されている個人の期待寿命を延ばすか、疾患の1つまたは複数の症状を低減しうるであろうことを意味する。
【0079】
「真空下」との用語は、実験室用オイルまたはオイルフリー膜真空ポンプにより得られる通常の圧力を指している。
【0080】
「粉末X線回折パターン」との用語は、実験的に観察されるジフラクトグラムまたはそれに由来するパラメーターを指している。粉末X線回折パターンは、ピーク位置(横座標)およびピーク強度(縦座標)により特徴づけられる。
【0081】
「キシレン」との用語は、各キシレン異性体またはそれらの混合物を指している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
物質化合物1は、1種よりも多い多形性結晶形態で存在しうることが意外にも判明した。これらの形態は、癌を含む高増殖性適応症を治療するための製剤された製品中で使用することができる。各形態は、生物学的利用率、安定性または製造可能性において他を上回る利点を有する。他の多形体形態よりもバルク調製および取扱いに適しているであろう化合物1の結晶多形体形態が発見された。高純度でこれらの多形体形態を製造するための方法が、本願明細書に記載されている。本発明の他の目的は、化合物1の他の多形体形態を実質的に含まずに、化合物1の各多形体形態を調製する方法を提供することである。加えて、前記で検討された様々な多形体形態の化合物1を含む医薬製剤およびこのような医薬製剤を投与することにより高増殖性状態を治療する方法を提供することも、本発明の目的である。
【0083】
I.化合物1の多形性形態
化合物1の各結晶形は、次のうちの1つまたは複数により特徴づけることができる:粉末X線回折パターン(即ち様々な回折角(2θ)でのX線回折ピーク)、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムの吸熱により示される融点開始(水和形態では脱水の開始)、ラマンスペクトルダイアグラム図、水溶性、調和国際会議(ICH)高強度光条件下での光安定性ならびに物理的および化学的貯蔵安定性。例えば、化合物1の多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型の試料は、その粉末X線回折パターンにおけるピークの位置および相対強度により特徴づけられた。粉末X線回折パターンは、化合物1の多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型のそれぞれで異なる。したがって化合物1のこれらの多形体形態は、粉末X線回折を使用して識別することができる。
【0084】
化合物1の各多形体または非晶質形態の粉末X線回折パターンを、40kVおよび50mAで運転されるCu Kα X線放射源(1.5406Å)を備えたShimadzu XRD−6000 X線回折計で測定した。試料を試料ホルダーに入れ、次いで密閉し、ガラス面で平らにした。分析の間、試料を60rpmで回転させ、4から40度(θ〜2θ)の角度から、0.04度段階で1分当たり5度で、または0.02度段階で1分当たり2度で分析した。限られた材料のみが利用可能な場合には、試料をケイ素プレート(ゼロ背景)に載せ、回転させずに分析した。ピーク位置および強度帰属により特徴づけられるX線回折ピークを、化合物1の各多形体形態の粉末X線ジフラクトグラムから抽出した。当業者であれば、ピーク位置(2θ)は、典型的には0.1度程度の多少の装置間変動性を示すであろうことを認めるであろう。したがって、ピーク位置(2θ)が報告される場合、当業者であれば、このような数は、このような装置間変動性を包含するものと認めるであろう。さらに、本発明の結晶形が、所定の図面に示されているX線回折パターンと実質的に同じ回折パターンを有すると記載されている場合、「実質的に同じ」との用語は、回折ピーク位置におけるこのような装置間変動性を包含するものとする。さらに、相対的ピーク強度は、装置間変動性の他に、結晶化度、好ましい配向、調製試料表面および当業者には知られている他のファクターによる変動性を示すであろうことを、当業者であれば認めるであろうし、単なる定性基準として採用すべきである。
【0085】
示差走査熱量測定法(DSC)を使用しても、化合物1の様々な多形体形態を識別することができた。DSCにより、温度上昇に伴う試料溶液と適切な参照溶媒との熱エネルギー吸収における差が測定される。通常、試料が加熱されるにつれて、DSCサーモグラムは、吸熱(エネルギー吸収を示す)により、さらに発熱(エネルギー放出を示す)により特徴づけられる。Mettler Toledo DSC821装置を使用して、10℃/分の走査速度で30〜250℃の温度範囲にわたって、DSCサーモグラフを得た。試料を40μlアルミニウムるつぼに秤量し、これを密閉し、ただ1つの穴を開けた。融点温度の外挿開始および、適用可能な場合には水和温度の開始も算出した。DSC分析が行われる加熱速度(即ち走査速度)、DSC開始時間を規定し、終了させる方法、使用される校正標準、校正装置、試料の相対湿度および化学的純度に応じて、本発明の化合物により示される吸熱は、その吸熱の上または下で変動しうる(結晶多形体溶融では約0.01〜5℃および多形体水和では約0.01から20℃)。任意の所定の例では、観察される吸熱は、装置によっても異なりうる;しかしながら、通常、装置が同様に校正されるなら、本願明細書に規定の範囲内であろう。
【0086】
化合物1の様々な多形体形態をさらに、熱重量分析(TGA)を使用して識別した。TGAを、Mettler Toledo TGA500装置で行った。TGAは、試験体を空気中または窒素などの制御雰囲気中で加熱する場合の、試験体の重量変化を記録する試験手順である。温度重量曲線(サーモグラム)により、溶媒および水含分ならびに物質の熱安定性に関する情報が得られる。
【0087】
化合物1の様々な多形体形態を、異なる安定性および異なる溶解性により識別することもできる。
【0088】
一実施形態では、本発明の多形体形態は、実質的に純粋であるが、このことは、化合物1の各多形体形態が、他の化合物1の多形体形態を含む不純物を10重量%未満、例えば5重量%未満、または例えば3重量%未満、さらに例えば1重量%未満含むことを意味する。
【0089】
本発明の固体形態は、1種を上回る多形体形態を有することもできる。所定の化合物の結晶形が単一の多形体の実質的に純粋な形態で存在することもできるし、2種以上の異なる多形体を有する結晶形で存在することもできることは、当業者であれば分るであろう。固体形態が2種以上の多形体を含有する場合、X線回折パターンは、本発明の個々の多形体それぞれのピーク特徴を有するであろう。例えば、2種の多形体を含む固体形態は、実質的に純粋な多形体形態に対応する2つのX線回折パターンが混ざり合った粉末X線回折パターンを有するであろう。一実施形態では例えば、第1および第2多形体形態を含む本発明の固体形態は、少なくとも10%の第1多形体を含む。他の実施形態では、固体形態は、少なくとも20%の第1多形体を含む。さらに他の実施形態は、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%の第1多形体を含む。様々な量での個々の多形体数種のこのような多くの組合せが、可能であることは、当業者であれば分るであろう。
【0090】
A.多形体I型
高温で攪拌することによりメタノールおよび水から化合物1を直接結晶化させることにより、化合物1の多形体I型を製造することができる。化合物1の多形体I型は、80℃で化学的に安定で、相対湿度75%、40℃で少なくとも13日間安定である。化合物1の多形体I型は、pH2で179μg/mlおよびpH6.5で9μg/mLの水溶性を有する。
【0091】
I型は、次のおおよその回折角(2θ):8.1、9.1、10.6、15.4、16.3、17.4、18.2、18.5、20.0、20.8、23.2、24.0、25.9、27.4および29.8にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴づけられる。図1Aは、I型の粉末X線回折パターンを示している。図1Bに示されているI型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で183〜190℃に吸熱開始を示している。
【0092】
B.多形体II型
化合物1の多形体II型は、水和物である。化合物1の多形体I型を室温で相対湿度93%に6日間さらすことにより、化合物1の多形体II型を製造することができる。
【0093】
II型は、次のおおよその回折角(2θ):8.5、10.9、14.8、16.2、18.8、21.5、24.8、25.9、30.3および32.2にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴づけられる。図2Aは、II型の粉末X線回折パターンを示している。図2Bに示されているII型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、102、152および202℃に吸熱開始、続いて206℃に発熱および210℃にさらなる発熱を示している。
【0094】
C.多形体III型
化合物1のp−トルエンスルホン酸塩誘導体を酢酸エチル中で、NaHCO3溶液で中和することにより、化合物1の多形体III型を製造することができる。化合物1の多形体III型は通常、酢酸エチル溶媒和物である。
【0095】
III型は、次のおおよその回折角(2θ):10.5、13.0、13.3、15.8、16.4、17.5、19.5、20.1、21.4、21.7、24.1、25.0および26.9にピークを有するX線回折パターンにより特徴づけられる。図3Aは、III型の粉末X線回折パターンを示している。図3Bに示されているIII型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、125〜129℃に吸熱開始、続いて210℃にさらなる吸熱を示している。化合物1のIII型はさらに、熱重量分析(TGA)により特徴づけられている。図3Cは、多形体III型の試料の熱重量分析(TGA)プロファイルである。化合物1の多形体III型の試料の通常のTGAサーモグラムは、脱溶媒を示す。約10℃/分の走査速度での125〜129℃での10%の試料重量損失により、酢酸エチルの喪失が示されている。
【0096】
D.多形体IV型
複数の異なる手順:(i)真空中、110〜135℃での化合物1の多形体III型の直接的脱溶媒;(ii)110〜140℃でトルエンまたはキシレン中で多形体III型をスラリー化することによる多形体III型の固体状態変換を介して;(iii)ジクロロメタン/メタノール溶液からの化合物1の再結晶化、それに続く140℃、トルエン中での沈殿物のスラリー化を介して;(iv)140℃でトルエンスラリーとして多形体VI型を環流させることによる多形体VI型の固体状態変換を介して;および(v)PEG−400溶液中、水を用いての化合物1の沈殿を介して、化合物1の多形体IV型を調製することができる。多形体IV型の水溶性は、約pH1で約550μg/mL、約pH2で約157μg/mL、約pH4で約6μg/mL、約pH6.5で約2μg/mLおよび約pH8で約2μg/mLである。
【0097】
多形体IV型は、80℃および40℃で相対湿度75%で少なくとも30日間は物理的および化学的に安定である。多形体IV型は、化合物1の熱力学的に最も安定な形態であると考えられる。
【0098】
IV型は、次のおおよその回折角(2θ):8.9、12.0、14.6、15.2、15.7、17.8、19.2、20.5、21.6、23.2、24.2、24.8、26.2および27.5にピークを有するX線回折パターンによりさらに特徴づけられる。図4Aは、IV型の粉末X線回折パターンを示している。図4Bに示されているIV型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、216℃に吸熱開始を示す。
【0099】
E.多形体VI型
NaHCO3溶液中でエタノールを用いて化合物1を直接的に結晶化させることにより、化合物1の多形体VI型を調製することができる。VI型は、次のおおよその回折角(2θ):9.6、11.6、17.5、18.1、19.9および25.2にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴づけられる。図5Aは、VI型の粉末X線回折パターンを示している。図5Bに示されているVI型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、197℃に吸熱開始を示す。
【0100】
F.多形体VII型
イソプロパノール、テトラヒドロフランまたはメチル−t−ブチルエーテル中の化合物1の多形体VI型の懸濁液を環流させることにより、化合物1の多形体VII型を調製することができる。
【0101】
VII型は、次のおおよその回折角(2θ):9.4、10.2、16.2、17.0、18.9、19.7、21.5、22.7、23.6、25.1、26.2、27.4および29.3にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴づけられる。図6Aは、VII型の粉末X線回折パターンを示している。図6Bに示されているVII型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、105℃に吸熱開始、続いて115℃に発熱、次いで137および175℃に吸熱を示す。
【0102】
G.多形体VIII型
ジオキサン中の化合物1の多形体VI型の懸濁液を環流させることにより、化合物1の多形体VIII型を調製することができる。
【0103】
VII型は、次のおおよその回折角(2θ):10.7、15.5、15.9、20.6、22.7、24.6、25.9、26.3および32.0にピークを有するX線回折パターンにより特徴づけられる。図7は、VIII型の粉末X線回折パターンを示している。
【0104】
II.本発明の医薬組成物
本発明の活性剤(即ち、本願明細書に記載の化合物1の多形体またはこのような多形体の2種以上を含む固体形態)を、哺乳動物の医療使用に適している医薬組成物に配合することができる。化合物1またはその薬学的に許容できる塩の任意の多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型の有効用量を患者に提供するために、いかなる適切な投与経路を採用することができる。例えば経口または非経口製剤などを使用することができる。剤形には、カプセル、錠剤、分散剤、懸濁剤など、例えば、化合物1またはその薬学的に許容できる塩の腸溶被覆カプセルおよび/または錠剤、腸溶被覆ペレットを含むカプセルおよび/または錠剤が含まれる。いずれの剤形でも、化合物1の多形体IV型またはその薬学的に許容できる塩を、他の適切な成分と混合することができる。組成物を、単位投与形態で簡便に提供することができ、薬剤分野で知られている任意の方法により調製することができる。本発明の医薬組成物は、治療有効量の活性剤ならびに1種または複数の不活性な薬学的に許容できる担体および場合によって任意の他の治療成分、安定剤などを含む。製剤の他の成分と相容性であり、その受容者に過度に有害でないという意味において、担体は、薬学的に許容できなければならない。組成物はさらに、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)、香料、矯味剤、無機塩(例えば塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば塩化ベンザルコニウム)、甘味剤、静電防止剤、界面活性剤(BASFから入手可能な「TWEEN20」および「TWEEN80」などのポリソルベートならびにF68およびF88などのプルロニック)、ソルビタンエステル、脂質(例えばレシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質、脂肪酸および脂肪エステル、ステロイド(例えばコレステロール))およびキレート化剤(例えばEDTA、亜鉛および他のこのような適切なカチオン)を含むこともできる。本発明による組成物で使用するために適している他の医薬賦形剤および/または添加剤は、「Remington:The Science &Practice of Pharmacy、19th ed.、Williams & Williams、(1995)およびPhysician’s Desk Reference、52nd ed.、Medical Economics、Moritvale、NJ(1998)およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、Third Ed.、Ed.A.H.Kibbe、Pharmaceutical Press、2000に挙げられている。本発明の活性剤を、経口、直腸、局所、経鼻、眼または非経口(腹腔内、静脈内、皮下または筋肉内注射)投与に適しているものを含む組成物に配合することができる。
【0105】
製剤中の活性剤の量は、投与形態、治療される状態、ターゲットの患者集団および他の配慮を含む様々なファクターに応じて変動し、通常、当業者によって決定される。治療有効量は、タンパク質キナーゼを調整、調節または阻害するために必要な量である。実際には、これは、特定の活性剤、治療される状態の重度、患者集団、製剤の安定性などに依存して幅広く変動しうる。組成物は通常、どのような場合でも、活性剤約0.001重量%から約99重量%、好ましくは活性剤約0.01重量%から約5重量%、さらに好ましくは活性剤約0.01重量%から約2重量%を含有し、さらに、組成物中に含まれる賦形剤/添加剤の相対量に依存する。
【0106】
本発明の医薬組成物は、治療有効量の活性成分としての活性剤と、1種または複数の適切な薬剤担体とを慣用の手順に従い組合わせることにより調製される慣用の投与形態で投与される。これらの手順は、所望の製剤に適切に成分を混合、顆粒化および圧縮または溶解することを含むことができる。
【0107】
使用される薬剤担体は、固体でも液体でもよい。固体担体の例には、ラクトース、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが含まれる。液体担体の例には、シロップ、落花生油、オリーブ油、水などが含まれる。同様に、担体は、単独か、ろう、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレートを伴うモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で知られている時間遅延または時間放出物質を含んでもよい。
【0108】
様々な医薬形態を使用することができる。したがって、固体担体を使用する場合、製剤を錠剤化し、硬質ゼラチンカプセル中に粉末またはペレット形態で装入することもできるし、またはトローチ剤またはロゼンジ剤の形態であってもよい。固体担体の量は、変動しうるが、通常は、約25mgから約1gである。液体担体を使用する場合、製剤は、シロップ、エマルション、軟質ゼラチンカプセル、アンプルまたはバイアル中の無菌注射液剤もしくは懸濁剤または非水性液体懸濁剤の形態であってよい。
【0109】
安定な水溶性投与形態を得るために、活性剤の薬学的に許容できる塩を、コハク酸またはクエン酸の0.3M溶液などの有機または無機酸の水溶液に溶解させることができる。可溶性塩形態を入手することができない場合、活性剤を、適切な補助溶媒または補助溶媒の組合せに溶かすことができる。適切な補助溶媒の例には、これらに限られないが、全体容量に対して0〜60%の範囲の濃度のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリンなどが含まれる。組成物はさらに、水または等張性食塩水などの適切な水性媒体中の活性薬剤の塩形態の溶液またはデキストロース溶液の形態であってもよい。
【0110】
本発明の組成物中で使用される活性薬剤の実際の用量は、使用される特定の結晶形、処方される特定の組成物、投与方法ならびに治療される特定の部位、ホストおよび疾患に応じて変動しうることは、理解されるであろう。薬剤の実験データを考慮する慣用の用量決定試験を使用する当業者であれば、所定の条件セットでの最適な用量を確認することができる。経口投与では、通常使用される1日用量の例は、適切な間隔で繰り返される治療経過で、約0.001から約1000mg/体重kg、さらに好ましくは約0.001から約50mg/体重kgである。プロドラッグの投与は通常、十分に活性な形態の重量レベルに化学的に相当する重量レベルで投与される。本発明を実施する際には、最も適切な投与経路、さらに、治療用量の規模は、治療される疾患の性質および重度に左右される。用量および用量頻度も、個々の患者の年齢、体重および応答に左右されうる。一般に、適切な経口投与形態は、全1日用量5mgから250mgの用量範囲をカバーすることができ、これを、1回投与または等分用量で投与する。好ましい投与範囲は、10mgから80mgである。
【0111】
本発明の組成物は、医薬組成物を調製するために一般に知られている方法で、例えば、混合、溶解、顆粒化、糖衣製造、湿式粉砕、乳化、カプセル封入、包埋または凍結乾燥などの慣用の技術を使用して製造することができる。医薬組成物を慣用の方法で、薬学的に使用することができる製剤への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および助剤から選択することができる1種または複数の生理学的に許容できる担体を使用して配合することができる。
【0112】
経口投与用には、活性剤と当技術分野で知られている薬学的に許容できる担体とを組合わせることにより、化合物を容易に製剤することができる。このような担体により、本発明の化合物を、治療される患者により経口摂取される錠剤、丸薬、糖衣丸、カプセル、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤することができる。活性製剤と混合する際に固体賦形剤を使用し、場合によっては生じた混合物を粉砕し、適切な助剤を加えた後に顆粒混合物を処理し、望ましい場合には、錠剤または糖衣丸核を得ることにより、経口使用のための医薬製剤を得ることができる。適切な賦形剤には:ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース製剤、例えば、麦芽デンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、ゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン(PVP)が含まれる。望ましい場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることもできる。
【0113】
糖衣丸核は、適切なコーティングを備えている。このために、場合によってアラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい濃縮糖溶液を使用することもできる。活性製剤の異なる組合せを識別または特徴づけるために、染料または顔料を錠剤または糖衣丸コーティングに加えることもできる。
【0114】
経口で使用することができる医薬製剤には、ゼラチン製のプッシュフィット式カプセル、ゼラチンならびにグリセロールまたはソルビトールなどの可塑化剤からなる軟質密閉カプセルが含まれる。プッシュフィット式カプセルは、活性成分をラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤および場合によって安定化剤と混合された形で含むことができる。軟質カプセルでは、活性剤を脂肪族油、流動パラフィンまたは流動ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁させることができる。加えて、安定剤を加えることができる。経口投与のための製剤はすべて、このような投与に適した用量でなければならない。バッカル投与では、組成物は、慣用の方法で製剤された錠剤またはロゼンジの形態を取ることができる。
【0115】
鼻内または吸入による投与では、本発明による使用での化合物は、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスの使用を伴う加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で簡便に輸送することができる。加圧エアロゾルの場合には、投与単位を、計測量を輸送するためのバルブを装備することにより決定することができる。吸入器または注入器などで使用するためのゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物ならびにラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末混合物を含むように製剤することができる。
【0116】
活性剤を、注射による、例えばボーラス注射または連続注入による非経口投与のために製剤することもできる。注射のための製剤は、防腐剤を加えられている単位投与形態で、例えばアンプル中で、または複数回投与用容器中で提供することができる。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルションなどの形態を取ることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含むことができる。
【0117】
非経口投与のための医薬製剤には、活性剤の懸濁剤が含まれ、これは、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な疎水性溶媒または媒体には、ゴマ油などの脂肪族油またはシュウ酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルまたはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を上昇させる物質を含んでもよい。場合によって、懸濁剤はさらに、高濃縮溶液の調製が可能であるように活性剤の可溶性を高める適切な安定剤または薬剤を含んでもよい。
【0118】
眼への投与では、化合物が、例えば前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜および強膜を含む眼の角膜および内部領域に浸透しうる十分な期間、化合物が眼表面と接触し続けられるような薬学的に許容できる眼用媒体中に、活性剤を加える。薬学的に許容できる眼用媒体は例えば、軟膏、植物油または封入材料であってもよい。本発明の活性剤は、硝子体液、房水またはサブテノンに直接注入することもできる。
【0119】
もしくは、活性成分は、適切な媒体、例えば無菌発熱物質不含水を用いて使用前に構成するための粉末形態であってもよい。化合物をさらに、例えばカカオ脂または他のグリセリドなどの慣用の座薬基剤を含む座薬または滞留浣腸剤などの直腸または膣組成物に配合することもできる。
【0120】
前記の製剤に加えて、多形体形態をデポー製剤として製剤することもできる。このような長期作用性製剤を、移植(例えば皮下または筋肉内)によりまたは筋肉内注射により投与することができる。したがって例えば、多形体形態を適切なポリマーまたは疎水性物質(例えば許容できるオイル中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂を用いて、またはわずかに可溶性な誘導体、例えばわずかに可溶性な塩として製剤することもできる。
【0121】
加えて、活性薬剤を、治療剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出系を使用して輸送することもできる。様々な持続放出物質が確立されており、当業者に知られている。持続放出系カプセルは、その化学的性質に応じて、化合物を数週間から100日以上にわたって放出し得る。治療試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質を安定化させるための付加的な方策を使用することもできる。
【0122】
医薬組成物は、適切な固体またはゲル相担体または賦形剤を含有してもよい。このような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれる。
【0123】
III.本発明の多形体の使用法
化合物1の本発明による多形体形態は、タンパク質キナーゼの活性を媒介するために有用である。さらに詳細には、これらの多形体形態は、抗血管新生薬剤として、ならびにタンパク質キナーゼの活性、例えば特にVEGF、FGF、CDK複合体、TEK、CHK1、LCK、FAKおよびホスホリラーゼキナーゼに随伴する活性を調整および/または阻害するための薬剤として有用であるので、ヒトを含む哺乳動物でのタンパク質キナーゼにより媒介される細胞増殖を伴う癌または他の疾患のための治療法をもたらす。
【0124】
本発明の薬剤の治療有効量を、典型的には医薬組成物の形態で投与して、タンパク質キナーゼの調整または調節により媒介される疾患を治療することができる。「有効量」とは、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与された場合に、チロシンキナーゼなどの1種または複数のタンパク質キナーゼの活性により媒介される疾患の治療をもたらすに十分である薬剤の量を意味することとする。したがって、本発明の化合物の治療有効量は、1種または複数のタンパク質キナーゼの活性を調整、調節または阻害して、それらの活性により媒介される疾患状態を低減または緩和するために十分な量である。所定の化合物の有効量は、疾患状態およびその重度ならびに治療を必要とする哺乳動物の同一性および状態(例えば体重)などのファクターに応じて変動するはずであるが、当業者により日常的に決定されうる。「治療すること」とは、少なくとも部分的に、チロシンキナーゼなどの1種または複数のタンパク質キナーゼの活性により影響を受けているヒトなどの哺乳動物における疾患状態の緩和を少なくとも意味することとし、特にその哺乳動物が疾患状態を有しやすいことが判明しているが、未だ疾患状態を有するとは診断されていない場合に、その哺乳動物において疾患状態が生じることを予防すること;疾患状態を調整および/または阻害すること;および/または疾患状態を緩和することを含む。疾患状態の例には、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、関節リウマチ、乾癬、加齢性黄斑変性症(AMD)および癌(充実性腫瘍)が含まれる。
【0125】
タンパク質キナーゼ活性の調整剤としての化合物1の多形体形態の活性は、in vivoおよび/またはin vitroアッセイを含む当業者が利用可能な任意の方法により測定することができる。活性測定のための適切なアッセイの例には、Parast C.ら、Biochemistry、37、16788〜16801(1998);Jeffreyら、Nature、376、313〜320(1995);国際公開第97/34876号;および国際公開第96/14843号に記載されているものが含まれる。
【0126】
本発明はさらに、高増殖性障害またはVEGF活性により媒介される疾患状態を治療する併用療法を対象としており、これは、前記で検討した任意の多形体形態または医薬組成物を、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、シグナル伝達阻害剤および抗増殖剤から選択される治療有効量の1種または複数の物質との組合わせを含有する治療有効量の医薬組成物を、その必要のある哺乳動物に投与することを含む。このような物質には、その開示がそのまま参照により本願明細書に援用される国際公開第00/38715号、国際公開第00/38716号、国際公開第00/38717号、国際公開第00/38718号、国際公開第00/38719号、国際公開第00/38730号、国際公開第00/38665号、国際公開第00/37107号および国際公開第00/38786号に開示されているものが含まれる。
【0127】
抗腫瘍剤の例には、有糸分裂阻害剤、例えば、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンおよびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド誘導体;コルチンアロコチン、ハリコンドリン(halichondrin)、N−ベンゾイルトリメチル−メチルエーテルコルヒチン酸、ドラスタチン10、マイスタンシン(maystansine)、リゾキシン、タキソール(パクリタクセル)、ドセタキセル(タキソテール)などのタキサン、2’−N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]グルタラメート(タキソール誘導体)、チオコルヒチン、トリチルシステイン、テニポシド、メトトレキセート、アザチオプリン、フルオロウリシル、シトシン アラビノシド、2’2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)、アドリアマイシンおよびミタマイシン(mitamycin)が含まれる。アルキル化剤、例えばシス−プラチン、カルボプラチン、オキシプラチン、イプロプラチン、N−アセチル−DL−サルコシル−L−ロイシンのエチルエステル(AsaleyまたはAsalex)、1,4−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルバミン酸、2,5−ビス(1−アジルジニル)−3,6−ジオキソ−ジエチルエステル(diaziquone)、1,4−ビス(メタンスルホニルオキシ)ブタン(ビスルファンまたはロイコスルファン)、クロロゾトシン、クロメソン(clomesone)、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、ジアンヒドログラクチトール、フルオロドパン(fluorodopan)、ヘプスルファム(hepsulfam)、マイトマイシンC、ヒカンテオンマイトマイシン(hycantheonemitomcin)C、マイトゾルアミド(mitozolamide)、1−(2−クロロエチル)−4−(3−クロロプロピル)−ピペラジン二塩酸塩、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、ビス(3−メシルオキシプロピル)アミン塩酸塩、マイトマイシン、シクロヘキシル−クロロエチルニトロソウレア、メチルシクロヘキシル−クロロエチルニトロソウレア、1−(2−クロロエチル)−3−(2,6−ジオキソ−3−ピペリジル)−1−ニトロソウレア、ビス(2−クロロエチル)ニトロソウレアなどのニトロソウレア剤、プロカルバジン、ダカルバジン、メクロロエタミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、エストラムスチンナトリウムリン酸塩、ストルプトゾイン(strptozoin)およびテモゾラミドなどのナイトロジェンマスタード関連化合物。DNA代謝拮抗物質、例えば、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、ヒドロキシウレア、2−[(3ヒドロキシ−2−ピリノジニル)メチレン]−ヒドラジンカルボチオアミド、デオキシフルオロウリジン、5−ヒドロキシ−2−ホルミルピリジンチオセミカルバゾン、アルファ−2’−デオキシ−6−チオグアノシン、アフィジコリングリシネート、5−アザデオキシシチジン、ベータ−チオグアニンデオキシリボシド、シクロシチジン、グアナゾール、イノシングリコジアルデヒド、マクベシン(macbecin)II、ピラゾールイミダゾール、クラドリビン、ペントスタチン、チオグアニン、メルカプトプリン、ブレオマイシン、2−クロロデオキシアデノシン、ラルチトレキセドおよびペメトレキセドジナトリウム、クロファラビン、フロクスウリジン(floxuridine)およびフルダラビンなどのチミジル酸シンターゼの阻害剤。DNA/RNA代謝拮抗物質、例えば、L−アラノシン、5−アザシチジン、アシビシン、アミノプテリンおよびN−[2−クロロ−5−[[(2,4−ジアミノ−5−メチル−6−キナゾリニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]−L−アスパラギン酸、N−[4−[[(2,4−ジアミノ−5−エチル−6−キナゾリニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]−L−アスパラギン酸、N−[2−クロロ−4−[[(2,4−ジアミノプテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]−L−アスパラギン酸などのその誘導体、可溶性ベーカーアンチフォル(Baker’s antifol)、ジクロロアリルローソン(lawsone)、ブレキナル(brequinar)、フトラフ(ftoraf)、ジヒドロ−5−アザシチジン、メトトレキセート、N−(ホスホノアセチル)−L−アスパラギン酸四ナトリウム塩、ピラゾフラン、トリメトレキセート、プリカマイシン、アクチノマイシンD、クリプトフィシンおよびクリプトフィシン−52などの類似体、例えば、N−(5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル)−L−グルタミン酸などの欧州特許出願第239362号に開示されているような好ましい代謝拮抗物質のうちの1種;成長因子阻害剤;細胞周期阻害剤;インターカレーション抗生物質、例えば、アドリアマイシンおよびブレオマイシン;タンパク質、例えば、インターフェロン;および抗ホルモン、例えば、Nolvadex(タモキシフェン)などの抗エストロゲンまたは例えばCasodex(商標)(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド)などの抗アンドロゲン。治療の個々の成分を同時か、連続してか、別々に投与することにより、このような共同治療を達成することができる。
【0128】
抗血管新生剤には、MMP−2(マトリックス−メタロプロテアーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックス−メタロプロテアーゼ9)阻害剤およびCOX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤が含まれる。有用なCOX−II阻害剤の例には、CELEBREX(商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブおよびロフェコキシブが含まれる。有用なマトリックスメタロプロアーゼ阻害剤の例は、国際公開第96/33172号(1996年10月24日発行)、国際公開第96/27583号(1996年3月7日発行)、欧州特許出願第97304971.1号明細書(1997年7月8日提出)、欧州特許出願第99308617.2号明細書(1999年10月29日提出)、国際公開第98/07697号(1998年2月26日発行)、国際公開第98/03516号(1998年1月29日発行)、国際公開第98/34918号(1998年8月13日発行)、国際公開第98/34915号(1998年8月13日発行)、国際公開第98/33768号(1998年8月6日発行)、国際公開第98/30566号(1998年7月16日発行)、欧州特許公開第606046号(1994年7月13日発行)、欧州特許公開第931788号明細書(1999年7月28日発行)、国際公開第90/05719号(1990年5月331日発行)、国際公開第99/52910号(1999年10月21日発行)、国際公開第99/52889号(1999年10月21日発行)、国際公開第99/29667号(1999年6月17日発行)、PCT国際出願第IB98/01113号(1998年7月21日提出)、欧州特許出願第99302232.1号(1999年3月25日提出)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日提出)、米国特許仮出願第60/148464号(1999年8月12日提出)、米国特許第5863949号(1999年1月26日付与)、米国特許第5861510号(1999年1月19日付与)および欧州特許公開第780386号明細書(1997年6月25日発行)に記載されており、これらはすべて、そのまま参照により本願明細書に援用される。好ましいMMP−2およびMMP−9阻害剤は、MMP−1を阻害する活性を有さないか、ほとんど有さないものである。他のマトリックスメタロプロテアーゼ(即ち、MMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12およびMMP−13)に対してMMP−2および/またはMMP−9を選択的に阻害するものが、さらに好ましい。
【0129】
MMP阻害剤の例には、AG−3340、RO32−3555、RS13−0830および次の化合物;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイルシクロペンチル)−アミノ]−プロピオン酸;3−エキソ−3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R,3R)1−[4−(2−クロロ−4−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンゼンスルホニル]−3−ヒドロキシ−3−メチル−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;4−[4−(4−フルオロフェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−シクロブチル)−アミノ]−プロピオン酸;4−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R,3R)1−[4−(4−フルオロ−2−メチル−ベンジルオキシ)−ベンゼンスルホニル]−3−ヒドロキシ−3−メチル−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−1−メチル−エチル)−アミノ]−プロピオン酸;3−[[4−(4−トリフルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(4−ヒドロキシカルバモイル−テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−アミノ]−プロピオン酸;3−エキソ−3−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−エンド−3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−フラン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;ならびにこれらの薬学的に許容できる塩、溶媒和物および水和物が含まれる。
【0130】
シグナル伝達阻害剤の例には、EGFR抗体、EGF抗体およびEGFR阻害剤である分子などのEGFR(上皮成長因子受容体)応答を阻害しうる薬剤;VEGF(血管内皮成長因子)阻害剤;およびerbB2受容体に結合する有機分子または抗体、例えばHERCEPTIN(商標)(Genentech,Inc.、South San Francisco、California、USA)などのerbB2受容体阻害剤が含まれる。
【0131】
EGFR阻害剤は例えば、国際公開第95/19970号(1995年7月27日発行)、国際公開第98/14451号(1998年4月9日発行)、国際公開第98/02434号(1998年1月22日発行)および米国特許第5747498号(1998年5月5日発行)に記載されている。EGFR阻害剤には、これらに限られないが、モノクローナル抗体C225および抗EGFR22Mab(ImClone Systems Incorporated of New York、New York、USA)化合物ZD−1839(AstraZeneca)、BIBX−1382(Boehringer Ingerlheim)、MDX−447(Medarex Inc.、Annandale、New Jersey、USA)およびOLX−103(Merck & Co.、Whitehouse Station、New Jersey、USA)、VRCTC−310(Ventech Research)およびEGF融合毒素(Seragen Inc.、Hopkinton、Massachusettes)が含まれる。
【0132】
VEGF阻害剤、例えばSU−5416およびSU−6668(Sugen Inc.、Souths San Francisco、California、USA)を、本組成物と組合わせるか、同時投与することもできる。VEGF阻害剤は例えば、国際公開第99/24440号(1999年5月20日発行)、PCT国際出願PCT/IB99/00797号(1999年5月3日提出)、国際公開第95/21613号(1995年8月17日発行)、国際公開第99/61422号(1999年12月2日発行)、米国特許第5834504号(1998年11月10日発行)、国際公開第98/50356号(1998年11月12日発行)、米国特許第5883113号明細書(1999年3月16日付与)、米国特許第5886020号明細書(1999年3月23日発行)、米国特許第5792783号明細書(1998年8月11日発行)、国際公開第99/10349号(1999年3月4日発行)、国際公開第97/32856号(1997年9月12日発行)、国際公開第97/22596号(1997年6月26発行)、国際公開第98/54093号(1998年12月3日発行)、国際公開第98/02438号(1998年1月22日発行)、国際公開第99/16755号(1999年4月8日発行)および国際公開第98/02437号(1998年1月22日発行)に記載されており、これらはすべて、そのまま参照により本願明細書に援用される。いくつかの特殊なVEGF阻害剤の他の例は、IM862(Cytran Inc、Kirkland、Washington、USA);抗VEGFモノクローナル抗体ベバシズマブ(bevacizumab)(Genentech,Inc.、South San Francisco、California)およびアンジオザイム(angiozyme)、Ribozyme(Boulder、Colorado)およびChiron(Emeryville、California)からの合成リボザイムである。
【0133】
GW−282974(Glaxo Wellcom plc)などのerbB2受容体阻害剤およびモノクローナル抗体Ar−209(Aronex Pharmaceuticals Inc.、The Woodlands、Texas、USA)および2B−1(Chiron)を、本組成物と組合わせて投与することができる。このようなerbB2阻害剤には、国際公開第98/02434号(1998年1月22日発行)、国際公開第99/35146号(1999年7月15日発行)、国際公開第99/35132号(1999年7月15日発行)、国際公開第98/02437号(1998年1月22日発行)、国際公開第97/13760号(1997年4月17日発行)、国際公開第95/19970号(1995年7月27日発行)、米国特許第5587458号(1996年12月24日付与)および米国特許第5877305号明細書(1999年3月2日付与)に記載されているものが含まれ、これらはそれぞれ、そのまま参照により本願明細書に援用される。本発明で有用なerbB2受容体阻害剤はさらに、米国特許仮出願第60/117341号(1999年1月27日提出)および米国特許仮出願第60/117346号(1999年1月27日提出)に記載されており、これらは両方とも、そのまま参照により本願明細書に援用される。
【0134】
使用することができる他の抗増殖剤には、酵素ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害剤および受容体チロシンキナーゼPDGFrの阻害剤が含まれ、これには、次の米国特許出願:第09/221946号(1998年12月28日提出)、第09/454058号(1999年12月2日提出);第09/501163号(2000年2月9日提出);第09/539930号(2000年3月31日提出);第09/202796号(1997年5月22日提出);第09/384339号(1999年8月26日提出)および第09/383755号(1999年8月26日提出)に開示および請求されている化合物ならびに次の米国特許仮出願:第60/168207号(1999年11月30日提出);第60/170119号(1999年12月10日提出);第60/177718号(2000年1月21日提出);第60/168217号(1999年11月30日提出)および第60/200834号(2000年5月1日提出)に開示および請求されている化合物が含まれる。前記の特許出願および仮特許出願はそれぞれ、そのまま参照により本願明細書に援用される。
【0135】
本発明の組成物は、異常な細胞成長または癌を治療する際に有用な他の薬剤と共に使用することができ、これには、これらに限られないが、CTLA4(細胞毒性リンパ球抗原4)抗体などの抗腫瘍免疫応答を増強しうる薬剤およびCTLA4を遮断しうる他の薬剤;および他のファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤などの抗増殖性薬剤が含まれる。本発明で使用することができる特殊なCTLA4抗体には、そのまま参照により本願明細書に援用される米国特許仮出願第60/113647号(1998年12月23日提出)に記載されているものが含まれる。
【実施例】
【0136】
次の実施例で、本発明の個々の多形体形態、即ち化合物1の多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型の調製を詳述するが、これは、本願明細書で定義または下記で請求されている本発明の範囲を制限するものではない。他に記載されていない限り、温度はすべて、摂氏温度で示されており、部およびパーセンテージはすべて、重量による。Hewlett Packard HP−1100HPLCを使用して、HPLCデータを得た。
【0137】
(実施例1)
化合物1の多形体I型の調製および特性決定
例えば米国特許第6531491号(そのまま参照により本願明細書に援用される)の実施例33(a)に従って調製された6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾール(4.6g)を、メタノール50mL中、50℃で15分間スラリー化させ、その後、水50mLを加えた。このスラリーを十分に攪拌し、放置して室温まで冷却した。固体を濾過により集め、水50mLで、次いで、酢酸エチル30mLで洗浄した。次いで、生成物を高真空下に乾燥させた。HPLC純度は、99%を上回った。
【0138】
図1Aは、化合物1の多形体I型の粉末X線ジフラクトグラムである。化合物1の多形体I型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図1Bは、化合物1の多形体I型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。化合物1の多形体I型の試料は、約10℃/分の走査速度で183〜190℃に吸熱開始を示した。
【0139】
(実施例2)
化合物1の多形体II型の調製および特性決定
化合物1の多形体I型(37mg)を相対湿度93%の箱に室温で6日間入れることにより、水和物である化合物1の多形体II型を生じさせた。(HPLC純度>98.5%)。図2Aは、化合物1の多形体II型の粉末X線ジフラクトグラムである。化合物1の多形体II型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図2Bは、化合物1の多形体II型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。II型は、約10℃/分の走査速度で、102、152および202℃に吸熱開始、続いて206℃に発熱および210℃にさらなる発熱を示した。
【0140】
(実施例3)
化合物1の多形体III型の調製および特性決定
化合物1のp−トルエンスルホン酸塩誘導体を酢酸エチル中で中和し、続いて真空下に65℃で乾燥させることにより、化合物1の多形体III型を調製した。化合物1のp−トルエンスルホン酸塩(421g)を0.84MのNaHCO31800mLおよび酢酸エチル1800mLに懸濁させ、65℃で2時間攪拌した。濾過により固体を集め、水1800mLおよび酢酸エチル800mLで洗浄し、実験室真空下に50℃で一晩乾燥させた。収率:92%(HPLC純度は、99%を上回った)。多形体III型は、酢酸エチル溶媒和物である。
【0141】
図3Aは、化合物1の多形体III型の粉末X線回折パターンである。化合物1の多形体III型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図3Bは、化合物1の多形体III型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。化合物1の多形体III型の試料は、約10℃/分の走査速度で125〜129℃に吸熱開始、続いて210℃にさらなる吸熱を示した。
【0142】
多形体III型を、熱重量分析(TGA)によりさらに特性決定した。図3Cは、多形体III型の試料の熱重量分析(TGA)プロファイルである。多形体III型の試料の通常のTGAサーモグラムは脱溶媒を示す。酢酸エチルの損失は、10℃/分の走査速度で125〜129℃での10%の試料重量損失により示される。
【0143】
(実施例4a)
化合物1の多形体IV型の調製および特性決定
化合物1の多形体III型から、化合物1の多形体IV型を調製した。化合物1の多形体III型の試料(1.015kg)をメタノール3Lおよび酢酸5Lに60℃で溶かした。次いで、溶液を濾過し、中真空により濃縮した。キシレン6Lを60℃で加え、次いで、高真空により除去した。キシレン4Lを加え、次いで、高真空下に除去し、続いて、付加的なキシレン4Lで処理した。次いで、高真空下にキシレンを除去して、化合物1の多形体IV型を収率92%で得た。HPLC分析により、98.5%を上回る純度が示された。
【0144】
図4Aは、化合物1の多形体IV型のX線回折パターンである。化合物1の多形体IV型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図4Bは、多形体IV型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。化合物1の多形体IV型の試料は、約10℃/分の走査速度で216℃に吸熱開始を示した。
【0145】
(実施例4b)
化合物1の多形体IV型の調製および特性決定
パラジウム触媒を使用する化合物1の合成に続いて、次の手順を実施して、残留パラジウムを除去し、化合物1を多形体IV型で結晶化させた。
【0146】
機械式攪拌機を備えた12L三つ口フラスコに、化合物1 160.20gおよびDMA1.6LおよびTHF1.6Lを充填した。20分間攪拌した後に、混合物は均一になった。この澄明な溶液に、10%システイン−シリカ800.99gを充填し、生じた混合物を室温で一晩攪拌し続けた。混合物を「中度」焼結ガラス漏斗で濾過し、ケークをDMA500mLおよびTHF500mLの溶液で洗浄した。ケークをさらに、THF2.0Lで洗浄し、濾液を別のフラスコに集めた。後者の濾液の揮発性部分を真空中で除去し、残留物を主な濾液と合わせた。合わせた濾液を12Lフラスコに戻し充填し、続いて、10%システイン−シリカ800gを充填した。フラスコに機械式攪拌機を装備し、室温で週末にわたって攪拌した。混合物を「中度」焼結ガラス漏斗で濾過し、シリカをDMA500mLおよびTHF500mLの溶媒混合物、続いてTHF3.0Lで洗浄した。濾液中の揮発性部分を真空中で除去し、残留溶液を22L三つ口フラスコに移し、水12L(20分間かけて加える)で処理すると、厚い沈殿物がこの段階で生じた。一晩攪拌した後に、混合物を濾過し、ケークを水2.0Lで洗浄し、吸引乾燥させた。
【0147】
ケークを5L三つ口フラスコに充填し、続いて、THF1.6LおよびDMF160mLを充填した。フラスコに機械式攪拌機、環流凝縮器を装備し、混合物を環流で8時間加熱した。一晩冷却させた後に、混合物をシャークスキン濾紙で濾過し、吸引乾燥させた。ケークを5L三つ口フラスコに充填し、MeOH1.6Lを加えた。フラスコに機械式攪拌機、水凝縮器を装備し、内容物を環流で6時間加熱した。一晩冷却した後に、混合物をシャークスキン濾紙で濾過し、吸引乾燥させた。回転蒸発器の水浴中で穏やかに加熱して促進しながら、ケークをHOAc1.6Lに溶かした。溶液を♯3濾紙で濾過し、濾液の全量を、回転蒸発器で60℃/60mmHgで〜500mLの容量まで減少させた。この段階では、混合物のバルクは、黄色の溶液のままであり、少量の沈殿物が生じた。フラスコに、キシレン500mLを充填し(沈殿物が生じた)、全量を、回転蒸発器で60℃/60mmHgで〜500mLの容量まで減少させた。このプロセスをさらに2回繰り返した。冷却させた後に、混合物を濾過し、ケークをキシレン500mLで洗浄し、吸引乾燥させた。ケークをガラスざらに移し、さらに80℃/27インチ真空で一晩乾燥させた。ケークはオフホワイト色で、108.38gであり、続いて、IV型の結晶形であると決定された。
【0148】
(実施例5)
化合物1の多形体VI型の調製および特性決定
化合物1の多形体III型(2g)をエタノール15mLに懸濁させた。パラトルエンスルホン酸一水和物4gを加えて、混合物を82℃で14時間加熱した。室温まで冷却した後に、飽和NaHCO3溶液25mLを加え、懸濁液を2時間攪拌した。固体を濾過により集め、水50mLで洗浄し、実験室真空、45℃で一晩乾燥させた(HPLC純度>99%)。
【0149】
図5Aは、化合物1の多形体VI型の粉末X線回折パターンである。化合物1の多形体VI型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図5Bは、化合物1の多形体VI型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。VI型は、約10℃/分の走査速度で約197℃に吸熱開始、続いて約209℃でさらなる吸熱を示した。
【0150】
(実施例6)
化合物1の多形体VII型の調製および特性決定
化合物1の多形体VI型(102mg)をイソプロピルアルコール20mL中に懸濁させ、30分間環流させ、室温まで冷却させた。固体を濾過により集め、イソプロピルアルコールで洗浄し、真空下に乾燥させた。化合物1の多形体VII型は、イソプロパノール溶媒和物である。
【0151】
図6Aは、化合物1の多形体VII型の粉末X線回折パターンである。化合物1のVII型を、示差走査熱量測定法によりさらに特性決定した。図6Bは、化合物1の多形体VII型の試料の示差走査熱量測定法(DSC)プロファイルである。通常のプロファイルは、試料依存性である。環流THFから単離された1つの試料は、約10℃/分の走査速度で115℃に発熱、次いで、137および175℃に吸熱を示した。
【0152】
(実施例7)
化合物1の多形体VIII型の調製および特性決定
化合物1の多形体VII型を、最小量の環流ジオキサンに約100℃で溶かし、次いで、放置して室温に一晩冷却した。大きな黄色の結晶を濾過により集め、ジオキサンで洗浄し、真空下に乾燥させた。化合物1の多形体VIII型は、ジオキサン溶媒和物である。図7は、化合物1の多形体VIII型の粉末X線回折パターンを示している。
【0153】
(実施例8)
錠剤製剤での多形体IV型の使用
ポビドン(4%w/w)を水(5倍w/w)に溶かして、顆粒化のための溶液を形成する。実施例4においてと同様に調製された化合物1の多形体IV型(37%w/w)を高シャー造粒機中でラクトース(25%w/w)、トウモロコシデンプン(16%w/w)および一部のクロスカルメロースナトリウム(2%w/w)と混合する。混合物を乾式ブレンドし、次いで、ポビドン溶液で顆粒化する。顆粒を初めに、2分間湿らせ、5%未満の乾燥減量まで60℃で乾燥させる。ふるいサイズ045Rを用いて、物質を乾式粉砕する。粉砕された物質を残りのクロスカルメロースナトリウム(3%w/w)および微結晶性セルロース(12%、w/w)とブレンドする。ブレンドされた混合物をステアリン酸マグネシウムと再びブレンドする(1%w/w)。混合物を錠剤圧縮装置で圧縮して、1錠剤当たり化合物1を160mg含有する錠剤を製造する。
【0154】
(実施例9)
化合物1の酸塩の形成
化合物1について、塩スクリーニングを行って、その水溶性を改善した。化合物1を7種の異なる100mMの酸溶液に加え、14日間攪拌して、その場で、化合物1の7種の酸塩形態を生じさせた。使用された7種の酸は、以下のものである:メタンスルホン酸;硫酸;塩酸;リン酸;臭化水素酸;マレイン酸;およびベンゼンスルホン酸。これらの異なる酸それぞれで、20mgの化合物1を密閉バイアル中、暗所で、該当する酸の100mM溶液1.6mLと共に攪拌した。最大可溶性レベルが達成されることを保証するために、試料を、定期的にチェックして、過剰な固体が存在することを保証した。8日後に、混合物400μLをとり、14000rpmで5分間遠心分離した。次いで、上澄み100μLを除去し、アセトニトリル/メタノールの1:1混合物900μLで希釈し、次いで、HPLCにより分析した。第2のデータセットを、実験開始の14日後に集めて、可溶性の何らかの長期変化を観察した。14日目の試料を、8日目の試験で記載されたと同じ手順に従い調製した。Primesphereカラム、C185μm、150×4.6mmを使用して、流速1.5mL/分および注入容量10μLで、HPLC分析を行った。2週間にわたって形成された化合物1の7種の異なる塩形態の可溶性を、下記の表にまとめる。通常、可溶性値は、8から14日でほんのわずかな変化を示した。
【0155】
【表1】
【0156】
最も高い可溶性を示した化合物1の塩形態(メタンスルホン酸、硫酸および塩酸)を、さらに特性決定した。それぞれの塩約30mgを、室温で相対湿度93%の箱内のバイアルに入れた。6日後に、吸収された水の重量パーセント、粉末X線回折パターンおよび示差走査熱量測定法データを得た。2種の多形体が、塩酸塩で観察され(I型およびII型)、3種の多形体が、メタンスルホン酸塩で観察され(I型、II型およびIII型)、3種の多形体が硫酸塩(I、IIおよびIII)で観察された。これらの多形体形態を、高強度の光に対する安定性に関してさらに分析した。それぞれの塩約0.4mgをHPLCバイアルに秤量した。これを、各塩につき、計5回繰り返して、4つの試料および1つの標準を得た。試料を高強度光箱に入れ、0、1、2および6時間照射した。HPLC分析の前に、アセトニトリル1mLおよびメタノール1mLを加えて、各標準および試料を溶かした。硫酸塩のII型を除き、すべての試料が、高強度の光にさらされると著しく(14%〜97%)分解した。
【0157】
(実施例10)
化合物1のヒトでの代謝産物
図8に示されているように、化合物1はヒトにおいて広範に代謝されて、様々な代謝産物になる。3種の酸化代謝産物M12(化合物1のスルホキシド)、M15(化合物1のスルホン)およびM9(化合物1の混合スルホキシド化/N−酸化生成物)の化学的構造を、in vivo代謝産物のクロマトグラフ保持時間および質量スペクトルをその基準参照標準と比較することにより確認した。化合物1のグルクロニド(M7)の化学的構造は、代謝産物を単離し、続いてNMR決定することにより確認した。代謝産物M5は、m/z342に[M+H]+イオンを示した。M5のMS2およびMS3生成物イオン質量スペクトルの解釈は、M5が化合物1のデピリジニルカルボン酸であることを示唆した。M5の示された構造(または元素組成)およびその主なフラグメントイオン(m/z342、311、265および237)は、正確な質量測定により決定された元素組成とすべて高度に一致した(いずれも、質量測定正確度≦1.2ppm)。代謝産物M8a、M12aおよびM14の正確な構造は、現在知られていない。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1A】化合物1の多形体I型の粉末X線回折パターンである。
【図1B】化合物1の多形体I型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で183〜190℃に吸熱開始を示す。
【図2A】化合物1の多形体II型の粉末X線回折パターンである。
【図2B】化合物1の多形体II型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で、102、152および202℃に吸熱開始、続いて206℃に発熱、210℃に別の発熱を示す。
【図3A】化合物1の多形体III型の粉末X線回折パターンである。
【図3B】化合物1の多形体III型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で、125〜129℃に吸熱開始、続いて210℃に別の吸熱を示す。
【図3C】多形体III型の熱重量分析(TGA)プロファイルである。10℃/分の走査速度で125〜129℃での10%の試料重量損失により、脱溶媒が示される。
【図4A】化合物1の多形体IV型の粉末X線回折パターンである。
【図4B】化合物1の多形体IV型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で、216℃に吸熱開始を示す。
【図5A】化合物1の多形体VI型の粉末X線回折パターンである。
【図5B】化合物1の多形体VI型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、10℃/分の走査速度で、約197℃および約209℃に吸熱開始を示す。
【図6A】化合物1の多形体VII型の粉末X線回折パターンである。
【図6B】化合物1の多形体VII型の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルである。典型的なプロファイルは、試料依存性である。環流THFから単離された通常の試料は、10℃/分の走査速度で、105℃に吸熱、続いて115℃に発熱、次いで137℃および175℃で吸熱を示す。
【図7】化合物1の多形体VIII型の粉末X線回折パターンである。
【図8】化合物1の数種のヒトでの代謝物の構造を示す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iにより表される6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールまたはその薬学的に許容できる塩の結晶形。
【化1】
【請求項2】
前記結晶形が、多形体I型、II型、III型、IV型、VI型、VII型およびVIII型からなる群から選択される、請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
前記結晶形がIV型の多形体である、請求項1に記載の結晶形。
【請求項4】
前記結晶形が8.9±0.1および15.7±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形。
【請求項5】
前記結晶形が8.9±0.1、14.6±0.1、15.7±0.1および19.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形。
【請求項6】
前記結晶形が図4Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形。
【請求項7】
次の結晶形:多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型のうちの少なくとも2種を含む固体形態である、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールまたはその薬学的に許容できる塩の固体形態。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の結晶形を含む、医薬組成物。
【請求項9】
治療有効量の請求項8に記載の医薬組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法。
【請求項10】
前記の哺乳動物の疾患状態が、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生を随伴するものである、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
式Iにより表される6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールまたはその薬学的に許容できる塩の結晶形。
【化1】
【請求項2】
前記結晶形が、多形体I型、II型、III型、IV型、VI型、VII型およびVIII型からなる群から選択される、請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
前記結晶形がIV型の多形体である、請求項1に記載の結晶形。
【請求項4】
前記結晶形が8.9±0.1および15.7±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形。
【請求項5】
前記結晶形が8.9±0.1、14.6±0.1、15.7±0.1および19.2±0.1の回折角(2θ)におけるピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形。
【請求項6】
前記結晶形が図4Aに示されているものと実質的に同じ回折角(2θ)におけるピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶形。
【請求項7】
次の結晶形:多形体I、II、III、IV、VI、VIIおよびVIII型のうちの少なくとも2種を含む固体形態である、6−[2−(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]インダゾールまたはその薬学的に許容できる塩の固体形態。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の結晶形を含む、医薬組成物。
【請求項9】
治療有効量の請求項8に記載の医薬組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、タンパク質キナーゼ活性により媒介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法。
【請求項10】
前記の哺乳動物の疾患状態が、腫瘍成長、細胞増殖または血管新生を随伴するものである、請求項9に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2008−518904(P2008−518904A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538541(P2007−538541)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003312
【国際公開番号】WO2006/048751
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003312
【国際公開番号】WO2006/048751
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】
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