説明

7−アザインドール誘導体

式(I)で表され、式中、U、L、R、Y、X、XおよびXは、請求項(1)において示した意味を有する新規な7−アザインドール誘導体は、キナーゼ阻害剤であり、疾患および状態、例えば糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム(異脂肪血症)、全身および肺高血圧症、心血管疾患および腎疾患などの、一般的にすべてのタイプの線維症、炎症プロセスにおけるもの、腫瘍および腫瘍疾患の処置のために用いることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、有用な特性を有する新規な化合物、特に医薬を調製するために用いることができるものを見出す目的を有していた。
【0002】
本発明は、プロテインキナーゼによるシグナル伝達の阻害、調節および/または調整が作用を奏する化合物、さらにこれらの化合物を含む医薬組成物、ならびに当該化合物の、キナーゼにより誘発された疾患の処置のための使用に関する。
キナーゼの例は、特にチロシンキナーゼおよび/またはセリン/トレオニンキナーゼである。
【0003】
細胞調節を行う主要な機構の1つは、膜を横切る細胞外シグナルの伝達によるものであり、これは次いで細胞内で生化学的経路を調整する。タンパク質リン酸化は、細胞内シグナルが分子ごとに伝播され、最終的に細胞応答をもたらす1つの経過を表す。これらのシグナル伝達カスケードは、高度に調節され、しばしば重複するが、これは、多種のプロテインキナーゼおよびホスファターゼの存在から明白である。タンパク質のリン酸化は、主にセリン、トレオニンまたはチロシン残基において発生し、したがって、プロテインキナーゼは、リン酸化部位のこれらの特異性によって分類される。即ちセリン/トレオニンキナーゼおよびチロシンキナーゼである。
【0004】
リン酸化が細胞内でのこのような普遍的なプロセスであるため、また細胞表現型がこれらの経路の活性により大きく影響されるため、多数の状態および/または疾患が、キナーゼカスケードの分子成分における異常な活性化または機能的な変異のいずれかに起因すると、現在考えられている。したがって、これらのタンパク質およびこれらの活性を調整することができる化合物を特徴づけするために、顕著な注意が向けられた(概説記事、Weinstein-Oppenheimer et al. Pharma. &. Therap., 2000, 88, 229-279を参照)。
【0005】
ヒト発癌におけるレセプターチロシンキナーゼMetの役割およびHGF(肝細胞増殖因子)依存性Met活性化を阻害する可能性は、S. Berthou et al.により、Oncogene、第23巻、No. 31, 5387〜5393頁(2004)に記載されている。この中に記載されているピロール−インドリン化合物である阻害剤SU11274は、癌に対処するのに潜在的に適する。
癌療法のための他のMetキナーゼ阻害剤は、J.G. Christensen et al.により、Cancer Res. 2003, 63(21), 7345-55に記載されている。
【0006】
癌に対処するための他のチロシンキナーゼ阻害剤は、H. Hov et al.によりClinical Cancer Research第10巻、6686-6694 (2004)に報告されている。インドール誘導体である化合物PHA−665752は、HGFレセプターc−Metを標的とする。さらに、HGFおよびMetが癌の種々の形態の悪性のプロセス、例えば多発性骨髄腫に顕著な寄与をなすことが、当該文献中で報告されている。
【0007】
他の好ましいキナーゼは、細胞容積が調節されたヒトキナーゼh−sgk(ヒト血清およびグルココルチコイド依存性キナーゼまたはSGK)を含む。
アイソフォームSGK−1、SGK−2およびSGK−3を有するSGKは、セリン/トレオニンプロテインキナーゼファミリーである(WO 02/17893)。
したがって、チロシンキナーゼおよび/またはセリン/トレオニンキナーゼ、特にMetキナーゼおよび/またはSGKによるシグナル伝達を阻害、調節および/または調整する小化合物の合成が所望されており、本発明の目的である。
【0008】
本発明の化合物は、好ましくはSGK−1の選択的な阻害剤である。それらは、さらに、SGK−2および/またはSGK−3の阻害剤であり得る。
【0009】
詳細には、本発明は、SGKシグナル伝達を阻害、調整および/または調節する化合物、これらの化合物を含む組成物、ならびにSGKにより誘発された疾患および状態、例えば、糖尿病(例えば、真性糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性血管障害および微小血管障害)、肥満、メタボリックシンドローム(異脂肪血症)、全身および肺高血圧症、心血管疾患(例えば心筋梗塞の後の心臓性線維症、心臓肥大および心不全、動脈硬化)ならびに腎疾患(例えば、糸球体硬化症、腎硬化症、腎炎、腎症、電解質排泄障害)、一般的にすべてのタイプの線維症および炎症プロセスにおけるもの(例えば、肝硬変、肺線維症、線維性膵炎、リウマチおよび関節症、クローン病、慢性気管支炎、放射線線維症、硬化性皮膚炎、嚢胞性線維症、瘢痕、アルツハイマー病)の処置のためのこれらの使用方法に関する。
本発明の化合物はまた、腫瘍細胞の成長および腫瘍転移を阻害することができ、したがって腫瘍療法に適する。
【0010】
本発明の化合物はまた、特にストレスによって引き起こされる形態の場合における消化性潰瘍の処置において用いられる。
【0011】
本発明の化合物はさらに、凝固障害、例えば、異常フィブリノーゲン血症、低プロコンバーチン血症、血友病B、スチュアート−プラウアー欠損症、プロトロンビン複合体欠乏症、消費性凝固障害、線溶亢進、免疫性凝固障害または複合凝固障害、およびまた、神経興奮性、例えば、てんかんの処置のために用いられる。本発明の化合物をまた、緑内障または白内障の処置において、治療的に用いることができる。
本発明の化合物はさらに、細菌感染の処置において、および、感染防止療法において用いられる。本発明の化合物をまた、学習能力および注意力を増大させるために、治療的に用いることができる。さらに、本発明の化合物は、細胞老化およびストレスに対抗し、したがって高齢者における平均余命および健康を増大させる。
本発明の化合物はさらに、耳鳴の処置において用いられる。
【0012】
本発明はさらに、特にMetキナーゼによるシグナル伝達を阻害、調節および/または調整する式Iで表される化合物、これらの化合物を含む組成物、ならびに哺乳動物におけるMetキナーゼにより誘発された疾患および状態、例えば血管形成、癌、腫瘍形成、成長および増殖(propagation)、動脈硬化、眼の疾患、例えば年齢により誘発された黄斑変性症、脈絡膜血管新生および糖尿病性網膜症、炎症性疾患、関節炎、血栓症、線維症、糸球体腎炎、神経変性、乾癬、再狭窄、創傷治癒、移植片拒絶、代謝性疾患および免疫系の疾患、また自己免疫性疾患、肝硬変、糖尿病および血管の疾患、また不安定性および浸透性などを処置するためのこれらの使用方法に関する。
【0013】
固形腫瘍、特に迅速に成長する腫瘍を、Metキナーゼ阻害剤で処置することができる。これらの固形腫瘍には、単球性白血病、脳腫瘍、尿生殖器腫瘍、リンパ系腫瘍、胃癌、喉頭癌ならびに肺腺癌および小細胞肺癌を含む肺癌が含まれる。
【0014】
本発明はまた、調節されていない、または乱れたMetキナーゼ活性と関連する疾患を防止および/または処置するための、Metキナーゼを調節、調整または阻害するための方法を対象とする。特に、式Iで表される化合物を、特定の形態の癌を処置するにあたり用いることもできる。式Iで表される化合物をさらに、特定の既存の癌化学療法において相加的な、または相乗的な効果を提供するために用いることができ、かつ/または特定の既存の癌化学療法および放射線療法の有効性を回復するために用いることができる。
【0015】
式Iで表される化合物をさらに、Metキナーゼの単離および活性または発現の調査のために用いることができる。さらに、これらは特に、調節されていない、または乱れたMetキナーゼ活性と関連する疾患についての診断法において用いるのに適する。
【0016】
したがって、SGKおよび/またはMetキナーゼシグナル伝達を特異的に阻害、調整および/または変調する小さい化合物の同定が、所望されており、本発明の目的である。
【0017】
本発明の化合物およびこれらの塩は、極めて有用な薬理学的特性を有し、同時に十分に耐容されることが見出された。
特に、これらは、SGKおよび/またはMetキナーゼ阻害特性を示す。
【0018】
本発明の化合物はさらに、他のキナーゼ、例えばAurora-B、MAPK2、MSK1、PRK2、DYRK1、CHK2、GSK3−ベータ、PKB(AKT)、ROCKIIまたはS6K1、Limk1、TGF−ベータ、MAPK8、PLK1、PDK1、MKK1、SAPK3、SAPK4および他のものに対する活性を示す。
【0019】
GSK3−ベータおよび関連する病状に対して阻害作用を有する複素環式化合物は、例えばWO 2008/078196に記載されている。
したがって、本発明の化合物を、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、タウオパシーなど、例えばアルツハイマー病、大脳皮質基底核変性症、ピック病、ウィルソン病、ハンチントン病、さらに血管性認知症、急性脳卒中、末梢神経障害、網膜症または緑内障、さらに躁うつ病などを処置するために用いることができる。GSK3−ベータの阻害によって、当該化合物をまた、癌および腫瘍疾患を処置するために用いることができる。
【0020】
本発明の化合物をさらに、自己免疫疾患、炎症性疾患および増殖性疾患、エイズ、喘息、鼻炎ならびにクローン病を処置するために用いることができる。
【0021】
したがって、本発明は、前述の疾患の処置および/または予防における医薬および/または医薬活性成分としての本発明の化合物、ならびに前述の疾患の処置および/または予防のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用、ならびにまた本発明の1種または2種以上の化合物の、このような投与を必要としている患者への投与を含む、前述の疾患の処置方法に関する。
【0022】
宿主または患者は、すべての哺乳動物種、例えば霊長類種、特にヒト;マウス、ラットおよびハムスターを含むげっ歯動物;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属していてもよい。動物モデルは、実験的調査のために興味深く、ここでこれらは、ヒト疾患の処置についてのモデルを提供する。
【0023】
シグナル伝達経路を同定するため、および種々のシグナル伝達経路間の相互作用を検出するために、種々の科学者は、好適なモデルまたはモデル系、例えば細胞培養モデル(例えばKhwaja et al., EMBO, 1997, 16, 2783-93)およびトランスジェニック動物のモデル(例えばWhite et al., Oncogene, 2001, 20, 7064-7072)を開発した。シグナル伝達カスケードにおけるいくつかの段階の決定のために、相互作用する化合物を用いて、シグナルを変調させることができる(例えばStephens et al., Biochemical J., 2000, 351, 95-105)。本発明の化合物をまた、動物および/または細胞培養モデルにおける、または本出願において述べる臨床的疾患におけるキナーゼ依存性シグナル伝達経路を試験するための試薬として、用いることができる。
【0024】
キナーゼ活性の測定は、当業者に周知の手法である。基質、例えばヒストン(例えばAlessi et al., FEBS Lett. 1996, 399, 3, 333〜338頁)または塩基性ミエリンタンパク質を用いるキナーゼ活性の決定のための一般的な試験系は、文献中に記載されている(例えば、Campos-Gonzalez, R.およびGlenney, Jr., J.R. 1992, J. Biol. Chem. 267, 14535頁)。
【0025】
種々のアッセイ系は、キナーゼ阻害剤を同定するために有用である。シンチレーション近接アッセイ(Sorg et al., J. of. Biomolecular Screening, 2002, 7, 11-19)およびフラッシュプレートアッセイにおいて、基質としてのタンパク質またはペプチドの放射活性リン酸化を、γATPを用いて測定する。阻害化合物の存在下で、低下した放射活性シグナルを検出することができるか、または全く検出することができない。さらに、均一な時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術は、アッセイ法として有用である(Sills et al., J. of Biomolecular Screening, 2002, 191-214)。
【0026】
他の放射活性でないELISAアッセイ法は、特定のホスホ抗体(ホスホAB)を用いる。ホスホAB単独は、リン酸化された基質に結合する。この結合を、第二ペルオキシダーゼ結合抗ヒツジ抗体を用いて、化学発光により検出することができる(Ross et al., Biochem. J., 2002, 366, 977-981)。
【0027】
本発明の化合物が異種移植腫瘍モデルにおいてインビボで抗増殖性作用を有することを、示すことができる。本発明の化合物を、過剰増殖性疾患を有する患者に投与して、例えば腫瘍成長を阻害し、リンパ球増殖性疾患と関連する炎症を低減し、組織修復などによる移植片拒絶または神経学的損傷を阻害する。本発明の化合物は、予防的または治療的目的に適する。本明細書中で用いる用語「処置」は、疾患の防止と既存の状態の処置との両方を指すのに用いられる。増殖の防止は、明白な疾患が発生する前に本発明の化合物を投与することによって達成され、これは例えば腫瘍成長を防止し、転移性増殖を防止し、心血管手術に関連する再狭窄を軽減するためなどに行う。あるいはまた、患者の臨床的症状を安定化するかまたは改善することによって進行中の疾患を治療するために、当該化合物が用いられる。
【0028】
本発明の化合物での処置に対する特定の細胞の感受性を、インビトロ試験により決定することができる。典型的に、細胞の培養物を、本発明の化合物と、種々の濃度において、活性剤が細胞死を誘発するかまたは遊走を阻害するのを可能にするのに十分な期間、通常約1時間〜1週間にわたり、混ぜ合わせる。インビトロ試験を生検試料から培養された細胞を用いて行うことができる。次に、処理の後に残留する生細胞を計数する。
【0029】
用量は、用いる特定の化合物、特定の疾患、患者の状況などに依存して変化する。治療的用量は、典型的には標的組織中の所望されない細胞集団を減少させ、同時に患者の生存能を維持するのに顕著に十分である。処置を一般的に、顕著な減少、例えば細胞負荷の少なくとも約50%の減少が発生するまで継続し、本質的に所望されない細胞が身体中でもはや検出されなくなるまで継続してもよい。
【0030】
従来技術
他の1H−ピロロ(2,3−b)ピリジンは、WO 2005/085244 A1において、およびEP 1749829においてプロテインキナーゼ阻害剤として記載されている。
他のアザインドール誘導体は、WO 2006/004984においてプロテインキナーゼ阻害剤として記載されており、それを、自己免疫疾患、炎症性疾患および増殖性疾患、エイズ、喘息、鼻炎ならびにクローン病を処置するために用いることができる。
【0031】
さらに、他のピロロピリジンは、WO 2004/078756 A2においてプロテインキナーゼ阻害剤として記載されている。
インドールおよび他の複素環式誘導体は、US 2005/250829においてキナーゼ阻害剤として開示されている。
さらに、他のアザインドールは、WO 2005/1030050 A2においてプロテインキナーゼ阻害剤として記載されている。
他の複素環式インドール誘導体は、WO 2005/123672 A2においてキナーゼ阻害剤として開示されている。
他の複素環式オキサジアゾール誘導体は、WO 2002/72549 A1から既知である。
癌を処置するためのヘテロアリール化合物は、WO 2003/040402に記載されている。
【0032】
WO 00/62781には、細胞容積調整ヒトキナーゼH−SGKの阻害剤を含む医薬の使用が記載されている。
糖尿病および/または癌疾患を処置するための複素環式インダゾール誘導体は、WO 2006/044860およびWO 2005056550から知られている。
US 2005090529には、糖尿病性網膜症を処置するためのインダゾール誘導体が開示されている。
【0033】
腫瘍を処置するためのインダゾール誘導体は、WO 2005000813に開示されており、WO 2004060318には、心血管疾患を処置するためのものが開示されている。
腫瘍を処置するための他の複素環式化合物は、WO2004052280から知られている。
【0034】
さらに、精神病性疾患を処置するための他の複素環式化合物は、EP 328200に開示されている。
インダゾール誘導体は、WO 03/064397においてプロテインキナーゼ阻害剤として記載されている。
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 13 (2003) 3059-3062において、J. Witherington et al.は、インダゾール誘導体を調製することを記載している。
【0035】
インダゾール誘導体は、WO 2003097610においてキナーゼ阻害剤として記載されている。
インダゾール誘導体は、WO 2003051847においてGSK−3阻害剤として開示されている。
【0036】
トリアゾロピリダジン誘導体は、WO 2007/064797、WO 2007/075567、WO 2007/138472、WO 2008/008539、WO 2008/051805においてMetキナーゼ阻害剤として記載されている。
【0037】
キナーゼ阻害剤を抗感染療法において用いることは、C. Doerigにより、 Cell. Mol. Biol. Lett. Vol. 8, No. 2A, 2003, 524-525に記載されている。
キナーゼ阻害剤を肥満において用いることは、N. PerrottiによってJ. Biol. Chem. 2001, March 23; 276(12):9406-9412に記載されている。
【0038】
以下の文献には、SGK阻害剤を疾患の処置において用いることが示唆および/または記載されている:
1: Chung EJ, Sung YK, Farooq M, Kim Y, Im S, Tak WY, Hwang YJ, Kim YI, Han HS, Kim JC, Kim MK. Gene expression profile analysis in human hepatocellular carcinoma by cDNA microarray. Mol Cells. 2002;14:382-7.
2: Brickley DR, Mikosz CA, Hagan CR, Conzen SD. Ubiquitin modification of serum and glucocorticoid-induced protein kinase-1(SGK-1). J Biol Chem. 2002;277:43064-70.
【0039】
3: Fillon S, Klingel K, Warntges S, Sauter M, Gabrysch S, Pestel S, Tanneur V, Waldegger S, Zipfel A, Viebahn R, Haussinger D, Broer S, Kandolf R, Lang F. Expression of the serine/threonine kinase hSGK1 in chronic viral hepatitis. Cell Physiol Biochem. 2002;12:47-54.
4: Brunet A, Park J, Tran H, Hu LS, Hemmings BA, Greenberg ME. Protein kinase SGK mediates survival signals by phosphorylating the forkhead transcription factor FKHRL1 (FOXO3a). Mol Cell Biol 2001;21:952-65
5: Mikosz CA, Brickley DR, Sharkey MS, Moran TW, Conzen SD. Glucocorticoid receptor-mediated protection from apoptosis is associated with induction of the serine/threonine survival kinase gene, sgk-1. J Biol Chem. 2001;276:16649-54.
【0040】
6: Zuo Z, Urban G, Scammell JG, Dean NM, McLean TK, Aragon I, Honkanen RE. Ser/Thr protein phosphatase type 5 (PP5) is a negative regulator of glucocorticoid receptor-mediated growth arrest. Biochemistry. 1999;38:8849-57.
7: Buse P, Tran SH, Luther E, Phu PT, Aponte GW, Firestone GL. Cell cycle and hormonal control of nuclear-cytoplasmic localization of the serum- and glucocorticoid-inducible protein kinase, Sgk, in mammary tumor cells. A novel convergence point of anti-proliferative and proliferative cell signalling pathways. J Biol Chem. 1999;274:7253-63.
8: M. Hertweck, C. Goebel, R. Baumeister: C.elegans SGK-1 is the critical component in the Akt/PKB Kinase complex to control stress response and life span. Developmental Cell, Vol. 6, 577-588, April, 2004.
【発明の概要】
【0041】
発明の概要
本発明は、式I
【化1】

式中、
Lは、欠如しているかまたはCR、CRCR10、CRC(OR)R10、NR、O、NRCR、CRNR、OCR、OCRCR10、CRO、CRCR10O、NRCRCR10、CRSO、NRCONR、NRCONRCR10、COCR、CONR、CONRCR、CONHNH、NRCRCONR10、NRCOもしくはNRCOCRを示し、
Uは、H、A、ArまたはHetを示し、
Yは、O、NH、NNHまたはN−[C(RArを示し、
Rは、HまたはR11を示し、
【0042】
、X、Xは、各々、互いに独立してH、A、Hal、OH、OA、−[C(RAr、−[C(RHet、OAr、OHet、SH、SA、SAr、SHet、NH、NHA、NAA’、NHAr、N(Ar)、NHHet、N(Het)、NAAr、NAHet、SOA、SOAr、SOHet、SOA、SOAr、SOHet、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、COAr、COHet、SOH、SONH、SONHAr、SON(Ar)、SONHHetまたはSON(Het)を示し、
、R、R、R、R10は、各々、互いに独立してHまたはAを示し、
11は、1〜6個のC原子を有するアルキルを示し、ここで1〜5個のH原子は、Fによって置き換えられていてもよく、
【0043】
A、A’は、各々、互いに独立して1〜10個のC原子を有するアルキルを示し、それは、非置換であるか、または=S、=NRおよび/または=O(カルボニル酸素)によって単置換、二置換もしくは三置換されており、またここで、1つ、2つまたは3つのCH基は、O、S、SO、SO、NH、NR11によって、および/または−CH=CH−基によって置き換えられていてもよく、かつ/またはさらに、1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
あるいは3〜7個のC原子を有する環状アルキルを示し、
【0044】
Arは、フェニル、ナフチルまたはビフェニルを示し、その各々は、非置換であるかまたはA、Hal、OH、OA、Ar’、OAr’、Het、OHet、SH、SA、SAr’、SHet、NH、NHA、NAA’、NHAr’、N(Ar’)、NHHet、N(Het)、NAAr’、NAHet、SOA、SOAr’、SOHet、SOA、SOAr’、SOHet、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、COAr’、COHet、SOH、SONH、SONHAr’、SON(Ar’)、SONHHetおよび/またはSON(Het)によって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されており、
【0045】
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有し、A、Hal、OH、OA、Ar、OAr、Het’、OHet’、SH、SA、SAr’、SHet’、NH、NHA、NAA’、NHAr’、N(Ar’)、NHHet’、N(Het’)、NAAr’、NAHet’、SOA、SOAr’、SOHet’、SOA、SOAr’、SOHet’、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、COAr’、COHet’、SOH、SONH、SONHAr’、SON(Ar’)、SONHHet’またはSON(Het’)、=S、=NRおよび/または=O(カルボニル酸素)によって単置換、二置換または三置換されていてもよい、単環式または二環式の飽和、不飽和または芳香族複素環を示し、
【0046】
Ar’は、非置換であるか、またはA、Hal、OH、OA、O−フェニル、SH、SA、NH、NHA、NAA’、NH−フェニル、SOA、SO−フェニル、SOA、SO−フェニル、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、CO−フェニル、SOH、SONH、SONH−フェニルおよび/またはSON(フェニル)によって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されているフェニルを示し、
【0047】
Het’は、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有し、A、Hal、OH、OA、NH、NHA、NAA’、SOA、SOAr’、SOA、SOAr’、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、COAr’、SOH、SONH、SONHAr’、SON(Ar’)、=S、=NRおよび/または=O(カルボニル酸素)によって単置換、二置換または三置換されていてもよい、単環式または二環式の飽和、不飽和または芳香族複素環を示し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
nは、0、1または2を示す、
で表される化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物に関する。
【0048】
本発明は、式Iで表される化合物およびそれらの塩ならびに、式Iで表される化合物ならびに、それらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体の製造方法であって、
a)式II
【化2】

式中、X、X、X、R、LおよびUは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物を環化し、
あるいは、
【0049】
b)式III
【化3】

式中、X、X、Xは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物を、ハロゲン化シアンと反応させ、
あるいは、
【0050】
c)式Iで表され、式中Yが酸素を示す化合物を、式Iで表され、式中YがNNHまたはN−[C(RArを示す化合物に、ヒドラジン誘導体を用いて、またはHN−[C(RArを用いて変換し、
かつ/または式Iで表される塩基または酸を、その塩の1種に変換する
ことを特徴とする、前記方法に関する。
【0051】
式Iで表される化合物はまた、これらの化合物の水和物および溶媒和物、さらに薬学的に使用可能な誘導体を意味するものと解釈される。
本発明はまた、これらの化合物の立体異性体(E、Z異性体)ならびに水和物および溶媒和物に関する。化合物の溶媒和物は、これらの相互の引力のために形成される、化合物上への不活性溶媒分子のアダクション(adduction)を意味するものと解釈される。溶媒和物は、例えば、一もしくは二水和物またはアルコラートである。
【0052】
薬学的に使用可能な誘導体は、例えば、本発明の化合物の塩およびまたいわゆるプロドラッグ化合物を意味するものと解釈される。
プロドラッグ誘導体は、例えばアルキルもしくはアシル基、糖またはオリゴペプチドで修飾され、生物体中で迅速に切断されて本発明の活性な化合物を形成する、式Iで表される化合物を意味するものと解釈される。
これらはまた、例えばInt. J. Pharm. 115, 61-67 (1995)に記載されているように、本発明の化合物の生分解性ポリマー誘導体を含む。
【0053】
「有効量」の表現は、例えば研究者または医師により、組織、系、動物またはヒトにおいて求められているかまたは目的とする、生物学的または薬学的応答を生じる医薬または薬学的に活性な成分の量を意味する。
さらに、「治療的有効量」の表現は、この量を施与されていない対応する対象と比較して、以下の結果:
疾患、症候群、状況(state)、状態(condition)、障害もしくは副作用の改善された処置、治癒、予防(prevention)もしくは解消、またはまた疾患、状態もしくは障害の進行の低減
を有する量を意味する。
「治療的有効量」の表現はまた、正常な生理学的機能を増大させるのに有効である量を包含する。
【0054】
本発明はまた、本発明の式Iで表される化合物の混合物、例えば2種のジアステレオマーまたは鏡像体の、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比率での混合物に関する。
これらは、特に好ましくは、立体異性体化合物の混合物であり、特に、本発明の化合物は、ラセミ体の形態にある。
1回よりも多く出現するすべての基について、これらの意味は、互いに独立している。
本明細書中、基およびパラメーターL、U、R、Y、X、XおよびXは、他に明確に示さない限り、式Iについて示した意味を有する。
【0055】
Aは、アルキルを示し、非分枝状(直線状)または分枝状であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のC原子を有する。Aは、好ましくは、メチル、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−または4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピル、さらに好ましくは、例えばトリフルオロメチルを示す。
Aは、極めて特に好ましくは、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは1,1,1−トリフルオロエチルを示す。
【0056】
Lは、好ましくは「欠如している」またはCR、例えばCHなどを示す。
Rは、好ましくはHを示す。
【0057】
Arは、例えば、フェニル、o−、m−またはp−トリル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−アミノフェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−アセトアミドフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−シアノフェニル、o−、m−またはp−ウレイドフェニル、o−、m−またはp−ホルミルフェニル、o−、m−またはp−アセチルフェニル、o−、m−またはp−アミノスルホニルフェニル、o−、m−またはp−カルボキシフェニル、o−、m−またはp−カルボキシメチルフェニル、o−、m−またはp−カルボキシメトキシフェニル、
【0058】
さらに好ましくは、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジブロモフェニル、2,4−または2,5−ジニトロフェニル、2,5−または3,4−ジメトキシフェニル、3−ニトロ−4−クロロフェニル、3−アミノ−4−クロロ、2−アミノ−3−クロロ、2−アミノ−4−クロロ、2−アミノ−5−クロロまたは2−アミノ−6−クロロフェニル、2−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノまたは3−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−または3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニルまたは2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを示す。
【0059】
Arは、好ましくは、非置換であるか、またはA、Hal、OHおよび/またはOAにより単置換、二置換、三置換もしくは四置換されているフェニル、例えばo−、m−もしくはp−メトキシフェニル、o−、m−もしくはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−もしくはp−フルオロフェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−ジフルオロフェニルまたは3−クロロ−4−フルオロフェニルを示す。
【0060】
Ar’は、好ましくは、フェニル、o−、m−またはp−トリル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−アミノフェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−アセトアミドフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−シアノフェニル、o−、m−またはp−ウレイドフェニル、o−、m−またはp−ホルミルフェニル、o−、m−またはp−アセチルフェニル、o−、m−またはp−アミノスルホニルフェニル、o−、m−またはp−カルボキシフェニル、o−、m−またはp−カルボキシメチルフェニル、o−、m−またはp−カルボキシメトキシフェニル、
【0061】
さらに好ましくは、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジブロモフェニル、2,4−または2,5−ジニトロフェニル、2,5−または3,4−ジメトキシフェニル、3−ニトロ−4−クロロフェニル、3−アミノ−4−クロロ、2−アミノ−3−クロロ、2−アミノ−4−クロロ、2−アミノ−5−クロロまたは2−アミノ−6−クロロフェニル、2−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノまたは3−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−または3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニルまたは2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを示す。
【0062】
他の置換基とは関係なく、Hetは、例えば、2−もしくは3−フリル、2−もしくは3−チエニル、1−、2−もしくは3−ピロリル、1−、2−、4−もしくは5−イミダゾリル、1−、3−、4−もしくは5−ピラゾリル、2−、4−もしくは5−オキサゾリル、3−、4−もしくは5−イソキサゾリル、2−、4−もしくは5−チアゾリル、3−、4−もしくは5−イソチアゾリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−、4−、5−もしくは6−ピリミジニル、さらに好ましくは、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−もしくは−5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、3−もしくは4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−インドリル、4−もしくは5−イソインドリル、1−、2−、4−もしくは5−ベンズイミダゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−インダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−もしくは7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キナゾリニル、5−もしくは6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−もしくは8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−もしくは−5−イルまたは2,1,3−ベンズオキサジアゾール−5−イルを示す。
【0063】
複素環式基はまた、部分的にまたは完全に水素化されていてもよい。
Hetは、したがって、また、例えば、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−もしくは−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−もしくは−5−フリル、テトラヒドロ−2−もしくは−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−もしくは−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピロリル、1−、2−もしくは3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−もしくは−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−もしくは−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−もしくは−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−もしくは−6−ピリジル、1−、2−、3−もしくは4−ピペリジニル、2−、3−もしくは4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−もしくは−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−もしくは−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−もしくは−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−もしくは−5−ピリミジニル、1−、2−もしくは3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−もしくは−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−もしくは−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−もしくは8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは、2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−もしくは−6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニルまたはまた3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−もしくは−7−イル、さらに好ましくは、2,3−ジヒドロベンゾフラニルもしくは2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニルを示すことができる。
【0064】
Hetは、好ましくは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式の芳香族複素環を示す。
【0065】
Hetは、特に好ましくは、2−もしくは3−フリル、2−もしくは3−チエニル、1−、2−もしくは3−ピロリル、1−、2−、4−もしくは5−イミダゾリル、1−、3−、4−もしくは5−ピラゾリル、2−、4−もしくは5−オキサゾリル、3−、4−もしくは5−イソキサゾリル、2−、4−もしくは5−チアゾリル、3−、4−もしくは5−イソチアゾリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−、4−、5−もしくは6−ピリミジニル、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−もしくは5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、3−もしくは4−ピリダジニルまたはピラジニルを示す。
Hetは、極めて特に好ましくはピロリル、2−、3−または4−ピリジル、2−または3−フリル、2−または3−チエニルを示す。
【0066】
Het’は、好ましくは、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式の飽和、不飽和または芳香族複素環を示し、これは、非置換であるか、またはA、Hal、OHおよび/またはOAにより単置換、二置換もしくは三置換されていてもよい。
他の態様において、Het’は、特に好ましくは、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、チアゾリル、インドリル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルまたはピペラジニルを示し、この各々は、非置換であるか、またはA、Hal、OHおよび/またはOAにより単置換、二置換もしくは三置換されている。
【0067】
、R、R、R、R10は、好ましくは、各々の場合において互いに独立してHまたはR11、極めて特に好ましくはHまたはメチルを示す。
、X、Xは、好ましくは、各々の場合において互いに独立してH、Halまたは−[C(RHetを示す。
【0068】
式Iで表される化合物は、1つまたは2つ以上のキラリティーの中心を有することができ、したがって種々の立体異性体形態で存在し得る。式Iは、すべてのこれらの形態を包含する。
【0069】
したがって、本発明は特に、少なくとも1つの前述の基が前に示した好ましい意味の1つを有する、式Iで表される化合物に関する。いくつかの好ましい群の化合物を、以下の従属式Ia〜Ikにより表すことができ、これは、式Iに適合し、ここで、一層詳細に表していない基は、式Iについて示した意味を有するが、ここで、
【0070】
Iaにおいて、Lは、欠如しているかまたはCRを示し;
Ibにおいて、Rは、Hを示し;
Icにおいて、Aは、1〜10個のC原子を有するアルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく;
Idにおいて、Arは、非置換であるか、またはA、Hal、OHおよび/またはOAによって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されているフェニルを示し;
【0071】
Ieにおいて、Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式の芳香族複素環を示し;
Ifにおいて、Hetは、2−もしくは3−フリル、2−もしくは3−チエニル、1−、2−もしくは3−ピロリル、1−、2、4−もしくは5−イミダゾリル、1−、3−、4−もしくは5−ピラゾリル、2−、4−もしくは5−オキサゾリル、3−、4−もしくは5−イソキサゾリル、2−、4−もしくは5−チアゾリル、3−、4−もしくは5−イソチアゾリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−、4−、5−もしくは6−ピリミジニル、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−もしくは5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、3−もしくは4−ピリダジニルまたはピラジニルを示し;
【0072】
Igにおいて、R、Rは、各々、互いに独立してHまたはR11を示し;
Ihにおいて、R、Rは、各々、互いに独立してHまたはCHを示し;
Iiにおいて、Hetは、ピロリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−もしくは3−フリルまたは2−もしくは3−チエニルを示し;
Ijにおいて、X、X、Xは、各々、互いに独立してH、Halまたは−[C(RHetを示し;
【0073】
Ikにおいて、Lは、欠如しているかまたはCRを示し、
Uは、H、A、ArまたはHetを示し、
Yは、O、NH、NNHまたはN−[C(RArを示し、
Rは、HまたはR11を示し、
、X、Xは、各々、互いに独立してH、Halまたは−[C(RHetを示し、
、Rは、各々、互いに独立してHまたはR11を示し、
11は、1〜6個のC原子を有するアルキルを示し、ここで1〜5個のH原子は、Fによって置き換えられていてもよく、
Aは、1〜10個のC原子を有するアルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
【0074】
Arは、非置換であるかまたはA、Hal、OHおよび/またはOAによって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されているフェニルを示し、
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式の芳香族複素環を示し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
nは、0、1または2を示す;
ならびに、それらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体であり、すべての比率でのそれらの混合物を含む。
【0075】
本発明の化合物およびまたこれらの製造のための出発物質は、さらに、文献(例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)などの標準的学術書)に記載されているような自体公知の方法により、正確には、周知の、前述の反応に適する反応条件の下で、製造される。また、ここで、自体公知であり、ここでは一層詳細には述べない変法を用いてもよい。
【0076】
所望により、出発物質をまた、これらを反応混合物から単離せずに、代わりに直ちにこれらをさらに本発明の化合物に変換することにより、in situで生成することができる。
出発化合物は、一般的に周知である。しかし、これらが新規である場合には、これらを、自体公知の方法により調製することができる。
【0077】
Yが酸素を示す式Iで表される化合物を、好ましくは、式IIで表される化合物を環化することによって得ることができる。環化を、好ましくは、水銀塩を添加して不活性溶媒中で行う。
水銀塩は、特に好ましくは酢酸水銀(II)である。
用いる条件に依存して、反応時間は、数分〜14日であり、反応温度は、約−30°〜140°、通常0°〜100°、特に約60°〜約90°である。
【0078】
好適な不活性溶媒は、例えば炭化水素、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンもしくはキシレンなど;塩素化炭化水素、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムもしくはジクロロメタンなど;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノールなど;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)もしくはジオキサンなど;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)など;ケトン、例えばアセトンもしくはブタノンなど;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドもしくはジメチルホルムアミド(DMF)など;ニトリル、例えばアセトニトリルなど;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)など;二硫化炭素;カルボン酸、例えばギ酸もしくは酢酸など;ニトロ化合物、例えばニトロメタンもしくはニトロベンゼンなど;エステル、例えば酢酸エチルまたは前記溶媒の混合物である。
メタノールまたはエタノールが、特に好ましい。
【0079】
式Iで表され、式中
Yが、酸素を示し、
Rが、Hを示し、
Lが、存在せず、
Uが、Hを示す
化合物を、さらに、好ましくは、式IIIで表される化合物をハロゲン化シアン、好ましくはBrCNと反応させることによって得ることができる。
当該反応を、上記で示したように、不活性溶媒中で、好ましくは水および/またはDMF中で行う。
用いる条件に依存して、反応時間は、数分〜14日であり、反応温度は、約−30°〜140°、通常0°〜100°、特に約15°〜約70°である。
【0080】
当該反応を、一般的に、酸結合剤、好ましくはアルカリ金属のまたはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、あるいはアルカリ金属のまたはアルカリ土類金属の、好ましくはカリウム、ナトリウム、カルシウムまたはセシウムの他の弱酸の塩の存在下で行う。有機塩基、例えばトリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジンまたはキノリンなどを加えることもまた、有利であり得る。
【0081】
式Iで表され、式中
Yが、NNHまたはN−[C(RArを示す、
化合物を、さらに、好ましくは、式Iで表され、式中Yが酸素を示す化合物を、ヒドラジン誘導体、好ましくはヒドラジン、ヒドラジン水和物と、または例えばベンジルアミンと反応させることによって得ることができる。
当該反応を、上記で示したように、不活性溶媒中で、好ましくはプロパノール中で行う。
用いる条件に依存して、反応時間は、数分〜14日であり、反応温度は、約0°〜160°、通常20°〜140°、特に約80°〜約120°である。
【0082】
エーテルの切断を、当業者に公知の方法の下で行う。
エーテル、例えばメチルエーテルの切断の標準的な方法は、三臭化ホウ素を用いることである。
水素化分解的に除去可能な基、例えばベンジルエーテルの切断を、例えば触媒(例えば有利には支持体、例えば炭素上の貴金属触媒、例えばパラジウム)の存在下で水素で処理することにより、切断して除去することができる。ここで好適な溶媒は、上記に示したもの、特に例えばアルコール類、例えばメタノールもしくはエタノール、またはアミド類、例えばDMFである。水素化分解を、一般的には、約0〜100°の温度および約1〜200barの圧力にて、好ましくは20〜30°および1〜10barにて行う。
【0083】
エステルを、例えば酢酸を用いて、または水中のNaOHもしくはKOH、水/THFもしくは水/ジオキサンを用いて、0〜100°の温度にて鹸化することができる。
【0084】
薬学的塩および他の形態
本発明の前述の化合物を、これらの最終的な非塩形態で用いることができる。一方、本発明はまた、これらの化合物を、当該分野において公知の手順により、種々の有機および無機酸類および塩基類から由来し得るこれらの薬学的に許容し得る塩の形態で用いることを包含する。式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る塩形態は、大部分、慣用の方法により調製される。式Iで表される化合物がカルボキシル基を含む場合には、この好適な塩の1種を、当該化合物を好適な塩基と反応させて対応する塩基付加塩を得ることにより、生成することができる。このような塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含むアルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化バリウムおよび水酸化カルシウム;アルカリ金属アルコキシド類、例えばカリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;ならびに種々の有機塩基、例えばピペリジン、ジエタノールアミンおよびN−メチルグルタミンである。
【0085】
式Iで表される化合物のアルミニウム塩は、同様に包含される。式Iで表される数種の化合物の場合において、酸付加塩を、これらの化合物を薬学的に許容し得る有機および無機酸類、例えばハロゲン化水素、例えば塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素、他の鉱酸およびこれらの対応する塩、例えば硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩など、ならびにアルキルおよびモノアリールスルホン酸塩類、例えばエタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩、ならびに他の有機酸およびこれらの対応する塩、例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などで処理することにより、生成することができる。
【0086】
したがって、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る酸付加塩には、以下のものが含まれる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩(arginate)、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(ムチン酸から)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、リン酸一水素塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルモエイト(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩、しかしこれは、限定を表すものではない。
【0087】
さらに、本発明の化合物の塩基性塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩が含まれるが、これは、限定を表すことを意図しない。前述の塩の中で、好ましいのは、アンモニウム;アルカリ金属塩、ナトリウムおよびカリウム、ならびにアルカリ土類金属塩、カルシウムおよびマグネシウムである。
【0088】
薬学的に許容し得る有機無毒性塩基から誘導される、式Iで表される化合物の塩には、第一、第二および第三アミン類、置換アミン類、天然発生置換アミンルイもまた含む、環状アミン類、ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩が含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0089】
塩基性窒素含有基を含む本発明の化合物を、剤、例えば(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、イソプロピルおよびtert−ブチル;ジ(C〜C)アルキル硫酸塩、例えば硫酸ジメチル、ジエチルおよびジアミル;(C10〜C18)アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル;ならびにアリール(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば塩化ベンジルおよび臭化フェネチルを用いて四級化することができる。本発明の水溶性および油溶性の化合物を共に、このような塩を用いて調製することができる。
【0090】
好ましい前述の薬学的塩には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバリン酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩およびトロメタミンが含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0091】
式Iで表される塩基性化合物の酸付加塩を、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させ、慣用の方法で塩の生成を生じることにより、調製する。遊離塩基を、塩形態を塩基と接触させ、慣用の方法で遊離塩基を単離することにより、再生することができる。遊離塩基形態は、ある観点において、いくつかの物理的特性、例えば極性溶媒への溶解性の点で、これらの対応する塩形態と異なる;しかし、本発明の目的のために、当該塩は、他の点では、これらのそれぞれの遊離塩基形態に相当する。
【0092】
述べたように、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る塩基付加塩は、金属またはアミン類、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミン類を用いて生成する。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミン類は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0093】
本発明の酸性化合物の塩基付加塩を、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させ、慣用の方法で塩の生成を生じることにより、調製する。遊離酸を、塩形態を酸と接触させ、慣用の方法で遊離酸を単離することにより、再生することができる。遊離酸形態は、ある観点において、いくつかの物理的特性、例えば極性溶媒への溶解性の点で、これらの対応する塩形態と異なる;しかし、本発明の目的のために、当該塩は、他の点では、これらのそれぞれの遊離酸形態に相当する。
【0094】
本発明の化合物が、このタイプの薬学的に許容し得る塩を生成することができる1つよりも多い基を含む場合には、本発明はまた、多重塩(multiple salt)を包含する。典型的な多重塩形態には、例えば、重酒石酸塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウムおよび三塩酸塩が含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0095】
上記で述べたことに関して、本文脈における表現「薬学的に許容し得る塩」は、特に、この塩形態が活性成分に対して、前に用いられていた活性成分の遊離形態または活性成分のすべての他の塩形態と比較して改善された薬物動態学的特性を付与する場合には、式Iで表される化合物をこの塩の1種の形態で含む活性成分を意味するものと解釈されることが、明らかである。活性成分の薬学的に許容し得る塩形態はまた、この活性成分に、初めて、前には有していなかった所望の薬物動態学的特性を付与することができ、さらに、身体におけるこの治療的有効性に関して、この活性成分の薬力学に対する正の影響を有することができる。
【0096】
本発明の式Iで表される化合物は、これらの分子構造のために、キラルであり得、したがって種々の鏡像体形態で存在し得る。したがって、これらは、ラセミ体または光学的に活性な形態で存在し得る。
【0097】
本発明の化合物のラセミ体または立体異性体の薬学的活性が、異なり得るため、鏡像体を用いるのが望ましい場合がある。これらの場合において、最終生成物またはさらには中間体を、鏡像体化合物に、当業者に公知の化学的もしくは物理的手段により分離するかまたは、さらには、それ自体で合成において用いることができる。
【0098】
ラセミ体アミン類の場合において、ジアステレオマーが混合物から、光学的に活性な分割剤との反応により生成する。好適な分割剤の例は、光学的に活性な酸、例えば酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、好適なN保護アミノ酸類(例えばN−ベンゾイルプロリンもしくはN−ベンゼンスルホニルプロリン)または種々の光学的に活性な樟脳スルホン酸類のR体およびS体である。また有利なのは、光学的に活性な分割剤(例えばジニトロベンゾイルフェニルグリシン、三酢酸セルロースもしくは炭水化物の他の誘導体またはシリカゲル上に固定された、キラル的に誘導体化されたメタクリレートポリマー類)の補助によるクロマトグラフィー鏡像体分割である。この目的に適する溶離剤は、水性またはアルコール性溶媒混合物、例えば、82:15:3の比率での、ヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリルである。
【0099】
本発明はさらに、化合物および/またはこれらの生理学的に許容し得る塩の、医薬(医薬組成物)の、特に非化学的方法による製造のための使用に関する。これらをここで、少なくとも1種の固体、液体および/または半液体補形剤または補助剤と共に、および、所望により1種または2種以上の他の活性成分と組み合わせて、好適な投薬形態に変換することができる。
【0100】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の化合物および/または、これらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体(すべての比率でのこれらの混合物を含む)、ならびに任意に補形剤および/または補助剤を含む医薬に関する。
【0101】
医薬処方物を、投与単位あたり所定量の活性成分を含む投与単位の形態で、投与することができる。このような単位は、処置される状態、投与の方法ならびに患者の年齢、体重および状態に依存して、例えば0.5mg〜1g、好ましくは1mg〜700mg、特に好ましくは5mg〜100mgの本発明の化合物を含むことができるか、または医薬処方物を、投与単位あたり所定量の活性成分を含む投薬単位の形態で投与することができる。好ましい投与単位処方物は、前に示したように、毎日の用量もしくは部分的用量を含むもの、または活性成分のこの対応する部分である。さらに、このタイプの医薬処方物を、薬学分野において周知の方法を用いて製造することができる。
【0102】
医薬処方物を、すべての所望の好適な方法による、例えば口腔内(頬側もしくは舌下を含む)、直腸内、鼻腔内、局所的(頬側、舌下もしくは経皮を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内もしくは皮内を含む)方法による投与のために適合させることができる。このような処方物を、薬学分野において公知のすべての方法を用いて、例えば活性成分を補形剤(1種もしくは2種以上)または補助剤(1種もしくは2種以上)と混ぜ合わせることにより、製造することができる。
【0103】
経口投与に適合する医薬処方物を、別個の単位、例えばカプセルもしくは錠剤;粉末もしくは顆粒;水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液;食用発泡体もしくは発泡体食品;または水中油液体エマルジョンもしくは油中水液体エマルジョンとして、投与することができる。
【0104】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合において、活性成分要素を、経口的な、無毒性の、かつ薬学的に許容し得る不活性補形剤、例えばエタノール、グリセロール、水などと混ぜ合わせることができる。化合物を好適な微細な大きさに粉砕し、これを同様にして粉砕した薬学的補形剤、例えば食用炭水化物、例えばデンプンまたはマンニトールと混合することにより、粉末を製造する。風味剤、保存剤、分散剤および染料が、同時に存在してもよい。
【0105】
カプセルを、上記のように粉末混合物を調製し、成形したゼラチン殻をこれで充填することにより、製造する。流動促進剤および潤滑剤、例えば固体形態での高度に分散性のケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはポリエチレングリコールを、充填操作の前に粉末混合物に加えることができる。崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムを、同様に加えて、カプセルを服用した後の医薬の有用性を改善することができる。
【0106】
さらに、所望により、または所要に応じて、好適な結合剤、潤滑剤および崩壊剤ならびに染料を、同様に混合物中に包含させることができる。好適な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖類、例えばグルコースまたはベータ−ラクトース、トウモロコシから製造された甘味剤、天然および合成ゴム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ろうなどが含まれる。これらの投与形態において用いられる潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、限定されずに、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴムなどが含まれる。錠剤を、例えば粉末混合物を調製し、混合物を顆粒化または乾燥圧縮し、潤滑剤および崩壊剤を加え、混合物全体を圧縮して錠剤を得ることにより、処方する。
【0107】
粉末混合物を、好適な方法で粉砕した化合物を上記のように希釈剤または塩基と、および任意に結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン、溶解遅延剤、例えばパラフィン、吸収促進剤、例えば第四級塩および/または吸収剤、例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムと混合することにより、調製する。粉末混合物を、これを結合剤、例えばシロップ、デンプンペースト、アカシア粘液またはセルロースの溶液またはポリマー材料で湿潤させ、これをふるいを通して押圧することにより、顆粒化することができる。顆粒化の代替として、粉末混合物を、打錠機に通し、不均一な形状の塊を得、これを崩壊させて、顆粒を形成することができる。
【0108】
顆粒を、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を加えることにより潤滑化して、錠剤流延型への粘着を防止することができる。次に、潤滑化した混合物を圧縮して、錠剤を得る。本発明の化合物をまた、自由流動の不活性補形剤と混ぜ合わせ、次に圧縮して、顆粒化または乾燥圧縮工程を行わずに錠剤を直接得ることができる。セラック密封層、糖またはポリマー材料の層およびろうの光沢層からなる透明な、または不透明な保護層が、存在してもよい。染料を、これらのコーティングに加えて、異なる投与単位間を区別することができるようにすることができる。
【0109】
経口液体、例えば溶液、シロップおよびエリキシル剤を、投与単位の形態で調製し、したがって所定量が予め特定された量の化合物を含むようにすることができる。シロップを、化合物を水性溶液に好適な風味剤と共に溶解することにより調製することができ、一方エリキシル剤を、無毒性アルコール性ビヒクルを用いて調製する。懸濁液を、化合物を無毒性ビヒクル中に分散させることにより、処方することができる。可溶化剤および乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール類およびポリオキシエチレンソルビトールエーテル類、保存剤、風味添加剤、例えばペパーミント油もしくは天然甘味剤もしくはサッカリン、または他の人工甘味料などを、同様に加えることができる。
【0110】
経口投与用の投与単位処方物を、所望により、マイクロカプセル中にカプセル封入することができる。処方物をまた、放出が延長されるかまたは遅延されるように、例えば粒子状材料をポリマー、ろうなど中にコーティングするかまたは包埋することにより、調製することができる。
【0111】
本発明の化合物およびそれらの塩をまた、リポソーム送達系、例えば小さい単層のベシクル(small unilamellar vesicles)、大きい単層のベシクル(large unilamellar vesicles)および多層のベシクル(multilamellar vesicles)の形態で、投与することができる。リポソームを、種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン類から生成することができる。
【0112】
本発明の化合物および塩をまた、化合物分子が結合した個別の担体としてモノクローナル抗体を用いて送達することができる。化合物をまた、標的とする医薬担体としての可溶性ポリマーに結合させることができる。このようなポリマーは、パルミトイル基により置換されたポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパラートアミドフェノール(polyhydroxyethylaspartamidophenol)またはポリエチレンオキシドポリリシンを包含することができる。化合物をさらに、医薬の制御された放出を達成するのに適する生分解性ポリマーの群、例えばポリ乳酸、ポリ−イプシロン−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリジヒドロキシピラン類、ポリシアノアクリレート類およびヒドロゲルの架橋、または両親媒性のブロックコポリマーに結合することができる。
【0113】
経皮的投与用に適合する医薬処方物を、レシピエントの表皮との長期間の、密接な接触のための独立した硬膏剤として投与することができる。したがって、例えば、活性成分を、総括的にPharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に記載されているように、イオン泳動により硬膏剤から送達することができる。
局所的投与用に適合する医薬化合物を、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾールまたは油として処方することができる。
【0114】
目または他の外部組織、例えば口および皮膚の処置のために、処方物を、好ましくは、局所的軟膏またはクリームとして適用する。軟膏を施与するための処方物の場合において、活性成分を、パラフィン系または水混和性クリームベースのいずれかと共に用いることができる。あるいはまた、活性成分を処方して、水中油クリームベースまたは油中水ベースを有するクリームを得ることができる。
【0115】
目への局所的適用に適合する医薬処方物には、点眼剤が含まれ、ここで、活性成分を、好適な担体、特に水性溶媒中に溶解するかまたは懸濁させる。
口における局所的適用に適合する医薬処方物は、薬用キャンデー、トローチおよび洗口剤を包含する。
直腸内投与に適合する医薬処方物を、坐剤または浣腸剤の形態で投与することができる。
【0116】
担体物質が固体である鼻腔内投与に適合する医薬処方物は、例えば20〜500ミクロンの範囲内の粒子の大きさを有する粗粉末を含み、これを、嗅ぎタバコを服用する方法で、即ち鼻に近接して保持した粉末を含む容器からの鼻孔を介しての迅速な吸入により、投与する。担体物質としての液体を有する鼻腔内スプレーまたは鼻腔内ドロップとしての投与に適する処方物は、水または油に溶解した活性成分溶液を包含する。
【0117】
吸入による投与に適合する医薬処方物は、微細な粒子状ダストまたはミストを包含し、これは、エアゾール、噴霧器または吸入器を有する種々のタイプの加圧ディスペンサーにより作成し得る。
膣内投与に適合する医薬処方物を、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体またはスプレー処方物として投与することができる。
【0118】
非経口投与に適合する医薬処方物には、処方物が処置されるべきレシピエントの血液と等張になる酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含む水性の、および非水性の無菌注射溶液;ならびに懸濁媒体および増粘剤を含むことができる水性の、および非水性の無菌懸濁液が含まれる。処方物を、単一用量または多重用量の容器、例えば密封したアンプルおよびバイアルにおいて投与し、凍結乾燥した(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilised))状態において貯蔵し、したがって使用の直前の、無菌の担体液体、例えば注射目的での水の添加のみが必要であるようにすることができる。
レシピに従い製造する注射溶液および懸濁液を、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0119】
上で特定的に述べた構成成分に加えて、処方物はまた、処方物の特定のタイプに関して当該分野において通例の他の剤を含むことができることは、言うまでもない;したがって、例えば、経口投与に適する処方物は、風味剤を含んでいてもよい。
【0120】
本発明の化合物の治療的有効量は、例えば、ヒトまたは動物の年齢および体重、処置が必要である正確な状態、ならびにこの重篤度、処方物の性質および投与の方法を含む多くの要因に依存し、最終的には、処置する医師または獣医師により決定される。しかし、処置のための本発明の化合物の有効量は、一般的に、1日あたり0.1〜100mg/レシピエント(哺乳動物)の体重1kgの範囲内、特に典型的には1日あたり1〜10mg/体重1kgの範囲内である。したがって、体重が70kgである成体の哺乳動物についての1日あたりの実際の量は、通常70〜700mgであり、ここで、この量を、1日あたり個別の用量として、または一層通常には1日あたり一連の部分用量(例えば2回分、3回分、4回分、5回分または6回分)において投与し、したがって合計の毎日の用量が同一であるようにすることができる。塩もしくは溶媒和物の、またはこの生理学的な官能性誘導体の有効量を、本発明の化合物自体の有効量の比として決定することができる。同様の用量が、前述の他の状態の処置に適すると、推測することができる。
【0121】
本発明はさらに、本発明の少なくとも1種の化合物および/または、それらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体(すべての比率でのこの混合物を含む)ならびに少なくとも1種の他の医薬活性成分を含む医薬に関する。
【0122】
本発明はまた、
(a)本発明の化合物および/または、それらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体(すべての比率でのこの混合物を含む)の有効量、
ならびに
(b)有効量の他の医薬活性成分
の個別のパックからなる、セット(キット)に関する。
【0123】
このセットは、好適な容器、例えば箱、個別のビン、袋またはアンプルを含む。このセットは、例えば、個別のアンプルを含むことができ、各々は、有効量の本発明の化合物および/または、それらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体(すべての比率でのこの混合物を含む)、ならびに、溶解したかまたは凍結乾燥された形態での、有効量の他の医薬活性成分を含む。
【0124】
使用
本発明の化合物は、SGKにより誘発された疾患の処置における、哺乳動物のための、特にヒトのための医薬活性成分として適する。
【0125】
したがって、本発明は、キナーゼシグナル伝達の阻害、調整および/または変調が作用を奏する疾患の処置のための医薬の製造のための、請求項1に記載の化合物ならびに、これらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体、すべての比率でのこれらの混合物の使用に関する。
好ましいのは、ここでは、SGKである。
【0126】
好ましいのは、請求項1に記載の化合物ならびに、これらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体、すべての比率でのこれらの混合物の、請求項1に記載の化合物によるSGKの阻害により影響される疾患の処置のための医薬の製造のための使用である。
【0127】
本発明は、本発明の請求項1に記載の化合物および/またはこれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物の、糖尿病(例えば真性糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性血管障害および微小血管障害)、肥満、メタボリックシンドローム(異脂肪血症)、全身および肺高血圧症、心血管疾患(例えば心筋梗塞の後の心臓性線維症、心臓肥大および心不全、動脈硬化)ならびに腎疾患(例えば糸球体硬化症、腎硬化症、腎炎、腎症、電解質排泄障害)、一般的にすべてのタイプの線維症および炎症プロセスにおけるもの(例えば肝硬変、肺線維症、線維性膵炎、リウマチおよび関節症、クローン病、慢性気管支炎、放射線線維症、硬化性皮膚炎、嚢胞性線維症、瘢痕、アルツハイマー病)の処置または予防のための医薬の製造のための使用を包含する。
本発明の化合物はまた、癌、腫瘍細胞の成長および腫瘍転移を阻害することができ、したがって腫瘍療法に適する。
【0128】
本発明の化合物はさらに、凝固障害、例えば異常フィブリノーゲン血症、低プロコンバーチン血症、血友病B、スチュアート−プラウアー欠損症、プロトロンビン複合体欠乏症、消費性凝固障害、線溶亢進、免疫性凝固障害または複合凝固障害、およびまた神経興奮性、例えばてんかんの処置のために用いられる。本発明の化合物をまた、緑内障または白内障の処置において、治療的に用いることができる。
本発明の化合物はさらに、細菌感染の処置において、および感染防止療法において用いられる。本発明の化合物をまた、学習能力および注意力を増大させるために、治療的に用いることができる。
【0129】
好ましいのは、請求項1に記載の化合物ならびに、これらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体、すべての比率でのこれらの混合物の、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム(異脂肪血症)、全身および肺高血圧症、心血管疾患および腎疾患、一般的にすべてのタイプの線維症および炎症プロセスにおけるもの、癌、腫瘍細胞、腫瘍転移、凝固障害、神経興奮性、緑内障、白内障、細菌感染の処置または予防のための、ならびに感染防止療法における、学習能力および注意力を増大させるための、ならびに細胞老化およびストレスの処置および予防のための医薬の製造のための使用である。
【0130】
糖尿病は、好ましくは、真性糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性血管障害および微小血管障害である。
心血管疾患は、好ましくは、心筋梗塞の後の心臓性線維症、心臓肥大、心不全および動脈硬化である。
【0131】
腎疾患は、好ましくは、糸球体硬化症、腎硬化症、腎炎、腎症および電解質排泄障害である。
線維症および炎症プロセスは、好ましくは、肝硬変、肺線維症、線維性膵炎、リウマチおよび関節症、クローン病、慢性気管支炎、放射線線維症、硬化性皮膚炎、嚢胞性線維症、瘢痕、アルツハイマー病である。
【0132】
チロシンキナーゼによって誘発された疾患はまた、固形腫瘍、眼性血管新生(糖尿病性網膜症、年齢により誘発された黄斑変性症など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)の成長を促進する腫瘍細胞、病理学的血管新生(または血管形成)の増殖を含む。
【0133】
本発明はさらに、式Iで表される化合物および/またはこれらの生理学的に許容し得る塩の、癌の処置または防止のための医薬を調製するための使用を包含する。処置のために好ましい癌腫は、脳腫瘍、尿生殖路癌、リンパ系の癌、胃癌、喉頭癌および肺癌の群に由来する。癌の好ましい形態の他の群は、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫および乳癌である。
【0134】
また、包含されるのは、本発明の請求項1に記載の化合物および/またはこれらの生理学的に許容し得る塩の、血管形成が関与する疾患を処置または防止するための医薬を調製するための使用である。
血管形成が関係するこのような疾患は、眼の疾患、例えば網膜血管化、糖尿病性網膜症、年齢により誘発された黄斑変性症などである。
【0135】
式Iで表される化合物および/またはこれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物を、炎症性疾患を処置または防止するための医薬を調製するために用いることもまた、本発明の範囲内にある。このような炎症性疾患の例には、関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎、遅延型過敏症応答などが含まれる。
【0136】
また、包含されるのは、式Iで表される化合物および/またはこれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物の、哺乳動物におけるチロシンキナーゼにより誘発された疾患またはチロシンキナーゼにより誘発された状態を処置するかまたは防止するための医薬を調製するための使用であり、ここでこの方法に対して、本発明の化合物の治療的に有効な量を、このような処置を必要とする疾患を有する哺乳動物に投与する。治療的な量は、特定の疾患によって変動し、過度の努力を伴わずに当業者により決定することができる。
【0137】
本発明はまた、式Iで表される化合物および/またはこれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物の、網膜血管化を処置または防止するための医薬を調製するための使用を包含する。
眼の疾患、例えば糖尿病性網膜症および年齢により誘発された黄斑変性症を処置または防止するための方法は、同様に本発明の一部である。炎症性疾患、例えば関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎および遅延型過敏症応答の処置または防止、ならびに骨肉腫、骨関節炎およびくる病からの骨の病態の処置または防止のための使用もまた、同様に本発明の範囲内にある。
【0138】
表現「チロシンキナーゼにより誘発された疾患または状態」は、1種または2種以上のチロシンキナーゼの活性に依存する病理学的状態に言及する。チロシンキナーゼは、直接または間接的に、種々の細胞活動のシグナル伝達経路に関与し、当該細胞活動には、増殖、付着および移動ならびに分化が含まれる。チロシンキナーゼ活性と関連する疾患には、腫瘍細胞の増殖、固形腫瘍、眼の血管新生(糖尿病性網膜症、年齢により誘発された黄斑変性症など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)の成長を促進する病理学的血管新生が含まれる。
【0139】
式Iで表される化合物を、癌、特に迅速に成長する腫瘍を処置するために、患者に投与することができる。
したがって、本発明はまた、式Iで表される化合物ならびにこれらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体、すべての比率でのこれらの混合物の、キナーゼシグナル伝達の阻害、調節および/または調整が作用を奏する疾患を処置するための医薬を調製するための使用に関する。
【0140】
好ましいのは、ここではMetキナーゼである。
好ましいのは、式Iで表される化合物ならびにこれらの薬学的に使用可能な塩および立体異性体、すべての比率でのこれらの混合物の、請求項1に記載の化合物によりチロシンキナーゼを阻害することによって影響される疾患を処置するための医薬を調製するための使用である。
【0141】
特に好ましいのは、請求項1に記載の化合物によるMetキナーゼの阻害によって影響される、疾患を処置するための医薬を調製するための使用である。
特に好ましいのは、疾患が固形腫瘍である疾患を処置するための使用である。
【0142】
固形腫瘍は、好ましくは肺、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭頸部、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、尿生殖路、リンパ系、胃および/または喉頭の腫瘍の群から選択される。
固形腫瘍はさらに、好ましくは肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群から選択される。
【0143】
好ましいのは、さらに、血液および免疫系の腫瘍を処置するための、好ましくは急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群から選択される腫瘍を処置するための使用である。
【0144】
式Iで表される開示した化合物を、抗癌剤を含む他の既知の治療剤と組み合わせて投与することができる。ここで用いる用語「抗癌剤」は、癌を処置する目的で癌を有する患者に投与されるすべての剤に関する。
【0145】
本明細書中で定義した抗癌処置を、単一の療法として適用してもよいか、またはこれは、本発明の化合物に加えて、慣用の手術もしくは放射線療法もしくは化学療法を伴ってもよい。このような化学療法には、1種または2種以上の以下の分類の抗腫瘍剤が含まれ得る:
【0146】
(i)医学的オンコロジーにおいて用いられる、抗増殖剤/抗悪性腫瘍剤/DNA損傷剤およびこれらの組み合わせ、例えばアルキル化剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファンおよびニトロソ尿素);代謝拮抗薬(例えば葉酸代謝拮抗薬、例えばフルオロピリミジン類(fluoropyrimidines)、例えば5−フルオロウラシルおよびテガフール、ラルチトレキセド、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素およびゲムシタビン);抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリン類、例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシンおよびミトラマイシン);有糸分裂阻害薬(例えばビンカアルカロイド類、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン、並びにタキソイド類、例えばタキソールおよびタキソテール);トポイソメラーゼ阻害薬(例えばエピポドフィロトキシン類(epipodophyllotoxins)、例えばエトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカンおよびカンプトテシン)並びに細胞分化剤(例えばオールトランスレチノイン酸(all-trans-retinoic acid)、13−シス−レチノイン酸およびフェンレチニド(fenretinide));
【0147】
(ii)細胞分裂阻害剤、例えば抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)およびヨードキシフェン(iodoxyfene))、エストロゲンレセプター下方調節剤(downregulator)(例えばフルベストラント)、抗アンドロゲン薬(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、リュープロレリンおよびブセレリン)、プロゲステロン類(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボロゾールおよびエキセメスタン)並びに5α−レダクターゼの阻害剤、例えばフィナステリド;
【0148】
(iii)癌細胞侵入を阻害する剤(例えばメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えばマリマスタット、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターレセプター機能の阻害剤);
【0149】
(iv)成長因子機能の阻害剤、例えばこのような阻害剤には、成長因子抗体、成長因子レセプター抗体(例えば抗erbb2抗体トラスツズマブ[Herceptin(登録商標)]および抗erbbl抗体セツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤およびセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、例えば上皮成長因子ファミリーの阻害剤(例えばEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えばN−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI1033))、例えば血小板由来成長因子ファミリーの阻害剤、および例えば肝細胞成長因子ファミリーの阻害剤が含まれる;
【0150】
(v)抗血管新生薬、例えば血管内皮成長因子の効果を阻害するもの(例えば抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ[Avastin(登録商標)]、化合物、例えば公開された国際特許出願WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856およびWO 98/13354に開示されているもの)、並びに他の機構により作動する化合物(例えばリノミド(linomide)、インテグリンαvβ3機能の阻害剤およびアンジオスタチン);
【0151】
(vi)血管損傷剤、例えばコンブレタスタチンA4、並びに国際特許出願WO 99/02166、WO 00/40529、WO 00/41669、WO 01/92224、WO 02/04434およびWO 02/08213に開示されている化合物;
【0152】
(vii)アンチセンス療法、例えば上に列挙した標的に向けられるもの、例えばISIS2503、抗Rasアンチセンス;
【0153】
(viii)遺伝子療法方法であって、以下を含むもの、例えば、異常な遺伝子、例えば異常なp53または異常なBRCA1もしくはBRCA2の置換のための方法、GDEPT(遺伝子に向けられた酵素プロドラッグ療法)法、例えばシトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌性ニトロレダクターゼを用いるもの、および化学療法または放射線療法に対する患者の耐性を増大させるための方法、例えば多剤耐性遺伝子療法;並びに
【0154】
(ix)免疫療法であって、以下を含むもの、例えば患者腫瘍細胞の免疫原性を増大させるためのex-vivoおよびin-vivo方法、例えばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインによるトランスフェクション、T細胞アネルギーを低下させるための方法、サイトカインをトランスフェクトした樹状細胞などのトランスフェクトした免疫細胞を用いる方法、サイトカインでトランスフェクトした腫瘍細胞株を用いる方法、および抗イディオタイプ抗体を用いる方法。
【0155】
以下の表1からの医薬を、好ましくは、しかし排他的にではなく、式Iで表される化合物と組み合わせる。
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】

【0158】
【表3】

【0159】
【表4】

【0160】
【表5】

【0161】
【表6】

【0162】
【表7】

【0163】
【表8】

【0164】
【表9】

【0165】
【表10】

【0166】
このタイプの組み合わせ処置を、その処置の個別の成分を、同時に、連続的に、または別個に投薬することにより達成することができる。このタイプの組み合わせ生成物は、本発明の化合物を用いる。
【0167】
アッセイ
例に記載する式Iで表される化合物を、以下に記載するアッセイにより試験し、キナーゼ阻害活性を有することを見出した。他のアッセイは、文献から知られており、当業者が容易に行うことができた(例えば、Dhanabal et al., Cancer Res. 59:189-197; Xin et al., J. Biol. Chem. 274:9116-9121; Sheu et al., Anticancer Res. 18:4435-4441; Ausprunk et al., Dev. Biol. 38:237-248; Gimbrone et al., J. Natl. Cancer Inst. 52:413-427; Nicosia et al., In Vitro 18:538- 549を参照)。
【0168】
GSK3−ベータ活性の測定
GSK3−ベータ活性を、WO 2008/078196と同様にして測定することができる。
GSK3b(5〜20mU、20mMのMOPS pH7.5、1mMのEDTA、0.01%のEDTA、0.01%のBrj35、5%のグリセロール、0.1%のベータ−メルカプトエタノール、1mg/mlのBSA中で希釈されたもの)を、ホスホ−GS2ペプチド(YRRAAVPPSPSLSRHSSPHQS(PO4)EDEEE)に対して、8mMのMOPS pH7.0、0.2mMのEDTA、20μMのホスホGS2ペプチド、10mMの酢酸マグネシウムおよび0.005mM[33P−g−ATP](50〜1000cpm/pmol)を含有する、25.5μlの最終体積において測定し、室温にて30分間インキュベートする。アッセイを、5μlの0.5M(3%)のオルトリン酸の添加によって停止し、次に洗浄用緩衝液(50mMのオルトリン酸)でP81ユニフィルター(unifilter)プレート上に採取する。
【0169】
Metキナーゼ活性の測定
製造者のデータ(Met、活性、Upstate、カタログNo.14−526)に従って、Metキナーゼを、バキュロウイルス発現ベクター中の「N末端6Hisタグ化」組換えヒトタンパク質として、昆虫細胞(Sf21;S. frugiperda)におけるタンパク質産生およびその後のアフィニティークロマトグラフィー精製のために発現させる。
【0170】
キナーゼ活性を、種々の入手可能な測定システムを用いて測定することができる。シンチレーション近接法(Sorg et al., J. of Biomolecular Screening, 2002, 7, 11-19)、フラッシュプレート法またはフィルター結合試験においては、基質としてのタンパク質またはペプチドの放射性リン酸化を、放射性標識したATP(32P−ATP、33P−ATP)を用いて測定する。阻害化合物が存在する場合には、低下した放射性シグナルを検出することができるかまたは、放射性シグナルを全く検出することができない。さらに、均一時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術を、アッセイ法として用いることができる(Sills et al., J. of Biomolecular Screening, 2002, 191-214)。
【0171】
他の非放射性ELISAアッセイ法は、特異的なホスホ抗体(ホスホ−AB)を用いる。ホスホ抗体は、リン酸化された基質にのみ結合する。この結合を、第2のペルオキシダーゼ結合抗体を用いて、化学発光により検出することができる(Ross et al., 2002, Biochem. J.)。
【0172】
フラッシュプレート法(Metキナーゼ):
用いる試験プレートは、Perkin Elmer製の96ウェルのFlashplate(登録商標)マイクロタイタープレート(カタログNo.SMP200)である。以下に記載するキナーゼ反応の成分を、アッセイプレート中にピペットする。Metキナーゼおよび基質ポリAla−Glu−Lys−Tyr(pAGLT、6:2:5:1)を、試験物質の存在下および不存在下で、100μlの合計容積において、放射性標識33P−ATPと共に、3時間室温にてインキュベートする。反応を、150μlの60mMのEDTA溶液を用いて終了させる。室温でさらに30分間インキュベートした後に、上清を、吸引しながら濾別し、ウェルを、各々の回において200μlの0.9%NaCl溶液で3回洗浄する。結合した放射性の測定を、シンチレーション測定器(Topcount NXT, Perkin-Elmer)により行う。
【0173】
用いる最大値(full value)は、阻害剤を伴わないキナーゼ反応である。これは、ほぼ6000〜9000cpmの範囲内にあるはずである。用いる薬理学的なゼロ値は、0.1mMの最終濃度のスタウロスポリンである。阻害値(IC50)を、RS1_MTSプログラムを用いて決定する。
【0174】
ウェルあたりのキナーゼ反応条件:
30μlのアッセイ緩衝液
10μlの10%のDMSOを含むアッセイ緩衝液中の試験するべき物質
10μlのATP(最終濃度1μM、0.35μCiの冷33P−ATP)
50μlのアッセイ緩衝液中のMetキナーゼ/基質混合物;(10ngの酵素/ウェル、50ngのpAGLT/ウェル)
【0175】
用いる溶液:
−アッセイ緩衝液:
50mMのHEPES
3mMの塩化マグネシウム
3μMのオルトバナジウム酸ナトリウム
3mMの塩化マンガン(II)
1mMのジチオトレイトール(DTT)
pH=7.5(水酸化ナトリウムを用いて調整)
【0176】
−停止溶液:
60mMのTitriplex III(EDTA)
33P−ATP:Perkin-Elmer;
−Metキナーゼ:Upstate、カタログNo.14−526、Stock 1μg/10μl;比活性954U/mg;
−ポリ−Ala−Glu−Lys−Tyr、6:2:5:1:SigmaカタログNo. P1152
【0177】
インビボ試験
実験手順:雌のBalb/Cマウス(ブリーダー:Charles River Wiga)は、到着時に5週齢であった。これらを、7日間本発明者らの維持条件に順応させた。その後、各々のマウスに、100μlのPBS(Ca++およびMg++を含まない)中の400万個のTPR−Met/NIH3T3細胞を、骨盤領域に皮下注射した。5日後、各々の群の9匹のマウスが、110μl(範囲:55〜165)の平均腫瘍容積を有するように動物を3つの群に無作為に分けた。100μlのビヒクル(0.25%のメチルセルロース/100mMの酢酸緩衝液、pH5.5)を、毎日対照群に投与し、ビヒクル(容積は同様に100μl/動物であった)に溶解した200mg/kgの「A56」または「A91」を、各々の場合において胃管により、毎日処置群に投与した。9日後、対照は、1530μlの平均容積を有しており、実験を終了した。
【0178】
腫瘍容積の測定:長さ(L)および幅(B)を、Vernierキャリパーを用いて測定し、腫瘍容積を、式L×B×B/2から計算した。
維持条件:ケージあたり4匹または5匹の動物、市販のマウスフード(Sniff)で飼育した。
【0179】
SGK1プロテインキナーゼの阻害を、フィルター結合法において決定することができる。
本明細書中、すべての温度を、℃で示す。以下の例において、「慣用のワークアップ」は、以下のことを意味する:所要に応じて水を加え、pHを所要に応じて、最終生成物の構成に依存して2〜10の値に調整し、混合物を、酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させ、生成物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより、および/または結晶化により精製する。シリカゲル上でのRf値;溶離剤:酢酸エチル/メタノール9:1。
質量分析法(MS):EI(電子衝撃イオン化)M
FAB(高速原子衝撃)(M+H)
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)(他に示さない限り)
【0180】
HPLC法
A(極性):以下の特徴を有するHewlett Packard HP 1100シリーズシステム:イオン源:ES(正のモード);走査:100〜1000m/e;断片化電圧:60V;ガス温度:300℃、DAD:220nm。
カラム:Chromolith SpeedROD RP-18e, 50-4.6
流量:2.4ml/分。
用いるスプリッターは、DADの後の流量を、MSについて0.75ml/分まで減少させた。
【0181】
溶媒A:水+0.01%のTFA
溶媒B:アセトニトリル+0.08%のTFA
勾配:
0.0分、4%のB
2.6分、100%のB
3.3分、100%のB
【0182】
B:
カラム:Chromolith SpeedROD RP-18e, 50-4.6
流量:2.4ml/分
溶媒A:水+0.1%のTFA
溶媒B:アセトニトリル+0.1%のTFA
勾配:
0.0分、4%のB
2.6分、100%のB
3.3分、100%のB
【0183】
HPLC−MS法 : Esi1.rod.m/polar.m/unpolar.m
カラム : Chromolith Speed Rod RP 18e 50-4.6mm
流量 : 2.4ml/分
緩衝液A : 0.01%のTFA/水
緩衝液B : 0.008%のTFA/アセトニトリル
波長 : 220nm
勾配Esi1.rod.m : 0.0〜2.8分、20%〜100%の緩衝液B;2.8〜3.3分、100%の緩衝液B;3.3〜3.4分、100%〜20%の緩衝液B;3.4〜3.8分、20%の緩衝液B
勾配polar.m : 0.0〜3.0分、5%〜100%の緩衝液B;3.0〜3.5分、100%の緩衝液B;3.5〜3.6分、100%〜5%の緩衝液B;3.6〜3.8分、20%の緩衝液B
勾配unpolar.m : 0.0〜2.5分、40%〜90%の緩衝液B;2.5〜3.8分、90%の緩衝液B;3.8〜3.9分、90%の緩衝液B:3.9〜4.1分、90%〜40%の緩衝液B
【0184】
略語:
DCM=ジクロロメタン
EA=酢酸エチル
PE=石油エーテル
RT=室温
DAPECI=N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩
DMF=ジメチルホルムアミド
HOBT=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
NCS=N−クロロスクシンイミド
TFA=トリフルオロ酢酸
【0185】
合成例
化合物「A1」〜「A10」の合成を、以下に示す。
方法1:(化合物「A1」、「A2」、「A4」、「A5」、「A6」、「A7」、「A8」)
【化4】

オキサジアゾールを、4−置換1−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−4−フェニルチオセミカルバジドから環化によって調製し、ここで1−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンはまた、他の置換基を種々の位置において担持し得る。
【0186】
フェニル−[5−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]アミン(「A2」)の調製
【化5】

6mlのMeOH中の610mgの1−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−4−フェニルチオセミカルバジドおよび686mgの酢酸水銀(II)を、密封したスクリュー−リッド(screw-lid)バイアル中で、80℃にて2時間撹拌する。1滴のNaS溶液を、冷却した反応溶液に加え、全部を、珪藻土を通して吸引により濾過し、加温したMeOHで洗浄する。
【0187】
濾液を濃縮し、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(EA/メタノール、勾配)によって精製し、95mgの「A2」を無色固体として得る(収率17.5%);MS−FAB(M+H)=278.3;R(極性法(polar method)):1.72分。
【0188】
化合物「A1」、「A4」、「A5」、「A6」、「A7」、「A8」を、同様の反応によって調製する:
【表11】

【0189】
【表12】

【0190】
環化に要する置換チオセミカルバジドは、当業者に既知の方法によって、例えば以下の2つの一連の合成B1およびB2によって得られる:
【0191】
方法B1(「A2」、「A4」、「A6」、「A7」について)
【化6】

【0192】
段階1の例:ヒドラジド(例えば「A2」のための前駆体1)の調製
【化7】

1mlのジオキサン中の1.40gの1−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボン酸、3.8mlのヒドラジン水和物を、反応容器中で100℃にて12時間撹拌する。冷却すると、無色固体が生成し、それを吸引により濾別し、水で洗浄し、乾燥し、1.05gの1−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボヒドラジドを得る(収率71%);MS−FAB(M+H)=177.1;R(極性法):0.70分。
【0193】
用いる7−アザインドールカルボン酸エステルの例。
【化8】

他の置換7−アザインドール−3−カルボン酸エステルをまた、同様にして用いることができる(好ましくはメチルまたはエチルエステルである。)。
【0194】
段階2の例:チオセミカルバジド(例えば「A2」のための前駆体2)の調製
【化9】

10mlのジクロロエタン中の350mgの(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボヒドラジドおよび261μlのフェニルイソチオシアネートを、スクリュー−リッドバイアル中で60℃にて15時間撹拌する。さらに78μlのフェニルイソチオシアネートを加え、混合物を同一の温度にて20時間撹拌する。冷蔵庫中で冷却した後、沈殿物を吸引により濾別し、乾燥し、610mgの1−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−4−フェニルチオセミカルバジドを無色粉末として得る;(収率98.6%);MS−FAB(M+H)=312.3;R(極性法):1.43分。
【0195】
用いるイソチオシアネートの例。
【化10】

他の商業的に入手可能な化合物もまた、同様にして用いることができる。
【0196】
方法B2(「A1」、「A4」、「A5」および「A8」のために用いる)
【化11】

【0197】

【化12】

3mlのDMF中の200mgの1−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボン酸、260.5mgの4−(3−メトキシベンジル)チオセミカルバジド、230mgのHOBTおよび288mgのDAPECIを、スクリュー−リッドバイアル中でRTにて3日間撹拌する。バッチを水上に注ぎ、得られた沈殿物を吸引により濾別し、乾燥し、250mgのカップリング生成物を得[57%、MS−FAB(M+H)=356.4;R(極性法):1.60分]、それを、さらに精製せずに環化のために用いることができる。
【0198】
用いる構成単位の他の例。
【化13】

他の置換された7−アザインドール−3−カルボン酸および置換されたチオセミカルバジドもまた、同様にして用いることができる。
【0199】
方法2:(5−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イルアミン「A3」の調製)
例:
【化14】

360.8mgの臭化シアンを、50mlの水および5mlのDMF中の、500mgの1−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボヒドラジド、1.192gの炭酸水素ナトリウムの混合物に、撹拌しながら滴加する。反応混合物は発泡を開始し、微細な沈殿物が生成する。これを、2時間後に吸引により濾別し、乾燥し、450mgの5−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イルアミンを得る(収率:78.8%);MS−FAB(M+H)=202.2;R(極性法):1.00分;
【0200】
1H-NMR (250 MHz, DMSO-d, TFA-d1) d [ppm] 8.56-8.61 (2H, m), 8.38 (1H, s), 7.52 (1H, dd, J = 8.1 Hz, J = 5.1 Hz).
【0201】
方法3:(化合物「A9」、「A10」)
【化15】

N*3*−(3−メトキシベンジル)−5−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−1,2,4−トリアゾール−3,4−ジアミン(「A10」)の調製
1mlの2−プロパノール中の、50mgの(3−メトキシベンジル)−[5−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]アミン(方法1によって調製したもの)および75μlのヒドラジン水和物の混合物を、密閉したスクリュー−リッドバイアル中で、100℃〜120℃の浴温度にて5日間撹拌する。反応混合物を濃縮し、分取HPLC(RP−18、水/アセトニトリル)によって精製し、16.6mgのN*3*−(3−メトキシベンジル)−5−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−1,2,4−トリアゾール−3,4−ジアミン(31.8%)を得る。MS−FAB(M+H)=336.4、R(極性法):1.34分;
【0202】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, TFA-d1) d [ppm] 8.69 (1H, s), 8.64 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.53 (1H, dd, J = 5.1 Hz, J = 1.7 Hz), 7.45 (1H, dd, J = 8.1 Hz, J = 5.1 Hz), 7.33 (1H, t, J = 8.0 Hz), 6.02-7.09 (2H, m), 6.91 (1H, dd, J = 8.0 Hz, J = 2.9 Hz ), 4.59 (2H, s), 3.79 (3H, s);
【化16】

【0203】
例:[4−ベンジル−5−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]−(3−メトキシベンジル)アミン(「A9」)の調製:
化合物「A9」を、ベンジルアミンをヒドラジン水和物の代わりに用いることにより同様にして調製することができ、ここで、用いる溶媒は1‐ブタノールであり、反応時間は6日である;
【化17】

【0204】
薬理学的データ
表1
【表13】

【0205】
以下の例は、医薬組成物に関する:
例A:注射バイアル
100gの本発明の活性成分および5gのリン酸水素二ナトリウムを3lの2回蒸留水に溶解した溶液を、2N塩酸を用いてpH6.5に調整し、滅菌濾過し、注射バイアル中に移送し、滅菌条件下で凍結乾燥し、滅菌条件下で密封する。各々の注射バイアルは、5mgの活性成分を含む。
【0206】
例B:座剤
20gの本発明の活性成分の100gの大豆レシチンおよび1400gのココアバターとの混合物を、溶融し、型中に注入し、放冷する。各々の座剤は、20mgの活性成分を含む。
【0207】
例C:溶液
1gの本発明の活性成分、9.38gのNaHPO・2HO、28.48gのNaHPO・12HOおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから、940mlの2回蒸留水中に溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lにし、放射線により滅菌する。この溶液を、点眼剤の形態で用いることができる。
【0208】
例D:軟膏
500mgの本発明の活性成分を、99.5gのワセリンと、無菌条件下で混合する。
【0209】
例E:錠剤
1kgの活性成分、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、慣用の方法で圧縮して、錠剤を得、各々の錠剤が10mgの活性成分を含むようにする。
【0210】
例F:糖衣錠
例Eと同様にして、錠剤を圧縮し、次に、慣用の方法で、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび染料の被膜で被覆する。
【0211】
例G:カプセル
2kgの活性成分を、硬質ゼラチンカプセル中に、慣用の方法で導入して、各々のカプセルが20mgの活性成分を含むようにする。
【0212】
例H:アンプル
1kgの本発明の活性成分を60lの2回蒸留水に溶解した溶液を、滅菌濾過し、アンプル中に移送し、滅菌条件下で凍結乾燥し、滅菌条件下で密封する。各々のアンプルは、10mgの活性成分を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

式中、
Lは、欠如しているかまたはCR、CRCR10、CRC(OR)R10、NR、O、NRCR、CRNR、OCR、OCRCR10、CRO、CRCR10O、NRCRCR10、CRSO、NRCONR、NRCONRCR10、COCR、CONR、CONRCR、CONHNH、NRCRCONR10、NRCOもしくはNRCOCRを示し、
Uは、H、A、ArまたはHetを示し、
Yは、O、NH、NNHまたはN−[C(RArを示し、
Rは、HまたはR11を示し、
、X、Xは、各々、互いに独立してH、A、Hal、OH、OA、−[C(RAr、−[C(RHet、OAr、OHet、SH、SA、SAr、SHet、NH、NHA、NAA’、NHAr、N(Ar)、NHHet、N(Het)、NAAr、NAHet、SOA、SOAr、SOHet、SOA、SOAr、SOHet、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、COAr、COHet、SOH、SONH、SONHAr、SON(Ar)、SONHHetまたはSON(Het)を示し、
、R、R、R、R10は、各々、互いに独立してHまたはAを示し、
11は、1〜6個のC原子を有するアルキルを示し、ここで1〜5個のH原子は、Fによって置き換えられていてもよく、
A、A’は、各々、互いに独立して1〜10個のC原子を有するアルキルを示し、それは、非置換であるか、または=S、=NRおよび/または=O(カルボニル酸素)によって単置換、二置換もしくは三置換されており、またここで、1つ、2つまたは3つのCH基は、O、S、SO、SO、NH、NR11によって、および/または−CH=CH−基によって置き換えられていてもよく、かつ/またはさらに、1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
あるいは3〜7個のC原子を有する環状アルキルを示し、
Arは、フェニル、ナフチルまたはビフェニルを示し、その各々は、非置換であるかまたはA、Hal、OH、OA、Ar’、OAr’、Het、OHet、SH、SA、SAr’、SHet、NH、NHA、NAA’、NHAr’、N(Ar’)、NHHet、N(Het)、NAAr’、NAHet、SOA、SOAr’、SOHet、SOA、SOAr’、SOHet、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、COAr’、COHet、SOH、SONH、SONHAr’、SON(Ar’)、SONHHetおよび/またはSON(Het)によって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されており、
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有し、A、Hal、OH、OA、Ar、OAr、Het’、OHet’、SH、SA、SAr’、SHet’、NH、NHA、NAA’、NHAr’、N(Ar’)、NHHet’、N(Het’)、NAAr’、NAHet’、SOA、SOAr’、SOHet’、SOA、SOAr’、SOHet’、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、COAr’、COHet’、SOH、SONH、SONHAr’、SON(Ar’)、SONHHet’またはSON(Het’)、=S、=NRおよび/または=O(カルボニル酸素)によって単置換、二置換または三置換されていてもよい、単環式または二環式の飽和、不飽和または芳香族複素環を示し、
Ar’は、非置換であるか、またはA、Hal、OH、OA、O−フェニル、SH、SA、NH、NHA、NAA’、NH−フェニル、SOA、SO−フェニル、SOA、SO−フェニル、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、CO−フェニル、SOH、SONH、SONH−フェニルおよび/またはSON(フェニル)によって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されているフェニルを示し、
Het’は、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有し、A、Hal、OH、OA、NH、NHA、NAA’、SOA、SOAr’、SOA、SOAr’、NO、CN、COOH、COOA、CONH、CONHA、CONA、NHCOA、NACOA、NHCONH、NHCONHA、NHCONA、NHSOA、NASOA、CHO、COA、COAr’、SOH、SONH、SONHAr’、SON(Ar’)、=S、=NRおよび/または=O(カルボニル酸素)によって単置換、二置換または三置換されていてもよい、単環式または二環式の飽和、不飽和または芳香族複素環を示し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
nは、0、1または2を示す、
で表される化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項2】
Lが、欠如しているかまたはCRを示す、
請求項1に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項3】
Rが、Hを示す、
請求項1または2に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項4】
Aが、1〜10個のC原子を有するアルキルを示し、ここで1〜7個のH原子が、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよい、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項5】
Arが、非置換であるか、またはA、Hal、OHおよび/またはOAによって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されているフェニルを示す、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項6】
Hetが、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式の芳香族複素環を示す、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項7】
Hetが、2−もしくは3−フリル、2−もしくは3−チエニル、1−、2−もしくは3−ピロリル、1−、2、4−もしくは5−イミダゾリル、1−、3−、4−もしくは5−ピラゾリル、2−、4−もしくは5−オキサゾリル、3−、4−もしくは5−イソキサゾリル、2−、4−もしくは5−チアゾリル、3−、4−もしくは5−イソチアゾリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−、4−、5−もしくは6−ピリミジニル、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−もしくは5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、3−もしくは4−ピリダジニルまたはピラジニルを示す、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項8】
、Rが、各々、互いに独立してHまたはR11を示す、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項9】
、Rが、各々、互いに独立してHまたはCHを示す、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項10】
Hetが、ピロリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−もしくは3−フリルまたは2−もしくは3−チエニルを示す、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項11】
、X、Xが、各々、互いに独立してH、Halまたは−[C(RHetを示す、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項12】
Lが、欠如しているかまたはCRを示し、
Uが、H、A、ArまたはHetを示し、
Yが、O、NH、NNHまたはN−[C(RArを示し、
Rが、HまたはR11を示し、
、X、Xが、各々、互いに独立してH、Halまたは−[C(RHetを示し、
、Rが、各々、互いに独立してHまたはR11を示し、
11が、1〜6個のC原子を有するアルキルを示し、ここで1〜5個のH原子が、Fによって置き換えられていてもよく、
Aが、1〜10個のC原子を有するアルキルを示し、ここで1〜7個のH原子が、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
Arが、非置換であるかまたはA、Hal、OHおよび/またはOAによって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されているフェニルを示し、
Hetが、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式の芳香族複素環を示し、
Halが、F、Cl、BrまたはIを示し、
nが、0、1または2を示す、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項13】
以下の群
【表1】

【表2】

から選択される、請求項1に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体の製造方法であって、
a)式II
【化2】

式中、X、X、X、R、LおよびUは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物を環化し、
あるいは、
b)式III
【化3】

式中、X、X、Xは、請求項1において示した意味を有する、
で表される化合物を、ハロゲン化シアンと反応させ、
あるいは、
c)式Iで表され、式中Yが酸素を示す化合物を、式Iで表され、式中YがNNHまたはN−[C(RArを示す化合物に、ヒドラジン誘導体を用いて、またはHN−[C(RArを用いて変換し、
かつ/または式Iで表される塩基または酸を、その塩の1種に変換する
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物、および/または、これらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物、ならびに、任意に賦形剤および/または補助剤を含む、医薬。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物の、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物によるプロテインキナーゼの阻害により影響される疾患の処置のための医薬の製造のための使用。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物の、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム(異脂肪血症)、全身および肺高血圧症、心血管疾患および腎疾患、一般的にすべてのタイプの線維症および炎症プロセスにおけるもの、癌、腫瘍細胞、腫瘍転移、凝固障害、神経興奮性、緑内障、白内障、細菌感染の処置または予防のための、ならびに感染防止療法における、学習能力および注意力を増大させるための、ならびに細胞老化およびストレスの処置および予防、ならびに耳鳴の処置のための医薬の製造のための、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物の、神経変性疾患、パーキンソン病、タウオパシー、アルツハイマー病、大脳皮質基底核変性症、ピック病、ウィルソン病、ハンチントン病、血管性認知症、急性脳卒中、末梢神経障害、網膜症または緑内障、躁うつ病、自己免疫疾患、炎症性疾患および増殖性疾患、エイズ、喘息、鼻炎、クローン病の処置または予防のための医薬の製造のための、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物あるいは、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物の、処置するべき疾患が固形腫瘍である医薬の製造のための、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
固形腫瘍が、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭頸部、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および/または肺の腫瘍の群に由来する、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
固形腫瘍が、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫および乳癌の群に由来する、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
固形腫瘍が、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群に由来する、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
処置するべき疾患が血液および免疫系の腫瘍である、請求項17に記載の使用。
【請求項24】
腫瘍が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群に由来する、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物および/または、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのそれらの混合物、ならびに少なくとも1種の他の医薬活性成分を含む、医薬。
【請求項26】
(a)請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物および/または、それらの薬学的に使用可能な塩または立体異性体、またはすべての比率でのこれらの混合物の有効量、
ならびに
(b)さらなる医薬活性成分の有効量
の個別のパックからなる、セット(キット)。

【公表番号】特表2012−500233(P2012−500233A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523313(P2011−523313)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005024
【国際公開番号】WO2010/020308
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】