説明

7−ケトデヒドロエピアンドロステロンおよび関連する類似体を製造するための微生物的方法

本発明は、式IIIの7−オキソ−5−アンドロステロンステロイドを製造するための二工程の微生物的方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式IIIの7−オキソ−5−アンドロステンステロイドを製造するための二工程の微生物的方法に関する。
【化1】

(式中、RはHまたは-COR1であり、R1は1〜5個の炭素のアルキルである)
【背景技術】
【0002】
5−アンドロステン−3β−オール−7,17−ジオン(7−ケトDHEA)は、商業的に入手可能なステロイド補助剤であり、心臓疾患、免疫機能、加齢、および全身的な健康状態に好ましい作用を及ぼすと考えられている。
【0003】
米国特許5,869,709およびLardy等(Steroids 63: 158-165, 1998)には、7−ケトDHEAおよび関連する類似体を合成するための化学的方法が記載されている。7−ケトDHEAを製造するための実用的な微生物的方法を記載している先行技術は存在しない。
【0004】
DHEAの微生物的な7α−ヒドロキシル化を詳説する各種の方法が存在する。Cotillonおよびその共同研究者(フランス特許2,771,105;J. Steroid Biochem. Molec. Biol. 62: 467-475, 1997 ;J. Steroid Biochem. Molec. Biol. 68:229-237, 1999)は糸状真菌であるフザリウム・モリノフォルメ(Fusarium monoliforme)を、DHEAの7α−ヒドロキシル化を行わせるために用いた。彼らはDHEAから所望の生成物への高い割合での変換(80%を超える)を詳説しているが、用いた基質濃度は低い。Kolek(J. Steroid Biochem. Molec. Biol. 71 : 83-90,1999)は、フザリウム・カルモルム(Fusarium culmorum)を用いた5−エンステロイドのヒドロキシル化を研究している。5−エンステロイドが、DHEAのように、C3およびC17に酸素基を含む場合は、この真菌はもっぱら7α−軸上の位置でヒドロキシル化を行った。ここでもまた、研究に用いたDHEAの濃度は低かった(80mLの培地当り20mg、すなわち0.25g/L)。Wilson等(Steroids 64: 834-843,1999)は、3β−ヒドロキシ−Δ5ステロイドを7α−ヒドロキシル化することのできるフザリウム・オキシスポルム・var.・クベンセ(Fusarium oxysporum var. cubense)を分離した。しかし、培地1L当り0.8gのDHEAを用いて68%の生成物の収率が達成されたに過ぎなかった。MadyasthaおよびJoseph(Appl. Microbiol. Biotechnol. 44: 339-343, 1995)は、糸状真菌であるムコール・ピリホルミス(Mucor piriformis)をDHEAを変換するために用いた。低い基質濃度(0.5g/L)において、約25%が未変換のまま残り、そして残余は7α−ヒドロキシル基の導入を含む、各種の異なった酸化型および還元型生成物へと変換した。
【0005】
エシェリキア、アルカリゲネス、クロストリジウム、ユーバクテリウム、またはバクテロイドのような細菌における、7−ヒドロキシステロイドから7−オキソステロイドへと酸化する、7α−ヒドロキシステロイド脱水素酵素活性はこれ迄に文献に記載されている(Schmidt, et al., J. Biol. Chemin. 145: 229-236,1942 ; Schmidt and Hughes, United States Patent 2,360,447; MacDonald, et al., Analytical Chemistry 57: 127-136,1974 ; MacDonald, etal., Applied Microbiology 30: 530-535, 1975 ; MacDonald, et al., Journal of Lipid Research 16: 244-246, 1975)。最近の研究は細菌の7α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性とクローン化と特性解明に焦点が当てられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の微生物的変換は、1L当り0.5g未満のステロイド基質濃度を用いて行われてい
る。それゆえに、7−オキソ−5−アンドロステンステロイドを製造するための費用効果に優れた方法を提供するための、1L当り1gまたはそれ以上のステロイド基質濃度を用いる変換に対する要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、7−オキソ−5−アンドロステンステロイドを製造するための二段階の方法に関している。最初の段階は以下の工程:
1)次の式I
【化2】

(式中、RはHまたは-COR1であり、R1は1〜5個の炭素のアルキルである)の5−アンドロステンステロイドと、
ステロイド濃度が1L当り1gまたはそれ以上の液体培地中で、7α−ヒドロキシル化を行うことができるケカビ種と接触させ、次の式II
【化3】

の7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを得る工程;
2)工程1)の液体培地から、式IIの7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを単離すること、を含んでいる。
【0008】
第二の工程は以下の工程:
3)液体培地中の式IIの7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドと、7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを酸化して式III
【化4】

の7−オキソ−5−アンドロステンステロイドへと変換できる、7α−ヒドロキシステロイド脱水素酵素を含有する、エシェリキア、アルカリゲネス、クロストリジウム、ユーバクテリウム、またはバクテロイデス属の細菌のいずれかとを接触させること;
4)液体培地から式IIIのステロイドを単離すること、を含んでいる。
【0009】
7αヒドロキシル化の工程の説明
式Iの5−アンドロステン−3β−オール−17−オンまたは関連する類似体をヒドロキシル化して、式IIの5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンまたは関連する類似体を、高収率で生産することができるケカビ属のいかなる繊維状真菌でも、本発明の方法において使用することができる。実施例で説明された方法は、ケカビ属の繊維状真菌の適合性を測定するために使用することができる。好ましくはムコール・ルキシー(Mucor rouxii)を用いる。さらに好ましくは、ムコール・ルキシーATCC44260(別名、NRRL1894)を用いる。
【0010】
式Iの化合物と接触させるケカビ属の真菌は、活発に増殖している培養物、全細胞濃縮物、または無細胞抽出物の形態で利用することができる。好ましくは、この真菌は、この技術分野で認識されている方法のいずれかを用いて、好気的条件下で、液内培養で増殖させ、そしてイン・シツ(in situ)で変換を行う。より好ましくは、この所望の真菌は、下記の好気的条件下で、液内培養で増殖させ、そしてさらに特定すれば、実施例1〜4に記載されたように、特定の成分または他の、当業者に知られている適切な炭素および窒素源を用いて増殖させる。適切な炭素源の非限定的な例には、単糖類、二糖類、三糖類ならびにグリセロールおよびグルシトールのような糖アルコール類が挙げられる。適切な有機窒素源の非限定的な例には、カゼイン、コーンスティープリカー、肉抽出物、魚粉、およびダイズタンパク質水解物が挙げられる。適切な無機窒素源の非限定的な例には、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。一般に、一次および二次栄養シード(vegetative seed)方法が、式Iの5−アンドロステンステロイドから式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドへの真菌による変換のための製造において用いることができる。
【0011】
別法として、一次栄養シードを直接生物変換培地に接種するのに使用することができる。
【0012】
一次栄養シード培地は、20℃と37℃の間の温度(好ましくは28℃)で、最初のpHが3.0と8.0の間で、24から96時間(好ましくは48時間)、培養することができる。二次栄養シード培地に、0.006%から0.1%(v/v)、典型的には0.012%(v/v)、の一次栄養シード培養物を植付け、そして20℃と37℃の間の温度(好ましくは28℃)で、36から72時間(このましくは48〜60時間)、培養する。二次シード培地のpHは3.0と8.0の間で良く、好ましくは3.0と5.0の間である。生物変換用培地は、この二次栄養シード培地と同一でも類似でも良く、1%から10%(v/v)(好ましくは3%から5%)の二次栄養シード培地に接種される。生物変換醗酵条件は、二次栄養シード培地の培養において使用されるものと同一であっていい。
【0013】
ゼロから72時間まで(好ましくは12から24時間)の初期培養時間の後、式Iの5−アンドロステンステロイドは、好ましくは微細化されて、生物変換培地に添加される。微細化された式Iの5−アンドロステンステロイドは、乾燥粉末または水性スラリーとして、単回の添加、一連の添加、または連続添加のいずれかで添加することができる。式Iの5−アンドロステンステロイドは、1g/Lより高い濃度で、より好ましくは5g/Lより高い、さらにより好ましくは15g/Lより高い濃度で使用することが好ましい。式Iの5−アンドロステンステロイドから式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドを生成する生物変換は、約2〜約6日間、典型的には約4日間、行うことができる。
【0014】
一旦、式Iの5−アンドロステンステロイドから式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドへの変換が完了すれば、式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドは、この分野で認められている多数の方法のいずれか一つを用いて単離することができる。好ましくは、式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドは、下記の方法を用いて単離され、より特定すれば、実施例5に記載されたように、特定した溶媒、またはその他の当業者に知られた適切な溶媒を用いて単離することができる。濾過し、または遠心分離したビール固形物(beer solids)を、有機溶媒、例えばメタノール、アセトン、酢酸ブチル、または塩化メチレンを用いて抽出し、そして式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドを結晶化により単離する。結晶化溶媒の非限定的な例には、水、メタノール、アセトン、酢酸ブチル、塩化メチレン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい抽出溶媒は塩化メチレンであり、好ましい結晶化溶媒は酢酸n−ブチルである。
【0015】
7α−ヒドロキシステロイドの酸化工程の説明
エシェリキア、アルカリゲネス、クロストリジウム、ユーバクテリウム、またはバクテロイデス属の細菌で、式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドを酸化して式IIIの5−アンドロステン−7−オキソ−ステロイドへと変換しうる7α−ヒドロキシステロイド脱水素酵素を含むいかなる細菌も、本発明の方法で用いることができる。実施例に記載された方法を、この細菌の適合性を測定するために用いることができる。好ましくは、エシェリキア属の細菌が用いられる。より好ましくは、エシェリキア・コリの菌株が用いられる。よりさらに好ましくは、エシェリキア・コリATCC29532が用いられる。
【0016】
エシェリキア、アルカリゲネス、クロストリジウム、ユーバクテリウム、またはバクテロイデス属の細菌は、活発に増殖している培養物、全細胞濃縮物、または無細胞抽出物の形態で利用することができる。好ましくは、この細菌は、この技術分野で認識されている方法のいずれかを用いて、好気的条件下で、液内培養で増殖させ、そしてイン・シツ(in situ)で変換を行う。より好ましくは、この所望の細菌は、下記の好気的条件下で、液内培養で増殖させ、そしてさらに特定すれば、実施例6に記載されたように、特定の成分または他の当業者に知られている適切な炭素および窒素源を用いて増殖させる。一般に、一次栄養性シード方法が、式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドから式IIIの5−アンドロステン−7−オキソ−ステロイドへの真菌による変換のための調製において使用される。
【0017】
一次栄養シード培地に、単一の単離した細菌コロニーを接種し、25℃と40℃の間の温度(好ましくは37℃)で、最初のpHが5.0と8.0の間(好ましくは中性)で、6から72時間(好ましくは24から36時間)、培養する。生物変換用培地は、この一次栄養シード培地と同一でも類似でも良く、1%から10%(v/v)(好ましくは3%から5%)の一次栄養シード培養物を接種する。生物変換の培養条件は、一次栄養シード培地の培養において使用されるものと同一であっていい。
【0018】
ゼロから36時間まで(好ましくは6から12時間)の初期培養時間の後、式IIの5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンまたは関連する類似体は、好ましくは微細化されて、生物変換培地へ添加される。式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドは、乾燥粉末または水性スラリーとして、単回の添加、一連の添加、または連続添加のいずれかで添加することができる。微細化された式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドは、1g/Lより高い濃度で、より好ましくは5g/Lより高い、さらにより好ましくは9.5g/Lより高い濃度で使用することが好ましい。式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドから式IIIの5−アンドロステン−7−オキソステロイドを生成する生物変換は、約2〜約7日間、典型的には約6日間、行うことができる。
【0019】
一旦、式IIの5−アンドロステン−7−ヒドロキシステロイドから式IIIの5−アンドロステン−7−オキソステロイドへの変換が完了すれば、式IIIの5−アンドロステン−7−オキソステロイドは、この分野で認められている多数の方法のいずれかを用いて単離することができる。好ましくは、式IIIの5−アンドロステン−7−オキソステロイドは、下記の方法を用いて単離され、より特定すれば、実施例7に記載されたように、特定の溶媒、またはその他の当業者に知られた適切な溶媒を用いて単離することができる。濾過し、または遠心分離したビール固形物を、有機溶媒、例えばメタノール、アセトン、酢酸ブチル、または塩化メチレンを用いて抽出し、そして式IIIの5−アンドロステン−7−オキソステロイドを結晶化により単離する。結晶化溶媒の非限定的な例には、水、メタノール、アセトン、酢酸ブチル、塩化メチレン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい抽出溶媒は塩化メチレンであり、好ましい結晶化溶媒はメタノールである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の定義および説明は、明細書および特許請求の範囲の両方を含むこの全文書を通して用いられる用語に適用される。
全ての温度は、摂氏温度である。
r.p.m.は、1分当りの回転数を表す。
TLCは、薄層クロマトグラフィーを表す。
HPLCは、高速液体クロマトグラフィーを表す。
psigは、平方インチゲージ当りのポンドを表す。
DOは、溶存酸素を表す。
ROは、逆浸透を表す。
SLMは、1分当りの標準リッターを表す。
VVMは、1分当りの容量を表す。
OURは、酸素取込み速度を表す。
溶媒混合物を用いた時は、用いられる溶媒の割合は、容量/容量(v/v)である。
溶媒中の固形物の溶解度が用いられる時は、溶媒に対する固形物の割合は、質量/容量(wt/v)である。
【0021】
さらに尽力することなしに、当業者は、前記の記載に従って本発明を完全に実施することができる。以下の詳細な実施例には、種々の化合物をどのように製造し、および/または、本発明の種々の方法をどのように実行するかが記載されているが、単に説明のためであり、前記の開示をいかなるやり方であれ限定はしない。当業者は、反応物について、ならびに、反応条件および技術について、本発明からの適切な改変を容易に認めることができるであろう。
【実施例1】
【0022】
ムコール・ルキシーATCC44260の10L醗酵スケールの液内培養を用いた、5−アンドロステン−3β−オール−17−オンから5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンへの生物変換
【化5】

【0023】
(A)一次シードの段階
凍結したムコール・ルキシーATCC44260の栄養細胞を解凍し、ポテト−デキストロース−寒天プレート(PDA)に移し、28℃で72時間、培養した。単一の菌糸体プラグ(直径6〜7mm)を、シリコーン処理し点刻のある(stippled)500mL容量の振盪フラスコ中の滅菌した一次シード培地100mLへの植付けに使用した。一次シード培地は、RO水1L当り;デキストリン、50g;ダイズ粉、35g;セレロース、5g;塩化コバルト6水和物、2mg;シリコーン消泡剤(SAG471)、0.5mLを含み;これを前滅菌処理し、2Nの水酸化ナトリウムでpHを7.0〜7.1に調整した。ムコール・ルキシーATCC44260は、環境制御された培養振盪機を275r.p.m.に設定して(1''軌道ストローク)28℃で48時間培養した。
【0024】
(B)二次シードの段階
10Lの二次シード培地に、1.2mLの栄養一次シード培養物を植付けた(0.012%(v/v)植付率)。二次シード培地は、RO水1L当り;セレロース、60g;ダイズ粉、25g;ダイズ油、5mL;マグネシウム7水和物、1g;リン酸二水素カリウム、0.74g;シリコーン消泡剤(SAG471)、0.5mLを含み;予備滅菌処理し、濃硫酸でpHを4.95〜5.00に調整した。二次シード培地を入れた培養器は、ジャケットおよび注入蒸気を用いて121℃で20分間、滅菌した。滅菌中の振盪速度は200r.p.m.であった。滅菌後、培地pHは、滅菌した硫酸(5%)を用いて5.0に調整した。ムコール・ルキシーATCC44260を以下の初期パラメータを用いて、28℃で培養した:振盪速度、100r.p.m.;背圧=5psig;気流=2.5SLM(0.25VVM);低DO設定点、50%;pH制御はしない。培地がこの低DO設定点に達したとき、50%DOを振盪の制御により維持した。二次シード培養物を、植付け後約50時間の時点で、OURが8から10mM/L/時の間の時に採取した。
【0025】
(C)ステロイド生物変換
10Lのステロイド生物変換培地に、500mLの栄養二次シード培養物を植付けた(5%(v/v)植付率)。ステロイド生物変換用培地は、RO水1L当り;セレロース、60g;ダイズ粉、25g;マグネシウム7水和物、1g;リン酸二水素カリウム、0.74g;シリコーン消泡剤(SAG471)、0.5mLを含み;予備滅菌処理し、濃硫酸でpHを3.95〜4.00に調整した。ステロイド生物変換用培地を入れた培養器は、ジャケットおよび注入蒸気を用いて121℃で20分間、滅菌した。滅菌中の振盪速度は200r.p.m.であった。滅菌後、培地pHは、滅菌した硫酸(5%)を用いて4.0に調整した。ムコール・ルキシーATCC44260を、実質的に二次シード培養のために用いたものと、初期振盪が200r.p.m.であった他は、同一の初期パラメータを用いて、28℃で培養した。植付け後約19、31、43および55時間の時点で、0.2%オクチルフェノキシポリエトキシエタノールの最小容量でスラリー化した微細化5−アンドロステン−3β−オール−17−オン50gを10Lの培地に添加した(総量で200gの5−アンドロステン−3β−オール−17−オン)。
【0026】
この生物変換培地についてTLCを用いて5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンを毎日測定した。全ビールの1mLを温メタノール10mLで希釈した。細胞をこの水−メタノール混合物から遠心分離(3,000×gで10分間)により分離し、5〜10μLをTLCプレートに付した。このTLCプレートを塩化メチレン:メタノール:氷酢酸(95:5:1)で展開し、そしてTLCに50%硫酸を噴霧しオーブンで炭化することで、生成物を可視化した。生成物を、50%硫酸で噴霧した時に青色に変色する、純正標準品と比較した。5−アンドロステン−3β−オール−17−オンから5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンへの生物変換が約4日間で完了した。
【実施例2】
【0027】
ムコール・ルキシーATCC44260の10L培養スケールの液内培地を用いた、5−アンドロステン−3β−オール−17−オンから5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンへの生物変換
(A)一次シードの段階
一次シード培養物は、実施例1で記載されたように製造した。
(B)二次シードの段階
10Lの二次シード培養物は、実施例1で記載されたように製造した。
(C)ステロイド生物変換
10Lの生物変換を実施例1で記載されたように行ったが、ただし培地のpHは5.0に調整した。この生物変換培地について、TLCを用いて、実施例1に記載されたように、5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンを毎日測定した。5−アンドロステン−3β−オール−17−オンから5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンへの生物変換が約4日間で完了した。
【実施例3】
【0028】
ムコール・ルキシーATCC44260の10L培養スケールの液内培地を用いた、5−アンドロステン−3β−オール−17−オンから5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンへの生物変換
(A)一次シードの段階
一次シード培養物は、実施例1で記載されたように製造した。
(B)二次シードの段階
10Lの二次シード培養物は、実施例1で記載されたように製造した。
(C)ステロイド生物変換
10Lの生物変換を実施例1で記載されたように行ったが、ただし培地は、RO水1L当り;セレロース、60g;ダイズ粉、35g;デキストリン、50g;シリコーン消泡剤(SAG471)、0.5mLを含み;予備滅菌処理し、濃硫酸でpHを3.95〜4.00に調整した。この生物変換培養物について、TLCを用いて、実施例1に記載されたように、5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オン(II)を毎日測定した。5−アンドロステン−3β−オール−17−オン(I)から5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンへの生物変換が約4日で完了した。
【実施例4】
【0029】
ムコール・ルキシーATCC44260の10L培養スケールの液内培地を用いた、5−アンドロステン−3β−オール−17−オンから5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンへの生物変換
(A)一次シードの段階
一次シード培養物は、実施例1で記載されたように製造した。
(B)二次シードの段階
10Lの二次シード培養物は、実施例1で記載されたように製造した。
(C)ステロイド生物変換
10Lの生物変換を実施例3で記載されたように行ったが、ただし培地のpHは5.0に調整した。この生物変換培養物について、TLCを用いて、実施例1に記載されたように、5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンを毎日測定した。5−アンドロステン−3β−オール−17−オンから5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンへの生物変換が約4日間で完了した。
【実施例5】
【0030】
5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンの単離
4個の10L培養(実施例1〜4)から採取した全ビールを遠心分離し、そして富固形物(rich solids)を遠心分離により回収した。この富固形物を、塩化メチレン40Lを用いて抽出した。この富有機抽出物を、静置により固形物から分離した。この塩化メチレン抽出物を洗浄し、そして蒸留により約2Lまで濃縮し、次に酢酸n−ブチルを2L添加した。この混合物を約2Lまで濃縮し、4℃まで冷却し、生成物の結晶化を完了させた。この結晶を濾過により回収し、冷酢酸ブチルで色が消えるまで洗浄し、そして乾燥して結晶化5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンを496g得た。
【実施例6】
【0031】
エシェリキア・コリATCC29532の100mL培養スケールの液内培養物を用いた、5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンからの5−アンドロステン−3β−オール−7,17−ジオンへの生物変換
【化6】

【0032】
(A)一次シードの段階
凍結したエシェリキア・コリATCC29532の栄養細胞を解凍し、ブレイン・ハート・インフュージョン寒天プレート(Brain Heart Infusion agar plate)に移し、そして37℃で24時間、培養した。単一の菌コロニーを、500mL容量の振盪フラスコ中の滅菌した100mLの一次シード培地中に接種した。一次シード培地は、RO水1L当り;加水分解ダイズタンパク質、12g;自己分解酵母エキス、24g;グリセロール、5mL;リン酸一塩基カリウム(結晶)、2.31g;リン酸二塩基カリウム(無水物)、12.54gから成り;pHは中性(調整せず)であった。エシェリキア・コリATCC29532を、環境制御された培養振盪機を270r.p.m.に設定して(2''軌道ストローク)、37℃で約24時間、培養した。
【0033】
(B)ステロイド生物変換
100mLの滅菌したステロイド生物変換培地に、3mLの栄養一次シード培養物を植付けた(3%(v/v)植付率)。ステロイド生物変換培地は、一次シード培地と同一であった。エシェリキア・コリATCC29532培養を、環境制御された培養振盪機を270r.p.m.に設定して(2''軌道ストローク)、37℃で培養した。植付から約8時間後に、0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートの最小容量でスラリー化した微細化5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンの1gを100mLの培地に添加した。
【0034】
この生物転換培地について、TLCを用いて5−アンドロステン−3β−オール−7,17−ジオンを毎日測定した。全ビールの1mLを温メタノール10mLで希釈した。細胞をこの水−メタノール混合物から遠心分離(3,000×gで10分間)により分離し、2μLをTLCプレートに付した。このTLCプレートをシクロヘキサン:酢酸エチル:メタノール:氷酢酸(90:60:30:1)で展開し、そして最初にUV254で、次に50%硫酸を噴霧しオーブンで炭化することで、生成物を可視化した。生成物を254nmのUV光を吸収し、硫酸で炭化したときに黄色に変色する純正標準品と比較した。5−アンドロステン−3β,7α−ジオール−17−オンから5−アンドロステン−3β−オール−7,17−ジオンへの生物変換が約6日で完了した。
【実施例7】
【0035】
5−アンドロステン−3β−オール−7,17−ジオンの単離
40回の100mL培養(実施例6)から採取した全ビールを遠心分離し、そして富固形物(rich solids)を遠心分離により回収した。この富固形物を、塩化メチレン3Lを用いて抽出した。富有機抽出物を、遠心分離によって固形物から分離した。この塩化メチレン抽出物を洗浄し、そして蒸留により約250mLまで濃縮し、次にメタノールを500mL加えた。この混合物を約250mLまで濃縮し、−10℃まで冷却し、生成物の結晶化を完了させた。この結晶を濾過により回収し、色を消すために冷メタノールで洗浄し、そして乾燥して結晶化5−アンドロステン−3β−オール−7,17−ジオンを29g得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)式I
【化1】

(式中、RはHまたは-COR1であり、R1は1〜5個の炭素のアルキルである)
の5−アンドロステンステロイドと、
ステロイド濃度が1L当り1gまたはそれ以上の液体培地中で、微生物的変換を行うことのできるケカビ種とを接触させ、式II
【化2】

の7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを得る工程;
2)工程1)の液体培地から式IIの7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを単離する工程;
を含む、7−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを製造する方法。
【請求項2】
さらに、
3)液体培地中の式IIの7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドと、7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを酸化して式III
【化3】

の7−オキソ−5−アンドロステンステロイドへと変換できる7α−ヒドロキシステロイド脱水素酵素を含有する、エシェリキア、アルカリゲネス、クロストリジウム、ユーバクテリウム、またはバクテロイド属の細菌のいずれかとを接触させる工程;
4)工程3)の液体培地から式IIIのステロイドを単離する工程;
を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
1)式I
【化4】

(式中、RはHまたは-COR1であり、R1は1〜5個の炭素のアルキルである)
の5−アンドロステンステロイドと、液体培地中で、微生物的変換を行うことのできるケカビ種とを接触させ、式II
【化5】

の7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを得る工程;
2)工程1)の液体培地から式IIの7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを単離する工程;
3)液体培地中の式IIの7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドと、7α−ヒドロキシ−5−アンドロステンステロイドを酸化して、式III
【化6】

の7−オキソ−5−アンドロステンステロイドへと変換できる、エシェリキア種とを接触させる工程;
4)工程3)の液体培地から式IIIのステロイドを単離する工程;
を含む、7−オキソ−5−アンドロステンステロイドを製造する方法。
【請求項4】
ケカビ種がムコール・ルキシーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ケカビ種がムコール・ルキシーATCC4260である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ケカビ種がムコール・ルキシーである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ケカビ種がムコール・ルキシーATCC4260である、請求項2に記載の方法。

【公表番号】特表2007−515932(P2007−515932A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518385(P2006−518385)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002078
【国際公開番号】WO2005/003148
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】