説明

7−ピペリジノアルキル−3,4−ジヒドロキノロン誘導体を含有する医薬

【課題】メラニン凝集ホルモン受容体(MCH受容体)拮抗作用を有する化合物の新規用途の提供。
【解決手段】式(I)


で示される化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン凝集ホルモン受容体拮抗作用を有する化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物に関する。
【背景技術】
【0002】
うつ病及び不安障害は主要な精神疾患を構成しており、近年、うつ病及び不安障害の生涯罹患率は増加の一途をたどっていると考えられている。これまでにうつ病の治療薬として、モノアミン仮説に基づいた三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressant:TCA)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)、セロトニン−ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin and noradrenaline reuptake inhibitor:SNRI)等が開発されている。不安障害の治療薬としては、γ-アミノ酪酸機序(GABA)に基づいたベンゾジアゼピン系薬剤が用いられてきたが、近年、SSRI及びSNRIが、パニック障害及び強迫性障害等のベンゾジアゼピン系薬剤が作用を有さない不安障害にも有効であることが示され、不安障害においても第一選択薬となっている。しかしながら、問題点としてはSSRI及びSNRIには奏効しない難治性のうつ病患者が存在すること、また抗うつ及び抗不安作用発現に数週間の服用が必要なこと等が挙げられる。そこで、既存薬と異なる作用機序に基づいたうつ病及び不安障害等の予防又は治療薬の開発が望まれている。
【0003】
神経ペプチドの一つであるメラニン凝集ホルモン(melanin-concentrating hormone:MCH)は19個のアミノ酸から生合成され、脳では辺縁系等に幅広く分布する。MCH受容体はこれまでにメラニン凝集ホルモン1型受容体(MCH1R)とメラニン凝集ホルモン2型受容体(MCH2R)の2つのサブタイプが知られている。MCH2Rはげっ歯類には発現しておらず、未だその生理機能は解明されていないが、MCH1Rは摂食行動及びエネルギー代謝と深く関連することが明らかとなっている。例えばラットにMCHを注射すると、食物の摂取量が増すことが報告されている。また、MCHが欠損している遺伝子改変マウスでは体重の減少及び代謝の増加が見られることが示されている(非特許文献1参照)。したがって、MCH1R拮抗剤は、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症等の予防又は治療薬になる可能性がある。
一方、MCH1Rはストレス応答及び情動の調節にも深く関与することが報告されている。MCHによる視床下部−下垂体−副腎皮質(hypothalamus-pituitary-adrenal:HPA)系活性化は、MCH1R拮抗剤及び副腎皮質刺激ホルモン放出因子(corticotropin-releasing factor:CRF)の中和抗体で拮抗される。MCHは視床下部からのCRF遊離促進を介し、HPA系を活性化させると推測される。さらに、MCH1Rは意欲及び報酬に関与する側坐核に多く分布しているが、この部位にMCHを注入すると強制水泳試験においてうつ様症状が認められ、逆にMCH遺伝子欠損マウスは抗うつ様症状を示す。また、MCH1R遺伝子欠損マウスを用いた検討により、MCH1Rは側坐核において報酬に関与するドーパミン神経の活性を抑制的に制御していることが示されている。さらに,非ペプチド性MCH1R拮抗剤であるATC0175は実験動物モデルにおいて抗うつ及び抗不安様作用を示す(非特許文献2)。以上の事実より、MCH1Rは摂食行動及びエネルギー代謝の調節のみならず、うつ病及び不安障害等の発症にも関与することが示唆され、MCH受容体拮抗剤、特にMCH1R拮抗剤はこれまでの作用機序と異なるうつ病及び不安障害等の予防又は治療薬となる可能性があると期待できる。
【0004】
最近、ナフタレン骨格及び1,3−ベンゾジオキソール骨格を有するMCH受容体拮抗剤は特許文献1並びに非特許文献3、4、5及び6に開示されている。しかしながら、これら文献には、本願発明の化合物の構造は、開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国公開第2005/209274号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Trends Endocrinol Metab vol.11、p.299−303(2000)
【非特許文献2】Drug Development Research vol.65、p.278−290(2005)
【非特許文献3】第224回アメリカ化学会 MEDI−343(2002)
【非特許文献4】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters vol.16、p.5445−5450(2006)
【非特許文献5】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters vol.15、p.3412−3416(2005)
【非特許文献6】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters vol.17、p.874−878(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、MCH受容体拮抗作用を有する新規化合物の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記、式(I)で表される7−ピペリジノアルキル−3,4−ジヒドロキノロン化合物が優れたMCH受容体拮抗作用を有することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)式(I)、
【0010】
【化1】


[ここで、式(I)中、
Rは、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
1、A2及びA3は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、
Xは、C1-6アルキレン基であり、
Yは、結合手又はC1-6アルキレン基であり、
Zは、結合手又はC1-6 アルキレン基(ここで、該C1-6アルキレン基は、1個のアリール基で置換されていてもよい。)であり、
Wは、結合手又は酸素原子であり、
Cyは、アリール基又はヘテロアリール基{ここで、該アリール基又は該ヘテロアリール基は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基(ここで、該C1-6アルキル基又は該C1-6アルコキシ基は、1から3個のハロゲン原子で置換されていてもよい。)及びC2-6アルカノイル基からなる群から選ばれる同一又は異なる置換基を1から3個有していてもよい。}である。]で表される化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬、
(2)式(I)中、
Rが水素原子であり、
1、A2及びA3が水素原子であり、
XがC1-6アルキレン基であり、
Yが結合手であり、
Zが結合手又はC1-6 アルキレン基(ここで、該C1-6アルキレン基は、1個のアリール基で置換されていてもよい。)であり、
Wが結合手又は酸素原子であり、
Cyがフェニル基又はピリジル基(ここで、該フェニル基又は該ピリジル基は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基(ここで、該C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基は、1から3個のハロゲン原子で置換されてもよい。)及びC2-6アルカノイル基からなる群から選ばれる同一又は異なる置換基を1から3個有していてもよい。)で表される請求項1に記載の化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬、
(3)式(I)中、
Rが水素原子であり、
1、A2及びA3が水素原子であり、
Xがメチレン基(ここで、該メチレン基は、メチル基で置換されていてもよい。)であり、
Yが結合手であり、
Zが結合手又はメチレン基であり、
Wが結合手又は酸素原子であり、
Cyがフェニル基(ここで、該フェニル基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及びC2-6アルカノイル基からなる群から選ばれる同一又は異なる置換基を1から3個有していてもよい。)で表される請求項1に記載の化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬、又は
(4)3-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,5-ジフルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,4-ジフルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-クロロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-メチル-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,5-ジクロロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,4-ジクロロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-フルオロ-3-メチル-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
3-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
3,5-ジメトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-2,2-ジフェニルアセトアミド、
4-クロロ-3-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-ブロモ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-フルオロ-5-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-クロロ-4-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-アセチル-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,4,5-トリフルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-フルオロ-3-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-クロロ-5-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-シアノ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
5-クロロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ピリジン-3-カルボキサミド、
3-クロロ-5-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-クロロ-3-メチル-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
2-(3-クロロ-4-フルオロフェノキシ)-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}アセトアミド、
2-(3-クロロフェノキシ)-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}アセトアミド、
3-クロロ-4-フルオロ-N-{1-[1-(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、及び
N-{1-[(6-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-3-メトキシベンズアミド
から選ばれる請求項1に記載の化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬である。
【発明の効果】
【0011】
本発明化合物はMCH受容体拮抗活性を有することが示された。本発明化合物を含む医薬は、MCH受容体拮抗作用に基づいた、うつ病、不安障害(全般性不安障害、外傷後ストレス障害、パニック障害、強迫性障害、社会性不安障害等)、注意欠陥障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害(パーキンソン病、てんかん、痙攣、振戦等)、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害等の予防及び治療薬として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中で用いられる用語は以下に定義される通りである。
【0013】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
「C1-6アルキル基」とは、炭素原子を1から6個有する直鎖状アルキル基又は炭素原子を3から6個有する分岐鎖状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基である。分岐鎖状アルキル基とは、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、1−エチルプロピル基、イソヘキシル基等である。
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素原子を1から6個有する直鎖状アルコキシ基又は炭素原子を3から6個有する分岐鎖状アルコキシ基を示す。直鎖状アルコキシ基とは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基である。分岐鎖状アルコキシ基とは、例えば、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、イソヘキシルオキシ基等である。
「C1-6アルキレン基」とは、炭素原子を1から6個有する直鎖状アルキレン基又は炭素原子を3から6個有する分岐鎖状アルキレン基を示し、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、イソペンチレン基、1−エチルプロピレン基、イソヘキシン基等である。
【0014】
「C2-6アルカノイル基」とは、C1-5アルキル基を有するカルボニル基を示し、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基、イソペンチルカルボニル基、1−エチルプロピルカルボニル基、イソヘキシルカルボニル基等である。
「アリール基」とは、炭素原子数6から18個で構成される単環から4環式の芳香族炭素環基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、9H−フルオレニル基等である。
「ヘテロアリール基」とは、炭素原子以外に窒素原子、酸素原子又は硫黄原子から選ばれる1から3個のヘテロ原子を含有する原子数5から10個で構成される単環又は2環式の芳香族複素環基であり、例えば、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チエニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、シンノリニル基、9H−キサンテニル基等である。
【0015】
本発明化合物の一態様は、式(I)
【0016】
【化2】


{式(I)中、R、X、Y、Z、W、A1、A2、A3及びCyは、前記と同意義である}で表される7−ピペリジノアルキル−3,4−ジヒドロキノロン化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物に関する。
好ましい本発明化合物の一態様は、式(I)中、Rが水素原子であり、A1、A2及びA3が水素原子であり、XがC1-6アルキレン基であり、Yが結合手であり、Zが結合手又はC1-6 アルキレン基(ここで、該C1-6アルキレン基は、1個のアリール基で置換されていてもよい。)であり、Wが結合手又は酸素原子であり、Cyがフェニル基又はピリジル基{ここで、該フェニル基又は該ピリジル基は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基(ここで、該C1-6アルキル基又は該C1-6アルコキシ基は、1から3個のハロゲン原子で置換されていてもよい。)及びC2-6アルカノイル基からなる群から選ばれる同一又は異なる置換基を1から3個有していてもよい。}である。
他の好ましい本発明化合物の一態様は、式(I)中、Rが水素原子であり、A1、A2及びA3が水素原子であり、Xがメチレン基(ここで、該メチレン基は、メチル基で置換されていてもよい。)であり、Yが結合手であり、Zが結合手又はメチレン基であり、Wが結合手又は酸素原子であり、Cyがフェニル基(ここで、該フェニル基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及びC2-6アルカノイル基からなる群から選ばれる同一又は異なる置換基を1から3個有していてもよい。)である。上記フェニル基は、無置換であるか、又は式(IIa)から式(IId)で示される置換フェニル基であることが好ましい。
【0017】
【化3】


{式(IIa)から式(IId)において、RA、RB及びRCは、同一又は異なって、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又はC2-6アルカノイル基である。}
本発明化合物の一態様は、本明細書中に記載の少なくとも1つの化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する医薬である。
本発明化合物の一態様は、MCH受容体拮抗剤である本明細書中に記載の少なくとも1つの化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する医薬である。
本発明化合物の一態様は、本明細書中に記載の少なくとも1つの化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害(全般性不安障害、外傷後ストレス障害、パニック障害、強迫性障害、社会性不安障害等)、注意欠陥障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害(パーキンソン病、てんかん、痙攣、振戦等)、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬である。好ましい一態様は、本明細書中に記載の少なくとも1つの化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害の予防又は治療薬である。また、他の好ましい一態様は、本明細書中に記載の少なくとも1つの化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症の予防又は治療薬である。
好ましい本発明の化合物は、優れたMCH受容体拮抗作用を有するが、hERGチャネルへの結合親和性は低い。hERGチャネルに強い結合親和性を有する化合物は、心血管系に対し副作用を引き起こす可能性が危惧されるので、上記作用を示す化合物は、優れた薬効を示し、且つ高い安全性を有することが期待される。
【0018】
本発明化合物(I)、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物は、当業者に公知である種々の有機合成手法を用いて合成することができる。例えば、以下に製造法を示すが本合成法に限られたものではない。また、以下の反応式中R、X、Y、Z、W、A1、A2、A3及びCyは、前記と同意義である。
【0019】
「不活性溶媒」とは例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族系溶媒;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N、N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒及び水であり、並びにこれらの均一系及び不均一系混合溶媒等である。これらの不活性溶媒は当業者に公知である種々の反応条件に応じて適宜選択される。
【0020】
「塩基」とは例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアミド;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert−ブトキシド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の低級アルコキシド;ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム等のアルキルリチウム;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩;トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、N,N−ジメチルアニリン等のアミン;ピリジン、イミダゾール、2,6−ルチジン等の塩基性複素環化合物等である。これらの塩基は当業者に公知である種々の反応条件に応じて適宜選択される。
「酸」とは例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸及びp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、蟻酸、酢酸等の有機酸である。これらの酸は当業者に公知である種々の反応条件に応じて適宜選択される。
【0021】
〔製造法1〕
本発明化合物(I)は、スキーム1に示される方法で製造することができる。
(スキーム1)
【0022】
【化4】


式中、X1は、結合手又はC1-5アルキレンを示す。
2は、結合手又はC1-4アルキレンを示す。
aは、ハロゲン原子又は水酸基を示す。
1は、C1-5アルキル基を示す。
ただし、X2とR1の炭素数の総和は1から5である。
1は、水素原子又はメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基又はベンジル基等のアミノ基の保護基を示す[プロテクティブ グループズ イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, INC.) 参照]。
【0023】
工程1:不活性溶媒中、酸存在下又は非存在下、還元剤を用いて、カルボニル化合物(1)又は(2)とアミン化合物(3)を還元的アミノ化反応に供することにより化合物(4)を得ることができる[コンプリヘンシブ オーガニック トランスフォーメーションズ (Comprehensive Organic Transformations) 1989年、ブイシーエイチ パブリッシャーズ(VCH Publishers, INC.) 参照]。ここでカルボニル化合物(1)又は(2)は、市販化合物、公知化合物として入手可能である。また、カルボニル化合物(1)又は(2)は、当業者に公知である種々の有機合成手法を用いて市販化合物又は公知化合物より合成することが可能である。ここで還元剤とは例えば、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム等である。
工程2:化合物(4)のアミノ基の保護基P1を当業者に公知である種々の有機合成手法[プロテクティブ グループズ イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, INC.) 参照]を用いて除去することにより、アミン化合物(5)を得ることができる。またP1が水素原子である化合物(3)の場合においても、工程1と同様な還元的アミノ化反応を行うことにより、直接アミン化合物(5)を得ることができる。
工程3:不活性溶媒中、塩基存在下又は非存在下、アミン化合物(5)とXaがハロゲン原子である酸ハライド化合物(6)又はXaが水酸基であるカルボン酸化合物(6)をアミド化反応に供することにより、本発明化合物(I)を得ることができる。酸ハライド化合物(6)又はカルボン酸化合物(6)は、市販の化合物又は公知化合物として入手可能である。また、酸ハライド化合物(6)又はカルボン酸化合物(6)は、当業者に公知である種々の有機合成手法を用いて市販化合物又は公知化合物より合成することが可能である。ここでアミド化反応とは、不活性溶媒中、塩基存在下又は非存在下、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ジフェニルホスホリルアジド又はカルボニルジイミダゾール等の縮合剤を用いたアミド化反応、或いはクロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソブチル又はピバロイルクロリド等を用いた混合酸無水物経由のアミド化反応等を意味する(ペプチド合成の基礎と実験、1985年、丸善株式会社 参照)。ここで縮合剤を用いたアミド化反応の際、必要に応じて1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等の添加剤を使用することができる。
【0024】
また、スキーム1における出発物質であるカルボニル化合物は、スキーム2に示される方法で、化合物(11)又は(13)として製造することができる。
(スキーム2)
【0025】
【化5】


式中、R2は、C1-6アルキル基を示す。
【0026】
工程4:酸触媒存在下、カルボン酸化合物(7)をフリーデル−クラフツ(Friedel-Crafts)反応に供することによりカルボニル化合物(8)を得ることができる。ここで酸触媒とは三塩化アルミニウム、クロロ硫酸、ポリリン酸等である[テトラヘドロン(Tetrahedron)2007年、第63巻、p.389−395 参照]。
工程5:カルボニル化合物(8)をメタンスルホン酸、硫酸、ポリリン酸、四塩化チタン等の酸触媒存在下、アジ化ナトリウム等を用いてシュミット(Schmidt)反応[ストラテジック アプリケーションズ オブ ネイムド リアクションズ イン オーガニック シンセシス(Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis)2005年、エルゼビア(Elsevier, INC.)又は米国公開第2006/0063799号パンフレット 参照]に供することによりアミド化合物(9)を得ることができる。
工程6:化合物(9)をパラジウム触媒存在下又は非存在下、シアン化亜鉛、シアン化銅、シアン化カリウム等を用いて反応させることによりニトリル化合物(10)を得ることができる[テトラヘドロン(Tetrahedron) 2006年、第62巻、p.4705−4708 参照]。
工程7:不活性溶媒中、金属触媒存在下、ニトリル化合物(10)を還元させることによりカルボニル化合物(11)を得ることができる[コンプリヘンシブ オーガニック トランスフォーメーションズ (Comprehensive Organic Transformations) 1989年、ブイシーエイチ パブリッシャーズ(VCH Publishers, INC.)又は国際公開第1996/20180号パンフレット 参照]。金属触媒としてはラネーニッケル、二塩化スズ等が用いられる。
工程8:ニトリル化合物(10)を当業者に公知である種々のアルキル化反応[コンプリヘンシブ オーガニック トランスフォーメーションズ (Comprehensive Organic Transformations) 1989年、ブイシーエイチ パブリッシャーズ(VCH Publishers, INC.) 参照]によりニトリル化合物(12)に変換することができる。
工程9:工程7と同様の手法により、ニトリル化合物(12)をカルボニル化合物(13)に変換することができる。
【0027】
さらに、スキーム1における出発物質であるカルボニル化合物(1)は、スキーム3に示される方法で、カルボニル化合物(17)として製造することができる。
(スキーム3)
【0028】
【化6】


式中、X3は、結合手又はC1-4アルキレンを示す。
bは、Wittig試薬或いはHorner-Emmons試薬に用いられる基(ホスホニウム塩又は亜リン酸ジエステル等)を示す。
3は、C1-6アルキル基を示す。
【0029】
工程10:不活性溶媒中、塩基存在下、カルボニル化合物(14)とWittig試薬又はHorner-Emmons試薬(15)を反応させることによりオレフィン化合物(16)を得ることができる[コンプリヘンシブ オーガニック トランスフォーメーションズ (Comprehensive Organic Transformations) 1989年、ブイシーエイチ パブリッシャーズ(VCH Publishers, INC.) 参照]。
工程11:オレフィン化合物(16)を当業者に公知である種々の加水分解反応[プロテクティブ グループズ イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, INC.) 参照]によりカルボニル化合物(17)に変換することができる。
【0030】
また、スキーム1における出発物質であるカルボニル化合物(1)は、スキーム4に示される方法で、カルボニル化合物(19)として製造することができる。
(スキーム4)
【0031】
【化7】


式中、X3は、前記と同意義である。
4は、C1-5アルキル基を示す。
ただし、X3とR4の炭素数の総和は1から5である。
Mは、アルキル化反応の際に用いる金属を示す。ここで金属とは例えば、リチウム、マグネシウムハライド等の金属を示す。
【0032】
工程12:不活性溶媒中、カルボニル化合物(14)を式R4−Mで示される有機金属試薬[コンプリヘンシブ オーガニック トランスフォーメーションズ (Comprehensive Organic Transformations) 1989年、ブイシーエイチ パブリッシャーズ(VCH Publishers, INC.) 参照]を用いてアルキル化反応を行うことによりアルコール化合物(18)を得ることができる。
工程13:不活性溶媒中、アルコール化合物(18)を当業者に公知である酸化反応[オキシデーションズ イン オーガニック ケミストリー(Oxidations in Organic Chemistry)、 1990年、アメリカン ケミカル ソサイエティー(American Chemical Society) 参照]にてカルボニル化合物(19)に変換することができる。ここで当業者に公知である酸化反応とは、例えば、ピリジニウムジクロメート又はピリジニウムクロロクロメート等を用いるクロム系酸化反応、二酸化マンガン等を用いるマンガン系酸化反応、塩化オキサリル(Swern酸化)又はジシクロヘキシルカルボジイミド(Moffatt酸化)等を活性化剤として用いるジメチルスルホキシド系酸化反応、次亜塩素酸ナトリウム等の共酸化剤を用いる2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ酸化反応(TEMPO酸化)、或いはDess−Martin試薬を用いた酸化反応等を意味する。
【0033】
また、スキーム1における出発物質であるカルボニル化合物(1)において、A1、A2、A3のうち少なくとも1つはハロゲン原子である化合物(24)は、スキーム5に示される方法で製造することができる。
(スキーム5)
【0034】
【化8】


式中、A4、A5及びA6は、同一又は異なって、水素原子又はハロゲン原子を示す。
ただし、A4、A5及びA6のうち、少なくとも1つはハロゲン原子を示す。
2は、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、アセチル基、ベンゾイル基又はベンジル基等水酸基の保護基を示す[プロテクティブ グループズ イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, INC.) 参照]。
【0035】
工程14:アルコール化合物(20)の水酸基をtert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、アセチル基、ベンゾイル基又はベンジル基等の保護基[プロテクティブ グループズ イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, INC.) 参照]を用いて保護し、化合物(21)を得ることができる。
工程15:化合物(21)を当業者に公知である種々のハロゲン化反応[コンプリヘンシブ オーガニック トランスフォーメーションズ (Comprehensive Organic Transformations) 1989年、ブイシーエイチ パブリッシャーズ(VCH Publishers, INC.)又はテトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters)1999年、第40巻、p.2673−2676 参照]により芳香環上にハロゲン置換基を導入した化合物(22)に変換することができる。
工程16:化合物(22)の保護基P2を当業者に公知である種々の有機合成手法[プロテクティブ グループズ イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)第3版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, INC.) 参照]を用いて除去することにより、アルコール化合物(23)を得ることができる。
工程17:工程13と同様の手法により、アルコール化合物(23)をカルボニル化合物(24)に変換することができる。
【0036】
〔製造法2〕
本発明化合物(I)は、スキーム6に示される方法で製造することができる。
(スキーム6)
【0037】
【化9】


式中、X1、X2、Xa、R1及びP1は、前記と同意義である。
【0038】
工程18:スキーム1中の工程3と同様の手法により、化合物(25)を化合物(26)に変換することができる。
工程19:スキーム1中の工程2と同様の手法により、化合物(26)を化合物(27)に変換することができる。またP1が水素原子である化合物(25)の場合においても、スキーム1中の工程3と同様なアミド化反応を行うことにより、直接化合物(27)を得ることができる。
工程20:スキーム1中の工程1と同様の手法により、カルボニル化合物(1)又は(2)をアミン化合物(27)との還元的アミノ化反応に供することにより本発明化合物(I)を得ることができる。
また、スキーム2中のニトリル化合物(10)は、スキーム7に示される方法で、フェノール化合物(28)から製造することができる。
(スキーム7)
【0039】
【化10】


式中、Lは、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基又p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を示す。
工程21:フェノール化合物(28)は、市販の化合物又は公知化合物として入手可能である。又はフェノール化合物(28)は、当業者に公知である種々の有機合成手法を用いて市販化合物又は公知化合物より合成することが可能である。
Lがハロゲン原子を示すとき、不活性溶媒中、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の存在下、臭素やオキサリルクロリド等のハロゲン化試薬で化合物(28)の水酸基のハロゲン化反応を行うことにより化合物(29)を得ることができる。又は、塩基の存在下又は非存在下、不活性溶媒中又は溶媒非存在下、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リン、五臭化リン又はオキシ塩化リン等のハロゲン化試薬で化合物(28)の水酸基のハロゲン化反応を行うことにより化合物(29)を得ることができる。
Lがメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基又はp−トルエンスルホニルオキシ基を示すとき、例えば塩基の存在下又は非存在下、不活性溶媒中、メタンスルホニルクロリド,メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物,、N-フェニル-ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)又はp−トルエンスルホニルクロリドで化合物(28)の水酸基を反応させることにより化合物(29)を得ることができる(Comprehensive Organic Transformations, 1989, VCH Publishers, Inc. 参照)。
工程22:スキーム2の工程6と同様の手法により、化合物(29)をニトリル化合物(10)に変換することができる。
【0040】
本発明化合物(I)が塩を形成し、それが医薬品として用いられる場合、それは医薬上許容される塩が好ましい。医薬上許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩又はリン酸塩等の無機酸との塩、或いは酢酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩等の有機酸との塩が用いられるが、これらの塩に限定されるものではない。
【0041】
さらに、医薬的に許容される塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アルミニウム塩又はアンモニウム塩等の無機塩基との塩、或いはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン又はN,N−ジベンジルエチレンジアミン等の有機塩基との塩が挙げられる。
【0042】
本発明化合物(I)が光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体を含む場合は、単一の化合物及びその混合物が本発明の化合物として含まれる。また、本発明化合物(I)が水和物又は溶媒和物を形成する場合、これらも本発明の範囲内に含まれる。さらに、本発明化合物(I)は同位元素(例えば、D、3H、13C、14C、15N、35S、125I等)で標識されていてもよい。
【0043】
本発明のMCH受容体拮抗剤及び医薬は、それぞれ本発明化合物(I)、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を、そのまま或いは薬理学的に許容される担体とともに、自体公知の手段に従って製剤化することによって製造される。薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質、例えば、固形製剤における賦形剤(例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等)、滑沢剤(例えば、ステアリング酸マグネシウム、ステアリング酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等)、結合剤(例えば、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等)、又は液状製剤における溶剤(例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等)、溶解補助剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等)、懸濁化剤(例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、若しくは例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等)、等張化剤(例えば、ブドウ糖、D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等)、無痛化剤(例えば、ベンジルアルコール等)等が挙げられる。また、製剤化の際に、必要に応じて、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等)、抗酸化剤(例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等)、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等を用いることもできる。
【0044】
本発明のMCH受容体拮抗剤及び医薬は、経口的又は非経口的(例えば、静脈、局所、直腸投与等)に投与することができる。その投与剤型は、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、粉剤、トローチ剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤等)、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤、クリーム剤等)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤等)、徐放剤(例えば、徐放性マイクロカプセル等)、ペレット、点滴剤等であり、いずれも慣用の製剤技術(例えば、第15改正日本薬局方に記載する方法等)によって製造することができる。
【0045】
本発明のMCH受容体拮抗剤及び医薬の投与量は、投与対象、投与経路、疾患、患者の年齢、体重及び症状によって適宜選択される。例えば、成人患者を治療する場合、その投与量は1日1〜2000 mgであり、この量を1日1回又は数回に分けて投与する。
【0046】
MCH受容体拮抗剤を医薬の活性成分として使用する場合、それはヒトだけに使用することを意図するのではなく、ヒト以外のその他の哺乳類にも使用されることを留意されたい。例えば、動物の健康管理の領域における最近の進歩によれば、家畜(例えば、ネコ、イヌ等)の肥満症の治療にMCH受容体拮抗剤を使用すること、さらに疾患又は障害が明らかではないその他の家畜(例えば、ウシ、ニワトリ、魚等の食用動物)に対してMCH受容体拮抗剤を使用することが考えられる。
【実施例】
【0047】
本発明は下記の実施例によって更に詳細に説明されるが、これら実施例は本発明を限定するものではなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
実施例中で言及する「室温」とは、0 ℃〜40 ℃の温度を示すことを意味する。カラムクロマトグラフィーを使用して精製した際の「シリカゲル 60 N」及び「クロマトレックスNH」は関東化学及びFuji Silysiaにてそれぞれ市販されているものを使用した。
【0048】
実施例中記載の各機器データは以下の測定機器にて測定した。
MSスペクトル:島津LCMS-2010EV又はmicromass Platform LC
NMRスペクトル:600 MHz(JNM-ECA600, 日本電子)又は200 MHz(GEMINI2000/200, Varian Inc.)
実施例中の化合物名はACD/Name(ACD/Labs 11.00, Advanced Chemistry Development Inc.)により命名した。
【0049】
実施例中で使用した略語を以下に示す。
Ac2O(無水酢酸)、AcOH(酢酸)、APCI(大気圧化学イオン化)、brs(広幅1重線)、CDCl3(重水素化クロロホルム)、CHCl3(クロロホルム)、CH3CN(アセトニトリル)、d(2重線)、dd(2重2重線)、ddd(2重2重2重線)、DMAP(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMSO-d6(重水素化ジメチルスルホキシド)、dt(2重3重線)、EDC[1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド]、EI(電子イオン化)、ESI(エレクトロスプレーイオン化)、Et3N(トリエチルアミン)、Et2O(ジエチルエーテル)、EtOAc(酢酸エチル)、EtOH(エタノール)、H(プロトン)、HCl(塩化水素又は塩酸)、H2O(水)、HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)、Hz(ヘルツ)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPE(イソプロピルエーテル)、J(カップリング定数)、K2CO3(炭酸カリウム)、m(多重線)、 MeI(ヨウ化メチル)、MeMgBr(メチルマグネシウムブロミド)、MeOH(メタノール)、MeOH-d4(重水素化メタノール)、MgSO4(硫酸マグネシウム)、MnO2(二酸化マンガン)、MS(質量分析)、NaBH 4(水素化ホウ素ナトリウム)、NaH(水素化ナトリウム)、NaHCO3(炭酸水素ナトリウム)、Na2SO4(硫酸ナトリウム)、NH4Cl(塩化アンモニウム)、NMR(核磁気共鳴分光法)、NaBH(OAc)3(水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム)、NaNH2(ナトリウムアミド)、NaOH(水酸化ナトリウム)、Pd2(dba)3[トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム]、Ph3PCH2OMe・Br[(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムブロミド]、 iPr2NEt(ジイソプロピルエチルアミン)、q(4重線)、s(1重線)、t(3重線)、td(3重2重線)、THF(テトラヒドロフラン)、TMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)、v/v(容量/容量)、Xantphos[4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン]
【0050】
実施例1:3-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミドの合成
工程1−1:氷冷下にてクロロ硫酸(1.19 L)に3-(4-ブロモフェニル)プロパン酸(91.1 g)を加え、2時間攪拌した。氷冷下にてH2O(2.00 L)に反応液をゆっくりと加え、CHCl3にて6回抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液で洗浄後、Na2SO4にて乾燥した後、減圧下濃縮した。得られた残渣にMeOHを加え30分間加熱還流した後、固体を濾取し固体Aを得た。濾液を減圧下濃縮し、同様にして固体Bを得た後、濾液を再度減圧下濃縮し同様にして固体Cを得た。固体A,B,Cを合わせ、6-ブロモ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン(59.3 g, 淡黄色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.66-2.75 (m, 2H), 3.04-3.12 (m, 2H), 7.36 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.67 (dd, J = 8.0, 2.1 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 1.8 Hz, 1H); ESI/APCI MS m/z 210 [M+H]+.
工程1−2:工程1−1で得られた化合物(39.5 g)及びメタンスルホン酸(122 mL)のCHCl3溶液(560 mL)に、氷冷下にてアジ化ナトリウム(36.5 g)を数回に分けて加えた後、2.5時間加熱還流した。氷冷下にてH2O(400 mL)に反応液を加え、28%アンモニア水によりpH = 9とした後、CHCl3にて3回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4にて乾燥した後、減圧下濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:EtOAc/ヘキサン = 50/50〜75/25; v/v)にて精製した。得られた固体をEtOAc/ヘキサン(1/1; v/v)の混合溶液に懸濁し、室温にて1時間攪拌した後、固体を濾取し7-ブロモ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(15.5 g, 淡黄色固体)を得た。
1H NMR (200 MHz, CDCl3, δ): 2.59-2.68 (m, 2H), 2.88-2.97 (m, 2H), 6.91-7.16 (m, 3H), 8.27 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 226 [M+H]+.
工程1−3:工程1−2で得られた化合物(3.00 g)のDMF溶液(14.5 mL)にシアン化亜鉛(1.04 g)、Pd2(dba)3(122 mg)、Xantphos(154 mg)及びTMEDA(590 μL)を加え、マイクロ波照射下(180 ℃)5分間攪拌した。反応液にCHCl3を加え、セライト濾過し、固体をDMFで洗浄した後、濾液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:EtOAc/ヘキサン = 50/50〜100/0; v/v)にて精製した。得られた固体に室温にてEtOAcを加え、30分間攪拌した。固体を濾取し、EtOAcにて洗浄して2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-カルボニトリル(15.5 g, 淡黄色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.64-2.68 (m, 2H), 3.00-3.04 (m, 2H), 7.04 (s, 1H), 7.23-7.29 (m, 2H), 8.46 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 173 [M+H]+.
工程1−4:工程1−3で得られた化合物(32.6 g)のギ酸(250 mL)溶液にラネーニッケル触媒(50.0 g)を加え、50 ℃にて2時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、濾液を減圧下濃縮し、残渣に飽和NaHCO3水溶液を加えpH = 6とした後、固体を濾取し、固体Aを得た。濾液をCHCl3にて3回抽出し有機層を合わせNa2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮した。残渣と固体Aを合わせ、EtOAc/CHCl3/Acetone(10/10/1; v/v/v)の混合溶液に懸濁し、室温にて1時間攪拌した後、固体を濾取し2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-カルバルデヒド(19.8 g, 淡黄色固体)を得た。
1H NMR (200 MHz, CDCl3, δ): 2.65-2.76 (m, 2H), 3.02-3.13 (m, 2H), 7.31-7.38 (m, 2H), 7.49-7.55 (m, 1H), 9.13 (brs, 1H), 9.95 (s, 1H); ESI/APCI MS m/z 176 [M+H]+.
工程1−5:工程1−4で得られた化合物(19.8 g)及びtert-ブチル ピペリジン-4-イルカルバメート(24.8 g)のCHCl3溶液(450 mL)を70 ℃にて1.5時間攪拌した。室温まで放冷した後、氷冷下にてNaBH(OAc)3(35.9 g)を加え、室温にて12時間攪拌した。飽和NaHCO3水溶液を加えた後、水層と有機層を分離した。水層をCHCl3にて3回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 33/66〜100/0; v/v)にて精製し、tert-ブチル {1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}カルバメート(37.8 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.35-1.51 (m, 11H), 1.82-1.96 (m, 2H), 2.07 (t, J = 10.5 Hz, 2H), 2.49-2.66 (m, 2H), 2.78 (brs, 2H), 2.93 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.29-3.55 (m, 3H), 4.48 (brs, 1H), 6.76 (s, 1H), 6.90 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.37 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 360 [M+H]+.
工程1−6:工程1−5で得られた化合物(37.8 g)のEtOAc(130 mL)溶液に氷冷下、4 M HCl/EtOAc溶液(263 mL)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣にEtOAc(200 mL)を加え懸濁させ、固体を濾取した。固体にCHCl3(200 mL)及びH2O(200 mL)を加え15分間攪拌した。水層と有機層を分離後、水層をCHCl3にて2回洗浄した。水層に2 M NaOH水溶液を加え、pH = 10とした後、CHCl3にて30回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(クロマトレックスNH、移動相:MeOH/CHCl3 = 1/4; v/v)にて精製し7-[(4-アミノピペリジン-1-イル)メチル]-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(17.9 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.32-1.49 (m, 2H), 1.74-1.88 (m, 2H), 1.93-2.09 (m, 2H), 2.54-2.70 (m, 3H), 2.80 (d, J = 11.9 Hz, 2H), 2.93 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.41 (s, 2H), 6.74 (s, 1H), 6.90 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 8.28 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 260 [M+H]+.
工程1−7:工程1−6で得られた化合物(250 mg)のCHCl3(5.00 mL)溶液にiPr2NEt(370 μL)、3-メトキシベンゾイル クロリド(180 mg)を加え、室温下、3日間攪拌した。飽和NaHCO3水溶液を加え、CHCl3にて4回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー[(シリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜10/90; v/v)及び(クロマトレックスNH、移動相:CHCl3)]にて順次精製し、固体を得た。得られた固体に室温にてIPAを加え、1時間攪拌した。固体を濾取し、IPA及びヘキサンにて洗浄して表題化合物(159 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.48-1.62 (m, 2H), 1.94-2.06 (m, 2H), 2.10-2.21 (m, 2H), 2.57-2.67 (m, 2H), 2.78-2.87 (m, 2H), 2.90-2.99 (m, 2H), 3.44 (s, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.94-4.05 (m, 1H), 6.01 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.74 (s, 1H), 6.91 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.02 (dd, J = 7.6, 2.1 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.21-7.27 (m, 1H), 7.29-7.35 (m, 2H), 7.85 (s, 1H); ESI/APCI MS m/z 394 [M+H]+.
【0051】
実施例2:3-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド 1塩酸塩 1水和物の合成
工程1−7で得られた化合物(167 mg)のEtOAc(1.70 mL)懸濁液に4 M HCl/EtOAc溶液(140 μL)を加え、室温にて1.5時間攪拌した。生じた固体を濾取し、表題化合物(160 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, MeOH-d4, δ): 1.98 (brs, 2H), 2.18 (brs, 2H), 2.53-2.62 (m, 2H), 2.98 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.03-3.19 (m, 2H), 3.50 (brs, 2H), 3.81 (s, 3H), 4.11 (brs, 1H), 4.23 (brs, 2H), 6.98 (s, 1H), 7.05-7.15 (m, 2H), 7.27-7.39 (m, 4H); ESI/APCI MS m/z 394 [M(free)+H]+
【0052】
実施例1と同様の手法を用いて、実施例3から実施例30の化合物を得た。
【0053】
【表1−1】

【0054】
【表1−2】

【0055】
【表1−3】

【0056】
【表1−4】

【0057】
【表1−5】

【0058】
【表1−6】

【0059】
実施例31:3-クロロ-4-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミドの合成
工程1−6で得られた化合物(250 mg)のDMF(2.50 mL)溶液に3-クロロ-4-フルオロ安息香酸(191 mg)、Et3N(320 μL)、HOBt・H2O(222 mg)及びEDC・HCl(222 mg)を加え、室温にて3日間攪拌した。飽和NaHCO3水溶液を加え、CHCl3にて4回抽出し有機層を合わせNa2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー[(シリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜10/90; v/v)及び(クロマトレックスNH、移動相:CHCl3)]にて順次精製した。得られた濃縮物に室温にてIPAを加え、1時間攪拌した。固体を濾取し、IPA及びヘキサンにて洗浄して表題化合物(263 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.53-1.64 (m, 2H), 1.96-2.04 (m, 2H), 2.10-2.20 (m, 2H), 2.58-2.67 (m, 2H), 2.80-2.90 (m, 2H), 2.94 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.45 (s, 2H), 3.93-4.04 (m, 1H), 6.18 (brs, 1H), 6.77 (s, 1 H), 6.90 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.10 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 7.67 (ddd, J = 8.6, 4.5, 2.1 Hz, 1H), 7.83-7.95 (m, 2H); ESI/APCI MS m/z 416 [M+H]+.
【0060】
実施例31と同様の手法を用いて、実施例32から47の化合物を得た。
【0061】
【表2−1】

【0062】
【表2−2】

【0063】
【表2−3】

【0064】
【表2−4】

【0065】
実施例48:3-クロロ-4-フルオロ-N-{1-[(1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミドの合成
工程48−1:工程1−3で得られた化合物(1.25 g)のDMF(20 mL)溶液に氷冷下、NaH(0.29 g)を加え、30分間攪拌した。同温にてMeI(1.12 g)を加えた後、室温にて12時間攪拌した。水を加えた後、EtOAcにて3回抽出した。合わせた有機層を水及び飽和食塩水にて順次洗浄し、MgSO4にて乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:EtOAc/ヘキサン = 30/70〜50/50; v/v)にて精製し、1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-カルボニトリル(0.94 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.64-2.73 (m, 2H), 2.92-3.04 (m, 2H), 3.37 (s, 3H), 7.21-7.23 (m, 1H), 7.26-7.29 (m, 1H), 7.31-7.34 (m, 1H); EI MS m/z 186 [M]+.
工程48−2:工程1−4と同様の手法を用いて、工程48−1で得られた化合物(0.92 g)より1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-カルバルデヒド(0.93 g, 淡黄色油状)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.69-2.75 (m, 2H), 3.00-3.06 (m, 2H), 3.45 (s, 3H), 7.35-7.40 (m, 1H), 7.51-7.53 (m, 1H), 7.54-7.57 (m, 1H), 10.02 (s, 1H); EI MS m/z 189 [M]+.
工程48−3:工程48−2で得られた化合物(0.93 g)、tert-ブチル ピペリジン-4-イルカルバメート(0.82 g)及びAcOH(0.27 g)のCHCl3溶液(20 mL)に室温にてNaBH(OAc)3(1.30 g)を加え、室温にて12時間攪拌した。飽和NaHCO3水溶液を加えた後、水層と有機層を分離した。水層をCHCl3にて3回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(クロマトレックスNH、移動相:EtOAc/ヘキサン = 50/50; v/v)にて精製し、tert-ブチル {1-[(1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}カルバメート(0.78 g, 無色アモルファス)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.37-1.44 (m, 2H), 1.45 (s, 9H), 1.84-1.97 (m, 2H), 2.07-2.13 (m, 2H), 2.60-2.68 (m, 2H), 2.75-2.84 (m, 2H), 2.85-2.91 (m, 2H), 3.36 (s, 3H), 3.42-3.55 (m, 3H), 4.44 (brs, 1H), 6.91-6.98 (m, 2H), 7.09 (d, J = 7.3 Hz, 1H); ESI/APCI MS m/z 374 [M+H]+.
工程48−4:工程1−6と同様の手法を用いて、工程48−3で得られた化合物(0.77 g)より、7-[(4-アミノピペリジン-1-イル)メチル]-1-メチル-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(0.57 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.33-1.45 (m, 2H), 1.76-1.82 (m, 2H), 2.00-2.07 (m, 2H), 2.58-2.67 (m, 2H), 2.66-2.71 (m, 1H), 2.79-2.85 (m, 2H), 2.86-2.90 (m, 2H), 3.37 (s, 3H), 3.48 (s, 2H), 6.95 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.98 (s, 1H), 7.09 (d, J = 7.3 Hz, 1H); ESI/APCI MS m/z 274 [M+H]+.
工程48−5:実施例31と同様の手法を用いて、工程48−4で得られた化合物(200 mg)及び3-クロロ-4-フルオロ安息香酸(141 mg)より、表題化合物(183 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.51-1.58 (m, 2H), 1.98-2.05 (m, 2H), 2.18 (t, J = 10.8 Hz, 2H), 2.60-2.68 (m, 2H), 2.83-2.91 (m, 4H), 3.36 (s, 3H), 3.50 (s, 2H), 3.94-4.02 (m, 1H), 5.89 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.96-6.99 (m, 1H), 7.09 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 7.63 (ddd, J = 8.6, 4.5, 2.1 Hz, 1H), 7.81 (dd, J = 6.9, 2.3 Hz, 1H); ESI/APCI MS m/z 430 [M+H]+.
【0066】
実施例49:3-クロロ-4-フルオロ-N-({1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}メチル)ベンズアミドの合成
工程49−1:工程48−3と同様の手法を用いて、工程1−4で得られた化合物(0.87g)及びtert-ブチル (ピペリジン-4-イルメチル)カルバメート(0.88 g)より、tert-ブチル ({1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}メチル)カルバメート(0.68 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.20-1.31 (m, 2H), 1.43 (s, 9H), 1.43-1.45 (m, 1H), 1.61-1.67 (m, 2H), 1.88-1.98 (m, 2H), 2.60-2.67 (m, 2H), 2.83-2.90 (m, 2H), 2.90-2.98 (m, 2H), 2.99-3.05 (m, 2H), 3.42 (s, 2H), 4.56-4.63 (m, 1H), 6.73 (s, 1H), 6.91 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.86 (s, 1H); ESI/APCI MS m/z 374 [M+H]+.
工程49−2:工程1−6と同様の手法を用いて、工程49−1で得られた化合物(0.66g)より、7-{[4-(アミノメチル)ピペリジン-1-イル]メチル}-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(0.35 g, 無色アモルファス)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.17-1.30 (m, 2H), 1.27-1.33 (m, 1H), 1.66-1.73 (m, 2H), 1.90-1.97 (m, 2H), 2.56-2.60 (m, 2H), 2.61-2.66 (m, 2H), 2.85-2.92 (m, 2H), 2.92-2.97 (m, 2H), 3.42 (s, 2H), 6.76 (s, 1H), 6.92 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.16 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 274 [M+H]+.
工程49−3:実施例31と同様の手法を用いて、工程49−2で得られた化合物(211 mg)及び3-クロロ-4-フルオロ安息香酸(145 mg)より、表題化合物(120 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.29-1.40 (m, 2H), 1.59-1.67 (m, 1H), 1.68-1.74 (m, 2H), 1.92-2.00 (m, 2H), 2.58-2.65 (m, 2H), 2.86-2.91 (m, 2H), 2.91-2.96 (m, 2H), 3.30-3.37 (m, 2H), 3.42 (s, 2H), 6.07-6.13 (m, 1H), 6.70 (s, 1H), 6.90 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 7.45 (brs, 1H), 7.64 (ddd, J = 8.4, 4.5, 2.3 Hz, 1H), 7.82 (dd, J = 7.1, 2.1 Hz, 1H); ESI/APCI MS m/z 430 [M+H]+.
【0067】
実施例50:3-メトキシ-N-{1-[2-(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミドの合成
工程50−1:NaNH2添加済みPh3PCH2OMe・Br(4.97 g)とTHF(20 mL)の混合物を氷冷下10分間攪拌した。この混合物に工程1−4にて得られた化合物(1.00 g)のTHF(80 mL)溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温にて4時間攪拌した。飽和NaHCO3水溶液を加え、EtOAcにて1回、CHCl3にて2回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水にて洗浄後、MgSO4にて乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:EtOAc/ヘキサン = 20/80〜40/60; v/v)にて精製し、7-(2-メトキシエテニル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(0.60 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.48-2.76 (m, 2H), 2.79-3.07 (m, 2H), 3.59-3.84 (m, 3H), 5.10-7.18 (m, 5H), 8.17-8.76 (m, 1H); ESI/APCI MS m/z 204 [M+H]+.
工程50−2:工程50−1にて得られた化合物(590 mg)のTHF(11.8 mL)溶液に氷冷下、濃HCl(8.9 mL)を加え、同温にて1時間攪拌した。飽和K2CO3を加え、CHCl3にて抽出した。有機層をMgSO4にて乾燥し、減圧下濃縮して(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)アセトアルデヒド(0.51 g, 無色アモルファス)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.60-2.70 (m, 2H), 2.91-3.01 (m, 2H), 3.57-3.76 (m, 2H), 6.58-7.20 (m, 3H), 9.72-9.77 (m, 1H); EI MS m/z 189 [M]+.
工程50−3:tert-ブチル 4-アミノピペリジン-1-カルボキシレート(78.0 g)及び3-メトキシ安息香酸(65.2 g)のDMF(780 mL)懸濁液にEt3N(130 mL)、HOBt・H2O(71.7 g)及びEDC・HCl(82.8 g)を加え、室温にて12時間攪拌した。H2O(1.56 L)を加え、水浴中1.5時間攪拌した後、固体を濾取し、tert-ブチル 4-[(3-メトキシベンゾイル)アミノ]ピペリジン-1-カルボキシレート(126 g, 無色固体)を得た。上記手法で得られた化合物のEtOAc(900 mL)懸濁液に、4 M HCl/EtOAc溶液(900 mL)を加え、室温にて4時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、残渣にCHCl3(2.00 L)及び2 M NaOH水溶液(1.00 L)を加え15分間攪拌した。水層を有機層と分離後、CHCl3(800 mL)にて2回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮し、3-メトキシ-N-ピペリジン-4-イルベンズアミド(87.8 g, 淡黄色固体)を得た。
1H NMR (200 MHz, CDCl3, δ): 1.30-1.52 (m, 2H), 1.97-2.12 (m, 2H), 2.75 (dt, J = 12.0, 2.4 Hz, 2H), 3.11 (dt, J = 12.8, 3.5 Hz, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.96-4.18 (m, 1H), 6.00 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.98-7.07 (m, 1H), 7.21-7.38 (m, 3H); ESI MS m/z 235, [M+H]+.
工程50−4:工程48−3と同様の手法を用いて、工程50−2で得られた化合物(0.51 g)及び工程50−3で得られた化合物(0.57 g)より、表題化合物(0.22 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.50-1.62 (m, 2H), 2.00-2.11 (m, 2H), 2.19-2.27 (m, 2H), 2.54-2.65 (m, 4H), 2.72-2.78 (m, 2H), 2.88-2.99 (m, 4H), 3.84 (s, 3H), 3.96-4.06 (m, 1H), 5.96 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.59 (s, 1H), 6.79-6.86 (m, 1H), 7.02 (dd, J = 8.3, 1.8 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.22-7.28 (m, 1H), 7.29-7.36 (m, 2H), 7.80 (s, 1H); ESI/APCI MS m/z 408 [M+H]+.
【0068】
実施例51:3-クロロ-4-フルオロ-N-{1-[1-(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミドの合成
工程51−1:工程1−4で得られた化合物(1.25 g)のTHF溶液(150 mL)に3 M MeMgBr Et2O溶液を加え、室温にて1時間攪拌した。飽和NH4Cl水溶液を加え、1時間攪拌した後、有機層を分離した。水層をCHCl3にて3回抽出し、合わせた有機層をMgSO4にて乾燥した。減圧下濃縮した後、残渣にIPEを加え、10分間攪拌した。固体を濾取し、7-(1-ヒドロキシエチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(1.02 g, 淡黄色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.48 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 2.59-2.67 (m, 2H), 2.91-3.01 (m, 2H), 4.81-4.91 (m, 1H), 6.76-6.79 (m, 1H), 6.96-7.00 (m, 1H), 7.13-7.16 (m, 1H), 7.57 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 192 [M+H]+.
工程51−2:工程51−1で得られた化合物(1.00 g)のCHCl3(120 mL)溶液にMnO2(13.6 g)を加え、室温にて4時間した。反応液をセライト濾過した後、反応液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜10/90; v/v)にて精製し、7-アセチル-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(0.58 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.56-2.62 (m, 3H), 2.62-2.72 (m, 2H), 2.99-3.09 (m, 2H), 7.18-7.32 (m, 1H), 7.34-7.40 (m, 1H), 7.51-7.65 (m, 1H), 8.18 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 190 [M+H]+.
工程51−3:tert-ブチル 4-アミノピペリジン-1-カルボキシレート(35.0 g)のCHCl3(350 mL)溶液に、氷冷下、Et3N(122 mL)、3-クロロ-4-フルオロベンゾイルクロリド(37.1 g)を加え、同温下、1.5時間攪拌した。飽和NaHCO3水溶液を加え、CHCl3にて3回抽出した。合わせた有機層をMgSO4乾燥した後、減圧下濃縮し、tert-ブチル 4-[(3-クロロ-4-フルオロベンゾイル)アミノ]ピペリジン-1-カルボキシレート(62.0 g)を得た。得られた化合物のEtOAc(300 mL)懸濁液に4 M HCl/EtOAc溶液(300 mL)を加え、室温にて4時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣に1 M NaOH水溶液(300 mL)を加え、CHCl3にて抽出にて3回抽出した。合わせた有機層をMgSO4にて乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をEtOAc/ヘキサン(200 mL, 1/1; v/v)に懸濁し、1時間攪拌後、固体を濾取し、3-クロロ-4-フルオロ-N-ピペリジン-4-イルベンズアミド(37.7 g, 無色固体)を得た。
1H NMR (200 MHz, CDCl3, δ): 1.30-1.53 (m, 2H), 1.94-2.12 (m, 2H), 2.75 (td, J = 12.0, 2.4 Hz, 2H), 3.10-3.14 (m, 2H), 3.93-4.17 (m, 1H), 5.87-6.09 (m, 1H), 7.19 (t, J = 8.6 Hz, 1H), 7.59-7.70 (m, 1H), 7.83 (dd, J = 7.0, 2.2 Hz, 1H); ESI MS m/z 257, [M+H]+.
工程51−4:工程51−2で得られた化合物(206 mg)、工程51−3で得られた化合物(560 mg)及びAcOH(327 mg)のMeOH溶液(15 mL)に室温にてNaBH3CN(274 mg)を加え、12時間還流した。室温まで冷却した後、NaBH3CN(274 mg)を加え、72時間還流した。飽和NaHCO3水溶液を加えた後、水層と有機層を分離した。水層をCHCl3にて3回抽出した。合わせた有機層をMgSO4にて乾燥後、減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー[(シリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜20/80; v/v)及び(クロマトレックスNH、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜10/90; v/v)]にて順次精製し、表題化合物(7 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.30-1.37 (m, 3H), 1.44-1.64 (m, 2H), 1.89-2.20 (m, 4H), 2.60-2.67 (m, 2H), 2.72-3.07 (m, 2H), 2.90-2.97 (m, 2H), 3.30-3.37 (m, 1H), 3.88-3.98 (m, 1H), 6.10 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.73 (s, 1H), 6.87-6.92 (m, 1H), 7.09 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 7.66 (ddd, J = 8.7, 4.6, 2.3 Hz, 1H), 7.79 (brs, 1H), 7.85 (dd, J = 6.9, 2.3 Hz, 1H); ESI/APCI MS m/z 430 [M+H]+.
【0069】
実施例52:N-{1-[(8-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-3-メトキシベンズアミドの合成
工程52−1:工程1−4で得られた化合物(1.00 g)のMeOH(10.0 mL)溶液に氷冷下、NaBH4(216 mg)を加え、同温下30分間攪拌した。飽和NaHCO3水溶液を加え、減圧下濃縮した後、残渣にH2Oを加え、CHCl3にて3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水にて洗浄し、Na2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜10/90; v/v)にて精製し、7-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(550 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.56-2.61 (m, 2H), 2.92 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 4.62 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 6.76 (s, 1H), 6.94 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.90 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 178 [M+H]+.
工程52−2:工程52−1で得られた化合物(670 mg)のCHCl3(30.0 mL)溶液に、氷冷下Ac2O(536 μL)、DMAP(20.0 mg)及びEt3N(1.05 mL)を加え室温に45分間攪拌した。飽和NaHCO3水溶液を加え、CHCl3にて3回抽出し有機層を合わせNa2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーシリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜10/90; v/v)にて精製し(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル アセテート(767 mg, 淡黄色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.09 (s, 3H), 2.61-2.65 (m, 2H), 2.96 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 5.04 (s, 2H), 6.74 (s, 1H), 6.96-6.99 (m, 1H), 7.15 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.72 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 220 [M+H]+.
工程52−3:工程52−2で得られた化合物(958 mg)のCH3CN(22.0 mL)溶液に、1-フルオロ-4-ヒドロキシ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタナ ビステトラフルオロボレート(1.91 g)を加え室温にて3日間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜10/90; v/v)にて精製し、固体A及び固体Bを得た。固体AのMeOH(2.00 mL)溶液にK2CO3(69.0 mg)を加え、室温にて2時間攪拌した。H2Oを加え、減圧下濃縮した後、CHCl3にて3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水にて洗浄し、Na2SO4にて乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 60 N、移動相:MeOH/CHCl3 = 0/100〜15/85; v/v)にて精製し、8-フルオロ-7-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(37.0 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.63-2.66 (m, 2H), 2.98-3.01 (m, 2H), 4.74 (s, 2H), 6.95 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.02 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.53 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 196 [M+H]+.
同様にして固体Bより6-フルオロ-7-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(76.0 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.60-2.62 (m, 2H), 2.94 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 4.72 (s, 2H), 6.79 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 7.38 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 196 [M+H]+.
工程52−4:工程52−3で得られた8-フルオロ-7-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(39.0 mg)のCHCl3(6.00 mL)及びAcetone(6.00 mL)混合溶液にMnO2(152 mg)を加え、室温にて2日間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、濾液を減圧下濃縮し、8-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-カルバルデヒド(40.0 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.68-2.71 (m, 2H), 3.06-3.09 (m, 2H), 7.09 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.60 (brs, 1H), 10.29 (s, 1H); ESI/APCI MS m/z 194 [M+H]+.
工程52−5:工程1−5と同様の手法を用いて、工程52−4で得られた化合物(40.0 mg)及び3-メトキシ-N-(ピペリジン-4-イル)ベンズアミド(73.0 mg)より、固体を得た。得られた固体に室温にてIPAを加え、1時間攪拌した。固体を濾取し、IPA及びヘキサンにて洗浄して表題化合物(8.0 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.47-1.60 (m, 2H), 2.00-2.05 (m, 2H), 2.20-2.31 (m, 2H), 2.63-2.67 (m, 2H), 2.87 (brs, 2H), 2.99 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.57 (brs, 2H), 3.84 (s, 3H), 3.99 (brs, 1H), 5.91 (brs, 1H), 6.90-6.98 (m, 2H), 7.02 (dd, J = 8.3, 1.8 Hz, 1H), 7.22-7.25 (m, 1H), 7.30-7.33 (m, 2H), 7.51 (brs, 1H); ESI/APCI MS m/z 412 [M+H]+.
【0070】
実施例53:N-{1-[(6-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-3-メトキシベンズアミドの合成
工程53−1:工程52−4と同様の手法を用いて、工程52−3で得られた6-フルオロ-7-(ヒドロキシメチル)-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(76.0 mg)より6-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-カルバルデヒド(32.0 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 2.63-2.66 (m, 2H), 3.02-3.05 (m, 2H), 7.03 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.54 (brs, 1H), 10.30 (s, 1H); ESI/APCI MS m/z 194 [M+H]+.
工程53−2:工程52−5と同様の手法を用いて、工程53−1で得られた化合物(32.0 mg)及び3-メトキシ-N-(ピペリジン-4-イル)ベンズアミド(58.0 mg)より表題化合物(38.0 mg, 無色固体)を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, δ): 1.51-1.62 (m, 2H), 2.00-2.05 (m, 2H), 2.21-2.28 (m, 2H), 2.59-2.63 (m, 2H), 2.81-2.88 (m, 2H), 2.93 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.52 (brs, 2H), 3.84 (s, 3H), 4.00 (brs, 1H), 5.97 (brs, 1H), 6.76 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.02 (dd, J = 8.7, 2.3 Hz, 1H), 7.22-7.26 (m, 1H), 7.30-7.34 (m, 2H), 7.42-7.46 (m, 1H); ESI/APCI MS m/z 412 [M+H]+.
【0071】
【表3−1】



【0072】
【表3−2】

【0073】
【表3−3】

【0074】
【表3−4】

【0075】
【表3−5】

【0076】
【表3−6】

【0077】
実施例54(MCH1Rカルシウム評価試験)
FDSSアッセイは細胞内のカルシウム濃度を測定することが可能であり、このカルシウム濃度を指標としてGq共役受容体活性を評価することができる。例えば、Gq共役受容体に対して被検体が拮抗物質、逆作動性物質又は作動性物質のいずれかであるかを決定することができる。FDSS6000(商標)システム(浜松ホトニクス株式会社)はハイスループットスクリーニング用の細胞内カルシウムの測定等、機能性に基づく評価を実施するように設計されている。カルシウム指示薬(Fluo4等)を細胞に取り込ませることにより、Gq共役受容体の活性化による細胞内カルシウム遊離を蛍光で測定することができる。一方、Gi及びGo共役受容体の活性化はカルシウムシグナル経路と関連していないため、このアッセイでは測定することができない。
蛍光画像プレートリーダーシステムを使用して、96穴マイクロプレート又は384穴マイクロプレートで細胞内の蛍光の迅速で継時的な測定が可能となった。高感度、高精度、秒単位での全ウェル中の蛍光の同時測定は、FDSS6000(商標)によって行うことができる。Gq共役受容体の活性化後、数秒以内に生じる細胞内カルシウムの流れのモニタリング等、細胞における機能的解析にこのシステムは理想的である。
試験方法
試験前日、96穴マイクロプレートに1ウェル当たり3×104個の非内在性、活性型のMCH1Rを安定発現させた細胞を播種した。培養には1ウェル当たり100 μLの培地(10% ウシ胎仔血清、2 mMのグルタミン、1 mMのピルビン酸ナトリウム及び0.5 mg/mLのG418を含むダルベッコ改変イーグル培地、pH = 7.4)を用いた。試験当日、培地を除去し、2 μMのFluo4-AM及び0.04%のPluronicF127を含む評価用緩衝液{20 mMのHEPES、0.5 mMのプロベネシド、0.05 mg/mLのアマランス及び0.2%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むハンクス平衡塩溶液、pH = 7.4}を1ウェル当たり100 μL添加して37 ℃、5% CO2インキュベーター内で1時間培養した。その後、緩衝液を除去し、新たにそれぞれの濃度の試験化合物を含む評価用緩衝液を1ウェル当たり150 μL添加して37 ℃、5% CO2インキュベーター内で30分培養した。それぞれの濃度のMCHを含む評価用緩衝液を1ウェル当たり50 μL添加し、MCHによって誘起された細胞内カルシウム濃度の一過性変化をFDSS6000(商標)によりEx. 488 nm、Em. 530で180秒間モニターした。被検体の拮抗活性を試験する場合、最終濃度が50 nMとなる様にMCHを添加した。被検体の濃度を変えて抑制曲線を作製し、50 nM MCHを添加した際の細胞内カルシウムの上昇を50%抑制する被検体の濃度(IC50値)をデータ解析ソフトOrigin Ver. 6を用いて算出した。
【0078】
本発明化合物中、IC50値が50 nM以下の化合物を以下に示す。
実施例番号1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、15、18、19、23、27、28、29、30、31、32、33、35、36、37、38、39、43、46、47、51及び53。
さらに、本発明化合物の幾つかについて、IC50値を表4に示す。
【0079】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明化合物は、MCH受容体拮抗作用を有し、MCHに関連する疾患の予防薬及び治療薬、具体的には、うつ病、不安障害(全般性不安障害、外傷後ストレス障害、パニック障害、強迫性障害、社会性不安障害等)、注意欠陥障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害(パーキンソン病、てんかん、痙攣、振戦等)、薬物乱用障害、薬物依存症、性機能障害等の予防薬及び治療薬として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、
【化1】


[ここで、式(I)中、
Rは、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
1、A2及びA3は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、
Xは、C1-6アルキレン基であり、
Yは、結合手又はC1-6アルキレン基であり、
Zは、結合手又はC1-6 アルキレン基(ここで、該C1-6アルキレン基は、1個のアリール基で置換されていてもよい。)であり、
Wは、結合手又は酸素原子であり、
Cyは、アリール基又はヘテロアリール基{ここで、該アリール基又は該ヘテロアリール基は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基(ここで、該C1-6アルキル基又は該C1-6アルコキシ基は、1から3個のハロゲン原子で置換されていてもよい。)及びC2-6アルカノイル基からなる群から選ばれる同一又は異なる置換基を1から3個有していてもよい。}である。]で表される化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬。
【請求項2】
式(I)中、
Rが水素原子であり、
1、A2及びA3が水素原子であり、
XがC1-6アルキレン基であり、
Yが結合手であり、
Zが結合手又はC1-6 アルキレン基(ここで、該C1-6アルキレン基は、1個のアリール基で置換されていてもよい。)であり、
Wが結合手又は酸素原子であり、
Cyがフェニル基又はピリジル基(ここで、該フェニル基又は該ピリジル基は、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基(ここで、該C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基は、1から3個のハロゲン原子で置換されてもよい。)及びC2-6アルカノイル基からなる群から選ばれる同一又は異なる置換基を1から3個有していてもよい。)で表される請求項1に記載の化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬。
【請求項3】
式(I)中、
Rが水素原子であり、
1、A2及びA3が水素原子であり、
Xがメチレン基(ここで、該メチレン基は、メチル基で置換されていてもよい。)であり、
Yが結合手であり、
Zが結合手又はメチレン基であり、
Wが結合手又は酸素原子であり、
Cyがフェニル基(ここで、該フェニル基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及びC2-6アルカノイル基からなる群から選ばれる同一又は異なる置換基を1から3個有していてもよい。)で表される請求項1に記載の化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬。
【請求項4】
3-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,5-ジフルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,4-ジフルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-クロロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-メチル-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,5-ジクロロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,4-ジクロロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-フルオロ-3-メチル-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
3-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
3,5-ジメトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-2,2-ジフェニルアセトアミド、
4-クロロ-3-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-ブロモ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-フルオロ-5-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-クロロ-4-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-アセチル-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3,4,5-トリフルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-フルオロ-3-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-クロロ-5-フルオロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
3-シアノ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
5-クロロ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ピリジン-3-カルボキサミド、
3-クロロ-5-メトキシ-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
4-クロロ-3-メチル-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、
2-(3-クロロ-4-フルオロフェノキシ)-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}アセトアミド、
2-(3-クロロフェノキシ)-N-{1-[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}アセトアミド、
3-クロロ-4-フルオロ-N-{1-[1-(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]ピペリジン-4-イル}ベンズアミド、及び
N-{1-[(6-フルオロ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]ピペリジン-4-イル}-3-メトキシベンズアミド
から選ばれる請求項1に記載の化合物、その医薬上許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害、躁病、躁うつ病、統合失調症、気分障害、ストレス、睡眠障害、発作、記憶機能障害、認知障害、認知症、健忘、せん妄、肥満症、摂食障害、食欲障害、過食症、大食症、拒食症、糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、異常脂質血症、心筋梗塞、運動障害、薬物乱用障害、薬物依存症又は性機能障害の予防又は治療薬。





【公開番号】特開2011−219467(P2011−219467A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63565(P2011−63565)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】