説明

7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを生成する方法

本発明は、7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン、ジブロモブタン、及び少なくとも1つの塩基を混合し反応混合物を形成させ;反応混合物を過熱し;反応混合物を冷却し;そして反応混合物から7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを単離することによる、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを合成することを包含する。本発明はまた、反応の間に相間移動触媒を用いることも包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年2月5日付けで出願された米国特許仮出願第60/542,412号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、ニート(neat)条件下でのアリピプラゾールの合成における中間体である、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリル(BBQ)を、相間移動触媒を用いて、或いは低沸点溶媒を用いて生成するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
統合失調症は、中枢神経系におけるドーパミン作動神経系の過剰な神経伝達活性により引き起こされる最も一般的なタイプの精神病である。中枢神経系におけるドーパミン作動性レセプターの神経伝達をブロックする活性を有する多くの薬物が開発されてきた。例えば、開発された薬物の中では、クロルプロマジンなどのフェノチアジン系化合物;ハロペリドールなどのブチロフェノン系化合物;及びスルピリドなどのベンザミド系化合物がある。これらの薬物は、幻覚、妄想、興奮などの統合失調症の急性期におけるいわゆる陽性症状を改善するために使用される。しかし、統合失調症を処置するための多くの薬物は、無気力、感情の落ち込み、ハイポサイコーシス(hypopsychosis)などの統合失調症の慢性期に観察されるいわゆる陰性症状の改善に対しては効果的でない。現在使用されている薬物は、静座不能症、失調症、パーキンソン症候群、及び遅発性ジスキネジー、などの所望されない副作用を生み出してきた。これらの副作用は、線条体におけるドーパミン作動性レセプターの神経伝達をブロックすることにより引き起こされる。
【0004】
アリピプラゾールは抗精神薬である。アリピプラゾールは、ドーパミンD2レセプター、ドーパミンD3レセプター、セロトニン5−HT1Aレセプター及びセロトニン5−HT2Aレセプターに対して高い親和性を示し、ドーパミンD4レセプター、セロトニン5−HT2Cレセプター、セロトニン5−HT7レセプター、α1−アドレナリンレセプター及びヒスタミンH1レセプターに対して中程度の親和性を示し、そしてセロトニン再取り込み部位に対して中程度の親和性を示す。また、アリピプラゾールはコリン作動性ムスカリン性(cholinergic muscarinic)レセプターに対してはそれほど親和性を有さない。統合失調症に有効な他の薬剤と同様に、アリピプラゾールの作用のメカニズムは知られていない。しかし、アリピプラゾールの有効性は、D2及び5−HT1Aレセプターにおける部分的なアゴニスト活性及び5−HT2Aレセプターにおけるアンタゴニスト活性の組み合わせによって媒介されると提案されてきた。統合失調症の陰性症状の改善に効果的で且つ陽性症状の改善に効果的な薬剤が、なお強く望まれており、その薬剤が所望されない副作用を減少させることができることが、さらに強く望まれる。
【0005】
米国特許第5,006,528号は、塩基性条件における水中でのBBQの調製のための方法を提供する。反応混合物から水を取り除くことは、しばしば困難であり得る。従って、本発明は、アリピプラゾールの合成において一般的に使用される中間体であるBBQを合成する方法を包含する。アリピプラゾールは、オランザピン又はジプラシドン(ziprazidone)などの他の抗精神病薬よりも安全である。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリル(BBQ)を調製するための方法を包含する。本発明の1つの実施態様は、7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン(THQ)、ジブロモブタン(DBB)、及び少なくとも1つの塩基を混合し、反応混合物を形成させること;反応混合物を、反応が生じるのに適した温度まで十分な時間加熱すること;及びBBQを単離することを含んで成る方法により、ニート条件下で7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリル(BBQ)を合成することを包含する。或いは、塩基の必要なく、THQの塩を使用することもできる。
【0007】
THQの塩を使用する場合、THQはBBQの合成前に調製及び単離することができ、又はBBQの合成手順の最初のステップとして調製することができる。THQ塩は、THQが完全に中和されるまで有機溶媒中でTHQと少なくとも1つの塩基を反応させること;及び、溶媒の除去によりTHQ塩を単離することにより、典型的に調製することができる。
【0008】
別の実施態様は、有機溶媒中のTHQ及び少なくとも1つの塩基とDBBとを混合して反応混合物を形成すること;反応を生じさせるのに適切な時間、適切な温度まで反応混合物を加熱すること;及びBBQを単離することを含んで成る方法により、BBQを合成することを包含する。或いは、塩基の必要を軽減して、THQの塩を使用することができる。有機溶媒は、好ましくは低沸点有機溶媒である。
【0009】
本発明の別の実施態様は、相間移動触媒(PTC)を用いてBBQを合成することを包含する。典型的には、この方法は、THQ、DBB、少なくとも1つの水非混和性有機溶媒、少なくとも1つの塩基及び少なくとも1つの相間移動触媒を混合して反応混合物を形成すること;反応を生じさせるのに十分な時間、適切な温度まで反応混合物を加熱すること;及びBBQを単離することを含んで成る。この方法は、反応混合物に水を添加することを更に含むことができる。或いは、THQの塩を使用して、塩基の必要性を軽減することができる。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、反応条件下で、7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン(THQ)を反応させて、反応収率及び精製の容易性を向上させることによる、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリル(BBQ)の改善された合成を包含する。特に、本発明は、相間移動触媒を用いた、又は精製ステップが必要ない少なくとも1つの低沸点溶媒を用いた、ニート反応条件下でのBBQの合成を対象とする。
【0011】
米国特許公開第2003/176703号はTHQの調製を開示し、これは本明細書中で引用文献として組み込まれている。
【0012】
典型的には、ニート反応条件下で、BBQは、試薬に溶媒を全く添加せずに合成されるが、それはちょうどワークアップ(work−up)段階までである。すなわち、反応が起こった後は、溶媒は反応混合物に加えられる。ニート条件下でBBQを合成する方法は、THQ、DBB、及び少なくとも1つの塩基を混合して反応混合物を形成し、反応を生じさせるのに適切な時間、適切な温度まで反応混合物を加熱すること;及びBBQを単離することを含んで成る。
【0013】
DBBは、THQと反応するのに十分な量を加えるべきである。好ましくは、THQ対DBBの比率は、約1:1〜約1:10モル当量のTHQ対DBBである。典型的には、反応温度は、約50℃〜約140℃である。好ましくは、反応温度は、約130℃〜約140℃であり、更に好ましくはニート反応条件下での反応温度は約140℃である。当業者に一般的に知られているように、反応時間は反応が完了するのに十分であるべきであり、それはスケールと混合手順に依存し得る。典型的に、反応時間は、約45分〜10時間である。好ましくは、塩基は、K2CO3、NaOH、又はKOHである。或いは、THQの塩は、塩基を必要としない方法において使用することができる。
【0014】
更に、本発明の別の実施態様は、少なくとも1つの有機溶媒、好ましくは低沸点有機溶媒、少なくとも1つの塩基及びTHQとDBBとを混合し反応混合物を形成すること;反応を生じさせるのに適切な時間、適切な温度まで反応混合物を加熱すること;及びBBQを単離することによる、BBQの合成を包含する。好ましくは、THQ対DBBの比率は、約1:1〜約1:10モル当量のTHQ対DBBである。好ましくは、低沸点有機溶媒は、エタノール、トルエン、ヘプタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びアセトニトリルから成る群から選択される。典型的には、反応温度は、約50℃〜約140℃である。好ましくは、反応温度は、約80℃である。
【0015】
当業者に一般的に知られているように、反応時間は反応が完了するのに十分であるべきであり、それはスケールと混合手順に依存し得る。典型的に、反応時間は、約45分〜10時間である。好ましくは、反応時間は、約140分である。或いは、塩基の必要なく、THQの塩を使用することができる。
【0016】
更に、本発明の別の実施態様は、相間移動触媒(PTC)を用いたBBQの調製を包含する。典型的には、本方法はTHQ、BBQ、少なくとも1つの塩基、少なくとも1つの水非混和性有機溶媒、及び少なくとも1つの相間移動触媒を混合して反応混合物を形成すること;反応を生じさせるのに十分な時間、適切な温度まで反応混合物を加熱すること;及びBBQを単離することを含んで成る。本方法は、反応混合物に水を添加することを更に含むことができる。或いは、塩基の必要なく、THQの塩を使用することができる。
【0017】
DBBの量は、THQと反応するのに十分であるべきである。好ましくは、その量は、約1:1〜約1:5モル当量のTHQ対BBQであり、更に好ましくは、約1〜約3モル当量であるべきである。当業者は、適切な水非混和性溶媒を容易に決定することができる。水非混和性溶媒としては、トルエン、ヘプタン、又はヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、反応温度は、約50℃〜約140℃である。当業者に一般的に知られているように、反応時間は反応が完了するのに十分であるべきであり、それはスケールと混合手順に依存し得る。典型的に、反応時間は、約45分〜10時間である。
【0018】
典型的に、化合物を反応させる際に、反応物質を、水非混和性溶媒などの最初の溶媒中に溶解することができ、次に水を添加する。本発明の反応において、水非混和性溶媒及び水は二相系を形成する。2つの相の間の界面で反応が起こり得るので、そのような界面反応の収率は、相間移動触媒(PTC)の使用により非常に増加し得る。
【0019】
化合物のいくつかのクラスは、相間移動触媒として作用することが可能であることが知られている。例えば、2つ例を挙げると、4級アンモニウム化合物及びホスホニウム化合物がある。相間移動触媒としては、臭化テトラブチルアンモニウム;水酸化テトラブチルアンモニウム;TEBA;Aliquat(登録商標)336(Aldrich Chemical Company,Inc(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)により製造)などの、塩化トリカプリリルメチルアンモニウム;硫酸ドデシル、ナトリウム塩;硫酸水素テトラブチルアンモニウム;臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム;又は臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、相間移動触媒としては、臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム又は臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられる。典型的に、相間移動触媒は、THQに対して約0.1〜約5モル当量の量で存在する。
【0020】
THQの塩を使用する場合、THQはBBQの合成前に調製及び単離することができ、又はBBQの合成手順の最初のステップとして調製することができる。THQ塩は、THQが完全に中和されるまで有機溶媒中でTHQと少なくとも1つの塩基を反応させること;及び、溶媒の除去によりTHQ塩を単離することにより、典型的に調製される。有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メタノール、THF及びアセトニトリルから成る群から選択される。当業者であれば、ほとんど又は全く実験をしなくても、THQが完全に中和される時、及び溶媒を除去するための方法を容易に決定することができる。典型的な塩基としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Na2CO3、K2CO3又はNaHCO3が挙げられるが、これらに限定されない。塩基は、THQに対して化学量論的量を加える。好ましくは、1当量のTHQに対して1当量の塩基を加える。一般的に、反応温度は約50℃である。
【0021】
上記の方法により得られるBBQの単離は、反応混合物を室温まで冷やし、そして反応混合液をワークアップすることを含んで成る。反応混合物をワークアップすることは、反応混合物に少なくとも1つの有機溶媒及び少なくとも1つの塩基性水溶液を添加すること;少なくとも1つの有機溶媒を用いて産物を抽出すること;抽出物を回収すること;抽出物を乾燥させること;及び抽出物の体積を減少させてBBQを得ること、を含んで成る。十分な水性塩基性溶液を反応混合物に添加し、任意の未反応THQを中和するべきである。このワークアップにおいて使用する典型的な塩基としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Na2CO3、K2CO3、又はNaHCO3が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、塩基はNaOH、KOH又はK2CO3である。
【0022】
反応混合物は、有機溶媒を用いて抽出する。有機溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸t−ブチル、MTBE、THF、クロロベンゼン又は1,1,2,2−テトラブロモエタン(TBE)が挙げられるが、これらに限定されない。その後、有機性抽出物を回収し、乾燥させ、そして当業者に一般的に知られている技術を用いた蒸発により、有機溶媒を除去する。
【0023】
任意に、上記の方法で得られるBBQを結晶化することができる。典型的に、エタノール又はヘキサンなどの少なくとも1つの適切な有機溶媒から、BBQを結晶化する。好ましくは、エタノール及びヘキサン混合物からBBQを再結晶化する。
【0024】
例えば、上記の方法で調製したBBQを、米国特許第5,006,528号に従った及び同一出願人の米国特許出願第[代理人整理番号01662/78204](2005年2月7日に出願)に従った、アリピプラゾールの調製に使用することができる。これらは、本明細書中で引用文献として組み込まれている。
【0025】
いくつかの好ましい実施態様との関連で本発明を説明したので、他の実施態様は、本明細書を考慮することにより当業者に対して明らかになるだろう。本発明の方法を詳細に説明した下記の実施例に言及することにより、本発明を更に規定する。本発明の範囲から逸脱することなく、材料及び方法の両方に対する多くの変更が可能であることが、当業者にとって明らかであろう。
【実施例】
【0026】
HPLC解析を下記のように実施した:
希釈剤中のBBQの20μlサンプル(0.4〜0.5mg/ml)を、XTerra RP18カラム(250mm×4.6mm、5μlの粒径)の中に注入した。カラム温度は30℃であった。溶離は、下記のプロファイルに従って、溶離剤A(水及びトリフルオロ酢酸、pH3.0)及び溶離剤B(100mlのトリフルオロ酢酸に対して1000mlのアセトニトリル)の混合物であった:
【表1】

【0027】
最後のデータポイントを過ぎてから5分間、カラムを作動させた。254nm波長のUV検出器を用いた。
【0028】
比較例1:BBQの合成
水(60ml)の中における7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン(THQ、1.6g、10mmol)、1,4−ジブロモブタン(DBB、21.6g、100mmol)、K2CO3(5.5g、39.8mmol)を、撹拌しながら加熱して3.5時間還流した。その後、その混合物を室温(約25℃)まで冷却し、ジクロロメタン(2×60ml)を用いて抽出し、無水Na2SO4で乾燥させ、そして蒸発により溶媒を除去した。最終産物をBBQとして同定し、HPLCにより解析を行い、そして34.5%の粗収率中に21%の7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを有することを見出した。
【0029】
実施例1:BBQのニート合成
7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン(THQ、1.6g、10mmol)、ジブロモブタン(DBB、100mmol、12ml)、K2CO3(11mmol)を、撹拌しながら4時間140℃まで加熱して還流し、その後、その反応混合物を室温(約25℃)まで冷却した。ジクロロメタン及び過剰のNaOH(50〜200%モル濃度)を含む水を、冷却した混合物に添加した。その混合物をジクロロメタンで抽出した。その後、有機相を分離し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、そして固形残留物が残るまで蒸発によって溶媒を除去した。固形残留物をヘキサン(3×5ml)を用いて粉末にし、最後の微量のDBBを取り除いた。その固体を、エタノール/ヘキサン混合物から再結晶させ、60%収率のBBQを得た。
【0030】
実施例2:THKカリウム塩を用いた、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリル(BBQ)のニート調製
当量モルの7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン(THQ)及びKOHを、THQが完全に中和されるまで、無水エタノール中で反応させた。エタノールを蒸発により除去し、残ったTHQカリウム塩(THQK塩)を乾燥させた。
【0031】
THQK塩(1g、5mmol、1当量)及びジブロモブタン(6ml、50mmol、10当量)を撹拌しながら140℃まで加熱し、1.5時間この温度を保った。ジクロロメタン(20ml)及び水(20ml)を反応混合物に加えた;その後、溶液を室温まで冷却した後、過剰のNaOH(5%)溶液を加えた。この混合物をジクロロメタンで抽出した。その後、有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして蒸発により溶媒を除去して、60%収率での固体としてほとんど混じりけのないBBQを得た(70%の純度)。
【0032】
実施例3:アセトニトリル中におけるBBQの調製
アセトニトリル(15ml)中のTHQK塩(1g、5mmol)及びジブロモブタン(0.6ml、5mmol、1当量)を、撹拌しながら81℃で140分の間還流した。溶媒を蒸発により除去し、その残留物を、わずかに過剰なNaOH(5%)を含んだ酢酸エチルと水との混合物(60ml、1:1)を用いて抽出した。反応混合物を酢酸エチルを用いて抽出し、有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして蒸発により溶媒を除去した。64%の純度で固体を得た(0.9g、62%の収率)。
【0033】
実施例4:相間移動触媒を用いたアセトニトリル中でのBBQの調製
アセトニトリル(25ml)中のTHQ(1.6g、10mmol、1当量)、DBB(3.6ml、30mmol、3当量)、K2CO3(1.7g、12mmol、1.2当量)、及び臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム(1.02g、2mmol、0.2当量)を撹拌しながら還流した。60分後、蒸発により溶媒を取り除き、残留物を、酢酸エチル(20ml)と過剰のNaOH(10ml)を含んだ水との混合物を用いて抽出した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして蒸発により溶媒を取り除いた。この反応により、出発物質であるTHQを含まない1gの産物を67%の収率(81.5%の純度)で得た。
【0034】
実施例5:臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウムを含むトルエン/水におけるBBQの調製
THQK塩(1g、5mmol、1当量)、DBB(0.6ml、5mmol、5当量)、トルエン(5ml)、水(5ml)、及び臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム(0.5g、1mmol、0.2当量)を加熱し、穏やかに還流した。3.5時間の還流後、粗反応混合物を濾過した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして蒸発により溶媒を除去して、0.9g又は60%のBBQ(82.5%の純度)を得た。
【0035】
実施例6:臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを含むトルエン/水中におけるBBQの調製
THQ(1.6g、10mmol、1当量)、DBB(3.6ml、30mmol、3当量)、K2CO3(1.7g、12mmol、1.2当量)、トルエン(8ml)、水(8ml)、及び臭化ヘキサデシルトリブチルアンモニウム(0.73g、2mmol、0.2当量)を加熱し、還流した。1.5時間後、反応混合物を濾過し、トルエンとわずかに過剰のNaOHを含む水との混合物を添加した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして蒸発により溶媒を除去した。この反応により、1.8gのBBQ(60%)(87.5%の純度)を得た。
【0036】
実施例7:臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウムを含むトルエン/水におけるBBQの調製
THQ(1.6g、10mmol、1当量)、DBB(3.6ml、30mmol、3当量)、K2CO3(1.7g、12mmol、1.2当量)、トルエン(8ml)、水(8ml)、及び臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム(1.02g、2mmol、0.2当量)を加熱し、還流した。1時間後、反応混合物を濾過し、トルエンとわずかに過剰のNaOHを含む水との混合物を添加した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして蒸発により溶媒を除去した。この反応により、2gの固体を得て、そして熱いシクロヘキサン(40ml)から再結晶をし、50%の収率で1.5gのBBQ(85.5%の純度)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン又はその塩とジブロモブタンとを混合し、反応混合物を形成すること;
前記反応混合物を約50℃〜140℃の温度まで加熱すること;及び
前記反応混合物から7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを単離すること、
を含んで成る、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを合成するための方法。
【請求項2】
少なくとも1つの塩基を、前記反応混合物に添加することを更に含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基が、K2CO3、NaOH、及びKOHから成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン又はその塩及びジブロモブタンが、約1:1〜約1:10のモル比率で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記温度が、約130℃〜約140℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノンが完全に中和されるまで、有機溶媒中で7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノンと少なくとも1つの塩基を反応させること;及び前記溶媒を除去することによって、7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン塩を単離することにより、前記7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノンの塩を調製する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メタノール、THF、アセトニトリル、又はそれらの混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン又はその塩、ジブロモブタン、及び少なくとも1つの有機溶媒を混合し、反応混合物を形成すること;
前記反応混合物を約50℃〜約140℃の温度まで加熱すること;及び
前記反応混合物から前記7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを単離すること、
を含んで成る、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを合成するための方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が低沸点有機溶媒である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記低沸点有機溶媒が、エタノール、トルエン、ヘプタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びアセトニトリルから成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの塩基を、前記反応混合物に添加することを更に含んで成る、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基が、K2CO3、NaOH、及びKOHから成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン及びジブロモブタンが、約1:1〜約1:10のモル比率で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記温度が、約130℃〜約140℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノンが完全に中和されるまで、有機溶媒中で7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノンと少なくとも1つの塩基を反応させること;及び前記溶媒を除去することによって、前記7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン塩を単離することにより、前記7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノンの塩を調製する、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記有機溶媒が、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、ブタノール、メタノール、THF、又はそれらの混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン又はその塩、ジブロモブタン、少なくとも1つの水非混和性有機溶媒及び少なくとも1つの相間移動触媒を混合し、反応混合物を形成すること;
前記反応混合物を約50℃〜約140℃の温度まで加熱すること;及び
7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを単離すること、
を含んで成る、7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを合成するための方法。
【請求項18】
少なくとも1つの塩基を添加することを更に含んで成る、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記塩基が、K2CO3、NaOH、及びKOHから成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応が水を添加することを更に含んで成る、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記相間移動触媒が、臭化テトラブチルアンモニウム;水酸化テトラブチルアンモニウム;TEBA;塩化トリカプリリルメチルアンモニウム;硫酸ドデシル、ナトリウム塩;硫酸水素テトラブチルアンモニウム;臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム;又は臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記相間移動触媒が、7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノンの1モル当たり、約0.1〜5モルのモル比率で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記7−ヒドロキシ−テトラヒドロキノリノン及び前記ジブロモブタンが1:1〜約1:5のモル比率で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを結晶化することを更に含んで成る、請求項1、8及び17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを、エタノール、ヘキサン、又はそれらの混合物から結晶化する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1、8、及び17のいずれか一項に従って調製した7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルを、アリピプラゾールへ変換することを含んで成る、アリピプラゾールを調製するための方法。

【公表番号】特表2007−523068(P2007−523068A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551643(P2006−551643)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/003883
【国際公開番号】WO2006/001846
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】