説明

7置換型縮合環テトラサイクリン化合物

【課題】7置換型縮合環テトラサイクリン化合物、テトラサイクリン応答状態を治療する方法、および7置換型縮合環テトラサイクリン化合物を含む薬学的組成物において、7置換型縮合環テトラサイクリン化合物の中間原料となる7−ヨードテトラサイクリン化合物の製造方法の提供。
【解決手段】7−非置換テトラサイクリン化合物をトリフルオロ酢酸中、少なくとも1当量のN−ヨードスクシンイミドで処理することにより7−ヨードテトラサイクリン化合物を製造する方法。得られた7−ヨードテトラサイクリン化合物を精製する工程をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2000年5月15日に出願された「7置換型縮合環テトラサイクリン化合物(7-Substituted Fused Ring Tetracycline Compounds)」と題された米国特許仮出願第60/204,158号に対して優先権を主張するものであり、その全文が、参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
テトラサイクリン系抗生物質の開発は、殺菌性、および/または、静菌性組成物を産生することが可能な微生物の証拠として世界各地より収集された土壌標本の体系的なスクリーニングによる直接的な結果である。これら新規化合物の第一番目は、1948年にクロルテトラサイクリンという名称で紹介された。2年後、オキシテトラサイクリンが入手可能となった。これらの化合物の化学構造の解明からその類似性が確認され、1952年にこの群の第3番目の化合物である、テトラサイクリンの生成の分析基盤が供給された。初期のテトラサイクリンに存在する、環結合性のメチル基を持たない新たなテトラサイクリン化合物ファミリーが1957年に調製され、1967年に公に入手可能となった。
【0003】
近年は、多様な治療条件ならびに投与経路において効果的な新規テトラサイクリン抗生物質組成物の開発に研究努力の焦点が絞られてきた。初期に紹介されたテトラサイクリン化合物と同等、あるいはそれ以上の効果を持つことが証明され得る新規のテトラサイクリン類似体も研究されている。例えば、米国特許第3,957,980号(特許文献1)、第3,674,859号(特許文献2)、第2,980,584号(特許文献3)、第2,990,331号(特許文献4)、第3,062,717号(特許文献5)、第3,557,280号(特許文献6)、第4,018,889号(特許文献7)、第4,024,272号(特許文献8)、第4,126,680号(特許文献9)、第3,454,697号(特許文献10)、および第3,165,531号(特許文献11)が挙げられる。これらの特許は、薬学的に活性なテトラサイクリンおよびテトラサイクリン類似体組成物の範囲を示す。
【0004】
歴史的には、初期の開発および導入後すぐに、テトラサイクリンが、リケッチア、多くのグラム陽性菌およびグラム陰性菌、ならびに性病性リンパ肉芽腫症、封入体結膜炎、およびオウム病の原因となる物質に対して強力な薬理学的効果を示すことが見出された。その結果、テトラサイクリンは「広い抗菌スペクトルを持つ」抗生物質として知られるようになった。その後のインビトロ抗菌活性、実験的感染症における有効性、および薬理学的性質の確立により、テトラサイクリン類は急速に治療目的で広く利用されるようになった。しかしながら、重病および軽病の両方に対するこの様なテトラサイクリンの広範囲の使用は、共生性かつ病原性の高感受性細菌種(例えば、肺炎双球菌およびサルモネラ菌)においてさえ、これらの抗生物質に対する耐性発現を直ちにもたらした。テトラサイクリン耐性生物の増加は、最良の抗生物質としてのテトラサイクリンおよびテトラサイクリン類似体組成物の使用の全体的な減少につながった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,957,980号
【特許文献2】米国特許第3,674,859号
【特許文献3】米国特許第2,980,584号
【特許文献4】米国特許第2,990,331号
【特許文献5】米国特許第3,062,717号
【特許文献6】米国特許第3,557,280号
【特許文献7】米国特許第4,018,889号
【特許文献8】米国特許第4,024,272号
【特許文献9】米国特許第4,126,680号
【特許文献10】米国特許第3,454,697号
【特許文献11】米国特許第3,165,531号
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明は、少なくとも部分的に、下記式の7置換型縮合環テトラサイクリン化合物および薬学的に許容されるその塩に関する:
【化3】

式中、XはCR6R6'であり;
R4およびR4'はそれぞれアルキル基であり;
R5は水素原子、水酸基、またはプロドラッグ部分であり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、アルキル基であり、または共にアルケニル基であり;
YおよびY'はそれぞれ独立して任意に置換されたC、N、O、またはSであり;
mは1または2である。
【0007】
更なる態様において、YおよびY'はそれぞれ酸素原子であり、mは1である。
【0008】
また、本発明は、哺乳動物に式Iの化合物を投与することによる、哺乳動物におけるテトラサイクリン応答状態の治療法に関する。別の局面において、本発明は、テトラサイクリン応答状態の治療の為の式Iの化合物の使用に関する。また本発明は、式Iの化合物を含む薬学的組成物、およびテトラサイクリン応答状態の治療のための医薬品の製造における式Iの化合物の使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、新規の7置換型縮合環テトラサイクリン化合物、およびその使用法を含む。一つの態様において本発明は、下記式の7置換型縮合環テトラサイクリン化合物および薬学的に許容されるその塩に関する:
【化4】

式中、XはCR6R6'であり;
R4およびR4'はそれぞれアルキル基であり;
R5は水素原子、水酸基、またはプロドラッグ部分であり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルキル基であり、または共にアルケニル基であり;
YおよびY'はそれぞれ独立して任意に置換されたC、N、O、またはSであり;
mは1または2である。
【0010】
R6およびR6'としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられる。R6およびR6'は共に、更に置換されていてもよく、いなくてもよい、メチルエニル基(例えばメタサイクリン)でもよい。さらなる態様においてR5、R6、およびR6'はそれぞれ水素原子である。別の態様においてR4およびR4'はそれぞれ低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基である。更に別の態様において、YおよびY'はそれぞれ酸素原子である。一つの態様においてmは1である。さらなる態様において、本化合物は7-3',4'-メチレンジオキシフェニルサンサイクリンである。
【0011】
さらなる態様において、YおよびY'は、化合物がその意図された機能を果たすことができるように置換され、または置換されない。例えば、YあるいはY'がCまたはNである場合、その置換基は水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、ハロゲン原子、水酸基、または、化合物がその機能を発現させる、もしくは機能する能力を向上させる任意のその他の置換基である。更に、7置換基はいずれの環の、その他のどの位置で置換されていてもよい。可能な置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族(heteroaromatic)部分が挙げられる。ある態様において、mは1、YおよびY'は酸素原子である。更なる態様においてテトラサイクリン化合物の7置換基は、メチレンジオキシフェニル基である。
【0012】
「テトラサイクリン化合物」という用語は、テトラサイクリンと同様の環構造を有する化合物、例えば式Iに含まれる化合物を含む。修飾されて7位に置換基を含むことができるテトラサイクリン化合物の例には、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、サンサイクリン、およびドキシサイクリン等が含まれるが、同様の環構造を含むその他の誘導体および類似体も含まれる。表1にテトラサイクリンおよびいくつかの公知のテトラサイクリン誘導体を示す。
【0013】
【表1】

【0014】
「7置換型縮合環テトラサイクリン化合物」という用語は、7位に縮合環を有するテトラサイクリン化合物を含む。ある態様において、置換型テトラサイクリン化合物とは、置換型テトラサイクリン(例えば式中、R4およびR4'はメチル基であり、R5は水素原子であり、R6はメチル基であり、かつ、R6'は水酸基である);置換型ドキシサイクリン(例えば式中、R4およびR4'はメチル基であり、R5は水酸基であり、R6はメチル基であり、かつ、R6'は水素原子である);または、置換型サンサイクリン(式中、R4およびR4'はメチル基であり、R5は水素原子であり、R6およびR6'は水素原子である)である。その他の態様において、化合物とはテトラサイクリン、ミノサイクリン、サンサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、またはメタサイクリンの誘導体である。
【0015】
「縮合環」という用語は、下記式の部分を含む:
【化5】

式中、mは1または2であり、YおよびY'はそれぞれ独立して、置換型または非置換型のO、N、S、またはCからなる群より選択される。YおよびY'は、化合物がその意図された機能を果たす様に置換されるまたはされない。例えば、YまたはY'がCまたはNである場合、置換基は、例えば水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、ハロゲン原子、水酸基、または、化合物がその意図された機能を果たすことを可能にするその他の置換基であってよい。また、縮合環はいずれの環のその他のどの位置で置換されていてもよい。可能な置換基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。ある態様において、mは1であり、YおよびY'は酸素原子である。更なる態様において、縮合環はメチレンジオキシフェニルである。
【0016】
一つの態様において、7置換型縮合環テトラサイクリン化合物は、7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリンである。
【0017】
本発明の7置換型縮合環化合物を、当技術分野において公知の方法、および/または、本明細書に記載された方法により合成することができる。スキーム1においては、ボロン酸とヨードテトラサイクリン化合物とのスズキ(Suzuki)カップリングを利用した一般的な合成スキームの概要が示されている。サンサイクリンについての反応が示されているが、その他のテトラサイクリン化合物についても同様の手順を用いることができる。また、当技術分野において公知であるその他のアリールカップリング反応も使用できる。
【化6】

【0018】
スキーム1に示されているとおり、非置換型サンサイクリンを酸性条件下で、少なくとも一等量のN-ヨードスクシンイミド(NIS)で処理することにより、ヨードサンサイクリン化合物を合成できる。サンサイクリンをトリフルオロ酢酸中、NISで処理したとき、反応をまず0℃で行い、その後、5時間かけて室温まで昇温した。反応を止め、得られた7-ヨードサンサイクリンは、その後、当技術分野において公知の一般的方法により精製可能である。次に、7-ヨードサンサイクリンをスキーム1に示すように、更にボロン酸と反応させることができる。7-ヨードサンサイクリン、パラジウム触媒(例えばPd(OAc)2)を溶媒に溶解し、炭酸ナトリウム水溶液およびボロン酸で処理した。得られた化合物を、当技術分野において公知の分取HPLC等の手法により精製して特徴付けることが可能である。本発明の化合物の合成を、より詳しく実施例1に示す。
【0019】
「アルキル」という用語は飽和脂肪族群を含み、直鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等)、分岐アルキル基(イソプロピル基、t-ブチル基、イソブチル基等)、(脂環式)シクロアルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換型アルキル基を含む。アルキル基という用語は、炭化水素骨格における一つまたは複数の炭素が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子で置換されたアルキル基も更に含む。ある態様においては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が骨格に6個以下(例えば、直鎖についてはC1-C6、分岐鎖についてはC3-C6)の、好ましくは4個以下の炭素原子を有する。同じく、好ましいシクロアルキル基はその環構造内に3個-8個の炭素原子を有し、より好ましくは5個または6個の炭素原子を環構造内に有する。C1-C6という用語は1個から6個の炭素原子を有するアルキル基を含む。
【0020】
更に、アルキル基という用語は、「非置換型アルキル基」および「置換型アルキル基」の両方を含み、後者は炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素原子に存在する水素原子を置換した置換基を有するアルキル部分を意味する。この様な置換基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分を含む。シクロアルキル基は、例えば上述した置換基により、更に置換されうる。「アルキルアリール」部分または「アラルキル」部分とは、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、フェニルメチルベンジル)である。「アルキル」という用語は、天然および非天然のアミノ酸側鎖も含む。
【0021】
「アリール」という用語は芳香族性を有する基を含み、0個から4個のヘテロ原子および、少なくとも一つの芳香環を有する多環系を含み得る、5員環および6員環の単環性芳香族を含む。例えば、アリール基としては、ベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等が挙げられる。さらに、「アリール」という用語は、多環アリール基、例えば、三環系の、二環系の、例えば、ナフタレン、ベンズオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリチジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンを含む。環構造内にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は「アリール複素環」、「複素環」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族」とも呼ばれうる。芳香環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アラルキルアミノカルボニル基、アルケニルアミノカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分などにより、一つまたは複数の環の部位で置換されうる。またアリール基は、多環系(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成するように、芳香族性の無い脂環または複素環と縮合または架橋されていてもよい。
【0022】
「アルケニル」という用語は、上記のアルキル基と長さおよび可能な置換が類似した不飽和脂肪族を含むが、これは少なくとも一つの二重結合を含む。
【0023】
例えば、「アルケニル」という用語は直鎖アルケニル基(例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基)、アルキル置換型またはアルケニル置換型のシクロアルケニル基、およびシクロアルキル置換型またはシクロアルケニル置換型のアルケニル基を含む。更にアルケニルという用語は、炭化水素骨格における一つまたは複数の炭素を置換した酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子を含むアルケニル基も含む。ある態様において、直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基は、6個以下の炭素原子を骨格に有する(例えば、直鎖についてはC2-C6、分岐鎖についてはC3-C6)。同様に、シクロアルケニル基は、その環構造内に3個から8個の炭素原子を有し、より好ましくは5個または6個の炭素を環構造内に有する。C2-C6という用語は、2個から6個の炭素原子を有するアルケニル基を含む。
【0024】
更に、アルケニル基という用語は、「非置換型アルケニル基」および「置換型アルケニル基」の両方を含み、後者は炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素原子上の水素原子を置換した置換基を持つアルケニル部分を意味する。この様な置換基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられうる。
【0025】
「アルキニル」という用語は、上記のアルキル基と長さおよび可能な置換が類似する不飽和脂肪族を含むが、これは少なくとも一つの三重結合を含む。
【0026】
例えば、「アルキニル」という用語は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基等)、分岐鎖アルキニル基、およびシクロアルキル基置換型またはシクロアルケニル置換型のアルキニル基を含む。アルキニル基という用語は、炭化水素骨格における一つまたは複数の炭素原子を置換した、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子を含むアルキニル基をさらに含む。ある態様において、直鎖状または分岐鎖状のアルキニル基は、6個以下の炭素原子を骨格に有する(例えば、直鎖についてはC2-C6、分岐鎖についてはC3-C6)。C2-C6という用語は2個から6個の炭素原子を有するアルキニル基を含む。
【0027】
更に、アルキニル基という用語は、「非置換型アルキニル基」および「置換型アルキニル基」の両方を含み、後者は、炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素原子上の水素原子を置換した置換基を持つアルキニル部分を意味する。この様な置換基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。
【0028】
炭素数が特に指定されていない限り、本明細書で使用される「低級アルキル」という用語は、上記で定義されたとおりであるが、その骨格構造が1個から5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」の鎖長は、例えば、炭素原子2個から5個である。
【0029】
「アシル」という用語はアシルラジカル(CH3CO-)またはカルボニル基を含む、化合物および部分を含む。「置換型アシル」という用語は、一つまたは複数の水素原子が、例えばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分で置換されている、アシル基を含む。
【0030】
「アシルアミノ」という用語は、アミノ基にアシル部分が結合している部分を含む。例えば、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基がこの用語に含まれる。
【0031】
「アロイル」という用語は、カルボニル基に結合したアリール基またはヘテロ芳香族部分を有する化合物および部分を含む。アロイル基の例としては、フェニルカルボキシ基、ナフチルカルボキシ基等が挙げられる。
【0032】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」および「チオアルコキシアルキル」という用語は炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素を置換した酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を更に含む上記アルキル基を含み、例えば、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子である。
【0033】
「アルコキシ」という用語は酸素原子に共有結合した置換型および非置換型のアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、およびペントキシ基が挙げられる。置換型アルコキシ基の例としては、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分などの基で置換されることができる。ハロゲン置換型アルコキシ基としては、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、トリクロロメトキシ基等が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0034】
「アミン」または「アミノ」という用語は、窒素原子が少なくとも一つの炭素またはヘテロ原子に共有結合している化合物を含む。「アルキルアミノ」という用語は、窒素が少なくとも一つの更なるアルキル基に結合した基および化合物を含む。「ジアルキルアミノ」という用語は、窒素原子が少なくとも二つの更なるアルキル基に結合した基を含む。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」という用語は、それぞれ窒素が少なくとも一つまたは二つのアリール基に結合した基を含む。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、または「アリールアミノアルキル」という用語は、少なくとも一つのアルキル基および少なくとも一つのアリール基に結合したアミノ基を意味する。「アルカミノアルキル」という用語は、アルキル基に結合している窒素原子に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する。
【0035】
「アミド」または「アミノカルボキシ」という用語は、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含む化合物または部分を含む。「アルカミノカルボキシ」という用語は、カルボキシ基に結合しているアミノ基に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を含む。またこれは、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合したアリール部分またはヘテロアリール部分を含むアリールアミノカルボキシ基を含む。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」という用語は、それぞれアルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、およびアリール部分が窒素原子に結合し、更にこれがカルボニル基の炭素に結合している部分を含む。
【0036】
「カルボニル」または「カルボキシ」という用語は、二重結合により酸素原子と結合している炭素を含む化合物および部分を含む。カルボニルを含む部分の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、酸無水物等が挙げられる。
【0037】
「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」という用語は、二重結合により硫黄原子と結合している炭素を含む化合物および部分を含む。
【0038】
「エーテル」という用語は、二つの異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物または部分を含む。例えばこの用語は、その他のアルキル基に共有結合している酸素原子に共有結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する「アルコキシアルキル」を含む。
【0039】
「エステル」という用語は、カルボニル基の炭素と結合している酸素原子に結合した炭素原子またはヘテロ原子を含む化合物および部分を含む。「エステル」という用語は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペントキシカルボニル基等のアルコキシカルボキシ(alkoxycarboxy)基を含む。アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基は、上記の定義のとおりである。
【0040】
「チオエーテル」という用語は、二つの異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子を含む化合物および部分を含む。チオエーテルの例としては、アルクチオアルキル(alkthioalkyl)基、アルクチオアルケニル基、およびアルクチオアルキニル基が挙げられるが、これらに制限されない。「アルクチオアルキル」という用語は、アルキル基に結合している硫黄原子に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を持つ化合物を含む。同様に、「アルクチオアルケニル」および「アルクチオアルキニル」という用語は、アルキニル基に共有結合している硫黄原子に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を持つ化合物または部分を意味する。
【0041】
「ヒドロキシ基」または「水酸基」という用語は、-OHまたは-O-を有する基を含む。
【0042】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等を含む。「過ハロゲン化された」という用語は、一般的に全ての水素がハロゲン原子に置換された部分を意味する。
【0043】
「多環の」または「多環式ラジカル」という用語は、二つの隣接する環で二つ以上の炭素が共有されている二つ以上の環状の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/または複素環)を意味する。非隣接原子介して結合した環は「架橋」環と呼ばれる。多環におけるそれぞれの環を、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アラルキルアミノカルボニル基、アルケニルアミノカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシル基、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル基、スルホン酸塩、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキル基、アルキルアリール基、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分などの上記の置換基で置換することが可能である。
【0044】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素あるいは水素以外の任意の元素の原子を含む。ヘテロ原子の例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、およびリン原子が挙げられる。
【0045】
本発明のいくつかの化合物の構造には不斉炭素原子が含まれることが留意されると考えられる。よって、特に他に記述が無い限り、この様な不斉により生じる異性体(例えば、全ての鏡像異性体およびジアステレオマー)は、本発明の範囲に含まれることが理解されるべきである。そのような異性体を、古典的な分離技術および立体化学的に制御された合成法により実質的に純粋な形状で得ることが可能である。更に、本出願で考察された構造ならびにその他の化合物および部分はまた、その全ての互変異性体も含む。
【0046】
プロドラッグとは、インビボにおいて活性型に変換される化合物である(例えば、R.B. Silverman、1992、「薬物設計および薬物作用の有機化学(The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action)」、 Academic Press、第8章参照)。プロドラッグを、特定の化合物の生体内分布(biodistribution)(例えば、タンパク質分解酵素の反応部位に一般的には入り込まない化合物を可能にするため)または薬物動態を改変するために利用できる。例えば、水酸基をカルボン酸基などでエステル化してエステルが得られる。エステルが被験者に投与されると、エステルは、酵素的または非酵素的、還元的または加水分解的に切断され、水酸基を出現させる。
【0047】
「プロドラッグ部分」という用語は、インビボで代謝されて、有利なようにインビボでエステル化されたままの状態となる、水酸基部分を含む。好ましくは、プロドラッグ部分は、エステラーゼ、またはその他の機構によりインビボで代謝されて、水酸基またはその他の有利な基となる。プロドラッグの例およびその使用は、分野において公知である(例えば、Bergeら、(1977)「薬学的塩(Pharmaceutical Salts)」、J. Pharm. Sci. 66:1-19参照)。化合物の最終的な単離および精製段階中に、または、遊離酸の形状の精製化合物、もしくは水酸基を適当なエステル化剤と別々に反応させることにより、プロドラッグを生成することができる。水酸基をカルボン酸で処理することにより、エステルに変換させることができる。プロドラッグ部分の例としては、置換型および無置換型、分岐状または非分岐状の低級アルキルエステル部分(例えば、プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ-低級アルキルアミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール-低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、(例えば、メチル基、ハロ基、またはメトキシ置換基による)置換型のアリールおよびアリール-低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ-低級アルキルアミド、ならびにヒドロキシアミドが含まれる。好ましいプロドラッグ部分は、プロピオン酸エステルおよびアシルエステルである。
【0048】
本発明はまた、本発明の7置換型縮合環テトラサイクリン化合物の被験者への投与による、被験者におけるテトラサイクリン化合物応答状態の治療法を特徴とする。好ましくは、有効量のテトラサイクリン化合物を投与する。一つの態様において、本化合物は7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリンである。
【0049】
「テトラサイクリン化合物応答状態」という用語は、本発明のテトラサイクリン化合物の投与により治療、予防、またはさもなくば改善可能な状態を含む。テトラサイクリン応答状態は、細菌感染症(その他のテトラサイクリン化合物に耐性を持つものを含む)、癌、糖尿病、および、テトラサイクリン化合物が作用することが見いだされたその他の状態(例えば、米国特許第5,789,395号、第5,834,450号、および第5,532,227号参照)を含む。本発明の化合物を、哺乳動物および家畜の重要な疾病、例えば下痢、尿路感染症、皮膚および皮膚構造の感染症、耳鼻咽喉感染症、創感染症、ならびに乳腺炎等を予防または制御するために使用することができる。更に、本発明のテトラサイクリン化合物を使用した腫瘍の治療法も含まれる(van der Bozertら、Cancer Res.、48:6686-6690 (1988))。
【0050】
細菌感染症は、多様なグラム陽性菌およびグラム陰性菌により引き起こされ得る。本発明の化合物は、その他のテトラサイクリン化合物に対して耐性をもつ生物に対する抗生物質として有用である。本発明におけるテトラサイクリン化合物の抗生作用は、実施例2において説明される方法、またはワイツ(Waitz), J.A.、「臨床実験標準の国立委員会(National Commission for Clinical Laboratory Standards)」、資料(Document)M7-A2、第10巻、第8号、pp.13-20、第2版、ヴィラノバ(Villanova)、PA (1990)に記載のインビトロ標準液体希釈法(broth dilution method)の使用により決定され得る。
【0051】
テトラサイクリン化合物はまた、従来テトラサイクリン化合物で治療されてきた感染症、例えば、リケッチア;多数のグラム陽性菌およびグラム陰性菌;ならびに、性病性リンパ肉芽腫症、封入体結膜炎、オウム病の原因となる因子等の治療に使用されうる。テトラサイクリン化合物は、例えば、肺炎桿菌(K. pneumoniae)、サルモネラ菌(Salmonella)、E.ヒラー(hirae)、A.バウマニー(baumanii)、B.カタルハリス(catarrhalis)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、緑膿菌(P. aeruginosa)、E.フェシウム(faecium)、大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、またはE.フェカーリス(faecalis)による感染症の治療の為に使用されうる。一つの態様において、テトラサイクリン化合物は、その他のテトラサイクリン抗生物質に耐性をもつ細菌感染症の治療の為に使用される。本発明のテトラサイクリン化合物は、薬学的に許容される担体と共に投与されうる。
【0052】
化合物の「有効量」という用語は、テトラサイクリン化合物応答状態を治療または予防するために必要または十分な量を意味する。有効量は、被験者の大きさおよび重量、病気の種類、または特定のテトラサイクリン化合物等の因子に応じて変化し得る。例えば、テトラサイクリン化合物の選択は、「有効量」を構成するものに影響を与える。当業者は、上述の因子を検討して、過度な実験無しにテトラサイクリン化合物の有効量に関する決定を行うことができる。
【0053】
また本発明は、微生物感染症および関連疾患の治療法に関する。本方法は、一つまたは複数のテトラサイクリン化合物の有効量を被験者へ投与することを含む。被験者は、植物または、好都合には動物のどちらか、例えば哺乳動物、例えばヒトであってもよい。
【0054】
本発明の治療法においては、本発明の一つまたは複数のテトラサイクリン化合物が単独で被験者に投与されうり、または、より一般的には、本発明の化合物は、従来の賦形剤、即ち、活性化合物と有害反応を起こさず、そのレシピエントに有害とならない、非経口的投与、経口的投与、またはその他の望ましい投与に適した、薬学的に許容される有機担体物質または無機担体物質との混合状態である薬学的組成物の一部として、投与される。
【0055】
一つの態様において、薬学的組成物は、例えば式Iに示した本発明の7置換型縮合環テトラサイクリン化合物を含む。ある態様において、本化合物は、7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリンである。
【0056】
「薬学的に許容される担体」という用語は、テトラサイクリン化合物と共に投与されることが可能であり、その意図された機能、例えばテトラサイクリン化合物応答状態の治療または予防を、両方が実施することを可能にする物質を含む。薬学的に許容される適切な担体は、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石(talc)、ケイ酸、粘性パラフィン、芳香油、脂肪酸モノグリセリドおよび脂肪酸ジグリセリド、石油エーテル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を含むが、これらに限定されない。薬学的製剤を滅菌することが可能であり、望ましいならば、本発明の活性化合物と有害な反応を起こさない補助剤、例えば光沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧作用性の塩、緩衝液、着色剤、矯味剤、および/または芳香物質等と混合することができる。
【0057】
本来は塩基性である本発明のテトラサイクリン化合物は、種々の無機酸および有機酸と多様な塩を形成することができる。本来は塩基性である本発明のテトラサイクリン化合物の薬学的に許容される酸付加塩の調製のため使用されうる酸とは、非毒性の酸付加塩、即ち、薬学的に許容される陰イオンを含む塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパルモエ酸[即ち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸)]塩を形成する。この様な塩は、被験動物、例えば哺乳動物への投与について薬学的に許容されなければならないが、実際には、まず薬学的に許容されない塩として本発明のテトラサイクリン化合物を反応混合物より単離し、次にアルカリ性試薬で処理することによりこれを単に元の遊離塩基化合物へと変換し、その後、遊離塩基を薬学的に許容される酸付加塩へと変換することが望ましい場合が多い。本発明における塩基化合物の酸付加塩は、塩基化合物を、水性溶媒中または適当な有機溶媒中、例えばメタノールもしくはエタノール中で、実質的に等量の選択された鉱酸または有機酸で処理することにより容易に合成される。溶媒を慎重に蒸発させると、所望の固体塩が容易に得られる。前述の実験項において具体的に説明されていない、本発明のその他のテトラサイクリン化合物の調製は、当業者にとって明白であると考えられる上記の反応の組み合わせにより達成されうる。
【0058】
前述の実験項において具体的に説明されていない、本発明のその他のテトラサイクリン化合物の調製は、当業者にとって明白であると考えられる上記の反応の組み合わせにより達成されうる。
【0059】
本来は酸性である本発明のテトラサイクリン化合物は、多様な塩基性塩を形成することができる。本来は酸性である本発明のテトラサイクリン化合物の薬学的に許容される塩基性塩を調製する為の試薬として使用され得る化学的塩基は、この様な化合物と非毒性の塩基性塩を形成する。この様な非毒性の塩基性塩は、この様な薬学的に許容される陽イオン、例えばアルカリ金属陽イオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)およびアルカリ土類金属陽イオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)に由来するもの、アンモニウム、またはN-メチルグルカミン-(メグルミン)等の水溶性アミン付加塩、ならびに、低級アルカノールアンモニウムおよび薬学的に許容される有機アミンのその他の塩基性塩を含むが、これに限定されない。本来は酸性である本発明のテトラサイクリン化合物の薬学的に許容される塩基性塩は、薬学的に許容される陽イオンを用いた公知の方法により形成され得る。したがって、本発明のテトラサイクリン化合物を所望の薬学的に許容される陽イオンの水溶液で処理し、好ましくは減圧下で、得られた溶液を乾燥させることにより、これらの塩を容易に調製できる。または、本発明のテトラサイクリン化合物の低級アルキルアルコール溶液を、所望の金属のアルコキシドと混合させ、その後溶液を乾燥により蒸発させてもよい。
【0060】
前述の実験項で具体的に説明されていない、本発明のその他のテトラサイクリン化合物の調製は、当業者にとって明白であると考えられる上記の反応の組み合わせを用いて達成されうる。
【0061】
本発明のテトラサイクリン化合物および薬学的に許容されるその塩類を、経口的、非経口的、または局所的な経路のどれかを介して投与することができる。一般的には、これらの化合物を、治療を受ける被験者の体重および症状、ならびに選択された特定の投与経路に応じて有効量投与することが、最も望ましい。治療を受ける被験者の種類および上記医薬品に対するその個体反応、ならびに選択された薬学的製剤の種類および投与の行われた期間と間隔に応じて、差異が生じる可能性がある。
【0062】
本発明の薬学的組成物を、単独で、または哺乳動物におけるテトラサイクリン応答状態を治療するためのその他の公知の組成物と組み合わせて投与することができる。好ましい哺乳動物には、ペット(例えば、ネコ、イヌ、フェレット等)、家畜(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ等)、実験動物(ラット、マウス、サル等)、および霊長類(チンパンジー、ヒト、ゴリラ)が含まれる。公知の組成物「と組み合わせて」という用語は、本発明の組成物および公知の組成物を同時に投与すること、本発明の組成物を最初に投与した後、公知の組成物を投与すること、ならびに、公知の組成物を最初に投与した後、本発明の組成物を投与することを含むことを意図している。本発明の方法においては、テトラサイクリン応答状態を治療する為の、当技術分野において公知の任意の治療用組成物が使用されうる。
【0063】
本発明の化合物を、単独で、または薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と組み合わせて、上記の任意の経路により投与してもよく、単回用量または複数回用量により投与を行ってもよい。例えば本発明の新規治療薬を、多様な異なる剤形で有利に投与することができる、即ちこれらを、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、トローチ、固形の飴、粉末、スプレー、クリーム、軟膏、座剤、ゼリー剤、ゲル剤、パスタ剤、ローション、軟膏剤、懸濁水溶液、注射可能な溶液、エリキシル剤、シロップ等の形状の薬学的に許容される様々な不活性担体と組み合わせてもよい。これらの担体は、固体希釈剤または賦形剤、滅菌水溶性培地、および様々な非毒性有機溶媒等を含む。更に、経口薬学的組成物を、適切に甘くする(sweeten)および/または味つけする(flavor)ことができる。一般的に、治療的に有効な本発明の化合物は、重量比として約5.0%から約70%の範囲の濃度レベルのこの様な剤形で存在する。
【0064】
経口投与のため、例えば、微結晶性セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、およびグリシン等の様々な賦形剤を含む錠剤を、デンプン(および好ましくはトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはタピオカデンプン)、アルギン酸、およびある種の複合ケイ酸塩等の様々な崩壊剤、ならびに、ポリビニルピロリドン、ショ糖、ゼラチン、およびアラビアゴム等の顆粒化結合剤と共に利用できる。更に、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、および滑石等の潤滑剤は、錠剤形成用途のために大変有用であることが多い。同様の種類の個体組成物もまたゼラチンカプセル剤において充填剤として利用することができ、これに関連する好ましい材料としては、乳糖(lactoseまたはmilk sugar)、および高分子量のポリエチレングリコールも含まれる。経口投与用に懸濁水溶液および/またはエリキシル剤が望ましい場合、有効成分を様々な甘味剤または矯味剤、着色料または色素、ならびに望ましいならば、乳化剤および/または懸濁剤、ならびに、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等の希釈剤およびそれらの様々な組み合わせと組み合わせてもよい。
【0065】
非経口投与(腹腔内注射、皮下注射、静脈内注射、皮内注射、または筋肉内注射を含む)のため、本発明の治療用化合物を含む、ゴマ油もしくは落花生油のどちらか、またはプロピレングリコール水溶液の溶液を利用することもできる。水溶液は、必要ならば適当に緩衝されているべきであり(好ましくは、pHが8を上回る)、かつ液状希釈剤は、最初は等張性の液体である。これらの水溶液は、静脈内注射の目的に適している。油性溶液は、関節内注射、筋肉内注射、および皮下注射の目的に適している。滅菌条件下でのこれら全ての溶液の調製は、当業者に公知の標準的な薬学的技術により容易に達成される。非経口投与のための適当な製剤の例には、溶液、好ましくは油性または水性の溶液、および懸濁液、乳濁液、または座剤を含む移植片が含まれる。治療用化合物は、複数回用量または単回用量で、例えば、通常注射剤と共に使用される、滅菌生理食塩水または5%生理食塩水含有デキストロース溶液等の液状担体に分散した状態として、滅菌状態で製剤化されうる。
【0066】
更に、皮膚の炎症状態を治療する際、本発明の化合物を局所的に投与することも可能である。局所投与法の例としては、経皮適用、口内適用、または舌下適用が含まれる。局所適用のため、治療用化合物を、ゲル、軟膏、ローション、またはクリーム等の薬理学的に不活性な局所用担体と適当に混合することができる。そのような局所用担体は、水、グリセロール、アルコール、プロピレングリコール、脂肪族アルコール、トリグリセリド、脂肪酸エステル、または鉱油を含む。その他の可能な局所用担体としては、液体ワセリン(petrolatum)、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、95%エタノール、5%モノラウリル酸ポリオキシエチレン水溶液、5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。更に望ましいならば、抗酸化剤、保湿剤、粘性安定剤等の物質も追加され得る。
【0067】
経腸適用のためには、滑石および/または炭水化物担体結合剤等を有する錠剤、糖衣錠、またはカプセル剤が特に適しており、担体は、乳糖および/またはコーンスターチおよび/またはジャガイモデンプンであることが好ましい。シロップまたはエリキシル剤等を用いることができ、ここでは甘味を付けたビヒクルが用いられる。例えばマイクロカプセル化、多重コーティング等により段階的に分解可能なコーティングで有効成分が保護されているものを含む徐放性組成物を製剤化することができる。
【0068】
ヒト被験者の治療に加えて、本発明の治療法は、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、乳牛、およびブタ等の家畜類;ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および七面鳥等の家禽;馬;ならびにイヌおよびネコ等のペットの治療のための重要な獣医学的応用性を有する。更に本発明の化合物は、植物等の動物以外の被験対象の治療にも使用され得る。
【0069】
所与の治療法において使用される活性化合物の実際に好ましい量は、利用される特定の化合物、製剤化された特定の組成物、適用形態、および特定の投与部位等により変化することが、正当に評価されると考えられる。所与の投与プロトコールにおける最適な投与速度を、先行の指針に従って行われる一般的な用量決定試験により、当業者は容易に確かめることができる。
【0070】
一般に、治療用の本発明の化合物を、先行のテトラサイクリン療法に使用された用量で、被験者に投与することができる。例えば、「医師用添付文書集(Physicians' Desk Reference)」参照。例えば、本発明の一つまたは複数の化合物の適切な有効量は、レシピエントの体重1kg毎に一日あたり0.01mg〜100mgの範囲、好ましくはレシピエントの体重1kg毎に一日あたり0.1mg〜50mgの範囲、更に好ましくはレシピエントの体重1kg毎に一日あたり1mg〜20mgの範囲であると考えられる。所望の用量が毎日1回投与されるか、または数回の副用量、例えば2回〜5回の副用量が、1日のうちに適当な間隔を開けて、もしくは、他の適切なスケジュールに合わせて、投与される。
【0071】
通常の使用環境下における有効性を確保する為、一般にテトラサイクリンの投与に関する従来公知の通常の注意事項が守られることも理解されると考えられる。特にヒトおよび動物のインビボ治療的処置に利用される場合、医療従事者は、従来公知の矛盾および有毒作用を避けるようあらゆる賢明な予防策を取らなければならない。従って、一般的に認識されている胃腸障害および炎症、腎臓毒性、過敏反応、血液における変化、ならびにアルミニウムイオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンによる吸収障害といった副作用も従来の様式で十分に考慮しなければならない。
【0072】
更に本発明はまた、医薬品の調製の為の、式Iのテトラサイクリン化合物の使用にも関する。一つの態様において、テトラサイクリン化合物は、7-3',4'-メチレンジオキシフェニルサンサイクリンである。医薬品は、薬学的に許容される担体を含んでもよく、かつテトラサイクリン化合物は、有効量、例えば、テトラサイクリン応答状態を治療するための有効量である。
【0073】
更に別の態様において、本発明はまた、例えば被験者、例えば哺乳動物、例えばヒトにおける、テトラサイクリン応答状態を治療する為の、式Iのテトラサイクリン化合物の使用に関する。
【0074】
発明の例示
本発明の化合物を、当業者の技術の範囲内で以下の手順に変更を加えることにより、下記の通りに作製することができる。
【実施例】
【0075】
実施例1:7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリンの合成法
7-ヨードサンサイクリン
0℃まで冷却(氷冷)したトリフルオロ酢酸25mlに、サンサイクリン1gを溶解させた。この反応混合物に1.2等量のN-ヨードスクシンイミド(NIS)を加え、40分間反応させた。反応物を氷浴から外し、室温で更に5時間反応させた。次に、混合物をHPLCおよびTLCで分析し、段階的にNISを添加することにより反応を完了させた。反応完了後、減圧下で(in vacuo)TFAを除去し、メタノール3mlを加えて残渣を溶解させた。次に、急速に攪拌されているジエチルエーテル溶液に、メタノール溶液をゆっくりと加え、緑がかった茶色の沈殿物を形成させた。サンサイクリンの7-ヨード異性体を、7-ヨード産物を活性炭で処理してセライトで濾過することにより精製し、その後、溶媒を減圧下で除去して、7-異性体化合物を純粋な黄色固体として75%の収率で得た。
MS(M+H)(ギ酸溶媒):541.3
Rt: Hypersil C18 BDS Column, 11.73
1H NMR:300MHz (メタノール d4, TMS):δ 7.87-7.90 (d, 1H); 6.66-6.69 (d, 1H); 4.06 (s, 1H); 2.98 (s, 6H); 2.42 (m, 1H); 2.19 (m, 1H); 1.62 (m, 4H); 0.99 (m, 2H)。
【0076】
7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリン
7-ヨードサンサイクリン200mg(0.3mM)、Pd(OAc)28.4mg(10%モル等量)、およびメタノール(5ml)をフラスコに加えて、系を乾燥アルゴンで置換し、外部から加熱した。水(2ml、アルゴン置換)に溶解したNa2CO3(117mg、3等量)を反応フラスコに加え、アルゴンで置換した。ボロン酸(3',4'-メチレンジオキシフェニルボロン酸)(123mg、2等量)をメタノール(5ml)に溶解させ、系をアルゴンで5分間置換した。次に、この溶液を注射器でフラスコに加え、1時間〜2時間反応させた。その後、反応を停止させ、溶媒を減圧下で除去して粗生成物を得た。混合物を、ジビニルベンゼンを固相とし、トリフルオロ酢酸(0.1%)およびアセトニトリルの二成分溶媒系を用いた、ACN 0%から100%までの勾配による20分間の分取HPLCカラムクロマトグラフィーにより精製した。化合物ピークは、13.7分に溶出された。画分を除去し、溶媒を減圧下で除去して、メタノール溶液を通じてHClガス(無水)を3分間吹き込んだ後、溶媒を除去することにより、産物をHCl塩として単離した。化合物を減圧下で乾燥させ、化合物を鮮黄色固体として43%の収率で得た。
MS:M+H(ギ酸溶媒):535.2
Rt:ジビニルベンゼン固相,13.7分
1H NMR:300MHz (メタノール d4, TMS):δ 7.47-7.50 (d, 1H), 6.97 (m, 2H), 6.81 (m, 2H), 6.07 (s, 2H), 4.14 (s, 1H), 2.99 (s, 6H), 2.59 (m, 1H), 2.12 (m, 1H), 1.64 (m, 1H)。
【0077】
実施例2:インビトロ最小阻止濃度(MIC)分析
以下の分析を用いて、テトラサイクリン化合物の一般的な細菌に対する効果を測定した。化合物をそれぞれ2mgずつDMSO 100μlに溶解させた。次にこの溶液を、陽イオン調整したミュラー・ヒントン培地(cation-adjusted Mueller Hinton broth: CAMHB)に加えることにより、化合物の最終濃度が1mlあたり200μgとなった。テトラサイクリン化合物溶液を50μlまで希釈し、被験化合物濃度を0.098μg/mlとした。光学密度(OD)は、被験菌株の新鮮な対数期培養液で測定された。最終細胞密度1×106 CFU/mlとなるよう希釈した。OD=1のとき、異なる属の細胞密度はおよそ下記のとおりである:
大腸菌(E. coli) 1×109 CFU/ml;
黄色ブドウ球菌(S. aureus) 5×108 CFU/ml;
エンテロコッカス(Enterococcus)種 2.5×109 CFU/ml。
【0078】
細胞懸濁液50μlをマイクロタイタープレートの各ウェルに加えた。最終細胞密度を約5×105 CFU/mlとした。これらのプレートを空気恒温槽中、35℃で約18時間培養した。プレートをマイクロプレートリーダーで読み取り、必要に応じて視覚的に調べた。MICとは、増殖を阻止できるテトラサイクリン化合物の最小濃度と定義される。
【0079】
表2は、7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリンのMICの相対値を示す。表中、*は良好な増殖阻止を示し、**は非常に良好な増殖阻止を示し、かつ***は極めて良好な増殖阻止を示す。
【0080】
【表2】

【0081】
同等物
当業者は、本明細書に説明されている具体的な手法と同等の多数の方法を認識し、または日常的な実験以上のことを行わずに確めることができると考えられる。このような同等物は、本発明の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内であると考えられる。本出願全体にわたって引用されている全ての参照、発行された特許、および公開された特許出願の内容は、本明細書に参照として組み入れられている。これらの特許、特許出願、およびその他の文献の適切な構成部分、過程、および方法を、本発明およびその態様について選択してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の7置換型縮合環テトラサイクリン化合物、および薬学的に許容されるその塩:
【化1】

式中、XはCR6R6'であり;
R4およびR4'はそれぞれアルキル基であり;
R5は水素原子、水酸基、またはプロドラッグ部分であり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、アルキル基であり、または共にアルケニル基であり;
YおよびY'はそれぞれ独立して任意に置換されたC、N、O、またはSであり;
mは1または2である。
【請求項2】
R5、R6、およびR6'がそれぞれ水素原子であり、R4およびR4'がそれぞれメチル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
YおよびY'がそれぞれ酸素原子である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
mが1である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリンである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
テトラサイクリン応答状態が治療されるように、式(I)の7置換型縮合環テトラサイクリン化合物、および薬学的に許容されるその塩を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物におけるテトラサイクリン応答状態を治療する方法:
【化2】

式中、XはCR6R6'であり;
R4およびR4'はそれぞれアルキル基であり;
R5は水素原子、水酸基、またはプロドラッグ部分であり;
R6およびR6'はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、アルキル基であり、または共にアルケニル基であり;
YおよびY'はそれぞれ独立して任意に置換されたC、N、O、またはSであり;
mは1または2である。
【請求項7】
R5、R6、およびR6'がそれぞれ水素原子であり、かつ、R4およびR4'がそれぞれメチル基である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
YおよびY'がそれぞれ酸素原子である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
mが1である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
化合物が7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリンである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
テトラサイクリン応答状態が細菌感染症である、請求項7記載の方法。
【請求項12】
細菌感染症が大腸菌(E. coli)に関連する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
細菌感染症が黄色ブドウ球菌(S. aureus)に関連する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
細菌感染症がE.フェカーリス(faecalis)に関連する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
細菌感染症がその他のテトラサイクリン抗生物質に耐性を持つ、請求項11記載の方法。
【請求項16】
化合物が薬学的に許容される担体と共に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項17】
治療的有効量の請求項1記載の化合物、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
化合物が7-(3',4'-メチレンジオキシフェニル)サンサイクリンである、請求項16記載の薬学的組成物。

【公開番号】特開2013−40173(P2013−40173A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200322(P2012−200322)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2001−584221(P2001−584221)の分割
【原出願日】平成13年5月10日(2001.5.10)
【出願人】(500127209)パラテック ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】