説明

8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンおよびこれに関連する中間体を調製するためのプロセス

本発明は、例えば、肥満などの中枢神経系障害を治療するためのセロトニン(5−HT)受容体作動薬として有用である、式(I)を有する8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン、その塩、水和物および結晶形態を調製するためのプロセス、方法および中間体を提供する。具体的には、本発明は、L−(+)酒石酸を使用した極めて選択的な分割と連続結晶化を提供し、これは高純度の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンを得る重要な手順である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肥満などの中枢神経系障害を治療するためのセロトニン(5−HT)受容体作動薬として有用である、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン、その塩、水和物および結晶形態を調製するためのプロセス、方法および中間体を提供する。
【背景技術】
【0002】
セロトニン(5−HT)の神経伝達は、健康および精神障害双方の数多くの生理学プロセスに重要な役割を果たす。例えば、5−HTは、摂食行動の制御に関係している。5−HTは、膨満感または満腹感を誘発することにより作用すると考えられているため、早期に摂食を終了し、カロリーの消費が少なくなる。5−HT2C受容体の5−HTの促進作用は摂食調節およびd−フェンフルラミンの抗肥満作用に重要な役割を果たすことが明らかにされている。5−HT2C受容体は、脳内では高濃度に発現し(辺縁構造、錐体外経路、視床および視床下部(すなわち、PVNおよびDMH)、ならびに脈絡叢の大部分に顕著)、末梢組織では低濃度に発現するか、発現しないことから、選択的5−HT2C受容体作動薬がより効果的かつ安全な抗肥満薬となりうる。また、5−HT2Cノックアウトマウスは、認知障害および発作感受性を有する肥満である。従って、5−HT2C受容体は、肥満、精神障害および他の障害を治療するための広く受け入れられている受容体標的物質として認識されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
5−HT2C受容体に関連する障害を治療するための化合物に対する需要が増大していることから、3−ベンズアゼピンに対する新規かつより効果的な経路が必要とされている。本明細書に記載のプロセスおよび化合物は、これらのおよび他の要求を満足するのに役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のプロセスおよび中間体は、肥満および他の中枢神経系疾患などの5−HT介在性障害を治療または予防するための治療剤の調製に有用である。
【0005】
本発明は、特に、以下の式(I)を有する8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン、その塩および結晶形態を調製するためのプロセスおよび中間体を提供する。
【0006】
【化7】

いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、(R)型鏡像異性体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のプロセスおよび中間体は、式(I)の治療剤、それらの塩および結晶形態の調製に有用である。式(I)の化合物は、肥満および他の中枢神経系疾患などの5−HT関連障害の治療または予防に有用である。
【0008】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン、その塩酸塩および結晶形態を調製するための出発材料である。
【0009】
式(I)の化合物およびそれらの塩を調製するための特定のプロセスについては、PCT特許公開第WO2005/019179号に開示されている。式(Ia)の化合物の特定の結晶形態を調製するための1つの特定のプロセスについては、PCT特許公開第WO2006/069363号に開示されている。
【0010】
式(I)の化合物、それらの塩および結晶形態の調製に有用なプロセスは、現在いくつかの改良点が発見されている。これらの改良点を本明細書に記載する。
【0011】
市販化合物2−(4’−クロロフェニル)エタノールの[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムへの変換(ステージ1〜3):
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、合成スキーム1.1に示すプロセスに従い、市販化合物2−(4’−クロロフェニル)エタノールから3つのステージで調製することができる。
【0012】
【化8】

いくつかの実施形態において、1つのステージから調製される生成物は単離されない。いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、単離せずに[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムに変換される。
【0013】
ステージ1:2−(4’−クロロフェニル)エタノールの2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドへの変換
ステージ1では、2−(4’−クロロフェニル)エタノールを三臭化リンと反応させて、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを得た。この生成物を、抽出溶媒を必要とすることなく、クエンチ用水溶液から直接単離した。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態は、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを調製する方法であって、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドの形成に適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エタノールを三臭化リンと反応させる手順を含む、方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドは、溶媒の非存在下において2−(4’−クロロフェニル)エタノールを三臭化リンと反応させる手順を含む方法により調製される。
【0016】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドは、2−(4’−クロロフェニル)エタノールを三臭化リンと反応させる方法であって、
約10℃未満の温度にて三臭化リンを2−(4’−クロロフェニル)エタノールに添加して、臭素化反応混合物を形成する手順と、
約20℃〜約30℃の温度の後、約75℃〜約85℃の温度にて前記臭素化反応混合物を加熱する手順と、
を含む、方法により調製される。
【0017】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドは、約20℃〜約30℃の温度にて前記臭素化反応混合物を加熱する手順を含む方法により調製され、同温度にて約1時間〜約3時間維持される。
【0018】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドは、約75℃〜約85℃の温度にて前記臭素化反応混合物を加熱する手順を含む方法により調製され、同温度にて約2時間〜約4時間維持されて、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む混合物を形成する。
【0019】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドは、
約5℃〜約20℃の温度にて2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む混合物に水を添加して、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含み、上部の水性相と下部相とから本質的に構成される二相性液体混合物を形成する手順と、
前記二相性液体混合物の前記上部の水性相から、前記二相性液体混合物の2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む前記下部相を分離する手順と、
を含む、方法により調製される。
【0020】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドは、前記2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む前記下部相が実質的に純粋である方法により調製される。
【0021】
本明細書で使用される「2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドが実質的に純粋である」という語句は、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを調製するために、さらに精製することなく次のステージで使用するのに十分な純度を指す。
【0022】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む前記下部相は、約90%以上の純度を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む前記下部相は、約95%以上の純度を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む前記下部相は、約98%以上の純度を有する。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態は、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを形成するのに適切な時間および条件にて、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを調製する方法であって、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドの形成に適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エタノールを三臭化リンと反応させる手順を含み、反応が約75℃〜約85℃の温度にて行われる、方法を提供する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態は、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを調製する方法であって、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを形成するのに適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エタノールを三臭化リンと反応させる手順を含み、前記時間が約120分〜約240分間である、方法を提供する。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを調製する方法であって、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを形成するのに適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エタノールを三臭化リンと反応させる手順を含み、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドが水の添加により単離される、方法を提供する。
【0028】
ステージ2:2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドの1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールへの変換
ステージ2では、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを1−アミノ−2−プロパノールと反応させて、第二級アミンである1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを形成した。この1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを、トルエンへの抽出を行って、共沸蒸留により1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを含有するトルエンから水を除去することにより、過剰な1−アミノ−2−プロパノールと水溶性副生成物から分離し、これによってさらなる精製および単離を行うことなく次の手順に直接使用することができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態は、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを調製する方法であって、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールまたはその塩を形成するのに適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドと1−アミノ−2−プロパノールとを反応させる手順を含む、方法である。
【0030】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、実質的に遊離塩基である。
【0031】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを含むアルキル化混合物を形成するのに適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドと1−アミノ−2−プロパノールとを反応させる手順を含む、方法により調製される。
【0032】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、
1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを含む前記アルキル化混合物に水を添加して、二相性混合物を形成する手順と、
トルエンを含む抽出溶媒で前記二相性混合物から1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを抽出して、トルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含み、水性の下部相と上部相とから本質的に構成される新規の二相性混合物を形成する手順と、
前記水性の下部相からトルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む前記上部相を分離する手順と、
共沸蒸留によりトルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む前記上部相から水を除去して、トルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む溶液を形成する手順と、
を含む、方法により調製される。
【0033】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、トルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む前記溶液が共沸蒸留後に約2%以下の水を含有する方法により調製される。
【0034】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、トルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む前記溶液が共沸蒸留後に約1%以下の水を含有する方法により調製される。
【0035】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、トルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む前記溶液が共沸蒸留後に約0.5%以下の水を含有する方法により調製される。
【0036】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、トルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む前記溶液が共沸蒸留後に約0.15%以下の水を含有する方法により調製される。
【0037】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを含むアルキル化混合物を形成するのに適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドと1−アミノ−2−プロパノールとを反応させる手順を含み、反応が約85℃〜約100℃の温度にて行われる、方法により調製される。
【0038】
いくつかの実施形態において、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールは、トルエンの存在下において水抽出により単離され、それによって1−アミノ−2−プロパノールと水溶性副生成物とが除去され、得られたトルエン産物溶液が共沸蒸留により乾燥させられる。
【0039】
ステージ3:1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールの[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムへの変換
[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを調製する最終手順であるステージ3では、トルエン中で触媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)を使用して、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを塩化チオニルと反応させた。
【0040】
粗生成物を濾過により反応混合物から単離し、イソプロパノール(IPA)と水から再結晶させた。濾過された固体である[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムをIPAで洗浄し、真空乾燥させた。現在のところ、いずれの過剰な塩化チオニルもイソプロパノール(IPA)を使用してクエンチすることができ、クエンチ後に得られる固体は、驚くべきことに再結晶化の手順が必要でないことが判明している。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態は、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを調製する方法であって、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを形成するのに適切な時間および条件にて1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールと塩化チオニルとを反応させる手順を含む、方法を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、
1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールが[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムに実質的に変換されていることを判定する手順と、
続く手順で塩化チオニルの残量をC1−6アルコールでクエンチする手順と、
を含む、方法により調製される。
【0043】
いくつかの実施形態において、C1−6アルコールはイソプロパノールである。
【0044】
いくつかの実施形態において、判定手順では、1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールが[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムに約98%以上変換されていることが判定される。
【0045】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムに変換される1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールの量は、HPLCにより判定される。
【0046】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、触媒としてN,N−ジメチルアセトアミドの存在下において調製される。
【0047】
いくつかの実施形態において、N,N−ジメチルアセトアミドと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールのモル比は、約0.5対1以下である。
【0048】
いくつかの実施形態において、N,N−ジメチルアセトアミドと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールのモル比は、約0.4対1以下である。
【0049】
いくつかの実施形態において、N,N−ジメチルアセトアミドと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールのモル比は、約0.3対1以下である。
【0050】
いくつかの実施形態において、N,N−ジメチルアセトアミドと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールのモル比は、約0.2対1以下である。
【0051】
いくつかの実施形態において、N,N−ジメチルアセトアミドと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールのモル比は、約0.1対1以下である。
【0052】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、トルエンを含む溶媒の存在下において調製される。
【0053】
いくつかの実施形態において、クエンチ手順後には、前記[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムが濾過により単離される。
【0054】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを形成するのに適切な時間および条件にて1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールと塩化チオニルとを反応させる手順を含み、反応が約60℃〜約65℃の温度にて行われる、方法により調製される。
【0055】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを形成するのに適切な時間および条件にて1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールと塩化チオニルとを反応させる手順を含み、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムが前記反応混合物から結晶化し、濾過により単離される、方法により調製される。
【0056】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、約85%以上の純度で単離される。
【0057】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、約90%以上の純度で単離される。
【0058】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、約95%以上の純度で単離される。
【0059】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、約98%以上の純度で単離される。
【0060】
いくつかの実施形態において、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムは、約99%以上の純度で単離される。
【0061】
ステージ4:[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムの8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンへの変換
ステージ4では、一般的には約90.0%、いくつかの実施形態においては99.0%以上の純度の出発材料である[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを、Friedel−Crafts分子内環化反応法にかけ、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンと(S)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピン(遊離塩基)の1:1混合物から構成される、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンとして設計された、ラセミ混合物を得る。この反応中に前記8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンの骨格を確立した。8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを、溶媒抽出、ならびに蒸留による溶媒除去により精製した。所望の鏡像異性体である(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピン(遊離塩基)の一般的な35〜40%の純度を有する油として、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを得た。
【0062】
ステージ4の改良点は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンの単離に集中する。本明細書では、PCT特許公開第WO2005/019179号に報告されるようにNaOHを使用する代わりに、簡単に濾過される水とシリカゲルとを使用する。さらに、濾過後の混合物は、驚くべきことに三相性混合物(3相)を形成し、この下部相は大部分が1,2−ジクロロベンゼンから構成され、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンはわずかに約1%で構成されている。そのため、単に下部相を中間相と上部相とから離して排出するだけで、大部分の1,2−ジクロロベンゼンを混合物から容易に除去することができる。また驚くべきことに、中間相は、大部分が生成物(R,S)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンから構成され、中間相を水性の上部相から排出することにより容易に単離される。単離した中間相は、約90%が8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンである。上部相は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを約1%〜約4%含有し、適切な溶媒(例えば、シクロヘキサン)を使用して抽出することにより単離することができる。三相性混合物の形成により、本ステージにおける体積効率が向上するとともに、反応溶媒(すなわち、1,2−ジクロロベンゼン)を蒸発させる必要性がなくなる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを調製する方法であって、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを形成するのに適切な時間および条件にて[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムをAlClと反応させる手順を含む、方法を提供する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の式(I)の化合物を調製する方法であって:
【0065】
【化9】

[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムとAlClとの反応が、1,2−ジクロロベンゼンの存在下において、約125℃〜約130℃の温度、約14時間〜約18時間の時間、式(I)の化合物を形成するのに適切な条件にて行われる、
方法を提供する。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の式(I)の化合物を調製する方法であって:
【0067】
【化10】

1,2−ジクロロベンゼンの存在下において、約125℃〜約130℃の温度、約14時間〜約18時間の時間、式(I)の化合物を含む粗反応混合物を形成するのに適切な条件にて[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムをAlClと反応させる手順と、
前記粗反応混合物をシリカゲルおよび水と接触させて、懸濁液を形成する手順と、
前記懸濁液を濾過して、三相性液体混合物を形成する手順と、
前記三相性液体混合物から式(I)の化合物を単離する手順と、
を含む、方法を提供する。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物を調製する方法であって、
前記三相性液体混合物の下部相から上部相と中間相とを分離する手順と、
前記上部相と前記中間相から式(I)の化合物を単離する手順も、
さらに含む、方法を提供する。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物を調製する方法であって、前記三相性液体混合物の前記下部相が1,2−ジクロロベンゼンを含む、方法を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記三相性液体混合物の前記下部相は、1,2−ジクロロベンゼンを約90%以上含有する。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記三相性液体混合物の前記下部相は、1,2−ジクロロベンゼンを約95%以上含有する。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記三相性液体混合物の前記下部相は、1,2−ジクロロベンゼンを約98%以上含有する。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物を調製する方法であって、前記三相性液体混合物の前記中間相が、式(I)の化合物を、前記三相性液体混合物の前記上部相または前記下部相に含有される式(I)の化合物の量よりも多く含有する。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物を調製する方法であって、前記三相性液体混合物の前記中間相が、式(I)の化合物を約80%以上含有する。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記三相性液体混合物の前記中間相は、式(I)の化合物を約85%以上含有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記三相性液体混合物の前記中間相は、式(I)の化合物を約90%以上含有する。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物を調製する方法であって、前記単離手順が、
前記中間相から前記上部相を分離する手順と、
抽出溶媒を使用して前記上部相から式(I)の化合物を抽出して、前記上部相から式(I)の化合物を含む前記抽出溶媒を分離する手順と、
式(I)の化合物を含む前記抽出溶媒を前記中間相と合わせて、合同混合物を形成する手順と、
前記合同混合物を塩基性水溶液で洗浄し、前記合同混合物から前記塩基性水溶液を分離して、洗浄した合同溶液を形成する手順と、
前記洗浄した合同溶液を濃縮して、式(I)の化合物を得る手順も、
さらに含む、方法を提供する。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物を調製する方法であって、前記塩基性溶液が水酸化ナトリウム水溶液である、方法を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記塩基性水溶液は、約10%〜約40%の水酸化ナトリウム水溶液である。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記塩基性水溶液は、約25%〜約35%の水酸化ナトリウム水溶液である。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記塩基性水溶液は、約30%の水酸化ナトリウム水溶液である。
【0082】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、濃縮手順後に約65%以上の純度を有する。
【0083】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、濃縮手順後に約70%以上の純度を有する。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態は、式(I)の化合物を調製する方法であって、前記抽出溶媒がシクロヘキサンである、方法を提供する。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを調製する方法であって、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを形成するのに適切な時間および条件にて[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムをAlClと反応させる手順を含み、反応が約125℃〜約130℃の温度にて行われる、方法を提供する。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを調製する方法であって、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを形成するのに適切な時間および条件にて[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムをAlClと反応させる手順を含み、反応が約128℃の温度にて行われる、方法を提供する。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを調製する方法であって、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを形成するのに適切な時間および条件にて[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムをAlClと反応させる手順を含み、反応が約14時間〜約18時間行われる、方法を提供する。
【0088】
インプロセス制御(IPC):[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムのHPLC含有率1%未満。本ステージを合成スキーム1.2に示す。
【0089】
【化11】

ステージ5およびステージ6:8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンの(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩への変換
ステージ5では、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンをL−(+)−酒石酸と反応させて、粗ジアステレオマー塩の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩を形成した。本ステージでは、反対側の鏡像異性体(すなわち、(S)型鏡像異性体)を含めたプロセス不純物から(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩の分割および精製を、アセトン/水混合物からの結晶化により得た。単離したケーキは一般的に、アキラル純度99.0%以上およびキラル純度90%の鏡像体過剰率(ee)を有していた。
【0090】
ステージ6では、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩粗ケーキを、アセトン/水からの2回目の結晶化に供し、最終中間体である(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩を得た。(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩は、すでに試験が行われ、複数の明細書に公表されており、一般的にはアキラル純度100.0%およびキラル純度99.0%以上の鏡像体過剰率を有していた。鏡像体過剰率を増大させるために、必要に応じて、本ステージでアセトン/水から(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩の追加の再結晶化を繰り返すことができる。
【0091】
PCT特許公開第WO2005/019179号に報告された手法では、塩形成手順で使用する溶媒がt−ブタノールであった。この溶媒を使用したことで、酒石酸塩を単独で再結晶化した後に、約68〜80%の鏡像体過剰率および約99%未満の鏡像体過剰率で粗酒石酸塩の結晶化が行われた。鏡像体過剰率を増大させるために追加の再結晶化が必要となり、その結果収率が低下した。
【0092】
現在のところ、PCT特許公開第WO2005/019179号に記載のt−ブタノールの代わりに塩形成手順でアセトンを使用すると、追加の再結晶化が必要なくなり、さらに収率の向上に直接的な成果が見られる。従って、アセトンを使用し場合の鏡像体過剰率は約90%であり(t−ブタノールを使用した場合の鏡像体過剰率は約68〜80%)再結晶化を1回のみ行った後の酒石酸塩は、鏡像体過剰率が約99%以上、一般的には約99.7%であった。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態は、(R)/(S)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンの化合物の混合物を分割する方法であって、化合物の前記混合物をL−(+)−酒石酸と接触させて、前記化合物のキラル分割酸塩を形成する手順であり、前記キラル分割酸が実質的に1個の立体異性体を含む、手順と、前記化合物の前記キラル分割酸塩を析出する手順であり、得られた析出物が(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンの前記キラル分離酸塩中で富化される、手順と、を含む、方法を提供する。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の式(Ia)および(Ib)の化合物の混合物を分割する方法であって:
【0095】
【化12】

アセトンを含む溶媒の存在下において化合物の前記混合物をL−(+)−酒石酸と接触させて、前記化合物のL−(+)−酒石酸塩を形成する手順と、
前記化合物の前記L−(+)−酒石酸塩を析出する手順であって、得られた析出物が式(Ia)の化合物の前記L−(+)−酒石酸塩で富化される、手順と、
アセトンと水とを含む溶液に析出物を溶解して、溶解した析出物を含有する溶液を形成する手順と、
溶解した析出物を含有する前記溶液を冷却する手順と、
式(Ia)の化合物の前記L−(+)−酒石酸塩を含有する第2の析出物を析出する手順と、
を含む、方法を提供する。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態は、式(Ia)および(Ib)の化合物の混合物を分割する方法であって、
アセトンを含む溶媒の存在下において化合物の前記混合物をL−(+)−酒石酸と接触させて、前記化合物のL−(+)−酒石酸塩を形成する手順と、
前記化合物の前記L−(+)−酒石酸塩を析出する手順であり、得られた析出物が式(Ia)の化合物の前記L−(+)−酒石酸塩で富化される、手順と、
約45℃〜約60℃の温度にてアセトンと水とを含む溶液に前記析出物を溶解して、溶解した析出物を含有する溶液を形成する手順と、
前記溶解した析出物を含有する前記溶液を約−5℃〜約10℃に冷却する手順と、
式(Ia)の化合物の前記L−(+)−酒石酸塩を含有する第2の析出物を約98%以上の鏡像体過剰率で析出する手順と、
を含む、方法を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態において、アセトンと水とを含む溶液への前記析出物の溶解は、約45℃〜約60℃の温度にて行われて、前記溶解した析出物を含有する溶液を形成する。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記溶解した析出物を含有する前記溶液の冷却は、約−5℃〜約10℃の温度にて行われる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、約55℃〜約60℃の温度にてアセトンと水とを含む溶液に前記析出物を溶解して、前記析出物を含有する溶液を形成する手順を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、前記析出物を含有する前記溶液を約0℃〜約5℃の温度に冷却する手順を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、式(Ia)の化合物の前記L−(+)−酒石酸を含有する第2の析出物は、約98%以上の鏡像体過剰率を有する。
【0102】
いくつかの実施形態において、式(Ia)の化合物の前記L−(+)−酒石酸を含有する第2の析出物は、約98.5%以上の鏡像体過剰率を有する。
【0103】
いくつかの実施形態において、式(Ia)の化合物の前記L−(+)−酒石酸を含有する第2の析出物は、約99%以上の鏡像体過剰率を有する。
【0104】
いくつかの実施形態において、アセトンを含む溶媒の存在下における化合物の前記混合物とL−(+)−酒石酸との接触は、約40℃〜約55℃の温度にて行われる。
【0105】
いくつかの実施形態において、アセトンを含む溶媒の存在下における化合物の前記混合物とL−(+)−酒石酸との接触は約47℃〜約52℃の温度にて行われる。
【0106】
IPC:8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピン含有量の定量化;IPC:湿潤生成物のキラルHPLC。本ステージを合成スキーム1.3に示す。
【0107】
【化13】

IPC:湿潤生成物のキラルHPLC 98%ee超。本ステージを合成スキーム1.4に示す。
【0108】
【化14】

ステージ7:(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物への変換
ステージ7では、ステージ6で得た鏡像異性体的に純粋な(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩を、2つの追加の化学反応で(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物に変換し、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン遊離塩基と、最終的には(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を形成した。次いで、酢酸エチルからの結晶化により、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物に最終精製を行った。(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物は結晶固体として単離され、一般的にはアキラル純度約100.0%およびキラル純度約99.0%以上の鏡像体過剰率を有する。いくつかの実施形態において、アキラル純度は約98%以上およびキラル純度は約98%以上である。
【0109】
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物と無水(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩の調製プロセスについては、それぞれPCT特許公開第WO2006/069363号およびPCT特許公開第WO2005/019179号に報告されている。(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物は、窒素雰囲気下で、イソプロパノール、水およびシクロヘキサンの存在下において、無水(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩を使用して調製した。
【0110】
現在のところ、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩は、遊離塩基を単離することなく、かつ無水(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩を形成することなく、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物に直接変換できることが判明している。
【0111】
一般的に、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物は、
1) 前記(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩を中和して、前記遊離塩基(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンを形成する手順と、
2) 水の存在下において前記遊離塩基(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンを塩酸塩と接触させて、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩を形成する手順と、
3) 前記(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩を結晶化して、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を形成する手順と、
を含む、方法により調製される。
【0112】
酒石酸塩の中和に特に有用な1つの塩基には、炭酸カリウム水溶液がある。反対に、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩を中和するためにNaOH水溶液を使用した場合には、分離が困難なエマルジョンが得られたことが判明した。しかし、中和後に遊離塩基である(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンを抽出する場合には、エマルジョンを本質的に含まない炭酸カリウム水溶液を使用することができる。さらに、酢酸エチルは、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を得るための中和、接触および結晶化手順での使用に特に適切であることも判明した。酢酸エチルはまた、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物の結晶化に適切な濃度の水を溶解するのに特に有用であることも判明した。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の式(II)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を調製する方法であって:
【0114】
【化15】

水および酢酸エチルの存在下において、以下の式の8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾアゼピニウムヘミ酒石酸塩を:
【0115】
【化16】

炭酸カリウムと中和して、以下の式(Ia)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンを含み:
【0116】
【化17】

水性相と酢酸エチル相とから本質的に構成される二相性液体混合物を形成する手順と、
前記二相性液体混合物の前記水性相から前記二相性液体混合物の前記酢酸エチル相を分離する手順と、
水の存在下において前記酢酸エチル相を塩酸塩と接触させて、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンの塩酸塩を形成する手順であって、水と(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンの比が少なくとも1:2である、手順と、
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンの前記塩酸塩を結晶化して、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を形成する手順と、
を含む、方法を提供する。
【0117】
いくつかの実施形態において、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンの前記塩酸塩を結晶化することによって、実質的に純粋な(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物が形成された。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態は、式(II)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を調製する方法であって、前記接触手順の前記水が前記酢酸エチル相に実質的に溶解する、方法を提供する。
【0119】
いくつかの実施形態において、前記接触手順の前記水は約0.2重量%〜約2重量%存在する。
【0120】
いくつかの実施形態において、前記接触手順の前記水は約0.2重量%〜約1重量%存在する。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記接触手順の前記水は約0.4重量%〜約0.8重量%存在する。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記酢酸エチル相の前記水は約0.6重量%存在する。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態は、式(II)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を調製する方法であって、前記二相性液体混合物が実質的にエマルジョンを含まない、方法を提供する。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態は、式(II)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を調製する方法であって、前記接触手順が約0℃〜約25℃の温度にて行われる、方法を提供する。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態は、式(II)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を調製する方法であって、前記接触手順の前記塩酸塩がガス形態である、方法を提供する。
【0126】
いくつかの実施形態において、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物は、アキラル純度約99%以上で単離される。
【0127】
いくつかの実施形態において、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物は、キラル純度約99%以上で単離される。
【0128】
IPC:酢酸エチル相の含水率0.8%未満。本ステージを合成スキーム1.5に示す。
【0129】
【化18】

要約すると、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン半水和物のプロセスは、4つの化学反応と4つの精製操作とを含む。ステージ4では、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを使用して、分子骨格を形成し、所望の鏡像異性体である(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン(遊離塩基)を35〜40%含有する粗生成物を得た。ステージ5および6では、酒石酸塩の2回の結晶化を伴った、酒石酸の分割および連続した精製操作により、高純度の最終中間体である(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩を得た。ステージ7では、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩をより高純度に変換した。L−(+)酒石酸を使用した極めて選択的な分割と連続結晶化は、高純度の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンを得る重要な手順である。
【0130】
以下では具体例を用いて本発明を詳細に説明する。以下の実施例は例示を目的としたものであり、いかなる方法によっても本発明を限定することを目的としたものではない。当業者であれば、本質的に同じ結果が得られるように種々の重要でないパラメータを変更または改変できることを容易に理解するであろう。
【実施例】
【0131】
(実施例1) 2−(4’−クロロフェニル)エタノールの2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドへの変換
【0132】
【化19】

原材料および収率
1.00Kg 6.39モル 2−(4’−クロロフェニル)エタノール(出発材料)
0.869Kg 3.21モル 三臭化リン
0.599Kg 純水
1.33Kg 6.06モル 2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミド(生成物、検定補正)
収率94.9%。
【0133】
体積効率
体積効率は、2−(4’−クロロフェニル)エタノール出発材料1kg当たり1.76L、または1リットル当たり2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミド生成物(検定補正)758gであった。
プロセスの説明
反応時に発生する可能性のあるHBrガスを捕捉するために苛性スクラバーに通気孔を備えたリアクターに、2−(4’−クロロフェニル)エタノール(1.00kg、6.39モル、1.00当量)を添加し、リアクターの内容物を0℃に冷却した。フィードポンプおよびフィード管をシクヘキサン(0.019kg)で洗浄し、洗浄液を廃棄処分した。冷却した溶液に三臭化リン(0.869kg、3.21モル、0.503当量)を添加しながら、撹拌したリアクターの内容物を0〜10℃に維持した。得られた反応物は発熱性が高く、ジャケット温度−5℃〜−10℃の添加速度で管理した。フィードポンプおよびフィード管をシクロヘキサン(0.019kg)で洗浄し、洗浄液を廃棄処分した。得られた反応混合液を25℃(20℃〜30℃)に加熱し、同温度にて2時間(1〜3時間)撹拌を続けた。その後、反応混合物を60分間(45〜75分間)かけて80℃(75℃〜85℃)まで緩徐に加熱し、同温度にて3時間(2〜4時間)撹拌を続けた。加熱時にはわずかに混濁したエマルジョンが形成された。リアクターの内容物を22℃に冷却した後、反応が完了しているかどうか反応混合物の試料を分析した(HPLCピーク面積で99%超)。反応混合物は、粘度が高いものの容易に撹拌されるエマルジョンであった。苛性スクラバーに通気孔を設けた受容器に純水(0.514kg)を入れ、受容器の内容物を5〜20℃に冷却した。撹拌した受容器の内容物を約15℃に維持するのに十分緩徐な速度で、リアクターから受容器に反応混合物を移した。受容器の内容物を35〜40℃に加温し、研磨フィルターに通して濾過した。リアクターを追加の純水(0.085kg)で洗浄し、洗浄液をフィルターにかけて、生成物の混合溶液を得た。この溶液の相を35〜40℃の温度にて分離させた。下部相を上部相から排出した。この下部相は、重量が約1.39kgであり、約96%の純度を有する2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドであったことから、約94.9%の収率(検定補正)が得られた。
【0134】
(実施例2) 2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドの[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムへの変換
【0135】
【化20】

原材料および収率
1.71Kg 22.8モル 1−アミノ−2−プロパノール
1.00Kg 4.56モル 2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミド(出発材料、検定補正なし)
8.40Kg トルエン
1.16Kg 純水
0.119Kg 1.37モル N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)
0.690Kg 5.80モル 塩化チオニル
3.31Kg イソプロパノール
0.865Kg 3.22モル [2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウム(生成物、検定補正なし)
収率70.7%。
【0136】
体積効率
体積効率は、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミド出発材料(検定補正なし)1kg当たり6.5L、または1リットル当たり[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウム生成物(検定補正なし)133gであった。
【0137】
プロセスの説明
反応1:2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドの1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールへの変換
リアクターに1−アミノ−2−プロパノール(1.71kg、22.8モル、5.00当量)を入れ、リアクターの内容物を85〜90℃に加熱した。フィードポンプおよびフィード管をトルエン(0.50kg)で洗浄し、洗浄液を廃棄処分した。リアクターに2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミド(1.00kg、4.56モル、1.00当量、検定補正なし)を45分間かけて添加しながら、撹拌したリアクターの内容物を100℃以下に維持した。フィードポンプおよびフィード管をトルエン(0.50kg)で洗浄し、洗浄液を廃棄処分した。反応混合物を85〜100℃の温度にて90分間撹拌した後、50℃に冷却した。反応混合物の試料を取り出し、HPLCにより反応が完了(98%超)していることを確認した。純水(1.0kg)を添加しながら、撹拌したリアクターの内容物を70〜75℃に維持した。そして、撹拌したリアクターの内容物を70〜75℃に維持し続けたまま、トルエン(1.8kg)を添加した。撹拌を同温度にて20分間維持した後、停止し、相を15分かけて分離させた。70〜75℃の下部の水性相を排出し、トルエンを追加して(1.6kgの1分量または0.52kgの2分量のいずれかを使用可能)抽出した。40〜60℃および80〜100mbarによる真空蒸留により、トルエン(1.0kg)を結合した有機相から除去した。蒸留残留物の含水率をKarl Fischer法により分析し、0.15%未満であることを確認した。0.15%未満でない場合は、さらにトルエンを生成混合物に入れ、Karl Fischer法による分析で0.15%未満になるまで真空蒸留を継続した。
【0138】
反応2:1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールの[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムへの変換
42℃で撹拌したリアクターの内容物に、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA、0.119kg、1.37モル、0.30当量)の後、トルエン(1.6kg)を添加した。リアクター通気孔を苛性スクラバーに接続し、次の手順で発生する二酸化硫黄と塩酸塩ガスを捕捉した。リアクターの内容物を55℃に加熱した後、撹拌したリアクターの内容物を50〜60℃に維持するのに十分緩徐な速度にて塩化チオニル(0.690kg、5.80モル、1.273当量)を入れた。添加中に懸濁が形成され、徐々に粘度が高くなったが、依然として撹拌は可能であった。フィード管をトルエン(1.0kg)でリアクター方向に洗浄した。この時点でプロセス体積が6.5Lのピークを迎えた。高粘度の反応スラリーを60〜65℃にて2〜3時間撹拌した後、17℃に冷却した。反応混合物の試料を採取し、HPLCにより反応が完了していることを確認した。(変換率は一般的にHPLCピーク面積で99%超)。懸濁液を濾過し、リアクターと濾過した固体生成物をトルエン(2.4kg)で洗浄した。得られた褐色の粗固体生成物を、イソプロパノール(1.47kg)と純水(0.157kg)との混合物中で再度スラリーにした。撹拌したスラリーを加熱して、0.5〜1.0時間還流した(80〜85℃)。得られた透明褐色の溶液を1.5時間かけて12℃に冷却し、さらに1.5時間同温度にて撹拌を続けた。得られたスラリーを1.5時間かけて2℃にさらに冷却し、さらに1.5時間同温度にて撹拌を続けた。この生成物をフィルターまたは2℃の遠心分離で単離した。リアクターとウェットケーキを数回(最大5回、合計1.84kg)に分けてイソプロパノールで洗浄した。オフホワイトからライトベージュ色の湿潤生成物を70℃および30mbarにて真空乾燥させた。テレスコープ式プロセスにおける2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドからの[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムの単離収率は、0.865kg(70.7%、検定補正なし)であった。
【0139】
反応1および2の変法
反応1で得た水性相に70〜75℃にてトルエン(1.60kg)を追加し、2回目の抽出を行った後、40〜60℃および80〜100mbarにてトルエン(1.80kg)を結合有機相から蒸留して除去した。補給用のトルエン(1.80kg)を蒸留残留物に添加し、得られた溶液の含水率をKarl Fischer法により分析し、0.15%未満であることを確認した。含水率が0.15%以上である場合は、0.15%未満になるまでトルエン(1.8kg)の蒸留除去と新しいトルエン(1.8kg)の添加を繰り返す。次いで、さらにトルエンを添加することなく、反応2を行った。反応変換率がHPLCピーク面積で99%を超えていることを確認した後、反応混合物を0〜5℃に冷却した。次いで、撹拌したリアクターの内容物を0〜5℃に維持するのに十分緩徐な速度にて、2−プロパノール(1.06kg)を添加した。添加により最初は吸熱作用が見られたが、2分もすると塩化チオニルの反応が高い発熱作用(191W/kg)を示した。得られた混合物を0〜5℃にてさらに1.5〜2.5時間撹拌し、生成物の析出と過剰な塩化チオニルのクエンチングを完了した。次いで、固体生成物を濾過により単離した。その後、リアクターそして生成物ケーキを冷たい2−プロパノール1.00kgの3分量で完全に洗浄した。洗浄した生成物ケーキを80〜85℃および30mbarにて真空乾燥させ、透明からベージュ色の[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを得た(0.916kg、2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドからの収率74.9%、検定補正なし)。
【0140】
(実施例3) [2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムの8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩への変換
【0141】
【化21】

原材料および収率
1.00Kg 3.72モル [2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−アンモニウム(出発材料)
0.745Kg 5.58モル 塩化アンモニウム
4.04Kg 30.3モル 30%NaOH溶液
0.122Kg 0.815モル L−酒石酸
0.160Kg シリカゲル60、63〜200μm
5.63Kg 純水
2.88Kg 1,2−ジクロロベンゼン
1.10Kg シクロヘキサン
5.49Kg アセトン
0.80Kg 8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩種結晶
0.273Kg 0.504モル 8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩(生成物、検定補正)
収率27.1%
8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンアンモニウム陽イオンを2個組み込み、分子量541.46を有する、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩の分子式に基づく。
分子量541.46の8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩生成物の理論的最大値0.5モルを生成することができる、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウム1モルに基づく。
【0142】
体積効率
体積効率は、[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウム出発材料1kg当たり5.68L(検定補正なし)、または1リットル当たり8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩生成物46.7g(検定補正)であった。
【0143】
プロセスの説明
[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムの8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンへの変換
オーバーヘッド撹拌機、ジャケット温度制御装置、窒素吸入口、および苛性スクラバー通気孔を備えたリアクターに、指定の順序で[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウム(1.00kg、3.72モル、1.00当量)、アルミニウムクロリド(0.745kg、5.58モル、1.50当量)および1,2−ジクロロベンゼン(2.88kg)を入れた。撹拌したリアクターの内容物を125〜130℃に加熱し、同温度にて14〜18時間撹拌を続けた。60〜70℃になると、暗色の溶液が得られた。反応の完了(HPLCピーク面積で出発材料1.0%未満)を確認した後、撹拌したリアクターの内容物を30〜35℃に冷却した。苛性スクラバーに通気孔を設けた第2リアクターに純水(1.60L)およびシリカゲル(0.160kg)を入れた。第2リアクターの撹拌した内容物を60℃未満に維持するのに十分緩徐な速度にて、第1リアクターから第2リアクターにFriedel Crafts反応混合物を移した。移し終えたら、保存期間を置かずに次の手順を行うことができる。55〜60℃の温度にてシリカゲルを中粗フィルターエレメントで濾過した後、濾過した固体を50〜60℃に予熱した純水(800mL)で洗浄した。結合した母液と洗浄液の濾過物を激しく撹拌して20〜25℃に冷却した。その後、撹拌を停止し、相を20〜25℃で分離させた。(この時点でプロセスの体積が5.68Lのピークを迎えた)。1〜2時間静置すると3相に分離した。最下部相を廃棄処分した。この暗色相は、大部分がpH3〜4の1,2−ジクロロベンゼン(1.64kg、1.33L)で構成されていた。生成物の約1%をこの相で失った。残りの2相もさらに2〜4時間撹拌せずに静置させて、下部相を排出し、保存した(相A)。この明色相(2.64kg、2.00L、pH2〜3)は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンをy約90%含有しており、上部相(pH0〜1の混濁水相2.24kg)は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを約1〜4%含有し、逆抽出のためにリアクターに残した。リアクターにシクロヘキサン(1.10kg)を、次いで30%NaOH水溶液(2.44kg、18.3モル、4.91当量)を入れた。得られた混合物(5.60L)を室温にて30分間激しく撹拌し、その後撹拌を停止して、相を25〜40分かけて分離させた。下部(水性)相のpHが13以上の場合は、この相を廃棄処分した。13以上でない場合は、さらに30%NaOH水溶液を添加し、この抽出を繰り返した。pH14で、水性相は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピン遊離塩基を0.1%しか含有していない。リアクターの残った上部(有機)相を排出し、保存した(相B)。リアクターを純水の後、適切な有機溶媒で洗浄し、残留塩を除去した。下部の明色生成物相(元の3相の中間相、相A)と上部相(有機相、相B)をリアクターに戻して、撹拌したリアクターの内容物に30%NaOH水溶液(1.60kg、12.0モル、3.23当量)を添加した。リアクターの内容物を0.5時間激しく撹拌した後、撹拌を中止し、相を15〜30分かけて分離させた。下部(水性)相を廃棄処分し、リアクターに残った上部(有機)相に純水(2.40kg)を添加した。リアクターの内容物を60〜65℃にて0.5時間激しく撹拌した後、撹拌を中止し、相を60〜65℃にて1.5〜2時間かけて分離させた。下部(水性)相を廃棄処分した。リアクターのジャケット温度を55〜60℃にし、115〜152torrから40torrに圧力を下げて真空蒸留を行うことにより、上部(有機)相の溶媒を除去した。遊離塩基である粗生成物8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンを、黄色から褐色の油蒸留残留物として得た。
【0144】
8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンの8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩の分割
蒸留残留物(遊離塩基である粗8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピン)をアセトン(0.400kg)に溶解した。得られた溶液を排出し、計量して、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピンの内容物をHPLCにより検定した。検定の結果をもとにアセトン、L−酒石酸および水の変化率を算出した。以下に示す量が、種結晶を添加する前に標的となる8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンズアゼピン:アセトン:L−酒石酸:水のモル比(1.00:9.6:0.25:3.6)を達成する上で一般的な量である。さらにアセトン(1.415kg)をリアクターに添加し、撹拌したリアクターの内容物を47〜52℃に加熱した。得られた溶液に、5〜15分かけて安定した速度で純水(0.211kg)中のL−酒石酸(0.1223kg、0.815モル、0.219当量)溶液を添加した。添加中に低粘度の懸濁液が形成されたが、混合温度を再度50℃に設定すると再度溶解した。酒石酸塩種結晶(0.80g)を50℃の溶液に添加して、混濁し、核生成を開始した。核生成は47〜52℃で撹拌しながら2〜3時間継続した。アセトン(0.473kg)をリアクターに添加しながら、撹拌したリアクターの内容物を50℃に維持した。得られた懸濁液を3〜5時間かけて緩徐に0〜5℃に冷却した。さらに1〜3時間0℃にて撹拌を続けた。中細フィルターエレメントで白色析出物を回収した後、アセトン(0.900kg)と純水(0.054kg)の混合物で洗浄した。ウェットケーキの鏡像体過剰率(ee)を判定した。
【0145】
鏡像体過剰率が98%未満であった場合は、ウェットケーキをリアクターに戻し、アセトン(1.90kg)と純水(0.400kg)の混合物を55〜60℃にて0.5〜1時間再度スラリーにした。1時間後に溶解しなかった場合、透明な溶液が得られるまで水(約0.160kg)を添加した。次いで、得られた混合物を2〜3時間かけて緩徐に0〜5℃に冷却した。さらに3〜5時間0℃にて撹拌を続けた。中細フィルターエレメントで白色析出物を回収した後、0〜4℃にてアセトン(0.400kg)で洗浄した。
【0146】
洗浄した固体生成物(296g湿量)を60〜65℃にて15〜20時間完全な真空下で乾燥させた。鏡像体過剰率約99.7%、含水率7.5重量%の8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩の収率は、295g(ラセミ[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムに基づき、生成物含水率を補正して27.1%)であった。
【0147】
(実施例4) 8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン半水和物への変換
【0148】
【化22】

原材料および収率
1.00Kg 1.71モル 8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩(出発材料)
0.508Kg 3.68モル 炭酸カリウム
5.40Kg 純水
10.2Kg 酢酸エチル
0.127Kg 3.47モル 塩化水素ガス
1.33g (R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン半水和物種結晶
0.741Kg 3.07モル (R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン半水和物(生成物、検定補正なし)
収率89.9%
8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンアンモニウム陽イオンを2個組み込み、分子量541.46を有する、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩の分子式に基づく。モルは検定補正するが、重量は補正しない。
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン半水和物生成物(分子量241.16)の理論的最大値2モルを生成することができる、分子量541.46の8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩出発材料1モルに基づく。
【0149】
体積効率
体積効率は、8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩出発材料1kg当たり6.91L(検定補正なし)、または1リットル当たり(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン半水和物生成物107g(検定補正なし)であった。
【0150】
プロセスの説明
オーバーヘッド撹拌機と窒素吸入口を備えたリアクターに、指定の順序で8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩(水7.5重量%含有1.00kg、1.71モル、0.500当量)、炭酸カリウム(0.508kg、3.68モル、1.076当量)、酢酸エチル(2.68kg)および純水(2.68kg)を入れた。得られた混合物を20〜25℃にて30〜40分間撹拌した後、相を0.5〜1時間かけて分離させて、下部(水性)相を廃棄処分した。純水(2.68kg)をリアクターに添加し、得られた混合物を10〜20分間激しく撹拌した。相を1〜1.5時間かけて分離させて、下部(水性)相を廃棄処分した。40〜45℃のリアクターの内容物を使用して、153torrから46torrに圧力を下げて真空蒸留を行うことにより、溶媒を除去した。残留物を20〜25℃に冷却した。酢酸エチル(3.81kg)をリアクターに入れ、蒸留残留物を撹拌しながら溶解した。得られた溶液の含水率をKarl Fischer法により分析し、0.8重量%未満であることを確認した。溶液を研磨フィルターで濾過した。先にKarl Fischer法による分析で含水率が0.05重量%未満であることを確認した酢酸エチル(2.33kg)をフィルターに通してリアクターを洗浄した。溶液と洗浄液の濾過物をともにリアクターに戻して、純水(39.9g)をリアクターに添加した。撹拌したリアクターの内容物を0〜5℃に冷却した後、塩酸塩ガス(19.0g、0.521モル、0.153当量)を添加しながら、撹拌したリアクターの内容物を0〜5℃に維持した。(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン半水和物種結晶(1.33g)を、撹拌したリアクターの内容物に添加し、0〜5℃にて核生成を開始した。残りの塩酸塩ガス(107.6g、2.95モル、0.864当量)を少なくとも1.5〜2時間かけて安定した速度でリアクターに入れながら、撹拌したリアクターの内容物を0〜5℃に維持した。得られた懸濁液を0〜5℃にて2時間撹拌した。白色析出物を中細フィルターエレメントで回収して、リアクター、次いで濾過した固体生成物を酢酸エチル(1.33kg)で洗浄した。ウェットケーキ(約867g)を、33〜37℃にて20時間、またはケーキ温度が4時間安定するまでのいずれか早い時点まで、完全な真空下で乾燥させた。その結果、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン半水和物(含水率3.7重量%、塩化物量14.7%、ROI 0.01%未満、鏡像体過剰率99.6%超、HPLC純度99%超、および不良異性体量0.1%未満)を約741g(89.9%)の収率で得た。
【0151】
本明細書に記載のものに加えて本発明の種々の改変が、上記の説明から当業者に明らかになるであろう。このような改変もまた、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物を調製する方法であって:
【化1】

1,2−ジクロロベンゼンの存在下において、約120℃〜約135℃の温度で、約14時間〜約18時間、式(I)の化合物を含む粗反応混合物を形成するのに適切な条件にて[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムをAlClと反応させる手順と、
前記粗反応混合物をシリカゲルおよび水と接触させて、懸濁物を形成する手順と、
前記懸濁物を濾過して、三相性液体混合物を形成する手順と、
前記三相性液体混合物から式(I)の化合物を単離する手順と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記三相性液体混合物の下部相から上部相と中間相とを分離する手順と、
前記上部相と前記中間相から式(I)の化合物を単離する手順も、
さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三相性液体混合物の前記下部相が1,2−ジクロロベンゼンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記三相性液体混合物の前記中間相が、式(I)の前記化合物を、前記三相性液体混合物の前記上部相または前記下部相に含有される式(I)の前記化合物の量よりも多くの量で含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記三相性液体混合物の前記中間相が、式(I)の前記化合物を約80%以上の量で含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記単離手順が、
前記中間相から前記上部相を分離する手順と、
抽出溶媒を使用して該上部相から式(I)の前記化合物を抽出して、該上部相から式(I)の該化合物を含む該抽出溶媒を分離する手順と、
式(I)の該化合物を含む該抽出溶媒を該中間相と合わせて、合同混合物を形成する手順と、
該合同混合物を塩基性水溶液で洗浄し、該合同混合物から該塩基性水溶液を分離して、洗浄した合同溶液を形成する手順と、
該洗浄した合同溶液を濃縮して、式(I)の該化合物を得る手順も、
さらに含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基性溶液が水酸化ナトリウム水溶液である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出溶媒がシクロヘキサンである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムが、前記[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムを形成するのに適切な時間および条件にて1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールと塩化チオニルとを反応させる手順を含む方法により調製される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールが前記[2−(4−クロロ−フェニル)−エチル]−(2−クロロ−プロピル)−塩化アンモニウムに実質的に変換されていることを判定する手順と、
続く手順で前記塩化チオニルの任意の残量をC1−6アルコールでクエンチする手順も、
さらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記C1−6アルコールがイソプロパノールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールが、前記1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを含むアルキル化混合物を形成するのに適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドと1−アミノ−2−プロパノールとを反応させる手順を含む方法により調製される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを含む前記アルキル化混合物と水とを混合して、二相性混合物を形成する手順と、
トルエンを含む抽出溶媒で該二相性混合物から1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールを抽出して、トルエンと該1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含み、水性の下部相と上部相とから本質的に構成される新規の二相性混合物を形成する手順と、
該水性の下部相からトルエンと該1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む前記上部相を分離する手順と、
共沸蒸留によりトルエンと該1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む該上部相から水を除去して、トルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む溶液を形成する手順も、
さらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記トルエンと1−[2−(4−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−プロパン−2−オールとを含む溶液が、約0.5%以下の水を含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドが、該2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを形成するのに適切な時間および条件にて2−(4’−クロロフェニル)エタノールを三臭化リンと反応させる手順を含む方法により調製される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
2−(4’−クロロフェニル)エタノールと三臭化リンとの前記反応が、溶媒の非存在下において行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
2−(4’−クロロフェニル)エタノールと三臭化リンとを反応させる前記手順が、
約10℃未満の温度にて三臭化リンを前記2−(4’−クロロフェニル)エタノールに添加して、臭素化反応混合物を形成する手順と、
約20℃〜約30℃の温度の後、約75℃〜約85℃に該臭素化反応混合物を加熱する手順と、
を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
約20℃〜約30℃の温度に前記臭素化反応混合物を加熱する前記手順が、約1時間〜約3時間維持される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
約75℃〜約85℃の温度に前記臭素化反応混合物を加熱する前記手順が、約2時間〜約4時間維持されて、前記2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む混合物を形成する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
約5℃〜約20℃の温度にて前記2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む前記混合物に水を添加して、上部の水性相と該2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む下部相とから本質的に構成される二相性液体混合物を形成する手順と、
該二相性液体混合物の該上部の水性相から該2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む該二相性液体混合物の該下部相を分離する手順も、
さらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記2−(4’−クロロフェニル)エチルブロミドを含む前記下部相が実質的に純粋である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
以下の式(Ia)および(Ib)の化合物の混合物を分割する方法であって:
【化2】

アセトンを含む溶媒の存在下において化合物の該混合物をL−(+)−酒石酸と接触させて、該化合物のL−(+)−酒石酸塩を形成する手順と、
該化合物の該L−(+)−酒石酸塩を析出する手順であって、得られた析出物が式(Ia)の該化合物の該L−(+)−酒石酸塩で富化される、手順と、
アセトンと水とを含む溶液に該析出物を約45℃〜約60℃の温度にて溶解して、溶解した析出物を含有する溶液を形成する手順と、
溶解した析出物を含有する該溶液を約−5℃〜約10℃の温度に冷却する手順と、
式(Ia)の該化合物の該L−(+)−酒石酸塩を含有する第2の析出物を約98%以上の鏡像体過剰率で析出する手順と、
を含む、方法。
【請求項23】
式(II)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を調製する方法であって:
【化3】

(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]アゼピニウムヘミ酒石酸塩を中和して、遊離塩基である(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンを形成する手順と、
該遊離塩基である(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンを塩酸と接触させて、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩を形成する手順と、
水の存在下において該(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩を結晶化して、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を形成する手順と、
を含む、方法。
【請求項24】
以下の式(II)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を調製する方法であって:
【化4】

水および酢酸エチルの存在下において、以下の式の8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾアゼピニウムヘミ酒石酸塩を:
【化5】

炭酸カリウムと中和して、水性相と、以下の式(Ia)の(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン
【化6】

を含む酢酸エチル相とから本質的に構成される二相性液体混合物を形成する手順と、
該二相性液体混合物の該水性相から、該二相性液体混合物の該酢酸エチル相を分離する手順と、
水の存在下において該酢酸エチル相を塩酸と接触させて、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンの塩酸塩を形成する手順であって、水と(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンの比が少なくとも1:2である手順と、
(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピンの該塩酸塩を結晶化して、(R)−8−クロロ−1−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン塩酸塩半水和物を形成する手順と、
を含む、方法。
【請求項25】
前記二相性液体混合物が実質的にエマルジョンを含まない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記接触手順が約0℃〜約25℃の温度にて行われる、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記接触手順の前記塩酸がガス形態である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−532470(P2009−532470A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504248(P2009−504248)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/008170
【国際公開番号】WO2007/120517
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(500478097)アリーナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (97)
【Fターム(参考)】