説明

Aβを標的とする免疫療法のPETモニタリング

【課題】本発明は、Aβを標的とする免疫療法をモニタリングする方法を提供する。
【解決手段】前記方法は、アミロイド沈着に結合するPETリガンドを投与し、脳中のPETリガンドを検出して、アミロイド沈着のレベル及び/又は分布の指標を提供することに関連する。驚くべきことに、本出願のデータが示すのは、他のマーカーの全部では無くともそのほとんどのものの統計学上有意な効果が検出される前に、治療開始後の患者においてアミロイド沈着の統計学上有意な減少が早期且つ一貫的に起こることである。結果として、本方法が可能にするのは、Aβを標的とする免疫療法に患者が応答しているかどうかを早期に検出することと、必要であれば、免疫療法の治療計画を調整することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルツハイマー病(AD)は、老年認知症を生じる進行性疾患である(Selkoe, TINS 16:403 (1993);Hardyら, WO92/13069; Selkoe, J. Neuropathol. Exp. Neurol. 53:438 (1994);Duffら, Nature 373:476 (1995);Gamesら, Nature 373:523 (1995)を総合的に参照されたい)。広く言えば、この疾患は2つのカテゴリーに該当する:遅発型で、老年時(65歳以上)に起こるもの及び早期発症型で、老年期のかなり前(つまり、35〜60歳の間)に発症するもの。この2つの型の疾患においてはその病理は同じであるが、より若い年齢で開始する症例においては、その異常はより重篤で広範囲にわたる傾向がある。前記疾患は、老人斑、神経原線維変および脳神経細胞消失を特徴とする。神経原線維変とは、2つの繊維が対をなして互いに絡み合うものからなる微小管結合タウタンパク質の細胞内沈着である。老人斑(つまり、アミロイド斑)とは、脳組織切片の顕微鏡解析により目視可能な細胞外アミロイド沈着をその中心に有する、直径150μmまでの破壊された神経網領域である。脳内アミロイド斑の蓄積は、ダウン症候群や他の認知障害とも関連する。
【背景技術】
【0002】
そのプラーク(斑)の主要構成成分は、Aβ又はβアミロイドペプチドと称されるペプチドである。Aβペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と称されるより大きい膜貫通糖タンパク質中の39〜43アミノ酸からなる4kDaの内部断片である。異なるセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解処理の結果、Aβに主として見出されるのは、40アミノ酸の長さのショートフォームと、42〜43アミノ酸の長さの範囲にあるロングフォームとの両者である。APPの疎水性膜貫通ドメインの部分がAβのカルボキシ末端に見られ、特にロングフォームの場合、この部分はAβがプラークへと凝集する能力を説明する可能性がある。
【0003】
Aβに対する能動的および受動的免疫療法計画の両者が、遺伝子導入マウス中の脳内Aβ沈着を減少させ(Schroeterら, J. Neurosci. 28:6787-6793 (2008);Bardら, Nat. Med. 6:916-919 (2000))、Aβオリゴマーの有するシナプス毒性作用をブロックし(Shankarら, Nat. Med. 14:837-842 (2008))、認知機能低下を阻害する(Morganら, Nature, 2000; 408:982)ことが報告されている。マウスにおける免疫療法後の脳アミロイド沈着の解析は、マウスの屠殺後に実施された。臨床試験において免疫療法を受けたヒト患者は死後分析され、アミロイド沈着の残留レベルが低いことが示された(Nicoll, Nat Med. 9:448-452 (2003))。治療後の沈着の死後分析は、患者における治療モニタリングと治療調整を可能にするものでは無い。体液、MRI又は認知機能から測定可能な他の治療の指標は、生存している患者において測定可能であるが、ゆっくりとしか変化しない可能性がある。従って、長期にわたる治療後及び/又は治療中患者と対照群患者とからなる大規模な集団において比較された場合にのみ、意味のある違いが顕在化する。小分子リガンド(特に、PiB)を用いたPETイメージングにより、アルツハイマー病を有する被検者中でアミロイド沈着の増加を検出したことが報告されている(Rabinovici, Behav. Neurol. 9:117-28 (2009))。しかしながら、免疫療法に応答する生存ヒト患者においてこれらの沈着が変化する程度と一貫性は報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
<本発明の簡単な概要>
本発明は、Aβを標的とする免疫療法を受ける患者の治療をモニタリングする方法を提供する。前記方法は、Aβを含むアミロイド沈着に結合する小分子ポジトロン放射型断層撮影法リガンド(PETリガンド)を患者に投与し、PETを使用して脳中のPETリガンドを検出して、患者脳中のAβのアミロイド沈着レベルの指標を提供することに関連する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態では、前記PETリガンドは、Aβのコンゴレッド結合部位に結合する。ある実施形態では、前記PETリガンドは、Aβの2-(l-{6-[(2-フルオロエチル-(メチル)アミノ]-2-ナフチル}エチリデン)マロノニトリル(FDDNP)結合部位に結合する。
【0006】
ある実施形態では、PETリガンドは以下からなる群より選択されるもの又はその薬理学的に許容出来る塩である。
【化10】

式中、
各R1は、H、NH2、及びOHからなる群より独立して選択され;
R2は、CO2Hであり;
R3は、OHであるか;又はR2及びR3は、それらが結合する原子と組み合わされて、SO3H及びNH2からなる群より選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい融合ベンゼン環を形成し;
各R4及びR5は、H及びSO3Hからなる群より独立して選択されるか、;又は、R4及びR5は、それらが結合する原子と組み合わされて、融合ベンゼン環を形成し;
各R6及びR7は、HやCH3からなる群より独立して選択され;
Y1は、CR8、N及びN-Mからなる群より選択され、式中、Mは、Zn、Ni、Cu、及びCdからなる群より選択される金属であり、;R8は、Hであるか、又は式:
【化11】

を有し;
Y2は、CR9及びNからなる群より選択され;
R9は、H、OMe、Br、及びIからなる群より選択され;
R10は、-OR10a及び-NHCH3からなる群より選択され;
R10aは、H及びMeからなる群より選択され;
各R11は、H、OH、OMe、及びCO2Hからなる群より選択され;
各R12は、式:
【化12】

を有する群から選択され;
下付添字nは、1又は2の整数であり;nが1の場合、右の括弧から伸びている結合は、Hへの結合を示し;
波線は、残りの分子への結合点を示し;並びに
前記PETリガンドの少なくとも1つの原子が、11C、13N、15O、18F、又は123Iからなる群より選択される放射標識で置き換え又は置換される。
【0007】
ある実施形態では、PETリガンドは、以下からなる群より選択される。
【化13】


【0008】
ある実施形態では、PETリガンドは、以下からなる群より選択される式又はその薬理学的に許容出来る塩を有する。
【化14】

式中、
R13は、-N(CH3)2及び-N(CH3)CH2CH2Fからなる群より選択され;
R14は、-Hであり;
R15は、-CH3及び-C(CH3)3からなる群より選択され;又はR14及びR15は、それらが結合する原子と組み合わされて、融合シクロヘキシル環を形成し;
Y3はOやC(CN)2からなる群より選択され;
R16は、-OCH3及び-CH2CH(CH3)2からなる群より選択され;並びに
前記PETリガンドの少なくとも1原子が、11C、13N、15O、18Fや123Iからなる群より選択される放射標識で置き換え又は置換される。
【0009】
ある実施形態では、PETリガンドは以下からなる群より選択される式を有する。
【化15】


【0010】
ある実施形態では、PETリガンドは、以下からなる群より選択される式又はその薬理学的に許容出来る塩を有する。
【化16】

式中、
R17は、H、CH3、OH、OCH3、O(CH2)2F、OCH2OCH3、CO2CH3、CN、NH2、Br、I、及びNO2からなる群より選択され;
Y4は、O又はNR4aであり;式中、R4aはH及びCH3からなる群より選択され;
Y5は、S及びOからなる群より選択され;
Y6は、CH、N及びNCH3からなる群より選択され;
Y7は、N、CH及びCFからなる群より選択され;
R18は、H、F及びIからなる群より選択され;
R19は、H、CH3、(CH2)mF及びCH2(C6H4)Fからなる群より選択され;又は、Y4がNR4aの場合、R4a及びR19はそれらが結合する窒素と組み合わされてモルホリニル若しくは4-メチルピペリジニル環を形成し;
下付添字mは、2、3、又は4の整数であり;
R20は、H及びIからなる群より選択され;
R21は、Br及びIからなる群より選択され;
R22は、H、F、Br、I、CO2CH3及び-OR22aからなる群より選択され;
R22aは、H、CH3
【化17】

からなる群より選択され;
Y8は、N及びCR23からなる群より選択され;
R23は、H及びIからなる群より選択され;
R24は、H、OH、OCH3、SCH3、SO2CH3及び-N(R24a)(R24b)からなる群より選択され;
R24a及びR24bの各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
Y9は、CH又はNであり;
R25及びR26の各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
R27は、H、CH3、OH、O(CH2)2F及びFからなる群より選択され;
R28は、H、F及びIからなる群より選択され;
Y10は、S又はOであり;
R29は、F、Cl及び-N(R29a)(R29b)からなる群より選択され;
R29a及びR29bの各々は、H、CH3及びCH2CH3からなる群より独立して選択され;
各R30及びR31は、Hであるか又はそれらが結合する原子と組み合わされて融合ベンゼン環を形成し;
R32は、CH3、Br、I、OH、NO2、NH2、NHCH3及びN(CH3)2からなる群より選択され;
R33は、H及びIからなる群より選択され;
R34は、H、Br、I、NH2及びN(CH3)2からなる群より選択され;
各R35、R36及びR37は、H及びN(R37a)(R37b)からなる群より独立して選択され;
R37a及びR37bの各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
R38は、OH及びOからなる群より選択され;式中破線の結合は、R38がOHの場合単結合の存在を示し、R38がOの場合二重結合を示す;
R39は、CH3及びCH2CH3からなる群より選択され;
R40は、-CH2CH2Fであり;
R41は、I、Br、CH3及びHからなる群より選択され;
R42は、H及びIからなる群より選択され;
R43は、-OR43a、-NR43aR43b及び-Brからなる群より選択され;
R43aは、H、CH3、CH2CH2F、からなる群より選択されるか、又はR43が-NR43aR43bの場合、各々が結合する窒素と組み合わされてモルホリニル基を形成し;並びに
前記PETリガンドの少なくとも1原子が、11C、13N、15O、18Fや123Iからなる群より選択される放射標識で置き換え又は置換される。
【0011】
ある実施形態では、PETリガンドは、以下からなる群より選択される。
【化18】


【0012】
ある実施形態では、PETリガンドは、[18F]AV-14、[18F]AV-144、[11C]AZD2995、[18F]-AZD4694及び[18F]-SMIBR-W372からなる群より選択される。
【0013】
ある実施形態では、指標は、患者脳中Aβのアミロイド沈着レベルに関する多次元画像である。ある実施形態では、PETリガンドは可溶性Aβと比べアミロイド沈着に優先的に結合する。ある実施形態では、PETリガンドは線維状のアミロイドに結合する。ある実施形態では、PETリガンドはC11-PiBである。ある実施形態では、PETリガンドは末梢血管から投与される(例、静脈投与)。
【0014】
ある実施形態では、PETリガンドは12〜18mCiの用量で投与される。ある実施形態では、投与工程と検出工程はAβを標的とする免疫療法の開始前後に行われて、Aβアミロイド沈着レベルは前記療法開始後に減少する。
【0015】
ある実施形態では、Aβアミロイド沈着レベルの減少が検出された場合、FDG、BBSI、VBSI、CSF Aβ42、CSFタウ、及びCSF p-タウからなる群より選択されるバイオマーカーの有意な変化は検出できない。ある実施形態では、Aβアミロイド沈着レベルの減少が検出された場合、認知機能基準での有意な改善は検出できない。ある実施形態では、投与工程と検出工程は、Aβを標的とする免疫療法の開始後四半期〜2年ごとの頻度で実施される。
【0016】
ある実施形態では、投与工程と検出工程は、少なくとも第1回目と第2回目が実施される。第1回目は、Aβを標的とする免疫療法開始前であり、第2回目はその後9〜18ヶ月の間である。そこでは、Aβアミロイド沈着レベルが第1回目と第2回目の間で減少する。ある実施形態では、投与工程と検出工程は、Aβを標的とする免疫療法開始前とその78週間後に実施される。
【0017】
ある実施形態は、また、MRI又はCATスキャンを実施して、Aβアミロイド沈着の画像を患者脳のMRI又はCAT画像上に重ね合わせることに関する。
【0018】
ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法の治療計画は、そのモニタリングに応じて調整される。ある実施形態では、前記免疫療法は、(もしあれば)FFDG、BBSI、VBSI、CSF Aβ42、CSFタウ及びCSF p-タウからなる群より選択されるバイオマーカーの測定値並びに(もしあれば)認知機能の測定値に関係なく調整される。ある実施形態では、治療計画が調整された場合、FFDG、BBSI、VBSI、CSF Aβ42、CSFタウ及びCSF p-タウからなる群より選択されるバイオマーカーへのAβを標的とする免疫療法の有意な効果が検出できない。ある実施形態では、治療計画が調整された場合、Aβを標的とする免疫療法による認知機能基準への有意な効果が検出できない。ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法の治療計画は、Aβアミロイド沈着の検出レベルを減少させる導入的治療計画から、モニタリングに対応するAβアミロイド沈着レベルの減少を維持する維持的治療計画へと調整される。ある実施形態では、バピネオズマブ(bapineuzumab)の用量は、1mg/kgから0.5mg/kgへと減少される。ある実施形態では、モニタリングによって脳中のAβアミロイド沈着レベルがAβを標的とする免疫療法の開始後少なくとも18ヶ月の期間に渡って増加したことの指標が得られると、そのモニタリングに対応してAβを標的とする免疫療法を終了する。ある実施形態では、モニタリングによって、Aβを標的とする免疫療法を行ったところ、療法開始後18ヶ月の期間中に、前記Aβアミロイド沈着レベルを減少させるか、さらなる増加を阻害するというポジティブな(ただし最適ではない)応答を生じたという指標が得られると、投与用量または投与頻度を前記モニタリングに対応して増加させる。
【0019】
ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法がバピネオズマブの投与により行われ、前記バピネオズマブ用量が0.1〜0.5mg/kgから1mg/kgへとモニタリングに対応して増加される。ある実施形態では、前記バピネオズマブの投与頻度が前記モニタリングに対応して増加される。ある実施形態では、脳中のAβアミロイド沈着の検出レベルは、療法開始後増加するか又は変化せず、患者へのその後の投与はバピネオズマブの用量または頻度を増加させる。ある実施形態では、Aβを標的とする前記免疫療法がバピネオズマブ投与により行われ、療法開始後、前記脳中の前記Aβアミロイド沈着レベルがベースラインに比べて少なくとも10%減少されるのが検出される。
【0020】
ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法が、AβのN末端エピトープに結合する抗体の投与により行われる。ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法が、患者へのバピネオズマブの投与により行われる。ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法が、患者へのAAB-003の投与により行われる。ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法が、結合体として非相同の担体へ連結されたAβ断片を患者へ投与することにより行われる。ある実施形態では、前記Aβ断片はAβ1〜7であり、前記担体はCRM197であってもよい。ある実施形態では、前記Aβ断片はAβ16〜23であり、前記担体はCRM197であってもよい。
【0021】
ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法は、触媒抗体ABP 102(Abzyme、Abiogen Pharma社製);ACI-01 Ab7 C2(AC Immune Genentech社);AZD-3102(Astra Zeneca社/Dyax社);IVIg(Gammagard S/D免疫グロブリン静脈注射用(ヒト、Baxter Bioscience社製));BAN2401(BioArctic Neuroscience AB社/エーザイ社;R1450(Hoffman-LaRoche社/MorphoSys社);LY2062430(Eli Lilly社);h3D6(Eli Lilly社);ACU-5A5(Merck社/Acumen社製αADDL mAb);α-アミロイドスフェロイド(ASPD)抗体(三菱ウェルファーマ(株));AN1792患者のPBMC由来の抗体(Neurimmune Therapeutics AG社);BC05(武田薬品工業(株));CEN701-CEN706抗体(Centocor社/Johnson & Johnson社);及びPF-04360365(RN-1219(h2286)とも称されるもの;Pfizer社/Rinat Neurosciences社製)からなる群より選択される。
【0022】
ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法は、患者への凝集Aβに結合する抗体の投与により行われる。ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法は、患者への可溶性Aβに結合する抗体の投与により行われる。
【0023】
ある実施形態では、PETリガンドが、脳の前帯状回、後帯状回、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び/又は後頭葉にて検出される。ある実施形態では、画像は、Aβアミロイド沈着レベルをカラースケールで表す。
【0024】
ある実施形態では、患者はApoE4保因者である。ある実施形態では、患者はApoE4非保因者である。
【0025】
ある実施形態は、2-[フッ素-18]フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース(FDG)を患者に投与し、脳中の前記FDGをPETを使用して検出し、グルコースの脳代謝画像を提供することに関連する。
【0026】
本発明は、臨床試験の実施方法をさらに提供する。そのような方法は、脳中にAβを含むアミロイド沈着を特徴とする疾患を有するか又はそのリスクが高い多くとも50人の患者の集団を、治療群及びプラセボ群に割り当て;Aβを標的とする療法を前記治療群に、プラセボを前記プラセボ群に投与し;前記療法又は前記プラセボの投与の前と後での前記治療群および前記プラセボ群におけるアミロイド沈着を、Aβを含むアミロイド沈着に結合する小分子PETリガンドのPETスキャンにより比較し;前記治療群における前記アミロイド沈着が、前記プラセボ群における前記アミロイド沈着に比べて有意に減少されることに関連する。任意ではあるが、前記集団は10〜30人の患者からなる。
【0027】
本発明は、アルツハイマー病に対する予防方法において、認知機能障害が見られないか又は軽度の認知機能障害を有するがアルツハイマー病と診断されたことが無い患者の脳中のアミロイド沈着レベルを、Aβを含むアミロイド沈着に結合する小分子PETリガンドのPETスキャンにより測定し;並びに、前記患者の脳中のアミロイド沈着レベルが正常レベルを超えるとの測定に対応して、Aβを標的とする免疫療法を前記患者に投与する方法をさらに提供する。ある実施形態では、患者の脳中の前記アミロイド沈着レベルが正常レベルを超えると測定される以前に、測定が複数回実施される。ある実施形態では、測定は6ヶ月から5年の間隔で実施される。ある実施形態では、測定を1年に1回実施する。ある実施形態では、正常レベルは、アルツハイマー病における沈着の発達と関連しない脳領域で測定される患者の脳中レベルである。ある実施形態では、正常レベルは、アルツハイマー病を有しないか又はそのリスクの高くない患者の集団でのレベルである。ある実施形態では、測定を初めて実施するのは、45〜75歳の間の年齢であり、50歳であってもよい。ある実施形態では、患者におけるアミロイド沈着レベルは、Aβを標的とする免疫療法の投与に対応して減少される。ある実施形態では、Aβを標的とする免疫療法を投与後少なくとも10年間、患者はアルツハイマー病が無いままである。
【0028】
<定義>
基本的な抗体構造単位の構成は、四量体サブユニットである。各四量体は、2種類のポリペプチド鎖の同一ペアから成る。それぞれのペアは、一本の「軽」鎖(約25kDa)と一本の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。それぞれの鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主として司る約100〜110以上のアミノ酸からなる可変領域を含む。それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主として司る定常領域を規定する。
【0029】
軽鎖は、κ又はλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、εに分類され、それぞれIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEとして抗体のアイソタイプを規定する。軽鎖および重鎖中、可変領域と定常領域は、約12以上のアミノ酸からなる"J"領域により連結される。重鎖は、また、約10以上のアミノ酸からなる"D"領域をも含む(Fundamental Immunology (Paul, W., 2nd ed. Raven Press, N.Y., 1989),Ch.7を全体として参照されたい)(あらゆる目的のために、その全体が参照により取り込まれる)。
【0030】
各軽/重鎖ペアの可変領域が抗体結合部位を形成する。従って、完全な抗体は2つの結合部位を有する。二重機能性抗体または二重特異性抗体を除いては、2つの結合部位は同一である。それらの鎖は全て、比較的保存されているフレームワーク領域(FR)が3つの超可変領域(相補性決定領域またはCDRとも称されるもの)で連結されている同様な全体構造を示す。各ペアの2つの鎖由来のCDRは、フレームワーク領域の側に配置されて、特異的エピトープへの結合を可能にする。軽鎖と重鎖の両者は、N末端からC末端へと、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。アミノ酸の各ドメインへの割り当ては、Kabatの定義(「Sequences of Proteins of Immunological Interest(免疫目的タンパク質の配列)」(アメリカ国立衛生研究所、Bethesda、MD、1987及び1991)又はChothia & Leskの定義(J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);Chothiaら, Nature 342:878-883 (1989))に従っている。
【0031】
抗体または免疫グロブリンに言及する場合は、完全な抗体及びその結合断片を含む。典型的には、断片はそれが由来する完全抗体と、抗原への特異的結合に関して競合する。断片は、分離した重鎖及び軽鎖、Fab、Fab'、F(ab')2、Fabc、並びにFvを含む。分離した鎖には、NANOBODIES(商標)が挙げられる。(つまり、ラクダ又はラマ抗体の単離重鎖VH断片であるか、任意ではあるがヒト化されたもの)。単離VH断片は、ヒト抗体等の他の供給源から得ることも可能である。断片の生産は、組み換えDNA技術により又は完全な免疫グロブリンの酵素的若しくは化学的分離によって行う。用語「抗体」は、他のタンパク質に化学的に結合したもの若しくは他のタンパク質との融合タンパク質として発現された、一又は複数の免疫グロブリン鎖を含む。用語「抗体」は、二重特異性抗体も含む。二重特異性または二重機能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖ペアと2つの異なる結合部位を有する人工的ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体の生産は、ハイブリドーマの融合又Fab'断片の連結を含む各種方法により行うことができる。(例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990);Kostelnyら, J. Immunol. 148, 1547-1553 (1992)を参照されたい)。
【0032】
文脈上明らかに示されていなければ、PETリガンドと免疫療法で使用される抗体は標的に特異的に結合する。特異的結合とは、標的(例、プラークの構成成分)への化合物の結合を指す。その標的は、検出の幅が大きいもので、少なくとも一つの無関係の標的(例えば、アミロイド沈着に関連しない脳内の他の標的や、特に、無関係の疾患と関連する標的等)と区別できるものである。特異的結合は、特定の官能基間又は特定の空間的適合(例、鍵と鍵穴タイプ)間の結合形成の結果であってもよい。一方、非特異的結合は、通常ファン・デル・ワールス力の結果である。しかしながら、特異的結合は、化合物が一つ及びただ一つだけの標的に結合することを必ずしも意味しない。従って、ある化合物はいくつかの異なる標的に様々な強度で特異的に結合可能であり且つしばしば結合を示して、そして別の標的には非特異的に結合を示すのみである。好ましくは、特異的結合が非特異的結合から区別できるのと同様に、様々な程度の特異的結合(例えば、様々な状態のAβ凝集についてのもの)が互いに区別可能である。PETリガンド又は抗体のAβへの特異的結合が通常関与する結合定数は、106、107、108又は109M-1以上である。
【0033】
用語「ヒト化抗体」は、少なくとも一つのヒト化抗体鎖(つまり、少なくとも一つのヒト化軽鎖または重鎖、通常両鎖)を含む抗体を指す。用語「ヒト化抗体鎖」は、可変領域を有する抗体鎖(つまり、それぞれ軽鎖または重鎖)であって、その可変領域は、ヒト抗体配列(成熟型、生殖系列型、又はコンセンサス配列)に実質的に由来する可変領域フレームワークと非ヒト抗体(例、齧歯類、及び任意ではあるがマウス)に実質的に由来する相補性決定領域(CDR)(例、少なくとも一つのCDR、好ましくは二つのCDR、より好ましくは三つのCDR)とを含み、さらにはヒト抗体定常領域に完全に若しくは実質的に由来する定常領域を含む。CDRは、一般的にはKabatにより定義されるものであるが、Chothiaにより定義されるものか、若しくはKabat及びChothiaにより定義される複合型CDR領域であってもよい。
【0034】
用語「ヒト抗体配列に実質的に由来する」又は「実質的にヒト」とは、比較する目的でヒト抗体アミノ酸配列(成熟型、生殖系列型、又はコンセンサス配列)と並べた場合、その領域はヒトフレームワーク配列若しくは定常領域配列と少なくとも80〜90%(例、少なくとも90%)、好ましくは90〜95%、より好ましくは95〜99%の同一性(つまり、局所的配列同一性)を共有する。100%の同一性ではなくなるのは、例えば、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系列の置換、および復帰突然変異等の結果である。保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系列の置換、および復帰突然変異等の導入は、ヒト化抗体又は抗体鎖の「最適化」としばしば称される。用語「非ヒト抗体に実質的に由来する」又は「実質的に非ヒト」とは、非ヒト生物(例、マウス)のものに少なくとも80〜95%、好ましくは90〜95%、より好ましくは96%、97%、98%、若しくは99%同一である免疫グロブリン配列又は抗体配列を有することを意味する。
【0035】
用語「キメラ抗体」とは、抗体の軽鎖及び重鎖可変領域が第1の種(例、マウス又はラット)から由来し、並びに抗体の定常領域が第2の種(通常ヒト)に由来する抗体のことを指す。
【0036】
用語「エピトープ」とは、免疫グロブリン又は抗体(若しくはその抗原結合断片)が特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続アミノ酸またはタンパク質の三次元的折畳みにより近接する非連続アミノ酸から形成可能である。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、変性溶媒への曝露でも一般的に保持されるが、三次元的折畳みにより形成されたエピトープは、変性溶媒を用いた処理で一般的には失われる。エピトープは、独自の空間的立体構造中の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15アミノ酸から一般的に構成される。エピトープの空間的立体構造決定方法には、例えば、X線結晶解析および二次元核磁気共鳴分析法を含む。例えば、「Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology」(分子生物学の方法におけるエピトープマッピング手法), Vol.66, G.E. Morris, Ed. (1996)を参照されたい。
【0037】
同一エピトープを認識する抗体は、簡便な免疫測定法(標的抗原への他の抗体の結合を阻害するある抗体の能力を示すもの、つまり、競合結合試験)で同定可能である。競合的結合の測定を、参照抗体が共通の抗原(例、Aβ)へ特異的に結合することを被検免疫グロブリンが阻害するアッセイで行う。数多くの競合結合試験が知られている。例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接エンザイムイムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahliら, Methods in Enzymology 9:242 (1983));固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirklandら, J. Immunol. 137:3614 (1986)を参照されたい);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual(抗体:ラボマニュアル), Cold Spring Harbor Press (1988)を参照されたい);I-125標識を用いた固相直接標識RIA(Morelら, Mol. Immunol. 25(1):7 (1988)を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheungら, Virology 176:546 (1990));並びに直接標識RIA(Moldenhauerら, Scand. J. Immunol. 32:77 (1990))がある。一般的には、そのようなアッセイは固相表面に結合した精製抗原又はこれらの抗原のいずれかを有する細胞、非標識の試験免疫グロブリン、及び標識された参照免疫グロブリンの使用に関わる。競合的阻害の測定を、試験免疫グロブリンの存在下で固相表面または細胞に結合した標識量を決定することで行う。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合する抗体が過剰に存在する場合、参照抗体が共通抗原に特異的に結合するのを、少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、又は70〜75%以上阻害する。
【0038】
複数のAPPアイソフォームが存在する。例えば、APP695、APP751、及びAPP770がある。文脈上明らかに示されていない場合、APP内のアミノ酸の割り当て番号はAPP770アイソフォーム(例えば、GenBankアクセション番号P05067を参照されたい)の配列に従う。Aβペプチド配列及びそのAPP前駆体との関係性は、Hardyら,TINS20,155-158(1997)の図1に解説されている。例えば、Aβ42の配列は:
(表1)(配列番号:1)

である。
【0039】
AβのN末端エピトープとは、残基1〜11を有するエピトープを意味する。C末端領域内のエピトープとは、残基29〜43内のエピトープを意味する。中央領域内のエピトープとは、残基12〜28を有するエピトープを意味する。
【0040】
単量体Aβ、及び4〜10個の単量体からなる小さなオリゴマー化集合体(ADDL (Lambertら, PNAS May 26, 1998 vol.95, no.11, 6448-6453)としても知られる場合があるもの)は、水性溶液(例、体液(例、CSF))中で可溶である。インビトロ(in vitro)凝集により形成されるAβ又はインビボ(in vivo)中のプラーク形態のAβの高次集合体は、水性溶液に実質的に不溶である。凝集Aβは、ペプチドC末端(APPの膜貫通ドメインの一部)の疎水性残基に少なくとも一部依存して、一緒に保持されると考えられる。高次不溶性沈着は、アミロイド線維と称される場合もある。線維はクロスベータ構造を特徴とし界面活性剤及び変性溶媒中においてさえ実質的に不溶である(Schmidtら, PNAS 106, 19813-19818 (2009);Caiら, Current Medicinal Chemistry 24, 19-52 (2007)を参照されたい)。
【0041】
用語「Fc領域」とは、IgG重鎖のC末端領域を指す。IgG重鎖のFc領域の境界は若干異なり得るが、Fc領域は一般的には、およそアミノ酸残基Cys226からIgG重鎖(複数可)のカルボキシ末端にまたがるものとして定義される。
【0042】
用語「エフェクター機能」とは、抗体(例、IgG抗体)のFc領域にある活性のことを指し、例えば、エフェクター分子(例、補体及び/又はFc受容体)、つまり抗体の免疫機能(例、エフェクター細胞活性、溶解、補体が媒介する活性、抗体クリアランス、及び抗体半減期)のいくつかを制御することができるものに抗体が結合する能力を含む。エフェクター機能は、ヒンジ領域中の変異により影響される可能性もある。
【0043】
用語「Kabat番号付け」は、Kabatら ("Sequences of Proteins of Immunological Interest"(「免疫学的目的のタンパク質配列」),第5版 公衆衛生サービス部門,アメリカ国立衛生研究所, Bethesda, Md.(1991))における残基番号付けで規定され、本明細書中に参照により組み込まれる。
【0044】
用語「免疫賦活剤」とは、抗原と合わせて投与される場合抗原に対する免疫応答を誘起及び/又は増強する化合物であるが、単独投与された場合抗原に対する免疫応答を生じないものを指す。免疫賦活剤が免疫応答を増強することができるのは、いくつかの機構(例、リンパ球補充(lymphocyte recruitment)、B細胞及び/又はT細胞刺激、並びにマクロファージ刺激)による。
【0045】
用語「ApoE4保因者」を用いて、1又は2つのApoE4対立遺伝子を持つ患者を指す場合があり、「ApoE4非保因者」、「ApoE4非-保因者」又は"非ApoE4保因者"を用いてApoE4対立遺伝子を持たない患者を指す場合もある。
【0046】
軽度の認知機能障害の診断は、米国神経学会の2001年ガイドラインによってもよい。簡単には、これらのガイドラインは、男性又は女性自身の記憶問題(好ましくは第3者により確認されたもの);測定可能で正常より大きい記憶障害であって標準的な記憶評価試験で検出されるもの;正常で一般的な思考能力や通常の日常生活を営む能力の個別レポートを必要とする。
【0047】
アルツハイマー病又は脳中のAβアミロイド沈着を特徴とする他の疾患のリスクが高い個人は、被検者が決められた期間(例、5年)の間に疾患を発症するリスクが一般的集団に比べて有意に高くなる一又は複数の既知の危険因子(例、70歳を超えること、遺伝学的なもの、生化学的なもの、家族歴、前駆症状)を有するヒトである。
【0048】
統計的有意性は、p≦0.05のことを言う。マーカーのベースライン測定に相対的なマーカーの変化は、その変化が反復測定で標準誤差の範囲外である場合、有意と見なす。PETスキャンによるアミロイド沈着測定に関しては、標準誤差(例、同一患者における測定の再現性)は、約5%である。
【0049】
ポジティブな治療応答とは、アミロイド沈着の減少か、あるいはAβを標的とする免疫療法を受けない患者に起こるであろうアミロイド反応のさらなる増加を阻害することのいずれかを意味する。
【0050】
PETリガンド又は免疫療法で使用される薬剤の処方は、遊離酸若しくは塩基又は薬理学的に許容出来る塩(Bergら, 66 J. PHARM. SCI. 1-19 (1977);C.G. Wermuth及びP.H. Stahl (eds.)"Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use"(「医薬用塩:特性、選択、及び使用」),Verlag Helvetica Chimica Acta、2002[ISBN 3-906390-26-8]を全体として参照されたい)としてなされてもよい。薬理学的に許容出来る塩は、遊離酸又は塩基の生物学的活性を実質的に保つ。医薬用塩は、遊離酸又は塩基形態に対応するものよりも、水性溶媒及びプロトン性溶媒により可溶である傾向がある。製薬上許容できる酸性塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(つまり、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))を含む。適する塩基性塩の例には、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、及びジエタノールアミン塩を含む。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1が示すのは、第78週までを通してのピッツバーグ化合物-Bのポジトロン放射型断層撮影法([11C]PiB PET)平均に関する、経時的なベースラインからの推定平均変化量である。データポイントは、各々95%の信頼区間を持つ最小二乗平均を示す。*第78週でのプラセボ治療患者とバピネオズマブ治療患者との間の差異=-0.24;p=0.003である。
【0052】
図2が示すのは、改変治療対象(intent-to-treat)集団中の各患者に関するプロットであり、ベースラインのピッツバーグ化合物-Bのポジトロン放射型断層撮影法([11C]PiB PET)平均、最後の受診時の[11C]PiB PET平均、及びベースライン(開始時)から最後の受診までの[11C]PiB PET平均の変化量を示す。黒丸は、第78週でのデータを有する患者を示す。白丸は、第78週以前に最後の受診をした患者を示す。水平な線は、各治療群の平均を表す。
【0053】
図3が示すのは、2人のバピネオズマブ治療患者(A、B)と2人のプラセボ治療患者(C、D)のピッツバーグ化合物-Bのポジトロン放射型断層撮影法([11C]PiB PET)画像である。ベースラインから第78週までの平均[11C]PiB PET変化量を、各患者(A〜D)の各パネルの上部中央に示す。スケールバーは、小脳に相対的なPiB取り込み比率をカラーで示す。治療前および治療後スキャンは、同一平面における磁気共鳴画像法で一緒に登録された画像に由来する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
<I.総論>
本発明は、Aβを標的とする免疫療法をモニタリングする方法を提供する。前記方法は、アミロイド沈着に結合するPETリガンドを投与し、脳中のPETリガンドを検出して、アミロイド沈着のレベル及び/又は分布の指標を提供することに関連する。驚くべきことに、本データが示すのは、他のマーカーの全部では無くともそのほとんどのものの統計学上有意な効果が検出される前に、治療開始後の患者においてアミロイド沈着の統計学上有意な減少が早期且つ一貫的に起こることである。結果として、本方法が可能にするのは、Aβを標的とする免疫療法に患者が応答しているかどうかを早期に検出することと、必要であれば、免疫療法の治療計画を調整することである。
【0055】
<II.PETリガンド>
ポジトロン放射型断層撮影法(PET)は、組織中のPETリガンド濃度の確実な定量を時空間的イメージングにより可能にする非侵襲性画像技術である。この技術が関与するのは、陽電子又はガンマ線を放出する放射性核種で標識されたPETリガンド(放射性トレーサとしても知られているもの)の使用である。
【0056】
最も一般的な陽電子放出型放射性核種は、15O、13N、11C、18Fであり、それらは加速器で生成され、それぞれ2、10、20、及び110分の半減期を有する。最も広く使用されているガンマ線放出型放射性核種は、18F、99mTc、201Tl、及び123Iである。フッ素18は、炭素11よりいくらか有利である:(1)フッ素18は炭素11よりも陽電子エネルギーが低い(0.635 対 0.96MeV);(2)フッ素18の半減期が長いので、PET試験の実施を、必要ならば2時間より長くできる;(3)その長い半減期は放射能合成に便利である;並びに(4)サイクロトロンが利用可能で無い場合、放射性リガンドは施設外で輸送可能である。
【0057】
PETスキャンは、体内の生理活性分子上に導入される陽電子放出型放射性核種(トレーサ)により放出されるガンマ線を検出する。本方法で使用されるPETリガンドは、アミロイド沈着構成成分として又はそうでなければアミロイド沈着構成成分に結合する部分へと連結される構成成分としてそのような放射性核種を含む。従って、本方法で使用されるPETリガンドは、Aβ又は(アルツハイマー病や脳内Aβ沈着を特徴とする関連疾患に見出される)アミロイド沈着の他の構成成分に結合する。アミロイド沈着は、アルツハイマー病患者の脳内に存在するAβ凝集体であり、プラークとしても知られ、水性溶液(例、体液(例、CSF))中で実質的に不溶である。より成熟したプラークは、また、界面活性剤および変性溶媒中で実質的に不溶である(例、6Mグアニジン-HCl、室温での長期間のインキュベーションでは、量的に可溶化しない)。アミロイド沈着は、Aβのインビトロ凝集により、不溶性塊をも形成可能である。アミロイド沈着はβプリーツシート構造を有し、コンゴレッド及び/又はチオフラビン-T色素で染色される。本発明のPETリガンドは、アミロイド沈着形態のAβに好ましくは結合し、その親和性は少なくとも107、108、又は109M-1である。沈着への結合親和性は、沈着がインビトロ、遺伝子導入動物中で形成されるかどうか又はヒトから得られたものかどうかに依存する場合がある。ヒトから単離されたアミロイド沈着への親和性は、好ましくは少なくとも107、108、又は109M-1である。脳内アミロイド沈着への結合の役割は、PETリガンドを脳内の不溶性構造物に固定することであり、その結合により画像を発生させる。いくつかのPETリガンドは、他の形態のアミロイド沈着よりも線維状のアミロイドに優先的に結合する。PETリガンドは、アミロイド沈着への結合と共に、可溶性形態のAβ(つまり、単量体及び小さなオリゴマー化集合体(ADDLとして知られることもあるもの))に結合する場合もしない場合もある。いくつかのPETリガンドは、凝集形態よりも可溶性形態のAβに優先的に結合する。他の構造物(例、神経細胞)への結合を介して脳内に固定化される可溶性形態のAβをイメージングするために、そのような形態が用いられる。VMAT-2(Swiss-Protアクセッション番号Q05940)へのPETリガンドも使用可能である。
【0058】
PETリガンドは、好ましくは小分子であり、小分子の分子量は、1000Daより小さく好ましくは500Daより小さい。PETリガンドは、好ましくは血液脳関門を通過することができるので末梢投与を可能にする。
【0059】
Aβへの3種類の結合部位(コンゴレッド(CR)、チオフラビン-T(Th-T)、及び2-(1-{6-[(2-フルオロエチル-(メチル)アミノ]-2-ナフチル}エチリデン)マロノニトリル(FDDNP)(Caiら Current Medicinal Chemistry, 2007, 14, 19-52)へのもの)の内一つを標的とするAβイメージング用に、いくつかのPETリガンドは開発されてきた。コンゴレッド、チオフラビン-T、若しくはFDDNPと同じ又は重なり合うエピトープへの結合は、PETリガンドとコンゴレッド又はチオフラビン-Tとの間の競合アッセイにより識別可能である。CR型PETリガンドの例は、以下の一般式を有している:
【化19】

式中、
各R1は、H、NH2、及びOHからなる群より独立して選択され;
R2は、CO2Hであり;
R3は、OHであるか;又はR2及びR3は、それらが結合する原子と組み合わされて、SO3H及びNH2からなる群より選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい融合ベンゼン環を形成し;
各R4及びR5は、H及びSO3Hからなる群より独立して選択されるか、;又は、R4及びR5は、それらが結合する原子と組み合わされて、融合ベンゼン環を形成し;
各R6及びR7は、H又はCH3からなる群より独立して選択され;
Y1は、CR8、N及びN-Mからなる群より選択され、式中、Mは、Zn、Ni、Cu、及びCdからなる群より選択される金属であり;R8は、Hであるか、又は式:
【化20】

を有し;
Y2は、CR9及びNからなる群より選択され;
R9は、H、OMe、Br、及びIからなる群より選択され;
R10は、-OR10a及び-NHCH3からなる群より選択され;
R10aは、H及びMeからなる群より選択され;
各R11は、H、OH、OMe、及びCO2Hからなる群より選択され;
各R12は、式:
【化21】

を有する群から選択され;
下付添字nは、1又は2の整数であり;nが1の場合、右の括弧から伸びている結合は、Hへの結合を示し;
波線は、残りの分子への結合点を示す。
【0060】
本発明の実施形態のいずれかの中では、前記PETリガンドの少なくとも1つの原子が、11C、13N、15O、18F、又は123Iからなる群より選択される放射標識で置き換え又は置換される。
【0061】
CR PETリガンドの具体例には、(トランス,トランス)-1-ブロモ-2,5-ビス-(3-ヒドロキシカルボニル-4-ヒドロキシ)スチリル-ベンゼン(BSB)、[18F]AV-19、[18F]AV-45、[18F]AV-133、[18F]AV-138、[18F]AV-144、BAY 94-9172、及び2-メトキシ安息香酸を含む。これらの化合物は、以下の式を有する:
【化22】


【0062】
FDDNP型PETリガンドの例は、以下の一般式:
【化23】

又はその薬理学的に許容出来る塩を有し、
式中、
R13は、-N(CH3)2及び-N(CH3)CH2CH2Fからなる群より選択され;
R14は、Hであり;
R15は、-CH3及び-C(CH3)3からなる群より選択され;又はR14及びR15は、それらが結合する原子と組み合わされて、融合シクロヘキシル環を形成し;
Y3はO又はC(CN)2からなる群より選択され;
R16は、-OCH3及び-CH2CH(CH3)2からなる群より選択される。
【0063】
FDDNP PETリガンドの具体例には、2-(l-{6-[(2-フルオロエチル-(メチル)アミノ]-2-ナフチル}エチリデン)マロノニトリル(FDDNP);(S)-2-(6-メトキシ-2-ナフチル)プロピオン酸((S)-ナプロキセン)、及び2-(2-(2,6-ジクロロフェニルアミノ)フェニル)酢酸を含む。これらの化合物は、以下の式を有する:
【化24】


【0064】
Th-T型PETリガンドの例は以下の一般式:
【化25】

又はその薬理学的に許容出来る塩を有し、式中
R17は、H、CH3、OH、OCH3、O(CH2)2F、OCH2OCH3、CO2CH3、CN、NH2、Br、I、及びNO2からなる群より選択され;
Y4は、O又はNR4aであり;式中、R4aはH及びCH3からなる群より選択され;
Y5は、S及びOからなる群より選択され;
Y6は、CH、N及びNCH3からなる群より選択され;
Y7は、N、CH及びCFからなる群より選択され;
R18は、H、F及びIからなる群より選択され;
R19は、H、CH3、(CH2)mF及びCH2(C6H4)Fからなる群より選択され;又は、Y4がNR4aの場合、R4a及びR19はそれらが結合する窒素と組み合わされてモルホリニル若しくは4-メチルピペリジニル環を形成し;
下付添字mは、2、3、又は4の整数であり;
R20は、H及びIからなる群より選択され;
R21は、Br及びIからなる群より選択され;
R22は、H、F、Br、I、CO2CH3及び-OR22aからなる群より選択され;
R22aは、H、CH3
【化26】

からなる群より選択され;
Y8は、N及びCR23からなる群より選択され;
R23は、H及びIからなる群より選択され;
R24は、H、OH、OCH3、SCH3、SO2CH3及び-N(R24a)(R24b)からなる群より選択され;
R24a及びR24bの各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
Y9は、CH又はNであり;
R25及びR26の各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
R27は、H、CH3、OH、O(CH2)2F及びFからなる群より選択され;
R28は、H、F及びIからなる群より選択され;
Y10は、S又はOであり;
R29は、F、Cl及び-N(R29a)(R29b)からなる群より選択され;
R29a及びR29bの各々は、H、CH3及びCH2CH3からなる群より独立して選択され;
各R30及びR31は、Hであるか又はそれらが結合する原子と組み合わされて融合ベンゼン環を形成し;
R32は、CH3、Br、I、OH、NO2、NH2、NHCH3及びN(CH3)2からなる群より選択され;
R33は、H及びIからなる群より選択され;
R34は、H、Br、I、NH2及びN(CH3)2からなる群より選択され;
各R35、R36及びR37は、H及びN(R37a)(R37b)からなる群より独立して選択され;
R37a及びR37bの各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
R38は、OH及びOからなる群より選択され;式中破線の結合は、R38がOHの場合単結合の存在を示し、R38がOの場合二重結合を示す;
R39は、CH3及びCH2CH3からなる群より選択され;
R40は-CH2CH2Fであり;
R41は、I、Br、CH3及びHからなる群より選択され;
R42は、H及びIからなる群より選択され;
R43は、-OR43a、-NR43aR43b及び-Brからなる群より選択され;
R43aは、H、CH3、CH2CH2Fからなる群より選択されるか、又はR43が-NR43aR43bの場合、各々が結合する窒素と組み合わされてモルホリニル基を形成する。
【0065】
Th-T PETリガンドの具体例には、(2-[6-(メチルアミノ)ピリジン-3-イル]-1,3-ベンゾチアゾール-6-オール)、(AZD2184);[S-メチル-11C]N,N-ジメチル-4-(6-(メチルチオ)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル)アニリン、(11C[MeS-IMPY]);2-(4'-メチルアミノフェニル)-6-ヒドロキシベンゾチアゾール(6-OH-BTA-l、11C-PIB);[18F]-2-(4'-メチルアミノ-3'-フルオロフェニル)-6-ヒドロキシベンゾチアゾール(3'-F-PIB、AH-110690);チオフラビンT;2-[4'-([3H]メチルアミノ)フェニル]-6-メチルベンゾチアゾール([3H]Me-BTA-1);(Z)-4-(4-イオドスチリル)-N,N-ジメチルアニリン;4-(4-イオド-3-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-N,N-ジメチルアニリン;2-((5'-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2'-ビチオフェン-5-イル)メチレン)マロノニトリル、[11C]AZD2995、[18F]-AZD4694(全てAstra Zeneca社)、及び[18F]-SMIBR-W372(Siemens社)を含む。これらの化合物は、以下の式を有する:
【化27】


【0066】
そのような一つの化合物である、ピッツバーグ化合物-B([11C]PiB)(Klunkら, Ann Neurol 55(3):306-319 (2004);Ikonomovicら, Brain; 131:1630-1645 (2008))は、例示的なPETリガンドである。PiBは、低ナノモルの親和性でAβペプチドの凝集した線維状沈着に結合するチオフラビン類似体であり、PETイメージングのために十分量脳に入り、そして、正常脳組織から迅速に除去される(Priceら, J. Cereb. Blood Flow Metab. 25:1528-1547 (2005))。PET試験で一般的に使用される低ナノモル濃度で、検死されたヒト脳へのPiBの結合が線維状Aβ沈着に選択的であることが示された(上記Ikonomovicら;Fodero-Tavolettiら, J Neurosci; 27:10365-10371 (2007))。対照群と比較すると、AD患者は、Aβ沈着が病理学的に標的とすることが知られる脳連合野領域中の[11C]PiBの保持量が約2倍であることが示される。Aβ沈着により相対的に影響されないと知られる領域(例、皮質下白質、脳橋、及び小脳)中では、[11C]PiB保持量はAD患者と対照群とで同等である。
【0067】
使用可能な他のPETリガンドには、Th-T PETリガンド18F-AH110690(GE Healthcare社製のPiBの3'-フルオロ類似体(フルテメタモールとしても知られる));並びに2つのCR PETリガンド:スチルベン誘導体18F-BAY94-9172(Bayer Schering Pharma社)(AD群と対照群との予備研究中で11C-PIBと比較して実施されたもの[Rowe, Lancet Neurol. 2008; 7(2):129-3535])及び(E)-4-(2-(6-(2-(2-(2-(2-18F-フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)ピリジン-3-イル)ビニル)-N-メチルベンゼンアミン(Avid Radiopharmaeuticals社製の18F-AV-45)[Klunk, Curr Opin Neurol. 2008; 21(6):683-732, Rowe, 上記, Nordberg, Neuropsychologia. 2008; 46(6):1636-41]を含む。
【0068】
<III.PETイメージング>
PETリガンドは、通常、末梢経路により患者の体循環へと投与され、静脈内投与が好ましい。PETリガンドは、従って、体循環により輸送されて血液脳関門を通過し、アミロイド沈着と接触する。脳中のアミロイド沈着へ結合するPETリガンドは固定されて、引き続くPETスキャンで検出可能である。非結合PETリガンド又は可溶性Aβに結合したPETリガンドは、結合PETリガンドよりも迅速に脳から除去され、検出されないか又は同一量の結合PETリガンドと比べてより少ない程度で検出される。
【0069】
投与されるPETリガンドの用量は放射能で測定することができる。例示的な用量、特に[11C]PiBについてのものは、12〜18μCiである。
【0070】
PETリガンド投与とスキャンの実行との間の間隔が依存する可能性があるのは、PETリガンド及び特に脳内へのその取り込み率と除去率並びに放射標識の半減期である。前記間隔は、例えば10〜120分または30〜90分であってもよい。
【0071】
PETスキャンの実行は、例えば、従来のPET画像装置や付属装置を用いる。スキャンは典型的に、アルツハイマー病における沈着と関連すると一般的に知られる一又は複数の脳領域及び仮にあるとしてもほとんど沈着が一般的に存在せずコントロールとして働く一又は複数の領域を含む。アルツハイマー病におけるアミロイド沈着の存在と関連する脳領域には、例えば、前帯状回、後帯状回、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、又は後頭葉を含む。沈着の欠如と関連する脳領域には、例えば、皮質下白質、脳梁、及び小脳を含む。
【0072】
検出シグナルを、多次元画像として表すことができる。多次元画像は、脳断面を表す二次元のもの、三次元的脳を表す三次元のもの、三次元的脳の経時的変化を表す四次元のものである場合がある。カラースケールの使用では、標識と検出される推測的アミロイド沈着の様々な量を示す様々な色を用いる。スキャンの結果を、検出標識量およびその結果としてのアミロイド沈着量に関連する数値と共にテーブル2又は3に数値として表示することもできる。アルツハイマー病における沈着と関連するとして知られる脳領域に存在する標識を沈着と関連しないとして知られる領域に存在する標識と比較して、前者の領域内の沈着の程度を示す比率を提供することができる。同一の放射標識リガンドに関して、そのような比率が提供するのは、異なる患者間のアミロイド沈着とその変化との比較基準である。例えば、免疫療法を開始する前、沈着を有するとして知られる脳領域中の標識と沈着が欠如するとして知られる領域のものとの比率が2:1(それらの領域の体積の任意の差を標準化したもの)で、その後、比率が1.75:1へと減少した場合、免疫療法が、アルツハイマー病におけるアミロイド沈着と関連すると知られる脳領域と関連しないとして知られる脳領域との間の標識差(つまり、2-1=1ユニット)に関して0.25ユニット又は25%アミロイド沈着を減少させたと結論できる。より一般的な症例では、アミロイド沈着の減少割合は、IB-IT/IB-IC x 100%(式中、IBは沈着と関連する脳領域中のシグナルのベースライン強度で、ITは沈着と関連する脳領域中の治療後シグナルであり、ICは沈着と関連しないコントロールの脳領域中の強度である)として表すことが可能である。
【0073】
ある実施形態では、PETスキャンをMRI若しくはCATスキャンと同時又は同一の患者受診時に実施する。MRI又はCATスキャンは、PETスキャンよりも詳細な脳の解剖学的所見を提供する。しかしながら、脳の解剖学的構造に対応させてPETリガンドと推測的アミロイド沈着の位置をより正確に示すMRI又はCATスキャンに、PETスキャン画像を重ね合わせることもできる。MRIスキャンは、また、血管原性浮腫ができたかどうかを評価するのに有用である(WO09/017467を参照されたい)。いくつかの装置は、PETスキャンとMRI若しくはCATスキャンとの間に患者の体位を変更することなくこれら両者のスキャンを実施して、画像の重ね合わせを容易にすることが可能である。
【0074】
<IV.PETスキャンを用いた免疫療法のモニタリング>
本発明の方法は、アルツハイマー病と診断(例、診断基準、患者病歴やMRI、及び/又は「Diagnostic and Statistical Manual IV(診断および統計解析マニュアルIV)」の基準によるもの)された患者に実施可能である。また、本方法を実施できるのは、脳内にAβを含むアミロイド沈着を特徴とする他の疾患を有する患者またはそのような疾患のリスクがある患者である。そのような疾患には、アルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知機能障害、脳アミロイド血管症(CAA)、レビー小体認知症(DLB)、及び後部皮質萎縮(PCA)を含む。
【0075】
患者がPETリガンド上の放射線照射へ暴露するのを制限するために、好ましくは、さらに治療しても利点があるにしてもほとんどない場合、患者の症状が悪化する前に免疫療法の治療計画を維持又は調整するのに有用な情報を開示する可能性が最も高い時期に、スキャンを実施する。一般的には、ベースライン測定を免疫療法の開始前に実施する。その後、一又は複数の引き続くスキャンを治療開始後に実施する。治療開始後の初めてのそのようなスキャンを、治療開始3〜24ヶ月後に実施してもよい。通常、そのようなスキャンの実施は、治療開始の6〜18又は9〜18ヶ月以内、例えば、約6、9、12、15又は18ヶ月で行う。ある実施形態では、スキャンを治療78週後に実施する。任意の引き続くスキャン(つまり、第3回及びその後のスキャン)の実施を、例えば、四半期ごと、6ヶ月に1回、1年に1回、又は2年に1回の間隔で行ってもよい。いくつかの患者においては、放射線照射への暴露を制限するために、全体として多くとも6回のスキャンしか実施しない。
【0076】
PETスキャンは、無症状の患者で、又は軽度の認知機能障害の症状を有するが、まだアルツハイマー病と診断されずにアルツハイマー病の発症リスクが高い患者においての予防措置として実施可能である。無症状の患者に関しては、家族歴、遺伝学的危険因子(例、ApoE4、APP717、若しくはAPPSwe)又は生化学的危険因子(例、CSFt-タウの亢進若しくはp-タウ又はCSF Aβ42の減少)或いは熟年といったことによりアルツハイマー病のリスクが高いと考えられる個人にとって、スキャンは特に有用である。予防的スキャンは、例えば、45〜75歳の間の患者の年齢で開始可能である。いくつかの患者において、初回スキャンを50歳で実施する。アミロイドが正常レベルより高いことは、軽度の認知機能障害の発症の20年前にまでも遡り起こり始める場合がある。予防的スキャンの実施の間隔は、例えば、6ヶ月と10年の間、好ましくは1〜5年の間である。いくつかの患者において、予防的スキャンを1年に1回実施する。予防措置として実施されるPETスキャンが異常に高いアミロイド沈着レベルを示す場合、アルツハイマー病と診断された患者におけるのと同様に免疫療法を開始し、引き続くPETスキャンを実施してもよい。予防措置として実施されたPETスキャンが正常レベルの範囲内のアミロイド沈着レベルを示す場合、追加的PETスキャンの実施間隔は、6ヶ月と10年の間、好ましくは1〜5年の間、或いは、アルツハイマー病若しくは軽度認知機能障害の兆候や症状が現れる前又はそれに対応するものである。予防的スキャンとAβを標的とする免疫療法の投与とを組み合わせることにより、正常レベルより高いアミロイド沈着が検出される又はされた場合、アミロイド沈着レベルは正常レベルへと又はそれに近いレベルへと減少されるか、或いはそのさらなる増加が少なくとも阻害される。そして、患者は、予防的スキャンとAβを標的とする免疫療法とを受けなかった場合よりも長期間(例、少なくとも5、10、15、若しくは20年、又は患者生涯の残りの期間)アルツハイマー病ではない状態のままである可能性がある。
【0077】
アルツハイマー病(若しくは、脳内Aβアミロイド沈着を特徴とする他の疾患)と診断されていず、そのような疾患の発症リスクが高いと考えらていない一般集団中の個々人の代表例(例、50歳以下の疾患のない個々人の代表例)の脳中アミロイド沈着レベルをアミロイド沈着の正常レベルとする。また、アミロイド沈着が発達するとして知られる脳領域での本方法記載のPETシグナルが、そのような沈着が正常では発達しないと知られる脳領域由来のシグナルと(測定精度の範囲内で)異ならない場合に、個々の患者において正常レベルと認識することができる。前記正常レベルと比較すること(例、標準偏差の平均と分散の範囲外であること)により、或いは沈着と関連することが知られていない領域と比べてアミロイド沈着と関連する脳領域中で実験誤差を超えるほどの高いシグナルから単純に、個人中のレベルが高いことが認識可能である。個人や集団中のアミロイド沈着レベルの比較目的で、好ましくは脳の同じ領域(複数可)でアミロイド沈着を測定することが期待され、これらの領域はアルツハイマー病又は関連疾患と関連するアミロイド沈着が形成することが知られる少なくとも一つの領域を含む。アミロイド沈着レベルの亢進した患者は、免疫療法を開始するための候補者である。
【0078】
免疫療法開始後、免疫療法のアミロイド沈着への効果が最初に見られるのは、約3〜24ヶ月の期間であり、より一般的には6〜18ヶ月である場合がある。その効果は、アミロイド沈着の減少として最も簡単に観察される。18ヶ月間に渡って観察される減少は、例えば、ベースライン値の1〜100、1〜50、1〜25、5〜100、5〜50、5〜25、5〜15、10〜100、10〜50、10〜25、若しくは10〜15、15〜100、15〜50、又は15〜25%であり、例えば、5〜15%の減少である。そのような効果は、沈着が形成されることが知られる一又は複数の脳領域で測定することができるか、又はそのような領域の平均から測定可能である(例えば、テーブル3を参照されたい)。そのような減少はほとんど必ず治療効果に起因する。なぜなら、アミロイド沈着は治療しなければ減少することは通常無いからだ。治療の全体的な効果の推定は、ベースラインに相対的な減少の割合に、平均的非治療患者に起こるであろうアミロイド沈着の増加(例、約15%)を加えることで行うことができる。従って、例えば、治療患者において、ベースライン値に相対的に5〜35%減少したことは、一般的な非治療患者で形成するだろうアミロイド沈着の20〜50%の減少に対応する。
【0079】
アミロイド沈着がおおよそ一定レベルで維持されるか又はアミロイド沈着がわずかに増加することさえも、最適以下の応答ではあるが治療に反応した徴候である可能性もある。治療を受けていないアルツハイマー病の患者中のアミロイド沈着レベルの時間経過と、そのような応答とを比較することで、アミロイド沈着のさらなる増加を阻害する効果を免疫療法が有しているか否かを決定することができる。本実施例では、治療を受けなかった個人は、18ヶ月に渡ってアミロイド沈着が約15%平均して増加したことを示した。従って、18ヶ月後に15%に近いアミロイド沈着の増加することさえも、治療への最適以下ではあるがポジティブな応答であることと矛盾しないかもしれない。
【0080】
少なくともいく人かの患者においては、アミロイド沈着と関連する一又は複数の脳領域中のアミロイド沈着の減少を介したアミロイド沈着への、又は非治療患者において一定のレベルのまま若しくはよりゆっくりと増加した沈着への免疫療法の効果は、アルツハイマー病の他の兆候や症状の有意な変化以前に識別可能である。PETにより測定されるアミロイド沈着への検出可能な効果に先んじる場合があるそのような他の兆候又は症状には、様々な認知機能の基準(ADAS-CO11、ADAS-CO12、DAASD、CDR-SB、NTB、NPI、MMSE)、[18F]FDG、MRIマーカー(BBSIおよびVBSI)、CSFマーカーAβx-42、タウ、及びリン酸化タウを含む。従って、PETイメージングは、これらのマーカーのいずれかを同時に実施する測定を用いて又は用いずに治療をモニターするのに使用可能である。
【0081】
スキャンの実施後、放射能が患者の尿に濃縮されることが分かった。従って、患者はスキャンの2時間以内に自身の膀胱を空にするように好ましくは指示される。
【0082】
<V.モニタリングに基づく免疫療法治療計画の調整>
アミロイド沈着変化のモニタリングは治療に応じた免疫療法治療計画の調整を可能にする。PETモニタリングは、治療への応答の性質と程度の指標を提供する。その後、治療を調整するかどうかについて測定し、もし望むならPETモニタリングに応じて治療を調整してもよい。上記したように、そのような指標が通常明らかになるのは、治療開始後約3〜24ヶ月、6〜18ヶ月、又は9〜18ヶ月である。アミロイドレベルが全ての又はほとんど全ての他のマーカーより急速に変化するので、治療の調整が基づくのは、上記した他の治療パラメータの測定を介さないアミロイドレベルであり、又はそのようなパラメータの有意な変化の証拠を得ること無しに若しくは他のマーカーに依存すること無しに測定することによるものである。他のバイオマーカー、MRI、認知基準への応答が検出(例、本実施例中での評価)可能になる前に、PETモニタリングは、Aβを標的とする免疫療法を調節可能にする。有意な変化が意味するのは、ベースラインに相対的な治療後のパラメータ値との比較により、治療が有益な効果を生じるか否かという何らかの証拠を提供することである。いくつかの例では、患者自身のパラメータ値の変化が提供する証拠は、治療が有益な効果を生じるか否かということである。他の例では、患者の値の変化(もしあるとすれば)を、免疫療法を経ない患者の代表的対照群集団の値の変化(もしあるとすれば)と比較する。特定の患者の応答と対照群の患者の正常応答との違い(例、標準偏差の平均と分散)は、免疫療法の治療計画が患者における有益な効果を実現するか否かという証拠も提供できる。
【0083】
幾人かの患者では、モニタリングはアミロイドレベルの検出可能な減少を示すが、そのアミロイドレベルが正常より高いままであることを示す。例えば、本実施例においては、アミロイドレベルは、18ヶ月に渡って約10%減少する。そのような患者においては、受け入れがたい副作用が無い場合、治療をそのまま継続するか、又はもし最大推奨用量にまだ達していなければ、投与頻度及び/若しくは用量を増加させることさえ可能である。
【0084】
もし、患者のアミロイドレベルが既にアミロイドの正常レベルへと又は付近に減少するとモニタリングが示す場合、導入期(つまり、アミロイド沈着レベルを減少させるもの)から維持期(つまり、おおよそ一定のレベルでアミロイドを維持するもの)へと、免疫療法の治療計画を調整することができる。そのような治療計画の実効化を、免疫療法の投与用量及び/又は投与頻度を減少することで行う。例えば、導入治療計画が抗体(例、バピネオズマブ)を1mg/kgの投与量で、四半期に一度静脈内投与することに関する場合、維持治療計画は、0.1〜0.5mg/kgに減少させた用量で、抗体を四半期に一度投与することに関する場合もあるだろう。
【0085】
他の患者においては、免疫療法が何らかの有益な効果を有するが、最適以下の効果であると、モニタリングが示す場合がある。療法開始後の所定のタイムポイントで免疫療法を受けた患者の代表的例により経験されるアミロイド沈着変化(脳全体か、若しくはアミロイド沈着が形成することが知られた代表的領域(複数可)で測定、又は計算したもの)の上半分又は四分位点の範囲内のアミロイドレベルの減少割合として、最適な効果は定義可能である。より少ない減少を経験した患者、又はアミロイドレベルが一定であるか若しくは免疫療法を受けなかった場合に期待される(例、免疫療法を投与されなかった対照群の患者から推定されるもの)よりも少ない程度ではあるが増加するような患者は、最適以下であるがポジティブな応答を経験したと分類することができる。そのような患者は、任意ではあるが、治療計画の調整の対象となり得、そこでは、薬剤の投与用量及び/又は投与頻度を増加させる。例えば、抗体(例、バピネオズマブ)を投与する症例では、0.1〜0.5mg/kgから1mg/kgへと用量を増加させてもよい。
【0086】
幾人かの患者では、免疫療法を受けなかった患者においてと同様又はより多く、アミロイド沈着が増加する場合がある。もし、薬剤頻度又は用量の任意の増加後にさえ、そのような増加が一定期間(例、18ヶ月又は2年)引き続く場合、望むならば免疫療法を中断して、他の治療を支持することも可能である。
【0087】
<VI.臨床試験>
アミロイド沈着を検出するためPETスキャンを使用することにより、免疫療法計画の効用を臨床試験で評価することができる評価項目を提供する。比較的小さな患者集団(例、多くとも15、25、50、又は100人の患者)(治療群とプラセボ群とに分けられるもの)から統計学的有意差に到達することが予期され得るのがそのような評価である。いくつかの臨床試験は、15〜30人の患者が参加する。免疫療法開始後比較的早期(例、多くとも6、9、12、15、18、21、又は24ヶ月)に、統計学的有意差が見られる場合がある。
【0088】
<VII.Aβを標的とする免疫療法>
Aβを標的とする免疫療法が意味するのは、Aβに特異的に結合する抗体又はそのような抗体を誘導する薬剤(例、Aβ断片)の投与である。各種薬剤と治療計画の記載は、例えば、WO2009/052439にあり、参照により本明細書中に組み込まれ、以下に概要を記載する。
【0089】
<A.受動的免疫療法>
Aβに対する各種抗体の記載がアルツハイマー病の免疫療法での使用に関する特許文献や科学文献にあり、それらの抗体のいくつかは臨床試験中である(例、US6,750,324を参照されたい)。そのような抗体は、上記で定義されるN末端エピトープ、中央(つまり、中心)エピトープ、又はC末端エピトープに特異的に結合する。いくつかの抗体は、N末端特異的である(つまり、そのような抗体は、APPへ結合せずにAβのN末端に特異的に結合する)。上記したように、Aβ42の残基1〜10、1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7若しくは3〜7の範囲内のエピトープに結合する抗体、Aβの残基2〜4、5、6、7若しくは8の範囲内のエピトープに結合する抗体、Aβの残基3〜5、6、7、8、若しくは9の範囲内のエピトープに結合する抗体、又はAβ42の残基4〜7、8、9若しくは10の範囲内のエピトープに結合する抗体を使用できる。いくつかの抗体はC末端特異的である(つまり、APPに結合せずにC末端に特異的に結合する)。抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであってもよい。ポリクローナル血清は、一般的には、APPの全長に渡るいくつかのエピトープに特異的に結合する抗体の混合集団を含む。しかしながら、ポリクローナル血清は、Aβの他の部分に特異的に結合すること無く、特定のAβ部分(例、Aβ1〜11)に特異的である可能性がある。好ましい抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体(ベニア化抗体を含む)(Queenら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); WO90/07861; US5,693,762、US5,693,761、US5,585,089、US5,530,101及びWinter、US5,225,539を参照されたい)、ヒト抗体(Lonbergら, WO93/12227(1993); US5,877,397、US5,874,299、US5,814,318、US5,789,650、US5,770,429、US5,661,016、US5,633,425、US5,625,126、US5,569,825、US5,545,806;Nature 148, 1547-1553 (1994); Nature Biotechnology 14, 826 (1996); Kucherlapati、WO91/10741 (1991); EP1481008、Bleck、Bioprocessing Journal (Sept/Oct.2005); US2004132066、US2005008625、WO04/072266、WO05/065348、WO05/069970、及びWO06/055778を参照されたい)である。
【0090】
3D6抗体、10D5、及びその変異体は、使用可能な抗体の例である。両者は、US20030165496、US20040087777、WO02/46237、WO04/080419、WO02/088306、WO02/08830、及びUS7,318,9237に記載される。10D5抗体の記載は、US20050142131にもある。他の3D6抗体の記載は、US20060198851及びPCT/US05/45614にある。3D6は、ヒトβアミロイドペプチド中に位置するN末端エピトープ(具体的には残基1〜5)に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)である。10D5は、ヒトβアミロイドペプチド中に位置するN末端エピトープ(具体的には残基3〜6)に特異的に結合するmAbである。3D6モノクローナル抗体生産細胞株(RB96 3D6.32.2.4)の寄託は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)、Manassas、VA20108、米国に、2003年4月8日、ブダペスト条約条件下行われ、アクセション番号PTA-5130を割り当てられた。10D5モノクローナル抗体生産細胞株(RB44 10D5.19.21)の寄託は、ATCCに、2003年4月8日、ブダペスト条約条件下行われ、アクセション番号PTA-5129を割り当てられた。
【0091】
バピネオズマブ(世界保健機関により命名された国際一般名称)の意味するのは、ヒト化3D6抗体であって、配列番号:2のアミノ酸配列を有する成熟可変領域を持つ軽鎖と配列番号:3のアミノ酸配列を有する成熟可変領域を持つ重鎖とを含むものである。(WHOによりバピネオズマブと命名された抗体の重鎖および軽鎖定常領域は、それぞれヒトIgG1およびヒトκである。)
【0092】
ヒト化3D6軽鎖可変領域
(表2)(配列番号:2)

【0093】
ヒト化3D6重鎖可変領域
(表3)(配列番号:3)

【0094】
他の例示的抗体は、12A11であるか、又はそのキメラ化、ヒト化、若しくはナノボディー(nanobody)形態である。12A11抗体又はその変異体の記載は、US20050118651、US20060198851、WO04/108895、及びWO06/066089にあり、それらは全て参照により完全にあらゆる目的のために本明細書中に組み込まれる。12A11は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ(具体的には残基3〜7)に特異的に結合するmAbである。12A11モノクローナル抗体生産細胞株の寄託は、ATCC(アメリカ培養細胞系統保存機関, 10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209)に、2005年12月12日に行われ、ATCCアクセション番号PTA-7271を割り当てられた。
【0095】
例示的ヒト化12A11抗体の軽鎖および重鎖可変領域(シグナル配列を含まないもの)の配列は、以下のものである。
軽鎖
(表4)配列番号:4

重鎖
(表5)配列番号:5

【0096】
他の例示的抗体には、12B4抗体又はその変異体(例、キメラ化抗体、およびヒト化抗体)を含み、それらはUS20040082762A1及びWO03/077858に記載される。12B4は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ(具体的には残基3〜7)に特異的に結合するmAbである。
【0097】
他の例示的抗体は6C6抗体又はその変異体(例、キメラ化抗体及びヒト化抗体)であり、その記載は、US20060165682及びWO06/06604にある。6C6は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ(具体的には残基3〜7)に特異的に結合するmAbである。抗体6C6生産細胞株の寄託は、2005年11月1日に、ブダペスト条約条件下、ATCCにて行われ、アクセション番号PTA-7200を割り当てられた。
【0098】
他の例示的な抗体は、2H3及びその変異体(例、キメラ化抗体及びヒト化抗体)であり、その記載は、US20060257396にある。2H3は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ(具体的には残基2〜7)に特異的に結合するmAbである。抗体2H3生産細胞株の寄託は、2005年12月13日に、ブダペスト条約条件下、ATCCにて行われ、アクセション番号PTA-7267を割り当てられた。
【0099】
他の例示的な抗体には、3A3及びその変異体(例、キメラ化抗体及びヒト化抗体)を含み、その記載は、US20060257396にある。3A3は、ヒトβアミロイドペプチドに位置するN末端エピトープ(具体的には残基3〜7)に特異的に結合するmAbである。抗体3A3生産細胞株の寄託は、2005年12月13日に、ブダペスト条約条件下、ATCCにて行われ、アクセション番号PTA-7269を割り当てられた。
【0100】
他の例示的抗体は2B1、1C2、又は9G8、並びにそのキメラ化型及びヒト化型のものである。2B1、1C2、及び9G8抗体産生細胞株の寄託は、2005年11月1日に、ブダペスト条約条件下、ATCCにて行われ、それらの割り当てられたアクセション番号は、それぞれPTA-7202、PTA-7199、及びPTA-7201であった。
【0101】
他の例示的抗体は、ヒト化266抗体、又はそのキメラ型若しくはヒト化型のものである。前記266抗体は、Aβの残基13〜28の間のエピトープに結合する。抗体266抗体生産細胞株の寄託は、2004年7月20日に、ブダペスト条約条件下、ATCCにて行われ、アクセション番号PTA-6123を割り当てられた。ヒト化型の266抗体の記載は、US20040265308、US20040241164、WO03/016467、及びUS7,195,761にある。
【0102】
例示的なヒト化266抗体の軽鎖および重鎖可変領域配列を以下に示す(シグナル配列を含まないもの):
軽鎖
(表6)配列番号:6

式中、2番のXaaは、Val又はIleであり;7番のXaaは、Ser又はThrであり;14番のXaaは、Thr又はSerであり;15番のXaaは、Leu又はProであり;30番のXaaは、Ile又はValであり;50番のXaaは、Arg、Gln、又はLysであり;88番のXaaは、Val又はLeuであり;105番のXaaは、Gln又はGlyであり;108番のXaaは、Lys又はArgであり;及び109番のXaaは、Val又はLeuであり;並びに
重鎖
(表7)配列番号:7

式中:1番のXaaは、Glu又はGlnであり;7番のXaaは、Ser又はLeuであり;46番のXaaは、Glu、Val、Asp、又はSerであり;63番のXaaは、Thr又はSerであり;75番のXaaは、Ala、Ser、Val、又はThrであり;76番のXaaは、Lys又はArgであり;89番のXaaは、Glu又はAspであり;及び107番のXaaは、Leu又はThrであるものを含む。
【0103】
例示的なヒト化266抗体は、以下の軽鎖および重鎖配列(シグナル配列を含まないもの)を含む。
(表8)配列番号:8

(表9)配列番号:9

【0104】
前記抗体は15C11又はそのキメラ化型若しくはヒト化型のものであってもよく(US20060165682を参照されたい)、その抗体はAβ15〜24内のエピトープに特異的に結合する。
【0105】
前記抗体は、ヒト化型20C2又はそのキメラ型若しくはヒト化型のものであってもよい。そのような抗体の記載は、例えばUS2007081998にある。20C2の中心的直線エピトープは、Aβ1〜42のアミノ酸残基3〜8に対応し、立体構造的エピトープはAβの残基17〜42範囲内からの要素に依存するものを有する。
【0106】
本発明に記載される使用可能な別の抗体は、C705又はそのキメラ型若しくはヒト化型のものであり、その抗体は、WO05/028511に記載されるように、Aβペプチドのアミノ酸7〜12を含むエピトープに結合する。
【0107】
本発明に記載される使用可能な別の抗体は、C706又はそのキメラ型若しくはヒト化型のものであり、その抗体は、WO05/028511に記載されるように、Aβペプチドのアミノ酸6〜11を含むエピトープに結合する。
【0108】
本発明に記載される使用可能な他の抗体には、2286抗体及びそのヒト化型又はキメラ型のものを含む。これらの抗体は、US20070160616に記載されるように、Aβペプチドのアミノ酸28〜40を含むエピトープを認識する。
【0109】
別の例示的抗体は、2E7及びそのキメラ型又はヒト化型のものであり、それらはWO07/113172に開示されている。2E7抗体は、Aβペプチドの残基1〜12に結合するが、2〜13や前記ペプチドのより長い変異体には結合しない。
【0110】
本発明に記載される使用可能な別の抗体には、ヒト化又はキメラ化9TL抗体(ATCCアクセション番号PTA-6124及びPTA-6125)を含み、それは、WO06/036291に記載される。
【0111】
ヒト化バージョンの6G抗体を、本発明に従って使用することも可能である。シグナル配列を有しない重鎖および軽鎖可変領域を、それぞれ、配列番号:104及び115に示す。
(表10)配列番号:104

(表11)配列番号:115

【0112】
本発明に記載される使用可能なさらに別の抗体は、ヒト化バージョンの2.1抗体であり、WO06/081171に記載される。これらの抗体は、マウス2.1抗体のCDRを含み、ヒトVKII A19/JK4軽鎖可変フレームワーク領域由来の残基で置換される。
【0113】
本発明に記載される使用可能な他の抗体には、CW1181及びCW1185抗体を含む。これらの抗体がAβペプチドの2つの領域に特異的に結合することは、WO03/070760及びUS20050196399に記載されている。第1の領域は、AEFRHDSGY(配列番号:12)又はその断片(例、AEFRHD(配列番号:13)、EFRHDSG(配列番号:14)、又はEFRHD(配列番号:15))を含み、第2の領域はアミノ酸配列YEVHHQKLVFFAEDVG(配列番号:16)又はその断片(例、VFFA(配列番号:17)、又はQKLFFAEDV(配列番号:18))を含む。
【0114】
本発明に記載される使用可能なさらに他の抗体は、モノクローナル抗体NAB61又はそのキメラ化型若しくはヒト化型である。WO07/062088に開示されるように、NAB61はAβ1〜11に結合するが、APP全長又はC99には結合しない。同様に、モノクローナル抗体82E1は、本発明に従って使用可能である。82E1がAβペプチドのN末端に結合するが、APP全長に結合しないことは、US20080025988に開示されている。
【0115】
本発明の他の抗体は、抗ADDL抗体である。そのような抗体を作成して、Aβ単量体やアミロイド線維に結合せずにADDLに特異的に結合する能力に関して選択する。例えば、WO04/031400を参照されたい。
【0116】
使用可能な他の抗体には、(i)触媒抗体ABP 102(Abzyme、Abiogen Pharma社製); (ii)ACI-01 Ab7 C2(AC Immune Genentech社); (iii)AZD-3102 (Astra Zeneca社/Dyax社); (iv)IVIg (Gammagard S/D 免疫グロブリン静脈注射用(ヒト)、Baxter Bioscience社製); (v)BAN2401(BioArctic Neuroscience AB社/エーザイ株式会社); (vi)R1450(Hoffman-La Roche社/MorphoSys社);(vii)LY2062430(Eli Lilly社);(viii)h3D6(Eli Lilly社);(ix)ACU-5A5(β-ADDL mAb、Merck/Acumen社製);β-アミロイドスフェロイド(ASPD)抗体(田辺三菱製薬);(xi)AN1792患者のPBMC由来の抗体(Neur Therapeutics AG社);(xii)BC05(武田薬品工業);(xiii)CEN701-CEN706抗体(Centocor社/Johnson & Johnson社);及び(xiv)PF-04360365(RN-1219(h2286)とも称されるもの、Pfizer社/Rinat Neurosciences社製)を含む。これらの抗体のいずれも、本発明の方法のいずれかに従って使用することができる。
【0117】
ABP 102抗体が凝集Aβを切断することは、例えば、US6,387,674及びWO99/06536に記載されている。ACI-01 Ab7 C2抗体は、Aβペプチドの残基10〜20に結合し、US20070166311に記載されている。IVIg Gammagard SD免疫グロブリン抗体の記載は、例えば、Baxter Bioscience社のウエブサイト上のBaxter.comにある。BAN2401抗体は、Aβの原線維に結合するヒト化抗体であり、例えば、WO05/123775に記載されている。ヒトR-1450HuCAL抗体は、266/3D6の双方のエピトープを持っている。ヒト化LY2062430抗体(IgG)は、Aβペプチドの残基16〜23に結合し、例えば、US特許第7,195,761号に記載されている。ヒト化h3D6抗体は、Aβペプチドの残基1〜5に結合し、例えばUS特許第7,318,923号に記載されている。BC05抗体は、C末端Aβエピトープに結合し、Asami-Odakaら (2005) Neurodegenerative Diseases 2:36-43に記載されている。CEN701-CEN706抗体の記載は、例えば、WO05/028511にある。ヒト化PF-04360365抗体は、Aβペプチドの残基28〜40に結合し、例えば、WO04/032868に記載されている。
【0118】
本明細書中に記載される抗体又は抗体断片のいずれも、標準的方法を用いて設計又は調製可能であり、その開示は、例えば、US20040038304、US20070020685、US200601660184、US20060134098、US20050255552、US20050130266、US2004025363、US20040038317、US20030157579、及びUS7,335,478中にある。
【0119】
上記抗体のいずれも、様々なアイソタイプ又は変異アイソタイプとともに生産されて、異なるFcγ受容体への結合の程度を制御することができる。Fc領域を欠く抗体(例、Fab断片)は、Fcγ受容体に結合しない。アイソタイプの選択も、Fcγ受容体への結合に影響を与える。様々なヒトIgGアイソタイプの3種類のFcγ受容体(FcγRI、FcγRII、及びFcγRIII)へのそれぞれの親和性は決定されている(Ravetch & Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9, 457 (1991)を参照されたい)。FcγRIは、単量体形態のIgGに結合する高親和性受容体である。後の2つは、多量体形態のIgGのみに結合する低親和性受容体である。一般的に、IgG1とIgG3の両者は、3つの受容体全てに対する有意な結合活性を有している。IgG4は、FcγRIに結合し、IgG2は、IIaLRと呼ばれるFcγRIIの一つの型にのみ結合する(Parrenら, J. Immunol. 148, 695 (1992)を参照されたい)。従って、ヒトIgG1アイソタイプは通常、Fcγ受容体へのより強い結合に関して選択されるのが望まれる。IgG2は通常、より弱い結合に関して選択される。
【0120】
全てのアイソタイプにおいてヒンジ連結領域中の部位での、隣接の、又は付近の
変異(例、残基234、235、236、及び/又は237を別の残基で置換すること)は、Fcγ受容体(特に、FcγRI受容体)への親和性を減少させる(例、US6,624,821を参照されたい)。任意ではあるが、234、236、及び/又は237番をアラニンで置換し、235番をグルタミンで置換する。(例えば、US5,624,821を参照されたい)。236番は、ヒトIgG2アイソタイプでは欠失している。ヒトIgG2に関する234、235、及び237番のアミノ酸の例示的区分は、Ala Ala Gly、Val Ala Ala、Ala Ala Ala、Val Glu Ala、及びAla Glu Alaである。好ましい変異体組み合わせは、ヒトIgG1アイソタイプに関しては、L234A、L235A、及びG237Aである。特に好ましい抗体は、ヒトのIgGアイソタイプとヒトIgG1 Fc領域のこれら3つの変異とを有するバピネオズマブである。Fcγ受容体への結合を減少させる他の置換は、E233P変異(特に、マウスIgG1中でのもの)及びD265A(特に、マウスIgG2a中でのもの)である。Fc及び/又はC1qの結合を減少させる複数の変異とその変異の組み合わせの他の例は、実施例(E318A/K320A/R322A(特に、マウスIgG1中のもの)、L235A/E318A/K320A/K322A(特に、マウスIgG2a中のもの))に記載される。同様に、ヒトIgG4中の残基241(Ser)を、例えば、プロリンで置換して、Fc結合を阻害することができる。
【0121】
さらに別の変異を定常領域に作製して、エフェクター活性を調節することができる。例えば、変異をIgG2a定常領域のA330S、P331S、又はその両者に作製してもよい。IgG4に関しては、G236を削除して、E233P、F234V及びL235A又はその任意の組み合わせで、変異を作製してもよい。IgG4は、以下の変異S228P及びL235Eの一つ又はその両者を有してもよい。変更された定常領域配列を使用してエフェクター機能を調節することは、例えば、WO06/118,959及びWO06/036291中にさらに記載される。
【0122】
さらに別の変異をヒトIgGの定常領域に作製して、エフェクター活性を調節することができる(例えば、WO06/03291を参照されたい)。これらには、以下の置換を含む:ヒトIgG1に対して、(i)A327G、A330S、P331S;(ii)E233P、L234V、L235A、(G236は削除);(iii)E233P、L234V、L235A;(iv)E233P、L234V、L235A、(G236は削除)、A327G、A330S、P331S;及び(v)E233P、L234V、L235A、A327G、A330S、P331S。
【0123】
抗体のFcRに対する親和性の変更は、重鎖定常領域のある特定の残基を変異させることで行うことができる。例えば、ヒトIgG1の糖鎖付加部位の変更は、その抗体のFcR結合、従ってエフェクター機能を減少させることができる(例、WO06/036291を参照されたい)。トリペプチド配列NXS、NXT、及びNXC(式中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は残基Nの糖鎖付加のための酵素認識部位である。トリペプチドアミノ酸のいずれかの変更、特にIgGのCH2領域中のものは、前記部位の糖鎖付加を阻止することとなる。例えば、ヒトIgG1のN297の変異は、糖鎖付加を阻止して、抗体へのFcR結合を減少させる。
【0124】
いくつかの例示的なヒト化3D6抗体の配列とその構成成分部分を以下に示す。ヒト定常領域は、異なる個人間でアロタイプ変異とイソアロタイプ変異を示す。つまり、定常領域は、互いに異なる個人間で一又は複数の多型位置の違いがある。アロタイプとイソアロタイプの違いは、イソアロタイプを認識する血清が一又は複数の他のアイソタイプの非多型領域に結合することである。以下に示されるIgG1定常領域のアロタイプは、3D6(AAB-001)であり、356番にGlu、358番にMetを有するG1mzである。以下に示されるκの定常領域のアロタイプはKm3であり、153番にAla、191番にValを有する。異なるアロタイプであるKm(1)は、153番及び191番に、それぞれVal及びLeuを有する。アロタイプ変異体の総説には、J Immunogen 3:357-362 (1976)とLoghem, Monogr Allergy 19:40-51 (1986)がある。解説される定常領域の他のアロタイプ変異体およびイソアロタイプ変異体も含まれる。その他に含まれるのは、自然型アロタイプ中の多型位置を占める残基を任意に並び替えた定常領域である。他の重鎖IgG1アロタイプの例には、G1m(f)、G1m(a)及びG1m(x)を含む。G1m(z)とG1m(f)の違いは、G1m(f)が214番のLysの代わりにArgを有することである。G1m(a)は、355〜358番に、アミノ酸Arg、Asp、Glu、Leuを有する。
【0125】
ヒト化3D6軽鎖全長(シグナル配列を含まないもの)(バピネオズマブ及びAAB-003)
(表12)配列番号:19

【0126】
ヒト化3D6重鎖(シグナル配列を含まないもの)(IgG1アイソタイプ、
L234A/L235A/G237A):AAB-003
(表13)配列番号20

【0127】
下記するように、C末端のK残基は無い場合がある。
(表14)配列番号:21

【0128】
バピネオズマブの重鎖全長(シグナル配列を含まないもの、IgG1アイソタイプ、Fc変異なし)
(表15)配列番号:22

【0129】
下記するように、C末端のK残基は無い場合がある。
(表16)配列番号:23

【0130】
いくつかの抗体においては、ヒトIgG重鎖定常領域の234、235、237番は、各AAA、各LLA、各LAG、各ALG、各AAG、各ALA、又は各LAAである場合がある。上に示したように、AAB-003は、バピネオズマブのL234A、L235A、及びG237A変異体(つまり、アラニン(A)を変異アミノ酸とする、L234A、L235A、及びG237A変異以外はバピネオズマブに同一のアミノ酸配列を有するもの)である。バピネオズマブのように、AAB-003は、ヒトκ軽鎖定常領域全長とヒトIgG1重鎖定常領域全長とを有する(バピネオズマブ又はAAB-003のいずれかは、C末端のリジン残基は、細胞内で切断される場合があり、最終産物から失われる場合がある)。
【0131】
定常領域中のアミノ酸の番号付けをヒト抗体EUを用いて整列することで行う(Cunninghamら, J. Biol. Chem., 9, 3161 (1970))。すなわち、抗体の重鎖と軽鎖とを、EUの重鎖と軽鎖と整列し、アミノ酸配列同一性を最大にする。抗体の各アミノ酸にEUにおいて対応するアミノ酸と同じ番号を付与する。このEU番号付けシステムは、従来のものである(全体として、Kabatら,「Sequences of Protein of Immunological Interest(免疫学的目的のタンパク質配列)」、NIH刊行物No.91-3242、米国保健福祉省(1991)を参照されたい)。
【0132】
抗体の補体構成成分C1qへの親和性の変更を、重鎖のアミノ酸残基318、320、及び322番の内少なくとも一つを異なる側鎖を有する残基へと変異させることで行うことができる。例えば、抗体へのC1qの特異的結合を変更する(例、減少又は消失させる)ような他の適した変更には、残基318(Glu)、320(Lys)、及び322(Lys)のいずれか一つをAlaに変化させることを含む。C1q結合活性は、上記3つの特定残基の内いずれか一つを、側鎖に不適切な官能基を有する残基で置換することにより、消失する場合がある。C1q結合を消失させるために、イオン性残基をAlaでのみ置換することは必ずしも必要ではない。C1q結合を消失させるために、前記3つの残基のいずれか一つの代わりに、他のアルキル置換非イオン性残基(例、Gly、Ile、Leu、又はVal)、又は芳香族非極性残基(例、Phe、Tyr、Trp、及びPro)を使用することも可能である。また、C1q結合を消失させるために、318番ではなく残基320及び322番の代わりに、極性非イオン性残基(例、Ser、Thr、Cys、及びMet)を使用することも可能である。318番(Glu)残基を極性残基で置換することは、C1q結合活性を消失させないが変更する可能性がある。297番(Asn)残基をAlaで置換すると、C1qへの親和性を軽度にのみ減少させる(約3倍弱くなる)一方で、分解活性が除去される結果となる。この変更は、糖鎖付加部位を破壊し、補体活性化に必要な炭水化物の存在を無いものにする。この部位の任意の他の置換もまた、糖鎖付加部位を破壊する。
【0133】
ヒトIgG1の定常領域へのC1q結合に影響を及ぼすことができるさらに別の変異には、例えば、WO06/036291に記載されるものを含む。この場合、以下の置換(D270A、K322A、P329A、及びP311S)の少なくとも一つがC1q結合を減少させることができる。これらの変異(297、318、及び320番残基におけるものを含む)の各々は、個別又は組み合わせて作製可能である。
【0134】
Fcγ受容体(複数可)及び/又はC1qへの結合を減少させる重鎖定常領域変異を有する抗体は、本発明の方法の任意のもので使用可能である。好ましくは、そのような抗体は、変異の無い同一抗体に比べて、少なくとも一つのFcγ受容体及び/又はC1qにおいて少なくとも50%結合を減少させる。
【0135】
<B.能動的免疫療法>
能動的免疫療法用の薬剤として、現在では、多数のAβ断片の記載が科学・特許文献にある(例、US6,750,324;US20040213800;US20070134762を参照されたい)。一般的に、Aβの残基1〜11内のエピトープを含む断片は、Fcγ受容体に結合する抗体を誘導し且つアミロイド沈着を除去する反応を誘導する。一方、Aβの残基1〜11内のエピトープが無い断片は、プラークよりはむしろ可溶形態のAβと優先的に又は排他的に結合する抗体を誘導し、アミロイド沈着を除去する反応の誘導はあったとしてもほとんど無い。
【0136】
アミロイド沈着に結合して、除去反応を誘起する抗体を誘導する好ましい断片は、Aβの残基1〜3番に始まりAβの残基7〜11番に終わるN末端断片である。例示的N末端断片には、Aβ1〜5、1〜6、1〜7、1〜10、3〜7、1〜3、及び1〜4を含むが、1〜7が特に好ましい。例示的断片の種類には、残基1〜3(を含む)ものに始まり残基7〜11(を含む)ものに終わる断片を含む。
【0137】
アミロイド沈着を除去する反応の誘起があったとしてもほとんど無く、可溶性Aβに対する抗体を誘導する好ましい断片には、Aβ15〜21、Aβ16〜22、Aβ17〜23、Aβ18〜24、Aβ19〜25、Aβ15〜22、Aβ16〜23、Aβ17〜24、Aβ18〜25、Aβ15〜23、Aβ16〜24、Aβ17〜25、Aβ18〜26、Aβ15〜24、Aβ16〜25、及びAβ15〜25を含む。Aβ16〜23が特に好ましく、Aβの残基16〜23番を含むがAβの他の残基を欠く断片を意味する。Aβ42又は43の5〜10及び好ましくは7〜10連続アミノ酸からなるC末端断片も好ましい。Aβ40又は39のC末端断片類似体も使用可能である。これらの断片は、目的特異的な抗体を含む抗体反応を生成することができる。好ましくは、断片はAβに対するT細胞を誘導するであろうT細胞エピトープを欠失する。一般的に、T細胞エピトープは10個の連続アミノ酸より長い。従って、Aβの好ましい断片は、5〜10、好ましくは7〜10個の連続アミノ酸サイズ(つまり、T細胞応答を生じること無しに抗体反応を生じるのに十分な長さ)である。T細胞エピトープが無いのが好ましいのは、これらのエピトープが断片の免疫原活性に必要とされず、一部の患者における望ましくない免疫応答を引き起こす可能性があるからだ。
【0138】
本発明の方法で使用可能な、Aβへの抗体を誘導する薬剤には、(i)ACI-24(AC Immune社製);(ii)Affitopes AD01及びAD02(Affiris GmbH社製);(iii)Arctic ImmunotherapeuticというKLVFFAGDV(配列番号:92)(BioArctic Neuroscience社/エーザイ株式会社);(iv)Aβ1〜15-K-K-Aβ1〜15(Brigham & Women's Hospital);(v)β-Vax(商標)及びRecall-Vax(商標)(Intellect Neurosciences社);(vi)K6-Aβ1〜30(Intellect Neurosciences社/NYU);(vii)V-950(Merck社);(viii)CAD106(Novartis社/Cytos社);(ix)AβDCtag(商標)ナノ粒子免疫賦活剤(Prana Biotechnology社/PRIMABioMed社);(x)PX106(2Aβ1〜11-PADRE、Pharmexa社/Lundbeck社製);(xi)T細胞エピトープに結合するAβ4〜10(Toronto大);並びに(xii)p3102及びp3075(United Biomedical社)を含む。
【0139】
ACI-24は、リポソーム二重膜に挿入されたAβ1〜15-K-K-16Cパルミチン酸を有するAβ1〜15リポソームコンストラクトである。これらの化合物の記載は、US2004/0242845、WO05/081872、US2007/0281006、及びUS2006/0073158にある。Affitopes AD01及びAD02は、AβのN末端に由来するミモトープ(mimotopes)であり、WO06/005707に記載される。前記Arctic Immunotherapeuticは、E692GのAβ22から派生し、その記載はUS20020162129及びUS20070248606にある。Aβ1〜15-K-K-Aβ1〜15は、N末端Aβ断片が2つ連結されたものを表し、その記載はWO05/012330及びWO02/0123553にある。β-Vax(商標)、Recall-Vax(商標)、及びK6-Aβ1〜30は、T細胞エピトープに連結されたAβ断片であり、その記載はWO01/42306にある。V-950は、8アミノ酸長のAβペプチドであって、少なくとも一つのスペーサーと多価、分岐、複数の抗原ペプチドとを有する多価直線状ペプチドに連結されたものであり、その記載はWO06/121656にある。CAD106は、N末端Aβペプチドに連結されたQβ担体(RNA VLP)であり、その記載はWO04/016282にある。AβDCtag(商標)ナノ粒子免疫賦活剤は、例えば、WO02/00245に記載される。PX106は、「pan DRエピトープペプチド(PADRE)」と呼ばれるT細胞エピトープに連結されたAβ1〜11ペプチドであり、その記載はUS7,135,181にある。p3102及びp3075は、スペーサーによりT細胞エピトープ(例、麻疹エピトープ)に連結されたAβ1〜14ペプチドであり、その記載はUS20030068325、US20040247612、US6,906,169、及びWO02/096350にある。
【0140】
断片は、通常、自然型Aβ(配列番号:1)の断片であるが、N又はC末端アミノ酸の1、2、5、10若しくは全ての位置への修飾や非天然アミノ酸を含むことができる。例えば、Aβの1及び/又は7番の天然のアスパラギン酸残基を、イソアスパラギン酸で置換してもよい。非天然アミノ酸の例は、D,α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸塩、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、ω-N-メチルアルギニン、β-アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、γ-アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリン、及びイソアスパラギン酸である。本発明に係るいくつかの治療薬は、all-Dペプチド(例、all-D Aβ又はall-D Aβ断片、及びall-Dペプチドアナログ)である。断片のスクリーニングを、遺伝子導入動物モデル中での予防又は治療効果に関して、非治療群又はプラセボ群と比較して行うことが可能である。
【0141】
断片は、一般的にはT細胞エピトープを提供する担体分子に結合され、従って、前記担体へと結合した断片に対する免疫応答を促進する。一つの薬剤が一つの担体に連結される場合があり、多数の薬剤が多数の担体に連結されて、その結果お互いに連結される場合もある。多数の薬剤が一つの担体に連結される場合もある。又は、一つの薬剤が多数の担体若しくは互いに異なる担体に連結される場合もある。適する担体には、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、チログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド又は他の病原菌(例、ジフテリア(例、CRM197)、大腸菌、コレラ、若しくはピロリ菌)由来のトキソイド、或いは弱毒化毒素誘導体を含む。T細胞エピトープは、また、可溶性担体分子である。いくつかの結合体の形成は、本発明の薬剤を免疫刺激ポリマー分子(例、トリパルミトイル-S-グリセリンシステイン(Pam3Cys)、マンナン(マンノースポリマー)、若しくはグルカン(β1→2ポリマー))、サイトカイン(例、IL-1、IL-1α及びβペプチド、IL-2、γ-INF、IL-10、GM-CSF)、並びにケモカイン(例、MIP1-α及びβとRANTES)に連結して行う。免疫原は、組織を通過して移動することを促進するペプチドにも連結してもよく、その記載はO'Mahony、WO97/17613及びWO97/17614にある。免疫原は、スペーサーアミノ酸(例、gly-gly)を用いるか又は用いずに担体と連結可能である。
【0142】
さらに別の担体はウイルス様粒子を含む。ウイルス様粒子(VLP)(偽ウイルス粒子若しくはウイルス由来粒子とも呼ばれるもの)は、サブユニット構造を示し、その構成は、多数のウイルスカプシドタンパク質や外被タンパク質がインビボで球状対称的に規定されるVLPへと自己集合できるものである(Powilleit,ら, (2007) PLOS ONE 2(5):e415.)。これらの粒子は、抗原輸送システムとして有用性が見出されている。VLPが大量に生産され且つ容易に精製されるのは、その粒状性と高分子量とによるものである。VLPは、免疫賦活剤の追加適用無しに免疫応答を誘導する(Ulrichら, (1996) Intervirology 39:126-132.)。VLP抗原輸送システムとして有用な例示的キメラ粒子には、以下(例、B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、酵母レトロトランスポゾンTy、酵母トティウイルスL-A、パルボウイルス、インフルエンザウイルス、ノーウォークウイルス、ロタウイルス、アデノ随伴ウイルス、ブルータングウイルス、A型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス及びRNAファージウイルス)に基づくもの、並びに、種々レトロウイルス及びレンチウイルスに基づくものを含む。総説に関しては、Lechnerら,(2002)Intervirology 45:212-217を参照されたい。
【0143】
B型肝炎ウイルスのコアタンパク質(HBcAg)は、外来抗原を保持するのに用いられる一般的なVLPである(Koletzkiら, (1997) J Gen Vir 78:2049-2053を参照されたい)。簡単には、HBcAgをコアとして用いて、拡張型外来タンパク質セグメントを提示するVLPを構築することができる。この方法が採用するのは、C末端が切断されたHBcAgと終止コドンを含む外来タンパク質配列との間にリンカー配列を有するコンストラクトである。切断型HBcAg/外来タンパク質キメラの発現は、大腸菌サプレッサー株中の発現に関して、オパールTGA-Trp変異に基づくメカニズムを介する読み取りを利用することで行う。Koletzkiらにより記載される方法は、長い外来タンパク質配列をVLPへと取り込むことを可能にし、従って、VLPが保持することになる抗原がより多種に及ぶことを可能にする。
【0144】
HIVウイルスGagタンパク質を、抗原担体システムとして使用することができる(Griffithsら, (1993) J Virol. 67(6):3191-3198)。HIV外被の主要な中和決定因子である、HIVのV3ループを、Griffithsは利用した。Gag:V3融合タンパク質は、インビボで組み立てられて、ハイブリッドGag粒子になり、それはウイルス由来粒子(VDP)と記載される。VDPは、体液性及び細胞性応答の両者を誘導する。V3ループはCTLエピトープを含むので、Gag:V3で免役するとVLPのV3タンパク質部分へのCTL応答を誘導する。
【0145】
ハイブリッドHIV:Ty VLPが使用可能である(Adamsら, (1987) Nature 329(3):68-70を参照されたい)。前記HIV:Ty VLPは、酵母トランスポゾンTyのp1タンパク質を利用する。p1タンパク質の最初の381個のアミノ酸は、VLP形成に十分である。HIV:Ty融合タンパク質はインビボでVLPへと組み立て可能であるし、VLPが保持するHIV抗原への免疫応答をも誘起する。Ty p1タンパク質を用いるVLPは、以下(例、α2-インターフェロンの全長、ウシパピローマウイルスE1及びE2遺伝子産物、並びにインフルエンザの血球凝集素部分)と融合するp1を含むことができる。これらのTy融合体の各々は、VLPを形成し、非TyVLP構成成分への抗血清の生産を誘導することができた。
【0146】
VLPは、酵母トティウイルスL-Aの変異体から設計することもできる(Powilleitら (2007) PLOS One 2(5):e415)。L-AウイルスのPol遺伝子は、適切な抗原と置換することで、特異的免疫応答を誘導することができ、このことは、酵母VLPが効果的抗原担体であることを実証する。
【0147】
組換え、非複製的パルボウイルス様粒子は、抗原担体として使用可能でもある(Sedlik,ら (1997) PNAS 94:7503-7508.)。これらの粒子は保持抗原を細胞質中に移行させるので、その抗原はクラスI拘束性免疫経路へ入り、従って細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が媒介する応答を刺激する。Sedlikは、PPV:VLP(パルボウイルスのVP2カプシドタンパク質を含んだもの)を使用して、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の残基118〜132番をVP2カプシドタンパク質に挿入した。LCMV含有PPV:VLPは、LCMVへの免疫応答を誘導することができて、免疫前のマウスにおいて致死量のウイルス用量に対する免疫学的防御を呈した。
【0148】
VLPは、インフルエンザNS2遺伝子(この遺伝子はウイルスの自己複製に必須である)を欠失する自己複製不可能なインフルエンザを含むこともできる。(Watanabe,ら (1996) J Virol. 76(2):767-773)。これらのVLPは哺乳類細胞に感染して、外来タンパク質の発現を可能にする。
【0149】
ノーウォークウイルス(NV)系VLPは、免疫原輸送用の媒体として使用可能でもある。(Ballら (1999) Gastroenterology 117:40-48)。NVゲノムは3つの読み取り枠(ORF1〜3)を有する。ORF2及び3を組換えバキュロウイルスで発現することにより、組換えノーウォークウイルス(rNV)VLPの自発的集合が高率で起こることを可能にする。
【0150】
いくつかの結合体の形成は、本発明の薬剤を少なくとも一つのT細胞エピトープに連結することで行うことができる。いくつかのT細胞エピトープは多様である一方、他のT細胞エピトープは普遍的である。多様なT細胞エピトープは、様々なHLA型を呈する多種多様な被検者においてT細胞免疫が誘導されることを促進することができる。多様なT細胞エピトープとは対照的に、普遍的T細胞エピトープは、様々なHLA-DR対立遺伝子によりコードされる種々のHLA分子を呈する、高い割合(例、少なくとも75%)の被検者において、T細胞免疫が誘導されることを促進することができる。
【0151】
多数の天然型T細胞エピトープが存在する。例えば、破傷風トキソイド(例、P2及びP30エピトープ)、B型肝炎表面抗原、百日咳、トキソイド、麻疹ウイルスFタンパク質、クラミジア・トラコーマティス主要外膜タンパク質、ジフテリアトキソイド、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲T、熱帯熱マラリア原虫CS抗原、マンソン住血吸虫トリオースリン酸塩イソメラーゼ、大腸菌TraT、及びインフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)が挙げられる。本発明に係る免疫原性ペプチドを、以下の文献に記載されるT細胞エピトープに結合させることもできる(Sinigaglia F.ら, Nature, 336:778-780 (1988);Chicz R.M.ら J. Exp. Med, 178:27-47 (1993);Hammer J.ら, Cell 74:197-203 (1993);Falk K.ら, Immunogenetics, 39:230-242 (1994);WO98/23635;及びSouthwood S.ら, J. Immunology, 160:3363-3373 (1998))。
【0152】
また、担体はウイルス様粒子を含む(US20040141984を参照されたい)。
【0153】
断片を製薬上許容できる免疫賦活剤と共に投与することもしばしばである。ペプチドが単独使用される状況に比べて、免疫賦活剤は誘導抗体の力価及び/又は誘導抗体の結合親和性を増加させる。各種免疫賦活剤を免疫原性のAβ断片と組み合わせて使用することで、免疫応答を誘起することができる。好ましい免疫賦活剤は、前記応答の定量性に影響を与える免疫原の立体構造変化を引き起こさずに、その免疫原への固有応答を増強する。好ましい免疫賦活剤には、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、3De-O-アクリル化モノホスホリル脂質A(MPL(商標))(GB2220211(RIBI ImmunoChem Research社、Hamilton、Montana、現在Corixaの一部、を参照されたい)を含む。Stimulon(商標)QS-21は、トリテルペングリコシド又は(南米に見いだされるシャボンの木(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から単離された)サポニンである(Kensilら,「Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(ワクチン設計:サブユニット及び免疫賦活剤アプローチ)」(Powell & Newman編、Plenum Press、NY、1995);US5,057,540、(Aquila Bio Pharmaceuticals社、Framingham、MA;現在Antigenics社、New York、NY)を参照されたい)。他の免疫賦活剤は水中油型エマルジョン(例、スクアレン又はピーナッツ油)であり、任意ではあるが免疫刺激剤(例、モノフォスフォリル脂質A(Stouteら, N. Engl. J. Med. 336, 86-91 (1997))、プルロニックポリマー、及び死滅マイコバクテリアと組み合わせることもある。別の免疫賦活剤はCpG(WO98/40100)である。免疫賦活剤は、薬剤有効成分を有する治療組成物の構成成分として投与可能であり、又は治療薬の投与と別に、前に、同時に、若しくは後に投与する場合もある。
【0154】
好ましい種類の免疫賦活剤は、アルミニウム塩(ミョウバン)(例、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム)である。そのような免疫賦活剤を、他の特異的免疫刺激剤(例、MPL若しくは3-DMP、QS-21、多量体性若しくは単量体性アミノ酸(例、ポリグルタミン酸、ポリリジン))と一緒に又はそれ無しに使用することができる。別の種類の免疫賦活剤は、水中油型エマルジョン製剤である。そのような免疫賦活剤は、他の特異的免疫刺激剤(例、ムラミルペプチド(例、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ(ヒドロキシホスホリルオキシ))-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-イソグ-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(DTP-DPP)theramide(商標))、又は他の大腸菌細胞壁構成成分)と一緒に又はそれ無しに使用することができる。水中油型エマルジョンには、(a)MF59(WO90/14837)(5%スクアレン、0.5%Tween80、及び0.5%Span85(任意ではあるが、様々な量のMTP-PEを含む)を含むもの)を、1ミクロン未満の粒子に、マイクロフルイダイザー(例、モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics社、Newton、MA))を使って製剤化したもの、(b)SAF(10%スクアレン、0.4%Tween80、5%プルロニック-ブロック化ポリマーL121、及びthr-MDPを含むもの)を、1ミクロン未満のエマルジョンに微流動化するか、又はボルテックスしてより大きなサイズのエマルジョンを生成したもの、並びに(c)Ribi(商標)免疫賦活剤システム(RAS)、(Ribi ImmunoChem社、Hamilton、MT)(2%スクアレン、0.2%Tween80、及び(モノフォスフォリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコール酸塩(TDM)、及び細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))からなる群より選択された)一又は複数の大腸菌細胞壁構成成分を含むもの)を含む。
【0155】
好ましい免疫賦活剤の別の種類は、サポニン免疫賦活剤(例、Stimulon(商標)(QS-21、Aquila、Framingham、MA)又はそこから生成された粒子(例、ISCOM(免疫刺激複合体)及びISCOMATRIX))である。他の免疫賦活剤には、RC-529、GM-CSF、フロイント完全アジュバント(CFA)、及びフロイント不完全アジュバント(IFA)を含む。他の免疫賦活剤には、サイトカイン(例、インターロイキン(例、IL-1α及びβペプチド、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-13、並びにIL-15)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、ケモカイン(例、MIP1α及びβ並びにRANTES))を含む。別の種類の免疫賦活剤は、糖脂質類似体(例、免疫調節物質又は免疫賦活剤として、N-グリコシルアミド類、N-グリコシル尿素類、及びN-グリコシルカルバミン酸塩類を含み、そのいずれもが糖残基中でアミノ酸により置換されているもの)である(US4,855,283を参照されたい)。熱ショックタンパク質(例、HSP70及びHSP90)は、免疫賦活剤として使用してもよい。
【0156】
免疫賦活剤は、単一の組成物として免疫原と共に投与可能であるか、又は免疫原の投与前に、同時に、若しくは後に投与する場合もある。免疫原と免疫賦活剤とを同一のバイアルにて梱包して供給してもよく、別のバイアルに梱包して使用前に混合してもよい。免疫原と免疫賦活剤は、意図する治療への適用を示すラベルを付けて通常梱包される。もし、免疫原と免疫賦活剤が別々に梱包される場合、使用前に混合するための取り扱い説明書がその梱包に通常含まれている。免疫賦活剤及び/又は担体の選択が依存するのは、免疫賦活剤を含有する免疫原性製剤の安定性、投与経路、投薬スケジュール、ワクチン接種される種のための免疫賦活剤の効力であり、ヒトにおいては、製薬上許容できる免疫賦活剤は、関連規制機関によりヒトへの投与が承認されたもの又は承認可能なものである。例えば、フロイント完全アジュバントは、ヒトへの投与が適切ではない。ミョウバン、MPL、及びQS-21が好ましい。任意ではあるが、二以上の異なる免疫賦活剤を同時に使用してもよい。好ましい組み合わせには、ミョウバンとMPL、ミョウバンとQS-21、MPLとQS-21、MPL又はRC-529とGM-CSF、並びにミョウバン、QS-21、及びMPLを一緒にしたものを含む。また、フロイント不完全アジュバントも使用可能である(Changら, Advanced Drug Delivery Reviews 32, 173-186 (1998))、任意ではあるが、ミョウバン、QS-21、及びMPLのいずれかと組み合わせてもよいし、その全てを合わせたものであってもよい。
【0157】
<C.免疫療法計画>
予防的適用においては、上記対象物を含有する薬剤、医薬組成物、又は薬物を、アルツハイマー病に感受性のある又はそのリスクがある患者に投与するが、その際の治療計画(用量、頻度、及び投与経路)は、リスクを軽減し、重症度を下げて、又はその疾患の少なくとも一つの徴候若しくは症状の発現を遅らせるのに効果的なものである。特に、好ましくは、前記治療計画はアミロイド沈着量を減少させるか、又は患者脳内のアミロイド沈着量の増加を少なくとも阻害するのに効果的である。アルツハイマー病のリスクのある患者には、アルツハイマー病と診断されてはいないが、脳のアミロイド沈着が正常レベルより高い患者やアルツハイマー病と診断されていないが、軽度の認知機能障害を有する患者を含む。治療への応用においては、薬剤組成物又は薬物を、アルツハイマー病が疑われるか既に罹患している患者へ投与するが、その際の治療計画(用量、頻度、及び投与経路)は、その疾患の少なくとも一つの徴候若しくは症状を和らげるか又は少なくともそのさらなる悪化を阻害するのに効果的である。特に、好ましくは、前記治療計画は、患者のアミロイド沈着を減少するか、又はそのさらなる増加を少なくとも阻害するのに効果的である。
【0158】
有効量は数多くの異なる因子に依存して変動する。その因子には、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトか動物であるのか、投与される他の医薬品、及び治療が予防用又は治療用のものかどうかを含む。
【0159】
抗体用の例示的投与量範囲は、患者の体重当たり、約0.01〜5mg/kg、より通常では、0.1〜3mg/kg、0.15〜2mg/kg、又は0.15〜1.5mg/kgである。そのような用量の抗体投与は、毎日、隔日、毎週、隔週、毎月、四半期に1回、又は経験的解析により決定される他の任意のスケジュールに従って行われる場合がある。例示的な治療においては、長期(例、少なくとも6ヶ月)に渡って複数回の投薬による投与を必要とする。さらに別の治療計画で必要とされるのは、2週間に1回、1月に1回、3〜6ヶ月に1回の投与である。
【0160】
静脈内投与に関しては、0.1mg/kg〜2mg/kg、好ましくは0.5mg/kgまたは1.5mg/kgの用量で四半期に1回静脈投与されることが適している。毎月の静脈内投与に関する好ましい抗体用量は、0.1〜1.0mg/kgの抗体、又は好ましくは0.5〜1.0mg/kgの抗体の範囲である。
【0161】
より頻度の高い投薬(例、毎週から毎月の投薬)については、皮下への投与が好ましい。皮下への投薬は、より投与が簡単で、静脈投与に比べて最大血清濃度を軽減することができる。皮下への投薬に使用される用量は、通常0.01〜0.6mg/kg、0.01〜0.35mg/kg、好ましくは0.05〜0.25mg/kgの範囲である。毎週または隔週の投薬については、用量は、好ましくは0.015〜0.2mg/kg、又は0.05〜0.15mg/kgの範囲にある。毎週の投薬については、用量は、好ましくは0.05〜0.07mg/kg(例、約0.06mg/kg)である。隔週の投薬については、用量は、好ましくは0.1〜0.15mg/kgである。毎月の投薬については、用量は、好ましくは0.1〜0.3mg/kg又は約0.2mg/kgである。毎月の投薬には、暦月又は太陰月(つまり、4週間ごと)による投薬を含む。その適用に関してはいずれにおいても、「mg/kg」で表される投与量は、一般的な患者の体重(例、75kg)の小数点以下を四捨五入したものを乗じることにより、投与量の絶対的質量へと変換可能である。他の治療計画は、例えば、PCT/US2007/009499に記載される。上で議論したように、患者のApoE状態に基づくこれらのガイドラインの範囲内で、投与量と頻度は変動してもよい。
【0162】
能動的投与用の薬剤量は、患者当たり1〜500μgと変動し、より通常では、ヒトへの投与用の注射一回当たり5〜100μgと変動する。注射一回当たりの例示的投与量は、ヒトへの各注射に対して3、10、30、又は90μgである。また、免疫原の質量は、免疫原の全体質量に対する免疫原内の免疫原性エピトープの質量比に依存する。一般的には、10-3〜10-5μMの免疫原性エピトープを、免疫原の各免疫のために使用する。注射時期は有意に変動し、1日1回から1年に1回、10年に1回に渡る。免疫原の投与がなされた任意の所定日において、その投与量は、免疫賦活剤もまた投与された場合は1μg/患者より多く及び通常は10μg/患者より多い。免疫賦活剤が無い場合は、前記投与量は10μg/患者より多く及び通常は100μg/患者より多い。一般的な治療計画の構成は、免疫を行い、その後複数回のブースター注射を期間(例、6週間)をおいて行う。別の治療計画の構成は、免疫を行い、その後複数回のブースター注射を、1、2、及び12ヶ月後に行う。別の治療計画は、生涯に渡り2ヶ月に1回注射することを必要とする。また、免疫応答のモニタリングにより示唆される場合は、不定期にブースター注射を実施してもよい。投与量と頻度は変動するので、薬剤有効成分により誘導される抗体の平均血清濃度は、受動的投与と同様に、0.1〜60、0.4〜20、1〜15、又は2〜7μg/mlの範囲内である。上で議論したように、患者のApoE状態に基づくこれらのガイドラインの範囲内で、投与量と頻度は変動してもよい。
【実施例】
【0163】
この実施例は、[11C]PiB PETイメージングを使用した、インビボの脳皮質Aβ沈着におけるバピネオズマブ関連変化を示す。
【0164】
<方法>
<研究計画>
臨床試験は、第2相、多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ管理、反復投与用量漸増試験であった。静脈注射用(IV)バピネオズマブ又はプラセボのいずれかで、以下の3つの用量コホート(0.5mg/kg[A]、1.0mg/kg[B]、若しくは2.0mg/kg[C])の内一つを受けるよう無作為に患者を割り当てた。30人までの患者(バピネオズマブ又はプラセボを受ける各用量コホート[A、B、若しくはC]の患者をその用量コホート当たり10名(7:3の比率で))の登録計画を立てた。スクリーニング段階を完了し全ての選択基準を満たした患者を無作為化抽出に適格とした。28人の患者をこの試験に登録した(コホートAに10人、コホートBに10人、及びコホートCに8人)。他の試験において2.0mg/mlの用量で脳性血管原性浮腫がより頻繁に観察された後、試験運営機構はコホートCの登録を中止した。ランダム化された患者は、試験薬物を、13週ごとに1時間の静脈点滴を6回点滴まで受けた。それぞれの患者が受けるのは、[11C]PiB PET、[18F]FDG PET、認知機能の臨床評価、Aβ及びタウの脳脊髄液(CSF)サンプリング、体積測定的および安全な磁気共鳴画像法(MRI)、並びに安全性評価である。最終評価は、第78週目に行った。
【0165】
<患者>
適格患者は、50歳以上80歳以下で、蓋然的AD(McKhann, Neurology; 34:939-944 (1984))に関するNINCDS-ADRDA(National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke(国立神経病・言語障害・脳卒中研究所)-Alzheimer's Disease and Related Disorders Association(アルツハイマー病および関連疾患協会)[現在、アルツハイマー病協会としてしられるもの])基準を満たしていた。また、患者に必要とされるのは、AD患者に一般的に期待される範囲でベースライン(開始時)のAβ負荷を有することである。その負荷は、前帯状回、後帯状回、前頭葉、側頭葉、及び頭頂葉の中の少なくとも3つの脳領域において、小脳≧1.5に相対的な[11C]PiB PET保持率として定義される。他の選択基準は、ADと矛盾しないMRI、精神状態短時間検査(Mini-Mental State Exam)(MMSE)スコアが18〜26であること(Folstein, J Psychiatr Res; 12:189-198 (1975))、及びローゼン改変ハチンスキー虚血スコア(Rosen Modified Hachinski Ischemicスコア)が≦4であること(Rosen、Ann Neurol; 7:486-488(1980))である。AD以外の臨床的に有意な神経疾患;主要な精神疾患、脳卒中又はてんかんの病歴、ハミルトンうつ病評価尺度>12(Hamilton, J Neurol Neurosurg Psychiatry; 23:56-62 (1960));現状の抗けいれん薬、抗パーキンソン病薬、抗凝血剤、又は催眠剤;最近の免疫抑制剤又はがん化学療法剤;或いは、スクリーニング前少なくとも120日間の安定投薬でのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤若しくはメマンチン以外の向知性薬に関して、患者を除外した。
【0166】
<[11C]PiB PET方法>
[11C]PiB合成とPiB PETデータ取得の詳細は、これまでに記載されている(Edisonら, Neurology; 68:501-508 (2007))。簡単には、全ての[11C]PiB画像は、Siemens ECAT EXACT HR+スキャナーを用いて、約370MBqの[11C]PiB(比放射能≧注射時に10GBq[11C]PiB)の静脈ボーラス投与前の減衰(attenuation)スキャン後に取得した。画像を、90分間に渡り32フレーム取得した。[11C]PiB保持量の皮質:小脳比の画像の生成(Hammersmith Imanet社、GE Healthcare社)を、単一部位で、以前報告されたように注射後60〜90分後のデータを用いて行った(上記Edisonら)。[11C]PiB PET画像を、個々人のMRI(標準的モントリオール神経学研究所(Montreal Neurological Institute)(MNI)空間に標準化したもの)と共に登録した。確率的脳アトラスを使用して、区分化灰白質領域をサンプリングするために目的領域(ROI)の標準テンプレートを作成した(Hammersら, Hum Brain Mapp; 19:224-247 (2003))。解析のため、6つの所定の皮質ROI(前帯状回、後帯状回、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び後頭葉)を含めた。また、6つ全てのROIの平均([11C]PiB平均)を計算した。[11C]PiB PETスキャンをスクリーニング時と第20、45、及び78週目に取得した。
【0167】
<[18F]FDG PET、臨床、CSF、及びMRI実績測定>
脳幹に比較した領域的大脳糖代謝(rCMRglc)のパラメトリック画像を、トレーサ注射後33〜55分間の脳[18F]FDGの時間活性曲線から生成した。パラメトリックrCMRglc画像をMNI定位脳空間に変換する。そして、確率的アトラスを用いて、6つの皮質ROIと、スクリーニング時及び第78週目のそれらの平均([18F]FDG平均)([11C]PiB解析に関してと同様に)を規定する。
【0168】
アルツハイマー病評価尺度-認知サブスケール(ADAS-Cog)(Rosen, Am J Psychiatry; 141:1356-1364 (1984); Mohs., Alzheimer Dis Assoc Disord; 11 (Suppl 2):S13-S21 (1997)。認知症のための障害評価表(Disability Assessment for Dementia)(DAD)(Gauthier, Int Psychogeriatr; 9 (Suppl 1):163-165 (1997)。神経心理検査バッテリー(NTB)(Harrison, Arch Neurol; 64:1323-1329 (2007))及びMMSE(範囲0〜30)スケールを、約3ヶ月に1回実施した。臨床的認知症評価尺度の合計点(CDR-SB;範囲0〜18)(Morris JC, Neurology; 43:2412-2414 (1993))及び神経精神症状評価尺度(Neuropsychiatric Inventory) (NPI) (Cummings, Neurology; 44:2308-2314 (1994))を、6ヶ月に1回実施した。腰椎穿刺に同意した患者において、治療前と第52周目にCSFを採取した。トータルタウ(Blennow, Mol Chem Neuropathol; 26:231-245 (1995))、リン酸化タウ(P-タウ181)(Vanmechelen, Neurosci Lett; 285:49-52 (2000))、及びAβ42(Andreasen, Arch Neurol; 56:673-680 (1999))に関するサンドイッチELISAにより、CSFバイオマーカーを測定した(Aβx-42を測定するため3D6に換えて4G8抗体を用いた)。体積測定的および安全なMRIスキャンを、治療前、第6週目、その後、13週間隔で第71週目まで実施した。探索的MRIの結果には、全脳体積(BBSI)及び脳室体積(VBSI)のベースラインから第71週目までの変化(境界シフト積分(BSI)方法で測定したもの)を含む(Fox, Arch Neurol; 57:339-344 (2000))。
【0169】
<統計分析>
<一次的分析>
事前の一次的分析に従って、第78週目のバピネオズマブのプールとプラセボ群のプールを、反復測定モデル(混合モデル反復測定法、MMRM)を用いて比較した。反応変数は、スクリーニング時から第20、45、及び78週目までの、6つの所定皮質ROIの平均[11C]PiB皮質:小脳保持率の変化である。説明変数には、治療群、連続的共変数としてのスクリーニング時の[11C]PiB PET値、ベースラインMMSEカテゴリー(高[22〜26]対低[18〜21])、受診週(カテゴリカル因子)、及び治療と受診週との相互作用を含む。共分散行列の選択を、赤池情報量基準に基づく事前に特定したセットから行った。一次的分析は、第78週の最小二乗平均差を危険率α=0.05での両側検定で行った。改変治療対象(intent-to-treat)(MITT)分析集団(任意量の試験薬物を受けていて、スクリーニングをし、少なくとも一つの有効なポストベースライン(開始後)PETスキャンをした全てのランダム化された患者)中の全ての患者を、解析に含める。
【0170】
<探索的解析>
6人の[11C]PiB PET ROIの解析を、[11C]PiB PET全平均と同一方法を用いて行った。スクリーニングからの[18F]FDG PET平均の変化を、治療(バピネオズマブのプール対プラセボのプール)、スクリーニング値、及びベースラインMMSEカテゴリーに対するモデル条件を用いて、共分散分析(ANCOVA)で解析した。BBSI及びVBSIのモデルが、それぞれ共変量としてベースラインの全脳体積及びベースラインの脳室体積を含むことを除いては、MRIと臨床評価項目を、[11C]PiB PET平均と同一方法を用いて解析した。CSF変数の解析は、[18F]FDG PETと同一のANCOVA法を用いて行った。
【0171】
いくつかのベースライン評価(例、NTB、CDR-SB、及び[11C]PiB PET)に関して、治療群とプラセボ群の間に見かけ上の差異があるため、これらの不均衡のためにさらに別の分析を調整した。上記MMRMおよびANCOVA解析を、スクリーニング/ベースライン共変量を用いないが、ベースラインNTB、CDR-SB、及び[11C]PiB平均(MMRMでは、さらに対応する「受診による共変量」(covariate by visit)の相互作用)に関するモデル条件を加えて繰り返した。探索的解析は、多重比較用に調整しなかった。
【0172】
<サンプルサイズ>
以前報告された標準化取り込み値(Klunk WE, Engler H, Nordberg A, Wang Y, Blomqvist G, Holt DPら, Ann Neurol; 55(3):306-319 (2004))に基づき推定されるのは、危険率5%での両側t-検定を用いて、バピネオズマブのプールとプラセボのプール間のスクリーニング時から第78週目までの変化に関し、[11C]PiB保持量の治療差異0.25を検出するための検定力が97%より大きくなるであろうことである。試験は、臨床実績又は他のバイオマーカーの実績に関する効力の評価をするために行われたものでは無い。
【0173】
<結果>
<患者の特質>
スクリーニングされた53人の患者の中から、28人がランダム化された(20人のバピネオズマブ対8人のプラセボ;0.5mg/kgコホートに10人、1.0mg/kgコホートに10人、及び2.0mg/kgコホートに8人)。8人がスクリーニングに合格しなかったのは、[11C]PiB保持量が低いので選択基準を満たさなかったからである。15人の患者は、他の選択基準/除外規準を満たさなかった。2人は登録を完了しなかった。全てのランダム化された患者は、少なくとも一つの用量のバピネオズマブ又はプラセボ(安全性評価対象集団)を受けた。投薬を受けた者の中で、26人(19人のバピネオズマブ;7人のプラセボ)は、ベースライン(開始時)及び少なくとも一つのポストベースライン(開始後)[11C]PiB評価を行い、MITT集団に含めた。18人のバピネオズマブ患者(90.0%)と6人のプラセボ(75.0%)患者を、第78週目に評価した。15人のバピネオズマブ(75.0%)患者と5人の(62.5%)プラセボ患者を、第78週目に[11C]PiB評価した。
【0174】
<ベースライン(開始時)個体群別統計および評価>
ベースライン特性を、治療群によるMITT集団に関して、テーブル1に要約した。ベースライン個体群別統計を、治療群間で均衡化した。6つ全ての標的領域のベースライン[11C]PiB平均は、バピネオズマブ群のプール(p=0.058)と比較してプラセボ群のプールに関して低い傾向があった。いくつかの個々のROI(特に、前帯状回(p=0.029)、前頭葉(p=0.040)、後帯状回(p=0.077)、及び頭頂葉(p=0.053))に関して、同様のパターンが当てはまった。また、治療群間の見かけ上のベースライン不均衡が観察されたのは、臨床評価のいくつかで、CDR-SB(p=0.007)とNTB(p=0.040)に関してプラセボ群中に軽度の疾患(良好な遂行能力)の証拠があった。プラセボ治療患者の71%(71.4%)が、36.8%のバピネオズマブ治療患者と比較して、高MMSEカテゴリー(22〜26)に該当した。
(表17)テーブル1

*p<0.05;ベースライン不均衡は、プラセボ群において[11C]PiB取り込みが少ないことを示す。
†p<0.05;不均衡は、プラセボ群において良好な遂行能力を示す。
連続変数(平均とSDで表されるもの)に関しては、p値を、2標本t-検定に基づいて計算する。カテゴリカル変数(カウントと割合表示されるもの)に関しては、p値を、フィッシャーの正確検定を使用して計算する。
AChEI=アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;AD=アルツハイマー病;ADAS-Cog=アルツハイマー病評価尺度-認知サブスケール;ApoE4=アポリポプロテインE4;CDR-SB=臨床的認知症評価尺度の合計点;DAD=認知症のための障害評価表;[18F]FDG=2-フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース;MITT=改変治療対象(intent-to-treat);MMSE=精神状態短時間検査;NPI=神経精神症状評価尺度;NTB=神経心理検査バッテリー;PET=ポジトロン放射型断層撮影法;PiB=ピッツバーグ化合物B;[11C]PiB平均=6つ全ての皮質目的領域の[11C]PiB平均;SD=標準偏差
【0175】
<[11C]PiB PET結果>
事前の一次的分析(テーブル2、第1行)において、バピネオズマブ治療患者は、プラセボ群と比較して、第78週目の[11C]PiB平均保持量の有意な減少を示した(-0.24、p=0.003)。「時間による治療」(treatment by time)の相互作用に関して、ある傾向(p=0.059)が観察され、その示唆するところは、治療差異が経時的に増加することであった(図1)。バピネオズマブ治療群の中では、ベースラインと比較して第78週目における[11C]PiB平均保持量の減少が観察された(-0.09、95%CI-0.157〜-0.019、p=0.014)。一方、プラセボ治療群は、増加を示した(0.15、95%CI0.023〜0.275、p=0.022)。図2は、個々の患者の[11C]PiB PET保持量を、ベースライン(開始時)と最後の受診時の治療群により示す。また、ベースラインから最後の受診までの変化も示す。バピネオズマブ又はプラセボで治療する前と78週間治療した後とでの、個々の患者の[11C]PiBスキャンを、図3に示す。
(表18)テーブル2
PiB PET: [11C]PiB平均および個々の目的領域におけるPiB-ベースラインから第78週目への変化(MMRM、MITT集団)

両側検定を使用して、モデルで推定した第78週目の治療差異を、p値により検定した。モデル推定値は、ベースラインからの応答としての変化と(2つのレベル(バピネオズマブ及びプラセボ)、ベースラインスコア、ベースラインMMSEカテゴリー、受診週(カテゴリカル変数としてのもの)、及び「治療群による受診」の相互作用を有する)治療群に関するモデル条件とを用いるMMRMからの最小二乗平均である。共分散行列の選択を、赤池情報量基準に基づく事前に特定したセットから行う。負のグループ内観察平均および推定平均は、ベースラインと比較したAβの減少を示す。負の観察治療差異および推定治療差異は、プラセボ群と比較したバピネオズマブ治療群においてベースラインからAβが減少したことを示す。
*p≦0.05。
†p≦0.01:治療群中のベースラインからの変化に関するもの。
バピ=バピネオズマブ、CI=信頼区間、MITT=改変治療対象(intent-to-treat)、MMRM=混合モデル反復測定法、N=モデル(MITT患者)に含まれる患者数、PET=ポジトロン放射型断層撮影法;PiB=ピッツバーグ化合物B;[11C]PiB平均=6つ全ての皮質目的領域の[11C]PiB平均、SD=標準偏差。
【0176】
6つの皮質ROIに関するベースライン(開始時)から第78週目への[11C]PiB保持量の変化が示す結果は、[11C]PiB全平均のものと同様であった(テーブル2)。6つのROIに渡り、ベースラインから第78週目まで通しての変化は、バピネオズマブ治療患者における[11C]PiBの一貫した減少と、プラセボ治療患者におけるその増加を示した。[11C]PiB平均の治療差異の大きさは、3種類の用量(0.5mg/kg用量(0.24、p=0.009)、1.0mg/kg用量(0.18、p=0.051)、及び2.0mg/kg用量(0.29、p=0.003))のいずれに関しても同様であった。
【0177】
治療群とプラセボ群との間の[11C]PiB保持量に関し観察された有意な治療差異は、ベースラインNTB、CDR-SB、及び[11C]PiB平均に関して調整した分析において維持されていた([11C]PiB平均推定治療差異、-0.25、p=0.025)。バピネオズマブ治療患者におけるベースラインからの[11C]PiB平均変化は、ApoE4保因者(平均0.08;n=9)とApoE4非保因者(平均0.10;n=6)とに関して類似していた。
【0178】
バピネオズマブがその結合部位から[11C]PiBと入れ代わる可能性が除外されるのは、インビボで達成される濃度より数桁高いバピネオズマブ濃度で、バピネオズマブがAD脳ホモジネート又は合成Aβ線維と[3H]PiB結合に関して競合しないことを示したことによる。生理的濃度のバピネオズマブはCSF中で50ng/mlを超えることはほとんど無いので、バピネオズマブがAβ上の結合部位に関してPiBと競合するか否かを完全に決定するために、0.5〜200,000ng/mlの濃度を試験した。試験は、合成Aβ1〜40線維と重度のプラーク沈着を有するAD脳前頭葉ホモジネートとの両者を用いて実施した。ヒトPET試験中の[11C]PiBのインビボ濃度を再現するために、濃度1nMの[3H]PiBを選択した。Aβ線維またはAD脳組織が存在しないフィルターシートへの[3H]PiB結合に関するコントロールも含めた。バピネオズマブでは、20,000ng/mlまでの濃度において、AD脳またはAβ1〜40線維への[3H]PiB結合の効果が検出できなかった。
【0179】
<探索的臨床、[18F]FDG、MRI、及びCSF実績>
複数の探索的評価項目を通して治療差異がばらついていた(テーブル3)。NTB、CDR-SB、及び[11C]PiBにおけるベースライン不均衡を調整した後、治療差異(p<0.05)が全てのPiB PET変数で維持された。しかしながら、臨床、[18F]FDG PET、MRI、又はCSF評価項目に関しては、治療差異が見られなかった。
(表19)テーブル3
ベースライン臨床スコア(NTB、CDR-SB)及び[11C]PiB平均(MITT集団)を調整後と事前解析中との、[11C]PiB、臨床、及びバイオマーカー評価項目に関する治療差異

PiB評価項目と臨床評価項目について、事前解析は、(ベースライン(スクリーニング時)からの応答としての変化と、(2つのレベル(バピネオズマブ及びプラセボ)、ベースラインスコア、ベースラインMMSEカテゴリー、受診週(カテゴリカル変数としてのもの)、及び「治療群による受診」の相互作用を有する)治療群に関するモデル条件とを用いる)MMRMからの最小二乗平均を使用して推定した第78週目治療差異に基づいていた。共分散行列の選択を、赤池情報量基準に基づく事前に特定したセットから行った。調整後解析はベースライン共変量を除去して、(ベースラインNTB、CDR-SB、及び[11C]PiB平均とそれに対応する「受診による共変量」の相互作用に関する)モデル条件を加えた。MMRM解析は、全てのMITT患者(N=19(バピネオズマブ)、N=7(プラセボ))を取り込む。PiB評価項目について、負の治療差異が示すのは、バピネオズマブに関してPiB保持量が少ないことである。臨床評価項目について、正の治療差異は、バピネオズマブを支持する(ベースラインからの変化を計算して改善度を表す形をとる慣習による)。
BBSIおよびVBSIについて、事前特定モデルは、推定値が第71週目(最後のMRI受診)に基づくことを除いては同じである。そして、ベースライン共変量の代わりに、BBSIモデルは全脳体積を含めるが、VBSIモデルはベースライン脳室体積を含めた。調整後解析はこれらの共変量を除去して、(ベースラインNTB、CDR-SB、及び[11C]PiB平均とそれに対応する「受診による共変量」の相互作用に関する)モデル条件を加えた。MMRM解析は、全てのMITT患者(N=19(バピネオズマブ)、N=7(プラセボ))を取り込む。
BBSIについての負の治療差異が示すのは、プラセボ群と比較してバピネオズマブ群の脳体積ロスが少ないことである。VBSIについて正の治療差異が示すのは、プラセボ群と比較してバピネオズマブ群の脳室体積増加がより大きくなることである。
[18F]FDG(平均値)について、事前解析は、ベースラインからの応答としての変化と(2つのレベル(バピネオズマブ及びプラセボ)、ベースラインスコア、及びベースラインMMSEカテゴリー有する)治療群に関するモデル条件とを用いるANCOVAからの最小二乗平均を使用して推定された第78週目治療差異に基づいていた。調整後解析はベースライン共変量を除去して、(ベースラインNTB、CDR-SB、及び[11C]PiB平均に関する)モデル条件を加えた。解析が基づくのは、有効な第78週目の[18F]FDG(平均値)データ(n=17(バピネオズマブ)、n=5(プラセボ))である。正の治療差異が示すのは、プラセボ群と比較してバピネオズマブ群の、ベースラインと比べる[18F]FDG保持量がより大きくなることである。
CSF変数について、事前解析は、ベースラインからの応答としての変化と(2つのレベル(バピネオズマブ及びプラセボ)、ベースラインスコア、及びベースラインMMSEカテゴリー有する)治療群に関するモデル条件とを用いるANCOVAからの最小二乗平均を使用して推定された第52週目治療差異に基づいていた。調整後解析はベースライン共変量を除去して、(ベースラインNTB、CDR-SB、及び[11C]PiB平均に関する)モデル条件を加えた。解析が基づくのは、有効な第52週目のCSFデータ(n=7(バピネオズマブ)、n=4(プラセボ))である。CSFタウおよびp-タウについて、負の治療差異が示すのは、プラセボ群と比較したバピネオズマブ治療群において、ベースラインと比べて第52週目の減少がより大きくなることである。CSFのAβx−42について、正の治療差異が示すのは、プラセボ群と比較したバピネオズマブ治療群において、ベースラインと比べての増加である。
ADAS-Cog=アルツハイマー病評価尺度-認知サブスケール;ANCOVA=共分散分析;BBSI=脳境界シフト積分;CDR-SB=臨床的認知症評価尺度の合計点;CI=信頼区間、CSF=脳脊髄液;DAD=認知症のための障害評価表;[18F]FDG=2-フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース;MITT=改変治療対象(intent-to-treat);MMRM=混合モデル反復測定法、MMSE=精神状態短時間検査;NPI=神経精神症状評価尺度;NTB=神経心理検査バッテリー;PiB=ピッツバーグ化合物B;[11C]PiB平均=6つ全ての皮質目的領域の[11C]PiB平均;VBSI=脳室の境界シフト積分。
【0180】
<安全性実績>
最も高い用量コホート(2.0mg/ml)の2人のバピネオズマブ治療患者(両者ともApoE4保因者(ApoE遺伝子型は4/4および3/4)であった)がVEを経験した。両方の患者は無症状で、その発症はMRI検査を通じて発見され、各患者は発症前にバピネオズマブを一回投薬されていた。両方の患者を永久的に投薬中断したところ、その予後は両者とも改善されたと思われた。
【0181】
<考察>
6つの標的ROIからの[11C]PiB PET平均保持量におけるベースラインからの変化に関して、バピネオズマブ治療患者対プラセボ治療患者で、有意な治療差異を前記試験が示した。ベースラインに比べての[11C]PiB保持量の減少が、バピネオズマブ治療群に見られた。一方で、プラセボ群では増加が観察された。[11C]PiB保持量の治療差異の大きさは、検定された3つの用量のいずれもにおいて類似していた。治療差異は、経時的に増加するように見えた。6つの皮質ROIのそれぞれの結果は全平均のものと類似し、バピネオズマブ治療患者では[11C]PiB保持量が一貫して減少し、プラセボ治療患者では増加した。
【0182】
皮質:小脳比率は単位が無く、比率1.0は特異的[11C]PiB保持量が無いことを示し、パーセント変化の計算中で説明されることが期待される。例えば、2.0から1.8比率単位への減少は、特異的[11C]PiB保持量の20.0%の減少[つまり、(2.0-1.8)/(2.0-1.0)]を表すことになる。従って、バピネオズマブに関して78週に渡って0.09比率単位が減少することは、ベースライン値の2.06から8.5%減少することを表す。一方で、プラセボに関して0.15単位が増加することは、ベースライン値の1.89よりも16.9%上昇することを表す。このやり方を用いると、バピネオズマブ治療が、プラセボのものと比較して、皮質の線維状Aβが78週の経過に渡り約25%の減少を示すことと関連したと推定できる。N末端抗体は、Aβオリゴマーに結合し(Shankarら, Nat Med; 14:837-842 (2008))、また、プラークを拡散及び凝縮させる(Bard, Nat Med; 6:916-919 (2008);Schenkら, Nature; 400:173-177 (1999))。一方で、PiBは、線維状Aβのみに結合し、凝縮したプラークよりは拡散したプラークに弱く結合する(Klunkら,Ann Neurol; 55(3):306-319 (2004):Ikonomovicら, Brain; 131:1630-1645 (2008))。[11C]PiBは、従って、Aβの全負荷へのバピネオズマブの効果を過小評価している可能性がある。経時的な[11C]PiB保持量の治療差異が増加することと矛盾すること無く、より大きな差異が継続治療から生じる可能性がある。バピネオズマブ治療群は、プラセボ群の変化と独立して、ベースラインからの[11C]PiB保持量の有意な減少を示した。
【0183】
登録した患者数が比較的に少ないことから、2つの治療群間で、いくつかの測定におけるベースライン不均衡が見かけられた。疾患重症度は、プラセボ群と比較してバピネオズマブ群において、いくらか大きいように思われた。ベースライン[11C]PiB PET保持量と臨床スコアとにおけるベースライン不均衡を調整した後、[11C]PiB PET治療差異が引き続き起こった。一方、臨床又は他のバイオマーカー実績に関しては、統計学的に有意な差異は見られなかった。
【0184】
上記引用した全ての特許出願書類、他の刊行物、ウエブサイト、及びアクセション番号等は、あらゆる目的のため、参照によりその全体が本明細書中に取り込まれる。その程度は、各個々のアイテムが参照によりそのように取り込まれたと具体的且つ個別的に示されるかのような程度と同じである。配列の異なる変異があるものが複数、異なる時期におけるアクセション番号と関連している場合、本出願の出願日でのアクセション番号に関連するバージョンのものを意味する。同様に、本出願の出願日において存在するウエブサイトのバージョンを意味する。他に具体的に指示が無い場合は、本発明の任意の特徴、工程、要素、実施形態、又は観点を、任意の他のものと組み合わせて用いてもよい。明確性と理解の目的で、図と実施例により本発明をある程度詳細に記載したが、ある種の変更や改変が添付した特許請求項の範囲内で実施可能であることは明らかである。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aβを標的とする免疫療法を受ける患者の治療をモニタリングする方法において、
前記患者に、Aβを含むアミロイド沈着に結合する小分子ポジトロン放射型断層撮影法リガンド(PETリガンド)を投与し、
脳中の前記PETリガンドを、PETを使用して検出して、前記患者の脳中のAβアミロイド沈着レベルの指標を提供する、方法。
【請求項2】
前記PETリガンドがAβのコンゴレッド結合部位に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PETリガンドがAβのチオフラビン-T(Th-T)結合部位に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PETリガンドがAβの2-(1-{6-[(2-フルオロエチル-(メチル)アミノ]-2-ナフチル}エチリデン)マロノニトリル(FDDNP)結合部位に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PETリガンドが以下の式からなる群より選択されるか、又はその薬理学的に許容出来る塩である、請求項2に記載の方法:
【化1】

式中、
各R1は、H、NH2、及びOHからなる群より独立して選択され;
R2は、CO2Hであり;
R3は、OHであるか;又はR2及びR3は、それらが結合する原子と組み合わされて、SO3H及びNH2からなる群より独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい融合ベンゼン環を形成し;
各R4及びR5は、H及びSO3Hからなる群より独立して選択されるか;又は、R4及びR5は、それらが結合する原子と組み合わされて、融合ベンゼン環を形成し;
各R6及びR7は、H又はCH3からなる群より独立して選択され;
Y1は、CR8、N及びN-Mからなる群より選択され、式中、Mは、Zn、Ni、Cu、及びCdからなる群より選択される金属であり、;R8は、Hであるか、又は式:
【化2】

を有し;
Y2は、CR9及びNからなる群より選択され;
R9は、H、OMe、Br、及びIからなる群より選択され;
R10は、-OR10a及び-NHCH3からなる群より選択され;
R10aは、H及びMeからなる群より選択され;
各R11は、H、OH、OMe、及びCO2Hからなる群より選択され;
各R12は、式:
【化3】

を有する群から選択され;
下付添字nは、1又は2の整数であり;nが1の場合、右の括弧から伸びている結合は、Hへの結合を示し;
波線は、残りの分子への結合点を示し;並びに
前記PETリガンドの少なくとも1つの原子が、11C、13N、15O、18F、や123Iからなる群より選択される放射標識で置き換え又は置換される、方法。
【請求項6】
前記PETリガンドが以下の式からなる群より選択される、請求項2に記載の方法:
【化4】

【請求項7】
前記PETリガンドが以下の式からなる群より選択される式を有するか、又はその薬理学的に許容出来る塩である、請求項4に記載の方法:
【化5】

式中、
R13は、-N(CH3)2及び-N(CH3)CH2CH2Fからなる群より選択され;
R14は、-Hであり;
R15は、-CH3及び-C(CH3)3からなる群より選択され;又はR14及びR15は、それらが結合する原子と組み合わされて、融合シクロヘキシル環を形成し;
Y3はOやC(CN)2からなる群より選択され;
R16は、-OCH3及び-CH2CH(CH3)2からなる群より選択され;並びに
前記PETリガンドの少なくとも1原子が、11C、13N、15O、18Fや123Iからなる群より選択される放射標識で置き換え又は置換される、方法。
【請求項8】
前記PETリガンドが以下の式からなる群より選択される式を有する、請求項4に記載の方法:
【化6】


【請求項9】
前記PETリガンドが以下の式からなる群より選択される式を有するか、又はその薬理学的に許容出来る塩である、請求項3に記載の方法:
【化7】

式中、
R17は、H、CH3、OH、OCH3、O(CH2)2F、OCH2OCH3、CO2CH3、CN、NH2、Br、I、及びNO2からなる群より選択され;
Y4は、O又はNR4aであり;式中、R4aはH及びCH3からなる群より選択され;
Y5は、S及びOからなる群より選択され;
Y6は、CH、N及びNCH3からなる群より選択され;
Y7は、N、CH及びCFからなる群より選択され;
R18は、H、F及びIからなる群より選択され;
R19は、H、CH3、(CH2)mF及びCH2(C6H4)Fからなる群より選択され;又は、Y4がNR4aの場合、R4a及びR19はそれらが結合する窒素と組み合わされてモルホリニル若しくは4-メチルピペリジニル環を形成し;
下付添字mは、2、3、又は4の整数であり;
R20は、H及びIからなる群より選択され;
R21は、Br及びIからなる群より選択され;
R22は、H、F、Br、I、CO2CH3及び-OR22aからなる群より選択され;
R22aは、H、CH3
【化8】

からなる群より選択され;

Y8は、N及びCR23からなる群より選択され;
R23は、H及びIからなる群より選択され;
R24は、H、OH、OCH3、SCH3、SO2CH3及び-N(R24a)(R24b)からなる群より選択され;
R24a及びR24bの各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
Y9は、CH又はNであり;
R25及びR26の各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
R27は、H、CH3、OH、O(CH2)2F及びFからなる群より選択され;
R28は、H、F及びIからなる群より選択され;
Y10は、S又はOであり;
R29は、F、CI及び-N(R29a)(R29b)からなる群より選択され;
R29a及びR29bの各々は、H、CH3及びCH2CH3からなる群より独立して選択され;
各R30及びR31は、Hであるか又はそれらが結合する原子と組み合わされて融合ベンゼン環を形成し;
R32は、CH3、Br、I、OH、NO2、NH2、NHCH3及びN(CH3)2からなる群より選択され;
R33は、H及びIからなる群より選択され;
R34は、H、Br、I、NH2及びN(CH3)2からなる群より選択され;
各R35、R36及びR37は、H及びN(R37a)(R37b)からなる群より独立して選択され;
R37a及びR37bの各々は、H及びCH3からなる群より独立して選択され;
R38は、OH及びOからなる群より選択され;式中破線の結合は、R38がOHの場合単結合の存在を示し、R38がOの場合二重結合を示す;
R39は、CH3及びCH2CH3からなる群より選択され;
R40は-CH2CH2Fであり;
R41は、I、Br、CH3及びHからなる群より選択され;
R42は、H及びIからなる群より選択され;
R43は、-OR43a、-NR43aR43b及び-Brからなる群より選択され;
R43aは、H、CH3、CH2CH2Fからなる群より選択されるか、又はR43が-NR43aR43bの場合、各々が結合する窒素と組み合わされてモルホリニル基を形成し;並びに
前記PETリガンドの少なくとも1原子が、11C、13N、15O、18Fや123Iからなる群より選択される放射標識で置き換え又は置換される、方法。
【請求項10】
前記PETリガンドが以下の式からなる群より選択される、請求項3に記載の方法:
【化9】


【請求項11】
前記PETリガンドが、[18F]AV-14、[18F]AV-144、[11C]AZD2995、[18F]-AZD4694及び[18F]-SMIBR-W372からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記指標が前記患者の前記脳中の前記Aβアミロイド沈着レベルの多次元画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記PETリガンドが可溶性Aβに比べてアミロイド沈着に優先的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記PETリガンドが線維状のアミロイドに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記PETリガンドがC11-PiBである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記PETリガンドが末梢血管から投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記PETリガンドが静脈投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記PETリガンドが12〜18mCiの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記投与工程および前記検出工程がAβを標的とする前記免疫療法の開始の前と後にあり、前記Aβアミロイド沈着レベルが前記療法の開始後に減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記Aβアミロイド沈着レベルの減少が検出された場合、FFDG、BBSI、VBSI、CSF Aβ42、CSFタウ及びCSF p-タウからなる群より選択されるバイオマーカーの有意な変化が検出できない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記Aβアミロイド沈着レベルの減少が検出された場合、認知機能の基準の有意な向上が検出できない、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記投与工程および前記検出工程がAβを標的とする前記免疫療法の開始後四半期に1回から2年に1回の頻度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記投与工程および前記検出工程が少なくとも第1及び第2の時期で実施され、前記第1時期はAβを標的とする前記免疫療法の開始前であり、前記第2時期はその後9〜18ヶ月の間であり、前記Aβアミロイド沈着レベルが前記第1時期と前記第2時期との間で減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記投与工程および前記検出工程がAβを標的とする前記免疫療法の開始前とその78週間後に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
MRI又はCATスキャンを実施して、前記患者の脳のMRI又はCAT画像上にAβアミロイド沈着の画像を重ねることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項26】
Aβを標的とする前記免疫療法の治療計画が前記モニタリングに対応して調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
もしあれば、FFDG、BBSI、VBSI、CSF Aβ42、CSFタウ及びCSF p-タウからなる群より選択されるバイオマーカーの測定値並びに、もしあれば、認知機能の測定値に関係なく、前記免疫療法が調整される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記治療計画が調整される場合、Aβを標的とする前記免疫療法の、FFDG、BBSI、VBSI、CSF Aβ42、CSFタウ及びCSF p-タウからなる群より選択されるバイオマーカーへの有意な効果が検出できない、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記治療計画が調整される場合、Aβを標的とする前記免疫療法の、認知機能の基準への有意な効果が検出できない、請求項26の方法。
【請求項30】
Aβを標的とする前記免疫療法の前記治療計画が、Aβアミロイド沈着の検出レベルを減少させる導入的治療計画から、前記モニタリングに対応するAβアミロイド沈着レベルの減少を維持する維持的治療計画へと調整される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
バピネオズマブの用量が1mg/kgから0.5mg/kgへと減少される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記モニタリングによって前記脳中の前記Aβアミロイド沈着レベルがAβを標的とする前記免疫療法の開始後少なくとも18ヶ月の期間に渡って増加したことの指標が得られると、前記モニタリングに対応してAβを標的とする前記免疫療法を終了する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記モニタリングによって、Aβを標的とする前記免疫療法が、前記療法開始後18ヶ月の期間中に、前記Aβアミロイド沈着レベルを減少させるか、さらなる増加を阻害するというポジティブな(ただし最適ではない)応答を生じたという指標が得られると、投与用量または投与頻度を前記モニタリングに対応して増加させる、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
Aβを標的とする前記免疫療法がバピネオズマブの投与により行われ、前記バピネオズマブの用量が0.1〜0.5mg/kgから1mg/kgへとモニタリングに対応して増加される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記バピネオズマブの投与頻度が前記モニタリングに対応して増加される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記脳中のAβアミロイド沈着の検出レベルが、前記療法開始後増加するか又は変化せず、前記患者がバピネオズマブの増加した用量又は頻度でその後投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
Aβを標的とする前記免疫療法がバピネオズマブ投与により行われ、前記脳中の前記Aβアミロイド沈着レベルが前記療法開始後ベースラインに比べて少なくとも10%減少されるのが検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
Aβを標的とする前記免疫療法が、AβのN末端エピトープに結合する抗体の投与により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
Aβを標的とする前記免疫療法が、前記患者へのバピネオズマブの投与により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
Aβを標的とする前記免疫療法が、前記患者へのAAB-003の投与により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
Aβを標的とする前記免疫療法が、前記患者へ結合体として非相同の担体へ連結されたAβ断片の投与により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記Aβ断片がAβ1〜7である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記担体がCRM197である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記Aβ断片がAβ16〜23である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記担体がCRM197である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
Aβを標的とする前記免疫療法が、触媒抗体ABP 102(Abzyme、Abiogen Pharma社製);ACI-01 Ab7 C2(AC Immune Genentech社);AZD-3102(Astra Zeneca社/Dyax社);IVIg(Gammagard S/D免疫グロブリン静脈注射用(ヒト)、Baxter Bioscience社製);BAN2401(BioArctic Neuroscience AB社/エーザイ社;R1450(Hoffman-LaRoche社/MorphoSys社);LY2062430(Eli Lilly社);h3D6(Eli Lilly社);ACU-5A5(Merck社/Acumen社製αADDL mAb);α-アミロイドスフェロイド(ASPD)抗体(三菱ウェルファーマ(株)); AN1792患者のPBMC由来の抗体(Neurimmune Therapeutics AG社);BC05(武田薬品工業(株));CEN701-CEN706抗体(Centocor社/Johnson & Johnson社);及びPF-04360365(RN-1219(h2286)とも称されるもの;Pfizer社/Rinat Neurosciences社製)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
Aβを標的とする前記免疫療法が、前記患者への凝集Aβに結合する抗体の投与により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
Aβを標的とする前記免疫療法が、前記患者への可溶性Aβに結合する抗体の投与により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記PETリガンドが、前記脳の前帯状回、後帯状回、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び/又は後頭葉にて検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
画像が前記Aβアミロイド沈着レベルをカラースケールで表す、請求項2に記載の方法。
【請求項51】
前記患者がApoE4保因者である、請求項1に掲載の方法。
【請求項52】
前記患者がApoE4非保因者である、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
2-[フッ素-18]フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース(FDG)を前記患者に投与し、前記脳中の前記FDGを検出してグルコースの脳代謝画像を提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
臨床試験を実施する方法において、
脳中にAβを含むアミロイド沈着を特徴とする疾患を有するか又はそのリスクが高い多くとも50人の患者の集団を、治療群及びプラセボ群に割り当て;
Aβを標的とする療法を前記治療群に、プラセボを前記プラセボ群に投与し;
前記療法又は前記プラセボの投与の前と後での前記治療群および前記プラセボ群におけるアミロイド沈着を、Aβを含むアミロイド沈着に結合する小分子PETリガンドのPETスキャンにより比較し;
前記治療群における前記アミロイド沈着が、前記プラセボ群における前記アミロイド沈着に比べて有意に減少される、方法。
【請求項55】
前記集団が10〜30人の患者からなる、請求項37の方法。
【請求項56】
アルツハイマー病に対する予防方法において、
認知機能障害が見られないか又は軽度の認知機能障害を有するがアルツハイマー病と診断されたことが無い患者の脳中のアミロイド沈着レベルを、Aβを含むアミロイド沈着に結合する小分子PETリガンドのPETスキャンにより測定し;
並びに、前記患者の脳中のアミロイド沈着レベルが正常レベルを超えるとの測定に対応して、Aβを標的とする免疫療法を前記患者に投与する方法。
【請求項57】
前記患者の脳中の前記アミロイド沈着レベルが正常レベルを超えると測定される以前に、測定が複数回実施される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記測定が6ヶ月から5年の間隔で実施される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記測定が1年に1回実施される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記正常レベルが、アルツハイマー病における沈着の発達と関連しない脳領域で測定される前記患者の脳中レベルである、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記正常レベルが、アルツハイマー病を有しないか又はそのリスクの高くない患者の集団でのレベルである、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記測定が45〜75歳の間で初めて実施される、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記測定が50歳で初めて実施される、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記患者における前記アミロイド沈着レベルが、Aβを標的とする前記免疫療法の投与に対応して減少される、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
Aβを標的とする前記免疫療法を投与後少なくとも10年間、前記患者はアルツハイマー病が無いままである、請求項56に記載の方法。

【公表番号】特表2013−521233(P2013−521233A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555201(P2012−555201)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/026365
【国際公開番号】WO2011/106732
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512219448)
【出願人】(503056919)ワイス・エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】