説明

Aβ産生へのBRI蛋白の効果

【課題】細胞によるAPP(アミロイド前駆体タンパク)からのAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、または予防する方法、ならびに、アルツハイマー病を有する被験体を治療および処置する方法の提供。
【解決手段】BRI2フラグメント、BRI3フラグメント、それらの模倣体あるいはフリンの蛋白質を含む医薬組成物、もしくはBRI2フラグメント、BRI3フラグメント、フリンの蛋白質をコード化するベクターを含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦協賛研究開発に関する陳述
米国政府は本発明において、支払い済みのライセンスを有し、限られた条件下、NIHにより承認されたAG22024−95264562号およびAG21588−95264878号の支払いにより準備されるような合理的な状況において、本特許権者が他者にライセンスを付与することを要求する権利を有する。
【0002】
(1)本発明の分野
本発明は一般的に、アルツハイマー病におけるAβ産生の制御(コントロール)に関する。より具体的には、本発明は、C99のγ−セクレターゼ開裂ならびにAβおよび/またはAPPの細胞内(ドメイン、AID)の放出を阻害するためのBRI蛋白の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(2)関連技術の記述
参考文献
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【0004】
アミロイド前駆体蛋白(APP)は、普遍的なI型(タイプI)膜貫通蛋白(Kangら、1987年;Tanziら、1987年)であり、一連の蛋白溶解現象(SelkoeおよびKopan、2003年;SisodiaおよびSt.George-Hyslop、2002年)を受ける。APPはまず、原形質膜または細胞内小器官において、β−セクレターゼにより開裂される(Vassarら、1999年)。その外部ドメインが、細胞外に(sAPPβ)、もしくは、細胞内区画の管腔(ルーメン)中に放出される一方、99アミノ酸(C99)のCOOH−末端フラグメントは膜に結合したままである。第2の、膜内蛋白溶解現象において、γ−セクレターゼにより、ややlax部位(サイト)特異的にC99が開裂される。2種のペプチドが、1:1化学量論比で放出され、そのアミロイド原性Aβペプチドは、40および42アミノ酸の2種の主要な種(それぞれ、Aβ40およびAβ42)からなり、細胞内産物は、APP Intracellular Domain(AIDもしくはAICD)と名付けられ、非常に短命であり、ごく最近に(Passerら、2000年;CaoおよびSudhof、2001年;Cupersら、2001年)同定されている。代わりの蛋白溶解経路において、APPはまず、α−セクレターゼにより、Aβ配列中においてプロセシングされ、可溶性APPα(sAPPα)外部ドメイン、および、83アミノ酸(C83)の膜結合COOH−末端フラグメントに至る。C83も、γ−セクレターゼにより、P3およびAIDペプチドへと開裂される。Aβがアルツハイマー病の病理に関わる一方、AIDが殆どのAPPシグナル伝達機能を媒介する。ADにおけるAPPプロセシングに関する病理的な役割が、APPにおける突然変異(Goateら、1991)、およびγ−セクレターゼの重要な構成であるPresenilin(プレセリニン)(Sherringtonら、1995;Levy−Lahadら、1995a,b;Rogaevら、1995)が、ADの常染色体優性家族形を引き起こすという知見により確認されている。これゆえ、この生物学的および病理学的重要さにより、どのようにAPP開裂が規制されているのか理解する必要がある。本発明は、この必要性を課題とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明者らは、BRI2およびBRI3がAPPからのAβおよびAPP細胞内部位(ドメイン、AID)産生を阻害することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これゆえ、ある実施形態において、本発明は、細胞によるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、または予防する方法に関する。該方法は、該細胞をBRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体と、細胞によるAβおよび/またはAID産生を抑制、阻害、または予防するのに有効な量で接触させることを含む。
【0007】
他の実施形態において、本発明は、細胞によるAβおよび/またはAID産生を抑制、阻害、または予防する更なる方法に関する。該方法は、該細胞をフリン(furin)と、該細胞におけるAβおよび/またはAID産生を抑制、阻害、または予防するのに有効な量で接触させることを含む。
【0008】
加えて、本発明は、アルツハイマー病を有する被験体を治療する方法に関する。該方法は、該被験体に、被験体におけるアルツハイマー病を治療するのに有効な量のBRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体を投与することを含む。
【0009】
更なる実施形態において、本発明は、アルツハイマー病を有する被験体を治療する他の方法に関する。該方法は、該被験体に、被験体におけるアルツハイマー病を治療するのに有効な量のフリンを投与することを含む。
【0010】
本発明は、化合物が、BRI2もしくはBRI3の模倣体であるかを決定する方法にも関する。該方法は、化合物を、機能しているγ−セクレターゼ、および、C99を含む膜結合蛋白と組み合わせ、次いで、該化合物が、Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂を阻害するかどうか決定することを含む。これらの実施形態において、化合物が、もしγ−セクレターゼによるC99の開裂を阻害すれば、BRI2もしくはBRI3の模倣体である。
【0011】
更なる実施形態において、本発明は、精製BRI2もしくはBRI3を、医薬として許容可能な賦形剤中にて含む組成物に関する。
【0012】
更なる実施形態において、本発明は、精製フリンを、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物に関する。
【0013】
本発明は、BRI2もしくはBRI3をコード化するベクターを、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物にも関する。
【0014】
他の実施形態において、本発明は、フリンをコード化するベクターを、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ウェスタン・ブロットの図式および写真であり、BRI2が、APPリガンドであることを確立している。パネルa:使用されたBRI2構築体の略図である。これら構築体が、1(アミノ酸1〜266、全長)および2(アミノ酸1〜131)と付番されている。 パネルb−dは、指し示された蛋白を発現しているHeLa細胞からの総溶解物(TL)および抗FLAG免疫沈降(IPαFLAG)のウェスタン・ブロット(WB)が、BRI2/APP会合の特異性を示し、相互作用部位を地図化(マッピング)することを示す。pcは、empty vector(pcDNA3.1)を示す。;番号1および2が、aで示されたBRI2構築体を指し示し;*が、抑えられなかった抗FLAG抗体を指し示し;m.が、成熟したグリコシル化された形態のAPPを示す。;一方、i.が、対応する未熟なグリコシル化されなかったAPPを示す。ウェスタン・ブロットに関して、αAPPが、モノクローナル抗体22C11を表し、一方、αAPPctが、APPのC−末端に対して惹起されたウサギポリクローナルである。 パネルe:APPおよびBRI2両方を用いてトランスフェクションされたHeLa細胞の溶解物が、ウサギポリクローナルコントロール(RP)もしくはαAPP−ctと共に沈澱された実験のウェスタン・ブロットである。免疫沈降および総溶解物が、αAPPモノクローナル抗体22C11もしくはαFLAGを用いてブロットされた。BRI2が、〜17kDaのBRI2のN−末端フラグメント(BRI2nt)同様、αAPPctにより、APPと共に沈澱された。
【図2】内因性APPおよびBRI2が、成人脳において相互作用することを確立するウェスタン・ブロットの写真である。 パネルa:FLAG−BRI2を用いてトランスフェクションされたHeLa細胞からの溶解物が、ニワトリのコントロールの抗体(レーン3)、市販のニワトリのαBRI2抗体(レーン6)、蛋白A/Gビーズ単独(レーン9)、コントロールのウサギポリクローナル抗体(レーン12)、ウサギポリクローナルEN3αBRI2抗体(レーン15)、区別できるウサギαBRI2血清(レーン18)、およびマウスαBRI2ポリクローナル抗体(レーン21)と共に沈澱された。総溶解物(L)、上清(S)、および沈澱(P)が、ゲル濾過され、αFLAGを用いて調べられた。EN3だけが、BRI2を沈澱させることができた。〜17および14kDaのBRI2ntフラグメントは沈澱しなかったが、これは、EN3により認識されるエピトープが、C−末端からBrichosドメインであるためである。 パネルb:総脳ホモジェネートが、コントロールのウサギポリクローナル(RP)、αAPPct、もしくはEN3と共に免疫沈降された。総脳溶解物(T.L.)および免疫沈澱が、αAPPモノクローナル抗体22C11(上のパネル)もしくはαAPPct(下のパネル)を用いてブロットされた。
【図3】BRI2が、セクレターゼによるAPPプロセシングを規制することを確立しているウェスタン・ブロットの図および写真である。 パネルa−c:BRI2が、APP−Gal4駆動ルシフェラーゼ活性を、HeLa、N2a、およびHEK293細胞において抑える。細胞が、APP−Gal4を用いて、pcDNA3.1(pc)もしくはFLAG−BRI2、BRI21ー131もしくはBACEと共に、同時トランスフェクションされた。データは、empty vectorでトランスフェクションされた細胞において測定されたルシフェラーゼ活性の%として表現されている。BRI2、BACE、およびpcによりトランスフェクションされた細胞が、同様な濃度(レベル)のAPP−Gal4を発現する(図示せず)。エラーバーが、3回の独立した実験に関する±SDを表す。 パネルd:細胞が、APP−Gal4、pcDNA3.1(pc)、もしくはBRI2を用いてトランスフェクションされた。APP−Gal4を用いてトランスフェクションされた細胞が次いで、指し示された比で、BRI2もしくはpc.DNA3.1によりトランスフェクションされた細胞と混合された。サンプルが、ルシフェラーゼ活性に関して、上記したとおり、トランスフェクションおよび混合の24時間後、解析された。 パネルe−f:BRI2は、Aβ40/Aβ42産生を阻害する。安定にAPPを発現しているHEK293細胞(HEK293APP)が、empty vector(pc)、BACE、もしくはFLAG−BRI2を用いてトランスフェクションされ、培地中に分泌されたAβ40およびAβ42が、ELISAにより測定された。Aβ量が、トランスフェクションされた細胞の溶解物の蛋白含量により、規格化された。エラーバーが、3回の独立した実験に関する±SDを表す。 パネルg:トランスフェクションされたHeLa細胞に関しての、4種の独立の実験の代表たるパルス追跡実験。HEK293APP細胞が、empty vector(ベクター)もしくはFLAG−BRI2を用いてトランスフェクションされた。代謝標識された細胞の溶解物が、αAPPctと共に沈澱された。各レーン上の数字が、これら細胞が追跡された時間を指し示す(c)。BRI2発現が、C83産生を減らす一方、劇的に、C99生成を増やす。 パネルh:同様にトランスフェクションされたHEK293APP細胞の、条件を整えられた培地が4時間の標識後収集され、p21もしくは6E10と共に沈澱された。sAPPα量が、BRI2により減った一方、総sAPP(sAPPα+sAPPβ)は有意な変化を示さず、これはsAPPβ産生の増加、および、αからβセクレターゼに至るAPPプロセシングの変化(シフト)を指し示している。 パネルi:細胞が、APLP2を用いて、pc.DNA3.1もしくはBRI2と共にトランスフェクションされた。トランスフェクション24時間後、細胞が、ウェスタン・ブロットにより、BRI2およびAPLP2ペプチドに関して、解析された。
【図4】ウェスタン・ブロットの写真であり、BRI2の最初の102アミノ酸が、C99の効率的な開裂を阻害するのに必要であること、ならびに、同一領域が、BRI2の、APPのC99に対する結合に必要であることを確立している。左のパネルが、γ30細胞からの総溶解物(TL)のウェスタン・ブロットを示し、γ30細胞は安定にAPPを発現し、empty vector(vec)、mycのタグを付けた全長BRI21−266(BRI2)、もしくは、種々のmycのタグを付けたBRI2C−末端欠損体を用いてトランスフェクションされた(当該構築体によりコードされたアミノ酸により指し示した)。右のパネルが、対応している溶解物の、抗myc免疫沈澱(myc IP)を示す。HCが、この免疫沈降において使用されたmyc抗体の重鎖を指し示す。
【図5】APP−Gal4駆動ルシフェラーゼ活性のグラフであり、BRI2の最初の102アミノ酸が全て、AID産生を阻害するのに必要であることを確立している。HEK293細胞が、APP−Gal4を用いて、empty vector、もしくは、mycのタグを付けた全長BRI2、もしくは、種々のBRI2C−末端欠損構築体と共にトランスフェクションされた(当該構築体によりカバーされたアミノ酸範囲により指し示した)。データが、該empty vectorを用いてトランスフェクションされた細胞において測定されたルシフェラーゼ活性の%として、表現されている。エラーバーが、3回の独立した実験に関する±SDを表す。
【図6】BRI2が、sAPPαおよびsAPPβ分泌を阻害することを確立しているウェスタン・ブロットの写真である。HEK293APP細胞が、empty vector(−)もしくはFLAG−BRI2(+)を用いて、トランスフェクションされた。sAPPαおよびsAPPβが、Opti−MEM中において4時間条件を整えられたトランスフェクションされた細胞培養から、検出された。APPおよびBRI2発現が、該トランスフェクションされた細胞の総溶解物のウェスタン・ブロットにより、確認された。APP発現が、有意に変化しない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は一部、本発明者らの、BRI2およびBRI3がAPPからのAβ産生を阻害するとの発見に基づいている。APP細胞内部位(ドメイン)(AID)は、Aβと付随して産生されるので、Aβ産生を阻害すれば、AID産生をも阻害する。いかなる特定のメカニズムにも拘束されないが、このAβ産生阻害は、BRI2およびBRI3による、β−セクレターゼによるAPPおよびγ−セクレターゼによるC99の開裂阻害により、C99産生およびC99からのAβ放出を阻害していると考えられる。実施例参照。
【0017】
これゆえ、ある実施形態において、本発明は、細胞によるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、または予防する方法に関する。該方法は、該細胞をBRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体と、細胞によるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、または予防するのに有効な量で、接触させることを含む。
【0018】
これらの実施形態において、BRI2およびBRI3は、脊椎動物の内在性膜蛋白であり、「内在性膜蛋白2B」および「内在性膜蛋白」としてもそれぞれ知られている。これらの蛋白のヒトの野生型の形態は、アミノ酸配列SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2をそれぞれ有し、cDNA配列が、GenBank Accessions NM021999(BRI2)、ならびに、NM030926、NM001012516、およびNM001012514(3種の転写変異体のBRI3)として共に提供された。加えて、マカク(Macaque)に関するBRI2アミノ酸配列およびマウスに関するBRI3アミノ酸配列が、GenBank Accession Q60HC1およびNP071862として、それぞれ知られている。このならびに他の既知のBRI2およびBRI3情報を用いれば、当業者であれば、日常の方法を使用して、任意の脊椎動物に関しても、BRI2およびBRI3配列を決定できる。任意の脊椎動物のBRI2およびBRI3蛋白も、少なくとも80%SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2にそれぞれ相同なアミノ酸配列を有すると期待されるであろう。
【0019】
本発明者らは、遺伝子的にBRI2蛋白の部分を合成して、アミノ酸1〜102のみからなるBRI2蛋白が、Aβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、または予防するに充分であることも決定した。実施例1および2参照。
【0020】
本方法において使用されたBRI2またはBRI3は、ペプチド模倣体をも含み得る。本明細書に使用される場合、ペプチド模倣体とは、ある1種の蛋白における天然の親種のアミノ酸を模倣可能である化合物であり、当該ペプチド模倣体でのアミノ酸の置換が、当該蛋白の活性に有意に影響を及ぼさない。ペプチド模倣体を含んでいる蛋白は一般的に、プロテアーゼの良くない基質であり、その天然蛋白に比較されると、より長い期間の時間、in vivoにおいて活性であることが予想される。多くの非加水分解性ペプチド結合類似体が、このような結合を含有するペプチド合成の手順と共に、当業界において知られている。非加水分解性結合は、−CH2NH、−COCH2、−CH(CN)NH、−CH2CH(OH)、−CH2O、CH2Sを包含する。加えて、ペプチド模倣体含有ペプチドは、より低アレルゲン性たり得、全体的により高いバイオアベイラビリティーを示し得る。当業者であれば、ペプチド模倣体を含む蛋白の設計および合成が、過度の実験を必要としないと理解する。例えば、Ripkaら(1998年);Kieber−Emmonsら(1997年);Sanderson(1999年)参照。
【0021】
これゆえ、これらの方法の好ましい実施形態において、細胞が、配列SEQ ID NO:1を有するヒトBRI2蛋白、もしくは配列SEQ ID NO:2を有するヒトBRI3蛋白のアミノ酸1〜102と等価なアミノ酸配列、及び/又はペプチド模倣体を含むBRI2またはBRI3と接触させられることであって、ここで、該BRI2蛋白及びBRI3蛋白は、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する。
【0022】
他の好ましい実施形態において、BRI2もしくはBRI3は、天然蛋白である。ある好ましい実施形態において、BRI2もしくはBRI3は、ヒトBRI2もしくはBRI3に、80%相同性を超えて類似している。それらの実施形態において、BRI2もしくはBRI3は好ましくは、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2それぞれの少なくとも一部分に少なくとも90%相同的なアミノ酸配列を有し、より好ましくは、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2それぞれの少なくとも一部分に少なくとも95%相同的なアミノ酸配列、尚より好ましくは、BRI2もしくはBRI3が、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2それぞれの少なくとも一部分に少なくとも98%相同的なアミノ酸配列を有する。最も好ましい実施形態において、BRI2もしくはBRI3が、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2それぞれの少なくとも一部分に100%相同的である。
【0023】
これらの方法においてBRI2もしくはBRI3は、これらの蛋白のわずか最初の102アミノ酸からなり得るので、本明細書において使用される場合、「BRI2」もしくは「BRI3」は、例えばSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2で規定されたような、完全長BRI2もしくはBRI3蛋白よりも小さい蛋白を包含する。これゆえ、これら蛋白は、250、200、150、もしくは125個のアミノ酸および/またはペプチド模倣体よりも少なくてよい。他の好ましい実施形態において、BRI2もしくはBRI3は、配列SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2をそれぞれ有するヒトBRI2もしくはBRI3蛋白のアミノ酸1〜102に等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含む。
【0024】
本明細書において、BRI2もしくはBRI3は更なる有用な部分、例えば、当該蛋白の持続放出もしくは抑制された分解を可能とする足場、つまりPEGのような部分、または、ある特定の型の細胞に対する標的化を可能とする核酸配列のような部分をも更に含み得る。
【0025】
これらの方法において、細胞は、BRI2、BRI3、またはBRI2もしくはBRI3の模倣体と接触され得る。本明細書において使用された場合、模倣体とは、天然物ペプチド(ここではBRI2もしくはBRI3)の生物学的作用を模倣できる任意のペプチドもしくは非ペプチド化合物に言及し、しばしば、当該模倣体が、当該天然物ペプチドの基本構造を模倣する基本構造を有するか、および/または、当該天然物ペプチドの突出した生物学的特性を有するためである。模倣体は:天然物ペプチドとの類似性する側鎖のない等の原型からの実質的な修飾を持つペプチド(このような修飾は例えば、分解に対する感受性を減少させることがある);抗イデオタイプおよび/または触媒抗体もしくはこれらのフラグメント;単離された蛋白の非蛋白部分(例えば、炭水化物の構造体);あるいは、例えば、コンビナトリアルケミストリーを通じて同定された核酸および薬剤などの、合成もしくは天然有機分子を包含し得るが、これらに限定されない。このような模倣体が、当業界において既知の種々の方法を使用して、設計、選択、および/または、別の方法で同定され得る。薬剤設計(ドラッグデザイン)の種々の方法が、本発明において有用な模倣体もしくは他の治療化合物を設計(デザイン)するのに有用であり、Maulikら、1997年において開示されており、本明細書においてその全体が援用されている。
【0026】
これらの方法は、いずれの特定細胞を用いる使用にも限定されないが、当該細胞が、Aβおよび/またはAIDを産生できることを条件とする。これらの方法と共に利用され得る細胞の非限定例は、ニューロン(神経細胞)、ならびに、APPを、天然に、もしくは、遺伝子操作を通して発現する本質的に任意の他の哺乳類細胞でもある(実施例参照)。当該細胞は、神経様、もしくは、神経へと分化することができるもの(例えば、幹細胞)でもよい。ある好ましい実施形態において、本細胞は、生存哺乳類中に存在する。好ましくは、該哺乳類は、アルツハイマー病の実験モデル、もしくは、ヒトである。他の好ましい実施形態において、本細胞は、生存哺乳類、好ましくは、ヒトのニューロンである。最も好ましい実施形態において、該ヒトがアルツハイマー病を有するか、または、アルツハイマー病を獲得してしまうリスクがある、例えばアルツハイマー病に対する遺伝素質を持つヒトである。
【0027】
本細胞は、BRI2もしくはBRI3もしくは模倣体と、任意の既知の方法によって接触され得る。実施例は、BRI2もしくはBRI3もしくは模倣体を直接適用すること、または、BRI2もしくはBRI3もしくは模倣体を、BRI2もしくはBRI3もしくは模倣体が、例えば、循環系を通って、もしくは、血液脳関門(BBB)を通過して、該細胞に辿り着くように、該細胞を停留させている哺乳類に投与する包含する。BRI2もしくはBRI3もしくは模倣体が蛋白である場合(つまり、BRI2もしくはBRI3蛋白)、細胞は、BRI2もしくはBRI3蛋白の少なくとも1部分をコード化する核酸配列を含むウィルスベクターのようなベクターと接触され得、ここで、当該核酸によりコード化されたBRI2もしくはBRI3の翻訳が、この接触を有効化させる。特に、当該ベクターが本細胞に入っていくことができる場合、後者の方法が好ましい方法である(例えば、細胞のウィルス感染)。
【0028】
BRI2およびBRI3はフリンによりプロセシングされ、その産物がC99プロセシング阻害を引き起こす。これゆえ、細胞におけるフリンの増加も、Aβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、または予防する。
【0029】
これゆえ、本発明は、細胞によるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、または予防する更なる方法にも関する。該方法は、細胞をフリンと、細胞におけるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、または予防するのに有効な量で接触させることを含む。
【0030】
フリン、つまり塩基性アミノ酸対開裂酵素は、細胞膜貫通I型蛋白原蛋白変換酵素(Thomas、2002)である。ヒト野生型プレプロフリン(preprofurin)は、アミノ酸配列SEQ ID NO:3を有し、cDNA配列がGenBank Accession NM002569として与えられている。その成熟蛋白は、配列SEQ ID NO:3もしくはこれのアミノ酸108〜794を有する。加えて、マウスに関するフリンのアミノ酸配列が、GenBank Accession NP035176として知られている。脊椎動物のフリンについて、このおよび他の既知の情報を用いれば、当業者であれば、フリン配列を、任意の脊椎動物に関しても、通常の方法を使用して決定できる。任意の脊椎動物フリン蛋白も、SEQ ID NO:3のアミノ酸108〜794に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有すると予期される。好ましい実施形態において、フリンが、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列108〜794を有するヒトフリンに少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み、最も好ましい実施形態において、フリンはヒトフリンである。
【0031】
本明細書におけるフリンはまた、更なる有用な部分、例えば、当該蛋白の持続放出もしくは抑えられた分解を可能とする足場もしくはPEGのような部分であるか、または、ある特定の型の細胞に対する標的化を可能とする核酸配列のような部分を含み得る。
【0032】
これらの方法において、細胞が、天然フリンの活性を促進する化合物、例えばプロフリンをフリンに変換するペプチダーゼ、または、BRI蛋白が存在している部位(サイト)へのフリン輸送を促進する化合物と接触され得る。しかしながら、好ましい実施形態において、例えば、フリンが(例えば、循環系を通じて、もしくは、BBBを通過して)該細胞に辿り着くように、細胞を停留させている哺乳類にフリン蛋白を投与することにより、細胞がフリン蛋白と接触する。より好ましい実施形態において、フリンが、フリン蛋白をコード化している核酸配列を含むベクターから発現される。好ましくは、これらのベクターは、細胞に感染し、そして、フリン蛋白をin situで産生するウィルスベクターである。
【0033】
これらの方法は、いずれの特定細胞を用いる使用にも限定されないが、細胞が、Aβおよび/またはAIDを産生することができることを条件とする。これらの方法と共に利用され得る細胞の非限定例は、ニューロン、および、天然もしくは遺伝子操作を通してAPPを発現する本質的に任意の他の哺乳類細胞でもある(実施例参照)。当該細胞は、神経様でもあり得、もしくは、ニューロンへと分化することもできる(例えば、幹細胞)。ある好ましい実施形態において、該細胞は、生存哺乳類内にある。好ましくは、該哺乳類は、アルツハイマー病実験モデル、もしくは、ヒトである。他の好ましい実施形態において、細胞は、生存哺乳類の、好ましくはヒトのニューロンである。最も好ましい実施形態において、ヒトがアルツハイマー病を有するか、または、アルツハイマー病を獲得してしまうリスクがある、例えば、アルツハイマー病に対する遺伝素因を有するヒトである。
【0034】
他の実施形態において、本発明は、アルツハイマー病を有する被験体を処置する方法に関する。該方法は、被験体に、アルツハイマー病を被験体において処置するのに有効量のBRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体を投与することを含む。
【0035】
これらの方法において、被験体は好ましくは、SEQ ID NO:1のヒトBRI2蛋白配列、または、SEQ ID NO:2のヒトBRI3蛋白配列のアミノ酸1〜102に等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含むBRI2もしくはBRI3を投与される。これらの実施形態において、該BRI2蛋白およびBRI3蛋白は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を、それぞれ有する。他の好ましい実施形態において、BRI2もしくはBRI3が、天然起源蛋白である。
【0036】
これらの方法において、BRI2もしくはBRI3もしくは模倣体が、直接被験体の脳に投与され得る。あるいは、BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体が、当該BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体を、哺乳類のBBBを通過させるような様式で投与される。BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体は、当該BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体が被験体のBBBを通過できる能力を促進させる医薬組成物中においても製剤化され得る。
【0037】
他に制限がなければ、医薬組成物は、本明細書において記載された任意の実施形態においても、過度の実験なしに、ヒトなどの哺乳類に対する投与用に、特定の適用に対し必要に応じて製剤化され得る。加えて、適正な用量のこれら組成物は、過度の実験なしに、標準的な用量−応答プロトコールを使用して、求められ得る。
【0038】
従って、口、舌、舌下、口腔、および口腔内投与用に設計された組成物は、過度の実験なしに、当業界においてよく知られた手段により、例えば、不活性稀釈剤を用いてもしくは食用の担体を用いて、調製され得る。組成物は、ゼラチンカプセル中に入れられるか、もしくは、錠剤へと圧縮されてよい。経口治療投与目的に、本発明の医薬組成物が、賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁、シロップ、ウェハウス、チュウイングガム等の形態で使用されてよい。
【0039】
錠剤、ピル、カプセル、トローチ等が、バインダー、レシピエント、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、および香料をも含有してよい。バインダーの幾つかの例として、微結晶セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンを包含する。賦形剤の例は、スターチもしくはラクトースを包含する。崩壊剤の幾つかの例として、アルギン酸、コーンスターチ等を包含する。潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カリウムを包含する。ある1つの例の潤滑剤は、コロイド状二酸化硅素である。甘味料の幾つかの例として、スクロース、サッカリン等を包含する。香料の例は、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香料等を包含する。これらの種々の組成物を調製するのに使用される材料は、医薬として純粋(pure)であり、使用量において非毒性であるべきである。
【0040】
本発明の組成物は容易に、例えば、静脈内、筋内、蜘蛛膜内、もしくは皮下注射によるように、非経口投与され得る。非経口投与は、本発明の組成物を溶液もしくは懸濁中に取り込ませることにより達成され得る。このような溶液もしくは懸濁は、注射用水、食塩水、固定化油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、もしくは他の合成溶媒のような無菌稀釈剤をも包含してよい。非経口製剤は、例えばベンジルアルコールもしくはメチルパラベンのような抗菌剤、例えばアスコルビン酸もしくは重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤、ならびに、EDTAのようなキレート剤をも包含してよい。酢酸塩(アセテート)、クエン酸塩(シトレート)、もしくは燐酸塩(ホスフェート)のような緩衝剤、ならびに、塩化ナトリウム(食塩)もしくはデキストロースのような浸透圧調整剤も、加えられてよい。本非経口調製品は、アンプル、使い捨てシリンジ、または、ガラスもしくはプラスチックでできた多数回用量バイアル中に入れられてよい。
【0041】
直腸投与は、本医薬組成物を、直腸もしくは大腸中に投与することを包含する。これは、坐薬もしくは浣腸を使用して、達成され得る。坐薬製剤は容易に、当業界において既知の方法により、調製され得る。例えば、坐薬製剤が、グリセリンを約120℃に加熱し、本組成物を該グリセリンに溶解させ、この加熱したグリセリンを混合し、この後精製水が加えられてよく、この熱い混合物を坐薬の型中に注いで調製され得る。
【0042】
経皮投与は、本組成物の、皮膚を通しての経皮吸収を包含する。経皮製剤は、パッチ(よく知られたニコチンパッチなど)、外用薬、クリーム、ゲル、軟膏等を包含する。
【0043】
本発明は、本哺乳類に、治療有効量の本組成物を経鼻投与することを包含する。本明細書において使用された場合、「経鼻投与すること」もしくは「経鼻投与」は、本組成物を、患者の鼻道もしくは鼻腔の粘膜に投与することを包含する。本明細書において使用された場合、組成物の経鼻投与用医薬組成物は、例えば、鼻スプレー、点鼻剤、懸濁、ゲル、外用剤、クリーム、もしくは粉末として投与されるべく、よく知られた方法により調製された治療有効量の本組成物を包含する。本組成物の投与は、鼻タンポンもしくは鼻スポンジを使用して行われてもよい。
【0044】
更なる実施形態において、本発明は、アルツハイマー病を有する被験体を治療する他の方法に関する。これら方法は、被験体に、アルツハイマー病を被験体において治療するに有効な量のフリンを投与することを含む。これらの実施形態において、被験体は、好ましくは、SEQ ID NO:3のアミノ酸108〜794の配列を有するヒトフリンに等価なアミノ酸及び/又はペプチド模倣体を含むフリン(該フリンは少なくともSEQ ID NO:3に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する。)を投与することを含む。他の好ましい実施形態において、フリンは、天然起源蛋白であり、例えば、ヒトフリンである。
【0045】
フリンは、これらの実施形態において、直接、被験体の脳に投与され得る。あるいは、フリンは、この化合物が、哺乳類のBBBを通過できるような様式で投与され得る。フリンは、フリンの、被験体のBBBを通過できる能力を高める医薬組成物中で製剤化され得る。
【0046】
確立された模倣体を同定するための方法を使用して、当業者は、Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂を阻害する化合物を同定することにより、BRI2もしくはBRI3の模倣体を同定できる。こうして、本発明は、ある化合物が、BRI2もしくはBRI3の模倣体であるかどうか決定する方法にも関する。該方法は、該化合物を、機能しているγ−セクレターゼおよびC99を含膜結合蛋白と組み合わせ、次いで、該化合物が、Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂を阻害するかどうか決定することを含む。これらの実施形態において、γ−セクレターゼによるC99の開裂を阻害すれば、該化合物が、BRI2もしくはBRI3の模倣体である。
【0047】
Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂の阻害が、任意の既知の方法によって、例えば、実施例において記載された方法により決定され得る。このような方法は、BRI2もしくはBRI3模倣体がAβおよび/またはAIDの減少を引き起こす所で、Aβおよび/またはAID放出を、例えばAβおよび/またはAID特異的抗体を使用して測定することを包含する。C99阻害は、模倣体がC99の増加を引き起こす所で、C99の変化を測定することによっても求められ得る(実施例参照)。
【0048】
実施例においても確立されたとおり、BRI2もしくはBRI3によるC99開裂阻害は、C83およびsAPPαの存在の減少を引き起こし、sAPPβの存在の増加を引き起こす。こうして、BRI2もしくはBRI3模倣体が、C83およびsAPPαの減少、ならびに、sAPPβの増加を引き起こす。
【0049】
上の決定は、任意の既知の方法によってなされ得る。好ましい方法は、ELISA、質量分析、もしくはウェスタンブロットを包含する。当業界において知られているとおり、ウェスタンブロットが、ELISAよりも明確な化合物の同定を可能とするが、より多くの時間を消費し厄介な手順である。
【0050】
これらの方法は、評価されるべき任意の特定の化合物にも限定されない。例えば、ランダムな化合物のライブラリーが評価され得る。好ましくは、しかしながら、化合物が、配列SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2をそれぞれ有するヒトBRI2もしくはBRI3蛋白のアミノ酸1〜102に等価なアミノ酸を含むBRI2もしくはBRI3蛋白の一部分を模倣して設計(デザイン)されている。このような化合物は、例えば、BRI2もしくはBRI3蛋白の一部分の3次元構造および/または電荷を模倣して設計され得る。あるいは、化合物がBRI2もしくはBRI3アミノ酸配列を模倣するように、化合物はペプチド模倣体を含み得る。
【0051】
好ましい実施形態において、C99を含む膜結合蛋白は、アミロイド前駆体蛋白(APP)であり、例えば、APPを発現する細胞において生じる。
【0052】
これらの方法は、in vitro(例えば、試験管中において)において実施され得る。好ましくは、しかしながら、機能しているγ−セクレターゼおよびC99を含む膜結合蛋白は生存細胞中に存在する。このような生存細胞の非限定例は、実施例1のように、レポーター遺伝子(レポータージーン、例えば、ルシフェラーゼ)の転写を、γ−セクレターゼによる遺伝子導入(トランスジェニック)APP開裂時に活性化させる遺伝子構築体を含むものである。これらの実施形態において、該遺伝子導入APPは、好ましくは、当該遺伝子導入APPの細胞質部位(ドメイン)で更にGal4を含む(実施例参照)。
【0053】
該方法が生存細胞を利用する場合、機能しているγ−セクレターゼおよびAPPを発現する任意の細胞が使用され得る。そのような生存細胞の非限定例は、神経細胞、または、HEK293細胞、HeLa細胞、もしくはN2a細胞のような、遺伝子導入APPを産生する細胞を包含する。実施例参照。
【0054】
更なる実施形態において、本発明は、精製BRI2もしくはBRI3を、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物に関する。好ましくは、BRI2もしくはBRI3は、配列SEQ ID NO:1を有するヒトBRI2蛋白、または、配列SEQ ID NO:2を有するヒトBRI3蛋白のアミノ酸1〜102に等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含み、ここで、BRI2蛋白およびBRI3蛋白が、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2にそれぞれ少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する。BRI2もしくはBRI3は、任意の数のアミノ酸および/またはペプチド模倣体をも含み得、その全長の蛋白から102個に至るまでのアミノ酸のアミノ酸および/またはペプチド模倣体、例えば、250よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体、200よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体、150よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体、あるいは、125よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体が挙げられる。
【0055】
ある幾つかの実施形態において、医薬として許容可能な前記賦形剤は、BRI2もしくはBRI3の、被験体のBBBを通過できる能力を高める。他の実施形態において、本組成物は、ユニットドーズの形態で、アルツハイマー病治療用に製剤化される。
【0056】
本発明は加えて、精製フリンを、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物に関する。好ましくは、該フリンが、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列108〜794を有するヒトフリンに等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含み、ここで、該フリンは、SEQ ID NO:3に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する。好ましくは、該フリンは天然起源蛋白である。
【0057】
幾つかの実施形態において、医薬として許容可能な前記賦形剤は、フリンの、本被験体のBBBを通過できる能力を高める。他の実施形態において、本組成物が、単位(ユニット)用量の形態で、アルツハイマー病治療用に製剤化される。
【0058】
本発明は、BRI2もしくはBRI3をコード化するベクターを、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物にも関する。好ましくは、BRI2もしくはBRI3が、配列SEQ ID NO:1を有するヒトBRI2蛋白もしくは配列SEQ ID NO:2を有するヒトBRI3蛋白のアミノ酸1〜102に等価なアミノ酸を含み、ここで、BRI2蛋白およびBRI3蛋白が、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2にそれぞれ少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、医薬として許容可能な賦形剤は、該BRI2もしくはBRI3の、被験体の血液脳関門(BBB)を通過できる能力を増強させる。他の実施形態において、本組成物が、ユニットドーズ(単位用量)の形態で、アルツハイマー病治療用に製剤化される。これらの実施形態は、如何なる特定のベクターにも限定されない。しかしながら、好ましい実施形態において、該ベクターはウィルスである。
【0059】
本発明は、フリンをコード化するベクターを、医薬として許容可能な賦形剤において含む組成物にも関する。好ましくは、該フリンが、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列108〜794を有するヒトフリンに等価なアミノ酸を含み、ここで、該フリンが、SEQ ID NO:3に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する。他の好ましい実施形態において、該フリンが、天然起源蛋白である。幾つかの実施形態において、医薬として許容可能な賦形剤が、該フリンの、被験体の血液脳関門(BBB)を通過できる能力を増強させる。他の実施形態において、本組成物が、ユニットドーズ(単位用量)の形態で、アルツハイマー病治療用に製剤化される。好ましくは、該ベクターはウィルスである。
【0060】
本発明の好ましい実施形態が、以降の実施例で記載されている。本願請求項の範囲内の他の実施形態が、本明細書において開示されたとおりの本発明の特定もしくは実施の考慮から、当業者に明らかとされる。本明細書が、本実施例と共に、例示としてのみ考慮されるものと意図されており、本発明の範囲および精神が本願請求項により示されており、本実施例に続く。
【実施例】
【0061】
実施例1.家族性痴呆BRI2遺伝子によりコード化された蛋白が、APPと結合し、Aβ産生を阻害する
実施例のまとめ
アルツハイマー病(AD)は、最もよくある老人性痴呆であり、アミロイド斑、血管性アミロイド、神経原繊維のもつれ、および、進行性神経変性により特徴付けられている。アミロイドは主に、Aβペプチドにより構成されており、これは、セクレターゼによるβ−アミロイド前駆体蛋白(APP)プロセシングに由来する。そのAPPの細胞内ドメイン(AID)は、Aβと共に放出されるが、それがアポトーシスおよび転写を調節するため、シグナル伝達機能を有する。その生物学的および病理学的重要さにもかかわらず、APPプロセシングを規制している機序(メカニズム)が、良く理解されていない。膜結合蛋白が、セクレターゼによるNotch開裂および転写活性細胞内フラグメントの放出を促進させる。APPとNotchシグナル伝達との間の顕著な類似度を考慮して、我々は、APPプロセシングが同様に規制されていると仮定した。ここで、本発明者らは、BRI2たるII型膜蛋白が、APPと相互作用することを示す。おもしろいことに、AβのNH2−末端部分に対応している17アミノ酸が、この相互作用に必要である。更に、BRI2発現が、APPプロセシングを規制し、結果、AβおよびAID濃度(レベル)が抑えられた。総じて、これらの知見が、BRI2−APP相互作用を、Aβ産生を阻害するAPPプロセシングの規制機序(メカニズム)として特徴付ける。特記すべきは、BRI2突然変異が、家族性英国痴呆症(FBD)および家族性デンマーク痴呆症(FDD)を引き起こし、これらは、臨床的および病理学的に、ADに似ている。BRI2病原突然変異が、APPプロセシングに関するBRI2の規制機能を変更するとの知見が、APP開裂の異常規制を、AD、FDD、およびFBDに共通な病原機序(メカニズム)として明示する。
【0062】
序論
他のγ−セクレターゼ基質の開裂が膜結合リガンドにより規制されているので、本発明者らは、APPと結合し、そのプロセシングを規制する膜内在性蛋白の存在を仮定した。ここで、我々は、BRI2(Deleersnijderら、1996)たるII型膜蛋白を記載し、本記載を実行する。
【0063】
実験手順
γ30細胞が、Kimberlyら(2003年)に記載されたとおり、抗生物質および10%牛胎児血清を用いて補充されたDMEMにおいて維持された。
【0064】
スプリット−ユビキチンイースト2種ハイブリッドスクリーニング
該スプリット−ユビキチンのシステムが、膜内在性蛋白間の相互作用を分析する(Stagljarら、1998)ための魅力的な代替法を提供する。該スプリット−ユビキチンのシステムおよびヒトの脳ライブラリーが、Dualsystems Biotech(チューリッヒ、スイス)から購入された。該スクリーニングが、製造元のプロトコルに従い実施された。端的に言えば、ヒトAPP(アミノ酸1〜695)、ヒトAPP(アミノ酸1〜664;APPNcas)、もしくはヒトAPLP2がそれぞれ、pTMV4、pAMBV4、pAMBV4バイト(bait)ベクター中にクローン化され、ユビキチンのC末端側の半分(Cub)に融合され、レポーターフラグメントが続くAPPファミリーのバイト(bait)蛋白を得た(LexA、VP16に融合されたDNA結合蛋白、転写活性化)。ヒトの脳ライブラリーが、変異したユビキチン(NubG)のN−末端側半分において融合された蛋白を発現する。各ライブラリーに関して、本発明者らは、およそ5×106種の形質転換体をスクリーニングした。APP/APLP2−Cubと相互作用できる蛋白をコードしているクローンが、NubG:Cub相互作用を促進させ、次いで、ユビキチン特異的プロテアーゼ(1種もしくは複数種)の動員、APP/APLP2−Cubバイトの開裂、LexA−VP16転写因子の放出、および、これら2種のレポーター遺伝子(LacZおよびHIS3)の転写活性化を伴う。ライブラリーのプラスミドが、HIS3およびLacZ陽性イースト形質転換体から回収され、N−末端FLAGタグを有するpcDNA3.1中にクローン化され、直接、下記されたとおり、免疫沈降により、APPとの相互作用できる能力をテストした。両レポーター遺伝子の共通の活性化因子を求めてのスクリーニングが、結果、Fe65(Zambranoら、1997)のような、既知のAPP/APLP2−結合蛋白の同定に至った。
【0065】
プラスミド
全長BRI2およびBRI21―131が、2種のハイブリッドクローンから、PCRにより増幅され、pcDNA3.1−FLAG(Matsudaら、2001)中にクローン化された。哺乳類発現ベクターAPPたるAPPNcasが記載されている(Scheinfeldら、2002)。myc−タグが、シグナル配列ApoER2後に挿入され、pEF−BOS中にクローン化された。BACEが、pcDNA3mycHisB(Invitrogen)中にクローニングされることにより、マウスの脳cDNAからクローン化され、C−末側でmycのタグ化された。
【0066】
抗体
以下の抗体が、使用されている:
αFLAG(マウスモノクローナルM2、Sigma);
αAPPマウスモノクローナル22C11(Chemicon)6E10(Signet
labs)およびp2−1(Biosource);
αmyc(マウスモノクローナル9E10、Santa Cruz Biotechnology);
ウサギポリクローナル抗体αAPPct(ZMD.316、Zymed)(Scheinfeldら、2002);
ニワトリコントロール抗体(IgY、Southern Biotechnology);
ニワトリαBRI2(IgY、BMA Biomedicals);
ウサギポリクローナルコントロール抗体(IgG、Southern Biotechnology);
EN3(Pickfordら、2003)(ウサギポリクローナル抗体);
ウサギαBRI2(Jorge Ghiso博士からの好意);
マウスポリクローナルが、ヒトBRI2の細胞質尾部を含むペプチドに対して生じた。抗APLP1および抗APLP2C−末端側ウサギポリクローナル抗体が、Calbiochemから購入された。
【0067】
細胞培養およびトランスフェクション
HEK293、APP安定発現HEK293(HEK293APP)、HeLa、N2a細胞が、ペニシリン、ストレプトマイシン、および10%牛胎児血清が補充されたDulbecco変法Eagle培地(DMEM)において、5%CO2中に37℃で維持された。FuGENE6(Roche Applied Science)もしくはMetafectene(Biontex)がトランスフェクションに使用された。
【0068】
免疫沈降法およびウェスタン・ブロット
他に記されない限り、全ての免疫沈降法の手順が、4℃において実施された。トランスフェクションされた細胞が、10%(v/v)グリセロールを含有する緩衝液(Buffer) A[20mMのHepes/NaOH pH7.4、1mMのEDTA、1mMのDTT、150mMのNaCl、0.5%(w/v)TritonX−100]中において、30分間溶解され、これら溶解物が、20,000gにおいて、10分間清澄化された。FLAGの免疫沈降に関して、これら清澄化された溶解物が、20μLのFLAG−M2ビーズ(Sigma)と、2時間混合され、3回、Buffer Aを用いて洗浄された。沈澱が、60μLの2×SDSサンプル緩衝液煮沸され、ウェスタン・ブロットに付された。他の免疫沈降に関して、清澄化された溶解物が、抗体と共に、1時間インキュベートされ、20μLの蛋白A/Gビーズ(Pierce)と混合され、洗浄され、上のとおり加工された。ヒトの脳(Peter Davies博士からの寛大な好意)が、10%(v/v)グリセロールを含有しているBuffer A中で、Dounce ホモジナイザーを使用して、均一化された。該蛋白が終夜、5mg/mLにおける当該蛋白濃度で抽出された。抽出された蛋白が、20,000gにおいて、1時間清澄化された。その上清が、指示抗体と1%(w/v)BSAを含有するPBSでブロックされた蛋白A/Gビーズとインキュベートされた。沈澱は、上記のとおり、洗浄され、加工された。
【0069】
代謝標識
pcDNA3もしくはBRI2を用いてトランスフェクションされたHEK293APP細胞が、メチオニンおよびシステイン無しに、ペニシリン、ストレプトマイシン、および10%牛胎児血清が補充DMEM(Invitrogen)において、2時間インキュベートされた。細胞が次いで30分、[35S]標識メチオニンおよびシステイン(ICN)をこの培養培地に加えることにより標識された。標識された細胞が念入りに洗浄され、ペニシリン、ストレプトマイシン、および10%牛胎児血清を用いて補われたDMEM中において、指示された期間追跡された。この追跡後、細胞が溶解され、αAPPctと共に、上記したとおり、免疫沈降された。標識された細胞が培地から、20,000g10分間の遠心により清澄化され、次いで、指示抗体と共に、免疫沈降された。
【0070】
ルシフェラーゼ・アッセイ
(Scheinfeldら、2003)に記載されるように、アッセイが実施されたが、APP−Gal4融合(Gianniら、2003)がGal4源として使用されたことを除く。ルシフェラーゼ活性が、同時トランスフェクションされたβ−ガラクトシダーゼ活性により標準化され、このトランスフェクション効率をモニターした。
【0071】
酵素結合免疫吸着法(ELISA)
HEK293APP細胞が、pcDNA3もしくはBRI2でトランスフェクションされた。このトランスフェクションの24時間後、該細胞が24時間訓化され(conditioned)、前記培地中のAβ40およびAβ42が、ヒトAβELISAキット(KMI Diagnostics)を使用して、その製造元のプロトコルに従いつつ、測定された。トランスフェクションされた細胞が溶解され、上記のとおり清澄化され、抽出された蛋白量が使用されて、ELISAにより検出されたAβ量を標準化した。
【0072】
蛋白決定
蛋白濃度が、Bio−Rad蛋白アッセイにより(Bio−Rad)、BSAを標準として求められた。
【0073】
結果および議論
膜結合蛋白がAPPプロセシングを規制するかどうかテストするために、本発明者らは、スプリットユビキチンシステムを使用して、膜蛋白間の相互作用を同定した。APPファミリー蛋白と相互作用する蛋白に関するヒト脳cDNAライブラリースクリーニングが、BRI2(Deleersnijderら、1996)およびBRI3(Vidalら、2001)(示さず)、Brichos部位(ドメイン)を含有するII型膜蛋白遺伝子ファミリーメンバーの同定に至った。BRI蛋白の機能は知られていないが、BRI2の突然変異が、FBD(Vidalら、1999)およびFDD(Vidalら、2000)を有する患者に見出されている。記すべきことに、FBDおよびFDDにおける神経病理学的知見が、実質プレアミロイド沈着(FBDおよびFDD)および斑(FBD)、神経原繊維のほつれ、コンゴレッド親和性アミロイド血管障害(CAA)、および神経変性を包含し、ADに似ている。これゆえ、BRI2における突然変異が、AD様の家族性痴呆症を引き起こすので、本発明者ら更に、このBRI2−APP相互作用の生理学的関連を研究した。
【0074】
このBRI2−APP相互作用を哺乳類細胞において評価するために、HeLa細胞が、BRI2およびAPP構築体と共に、同時トランスフェクションされた(図1a)。αFLAG抗体との細胞溶解物の免疫沈降は、BRI2が、全長APP(図1bおよびd)、C99(図1bおよびd)、およびAPPNcasと相互作用したことを示したが、このことは、C83でなく(図1bおよびd)、APP(図1c)の細胞内領域の殆どの欠損を表す。APPが、ダブレットとして、描かれている。下方のAPPのバンドが、非グリコシル化未成熟APPを表し;上方の形が代わりに、グリコシル化成熟APPから構成されている。記すべきことに、このグリコシル化成熟した形のAPPおよびAPPNcasだけが、BRI2と相互作用した(図1b、c、およびd)。BRI2過剰発現が劇的に、C99量を増加させることも、記されるべきである(図1bおよび1d)。この知見の意義が後で展開される。
【0075】
BRI2外側部位(ドメイン)の殆どの欠損が、APPに対する結合を廃しなかった(BRI21―131、図1d)。αAPP抗体を用いる逆免疫沈降が、APPがBRI2を免疫沈降させることを明らかにした(図1e)。加えて、トランスフェクションされたHeLa細胞において検出された蛋白溶解〜17kDaのBRI2のNH2−末端フラグメント(BRI2nt、BRI21-131にサイズが似ている)も、APPと共に沈澱された(図1e)。これらの相互作用の特異性が更に、BRI2が、もう1種別のI型膜統合蛋白たるApoER2に結合しなかった(図1c)との証拠により、裏付けられた。これらの知見が、APPの細胞質内尾部およびAPPの殆どおよびBRI2外部ドメインが、BRI2/APP相互作用に可欠である一方、APPの外部ドメインにおける17アミノ酸の領域(その膜貫通領域に近く、そのNH2−末端Aβ配列を含有する)が、この結合に必須であることを証拠付ける。これらのデータが強く、BRI2およびAPPがin trans(つまり、区別される膜上で発現された受容体/リガンドとして)において相互作用しないが、むしろ、分子複合体を細胞膜において形成することを示唆する。
【0076】
APPおよびBRI2が両方、成熟神経組織において発現されている。本発明者らはこれゆえ、APPも、BRI2と、成人ヒト脳において相互作用するかを決定しようとした。まず、本発明者らは、4種の抗BRI2抗体をテストし、これらがヒトBRI2を免疫沈降できるかを決定した。これらのテストに関して、HeLa細胞が、FLAG−BRI2を用いてトランスフェクションされ、これら4種のBRI2抗体およびコントロールと共に免疫沈降された。図2aで示されたとおり、EN3抗BRI2抗体だけが、BRI2を沈澱させることができた。次に、本発明者らは、ヒトの脳のホモジェネートを調製し、αAPPct抗体もしくはEN3を用いた免疫沈降を実施した。図2bで示されたとおり、C99(およびより大きいCOOH−末端APPフラグメント)が、抗APPおよびEN3両方と沈澱された一方、C99は、ウサギポリクローナルIgGと沈澱されなかった。おもしろいことに、この場合においても、C83が、BRI2と沈澱しなかったが、αAPPctにより沈澱した。更に、全長APPも、低濃度(レベル)ではあるが、EN3により沈澱した。総じて、これらの実験が、内因性APPおよびBRI2が、成人ヒト脳において関連することを指し示す。加えて、これらが、BRI2が好ましくは、C83とでなく、C99およびより大きいAPPのC−末端フラグメントと相互作用することを示す。
【0077】
図1bおよび1dにおいて示されたとおり、BRI2構築体の発現が、不変に、C99の濃度(レベル)の上昇に至る。このC99濃度(レベル)の劇的な上昇が、APPプロセシングへのBRI2の効果に依存しているらしい。これに関して直接テストするために、本発明者は、FLAGのタグをされたBRI2を、HeLa、HEK293、およびN2a細胞において、APP−Gal4、Gal4プロモーター制御下のルシフェラーゼレポーター、およびβ−ガラクトシダーゼ構築体と共に、発現させた。APP−Gal4は、APP細胞質部位(ドメイン)に対する、イースト転写因子Gal4の融合体である。APP−Gal4のγ−開裂が、AID−Gal4を、細胞膜から核に放出させ、引き続いてのルシフェラーゼ転写の活性化を伴う(Gianniら、2003)。図3aで示されたとおり、BRI2がルシフェラーゼ活性を3種全ての細胞株で抑え、これが、AID形成阻害を示唆している。代わりに、β−セクレターゼ(BACE)トランスフェクションが、結果、AID放出の増加に至ったが、予測されたとおりであった(図3b)。BRI21―131変異体(なおAPPと相互作用し、上昇したC99濃度(レベル)を生じる(図1d))は、AID放出も阻害する(図3c)。最後に、混合実験は、BRI2がAID−Gal4放出を抑制するには、APP−Gal4と共に、同一細胞において、同時発現されなくてはならないことを示す。つまり、BRI2を発現している細胞を、APP−Gal4を発現している細胞と混合すると、AID放出に影響を及ぼさない(図3d)。このことが更に、BRI2およびAPPが、in transよりもむしろin cisにおいて相互作用することを示唆する。
【0078】
この系(システム)を更に確認するために、本発明者らは、BRI2を用いてトランスフェクションされたHEK293の条件を整えられた培地におけるAβを測定しており、BRI2が有意に、Aβ40およびAβ42濃度(レベル)を減少させた(図3b)ことを見出している。さらに、BACEトランスフェクションが、Aβ40およびAβ42分泌を増加させた(図3f)。
【0079】
BRI2によるAIDおよびAβ産生の阻害は、BRI2発現が、γ−セクレターゼによるAPPの開裂を抑えることを示唆する。しかしながら、BRI2が、APPのβ−およびα−開裂を調節することも、可能である。上で議論されたとおり、β−もしくはα−セクレターゼによるAPPの開裂がそれぞれ、sAPPβおよびsAPPαを、上清中において放出する。sAPPαもしくはsAPPβの量の増加が、α−もしくはβ−開裂の増加を指し示す一方、sAPPαもしくはsAPPβの減少が、α−もしくはβ−開裂の減少に反映する。こうして、BRI2がα−もしくはβ−セクレターゼに影響を及ぼすかどうか決定するために、本発明者らは、sAPPαおよびsAPPβ量を測定した。これらの同一の実験において、本発明者らは、C99およびC83の細胞内濃度(レベル)も測定した。HEK293−APP細胞が、FLAG−BRI2もしくはベクターコントロールを用いて、トランスフェクションされた。トランスフェクションされた細胞が、[35S]メチオニン−システインを用いて30分間、パルス標識され、次いで、0、1、2、および4時間、37℃において追跡された(図3c)。細胞溶解物が、αAPP−ct抗体と共に、各時点において免疫沈降された(図3c)。分泌されたAPP(sAPPαおよびsAPPβ)を測定するために、上清が、4時間標識され、抗APP抗体P21(sAPPαおよびsAPPβ両方を沈澱させる)もしくは6E10(sAPPαだけを沈澱させる)と共に沈澱された細胞から回収された(図3d)。BRI2トランスフェクションが、結果、C83(図3c)およびsAPPα(図3d)の量の減少に至った。逆に、C99(図3c)およびsAPPβ(図3d)濃度(レベル)が、増加した。特記すべきことに、BRI2が、αAPP−ct抗体により、全時点において、免疫共沈降された(co-immunoprecipitated)。こうして、BRI2発現が、α−セクレターゼによるAPP開裂を抑える一方、β−セクレターゼによるそのプロセシングを上昇させる。γ−セクレターゼの同時阻害およびAPPのβ−開裂の増加が、C99濃度(レベル)の劇的な増加を説明する。
【0080】
APPは、APLP1およびAPLP2を包含する蛋白ファミリーのある一員である。APLP1およびAPLP2も、γ−セクレターゼの基質であり(Scheinfeldら、2002)、数多くのγ−セクレターゼの基質の中でも、APPに対するより多くの配列の類似性を保有するものである。従って、BRI2が、一般的にγ−セクレターゼに影響を及ぼすのか、特異的にAPPのγ−開裂を阻害するのかテストするために、本発明者らは、BRI2を、APLP1もしくはAPLP2を用いてトランスフェクションした。抗APLP1もしくは抗APLP2C末端抗体を使用してのウェスタン・ブロットは、BRI2発現がAPLP1(図示せず)およびAPLP2(図3i)のC末端フラグメントの蓄積を促進させないことを指し示す。この結果が、BRI2が特異的に、他のγ−基質ではなく、APPへのγ−活性をブロックするとの観念を裏付ける。
【0081】
総じて、これらの研究は、BRI2およびAPPが多分子複合体を細胞膜において形成することを示唆する。このような複合体におけるAPPおよびBRI2の化学量論量が、調査されなければならず、BRI2およびAPPが他の蛋白を含む構造において見出されるかどうか未知である一方、本発明者らのデータが、BRI2がAPPプロセシングの内因性制御因子(レギュレーター)として機能することを示唆する。より具体的に、本発明者らはここに、BRI2発現がAPPのα−およびγ−両方の開裂を減らすことを見出した。これらの機能に相応しい詳細な分子機序(分子レベルでのメカニズム)が直接述べられなければならないが、BRI2が、α−およびγ−開裂部位を含んでいるAPPの領域と相互作用するとの知見はBRI2が物理的に、これら2種の標的配列を、これらセクレターゼからマスクすることをほのめかす。
【0082】
最近、BRI2における突然変異が、FBD(Vidalら、1999)およびFDD(Vidalら、2000)患者において見出されている。野生型および突然変異体BRI2両方が、フリンによりプロセシングされており(Kimら、1999)、このプロセシングがC末端ペプチドの分泌に至る。フリンによる野生型BRI2の開裂が、17アミノ酸(aa)長のペプチドを放出させる。FBD患者において、BRI2の停止(ストップ)コドンでの点突然変異が、3’−非翻訳領域の解読、および、余分な11アミノ酸をC末端において含有するBRI2分子の合成に至る。フリンによるこの突然変異したBRI2の開裂が、より長いペプチドたるABriペプチドを生成させ、これがアミロイド繊維として沈着される。デンマーク家族性において、正常停止コドンの1コドン前の10−nt複製物の存在が通常より大きな蛋白前駆体(そのアミロイドサブユニットが最後の34C末端アミノ酸を含む。)を発生させるBRI2配列でのフレームシフトを生じる。ABriおよびADanアミロイドの沈着が、これらの痴呆の病原と考えられている。しかしながら、BRI2が、APPプロセシングを規制するとの知見が、魅惑的であり、変更されたAPPプロセシングも、FBDおよびFDDにおける病原要因であるとの思索を促進させる。この仮定と一致して、FDD患者において、上昇した濃度(レベル)のAβ42沈着が、CAA病巣において、ADanと共に検出されている。
【0083】
実施例2.APPプロセシングへのBRI2の効果に関する更なる研究
実施例1で記載された方法を使用して、最初の、80、93、96、99、102、105、117、および131アミノ酸からなるBRI2欠損構築体の効果が、測定された。図4(左パネル)で示されたとおり、99アミノ酸よりも大きいトランケーションだけが、総溶解物におけるC99の蓄積を示したが、このことが、C99の更なるプロセシングの阻害を指し示す。最初の96および99アミノ酸からなる欠損構築体が、遙かにより乏しい阻害効果を示し、80および93(アミノ酸)からなるものが、該阻害を示さなかった。C99プロセシングへのBRI2のこの阻害効果は、図4に示すとおり(右のパネル)、BRI2トランケーションのC99および全長APPに対する結合に対応した。同一セットの欠損構築体が、AID産生へのそれらの効果を求めるのに使用された。APP−Gal4駆動ルシフェラーゼ活性の結果(図5)が更に、最初の99アミノ酸を越えるアミノ酸を含むBRI2構築体が、AID産生の効率的な阻害に必要とされているとの結論を裏付ける。
【0084】
実施例1は、sAPPαがBRI2存在下に抑えられていることを確立させ、BRI2がα−セクレターゼを阻害することを指し示している。更なる実験が実施され、sAPPβ産生へのBRI2の効果を究明した。図6で示されたとおり、sAPPβ産生も、BRI2存在下に抑えられており、BRI2がβ−セクレターゼを阻害することを指し示している。
【0085】
上に鑑みると、本発明の幾つかの利点が達成されており、他の利点が得られたことが分かる。
【0086】
本発明範囲から逸脱することなく、上の方法および組成物において種々の変更がなされ得るので、上の記載において含有され、添付の図面において示された全事項が、例示として、限定している意味ではなく解釈されると意図されている。
【0087】
本明細書において引用された全文献が、本明細書において援用される。本明細書における文献に関する議論が単に、それらの著者によりなされた主張を要約すると意図されており、いずれの文献も、先行技術を構成するとは、全く認められていない。出願人は、これら引用された文献の精確さおよび適切さに挑む権利を確保する。
【0088】
配列番号(SEQ ID NO)
SEQ ID NO:1−ヒトBRI2アミノ酸配列 GenBank Q9Y287
1 mvkvtfhsal aqkeakkdep ksgeealiip pdavavdckd pddwpvgqr rawcwcmcfg
61 lafmlagvil ggaylykyfa lqpddvyycg ikyikddvil nepsadapaa lyqtieenik
121 ifeeeevefi svpvpefads dpanivhdfh kkltayldln ldkcyvipln tsivmpprnl
181 lellinikag tylpqsylih ebmvitdrie nidhlgffiy rlchdketyk lqrretikgi
241 qkreasncfa irhfenkfav etlics
SEQ ID NO:2−ヒトBRI3アミノ酸配列 GenBank Q9NOX7.
1 mvkisfqpav agikgdkadk asasapapas ateilltpar eeqppqhrsk rggsvggvcy
61 lsmgmwlhn glvfasvyiy ryfflaqlar dnffrcgvly edslssqvrt qmeleedvki
121 yldenyerin vpvpqfgggd padiihdfqr gltayhdisl dkcyvielnt tivlpprnfw
181 ellmnvkrgt ylpqtyiiqe emwtehvsd kealgsfiyh lcngkdtyrl rrratrrrin
241 krgakncnai rhfentfVve tlicgw
SEQ ID NO:3−ヒトフリン前原蛋白 GenBank NP002560
1 melrpwllwv vaatgtlvll aadaqgqkvf tntwavripg gpavansvar khgflnlgqi
61 fgdyyhfwhr gvtkrslsph rprhsrlqre pqvqwleqqv akrrtkrdvy qeptdpkfpq
121 qwylsgvtqr dlnvkaawaq gytghgiws ilddgieknh pdlagnydpg asfdvndqdp
181 dpqprytqmn dnrhgtrcag evaavanngv cgvgvaynar iggvrmldge vtdavearsl
241 glnpnhihiy saswgpeddg ktvdgparla eeaffrgvsq grgglgsifv wasgnggreh
301 dscncdgytn siytlsissa tqfgnvpwys eacsstlatt yssgnqnekq ivttdlrqkc
361 teshtgtsas aplaagiial tleanknltw rdmqhlwqt skpahhiand watngvgrkv
421 shsygyglld agamvalaqn wttvapqrkc iidiltepkd igkrlevrkt vtaclgepnh
481 itrlehaqar ltlsynrrgd laihlvspmg trstllaarp hdysadgfhd wafmtthswd
541 edpsgewvle ientseanny gtltkftlvl ygtapeglpv ppessgcktl tssqacwce
601 egfslhqksc vqhcppgfap qvldthyste ndvetirasv capchascat cqgpaltdcl
661 scpshasldp veqtcsrqsq ssresppqqq pprlppevea gqrlragllp shlpewagl
721 scafivlvfv tvflvlqlrs gfsfrgvkvy tmdrglisyk glppeawqee cpsdseedeg
781 rgertafikd qsal

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞によるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、もしくは予防する方法であって、該細胞によるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、もしくは予防するのに有効な量で、該細胞を、BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記細胞が、BRI2またはBRI3と接触し、ここでBRI2もしくはBRI3は、SEQ ID NO:1の配列を有するヒトBRI2蛋白、もしくは配列SEQ ID NO:2の配列を有するヒトBRI3蛋白のアミノ酸1〜102と等価なアミノ酸及び/又はペプチド模倣体を含み、かつ、該BRI2蛋白及び該BRI3蛋白は、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記BRI2もしくはBRI3が天然起源蛋白である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記BRI2もしくはBRI3がそれぞれ、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2の少なくとも一部分に少なくとも90%相同なアミノ酸配列を有する、請求項2の方法。
【請求項5】
前記BRI2もしくはBRI3がそれぞれ、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2の少なくとも一部分に少なくとも95%相同なアミノ酸配列を有する、請求項2の方法。
【請求項6】
前記BRI2もしくはBRI3がそれぞれ、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2の少なくとも一部分に少なくとも98%相同なアミノ酸配列を有する、請求項2の方法。
【請求項7】
前記BRI2もしくはBRI3がそれぞれ、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2の少なくとも一部分に100%相同である、請求項2の方法。
【請求項8】
前記BRI2もしくはBRI3が、250よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体からなる、請求項2の方法。
【請求項9】
前記BRI2もしくはBRI3が、200よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体からなる、請求項2の方法。
【請求項10】
前記BRI2もしくはBRI3が、150よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体からなる、請求項2の方法。
【請求項11】
前記BRI2もしくはBRI3が、125よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体からなる、請求項2の方法。
【請求項12】
前記BRI2もしくはBRI3がそれぞれ、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2の配列を有するヒトBRI2もしくはBRI3蛋白のアミノ酸1〜102に等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含む、請求項2の方法。
【請求項13】
前記細胞が、BRI2と接触される、請求項1の方法。
【請求項14】
前記細胞が、BRI3と接触される、請求項1の方法。
【請求項15】
前記細胞が、BRI2もしくはBRI3模倣体と接触される、請求項1の方法。
【請求項16】
前記細胞が神経細胞である、請求項1の方法。
【請求項17】
前記細胞が、神経様であるか、もしくは神経へ分化可能である、請求項1の方法。
【請求項18】
前記細胞が、生存動物中に存在する、請求項1の方法。
【請求項19】
前記細胞が、生存動物中の神経細胞である、請求項1の方法。
【請求項20】
前記細胞が、生存ヒトに存在する、請求項1の方法。
【請求項21】
前記細胞が、BRI2もしくはBRI3蛋白の少なくとも一部分をコード化する核酸配列を含むベクターと接触される、請求項1の方法。
【請求項22】
前記ベクターが、前記細胞に感染するウィルスベクターである、請求項21の方法。
【請求項23】
細胞によるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、もしくは予防する方法であって、該細胞を、該細胞におけるAβおよび/またはAID産生を、抑制、阻害、もしくは予防するに有効な量でフリンと接触させることを含む、方法。
【請求項24】
前記フリンが、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列108〜794を有するヒトフリンに少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
前記フリンが、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列108〜794を有するヒトフリンに少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項23の方法。
【請求項26】
前記フリンがヒトフリンである、請求項23の方法。
【請求項27】
前記細胞がフリン蛋白と接触される、請求項23の方法。
【請求項28】
前記フリン蛋白が、当該フリン蛋白をコード化する核酸配列を含むベクターにより発現される、請求項27の方法。
【請求項29】
前記ベクターがウィルスベクターである、請求項28の方法。
【請求項30】
前記細胞が神経細胞である、請求項23の方法。
【請求項31】
前記細胞が神経様であるか、もしくは、神経へ分化することができる、請求項23の方法。
【請求項32】
前記細胞が生存動物に存在する、請求項23の方法。
【請求項33】
前記細胞が生存動物における神経細胞である、請求項23の方法。
【請求項34】
前記細胞が生存するヒトに存在する、請求項23の方法。
【請求項35】
アルツハイマー病を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に、該被験体のアルツハイマー病を治療するのに有効な量のBRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記被験体が、SEQ ID NO:1のヒトBRI2蛋白配列、もしくは、SEQ ID NO:2のヒトBRI3蛋白配列のアミノ酸1〜102に等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含むBRI2もしくはBRI3を投与され、ここで、該BRI2蛋白および該BRI3蛋白がそれぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する、請求項35の方法。
【請求項37】
前記BRI2もしくはBRI3が天然起源蛋白である、請求項36の方法。
【請求項38】
前記被験体がBRI2を投与される、請求項35の方法。
【請求項39】
前記被験体がBRI3を投与される、請求項35の方法。
【請求項40】
前記被験体がBRI2もしくはBRI3模倣体を投与される、請求項35の方法。
【請求項41】
前記BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体が直接、前記被験体の脳に投与される、請求項35の方法。
【請求項42】
前記BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体が、当該BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体の、前記被験体の血液脳関門を通過できる能力を高める医薬組成物で製剤化される、請求項35の方法。
【請求項43】
前記BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体は、当該BRI2もしくはBRI3もしくはこれらの模倣体が前記哺乳類の血液脳関門を通過できるように投与される、請求項35の方法。
【請求項44】
アルツハイマー病を有する被験体を治療する方法であって、該被験体に、該被験体のアルツハイマー病を治療するのに有効な量のフリンを投与することを含む、方法。
【請求項45】
前記被験体が、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列108〜794を有するヒトフリンに等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含むフリンを投与され、ここで、該フリンが、SEQ ID NO:3に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する、請求項44の方法。
【請求項46】
前記フリンが天然起源蛋白である、請求項44の方法。
【請求項47】
前記フリンが直接、前記被験体の脳に投与される、請求項44の方法。
【請求項48】
前記フリンは、当該フリンの、前記被験体の血液脳関門を通過できる能力を高める医薬組成物で製剤化される、請求項44の方法。
【請求項49】
前記フリンは、該化合物が前記哺乳類の血液脳関門を通過できるように投与される、請求項44の方法。
【請求項50】
化合物がBRI2もしくはBRI3の模倣体であるかを決定する方法であって:該方法は、
該化合物を、機能しているγ−セクレターゼ、および、C99を含む膜結合蛋白と組み合わせ、次いで、該化合物がAβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂を阻害するかどうか決定することを含み、ここで、該化合物が、もしγ−セクレターゼによるC99の開裂を阻害すれば、BRI2もしくはBRI3の模倣体である、方法。
【請求項51】
Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂の阻害が、前記化合物がAβおよび/またはAIDの放出を阻害するかを決定することにより決定される、請求項50の方法。
【請求項52】
Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂の阻害が、前記化合物がC99の存在の増加を引き起こすかを決定することにより決定される、請求項50の方法。
【請求項53】
Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂の阻害が、前記化合物がC83の存在の減少を引き起こすかどうか決定することにより決定される、請求項50の方法。
【請求項54】
Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂の阻害が、前記化合物がsAPPαの存在の減少を引き起こすかを決定することにより決定される、請求項50の方法。
【請求項55】
Aβおよび/またはAIDを放出するC99の開裂の阻害が、前記化合物がsAPPβ存在の増加を引き起こすかを決定することにより決定される、請求項50の方法。
【請求項56】
前記方法が、ELISAを利用してペプチドを定量する、請求項50の方法。
【請求項57】
前記方法が質量分析を利用する、請求項50の方法。
【請求項58】
前記方法が、ウェスタン・ブロットを利用して、ペプチドを同定および/または定量する、請求項50の方法。
【請求項59】
前記化合物が、配列SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2をそれぞれ有するヒトBRI2もしくはBRI3蛋白のアミノ酸1〜102に等価なアミノ酸を含むBRI2もしくはBRI3蛋白の一部分を模倣するよう設計されている、請求項50の方法。
【請求項60】
前記化合物が、前記BRI2もしくはBRI3蛋白の前記部分の3次元構造および/または電荷を模倣する、請求項59の方法。
【請求項61】
前記BRI2もしくはBRI3蛋白が、BRI2蛋白である、請求項59の方法。
【請求項62】
前記BRI2もしくはBRI3蛋白が、BRI3蛋白である、請求項59の方法。
【請求項63】
C99を含む前記膜結合蛋白がアミロイド前駆体蛋白(APP)である、請求項50の方法。
【請求項64】
前記の機能しているγ−セクレターゼおよびC99を含む膜結合蛋白が、生存細胞に存在する、請求項50の方法。
【請求項65】
前記生存細胞が、γ−セクレターゼによる遺伝子導入(トランスジェニック)APP開裂時、レポーター遺伝子の転写を活性化させる遺伝子構築体を含む、請求項50の方法。
【請求項66】
前記レポーター遺伝子がルシフェラーゼである、請求項65の方法。
【請求項67】
前記遺伝子導入(トランスジェニック)APPが更に、Gal4を当該遺伝子導入(トランスジェニック)APPの細胞質部位(ドメイン)で含む、請求項65の方法。
【請求項68】
前記生存哺乳類細胞が神経細胞である、請求項64の方法。
【請求項69】
前記生存哺乳類細胞が、遺伝子導入(トランスジェニック)APPを産生する、請求項64の方法。
【請求項70】
前記生存哺乳類細胞が、HEK293細胞、HeLa細胞、もしくはN2a細胞由来である、請求項69の方法。
【請求項71】
精製BRI2もしくはBRI3を、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物。
【請求項72】
前記BRI2もしくはBRI3が、SEQ ID NO:1の配列を有するヒトBRI2蛋白、もしくは、SEQ ID NO:2の配列を有するヒトBRI3蛋白の、アミノ酸1〜102に等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含み、ここで、該BRI2蛋白および該BRI3蛋白がそれぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する、請求項71の組成物。
【請求項73】
前記BRI2もしくはBRI3がBRI2である、請求項71の組成物。
【請求項74】
前記BRI2もしくはBRI3がBRI3である、請求項71の組成物。
【請求項75】
前記BIR2もしくはBRI3が、250よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体からなる、請求項71の組成物。
【請求項76】
前記BIR2もしくはBRI3が、200よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体からなる、請求項71の組成物。
【請求項77】
前記BIR2もしくはBRI3が、150よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体からなる、請求項71の組成物。
【請求項78】
前記BIR2もしくはBRI3が、125よりも少ないアミノ酸および/またはペプチド模倣体からなる、請求項71の組成物。
【請求項79】
医薬として許容可能な前記賦形剤が、前記BRI2もしくはBRI3の、前記被験体の血液脳関門を通過できる能力を高める、請求項71の組成物。
【請求項80】
前記組成物が、ユニットドーズの形態でアルツハイマー病治療のために製剤化される、請求項71の組成物。
【請求項81】
精製フリンを、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物。
【請求項82】
前記フリンが、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列108〜794を有するヒトフリンに等価なアミノ酸および/またはペプチド模倣体を含み、ここで、該フリンが、SEQ ID NO:3に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する、請求項81の組成物。
【請求項83】
前記フリンが天然起源蛋白である、請求項81の組成物。
【請求項84】
医薬として許容可能な前記賦形剤が、前記フリンの、前記被験体の血液脳関門を通過できる能力を高める、請求項81の組成物。
【請求項85】
前記組成物が、ユニットドーズの形態でアルツハイマー病治療のために製剤化される、請求項81の組成物。
【請求項86】
BRI2もしくはBRI3をコード化するベクターを、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物。
【請求項87】
前記BRI2もしくはBRI3が、SEQ ID NO:1の配列を有するヒトBRI2蛋白、もしくは、SEQ ID NO:2の配列を有するヒトBRI3蛋白の、アミノ酸1〜102に等価なアミノ酸を含み、ここで、該BRI2蛋白および該BRI3蛋白がそれぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を有する、請求項86の組成物。
【請求項88】
医薬として許容可能な前記賦形剤が、前記BRI2もしくはBRI3の、前記被験体の血液脳関門を通過できる能力を高める、請求項86の組成物。
【請求項89】
前記組成物が、ユニットドーズの形態でアルツハイマー病を治療するために製剤化される、請求項86の組成物。
【請求項90】
前記ベクターがウィルスである、請求項86の組成物。
【請求項91】
フリンをコード化するベクターを、医薬として許容可能な賦形剤中に含む組成物。
【請求項92】
前記フリンが、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列108〜794を有するヒトフリンに等価なアミノ酸を含み、ここで、該フリンがSEQ ID NO:3に少なくとも80%相同なアミノ酸配列を持つ、請求項91の組成物。
【請求項93】
前記フリンが天然起源蛋白である、請求項91の組成物。
【請求項94】
医薬として許容可能な前記賦形剤が、前記フリンの、前記被験体の血液脳関門を通過できる能力を高める、請求項91の組成物。
【請求項95】
前記組成物が、ユニットドーズの形態でアルツハイマー病治療のために製剤化される、請求項91の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82721(P2013−82721A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−273030(P2012−273030)
【出願日】平成24年12月14日(2012.12.14)
【分割の表示】特願2008−517054(P2008−517054)の分割
【原出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(591054174)イェシバ・ユニバーシティ (12)
【氏名又は名称原語表記】YESHIVA UNIVERSITY
【Fターム(参考)】