説明

A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法、マーキング、及びA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去装置

【課題】表面に凹凸が形成されることなくマークが形成され、該マーク箇所を手でなぞった場合でもツルツル感に富むマーキング技術を提供することである。
【解決手段】A層とC層との間に挟まれたB層の一部が除去される方法であって、YAGレーザ又はYVO4レーザが、前記A層表面側から前記B層に向けて、照射される工程を具備し、前記照射レーザの出力が2〜6Wであり、前記照射レーザのQスイッチ周波数が70〜330kHzであり、前記照射レーザに対する前記レーザ被照射物の相対移動速度が350〜2500mm/sであり、前記A層は透明樹脂層であり、前記B層は金属層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマーキングの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
「積層フィルムにマーキングする方法であって、積層フィルムを融食する工程を含み、前記積層フィルムが接着層50によって金属層51に被着された少なくとも一つのプラスチック層52を有し、前記プラスチック層52および金属層51が前記接着層50と接触する第一の面を有し、炭酸ガスレーザあるいはYAGレーザ等のレーザが前記プラスチック層52の第一の面と前記金属層51の第一の面との間の深さまで融食して、前記金属層51が大気にさらされないようにする方法」が提案(特開2002−331372号公報)されている。この提案の技術によれば、図7に示される通り、マーキング箇所のプラスチック層52に、平面視でマーク形状の凹部(穴:孔:溝)53が、レーザにより形成されている。すなわち、積層フィルム(プラスチック層52)の表面にはマーク形状に対応した形状の凹部53が形成されている。
【0003】
「少なくとも透明プラスチックフィルム基材と回折格子パターンと金属蒸着層と粘着剤層とからなるラベル材であって、該金属蒸着層が溶融された固有情報としての印字パターンを有することを特徴とする偽造防止ラベル材」「前記金属蒸着層を、透明プラスチックフィルム基材面よりYAGもしくはCO等レーザービームの照射により非接触にて溶融し、前記印字パターンとすることを特徴とする偽造防止ラベル材の製造方法」が提案(特開平10−333574号公報)されている。前記公報の段落番号[0018]〜[0022]には、「……金属蒸着層(30)を、透明プラスチックフィルム基材(10)面よりYAGもしくはCO等のレーザービーム(R)の照射により溶融し、固有情報としての印字パターン(30a)を形成記録することを特徴とする偽造防止ラベル材(1)の製造方法としたものである。 この金属蒸着層(30)の溶融にあたり、YAGレーザー(波長1.06μm)の場合、レーザー出力20W以上で瞬時に溶融印字が可能であり、レーザー発振装置コスト等を考慮するとレーザー出力50W程度が好ましい。但し適性レーザー出力は、透明プラスチックフィルム基材(10)の種類にもよって異なり、このYAGレーザーに対しては、PETフィルムが好適で、ポリエチレンやポリプロピレンは、その透明プラスチックフィルム基材(10)がレーザービームによるエネルギーを吸収し、その透明プラスチックフィルム基材(10)に穴があくため好ましものとは言えない。 一方、COレーザー(波長10.6μm)の場合は、レーザー出力2W以上で瞬時に溶融印字が可能であり、レーザー発振装置コスト等を考慮するとレーザー出力10W程度が好ましい。但し、適性レーザー出力は、透明プラスチックフィルム基材(10)の種類にもよって異なり、このCOレーザーに対しては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好適で、PETフィルム等はその透明プラスチックフィルム基材(10)がレーザービームによるエネルギーを吸収し、その透明プラスチックフィルム基材(10)に穴があくため好ましものとは言えない。その他、固体レーザーとして、ルビーレーザー(波長0.6943μm)、ガラスレーザー(波長1.065μm)あるいは気体レーザーとしてArレーザー(波長0.4880μmおよび0.5145μm)も発振出力等の選定によっては使用は可能である。 このように、溶融される金属蒸着層(30)の上面を保護している透明プラスチックフィルム基材(10)の種類によって、適性なレーザー発振装置とその発振出力の選択を要するものである。 以上のようなホログラムで代表される回折格子パターンをより明るく鮮明にするための金属蒸着層を、透明プラスチックフィルム基材面よりYAGもしくはCO等レーザービームの照射により非接触にて溶融し、印字パターンとする技術は、本発明の転写シート材への用途の他、例えば、偽造防止のためのホログラム付きクレジットカード、社員身分証明カード、パスポートなどへ固有情報を印字等をすることによって、更に偽造や改ざん防止効果を上げるものなどへも応用できるものである。」の記載が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−331372号公報
【特許文献2】特開平10−333574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術で形成されたマークはプラスチックに形成された凹部53によるものであるが故に、即ち、表面に形成された凹凸によってマークを表示したものであるから、該マーク箇所(凹凸箇所)を手でなぞるとザラツキ感を感じる。
【0006】
特許文献2には、透明プラスチック層と粘着剤層との間に挟まれた金属蒸着層がレーザで溶融して印字パターンが形成の記載が有るものの、透明プラスチック層と粘着剤層との間に挟まれたレーザ照射個所の金属蒸着層が除去されることの記載は無く、かつ、そのようなことを想起させる記載も皆無である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は上記問題点を解決することである。すなわち、表面に形成された凹凸によってマークを表示するものでは無く、マークは表面に凹凸が形成されずとも表示され、該マーク箇所を手でなぞった場合にザラツキ感が無く、ツルツル感に富むマーキング技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、
A層とC層との間に挟まれたB層の一部が除去される方法であって、
YAGレーザ又はYVO4レーザが、前記A層表面側から前記B層に向けて、照射される工程を具備し、
前記照射レーザの出力が2〜6Wであり、
前記照射レーザのQスイッチ周波数が70〜330kHzであり、
前記照射レーザに対する前記レーザ被照射物の相対移動速度が350〜2500mm/sであり、
前記A層は透明樹脂層であり、
前記B層は金属層である
ことを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法によって解決される。
【0009】
前記の課題は、好ましくは、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法であって、前記C層は接着剤層であることを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法によって解決される。
【0010】
前記の課題は、好ましくは、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法であって、前記C層の前記B層とは反対側の面にベース層が設けられてなることを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法によって解決される。
【0011】
前記の課題は、好ましくは、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法であって、前記B層と前記C層との間に前記B層の色とは異なる色の着色層が設けられてなることを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法によって解決される。
【0012】
前記の課題は、好ましくは、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法であって、前記A層と前記B層との間にホログラム層が設けられてなることを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法によって解決される。
【0013】
前記の課題は、好ましくは、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法であって、前記A層はポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリル系樹脂の群の中から選ばれる何れかで構成されてなることを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法によって解決される。
【0014】
前記の課題は、好ましくは、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法であって、前記B層はAl粒子堆積層であることを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法によって解決される。
【0015】
前記の課題は、好ましくは、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法であって、A層とC層との間に挟まれた状態のB層の一部が除去されることによって前記除去パターンに応じた情報が形成される方法であることを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法によって解決される。
【0016】
前記の課題は、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法の実施によるB層の一部除去パターンに応じた情報が形成されてなるマーキングであって、
前記マーキングは、前記レーザ照射によりマーキング箇所の金属が除去されて構成されたものであって、
前記A層は除去されておらず、前記B層の表面側は前記A層で全面的に覆われている
ことを特徴とするマーキングによって解決される。
【0017】
前記の課題は、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法が実施される装置であって、
A層とB層とC層とを具備する長尺材を繰り出す供給側ロールと、
前記供給側ロールから繰り出された前記長尺材が所定の経路を走行して巻き取られる巻取側ロールと、
前記長尺材を350〜2500mm/sの速度で走行させる走行手段と、
前記供給側ロールと前記巻取側ロールとの間の所定の走行経路を走行する前記長尺材に対して、前記A層の表面側から、Qスイッチ周波数が70〜330kHzで出力が2〜6WのYAGレーザ又はYVO4レーザを照射することが出来るレーザ装置と、
前記レーザ装置と前記巻取側ロールとの間の所定の走行経路を走行する長尺材に抜き加工を施し、前記レーザ装置によるレーザ照射で形成された領域の取り出しを可能とする抜き加工装置
とを具備することを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去装置によって解決される。
【0018】
前記の課題は、好ましくは、A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去装置であって、前記抜き加工装置と前記供給側ロールとの間、及び前記抜き加工装置と前記巻取側ロールとの間に、前記長尺材を吸引する吸引装置が設けられてなり、
前記吸引装置により抜き加工装置の前後における長尺材が展張されるようにしたことを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去装置によって解決される。
【発明の効果】
【0019】
例えば、マーキングが形成される材は、例えばA層とB層とC層とが積層された材であり、前記A層は透明樹脂層であり、前記B層は金属層であり、これに対して、YAGレーザ又はYVO4レーザが、前記A層表面側から前記B層に向けて、照射され、前記照射レーザのQスイッチ周波数が70〜330kHzで出力が2〜6Wであり、前記照射レーザに対する前記レーザ被照射物の相対移動速度が350〜2500mm/sであるので、照射レーザは前記A層を透過して金属層に到達して照射箇所の金属を除去し、マークが綺麗に形成された。表面の透明樹脂層には照射レーザによって凹部(穴:孔:溝)が形成されておらず、透明樹脂層の表面を手でなぞってもザラツキ感がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明になるマーキング装置の概略図
【図2】本発明(マーキング方法)が実施される長尺材の平面図
【図3】本発明(マーキング方法)が実施される長尺材の断面図
【図4】マーキング形成後における金属粒子付着樹脂フィルムの平面図
【図5】マーキング形成後における金属粒子付着樹脂フィルムの断面図
【図6】第2実施形態になる長尺材の断面図
【図7】従来のマーキング例
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の本発明はA層とC層との間に挟まれたB層の一部が除去される方法である。因みに、B層(不透明な金属層)の一部除去によって所定のパターンが形成される観点からすると、これは、マーキング方法であると謂える。本方法は、YAGレーザ又はYVO4レーザが、前記A層表面側から前記B層に向けて、照射される工程を具備する。前記照射レーザの出力は2〜6Wである。より好ましくは、2.5〜5.5Wであった。そして、前記特許文献2に記載の如きの20Wと言った大きな場合、綺麗なマークは形成されなかった。更には、特許文献2が好ましい出力と明記している50Wの場合には、本願発明の実施によって得られたような綺麗なマークは到底に得られなかった。逆に、レーザ出力が小さ過ぎた場合も、綺麗なマークは形成されなかった。前記照射レーザのQスイッチ周波数は70〜330kHzであった。更に好ましくは100〜300kHzであった。そして、Qスイッチ周波数が、例えば50kHz又は400kHzの場合には、照射レーザの出力を3〜5W、かつ、後述の前記照射レーザに対する前記レーザ被照射物の相対移動速度を700〜1500mm/sの適切なものに調整していても、綺麗なマークは得られなかった。前記照射レーザに対する前記レーザ被照射物の相対移動速度は350〜2500mm/sである。すなわち、前記速度が350mm/s未満の小さな場合には、照射レーザの出力を3〜5W、かつ、Qスイッチ周波数を100〜300kHzの適切なものに調整していても、綺麗なマークは得られなかった。すなわち、前記レーザの出力と前記Qスイッチ周波数と前記走行速度との三者が三位一体で互いに密接に絡まり、各々が適正な範囲内にある場合に、始めて、綺麗なマークが形成された。前記A層は透明樹脂層である。前記B層は金属層である。前記B層は、例えば蒸着あるいはスパッタ等のPVD手段、又はCVD手段で形成される。すなわち、金属粒子の堆積によって、前記B層は、形成される。前記C層は、例えば接着剤層(粘着剤層)である。前記C層の前記B層とは反対側の面には、好ましくは、ベース層(剥離紙層:剥離層(フィルム))が設けられる。従って、前記レーザ照射後に、ベース層(剥離紙層)が剥離されると、前記A層/B層/C層(接着剤層(粘着剤層))の積層体は、マークをシールとして利用できるものとなる。前記B層と前記C層との間には、好ましくは、前記B層の色とは異なる色の着色層が設けられる。着色層とA層とでB層が挟まれるように着色層が設けられる。これにより、B層一部除去の具合(マーク)が一層明確に判るようになる。前記A層と前記B層との間には、例えばホログラム層が設けられても良い。前記A層は、例えば無職透明な樹脂フィルムで構成される。好ましい透明樹脂は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂、例えばPP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン系樹脂、例えばPMMA(ポリメチクリル酸メチル樹脂)等のアクリル系樹脂の群の中から選ばれる樹脂である。この透明樹脂は、好ましくは、顔料や染料で着色されてない無色な透明樹脂である。従って、A層とB層とを具備する材は、前記のような透明樹脂フィルムの一面側(片面側)に金属粒子が付着・堆積した金属粒子付着(堆積)樹脂フィルムであると言うことが出来る。所謂、金属蒸着フィルムである。例えば、透明樹脂フィルムの一面側にAlが蒸着して構成されたAl蒸着樹脂フィルムである。前記金属としては、例えばAl,Feが挙げられる。金属膜の成膜性、レーザによる加工性や、シールとして用いた場合の色彩感から、特に好ましい金属はAlである。前記接着剤層(粘着剤層)は、例えばアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂等が適宜用いられる。
【0022】
第2の本発明はマーキングである。このマーキングは、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部が除去される方法の実施になるものである。すなわち、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法の実施によるB層の一部除去パターンに応じた情報が形成されてなるマーキングである。このマーキングは、前記レーザ照射によりマーキング箇所の前記B層の一部が除去されて構成されたものである。前記A層は除去されておらず、前記B層の表面側は前記A層で全面的に覆われている。
【0023】
第3の本発明は、前記A層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法が実施される装置である。例えば、マーキング装置である。本装置は供給側ロールを具備する。本装置は巻取側ロールを具備する。本装置は走行手段を具備する。前記供給側ロールには前記A層とB層とC層との積層体からなる長尺材が巻かれている。前記走行手段により、前記長尺材は、前記供給側ロールから繰り出され、所定の経路を走行し、前記巻取側ロールに巻き取られる。前記走行手段による前記長尺材の走行速度は350〜2500mm/sであるように制御されている。本装置はレーザ装置を具備する。前記レーザ装置は、YAGレーザ装置である。又は、YVO4レーザ装置である。前記レーザ装置は、前記供給側ロールと前記巻取側ロールとの間の所定の走行経路を走行する前記長尺材に対して、レーザ光が照射されるように配設されている。特に、Qスイッチ周波数が70〜330kHzで出力が2〜6WのYAGレーザ又はYVO4レーザが前記A層の表面側から照射されるように配設されている。本装置は抜き加工装置を具備する。この抜き加工装置は、前記レーザ装置と前記巻取側ロールとの間の所定の走行経路を走行する長尺材の金属粒子付着樹脂フィルムに抜き加工を施すものである。そして、前記レーザ装置によるレーザ照射で形成されたマーキング領域の取り出しを可能とする。本装置は、好ましくは、吸引装置を具備する。この吸引装置は長尺材を吸引するものである。前記吸引装置は、前記抜き加工装置と前記供給側ロール(レーザ装置)との間に設けられている。又、前記抜き加工装置と前記巻取側ロールとの間に設けられている。そして、前記吸引装置によって長尺材が吸引され、前記抜き加工装置の前後における長尺材が展張される。これによって、抜き加工時に、長尺材には引張力が作用しているので、抜き加工にミスが起こり難い。
【0024】
以下、更に詳しく説明する。
【0025】
図1は発明になるマーキング装置の概略図、図2は長尺材の平面図、図3は長尺材の断面図、図4はマーキング形成後における金属粒子付着樹脂フィルム(長尺材からベース層を剥離後における金属粒子付着樹脂フィルム)の平面図、図5はマーキング形成後における金属粒子付着樹脂フィルムの断面図である。
【0026】
各図中、Aはマーキング装置である。1は供給側ロールである。2a,2bは巻取側ロールである。供給側ロール1には長尺材3が巻回されている。長尺材3は、供給側ロール1から繰り出され、所定の走行経路(テープパス)を経て、巻取側ロール2a,2bに巻き取られる。巻取側ロール2aにはマーキング領域に沿った箇所が抜き加工された後のマーキング領域が存する部分が巻き取られる。巻取側ロール2bにはマーキング領域に沿った箇所が抜き加工された後のマーキング領域が存しないカス部分が巻き取られる。
【0027】
長尺材3は、例えばPETなどの無色透明な樹脂フィルム4と、例えばAlなどの不透明な金属膜5と、ベース紙6との積層体である。金属膜5は蒸着手段で金属粒子が透明樹脂フィルム4の一面に設けられたものである。金属膜5は蒸着膜(金属粒子の堆積膜)であると言うことも出来る。金属膜(蒸着膜)5は蒸着などのPVD手段で設けられたものであるから、透明樹脂フィルム4と金属膜5との間には接着剤(粘着剤)は無い。しかしながら、金属膜5の裏面(透明樹脂フィルム4と反対側の面)には接着剤(粘着剤)が塗布されており、この接着剤(粘着剤)層7によって金属膜5の裏面がベース紙6面上に貼着されている。ベース紙6の表面には、例えばシリコーン膜が設けられており、接着剤(粘着剤)層7による接合(積層:接着)は剥離が容易なものとなっている。従って、ベース紙6は剥離紙であるとも言える。例えば、ベース紙6から透明樹脂フィルム4を持って引き剥がし方向に小さな力を作用させると、金属膜5蒸着透明樹脂フィルム4がベース紙6から剥離する。ベース紙(剥離紙:ベース層)6は半透明ないしは不透明である。本実施形態にあっては不透明である。金属膜5の裏面(一面)には接着剤(粘着剤)層7が存在しているから、ベース紙6から剥がされた金属膜5蒸着透明樹脂フィルム4を貼り付けることによってシールの如く貼着できる。
【0028】
8はレーザ装置である。このレーザ装置8は、発振波長が1064nmのYAG(Nd:YAG)レーザ装置である。YAGレーザ装置の代わりに、発振波長が1064nmのYVO4(Nd:YVO4)レーザ装置であっても良い。レーザ装置8は供給側ロール1と取側ロール2a,2bとの間の所定の走行経路(テープパス)に対応して設けられている。特に、レーザ装置8からのレーザ光が長尺材3の透明樹脂フィルム4側から照射されるようにレーザ装置8が配置されている。
【0029】
9は抜き加工装置である。抜き加工装置9は、レーザ装置8と巻取側ロール2a,2bとの間の所定の走行経路(テープパス)に対応して設けられている。そして、抜き加工装置9の作動により、金属膜5蒸着透明樹脂フィルム4は、レーザ装置8のレーザ照射で形成されたマーキング領域の周囲にスリットが形成される。尚、スリットはベース紙6の下面(裏面)にまでは到達してない。但し、少なくとも金属膜5の部分にはスリットが入る。
【0030】
10,11は吸引箱である。吸引箱10,11には所定の力の吸気装置が接続されており、吸気装置による吸引力によって長尺材3(ベース紙6)が吸引箱10,11内に多少なりとも引き込まれるようになっている。吸引箱10は、レーザ装置8と抜き加工装置9との間の所定の走行経路(テープパス)に対応して設けられ、吸引箱11は抜き加工装置9と巻取側ロール2a,2bとの間の所定の走行経路(テープパス)に対応して設けられている。そして、吸引箱10,11による吸引作用によって、抜き加工装置9における長尺材3には逆方向に引っ張られる力が作用している。従って、抜き加工装置9による金属膜5蒸着透明樹脂フィルム4に対するスリット形成にミスが起こり難いものとなっている。そして、吸引箱11を通り過ぎた後の長尺材3は巻取側ロール2a,2bに巻き取られる。巻取側ロール2bに巻き取られるのはマーキング領域外(スリットで囲まれたマーキング領域の外側の部分:カス部分)である。尚、供給側ロール1にはバックテンションが掛かっており、かつ、吸引箱10によって長尺材3には張力が作用しているから、レーザ装置8によるレーザ照射位置の長尺材3は常に展張状態にある。従って、レーザ照射によるマーク形成にミスが起こり難い。
【0031】
12は見当合わせ用カメラである。13は見当合わせ確認ディスプレイである。
【0032】
上記マーキング装置におけるレーザ装置8から長尺材3に1.3〜13.0Wのレーザが照射された。Qスイッチ周波数は50〜400kHzで調整された。長尺材3の走行速度は300mm/s以上に設定された。その結果、例えばT字状のマーク(図4,5参照)が形成された。このT字のマーク5aは、レーザ照射された箇所の蒸着Alが除去されることによって形成されたものである(図5参照)。Al蒸着膜5はレーザ照射による影響が認められたのに対して、レーザは透明樹脂(PET)フィルム4を透過し、透明樹脂(PET)フィルム4にはレーザ照射による影響は認められなかった。例えば、透明樹脂フィルム4の表面は平坦であった(図5参照)。
【0033】
前記照射レーザによって形成されたマークの美観が観察された。その結果が下記の表−1に示される。
表−1(Qスイッチ周波数200kHz)
レーザ出力 長尺体走行速度(mm/s)
(W) 300 400 500 800 1000 1400 2000
1.3 × × × × × × ×
2.6 △ 〇 〇 〇 〇 〇 〇
3.9 × 〇 〇 〇 〇 〇 〇
5.2 − − − 〇 〇 〇 −
6.5 × − × − − △ ×
7.8 − × − × × × −
9.1 × − × − × − ×
11.7 − × − × − × −
13.0 × × × × × × ×
レーザ照射によるマークの美観の優劣が〇,△,×の三段階で表示された表−1から判る通り、前記照射レーザの出力が約2〜6Wで、長尺体の走行速度が約350mm/s以上の場合には、レーザ照射により形成されたマークは鮮明で綺麗なものであった。これに対して、レーザ出力が6.5Wを越えると、綺麗なマークは形成できなかった。レーザ出力が1.3Wの如く小さな場合も、レーザ出力が大きな場合と同様に、綺麗なマークは形成できなかった。更に、長尺体の走行速度が300mm/s以下の場合には、レーザ出力が2〜6Wの適切な範疇のものでも、綺麗なマークは形成できなかった。
このようなことから、照射レーザの出力は約2〜6Wで、照射レーザに対するレーザ被照射物(長尺体)の相対移動速度が約350〜2500mm/sであることの大事なことが窺える。
【0034】
Qスイッチ周波数が300kHzや100kHzの場合にも同様な傾向が認められた。
表−2(Qスイッチ周波数300kHz)
レーザ出力 長尺体走行速度(mm/s)
(W) 300 600 800 1000 1500 2000
1.3 × × × × × ×
3.9 × 〇 〇 〇 〇 〇
5.2 × − 〇 〇 〇 〇
7.8 × × × × × ×
13.0 × × × × × ×

表−3(Qスイッチ周波数100kHz)
レーザ出力 長尺体走行速度(mm/s)
(W) 300 400 600 800 1000 1400
1.3 × × × × × ×
2.6 △ 〇 〇 〇 〇 〇
3.9 × 〇 〇 〇 〇 〇
7.8 × × × × × ×
13.0 × × × × × ×
但し、Qスイッチ周波数が、例えば50kHz,400kHzの場合には、照射レーザの出力を3〜5W、かつ、長尺体の相対移動速度を700〜1500mm/sの適切なものに調整していても、綺麗なマークは得られなかった。
【0035】
上記実施例では、透明樹脂フィルムはPETフィルムであったが、PPフィルムの場合でも同様なマークが形成された。
【0036】
これに対して、透明樹脂フィルムの代わりに不透明なPVC(ポリ塩化ビニル樹脂)フィルムが用いられた場合には、該不透明PVCフィルムの表面に凹部が形成され、この凹部によるマークが形成された。すなわち、マークが形成されたものの、上記実施例の如きの蒸着Alの除去によるマークとは異なるものであった。そして、レーザ照射箇所の不透明PVCフィルム表面が凹状に一部除去されることによってマークが形成されたものであるから、当該箇所を手でなぞるとザラツキ感が認められた。これに対して、本発明の場合では、マーク形成箇所を手でなぞっても、ザラツキ感は認められず、ツルツルしたものであった。
【0037】
上記実施例ではYAGレーザ装置が用いられた場合であるが、YVO4レーザ装置が用いられた場合も同様であった。
【0038】
これに対して、YAGレーザ装置の代わりに炭酸ガスレーザ装置が用いられた場合には、上記実施例の如きのマークは得られなかった。すなわち、この場合のマーキング品質は非常に劣るものであった。
【0039】
上記実施例では、マーキングが形成される材は、金属粒子が透明樹脂フィルムの一面側に付着した金属粒子付着樹脂フィルムであった。すなわち、Al等の金属粒子が透明樹脂フィルム面上に堆積して構成されたものである。これがベース紙6上に接着積層されたものである。従って、マークはAlの除去によるものであるから、豊かな色彩感が得られ難い。そこで、豊かな色彩感を付与する為には、図6に示される如く、金属膜(蒸着膜)5の裏面側(透明樹脂フィルム4と反対側)に着色(透明・不透明いずれであっても良い。)樹脂フィルム20を接着剤(粘着剤)21で接着(接合)しておけば良い。このようにすることによって、貫通形成によるマークは背面の色が見えることから、着色樹脂フィルム20に応じた豊かな色彩感が得られる。
【符号の説明】
【0040】
A マーキング装置
1 供給側ロール
2a 巻取側ロール
3 長尺材
4 透明樹脂フィルム
5 金属膜(蒸着膜:堆積膜)
6 ベース紙
7 接着剤(粘着剤)層
8 レーザ装置(YAGレーザ装置:YVO4レーザ装置)
9 抜き加工装置
10,11 吸引箱
20 着色樹脂フィルム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
A層とC層との間に挟まれたB層の一部が除去される方法であって、
YAGレーザ又はYVO4レーザが、前記A層表面側から前記B層に向けて、照射される工程を具備し、
前記照射レーザの出力が2〜6Wであり、
前記照射レーザのQスイッチ周波数が70〜330kHzであり、
前記照射レーザに対する前記レーザ被照射物の相対移動速度が350〜2500mm/sであり、
前記A層は透明樹脂層であり、
前記B層は金属層である
ことを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法。
【請求項2】
前記C層は接着剤層である
ことを特徴とする請求項1のA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法。
【請求項3】
前記C層の前記B層とは反対側の面にベース層が設けられてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法。
【請求項4】
前記B層と前記C層との間に前記B層の色とは異なる色の着色層が設けられてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかのA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法。
【請求項5】
前記A層と前記B層との間にホログラム層が設けられてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかのA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法。
【請求項6】
前記A層はポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリル系樹脂の群の中から選ばれる何れかで構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかのA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法。
【請求項7】
前記B層はAl粒子堆積層である
ことを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかのA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法。
【請求項8】
A層とC層との間に挟まれた状態のB層の一部が除去されることによって前記除去パターンに応じた情報が形成される方法である
ことを特徴とする請求項1〜請求項7いずれかのA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8いずれかのA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法の実施によるB層の一部除去パターンに応じた情報が形成されてなるマーキングであって、
前記マーキングは、前記レーザ照射によりマーキング箇所の金属が除去されて構成されたものであって、
前記A層は除去されておらず、前記B層の表面側は前記A層で全面的に覆われている
ことを特徴とするマーキング。
【請求項10】
請求項1〜請求項8いずれかのA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去方法が実施される装置であって、
A層とB層とC層とを具備する長尺材を繰り出す供給側ロールと、
前記供給側ロールから繰り出された前記長尺材が所定の経路を走行して巻き取られる巻取側ロールと、
前記長尺材を350〜2500mm/sの速度で走行させる走行手段と、
前記供給側ロールと前記巻取側ロールとの間の所定の走行経路を走行する前記長尺材に対して、前記A層の表面側から、Qスイッチ周波数が70〜330kHzで出力が2〜6WのYAGレーザ又はYVO4レーザを照射することが出来るレーザ装置と、
前記レーザ装置と前記巻取側ロールとの間の所定の走行経路を走行する長尺材に抜き加工を施し、前記レーザ装置によるレーザ照射で形成された領域の取り出しを可能とする抜き加工装置
とを具備することを特徴とするA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去装置。
【請求項11】
抜き加工装置と供給側ロールとの間、及び抜き加工装置と巻取側ロールとの間に、長尺材を吸引する吸引装置が設けられてなり、
前記吸引装置により抜き加工装置の前後における長尺材が展張されるようにしたことを特徴とする請求項10のA層とC層との間に挟まれたB層の一部除去装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196710(P2012−196710A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201104(P2011−201104)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(598157111)株式会社タック印刷 (1)
【Fターム(参考)】