説明

A群Streptococcusマーカーに基づくリウマチ性心疾患についての診断法および治療法

本発明は、Streptococcus pyogenes(A群Streptococcus;GAS)と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を有する患者の同定、およびGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがある患者の同定の分野に属する。本発明はまた、GAS感染と関連するRHDを予防および処置するための方法および組成物も提供する。一局面において、患者においてGAS感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を診断する、またはGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがある患者を同定する方法が提供され、この方法は、a)患者に由来する生物学的試料を少なくとも1つのGAS抗原と、該少なくとも1つのGAS抗原に対する、該生物学的試料中に存在する任意の抗体の結合に適した条件下で、接触させるステップなどを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Streptococcus pyogenes(A群Streptococcus;GAS)感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を有する患者の同定、およびGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがある患者の同定の分野に属する。本発明はまた、GAS感染と関連するRHDを予防および処置するための方法および組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒト病原体であるA群Streptococcus(Streptococcus pyogenes、GAS)は、通常の咽頭炎の主要な原因であると広く認識されている。この細菌による感染症は、さらに重度の侵襲性疾患、ならびに非化膿性自己免疫性続発症を結果としてもたらしうる。急性リウマチ熱(ARF)は、未処置のGAS感染後に、0.1〜3%の個体において発症する、多病巣性自己免疫疾患である。
【0003】
ARFは、1944年に初めて公表されたJones基準の改定版により診断されている。最新のJones基準によれば、GAS感染の証拠と共に、2つの主要基準(移動性多発性関節炎、心臓炎、皮下結節、有縁性紅斑、シデナム舞踏病)、または1つの主要基準に加えた2つの副次基準(発熱、関節痛、赤血球沈降速度(erythocyte sedimentation rate)またはC反応性タンパク質値の上昇、白血球増多症、心臓ブロックの特徴を示すECG所見)が存在すれば、ARFの診断がなされうる。
【0004】
ARFの臨床的に重要な主要な続発症は、リウマチ性心疾患(RHD)である。RHDは、重篤な心病変をもたらす場合があり、死亡または心弁置換に至る、心筋炎または弁膜炎を伴う。発展途上国全体において、RHDは、依然として、<50歳の個体における後天的心疾患の主要な原因である。先進諸国では、GAS感染症を処置するための抗生剤が入手可能であるために、ARFおよびRHDはそれほど一般的ではない。しかし、1980年代の半ば、米国の複数の地域でARFおよびRHDの再流行が報告され、ユタ州、ソルトレークシティー周辺の山間地域で遷延した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のところ、ARFの診断後に患者がRHDを発症しているかどうかを確認するには、ECG検査および心エコー図などの検査が用いられている。現在のところ、GAS感染の結果として、RHDを有するか、またはRHDを発症するリスクがある個体を同定するために実施可能なアッセイは存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、GAS感染の結果として、RHDを有するか、またはRHDを発症するリスクがある個体を同定する方法に関する。本発明はまた、このような方法において用いうるタンパク質アレイにも関する。本発明はまた、GAS感染と関連するRHDを予防および処置するための方法および組成物も提供する。
【0007】
診断法
本発明は、患者においてGAS感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を診断する、またはGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがある患者を同定する方法であって、該方法は、
a)患者に由来する生物学的試料を少なくとも1つのGAS抗原と、該少なくとも1つのGAS抗原に対する、該生物学的試料中に存在する任意の抗体の結合に適した条件下で、接触させるステップと、
b)該患者に由来する該生物学的試料中の抗体の、該少なくとも1つのGAS抗原に対する反応性を、健常個体に由来する対照の生物学的試料中の抗体の、該少なくとも1つのGAS抗原に対する反応性と比較するステップであって、ここで、
健常個体に由来する該対照の生物学的試料と比較して、該患者に由来する該生物学的試料における反応性が低いことは、該患者がGAS感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を患っていること、または該患者がGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがあることを示すステップを含む、方法を提供する。
【0008】
一態様では、本発明は、患者においてGAS感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を診断する方法、またはGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがある患者を同定する方法であって、該方法は、
a)患者に由来する生物学的試料を、
配列番号1(GAS5)
配列番号2(GAS5F)
配列番号3(GAS25)
配列番号4(GAS40)
配列番号5(GAS57)
配列番号6(GAS97)
配列番号7(GAS380)および
配列番号8(SpeA)
のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原
またはその機能的同等物と、該少なくとも1つのGAS抗原またはその機能的同等物に対する、該生物学的試料中に存在する任意の抗体の結合に適した条件下で、接触させるステップと、
b)該少なくとも1つのGAS抗原またはその機能的同等物に結合した、該患者に由来する該生物学的試料中の任意の抗体の反応性を評価するステップと、
c)ステップb)における反応性を、該少なくとも1つのGAS抗原またはその機能的同等物に結合した、健常個体に由来する対照の生物学的試料中の抗体の反応性と比較するステップであって、ここで、
該患者に由来する該生物学的試料における反応性が、健常な個体に由来する該対照の生物学的試料における反応性と比較して低いことは、該患者がGAS感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を患っていること、または該患者がGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがあることを示すステップを含む、方法を提供する。
【0009】
「リウマチ性心疾患(RHD)」という用語は、僧帽弁および/または大動脈弁に対する損傷、心筋炎、ならびに心膜炎を含め、急性リウマチ熱の後に続いて心臓が罹患する状態を対象とする。
【0010】
RHDに罹患している患者に由来する血清試料、および健常個体に由来する血清試料を解析したところ、RHDに罹患している患者に由来する血清が示す、ある種のGAS抗原との反応性が、健常患者に由来する血清が示す反応性と比較して著明に低いという驚くべき知見がもたらされた。これらの知見は、GAS抗原との反応性を用いて、健常個体に由来する血清と、RHDを患う患者に由来する血清とを識別しうるという第1の証拠をもたらす。具体的には、RHD患者に由来する血清が示す、以下の表1で同定されている8つのGAS抗原との反応性は低いことが判明している。
【0011】
【表1】

したがって、患者試料における、これら8つのGAS抗原に対する反応性が、健常個体に由来する対照試料における反応性と比較して低いことの検出を用いて、GAS感染と関連するRHDを診断することもでき、GAS感染と関連するRHDを発症するリスクが増大した患者を同定することもできる。逆に、患者試料におけるこれら8つのGAS抗原に対する抗体反応性が、健常個体に由来する対照試料において示される反応性と同様であることの検出は、その患者がRHDを患っておらず、GAS感染と関連するRHDを発症するリスクが小さいことを示す。
【0012】
本発明の方法は、患者に由来する生物学的試料を、上記で列挙したGAS抗原のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくは8つすべて、またはその機能的同等物と接触させるステップを含みうる。
【0013】
患者に由来する生物学的試料を、GAS抗原のうちの2つと接触させる場合、該方法は、該試料を、配列番号1および2;配列番号1および3;配列番号1および4;配列番号1および5;配列番号2および3;配列番号2および4;配列番号2および5;配列番号3および4;配列番号3および5;配列番号4および5、またはこれらの機能的同等物と接触させるステップを含みうる。該方法はまた、該試料を、配列番号1および6;配列番号1および7;配列番号1および8;配列番号2および6;配列番号2および7;配列番号2および8;配列番号3および6;配列番号3および7;配列番号3および8;配列番号4および6;配列番号4および7;配列番号4および8;配列番号5および6;配列番号5および7;配列番号5および8;配列番号6および7;配列番号6および8、または配列番号7および8、またはこれらの機能的同等物と接触させるステップも含みうる。
【0014】
患者に由来する生物学的試料を、GAS抗原のうちの3つと接触させる場合、該方法は、該試料を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のGAS抗原のうちの3つによる任意の組合せと接触させるステップを含みうる。例えば、該方法は、該試料を、配列番号1、2、および3;配列番号1、3、および4;配列番号1、4、および5;配列番号2、3、および4;配列番号2、4、および5;配列番号3、4、および5、またはこれらの機能的同等物と接触させるステップを含みうる。
【0015】
患者に由来する生物学的試料を、GAS抗原のうちの4つと接触させる場合、該方法は、該試料を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のGAS抗原のうちの4つによる任意の組合せと接触させるステップを含みうる。例えば、該方法は、該試料を、配列番号1、2、3および4;配列番号2、3、4および5;配列番号1、3、4および5、またはこれらの機能的同等物と接触させるステップを含みうる。
【0016】
患者に由来する生物学的試料を、GAS抗原のうちの5つと接触させる場合、該方法は、該試料を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のGAS抗原のうちの5つによる任意の組合せと接触させるステップを含みうる。例えば、該方法は、該試料を、配列番号1、2、3、4、および5、またはこれらの機能的同等物と接触させるステップを含みうる。
【0017】
患者に由来する生物学的試料を、GAS抗原のうちの6つと接触させる場合、該方法は、該試料を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のGAS抗原のうちの6つによる任意の組合せと接触させるステップを含みうる。
【0018】
患者に由来する生物学的試料を、GAS抗原のうちの7つと接触させる場合、該方法は、該試料を、配列番号1、2、3、4、5、6および7;配列番号1、3、4、5、6、7および8;配列番号1、2、4、5、6,7および8;配列番号1、2、3、5、6、7および8;配列番号1、2、3、4、6,7および8;配列番号1、2、3、4、5、7および8;配列番号1、2、3、4、5,6および8;またはこれらの機能的同等物と接触させるステップを含みうる。
【0019】
代替的に、患者に由来する生物学的試料を、GAS抗原の8つすべて、すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、7、および8、またはこれらの機能的同等物と接触させることもできる。
【0020】
患者に由来する生物学的試料において、これらのGAS抗原のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくは8つすべて、またはこれらの機能的同等物に結合した抗体の反応性を、健常個体に由来する対照の生物学的試料中の、これらのGAS抗原に結合する抗体の反応性と比較する。健常個体に由来する対照の生物学的試料を、患者の生物学的試料と同じGAS抗原の組合せと接触させる。一般に、これらのGAS抗原の組合せに結合した抗体の平均の反応性は、健常個体に由来する対照の生物学的試料において既に決定されている。当技術分野では、抗体の反応性を評価するのに適する方法が公知であるが、以下ではこれらについてより詳細に記載する。
【0021】
抗体の検出:
上記で説明した本発明の方法はすべて、抗体の反応性の評価、すなわち、GAS抗原に結合した抗体の検出、およびこれらの抗体の力価の検出を含む。抗原に結合した抗体を検出する方法、および抗体力価を決定する方法は当業者に周知であり、任意のこのような方法を用いることができる。
【0022】
例えば、1つ以上のGAS抗原(または機能的同等物)を、以下に記載するアレイの表面など、表面上における既知の位置に固定化させることができる。固定化させた抗原は、該固定化された抗原と共に、該抗原に対する、該試料中に存在する任意の抗体の結合を可能とする条件下で、インキュベートすることができる。適切なインキュベーション期間は、約1時間でありうる。洗浄して結合しなかったいかなる抗体も除去した後で、該抗原に結合した抗体の検出は、該抗原に結合し、それを認識する実体を用いて達成することができる。
【0023】
例えば、上記で説明した方法のうちのいずれにおいても、GAS抗原に結合した任意の抗体の反応性を評価するステップは、生物学的試料およびGAS抗原を、標識した抗IgG抗体などの、標識した二次抗体と、該固定化されたGAS抗原に結合した、該生物学的試料中の任意の抗体に対する、該二次抗体の結合に適する条件下で、接触させるステップを含みうる。
【0024】
抗IgG抗体などの二次抗体は蛍光標識または酵素標識で標識することができ、それにより、該二次抗体の結合が、そしてかように、生物学的試料中のGAS抗原に対する抗体の存在が、該標識を検出することにより検出される。標識が蛍光標識である場合は、蛍光強度の比較を用いて、相対的な抗体反応性を評価し、これにより、対照の生物学的試料より低い抗体反応性を示す、特定の患者試料が存在するかどうかを決定することができる。バックグラウンドの蛍光強度は、約5,000であることを予測することができる。標準偏差を考慮に入れると、少なくとも15,000の蛍光強度が、GAS抗原に結合した抗体が試料中に存在することを示しうる。少なくとも30,000の蛍光強度は高い反応性を示すものとみなされ、そのことは、試料中でGAS抗原に結合した抗体が高力価であることを示す。したがって、本発明の一部の態様では、15,000〜30,000の間の蛍光強度が、RHDと関連する可能性がある、低い反応性を示しうる。
【0025】
上記で説明した方法は、以下により詳細に記載されるアレイなど、タンパク質アレイ上で実施することもでき、標準的なELISAまたはドットブロット技法を用いて実施することもできる。
【0026】
生物学的試料:
本発明の方法において調べうる生物学的試料は、GAS抗原に対する抗体を含有することが公知である任意の試料でありうる。適切な試料の例は、唾液試料、血液試料、または血清試料である。特に、試料は、血清試料でありうる。
【0027】
患者由来の生物学的試料は、ヒト患者に由来する。ヒト患者は、成人の場合もあり、約12〜約18歳の青年の場合もあり、12歳未満の小児の場合もある。患者は、移動性多発性関節炎、心臓炎、皮下結節、有縁性紅斑、シデナム舞踏病、発熱、関節痛、赤血球沈降速度またはC反応性タンパク質の上昇、白血球増多症、または心臓ブロックの特徴を示すECG所見を含めた、急性リウマチ性疾患の臨床症状を示しうる。患者は、進行中のGAS感染の証拠を示しうる。場合によって、患者は、進行中のGAS感染および急性リウマチ性疾患について無症候でありうる。
【0028】
対照の生物学的試料は、患者に由来する生物学的試料と同等の地理的位置出身の健常個体に由来しうる。
【0029】
本発明の方法は、in vitroで実施することができる。本発明の方法は、患者から生物学的試料を得るステップをさらに含みうる。
【0030】
タンパク質アレイ:
複数のGAS抗原に対する同時的な生物学的試料のスクリーニングを容易にするためには、本発明の方法において用いられるGAS抗原を、1つ以上のタンパク質アレイ上に提示することができる。例えば、各GAS抗原を個別のアレイ上に提示することもでき、単一のアレイにより、複数のGAS抗原を同時に提示することもできる。本発明のさらなる態様によれば、タンパク質アレイが提供される。これらのアレイは、上記で説明した方法のうちのいずれにおいて用いるのにも適する。
【0031】
本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも2つのGAS抗原、またはこれらの機能的同等物を含むタンパク質アレイを提供する。
【0032】
タンパク質アレイは、これらのGAS抗原のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくは8つすべて、またはこれらの機能的同等物を含みうる。
【0033】
アレイが、GAS抗原のうちの2つを含む場合、該アレイは、配列番号1および2;配列番号1および3;配列番号1および4;配列番号1および5;配列番号2および3;配列番号2および4;配列番号2および5;配列番号3および4;配列番号3および5;配列番号4および5のアミノ酸配列を含む抗原、またはこれらの機能的同等物を含みうる。代替的に、アレイは、配列番号1および6;配列番号1および7;配列番号1および8;配列番号2および6;配列番号2および7;配列番号2および8;配列番号3および6;配列番号3および7;配列番号3および8;配列番号4および6;配列番号4および7;配列番号4および8;配列番号5および6;配列番号5および7;配列番号5および8;配列番号6および7;配列番号6および8、または配列番号7および8のアミノ酸配列を含む抗原、またはこれらの機能的同等物も含みうる。
【0034】
アレイが、3つのGAS抗原を含む場合、該アレイは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、および8のGAS抗原のうちの3つによる任意の組合せを含みうる。例えば、アレイは、配列番号1、2、および3;配列番号1、3、および4;配列番号1、4、および5;配列番号2、3、および4;配列番号2、4、および5;配列番号3、4、および5のGAS抗原、またはこれらの機能的同等物を含みうる。
【0035】
アレイが、4つのGAS抗原を含む場合、該アレイは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、および8のGAS抗原のうちの4つによる任意の組合せを含みうる。例えば、アレイは、配列番号1、2、3および4;配列番号2、3、4および5;配列番号1、3、4および5のGAS抗原、またはこれらの機能的同等物を含みうる。
【0036】
アレイが、5つのGAS抗原を含む場合、該アレイは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、および8のGAS抗原のうちの5つによる任意の組合せを含みうる。例えば、アレイは、配列番号1、2、3、4、および5のGAS抗原、またはこれらの機能的同等物を含みうる。
【0037】
アレイが、6つのGAS抗原を含む場合、該アレイは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、および8のGAS抗原のうちの6つによる任意の組合せを含みうる。
【0038】
アレイが、7つのGAS抗原を含む場合、該アレイは、配列番号1、2、3、4、5、6および7;配列番号1、3、4、5、6,7および8;配列番号1、2、4、5、6、7および8;配列番号1、2、3、5、6、7および8;配列番号1、2、3、4、6、7および8;配列番号1、2、3、4、5、7および8;配列番号1、2、3、4、5、6および8のGAS抗原、またはこれらの機能的同等物を含みうる。
【0039】
代替的に、アレイは、GAS抗原の8つすべて、すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、7、および8、またはこれらの機能的同等物を含みうる。
【0040】
タンパク質アレイは、さらなるGAS抗原を含みうる。
【0041】
本発明の方法では、当技術分野において公知の任意の種類のタンパク質アレイを用いることができる。タンパク質アレイの作製については、Cretich,M.、Damin F.ら(Biomolecular Engineering 23, 77〜88 (2006))およびZhu,H & Snyder,M.(Current Opinion in Chemical Biology, 7:55〜63(2003))において記載されている。
【0042】
例えば、タンパク質アレイは、それに1つ以上の抗原が固定されるスライドガラスでありうる。その最も単純な形態において、アレイは、顕微鏡用のスライドガラスを、アミノシラン(Ansorge、Faulstich)によりコーティングし、抗原を含有する溶液を該スライドに添加し、乾燥させるだけで調製される、1つの抗原だけを提示するスライドガラスでありうる。抗原によりコーティングするための、アミノシランによりコーティングされたスライドは、Telechem社およびPierce社から購入することができる。
【0043】
代替的に、アレイは、複数の抗原を提示しうる。例えば、ニトロセルロースでコーティングしたスライドに、複数のGAS抗原をナノリットルずつスポットすることができる。このようなアレイは、各GAS抗原を多連(replicate)で提示しうる。このようなアレイ内における抗原スポットは、直径が約150μmであり、約0.35ngのタンパク質を含有しうる。
【0044】
他の種類のタンパク質アレイは、3Dゲルパッドおよびマイクロウェルアレイを包含する。当業者には明らかである通り、いまだ構想されてはいないが、将来的に考案される種類のタンパク質アレイは、多分、本発明に従って用いるのに適することが分かるであろう。
【0045】
本発明は、本発明によるタンパク質アレイと、GAS感染と関連するリウマチ性心疾患を有するか、またはGAS感染と関連するリウマチ性心疾患を発症するリスクがある患者の診断に該アレイを用いるための指示書を含むキットをさらに提供する。
【0046】
RHDを処置および予防するための方法および組成物
現在のところ、ARFを有すると診断されたすべての患者には、診断後少なくとも5年間にわたり、その後におけるGAS感染のリスクおよびRHDの発症を低減するために、抗生剤による予防法(一般には、ペニシリン)が推奨されている。どの患者にRHDのリスクがあり、どの患者にはRHDのリスクがないかを同定することにより、ARFを有すると診断された患者の医学的処置の調整が可能となる。
【0047】
本発明は、患者が、本発明の方法により、GAS感染と関連するRHDを患っているか、GAS感染と関連するRHDを発症するリスクが増大していると同定される場合、該患者を抗生剤で処置できるようにする。逆に、患者が、本発明の方法によりGAS感染と関連するRHDを発症するリスクが小さいと同定される場合、抗生剤処置は不要でありうる。
【0048】
本発明者らによる、健常個体に由来する血清が、上記で論じた、GAS抗原との高い反応性を示すことの認識は、これらのGAS抗原に対する抗体が、RHDの発症を予防するのに防御的な役割を果たしうることを示唆する。したがって、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはこれらの機能的同等物を含む組成物を提供する。本発明はまた、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはこれらの機能的同等物に特異的に結合する少なくとも1つの抗体を含む組成物も提供する。これらの組成物は、免疫原性組成物、例えば、ワクチン組成物でありうる。
【0049】
さらなる態様によれば、本発明が、GAS感染と関連するRHDを処置または予防する方法であって、GAS感染と関連するRHDの処置または予防を必要とする患者に、配列番号1、2、3、4、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはその機能的同等物を投与するステップを含む方法を提供する。本発明は、GAS感染と関連するRHDの処置または予防に用いられる、配列番号1、2、3、4、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはその機能的同等物をさらに提供する。本発明はまた、GAS感染と関連するRHDを処置または予防するための医薬品の製造における、配列番号1、2、3、4、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはその機能的同等物の使用も提供する。代替的に、これらのGAS抗原をコードする核酸分子も用いることができる。
【0050】
本発明はまた、GAS感染と関連するRHDを処置または予防する方法であって、GAS感染と関連するRHDの処置または予防を必要とする患者に、配列番号1、2、3、4、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはその機能的同等物に特異的に結合する少なくとも1つの抗体を投与するステップを含む方法も提供する。本発明は、GAS感染と関連するRHDを処置または予防するのに用いるための、配列番号1、2、3、4、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはその機能的同等物に特異的に結合する少なくとも1つの抗体をさらに提供する。本発明はまた、GAS感染と関連するRHDを処置または予防するための医薬品の製造における、配列番号1、2、3、4、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはその機能的同等物に特異的に結合する少なくとも1つの抗体の使用も提供する。
【0051】
本発明の抗体は、1μM、100nM、10nM、1nM、100pM以上のアフィニティーでGAS抗原に特異的に結合することが典型的である。「抗体」という用語は、完全な免疫グロブリン分子も、ポリペプチドに結合することが可能なそれらの断片も包含する。これらには、ハイブリッド(キメラ)抗体分子[1、2];F(ab’)2断片およびFab断片およびFv分子;非共有結合によるヘテロ二量体[3、4];単鎖Fv分子(sFv)[5];二量体抗体断片構築物および三量体抗体断片構築物;ミニボディー[6、7];ヒト化抗体分子[8〜10];ならびにこのような分子から得られる任意の機能的断片のほか、ファージディスプレイなど、従来にない工程により得られる抗体が含まれる。一部の実施形態では、抗体が、モノクローナル抗体である。当技術分野では、モノクローナル抗体を得る方法が周知である。一部の実施形態では、抗体がヒト化抗体または完全ヒト抗体である。
【0052】
本発明の処置組成物および処置法は、上記で論じたGAS抗原のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つすべてを用いる場合もあり、これらのGAS抗原のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つすべてに特異的に結合する抗体を用いる場合もある。GAS抗原の組合せ、およびこれらの抗原に特異的に結合する抗体を用いることができる。
【0053】
本発明のこれらの態様による処置組成物および処置法において用いうるGAS抗原の組合せの例には、配列番号1および2;配列番号1および3;配列番号1および4;配列番号1および5;配列番号2および3;配列番号2および4;配列番号2および5;配列番号3および4;配列番号3および5;配列番号4および5;配列番号1および6;配列番号1および7;配列番号1および8;配列番号2および6;配列番号2および7;配列番号2および8;配列番号3および6;配列番号3および7;配列番号3および8;配列番号4および6;配列番号4および7;配列番号4および8;配列番号5および6;配列番号5および7;配列番号5および8;配列番号6および7;配列番号6および8、または配列番号7および8;配列番号1、2および3;配列番号1、3および4;配列番号1、4および5;配列番号2、3および4;配列番号2、4および5;配列番号3、4および5;配列番号1、2、3および4;配列番号2、3、4および5;配列番号1、3、4および5;配列番号1、2、3、4および5;配列番号1、2、3、4、5、6、および7;配列番号1、3、4、5、6、7および8;配列番号1、2、4、5、6、7および8;配列番号1、2、3、5、6、7および8;配列番号1、2、3、4、6、7および8;配列番号1、2、3、4、5、7および8;配列番号1、2、3、4、5、6および8;またはこれらの機能的同等物が含まれる。これらのGAS抗原の組合せに結合する抗体もまた用いることができる。
【0054】
上記で論じた組成物および方法は、GAS感染一般を処置および予防するのに有用であり得るほか、GAS感染と関連するRHDを処置および予防するのにも有用でありうる。
【0055】
RHDを処置および予防するための組成物の処方
上記で詳述した通り、本発明の組成物は、ワクチンとしても有用でありうる。本発明によるワクチンは、予防的な(すなわち、感染を予防するため)場合もあり、治療的な(すなわち、感染を処置するため)場合もあるが、予防的な場合が典型的である。
【0056】
したがって、組成物は、薬学的に許容されうる。組成物は通常、抗原に加えた成分を包含する、例えば、組成物は、1つ以上の薬学的なキャリア(複数可)および/または賦形剤(複数可)を包含することが典型的である。
【0057】
組成物は一般に、水性形態でヒトに投与される。しかし、投与前に、組成物を非水性形態とすることもできる。例えば、あるワクチンは、水性形態で製造され、次いでまた、水性形態で充填および分配および投与もなされるが、他のワクチンは、製造の過程で凍結乾燥され、使用の時点で水性形態へと復元される。したがって、本発明の組成物は、凍結乾燥製剤など、乾燥製剤でありうる。
【0058】
組成物は、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの防腐剤を包含しうる。しかし、ワクチンは、水銀物質を実質的に含まない(すなわち、水銀物質が5μg/ml未満である)、例えば、チオメルサールを含まないものとすることが好ましい。水銀を含有しないワクチンがより典型的である。防腐剤を含まないワクチンが、特に好ましい。
【0059】
熱安定性を改善するために、組成物は、温度保護剤を包含しうる。このような薬剤のさらなる詳細については、以下に示す。
【0060】
張度を制御するためには、生理学的塩(例えば、ナトリウム塩)が含まれることが典型的である。塩化ナトリウム(NaCl)が一般的に使用され、これは、1mg/ml〜20mg/mlの間(例えば、約10±2mg/mlのNaCl)で存在し得る。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、無水リン酸二ナトリウム(disodium phosphate dehydrate)、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0061】
組成物は、一般的には、200mOsm/kg〜400mOsm/kgの間、より頻繁には、240mOsm/kg〜360mOsm/kgの間の重量オスモル濃度を持つであろう。さらに典型的には、290mOsm/kg〜310mOsm/kgの範囲にあるであろう。
【0062】
組成物には、1種類以上の種類のバッファーが含まれ得る。典型的なバッファーとしては、リン酸塩バッファー、Trisバッファー、ホウ酸塩バッファー、コハク酸塩バッファー、ヒスチジンバッファー(特に、水酸化アルミニウムアジュバントを含むもの)、またはクエン酸塩バッファーが挙げられる。バッファーは、典型的には、5mM〜20mMの範囲で含まれるであろう。
【0063】
組成物のpHは、一般的には、5.0〜8.1の間、より典型的には、6.0〜8.0の間、例えば、6.5〜7.5の間、または7.0〜7.8の間であろう。
【0064】
組成物は、典型的には滅菌されている。組成物は典型的には非発熱性でもある。例えば、1用量あたり<1EU(内毒素単位、標準的な基準)が含まれ、例えば、1用量あたり<0.1EUが含まれる。組成物にはしばしばグルテンが含まれない。
【0065】
組成物には、1回の免疫化のための材料が含まれる場合があり、また、複数回の免疫化のための材料が含まれる場合もある(すなわち、「複数用量の」キット)。複数用量の構成においては、保存剤が含められることが典型的である。複数用量の組成物に保存剤を含めることの代わりに(またはそれに加えて)、組成物は、物質を取り出すための無菌のアダプターを持つ容器の中に入れられる場合もある。
【0066】
ヒト用のワクチンは、典型的には、約0.5mlの投薬体積で投与されるが、その半分の用量(すなわち、約0.25ml)が子供に投与される場合もある。
【0067】
本発明の組成物にはまた、1種類以上の種類の免疫調節因子が含まれる場合もある。免疫調節因子の1つ以上に、しばしば1つ以上のアジュバントが含まれる。アジュバントには、以下でさらに議論されるTH1アジュバントおよび/またはTH2アジュバントが含まれ得る。
【0068】
本発明の組成物において使用することができるアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
A.無機物を含む組成物
本発明においてアジュバントとしての使用に適している無機物を含む組成物としては、無機塩、例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩(またはそれらの混合物)が挙げられる。カルシウム塩としては、リン酸カルシウム(例えば、参考文献11の中で開示されている「CAP」粒子)が挙げられる。アルミニウム塩としては、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、これらの塩は任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、無定形など)をとる。これらの塩への吸着が頻繁に使用される。無機物を含む組成物はまた、金属塩の粒子として処方される場合がある[12]。
【0069】
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして公知のアジュバントが使用され得る。これらの名称は便宜上であるが、便宜のためだけに使用される。なぜなら、これは、存在する実際の化合物の正確な記載ではないからである(例えば、参考文献13の第9章を参照のこと)。本発明では、アジュバントとして一般的に使用されている、「水酸化物」アジュバントまたは「リン酸塩」アジュバントの任意のものを使用することができる。「水酸化アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的には、オキシ水酸化アルミニウム塩であり、これは通常は、少なくとも一部が結晶である。「リン酸アルミニウム」として知られているアジュバントは、典型的には、ヒドロキシリン酸アルミニウムであり、多くの場合には、少量の硫酸塩(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)も含まれる。これらは沈殿によって得ることができ、沈殿の間の反応条件と濃度が、塩の中のホスフェートでのヒドロキシルの置換の程度に影響を及ぼす。
【0070】
繊維状の形態(例えば、透過型電子顕微鏡写真で見られるようなもの)が、水酸化アルミニウムアジュバントについての典型である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的には、約11であり、すなわち、アジュバント自体は、生理学的pHで正の表面電荷を有する。水酸化アルミニウムアジュバントについては、pH7.4で、1mgのAl+++あたり1.8mg〜2.6mgの間のタンパク質の吸着能力が報告されている。
【0071】
リン酸アルミニウムアジュバントは、一般的には、0.3〜1.2の間、例えば、0.8〜1.2の間、典型的には、0.95±0.1のPO/Alモル比を有する。リン酸アルミニウムは、特に、ヒドロキシリン酸塩については、一般的には無定形であろう。典型的なアジュバントは、0.84〜0.92の間のPO/Alモル比を有する、0.6mgのAl3+/mlで含まれる無定形のヒドロキシリン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは、一般的には粒子状であろう(例えば、透過型電子顕微鏡写真において見られる平板様の形態)。いずれかの抗原吸着後の粒子についての典型的な直径は、0.5μm〜20μmの範囲(例えば、約5μm〜10μm)である。リン酸アルミニウムアジュバントについては、pH7.4で、1mgのAl+++あたり、0.7mg〜1.5mgのタンパク質の吸着能力が報告されている。
【0072】
リン酸アルミニウムの電荷ゼロ点(PZC)は、ホスフェートでのヒドロキシルの置換の程度と逆の関係にあり、この置換の程度は、沈殿による塩の調製に使用される反応条件と反応物の濃度に応じて変わり得る。PZCはまた、溶液中の遊離のホスフェートイオンの濃度を変えることによって(より多くのホスフェート=より酸性のPZC)、またはバッファー(例えば、ヒスチジンバッファー)を加えることによって(PZCをより塩基性にする)も変化させられる。本発明にしたがって使用されるリン酸アルミニウムは、一般的には、4.0〜7.0の間、例えば、5.0〜6.5の間、例えば、約5.7のPZCを有するであろう。
【0073】
本発明の組成物を調製するために使用されるアルミニウム塩の懸濁液には、バッファー(例えば、リン酸塩バッファー、またはヒスチジンバッファー、またはTrisバッファー)が含まれ得るが、これは、必ずしもそうである必要はない。懸濁液は、しばしば滅菌されており、発熱物質が含まれない。懸濁液には、遊離の水性のホスフェートイオンが含まれる場合があり、例えば、1.0mM〜20mMの間、例えば、5mM〜15mMの間、例えば、約10mMの濃度で存在する。懸濁液にはまた、塩化ナトリウムも含まれる場合がある。
【0074】
本発明では、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの両方の混合物を使用することができる。この場合、リン酸アルミニウムは水酸化物よりも多く存在し得、例えば、少なくとも2:1の重量比、例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などで存在し得る。
【0075】
哺乳動物に投与される組成物中でのAl+++の濃度は、典型的には、10mg/ml未満であり、例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどである。好ましい範囲は、0.3mg/ml〜1mg/mlの間である。最大0.85mg/用量が好ましい。
【0076】
特に、H. influenzaeの糖抗原を包含する組成物では、リン酸アルミニウムが特に好ましく、典型的なアジュバントは、Al3+を0.6mg/mlで包含し、PO/Alのモル比が0.84〜0.92である、アモルファスのアルミニウムヒドロキシホスフェートである。低用量のリン酸アルミニウム、例えば、投与1回当たり1コンジュゲート当たり50〜100μgのAl3+による吸着を用いることができる。組成物中に1つより多いコンジュゲートが存在する場合、すべてのコンジュゲートを吸着させる必要はない。
【0077】
B.油エマルジョン
本発明においてアジュバントとしての使用に適している油エマルジョン組成物としては、スクアレン−水エマルジョン、例えば、MF59[参考文献13の第10章;参考文献14もまた参照のこと](マイクロフルイダイザーを使用して1ミクロン未満の粒子になるように処方された、5%のスクアレン、0.5%のTween 80、および0.5%のSpan 85)が挙げられる。完全なフロイトのアジュバント(CFA)および不完全なフロイトのアジュバント(IFA)もまた使用される場合がある。
【0078】
様々な水中油型エマルジョンアジュバントが公知であり、これらには、典型的には、少なくとも1種類の油、および少なくとも1種類の界面活性剤が含まれ、この油(単数または複数)および界面活性剤(単数または複数)は、生体分解性(代謝可能)であり、かつ生体適合性である。エマルジョンの中の油滴は、一般的には、5μm未満の直径であり、理想的には1ミクロン未満の直径であり、これらの小さい大きさは、安定なエマルジョンを提供するためのマイクロフルイダイザーを用いて得ることができる。220nm未満の大きさの液滴が好ましい。なぜなら、これらは、濾過滅菌を行うことができるからである。
【0079】
エマルジョンには、油、例えば、動物(例えば、魚)を供給源とするものまたは植物を供給源とするものが含まれ得る。植物油についての供給源としては、堅果、種子および穀粒が挙げられる。ピーナッツ油、大豆油、ココナッツ油、およびオリーブ油が、最も一般的に入手可能な堅果油の例である。例えば、ホホバ豆から得られるホホバ油を使用することができる。種子油としては、サフラワー油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油などが挙げられる。穀粒の群において、コーン油が最も容易に入手可能であるが、小麦、オート麦、ライ麦、米、テフ、ライ小麦などのようなその他の穀類の穀粒の油も用いてよい。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6個〜10個の炭素の脂肪酸エステルは、種子油の中には自然界においては存在しないが、堅果油および種子油由来の適切な出発材料の加水分解、分離、およびエステル化によって調製することができる。哺乳動物の乳汁由来の脂肪および油は代謝可能であり、したがって、本発明の実施において使用することができる。動物供給源から純粋な油を得るために必要な、分離、精製、鹸化、および他の手段についての手順は当該分野で周知である。ほとんどの魚には、容易に回収することができる代謝可能な油が含まれている。例えば、タラの肝油、サメの肝油、およびクジラの油(例えば、鯨ろう)が、本明細書中で使用することができる魚の油のいくつかの例である。多数の分枝鎖の油が、5個の炭素のイソプレン単位で生化学的に合成され、これは、一般的には、テルペノイドと呼ばれる。サメの肝油には、スクアレンとして知られている、分枝不飽和テルペノイドである、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン(これは、本明細書中では特に好ましい)が含まれる。スクアラン(スクアレンの飽和アナログ)もまた好ましい油である。スクアレンとスクアランを含む魚の油は、商業的な供給業者から容易に入手することができ、また、当該分野で公知の方法によって得ることもできる。他の好ましい油はトコフェロールである(下記を参照のこと)。油の混合物を使用することができる。
【0080】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、例えば、少なくとも15、例えば、少なくとも16のHLBを持つ。本発明は、以下を含むがこれらに限定されない界面活性剤とともに使用することができる:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweensと呼ばれる)、特に、ポリソルベート20およびポリソルベート80;DOWFAX(商標)の商標名で販売されている、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、および/またはブチレンオキサイド(BO)のコポリマー、例えば、直鎖のEO/POブロックコポリマー;オクトキシノール(これは、エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の繰り返し回数が様々であり得、オクトキシノール−9(Triton X−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン);ノニルフェノールエトキシレート、例えば、Tergitol(商標)NPシリーズ;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知である)、例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30);ならびに、ソルビタンエステル(SPANとして一般的に知られている)、例えば、ソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレート。非イオン性界面活性剤が好ましい。エマルジョンを含めるために好ましい界面活性剤は、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span 85(ソルビタントリオレエート)、レシチン、およびTriton X−100である。
【0081】
界面活性剤の混合物、例えば、Tween 80/Span 85混合物を使用することができる。ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80))とオクトキシノール(例えば、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100))との組み合わせもまた適している。別の有用な組み合わせには、ラウレス9とポリオキシエチレンソルビタンエステル、および/またはオクトキシノールが含まれる。
【0082】
界面活性剤(重量%)の好ましい量は以下である:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween 80)0.01%〜1%、特に、約0.1%;オクチル−もしくはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100、もしくはTritonシリーズの他の界面活性剤)0.001%〜0.1%、特に、0.005%〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス9)0.1%〜20%、例えば、0.1%〜10%、および特に、0.1%〜1%、または約0.5%。
【0083】
好ましいエマルジョンアジュバントは、<1μmの平均の液滴の大きさを持ち、例えば、≦750nm、≦500nm、≦400nm、≦300nm、≦250nm、≦220nm、≦200nm、またはそれ未満である。これらの液滴の大きさは、マイクロフルイダイゼーションのような技術によって簡単に得ることができる。
【0084】
本発明に有用な具体的な水中油型エマルジョンアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・スクアレン、Tween 80、およびSpan 85の1ミクロン未満のエマルジョン。このエマルジョンの組成は、体積で、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80、および約0.5%のSpan 85であり得る。重量では、これらの比率は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80、および0.48%のSpan 85になる。このアジュバントは、参考文献18の第10章および参考文献19の第12章にさらに詳細に記載されているように、「MF59」として知られている[15〜17]。MF59エマルジョンには、クエン酸イオン、例えば、10mMのクエン酸ナトリウムバッファーが含まれることが有利である。
【0085】
・スクアレン、トコフェロール、およびポリソルベート80(Tween 80)のエマルジョン。エマルジョンには、リン酸緩衝化生理食塩水が含まれ得る。これにはまた、Span 85(例えば、1%)および/またはレシチンも含まれ得る。これらのエマルジョンは、2%〜10%のスクアレン、2%〜10%のトコフェロール、および0.3%〜3%のTween 80が含まれ得、そしてスクアレン:トコフェロールの重量比は、典型的には、≦1である。なぜなら、これによってより安定なエマルジョンが提供されるからである。スクアレンとTween 80は、約5:2の体積比または約11:5の重量比で存在し得る。1つのそのようなエマルジョンは、PBS中にTween 80を溶解させて、2%の溶液とし、その後、90mlのこの溶液を(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlのスクアレン)の混合物と混合し、その後、この混合物をマイクロフルイダイズすることによって作製することができる。得られるエマルジョンは、1ミクロン未満の油滴を有し得、例えば、100nm〜250nmの間、好ましくは、約180nmの平均直径を有し得る。エマルジョンはまた、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(3d−MPL)も包含しうる。この種の別の有用なエマルジョンは、ヒトへの投与1回当たり、0.5〜10mgのスクアレン、0.5〜11mgのトコフェロール、および0.1〜4mgのポリソルベート80を含みうる[20]。
【0086】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton界面活性剤(例えば、Triton X−100)のエマルジョン。このエマルジョンにはまた、3d−MPL(下記を参照のこと)もまた含まれ得る。このエマルジョンには、リン酸塩バッファーが含まれる場合がある。
【0087】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton界面活性剤(例えば、Triton X−100)、およびトコフェロール(例えば、α−トコフェロールスクシネート)を含むエマルジョン。エマルジョンには、これらの3種類の成分が、約75:11:10の質量比(例えば、750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100、および100μg/mlのα−トコフェロールスクシネート)が含まれ得、そしてこれらの濃度には、抗原に由来するこれらの成分の任意の寄与が含まれるはずである。このエマルジョンにはまた、スクアレンも含まれる場合がある。このエマルジョンにはまた、3d−MPLも含まれ得る(下記を参照のこと)。水相には、リン酸塩バッファーが含まれ得る。
【0088】
・スクアラン、ポリソルベート80、およびポロキサマー401(「Pluronic(商標)L121」)のエマルジョン。このエマルジョンは、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)の中に処方することができる。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドについての有用な送達媒体であり、「SAF−1」アジュバントにおいてはスレオニル−MDPとともに使用されている[21](0.05%〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121、および0.2%のポリソルベート80)。これはまた、「AF」アジュバントと同様に、Thr−MDPを伴わずに使用することもできる[22](5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121、および0.2%のポリソルベート80)。マイクロフルイダイゼーションが好ましい。
【0089】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)、および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルまたはマンニドエステル、例えば、ソルビタンモノオレエートまたは「Span 80」)を含むエマルジョン。このエマルジョンは、一般的に熱可逆性であり、そして/または、200nm未満の大きさを持つ油滴を少なくとも90%(体積で)含む[23]。このエマルジョンにはまた、アルジトール;凍結防止剤(例えば、糖、例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロース);および/またはアルキルポリグリコシドの1つ以上が含まれ得る。このエマルジョンは、TLR4アゴニストを含み得る[24]。そのようなエマルジョンは凍結乾燥させられ得る。
【0090】
・スクアレン、ポロキサマー105、およびAbil−Careのエマルジョン[25]。アジュバント添加(adjuvanted)ワクチン中でのこれらの成分の最終濃度(重量)は、5%のスクアレン、4%のポロキサマー105(プルロニックポリオール(pluronic polyol))、および2%のAbil−Care 85(Bis−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16ジメチコン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)である。
【0091】
・0.5%〜50%の油、0.1%〜10%のリン脂質、および0.05%〜5%の非イオン性界面活性剤を含むエマルジョン。参考文献26に記載されているように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、およびカルジオリピンである。1ミクロン未満の液滴の大きさが有利である。
【0092】
・代謝不可能な油(例えば、軽鉱油(light mineral oil))および少なくとも1種類の界面活性剤(例えば、レシチン、Tween 80、またはSpan
80)の1ミクロン未満の水中油型エマルジョン。添加物,例えば、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−脂質親和性結合体(例えば、参考文献27に記載されている、グルクロン酸のカルボキシル基を介するデスアシルサポニンへの脂肪族アミンの付加によって得られるGPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド、および/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンが含まれ得る。
【0093】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)とステロール(例えば、コレステロール)がへリックスミセルとして会合しているエマルジョン[28]。
【0094】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[29]。
【0095】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[29]。
【0096】
いくつかの実施形態では、エマルジョンは、送達時に、即座に抗原と混合することができ、したがって、アジュバントと抗原は、使用時の最終的な処方の準備として、パッケージされたワクチンまたは分配されたワクチンの中に別々に保たれ得る。他の実施形態では、エマルジョンは、製造の際に抗原と混合され、したがって、組成物は、液体のアジュバント添加された形態でパッケージされる。抗原は、一般的には、ワクチンが2種類の液体を混合することによって最終的に調製されるように、水性の形態であろう。混合される2種類の液体の体積比は様々であり得る(例えば、5:1〜1:5の間)が、一般的には、約1:1である。成分の濃度が特定のエマルジョンについての上記の記載の中にある場合には、これらの濃度は、典型的には、未希釈の組成物についての濃度であり、したがって、抗原溶液との混合後の濃度は下がるであろう。
【0097】
組成物にトコフェロールが含まれる場合は、α、β、γ、δ、ε、またはζのいずれのトコフェロールも使用することができるが、α−トコフェロールが好ましい。トコフェロールは、いくつかの形態(例えば、様々な塩および/または異性体)をとることができる。塩としては、有機塩(例えば、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩など)が挙げられる。D−α−トコフェロールおよびDL−α−トコフェロールのいずれを使用することもできる。トコフェロールは、高齢のヒト(例えば、60歳以上)に使用されるワクチンに含められることが有利である。なぜなら、ビタミンEが、この患者のグループにおいて免疫応答に対してポジティブな影響を有することが報告されているからである[30]。これらはまた、エマルジョンの安定化を助けることができる、抗酸化特性も持つ[31]。好ましいα−トコフェロールは、DL−α−トコフェロールであり、そしてこのトコフェロールの好ましい塩はコハク酸塩である。コハク酸塩は、インビボでTNF関連リガンドと協働することが明らかにされている。
【0098】
C.サポニン処方物[参考文献13の第22章]
サポニン処方物もまた、本発明においてアジュバントとして使用することができる。サポニンは、多種多様な植物種の樹皮、葉、茎、根、およびさらには花でも見られる、ステロールグリコシドとトリテルペノイドグリコシドの不均質なグループである。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。Smilax ornata(サルサプリラ(sarsaprilla))、Gypsophilla paniculata(ブライダルヴェール(brides veil))、およびSaponaria officianalis(サボンソウ(soap root))由来のサポニンはまた、商業的に入手することもできる。サポニンアジュバント処方物には、精製された処方物(例えば、QS21)、ならびに、脂質処方物(例えば、ISCOM)が含まれる。QS21は、Stimulon(商標)として販売されている。
【0099】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを使用して精製されている。QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cを含む、これらの技術を使用した特異的な精製された画分が同定されている。一部の場合において、サポニンはQS21である。QS21の生産方法は、参考文献32に開示されている。サポニン処方物にはまた、コレステロールのようなステロールも含まれ得る[33]。
【0100】
サポニンとコレステロールの組み合わせを、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる特有の粒子を形成させるために使用することができる[参考文献13の第23章]。ISCOMにはまた、典型的には、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)も含まれる。任意の公知のサポニンをISCOMの中で使用することができる。一部の実施形態において、ISCOMには、QuilA、QHA、およびQHCの1つ以上が含まれる。ISCOMについては、参考文献33〜35の中でさらに記載されている。状況に応じて、ISCOMSには、追加の界面活性剤は含まれない場合がある[36]。
【0101】
サポニン系のアジュバントの開発についての概要は、参考文献37および38の中で見ることができる。
【0102】
D.ヴィロソームおよびウイルス様粒子
ヴィロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においては、アジュバントとして使用することができる。これらの構造には、一般的には、状況に応じてリン脂質と組み合わされたか、またはリン脂質と一緒に処方された、ウイルスに由来する1種類以上の種類のタンパク質が含まれる。これらは、一般的には、非病原性、非複製性であり、一般的には、天然のウイルスゲノムは全く含まれない。ウイルスタンパク質は、組み換えによって生産することができ、また、完全なウイルスから単離することもできる。ヴィロソームまたはVLPにおける使用に適しているこれらのウイルスタンパク質としては、以下に由来するタンパク質が挙げられる:インフルエンザウイルス(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアタンパク質またはキャプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(例えば、外被タンパク質)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)。VLPは、参考文献39〜44の中でさらに議論されている。ヴィロソームは、例えば、参考文献45の中でさらに議論されている。
【0103】
E.細菌誘導体または微生物誘導体
本発明での使用に適しているアジュバントとしては、細菌誘導体または微生物誘導体、例えば、腸内細菌のリポ多糖体(LPS)の非毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチド、およびADP−リボシル化毒素、ならびにそれらの無毒化誘導体が挙げられる。
【0104】
LPSの非毒性誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3 de−O−acylated monophosphoryl lipid A)の、4、5、または6のアシル化された鎖を有するものの混合物である。3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小さい粒子」の形態は、参考文献46に開示されている。そのような3dMPLの「小さい粒子」は、0.22μmの膜を通して濾過滅菌するためには十分に小さい[46]。他の非毒性LPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣物、例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529)が挙げられる[47、48]。
【0105】
リピドA誘導体には、Escherichia coli由来のリピドAの誘導体、例えば、OM−174が含まれる。OM−174は、例えば、参考文献49および50に記載されている。
【0106】
本発明においてアジュバントとしての使用に適している免疫刺激オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列(グアノシンに結合させられたホスフェートによって連結された非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)が挙げられる。二本鎖RNA、およびパリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0107】
CpG’には、ホスホロチオエート修飾のようなヌクレオチドの修飾/アナログが含まれ得、そしてこれは、二本鎖であってもまた一本鎖であってもよい。参考文献51、52、および53には、可能なアナログでの置換、例えば、グアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでの置換が開示されている。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献54〜59の中でさらに議論されている。
【0108】
CpG配列は、TLR9(例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTT)に特異的であり得る[60]。CpG配列は、CpG−A ODNのように、Th1免疫応答を誘導することについて特異的である場合があり、また、CpG−B ODNのように、B細胞応答を誘導することについてより特異的である場合もある。CpG−A ODNとCpG−B ODNは、参考文献61〜63で議論されている。一部の実施形態において、CpGはCpG−A ODNである。
【0109】
他の実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識のために利用しやすいように構築される。状況に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列を、「イムノマー」を形成させるために、それらの3’末端に結合させることができる。例えば、参考文献60、および64〜66を参照のこと。
【0110】
有用なCpGアジュバントはCpG7909であり、これは、ProMune(商標)(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても公知である。別のものはCpG1826である。CpG配列を使用する代わりに、またはそれに加えて、TpG配列を使用することができ[67]、そしてこれらのオリゴヌクレオチドには、メチル化されていないCpGモチーフは含まれない場合がある。免疫刺激性オリゴヌクレオチドには、ピリミジンが多く含まれる場合がある。例えば、これには、2つ以上の連続するチミジンヌクレオチド(例えば、参考文献67に開示されているように、TTTT)が含まれ得、そして/またはこれは、>25%のチミジン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)を含むヌクレオチド組成を持ち得る。例えば、これには、2つ以上の連続するシトシンヌクレオチド(例えば、参考文献67に開示されているように、CCCC)が含まれ得、そして/またはこれは、>25%のシトシン(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)を含むヌクレオチド組成を持ち得る。これらのオリゴヌクレオチドには、メチル化されていないCpGモチーフは含まれない場合がある。免疫刺激オリゴヌクレオチドには、典型的には、少なくとも20個のヌクレオチドが含まれるであろう。これらには、100個未満のヌクレオチドが含まれ得る。
【0111】
免疫刺激オリゴヌクレオチドに基づく特に有用なアジュバントは、IC−31(商標)として知られている[68]。したがって、本発明とともに使用されるアジュバントには、以下の混合物が含まれ得る:(i)少なくとも1つの(および好ましくは、複数の)CpIモチーフ(すなわち、ジヌクレオチドを形成させるためにイノシンに連結させられたシトシン)を含むオリゴヌクレオチド(例えば、15ヌクレオチド〜40ヌクレオチドの間)、ならびに、(ii)少なくとも1つの(および好ましくは、複数の)Lys−Arg−Lysトリペプチド配列(単数または複数)を含むオリゴペプチド(例えば、5アミノ酸〜20アミノ酸の間)のようなポリカチオン性ポリマー。オリゴヌクレオチドは、26マーの配列5’−(IC)13−3’(配列番号427)を含むデオキシヌクレオチドであり得る。ポリカチオン性ポリマーは、11マーのアミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号426)を含むペプチドであり得る。オリゴヌクレオチドおよびポリマーは、例えば、参考文献69および70で開示されている複合体を形成しうる。
【0112】
細菌のADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体を、本発明においてアジュバントとして使用することができる。一部の実施形態において、このタンパク質は、E.coli(E.coli熱不安定性腸毒素「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)に由来する。無毒化されたADP−リボシル化毒素の粘膜アジュバントとしての使用は、参考文献71に記載されており、そして非経口アジュバントとしての使用は参考文献72に記載されている。毒素または類毒素は、典型的にはホロ毒素の形態であり、これには、AサブユニットとBサブユニットの両方が含まれる。一部の実施形態において、Aサブユニットには、無毒化変異が含まれ、しばしばBサブユニットは変異していない。一部の実施形態において、アジュバントは、無毒化されたLT変異体、例えば、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192である。ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)のアジュバントとしての使用は、参考文献73〜80の中で見ることができる。有用なCT変異体は、CT−E29Hである[81]。アミノ酸の置換についての数字での言及は、典型的には、その全体が引用により具体的に本明細書中に組み入れられる、参考文献82に示されるADP−リボシル化毒素のAサブユニットおよびBサブユニットのアラインメントに基づく。
【0113】
F.ヒトの免疫調節因子
本発明においてアジュバントとしての使用に適しているヒトの免疫調節因子としては、サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[83]など)[84]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。好ましい免疫調節因子はIL−12である。
【0114】
G.生体接着剤および粘膜接着剤
生体接着剤および粘膜接着剤もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。適切な生体接着剤としては、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア[85]、または粘膜接着剤(例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカライド、およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体)が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る[86]。
【0115】
H.マイクロ粒子
マイクロ粒子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。生体分解性であり、かつ非毒性である材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)とともに形成させられるマイクロ粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、一部の実施形態において、直径約200nm〜約30μm、例えば直径約500nm〜約10μmの粒子)が好ましく、状況に応じて、負に荷電した表面を持つように(例えば、SDSで)処理されるか、または正に荷電した表面を持つように(例えば、陽イオン性界面活性剤(例えば、CTAB)で)処理される。
【0116】
I.リポソーム(参考文献13の第13章および第14章)
アジュバントとしての使用に適しているリポソーム処方物の例は、参考文献87〜89に記載されている。
【0117】
J.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルの処方物
本発明での使用に適しているアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる[90]。そのような処方物としては、さらに、オクトキシノールと組み合わせられたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[91]、ならびに少なくとも一種のさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせられたポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤またはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤[92]が挙げられる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステアリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン(polyoxytheylene)−8−ステアリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0118】
K.ホスファゼン
例えば、参考文献93および94に記載されているホスファゼン{例えば、ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」)}を使用することができる。
【0119】
L.ムラミルペプチド
本発明においてアジュバントとしての使用に適しているムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0120】
M.イミダゾキノロン化合物
本発明においてアジュバントとしての使用に適しているイミダゾキノロン化合物の例としては、イミキモド(Imiquimod)(「R−837」)[95、96]、レシキモド(Resiquimod)(「R−848」)[97]、およびそれらのアナログ、ならびにそれらの塩(例えば、塩酸塩)が挙げられる。免疫刺激性のイミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、参考文献98〜102の中で見ることができる。
【0121】
N.置換された尿素
アジュバントとして有用な置換された尿素としては、「ER 803058」、「ER
803732」、「ER 804053」、「ER 804058」、「ER 804059」、「ER 804442」、「ER 804680」、「ER 804764」、「ER 803022」、または「ER 804057」のような、参考文献103において定義されているような、式I、II、またはIIIの化合物、あるいはそれらの塩が挙げられ:
【0122】
【化1】

例えば、以下である:
【0123】
【化2】

O.さらなるアジュバント
本発明とともに使用することができるさらなるアジュバントとしては、以下が挙げられる:
・アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体、例えば、RC−529[104、105]。
【0124】
・参考文献106の中で開示されているもののような、チオセミカルバゾン化合物。活性化合物を処方する、製造する、およびスクリーニングする方法もまた、参考文献106の中で記載されている。チオセミカルバゾンは、サイトカイン(例えば、TNF−α)の生産のためのヒト末梢血単核細胞の刺激に特に有効である。
【0125】
・参考文献107に開示されているもののような、トリプタントリン化合物。活性化合物を処方する、製造する、およびスクリーニングする方法もまた、参考文献107の中で記載されている。チオセミカルバゾンは、サイトカイン(例えば、TNF−α)の生産のためのヒト末梢血単核細胞の刺激に特に有効である。
【0126】
・以下のようなヌクレオシドアナログ:(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0127】
【化3】

およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献108〜111に開示されている化合物ロキソリビン(Loxoribine)(7−アリル−8−オキソグアノシン)[111]。
【0128】
・以下を含む、参考文献112に開示されている化合物:アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[113、114]、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン化合物、ピロール化合物[115]、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン化合物およびベンザゾール化合物[116]。
【0129】
・ホスフェートを含む非環式骨格に対して連結させられた脂質を含む化合物(例えば、TLR4アンタゴニストE5564)[117、118]:
・ポリオキシドニウムポリマー[119、120]または他のN−酸化ポリエチレンピペラジン誘導体。
【0130】
・メチルイノシン5’−モノホスフェート(「MIMP」)[121]。
【0131】
・ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物[122]あるいはその薬学的に許容される塩または誘導体、例えば、以下の式を持つもの:
【0132】
【化4】

式中、Rは、水素、直鎖または分枝鎖である、非置換または置換の、飽和したまたは不飽和のアシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含む群より選択される。例として以下が挙げられるが、これらに限定されない:カスアリン(casuarine)、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリンなど。
【0133】
・CD1dリガンド、例えば、α−グリコシルセラミド[123〜130](例えば、α−ガラクトシルセラミド)、フィトスフィンゴシン含有α−グリコシルセラミド、OCH、KRN7000[(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオール]、CRONY−101、3”−O−スルホ−ガラクトシルセラミドなど。
【0134】
・γイヌリン[131]またはその誘導体、例えば、アルガムリン(algammulin)。
【0135】
【化5】

アジュバントの組み合わせ
本発明にはまた、上記で同定されたアジュバントの1つ以上の組み合わせが含まれる場合もある。例えば、以下のアジュバント組成物を、本発明において使用することができる:(1)サポニンと水中油型エマルジョン[132];(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)[133];(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(状況に応じて+ステロール)[134];(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンとの組み合わせ[135];(6)10%のスクアラン、0.4%のTween 80(商標)、5%のプルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含むSAF(1ミクロン未満のエマルジョンになるようにマイクロフルイダイズされるか、またはより大きな粒子サイズのエマルジョンが生じるようにボルテックスされるかのいずれか);(7)2%のスクアレン、0.2%のTween 80、ならびにモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくは、MPL+CWS(Detox(商標))からなる群からの1種類以上の細菌細胞壁成分を含む、Ribi(商標)アジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem);ならびに(8)1種類以上の無機塩(例えば、アルミニウム塩)+LPSの非毒性誘導体(例えば、3dMPL)。
【0136】
免疫刺激因子として作用する他の物質は、参考文献13の第7章に開示されている。
【0137】
水酸化アルミニウムアジュバントおよび/またはリン酸アルミニウムアジュバントの使用が典型的であり、抗原は、一般的には、これらの塩に吸着される。リン酸カルシウムが別の典型的なアジュバントである。他のアジュバントの組み合わせとしては、Th1アジュバントとTh2アジュバントとの組み合わせ、例えば、CpGとalum、またはレシキモド(resiquimod)とalumの組み合わせが挙げられる。リン酸アルミニウムと3dMPLとの組み合わせを使用することができる。
【0138】
本発明の組成物は、細胞に媒介される免疫応答と、体液性の免疫応答の両方を誘発することができる。この免疫応答は、長期間持続する(例えば、中和)抗体、および肺炎球菌に曝されると直ちに反応することができる細胞に媒介される免疫を誘導し得る。
【0139】
T細胞の2つのタイプ(CD4細胞とCD8細胞)は、一般的には、細胞媒介性の免疫と体液性免疫を開始および/または増大させるために必要であると考えられている。CD8 T細胞は、CD8共受容体を発現することができ、一般的には、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と呼ばれている。CD8 T細胞は、MHCクラスI分子上に提示される抗原を認識するか、またはそれと相互作用することができる。
【0140】
CD4 T細胞は、CD4共受容体を発現することができ、一般的には、Tへルパー細胞と呼ばれている。CD4 T細胞は、MHCクラスII分子に結合した抗原性ペプチドを認識することができる。MHCクラスII分子と相互作用すると、CD4細胞は、サイトカインのような因子を分泌することができる。これらの分泌されたサイトカインは、B細胞、細胞傷害性T細胞、マクロファージ、および免疫応答に関与している他の細胞を活性化させることができる。ヘルパーT細胞またはCD4+細胞は、さらに、それらのサイトカインおよびエフェクター機能が異なる、以下のような2種類の機能的に異なるサブセットに分類することができる:TH1表現型およびTH2表現型。
【0141】
活性化されたTH1細胞は、細胞性免疫(抗原特異的CTLの生産の増大を含む)を増強し、したがって、細胞内感染に応答することにおいて特に有用である。活性化されたTH1細胞は、IL−2、IFN−γ、およびTNF−βの1つ以上を分泌することができる。TH1免疫応答は、マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞、およびCD8細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化させることによって、局所炎症反応を生じ得る。TH1免疫応答はまた、IL−12でB細胞およびT細胞の増殖を刺激することによって、免疫応答を拡大させるようにも作用し得る。TH1によって刺激されたB細胞は、IgG2aを分泌し得る。
【0142】
活性化されたTH2細胞は、抗体の生産を増強させ、したがって、細胞外感染に応答することにおいて有用である。活性化されたTH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10の1つ以上を分泌し得る。TH2免疫応答によっては、さらなる防御のための、IgG1、IgE、IgA、およびメモリーB細胞の生産が生じ得る。
【0143】
増強された免疫応答には、増強されたTH1免疫応答およびTH2免疫応答の1つ以上が含まれ得る。
【0144】
TH1免疫応答には、CTLの増加、TH1免疫応答と関係があるサイトカイン(例えば、IL−2、IFN−γ、およびTNF−β)の1つ以上の増加、活性化されたマクロファージの増加、NK活性の増大、あるいはIgG2aの生産の増大の1つ以上が含まれ得る。一部の実施形態において、増強されたTH1免疫応答には、IgG2aの生産の増大が含まれるであろう。
【0145】
TH1免疫応答は、TH1アジュバントを使用して誘発され得る。TH1アジュバントは、一般的には、アジュバントを用いない抗原の免疫化と比較して、IgG2aの生産レベルの増大を誘発するであろう。本発明での使用に適しているTH1アジュバントとしては、例えば、サポニン処方物、ヴィロソーム、およびウイルス様粒子、腸内細菌のリポ多糖体(LPS)の非毒性誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチドが挙げられ得る。免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド)が、本発明での使用において典型的なTH1アジュバントである。
【0146】
TH2免疫応答には、TH2免疫応答と関係があるサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10)の1つ以上の増加、あるいは、IgG1、IgE、IgA、およびメモリーB細胞の生産の増大の1つ以上が含まれ得る。一部の実施形態において、増強されたTH2免疫応答には、IgG1の生産の増大が含まれるであろう。
【0147】
TH2免疫応答は、TH2アジュバントを使用して誘発され得る。TH2アジュバントは、一般的には、アジュバントを用いない抗原の免疫化と比較して、IgG1の生産レベルの増大を誘発するであろう。本発明での使用に適しているTH2アジュバントとしては、例えば、無機物を含む組成物、オイルエマルジョン、ならびにADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体が挙げられ得る。無機物を含む組成物(例えば、アルミニウム塩)が、本発明での使用において典型的なTH2アジュバントである。
【0148】
一部の実施形態において、本発明に、TH1アジュバントとTH2アジュバントとの組み合わせを含む組成物が含まれる。しばしば、そのような組成物は、増強されたTH1応答と増強されたTH2応答を誘発する、すなわち、アジュバントを用いない免疫化と比較して、IgG1の生産とIgG2aの生産の両方の増大を誘発する。一般的には、TH1アジュバントとTH2アジュバントとの組み合わせを含む組成物は、単一のアジュバントでの免疫化と比較して(すなわち、TH1アジュバントだけでの免疫化、またはTH2アジュバントだけでの免疫化と比較して)、TH1免疫応答の増大および/またはTH2免疫応答の増大を誘発する。
【0149】
免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2応答の一方または両方であり得る。免疫応答により、増強されたTH1応答および増強されたTH2応答の一方または両方が提供され得る。
【0150】
増強された免疫応答は、全身性免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方であり得る。免疫応答により、増強された全身性免疫応答および増強された粘膜免疫応答の一方または両方が提供され得る。典型的には、粘膜免疫応答はTH2免疫応答である。典型的には、粘膜免疫応答には、IgAの生産の増大が含まれる。
【0151】
上記組成物は、注射剤として、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製することができる。注射前の、液体媒体中の溶液または懸濁液に適している固体形態(例えば、凍結乾燥組成物または噴霧凍結乾燥組成物)もまた、調製することができる。組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏、クリーム剤、または散剤として調製される場合もある。組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤またはカプセル剤として、噴霧剤として、あるいはシロップ剤として(状況に応じて、香味づけされたもの)調製される場合もある。組成物は、肺投与のために、例えば、微粉末を使用する吸入剤または噴霧剤として、調製される場合もある。組成物は、坐剤またはペッサリーとして調製される場合もある。組成物は、鼻腔内投与、耳投与、または眼投与のために、例えば、滴剤として調製され得る。組成物は、組み合わせられた組成物が哺乳動物への投与の直前に再構成されるように設計された、キットの形態であり得る。そのようなキットには、液体形態の中にある1つ以上の抗原と、1つ以上の凍結乾燥させられた抗原とが含まれる場合がある。
【0152】
組成物が、使用前に即座に調製され(例えば、1種類の成分が凍結乾燥させられた形態で存在する場合)、そしてキットとして提示される場合には、このキットには2つのバイアルが含まれるか、または、キットには、1つの既に充填された注射器と1つのバイアルが含まれ、ここで、注射器の内容物は、注射前にバイアルの内容物を再度活性化させるために使用される場合もある。
【0153】
ワクチンとして使用される組成物には、免疫学的有効量の抗原(単数または複数)、ならびに、任意の他の成分が必要に応じて含まれる。「免疫学的有効量」によっては、単回用量または一連のものの一部としてのいずれかでの個体へのその量の投与が、処置または予防に有効であることが意味される。この量は、処置される個体の健康状態および身体状態、年齢、処置される個体の分類群(例えば、ヒト以外の霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方、医学的状況についての処置を行う医師による評価、および他の関連する要因に応じて様々である。この量は、日常的に行われている試験を通じて決定することができる比較的広い範囲に入るであろうと予想される。組成物中に1つより多い抗原を含ませる場合は、2つの抗原は、互いと同じ用量で存在させることもでき、異なる用量で存在させることもできる。
【0154】
上記の通り、組成物は、温度保護剤を包含する場合があるが、この成分は、アジュバント組成物(特に、アルミニウム塩など、鉱物アジュバントを含有する組成物)において特に有用でありうる。参考文献136に記載されている通り、液体の温度保護剤を、水性のワクチン組成物に添加して、その凝固点を低下させる、例えば、凝固点を0℃より下まで低下させることができる。したがって、組成物は0℃より下でも保存しうるが、その凝固点を超えて保存しながら、熱による分解を阻止することもできる。温度保護剤はまた、鉱物塩によるアジュバントが、凍結および融解後に凝結または沈殿しないように保護しながら組成物を凍結させることも可能とし、また、高温、例えば、40℃を超えた温度で組成物を保護することも可能である。液体の温度保護剤が、最終混合物の容量で1〜80%を形成するように、水性の出発ワクチン(starting aqueous vaccine)と液体の温度保護剤とを混合することができる。適切な温度保護剤は、ヒトへの投与に安全であり、水中で容易に混和性/可溶性であるものとし、組成物中の他の成分(例えば、抗原およびアジュバント)を損なわないものとする。例として、グリセリン、プロピレングリコール、および/またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。適切なPEGは、平均分子量が200〜20,000Daの範囲でありうる。一実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量が、約300Da(「PEG−300」)でありうる。
【0155】
本発明は、(i)1つ以上の抗原と;(ii)温度保護剤とを含む組成物を提供する。この組成物は、(i)1つ以上の抗原を含む水性組成物を、(ii)温度保護剤と混合することにより形成することができる。次いで、混合物を、例えば、0℃より下、0〜20℃、20〜35℃、35〜55℃、またはそれを超える温度で保存することができる。混合物は、液体形態で保存することもでき、凍結形態で保存することもできる。混合物は、凍結乾燥させることができる。代替的に、(i)1つ以上の抗原を含む乾燥組成物を、(ii)温度保護剤を含む液体組成物と混合することによっても組成物を形成することができる。従って、成分(ii)を用いて、成分(i)を復元することができる。
【0156】
(機能的同等物)
上記で説明した、本発明の方法、タンパク質アレイおよび医療上の使用において用い得るGAS抗原を同定するのに用いられる配列番号は、これらのGAS抗原の全長配列である。
【0157】
本発明の方法、タンパク質アレイおよび医療上の使用は、これらの全長GAS抗原の使用に限定されるものではなく、これらのGAS抗原のうちのいずれかに対する、任意の「機能的同等物」もまた包含する。
【0158】
本明細書で用いられる「機能的同等物」という用語は、生物学的試料中に存在する、全長GAS抗原に対する抗体と相互作用する能力を保持し、したがって、全長GAS抗原の代わりに用い得る、配列表に示される全長配列を有するGAS抗原の改変体を包含することを意図する。
【0159】
したがって、「機能的同等物」という用語は、配列表に示される配列を有する全長GAS抗原の断片を包含する。このような断片は、全長GAS抗原に結合する抗体に結合する能力を保持しうる。本発明の機能的同等物は、全長GAS抗原に対して生成された抗体に、少なくとも10−7Mのアフィニティーで結合しうる。
【0160】
断片は、全長GAS抗原配列のうち少なくともnの連続アミノ酸を包含し、ここで、nは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250以上)である。断片は、全長GAS抗原配列に由来するエピトープを含みうる。さらなる断片は、全長配列のC末端に由来する1もしくは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25以上の)アミノ酸、および/または全長配列のN末端に由来する1もしくは複数の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25以上の)アミノ酸を欠く場合がある。例えば、本発明の方法およびアレイにおいて用い得る断片には、全長GAS抗原において存在するリーダー配列および/または膜貫通配列を欠いている断片が含まれる。
【0161】
本発明の方法およびアレイにおいて用い得る断片のさらなる例には、N末端断片が含まれる。このような断片の例には、配列番号9(これは、配列番号5における配列のN末端断片である)に示すアミノ酸配列、ならびに配列番号10(これは、配列番号4のN末端断片である)に示すアミノ酸配列が含まれる。
【0162】
「機能的同等物」という用語はまた、アミノ酸置換を有する全長GASタンパク質の改変体、ならびにこのような改変体の断片も包含する。改変体は、本明細書に記載の全長GAS抗原配列に対して50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上)の同一性を有しうる。改変体は、配列表で示されるGAS抗原配列と比較して保存的なアミノ酸置換を含有しうる。このような置換の典型は、Ala、Val、Leu、およびIleの間;SerおよびThrの間;酸性残基であるAspおよびGluの間;AsnおよびGlnの間;塩基性残基であるLysおよびArgの間;または芳香環残基であるPheおよびTyrの間における置換である。
【0163】
「機能的同等物」という用語は、GAS抗原に化学的または遺伝学的に連結されたさらなる実体を包含する融合タンパク質を含めて、GAS抗原のより長鎖の改変体もさらに包含する。例えば、GAS抗原を、タンパク質アレイ上においてその位置を特定することを容易にするか、またはそれが抗体に結合した場合の検出を容易にする標識に結合させることができる。このような標識の例には、放射性同位体、蛍光分子、または酵素など、分析により検出可能な試薬が含まれる。代替的に、GAS抗原を、ヒスチジンドメインまたはGSTドメインなど、その最初の精製を容易にするドメインに融合させることもできる。
【0164】
「機能的同等物」という用語はまた、GAS抗原と構造的に類似し、全長GAS抗原に対する抗体に結合する能力を保持する、上記で説明したGAS抗原の模倣体、改変体、および断片も包含する。
【0165】
(一般)
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「〜からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xだけからなる場合もあり、さらなる何かを包含する場合、例えば、X+Yである場合もある。
【0166】
「実質的に」という語は、「完全に」を除外しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合もある。必要な場合、「実質的に」という語は、本発明の定義から省略することができる。
【0167】
数値xとの関連における「約」という用語は、例えば、x±10%を意味する。
【0168】
別段に言明しない限り、2つ以上の成分を混合するステップを含む過程は、特定の混合順序を要求しない。したがって、成分は、任意の順序で混合することができる。3つの成分が存在する場合は、2つの成分を互いと混合し、次いで、この混合物を、第3の成分などと混合することができる。
【0169】
ポリペプチド配列間における同一性は、ギャップオープンペナルティー=12およびギャップ伸長ペナルティー=1というパラメータを伴う、アファインギャップ検索を用いる、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular社製)内に実装されているSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムにより決定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】図1は、血清が回収された、リウマチ性心疾患(RHD)を有する患者、およびイエメン人健常血液ドナー(YHD)の年齢分布を示す図である。研究のために選択された、年齢を適合させた血清試料を示す。
【図2A】図2は、タンパク質マイクロアレイの構成および検証を示す図である。A:クーマシーにより染色された精製組換えGASタンパク質についてのSDS−PAGE分析を示す図である。分子量マーカーをレーン1に示す。B:ヒト血清と共にインキュベートし、Cy3標識抗ヒトIgGおよびCy5標識抗ヒトIgMと共にインキュベートした後のチップについての代表的な画像である。多連にわたる試験抗原、ならびにIgGおよびIgMによる陰性対照および陽性対照を強調して示す。C:ヒトIgG対照曲線についてのグラフ表示である。抗ヒトIgG−Cy3と共にインキュベートすることにより明らかとなる、異なるIgG濃度に対するチップ画像を、グラフの下方に示す。D:S字型曲線により導出されるデータ正規化法について示す図である。参照S字型曲線(赤色;id:理想型のS字型曲線)に調整したS字型対照曲線(黒色)を用いて、データを正規化する;PおよびP’:実験によるS字型曲線および参照S字型曲線上における非正規化MFI値の交点Valおよび正規化MFI値の交点N(Val);HL:30,000の正規化MFI値に対応する値;LLは、15,000の正規化MFI値である。
【図2B】図2は、タンパク質マイクロアレイの構成および検証を示す図である。A:クーマシーにより染色された精製組換えGASタンパク質についてのSDS−PAGE分析を示す図である。分子量マーカーをレーン1に示す。B:ヒト血清と共にインキュベートし、Cy3標識抗ヒトIgGおよびCy5標識抗ヒトIgMと共にインキュベートした後のチップについての代表的な画像である。多連にわたる試験抗原、ならびにIgGおよびIgMによる陰性対照および陽性対照を強調して示す。C:ヒトIgG対照曲線についてのグラフ表示である。抗ヒトIgG−Cy3と共にインキュベートすることにより明らかとなる、異なるIgG濃度に対するチップ画像を、グラフの下方に示す。D:S字型曲線により導出されるデータ正規化法について示す図である。参照S字型曲線(赤色;id:理想型のS字型曲線)に調整したS字型対照曲線(黒色)を用いて、データを正規化する;PおよびP’:実験によるS字型曲線および参照S字型曲線上における非正規化MFI値の交点Valおよび正規化MFI値の交点N(Val);HL:30,000の正規化MFI値に対応する値;LLは、15,000の正規化MFI値である。
【図2C】図2は、タンパク質マイクロアレイの構成および検証を示す図である。A:クーマシーにより染色された精製組換えGASタンパク質についてのSDS−PAGE分析を示す図である。分子量マーカーをレーン1に示す。B:ヒト血清と共にインキュベートし、Cy3標識抗ヒトIgGおよびCy5標識抗ヒトIgMと共にインキュベートした後のチップについての代表的な画像である。多連にわたる試験抗原、ならびにIgGおよびIgMによる陰性対照および陽性対照を強調して示す。C:ヒトIgG対照曲線についてのグラフ表示である。抗ヒトIgG−Cy3と共にインキュベートすることにより明らかとなる、異なるIgG濃度に対するチップ画像を、グラフの下方に示す。D:S字型曲線により導出されるデータ正規化法について示す図である。参照S字型曲線(赤色;id:理想型のS字型曲線)に調整したS字型対照曲線(黒色)を用いて、データを正規化する;PおよびP’:実験によるS字型曲線および参照S字型曲線上における非正規化MFI値の交点Valおよび正規化MFI値の交点N(Val);HL:30,000の正規化MFI値に対応する値;LLは、15,000の正規化MFI値である。
【図2D】図2は、タンパク質マイクロアレイの構成および検証を示す図である。A:クーマシーにより染色された精製組換えGASタンパク質についてのSDS−PAGE分析を示す図である。分子量マーカーをレーン1に示す。B:ヒト血清と共にインキュベートし、Cy3標識抗ヒトIgGおよびCy5標識抗ヒトIgMと共にインキュベートした後のチップについての代表的な画像である。多連にわたる試験抗原、ならびにIgGおよびIgMによる陰性対照および陽性対照を強調して示す。C:ヒトIgG対照曲線についてのグラフ表示である。抗ヒトIgG−Cy3と共にインキュベートすることにより明らかとなる、異なるIgG濃度に対するチップ画像を、グラフの下方に示す。D:S字型曲線により導出されるデータ正規化法について示す図である。参照S字型曲線(赤色;id:理想型のS字型曲線)に調整したS字型対照曲線(黒色)を用いて、データを正規化する;PおよびP’:実験によるS字型曲線および参照S字型曲線上における非正規化MFI値の交点Valおよび正規化MFI値の交点N(Val);HL:30,000の正規化MFI値に対応する値;LLは、15,000の正規化MFI値である。
【図3】図3は、GAS抗原に対して高い反応(MFI>30000)を示す、イエメン人(Yeminite)健常ドナーによる血清およびイタリア人健常ドナーによる血清の百分率を示す図である。反応の降順で抗原を表わす。
【図4−1】図4は、年齢を適合させて選択したヒト血清であるYHD血清40例(図4における濃いグレー)およびRHD血清43例(図4における薄いグレー)の免疫反応性の比較を示す図である。2つの血清群の抗原認識パターンを規定するため、正規化FI(MFI)値を、専用ソフトウェア(TIGR Multiexperiment Viewer(MeV)ソフトウェア(http://www.tigr.org/software/tm4/mev.html))を用いる目的変数なしの二次元階層クラスタリングにかけ、その結果として、高度に認識された抗原の2つの主要な群(図4Aにおける、また、図4Bにも示される、群1および群2)が同定された。このクラスタリング解析により、血清が高い反応性(左側)〜低い反応性(右側)に区分された。主に健常ドナーに由来する血清を含む高反応性群(図4左側のA)、および低い反応性を示し、主にRHD患者に由来する血清を含む第2の群(図4の群B)の2つの主要な血清群を識別しうる。
【図4−2】図4は、年齢を適合させて選択したヒト血清であるYHD血清40例(図4における濃いグレー)およびRHD血清43例(図4における薄いグレー)の免疫反応性の比較を示す図である。2つの血清群の抗原認識パターンを規定するため、正規化FI(MFI)値を、専用ソフトウェア(TIGR Multiexperiment Viewer(MeV)ソフトウェア(http://www.tigr.org/software/tm4/mev.html))を用いる目的変数なしの二次元階層クラスタリングにかけ、その結果として、高度に認識された抗原の2つの主要な群(図4Aにおける、また、図4Bにも示される、群1および群2)が同定された。このクラスタリング解析により、血清が高い反応性(左側)〜低い反応性(右側)に区分された。主に健常ドナーに由来する血清を含む高反応性群(図4左側のA)、および低い反応性を示し、主にRHD患者に由来する血清を含む第2の群(図4の群B)の2つの主要な血清群を識別しうる。
【図5−1】図5は、チップ内に存在するGAS抗原を、同様の認識パターンを引き出す10のクラスター(KA1〜KA10)に分類する目的で、K平均によるクラスター解析を適用したことを示す図である。同定された抗原クラスターのうちの4つ(番号KA1、KA5、KA9、KA10)が含有する抗原の蛍光値は、残りのクラスターが含有する抗原の蛍光値より高かった。クラスターKA1において、最も反応性の高い血清が、大多数のYHDを含んだことから、ある抗原群がチップに存在し、その反応性により、健常ドナーに由来する血清と、RHD患者に由来する血清との識別が可能となることが示唆される。
【図5−2】図5は、チップ内に存在するGAS抗原を、同様の認識パターンを引き出す10のクラスター(KA1〜KA10)に分類する目的で、K平均によるクラスター解析を適用したことを示す図である。同定された抗原クラスターのうちの4つ(番号KA1、KA5、KA9、KA10)が含有する抗原の蛍光値は、残りのクラスターが含有する抗原の蛍光値より高かった。クラスターKA1において、最も反応性の高い血清が、大多数のYHDを含んだことから、ある抗原群がチップに存在し、その反応性により、健常ドナーに由来する血清と、RHD患者に由来する血清との識別が可能となることが示唆される。
【図5−3】図5は、チップ内に存在するGAS抗原を、同様の認識パターンを引き出す10のクラスター(KA1〜KA10)に分類する目的で、K平均によるクラスター解析を適用したことを示す図である。同定された抗原クラスターのうちの4つ(番号KA1、KA5、KA9、KA10)が含有する抗原の蛍光値は、残りのクラスターが含有する抗原の蛍光値より高かった。クラスターKA1において、最も反応性の高い血清が、大多数のYHDを含んだことから、ある抗原群がチップに存在し、その反応性により、健常ドナーに由来する血清と、RHD患者に由来する血清との識別が可能となることが示唆される。
【図6】図6は、健常者とRHD患者とを識別することを可能にする、抗原クラスターの同定を示す図である。一次元階層クラスタリング解析を用いて、図6のKA1クラスターに由来する血清を、それらの認識プロファイルに基づき、異なる抗原群へとさらに分類したところ、2つの血清クラスターであるHS1(紫色のボックス)およびHS2(青色のボックス)を定義することが可能となった。2つのクラスターの各々において存在するかまた存在しない健常血清および患者血清の数を、図6Bで報告する。YHDの大半が、反応性が高い青色のHS2クラスターにおいて見出されうるのに対し、RHD血清の大半は、反応性が低い紫色のHS1クラスターにおいて見出される。この種の検査を用いて、2つの血清集団を識別する能力を、特異度および感度の点で規定した(図6C)。この具体的な抗原群については、0.73および0.69の特異度値および感度値が得られた。図6Cはまた、特異度および感度を最大とする(値を1とする)理論的理想型の例も示す。
【図7−1】図7は、図6で説明した解析を、他の抗原クラスター:KA5(B)、KA9(C)、KA10(D)、KA5+M9(E)、GAS5+GAS5F+GAS25+GAS40(F)、GAS5+GAS5F+GAS25+GAS40+GAS57(G)、GAS5+GAS25+GAS40+GAS57(H)、GAS5F+GAS25+GAS40+GAS57(I)にも適用した。特異度値および感度値を、各クラスターについて示す。
【図7−2】図7は、図6で説明した解析を、他の抗原クラスター:KA5(B)、KA9(C)、KA10(D)、KA5+M9(E)、GAS5+GAS5F+GAS25+GAS40(F)、GAS5+GAS5F+GAS25+GAS40+GAS57(G)、GAS5+GAS25+GAS40+GAS57(H)、GAS5F+GAS25+GAS40+GAS57(I)にも適用した。特異度値および感度値を、各クラスターについて示す。
【発明を実施するための形態】
【0171】
序論
本発明者らは、130の組換えGASタンパク質抗原を含有するタンパク質マイクロアレイを開発した。該チップは、咽頭炎患者において高度な抗体反応を誘発する抗原を選択するための器具であったが、また、チック病を有する患者に由来する血清中のGAS抗原に対する高度の反応を明らかにすることも可能とし、感受性の個体における、GAS抗原に依存する自己抗体の誘導が、チック障害の発症に関与しうることを強力に裏付けた(Bombaci Mら、2009年、PLoS ONE、4巻、7頁:e6332.doi:10.1371)。
【0172】
本明細書において、本発明者らは、このタンパク質マイクロアレイを用いて、RHD患者および健常ドナーにおいて、この2つの集団を識別することを可能とする抗原認識パターンを同定することを目的として、130の組換えGASタンパク質に対する免疫反応を解析した。この手法により、健常ドナーには高度に認識されるが、RHD患者には高度には認識されない抗原クラスターが同定されたが、これにより、診断検査のための基礎を確定することができる。
【0173】
材料と方法
ヒト血清
リウマチ性心疾患患者の血清は、RHDの臨床症状を示す、出身が中東地域の国(イエメン)である11〜40歳の男性患者または女性患者60人から回収した。
【0174】
抗GAS抗体力価は、年齢および地理的な出自を含めたいくつかの因子により変化することが公知である。実際、健常者における抗GAS抗体力価は、小児早期において低く、5〜15歳の小児においてピークまで上昇し、青年後期および成人早期において低下し、次いで、それ以後は一定となる。この理由で、同じ年齢範囲(17〜40歳)の群を用いてリウマチ性心疾患(RHD)血清群と対照のイエメン人健常ドナー(YHD)群との比較を実施したが、このため、対照の血清が入手できなかった11〜16歳のRHD患者の血清は除外した。この比較で用いた最終的な血清数はYHD群が40例およびRHDが43例であった。
【0175】
図1は、入手可能な2つの集団および本研究のために選択した集団についての分布解析を示す。
【0176】
加えて、かつての西欧人口において、GAS感染に対する抗生剤予防がより高度に用いられたことを考慮に入れ、イタリア人健常ドナー(IHD)から回収した血清20例を、健常イエメン人とのさらなる比較のために用いた。
【0177】
すべての血清試料は、RHDの診断または瀉血のための日常的な医療管理の過程で得られた残余物であり、Department of Child and Adolescent Neuropsychiatry、University La Sapienza、Romeにより利用可能とされたものであった。
【0178】
GASタンパク質マイクロアレイ
主にGAS SF370 M1ゲノムから選択された130の組換えタンパク質をニトロセルロースチップ上に沈着させることにより、タンパク質アレイを生成させた(チップセットアップの詳細については、図2を参照されたい)。
【0179】
チップを、異なる血清と共にインキュベートし、沈着させた各タンパク質に結合した全IgGを、蛍光標識した抗ヒトIgGで検出し、結果として得られる蛍光強度(FI)値を測定することにより、反応性を評価した。各スライドについて、基準曲線として用いる、S字型に調整した標準IgG曲線との対比で、タンパク質のMFI値を正規化した(図2)。
【0180】
MFI値が、バックグラウンド値に標準偏差の2倍を加えた値に対応する15,000以上である場合に、被験血清による抗原認識を陽性とみなした。MFI値が30,000以上である場合を、高度な反応とみなした。患者に由来する血清120例(イタリア人健常ドナー(IHD)による血清20例、イエメン人健常ドナー(YHD)による血清40例、およびイエメン人RHD患者(RHD)による血清60例)により、アレイをプローブした。
【0181】
結果
健常ドナーに由来する血清によって認識されるGAS抗原:抗体反応はイタリア人よりイエメン人において高度である
イエメン人健常血液ドナーに由来する血清40例およびイタリア人健常ドナーに由来する血清20例を用いて、2つの異なる地域に属する集団における抗GAS抗体反応を調査した。図3は、GAS抗原に対する反応が高度な健常ドナー血清の百分率を報告する。示される通り、バックグラウンドの抗連鎖球菌属抗体反応は、高度に認識された抗原の数の点でも、高度に陽性な血清の数の点でも、イタリア人試料よりイエメン人試料においてはるかに高度である。
【0182】
健常イエメン人とイエメン人RHD患者とで示差的なGAS抗原の免疫反応
本発明者らは、年齢を適合させて選択したヒト血清であるYHD血清40例(図4における濃いグレー)およびRHD血清43例(図4における薄いグレー)の免疫反応性を比較した。2つの血清群の抗原認識パターンを規定するため、正規化FI(MFI)値を、専用ソフトウェア(TIGR Multiexperiment Viewer(MeV)ソフトウェア(http://www.tigr.org/software/tm4/mev.html))を用いる目的変数なしの(unsupervised)二次元階層クラスタリングにかけた。
【0183】
抗体による認識プロファイルをクラスタリングして検査することにより、高度に認識された抗原の2つの主要な群(図4における群1および群2)が同定された。群1には、GAS5F(分泌タンパク質と推定される)、GAS25(ストレプトリシンO前駆体)、GAS40(表面排除タンパク質と推定される)、M1、GAS179(エステラーゼと推定される)、GAS97(免疫原性の分泌タンパク質前駆体の相同体)、GAS193(免疫原性の分泌タンパク質前駆体)が含まれた。群2には、5つの異なるMタンパク質(M12、M23、M2、M3、およびM9)、GAS57(細胞エンベローププロテイナーゼと推定される)、GAS380(仮説的タンパク質)、およびSpeIが含まれた。
【0184】
さらに、図4に示す通り、このクラスタリング解析により、血清が、高い反応性(左側)〜低い反応性(右側)に区分された。実際、主に健常ドナーに由来する血清を含む高反応性群(図4左側のA)、および低い反応性を示し、主にRHD患者に由来する血清が含まれる第2の群(図4の群B)の2つの主要な血清群を識別しうる。
【0185】
次いで、本発明者らは、チップ内に存在するGAS抗原を、同様の認識パターンを引き出す10のクラスター(図5のKA1〜KA10)に分類する目的で、K平均(k−mean)によるクラスター解析を適用した。k平均によるクラスタリングとは、平均が最も近接するクラスターに各観察が属するk個のクラスターへと、n個の観察を分割することを目的とする統計的方法である。それらがいずれもデータ中の天然クラスター(natural cluster)の中心を見出そうと試みる点で、k平均によるクラスタリングは、ガウスの混合(mixture of Gaussians)についての期待値最大化アルゴリズムと類似する。
【0186】
図5に示す通り、同定された抗原クラスターのうちの4つ(番号KA1、KA5、KA9、KA10)が含有する抗原の蛍光値は、残りのクラスターが含有する抗原の蛍光値より高かった。クラスタリングは、一次元的であった、すなわち、抗原の分類について意図するものであり、血清の分類について意図するものではなかったが、クラスターKA1において、最も反応性の高い血清が、大多数のYHD血清を含むことが観察されたことは興味深い。この観察からは、ある抗原群がチップ内に存在し、その反応性により、健常ドナーに由来する血清と、RHD患者に由来する血清との識別が可能となることが示唆される。
【0187】
次いで、本発明者らは、健常者と心臓病患者とを識別することを可能とするこの抗原群を、より正確な様式で定義しようと試みた。この目的で、一次元階層クラスタリング解析を用いて、血清を、それらの認識プロファイルに基づき、異なる抗原群へとさらに分類した。
【0188】
まず、図5のクラスターKA1中に含まれる抗原群にこの種の解析を適用したところ、図6Aの紫色のボックス(HS1)および青色のボックス(HS2)に対応する、第1の階層レベルにおける2つの血清クラスターであるHS1およびHS2を定義することが可能となった。2つのクラスターの各々において存在するかまたは存在しない健常血清および患者血清の数を、図6Bで報告する。示される通り、YHD血清の大半が、反応性が高い青色のHS2クラスターにおいて見出されうるのに対し、RHD血清の大半は、反応性が低い紫色のHS1クラスターにおいて見出される。この種の検査を用いて、2つの血清集団を識別する能力を、特異度および感度の点で規定した。図6Cは、特異度および感度を最大とする(値を1とする)理論的理想型の例を示す。示される通り、この具体的な抗原群について、本発明者らは、0.73および0.69の特異度値および感度値を得た。
【0189】
同じ種類の解析を、クラスターKA5、KA9、KA10、およびKA5+M9中の抗原にも適用した。また、GAS5+GAS5F+GAS25+GAS40、GAS5+GAS5F+GAS25+GAS40+GAS57、GAS5+GAS25+GAS40+GAS57、GAS5F+GAS25+GAS40+GAS57を含めた、他の抗原群にも、同じ種類の解析を適用した。結果を図7A〜Iにまとめる。
【0190】
示される通り、最高の特異度値および感度値をもたらすクラスターが、クラスターKA1中の抗原(GAS5、GAS40、GAS5F、GAS57、GAS97、GAS380、およびSpeA)、ならびにGAS5抗原、GAS25抗原、GAS40抗原、およびGAS57抗原を含んだのに対し、最低値は、GAS抗原のMバリアントが含まれるクラスターについて得られた。
【0191】
考察
本発明者らは、GAS5抗原、GAS25抗原、GAS40抗原、およびGAS57抗原を用いてこの種の解析を行えば、RHDをより正確に診断するための基礎が確定され、ARFを有する患者が、RHDを発症する可能性があるかどうかを予測することが可能となり、したがって、医療従事者が、ARF患者に最適な予防治療について決定するための指針が得られると考えている。
【0192】
【化6】

【0193】
【化7】

【0194】
【化8】

【0195】
【化9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者においてGAS感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を診断する、またはGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがある患者を同定する方法であって、該方法は、
a)患者に由来する生物学的試料を少なくとも1つのGAS抗原と、該少なくとも1つのGAS抗原に対する、該生物学的試料中に存在する任意の抗体の結合に適した条件下で、接触させるステップと、
b)該患者に由来する該生物学的試料中の抗体の、該少なくとも1つのGAS抗原に対する反応性を、健常個体に由来する対照の生物学的試料中の抗体の、該少なくとも1つのGAS抗原に対する反応性と比較するステップを包含し、ここで、
健常個体に由来する該対照の生物学的試料と比較して、該患者に由来する該生物学的試料における反応性が低いことは、該患者がGAS感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を患っていること、または該患者がGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがあることを示す、方法。
【請求項2】
a)患者に由来する生物学的試料を、
配列番号1(GAS5)
配列番号2(GAS5F)
配列番号3(GAS25)
配列番号4(GAS40)
配列番号5(GAS57)
配列番号6(GAS97)
配列番号7(GAS380)および
配列番号8(SpeA)
のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原
またはその機能的同等物と、該少なくとも1つのGAS抗原またはその機能的同等物に対する、該生物学的試料中に存在する任意の抗体の結合に適した条件下で、接触させるステップと、
b)該少なくとも1つのGAS抗原またはその機能的同等物に結合した、該患者に由来する該生物学的試料中の任意の抗体の反応性を評価するステップと、
c)ステップb)における反応性を、該少なくとも1つのGAS抗原またはその機能的同等物に結合した、健常個体に由来する対照の生物学的試料中の抗体の反応性と比較するステップを包含し、ここで、
健常な個体に由来する該対照の生物学的試料における反応性と比較して、該患者に由来する該生物学的試料における反応性が低いことは、該患者がGAS感染と関連するリウマチ性心疾患(RHD)を患っていること、または該患者がGAS感染と関連するRHDを発症するリスクがあることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)が、前記試料を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8のアミノ酸配列を含むGAS抗原のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくは8つ、またはそれらの機能的同等物と接触させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)が、前記試料を、配列番号1、2および3;配列番号1、3および4;配列番号1、4および5;配列番号2、3および4;配列番号2、4および5;もしくは配列番号3、4および5のアミノ酸配列を含む3つのGAS抗原、またはそれらの機能的同等物と接触させることを含む、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)が、前記試料を、配列番号1、2、3および4;もしくは配列番号2、3、4および5;配列番号1、3、4および5のアミノ酸配列を含む4つのGAS抗原、またはそれらの機能的同等物と接触させることを含む、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)が、前記試料を、配列番号1、2、3、4および5のアミノ酸配列を含む5つのGAS抗原と接触させることを含む、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的試料が、血清試料である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的試料が、青年または小児に由来する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記GAS抗原が、1つ以上のタンパク質アレイ上に提示される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも2つのGAS抗原、またはそれらの機能的同等物を含む、タンパク質アレイ。
【請求項11】
請求項10に記載のタンパク質アレイと、GAS感染と関連するリウマチ性心疾患を有するか、またはGAS感染と関連するリウマチ性心疾患を発症するリスクがある患者の診断において該アレイを用いるための指示書を含む、キット。
【請求項12】
GAS感染と関連するRHDを処置または予防する方法であって、該方法は、GAS感染と関連するRHDの処置または予防を必要とする患者に、配列番号1、2、3、4、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはその機能的同等物を投与するステップを含む、方法。
【請求項13】
GAS感染と関連するRHDを処置または予防するのに用いるための、配列番号1、2、3、4、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含む群から選択される少なくとも1つのGAS抗原、またはその機能的同等物。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図3】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図5−3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate


【公表番号】特表2013−508719(P2013−508719A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534815(P2012−534815)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054753
【国際公開番号】WO2011/048561
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】