説明

A2A−アデノシン受容体アゴニストおよびその多形体を調製するための方法

【課題】A2A−アデノシン受容体アゴニストの大規模製造に適した合成を提供すること
【解決手段】本発明は、A2A−アデノシン受容体アゴニストの大規模調製のための方法に関する。また、その化合物の多形体に、および特定の多形体を単離する方法に関する。本発明は、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの合成方法を提供する。アデノシンは、天然に存在するヌクレオシドであり、アデノシン受容体のファミリーと相互作用することによって、その生物学的効果を発揮する。アデノシン受容体のファミリーは、A、A2A、A2BおよびAとして知られており、これらのすべてが重要な生理学的過程を調節している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年5月18日に出願された米国仮特許出願第60/801,857号および2006年2月3日に出願された米国仮特許出願第60/765,114号に対する優先権を主張する2007年2月2日に出願された米国特許出願第11/701,699号の一部継続出願であり、それらの全ての開示は、参考として本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、A2A−アデノシン受容体アゴニストの大規模調製のための方法に関する。また、その化合物の多形体に、および特定の多形体を単離する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノシンは、天然に存在するヌクレオシドであり、アデノシン受容体のファミリーと相互作用することによって、その生物学的効果を発揮する。アデノシン受容体のファミリーは、A、A2A、A2BおよびAとして知られており、これらのすべてが重要な生理学的過程を調節している。アデノシンの生物学的効果の1つは、冠血管拡張剤として作用することであり、この結果は、A2Aアデノシン受容体との相互作用によって生み出される。アデノシンのこの効果は、心臓の画像化の助けとして有用であることが見出されており、造影剤(例えばタリウム201)の投与前に冠状動脈を拡張し、ひいては、こうして写し出された画像の観察によって、冠状動脈疾患の有無を決定することができる。このような技術の利点は、冠疾患を有する患者にとって明らかに望ましくないトレッドミル上での運動によって冠血管拡張を促すという、より従来の方法を避けることである。
【0004】
しかし、アデノシンの投与には、いくつかの不都合がある。アデノシンは、ヒトにおいて非常に短い半減期を有し(10秒未満)、またA、A2A、A2BおよびA受容体アゴニズムに関連する効果のすべてを有する。したがって、選択的なA2Aアデノシン受容体アゴニストの使用、特に、より長い半減期を有し、副作用が少ないか全くないものの使用は、冠血管拡張をもたらす優れた方法を提供する。
【0005】
これらの望ましい特性をもつ化合物の種類は、米国特許第6403567号に開示されており、その開示すべてが参照によって本明細書に組み込まれる。特に、この特許に開示されている1つの化合物、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドは、高度に選択的なA2A−アデノシン受容体アゴニストであることが示されており、心臓の画像化に有用な冠血管拡張剤として、現在臨床試験を実施中である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6403567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この化合物および類似の化合物における関心が高まっていることを考慮すると、大量の物質を良好な収率および高純度で作る都合の良い方法を提供する、新規合成方法を見出すことが望ましくなってきている。関心対象の化合物を開示している特許(米国特許第6403567号)は、化合物を調製するいくつかの方法を提供している。しかし、これらの方法は小規模合成には適しているが、この特許に開示されているすべての合成方法は保護基を利用しており、このことが大規模合成には望ましくない。
【0008】
加えて、所望の生成物(すなわち(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド)は、少なくとも3つの異なる結晶形で存在することができ、このうち最も安定なものは一水和物であることが発見された。この多形体は、相対湿度ストレス条件下で、その融点まで安定である。それ故に、新規合成で製造される最終生成物は、安定な一水和物として得られることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の目的は、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドおよびその多形体、好ましくはその一水和物としての大規模調製のための都合の良い合成を提供することである。それ故に、第1の態様では、本発明は、式I
【0010】
【化1】

の化合物の調製であって、
式(3)
【0011】
【化2】

の化合物をメチルアミンと接触させることを含む調製に関する。
【0012】
一実施形態では、反応は、メチルアミンの水溶液中、最初に約0〜5℃の温度で行われ、続いて約50〜70℃に温める。あるいは、反応は上述のように行われるが、密閉加圧反応器中で行われる。
【0013】
第2の実施形態では、生成物を溶媒、例えば、ジメチルスルホキシドに溶かすことと、精製水を加えることと、こうして形成されたスラリーをろ過することと、フィルターの内容物を水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することと、残った固体を真空下にて40℃を超えない温度で乾燥することとによって、生成物は純粋な一水和物として単離される。
【0014】
第2の態様では、本発明は、式(3)
【0015】
【化3】

の化合物の調製であって、
式(2)
【0016】
【化4】

の化合物をエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートと接触させることを含む調製に関する。
【0017】
一実施形態では、反応は、エタノール中、約80℃の温度で、約1.1モル当量のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートを用いて行われる。
【0018】
第3の態様では、本発明は、式(2)
【0019】
【化5】

の化合物の調製であって、
式(1)
【0020】
【化6】

の化合物をヒドラジンと接触させることを含む調製に関する。
【0021】
14.3〜16.7倍モル過剰のヒドラジンを使用してよく、反応は、約60〜65℃の温度で行うことができる。一実施形態では、ヒドラジンを、最初に約60〜65℃に加熱し、続いて式(1)の化合物を加える。式(2)の化合物は、(a)反応混合物を約40℃に冷却することと、(b)温度を約40℃で維持しながら、4.2〜4.9質量当量の水を加えることと、(c)混合物を約10℃に冷却し、その温度で少なくとも約1時間維持することと、(d)ろ過することと、(e)フィルターの内容物を水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することと、(f)残った固体を真空下にて30℃を超えない温度で少なくとも12時間乾燥することとによって単離することができる。
【0022】
上記の合成は、所望の生成物の大規模合成に適しており、良好な収率で生成されるが、1つの少量の不純物が最終生成物中に見られる。この不純物は、式(2)、すなわち式
【0023】
【化7】

の化合物の未変化中間体であることが示されている。この不純物は、最終生成物から結晶化によって除去することができるとはいえ、上述の合成の利点をすべて有するが、式(2)の化合物を最終生成物中の不純物として生じさせない代替合成を探索することに決めた。
【0024】
したがって、第4の態様では、本発明は、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドを合成する方法であって、式(4)
【0025】
【化8】

の化合物をメチルアミンと接触させることによる方法に関する。
【0026】
一実施形態では、反応は、メチルアミンの水溶液中、最初に約0〜5℃の温度で行われ、続いて約50〜70℃に温める。好ましくは、反応は密閉加圧反応器中で行われる。
【0027】
別の実施形態では、反応は約2.5〜7.5℃の温度で行われる。
【0028】
さらに別の実施形態では、生成物を溶媒、例えば、ジメチルスルホキシドに溶かすことと、精製水を加えることと、こうして形成されたスラリーをろ過することと、フィルターの内容物を水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することと、残った固体を真空下にて40℃を超えない温度で乾燥することとによって、生成物は純粋な一水和物として単離される。いくつかの他の実施形態では、(a)反応混合物を真空下にて35℃以下で脱気して過剰なメチルアミンを除去することと、(b)真空を解き、0〜5℃に約15分から1時間冷却することと、(c)こうして形成されたスラリーをろ過することと、(d)フィルターの内容物を水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することと、(e)残った固体を真空下にて40℃を超えない温度で乾燥することとによって、生成物は純粋な一水和物として単離することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドは、(i)この化合物をジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶かし、約78〜88°に加熱することと、(ii)この溶液からいずれの固体不純物もろ過することと、(iii)追加の溶媒ですすぐことと、(iv)約78〜88°に維持されている精製水に溶液を加えることによって、スラリーを形成することと、(v)スラリーを撹拌することと、(vi)スラリーを冷却することと、(vii)ろ過することと、(viii)フィルターの内容物を水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することと、(ix)残った固体を真空下にて40℃を超えない温度で乾燥することとによって、さらに精製されて一水和物の形を生成する。
【0030】
第5の態様では、本発明は、式(4)
【0031】
【化9】

の化合物を合成する方法であって、式(2)
【0032】
【化10】

の化合物を過剰の、好ましくは約2〜10倍モル過剰の、より好ましくは約5〜10倍過剰のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートと接触させることを含む方法に関する。一実施形態では、反応は、エタノール中、約80℃の温度で行われる。エチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートは、5〜10倍過剰で存在する。
【0033】
さらなる実施形態では、式(2)
【0034】
【化11】

の化合物を、酸の存在下で、過剰のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートと接触させることを含む、式(4)の化合物を合成する追加の方法も提示される。反応は、還流下で行い、一般にエタノール中で行われる。反応は、触媒としてHClを使用して、または使用せずに行われる。最大0.1モル当量まで、好ましくは約0.05モル過剰のHClおよび約5〜10倍モル過剰、好ましくは約6.8〜7.5倍モル過剰のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートが使用される。この反応の生成物は、(a)反応が終了した混合物を約10℃に冷却することと、(b)ろ過することと、(c)フィルターの内容物をエタノールで洗浄することと、(d)残った固体を真空下にて40℃を超えない温度で乾燥することとによって単離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物(A形)のH NMRスペクトルである。
【図2】(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物の熱分析を示すグラフである。
【図3】(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物のX線回折パターンを示す図である。
【図4】(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドB形のX線回折パターンを示す図である。
【図5】(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドC形のX線回折パターンをA形と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義および一般的なパラメータ
本明細書において使用される場合、以下の語およびフレーズは、下記に説明される意味を有することが一般に意図される。但し、それらが使用されている状況が他に示している範囲までを除く。
【0037】
「任意選択の」または「任意選択で」とは、後に記載される事象または状況が、起こりうるまたは起こりえないことを意味し、説明が、前記事象または状況が起こる場合および前記事象または状況が起こらない場合を含むことを意味する。
【0038】
「治療有効量」という用語は、治療を必要としている哺乳動物に投与する場合、下記に定義されるように、そのような治療を行うのに十分な式Iの化合物の量を指す。治療有効量は、治療されている対象および疾患状態、対象の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与の方法などに応じて変化し、これらは当業者によって容易に決定することができる。
【0039】
「治療」または「治療すること」という用語は、哺乳動物における疾患の任意の治療を意味し、これには、
(i)疾患を予防すること、すなわち、疾患の臨床症状を発症させないようにすること、(ii)疾患を阻止すること、すなわち、臨床症状の発症を抑えること、および/または(iii)疾患を和らげること、すなわち、臨床症状を退行させること
が含まれる。
【0040】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容できる担体」には、任意のおよびすべての、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張遅延剤および吸収遅延剤などが含まれる。そのような媒体および薬剤を薬学的に活性な物質に使用することは、当技術分野においてよく知られている。従来の任意の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療用組成物中にそれを使用することが検討される。補足的な活性成分も、本組成物中に組み込むことができる。
【0041】
「多形体」という用語は、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの非晶形および溶媒和物を含むことが意図される。
【0042】
この化合物は、少なくとも3つの異なる結晶形で存在することができることが発見されており、それらは本明細書においてA形、B形、C形および非晶形生成物と称される。
【0043】
A形:この多形体は、1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドをプロトン性溶媒、例えばエタノールもしくはエタノール/水混合物から、または極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド/水から結晶化することによって、生成させることができる。A形は、一水和物であることが示されており、周囲温度では種々の多形体のうちで最も安定なものである。A形は、相対湿度ストレス条件下で、その融点まで安定である。
【0044】
B形:この多形体は、1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドのトリフルオロエタノール中溶液を、真空下にて周囲温度で蒸発させることによって生成される。この結晶のX線分析は、他のいずれの多形体とも明らかに異なっていた(図4を参照のこと)が、X線分析は乱れた幅広いピークを生じ、多形体は変化する量の水を含んでいたため、その構造を決定することは難しかった。この多形体の調製を確実に再現することは難しいことがわかった。
【0045】
C形:この多形体は、1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドをアセトニトリル中、60℃で長期間スラリーにすることによって生成される。この結晶のX線分析は、他のいずれの多形体とも明らかに異なっていた(図5を参照のこと)。多形体Cは、変化し易い水和物であり、高温では不安定な形に脱溶媒和することが示された。
【0046】
非晶質:この多形体は、A形多形体を200℃までの温度で加熱することによって生成される。この多形体は、大気中の水分の存在下で不安定であり、変化し易い水和物を形成する。
A形、B形、C形および非晶質の分析技術
X線粉末回折
X線粉末回折(XRPD)分析は、Shimadzu XRD−6000X線粉末回折計を使用し、CuKα放射線を用いて行った。この機器には、高精度焦点X線管球が備えられており、管のボルト数およびアンペア数を、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。発散および散乱スリットを1°に設定し、受光スリットを0.15mmに設定した。回折された放射線を、NaIシンチレーション検出器で検出した。3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)で2.5〜40°2θまでのθ−2θ連続走査を使用した。シリコン標準品を使用して、機器アライメントをチェックした。XRD−6000 v.4.1ソフトウェアを使用して、データを収集し、分析した。
【0047】
X線粉末回折(XRPD)分析はまた、CPS(湾曲位置敏感型)検出器が備えられたInel XRG−3000回折計を使用し、120°の28範囲で行った。機器の較正は、シリコン標準品を使用して行った。管のボルト数およびアンペア数を、それぞれ40kVおよび30mAに設定した。モノクロメーターのスリットを、長さ5mm、幅80μmに設定した。サンプルを、シリコンインサートを有するアルミニウム製サンプルホルダーまたはXRPD品質のガラスキャピラリーに充填した。各キャピラリーを、ゴニオメーターの先端上に取り付けた。このゴニオメーターにはモーターが備えられており、データ取得中にキャピラリーの回転を可能にしている。リアルタイムのデータを、Cu−Kα放射線を使用して、0.03°2θの分解能で収集した。通常は、データを300秒間かけて収集した。2.5〜40°2θの範囲内のデータポイントのみが、プロットされたXRPDパターンに表示される。
熱分析
熱重量(TG)分析は、TA Instruments2050または2950熱重量分析器を使用して行った。較正標準は、ニッケルおよびAlumel(商標)であった。サンプルをアルミニウム製サンプルパンに置き、TG炉の中に挿入し、正確に秤量した。サンプルを窒素中、10℃/分の速度で、300℃または350℃に加熱した。特に記述がない限り、サンプル重量は、分析前にTGA炉において25℃で平衡が保たれていた。
【0048】
示差走査熱量測定(DSC)分析は、TA Instruments示差走査熱量計2920を使用して行った。正確に秤量したサンプルを、クリンプしたパンまたは密閉パンに入れた。これらのパンにはピンホールが含まれており、圧力の解放が可能になっていた。各サンプルを窒素下にて10℃/分の速度で、300℃または350℃に加熱した。インジウム金属を較正標準として使用した。温度を転移最大値で記録した。
赤外分光法
Ever−Glo中赤外/遠赤外光源、拡張範囲臭化カリウムビームスプリッターおよび重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器を備えたMagna860(登録商標)フーリエ変換赤外(FT−IR)分光光度計(Nicolet Instrument Corp.)を使用して、赤外スペクトルを得た。特に記述がない限り、Spectra−Tech,Inc.拡散反射アクセサリー(Collector(商標))を、サンプリングに使用した。各スペクトルは、スペクトル分解能4cm−1で、256回積算されたスキャンを示す。化合物のサンプル調製は、サンプルをマイクロカップに入れ、この物質をすりスライドガラスで平らにすることからなった。バックグラウンドデータセットは、適切な位置に取り付けられたアライメントミラーを用いて得た。スペクトルは、サンプルのシングルビームデータセットの、バックグラウンドのシングルビームデータセットに対する比を表す。機器の波長較正は、ポリスチレンを用いて行った。
NMR分光法
5.87T(ラーモア周波数:H=250MHz)で稼働するBrukerモデルAM−250分光計を使用して、溶液相のH NMRスペクトルを周囲温度で得た。パルス幅7.5psおよび取得時間1.6834秒を使用して、5000Hzのスペクトルウィンドウにわたって時間領域データを得た。合計16,384個のデータポイントを収集した。5秒の緩和遅延時間を過渡の間に用いた。各データセットは通常、相互に平均化された128個の過渡からなった。スペクトルは、GRAMS132 A1ソフトウェア、バージョン6.00を利用して処理した。自由誘導減衰(FID)をゼロフィリングしてデータポイント数を4倍にし、0.61Hzの線幅拡大因子を用いて指数関数的に増加させた後、フーリエ変換を行った。Hスペクトルは、内部標準として添加したテトラメチルシラン(0ppm)を内部基準とした。
【0049】
あるいは、NMR分析は、実施例4に記載されているように行った。
水分吸着/脱着分析
水分吸着/脱着データは、VTI SGA−100 Vapor Sorption Analyzerを使用して収集した。吸脱着データは、窒素パージ下で、5%〜95%の範囲の相対湿度(RK)にわたって、10%RH間隔で収集した。塩化ナトリウム(NaCl)およびポリビニルピロリドン(PVP)を、較正標準として使用した。分析に使用した平衡基準は、5分で0.0100%未満の重量変化であり、重量基準が満たされなかった場合には、180分の最大平衡時間であった。プロットされたデータは、最初の水分含量に対して補正されていない。
命名法
化合物(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの構造は、以下の通りである。
【0050】
【化12】

(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの合成
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの大規模合成のための1つの方法を反応スキームIに示す。すべての反応は通常、窒素雰囲気下で行われる。
【0051】
【化13】

工程1−式(2)の調製
式(2)の化合物は、式(1)の化合物から、溶媒の存在下でヒドラジン一水和物との反応によって調製される。反応は、約45〜55℃の温度で行われる。反応が終了すると、式(2)の生成物は、式(2)の化合物の溶解度が制限されているプロトン性溶媒、例えばエタノールまたはイソプロパノールを用いて撹拌することによって単離される。混合物を約1〜5時間撹拌し、次いでろ過する。固体は、水を用いて撹拌することと、ろ過することと、水で洗浄し、続いてイソプロパノールで洗浄することと、真空下で乾燥することとによって精製され、これは精製することなく次工程に用いられる。
工程2−式(3)の調製
式(2)の化合物は、次いで、約1〜1.2モル当量のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートと反応することによって、式(3)の化合物に変換される。反応は、プロトン性溶媒中、好ましくはエタノール中、約還流温度で約2〜4時間行われる。約0℃に冷却した後、固体をろ過分離し、冷エタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させる。式(3)の生成物は、精製することなく次工程に用いられる。
工程3−最終生成物の調製
最終生成物は、式(3)の化合物から、メチルアミン、好ましくはメチルアミン水溶液と反応することによって調製される。反応は、約室温で、約4時間行われる。式Iの生成物は、従来の手段によって、例えば、ろ過することと、固体を冷エタノールで洗浄することと、減圧下で乾燥することとによって単離される。
出発物質の調製
(4S,2R,3R,5R)−2−(6−アミノ−2−クロロプリン−9−イル)−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオールが、工程1における出発物質として使用される。この化合物は市販されている。
【0052】
エチル2−ホルミル−3−オキソプロパノエートが、工程2における出発物質として使用される。それは市販されているか、または反応スキームIIに示されるように作ることができる。
【0053】
【化14】

エチル3,3−ジエトキシプロピオネートを、強塩基、好ましくは水素化ナトリウムの存在下でギ酸エチルと反応させる。反応は、約0〜5℃で、約24時間行われる。生成物は、従来の手段によって、例えば、水を加え、従来の溶媒、例えばt−ブチルメチルエーテルで不純物を抽出することと、水相を例えば塩酸で酸性化することと、続いてジクロロメタンなどの溶媒で抽出することと、乾燥させた抽出物から溶媒を減圧下で除去することとによって単離される。エチル2−ホルミル−3−オキソプロパノエートは、減圧下で蒸留することによって精製される。
【0054】
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの大規模合成のための好ましい方法を、反応スキームIIIに示す。
【0055】
【化15】

工程1−式(2)の調製
前述のように、式(2)の化合物は、式(1)の化合物から、溶媒の存在下でヒドラジン一水和物との反応によって調製される。しかしこの方法では、14.3〜16.7倍モル過剰のヒドラジン一水和物を、最初に約60〜65℃に加熱し、続いて式(1)の化合物を加える。温度は反応中、約60〜65℃に維持され、この反応は終了するまでに約1から3時間を要する。混合物中に残存する式(1)の化合物のレベルが約0.10%以下である場合、次いで反応混合物は、約40℃に冷却される。水がゆっくり加えられている間、温度は維持される。約4.2〜4.9質量当量が加えられると、混合物は約10℃に冷却され、その温度で1時間以上維持される。
【0056】
次いで、生成物をろ過によって単離し、水で洗浄し、次いで無水エタノールで洗浄する。固体を真空下にて最大30℃で12時間以上乾燥させ、次いでさらに精製することなく次工程に用いる。
工程2−式(4)の調製
式(2)の化合物は、次いで、過剰の、例えば2〜10倍過剰、好ましくは約5〜10倍過剰、理想的には約6.8〜7.5倍過剰のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートと反応することによって、式(4)の化合物に変換される。反応は、反応スキームIにおける式(3)の化合物の調製に関して記載されている条件と同じ条件下で行ってよい。
【0057】
あるいは、約0.05モル当量のHClなどの酸も、反応混合物に加えられてよい。反応は、還流温度で約2〜4時間行われ、残存する式(2)の化合物のレベルが0.50%以下であり、形成されうるいくらかの式(3)の化合物の量が2.5%以下である状態まで行われる。約10℃に冷却した後、固体をろ過分離し、無水エタノールで洗浄し、真空下にて最大40℃で乾燥させ、残存するエタノールを除去する。式(4)の生成物は、精製することなく次工程に用いられる。
【0058】
式(4)の化合物は、(2E)アルケン誘導体として描かれている。これは、この反応において形成される主要な異性体であるためである。しかし、かなりの量の(2Z)アルケン誘導体もこの反応において形成されうることが留意されるべきである。すなわち、
【0059】
【化16】

であり、エチル(2Z)−3−({9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−オキソラン−2−イル]−2−[4−(エトキシカルボニル)ピラゾリル]プリン−6−イル}アミノ)−2−ホルミルプロプ−2−エノエートと名付けられる。
【0060】
それ故に、式(4)の化合物は、(2E)アルケン誘導体のみとして表されるが、「式(4)の化合物」という用語は、その化合物が単独に(2E)異性体である場合、および生成物の主要部分が(2E)異性体であり、副次部分の(2Z)異性体も存在する場合の両方を含むことが意図される。工程3に記載されるような、メチルアミンとの反応による、式(4)の化合物の最終生成物への変換は、式(4)の化合物が(2E)異性体として存在しようが、または(2E)異性体と(2Z)異性体との混合物として存在しようが、同じ方法で行われる。
工程3−最終生成物の調製
最終生成物は、式(4)の化合物から、メチルアミン、好ましくはメチルアミン水溶液と反応することによって調製される。反応は、最初に約0〜5℃で約8時間、好ましくは加圧反応器中で行われ、続いて約1時間かけて50〜60℃に温度を上げ、その温度を15〜30分間維持する。
【0061】
あるいは、メチルアミンを最初に加圧容器中に入れ、約2.5〜7.5℃に冷却し、次いで、その温度を維持しながら式(4)の化合物を加える。反応は、残存する式(3)の化合物のレベルが約0.10%未満である状態まで行われる。
【0062】
終了時、生成物は、従来の手段によって、例えば、真空下にて約35℃以下で脱気して過剰なメチルアミンを除去することによって単離される。次いで、真空を解き、混合物を約0〜5℃に冷却し、その温度で15分間から1時間維持し、続いてろ過する。こうして得られた固体を、水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄し、減圧下にて約40℃以下の温度で乾燥させる。
【0063】
この工程は、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドをその一水和物として提供する。この多形体は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かすことと、この溶液からいずれの固体不純物もろ過することと、追加のDMSOですすぐことと、水に加えることによって溶液から一水和物を沈殿させることとによって、さらに精製することができる。この方法が特に効果的であるのは、DMSO溶液および水が約78〜88℃に加熱され、撹拌しながら約1時間その温度で維持される場合である。撹拌した後、スラリーを約20℃にゆっくり冷却する。次いで、最終生成物を、これまでに記載されたように、ろ過によって単離し、精製水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄し、乾燥させる。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
エチル−2−ホルミル−3−オキソプロピオネートの調製
【0065】
【化17】

磁気撹拌子、熱電対、デジタル温度計、ガス注入口および排出口ならびに添加用漏斗を備え付けた三つ口または四つ口丸底フラスコをアルゴンで洗い流した。エチル3,3−ジエトキシプロピオネート(64.5g)のテトラヒドロフラン中溶液を添加用漏斗に投入した。水素化ナトリウム(21.2gの60%分散物)を反応フラスコに投入し、続いてテトラヒドロフランを加えた。フラスコの内容物を氷浴中で0〜5℃に冷却し、ギ酸エチル(257g)を加えた。混合物を0〜5℃に冷却し、5℃未満の内部温度を維持しながら、添加用漏斗の内容物を滴下した。氷浴を取り外し、内容物を周囲温度に温めた。エチル3,3−ジエトキシプロピオネートの消費を、TLC分析によってモニターした。氷水(10.6vol)を加えることによって反応物をクエンチし、メチルt−ブチルエーテルで3回抽出し(各5.4vol)、有機層を廃棄した。水相を濃塩酸でpH1から1.5に酸性化した。酸性化した水層をジクロロメタンで3回抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣を真空下で蒸留して、エチル−2−ホルミル−3−オキソプロピオネート27.92gを70%収率で得た。
【0066】
(実施例2)
A.2−ヒドラジノアデノシン(2)の調製
【0067】
【化18】

撹拌機、ガス注入口、ガス排出口および熱電対を備え付けたフラスコをアルゴンで洗い流した。2−クロロアデノシン半水和物(53.1g)を加え、続いてヒドラジン一水和物(134g)を加えた。混合物を撹拌すると同時に、40〜45℃に2時間加熱した。反応の進行を、TLC分析によって追跡した。反応が終了すると、熱源を取り外し、エタノール(800ml)を加えた。混合物を周囲温度で2時間撹拌し、次いで沈殿物をろ過によって収集した。ろ過ケーキをエタノールで洗浄し、減圧下で30分間乾燥させた。撹拌機を備え付けたきれいなフラスコに固体を移し、水(300ml)を加えた。懸濁液を室温で18時間撹拌し、固体をろ過によって単離した。ろ過ケーキを氷水(300ml)で洗浄し、続いて氷冷エタノール(300ml)で洗浄した。固体を減圧下で乾燥させて、2−ヒドラジノアデノシン(41.38g、収率81.4%、純度99.3%)を得た。
B.2−ヒドラジノアデノシン(2)の代替調製
ヒドラジン水和物(258g、250ml)を含む反応容器を40〜50℃に加熱した。温めた混合物に、45〜55℃の間の温度を維持しながら、2−クロロアデノシン半水和物(100g)を少しずつ加えた。温度をこの温度で2時間保ち、次いで、温度を45〜55℃で維持しながら、脱イオン水(500ml)を30分間かけて加えた。次いで混合物を3時間かけて0〜5℃に徐々に冷却し、次いでこの温度でさらに30分間撹拌した。次いで固体をろ過分離し、冷(2〜5℃)脱イオン水(200ml)で洗浄し、続いてエタノール(400ml)で洗浄した。固体を真空下で12時間乾燥させて、2−ヒドラジノアデノシンを得た。
C.2−ヒドラジノアデノシン(2)の代替調製
反応容器をヒドラジン水和物(1285g)で満たす。溶液を約62℃に加熱し、約62℃の温度を維持しながら、2−クロロアデノシン(500g)を加える。混合物中に残存する2−クロロアデノシンのレベルが0.10%以下である状態まで、混合物を62℃を目標に、少なくとも2時間維持する。混合物を約40℃に冷却し、混合物をチェックして、固体が存在していることを確認する。温度を約40℃に維持しながら、水(2275g)をゆっくり加える。混合物を約10℃に冷却し、1時間以上維持する。生成物を、ろ過によって単離し、水(1195g)で洗浄し、次いで無水エタノール(1885g)で洗浄する。生成物を、真空下にて最大30℃で12時間以上乾燥させ、2−ヒドラジノアデノシンを得る。
【0068】
(実施例3)
エチル1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−カルボキシレート(3)の調製
【0069】
【化19】

撹拌機、ガス注入口、ガス排出口および還流冷却器を備え付けたフラスコに、エチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネート(23.93g、0.17mol)を入れた。2−プロパノールをフラスコに加え、続いて2−ヒドラジノアデノシン(44.45g、0.15mol)を加えた。混合物を加熱し、撹拌下で2〜4時間還流させ、反応の進行をTLC分析によって追跡した。反応が終了したと判断されると、熱源を取り外し、混合物を室温に冷却した。懸濁液を撹拌下にて氷浴中で1.5から2時間冷却した。固体を真空ろ過によって単離し、氷冷2−プロパノールで洗浄した。生成物であるエチル1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−カルボキシレートを、恒量に至るまで減圧下で乾燥させた。
【0070】
(実施例4)
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの調製
【0071】
【化20】

エチル1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−カルボキシレート(46.4g)およびメチルアミン(水中40%、600ml)の混合物を周囲温度で約4時間撹拌し、反応の進行をHPLC分析によって追跡した。過剰なメチルアミンの大部分を減圧下で除去し、残りの混合物を0℃で2時間冷却した。固体物質をろ過分離し、氷冷した200プルーフエタノールで洗浄し、減圧下で乾燥させて、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドをその一水和物として得た。
【0072】
この物質の構造をH NMRによって確認した(図1および下記を参照のこと)。得られた熱分析(図2を参照のこと)の結果は、1分子の水が存在することと一致した。X線粉末回折パターンを得た(図3)。
【0073】
【化21】

Hおよび13C NMRスペクトルを、以下のようにして得た。上記で得られた物質の2つのサンプルを量り分け、d−DMSOに溶かした。5.3mgはHスペクトル用に使用し、20.8mgは13Cスペクトル用に使用した。Hについては400MHzで、および13Cについては100MHzで稼働するJEOL Eclipse400分光計を使用して、すべてのスペクトルを周囲温度で得た。
【0074】
【表1】

(実施例5)
A.エチル(2E)−3−({9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−オキソラン−2−イル]−2−[4−(エトキシカルボニル)ピラゾリル]プリン−6−イル}アミノ)−2−ホルミルプロプ−2−エノエート(4)の調製
【0075】
【化22】

2−ヒドラジノアデノシン(100g、0.34mol)、エチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネート(242g、1.7mol)および無水エタノールの混合物を反応器に投入し、この混合物を加熱して2時間還流させた。反応が終了したと判断されると、熱源を取り外し、混合物を3時間かけて5〜10℃に徐々に冷却した。スラリーをこの温度で30分間撹拌し、混合物をろ過した。固体物質を冷(5〜10℃)無水エタノールで洗浄し、次いで真空下にて40℃を超えない温度で乾燥させて、エチル(2E)−3−({9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−2−[4−(エトキシカルボニル)−ピラゾリル]プリン−6−イル}アミノ)−2−ホルミルプロプ−2−エノエートを得た。
B.エチル(2E)−3−({9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−オキソラン−2−イル]−2−[4−(エトキシカルボニル)ピラゾリル]プリン−6−イル}アミノ)−2−ホルミルプロプ−2−エノエート(4)の代替調製
反応容器を2−ヒドラジノアデノシン(450g)および無水エタノール(11376g)で満たす。HCl(7.47g)およびエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネート(1557g)を加える。混合物を加熱して還流させ、サンプル採取し、混合物中に残存する2−ヒドラジノアデノシンのレベルが0.50%以下であり、式(3)の化合物のレベルが2.5%以下である状態まで行う。混合物を約10℃にゆっくり冷却する。生成物である式(4)の化合物をろ過によって単離し、無水エタノール(5121g)で洗浄する。生成物を真空下にて最大40℃で乾燥させ、残存するエタノールが5000ppm以下である状態まで行い、エチル(2E)−3−({9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−2−[4−(エトキシカルボニル)−ピラゾリル]プリン−6−イル}アミノ)−2−ホルミルプロプ−2−エノエートを得る。
【0076】
実施例5Aの生成物の元素分析によって、以下の結果を得た:C、48.75%;H、4.86%;N、18.05%;O、27.57。理論上:C、49.72%;H、4.74%;N、18.45%;O、27.09。分析は、所望の生成物の半水和物に対する実験誤差限界内に相当する(C、48.89%;H、4.81%;N、18.1%;O、28.12)。
【0077】
Hおよび13C NMRスペクトルを、以下のようにして得た。式(4)の化合物20.2mgを約0.75mlのDMSO−d6に溶かし、Hについては400MHzで、および13Cについては100MHzで稼働するJEOL ECX−400NMR分光計を使用して、スペクトルを周囲温度で得た。化学シフトはDMSO溶媒を基準とし、Hについては2.50ppmおよび13Cについては39.5ppmを基準とした。
結果
Hおよび13Cの化学シフトを表1に掲載する。約60/30の比で存在する2つの異性体は、Hおよび13Cの両方のスペクトル中に見られ、表中では主要および副次として分類した。
【0078】
【表2】

式(4)の化合物は、以下の2つの異性体
【0079】
【化23】

の混合物であることが確認された。
【0080】
(実施例6)
A.化合物(4)からの(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの調製
【0081】
【化24】

40%メチルアミン水溶液(1300ml)を加圧反応器に入れ、0〜5℃に冷却し、実施例5Aの生成物(エチル(2E)−3−({9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−2−[4−(エトキシカルボニル)ピラゾリル]プリン−6−イル}アミノ)−2−ホルミルプロプ−2−エノエート(100g)を加えた。混合物を0〜5℃で少なくとも8時間撹拌し、終了を得るために反応をモニターした。終了すると、混合物を温め、50〜60℃の間の温度を1時間維持し、次いで1時間かけて30℃未満に冷却した。温度が30℃未満になると、100〜150mmHgの圧力を使用して混合物を脱気し、温度を0〜5℃に下げた。100〜150mmHgの圧力を維持しながら、混合物を0〜5℃で少なくとも1時間撹拌した。次いで、真空を中止して窒素で置換し、温度を0〜5℃で30分間以上維持した。次いで、固体生成物をろ過分離し、水(500ml×3回)で洗浄し、次いで無水エタノール(625ml)で洗浄した。生成物を、真空下で温度が40℃を超えないようにしながら乾燥させて、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドをその一水和物として得た。
B.化合物(4)からの(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの代替調製
加圧容器を47%メチルアミン水溶液(10080g)で満たす。溶液を冷却し、5℃の目標温度を維持しながら、上述の実施例5Bにおいて調製された式(4)の化合物(600g)を加える。混合物を5℃の目標温度で撹拌し、混合物中に残存する式(3)の化合物のレベルが0.10%未満である状態まで行う。反応混合物を真空下にて35℃以下で脱気して過剰なメチルアミンを除去する。真空を解き、混合物を2.5℃に冷却し、少なくとも30分間維持する。次いで、生成物をろ過によって単離し、水(9000g以上)で洗浄し、次いで無水エタノール(2964g以上)で洗浄する。生成物を真空下にて最大40℃で乾燥させ、残存するエタノールが5000ppm以下である状態まで行い、粗(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドをその一水和物として得る。
【0082】
Hおよび13C NMRスペクトルを、以下のようにして得た。実施例6Aにおいて得られた物質の2つのサンプルを量り分け、d−DMSOに溶かした。5.3mgはHスペクトル用に使用し、20.8mgは13Cスペクトル用に使用した。Hについては400MHzで、および13Cについては100MHzで稼働するJEOL Eclipse400分光計を使用して、すべてのスペクトルを周囲温度で得た。
【0083】
【表3−1】

【0084】
【表3−2】

元素分析によって、以下の結果を得た:C、43.96%;H、4.94%;N、27.94。理論上:C、44.12%;H、4.94%;N、27.44%;O、27.09。分析は、一水和物に対する実験誤差限界内に相当する。
【0085】
(実施例7)
A.(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物の精製
実施例4において調製された(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物(100g)のジメチルスルホキシド(300ml)中溶液を、0.6から0.8ミクロンの前置フィルターおよび0.2ミクロンのフィルターを通してろ過し、いずれの固体不純物も除去した。次いで、ろ液を脱イオン水(1リットル)に、撹拌しながら1時間かけてゆっくり加え、こうして生成されたスラリーを1時間以上撹拌した。固体をろ過分離し、脱イオン水(1リットル×2回)で洗浄し、真空下で1時間以上乾燥させた。
【0086】
次いで、乾燥させた生成物を、脱イオン水(1.5リットル)を用いて2時間以上再びスラリーにし、ろ過分離し、脱イオン水(1リットル)で洗浄し、続いて無水エタノール(750ml)で洗浄した。精製された生成物を真空下にて40℃以下の温度で12時間以上乾燥させて、2−ヒドラジノアデノシンの不純物が全くない、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物を得た。
B.(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物の代替精製
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物(400g)の溶液をDMSO(1320g)に溶かし、この溶液を0.6から0.8ミクロンおよび0.2ミクロンのインラインフィルターに順に通してろ過する。追加のDMSO(880g)を使用して、フィルター系をすすぐ。83℃の目標温度を維持しながら、溶液を精製水(5000g)にゆっくり加える。加えている間に生成物が結晶化し始め、スラリーを83℃の目標温度で約1時間撹拌する。混合物を20℃にゆっくり冷却する。生成物をろ過によって単離し、精製水(8000g)で洗浄する。
【0087】
固体を容器に投入し、精製水(6000g)を加える。スラリーを約1時間混合する。生成物をろ過によって単離し、精製水(4000g)で洗浄し、次いで無水エタノール(3160g)で洗浄する。生成物を真空下にて最大40℃で乾燥させ、残存する水分含量が5.5%以下であり、残存するエタノールが2000ppm以下である状態まで行い、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド一水和物を得る。
本発明の好ましい実施形態においては、以下が提供される。
(項1)
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド
【化25】

を合成する方法であって、式(4)
【化26】

の化合物をメチルアミン水溶液と、約2.5〜7.5℃の温度で接触させることによる方法。
(項2)
反応を密閉加圧反応器中で行う、上記項1に記載の方法。
(項3)
生成物を、
(a)真空下にて35℃以下で脱気して過剰なメチルアミンを除去することと、
(b)前記真空を解き、0〜5℃に約15分から1時間冷却することと、
(c)こうして形成されたスラリーをろ過することと、
(d)フィルターの内容物を水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することと、
(e)残った固体を真空下にて40℃を超えない温度で乾燥することと
によって単離する、上記項2に記載の方法。
(項4)
前記(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドの最終生成物を、
(i)上記項3に記載の工程(e)由来の前記乾燥固体を溶媒に溶かすことと、
(ii)前記溶液からいずれの固体不純物もろ過することと、
(iii)追加の溶媒ですすぐことと、
(iv)約78〜88°に維持されている精製水に溶液を加えることによって、スラリーを形成することと、
(v)前記スラリーを撹拌することと、
(vi)前記スラリーを冷却することと、
(vii)ろ過することと、
(viii)フィルターの内容物を水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することと、
(ix)残った固体を真空下にて40℃を超えない温度で乾燥することと
によってさらに精製する、上記項3に記載の方法。
(項5)
工程(i)および(iii)において使用される前記溶媒がジメチルスルホキシドである、上記項4に記載の方法。
(項6)
最終生成物中に残存する水分含量が5.5%以下であり、残存するエタノールが2000ppm以下である、上記項5に記載の方法。
(項7)
式(4)
【化27】

の化合物を合成する方法であって、
式(2)
【化28】

の化合物を、任意選択で酸の存在下で、過剰のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートと接触させることを含む方法。
(項8)
反応をエタノール中で行う、上記項6に記載の方法。
(項9)
前記酸はHClであり、最大0.1モル当量までを使用する、上記項6に記載の方法。
(項10)
反応を還流下で行う、上記項9に記載の方法。
(項11)
約5〜10倍モル過剰のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートを使用する、上記項6に記載の方法。
(項12)
約6.8〜7.5倍モル過剰のエチル2−ホルミル−3−オキソプロピオネートを使用する、上記項11に記載の方法。
(項13)
生成物を、
(a)反応が終了した混合物を約10℃に冷却することと、
(b)ろ過することと、
(c)フィルターの内容物をエタノールで洗浄することと、
(d)残った固体を真空下にて40℃を超えない温度で乾燥することと
によって単離する、上記項12に記載の方法。
(項14)
式(2)
【化29】

の化合物の調製方法であって、
式(1)
【化30】

の化合物を14.3〜16.7倍モル過剰のヒドラジンと、約60〜65℃の温度で反応させることを含む方法。
(項15)
前記ヒドラジンを、最初に約60〜65℃に加熱し、続いて式(1)の前記化合物を加える、上記項14に記載の方法。
(項16)
式(2)の前記化合物を、
(a)前記反応混合物を約40℃に冷却することと、
(b)温度を約40℃で維持しながら、4.2〜4.9質量当量の水を加えることと、
(c)前記混合物を約10℃に冷却し、その温度で少なくとも約1時間維持することと、(d)ろ過することと、
(e)フィルターの内容物を水で洗浄し、続いてエタノールで洗浄することと、
(f)残った固体を真空下にて30℃を超えない温度で少なくとも12時間乾燥することと
によって単離する、上記項14に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載の発明


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−67662(P2013−67662A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−7536(P2013−7536)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2010−508354(P2010−508354)の分割
【原出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(504003226)ギリアード・パロ・アルト・インコーポレイテッド (62)
【氏名又は名称原語表記】Gilead Palo Alto,Inc.
【Fターム(参考)】