説明

ACアダプタ

【課題】 ACコードタイプのACアダプタにおいて、インレットプラグタイプのACアダプタのハーフケースを使用可能とするACアダプタを提供する。
【解決手段】 ACコード保持用スペーサ60を有し、インレットプラグタイプのACアダプタに使用している下側ハーフケース32と上側ハーフケース33とを組み合わせてなるケースを有する。ACコード11のブッシュ部12がACコード保持用スペーサ60に嵌合してあり、ACコード保持用スペーサ60が下側ハーフケース32と上側ハーフケース33とが形成する開口内に固定されて収まっている。開口はインレットプラグ40の端面45のサイズに対応する大きさである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポータブル機器用のACアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来のACコードタイプのACアダプタ1を示す。このACアダプタ1は、スイッチングレギュレータ回路が下側ハーフケース2と上側ハーフケース3とを組み合わせてなるケース4内に組み込んであり、ケース4の一側から、先端にACプラグ10を有するACコード11が延びており、ケース4の反対側から、先端にプラグ20を有するDCコード21が延びている構成である。ACコード11はその根元を補強しているブッシュ部12が下側ハーフケース2と上側ハーフケース3との間に挟まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポータブル機器用のACアダプタには、上記のACコードタイプの他に、図7、図8(A)、(B)に示すインレットプラグタイプのACアダプタ30がある。このインレットプラグタイプのACアダプタ30は、スイッチングレギュレータ回路とインレットプラグ40とが下側ハーフケース32と上側ハーフケース33とを組み合わせてなるケース34内に組み込んであり、端子41、42側の端面45がケース34の端の開口100に露出している構成である。図8(A)に示すように、下側ハーフケース32の後述するレール部82、83等がインレットプラグ40の両側の溝43、44に嵌合してあり、インレットプラグ40はY1−Y2方向に関して固定してある。ケース34の外形寸法は前記のケース4の外形寸法と同じである。下側ハーフケース32及び上側ハーフケース33は同じ深さである。
【0004】
下側ハーフケース2と下側ハーフケース32は殆どの部分は同じであるけれども、ブッシュ部12を保持する部分とインレットプラグ40を保持する部分とが相違している。また、上側ハーフケース3と上側ハーフケース33は殆どの部分は同じであるけれども、ブッシュ部12を保持する部分とインレットプラグ40を保持する部分とが相違している。
【0005】
このため、ACコードタイプのACアダプタ1とインレットプラグタイプのACアダプタ30との両方を生産しているメーカでは、下側ハーフケース2の成形金型及び上側ハーフケース3の成形金型の他に、下側ハーフケース32の成形金型及び上側ハーフケース33の成形金型を用意する必要があり、新しい製品のACアダプタを開発して生産する場合のスケジュールを短縮することが難しかった。
【0006】
また、別のタイプのACコードを使用する場合には、この別のタイプのACコードに合わせて下側ハーフケースの成形金型及び上側ハーフケースの成形金型を製作する必要があり、別のタイプのACコードへの迅速な対応が難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決したACアダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下側ハーフケース(32)と上側ハーフケース(33)とを組み合わせてケース(34)を構成するACアダプタにおいて、
前記下側ハーフケース(32)は、その側板部に第1の凹部(81)を有する形状であり、
前記上側ハーフケース(33)は、その側板部に第2の凹部(91)を有する形状であり、
前記下側ハーフケースと前記上側ハーフケースとが組み合わされた状態で、前記第1の凹部と前記第2の凹部とが対向して開口(100)を形成し、
外形が前記開口に対応した大きさであり、ACコード(11)のブッシュ部(12)が嵌合するACコード用凹部(62)を有するACコード保持用スペーサ(60)を有し、
該ACコード保持用スペーサ(60)が、前記ACコード用凹部(62)に前記ACコードのブッシュ部(12)が嵌合されて保持された状態で、前記開口(100)内に嵌合してある構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下側ハーフケース及び上側ハーフケースは設計変更しないで、小さい部品であるACコード保持用スペーサの設計を変更するだけで、別のタイプのACコードへの迅速な対応が可能となる。また、開口の大きさをインレットプラグに対応する大きさとすることにより、下側ハーフケース及び上側ハーフケースをACコードタイプのACアダプタにも流用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は発明の1実施例であるACコードタイプのポータブル機器用のACアダプタ50を示す。図2はACアダプタ50のACコード保持部を分解して示す。図3(A)、(B)、(C)はACアダプタ50を断面して示す。各図中、図6乃至図8に示す構成部分と対応する構成部分には同じ符号を付す。X1−X2は幅方向、Y1−Y2は長手方向、Z1−Z2は高さ方向である。
【0012】
ACアダプタ50は、本発明の要部をなすACコード保持用スペーサ60を有し、インレットプラグタイプのACアダプタ30に使用している下側ハーフケース32と上側ハーフケース33とを組み合わせてなるケース34を有する構成である。また、ケース34の一側から、先端にACプラグ10を有するACコード11が延びており、ケース34の反対側から、先端にプラグ20を有するDCコード21が延びている。
【0013】
[ACコード11の構成]
図2に示すように、ACコード11のブッシュ部12は、二つの対向するフランジ部13、14を有し、フランジ部13、14の間は溝部15となっている。
【0014】
[ACコード保持用スペーサ60の形状]
ACコード保持用スペーサ60は、図2及び図4(A)乃至(F)に示すように、合成樹脂の成形部品であり、外形がインレットプラグ40の端面45(図7参照)の四角形状と同じ四角形状である本体61を有し、この本体61に、ACコード用凹部62、溝64、65、上方向突起部66、67、及び下方向突起部68、69が形成してある構成である。本体61は、Z1側の端面61Z1、Z2側の端面61Z2、X1側の端面61X1、X2側の端面61X2を有する。
【0015】
ACコード用凹部62は、本体61の端面61Z1よりZ2方向に切り込んで形成してあり、ACコード11のブッシュ部12のフランジ部13、14と溝部15とに対応した形状寸法である。63は本体61のうち凹部62に臨む縁部であり、X方向寸法がZ方向寸法より長いU字状である。
【0016】
溝64は、本体61の端面61X1に全長に亘ってZ1−Z2に延在している。溝65は、本体61の端面61X2に全長に亘ってZ1−Z2に延在している。
【0017】
上方向突起部66、67は、端面61Z1の溝64、65の端の近くからZ1方向に突き出ている。下方向突起部68、69がは、端面61Z2の溝64、65の端の近くからZ2方向に突き出ている。上方向突起部66、67の突き出し寸法Aは、下方向突起部68、69の突き出し寸法Bよりも長く、A>Bである。
【0018】
また、本体61のY1側の面には、Z2側に、フランジ収容部70が形成してある。
【0019】
[下側ハーフケース32及び上側ハーフケース33の形状]
図2に示すように、下側ハーフケース32は、Y2側の側板80にU字形状の第1の凹部81を有する。また、第1の凹部81のX1側とX2側とにレール部82、83が形成してある。レール部82、83は共にZ1−Z2に延在している。上側ハーフケース33には、Y2側の側板90に逆U字形状の第2の凹部91を有する。また、第2の凹部91のX1側とX2側とにレール部92、93が形成してある。レール部92、93は共にZ1−Z2に延在している。第1の凹部81の深さ寸法Cは、第2の凹部91の深さ寸法Dよりも大きく、C>Dである。下側ハーフケース32と上側ハーフケース33とが組み合わされると、図3(C)に示すように、第1の凹部81と第2の凹部91とが対向して、四角の開口100を形成する。
【0020】
図3(B)中、Eは第1の凹部81の端から下側ハーフケース32の底板部84の内面85までのZ方向の寸法であり、Fは第2の凹部91の端から上側ハーフケース32の天板部94の内面95までのZ方向である。下側ハーフケース32及び上側ハーフケース33は同じ深さであって、且つ、C>Dであるため、寸法Eと寸法Fとは等しくはなく、E<Fである。上方向突起部66、67の突き出し寸法Aは寸法Fに対応した寸法であり、下方向突起部68、69の突き出し寸法Bは寸法Eに対応した寸法である。
【0021】
[ACコードの拘束状態]
次にACアダプタ50におけるACコードの拘束状態について説明する。
【0022】
[ACコード11とACコード保持用スペーサ60との関係]
図2に矢印110で示すように、ACコード11のブッシュ部12の溝部15の部分がACコード保持用スペーサ60のACコード用凹部62に丁度に嵌合され、同じく図2及び図3(A)に示すように、フランジ部13、14がその三辺で縁部63を挟んでいる。先端側のフランジ部13はフランジ収容部70内に収まっている。
【0023】
これによって、ACコード11はACコード保持用スペーサ60に対してY1−Y2方向の動きを拘束されている。
【0024】
[ACコード保持用スペーサ60とケース34との関係]
図2に示すように、ACコード11のブッシュ部12を保持しているACコード保持用スペーサ60を、例えば、最初に下側ハーフケース32の第1の凹部81に嵌合させ、ACコード保持用スペーサ60のZ2側の略半分が第1の凹部81に収まった状態とし、次いで、上側ハーフケース33をZ1側から下側ハーフケース32に組み合わせ、このときに、第2の凹部91をACコード保持用スペーサ60のZ1側の略半分に嵌合させるようにする。
【0025】
これにより、以下のようになる。図3(C)に示すように、本体61が開口100内に丁度に収まり、開口100を塞いでいる。図3(A)及び(C)に示すように、溝64のZ2側半分にレール部82が、溝65のZ2側半分にレール部83が、溝64のZ1側半分にレール部92が、溝65のZ1側半分にレール部93が夫々嵌合している。図3(B)に示すように、下方向突起部68、69が側板80のうち第1の凹部81と底板部84との間の部分の内側面を係止している。同じく、図3(B)に示すように、上方向突起部66、67が側板90のうち第2の凹部91と天板部94との間の部分の内側面を係止している。
【0026】
よって、ACコード保持用スペーサ60は、ケース34に対してY1−Y2方向の動きを拘束されている。特に、Y2方向、即ち、ACコード11をケース34に対して引っ張る方向については、上方向突起部66、67及び下方向突起部68、69もACコード保持用スペーサ60のケース34に対する動きを拘束するように機能している。
【0027】
これによって、ACコード11はケース34に対してY1−Y2方向の動きを拘束されている。特に、ACコード11をケース34に対して引っ張る方向であるY1方向については、上下左右の四辺の全部について拘束され、ACコード11をケース34内に押し込む方向に比べて、強く拘束されている。
【0028】
また、側板90のうち第2の凹部91の奥側の縁の部分91aが、フランジ部13のうちのZ1側の部分とフランジ部14のZ1側の部分との間に嵌合して、ケース34の一部がブッシュ部12の一部を拘束している。
【0029】
上記のように、ACコード保持用スペーサ60を使用することによって、インレットプラグタイプのACアダプタの下側ハーフケース32と上側ハーフケース33とを使用して、ACコード11をケース34に固定することが可能となる。また、設計変更に手間及び費用がかかる下側ハーフケース32及び上側ハーフケース33は設計変更しないで、サイズが小さくて設計変更が容易であるACコード保持用スペーサを設計変更するだけで、別のタイプのACコードへの迅速な対応が可能となる。
【0030】
[ACコード保持用スペーサ60の誤った向きでの組み込み]
次に、ACコード保持用スペーサ60を誤ってZ1−Z2方向上逆の向きで組み込んだ場合について、図5(A)、(B)を参照して説明する。
【0031】
ACコード保持用スペーサ60を誤ってZ1−Z2方向上逆の向きで組み込むと、図5(A)、(B)に示すように、突起部66、67が底板部84の内面85に当り、本体61が第1の凹部81内に完全に収まらずに、第1の凹部81から若干浮いて、隙間120ができた状態となる。よって、上側ハーフケース33を取り付けた場合に下側ハーフケース32と当接しないで下側ハーフケース32から若干浮いて、隙間130ができた状態となり、上側ハーフケース33の下側ハーフケース32への固定が出来なくなる。この時点でACコード保持用スペーサ60が逆向きであることが分かり、ACコード保持用スペーサ60が逆向きのままACアダプタ50の組み立てが完了してしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1になるACコードタイプのACアダプタの斜視図である。
【図2】図1のACアダプタのACコード保持部を分解し拡大して示す斜視図である。
【図3】ACアダプタを断面して示す図である。
【図4】ACコード保持用スペーサを示す図である。
【図5】ACコード保持用スペーサを逆の向きで組み込んだ場合の状態を示す図である
【図6】従来のACコードタイプのACアダプタの斜視図である。
【図7】従来のインレットプラグタイプのACアダプタの斜視図である。
【図8】図7のインレットプラグタイプのACアダプタを示す図である。。
【符号の説明】
【0033】
30 インレットプラグタイプのACアダプタ
32 下側ハーフケース
33 上側ハーフケース
40 インレットプラグ
50 ACコードタイプのACアダプタ
60 ACコード保持用スペーサ
61 本体
62 ACコード用凹部
64、65 溝
66、67 上方向突起部
68、69 下方向突起部
81 第1の凹部
82、83 レール部
91 第2の凹部
92、93 レール部
100 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側ハーフケースと上側ハーフケースとを組み合わせてケースを構成するACアダプタにおいて、
前記下側ハーフケースは、その側板部に第1の凹部を有する形状であり、
前記上側ハーフケースは、その側板部に第2の凹部を有する形状であり、
前記下側ハーフケースと前記上側ハーフケースとが組み合わされた状態で、前記第1の凹部と前記第2の凹部とが対向して開口を形成し、
外形が前記開口に対応した大きさであり、ACコードのブッシュ部が嵌合するACコード用凹部を有するACコード保持用スペーサを有し、
該ACコード保持用スペーサが、前記ACコード用凹部に前記ACコードのブッシュ部が嵌合されて保持された状態で、前記開口内に嵌合してある構成としたことを特徴とするACアダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載のACアダプタにおいて、
前記開口は、インレットプラグに対応する大きさである構成としたことを特徴とするACアダプタ。
【請求項3】
請求項1に記載のACアダプタにおいて、
前記ACコード保持用スペーサは、その両側に溝を有し、
該溝が、前記下側ハーフケースの側板部の第1の凹部の縁のレール部と上記上側ハーフケースの側板部の第2の凹部の縁のレール部とに嵌合した構成としたことを特徴とするACアダプタ。
【請求項4】
請求項3に記載のACアダプタにおいて、
前記ACコード保持用スペーサは、更に、下方向に突き出した下方向突起部と上方向に突き出した上方向突起部とを有し、
該下方向突起部が前記下側ハーフケースの側板部の内側を係止し、且つ、該上方向突起部が前記上側ハーフケースの側板部の内側を係止した構成としたことを特徴とするACアダプタ。
【請求項5】
請求項4に記載のACアダプタにおいて、
前記第1の凹部と前記第2の凹部とは、異なる深さを有し、
前記下方向突起部と上方向突起部とは異なる長さを有し、
前記ACコード保持用スペーサが上下逆の向きで取り付けられた場合には、長い方の突起部がハーフケースの面に当って、下側ハーフケースと上側ハーフケースとが正常に組み合わされない構成としたことを特徴とするACアダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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