説明

ACTRIIB融合ポリペプチドおよびその使用

【課題】筋肉および/または骨に関連する障害に対する安全かつ有効な治療方法を提供すること。
【解決手段】インビトロおよびインビボで増殖分化因子(GDF−8)を阻害するための方法および組成物が、提供される。筋変性障害および骨変性障害を処置するための方法が、提供される。この方法はまた、健常な動物において骨量および骨密度を増加させるのに有用である。また、骨格筋質量および骨密度のネガティブな調節に関連するGDF−8活性を阻害するための方法が提供される。これらの方法および組成物は、筋肉、骨、またはグルコースホメオスタシスの変性障害を診断、予防、または処置するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年10月25日に出願された米国仮出願番号60/421,041(その全体が本明細書中で参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本願の技術分野は、増殖分化因子−8(growth and differentiation factor−8)(GDF−8)(可溶性形態のアクチビンII型レセプター、およびそのフラグメントを含む)のインヒビター、特に、インビボでGDF−8活性を阻害するインヒビターに関する。この分野は、さらに、筋肉、骨、またはグルコースホメオスタシスの変性疾患を診断、予防、または処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
TGF−βファミリーは、多数の構造関連増殖因子であり、そのすべてが生理学的に重要な増殖調節特性および形態形成特性を有する(Kingsleyら()1994)Genes Dev.、8:133−146;Hoodlessら(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.、228:235−272)。これらの因子としては、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン、インヒビン、ミューラー阻害物質、グリア誘導神経栄養性因子、およびなお増え続けている増殖分化因子(GDF)(例えば、GDF−8)が挙げられる。これらのタンパク質の多くは、高度に相同性である。例えば、ヒトBMP−11(GDF−11としてもまた公知)は、アミノ酸レベルでGDF−8に対して90%同一である(Gamerら(1999)Dev.Biol.208:222−232;http://www.ronmyrick.comNakashimaら(1999)Mech.Dev.80:185−189)。
【0004】
TGF−βファミリーのほとんどのメンバーは、細胞表面上に発現された2つの異なる型のセリン/スレオニンキナーゼレセプター(すなわち、約50〜55kDaのI型レセプターおよび70kDaより大きいII型レセプター)のヘテロマー複合体の形成を通してシグナルを伝達することが公知である。I型レセプターは、直接リガンドに結合しない;それどころか、I型レセプターは、リガンド分子に結合しないII型レセプターと会合することによってシグナル伝達に関与する。TGF−β系は、動物界全体にわたって高度に保存されている。(TGF−β系の概説について、Massague(2000)Nature Rev.Mol.Cell Biol.1:16−178;およびMoustakasら(2001)J.Cell Sci.114:4359−4369を参照のこと)。
【0005】
アクチビンII型レセプターは、以前に、米国特許第5,885,794号に記載されている。アクチビンは、もともとは、下垂体における卵胞刺激ホルモンの生成への刺激効果を有するタンパク質として、卵胞液から精製された。アクチビンII型レセプターの5つのイソ型が、アクチビン応答細胞において同定されている。インビトロ研究に基づいて、これらのレセプターは、TGF−βファミリーのメンバーによって共有され得る(Attisanoら(1996)Mol.Cell.Biol.16:1066−1073)。本発明は、部分的には、II型アクチビンレセプター(ActRIIBと称される)が、アクチビンに加えて増殖分化因子−8(GDF−8)に結合し得るという発見に基づいている。
【0006】
GDF−8は、骨格筋における重要な生物学的プロセスおよび骨形成の調節に関与する。GDF−8は、発育中の骨格筋および成熟した骨格筋において高度に発現される。GDF−8ノックアウトトランスジェニックマウスは、骨格筋の著しい肥大および過形成(非特許文献1)および異常な皮質骨構造(非特許文献2)によって特徴付けられる。骨格筋質量における同様の増大は、ウシにおけるGDF−8の天然に存在する変異において明らかである(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6)。研究は、HIV感染に関連する筋肉疲労が、GD−8発現の増大を伴うことを示してきた(非特許文献7)。GDF−8はまた、筋肉に特異的な酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成、および筋芽細胞の増殖(特許文献1)に関係している。その増殖調節特性および形態形成特性に加えて、GDF−8はまた、多数の他の生理学的プロセス(2型糖尿病の発達におけるグルコースホメオスタシス、グルコース寛容減損、代謝症候群(例えば、X症候群)、外傷(例えば、熱傷または窒素不均衡によって誘導されるインスリン抵抗性、および脂肪組織障害(例えば、肥満症))に関連し得る(非特許文献8)。
【0007】
多くのヒト障害および動物障害は、機能障害性の筋組織(例えば、筋ジストロフィー(デュシェーヌ筋ジストロフィーが挙げられる)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋萎縮、器官萎縮、フレイルティー(frailty)、鬱血性閉塞性肺疾患、サルコペニア、悪液質、ならびに他の疾患および状態によって引き起こされる筋肉疲労症候群)に関連する。現在まで、これらの障害を処置するために信頼性がありかつ有効な治療はほとんど発達してこなかった。
【0008】
また、骨粗鬆症および骨関節炎を含む骨の損失(特に若年女性および/または閉経後の女性における骨の損失)に関連する多くの状態が存在する。さらに、代謝性骨疾患および代謝性骨障害としては、慢性的な糖質コルチコイド治療、早発性の性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性副甲状腺機能亢進症、栄養欠乏症、および拒食症に起因する低骨量が挙げられる。これらの状態に対して現在利用可能な治療は、骨吸収を阻害することにより行う。新たな骨形成を促進する治療が、これらの治療の望ましい代替である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第00/43781号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】McPherronら(1997)Nature 387:83−90
【非特許文献2】Hamrickら(2000)Bone 27(3):343−349
【非特許文献3】Ashmoreら(1974)Growth 38:501−507
【非特許文献4】Swatlandら(1994)J.Anim.Sci.38:752−757
【非特許文献5】McPherronら(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:12457−12461
【非特許文献6】Kambadurら(1997)Genome Res.7:910−915
【非特許文献7】Gonzalez−Cadavidら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:14938−14943
【非特許文献8】Kimら(2001)BBRC 281:902−906
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、特に、ヒトにおいて、骨量および/または骨密度の全体的な増加に寄与する新たな治療を開発する必要性が存在する。筋肉および/または骨に関連する障害に対する安全かつ有効な治療方法を提供することが、本発明の主題である。哺乳動物において骨量および/または骨密度を増加させる方法を提供することが、本発明の別の主題である。インビボで安全かつ有効なGDF−8のインヒビターを提供することが、本発明のなお別の主題である。
【0012】
本発明のさらに別の主題は、インビボで安定でありかつ高い特異性および親和性でGDF−8に結合する、可溶性形態のアクチビンII型レセプターActRIIBおよび/またはその機能フラグメントを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる主題は、以下の明細書中に部分的に記載され、そして本明細書から部分的に明らかであるかまたは本発明の実施によって学ばれ得る。本発明の種々の主題、局面、および利点は、特に添付の特許請求の範囲に示された要素および組み合わせによって認識され、そして達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(要旨)
筋変性障害および骨変性障害を処置するための方法が、本明細書中で提供される。この方法はまた、健常な動物において骨量および骨密度を増加させるのに有用である。
【0015】
また、骨格筋質量および骨密度のネガティブな調節に関連するGDF−8活性を阻害するための方法が提供される。
【0016】
インビトロおよびインビボでGDF−8に結合しかつ阻害する、安定化可溶性ActRIIB形態およびそのフラグメントが、提供される。本願で開示される可溶性ActRIIB形態は、それらを治療剤として適切にさせる薬物動態学的特性を有する。
【0017】
他の局面は、本願で開示されるActRIIB融合ポリペプチドを含有する組成物、およびGDF−8を阻害する方法もしくは中和する方法におけるそれらの組成物の使用(ヒトまたは動物の処置方法を含む)を提供する。開示されるActRIIB融合ポリペプチドは、筋組織または骨密度の増加が望ましい状態を処置または予防するために使用され得る。例えば、ActRIIB融合タンパク質はまた、損傷した筋肉(例えば、心筋、横隔膜など)を修復するための治療において使用される。例示的な疾患および障害としては、筋ジストロフィー(デュシェーヌ筋ジストロフィーが挙げられる);筋萎縮性側索硬化症;筋萎縮;器官萎縮;フレイルティー;手根管症候群;鬱血性閉塞性肺疾患;サルコペニア、悪液質および他の筋肉疲労症候群;脂肪組織障害(例えば、肥満症);2型糖尿病;グルコース寛容減損;代謝性症候群(例えば、X症候群);外傷(例えば、熱傷または窒素不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性;骨変性疾患(例えば、骨関節炎および骨粗鬆症)のような筋障害および神経筋障害が挙げられる。
【0018】
本発明の方法において利用される改変ActRIIB形態は、(a)ActRIIB細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(b)抗体の定常領域に由来する第2のアミノ酸配列を含む、ActRIIB融合ポリペプチドである。
【0019】
特定の実施形態において、第1の配列は、ヒトActRIIBの細胞外ドメインの全体または一部分を含むか、あるいはこのような配列の変異体である。第2の配列は、抗体のFc部分に由来し得るか、またはこのような配列の変異体である。
【0020】
さらなる実施形態において、第2の配列は、リンカー配列によって連結されるかまたは連結されずに、第1のアミノ酸配列のC末端またはN末端に連結される。
【0021】
筋肉変性障害および/または骨変性障害を処置するための治療方法もまた、提供される。例示的な疾患および障害としては、筋障害および神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー)、筋萎縮、鬱血性閉塞性肺疾患、筋肉疲労症候群、サルコペニア、悪液質、脂肪組織障害(例えば、肥満症)、2型糖尿病、グルコース寛容減損、代謝症候群(例えば、X症候群)、外傷(例えば、熱傷)によって誘導されるインスリン抵抗性、および骨変性疾患(例えば、骨粗鬆症)が挙げられる。
【0022】
さらに、本明細書で開示されるActRIIB融合タンパク質は、生物学的サンプル中のGDF−8またはそのフラグメントを定量的または定性的に検出するための診断ツールとして使用され得る。検出されるGDF−8の存在または量は、上記に列挙した病状のうちの1以上と関連し得る。
【0023】
本発明の方法において使用されるActRIIB融合ポリペプチドをコードする単離された核酸もまた、提供される。さらに、上記核酸を含む発現ベクター;上記発現ベクターを含む宿主細胞;および上記核酸を生成するための方法が提供される。
【0024】
なお別の局面は、筋障害および骨障害処置に有用な治療剤を同定する方法を提供する。
【0025】
上記の概説および以下の詳細な説明が、例示的かつ説明のためのみであり、主張されるように本発明を制限しないことが理解される。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
筋肉、骨、またはグルコースホメオスタシスのうちの少なくとも1種の変性疾患の処置方法または予防方法であって、該方法は、哺乳動物に有効量の薬学的組成物を投与する工程、および該組成物がGDF−8活性を阻害することを可能にする工程を包含し、ここで、該組成物は、(a)ActRIIB細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(b)抗体のFc部分に由来する第2のアミノ酸配列を含むActRIIB融合ポリペプチドを含有する、方法。
(項目2)
上記哺乳動物がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記薬学的組成物が、筋障害、神経筋障害、および骨変性障害のうちの少なくとも1種から選択される障害の処置または予防を必要とする哺乳動物に投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記薬学的組成物が、筋ジストロフィー、デュシェーヌ筋ジストロフィー、筋萎縮、器官萎縮、手根管症候群、鬱血性閉塞性肺疾患、サルコペニア、悪液質、筋肉疲労症候群、および筋萎縮性側索硬化症のうちの少なくとも1種から選択される障害の処置または予防を必要とする哺乳動物に投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記薬学的組成物が、デュシェーヌ筋ジストロフィーの処置または予防を必要とする哺乳動物に投与される、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記薬学的組成物が、肥満症および脂肪組織障害のうちの少なくとも1種から選択される障害の処置または予防を必要とする哺乳動物に投与される、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記薬学的組成物が、X症候群、グルコース寛容減損、外傷誘導性インスリン抵抗性、および2型糖尿病のうちの少なくとも1種から選択される障害の処置または予防を必要とする哺乳動物に投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記薬学的組成物が、2型糖尿病および肥満症のうちの少なくとも1種の処置または予防を必要とする哺乳動物に投与される、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記薬学的組成物が、骨関節炎および骨粗鬆症のうちの少なくとも1種から選択される障害の処置または予防を必要とする哺乳動物に投与される、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記薬学的組成物が、損傷した筋肉の修復を必要とする哺乳動物に投与される、項目1に記載の方法。
(項目11)
上記損傷した筋肉が、心筋の筋肉または横隔膜である、項目9に記載の方法。
(項目12)
上記ActRIIB融合ポリペプチドが、1μ/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg〜1mg/kg、および500μg/kg〜1mg/kgから選択される有効量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目13)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの第1のアミノ酸配列が、配列番号3のアミノ酸23〜138を含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの第1のアミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸19〜144を含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの第2のアミノ酸配列が、(a)IgGのFcフラグメント、(b)IgGのFcフラグメント、(c)IgGのFcフラグメント、および(d)配列番号3のアミノ酸148〜378から選択される配列を含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの配列が、配列番号3に記載されている、項目1に記載の方法。
(項目17)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの循環半減期が、5日を超える、項目1に記載の方法。
(項目18)
配列番号3のアミノ酸配列を含む、融合タンパク質。
(項目19)
項目18に記載の融合タンパク質をコードする単離された核酸。
(項目20)
上記核酸が、配列番号4に記載されている、項目19に記載の核酸。
(項目21)
項目19に記載の核酸を含む、発現ベクター。
(項目22)
項目21に記載のベクターを含む、宿主細胞。
(項目23)
上記融合タンパク質が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号4の配列に対してハイブリダイズする核酸によってコードされる、項目1に記載の方法。
(項目24)
GDF−8のインヒビターを同定するための方法であって、以下:
(a)項目18に記載のActRIIB融合ポリペプチドおよびGDF−8を含む第1の結合混合物を調製する工程;
(b)該第1の混合物における該ActRIIB融合ポリペプチドとGDF−8との間の結合量を測定する工程;
(c)該ActRIIB融合ポリペプチド、GDF−8、試験化合物を含む第2の結合混合物を調製する工程;および
(d)該第2の混合物における該ActRIIB融合ポリペプチドとGDF−8との間の結合量を測定する工程
を包含する、方法。
(項目25)
GDF−8活性を阻害する方法であって、該方法は、GDF−8を組成物と接触させる工程、および該組成物がGDF−8活性を阻害することを可能にする工程を包含し、ここで、該組成物は、(a)ActRIIB細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(b)抗体のFc部分に由来する第2のアミノ酸配列を含むActRIIB融合ポリペプチドを含有する、方法。
(項目26)
筋力を増大させる方法であって、該方法は、哺乳動物にActRIIB融合ポリペプチドの治療有効量を投与し、それによって、筋力を増大させる工程を包含し、ここで、該ActRIIB融合ポリペプチドは、(a)ActRIIB細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(b)抗体のFc部分に由来する第2のアミノ酸配列を含む、方法。
(項目27)
骨梁の骨密度を増大させる方法であって、該方法は、哺乳動物にActRIIB融合ポリペプチドの治療有効量を投与し、それによって、骨梁の骨密度を増大させる工程を包含し、ここで、該ActRIIB融合ポリペプチドは、(a)ActRIIB細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(b)抗体のFc部分に由来する第2のアミノ酸配列を含む、方法。
(項目28)
グルコース寛容減損を増大させる方法であって、該方法は、哺乳動物にActRIIB融合ポリペプチドの治療有効量を投与し、それによって、骨梁の骨密度を増大させる工程を包含し、ここで、該ActRIIB融合ポリペプチドは、(a)ActRIIB細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(b)抗体のFc部分に由来する第2のアミノ酸配列を含む、方法。
(項目29)
筋肉、骨、またはグルコースホメオスタシスの少なくとも1種の障害の処置または予防のための、医薬の調製のためのActRIIB融合ポリペプチドの使用であって、ここで、該ActRIIB融合ポリペプチドは、(a)ActRIIB細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(b)抗体のFc部分に由来する第2のアミノ酸配列を含む、使用。
(項目30)
上記哺乳動物がヒトである、項目29に記載の使用。
(項目31)
上記障害が神経筋障害である、項目29に記載の使用。
(項目32)
上記障害が、筋ジストロフィー、デュシェーヌ筋ジストロフィー、筋萎縮、器官萎縮、手根管症候群、鬱血性閉塞性肺疾患、サルコペニア、悪液質、筋肉疲労症候群、または筋萎縮性側索硬化症である、項目29に記載の使用。
(項目33)
上記障害が、肥満症または脂肪組織障害である、項目29に記載の使用。
(項目34)
上記障害が、X症候群、グルコース寛容減損、外傷誘導性インスリン抵抗性、または2型糖尿病である、項目29に記載の使用。
(項目35)
上記障害が、骨関節炎または骨粗鬆症である、項目29に記載の使用。
(項目36)
以下:
(a)筋肉損傷の修復;
(b)筋力の増大;
(c)骨梁の骨密度の増大;および
(d)グルコース寛容減損
のうちの少なくとも1種のための、医薬の調製のためのActRIIB融合ポリペプチドの使用であって、ここで、該ActRIIB融合ポリペプチドは、(i)ActRIIB細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(ii)抗体のFc部分に由来する第2のアミノ酸配列を含む、使用。
(項目37)
上記(a)の損傷した筋肉が、心筋の筋肉または横隔膜である、項目36に記載の使用。
(項目38)
ActRIIB融合ポリペプチドが、1μ/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg〜1mg/kg、または500μg/kg〜1mg/kgの有効量で哺乳動物に投与される、項目29〜37のいずれか1項に記載の使用。
(項目39)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの第1のアミノ酸配列が、配列番号3のアミノ酸23〜138を含む、項目29〜37のいずれか1項に記載の使用。
(項目40)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの第1のアミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸19〜144を含む、項目29〜37のいずれか1項に記載の使用。
(項目41)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの上記第2のアミノ酸配列が、(a)IgGのFcフラグメント、(b)IgGのFcフラグメント、(c)IgGのFcフラグメント、または(d)配列番号3のアミノ酸148〜378を含む、項目29〜37のいずれか1項に記載の使用。
(項目42)
上記ActRIIB融合ポリペプチドのアミノ酸配列が、(a)配列番号3に記載されているか、または(b)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号4の配列に対してハイブリダイズする核酸によってコードされる、項目29〜37のいずれか1項に記載の使用。
(項目43)
上記ActRIIB融合ポリペプチドの循環半減期が、5日を超える、項目29〜37のいずれか1項に記載の使用。
【0026】
(配列の簡単な説明)
以下の表は、本明細書中で称される配列についての参照として提供される。
【0027】
【数1】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、ActRIIB−Fcに対するビオチン化GDF−8およびBMP−11の結合を示す。
【図2】図2は、ActRIIB−Fcを試験したレポーター遺伝子アッセイの結果を示す。
【図3】図3は、ActRIIB−Fcの単回静脈内(IV)投与または単回腹腔内(IP)投与を利用する、C57B6/SCIDマウスにおける薬物動態学的研究の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(詳細な説明)
(I.定義)
用語「ActRIIB」とは、GDF−8に特異的に結合し得るアクチビンII型レセプターまたはそのフラグメントの任意の異性体をいう。この用語は、起源、生成方法、およびActRIIBの他の特性のうちのいかなる特定の種にも限定されない。この用語は、組換え生成されたActRIIBまたはそのフラグメントを包含し、そして特に、ヒトActRIIBのGDF−8結合ドメインを包含する。この用語はまた、ActRIIBの対立遺伝子およびスプライス改変体、それらの相同体、ならびに導入された変異(置換、付加、および欠失)を含むそれらのオルソログおよび配列を包含する。
【0030】
用語「筋肉、骨、またはグルコースホメオスタシスの変性障害」とは、GDF−8および/またはTGF−βスーパーフェミリーの他のメンバー(例えば、BMP−11)に関連する多くの障害および疾患をいう。このような障害の例としては、代謝障害(例えば、2型糖尿病)、グルコース寛容減損、代謝症候群(例えばX症候群)、および外傷(例えば、熱傷または窒素不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性;脂肪組織障害(例えば、肥満症);筋障害および神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー(デュシェーヌ筋ジストロフィーが挙げられる));筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;器官萎縮;フレイルティー;手根管症候群;鬱血性閉塞性肺疾患;ならびにサルコペニア、悪液質および他の筋肉疲労症候群が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、骨粗鬆症(特に、若年女性および/または閉経後の女性における骨粗鬆症);糖質コルチコイド誘導性骨粗鬆症;骨減少症;骨関節炎;および骨粗鬆症に関連する骨折が挙げられる。なおさらなる例としては、慢性的な糖質コルチコイド治療、早発性の性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性副甲状腺機能亢進症、栄養欠乏症、および拒食症に起因する低骨量が挙げられる。
【0031】
用語「有効量」とは、患者における症状の改善または所望の生物学的結果(例えば、骨格筋量および/骨密度の増加)を生じる化合物の量をいう。このような量は、骨格筋量および骨密度のネガティブな調節に関連するGDF−8の活性を低下させるのに十分であるべきである。有効量は、以下のセクションに記載されるように決定され得る。
【0032】
ActRIIBに関連して使用される場合、用語「GDF−8結合ドメイン」とは、ActRIIBの細胞外ドメイン、またはGDF−8に結合するために必要なその一部(すなわち、GDF−8に対する特異的結合を引き起こすActRIIB細胞外ドメインの一部)をいう。
【0033】
用語「TGF−βスーパーファミリー」とは、構造的に成長因子に関連するファミリーをいう。この成長因子に関連するファミリーは、当該分野で周知である(Kingsleyら(1994)Genes Dev.8:133−146;Hoodlessら(1998)Curr.Topics Microbiol.Immunol.228:235−72)。TGF−βスーパーファミリーとしては、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン、インヒビン、ミューラー阻害物質、グリア誘導神経栄養性因子、およびなお増え続けている増殖分化因子(GDF)(例えば、GDF−8(ミオスタチン))が挙げられる。このようなタンパク質の多くは、構造的および/または機能的にGDF−8に関連している。例えば、ヒトBMP−11(GDF−11としてもまた公知)は、アミノ酸レベルでGDF−8に対して90%同一である(Gamerら(1999)Dev.Biol.208:222−232;Nakashimaら(1999)Mech.Dev.80:185−189)。
【0034】
用語「GDF−8」とは、特定の増殖分化因子−8をいい、そして適切な場合には、構造的または機能的にGDF−8に関連する任意の因子(例えば、BMP−11およびTGF−βスーパーファミリーに属する他の因子)を包含することが理解されるべきである。この用語は、全長のプロセシングされていないGDF−8の前駆形態、ならびに翻訳後切断により生じる成熟ポリペプチドおよびプロペプチドポリペプチドをいう。この用語はまた、本明細書中で議論されるようなGDF−8に関連する1以上の生物学的活性を保持する、GDF−8の任意のフラグメントおよび改変体をいう。成熟ヒトGDF−8のアミノ酸配列は、配列番号2に提供される。本発明は、すべての脊椎動物種(ヒト、ウシ、トリ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヒヒ、および魚(配列情報について、例えば、McPherronら(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:12457−12461を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない)に由来するGDF−8に関する。
【0035】
用語「成熟GDF−8」とは、GDF−8前駆タンパク質のカルボキシ末端ドメインから切断されるタンパク質をいう。成熟GDF−8は、モノマー、ホモダイマーとして存在し得るか、またはGDF−8潜在的複合体中に存在し得る。条件に依存して、成熟GDF−8は、これらの様々なポリペプチドのいずれかまたはすべてとの間に平衡を確立し得る。その生物学的活性形態において、成熟GDF−8はまた、「活性なGDF−8」と称される。
【0036】
用語「GDF−8プロペプド」とは、GDF−8前駆タンパク質のアミノ末端ドメインから切断されるポリペプチドをいう。GDF−8プロペプチドは、成熟GDF−8におけるプロペプチド結合ドメインに結合し得る。
【0037】
用語「GDF−8潜在的複合体(latent complex)」とは、成熟GDF−8ホモダイマーとGDF−8プロペプチドとの間で形成されるタンパク質の複合体をいう。2つのGDF−8プロペプチドが、ホモダイマー中の成熟GDF−8の2分子に会合して、不活性なテトラマーの複合体を形成すると考えられる。潜在的複合体は、GDF−8プロペプチドのうちの一方または両方に加えてかまたは代わりに他のGDF−8インヒビターを含み得る。
【0038】
用語「GDF−8活性」とは、活性なGDF−8タンパク質に関連する生理学的な成長調節活性または形態形成活性のうちの1以上をいう。例えば、活性なGDF−8は、骨格筋のネガティブな調節因子である。活性なGDF−8はまた、筋肉に特異的な酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成を調節し得、線維芽細胞増殖を刺激し得、そして前脂肪細胞の脂肪細胞への分化を調節し得る。インビボおよびインビトロでGDF−8活性を評価するための手順としては、例えば、レポーター遺伝子アッセイ(実施例6を参照のこと)または筋肉および/骨パラメータの測定に関するインビボ試験(実施例8、9、および10を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
用語「Fc部分」とは、パパインを用いるタンパク質分解によって生成される免疫グロブリンのC末端フラグメント、またはそれらに由来する機能的等価物をいう。用語「Fc部分」は、組換え生成されたFcフラグメント(任意の抗体アイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgE、IgM)およびアイソタイプサブクラスのいずれかに由来するFcフラグメントが挙げられる)を包含することが理解されるべきである。用語「抗体の定常領域」とは、免疫グロブリンのC末端部分をいい、Fc部分および抗体の可変領域(例えば、相補性決定領域(CDR))を含まない限りは隣接配列を含む。抗体の定常領域は、特定のアイソタイプの抗体において、同一である。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション」は、有意に同一であるかまたは互いに相同であるヌクレオチド配列が、互いに相補的に結合する、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を記載することが意図される。この条件は、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85〜90%同一な配列が、互いに結合され続けるような条件である。同一性割合は、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記載されるように決定される。
【0041】
ストリンジェントな条件は、当該分野で公知であり、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(Ausubelら編、1995)、セクション2、4、および6に見いだされ得る。さらに、ストリンジェントな条件は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Press、第7章、9章、および11章に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下である:
約65〜70℃で4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、または約42〜50℃で4×SSC + 50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーション、その後、
約65〜70℃で1×SSCにおける1回以上の洗浄。
例えば、ナイロン膜を使用する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる非限定的な例は以下である:
約65℃で0.25〜0.5M NaHPO、7%SDS中でのハイブリダイゼーション、その後、
65℃で0.02M NaHPO、1%SDSでの1回以上の洗浄。
例えば、Churchら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:1991−1995を参照のこと。さらなる試薬(例えば、ブロック化剤(BSAまたはサケ精子DNA)、洗浄剤(SDS)、キレート化剤(EDTA)、Ficoll、PVPなど)が、ハイブリダイゼーション緩衝液および/または洗浄緩衝液に添加され得ることが理解される。
【0042】
GDF−8またはその活性に関係して使用される場合、用語「インヒビター」は、GDF−8の活性、発現、プロセシング、または分泌を阻害し得る任意の薬剤を包含する。このようなインヒビターとしては、タンパク質、抗体、ペプチド、ペプチド模倣物、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNA、およびGDF−8を阻害する他の低分子が挙げられる。このようなインヒビターは、GDF−8タンパク質の生物学的活性を「阻害する」、「中和する」、または「低下させる」と言われる。
【0043】
用語「中和する」、「中和すること」、「抑制性の」、およびそれらの同族語とは、GDF−8インヒビターの非存在下におけるGDF−8の活性に対する、同じインヒビターによるGDF−8の活性の低下をいう。活性の低下は、好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれよりも大きい。
【0044】
用語「単離された」とは、実質的にその天然の環境から離れている分子をいう。例えば、単離されたタンパク質は、それらが由来する細胞源または組織源からの細胞物質または他のタンパク質を実質的に含まない。この用語は、 単離されたタンパク質が治療組成物として投与されるのに実質的に純粋であるか、または少なくとも70%〜80%(w/w)純粋、少なくとも80%〜90%純粋、90%〜95%純粋であるか;あるいは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%純粋である調製物をいう。
【0045】
用語「哺乳動物」とは、ヒトを含み、家庭用動物および家畜用動物、動物園用動物、競技用動物、またはペット用動物(例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなど)として分類される任意の動物をいう。
【0046】
用語「特異的相互作用」また結合する」などは、2つの分子が、生理学的条件下で比較的安定な複合体を形成することを意味する。この用語はまた、例えば、抗原結合ドメインが、多数の抗原によって保有される特定のエピトープに対して特異的である場合に適用可能であり、この事例において、抗原結合ドメインを保有する抗体は、このエピトープを保有する種々の抗原に対して結合し得る。従って、抗体は、例えば、その抗体がBMP−11およびGDF−8の両方によって保有されるエピトープに結合する限りは、BMP−11およびGDF−8に特異的に結合し得る。
【0047】
特異的結合は、高い親和性および低〜中程度の能力によって特徴付けられる。非特定的結合は、通常、中程度〜高い能力で、低い親和性を有する。代表的に、結合は、親和性定数Kが10−1より高いかまたは好ましくは10−1より高い場合、特異的と考えられる。必要な場合、非特異的結合は、結合状態を変更することによって特異的結合に実質的に影響することなく、減少され得る。このような条件は、当該分野において公知であり、慣用的な技術を使用して、当業者は、適切な条件を選択し得る。条件は、通常、ActRIIB融合ポリペプチドの濃度、溶液のイオン強度、温度、結合を許容する時間、非関連分子(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などの点で規定される。例示的条件は、実施例5および6に記載される。
【0048】
句「実質的に記載される(subtantially as set out)」は、関連するアミノ酸配列が、所定の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一であることを意味する。例として、このような配列は、種々の種由来の改変体であり得るか、またはこれらは、短縮、欠失、アミノ酸置換または付加によって所定の配列から誘導され得る。2つのアミノ酸配列間の同一性%は、例えば、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215;403−410に記載されるBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlemanら(1970)J.Mol.Biol.48:444−453のアルゴリズム、またはMeyersら(1988)Comput.Appl.Biosci.4:11−17のアルゴリズムのような標準的な整列アルゴリズムによって決定される。
【0049】
用語「処置」は、治療的処置および予防的(prophylactic)/予防的(preventative)処置の両方をいう。処置の必要なものには、特定の医療的障害を既に有する個体、ならびに最終的に障害を獲得し得るもの(すなわち、骨粗鬆症の家族歴を有する閉経後の女性、または2型糖尿病の家族歴もしくはいくらか上昇した血糖の読み値を有する肥満の患者のような予防的処置を必要とするもの)が挙げられ得る。
【0050】
(II.ActRIIB融合ポリペプチド)
本発明は、GDF−8に結合し、インビトロおよび/またはインビボでその活性を阻害する改変アクチビンII型レセプターを提供する。特に、ここで開示されるActRIIB融合ポリペプチドは、骨格筋質量および骨密度のネガティブな調節と関連するGDF−8活性を阻害する。本発明のActRIIB融合ポリペプチドは、治療的用途(例えば、延長された循環半減期および/またはタンパク質分解からの改善された保護)に対してそれらを適切にする薬理学的特性を有する。
【0051】
本発明のActRIIB融合ポリペプチドは、(a)ActRIIBの細胞外ドメイン由来の第1のアミノ酸配列および(b)抗体の定常領域由来の第2のアミノ酸配列を含む。ActRIIB融合ポリペプチドの特定の例示的実施形態の全アミノ酸およびDNA配列は、配列番号3および配列番号4それぞれに記載される。
【0052】
第1のアミノ酸配列は、ActRIIB細胞外ドメインの全てまたは一部由来であり、GDF−8を特異的に結合し得る。いくつかの実施形態において、ActRIIB細胞外ドメインのこのような部分はまた、BMP−11および/またはアクチビン、あるいは他の成長因子に結合し得る。特定の実施形態において、第1のアミノ酸配列は、配列番号3において、およそアミノ酸(aa)23〜およそaa138、または配列番号1のおよそaa19〜およそaa144と同一かまたは実質的に記載される。配列番号1と配列番号3との間の違いは、配列番号1のaa64が、Alaであり、他方、配列番号3の対応するaa68が、Argであることである。さらに、ActRIIBの配列の他の改変が可能であり、例えば、配列番号1のaa16およびaa17は、それぞれ、CysおよびAlaで置換され得る。いくつかの他の実施形態において、第1のアミノ酸配列は、配列番号3のおよそaa23およびおよそaa138から、または配列番号1のおよそaa19およびおよそaa144から、少なくとも20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、110個または120個の連続したアミノ酸を含む。このような配列は、短縮型配列が、GDF−8に特異的に結合する限り、短縮され得る。GDF−8への結合は、当該分野で公知の方法を使用して、または実施例5および6に記載されるように、アッセイされ得る。
【0053】
第2のアミノ酸配列は、抗体(特に、Fc部分)の定常領域由来であるか、またはこのような配列の変異体である。いくつかの実施形態において、第2のアミノ酸配列は、IgGのFc部分由来である。関連の実施形態において、Fc部分は、IgG、IgG、または別のIgGアイソタイプであるIgG由来である。特定の実施形態において、第2のアミノ酸配列は、配列番号3に記載されるヒトIgG1のFc部分(アミノ酸148〜378)を含み、ここで、ヒトIgG1のFc部分は、Fc部分のエフェクター機能を最小化するように改変されている。このような改変は、Fcレセプター結合のようなエフェクター機能を変更し得る特異的アミノ酸残基を変更すること(Lundら(1991)J.Immun.147:2657−2662およびMorganら(1995)Immunology 86:319−324)、または定常領域が誘導される種を変更することを包含する。抗体は、エフェクター機能を減少させる重鎖のCH領域の変異(すなわち、Fcレセプター結合および補体活性化)を有し得る。例えば、抗体は、米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号に記載される変異のような変異を有し得る。IgG重鎖またはIgG重鎖において、例えば、このような変異は、IgGまたはIgGの全長配列のアミノ酸234および237に対応するアミノ酸残基においてなされ得る。抗体はまた、免疫グロブリンの2つの重鎖の間のジスルフィド結合を安定化する変異(例えば、IgGのヒンジ領域の変異)を有し得る(Angalら(1993)Mol.Immunol.30:105−108に開示される)。
【0054】
特定の実施形態において、第2のアミノ酸配列は、リンカー配列によって連結されるかまたはリンカー配列によって連結されないで、第1のアミノ酸配列のC末端またはN末端に連結される。リンカーの実際の長さおよび配列および連結される配列に田尾するその配向は、種々であり得る。例えば、リンカーは、(Gly−Ser)(配列番号5)であり得る。リンカーは、2アミノ酸、10アミノ酸、20アミノ酸、30アミノ酸またはそれ以上のアミノ酸を含み得、溶解性、長さおよび立体的分離、免疫原性などのような所望の特性に基づいて選択される。特定の実施形態において、リンカーは、タンパク質分解切断部位の配列(例えば、エンテロキナーゼ切断部位Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号6))、または例えば、融合タンパク質の精製、検出または改変に有用な他の機能性配列を含み得る。
【0055】
任意のタンパク質の配列の特定のアミノ酸が、タンパク質の活性に有害に影響することなく、他のアミノ酸を置換し得ることが、当業者によって理解される。従って、種々の変化が、本発明のActRIIB融合ポリペプチドの配列のアミノ酸配列、またはこのようなポリペプチドをコードするDNA配列において、それらの生物学的活性または有用性を認識可能に損失することなく、なされ得ることが企図される。ActRIIBの生物学的活性は、実施例6〜10に記載されるように測定され得る。このような変化としては、欠失、挿入、短縮、および置換が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0056】
特定の実施形態において、本発明の任意のActRIIB融合ポリペプチドの、他のタンパク質由来のアミノ酸配列へのさらなる融合が構築され得る。望ましい融合配列は、例えば、サイトカイン、増殖因子および分化因子、酵素、ホルモン、他のレセプター成分などのActRIIBの生物学的活性とは異なる生物学的活性を有するタンパク質由来であり得る。また、ActRIIB融合ポリペプチドは、他のタンパク質および薬学的薬剤と化学的に連結されるかまたは結合され得る。このような改変は、得られる組成物の薬物動態学および/または体内分布を変更するように設計され得る。
【0057】
本発明のActRIIB融合ポリペプチドは、グリコシル化され得るか、ペグ化され得るかまたは別の非タンパク質ポリマーに連結され得る。例えば、本明細書中に開示されたActRIIB融合ポリペプチドは、種々の非タンパク質ポリマー(例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号または同第4,179,337号に示されるように、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン)の一つに連結され得る。ActRIIB融合ポリペプチドは、例えば、その循環半減期を増加させるポリマーへの共有結合によって化学的に改変される。例示的なポリマーおよびポリマーをペプチドに結合させる方法はまた、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号および同第4,609,546号に示されている。
【0058】
本発明のActIIB融合ポリペプチドは、変化したグリコシル化パターン(すなわち、本来のまたはネイティブのグリコシル化パターンから変化した)を有するように改変され得る。本明細書中で使用される場合、「変化した」とは、一つ以上の欠失した炭水化物部分を有すること、および/または本来の配列に付加された一つ以上のグリコシル化部位を有することを意味する。本明細書で開示された改変ActRIIBに対するグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、当該分野で周知のグリコシル化部位コンセンサス配列を含むように変化させることにより達成され得る。炭水化物部分の数を増加させることの別の意味は、グリコシドのアミノ酸残基への化学的カップリングまたは酵素的カップリングによるものである。これらの方法は、WO 87/05330およびAplinら(1981)Crit.Rev. Biochem.22:259〜306中に記載される。ActRIIBに存在する任意の炭水化物部分の除去は、Hakimuddinら、(1987)Arch.Biochem.Biophys.259:52;Edgeら(1981)Anal.Biochem.118:131およびThotakuraら(1987)Meth.Enzymol.138:350によって記載されるように化学的に、または酵素的に達成され得る。
【0059】
本発明のActIIB融合ポリペプチドはまた、検出可能標識または機能的標識を用いて標的化され得る。検出可能標識としては、放射標識(例えば、131Iまたは99Tc)が挙げられ、これは、従来の当該分野で公知の化学反応を使用して本発明のActRIIB融合ポリペプチドに結合され得る。標識はまた、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)を含む。標識はさらに、化学成分(例えば、ビオチン)を含み、これは、特異的な同族の検出可能部分(例えば、標識されたビオチン)に結合することによって検出され得る。
【0060】
当業者は、本発明のActRIIB融合ポリペプチドが、GDF−8、BMP−11およびアクチビン以外のタンパク質を、検出、測定、および阻害するために使用され得ることを理解する。このようなタンパク質の非限定的な例(例えば、様々な種由来のGDF−8の配列(オーソロガス)は、本明細書中に記載される。
【0061】
(III.核酸、クローニングおよび発現系)
本開示は、本発明の方法に使用され得る可溶性ActRIIBをコードする単離された核酸を提供する。本発明の核酸は、本明細書中に開示される本発明の少なくとも一つのActRIIB融合ポリペプチドに対するコード配列を含む。特定の実施形態において、この核酸は、この配列を含むか、または配列番号4に示される配列に由来する。他の特定の実施形態において、この核酸配列は、配列番号3のアミノ酸約23〜アミノ酸約138のアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸約19〜アミノ酸約144のアミノ酸配列をコードするような核酸配列である。
【0062】
本開示はまた、少なくとも一つの上記本発明の核酸を含むプラスミド、ベクター、転写カセットまたは発現カセットの形態の構築物を提供する。
【0063】
本開示はまた、宿主細胞を提供し、この宿主細胞は、一つ以上の上記構築物を含む。ActRIIB融合ポリペプチドの任意の一つをコードする核酸が、提供され、それ自体が本発明の一局面であり、コードされる生成物の生成の方法である。コードされたActRIIB融合ポリペプチドの生成は、適切な培養条件下でその核酸を含む発現組換え宿主細胞によって達成され得る。発現後、ActRIIB融合ポリペプチドは、任意の適切な技術を使用して単離され、そして/または精製され、次いで、適切なものとして使用される。発現および精製のための例示的な手順は、実施例3および実施例4に示される。
【0064】
特定のActRIIB融合ポリペプチドおよびコードする核酸分子および本発明に基づくベクターは、例えば、それらの天然の環境から、実質的に精製された形態または均質な形態で、あるいは、核酸の場合、または必要とする機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の核酸または遺伝子起源を含まないか、もしくは実質的に含まない形態で入手され得、単離され得、そして、または精製され得る。本発明に基づく核酸は、DNAまたはRNAを含み得、そして全体的に、または部分的に合成的であり得る。本明細書中に示されるヌクレオチド配列に対する言及は、特定の配列を有するDNA分子を含み、そして、文脈が他に必要としない限りTに対してUが置換した特定の配列を有するRNA分子を含む。
【0065】
本発明はまた、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000ヌクレオチド長であり、配列番号4に示される核酸にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする配列を包含する。
【0066】
種々の異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のためのシステムは、周知である。適した宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、および酵母ならびにバキュロウイルスの系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現について当該分野で利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎臓細胞、NS0マウス骨髄腫細胞などが挙げられる。一般的な細菌細胞は、E.coliである。ActRIIB融合ポリペプチドを生成するために適した他の細胞については、Gene Expression Systems,Academic Press(Fernandezら編.1999)を参照のこと。本発明と適合性の任意の細胞株は、本開示のActRIIB融合ポリペプチドを生成するために使用され得る。
【0067】
適切なベクターが、選択または構築され得、そのベクターは、適切な調節配列(including プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および適切な場合、他の配列を含む)を含む。ベクターは、プラスミドまたはウイルス(例えば、ファージ)または適切な場合、ファージミドであり得る。さらなる詳細については、例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと。核酸の操作のための多くの公知の技術およびプロトコル(例えば、核酸構築物の調製において、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入、および遺伝子発現、ならびにタンパク質分析)は、Current Protocols in Molecular Biology,第2版,John Wiley&Sons(Ausubelら編.1992)において詳細に記載される。
【0068】
従って、本発明のさらなる局面は、本明細書中で開示される核酸を含む宿主細胞である。さらに、本発明は、このような核酸を宿主細胞に導入する工程を包含する方法を提供する。その導入は、任意の適切な技術を利用し得る。真核生物細胞については、適切な技術としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介性トランスフェクション、およびレトロウイルスもしくは他のウイルスを使用する形質導入(例えば、ワクシニア、または昆虫細胞については、バキュロウイルス)が挙げられ得る。細菌細胞については、適切な技術としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを使用するトランスフェクションが挙げられ得る。
【0069】
その導入は、続いて、例えば、その核酸の発現に適した条件下で宿主細胞を培養することによって、その核酸からの発現を引き起こすかまたは可能になる。
【0070】
(IV.インヒビターを同定するための方法)
本発明のなお別の局面は、筋肉および骨の障害の処置において有用な治療剤を同定する方法を提供する。適切なスクリーニングアッセイ(例えば、ELISAベースのアッセイ)は、当該分野で公知である。このようなスクリーニングアッセイにおいて、第1の結合混合物は、ActRIIB融合ポリペプチドおよびリガンド(例えば、GDF−8、BMP−11、アクチビン)を結合することによって形成される;その第1の結合混合物(M)における結合の量が測定される。第2の結合混合物もまた、ActRIIB融合ポリペプチド、そのリガンド、およびそのスクリーニングされるべき化合物もしくは薬剤を合わせることによって形成され、第2の結合混合物(M)における結合の量が、測定される。その第1の混合物および第2の混合物における結合の量は、次いで、例えば、そのM/M比を計算することによって比較される。その化合物または薬剤は、第1の結合混合物と比較して、その第2の結合混合物における結合の減少が観察される場合、ActRIIB媒介性細胞シグナル伝達を阻害し得ると考えられる。結合混合物の処方および最適化は、当該分野の技術水準内であり、このような結合混合物はまた、結合を増強または最適化するために必要な緩衝液および塩を含み得、さらなるコントロールアッセイは、本発明のスクリーニングアッセイにおいて含められ得る。
【0071】
従って、そのActRIIB融合ポリペプチド−リガンド結合を少なくとも約10%(すなわち、M/M<0.9)、好ましくは、約30%より大きく減少させることが見いだされた化合物が同定され得、次いで、望ましい場合、実施例5〜12に記載されるように、他のアッセイ(例えば、ActRIIB結合アッセイ)および他の細胞ベースのアッセイおよびインビボアッセイにおいてGDF−8活性を阻害する能力について二次的にスクリーニングされる。
【0072】
(V.疾患を処置する方法および他の使用)
本開示のActRIIB融合ポリペプチドは可溶性であり、その融合ポリペプチドを治療剤として適切にする(すなわち、動物(特に、ヒト)における種々の医学的障害を予防、診断または処置するために有用にする)薬物動態特性を有する。特定の実施形態において、そのActRIIB融合ポリペプチドの循環半減期は、5日、7日、10日または14日を超える。
【0073】
そのActRIIB融合ポリペプチドは、筋肉および/または骨の障害と関連するGDF−8の1以上の活性を阻害するために使用され得る。GDF−8活性の阻害は、Thiesら(Growth Factors(2001)18:251−259)に記載されるか、または実施例6に例示されるように、pGL3(CAGA)12レポーター遺伝子アッセイ(RGA)において測定され得る。
【0074】
本開示のActRIIB融合ポリペプチドによって診断、処置または予防される医学的障害は、筋肉または神経筋の障害;脂肪組織障害(例えば、肥満);2型糖尿病;損なわれたグルコース耐性;代謝症候群(例えば、X症候群);外傷(例えば、熱傷または窒素不均衡)によって引き起こされるインスリン耐性;または骨変性疾患(例えば、骨粗鬆症)である。
【0075】
本開示のActRIIB融合ポリペプチドはまた、損傷した筋肉(例えば、心筋、横隔膜など)を修復する治療において使用され得る。例示的な疾患および障害としては、筋肉および神経筋の障害(例えば、筋ジストロフィー(デュシェンヌ筋ジストロフィーを含む));筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋萎縮症;器官萎縮症;フレイルティー;手根管症候群;欝血性閉塞性肺疾患;およびサルコペニア、悪液質および他の筋肉消耗症候群がさらに挙げられる。
【0076】
本明細書で開示されるActRIIB融合ポリペプチドによって診断、処置または予防されるべき他の医療障害は、骨の損失に関連する障害であり、骨粗鬆症(特に、若年女性のおよび/または閉経後の女性における骨粗鬆症);糖質コルチコイド誘導性骨粗鬆症;骨減少症;骨関節炎;および骨粗鬆症に関連する骨折が挙げられる。他の標的代謝骨疾患および標的代謝骨障害としては、慢性的な糖質コルチコイド治療、早発性の性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、続発性副甲状腺機能亢進症、栄養欠乏症、および拒食症に起因する低骨量が挙げられる。ActRIIB融合ポリペプチドは、好ましくは、哺乳動物(特に、ヒト)におけるこのような医療障害を予防、診断、または処置するために使用される。
【0077】
本発明のActRIIB融合ポリペプチドを含む組成物は、治療有効量で投与される。一般的には、治療有効量は、被験体の年齢、状態、および性別、ならびに被験体の病状の重篤度に伴って変化し得る。投薬量は、医師によって決定され得、そして必要な場合には、観察された処置効果に合うように調節され得る。一般的には、組成物は、ポリペプチドが、1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg〜1mg/kg、および500μg/kg〜1mg/kgの用量、あるいは実施例10および11に記載されるような用量で与えられるように投与される。組成物は、ボーラス用量として、この用量後の最も長い期間に対して循環レベルを最大にするように、与えられ得る。連続注射もまた、ボーラス用量後に使用され得る。
【0078】
本発明の投薬単位ポリペプチドについての仕様は、活性化合物の一義的な特性、および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためにこのような活性化合物を配合することに関する当該分野における固有の限定によって指示され、かつ直接的に依存する。
【0079】
毒性および治療効力は、細胞培養物または実験用動物における標準的な薬学的手順(例えば、LD50(集団の50%に対して致死性の用量)およびED50(手段の50%において治療的に有効な用量)の決定)によって決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指標であり、そしてこれはLD50/ED50比と表され得る。大きな治療指標を示す組成物が、好ましい。
【0080】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のためにある範囲の投薬量を処方することにおいて使用され得る。このような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がわすかであるか全くないED50を含む循環濃度の範囲内である。この投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。
【0081】
治療有効量は、最初に、細胞培養アッセイから見積られ得る。ある用量が、細胞培養で決定したようなIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する治療上の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルに処方され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意の特定投薬量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニタリングされ得る。適切なバイオアッセイの例としては、DNA複製アッセイ、転写ベースのアッセイ、GDF=8結合アッセイ、クレアチンキナーゼアッセイ、前脂肪細胞の分化に基づくアッセイ、脂肪細胞におけるグルコース取り込みアッセイに基づくアッセイ、および免疫学的アッセイが挙げられる。
【0082】
本発明のさらなる局面として、本発明のActRIIB融合ポリペプチドは、インビトロおよびインビボにおいて、TGF−βスーパーファミリー(例えば、BMP−11およびGDF−8)に属するタンパク質の存在を検出するために使用され得る。これらの
タンパク質の存在またはレベルを病状と関連付けることによって、当業者は、関連する病状を診断し得る。本明細書で開示されるActRIIB融合ポリペプチドによって診断され得る病状は、上記で示されている。
【0083】
このような検出方法は、当該分野で周知であり、ELISA、放射免疫アッセイ、イムノブロット、ウエスタンブロット、免疫蛍光、免疫沈降、および他の類似の技術が挙げられる。ポリペプチドは、さらに、タンパク質(例えば、GDF−8)を検出するための1以上のこれらの技術を組み込む診断キットで提供され得る。このようなキットは、タンパク質の検出およびキットの使用を補助するための他の成分、包装、指示書、または他の物質を含み得る。
【0084】
ActRIIB融合ポリペプチドが診断目的を対象とする場合、これらを、例えば、リガンド基(例えば、ビオチン)または検出可能なマーカー基(例えば、蛍光基、放射性同位体、または酵素)で改変することが望まれ得る。所望の場合、ActRIIB融合ポリペプチドは、従来技術を使用して標識され得る。適切な標識としては、蛍光団、発色団、放射活性原子、高電子密度試薬、酵素、および特定の結合相手を有するリガンドが挙げられる。酵素は、代表的には、それらの活性によって検出される。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼは、テトラメチルベンジジン(TMB)を分光光度計で定量可能な青色色素に変換する活性によって、検出され得る。他の適切な結合相手としては、ビオチンとアビジンもしくはストレプトアビジン、IgGとプロテインA、および当該分野で公知の多数のレセプター−リガンドの組が挙げられる。他の順列および可能性は、当業者に容易に明らかであり、本発明の範囲内にある等価物と考えられる。
【0085】
(VI.薬学的組成物および投与方法)
本発明は、患者に対する投与のために適切な組成物を提供する。組成物は、代表的には、本発明の1以上のActRIIB融合ポリペプチド、および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。本明細書中で使用される場合、句「薬学的に受容可能な賦形剤」とは、薬学的投与に適合する任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張性遅延剤および吸収遅延剤などをいう。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。組成物はまた、補足的治療機能、付加的治療機能、または増強された治療機能を提供する他の活性化合物を含み得る。薬学的組成物はまた、投与のための指示書と共に、容器、パック、またはディスペンサーに含まれ得る。
【0086】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路に適合するように処方される。その投与を達成するための方法は、当業者に公知である。投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下または経皮であり得る。局所投与または経口投与され得る組成物を得ることもまた可能である。
【0087】
皮内適用または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、代表的には、1以上の以下の成分を含む:滅菌希釈剤(例えば、注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または重硫酸ナトリウム);キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩);および張度調節用の薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)で調節され得る。このような調製物は、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラス製もしくはプラスチック製の複数用量バイアル中に入れられ得る。
【0088】
注射に適切な薬学的組成物としては、滅菌水溶液または懸濁液、および注射可能な滅菌溶液もしくは懸濁液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与について、適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水、CremophorTM EL(BASF、Parsippany、NJ)、リン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合おいて、組成物は、滅菌されていなければならず、そして注射しやすさが存在する程度まで流体であるべきである。組成物は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用に対して保護されなければならない。キャリアは、溶媒、または例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)を含む分散媒、ならびにそれらの適切な混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用、分散物の場合において必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合において、組成物中に等張剤(例えば、糖、マンニトールのようなポリアルコール、ソルビトール、および塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続性吸収は、およそ、組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、アルミナモノステアレート(alminum monostearate)およびゼラチン)を含むことによってもたらされ得る。
【0089】
経口組成物は、一般的には、不活性な希釈剤または食用のキャリアを含む。これらは、ゼラチンカプセル中に封入されるか、または錠剤中に圧縮される。経口治療投与の目的のために、ActRIIB融合ポリペプチドは、賦形剤と共に組み込まれ得、そして錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用され得る。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント物質は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または類似の天然化合物のいずれかを含む:結合剤(例えば、微結晶性セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチン);賦形剤(例えば、スターチまたはラクトース);崩壊剤(例えば、アルギニン酸、PrimogelTM、またはコーンスターチ);潤滑剤(lubricant)(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesTM);潤滑剤(glidant)(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、ショ糖またはサッカリン);あるいは香料剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料)。
【0090】
吸入による投与のために、ActRIIB融合ポリペプチドは、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素)を含む加圧容器またはディスペンサー、あるいは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0091】
全身投与もまた、経粘膜手段または経皮手段によってなされ得る。例えば、ActRIIB−Fcの場合、組成物は、FcRnレセプター媒介性経路を介して粘膜(例えば、腸、口、および肺)を通して伝達され得る。経粘膜投与は、例えば、ロゼンジ、鼻腔
スプレー、吸入器、または坐薬を通して達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、一般的に当該分野で公知のような軟膏(ointment)、軟膏(salves)、ゲル、またはクリームに処方される。経粘膜投与または経皮投与のために、浸透されるべきバリアーに適切な浸透物が、処方物中で使用される。このような浸透物は、当該分野で公知であり、例えば、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。
【0092】
本明細書で開示されるActRIIB融合ポリペプチドは、体内からの急速な排泄に対して化合物を保護するキャリア(例えば、徐放性処方物(移植片および微小カプセル化送達系を含む))と共に調製され得る。生分解性の生体適合性ポリマー(例えば、ビニル酢酸エチル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ酢酸(polyactic acid))が使用され得る。このような処方物の調製方法は、当業者に明らかである。本明細書で開示されるActRIIB融合ポリペプチドを含むリポソーム懸濁液もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるような、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0093】
投与および投薬量の均一性を簡略化するために、投薬単位形態中に経口組成物または非経口組成物を処方することが有利であり得る。本明細書中で使用される場合、投薬単位形態とは、処置されるべき被験体に対して単一の投薬量として適合された、物理的に別個の単位をいう。各単位は、必要とされる薬学的キャリアに関して所望の治療効果を生じるように計算された、予め決められた量の活性化合物を含む。
【0094】
ActRIIB融合ポリペプチドをコードする核酸(例えば、上記の核酸)は、組織内の細胞、器官、また生物体に誘導され得、その結果、コードされるポリペプチドが発現される。この方法は、例えば、個々の組織および器官におけるActRIIB融合ポリペプチドの効果を評価することにおいて有用であり得る。特定の実施形態において、ActRIIB融合ポリペプチドをコードする核酸は、組織特異的発現制御配列(例えば、ミオシンプロモーターまたはデスミンプロモーターのような筋特異的プロモーター配列、筋クレアチンキナーゼエンハンサーのような筋特異的エンハンサーエレメント)に連結される。当業者は、特定のポリヌクレオチド配列が、哺乳動物に全身注射または局所注射され得るウイルスベクターまたはプラスミドベクターに挿入され得ることを認識する。宿主細胞もまた収集され、そしてActRIIB融合ポリペプチドをコードする核酸が、エキソビボで、その後の再移植のために当該分野で公知の方法を使用して、このような細胞にトランスフェクトされ得る。核酸はまた、Gene Expression Systems,Academic Press(Fernandezら編、1999)に記載されるようなトランスジェニック動物を作製するために、単一の胚細胞にトランスフェクトされ得る。
【0095】
本明細書は、本明細書中で引用される参考文献(その全体が本明細書中で参考として援用される)の教示を考慮してほぼ完全に理解される。本明細書中の実施形態は、本発明の実施形態の例示を提供し、本発明の範囲を限定するように構成されるべきではない。当業者は、多くの他の実施形態が、請求された本発明によって包含されること、ならびに本明細書および実施例が、特許請求の範囲によって示される本発明の真の範囲および精神を含んで、例示のみとして考えられることが意図されることを認識する。
【0096】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態および局面を示す。当業者は、本発明の精神または範囲を変えることなく実施され得る多くの改変およびバリエーションを認識する。このような改変およびバリエーションは、本発明の範囲内に包含される。本実施例は、決して本発明を限定しない。
【実施例】
【0097】
(実施例1:GDF−8の精製)
組換えヒトGDF−8タンパク質(成熟GDF−8およびGDF−8プロペプチド)を発現する選択された細胞株に由来する馴化培地をpH6.5に酸性化し、80×50mm
POROSTM HQ陰イオン交換カラム、直列に、80×50mm PORTOSTM SP陽イオン交換かラム(PerSeptive Biosystems,Foster City,CA)にアプライした。そのフロースルーを、pH5.0に調節し、75×20mm POROSTM SP陽イオン交換かラム(PerSeptive Biosystems)にアプライし、TFA/アセトニトリル勾配で溶出した。SDS−PAGEによって確認されるそのGDF−8潜在性複合体を含む画分を、プールし、トリフルオロ酢酸(TFA)でpH2〜3に酸性化し、次いで、0.1 % TFAで200mlにして、粘度を低くした。そのプールを、次いで、applied to a 60×21.2mmガードカラム(Phenomenex)を付けた250×21.2mm Cカラム(Phenomenex,Torrance,CA)にアプライし、TFA/アセトニトリル勾配で溶出して、成熟GDF−8をGDF−8プロペプチドから分離した。成熟GDF−8を含む画分を、凍結乾燥によって濃縮して、アセトニトリルを除去し、20mlの0.1% TFAを添加した。そのサンプルを、次いで、分離を補助するために60℃に加熱した250×10mm C5カラム(Phenomenex)にアプライした。これを、もはやさらなる分離が達成することができなくなるまで繰り返した。成熟GDF−8を含む画分を、次いで、プールし、40% アセトニトリルにして、60×21.2ガードカラムを付けた600×21.2 BioSepTM S−3000サイズ排除カラム(Phenomenex)にアプライした。精製成熟GDF−8を含む画分およびGDF−8プロペプチドを含む画分を、別個にプールし、その後の実験における使用のために濃縮した。
【0098】
SDS−PAGEにおいて、精製成熟GDF−8は、非還元条件下で25kDaで、および還元条件下で13kDaで、広いバンドとして移動する。還元条件下および非還元条件下では、BMP−11プロペプチドは、約35kDaで移動した。類似のSDS−PAGEプロフィールは、McPherronら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1997)94:12457−12461)によってマウスGDF−8について報告され、成熟タンパク質のダイマー性質を反映する。そのGDF−8プロペプチドは、還元SDS−PAGEで約35kDaで移動した。活性な成熟BMP−11二量体は、組換えヒトBMP−11を発現する細胞株に由来する馴化培地から同じ様式で精製した。その馴化培地を、10ml TALONTMカラム(Clonetech,Palo
Alto,CA)にロードした。その結合したタンパク質を、50mM Tris pH8.0/1M NaCl/500mM イミダゾールで溶出した。そのBMP−11複合体を含む画分をプールし、10% トリフルオロ酢酸でpH3に酸性化した。そのBMP−11複合体プールを、250×4.6mm Jupiter C4カラム(Phenomenex)にアプライし、このカラムを、成熟BMP−11およびBMP−11プロペプチドのより良好な分離のために、60℃に加熱した。BMP−11を、TFA/アセトニトリル勾配で溶出した。BMP−11を含む画分を、凍結乾燥によって濃縮して、アセトニトリルを除去した。
【0099】
(実施例2:精製組換えヒトGDF−8の特徴)
50μgの各精製成熟GDF−8および精製GDF−8プロペプチドを混合し、50mM リン酸ナトリウム(pH7.0)に透析し、300×7.8mm BioSepTM
S−3000サイズ排除カラム(Phenomenex)でクロマトグラフィー分離した。その成熟GDF−8/プロペプチド複合体の分子量を、同じカラムでクロマトグラフィー分離した分子量標準(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を用いて、溶出時間から決定した。
【0100】
精製GDF−8プロペプチドを、精製成熟GDF−8とともに中性pHでインキュベートする場合、その2つのタンパク質は、サイズ排除プロフィールにより示されるように、複合体であるようであった。12.7分で溶出したその主なタンパク質ピークは、同じカラムでクロマトグラフィー分離した分子量標準(Bio−Rad Laboratories)から78kDaの推定分子量を有した。その複合体のサイズは、プロペプチドの2つのモノマーと会合するその成熟GDF−8の1つの二量体と、ほぼ一致していた。
【0101】
この観察を確認するために、成熟GDF−8およびGDF−8プロペプチドの両方を含む調製物を、100mMの1−エチル3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジアミドヒドロクロリド(EDC,Pierce Chemical,Rockford,IL)ありまたはなしで、1時間室温でインキュベートし、HClでpH2〜3に酸性化し、Micron−10 Amicon濃縮器(Millipore,Bedford,MA)で、トリシン緩衝化10% アクリルアミドを用いるSDS−PAGEのために濃縮した。SDS−PAGEのクーマシーTMブルー染色によって、タンパク質を可視化した。
【0102】
(実施例3:CHO細胞におけるActRIIB−Fcの発現)
全長ヒトActRIIB cDNAを、細胞外ドメイン(そのシグナルペプチドをコードする配列を除く)をPCRクローニングするために使用した。使用したそのプライマーは、SpeI(5’)およびNotI(3’)部位に隣接していた。PCR増幅後に、このPCRフラグメントを、その発現プラスミドpHTop−HBML/EKFcのSpel/NotI部位にクローニングした。そのオープンリーディングフレームは、以下をコードする:ミツバチメチリンリーダー(配列番号3のアミノ酸1〜21);ヒトActRIIB細胞外ドメイン(配列番号3のアミノ酸23〜138);エンテロキナーゼ切断部位(DDDK、配列番号6);およびヒトIgG、Fcフラグメント(配列番号3のアミノ酸148〜378)。そのSpeI部位の挿入の結果として、その配列においてThr−22が付加された。
【0103】
その上記ActRIIB−Fcを発現するように安定にトランスフェクトされたCHO安定細胞株を、そのActRIIB−Fc構築物を含むpHTop−HBMLベクターのCHO/A2細胞へのリポフェクチントランスフェクションにより得た。トランスフェクトされた細胞を、0.1μM メトトレキサート中で選択した。馴化培地のウェスタンブロッティング分析を用いて、最も高い発現クローンを同定した。
【0104】
そのpHTopベクターは、pED(Kaufmanら(1991)Nucleic Acids Res.19:4485−4490)から、Gossenら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:5547−5551に記載されるように、そのアデノ主要後期プロモーターの大部分を除去し、そのtetオペレーターの6回反復を挿入することによって、誘導した。
【0105】
そのCHO/A2細胞株を、転写活性化因子、ヘルペスウイルスVP16転写ドメインに融合されたそのtetリプレッサーの間に融合タンパク質(Gossenら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:5547−5551)を安定に組み込むことによって、CHO DUKX B11細胞(Urlaubら(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77:4216−4220)から、誘導した。
【0106】
(実施例4:ActRIIB−Fcの精製)
馴化培地から濃縮した原材料を、rProtein A Sephadex Fast
FlowTM(XK26/4.5cm、23.8ml;Pharmacia,Piscataway,NJ)によって、サイズ排除クロマトグラフィーによって以下のように決定した場合、99%純粋にまで精製した。凍結した馴化培地を、37℃の水浴で融解し、0.22μmフィルタを通して濾過した。その濾過した溶液の4部を、1部のプロテインAローディング緩衝液(0.65M NaSO、20mM クエン酸ナトリウム、20mM ホウ酸、20mM NaHPO、pH9.0)と混合し、それを、そのプロテインAカラムに室温で流した。ActRIIB−Fcを、プロテインA溶出緩衝液(0.15M NaCl、20mM クエン酸、pH2.5)を用いて勾配またはpH約4〜5に段階的に上げることによって、そのカラムから溶出し、そのピークを集め、26%中和緩衝液(0.05M NaHPO、0.15M NaCl,pH7.2)を添加することによって、pH7.0に中和した。その画分を、サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS−PAGEによって評価し、次いで、プールし、4℃で保存した。その精製タンパク質を、Sephadex G−25脱塩カラム(XK50/13.4cm、236ml、Pharmacia)によって、PBSへ処方し、次いで、0.22μmフィルタを通して濾過し、4℃で保存した。
【0107】
(実施例5:ActRIIB−Fc結合アッセイにおける精製GDF−8およびBMP−11の結合特性)
そのGDF−8潜在的複合体を、20モルのEZ−linkTMSulfo−NHS−Biotin(Pierce Chemical,カタログ番号21217):1モルのGDF−8複合体の比で、2時間、氷上でビオチン化し、0.5% TFAで不活性化し、C4 Jupiter 250×4.6mmカラム(Phenomenex)でクロマトグラフィーに供して、成熟GDF−8をGDF−8プロペプチドから分離した。TFA/アセトニトリル勾配で溶出したビオチン化成熟GDF−8画分をプールし、濃縮し、MicroBCAプロテインアッセイ試薬キット(Pierce Chemical,カタログ番号23235)により定量した。
【0108】
ビオチン化成熟BMP−11を、上記と同じ様式で、BMP−11潜在的複合体から調製した。組換えActRIIB−Fc(実施例3および4に記載されるように調製した)を、0.2M 炭酸ナトリウム緩衝液(pH10)中1μg/mlで、96ウェル平底アッセイプレート(Costar,NY,カタログ番号3590)上に一晩4℃でコーティングした。プレートを、次いで、1mg/ml ウシ血清アルブミンでブロックし、標準ELISAプロトコルに従って洗浄した。100μlアリコートの種々の濃度のビオチン化GDF−8またはBMP−11を、そのブロックしたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートし、洗浄した。結合したGDF−8またはBMP−11の量を、ストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ(SA−HRP、BD PharMingen,San Diego,CA,カタログ番号13047E)により検出し、次に、TMB(KPL,Gaithersburg,MD,カタログ番号50−76−04)を添加した。比色測定は、Molecularデバイスマイクロプレートリーダーにおいて450nMで行った。
【0109】
図1に示されるように、ビオチン化GDF−8およびBMP−11は、ActRIIB−Fcに結合した(それぞれ、15ng/mlおよび40ng/mlのED50)。
【0110】
(実施例6:レポーター遺伝子アッセイにおけるActRIIB−Fcの阻害活性)
ActRIIB−Fcの活性を実証するために、レポーター遺伝子アッセイ(RGA)を、レポーターベクターPGL3(CAGA)12配列結合ルシフェラーゼを使用して行った。そのCAGA配列は、TGF誘導性遺伝子PAI−1(Dennerら(1998)EMBO J.17:3091−3100)のプロモーター内のTGF−応答性配列であると以前に報告された。
【0111】
12個のCAGAボックスを含むレポーターベクターを、基本的なレポータープラスミドPGL3(Promega,Madison,WI)を用いて作成した。そのアデノウイルス主要後期プロモーターに由来するそのTATAボックスおよび転写開始部位(−35/+10)を、そのBglII部位とHindIII部位との間に挿入した。CAGAボックスの12回反復、AGCCAGACAを含むオリゴヌクレオチドをアニールし、そのXhoI部位にクローニングした。そのヒト横紋筋肉腫細胞株A204(ATCC HTB−82)を、FuGENETM6トランスフェクション試薬(Boehringer
Manheim,Germany)を用いて、pGL3(CAGA)12で一過性にトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を、2mM グルタミン、100U/ml ストレプトアビジン、1000μg/ml ペニシリンおよび10% ウシ胎仔血清を補充したマッコイ5A培地中、48ウェルプレートで16時間培養した。次いで、細胞を、グルタミン、ストレプトアビジン、ペニシリン、および1mg/ml ウシ血清アルブミンを含むマッコイ5A培地中、6時間37℃で、10ng/ml GDF−8、および種々の濃度のActRIIB−Fcありまたはなしで処理した。ルシフェラーゼを、ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を用いてその処理細胞において定量した。
【0112】
ActRIIBの2つの独立して精製したロットは、上記のレポーター遺伝子アッセイにおいて、0.07〜0.1nMのIC50を示した(図2)。
【0113】
(実施例7:薬物動態)
ActRIIB−Fcの薬物動態(PK)を、1mg/kgの用量において、1回の静脈内(IV)または腹腔内(IP)投与として、C57B6/SCIDマウス(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)において評価した。ActRIIB−Fc(実施例3および4に記載されるように生成および精製した)を、iodogen法(Protein Pharmacokinetics and Metabolism,Plenum Press,New York,NY(Ferraioloら編.1992))を用いて放射性標識した。その動物に、上記の用量および血清濃度の非標識ActRIIB−Fcおよび125I標識ActRIIB−Fcの混合物を与え、血清中の125I放射活性およびその注射した用量の比活性に基づいて決定した。図3は、TCA沈澱した数 対 IVまたはIPのいずれかで投与したActRIIB−Fcの時間に基づく血清濃度を示す。IP注射からの吸収は完全であり、バイオアベイラビリティーは、注射後の最初の180時間内で100%に近かった;その最初の容量分布は、マウス血清容量(50ml/kg)と適合した;ピーク血清濃度は、11μg/ml(IP、注射後6時間)および19.4μg/ml(IV)であった;最後の排除相の間の半減期は、約5日であった。
【0114】
(実施例8:ActRIIB−Fcのインビボ効果)
ActRIIBが成体マウスにおいて筋肉量を増やすか否かを決定するために、7週齢雌性C57B6/SCID(The Jackson Laboratory)を用いて、インビボ研究を行った。マウスを秤量し、体重に関して、8匹の群へと均一に割り当てた。4週間の研究の間に、各群に、received 1週間に1回以下の腹腔内注射を与えた:ActRIIB−Fc(60mg/kg、3mg/kg、または60μg/kg)、マウスモノクローナル抗GDF−8抗体JA16(60mg/kg)、またはPBS緩衝液(ビヒクルコントロール)。JA16は、GDF−8に特異的であり、かつインビボでGDF−8の筋肉ダウンレギュレート活性を阻害することが別の研究(米国特許出願公開番号20030138422号)で示されているので、この抗体を選択した。動物を、処置期間の前および後に、dexascan分析に供することにより、除脂肪体重における増加について評価した。筋肉重量を、腓腹筋および大腿四頭筋を切り出し、秤量することにより評価した。その子宮周囲脂肪パッドもまた取り出し、秤量した。脾臓および胸腺の重量もまた測定した。
【0115】
この研究の結果は、ActRIIB−Fcが、GDF−8活性をインビボで有意に阻害し、増大した筋肉重量を生じることを示した。理解されるように、JA16を投与したマウスは、わずかにより高い体重および骨格筋重量を示し、大腿四頭筋重量における統計学的に有意な(p=0.05)増加を有した(表4)。60mg/kgおよび3mg/kgのActRIIB−Fcでの処置は、驚くべきことに、JA16抗体と比較して、有意により有効であった。60mg/kg ActRIIB−Fcおよび3mg/kg ActRIIB−Fcを投与した群は、コントロールと比較して、それぞれ、約3倍および約2倍の体重増加を有した(表1)。これらの増加は、1回の投薬後に最初に観察された。その大腿四頭筋重量は、絶対重量として、60mg/kgおよび3mg/kgのActRIIB−Fcを投与したマウスにおいて増大した(表3)。その腓腹筋は、絶対重量として、60mg/kg JA16および60mg/kgもしくは3mg/kgのActRIIB−Fcを投与したマウスにおいて増大した(表3)。体重の%として、大腿四頭筋重量は、コントロールと比較して、同じ3つの処置群において増大した(表4)。また、体重の%として、その腓腹筋重量は、60mg/kg ActRIIB−Fcで処置したマウスにおいて増大した(表4)。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
(実施例9:筋量におけるActRIIB−Fcの用量依存効果)
成体マウスの筋量におけるActRIIB−Fcの効果をさらに研究するために、それに関する研究を、7週齢の雌性C57B6/SCID(The Jackson Laboratory)を用いて行った。マウスを秤量し、体重に関して均等に、6匹の4つの群に分配した(6 SCID、6 C57マウス、そして各々6匹の2つのコントロール群)。各群に、1〜4週間の間、60mg/kg ActRIIB−FcまたはPBS緩衝液(ビヒクルコントロール)の腹腔内注射を毎週与えた。研究の29日目に、動物を、腓腹筋および大腿四頭筋を解剖し秤量することによって、筋量について評価した。この研究の結果は、ActRIIB−Fcが、インビトロでGDF−8活性を有意に阻害し、ビヒクルコントロールと比較した場合、ActRIIBの単回投与後でさえ筋量の増加を生じたことを示した。絶対重量としての大腿四頭筋重量は、C57およびSCIDマウスの両方において21%〜60%まで増加した(表5)。同様に、絶対重量としての腓腹筋量は、31〜51%まで増加した(表5)。
【0121】
【表5】

【0122】
(実施例10:骨梁におけるGDF−8のインビボでの役割)
GDF−8の阻害は、筋量を増加させる。筋活性の増加または体重の増加のいずれかに起因する機械的付加の増加は、骨量および骨密度の増加に関連する。従って、GDF−8ノックアウト(KO)マウスを、骨量および微小構造の変化について評価した。成体マウスの初期評価は、KOマウスの脊椎における骨密度が、それらの野生型同腹仔の骨密度よりもほぼ2倍高かったことを示した。この増加は、単にGDF−8 KOマウスにおける筋量の増加に起因して期待され得る増加をはるかに上回った。
【0123】
高解像度のマイクロ断層撮影画像化(μCT40、Scano Medical、Switzerland)を使用して、成体GDF−8野生型(WT)マウスおよびKOマウスの第5腰椎および遠位大腿骨における骨梁容積画分および微小構造、ならびに大腿骨中骨幹での皮質骨の幾何学を評価した。標本を、9〜10月齢のGDF−8 KOおよび同腹仔コントロールから得た(各遺伝型および性別の4匹のマウス)。全体の椎体および大腿骨を、12μm解像度でのマイクロコンピュータ断層撮影法を使用して走査した。椎体の骨梁または遠位大腿骨幹端の骨梁(すなわち、二次海綿質)を含む目的の領域を、半自動化輪郭アルゴリズムを使用して同定した。以下のパラメータを、直接3次元評価を使用してコンピューター計算した:骨容積画分(%)、骨梁厚(μm)、間隔(μm)および数(1/mm)。さらに、どれほど良好に骨梁ネットワークが連結されているかの指標である結合性密度を、大腿骨の中骨幹領域での皮質骨パラメータ(総面積、骨面積、および皮質厚を含む)と同様に評価した。
【0124】
雄性および雌性のどちらのKOマウスも、WT同腹仔と比較して、椎体の海綿質密度の劇的な増加を有した(n=4、それぞれ+93%および+70%、p<0.0001)。この海綿質密度の増加は、骨梁厚における14%の増加(p=0.03)、骨梁数における38%の増加(p=0.0002)、および骨梁間隔における減少(p=0.009)を伴った。構造および密度におけるこれらの変化の複合効果は、雄性KOおよび雌性KOにおいて、それらのWT同腹仔と比較して、それぞれ、3.4倍および1.7倍の結合性の増加を生じた(p<0.0001)。さらに、海綿質の石灰化のレベルの大まかな測定は、骨梁の平均ミネラル含量が、コントロールと比較してKOマウスで8%高かったことを示した(p<0.0001)。この効果は、雌性マウスよりも雄性マウスでより大きいが、高解像度のマイクロコンピュータ断層撮影法によって評価された椎骨海綿質特性が、表6に示されているという最終的な結論に達するにはサンプルサイズが小さすぎるという示唆が存在する。
【0125】
脊椎における観察とは対照的に、雄性KOマウスおよび雌性KOマウスは、遠位大腿骨においてWT同腹仔よりも海綿質密度が低かった(n=4、全体の遺伝子型効果に対してp=0.05)(表7)。この骨密度における減少は、雄性KOマウスにおいてよりも雌性KOマウスにおいてより明らかであった。GDF−8 KOマウスは、そのWT同腹仔と同様の骨梁厚を有していたが、同腹仔コントロールと比較して骨梁はより少なく、骨梁間隔はより広かった。しかし、大腿中骨幹での皮質厚は、雄性GD−8 KOとその同腹仔コントロールとで類似しており、GDF−8雌性マウスではそのWT同腹仔よりも約10%大きかった(n=4、p=0.04)(表8を参照のこと)。2つの遺伝子型間で、皮質骨面積または骨面積画分における差はなかった。
【0126】
【表6】

【0127】
【表7】

【0128】
【表8】

【0129】
(実施例11:筋変性障害および骨変性障害の処置)
例えば、ActRIIB融合ポリペプチドのようなGDF−8のインヒビターは、増加した筋量で指示された処置に対して有用であり、また、骨粗鬆症の予防および処置に対して有用である。さらに、GDF−8の阻害は、骨同化効果が望まれる他の場合(例えば、骨治癒の増強(すなわち、骨折修復、脊椎癒合など))において有用であり得る。本発明のActRIIB融合ポリペプチドは、疾患の兆候が現れた被験体または確定した筋変性疾患または骨変性疾患を有する被験体を処置するために使用される。
【0130】
骨障害(例えば、骨粗鬆総)の処置についてのActRIIBの効力は、十分に確立された骨粗鬆症のモデルを使用して確かめられる。例えば、卵巣切除マウスが、新規の骨粗鬆症薬物処置の効力を試験するために使用されている(Alexanderら(2001)J.Bone Min.Res.16:1665−1673;およびAndersonら(2001)J.Endocrinol.170:529−537)。ヒトと同様に、これらのげっ歯類は、卵巣切除によって、骨(特に、海綿骨)の急速な損失を示す。結果の評価は、骨ミネラル密度、血清および尿中の骨代謝回転の生化学マーカー、骨強度、および組織学/組織形態計測に基づく。
【0131】
一研究では、健常な雌性マウスおよび/または免疫易感染性雌性マウスを、12〜16週齢で卵巣切除し、そして4〜6週間の間骨を損失させた。この骨損失期間の後、ActRIIB−Fc(IP注射)またはビヒクルでの処置を、1〜6ヶ月行った。処置プロトコルは、様々な用量レジメンおよび処置レジメンの試験(例えば、毎日、毎週、または隔週の注射)を伴って変更し得た。処置していない卵巣切除マウス(またはラット)は、インタクトな(すなわち、卵巣切除されていない)年齢の一致するマウスに対して約10〜30%の骨密度を失うことが予測される。ActRIIB−Fcで処置されたマウスが、ビヒクル処置を受けるマウスにおける骨量および骨密度よりも、10〜50%大きい骨量および骨密度を有すること、そしてさらに、この骨密度の増加が、特に、海綿骨の皮質骨に対する比がより大きい領域において、骨強度に関連することが予測される。
【0132】
別の研究の目的は、ActRIIB−Fcが、エストロゲン欠乏症に関連する骨量、微小構造および強度の低下を予防することにおいて有効であることを示すことである。従って、この研究は、ActRIIB−Fc抗体での処置を、骨損失期間後ではなく卵巣切除の直後に開始することを除いて、上記の設計と類似の設計を有する。ActRIIB−Fcで処置されたマウスが、ビヒクルで処置されたマウスよりも、卵巣切除後の骨量の損失が少ないことが予測される。
【0133】
ActRIIB融合ポリペプチドはまた、疾患を予防するため、ならびに/あるいは疾患の重篤度および/または症状を軽減するために使用される。ActRIIB融合ポリペプチドが、1日1回の頻度で皮下注射として投与され、そして月に1回のまれに投与されることが予測される。処置期間は、1ヶ月〜数年の範囲であり得る。
【0134】
ヒトにおけるActRIIB−Fcの臨床効力を試験するために、骨量の低い閉経後の女性を、骨密度試験によって同定し、そして処置群にランダム化する。処置群としては、プラシーボ群、および抗体(様々な用量)を与える1〜3つの群が挙げられる。個体を、1〜3年の見通しに従って、骨代謝回転における生化学的マーカーの変化、骨ミネラル密度の変化、および脆弱性骨折の発症を評価する。処置を受けた個体は、ベースラインと比較して遠位大腿における骨ミネラル密度の増加および2〜30%の腰椎の増加を示し、そして脆弱性骨折の事例が減少することが予測される。骨形成の生化学的マーカーが増加することが予測される。
【0135】
ポリペプチドは、単一の活性化合物としてか、または別の化合物もしくは組成物と組み合わせて投与される。単一の活性化合物としてか、または別の化合物もしくは組成物と組み合わせて投与される場合、投薬量は、好ましくは、症状の重篤度および疾患の進行度に依存して、約1μg/kg〜20mg/kgである。適切な有効量は、処置医師によって以下から選択される:1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg〜1mg/kg、および500μg/kg〜1mg/kg。例示的な処置レジメンおよび結果は、表9に要約されている。代替的レジメンとしては、以下が挙げられる:(1)1×IC50、または40μg/kgの初期用量および0.5×IC50、または20μg/kg、2週間後;(2)10×IC50初期用量および5×IC50、2週間後;あるいは100×IC50および50×IC50、2週間後。
【0136】
【表9】

【0137】
(実施例12:代謝障害の処置)
例えば、ActRIIB融合ポリペプチドのようなGDF−8のインヒビターは、代謝障害(例えば、2型糖尿病、グルコース寛容減損、代謝症候群(例えば、X症候群)、外傷(例えば、熱傷または窒素不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性、および脂肪組織障害(例えば、肥満症))の処置のために有用である。本発明の方法において、本発明のActRIIB融合ポリペプチド抗体は、疾患の兆候が現れた被験体または確定した代謝疾患を有する被験体を処置するために使用される。
【0138】
代謝障害(例えば、2型糖尿病および/または肥満症)の処置に対するActRIIB融合ポリペプチドの効力は、肥満症、インスリン抵抗性および2型糖尿病(ob/ob、db/db)の十分に確立したマウスモデル、ならびに枯死性黄化を保有する株を使用して行われる。インスリン抵抗性はまた、特定のマウス株(C57BL/6Jを含む)の高脂肪摂取または高カロリー摂取によって誘導され得る。ヒトと同様に、これらのげっ歯類は、インスリン抵抗性、高インスリン血症、異脂肪血症、および高血糖症を生じるグルコースホメオスタシスの低下を発症する。結果の評価は、血清のグルコース測定、インスリン測定、および脂質測定に基づく。改善されたインスリン感受性の測定は、インスリン耐性試験およびグルコース耐性試験によって決定され得る。より高感度な技術としては、改善が糖血症制御およびインスリン感受性であることを評価するための、正常血糖性高インスリン性クランプの使用が挙げられる。さらに、このクランプ技術は、改善された糖血症制御における主要なグルコース処理組織(筋肉、脂肪細胞、および肝臓)の役割の定量的評価を可能にする。
【0139】
一研究において、配列番号3に記載されるようなActRIIB融合ポリペプチドでの処置(IP注射)またはビヒクルでの処置を、1週間〜6ヶ月間行う。この処置プロトコルは、様々な用量および処置レジメン(例えば、毎日、毎週、または隔週の注射)を伴って変更し得る。融合ポリペプチドで処置されたマウスは、プラシーボ処置を受けたマウスと比較して、グルコース取り込みがより大きく、解糖およびグリコーゲン合成が増加し、血清中の遊離の脂肪酸およびトリグリセリドがより少ないことが予測される。
【0140】
ActRIIB融合ポリペプチドはまた、疾患の予防、ならびに/あるいは疾患の重篤度および/または症状を軽減するために使用される。ActRIIB融合ポリペプチドが、1日1回の頻度で皮下注射として投与され、そして1ヶ月に1回のまれな頻度で投与されることが予測される。処置期間は、1ヶ月〜数年間の範囲であり得る。
【0141】
ヒトにおけるActRIIB融合ポリペプチドの臨床効力を試験するために、2型糖尿病に罹患している被験体または2型糖尿病に罹患する危険性のある被験体を同定し、そして処置群に無作為化する。処置群としては、プラシーボ群およびActRIIB融合ポリペプチド(様々な用量)を与える1〜3つの群が挙げられる。個体を、1〜3年の見通しに従って、グルコース代謝の変化を評価する。処置を受けた個体が、改善を示すことが予測される。
【0142】
ActRIIB融合ポリペプチドは、単一の活性化合物としてか、または別の化合物もしくは組成物と組み合わせて投与される。単一の活性化合物としてか、または別の化合物もしくは組成物と組み合わせて投与される場合、その投薬量は、症状の重篤度および疾患の進行度に依存して、約1μg/kg〜20mg/kgであり得る。適切な有効量は、処置医師によって以下から選択される:1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg〜1mg/kg、および500μg/kg〜1mg/kg。例示的な処置レジメンおよび結果は、表7に要約されている。
【0143】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138179(P2010−138179A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17449(P2010−17449)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【分割の表示】特願2004−548352(P2004−548352)の分割
【原出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】