説明

ADを治療するのに適した化合物の特定

本発明は、タウの過剰リン酸化を阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供し、従ってADおよび関連状態を治療するのに適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウタンパク質の過剰リン酸化を阻害することができる物質を特定するための方法に関する。本発明はさらに、前記方法によって特定される化合物およびアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療または予防におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、高齢者における認知症の最も一般的な原因であり、緩やかに進行して、記憶喪失および見当識障害などの症状を生じさせる認知機能の低下によって特徴づけられる。死亡は、平均で、診断後9年で起こる。ADの発生率は年齢と共に上昇し、70歳以上の人々の約5%が罹患する一方、80歳以上になるとこの数字は20%に上昇する。
【0003】
既存の治療はもっぱらADの一次症状を標的とする。病変したニューロンは特定の神経伝達物質の不十分なまたは過剰の量を放出し得るため、現在の薬剤は、神経伝達物質レベルを上昇させることまたは神経伝達物質による神経細胞の刺激を低減することを目指す。これらの薬剤はADの症状にある程度の改善を提供するが、この疾患の基礎となる原因に対処することはできない。
【0004】
1907年に初めて記述された、ADの古典的な臨床的および神経病理学的特徴は、老人斑または神経炎性斑ともつれた線維束(神経原線維変化)から成る[Verdile,G.,et al,Pharm.Res.50:397−409(2004)]。加えて、海馬および大脳皮質におけるニューロンの重大な喪失がある。神経炎性斑は、主として、ジストロフィー性(腫脹、損傷および変性した)軸索および炎症過程によって活性化されるグリア細胞によって取り巻かれた、β−アミロイドペプチド(Aβ)の沈着から成る細胞外病変である。これに対し、神経原線維変化(NFT)は、脳において広汎に認められる(例えば主としてADにおける皮質と海馬で)、タウタンパク質の過剰リン酸化形態から構成される細胞内クラスターである。タウは、微小管の安定化において役割を果たす可溶性細胞質タンパク質である。このタンパク質の過度のリン酸化はこのタンパク質を不溶性にし、ペアードヘリカルフィラメントへのこの凝集を導き、次にNFTを形成する。
【0005】
アミロイドカスケード仮説は、Aβペプチド、特にAβ42の異常蓄積が、ADの古典的症状、および最終的には患者の死亡へと導く事象のカスケードを開始させると提案する。ADのすべての神経病理学的および臨床的特徴を備える、早発性家族性AD(FAD)は、主として、Aβの産生において鍵となる成分であるβAPPまたはプレセニリン内の突然変異によって引き起こされる[Mudher,A.,Lovestone,S.(2002)Trends Neurosci.25:22−26]。これに対し、タウ遺伝子内の突然変異がFADを引き起こすことはまだ認められておらず、βAPPプロセシングの変化は病因の中の上流事象であることを示唆する。しかし、FAD突然変異を担持するトランスジェニックマウスはAβレベルおよび神経炎性斑の数の上昇を示すが、有意のニューロン喪失を示さず、最小限のタウリン酸化を示し、また神経細線維もつれの形成を示さず、2つの病理を結びつけるもう1つの因子が足りないことを示唆する。さらに、タウノックアウトマウスからの培養海馬ニューロンはAβ投与後に神経変性を発現しないが、タウ遺伝子が再発現される場合、Aβの神経毒性作用が回復される[Rapoport,M.,et al(2002)Proc.Natl.Acad.Sci USA 99:6364−6369]。合わせて考慮すると、これらのデータは、タウ機能の調節不全が、最終的にニューロンの死へと導くアルツハイマー病の病理のカスケードにおける必要段階であることを強く示唆する。
【0006】
さらに、タウ突然変異およびNFTは、第17染色体に関連する前頭側頭型認知症、ピック病およびパーキンソン症候群(FTDP−17)などの、Aβ病変が存在しない他の認知症で認められる[Mizutani,T.(1999)Rinsho Shikeigaku 39:1262−1263]。また、ADでは、認知症の程度は老人斑の発生率よりもNFTの発生率とより密接に相関する[Arriagada,P.V.,et al(1992)Neurology 42:631−639]が、アミロイド斑の有意の数が非認知症高齢者の脳においてしばしば認められ、アミロイド病変だけでは認知症を引き起こすのに十分でないことを示唆する。
【0007】
これらの理由から、タウ機能の正常化(特に過剰リン酸化の予防)は、ADおよび他の認知症状態の治療のための望ましい治療目標と見られている。
【0008】
タウは、主として軸索に局在し、中枢神経系(CNS)において広く発現されるMapt(微小管関連タンパク質タウ)遺伝子によってコードされる352−441アミノ酸タンパク質である[Binder et al,J.Cell Biol.1985,101(4),1371−1378]。タウの主要機能は、軸索輸送と伸長ならびに細胞の極性と形状の生成などの多くの重要な細胞過程を調節する上で不可欠なチューブリン二量体を含む細胞内構造成分、微小管(MT)の安定性の調節である。チューブリンへのタウの結合は、MTの重合/脱重合の速度(動的不安定性と称される)を決定する上で鍵となる因子であり、従って、タウは、多くの重要な細胞過程の調節にとっての鍵である[例えばBurner,K.A.,Kirschner,M.W.(1991)J.Cell.Biol.115:717−730参照]。
【0009】
タウは、数多くのセリンおよびトレオニン残基を有し、その多くがリン酸化を受けやすい、塩基性タンパク質である。正常なタウは2から3個のリン酸化されたアミノ酸残基を有するが、ADおよび他のタウオパシーで認められる過剰リン酸化されたタウは、典型的には8または9個のリン酸化残基を有する。様々なキナーゼがこれらの部位のリン酸化を促進し、KXGSモチーフとしても公知である、Lys−(Ile/Cys)−Gly−Ser配列でタウをリン酸化する、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)およびサイクリン依存性キナーゼ5(cdk5)などのプロリン特異的キナーゼ、およびプロテインキナーゼA(PKA)およびカルモジュリンキナーゼII(CaMKII)などの非プロリン特異的キナーゼが含まれる。1個のKXGSモチーフがMT結合反復配列の各々で認められる。これらの部位でのリン酸化はタウ−MT結合の調節のために重要であり、リン酸化の程度は正常では低いが、AD患者からの脳組織では上昇していることが示された。KXGSモチーフ内の1個の特定残基、Ser−262のリン酸化が、ADにおけるNFTから抽出されたタウタンパク質では上昇していることが示されており[Hasegawa,M.et al(1992)J.Biol.Chem 267:17047−17054]、この部位のリン酸化はまた、MT結合を劇的に低下させると思われる[Biernat,J.et al.(1993)Neuron 11:153−163]。
【0010】
従って、タウの過剰リン酸化を制御するため、従って(潜在的に)ADおよび他のタウオパシーを治療するまたは予防するためのキナーゼ阻害剤の使用には多大の関心が寄せられている。特に興味深い標的は微小管親和性調節キナーゼ(MARK)であり、それは、MARKが、Ser−262でタウをリン酸化し、それによって他のキナーゼによるさらなるリン酸化のためにタウをプライムする上での「マスターキナーゼ」として働くことの証拠が存在するからである[Drewes,G.(2004).Trends Biochem.Sci 29:548−555]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ADおよび他のタウオパシーを治療するまたは予防することを目的として、脳セリン/トレオニンキナーゼの阻害を含む、タウの過剰リン酸化を制御する選択的手段に関する。脳セリン/トレオニンキナーゼ(BRSK、脳特異的キナーゼとしても公知である)は、2つのアイソフォーム(BRSK1とBRSK2)でヒト脳において発現されるキナーゼであり、これまでADまたは関連状態の制御における薬剤化可能な標的として示唆されたことはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明によれば、
(i)BRSKを、ATPおよび試験化合物の存在下に、リン酸化可能なセリン残基を含むペプチド基質と共に、前記セリン残基のリン酸化と適合性の条件下でインキュベーションする段階;
(ii)ペプチド基質が前記セリン残基でリン酸化された程度を測定する段階;および
(iii)段階(ii)で得た結果を、試験化合物の不在下で実施した対応するブランクインキュベーションから得た結果と比較する段階
を含む、アルツハイマー病またはタウの異常リン酸化を含む他の状態の治療または予防における使用に適した化合物を選択するためのスクリーニング方法が提供される。
【0013】
本発明はさらに、アルツハイマー病またはタウの異常リン酸化を含む他の状態の治療または予防のための薬剤の製造のためのBRSK阻害剤の使用を提供する。
【0014】
本発明はさらに、BRSK阻害剤の治療有効用量をこの必要のある患者に投与することを含む、アルツハイマー病またはタウの異常リン酸化を含む他の状態を治療するまたは予防する方法を提供する。
【0015】
ここで使用する、「BRSK阻害剤」という用語は、本発明のスクリーニング方法において試験したとき、ブランクインキュベーションから得たものと比較してリン酸化の程度の低下を生じさせる化合物を指す。
【0016】
上記スクリーニング方法において使用されるBRSKは、典型的には宿主細胞からの組換え発現によって得られ、UpstateまたはDundee Kinase Consortiumより入手可能である。2つのアイソフォーム、BRSK1およびBRSK2のいずれもが使用され得る。
【0017】
本発明者らは、BRSK1およびBRSK2のキナーゼドメインが、MARKアイソフォーム、MARK1−4の対応するドメインと高度の相同性を有することを確認しており、BRSKはMARKと同様の方法でタウのリン酸化のためのマスターキナーゼとして働くという仮説が立てられる。この仮説の裏付けとして、本発明者らはさらに、BRSK1とBRSK2が、Ser−262でタウをリン酸化することが示されたマウスキナーゼSAD−AおよびSAD−Bのヒト相同体であることを確認し[Kishi et al(2005),Science,307:929−932]、BRSK1およびBRSK2がSer−262でタウをリン酸化することを明らかにした。
【0018】
上記経路によって特定されたBRSKの阻害剤は、BRSKに対して選択的に活性な化合物、または両方の酵素に対して活性な化合物を特定することを目的として、MARKに対する活性に関してさらにスクリーニングされ得る。化合物の両方のタイプが、以下で論じる理由から、有用と考えられる。
【0019】
MARKはCNSおよび他の組織内で広く発現されるが、BRSKの発現は脳に限定される。従って、MARKよりもBRSKに選択的である阻害剤は、神経細胞特異的におよび望ましくない末梢作用への傾向を抑えつつ、タウのリン酸化を阻害し得る。他方で、BRSKとMARKの両方に対して活性な化合物は、BRSKとMARKが異なる段階によってタウをリン酸化することの証拠が存在するので、タウリン酸化のより強力な阻害剤を提供すると考えられる。MARKの場合、リン酸化は14−3−3タンパク質の結合を含み、一方BRSKによるリン酸化はこれを含まない。従って、BRSK/MARK二元阻害剤は、2つの別々のリン酸化経路を遮断する可能性を提供する。
【0020】
上記方法によって特定されるBRSKの阻害剤は、BRSKに対して選択的な化合物を特定することを目的として、好ましくは、Cdk−5、PKA、GSK3βおよびCaMKIIなどの他のキナーゼに対してカウンタースクリーニングされる。BRSKに対して選択的な化合物は、ADまたは他のタウオパシーの治療のために使用されるとき、望ましくない副作用を生じさせる可能性がより低いからである。
【0021】
本発明のスクリーニング方法において、ペプチド基質は、原則として、Ser−262部位を含むタウ自体またはこのフラグメントを含めて、適切なセリン残基を含むいかなるペプチドでもよい。好ましい基質は、商業的に入手可能である適切に標識された形態の、Cdc25Cペプチドである。Cdc25Cペプチドは、Ser−216部位を含む完全長Cdc25Cタンパク質のフラグメントであり、本発明者らは、BRSKが前記Ser−216部位でCdc25Cをリン酸化することを確認した。
【0022】
上述したスクリーニング方法において、リン酸化の程度の測定は、当業者に公知の標準的方法のいずれかを含み得る。非常に適切には、段階(i)で使用されるペプチド基質は蛍光基で標識され、この蛍光特性の変化がリン酸化の程度の測定として使用される。そこで、1つの実施形態では、ペプチド基質は蛍光基で標識され、段階(ii)は、蛍光基の蛍光の分極を誘導する金属配位錯体へのリン酸化ペプチドの結合を含み、リン酸化の程度は蛍光分極の程度によって指示される。適切な蛍光標識基はフルオレセインである。適切に標識されたCdc25Cペプチドは、IMAP(登録商標)の商標名で、適切な金属錯体および他の試薬と共に、Molecular Devices Corp.より市販されている。
【0023】
選択的実施形態では、ペプチド基質は蛍光受容基で標識され、段階(ii)は、蛍光供与基で標識された抗体へのリン酸化ペプチドの結合を含み、リン酸化の程度は蛍光共鳴エネルギー転移法(FRET)分析によって(すなわち供与基の励起波長での照射に応答した受容基の蛍光を観測することによって)測定される。非常に適切には、供与基の励起波長での照射に応答した、受容基と供与基の両方の蛍光を測定し、この2つの比をリン酸化の程度の測定として使用する。好ましくは、受容基の蛍光は、ホモジニアス時間分解蛍光法(HTRF)分析として公知の手法において、エネルギー転移から生じる長期間蛍光を直接励起によって引き起こされる短期間蛍光から区別するために、時間分解ベースで測定される。適切な蛍光供与基および受容基標識試薬は、例えばCisbioから、市販されている。供与基は、典型的には基質上のリン酸化セリン部位についての抗体に結合したEu3+クリプテート錯体である。受容基は、適切には、ビオチニル化ペプチド基質に容易に結合する、例えばStreptavidin−XL665およびStreptavidin−XLent!の商標名でCisbioによって供給されるストレプトアビジン複合形態の、アロフィコシアニンである。従って、本発明のこの実施形態における使用のための好ましい基質は、Cell Signalling Technologiesから市販されている、ビオチニル化Cdc25Cである。HTRFの総説については、Kolb A,Burke J,Mathis G.,A Homogeneous,Time−Resolved Fluorescence Method for Drug Discovery in:Devlin JP,Ed.High Throughput Screening,the Discovery of Bioactive Substances.New York:Marcel Dekker,Inc.1997.345−60参照。
【0024】
他のキナーゼ(例えばMARK、Cdk−5およびPKA)に対するカウンタースクリーニングは、BRSKを適切なキナーゼに置き換えて、類似の方法によって実施し得る。
【0025】
本発明の1つの実施形態では、選択的BRSK阻害剤は、アルツハイマー病または他のタウオパシーの治療または予防において、もしくはアルツハイマー病または他のタウオパシーの治療または予防のための薬剤の製造において使用される。本発明のもう1つの実施形態では、BRSKとMARKの両方を阻害することができる化合物がこれらの目的のために使用される。
【0026】
本発明の方法によって特定されるBRSK阻害剤は、式I:
【0027】
【化2】

[式中、Yはインドール環の4位または5位で結合しており、およびXとYは以下の表で指示されるとおりである。
【0028】
【表2】


]の化合物および医薬的に許容されるこの塩を含む。
Ac=アセチル
【0029】
さらなる実施形態では、本発明は、アルツハイマー病または他のタウオパシーの治療のための薬剤の製造のための、上記で定義される式Iの化合物または医薬的に許容されるこの塩または水和物の使用を提供する。
【0030】
BRSK阻害剤は、有効成分(例えば式Iの化合物または医薬的に許容されるこの塩)および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で患者に適切に投与される。
【0031】
好ましくは、これらの組成物は、経口、非経口、鼻内、舌下または直腸投与のため、もしくは吸入またはガス注入による投与のための、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、無菌非経口溶液または懸濁液、定量噴霧式エアロゾルまたは液体スプレー、点滴剤、アンプル、経皮パッチ、自動注射装置または坐薬などの単位投与形態である。主要有効成分は、典型的には製薬担体、例えばトウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、滑石、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムおよびリン酸二カルシウムなどの従来の錠剤化成分、またはゴム、分散剤、懸濁化剤またはモノオレイン酸ソルビタンおよびポリエチレングリコールなどの界面活性剤、および本発明の化合物または医薬的に許容されるこの塩を含有する均質な予備製剤(preformulation)組成物を形成するための他の製薬希釈剤、例えば水と混合される。これらの予備製剤組成物を均質と称するとき、有効成分が組成物全体に均質に分散しているので、組成物が錠剤、丸剤およびカプセルなどの等しく有効な単位投与形態に容易に細分され得ることが意味される。次に、この予備製剤組成物は、本発明の有効成分0.1−約500mgを含有する上述したタイプの単位投与形態に細分される。典型的な単位投与形態は、有効成分1−100mg、例えば1、2、5、10、25、50または100mgを含有する。組成物の錠剤または丸剤は、持続性作用の利点を与える投与形態を提供するために被覆され得るかもしくは調合され得る。例えば錠剤または丸剤は、内部投与成分と外部投与成分を含むことができ、後者は前者を覆う外皮の形態である。2つの成分は、胃内での崩壊に抗するのに役立ち、内部成分が十二指腸へと無傷で通過するまたは放出を遅延させることを可能にする腸溶性の層によって分離され得る。様々な材料がこのような腸溶層または剤皮のために使用でき、このような材料は、多くの高分子酸およびシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料と高分子酸の混合物を含む。
【0032】
本発明において有用な組成物が経口的または注射による投与のために組み込まれ得る液体形態は、水溶液、液状又はゲル充填カプセル、適切に香り付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、および綿実油、ゴマ油、ヤシ油又は落花生油などの食用油による着香乳剤、ならびにエリキシルおよび同様の製薬ビヒクルを含む。水性懸濁液のための適切な分散剤または懸濁化剤は、トラガカント、アカシアなどの合成および天然ゴム、アルギネート、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはゼラチンを含む。
【0033】
本発明の1つの実施形態では、BRSK阻害剤は、AD、FTDP−17、ピック病または前頭側頭型認知症、好ましくはADに罹患している患者に投与される。
【0034】
本発明の選択的実施形態では、BRSK阻害剤は、軽度の認知障害または加齢性認知低下に罹患している患者に投与される。このような治療の好ましい結果は、ADの発症の予防または遅延である。加齢性認知低下および軽度認知障害(MCI)は、記憶障害が存在するが、認知症についての他の診断判定基準は存在しない状態である(Santacruz and Swagerty,American Family Physician,63(2001),703−13)。(「The ICD−10 Classification of Mental and Behavioural Disorders」,Geneva:World Health Organisation,1992,64−5も参照のこと)。ここで使用する、「加齢性認知低下」は、記憶および学習;注意力および集中力;思考;言語;および視覚空間機能の少なくとも1つの少なくとも6ヶ月間の低下、およびMMSEなどの標準化された神経心理学検査に関する標準値より低い2以上の標準偏差のスコアを意味する。特に、記憶の進行性低下が存在し得る。より重症の状態では、記憶障害の程度であるMCIは、患者の年齢について正常とみなされる範囲外であるが、ADは存在しない。MCIと軽度ADの鑑別診断は、Petersen et al.,Arch.Neurol,56(1999),303−8によって述べられている。MCIの鑑別診断に関するさらなる情報は、Knopman et al,Mayo Clinic Proceedings,78(2003),1290−1308によって提供される。高齢被験者の試験において、Tuokko et al(Arch,Neurol.,60(2003)577−82)は、最初にMCIを示す高齢被験者は5年以内に認知症を発現する危険度が3倍高いことを認めた。
【0035】
Grundman et al(J.Mol.Neurosci.,19(2002),23−28)は、MCI患者におけるより低い基線海馬容積はその後のADについての予後指標であることを報告している。同様に、Andreasen et al(Acta Neurol.Scand,107(2003)47−51)は、全タウの高いCSFレベル、ホスホ−タウの高いCSFレベルおよびAβ42の低いCSFレベルはすべてMCIからADへの進行の高い危険度に結びつくと報告している。
【0036】
この実施形態の中で、BRSK阻害剤は、記憶機能障害を患っているが、認知症の症状を示さない患者に好都合に投与される。記憶機能のこのような障害は、典型的には、下垂体機能不全によって引き起こされる発作または代謝異常などの、全身または大脳疾患には起因しない。このような患者は、特に55歳以上の人々、特に60歳以上の人々、好ましくは65歳以上の人々であり得る。このような患者は、患者の年齢に関して正常な成長ホルモン分泌のパターンとレベルを有し得る。しかし、このような患者は、アルツハイマー病を発症するための1以上の付加的な危険因子を有し得る。このような因子は、この疾患の家族歴;疾患への遺伝的素因;高い血清コレステロール;および成人発症糖尿病を含む。
【0037】
本発明の特定実施形態では、BRSK阻害剤は、ADの家族歴;ADへの遺伝的素因;高い血清コレステロール;成人発症糖尿病;高い基線海馬容積;全タウの高いCSFレベル;ホスホ−タウの高いCSFレベル;およびAβ(1−42)の低いCSFレベルから選択される、ADを発症するための1以上の危険因子を付加的に有する加齢性認知低下またはMCIに罹患している患者に投与される。
【0038】
遺伝的素因(特に早期発症ADに対する)は、APP、プレセニリン−1およびプレセニリン−2遺伝子を含む、多くの遺伝子の1以上における点突然変異から生じ得る。また、アポリポタンパク質E遺伝子のε4アイソフォームについてホモ接合である被験者は、ADを発症する危険度がより大きい。
【0039】
患者の認知低下または障害の程度は、本発明に従った治療経過の前、治療経過の期間中および/または治療経過後に規則正しい間隔で好都合に評価されるので、この変化、例えば認知低下の緩慢化または停止が検出され得る。年齢および教育に合わせて調節される標準値を有するミニメンタルステート検査(MMSE)などの、様々な神経心理学的検査がこの目的のために当分野で公知である(Folstein et al.,J.Psych.Res.,12(1975),196−198,Anthony et al.,Psychological Med.,12(1982),397−408;Cockrell et al.,Psychopharmacology,24(1988),689−692;Crum et al.,J.Am.Med.Assoc’n.18(1993),2386−2391)。MMSEは、成人における認知状態の簡単で定量的な測定である。認知低下または障害に関してスクリーニングするため、所与の時点での認知低下または障害の重症度を評価するため、個人における認知変化の経過を経時的に追跡するため、および治療に対する個人の応答を記録するために使用できる。もう1つの適切な検査は、アルツハイマー病評価スケール(ADAS)、特にこの認知エレメント(ADAS−cog)である(Rosen et al.,Am.J.Psychiatry,141(1984),1356−64参照)。
【0040】
活性な化合物における、アルツハイマー病の治療もしくは予防のために適切な用量レベルは、体重に対して、1日当たり約0.01−250mg/kg、好ましくは1日当たり約0.01−100mg/kg、より好ましくは1日当たり約0.05−50mg/kgである。化合物は、1日に1−4回の投薬計画において投与されてよい。しかし場合によっては、この制限外の用量が使用されてもよい。
【0041】
BRSK阻害剤は、場合により、ADまたはこの症状の治療または予防において有用であることが公知の1以上の付加的化合物と組み合わせて投与され得る。このような付加的な化合物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジルおよびガランタミン)、NMDAアンタゴニスト(例えばメマンチン)またはPDE4阻害剤(例えばAriflo(商標)およびWO03/018579、WO01/46151、WO02/074726およびWO02/098878に開示されている化合物のクラス)などの認知増強薬を含む。このような付加的な化合物はまた、スタチン、例えばシンバスタチンなどのコレステロール低下薬を含む。このような付加的な化合物は、同様に、Aβの分泌を調節する化合物(γ−セクレターゼ阻害剤、γ−セクレターゼ調節剤およびβ−セクレターゼ阻害剤を含む)、Aβの凝集を阻害する化合物、およびAβに選択的に結合する抗体などの、脳におけるAβの産生またはプロセシングを調節することが公知の化合物(「アミロイド調節剤」)を含む。このような付加的な化合物はさらに、例えばWO2004/080459に述べられているような、成長ホルモン分泌促進物質を含む。
【0042】
本発明のこの実施形態では、アミロイド調節剤は、Aβの分泌を阻害する化合物、例えばγ−セクレターゼの阻害剤(WO01/90084、WO02/30912、WO01/70677、WO03/013506、WO02/36555、WO03/093252、WO03/093264、WO03/093251、WO03/093253、WO2004/039800、WO2004/039370、WO2005/030731、WO2005/014553、WO2004/089911、WO02/081435、WO02/081433、WO03/018543、WO2004/031137、WO2004/031139、WO2004/031138、WO2004/101538、WO2004/101539およびWO02/47671に開示されているものなど)、またはβ−セクレターゼ阻害剤(WO03/037325、WO03/030886、WO03/006013、WO03/006021、WO03/006423、WO03/006453、WO02/002122、WO01/70672、WO02/02505、WO02/02506、WO02/02512、WO02/02520、WO02/098849およびWO02/100820に開示されているものなど)、またはWO98/28268、WO02/47671、WO99/67221、WO01/34639、WO01/34571、WO00/07995、WO00/38618、WO01/92235、WO01/77086、WO01/74784、WO01/74796、WO01/74783、WO01/60826、WO01/19797、WO01/27108、WO01/27091、WO00/50391、WO02/057252、US2002/0025955およびUS2002/0022621に開示されているものを含む、およびまたPhiel et al,Nature,423(2003)435−9に開示されているような、GSK−3阻害剤、特にリチウムなどのGSK−3α阻害剤を含む、Aβの形成または放出を阻害する何らかの他の化合物であり得る。
【0043】
もしくは、アミロイド調節剤は、Aβ(1−42)の産生を選択的に減衰させるようにγ−セクレターゼの作用を調節する化合物であり得る。この作用を示すことが報告された化合物は、ある種の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)およびこれらの類似体(WO 01/78721およびUS2002/0128319およびWeggen et al,Nature,414(2001)212−16;Morihara et al,J.Neurochem.,83(2002),1009−12;およびTakahashi et al,J.Biol.Chem.,278(2003),18644−70参照)、およびPPARαおよび/またはPPARδ(WO02/100836)の活性を調節する化合物を含む。γ−セクレターゼ調節剤のさらなる例は、WO2005/054193、WO2005/013985、WO2005/108362、WO2006/008558およびWO2006/043064に開示されている。
【0044】
もしくは、アミロイド調節剤は、Aβの凝集を阻害するまたはさもなければ神経毒性を減衰させる化合物であり得る。適切な例は、クリオキノール(Gouras and Beal,Neuron,30(2001),641−2)などのキレート化剤およびWO99/16741に開示されている化合物、特にDP−109として公知のもの(Kalendarev et al,J.Pharm.Biomed.Anal.,24(2001),967−75)を含む。本発明における使用に適するAβ凝集の他の阻害剤は、Apan(商標)(Praecis)として公知の化合物を含む、WO96/28471、WO98/08868およびWO00/052048に開示されている化合物;WO00/064420、WO03/017994、WO99/59571(特にトラミプロセートまたはAlzhemed(商標)としても公知である、3−アミノプロパン−1−スルホン酸);WO00/149281およびPTI−777およびPTI−00703(ProteoTech)として公知の組成物;WO96/39834、WO01/83425、WO01/55093、WO00/76988、WO00/76987、WO00/76969、WO00/76489、WO97/26919、WO97/16194およびWO97/16191に開示されている化合物を含む。さらなる例は、US4,847,082に開示されているようなフィチン酸誘導体およびUS2004/0204387において教示されるようなイノシトール誘導体を含む。
【0045】
もしくは、アミロイド調節剤は、Aβに選択的に結合する抗体であり得る。前記抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであり得るが、好ましくはモノクローナルであり、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。好ましくは、抗体は、WO03/016466、WO03/016467、WO03/015691およびWO 01/62801に述べられているように、生体液から可溶性Aβを分離することができる。適切な抗体は、ヒト化抗体266(WO01/62801に述べられている)およびWO03/016466に述べられているこの修飾型を含む。適切な抗体はまた、WO2004/031400に開示されているような、Aβ由来の拡散性リガンド(ADDLS)に特異的なものを含む。
【0046】
ここで使用する、「と組み合わせて」という表現は、BRSK阻害剤と付加的な化合物の両方の治療有効量が被験者に投与されるが、これを達成する方法には何の制限も設けないことを必要とする。従って、2つの種は、被験者への同時投与のために単一投与形態中で組み合わされ得るか、または被験者への同時または連続投与のために別々の投与形態中で提供され得る。連続投与は時間的に近くてもまたは離れていてもよく、例えば1つの種は午前中に投与され、他方は夕方に投与され得る。別々の種は、同じ頻度または異なる頻度で投与されてもよく、例えば1つの種は1日1回、他方は1日2回以上投与され得る。別々の種は、同じ経路によってまたは異なる経路によって投与されてもよく、例えば1つの種は経口的に、他方は非経口的に投与され得るが、可能な場合には、両方の種の経口投与が好ましい。付加的な化合物が抗体であるとき、典型的には非経口的におよびBRSK阻害剤とは別個に投与される。
【実施例】
【0047】
BRSK阻害剤のためのIMAPスクリーニング方法
試験材料
ATP Sigma No.A6419
FAM−Cdc25Cペプチド Molecular Devices No.R7275
IMAP Screening Express KitとProgressive Binding System Molecular Devices No.R8127
384穴黒色プレート Corning No.3710
スタウロスポリン Upstate No.19−123
BRSK1(ヒト、組換え) Upstate No.14−675
BRSK2(ヒト、組換え) University of Dundee
DTT Sigma No.D9779
試験方法
1.ATP、DTTおよびFAM−Cdc25C基質を解凍する
2.氷上で酵素を解凍する
3.1mM DTTと共に完全反応緩衝液を調製する
(i)1×IMAP反応緩衝液99ml
(ii)100mM DTT1ml
4.阻害剤を調製する
(i)化合物ストックをDMSO中で1mMに希釈する
(ii)40×最終濃度範囲の濃度を与えるように化合物をDMSO中で連続希釈する
(iii)4×化合物濃度範囲の濃度を与えるように完全反応緩衝液を使用して1:10希釈する
(iv)最終濃度範囲の濃度を与えるようにアッセイプレートに1:4希釈する
5.酵素を調製する
(i)酵素を完全反応緩衝液中で4×最終濃度(120nM)に希釈する
(ii)5μlをアッセイプレートに移す
(iii)室温で2分間振とうし、放置して室温で5分間インキュベーションする
6.基質/ATP混合物を調製する
(i)ATPを完全反応緩衝液に添加して200μM(2×最終濃度)にする
(ii)Cdc25C基質を添加して100nM(2×最終濃度)にする
(iii)10μlをアッセイプレートに移す
(iv)室温で2分間振とうし、遮光する
7.室温で1時間インキュベーションし、遮光する
8.IMAPビーズを調製する
(i)100mlにつき、1×緩衝液A75mlおよび1×緩衝液B25mlを添加する
(ii)ビーズ167μlを添加する(1/600希釈)
(iii)60μlをアッセイウエルに添加する
9.室温で1時間インキュベーションし、遮光する
10.蛍光分極可能リーダー(Fluorescence Polarization−enabled reader)で読み取る
【0048】
BRSK阻害剤のためのHTRFスクリーニング方法
試験材料
ATP Sigma
Cdc25Cビオチニル化ペプチド Cell Signalling technologies
Phospho−Ser 14−3−3結合モチーフマウス抗体 Cell Signalling technologies
ユウロピウムクリプテート抗体複合体(EuK) CisBio
Streptavidin XLent!665 Cisbio
384穴低容量黒色プレート Greiner Bio−One
スタウロスポリン Upstate
BRSK1(ヒト、組換え) Upstate
BRSK2(ヒト、組換え) University of Dundee
DTT Sigma
試験方法
1.ATP、DTTおよびビオチン−cdc25C基質を解凍する
2.氷上で酵素を解凍する
3.キナーゼ反応緩衝液を調製する
(i)25mM トリス−HCl、pH7.5
(ii)5mM β−グリセロホスフェート
(iii)2mM DTT
(iv)0.1mM Na3VO4
(v)5mM MgCl2
(vi)アッセイの日に0.1%(w/v)BSAおよび0.01%(v/v)Tween−20を添加する
4.阻害剤を調製する
(vii)化合物ストックをDMSO中で1mMに希釈する
(viii)30×最終濃度範囲を与えるように化合物をDMSO中で連続希釈する
(ix)3×最終濃度範囲の濃度を与えるようにキナーゼ反応緩衝液中で1:10希釈する
(x)最終濃度範囲の濃度を与えるようにアッセイプレートに1:3希釈する
5.酵素を調製する
(xi)酵素をキナーゼ反応緩衝液中で30nM(3×最終濃度)に希釈する
(xii)5μlをアッセイプレートに移す
(xiii)室温で2分間振とうし、放置して室温で5分間インキュベーションする
6.基質/ATP混合物を調製する
(xiv)3×ATPを反応緩衝液に添加する
(xv)3×最終濃度を与えるようにビオチン−Cdc25C基質を添加する
(xvi)5μlをアッセイプレートに移す
(xvii)室温で2分間振とうする
7.30℃で2時間インキュベーションする
8.停止緩衝液を調製する
(xviii)50mM トリス−HCl、pH8
(xix)0.1%(w/v)BSA
(xx)0.5M KF
(xxi)0.01%(v/v)Tween−20
(xxii)15mM EDTA
(xxiii)1:215 EuK標識抗体
(xxiv)1:500 1mg/ml SA−XLent665
9.停止緩衝液5μlをアッセイプレートに移す
10.4℃で一晩インキュベーションする
11.HTRF可能リーダーでプレートを読み取る
【0049】
(合成実施例)
(実施例1)
3−{5−[(4−アセチルピペラジン−1−イル)メチル]−1H−インドール−2−イル}−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
段階1:3−アミノ−4−メチルベンゾニトリル(1−2)
エタノール(100mL)中の3−ニトロ−p−トルニトリル(9.30g、57.4 mmol、1当量)および10%Pd/C(4.00g、3.76mmol、0.066当量)の混合物を水素バルーン下に23℃で20時間攪拌した。触媒をセライトパッドを通してろ過し、EtOAc(300mL)で洗浄した。ろ液を濃縮して、3−アミノ−4−メチルベンゾニトリル(1−2)をオフホワイト色の固体として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ7.10(d,1H,J=7.6Hz),6.98(dd,1H,J=7.9,1.5Hz),6.89(d,1H,J=1.5Hz),3.78(br s,2H),2.20(s,3H)。LRMS m/z(M+H+CH3CN)実測値174.2、要求値174.1。
【0050】
段階2:1H−インダゾール−6−カルボニトリル
水(20mL)中の硝酸ナトリウム(4.14g、59.9mmol、1.10当量)の溶液を、水(50mL)中の3−アミノ−4−メチルベンゾニトリル(1−2、7.2g、54.5mmol、1当量)と濃塩酸水溶液(12M、13.6mL、163mmol、3.00当量)のあらかじめ冷却しておいた(−10℃)混合物に、0℃未満の反応混合物温度を保持する速度で緩やかに添加した。添加後、反応混合物を−5℃で30分間攪拌し、その後ろ過した。水(100mL)中のテトラフルオロホウ酸ナトリウム(17.9g、163mmol、3.00当量)の溶液を低温ろ液に直ちに添加した。沈殿物をろ過し、氷冷水(30mL)で洗浄した。残存する固体を空気乾燥して、5−シアノ−2−メチルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラートを白色固体として得た。クロロホルム(150mL)中のこの生成物(11.7g、50.7mmol、1当量)、酢酸カリウム(12.4g、127mmol、2.50当量)および18−クラウン−6(1.34g、5.07mmol、0.100当量)の懸濁液を23℃で20時間攪拌した。反応混合物をろ過し、濃縮した。残留物を水とEtOAc(300mL)に分配した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、1H−インダゾール−6−カルボニトリル(1−3)を明黄色固体として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ10.37(br s,1H),8.19(d,1H,J=0.9Hz),7.90(d,1H,J=1.5Hz),7.88(dd,1H,J=8.5,0.9Hz),7.42(dd,1H,J=8.3,1.5Hz)。LRMS m/z(M+H+CH3CN)実測値185.1、要求値185.0。
【0051】
段階3:3−ヨード−1H−インダゾール−6−カルボニトリル(1−4)
DMF(75mL)中の1H−インダゾール−6−カルボニトリル(1−3、4.7g、32.8mmol、1当量)、ヨウ素(18.3g、72.2mmol、2.20当量)および水酸化カリウム(4.42g、78.8mmol、2.40当量)の混合物を23℃で5時間攪拌した。反応混合物を、飽和塩化ナトリウム水溶液および飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液の1:1混合物と酢酸エチル(2×300mL)に分配した。併合有機層を水、次いでブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、3−ヨード−1H−インダゾール−6−カルボニトリル(1−4)を明黄色固体として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ13.29(br s,1H),7.90(s,1H),7.59(d,1H,J=8.2Hz),7.38(dd,1H,J=8.5,0.9Hz)。LRMS m/z(M+H+CH3CN)実測値311.1、要求値311.0。
【0052】
段階4:tert−ブチル5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−6)
THF中の水素化アルミニウムリチウムの溶液(1.0M、180mL、180mmol、1.50当量)を、0℃のTHF(400mL)中のメチル1H−インドール−5−カルボキシラート(1−5、21.0g、120mmol、1当量)の溶液に20分間にわたって添加した。反応混合物を23℃に温め、その後40℃で2時間加熱した。反応混合物を氷水(1リットル)に注ぎ入れ、次に酢酸エチル(2×500mL)で抽出した。併合有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、1H−インドール−5−イルメタノールを白色固体として得た。ジクロロメタン(300mL)中の1H−インドール−5−イルメタノール(18.0g、122mmol、1当量)、tert−ブチルジメチルシリルクロライド(20.3g、135mmol、1.10当量)、トリエチルアミン(43.4mL、245mmol、2.00当量)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(1.49g、12.2mmol、0.100当量)の溶液を23℃で2時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残留物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチル(400mL)に分配した。有機層を0.5N塩酸水溶液、次いでブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。ジクロロメタン(300mL)中の残留油(5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール)、ジ−tert−ブチルジカルボナート(29.4g、135mmol、1.10当量)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(1.49g、12.2mmol、0.100当量)の溶液を23℃で3時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(最初ヘキサンで、ヘキサン中20%酢酸エチルへの勾配)によって精製して、tert−ブチル5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−6)を無色の油として得た。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ8.07(br d,1H,J=6.8Hz),7.58(br d,1H,J=3.2Hz),7.52(s,1H),7.25(CHCl3がddを不明瞭にした,1H),6.54(d,1H,J=3.7Hz),4.82(s,2H),1.67(s,9H),0.95(s,9H),0.11(s,6H)。
【0053】
段階5:1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−2−イルボロン酸(1−7)
−78℃のTHF中のLDAの溶液(0.773M、200mL、155mmol、1.30当量)を、カニューレを通して−78℃のTHF(400mL)中のtert−ブチル5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−6、43.0g、119mmol、1当量)の溶液に添加し、生じた混合物を45分間攪拌した。トリメチルボラート(27.0mL、238mmol、2.00当量)を添加し、生じた混合物を0℃に温めて、30分間この温度に保持した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチル(2×200mL)に分配した。併合有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−2−イルボロン酸(1−7)をオフホワイト色固体として得た。1H NMR(500MHz,CD3OD)δ8.05(d,1H,J=8.6Hz),7.51(s,1H),7.26(dd,1H,J=8.6,1.7Hz),6.62(s,1H),4.82(s,2H),1.68(s,9H),0.95(s,9H),0.11(s,6H)。
【0054】
段階6:tert−ブチル2−(6−シアノ−1H−インダゾール−3−イル)−5−(ヒドロキシメチル)−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−8)
ジオキサン(300mL)中の3−ヨード−1H−インダゾール−6−カルボニトリル(1−4、5.00g、18.6mol、1当量)、1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−2−イルボロン酸(1−7、9.04g、22.3mmol、1.20当量)、塩化リチウム(2.36g、55.8mmol、3.00当量)、炭酸ナトリウム水溶液(2M、46.5mL、92.9mmol、5.00当量)、およびPd(PPh3)4(1.07g、0.929mol、0.050当量)の脱酸素化混合物を窒素下に90℃で20時間加熱した。さらなる1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−2−イルボロン酸(1−7、3.77g、9.30mmol、0.500当量)を添加し、5時間加熱を続けた。反応混合物を半飽和塩化ナトリウム水溶液と酢酸エチル(2×300mL)に分配した。併合有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。アセトニトリル(300mL)中の残留物およびトリエチルアミン三フッ化水素酸塩の溶液(15.4mL、92.9mmol、5.00当量)を50℃で3時間加熱した。反応混合物を濃縮し、残留物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチル(2×300mL)に分配した。併合有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(最初ヘキサンで、ヘキサン中60%EtOAcへの勾配)によって精製して、tert−ブチル2−(6−シアノ−1H−インダゾール−3−イル)−5−(ヒドロキシメチル)−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−8)を橙色の泡として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.03(br s,1H),8.27(d,1H,J=8.5Hz),7.76(d,1H,J=8.5Hz),7.69(br s,1H),7.59(br s,1H),7.48(dd,1H,J=8.5,1.7Hz),7.39(dd,1H,J=8.5,1.0Hz),6.91(s,1H),4.85(s,2H),1.20(s,9H)。LRMS m/z(M+H−t−Bu)実測値333.3、要求値333.1。
【0055】
段階7:tert−ブチル2−(6−シアノ−1H−インダゾール−3−イル)−5−ホルミル−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−9)
ジクロロメタン(300mL)中のtert−ブチル2−(6−シアノ−1H−インダゾール−3−イル)−5−(ヒドロキシメチル)−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−8、4.00g、10.3mmol、1当量)および酸化マンガン(IV)(4.48g、51.5mmol、5.00当量)の混合物を40℃で2時間加熱した。さらなるMnO2(4.48g、51.5mmol、5.00当量)を添加して、2時間加熱を続けた。固体をろ過し、ジクロロメタン(合計400mL)と酢酸エチル(合計400mL)で繰り返し洗浄した。併合ろ液を濃縮し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(最初ヘキサンで、ヘキサン中40%EtOAcへの勾配)によって精製して、tert−ブチル2−(6−シアノ−1H−インダゾール−3−イル)−5−ホルミル−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−9)をオフホワイト色の固体として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ10.49(br s,1H),10.12(s,1H),8.42(d,1H,J=8.8Hz),8.18(d,1H,J=1.2Hz),7.96(dd,1H,J=8.8,1.8Hz),7.94(br s,1H),7.78(d,1H,J=8.6Hz),7.46(dd,1H,J=8.5,1.2Hz),6.91(s,1H),1.21(s,9H)。LRMS m/z(M+H−t−Bu)実測値331.2、要求値331.1。
【0056】
段階8:3−{5−[(4−アセチルピペラジン−1−イル)メチル]−1H−インドール−2−イル}−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
1,2−ジクロロメタン(5mL)中のtert−ブチル2−(6−シアノ−1H−インダゾール−3−イル)−5−ホルミル−1H−インドール−1−カルボキシラート(1−9、99mg、0.26mmol、1当量)、1−アセチルピペラジン(49mg、0.38mmol、1.5当量)、およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(81mg、0.38mmol、1.5当量)の混合物を23℃で40分間攪拌した。さらなる1−アセチルピペラジン(49mg、0.38mmol、1.50当量)、およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(81mg、0.38mmol、1.5当量)を添加し、2時間攪拌を続けた。希薄重炭酸ナトリウム水溶液で反応を停止させ、水と酢酸エチル(3×50mL)に分配した。併合有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残留油をジクロロメタンとトリフルオロ酢酸の1:1混合物に溶解し、3時間放置した。溶液を濃縮し、残留物を逆相液体クロマトグラフィー(H2O/CH3CN勾配 w/0.1%TFAが存在)によって精製した。所望画分を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチル(2×50mL)に分配した。併合有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、3−{5−[(4−アセチルピペラジン−1−イル)メチル]−1H−インドール−2−イル}−1H−インダゾール−6−カルボニトリルを遊離塩基(明褐色固体)として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ10.75(br s,1H),9.08(br s,1H),8.22(d,1H,J=8.5Hz),7.89(br s,1H),7.60(br s,1H),7.51(dd,1H,J=8.5,1.2Hz),7.40(d,1H,J=8.5Hz),7.23(dd,1H,J=8.5,1.7Hz),7.10(d,1H,J=1.7Hz),3.65(s,2H),3.49(m,2H),2.50(m,4H),2.11(s,3H)。LRMS m/z(M+H)実測値399.4、要求値399.2。
【0057】
(実施例2から9)
実施例1の方法の簡単な修正によって以下を調製した。
【0058】
(実施例2)
3−[5−(ピペラジン−1−イルメチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
LRMS m/z(M+H)実測値357.4、要求値357.2。
【0059】
(実施例3)
3−(5−{[(2−アミノエチル)アミノ]メチル}−1H−インドール−2−イル)−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
LRMS m/z(M+H)実測値331.3、要求値331.2。
【0060】
(実施例4)
3−(5−{[(4−アミノシクロヘキシル)アミノ]メチル}−1H−インドール−2−イル)−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
LRMS m/z(M+H)実測値385.3、要求値385.2。
【0061】
(実施例5)
3−(4−{[4−(アミノメチル)ピペリジン−1−イル]メチル}−1H−インドール−2−イル)−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
LRMS m/z(M+H)実測値385.5、要求値385.2。
【0062】
(実施例6)
3−[4−({[1−(ピリジン−4−イルメチル)ピペリジン−4−イル]アミノ}メチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
LRMS m/z(M+H)実測値462.2、要求値462.2。
【0063】
(実施例7)
3−[4−({[(l−メチルピペリジン−4−イル)メチル]アミノ}メチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
LRMS m/z(M+H)実測値399.2、要求値399.2。
【0064】
(実施例8)
3−[5−(モルホリン−4−イルメチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
LRMS m/z(M+H)実測値358.4、要求値358.2。
【0065】
(実施例9)
3−[4−({[2−(tert−ブチルチオ)エチル]アミノ}メチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボニトリル
LRMS m/z(M+H)実測値404.2、要求値404.2。
【0066】
(実施例10)
メチル3−(4−{[2−(6−クロロ−1H−インダゾール−3−イル)−1H−インドール−4−イル]メチル}ピペラジン−1−イル)ブタノエート
WO2003/024969に述べられているように調製した。
【0067】
(実施例11)
3−{5−[(4−アセチルピペラジン−1−イル)メチル]−1H−インドール−2−イル}−6−(1H−テトラゾール−5−イル)−1H−インダゾール
ジメチルアセトアミドとトルエンの1:5混合物中の3−{5−[(4−アセチルピペラジン−1−イル)メチル]−1H−インドール−2−イル}−1H−インダゾール−6−カルボニトリル(実施例1、90mg、0.23mmol、1当量)、およびアジドトリメチルチン(479mg、2.33mmol、10.0当量)の混合物を110℃で18時間加熱した。反応混合物を濃縮し、残留物を逆相LC(H2O/CH3CN勾配 w/0.1% TFAが存在)によって精製し、3−{5−[(4−アセチルピペラジン−1−イル)メチル]−1H−インドール−2−イル}−6−(1H−テトラゾール−5−イル)−1H−インダゾール(8−1)をTFA塩(明黄色固体)として得た。LRMS m/z(M+H)実測値442.6、要求値442.2。
【0068】
(実施例12)
3−(5−{[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]メチル}−1H−インドール−2−イル)−6−(1H−テトラゾール−5−イル)−1H−インダゾール
実施例11と類似の方法で調製した。
LRMS m/z(M+H)実測値478.4、要求値478.2。
【0069】
(実施例13)
メチル3−[5−(モルホリン−4−イルメチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボキシラート
段階1:メチル1H−インダゾール−6−カルボキシラート
水(25mL)中の硝酸ナトリウム(4.18g、60.5mmol、2.00当量)の溶液を、水(50mL)中のメチル3−アミノ−4−メチルベンゾアート(5.00g、30.3mmol、1.00当量)と濃塩酸水溶液(12M、7.6mL、90.8mmol、3.00当量)のあらかじめ冷却しておいた(−10℃)混合物に、0℃未満の反応混合物温度を保持する速度で緩やかに添加した。添加後、反応混合物を−5℃で30分間攪拌し、その後ろ過した。水(40mL)中のテトラフルオロホウ酸ナトリウム(9.97g、90.8mmol、3.00当量)の溶液を低温ろ液に直ちに添加した。沈殿物をろ過し、氷冷水(50mL)で洗浄した。残存する固体を空気乾燥して、5−(メトキシカルボニル)−2−メチルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラートを白色固体として得た。クロロホルム(75mL)中のこの生成物(5.00g、28.2mmol、1当量)、酢酸カリウム(6.92g、70.6mmol、2.50当量)および18−クラウン−6(746mg、2.82mmol、0.100当量)の懸濁液を23℃で72時間攪拌した。反応混合物をろ過し、濃縮した。残留物を水とEtOAc(300mL)に分配した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、メチル1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−2)を橙色固体として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ8.20(s,1H),8.16(d,1H,J=0.9Hz),7.89(d,1H,8.5Hz),7.68,(dd,1H,J=8.5,1.5Hz),3.90(s,3H)。LRMS m/z(M+H)実測値177.1、要求値177.1。
【0070】
段階2:メチル3−ヨード−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−3)
DMF(70mL)中のメチル1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−2、3.99g、22.6mmol、1当量)、ヨウ素(12.6g、49.8mmol、2.20当量)および水酸化カリウム(3.05g、54.4mmol、2.40当量)の混合物を23℃で15時間攪拌した。反応混合物を、飽和塩化ナトリウム水溶液および飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液の1:1混合物と酢酸エチル(2×300mL)に分配した。併合有機層を水、次いでブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、メチル3−ヨード−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−3)を黄色固体として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.6(br s,1H),8.27(d,1H,J=2.1Hz),7.90(dd,1H,J=8.6,1.2Hz),7.57(d,1H,J=8.6Hz),3.98(s,3H)。LRMS m/z(M+H)実測値303.1、要求値303.0。
【0071】
段階3:メチル3−[1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(ヒドロキシメチル)−1H−インドール−2−イル]−2,3−ジヒドロ−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−4)
ジオキサン(20mL)中のメチル3−ヨード−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−3、2.11g、6.97mol、1当量)、1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−2−イルボロン酸(1−7、3.39g、8.37mmol、1.20当量)、塩化リチウム(887mg、20.9mmol、3.00当量)、炭酸ナトリウム水溶液(2M、17.4mL、34.9mmol、5.00当量)、およびPd(PPh3)4(403mg、0.349mmol、0.050当量)の脱酸素化混合物を窒素下に90℃で20時間加熱した。反応混合物を半飽和塩化ナトリウム水溶液と酢酸エチル(2×200mL)に分配した。併合有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。アセトニトリル(50mL)中の残留物およびトリエチルアミン三フッ化水素酸塩の溶液(5.68mL、34.9mmol、5.00当量)を50℃で6時間加熱した。反応混合物を濃縮し、残留物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチル(2×200mL)に分配した。併合有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(最初ヘキサンで、ヘキサン中60%EtOAcへの勾配)によって精製して、メチル3−[1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(ヒドロキシメチル)−1H−インドール−2−イル]−2,3−ジヒドロ−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−4)を暗色固体として得た。LRMS m/z(M+H−t−Bu)実測値366.3、要求値366.2。
【0072】
段階4:メチル3−[1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−ホルミル−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−5)
ジクロロメタン(50mL)中のメチル3−[1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−(ヒドロキシメチル)−1H−インドール−2−イル]−2,3−ジヒドロ−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−4、1.69g、4.01mmol、1当量)および酸化マンガン(IV)(1.74g、20.0mmol、5.00当量)の混合物を40℃で2時間加熱した。さらなるMnO2(1.05g、12.0mmol、3.00当量)を添加して、2時間加熱を続けた。固体をろ過し、ジクロロメタン(300mL)および酢酸エチル(300mL)で繰り返し洗浄した。併合ろ液を半飽和塩化ナトリウム水溶液と酢酸エチル(2×200mL)に分配した。併合有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、メチル3−[1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−ホルミル−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−5)を暗色固体として得た。LRMS m/z(M+H−t−Bu)実測値364.3、要求値364.2。
【0073】
段階5:メチル3−[5−(モルホリン−4−イルメチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボキシラート
1,2−ジクロロエタン(60mL)中のメチル3−[1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−ホルミル−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボキシラート(2−5、950mg、2.23mmol、1当量)、モルホリン(0.790mL、9.06mmol、4.00当量)、およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.92g、9.06mmol、4.00当量)の混合物を窒素下に23℃で14時間攪拌した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチル(3×100mL)に分配した。併合有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残留物をジクロロメタンとトリフルオロ酢酸の1:1混合物に溶解し、3時間放置した。溶液を濃縮し、残留物を逆相液体クロマトグラフィー(H2O/CH3CN勾配 w/0.1%TFAが存在)によって精製して、メチル3−[5−(モルホリン−4−イルメチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボキシラートをTFA塩(明褐色固体)として得た。1H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ9.61(br s,1H),8.34(d,1H,J=8.3Hz),8.23(s,1H),7.83(dd,1H,J=9.7,1.2Hz),7.75(s,1H),7.54(dd,1H,J=8.1,1.2Hz),7.27(d,1H,J=1.2Hz),7.25(dd,1H,J=7.1,1.2Hz),4.43(m,2H),3.97(m,2H),3.93(s,3H),3.63(m,2H),3.31(sはH2Oピークにより不明瞭であった,2H),3.16(m,2H)。LRMS m/z(M+H)実測値391.5、要求値391.2。
【0074】
(実施例14)
N−メチル−3−[5−(モルホリン−4−イルメチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボキサミド
段階1:1H−インダゾール−6−カルボン酸
エタノールと1N水酸化ナトリウム水溶液(5mL)の1:1混合物中の1H−インダゾール−6−カルボニトリル(1−3、1.50g、10.5mmol、1.00当量)および水酸化ナトリウム(1.26g、31.4mmol、3当量)の混合物を80℃に4時間加熱した。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチル(4×50mL)に分配した。有機層を廃棄し、水層をpH5に酸性化して、酢酸エチル(2×50mL)で洗浄した。併合有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、1H−インダゾール−6−カルボン酸(4−1)をオフホワイト色の固体として得た。LRMS m/z(M+H)実測値163.1、要求値163.0。
【0075】
段階2:N−メチル−1H−インダゾール−6−カルボキサミド
DMF(10mL)中の1H−インダゾール−6−カルボン酸(4−1、1.11g、6.85mmol、1当量)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.65g、20.5mmol、3.00当量)、(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)(トリピロリジン−1−イル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(Pybop、5.34g、10.3mmol、1.50当量)およびメチルアミン(10.3mL(THF中2M)、20.5mmol、3.00当量)の混合物を23℃で14時間攪拌した。反応混合物を塩化ナトリウム水溶液および重炭酸ナトリウム水溶液の1:1混合物と酢酸エチル(2×50mL)に分配した。次に水層をpH5に酸性化して、酢酸エチル(2×50mL)で洗浄した。併合有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(最初ヘキサンで、100%EtOAc、次いでEtOAc中10%MeOHへの勾配)によって精製して、N−メチル−1H−インダゾール−6−カルボキサミド(4−2)を明褐色固体として得た。LRMS m/z(M+H)実測値176.2、要求値176.1。
【0076】
段階3:3−ヨード−N−メチル−1H−インダゾール−6−カルボキサミド
DMF(10mL)中のN−メチル−1H−インダゾール−6−カルボキサミド(4−2、3.30g、18.8mmol、1当量)、ヨウ素(10.5g、41.4mmol、2.20当量)および水酸化カリウム(2.54g、45.2mmol、2.40当量)の混合物を23℃で15時間攪拌した。反応混合物を、飽和塩化ナトリウム水溶液および飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液の1:1混合物と酢酸エチル(2×300mL)に分配した。併合有機層を水、次いでブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮した。残留物をアセトニトリルで粉砕し、3−ヨード−N−メチル−1H−インダゾール−6−カルボキサミド(4−3)を明褐色固体として得た。LRMS m/z(M+H)実測値302.2、要求値302.0。
【0077】
段階4:N−メチル−3−[5−(モルホリン−4−イルメチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール−6−カルボキサミド
段階3の生成物を1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−1H−インドール−2−イルボロン酸とカップリングし、アルデヒドに酸化して、実施例1の段階6−8で述べた手順によってモルホリンおよびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムと反応させた。LRMS m/z(M+H)実測値390.4、要求値390.2。
【0078】
(実施例15)
6−(4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−2−イル)−3−[5−(モルホリン−4−イルメチル)−1H−インドール−2−イル]−1H−インダゾール
1H−インダゾール−6−カルボニトリル(1−3、100mg、0.70mmol、1当量)、エタノールアミン(0.21mL、3.5mmol、5.00当量)および酢酸カドミウム脱水物(5mg、0.02mmol、0.03当量)の混合物をそのまま140℃で2時間加熱した。反応混合物を、強く攪拌し、加熱することによって水と酢酸エチルに分配した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濃縮し、6−(4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−2−イル)−1H−インダゾール(9−1)を褐色固体として得た。1H NMR(300MHz,CD3OD)δ8.11(br s,2H),7.83(d,1H,J=8.5Hz),7.70(br d,1H,J=8.8Hz),4.54(t,2H,J=9.8Hz),4.06(t,2H,J=9.8Hz)。LRMS m/z(M+H+CH3CN)実測値188.2、要求値188.1。
【0079】
この中間体を、実施例1の段階3−8で述べた手順により、段階8でモルホリンを使用して表題化合物に変換した。LRMS m/z(M+H)実測値402.5、要求値402.2。
【0080】
上記実施例はすべて、HTRFアッセイにおいてBRSKに対し<1μMのIC50を与えた。実施例1から9は、BRSKおよびMARK3の両方に対して<500nMのIC50を示し、従って二元BRSK/MARK阻害剤とみなし得るが、実施例10から15はBRSKに対して選択性を示した(IC50MARK>1μMおよび/または少なくともIC50BRSKより4倍大きい)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)BRSKを、ATPおよび試験化合物の存在下に、リン酸化可能なセリン残基を含むペプチド基質と共に、前記セリン残基のリン酸化と適合性の条件下でインキュベーションする段階;
(ii)ペプチド基質が前記セリン残基でリン酸化された程度を測定する段階;および
(iii)段階(ii)で得た結果を、試験化合物の不在下で実施した対応するブランクインキュベーションから得た結果と比較する段階
を含む、アルツハイマー病またはタウの異常リン酸化を含む他の状態の治療または予防における使用に適した化合物を選択するためのスクリーニング方法。
【請求項2】
試験化合物を、MARKに対する活性に関してさらにスクリーニングする、請求項1のスクリーニング方法。
【請求項3】
試験化合物を、Cdk−5、PKA、GSK3βおよびCaMKIIから選択される1以上の付加的なキナーゼに対する活性に関してさらにスクリーニングする、請求項1または請求項2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
アルツハイマー病またはタウの異常リン酸化を含む他の状態の治療または予防のための薬剤の製造のためのBRSK阻害剤の使用(「BRSK阻害剤」という用語は、請求項1に記載のスクリーニング方法において試験したとき、ブランクインキュベーションから得たものと比較してリン酸化の程度の低下を生じさせる化合物を指す。)。
【請求項5】
前記BRSK阻害剤がMARKよりもBRSKに対して選択的である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記BRSK阻害剤がMARKに対しても活性である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記BRSK阻害剤が、Cdk−5、PKA、GSK3βおよびCaMKIIから選択される1つ以上の付加的なキナーゼよりもBRSKに対して選択的である、請求項4から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記BRSK阻害剤が、式I:
【化1】

[式中、Yはインドール環の4位または5位で結合しており、およびXとYは以下の表で指示されるとおりである。
【表1】


]の化合物または医薬的に許容されるこの塩である、請求項4に記載の使用。
【請求項9】
アルツハイマー病またはタウの異常リン酸化を含む他の状態を治療するまたは予防する方法であり、BRSK阻害剤(「BRSK阻害剤」という用語は、請求項1に記載のスクリーニング方法において試験したとき、ブランクインキュベーションから得たものと比較してリン酸化の程度の低下を生じさせる化合物を指す。)の治療有効用量をアルツハイマー病またはタウの異常リン酸化を含む他の状態を治療するまたは予防する必要のある患者に投与することを含む、方法。

【公表番号】特表2009−525039(P2009−525039A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552896(P2008−552896)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050046
【国際公開番号】WO2007/088400
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】