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ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状を処置するためのセロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害と組み合わせた4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジン
説明

ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状を処置するためのセロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害と組み合わせた4−[2−(4−メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジン

ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状を処置するための4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンの使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
化合物4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンは特許文献1に開示されている。この化合物は、セロトニントランスポーターの阻害剤であるとされ、セロトニン受容体2C(5-HT2C)に対してアフィニティーを持つので、大うつ病および不安などの気分障害の処置に有用であるとされている。
【背景技術】
【0002】
しかし実施例で示すように、前記化合物にはもっと広い薬理学的プロファイルが賦与されており、それがこの化合物を、その処置が望まれている他の疾患の処置においても、同様に有用なものにする。この薬理学的プロファイルは、さらなる疾患の処置における前記化合物の使用と共に、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第03/029232号
【特許文献2】国際公開第07/144006号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある実施形態において、本発明は、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状の処置方法であって、その必要がある患者に対する治療有効量の4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩(化合物I)の投与を含む方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態において、本発明は、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状を処置するための医薬品の製造における4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩(化合物I)の使用に関する。
【0006】
ある実施形態において、本発明は、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状の処置に使用するための4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩(化合物I)に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】化合物IのHBr付加塩のX線回折パターン。
【図2】化合物IのHBr付加塩溶媒和物のX線回折パターン。
【図3】化合物Iのパルミチン酸付加塩のX線回折パターン。
【図4】化合物IのDL-乳酸付加塩のX線回折パターン。
【図5】化合物Iのアジピン酸付加塩(1:1)のX線回折パターン(α+β形)。
【図6】化合物Iのアジピン酸付加塩(2:1)のX線回折パターン。
【図7】化合物Iのフマル酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図8】化合物Iのグルタル酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図9】化合物Iのマロン酸付加塩(1:1)α形のX線回折パターン。
【図10】化合物Iのマロン酸付加塩(1:1)β形のX線回折パターン。
【図11】化合物Iのシュウ酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図12】化合物Iのセバコイン酸(sebacoinic acid)付加塩(2:1)のX線回折パターン。
【図13】化合物Iのコハク酸付加塩(2:1)のX線回折パターン。
【図14】化合物IのL-リンゴ酸付加塩(1:1)α形のX線回折パターン。
【図15】化合物IのL-リンゴ酸付加塩(1:1)β形のX線回折パターン。
【図16】化合物IのD-酒石酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図17】L-アスパラギン酸との混合状態にある化合物IのL-アスパラギン酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図18】L-アスパラギン酸との混合状態にある化合物IのL-アスパラギン酸付加塩水和物(1:1)のX線回折パターン。
【図19】グルタミン酸一水和物との混合状態にある化合物Iのグルタミン酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図20】化合物Iのクエン酸付加塩(2:1)のX線回折パターン。
【図21】化合物IのHCl酸付加塩のX線回折パターン。
【図22】化合物Iのリン酸付加塩(1:1)のX線回折パターン。
【図23】化合物Iを投与した時の前前頭皮質におけるドーパミンレベル。
【図24】化合物Iを投与した時の前前頭皮質におけるアセチルコリンレベル。
【図25】aおよびb:化合物Iを投与した時の前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンレベル。
【図26】SHRラットにおける注意欠陥および衝動性に対する化合物Iの影響。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペリジンおよびその薬学的に許容できる塩である化合物Iの使用に関する。4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)-フェニル]ピペリジンの構造は
【0009】
【化1】

【0010】
である。
【0011】
化合物Iの薬理学的プロファイルは実施例で説明するが、これは次のように要約することができる。この化合物はセロトニンおよびノルエピネフリン再取り込みを阻害し、セロトニン受容体2A、2Cおよび3を阻害し、そしてα-1アドレナリン作動性受容体を阻害する。
【0012】
ある実施形態では、前記酸付加塩が、無毒性である酸の塩である。前記の塩には、例えばマレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、シュウ酸、ビス-メチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ケイ皮酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、テオフィリン酢酸、ならびに8-ハロテオフィリン類、例えば8-ブロモテオフィリンなどの有機酸から製造される塩が含まれる。前記の塩は、例えば臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などの無機塩から製造することもできる。
【0013】
ある実施形態では、化合物IがHBr付加塩である。
【0014】
ある実施形態では、化合物IがDL-乳酸付加塩、特に1:1塩である。
【0015】
ある実施形態では、化合物IがL-アスパラギン酸付加塩、特に1:1塩である。
【0016】
ある実施形態では、化合物Iがグルタミン酸付加塩、とくに1:1塩である。
【0017】
ある実施形態では、化合物Iがグルタル酸付加塩、特に1:1塩である。
【0018】
ある実施形態では、化合物Iがマロン酸付加塩、特に1:1塩(これは、2つの多形αおよびβで存在することが見出され、そのうちβ形は溶解度が低いことから最も安定であると考えられる)である。
【0019】
ある実施形態では化合物Iが精製された形態にある。「精製された形態」という用語は、その化合物が他の化合物、また場合によっては、他の形態の前記化合物(すなわち多形)を、本質的に含まないことを示すものとする。
【0020】
経口剤形、特に錠剤およびカプセル剤は、投与が容易であり、結果的にコンプライアンスが良好になるため、しばしば患者および医師に好まれる。錠剤およびカプセル剤の場合、活性成分は結晶性であることが好ましい。ある実施形態では、化合物Iが結晶性である。
【0021】
本発明で使用される結晶は溶媒和物、すなわち溶媒分子が結晶構造の一部を形成する結晶として存在しうる。溶媒和物は水から形成させることができ、この場合、その溶媒和物はしばしば水和物と呼ばれる。あるいは、他の溶媒、例えばエタノール、アセトン、または酢酸エチルなどから溶媒和物を形成させることもできる。溶媒和物の厳密な量は、しばしば、条件に依存する。例えば水和物は、温度を上昇させるにつれて、または相対湿度を低下させるにつれて、典型的には水を失うだろう。例えば湿度などの条件が変化しても変化しない化合物またはわずかしか変化しない化合物は、一般に、医薬製剤に、より適しているとみなされる。水から析出させた場合にコハク酸、リンゴ酸および酒石酸付加塩などの化合物が水和物を形成するのに対して、HBr酸付加塩は水和物を形成しないことが注目される。
【0022】
一部の化合物は吸湿性である(すなわち、それらは湿気に曝露されると水を吸収する)。吸湿性は、医薬製剤(特に錠剤またはカプセル剤などの乾燥製剤)中に存在させようとする化合物にとっては、望ましくない性質であると、一般にみなされる。ある実施形態において、本発明は、低い吸湿性を持つ結晶を提供する。
【0023】
結晶性活性成分を使用する経口剤形にとって、前記結晶が明確に定義されていることも有益である。この文脈において「明確に定義されている(well-defined)」という用語は、特に、化学量論が明確に定義されていること、すなわち塩を形成しているイオン間の比が小さな整数間の比、例えば1:1、1:2、2:1、1:1:1などであることを意味する。ある実施形態では、本発明の化合物が明確に定義された結晶である。
【0024】
活性成分の溶解度も剤形の選択にとって重要である。活性成分の溶解度はバイオアベイラビリティーに直接的な影響を持ちうるからである。経口剤形にとっては、活性成分の溶解度が高いほどバイオアベイラビリティーが増加するので有益であると、一般に考えられる。一部の患者、例えば高齢者は、錠剤の嚥下が困難な場合があり、経口滴下溶液剤は錠剤を嚥下する必要を回避する適切な代替手段になりうる。経口滴下溶液剤の体積を制限するには、その溶液剤における活性成分の濃度を高くする必要があり、ここでも化合物の高い溶解度が要求される。表3に示すように、DL-乳酸、L-アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびマロン酸付加塩は並外れて高い溶解度を持つ。
【0025】
結晶形は化合物の濾過および加工特性に影響を与える。針状結晶は、濾過がより困難になり、時間を要するので、製造環境における取扱いがより困難になる傾向がある。所与の塩の厳密な結晶形は、例えば塩を析出させた条件などに依存しうる。化合物IのHBr酸付加塩は、エタノール、酢酸およびプロパノールから析出させた場合は針状溶媒和結晶を成長させるが、HBr付加塩を水から析出させると、針状ではない非水和型の結晶を成長させて、優れた濾過特性をもたらす。
【0026】
表3には、溶液pH(Resulting pH)、すなわち塩の飽和溶液のpHも記載する。この性質は重要である。なぜなら、貯蔵中に湿気を完全に避けることは決してできず、湿気の蓄積が低溶液pH塩を含む錠剤中または錠剤上でのpH低下を引き起こすことになり、それが貯蔵寿命を減少させうるからである。そのうえ、低い溶液pHを持つ塩は、錠剤を湿式造粒法で製造する場合には、加工装置の腐蝕を引き起こしうる。表3のデータは、HBr、HClおよびアジピン酸付加塩が、この点において優秀でありうることを示唆している。
【0027】
ある実施形態では、化合物Iが結晶状のHBr付加塩(特に、精製された形態にあるもの)である。さらにもう一つの実施形態では、前記HBr塩が、X線粉末ディフラクトグラム(XRPD)において、約6.08°、14.81°、19.26°および25.38°2θにピークを持ち、特に前記HBr塩が図1に図示するXRPDを持つ。
【0028】
ある実施形態では、化合物Iが、結晶状のDL-乳酸付加塩(1:1)(特に、精製された形態にあるもの)である。さらにもう一つの実施形態では、前記DL-乳酸付加塩が、XRPDにおいて、約5.30°、8.81°、9.44°および17.24°2θにピークを持ち、特に前記DL乳酸付加塩が図4に図示するXRPDを持つ。
【0029】
ある実施形態では、化合物Iが、結晶状のL-アスパラギン酸付加塩(1:1)(特に、精製された形態にあるもの)である。さらにもう一つの実施形態では、前記L-アスパラギン酸付加塩が非溶媒和物であり、XRPDにおいて約11.05°、20.16°、20.60°、25.00°2θにピークを持ち、特に前記L-アスパラギン酸塩は、L-アスパラギン酸と混合した場合に、図17に図示するXRPDを持つ。ある実施形態では、前記L-アスパラギン酸付加塩が、水和物(特に、精製された形態にあるもの)である。さらにもう一つの実施形態では、前記L-アスパラギン酸付加塩水和物が、XRPDにおいて約7.80°、13.80°、14.10°、19.63°2θにピークを持ち、特に前記L-アスパラギン酸付加塩水和物が、L-アスパラギン酸と混合した場合に、図18に図示するXRPDを持つ。
【0030】
ある実施形態では、化合物Iが、結晶状のグルタミン酸付加塩(1:1)(特に、精製された形態にあるもの)である。さらにもう一つの実施形態では、前記グルタミン酸付加塩が、XRPDにおいて約7.71°、14.01°、19.26°、22.57°2θにピークを持ち、特に前記グルタミン酸塩が、グルタミン酸一水和物と混合した場合に、図19に図示するXRPDを持つ。
【0031】
ある実施形態では、化合物Iが、結晶状のマロン酸付加塩(1:1)(特に、精製された形態にあるもの)である。さらにもう一つの実施形態では、前記マロン酸付加塩がα形であって、XRPDにおいて約10.77°、16.70°、19.93°、24.01°2θにピークを持つか、または前記マロン酸付加塩がβ形であって、XRPDにおいて約6.08°、10.11°、18.25°、20.26°2θにピークを持ち、特に前記マロン酸付加塩が図9または図10に図示するXRPDを持つ。
【0032】
ある実施形態では、化合物Iが、結晶状のグルタル酸付加塩(1:1)(特に、精製された形態にあるもの)である。さらにもう一つの実施形態では、前記グルタル酸付加塩が、XRPDにおいて約9.39°、11.70°、14.05°、および14.58°2θにピークを持ち、特に前記グルタル酸付加塩が、図8に図示するXRPDを持つ。
【0033】
化合物Iは、そのユニークな薬理学的プロファイルゆえに、国際公開第03/029232号に開示されたもの以外の疾患の処置にも適している。5-HT2C受容体は例えばドーパミン作動性ニューロン上に位置していて、そこでは、活性化がドーパミン放出に対して緊張性抑制効果を発揮し、5-HT2Cアンタゴニストはドーパミンレベルの増加をもたらすだろう。実施例2Eに提示するデータは、化合物Iが、実際に、前前頭皮質における細胞外ドーパミンレベルの用量依存的な増加をもたらすことを示している。この背景を踏まえて、5-HT2Cアンタゴニストは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤による処置に不応性であるうつ病の処置に、とりわけ適しているという仮説を立てることができる[Psychopharmacol. Bull., 39, 147-166, 2006]。この仮説の裏付けは、臨床応答が不十分な抑うつ患者(治療抵抗性うつ病、TRD、または不応性うつ病)の処置にはSSRI単独よりもミルタジピン(mirtazipine)とSSRIとの組合せの方が優れていることを示すいくつかの臨床研究に見出される[Psychother. Psychosom., 75, 139-153, 2006]。ミルタザピンは5-HT2および5-HT3アンタゴニストでもあり、これは、セロトニン再取り込み阻害作用を5-HT2および5-HT3拮抗作用と組み合わせて発揮する化合物、例えば化合物Iが、TRDの処置に役立つこと、すなわち治療抵抗性うつ病を患っている患者の寛解率を増加させるであろうことを示している。
【0034】
実施例2Fおよび2Gに提示するデータは、化合物Iが、前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンの細胞外レベルの増加をもたらすことを示している。脳内のアセチルコリンレベルを増加させることがアルツハイマー病および認知障害全般を処置する一方法であるという長年にわたる臨床的証拠がある(アルツハイマー病の処置におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用を参照されたい)。この背景を踏まえて、本発明の化合物は、アルツハイマー病および認知障害の処置に役立ち、アルツハイマー病および認知障害に関連するうつ病などの気分障害の処置にも役立つと考えられる。
【0035】
抑うつ患者の一部は、彼らがMADRDやHAMDなどの臨床上有意義なうつ病尺度で改善を示すという意味では、例えばSSRIなどの抗うつ薬による処置に応答するが、他の症状、例えば睡眠障害および認知障害は残ることになるだろう。これに関連して、これらの患者を部分的反応者(partial responder)と呼ぶ。アセチルコリンレベルに対する上述の作用ゆえに、本発明の化合物は、うつ病だけでなく認知障害の処置にも役立つと予想される。α-1アドレナリン作動性受容体アンタゴニストである化合物プラゾシンが睡眠障害を減少させることは、臨床研究によって示されている[Biol. Psychiatry, 61, 928-934, 2007]。さらにまた、本発明の化合物の5-HT2Aおよび5-HT2C拮抗作用は、鎮静、睡眠改善作用を持つとも考えられ[Neuropharmacol, 33, 467-471, 1994]、それゆえに、化合物Iは部分的反応者の処置に役立ち、言い換えると、化合物Iによる抑うつ患者の処置は、部分的反応者の割合を減らすことになるだろう。
【0036】
注意欠陥多動障害(ADHD)は、最も一般的な神経行動学的障害の一つである。ADHDは、限定的、反復的または定型的行動を伴う社会性およびコミュニケーション障害の三主徴の存在を特徴とする。ADHDは通常、小児期または青年期に始まるが、症状は成人まで継続しうる。アトモキセチンは、ADHDの処置についてFDAによって承認された、現在唯一の非中枢刺激薬である[Drugs, 64, 205-222, 2004]。アトモキセチンはノルエピネフリン再取り込み阻害剤であり、これは、前前頭皮質におけるドーパミンレベルの増加ももたらす。ADHDの処置におけるアトモキセチンの治療効果は前記神経伝達物質レベルの増加によって媒介されることが示唆されている[Eur.Neuropsychopharmacol., 12, suppl. 3, 418, 2002]。これはADHDの処置に化合物Iを使用しうるという概念を裏付ける。また、本発明の化合物は、上述のα-1アドレナリン作動性受容体および5-HT2拮抗作用ゆえに、ADHDの処置に有益な鎮静作用を持ちうる。実施例3に示すように、ラットにおける研究は、化合物Iが活動亢進、衝動性および注意欠陥を減少させることを示す。
【0037】
メランコリーは、しばしば重症うつ病に結びつけられるうつ病の特定サブタイプであり、このタイプのうつ病はメランコリー型うつ病とも呼ばれる。メランコリーは不安、未来恐怖、不眠、および食欲不振と関連する。セロトニン再取り込みとノルエピネフリン再取り込みの両方を阻害する化合物、例えばベンラファキシンは、重症うつ病およびメランコリーを持つ患者の処置に、特に有効であることが示されている[Depres. Anxiety, 12, 50-54, 2000]。上述のように、5-HT2C拮抗作用を発揮する化合物はドーパミンレベルを増加させ、それゆえに、そのような化合物はメランコリーの処置に有効であると予想されるだろう[Psychpharm. Bull., 39, 147-166, 2006]。また、本発明の化合物のα-1アドレナリン作動性受容体および5-HT2拮抗作用は、睡眠を正常化するのに役立つと予想され、それゆえに、前記化合物はメランコリーの処置に役立つ。
【0038】
ある実施形態において、本発明は、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状の処置方法であって、その必要がある患者に対する治療有効量の4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩(化合物I)の投与を含む方法を提供する。ある実施形態では、上に列挙した疾患のいずれかについて処置される前記患者が、最初に前記疾患の診断を下されている。
【0039】
ある実施形態では、本発明の化合物が1日あたり約0.001〜約100mg/kg体重の量で投与される。
【0040】
典型的経口投薬量は、1日あたり約0.001〜約100mg/kg体重、好ましくは約0.01〜約50mg/kg体重の範囲にあり、それが1回またはそれ以上の投薬、例えば1〜3回の投薬で投与される。厳密な投薬量は、投与頻度および投与様式、処置される対象の性別、年齢、体重および全身状態、処置される状態の性質および重症度、ならびに処置されるべき併発疾患および当業者には明白な他の因子に依存するだろう。
【0041】
成人の場合、典型的経口投薬量は、1〜100mg/日の本発明の化合物、例えば1〜30mg/日、5〜25mg/日または5〜60mg/日の範囲にある。これは、典型的には、0.1〜60mg、例えば0.1〜50mg、1〜25mg、1〜35mg、例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60mgの化合物Iを、1日に1回または2回投与することによって達成されうる。
【0042】
本明細書にいう化合物の「治療有効量」とは、前記化合物の投与を含む治療的介入において、所与の疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に阻止するのに十分な量を意味する。これを達成するのに十分な量が「治療有効量」と定義される。この用語は、前記化合物の投与を含む処置において、所与の疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に阻止するのに十分な量も包含する。各目的に関する有効量は、その疾患または傷害の重症度ならびに対象の体重および全身状態に依存するだろう。適当な投薬量の決定は、値のマトリクスを作成し、そのマトリクス中の異なる点を試験することにより、日常的な実験を使って達成することができ、それらが全て、熟練した医師の通常の技量に含まれることは、理解されるだろう。
【0043】
本明細書で使用する「処置」および「処置する」という用語は、疾患または障害などの状態と闘うためになされる患者の管理およびケアを意味する。この用語は、患者が患っている所与の状態に関する処置の全範囲、例えば症状もしくは合併症を軽減するための、その疾患、障害もしくは状態の進行を遅延させるための、症状および合併症を軽減しもしくは緩和するための、および/またはその疾患を治癒させもしくは排除するための、ならびにその状態を防止するための活性化合物の投与を包含するものとし、この場合、防止はその疾患、状態、または障害と闘うためになされる患者の管理およびケアと解釈されるべきであり、症状または合併症の発生を防止するための活性化合物の投与を包含する。それでもなお、予防的(防止的)処置と治療的(治癒的)処置は、本発明の二つの別個の態様である。処置される患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0044】
ある実施形態において、本発明は、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状を処置するための医薬品の製造における4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩(化合物I)の使用に関する。
【0045】
ある実施形態において、本発明は、ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状の処置において使用するための4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩(化合物I)に関する。
【0046】
本発明の化合物は、純粋な化合物として単独で、または薬学的に許容できる担体もしくは賦形剤と組み合わせて、単回投与または複数回投与で投与することができる。本発明の医薬組成物は、例えば「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」(第19版、Gennaro編、Mack Publishing Co.、ペンシルバニア州イーストン、1995)に開示されているような従来の技法に従って、薬学的に許容できる担体または希釈剤、ならびに他の任意の既知佐剤および賦形剤を使って製剤化することができる。
【0047】
医薬組成物は、経口、直腸、鼻、肺、局所外用(口腔内および舌下を含む)、経皮、槽内、腹腔内、膣および非経口(皮下、筋肉内、髄腔内、静脈内および皮内を含む)経路など、任意の適切な経路による投与のために限定して製剤化することができ、経口経路は好ましい。好ましい経路が、処置される対象の全身状態および年齢、処置される状態の性質および選択した活性成分に依存することは理解されるだろう。
【0048】
経口投与用の医薬組成物には、カプセル剤、錠剤、糖衣丸、丸剤、口中錠、散剤および顆粒剤などの固形剤形が含まれる。それらは適宜、コーティングを施して製造することができる。
【0049】
経口投与用の液状剤形には、溶液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。
【0050】
非経口投与用の医薬組成物には、滅菌された水性および非水性の注射可能な溶液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤、ならびに使用に先だって滅菌注射可能溶液または分散液に再構成される滅菌粉末剤が含まれる。
【0051】
他の適切な投与形態には、坐剤、噴霧剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、吸入剤、皮膚パッチ、インプラントなどがある。
【0052】
本発明の化合物は、約0.1〜50mgの量の前記化合物(例えば1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30または35mgの化合物I)を含有する単位剤形で投与すると、好都合である。
【0053】
静脈内投与、髄腔内投与、筋肉内投与などの非経口経路の場合、通例、用量は経口投与に用いられる用量の約半分程度である。
【0054】
非経口投与には、滅菌水性溶液、水性プロピレングリコール、水性ビタミンEまたはゴマ油もしくはラッカセイ油中の本発明の化合物の溶液剤を使用することができる。そのような水性溶液剤は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、まず最初に希釈液を十分な食塩水またはグルコースで等張性にする。水性溶液剤は静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与には特に適している。使用される滅菌水性媒質は全て、当業者に知られる標準的技法により、容易に入手することができる。
【0055】
適切な医薬担体には、不活性固形希釈剤または充填剤、滅菌水性溶液およびさまざまな有機溶媒が含まれる。固形担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびセルロースの低級アルキルエーテルである。液状担体の例は、シロップ、ラッカセイ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレンおよび水である。本発明の化合物と薬学的に許容できる担体とを組み合わせることによって形成された医薬組成物は、次に、開示した投与経路に適したさまざまな剤形で、容易に投与される。
【0056】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが所定の量の活性成分を含有し、適切な賦形剤を含んでもよい、カプセル剤または錠剤などの不連続な単位として提示することができる。さらにまた、経口利用できる製剤は、粉末状もしくは顆粒状であるか、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液であるか、水中油型もしくは油中水型の液状乳剤であることができる。
【0057】
経口投与に固形担体を使用する場合、その調製物は錠剤であるか、例えば粉末もしくはペレット状にして硬ゼラチンカプセルに入れるか、またはトローチ剤もしくは口中剤の形態をとりうる。固形担体の量はさまざまでありうるが、通常は約25mg〜約1gであるだろう。
【0058】
液状担体を使用する場合、その調製物はシロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤または滅菌注射可能液剤、例えば水性もしくは非水性の液状懸濁剤もしくは溶液剤の形態をとりうる。
【0059】
錠剤は、活性成分を通常の佐剤および/または希釈剤と混合した後、その混合物を従来の打錠機で圧縮することによって製造することができる。佐剤または希釈剤の例には、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、ゴムなどが含まれる。そのような目的に通常使用される他の佐剤または添加剤、例えば着色剤、着香剤、保存剤などはいずれも、それらが活性成分と適合するという条件で、使用することができる。
【0060】
本発明の化合物を含むカプセル剤は、前記化合物を含む粉末を微結晶セルロースおよびステアリン酸マグネシウムと混合し、前記粉末を硬ゼラチンカプセルに入れることによって製造することができる。場合によっては、適切な色素を使って前記カプセル剤を着色してもよい。典型的には、カプセル剤は、0.25〜20%の本発明の化合物、例えば0.5〜1.0%、3.0〜4.0%、14.0〜16.0%の本発明の化合物を含むだろう。これらの強度は、単位剤形中の1、5、10、15、20および25mgの本発明の化合物を便利に送達するために使用することができる。
【0061】
注射用の溶液剤は、活性成分と場合によっては添加剤とを注射用の溶媒(好ましくは滅菌水)の一部に溶解し、その溶液を所望の体積に調節し、その溶液を滅菌し、それを適切なアンプルまたはバイアルに充填することによって製造することができる。浸透圧調節剤、保存剤、酸化防止剤など、当技術分野で従来から使用されている任意の適切な添加剤を加えることができる。
【0062】
化合物Iは単独で投与するか、あるいはもう一つの治療活性化合物と組み合わせて投与することができ、その場合、それら二つの化合物は、同時に投与するか、逐次的に投与することができる。化合物Iと有利に組み合わせることができる治療活性化合物の例には、鎮静薬または催眠薬、例えばベンゾジアゼピン類;抗痙攣薬、例えばラモトリジン、バルプロ酸、トピラマート、ガバペンチン、カルバマゼピン;気分安定剤、例えばリチウム;ドーパミン作動薬、例えばドーパミンアゴニストおよびL-Dopa;ADHDを処置するための薬物、例えばアトモキセチン;精神刺激薬、例えばモダフィニル、ケタミン、メチルフェニデートおよびアンフェタミン;他の抗うつ薬、例えばミルタザピン、ミアンセリンおよびブプロプリオン(buproprion);ホルモン類、例えばT3、エストロゲン、DHEAおよびテストステロン;非定型抗精神病薬、例えばオランザピンおよびアリピプラゾール;典型的抗精神病薬、例えばハロペリドール;アルツハイマー病を処置するための薬物、例えばコリンエステラーゼ阻害剤およびメマンチン、フォレート;S-アデノシル-メチオニン;免疫調節物質、例えばインターフェロン類;オピエート、例えばブプレノルフィン類;アンジオテンシンII受容体1アンタゴニスト(AT1アンタゴニスト);ACE阻害剤;スタチン類;およびα1アドレナリンアンタゴニスト、例えばプラゾシンが含まれる。
【0063】
化合物Iは、国際公開第2003/029232号または国際公開第2007/144006号に概説されているように製造することができる。遊離塩基に適当な酸を添加し、次に析出させることにより、さまざまな塩を獲得することができる。析出は、例えば冷却、溶媒の除去、もう一つの溶媒の添加、またはそれらの併用によって引き起こすことができる。
【0064】
本明細書で言及する参考文献は、刊行物、特許出願、および特許を含めて全て、その文書の組み込みが本明細書のどこか他の項で別途なされているかどうかにかかわらず、各参考文献が参照によって組み込まれることが個別にかつ明示的に示され、本明細書にその全体が(法が許す範囲で最大限に)記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
本発明の説明における用語「a」および「an」および「the」の使用ならびに類似する指示対象(referent)は、本明細書に別段の表示がない限り、または文脈上、明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含するとみなすべきである。例えば「化合物(the compound)」という表現は、別段の表示がない限り、本発明のさまざまな「化合物(compounds)」または記載された特定の態様を指すと理解すべきである。
【0066】
別段の表示がない限り、本明細書に記載する厳密な値は全て、対応する近似値の代表である(例えば、特定の因子または測定値に関して記載される厳密な典型的値は、適宜、対応する近似測定値(「約」によって修飾されるもの)をも記載しているとみなすことができる)。
【0067】
1または複数の要素に関して「を含む(comprising)」「を持つ(having)」「を包含する(including)」または「含有する(containing)」などの用語を使ってなされる本発明の任意の1または複数の態様の、本明細書における説明は、別段の明記がない限り、または文脈上、明らかに矛盾しない限り、その特定の1または複数の要素「からなる(cosist of)」「から本質的になる(consist essentially of)」または「を実質的に含む(substantially comprise)」本発明の類似する1または複数の態様の裏付けを提供するものとする(例えば、特定の要素を含むと本明細書に記載されている組成物は、別段の明記がない限り、または文脈上、明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物も記載していると理解すべきである)。
【実施例】
【0068】
解析方法
X線粉末ディフラクトグラム(XRPD)は、CuKα1放射線を使ってPANalytical X'Pert PRO X線回折計で測定した。試料は、X'celerator検出器を使用し、反射モードにより、2θ範囲5〜40°で測定した。元素組成(CHN)はElementarのElementar Vario EL装置で測定した。約4mgの試料を各測定に使用し、結果を2回の測定の平均値として記載する。
【0069】
実施例1a:化合物IのHBr塩
撹拌してわずかに(約45℃)加熱した油状の4-(2-p-トリルスルファニル-フェニル)-ピペリジン-1-カルボン酸エチルエステル442グラムにAcOH中の33重量%HBr(5.7M、2.5当量)545mlを加えた。この混合によって10℃の発熱が生じる。最後の添加後に、反応混合物を80℃まで加熱し、18時間放置する。試料を取り出してHPLCで分析し、もし完了していなければ、AcOH中の33重量%HBrを追加しなければならない。そうでない場合は、その混合物を25℃まで冷却して、生成物4-(2-p-トリルスルファニル-フェニル)-ピペリジン臭化水素酸塩を析出させる。25℃で1時間後、その濃厚懸濁液にジエチルエーテル800mlを加える。撹拌をさらに1時間続けてから、生成物を濾過によって単離し、ジエチルエーテル400mlで洗浄し、減圧下、40℃で終夜乾燥する。化合物Iの臭化水素酸塩が白色固体として単離された。
【0070】
実施例1b:化合物IのHBr塩
2-(4-トリルスルファニル)-フェニルブロミド
窒素で覆った撹拌反応器中で、N-メチル-ピロリドン、NMP(4.5L)に窒素を20分間吹き込んだ。4-メチルベンゼンチオール(900g、7.25mol)を加え、次に1,2-ジブロモベンゼン(1709g、7.25mol)を加えた。最終的にカリウムtert-ブトキシド(813g、7.25mol)を最後の反応物として加えた。反応は発熱的であり、反応混合物の温度を70℃まで上昇させた。次に反応混合物を120℃に2〜3時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した。酢酸エチル(4L)および塩化ナトリウム水溶液(15%、2.5L)を加えた。その混合物を20分間撹拌した。水相を分離し、新たな酢酸エチル(2L)で抽出した。水相を分離し、有機相を合わせ、塩化ナトリウム溶液(15%、2.5L)で洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で蒸発させることにより、20〜30%のNMPを含有する赤色油状物を得た。その油状物をメタノールで体積の2倍に希釈し、その混合物を還流させた。透明な赤色溶液が得られるまで、メタノールを追加した。その溶液に種晶を入れながら室温までゆっくり冷却した。生成物はオフホワイトの結晶として結晶化し、それらを濾過によって単離し、メタノールで洗浄し、減圧乾燥器中、40℃で恒量まで乾燥した。
【0071】
エチル=4-ヒドロキシ-4-(2-(4-トリルスルファニル)フェニル)-ピペリジン-1-カルボキシレート
窒素で覆われた撹拌反応器中で、2-(4-トリルスルファニル)-フェニルブロミド(600g、2.15mol)をヘプタン(4.5L)に懸濁した。室温でヘキサン中の10M BuLi(235mL、2.36mol)を10分かけて加えた。わずかな発熱しか認められなかった。その懸濁液を周囲温度で1時間撹拌した後、-40℃まで冷却した。THF(1.5L)に溶解した1-カルベトキシ-4-ピペリドン(368g、2.15mol)を、反応温度が-40℃未満に保たれる速さを上回らない速さで加えた。反応が完了したら、それを0℃まで温め、温度を10℃未満に保ちながら、1M HCl(1L)を加えた。酸性水相を分離し、酢酸エチル(1L)で抽出した。有機相を合わせ、塩化ナトリウム溶液(15%、1L)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させることにより、半結晶性塊を得た。それをエチルエーテル(250mL)でスラリー化し、濾別した。減圧乾燥器中、40℃で恒量まで乾燥した。
【0072】
エチル=4-(2-(4-トリルスルファニル)フェニル)-ピペリジン-1-カルボキシレート
トリフルオロ酢酸(2.8kg、24.9mol)およびトリエチルシラン(362g、3.1mol)を、効率の良い撹拌機を持つ反応器に投入した。エチル=4-ヒドロキシ-4-(2-(4-トリルスルファニル)フェニル)-ピペリジン-1-カルボキシレート(462g、1.24mol)を粉末ロートから少しずつ加えた。反応はわずかに発熱的だった。温度は50℃まで上昇した。添加を終わらせた後、反応混合物を60℃に18時間温めた。反応混合物を室温まで冷却した。トルエン(750mL)および水(750mL)を加えた。有機相を単離し、水相を新たなトルエン(750mL)で抽出した。有機相を合わせ、塩化ナトリウム溶液(15%、500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液を減圧下で蒸発させることによって赤色油状物とし、それをさらに次のステップで加工した。
【0073】
4-(2-(4-トリルスルファニル)フェニル)-ピペリジン臭化水素酸塩
実施例3で得た赤色油状物である粗エチル=4-(2-(4-トリルスルファニル)フェニル)-ピペリジン-1-カルボキシレートを、撹拌反応器中で、酢酸中の臭化水素酸(40%、545mL、3.11mol)と混合した。その混合物を80℃で18時間加熱した。その反応混合物を室温まで冷却した。冷却中に生成物が晶出した。室温で1時間後、エチルエーテル(800mL)を反応混合物に加え、その混合物をさらに1時間撹拌した。生成物を濾別し、エチルエーテルで洗浄し、減圧乾燥器中、50℃で恒量まで乾燥した。
【0074】
実施例1c:化合物IのHBr塩の再結晶
化合物IのHBr塩(例えば上記のように製造したもの)10.0グラムの混合物を、H2O 100ml中で加熱還流させた。混合物は80〜90℃で透明になり、完全に溶解した。その透明な溶液にチャコール1グラムを加え、還流を15分間続けてから、濾過し、室温まで自然放冷した。冷却中に白色固体の析出が起こり、その懸濁液を室温で1時間撹拌した。濾過し、減圧下40℃で終夜乾燥することにより、化合物IのHBr酸付加塩6.9グラム(69%)を得た。XRPDについては図1を参照されたい。元素分析:3.92%N、59.36%C、6.16%H(理論値:3.85%N、59.34%C、6.09%H)。
【0075】
実施例1d:遊離塩基の原液の調製
酢酸エチル500mlおよびH2O 200mlの混合物に化合物IのHBr塩50グラムを加えて、二相スラリーを生成させた。このスラリーに約25mlの濃NaOHを加えたところ、透明な二相溶液の形成が起こった(pHは13〜14と測定された)。その溶液を激しく15分間撹拌し、有機相を分離した。有機相をH2O 200mlで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧下60℃で蒸発させることにより、遊離塩基を38グラムの収量(99%)で、ほぼ無色の油状物として得た。
【0076】
酢酸エチルを使って10グラムの油状物を溶解し、体積を150mlに調節することによって、酢酸エチル中の0.235M原液を調製し、そこから1.5ml(遊離塩基100mg)ずつ使用した。
【0077】
96体積%EtOHを使って10グラムの油状物を溶解し、体積を100mlに調節することによって、EtOH中の0.353M原液を調製し、そこから1.0ml(遊離塩基100mg)ずつ使用した。
【0078】
実施例1e:遊離塩基の原液を使った塩の形成
所与の一定分量を試験管に入れ、撹拌しながら、表1に示すように適当な量の酸を加えた。酸が液体である場合はニートで加え、そうでない場合は、記載の溶媒に溶解してから加えた。混合および析出の後、撹拌を終夜続け、析出物を濾過によって集めた。減圧下30℃で乾燥する前に、少量の参照試料を取り出し、減圧せずに室温で乾燥した。この手順は溶媒和物を調べるために含めた。いくつかの結果を表1に提示する。XRPDディフラクトグラムを図1〜22に示し、選ばれたピークの位置を表2に要約する。表3に、本発明の化合物の水への溶解度を、結果として得られる飽和溶液のpHと共に示す。「析出物」の欄は、溶解度決定後に単離された析出物が溶解した化合物と同一であるかどうかを表しており、これは水和物の形成を示す。
【0079】
【表1】


【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
実施例2A:セロトニン(5-HT)およびノルエピネフリン(NE)再取り込み阻害
試験化合物およびラット皮質シナプトソーム調製物の一定分量を37℃で10分間プレインキュベートした後、[3H]NEまたは[3H]5-HT(最終濃度10nM)を加えた。10μMタルスプラムまたはシタロプラムの存在下で非特異的取り込み量を決定し、緩衝液の存在下で総取り込み量を決定した。一定分量を37℃で15分間インキュベートした。インキュベーション後に、シナプトソームによって取り込まれた[3H]NEまたは[3H]5-HTを、0.1%PEIに30分間予浸したUnifilter GF/Cでの濾過により、Tomtec Cell Harvesterプログラムを使って分離した。フィルターを洗浄し、Wallac MicroBetaカウンターでカウントした。
【0083】
化合物IはNETではIC50値23nMを示す。化合物IはSERTではIC50値8nMを示す。
【0084】
実施例2B:5-HT2A拮抗作用
化合物Iをセロトニン受容体に対するアフィニティーについて試験したところ、これらは5-HT2A受容体にアフィニティーを持つアンタゴニストプロファイル(Ki 54nM)を示すことがわかった。アフィニティーは、Y=100/(1+10(X-logIC50))から算出される(式中、Yは結合%を表し、Xは化合物の濃度を表す)。5濃度の化合物(1、10、30、100、1000nM)を使って、IC50値を算出した。Kiは、Cheng Prusoff式:Ki=(IC50/(1+([L]/Kd))から算出した。アフィニティーはMDL Pharmaservicesカタログ番号271650で決定した。
【0085】
ヒト5-HT2A受容体を発現させる哺乳動物細胞において、化合物Iは競合的アンタゴニスト性を示す。本化合物は5-HT2A受容体に<100nMのKiで結合し、機能アッセイでは、5-HTによって惹起される細胞内貯蔵からのCa2+の放出を、本化合物が67nMのKbで拮抗する。シルド解析により、100nMのKbを持つ競合的拮抗作用が明らかになった。
【0086】
実験は以下のように行った。実験の2日または3日前に、250fmol/mgのヒト5-HT2A受容体を発現させるCHO細胞を、実験日にコンフルエント単層が得られるように十分な密度でプレーティングする。その細胞に、湿度95%の5%CO2インキュベーター中、37℃で60分間、色素負荷する(Molecular DevicesのCa2+キット)。蛍光イメージングプレートリーダーまたはMolecular Devices(カリフォルニア州サニーベール)のFLIPR384を使用し、488nmの励起波長および500〜560nmの蛍光範囲で、基礎蛍光をモニターした。レーザー強度は、約8000〜10000蛍光単位の基礎値を得るのに適した強度に設定した。基礎蛍光の変動は10%未満にすべきである。少なくとも3桁をカバーする一連の試験化合物濃度を使ってEC50値を評価する。pA2値は、4つの異なる化合物濃度(150、400、1500および4000nM)で5-HTの全用量応答曲線を検証して評価した。Kb値も、EC85が5-HTで、2桁にわたる試験物質濃度を検証して評価した。試験物質は5-HTの5分前に細胞に加える。Ki値はCheng-Prusoff式を使って算出される。
【0087】
実施例2C:5-HT3A受容体拮抗作用
ヒトホモマー型5-HT3A受容体を発現させる卵母細胞において、5-HTはEC502600nMで電流を活性化させる。この電流は、オンダンセトロンなどの古典的5-HT3アンタゴニストで拮抗することができる。オンダンセトロンはこの系において1nM未満のKi値を示す。本発明の化合物は、低濃度(0.1nM〜100nM)では強力な拮抗作用を示し(IC50約10nM/Kb約2nM)、より高濃度(100〜100000nM)で適用した場合にはアゴニスト性を示して(EC50約2600nM)、5-HTそのものによって誘起される最大電流の約70〜80%という最大電流に達する。ラットホモマー型5-HT3A受容体を発現させる卵母細胞において、5-HTはEC503.3μMで電流を活性化させる。実験は次のように行った。0.4%MS-222中で10〜15分間麻酔した成熟雌アフリカツメガエル(Xenepus laevis)から、卵母細胞を外科的に摘出した。次に、その卵母細胞を、OR2緩衝液(82.5mN NaCl、2.0mM KCl、1.0mM MgCl2および5.0mM HEPES、pH7.6)中の0.5mg/mlコラゲナーゼ(タイプIA Sigma-Aldrich)により、室温で2〜3時間消化させた。卵胞層が取り除かれた卵母細胞を選択し、2mMピルビン酸ナトリウム、0.1U/lペニシリンおよび0.1μg/lストレプトマイシンを補足した変法バース塩類緩衝液(Modified Barth's Saline buffer)[88mM NaCl、1mM KCl、15mM HEPES、2.4mM NaHCO3、0.41mM CaCl2、0.82mM MgSO4、0.3mM Ca(NO3)2]中で24時間インキュベートした。ステージIV-IV卵母細胞を同定し、ヒト5-HT3A受容体をコードするcRNA 14〜50pgを含有するヌクレアーゼフリー水12〜48nlを注入し、それを電気生理学的記録(注入の1〜7日後)に使用するまで18℃でインキュベートしておいた。ヒト5-HT3受容体を発現させている卵母細胞を1mlバスに入れ、リンゲル緩衝液(115mM NaCl、2.5mM KCl、10mM HEPES、1.8mM CaCl2、0.1mM MgCl2、pH7.5)で潅流した。寒天で栓をした3M KClを含有する0.5〜1MΩ電極で細胞を固定し、GeneClamp 500B増幅器により、-90mVで電圧固定した。卵母細胞をリンゲル緩衝液で潅流し続け、薬物をその潅流液に適用した。5-HTアゴニスト溶液を10〜30秒間適用した。10μM 5-HT刺激に対する濃度-応答を測定することによって5-HT3受容体アンタゴニストの効力を調べた。
【0088】
実施例2D:α1A受容体拮抗作用
化合物Iをα1A受容体に対するアフィニティーについて試験したところ、これらはα1A受容体に対して中くらいのアフィニティーを持つアンタゴニストプロファイルを示すことがわかった(Ki=34nM)。
【0089】
実験日に膜(膜調製の説明については下記参照)を融解し、ウルトラタラックスを使って緩衝液中でホモジナイズし、所望の濃度に希釈する(5μg/ウェル〜5μg/900μl、使用時まで氷上で保存)。
【0090】
試験化合物50μl、[3H]-プラゾシン50μlおよび膜900μlを混合することによって実験を開始し、その混合物を25℃で20分間インキュベートする。10μM WB-4101の存在下で非特異的結合量を決定し、緩衝液の存在下で総結合量を決定する。インキュベーション後に、0.1%PEIに30分間予浸したUnifilter GF/Bでの濾過により、Tomtec Cell Harvesterプログラム(D4.2..4)を使って、結合リガンドを未結合リガンドから分離する。96ウェル。フィルターを氷冷緩衝液1mlで3回洗浄し、50℃で乾燥し、35μl/ウェルのシンチレーション液をフィルターに加える。結合している放射能を、Wallac OY 1450 MicroBetaでカウントする。アフィニティーはY=100/(1+10(X-logIC50))から算出される(式中、Yは結合%を表し、Xは化合物の濃度を表す)。2桁をカバーする化合物濃度を使ってIC50値を算出した。KiはCheng Prusoff式:Ki=(IC50/(1+([L]/Kd))から算出した。
【0091】
機能アッセイにおいて、化合物Iは、アドレナリンが惹起する細胞内貯蔵からのCa2+の放出を拮抗し、機能アッセイによって、化合物がアンタゴニストであることが明らかになった。
【0092】
これらの実験は基本的に以下に述べるように行った。
【0093】
細胞は全て、10%BCS、4mM L-グルタミン(COS-7の場合は2mM)、および100単位/mlペニシリン+100μg/mlストレプトマイシンを補足したDMEM培地において、5%CO2中、37℃で培養した。
【0094】
アッセイの24時間前に、ヒトα1A-7受容体を発現させるCHO細胞を、ポリ-D-リジンで被覆された384ウェルブラックウォールマイクロタイタープレートに播種した。培養培地を吸引し、細胞への色素負荷を、ハンクス平衡塩類溶液(138mM NaCl、5mM KCl、1.3mM CaCl2、0.5mM MgCl2、0.4mM MgSO4、0.3mM KH2PO4、0.3mM Na2HPO4、5.6mMグルコース)+20mM HEPES pH 7.4、0.05%BSAおよび2.5mMプロベニシド(probenicid)(50μl/ウェル)から構成されるアッセイ緩衝液中の1.5μM Fluo-4を使って、5%CO2中、37℃で1時間行った。過剰な色素を捨てた後、細胞をアッセイ緩衝液中で洗浄し、45μl/ウェル(アンタゴニストアッセイの場合は30μl/ウェル)に相当する最終液量を重層した。アンタゴニスト評価の場合は、この時点で、アンタゴニストまたは賦形剤を4×最終濃度で4%DMSO含有緩衝液中の15μlアリコート(最終DMSO=1%)として加えた後、20分間インキュベートした。蛍光イメージングプレートリーダーまたはMolecular Devices(カリフォルニア州サニーベール)のFLIPR(商標)を使用し、488nmの励起波長および500〜560nmの蛍光範囲で、基礎蛍光をモニターした。レーザー励起エネルギーは、基礎蛍光測定値が約8000相対蛍光単位(RFU)になるように調節した。次に、アッセイ緩衝液に希釈したアゴニスト(15μl)を使って細胞を室温で刺激し、RFUを2.5分間にわたって1.5秒間隔で測定した。蛍光の最大変化を各ウェルについて算出した。蛍光の最大変化から導いた濃度応答曲線を非線形回帰(Hill式)によって解析した。アンタゴニスト決定の場合、20分間の化合物インキュベーション(上述のとおり)後に、固定濃度の標準アゴニスト・セロトニンを加えた。
【0095】
実施例2E:ドーパミンの増加
化合物Iの単回注射は、ラット前頭皮質における細胞外DAレベルを用量依存的に増加させた。図23に示すように、本発明の化合物は、8.9mg/kgおよび18mg/kg s.c.で、DAレベルをベースラインよりそれぞれ約100%および150%上昇させた。量は遊離塩基として算出する。
【0096】
方法
初期体重275〜300gの雄スプレーグ-ドーリー・ラットを使用した。動物を、室内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)が一定になるように制御された条件下、12時間明/暗周期で飼育し、食物および水道水を自由に摂取させた。三日間の処置実験に、浸透圧ミニポンプ(Alzet、2ML1)を使用した。ポンプへの充填は無菌条件下で行い、セボフルランス(sevoflurance)麻酔下で皮下に植え込んだ。実験は内蔵ミニポンプを使って行った。3日間の処置後の試験化合物の血漿中レベルを測定するための血液試料を、実験の最後に収集した。
【0097】
外科手術および微小透析実験
動物をヒプノルム(hypnorm)/ドルミカム(2ml/kg)で麻酔し、透析プローブチップを腹側海馬内(座標:ブレグマの前方5.6mm、側方-5.0mm、硬膜の腹側7.0mm)または前頭皮質内(座標:ブレグマの前方3.2mm;側方3.0mm;硬膜の腹側4.0mm)に配置させる目的で、脳内ガイドカニューレ(CMA/12)を海馬中に定位的に植え込んだ。ガイドカニューレを固定するために固定ネジおよびアクリルセメントを使用した。動物の体温を直腸プローブでモニターし、37℃に維持した。ラットを、一匹ずつケージに収容し、外科手術から2日間回復させた。実験日に、ガイドカニューレを通して微小透析プローブ(CMA/12、直径0.5mm、長さ3mm)を挿入した。2チャンネルスイベルを通してプローブを微量注入ポンプに接続した。濾過したリンゲル液(145mm NaCl、3mM KCl、1mM MgCl2、1.2mM CaCl2)による微小透析プローブの潅流を、脳内にプローブを挿入する直前に開始し、実験の継続中は1(1.3)μL/分の一定流量で続けた。180分間の安定化後に、実験を開始した。透析液を20(30)分ごとに収集した。実験後に断頭によってラットを屠殺し、その脳を摘出し、凍結し、プローブの配置を検証するために薄切した。
【0098】
透析液の分析
透析液中のドーパミンの濃度はHPLCと電気化学的検出とを利用して分析した。モノアミン類を逆相液体クロマトグラフィー(ODS 150×3mm、3μM)で分離した。ドーパミン:90mM NaH2PO4、50mMクエン酸ナトリウム、367mg/l 1-オクタンスルホン酸ナトリウム、50μM EDTAおよび8%アセトニトリル(pH4.0)からなる流量0.5ml/分の移動相。電量検出器を使って電気化学的検出を行った;電位を250mV(ガードセルは350mV)に設定した(Coulochem II、ESA)。
【0099】
実施例2F:アセチルコリンの増加
この実験は、化合物Iが自由行動ラットの前前頭皮質におけるアセチルコリンの細胞外レベルに及ぼす作用を評価するために計画された。
【0100】
実験には雄ウィスターラット(280〜350g;Harlan、オランダ・ザイスト)を使用した。ラットをプラスチック製ケージ(30×30×40cm)で個別に飼育し、食物および水を自由に摂取させておいた。
【0101】
イソフルラン(2%、400mL/分 N2O、400ml/分 O2)を使ってラットを麻酔した。局所麻酔にはリドカイン(10%m/v)を使用した。各動物を定位固定装置(Kopf instrument、USA)に入れ、PaxinosとWatsonのラット脳アトラス(1982)を使って、自作のI字状プローブ(Hospal AN 69メンブレン、露出表面4mm)を内側前前頭皮質(mPFC)に挿入した。プローブの先端の座標はmPFC[AP=3.4mm、L=-0.8mm、V=5.0mm]だった。次にプローブを歯科用セメントとネジで頭骨に固定した。フルニキシン(1mg/kg s.c.)を術後鎮痛薬として投与した。
【0102】
実験は外科手術の24〜48時間後に行った。実験日に、可撓性PEEKチューブでラットを微小潅流ポンプ(CMA102)に接続し、147mM NaCl、3.0mM KCl、1.2mM CaCl2、および1.2mM MgCl2を含有する流量1.5μL/分のリンゲル液で、透析プローブを潅流した。アセチルコリン決定用に、55μLの0.02Mギ酸が入っているミニバイアルに、微小透析試料を30分間隔で収集した。自動フラクションコレクター(CMA142)を使って試料を収集し、分析するまで-80℃で保存した。実験の完了後にラットを屠殺した。脳を摘出し、パラホルムアルデヒド溶液(4%m/v)中で硬化させた。脳の冠状切片を作製することにより、PaxinosとWatson(1982)に従って、各プローブの位置を組織学的に検証した。
【0103】
試験化合物を10%2-OH-プロピル-ベータ-シクロデキストリンに溶解し、液量5mL/kgの皮下注射により、異なる用量で投与を行った。
【0104】
アセチルコリンの濃度は、HPLCとタンデム質量分析(MS/MS)検出によって決定した。
【0105】
自動試料インジェクター(PerkinElmer Instruments、シリーズ200)を使って一定分量(25μL)をHPLCカラムに注入した。クロマトグラフィー分離は、4×2.0mmガードカラム(Phenomenex Synergy MAX-RP AJO-6073、Bester)で保護された逆相150×2.00mm(4μm)分析カラム(Phenomenex Synergy MAX-RP、Bester)で行った(どちらのカラムも温度を30℃に維持した)。移動相(定組成)は超精製水(UP)、アセトニトリル(ACN)、およびトリフルオロ酢酸(TFA)からなった(UP:ACN:TFA=95.0:0.5:0.1v/v/v%)。移動相をHPLCポンプ(PerkinElmer Instruments、シリーズ200マイクロポンプ)により、0.300mL/分の流量で、システムに流した。
【0106】
LC/MS分析は、API 4000 MS/MS検出器およびTurbo Ion Sprayインターフェース(どちらもApplied Biosystem(オランダ)製)からなるAPI4000 MS/MSシステムを使って行った。取得は正イオン化モードで行い、イオンスプレー電圧は5.5kV、ネブライザーガス圧は50psig(SCIEXスケール0〜90)、プローブ温度は600℃に設定した。アセチルコリン(前駆体146.1Da、生成物86.8Da)を検出するために、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)モードで装置を作動させた。衝突エネルギーを21.0eVとし、衝突ガス(窒素)圧を7(0〜12のSCIEXスケール)に保った。Analyst(商標)データシステム(Applied Biosystem、バージョン1.2)を使って、データを較正し、定量した。
【0107】
変化量が50%未満である二つの連続微小透析試料をベースラインレベルとし、それを100%に設定した。アセチルコリン濃度の変化を同じ対象内でベースラインのパーセントとして表す。データを図24に示す。
【0108】
実施例2G:アセチルコリンの増加
この実験は、化合物Iが自由行動ラットの前前頭皮質および腹側海馬におけるアセチルコリンの細胞外レベルに及ぼす作用を評価するために計画された。初期体重275〜300gの雄スプレーグ-ドーリー・ラットを使用した。動物を、室内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)が一定になるように制御された条件下、12時間明/暗周期で飼育し、食物および水道水を自由に摂取させた。
【0109】
外科手術および微小透析実験
動物をヒプノルム/ドルミカム(2ml/kg)で麻酔し、透析プローブチップを腹側海馬内(座標:ブレグマの前方5.6mm、側方-5.0mm、硬膜の腹側7.0mm)または前頭皮質内(座標:ブレグマの前方3.2mm;側方0.8mm;硬膜の腹側4.0mm)に配置させる目的で、脳内ガイドカニューレ(CMA/12)を海馬中に定位的に植え込んだ。ガイドカニューレを固定するために固定ネジおよびアクリルセメントを使用した。動物の体温を直腸プローブでモニターし、37℃に維持した。ラットを、一匹ずつケージに収容し、外科手術から2日間回復させた。実験日に、ガイドカニューレを通して微小透析プローブ(CMA/12、直径0.5mm、長さ3mm)を挿入した。
【0110】
2チャンネルスイベルを通してプローブを微量注入ポンプに接続した。濾過したリンゲル液(0.5μMネオスチグミンを含有する145mm NaCl、3mM KCl、1mM MgCl2、1.2mM CaCl2)による微小透析プローブの潅流を、脳内にプローブを挿入する直前に開始し、実験の継続中は1μl/分の一定流量で続けた。180分間の安定化後に、実験を開始した。透析液を20分ごとに収集した。実験後に動物を屠殺し、その脳を摘出し、凍結し、プローブの配置を検証するために薄切した。
【0111】
透析液アセチルコリンの分析
透析液中のアセチルコリン(ACh)濃度は、100mMリン酸水素二ナトリウム、2.0mMオクタンスルホン酸、0.5mMテトラメチルアンモニウムクロリドおよび0.005%MB(ESA)、pH8.0からなる移動相を使用し、HPLCと電気化学的検出とを利用して分析した。分析カラム(ESA ACH-250)(流量0.35ml/分、温度:35℃)でのAChの分離に先だって、固定化コリンオキシダーゼを含有するプレカラム酵素リアクター(ESA)により、注入された試料(10μl)からコリンが排除された。分析カラム後に、試料は、固定化アセチルコリンエステラーゼおよびコリンオキシダーゼを含有するポストカラム固相リアクター(ESA)を通過した。このポストカラム固相リアクターにより、AChはコリンに変換され、次にコリンがベタインとH2O2に変換された。このH2O2を白金電極を使って電気化学的に検出した(分析セル:ESA、モデル5040)。
【0112】
データ提示
単回注射実験では、化合物投与直前の3連続ACh試料の平均値を各実験の基礎レベルとし、データを基礎値に対するパーセンテージに変換した(平均基礎注射前値を100%に標準化した)。データを図25aおよび25bに提示する。
【0113】
図24に提示するデータは、アセチルコリンレベルの予想外の低下(例えば8mg/kgを参照されたい)を示しているが、これを説明することは困難であり、実験的不確定性によるものであると考えられる。実施例2Fおよび2Gから得られるデータセットはどちらも、全体として、脳内の細胞外アセチルコリンレベルの同じ、すなわち用量依存的な増加を示している。この前臨床的知見は、例えばアルツハイマー患者、部分的反応者、認知障害などといった、認知障害を特徴とする疾患の処置などに有用な、臨床現場における認知の改善につながると期待される。
【0114】
実施例3:高血圧自然発症ラット-ADHDの動物モデル-における化合物Iの作用
ADHDの中核症状は注意欠陥、活動亢進および衝動性の増加である。高血圧自然発症ラット(SHR)を注意欠陥多動障害(ADHD)の動物モデルとして使用し、ウィスター・キョウト・ラット(SHRの祖先系統)を対照とした[Biol Psychiatry. 57, 1239-47, 2005]。これらの症状を評価するために、遅延食物報酬を伴うオペラント課題を使って、注意関連パラメータおよび衝動性関連パラメータを測定した。注意欠陥は不正解側のレバー押しの回数の増加として測定された。衝動性は、遅延報酬なしの試験セッションにおける消灯状態中および遅延報酬を伴う試験セッションにおける遅延間隔中のレバー押しおよび報酬チャンバー点検として測定された。活動亢進は赤外線ケージにおける概日記録(circadian recording)によってモニターした。
【0115】
SHRラットとウィスター・キョウト・ラットの間で課題の習得に著しい相違はなかった。さらにまた、SHRラットおよびウィスター・キョウト・ラットの二つの賦形剤群は、食物探索について同じ一般的意欲を示し、これは得られた報酬の数が等しい点に反映された。SHRラットはウィスター・キョウト・ラットと比較してわずかな注意欠陥を示した。ウィスター・キョウト・ラットと比較してSHRでは衝動性が著しく増加し、活動亢進も認められた。
【0116】
試験群:対照としてのウィスター・キョウト・ラットの1群、賦形剤処置SHRの1群(陰性対照)、間欠的メチルフェニデート処置SHRの2群(2mg/kgおよび5mg/kg i.p、参照群)、飲用水により慢性的にメチルフェニデートで処置されたSHR(達成用量:約10mg/kg/日)の1群および化合物Iで間欠的に処置されたSHRの2群(5mg/kgおよび10mg/kg遊離塩基)。
【0117】
方法:オペラント試験は、それぞれ、2つのレバーとそのレバーパネルの右側および左側にある隣接報酬チャンバーとを備えたオペラント行動ケージにおいて、20時間セッションで行った。動物はレバー押しによってのみ食物を入手することができ、液体は自由に入手できた。訓練および試験は以下のフェーズから構成された。
獲得フェーズ(処置なし)
(1)どちらのレバーも絶え間なく稼働状態だった(信号灯によって示された)。レバーを押す度に、1つの室灯(single house light)で合図された隣接報酬チャンバーに報酬が直ちに提示された。
(2)所与の一時点において一方のレバーだけが稼働状態であり、それが左側と右側の間で5分周期で切り替えられた点以外は、(1)と同様。信号灯が正解側を示した。
(3)正解側のレバーが20秒ごとに20秒間にわたって非稼働状態に設定された点以外は、(2)と同様。正解側の信号灯がレバーの状態を示した(点灯または消灯)。
試験フェーズ(処置中)
(1)獲得フェーズ(3)と同様。
(2)稼働レバーのレバー押し後に、報酬が直ぐには提示されず、5秒の遅延間隔後に提示される点以外は、(1)と同様。この時間中は、相応した信号灯が消灯しており、レバーは非稼働状態に設定された。
(3)(2)と同様であるが、遅延間隔を10秒にした。
(4)(3)と同様であるが、遅延間隔を20秒にした。
【0118】
化合物Iには、試験したどちらの用量でも(5および10mg/kg i.p.、試験の30分前に注射)、SHRラットにおいて有意な効果があった。これらの効果は、課題の習得または食物探索の一般的意欲には影響を及ぼさなかったが、注意欠陥および衝動性を活動亢進と共に減少させ、概日活動モニタリング中の自発運動活性は、持続効果を持たずに1時間用量依存的に低下した。SHRラットにおける注意欠陥および衝動性に対する化合物Iの作用を示す代表的なグラフを図26に示す。
【0119】
メチルフェニデートはオペラント行動に対して一貫した作用を示さず、注意欠陥または衝動性の低減はなかった。メチルフェニデートの間欠的投与は、SHRの活動亢進を著しくかつ用量依存的に悪化させた。この作用は数時間持続した。慢性投与は活動の時間経過を変化させなかった。
【0120】
このモデルによる結果は、化合物Iがメチルフェニデートとは異なる機序によって衝動性および注意に作用することを示している。このモデルにおけるメチルフェニデートの作用の欠如は、メチルフェニデートが幼若ラットで有効なことは示されているが、成体ラットではそうでないという事実によるのかもしれない[Psychopharmacology (Berl), 193(2), 215-23, 2007]。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状の処置方法であって、その必要がある患者に対する治療有効量の4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩(化合物I)の投与を含む方法。
【請求項2】
化合物IがHBr付加塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物IがXPRDにおける約6.08、14.81、19.26および25.38°2θのピークによって特徴づけられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
化合物Iが図1に図示するXRPDによって特徴づけられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
化合物Iが5〜60mg/日で投与される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状を処置するための医薬品の製造における4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩(化合物I)の使用。
【請求項7】
化合物IがHBr付加塩である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
化合物IがXPRDにおける約6.08、14.81、19.26および25.38°2θのピークによって特徴づけられる、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
化合物Iが図1に図示するXRPDによって特徴づけられる、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬品が5〜60mg/日で投与されるものである、請求項6〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ADHD、メランコリー、治療抵抗性うつ病またはうつ病における残存症状の処置に使用するための4-[2-(4-メチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペリジンおよびその酸付加塩。
【請求項12】
HBr付加塩である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
XPRDにおける約6.08、14.81、19.26および25.38°2θのピークによって特徴づけられる、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
図1に図示するXRPDによって特徴づけられる、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
5〜60mg/日で投与される、請求項11〜14のいずれか一項に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2010−521502(P2010−521502A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553911(P2009−553911)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050064
【国際公開番号】WO2008/113360
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】